タイトル: | 特許公報(B2)_ガチフロキサシンの眼内移行性を向上させた水性液剤 |
出願番号: | 2008538753 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/4709,A61K 47/36,A61K 47/02,A61K 9/08,A61P 27/02,A61P 31/04 |
澤 嗣郎 JP 5245078 特許公報(B2) 20130419 2008538753 20071011 ガチフロキサシンの眼内移行性を向上させた水性液剤 杏林製薬株式会社 000001395 田中 光雄 100081422 山田 卓二 100101454 松谷 道子 100106518 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 澤 嗣郎 JP 2006279007 20061012 20130724 A61K 31/4709 20060101AFI20130704BHJP A61K 47/36 20060101ALI20130704BHJP A61K 47/02 20060101ALI20130704BHJP A61K 9/08 20060101ALI20130704BHJP A61P 27/02 20060101ALI20130704BHJP A61P 31/04 20060101ALI20130704BHJP JPA61K31/4709A61K47/36A61K47/02A61K9/08A61P27/02A61P31/04 A61K 31/00−33/44 CA/REGISTRY(STN) 特開2005−008625(JP,A) 特表2003−513046(JP,A) 中国特許出願公開第1562030(CN,A) 特表2002−510654(JP,A) 1 JP2007069846 20071011 WO2008044733 20080417 9 20100909 福井 悟 本発明は、ガチフロキサシン(化学名:(±)−1−シクロプロピル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−7−(3−メチル−1−ピペラジニル)−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸)の眼内移行性を向上させた水性液剤、さらに詳しくは、キサンタンガムによりガチフロキサシンの眼内移行性を向上させた眼科用水性液剤に関する。 キノロンカルボン酸誘導体であるガチフロキサシンは、ニューキノロン系合成抗菌剤であって、グラム陰性菌はもとよりグラム陽性菌、嫌気性菌、マイコプラズマに対しても強力な抗菌力を示すことが認められており、結膜炎、涙嚢炎、麦粒腫などの眼科領域感染症および外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎などの耳鼻科領域感染症への適用が提案されている(特許文献1参照)。抗菌剤含有点眼剤の場合、薬物の角膜透過性を亢進し、房水移行量を増大させることが製剤設計の指標となる。 しかし、点眼された薬物は、一般に、涙液による希釈や角膜のバリヤー機能のため、眼内へはほとんど移行しない。このため、薬物の眼内移行性の向上を図り、薬物の効果を高める設計にする必要があり、ガチフロキサシンに関して、特許文献2に、ガチフロキサシンまたはその塩とエデト酸ナトリウムを含有してなるガチフロキサシンの角膜透過性を亢進させた水性液剤が開示されている。また、この文献には、ガチフロキサシンの結晶析出防止法も開示されている。 一方、医薬組成物におけるキサンタンガムの使用に関して、特許文献3には、眼科薬物と0.01〜2.5%のキサンタンガムを含有する水性組成物が開示され、キサンタンガムがエコチオペート(Echothiopate)等のコリン作用薬の治療効果を高めることが記載されている。また、その実施例2にはピロカルピン(Pilocarpine)、キサンタンガム、および塩化カリウム0.04%を含有した点眼剤処方が記載されている。特許文献4には、味をマスクした液体製薬学的組成物が開示されており、キサンタンガムを含有するキノロンカルボン酸抗生物質等の製薬学的に活性な薬剤の苦味をマスクした液体製薬学的懸濁剤が記載されている。