タイトル: | 特許公報(B2)_細胞吸着カラム |
出願番号: | 2008536457 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61M 1/36,A61K 35/14,A61P 1/04,A61P 29/00,A61P 19/02,B01D 15/00,B01J 20/26 |
島垣 昌明 JP 5136418 特許公報(B2) 20121122 2008536457 20070928 細胞吸着カラム 東レ株式会社 000003159 酒井 宏明 100089118 島垣 昌明 JP 2006267462 20060929 20130206 A61M 1/36 20060101AFI20130117BHJP A61K 35/14 20060101ALI20130117BHJP A61P 1/04 20060101ALI20130117BHJP A61P 29/00 20060101ALI20130117BHJP A61P 19/02 20060101ALI20130117BHJP B01D 15/00 20060101ALI20130117BHJP B01J 20/26 20060101ALI20130117BHJP JPA61M1/36 545A61M1/36 555A61M1/36 547A61K35/14 CA61P1/04A61P29/00 101A61P19/02B01D15/00 KB01D15/00 101BB01J20/26 H A61M 1/36 A61K 35/14 A61P 1/04 A61P 19/02 A61P 29/00 B01D 15/00 B01J 20/26 特開2002−172163(JP,A) 特開平10−147518(JP,A) 特開2003−111834(JP,A) 特許第4997770(JP,B2) 特許第4110806(JP,B2) 特許第5017996(JP,B2) 国際公開第2001/66171(WO,A1) 特許第4866535(JP,B2) 特公平3−3495(JP,B2) 特許第4982100(JP,B2) 9 JP2007069021 20070928 WO2008038785 20080403 26 20100914 石田 宏之 本発明は、新規な吸着カラム、特に血液を循環して使用する血液処理カラムに適した吸着カラムに関するものである。特定量の吸着体をカラムに組み込み、十分な量の白血球を除去可能な、コンパクト性に優れた細胞吸着カラムに関するものである。 近年、様々な血液処理カラムが研究され、例えば、白血球除去や、顆粒球除去を目的としたカラム(特開昭60−193468号公報、特開平5−168706号公報(特許文献1,2))、サイトカイン吸着を目的としたカラム(特開平10−225515号公報、特開平12−237585号公報、特開平10−147518号公報(特許文献3,4,7))、白血球と毒素を同時に吸着することを目的としたカラム(特開2002−113097号公報(特許文献5))等がそれぞれ開発されてきた。これらは、通常、カラム内部にそれぞれ目的とする物質を除去・吸着するための濾過材または吸着担体を有している。これら濾過材または吸着担体としては様々な物質、形状のものが用いられているが、それぞれ一長一短がある。例えば、ポリエステル不織布からなる白血球除去担体(特開昭60−193468号公報(特許文献1))では、複数の繊維径からなる繊維を混合した不織布を作成し、血球の目詰まり解消のため改良が施されているが、不織布自体の嵩密度が高く、血球除去性を制御しきれず、依然として血液循環中の圧損上昇の懸念が問題である。 また、直径2mm程度の酢酸セルロースビーズからなる吸着担体(特許文献2)においては、圧力損失の懸念はあまりないものの、吸着表面積を大きくすることはできず、吸着担体としては非効率的である。かといって、粒子径を小さくすることは圧力損失増加につながるため、採用し難い。 吸着担体の嵩密度は、大きすぎると目づまりしやすく、逆に小さすぎると形態保持性が悪くなるので、0.05〜0.15g/cm3であることが重要であり、好ましくは0.10〜0.15g/cm3であるものが使用されることが開示されている(特開2002−172163号公報(特許文献6))が、0.05〜0.10g/cm3の範囲では特に形体安定性が悪く、0.10〜0.15g/cm3の範囲でもなお実用的ではない。 また従来の細胞吸着カラムは、細胞除去選択性が高いものでは吸着体充填容積が150mlを超える大きなもの(例えば市販のアダカラム(登録商標))しか存在しない。細胞除去選択性の無い、主に濾過機能による細胞吸着カラムでは、吸着体充填容積が小さなものが存在する(例えば、市販のセパセル(登録商標))が、充填された吸着体の表面積は10m2を超え、その表面と細胞の接触による変性や分化誘導などの影響が懸念される。特開昭60−193468号公報特開平5−168706号公報特開平10−225515号公報特開平12−237585号公報特開2002−113097号公報特開2002−172163号公報特開平10−147518号公報 本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、細胞との接触による細胞の変性や分化誘導などの懸念の少ない、吸着体表面積を有し、かつ、吸着体充填容積が小さく、操作性や患者への負担を低減するためのコンパクト性を有した細胞吸着カラムを提供することを課題とする。 また、血液中に存在する細胞、特に顆粒球や単球などの活性化した白血球、ガン細胞などだけでなく、さらに、過剰に存在するサイトカインをも除去できる、圧力損失が少ない細胞吸着カラムを提供することをも課題とする。なお、ここで言う血液とは細胞や血液成分を含む液体を意味する。〔1〕繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維を含み、かつ表面積が0.5m2以上10m2未満である吸着体を充填してなる細胞吸着カラムであって、吸着体充填容積が100ml以下であることを特徴とする細胞吸着カラム。〔2〕 前記吸着体中の繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維からなる部分の嵩密度が0.01g/cm3以上0.15g/cm3以下であることを特徴とする、〔1〕に記載の細胞吸着カラム。〔3〕前記繊維径が3μm以上10μm以下であることを特徴とする、前記〔1〕または〔2〕記載の細胞吸着カラム。〔4〕前記吸着体にアミン残基を結合してなる前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の細胞吸着カラム。〔5〕 サイトカインを吸着することを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の細胞吸着カラム。〔6〕 前記サイトカインはインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGF−β)、血管新生増殖因子(VEGF)および免疫抑制酸性蛋白(IAP)からなる群から選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする前記〔5〕記載の細胞吸着カラム。〔7〕 血液を循環させる用途に用いることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の細胞吸着カラム。〔8〕 ヒト健常者の血液を血流速30ml/分として1時間カラム内を通過させたとき、以下の式(1)および(2)を満たすことを特徴する〔7〕に記載の細胞吸着カラム。2c<a (1)b>106 (2)ここで、a:吸着体単位重量あたりの顆粒球吸着数(個/g)b:吸着体単位重量あたりの単球吸着数(個/g)c:吸着体単位重量あたりのリンパ球吸着数(個/g)〔9〕 健常犬を用いた体外循環試験において、生理食塩水を用いてヘマトクリット値を40%に調節した血液を、30ml/minの速度でカラム内を通過させた際、血液処理量1500ml時のカラム前後における圧力損失が150mmHg以下であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の細胞吸着カラム。〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の細胞吸着カラムを用いて試料中の細胞を吸着することを特徴とする、細胞の吸着方法。〔11〕 前記試料が血液である、〔10〕に記載の細胞の吸着方法。〔12〕 前記細胞が白血球である、〔10〕または〔11〕に記載の細胞の吸着方法。〔13〕 〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の細胞吸着カラムを用いることを特徴とする、白血球除去療法。〔14〕 〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の細胞吸着カラムを用いることを特徴とする、潰瘍性大腸炎、クローン病、または慢性関節リウマチの治療法。 本発明により、細胞との接触による細胞の変性や分化誘導などの懸念の少ない、吸着体表面積を有し、かつ、吸着体充填容積が小さく、操作性や患者への負担を低減するためのコンパクト性を有した細胞吸着カラムを提供するが可能となった。また、血液中に存在する細胞、特に顆粒球や単球などの活性化した白血球、ガン細胞などだけでなく、さらに、過剰に存在するサイトカインをも除去できる、圧力損失が少ない細胞吸着カラムを提供することが可能となった。図1は、本発明の細胞吸着カラムを例示する縦断面図である。符号の説明1 容器本体2 流入口3 流出口4 フィルター5 仕切板5a 仕切板の開口6 フィルター7 仕切板7a 仕切板の支持突起7b 仕切板の透孔8 パイプ9 流路10 貫通孔11 吸着体Q 血液流れ 本発明における細胞吸着カラムの細胞吸着とは、カラムに流入した血液等の中にある細胞(顆粒球、単球、リンパ球、その他血液細胞、ガン細胞など)が、カラムの中から出てこない場合を意味し、本発明の中では、濾過効果による現象も含んだものとする。すなわち、細胞吸着用途とは、血液等の体液から細胞を吸着し、人体の治療・予防等を行う用途を意味する。 本発明における細胞吸着カラムは、1時間ヒト健常者血液をカラム内を循環させたときの血液からの白血球の吸着数について、以下の式(1)および(2)を満たすものであることが望ましい。2c<a (1)b>106 (2) 上記式(1)および(2)において、a:吸着体単位重量あたりの顆粒球吸着数(個/g)、b:吸着体単位重量あたりの単球吸着数(個/g)、c:吸着体単位重量あたりのリンパ球吸着数(個/g)である。これらの血球吸着数の測定にあたっての血球数の定量、ヘマトクリット値の測定は、シスメックス社XT−1800iV等を用いて行うことが可能である。ここで、顆粒球数は、好中球数を以て計算するものとする。上記式(1)および(2)による評価を目的として本発明の細胞吸着カラムを使う場合、血流速は、30ml/分とする。 上記式(1)および(2)による評価の一例を挙げると以下の通りである。被験体(例えば、ヒト健常者)から直接血液を採取して実験を行う場合、循環開始時5分、15分、30分、60分の4点でカラム通過前後にて採血し(各1ml)、それぞれの血球数を測定する。サンプル採取時間t(分)における血液1ml中の吸着体単位重量あたりの細胞吸着数をDtとして、以下の式により求める。Dt(個/g)=[(カラム循環前の血液1ml中の血球数)−(カラム循環後の血液1ml中の血球数)] 吸着体単位重量あたりの血球の吸着数Dは、以下の式で求める。 D(個/g)=30×(5×D5+10×D15+15×D30+30×D60)/吸着体重量(g) また、血球の吸着数測定にあたり、ヒト血液を用いた本目的の細胞吸着カラム(実カラム)サイズでの実験は倫理上困難なこともあるため、ミニカラム法で、スケールダウンして実施することが望ましい場合がある。その場合、ミニカラムの吸着体充填容積に対し、単位時間あたりの血液と吸着体との接触時間が本発明の細胞吸着カラム(実カラム)の場合の容積に対する接触時間と同等となるように血流速を変更することが適当である。上記式(1)および(2)による評価をミニカラム法により行う場合の一例を挙げると以下の通りである。実カラム(内直径36mm、吸着体充填容積70ml程度であり、かつラジアルフロータイプのカラム)をスケールダウンして血球の吸着数を求めるとする。吸着体を直径1cmの円板状に切り抜き、充填容積2mlの円筒状カラム(内径1cm)に積層して充填する。このカラムを用い、血液としてはヘパリン採血(ヘパリン濃度:10U/ml)したヒト健常者の血液25mlを通過させて、スケールダウン評価を行う。この円筒状カラムの吸着体充填容積に対する単位時間辺りの血液と吸着体との接触時間が実カラムと同等となるように血流速を選定すると、0.86ml/分となる。 吸着体を直径1cmの円板状に切り抜き、充填容積2mlの円筒状カラム(内径1cm)に積層して充填する。このカラムを用い、37℃で1時間、ヘパリン採血(ヘパリン濃度:10U/ml)したヒトの血液25mlを0.86ml/分で循環した後、循環開始時(0分)と、循環終了時(1時間)において各1mlの血液を採取し、血球の組成から血球数を測定する。サンプル採取時間t(分)における血液1ml中の吸着体単位重量あたりの細胞吸着数をDtとして、吸着体単位重量あたりの血球の吸着数D’を以下の式で求める。 D’(個/g)=25×(D0−D60)/吸着体重量(g) 本発明においては、上記2方法にてa,b,cを求めることが可能である。式(1)については、a/2cが1を越える(a/2c>1)と言い換えることもできるが、a/2cについては、小数点以下第2位を四捨五入して求めるものとする。また、bは、上記いずれかのスケールの実験において式(2)を満たせばよいものとする。 本発明の細胞吸着カラムにおいて、式(2)の単球吸着数bが106個を超えることが望ましい理由は下記の通りである。すなわち、特に炎症性疾患においては増加した単球が、免疫担当細胞の活性化に密接に影響していることがわかっていることから、この単球を血液中から除くことが好ましいことに因る。吸着体単位重量(g)あたり106個未満しか除去できない場合は、残存する単球が多く、炎症等を十分に抑える作用が低下するため、好ましくない。 また、リンパ球吸着数は顆粒球吸着数より少ないことが望まれる。これは、リンパ球が抗体産生、情報記憶や情報伝達に重要な役割を持っているためである。ヒト健常者においては、血液中の顆粒球とリンパ球の数の比は、ほぼ同等から顆粒球が数倍までと、個人差があるが、本発明の細胞吸着カラムを用いた場合の吸着体単位重量あたりの顆粒球吸着数とリンパ球吸着数は、上記の式(1)の関係を満たすことが好ましく、式(1)の代わりに4c<aを満たすことがより好ましい。本発明で言うリンパ球とは、いわゆるリンパ球の総称である。すなわち、シスメックス社製XT−1800iVを用いて行った細胞分類に準じ、B細胞やT細胞などを区別したものではない。 細胞吸着カラムにおいては、吸着体の充填容量を大きくすると、一度に扱う血液量が増えることから操作性が悪くなり、また血液のカラム内での滞留時間が増えることから、吸着体との接触による血液に対する変性や分化誘導などの懸念が生じる。本発明の細胞吸着カラムは、吸着体充填容積が100ml以下であること、カラムに充填する吸着体は繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維を含むこと、および吸着体の表面積が0.5m2以上10m2未満であることを特徴とするので、これにより上述の問題点が解消される。 吸着体充填容積の下限については、吸着体の充填量にもよるが2ml以上とすることが好ましく、血液を通過させた場合の目詰まり防止の観点から、5ml以上が好ましい。さらに安全のためには10ml以上が好ましい。 また、本発明の細胞吸着カラムのサイズは特に制限はない。しかし、いくらコンパクトな細胞吸着カラムであっても単位血液量を処理する際の使用本数が増えるのでは効率的ではない場合がある。すなわち、本発明の細胞吸着カラムを工業的、産業的に利用する場合には、カラムを通過させることができる血液量が一定量以上あることが有利である。