特許文献5には、フルオロキノロン抗生薬およびキサンタンガムを含有する薬学的組成物が開示されており、キサンタンガム(0.4〜0.8%(W/W))およびフルオロキノロン抗生薬を含有する水溶性の薬学的組成物に、水溶性のカルシウム塩を少なくとも0.15%(W/W)の量で加えることで、室温において40以下の濁度の等級(NTU)となる薬学的組成物が記載されている。特許文献6には、眼と接触する際にゲル化する、約120mM以下の合計イオン強度を有する眼科用組成物が開示されている。この発明はリゾチームと接触する際のキサンタンガムによって形成されるゲル強度が、組成物中のキサンタンガムの当初結合アセテート含有量と当初ピルビン酸塩含有量に依存するという知見に基づくもので、眼科用薬物として、抗感染剤にキノロン類(たとえばシプロフロキサシン)およびアミノ配糖体が挙げられている。特公平8−9597号公報国際公開第00/10570号パンフレット米国特許第4136177号明細書特表2004−535370号公報特表2003−513046号公報特表2002−510654号公報 本発明の主な目的は、ガチフロキサシンの眼内移行性、すなわち、涙液滞留性、房水および結膜移行性に優れた水性液剤を提供することである。 上記のごとく、この目的達成のため、本発明においてはキサンタンガムを使用するが、ガチフロキサシンとキサンタンガムを含有する水性液剤は、沈殿生成や粘度低下を起こすことがあり、この沈殿生成および粘度低下が抑制された水性液剤を提供することも本発明の目的の1つである。 本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物と共に、キサンタンガムを含有させることにより、ガチフロキサシンの眼内移行性を向上させることができることを見出した。さらに、上記の沈殿生成および粘度低下抑制の課題が、塩化ナトリウムを添加することにより解決されることを見出した。 本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであって、 (1)ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物、少なくとも0.15w/v%のキサンタンガムおよび少なくとも0.2w/v%の塩化ナトリウムを含有し、pHが5〜8である水性液剤、 (2)キサンタンガムを0.15〜1.0w/v%含有する上記(1)記載の水性液剤、 (3)塩化ナトリウムを0.2〜1.8w/v%含有する上記(1)記載の水性液剤、 (4)ガチフロキサシンを0.1〜1.0w/v%含有する上記(1)記載の水性液剤、 (5)点眼剤である上記(1)〜(4)いずれか1項記載の水性液剤、 (6)ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物を含有する水性液剤に、少なくとも0.15w/v%のキサンタンガムを配合することを特徴とする、ガチフロキサシンの眼内移行性を向上させる方法、 (7)ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物、および少なくとも0.15w/v%のキサンタンガムを含有する水性液剤に、少なくとも0.2w/v%の塩化ナトリウムを配合することを特徴とする、ガチフロキサシンとキサンタンガムとを含有する水性液剤における沈殿生成および粘度低下を抑制する方法などを提供するものである。 本発明に従って、ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物を含有する水性液剤に所定量のキサンタンガムを含有させることにより、ガチフロキサシンの眼内移行性が向上する。また、ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物、およびキサンタンガムを含有する水性液剤に、所定量の塩化ナトリウムを含有させることにより、ガチフロキサシンとキサンタンガムとを含有する水性液剤における沈殿生成および粘度低下を抑制することができる。試験例1における、涙液中のガチフロキサシン濃度測定結果を示すグラフである。試験例1における、房水中のガチフロキサシン濃度測定結果を示すグラフである。試験例1における、結膜中のガチフロキサシン濃度測定結果を示すグラフである。 本明細書において、眼内移行性向上とは、涙液、房水、結膜中への薬物の移行量を向上させることを意味する。 本発明は、ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物を有効成分として用いる。