具体的には、あるカラムが、実質的な圧力損失でのカラム圧の上昇により溶血などの悪影響を起こすことなく細胞を除去する処理を行える血液の総量を血液処理量と表現した場合に、本発明の細胞吸着カラムの血液処理量が1500ml以上であることが望ましい。さらに効率化のためには1800ml以上更に2000ml以上が安全のためより好ましい。血液処理量の判定は、所定の血液量をカラムに通過させた際のカラム前後(カラムの入口および出口)での圧力損失によることができる。例えば健常犬を用いた体外循環試験において、生理食塩水を用いてヘマトクリット値を40%に調節した血液を、30ml/minの速度で血液処理量が1500ml通過させた時の圧力損失が150mmHg以下であることが好ましい。健常犬とは健常な状態の犬を意味し、健常であることは1週間の事前飼育期間の後、体重減少がないことにより確認できる。また、イヌとしては実施例で用いている体重9〜12kgのオスを用いることができ、犬種としても特には限定はないがビーグル犬などを用いることができる。 上記について、より詳細に述べる。単球は、異物認識能が強いため、カラム内における吸着体の表面積が大きいことがその除去のためには有利に働くので、表面積を大きくする方法が単球除去には一見有効に見える。しかし、単に吸着体の充填量を増やすと、血液循環時のカラム中の目詰まりの危険が増大する。また、それを防ぐためにカラムの充填容積を大きくし過ぎることは、吸着体と細胞との接触による細胞の変性や分化誘導などの懸念が生じるので、採用し難い。これに対し、本発明の細胞吸着カラムにおいては、吸着体に含有される繊維の繊維径が0.5μm以上10μm以下に制御されているので、単球の持つ異物認識力を効果的に利用し、また、顆粒球の貪食作用をも有効に利用できる。このため、単球の吸着数とリンパ球の吸着数との差が大きいカラムとなり、その結果として吸着体充填容積が100ml以下のコンパクトなカラムとした場合にも、必要とされる異物認識能を有する細胞吸着カラムを実現することが可能となる。また、単球の異物認識力や貪食能は、生体中では0.5μm以上10μm以下の大きさの物質に対してより強く働くことからも、本発明の細胞吸着カラムの吸着体を構成する繊維としては、異物の大きさを模したこの範囲の繊維径を有する繊維を用いることが好ましい。しかし、繊維径が細いと、繊維自体の弾性不足から、繊維自体の分散が悪くなり、単球や顆粒球が認識すべき物質として有効に働くことができなくなるおそれがある。そのため、吸着性能安定化のためには、吸着体の繊維の繊維径は3μm以上10μm以下であることがより好ましい。これは、リンパ球の吸着数との差をより大きくするためにも好ましい。 ここで、本発明における繊維径とは、繊維断面の直径をいう。繊維径は吸着体からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−5400LV等)で1000〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入し算出する。 かかる繊維径を有する繊維について、これを含むものを吸着体としてカラム容器に充填したときの表面積は10m2未満であることが好ましい。これは、前述のように吸着体と細胞との接触による細胞の変性や分化誘導などの懸念が生じるためである。さらに安全のためには、表面積は8m2未満であることが好ましい。また、充填した吸着体の表面積は、0.5m2以上であることが必要である。これ未満では、単球の吸着数を106個以上にすることはできない。さらに安定に106個以上の単球を吸着させるためには、1.0m2以上であることが好ましい。 ここで言う表面積の評価方法としては、水銀ポロシメトリー法を用いることが簡便である。本発明では、圧力は0.4〜3000psiaの範囲を測定する。その他、BET法を用いても測定できる。 また、本発明でいう吸着体充填容積とは、細胞吸着カラムの中で、吸着体を充填する空間全体の容積をいう。言い換えれば、血液流入、流出口を閉じた状態での内容積全体を意味し、吸着体やフィルター等の充填物を除いた状態で細胞吸着カラム内(主にカラム容器内)に充填できた比重既知の水等の量から求めることができる。また、充填物を取り除けない場合は、カラム容器の内腔の形状を詳細に測定し、計算で求めることもできる。 本発明の細胞吸着カラムは、上述した吸着体をカラム容器に充填することによって製造することができる。カラム容器としては、公知の血液処理等に用いるカラムの容器を、吸着体充填容積などにあわせたものを適宜選択して用いることができる。カラムの構成としては、(1)吸着体を平板状に形成したものを重ねて充填したカラム、(2)吸着体が円筒形状に巻かれてなる円筒状フィルターが両端部に血液入口と血液出口とを有する円筒容器に納められているカラム、また、(3)吸着体が中空円筒状にまかれてなる中空円筒状フィルターがその両端部を封止された状態で血液入口と血液出口とを有する円筒状容器に納められ、かつ容器の血液出口は前記中空円筒状フィルターの外周部に通じる部位に設けられ、容器の血液出口は前記中空円筒状フィルターの内周部に通じる部位に設けられているカラム、が好ましい。そのなかでも、(3)円筒中空状フィルターを用いるカラムは、血液中の細胞の大部分が、円筒形状フィルターの外周部の大きな面積の不織布によって迅速に除去され、除去されずに残ったわずかな細胞も、中空円筒状フィルターの内周部における小さな面積の不織布によって十分に除去されるというように、効率的な細胞吸着が可能であるので、最も好ましい。 本発明の細胞吸着カラムが顆粒球、単球等の細胞を効率よく吸着除去させるためには、吸着体を構成するポリマーは水不溶性担体であることが好ましい。この場合も、吸着体に含まれる繊維や中空糸繊維の繊維径は上述のように0.5μm以上であることが好ましい。これより径が小さくなると、繊維の腰がなくなり、繊維同士で形成される空隙を安定に確保できなくなり、その結果、リンパ球の吸着除去が多くなるため、メモリーセルの除去に繋がり好ましくない。ただし、リンパ球の吸着除去率を抑制するためには、繊維径のより好ましい範囲は3μm以上であり、更に好ましい範囲は4μm以上である。さらに、リンパ球の除去率をより抑え、かつ顆粒球や単球の除去率低下につながらないようにする観点からは、繊維の径を5μm以上とすることがより好ましいこともある。しかしながら、繊維の径が8μmを超える場合は、顆粒球、単球の除去率が低下傾向を示し、繊維の径が10μmを超えると顆粒球や単球の除去率が低下してしまうため、性能低下が起こる。実用上の観点からは繊維の径が20μm以下であることが好ましい。 水不溶性担体として好ましい素材は、疎水性繊維、すなわち、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンをはじめとするフッ素化ポリマである。また、後述の通り、表面修飾により各種アルキル基や芳香環などを付加して疎水性部位を設けたものを用いることもできる。アミン残基が固定化されるポリマとして好適なものの具体例としては、ポリ(p−フェニレンエーテルスルホン):−{(p−C6H4)−SO2−(p−C6H4)−O−}n−やユーデル・ポリスルホン:−{(p−C6H4)−SO2−(p−C6H4)−O−(p−C6H4)−C(CH3)2−(p−C6H4)−O}n−のほか、−{(p−C6H4)−SO2−(p−C6H4)−O−(p−C6H4)−O}n−、−{(p−C6H4)−SO2−(p−C6H4)−SO2−(p−C6H4)−O}n−、−{(p−C6H4)−SO2−(p−C6H4)−O−(p−C6H4)−C(CF3)2−(p−C6H4)−O}n−などで代表されるポリスルホン系重合体、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、アクリルポリマなどで、かつ、後述するアミン残基を共有結合で固定化できる反応性官能基を持つものが簡便に使用される。そのなかでも、ポリスチレンやポリスルホン系重合体は安定性が高く、また形状保持性が良いので好ましく用いられる。 具体的な例としては、前述した反応性官能基を結合させたクロルアセトアミドメチル化ポリスチレン、クロルアセトアミドメチル化したユーデル・ポリスルホン、クロルアセトアミドメチル化したポリエーテルイミドなどが使用される。さらに、これらのポリマは有機溶媒に対し可溶であるものが、コーティング工程の採用が可能など成型のしやすさの上から、特に好ましく使用される。 本発明で用いる吸着体としては、吸着体を構成するポリマー(例えば上記水不溶性担体)に、官能基としてアミン残基が結合してなるものが好ましい。中でも、4級アンモニウム基もしくは直鎖状アミノ基またはこれら両方の基(以下、4級アンモニウム基等という。)を固定化したものが好ましい。これらの官能基は、吸着体を構成する水不溶性担体に結合することが好ましい。4級アンモニウム基等を水不溶性担体に固定化するための反応性官能基としては、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基、酸無水物基などをあげることができるが、とりわけ、活性ハロゲン基が好ましい。中でも、ハロアセチル基は、製造が容易な上に、反応性が適度に高く、4級アンモニウム基等の固定化反応が温和な条件で遂行できると共に、この際生じる共有結合が化学的に安定なので好ましい。 4級アンモニウム基等とは、4級アンモニウムおよび/または第1〜3級アミノ基を意味する。1〜3級アミノ基としては、炭素数で言うと、窒素原子1個当たり炭素数18以下であるものが反応率向上のために好ましい。さらに、1〜3級アミノ基の中でも、窒素原子1個当たり炭素数3以上18以下、とりわけ、4以上14以下のアルキル基を持つ第3級アミノ基がポリマーに結合(固定化)してなる吸着体が、サイトカイン吸着性の観点で優れている。そのような第3級アミノ基の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N、N−ジメチルヘキシルアミン、N、N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N−メチル−N−エチル−ヘキシルアミンなどがあげられる。また、直鎖状アミノ基を有する化合物の例としては、テトラエチレンペンタミン等があげられる。これらアミノ基については、一部分岐がある構造のものも含む。 本発明における4級アンモニウム基等の吸着材への結合の密度は、水不溶性担体等の吸着材を構成するポリマーの化学構造および用途により異なるが、少なすぎるとその機能が発現しない傾向にある。一方、多すぎると、固定化後の担体の物理的強度が悪くなり、吸着体としての機能も下がる傾向にある。よって、該密度は水不溶性担体の繰り返し単位あたり0.01〜2.0モル、より好ましくは0.1〜1.0モルが良い。なお、4級アンモニウム基等を固定化させる(4級化)方法としては、ヨウ化カリウムを触媒とする反応がよく用いられるが、これに縛られずに公知の方法によることが可能である。 本発明において、上述のような4級アンモニウム基等のアミン残基を水不溶性担体等に結合させる方法は特に上述の反応に限定されない。例えば、4級アンモニウム基等のアミン残基を含むポリマを溶媒、たとえば塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,Nージメチルホルムアミドなどに溶かし、この溶液に水不溶性担体からなる不織布を浸したのち、該溶媒を蒸発させることにより容易に製造される。 一方、本発明の吸着体は、水不溶性担体等の吸着材を構成するポリマーに対し、上述のように官能基を固定化させると共に、またはこれに代えて、疎水性部位を付与したものであってもよい。疎水性部位は、例えばアルキル基(エチル基、オクチル基、ヘキシル基、ラウリル基など)、芳香環を含む基などであり、ポリマーに対し有機反応で付与導入することができる。 本発明の細胞吸着カラムは、サイトカインを吸着することができる。サイトカインとは、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGF−β)、血管新生増殖因子(VEGF)および免疫抑制酸性蛋白(IAP)からなる群から選ばれる少なくとも1種のサイトカインであり、2種以上の組み合わせであってもよい。これらは、すべて白血球除去療法適用が考えられている、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性関節リウマチなどでその病態への関与が指摘されているサイトカインである。 本発明の細胞吸着カラムにおいては、これらのうち吸着すべきサイトカインの種類によって、吸着体に固定化する4級アンモニウム基等のアミン残基を適宜選択すればよい。たとえば、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGF−β)、血管新生増殖因子(VEGF)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)などを標的とする場合は、N、N−ジメチルヘキシルアミン、N、N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミンなどを吸着体に固定化すると、得られる細胞吸着カラムに吸着性を付与することができる。また、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、活性型トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)などを標的とする場合は、アミン成分としてテトラエチレンペンタミンを吸着体に固定化することで、得られる細胞吸着カラムに吸着性を付与できる。また、複数の種類の官能基を組み合わせて固定化することもでき、たとえば4級アンモニウム塩および直鎖状アミノ基の両方を用いることも可能である。複数の種類の官能基を組み合わせて用いることにより、吸着されるサイトカインの種類に幅をもたせることができるために好ましく、所望のサイトカイン吸着特性を高めるなどの利点がある。 前述の通り、本発明において、吸着体の形状としては特に限定はないが、カラムとして用いる場合には、繊維、膜、中空糸が好ましく、さらに、形態としては繊維を編織した編地、織物や不織布等の繊維構造物が好ましい。吸着体がそれのみで形態保持できれば単独での使用も可能であるし、形態保持性が低ければ適当な基材にコーティングなどの方法で固定したり、他の吸着体と混合して一つのカラムとして用いることもできる。固定化あるいは混合などの操作は、上記形状に加工する前に行ってもよい。 本発明において不織布は、単独繊維から製造されるものであってもよいが、特に海島型複合繊維から製造されるものが好ましい。すなわち、かかる複合繊維を用いて公知の方法によって不織布にしてから、この不織布を、形態保持性を向上させるため、および嵩密度を調整するために、ニードルパンチした後、海成分を溶解することによって、容易に製造することができる。 本発明の吸着体の製造方法について、吸着体の形態として不織布を例に取り擬態的に説明する。繊維径の異なる複数種類の繊維を材料として用いる場合は、目的の混合比率になるよう計量し、混合した状態でカードを通過させ相互に十分分散させ綿状にする。 この綿状物を目標の目付になるよう秤量後クロスラッパーに通しニードルパンチして不織布を作成する。また、形態安定化のため、この不織布と、別途作製したネットを、サーマルボンド法、カレンダー法、ニードルパンチ法等の公知のウエブ接着方法で積層構造とすることもできる。また、積層構造にするためのより好ましい方法は、あらかじめ、プレパンチングを施した綿状物を作成し、その間にネットを挟み込んでパンチングして不織布−ネット−不織布の層構造を有する吸着体を作製する方法であり、簡便であるため、連続生産に適している。なお、プレパンチングした綿状物の片面にネット1枚を載せた2層構造のものを積層して多層構造の吸着体を製造することも可能である。ネットとの2層以上の構造とすることで形態保持性の向上が改善される。不織布とネットの2層構造でもよく、不織布の間にネットを挟み込んだ形状、すなわち不織布−ネット−不織布のサンドイッチ構造をとることがより好ましい。もちろん、吸着体の嵩密度を考慮し、被処理媒体を通過させたときの吸着体前後での圧力損失に影響のない範囲でさらに多層構造とすることも可能である。 