ガチフロキサシンの薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、メタンスルホン酸、乳酸、蓚酸、酢酸等の有機酸との塩、あるいはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、鉄、亜鉛、白金、銀等の塩が挙げられる。水和物としては、例えば、2/5、1/2、3/2、5水和物等が挙げられる。 本発明の水性液剤に使用されるガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物の処方量は、対象となる感染の程度により異なるが、通常、水性液剤全量に基づいて遊離のガチフロキサシンとして、0.1〜1.0w/v%、好ましくは0.2〜0.8w/v%である。 本発明の水性液剤に使用されるキサンタンガムの平均分子量は、通常、100000〜50000000、好ましくは200000〜20000000、特に好ましくは1000000〜10000000である。該キサンタンガムとしては、大日本住友製薬株式会社より市販されているエコーガムT、エコーガムF等のエコーガムシリーズ、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社より市販されているサンエースNXG−S等のサンエースシリーズ、三昌株式会社株式会社より市販されているケルトロールCG、ケルトロールCG−T等のケルトロールシリーズ等が用いられる。好ましくはエコーガムT、ケルトロールCG−Tである。キサンタンガムの処方量は、水性液剤全量に基づいて0.15〜1.0w/v%、好ましくは0.2〜0.5w/v%である。 本発明の水性液剤の粘度は、通常、20℃において約15〜150mPa・sで、沈殿の生成抑制、粘度低下抑制のための塩化ナトリウムの処方量は、水性液剤全量に基づいて、少なくとも0.2w/v%以上、好ましくは0.2〜1.8w/v%、より好ましくは0.2〜1.5w/v%、さらに好ましくは0.7〜1.0w/v%である。例えば、沈殿の生成抑制のための塩化ナトリウムの処方量は、水性液剤全量に基づいて、少なくとも0.2w/v%以上、好ましくは0.2〜1.8w/v%、より好ましくは0.2〜1.0w/v%である。粘度低下抑制のための塩化ナトリウムの処方量は、水性液剤全量に基づいて、少なくとも0.2w/v%以上、好ましくは0.2〜1.8w/v%、より好ましくは0.5〜1.5w/v%、さらに好ましくは0.7〜1.0w/v%である。 本発明の水性液剤は、経口的または非経口的に投与される。投与形態としては、例えば、シロップ剤等の経口形態、溶液状の注射剤、点眼剤等の外用剤等の非経口投与形態が例示され、眼局所投与用の形態で用いることが好ましく、点眼剤であることが特に好ましい。 本発明の水性液剤のpHは、通常、5〜8、好ましくは5.5〜7.5、さらに好ましくは5.8〜7.2、特に好ましくは6〜7である。 本発明の水性液剤には、必要に応じて、さらに、等張化剤(例えば、塩化カリウム、ホウ酸、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グルタミン酸、ε−アミノカプロン酸等)、保存剤(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類等)、粘性剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、酢酸、リン酸等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム、クエン酸等)等を適宜添加してもよい。 本発明の水性液剤は、自体公知の方法によって製造すればよく、例えば、第15改正日本薬局方、製剤総則の点眼剤あるいは液剤に記載された方法で製造することができる。 本発明の水性液剤、例えば、点眼剤は、抗菌作用を有し、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎、角膜潰瘍、術後感染症などの予防、治療に、1回1滴、1日1〜3回程度点眼すればよい。外耳炎、中耳炎に対しては、通常、1回6〜10滴、1日1〜2回点耳すればよい。また、副鼻腔炎に対しては、通常、1回2〜4mlを隔日に1週間に3回噴霧吸入するか、又は、1回1mlを1週間に1回上顎洞内に注入すればよい。なお、症状の程度により、適宜回数を増減できる。 