本発明におけるネットの素材としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)などの公知のポリマーを使用することができる。後述するように、不織布と一体化した後に官能基導入のための有機合成反応に供する場合は、用いる溶媒の種類や、反応温度に応じて適宜素材を選択すればよい。特に、生体適合性の面や、耐蒸気滅菌性の面からは、PPが特に好ましい。放射線滅菌を行う場合にはポリエステルやポリエチレンが好ましい。 複数の繊維が合糸された糸や紡績糸によってネット構造が形成されていると、合糸された糸状間等を血液などの被処理媒体が通過することによる圧力損失上昇の懸念があるため、ネットはモノフィラメントで形成されていることが好ましい。またモノフィラメントであれば、1本あたりの機械的な強力も保持しやすい。 モノフィラメントの直径は好ましくは50μm以上1mm以下であり、同様にネットの厚みは好ましくは50μm以上1.2mm以下である。これ以上大きな範囲でも可能であるが、単位体積あたりの吸着体そのものの分量を減らすことになり、好ましくはない。 ネットの構成としては、特に限定されず、結節網、無結節網、ラッシェル網等を用いることができる。ネットの網み目の形状(空隙形状)も特に限定されず、長方形、菱形、亀甲形等を用いることができる。さらに、ネットの構成材の不織布に対する位置的な関係を、例えばネットの空隙形状が四角形の場合、ネット及び不織布の主面からみて、不織布の長軸または短軸方向に対し角度90度±10度の方向をなすようにネットを不織布に積層することが好ましい。これにより、不織布を積層したときの強度や、ハンドリング性能がより向上し、製造時の収率(歩留まり)も向上する。 ネットを用いることで、不織布により形態保持性を付与することができ、嵩密度が小さくても形態の安定した吸着体とすることができる。なお、ネット自体が被処理媒体の圧力損失に影響を与えるので、ネットとしてはなるべく開孔部が大きい方が望ましい。このためには任意の100mm2中に、10mm2以上の空隙を有するものであることが望ましく、特に好ましくは、3mm角程度の開孔部を有するものであると、形態保持性も良好となり、好適に使用できる。 また、吸着材の形態は特に不織布とすることが好ましいが、その場合、不織布の嵩密度は、大きすぎると目づまりしやすく、逆に小さすぎると形態保持性が悪くなるので、0.02〜0.15g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.15g/cm3であるものが使用される。吸着体のうち繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維部分の嵩密度は、0.01g/cm3以上であることが好ましく、0.03g/cm3以上であることがより好ましい。また目詰まりを防ぐためには0.15g/cm3以下であることが好ましく、0.13g/cm3以下であることがより好ましい。ここで言う嵩密度とは、フエルト状に加工したシートであり、所望の官能基導入反応等を実施して得られるシート状物など、最終段階における吸着体の嵩密度を指す。嵩密度を大きくすると白血球や細胞などの大きな物質を濾過する能力が向上するが、大きすぎると血液循環時に目詰まりしやすくなるため、前記の範囲が好ましい。 嵩密度の測定は、例えば以下のようにして行うことができる。吸着体を3cm角の正方形の小片に切断後、5cm角で1mm厚のポリプロピレン(PP)製の板を厚み方向に重ねるように上から載せた状態で吸着体の厚みを測定し、板を外して再度載せてから吸着体の厚みを測定する。以上の操作を5回繰り返し、その平均値を厚みとする。この小片の重さを、前記厚みより算出した体積で割ることで嵩密度を求める。以上の嵩密度測定を5サンプルで実施し、平均値を嵩密度とする。ネットを有する場合は上記の方法でネットを有する小片について厚みを測定して算出した体積と、小片の重さから繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維の重量およびネット重量を差し引いた重量とから、同様に嵩密度を計算して求める。尚、カラム容器に吸着体を充填する際は、嵩密度が変化しないよう充填することが必要である。 カラムを通過させる血液量が1500ml以上まで目詰まりが生じないこととは、上述の嵩高さの制御によって実現できる。 さらに本発明の細胞吸着カラムの利用について、一例を挙げて説明する。本発明のカラムは、流入口と流出口を有する容器からなり、その容器内に細胞吸着用の吸着体が充填され、該細胞吸着用の吸着体に接触前又は接触後の血液を誘導する流路を有するように構成されている。流路は流入口および流出口のいずれにも連通しており、流入口から流入した体液が流路を経由し、その前後のいずれかで細胞吸着用の吸着体に接触し、流出口から流出するようになっている。 これらの流入口と流出口とは、体外循環して用いる細胞吸着カラムに体液を流入・流出させる手段であり、体外循環の治療に使用するとき循環系の回路に接続される部位になる。形状は特に限定されるものではないが、体外循環用の回路を形成するチューブに接続できる形態であることが望ましい。さらに好ましくは、コネクター形状を有し、回路チューブとの着脱が容易になっていることが望ましい。 上記流路は血液をカラムの内部に導くか、若しくは、カラムに供給された血液をカラム外に導き出す作用を有し、その誘導作用により血液を細胞吸着用の吸着体に均一に供給し、接触させるようにする。この誘導用の流路を有しないカラムの場合には、細胞吸着用の吸着体の充填態様によっては偏流を発生する場合がある。偏流が発生すると、浄化用充填材に体液を均一に接触させることができなくなり、浄化能力を低下させる原因になる。 流路の形状は、体液の誘導作用を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、断面形状が円形、四角形、三角形、その他の多角形の断面を有するパイプやそれを組み合わせた形状のパイプ、細い棒を井形に組んで積み上げた形状体、中空糸を束ねた集束体、一度パイプの周囲に塗り固めて流路を形成した後、そのパイプを抜き取った後の空間などを挙げることができる。流路の長手方向の形状としては、体液の滞留などを生じないようにするために直線状に真っ直ぐなものが好ましい。また、流動方向に沿って緩やかにテーパーのついている形状が好ましい。 本発明の細胞吸着カラムの内部の構成の一例を、図1にそって説明する。図1において、1は容器本体であり、その長手方向の前端と後端とに流入口2と流出口3とを設けている。流入口2の内側には、フィルター4と円板状の仕切板5が設けられ、また、流出口3の内側には、フィルター6と円板状の仕切板7が設けられている。 2枚の仕切板5,7のうち、前側(流入口側)の仕切板5には中心部に開口5aが設けられ、また後側の仕切板7の中心部には支持突起7aが設けられている。また、仕切板7の外周には、多数の透孔7bが周方向に間欠的に設けられている。さらに仕切板5の開口5aと仕切板7の支持突起7aとの間に、1本のパイプ8が掛け渡されている。 上記パイプ8は血液を誘導する流路9を内側に形成し、かつ周壁に多数の貫通孔10を設けている。また、パイプ8は前端を仕切板5の開口5aに連通させると共に、後端を仕切板7の支持突起7aにより閉止している。このパイプ8の外周に、吸着体11が何重にも複数層に巻き付けられている。 この細胞吸着カラムを循環法に使用するときは、流入口2と流出口3に、血液プールとの間に循環回路を形成したチューブを連結し、その血液プールから取り出される血液を流入口2に供給し、内部の吸着体11で有害物質を除去して流出口3から流出し、再び血液プールに戻すように循環させる。 カラム内では、流入口2からフィルター4を経て流路9に侵入した血液は、流路9を移動しながら貫通孔10から順次吸着体11に浸入し、半径方向のいずれかへ移動しながら細胞などを吸着する。細胞などが除去された血液は、仕切板7の外周の多数の透孔7bから流出し、フィルター6を経て流出口3から流出する。 上記の例では血液が開口5aからパイプ8内の流路9を流動しながら貫通孔10から流出するが、本発明の細胞吸着カラムにおける血液の移動方向は、上記とは逆にして、流出口3から血液を供給し、流入口2から流出させるようにしてもよい。 以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、発明の内容が実施例に限定されるものではない。 以下の実施例における評価項目および測定・算出条件について先に説明する。(血球数の測定) 血液中の血球数の定量、ヘマトクリット値の測定は、シスメックス社XT−1800iVを用いて行った。ここで、顆粒球数は、好中球数を以て計算した。(サイトカイン吸着評価) サイトカイン吸着評価は、牛胎仔血清にヒト天然型IL−1、IL−6を添加し、それぞれ500pg/mlに調製した。この血清に吸着体を添加し、37℃2時間で振とうし、上清を採取し、サンプルとした。吸着体:血清量=30mg:1mlの固液比で統一し、振とう前後のサイトカイン量を下記の式により求めサイトカイン吸着率(除去率)を測定した。定量はEIA 法を用い、市販のキット(IL−1:R&D System社製ヒトIL−1βELISAキット、IL−6:鎌倉テクノサイエンス製)を用いて行った。 サイトカイン吸着率(%)=[(振盪前の血清中のサイトカイン濃度)−(振盪後の血清中のサイトカイン濃度)]/(振盪前の血清中のサイトカイン濃度)×100(繊維径の測定) 不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−5400LV)で1000〜3000倍の写真を撮影した。各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維を選び、各繊維の直径を写真を基に測定し、それらの平均値を算出し小数点以下第一位を四捨五入して繊維径とした。(表面積の測定) カラム容器に充填された吸着体の表面積の評価方法としては、水銀ポロシメトリー法を用いた。圧力範囲は0.4〜3000psiaとして測定した。乾燥した吸着体を秤量し、装置は、マイクロメリテックス社製ポアサイザー9320を用いた。(嵩密度の測定) 作製例にて作製した吸着体を任意の3cm角の正方形の小片に切断後、5cm角で1mm厚のPP製の板を厚み方向に重ねるように上から載せた状態で吸着体の厚みを測定し、板を外して再度載せてから吸着体の厚みを測定した。こうして測定を5回行い、それらの平均値を厚みとした。この小片の重さを、前記厚みより算出した体積で割ることで嵩密度を求めた。以上の嵩密度測定を、各吸着体につき5サンプルで実施し、その平均値を嵩密度とした。ネットを有する場合は上記の方法でネットを有する小片について厚みを測定して算出した体積と、小片の重さからネット重量を差し引いた重量とから、同様に嵩密度を計算して求めた。(吸着体充填容積の測定) 吸着体充填容積(表中では「充填容積」と略記する。)とは、細胞吸着カラムの中で、吸着体を充填する空間全体の容積をいう。言い換えれば、血液流入、流出口を閉じた状態での内容積全体を意味し、吸着体やフィルター等の充填物を除いた状態で充填できた比重既知の水の量から求めた。(吸着体単位重量あたり血球の吸着数の測定−循環法) 細胞吸着カラムを用いて、体重が約10kg(9〜12kg)の健常なイヌ(犬種:ビーグル犬、性別:オス、年齢:半年〜2歳。尚、購入後1週間飼育し体重減少がないことを確認した。)に対し、血液のヘマトクリット値を40%になるよう生理食塩水を輸液し、血流速30ml/分で体外循環試験を行った。循環開始時5分、15分、30分、60分の4点でカラム前後で採血し(各1ml)、(血球数の測定)に記載した方法で血球数を測定した。サンプル採取時間t(分)における血液1ml中の吸着体の単位重量あたりの細胞吸着数をDtとして、以下の式で求めた。Dt(個/g)=[(カラム循環前の血液1ml中の血球数)−(カラム循環後の血液1ml中の血球数)] 吸着体単位重量あたりの血球の吸着数Dは、以下の式で求めた。 D(個/g)=30×(5×D5+10×D15+15×D30+30×D60)/吸着体重量(g) なお、後述の実施例ではカラム前後の圧力損失を、血液処理量1500ml、1750mlの時点で測定した。(吸着体単位重量あたり血球の吸着数の測定−ミニカラム法) ミニカラム法により、スケールダウンして実施した。カラムサイズに合わせ、血流速を実カラム(吸着体充填容積100ml相当)使用時の30ml/分に相当する0.65ml/分に設定した。 吸着体のそれぞれ所定量を内容積2mlの円筒状カラム(内径1cm)に直径1cmの円板状に切り抜き、積層して充填し、37℃で1時間、ヘパリン採血(ヘパリン濃度:10U/ml)した健常者ボランティアの血液25mlを0.65ml/分の血流速で循環した後、循環開始時(0分)と、循環終了時(1時間)において各1mlの血液を採取し、血球の組成を(血球数の測定)における方法で測定した。サンプル採取時間t(分)における血液1ml中の細胞吸着数をDtとして、以下の式で求め、吸着体単位重量あたりの血球の吸着数D’は、以下の式で求めた。 D’(個/g)=25×(D0−D60)/吸着体重量(g) 本試験法は、循環法のスケールダウン実験と位置づけ、充填容積100mlとした場合の、吸着体表面積を、本試験に使った吸着体表面積の50倍としてあつかった。 上記2方法のいずれかにて前記式(1)及び式(2)におけるa,b,cを求めた。式(1)のa/2cについては、小数点以下第2位を四捨五入して求めるものとした。[作製例1:吸着体1ないし4の作製](不織布1、2) 36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを、次の成分を用いて、紡糸速度850m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。島の芯成分;ポリプロピレン島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3重量%含む共重合ポリエステル(PETIFA)複合比率(重量比率);芯:鞘:海=41:41:18 この繊維30重量%(直径30μm)と、直径22μmのポリプロピレン70重量%からなるシート状物を作製した後、ニードルパンチすることによって不織布を得た(不織布1)。同様にこの繊維68重量%(直径30μm)と、直径22μmのポリプロピレン32重量%からなるシート状物を作製した後、ニードルパンチすることによって不織布を得た(不織布2)。(脱海不織布1、2) 次に、この不織布1、2をそれぞれ90℃水酸化ナトリウム水溶液(3重量%)で処理して、海成分のPETIFAを該水溶液に溶解させた。これにより、不織布1から芯鞘繊維の直径が4μmで、嵩密度が0.05g/cm3(総目付250g/m2)の脱海不織布1を作製し、不織布2から芯鞘繊維の直径が4μmで、嵩密度が0.05g/cm3(総目付250g/m2)の脱海不織布2を作製した。(中間体1、2) 次に、ニトロベンゼン1200mLと硫酸780mLの混合液にパラホルムアルデヒド6gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、151.8gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに20gの上記脱海不織布1、2を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取り出し、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。洗浄後の繊維をメタノールでよく洗った後、水洗し、乾燥した。こうして、脱海不織布1から24gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体1)を作製し、脱海不織布2から26.8gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体2)を作製した。(吸着体1、2) N,N−ジメチルオクチルアミン100gとヨウ化カリウム16gを720mLのN,Nジメチルホルムアミド(以下DMFと略す。)に溶かした溶液に10gの中間体1、2をそれぞれ浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。