以下に実施例および試験例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1および比較例1〜2 表1の処方に従い、常法によりガチフロキサシン含有点眼剤を調製した。キサンタンガムは大日本住友製薬株式会社製エコーガムTを使用した。試験例1 ガチフロキサシンの涙液滞留性、房水および結膜移行性に対するキサンタンガムの効果 1.実験方法 (1)涙液中のガチフロキサシン濃度 (a)投与 表1の点眼剤(比較例1および2、実施例1)をウサギ(体重2.20〜2.71kg)の片眼に50μLずつ1回点眼投与した。 (b)涙液の採取方法 点眼5、15、30および60分後に、キャピラリー(MICROCAPS 2μL, Drummond)を用いて涙液を採取した。 (c)試料溶液調製方法 採取した涙液の重量を測定し、HPLC用移動相0.3mLを加えて希釈し、試料溶液とし、HPLC法によりガチフロキサシン濃度を測定した。 (2)房水および結膜中のガチフロキサシン濃度 (a)投与 表1の点眼剤(比較例1、実施例1)をウサギ(体重2.20〜2.71kg)の片眼に50μLずつ1回点眼投与した。 (b)房水および結膜の採取方法 点眼1および2時間後に5%ペントバルビタールナトリウムを過量投与し安楽死させた。前眼部を生理食塩液で洗浄した後に房水および結膜を採取した。房水は27G注射針付きシリンジで採取し、結膜は直接ハサミで切り出した。 (c)試料溶液調製方法 房水は0.22μmのメンブランフィルターでろ過し、試料溶液とした。結膜は重量を測定後、アセトニトリル5mLを加えて細切し、振盪(200rpm×20分)および遠心分離(2000rpm×10分)した。この上清4mLを分取し、減圧乾固の後、HPLC用移動相0.5mLで溶解し、フィルター(0.22μm)でろ過したものを試料溶液とし、HPLC法によりガチフロキサシン濃度を測定した。 2.HPLC分析条件 検出器:紫外可視吸光光度計(測定波長:280nm) カラム:Inertsil ODS-3 4.6mmφ×150mm、5μm(GLサイエンス) ガードカラム:Inertsil ODS-3 4.6mmφ×5mm(GLサイエンス) カラム温度:40℃ 移動相:アセトニトリル:蒸留水:トリエチルアミン=18:81:1にリン酸を加えてpH4.5に調整した。 流速:0.8mL/分 注入量:50μL サンプルクーラー設定温度:4℃ 3.結果(データ) 涙液中のガチフロキサシン濃度(n=6)を表2および図1に示す。 房水および結膜中のガチフロキサシン濃度(n=3)を表3、図2および図3に示す。実施例2〜9および比較例3〜12 表4〜5の処方に従い、常法によりガチフロキサシン含有点眼剤を調製した。キサンタンガムは大日本住友製薬株式会社製エコーガムTを使用した。キサンタンガムは大日本住友製薬株式会社製エコーガムTを使用した。試験例2 塩化ナトリウム添加による沈殿生成および粘度低下抑制効果 1.実験方法 表4および表5に示す各点眼剤の外観を観察した。また、各点眼剤1.2mLを取り、回転粘度計(使用機器:E型回転粘度計:TVE−20L(ローターNo.1)、東機産業製)のサンプルカップに入れて粘度を測定した。回転速度は、20rpmとし、温度は20℃とした。 2.結果 結果を表6および表7に示す。 比較例7の粘度は沈殿を生じたため測定しなかった。 比較例4〜6、9〜11に示すようにガチフロキサシンを配合していない水性液剤では、塩化ナトリウムは水性液剤の粘度を低下させ、この低下作用は塩化ナトリウムの濃度に依存しなかった。 一方、実施例2〜4、5〜9に示すようにガチフロキサシンを配合した水性液剤では、塩化ナトリウムは水性液剤の粘度低下を抑制し、この抑制作用は塩化ナトリウム濃度に依存するものであった。実施例10〜17表8の処方に従い、常法によりガチフロキサシン点眼剤を調製した。 以上記載しごとく、本発明によれば、キサンタンガムの添加により、ガチフロキサシンの眼内移行性の向上したガチフロキサシン含有眼科用水性液剤が提供でき、また、塩化ナトリウムを添加することにより、かかる水性液剤における沈殿生成、粘度低下を抑制することができる。 ガチフロキサシンもしくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの水和物、および少なくとも0.15w/v%のキサンタンガムを含有するpHが5.5〜7.5の水性液剤に、0.7〜1.0w/v%の塩化ナトリウムを配合することを特徴とする、ガチフロキサシンとキサンタンガムとを含有する水性液剤における粘度低下を抑制する方法。