加熱後の繊維をメタノールで洗浄し、1mol/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、真空乾燥した。こうして、中間体1から13.4gのジメチルオクチルアンモニウム化繊維(吸着体1)を、中間体2から15.8gのジメチルオクチルアンモニウム化繊維(吸着体2)を得た。(吸着体3、4) また、テトラエチレンペンタミン6.3g、n−ブチルアミン7.2gをDMF500mlに溶解した液に、10gの中間体1、2をそれぞれ浸し、反応は30℃で3時間行い、DMFで洗浄した後で水洗し、真空乾燥することにより、中間体1から13.9gのテトラエチレンペンタミン化繊維(吸着体3)を、中間体2から16.6gのテトラエチレンペンタミン化繊維(吸着体4)を得た。[作製例2:吸着体5、6の作製](不織布3、4) 36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを、次の成分を用いて、紡糸速度850m/分、延伸倍率2倍の製糸条件で得た。島の芯成分;ポリプロピレン島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%海成分;PETIFA複合比率(重量比率);芯:鞘:海=41:41:18 この繊維30重量%(直径40μm)と、直径22μmのポリプロピレン70重量%からなるシート状物を作製した後、ニードルパンチすることによって不織布を得た(不織布3)。同様にこの繊維68重量%(直径40μm)と、直径22μmのポリプロピレン32重量%からなるシート状物を作製した後、ニードルパンチすることによって不織布を得た(不織布4)。(脱海不織布3、4) 次に、この不織布3,4をそれぞれ90℃水酸化ナトリウム水溶液(3重量%)で処理して、海成分のPETIFAを該水溶液に溶解させた。これにより、不織布3から芯鞘繊維の直径が8μmで、嵩密度が0.13g/cm3(総目付250g/m2)の脱海不織布3を作製し、不織布4から芯鞘繊維の直径が8μmで、嵩密度が0.13g/cm3(総目付250g/m2)の脱海不織布4を作製した。(中間体3、4) 次に、ニトロベンゼン1200mLと硫酸780mLの混合液にパラホルムアルデヒド6gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、151.8gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに20gの上記脱海不織布3、4を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取り出し、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。洗浄後の繊維をメタノールでよく洗った後、水洗し、乾燥した。こうして、脱海不織布3から23.7gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体3)を作製し、脱海不織布4から27.1gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体4)を作製した。(吸着体5、6) N,N−ジメチルヘキシルアミン100gとヨウ化カリウム16gを720mLのDMFに溶かした溶液に10gの中間体3、4をそれぞれ浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。加熱後の繊維をメタノールで洗浄し、1mol/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、真空乾燥した。こうして、中間体3から12.8gのジメチルヘキシルアンモニウム化繊維(吸着体5)を、中間体4から14.3gのジメチルヘキシルアンモニウム化繊維(吸着体6)を得た。[作製例3:吸着体7、8の作製](不織布5、6) 36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを、次の成分を用いて、紡糸速度880m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。島の芯成分;ポリプロピレン島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%海成分;PETIFA複合比率(重量比率);芯:鞘:海=41:41:18 この海島複合繊維30重量%(直径30μm)と、直径22μmのポリプロピレン70重量%とをタフトブレンダーを用い十分に混合分散して、カードを通過させシート状物を作製した。その後、開孔部が2mm角のポリエステル製ネット(厚み0.4mm、モノフィラメントの径0.3mm、目付75g/m2)を、シート状物の両端軸に対しネットの繊維方向が5度を為すようシート状物の間に挟み、クロスラッパーに通して目標の目付になるよう秤量後、ニードルパンチした。こうして三層構造からなる不織布を作製した(不織布5)。同様にこの海島複合繊維68重量%(直径30μm)と、直径22μmのポリプロピレン32重量%から三層構造からなる不織布を得た(不織布6)。(脱海不織布5、6) 次に、この不織布5、6をそれぞれ90℃水酸化ナトリウム水溶液(3重量%)で処理して、海成分のPETIFAを該水溶液に溶解させた。これにより、不織布1から芯鞘繊維の直径が4μmで、嵩密度が0.01g/cm3(総目付80g/m2)の脱海不織布1を作製し、不織布2から芯鞘繊維の直径が4μmで、嵩密度が0.05g/cm3(総目付80g/m2)の脱海不織布2を作製した。(中間体5、6) 次に、ニトロベンゼン1200mLと硫酸780mLの混合液にパラホルムアルデヒド6gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、151.8gのN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに20gの上記脱海不織布5、6を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取り出し、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。洗浄後の繊維をメタノールでよく洗った後、水洗し、乾燥した。こうして、脱海不織布5から24gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体5)を作製し、脱海不織布6から26.8gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(中間体6)を作製した。(吸着体7、8) N,N−ジメチルオクチルアミン100gとヨウ化カリウム16gを720mLのDMFに溶かした溶液に10gの中間体5を、 N,N−ジメチルヘキシルアミン100gとヨウ化カリウム16gを720mLのDMFに溶かした溶液に10gの中間体6をそれぞれ浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。加熱後の繊維をメタノールで洗浄し、1mol/L濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、真空乾燥した。こうして、中間体5から13.4gのジメチルオクチルアンモニウム化繊維(吸着体7)を、中間体6から15.8gのジメチルヘキシルアミンアンモニウム化繊維(吸着体8)を得た。[作製例4:吸着体9、10の作製] 作成例2で、総目付が330g/m2になるよう繊維量を増やし、パンチング回数を倍にすることで作成例2と同様に不織布7、8、脱海不織布7、8、中間体7、8、吸着体9、10を作成した。[作製例5:カラム1ないし12の作製] 上記にて得られた吸着体1ないし10を、幅が47mm、長さが377mmにカットした後、外直径8mmの円筒状でかつ、開口率40%の直径4mmの孔を有するポリプロピレン製の芯材にロール状に約6回転分巻き付け、図1に示したのと同様の形状のカラムケースに導入し、内直径が36mm、充填容積が70mlであるカラム1ないし10(それぞれ吸着体1ないし10に対応)を作成した。 また、上記にて得られた吸着体1および2を、幅が47mm、長さが528mmにカットした後、外直径8mmの円筒状でかつ、開口率40%の直径4mmの孔を有するポリプロピレン製の芯材にロール状に約6回転分巻き付け、図1に示したのと同様の形状のカラムケースに導入し、充填容積が95mlであるカラム11ないし12を作成した。[実施例1ないし10] 得られたカラム1ないし8と11,12の10本を用いて、イヌ(体重:9〜12kg、犬種:ビーグル犬、性別:オス、年齢:半年〜2歳。尚、購入後1週間飼育し体重減少がないことを確認した。)を用いた体外循環試験を行った。血液の流れは、カラムの外側から内側に流れる方向で統一させた。動物をペントバルビタールナトリウム(ネンブタール:大日本製薬(株))約25mg/kgの腹腔内投与により麻酔し、鎮静化したことを確認後、手術台上に背位に固定した。 持続的血液濾過透析装置(TR−520:東レ・メディカル(株))に持続濾過用血液回路(U−525MCB:(株)ウベ循研)を取り付けた。ヘパリン注入ラインを含めた回路の動脈側を、気泡が残らないように生理食塩液(大塚生食注:(株)大塚製薬工場)で満たした後、カラムに気泡が入らないようにカラム入口側に接続し、さらに、カラムの出口側に静脈側回路を接続した。カラム入口側を下にして、血液ポンプを用いて生理食塩液2Lを流した(流量:100mL/分)。次に、カラムを上下逆にし、カラム入口側を上にセットし、500mLの生理食塩液に5000Uのヘパリン(ヘパリンナトリウム注「シミズ」:清水製薬(株))を添加して作製したヘパリン加生理食塩液を流した(流量:50mL/分)。また、200U/mL濃度のヘパリン加生理食塩液を約30mL入れた50mL容量の注射筒を動脈側回路のヘパリン注入ラインにセットした。 処置前に前腕静脈から採取した血液を用いてヘマトクリット値(i−STAT:扶桑薬品工業(株))を測定し、循環開始前のヘマトクリット値が40%になるように輸液量を算出して、生理食塩液を橈側皮静脈より注入した。なお、循環中の輸液として40mLの生理食塩液を1時間かけて橈側皮静脈より注入した。 動物の麻酔状態が安定したことを確認後、体重が10kg前後のイヌに対し、左大腿部を切開、大腿動静脈を露出させ、カニューレ(サーフロー留置針14G×2”または16G×2”:テルモ(株))を用いて大腿動静脈と持続濾過用血液回路を接続した。 血液循環ポンプおよびヘパリン入りシリンジポンプをスタートさせ、血液循環を開始した。血液の循環は、初期値を20mL/分に設定、5分後には30mL/分とし、60分間行った。血液回路のカラム入口直前の抗凝固剤注入ライン前部位からヘパリン1500 U/bodyを単回投与し、その後、140 U/kg/hrのヘパリンをヘパリン注入ラインから持続投与した。血液循環開始時および終了時(開始1時間後)にカラム直前および直後の血液回路にある採血ボタンから1mlずつ採血し、血液サンプルとした。以上の操作の終了後、血管からカニューレを除去した後、これらの血管を結紮し、切開部にアンピシリンナトリウム(注射用ビクシリン:明治製菓(株))−生理食塩液(注射用ビクシリンの1バイアル(力価:500mg)に生理食塩液20mLを加え、溶解)を噴霧および硫酸ゲンタマイシン(ゲンタシン軟膏1mg力価:シェリング・プラウ(株))を塗布した後、外科的に皮膚を縫合した。実験中は体温低下防止のためにウォーマ((株)夏目製作所)を用いて動物を保温した。動物が麻酔から覚醒したことを確認した後、元のケージに戻した。前述の(吸着体単位重量あたり血球の吸着数の測定−循環法)に従って、採取した血液サンプルを用いて血液吸着数を評価した結果は、表1に示した。また、表1には各実施例で用いたカラム内の吸着体の、表面積、充填容積、繊維径、吸着官能基、吸着体重量、吸着体番号、圧力損失及び嵩密度をあわせて示す。[比較例1,2] 得られたカラム9,10の2本を用いて、実施例1−10と同様にイヌを用いた体外循環試験を行った。結果は、表1に示した。また、表1には比較例1、2で用いたカラム内の吸着体の、表面積、充填容積、繊維径、吸着官能基、吸着体重量、吸着体番号、圧力損失及び嵩密度をあわせて示す。[実施例11−18] 健常者ボランティアの血液50mlをヘパリン採血(ヘパリン濃度:10U/ml)し、その中へ、500pg/mlになるようにヒト天然型IL−1、IL−6を溶解し、吸着体1ないし8を用いて、サイトカイン吸着評価の検討を行った。結果は表2に示した。[実施例19−26] 吸着体1,2,5,6、7,8のそれぞれ所定量を内容積2mlの円筒状カラムに充填した。37℃で1時間、ヘパリン採血(ヘパリン濃度:10U/ml)した健常者ボランティアの血液25mlを0.65ml/分の血流速で各カラムを循環させた。前述の(吸着体単位重量あたり血球の吸着数の測定−ミニカラム法)に従って細胞吸着カラムの血液吸着数を評価した。結果を表3に示した。また、表3には各実施例で用いたカラム内の吸着体の、表面積、充填容積、繊維径、吸着官能基、吸着体重量、及び吸着体番号を示す。[比較例3,4] 吸着材2,5のそれぞれ所定量を内容積2mlの円筒状カラムに充填した。37℃で1時間、ヘパリン採血(ヘパリン濃度:10U/ml)した健常者ボランティアの血液25mlを0.65ml/分の血流速で各カラムを循環させた。前述の(吸着体単位重量あたり血球の吸着数の測定−ミニカラム法)に従って細胞吸着カラムの血液吸着数を評価した。結果を実施例1−10と同様の評価結果と共に表4に示した。また、表4には比較例1、2で用いたカラム内の吸着体の、表面積、充填容積、繊維径、吸着官能基、吸着体重量、及び吸着体番号をあわせて示す。 繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維を含み、かつ表面積が0.5m2以上10m2未満である吸着体を充填してなる細胞吸着カラムであって、吸着体充填容積が100ml以下であり、前記吸着体中の繊維径が0.5μm以上10μm以下の繊維からなる部分の嵩密度が0.01g/cm3以上0.15g/cm3以下であることを特徴とする細胞吸着カラム。 前記繊維径が3μm以上10μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の細胞吸着カラム。 前記吸着体にアミン残基を結合してなる請求項1または2に記載の細胞吸着カラム。 前記吸着体に4級アンモニウム基もしくは直鎖状アミノ基またはこれら両方の基を結合してなる請求項1または2に記載の細胞吸着カラム。 サイトカインを吸着することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の細胞吸着カラム。 前記サイトカインはインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、トランスフォーミング・グロウス・ファクター・ベータ(TGF−β)、血管新生増殖因子(VEGF)および免疫抑制酸性蛋白(IAP)からなる群から選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする請求項5記載の細胞吸着カラム。 血液を循環させる用途に用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の細胞吸着カラム。 ヒト健常者の血液を血流速30ml/分として1時間カラム内を通過させたとき、以下の式(1)および(2)を満たすことを特徴する請求項7に記載の細胞吸着カラム。2c<a (1)b>106 (2)ここで、a:吸着体単位重量あたりの顆粒球吸着数(個/g)b:吸着体単位重量あたりの単球吸着数(個/g)c:吸着体単位重量あたりのリンパ球吸着数(個/g) 健常犬を用いた体外循環試験において、生理食塩水を用いてヘマトクリット値を40%に調節した血液を、30ml/minの速度でカラム内を通過させた際、血液処理量1500ml時のカラム前後における圧力損失が150mmHg以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞吸着カラム。