タイトル: | 特許公報(B2)_抗真菌症用貼付剤 |
出願番号: | 2008534591 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/137,A61K 9/70,A61K 47/32,A61P 17/00,A61P 31/10 |
川原 康慈 島田 紀子 JP 4430120 特許公報(B2) 20091225 2008534591 20080222 抗真菌症用貼付剤 ニチバン株式会社 000004020 津国 肇 100078662 齋藤 房幸 100116919 小澤 圭子 100135873 川原 康慈 島田 紀子 JP PCT/JP2007/053366 20070223 20100310 A61K 31/137 20060101AFI20100218BHJP A61K 9/70 20060101ALI20100218BHJP A61K 47/32 20060101ALI20100218BHJP A61P 17/00 20060101ALI20100218BHJP A61P 31/10 20060101ALI20100218BHJP JPA61K31/137A61K9/70 401A61K47/32A61P17/00 101A61P31/10 A61K 9/70 31/00 47/32 特開2005−501885(JP,A) 特開平10−330247(JP,A) 特開平02−255611(JP,A) 国際公開第2006/51819(WO,A1) 特開平10−330247(JP,A) 特開平08−231430(JP,A) 特開2002−363070(JP,A) 国際公開第2005/002561(WO,A1) J.Control Release,2001,Vol.71,No.3,p319−327 3 JP2008053085 20080222 WO2008102880 20080828 18 20080725 2009012768 20090714 川上 美秀 井上 典之 弘實 謙二 本発明は、爪及び/又は皮膚における真菌感染症(以下、真菌症という)を予防及び/又は治療するための経皮吸収型貼付剤に関する。さらに詳細には、爪及び角質層に対する薬物の浸透性が良好で治療効果の高い経皮吸収型貼付剤に関する。 日本人の多くが罹患している真菌症のうち代表的なものとしては、白癬、皮膚カンジダ、癜痛が挙げられるが、そのうち最も多いのが白癬であり、日本人の4人に1人が白癬に感染している。さらに、8人に1人が、いったん罹患すると治癒の難しい爪白癬を併発し、60歳以上に至っては、2人に1人が白癬患者であると言われている。 近年、抗真菌薬のめざましい進歩により、真菌症のうち最も主要な疾患である白癬症の治療成績は著しく向上している。しかし、薬物自体の活性は高いものの、薬物を軟膏やクリームあるいは液剤等の外用剤の剤型で投与した場合、薬効を発揮するのに十分な時間、患部に薬物をとどめておくことが難しいことや、1日数回の投与が実質的に守られていないなどの実際の治療上の問題点が多く指摘されている。また、皮膚科領域における真菌症の治療は長期間根気よく行なう必要があるとされているが、とりわけ爪板と爪床との局所的真菌症である爪白癬については、上記のような理由から、現在のところ完治が困難とされている。 爪白癬の治療法としては、現在、長期経口投与による治療が採用されているが、経口抗真菌薬には、肝機能障害、その他長期経口投与による副作用が多い等の問題がある。また、糖尿病患者での爪白癬の罹患率が比較的高いことが知られており、既に糖尿病と診断・加療されている場合、複数の治療薬が投与されている可能性が高く、爪白癬症治療のための抗真菌薬の経口投与は困難であることが多い。 一方、経皮吸収型貼付剤による治療法は、前述の外用剤治療、経口剤治療における問題点を解消できる上、薬効が長時間持続するため投与回数の低減にもつながる。特に、投与が「貼る」だけで簡便であることから、コンプライアンスの向上、投与開始・中断の容易さも利点として挙げられる。さらに、経口投与では食事による薬物の血中濃度変化を考慮せねばならないが、経皮吸収投与はこうした食事の影響を受けることなく、安心して投与できるメリットもある。 かかる事情より、高齢になるに伴い発症率が増加する白癬症、特に爪白癬症患者にとって、経皮吸収型貼付剤は利便性、安全性及び有効性を兼ね備えた有用な薬物投与法として期待されている。 真菌は、主として皮膚角質層に侵入して増殖するため、抗真菌薬に白癬等の真菌症に対する優れた薬効を発揮させるための条件としては、薬物自体が強い抗真菌活性を有することに加え、感染部位である表皮角質層及び爪において、薬物濃度を高いレベルで長時間維持することが必要である。近年は、より確実な治療効果を上げるために、長時間患部に持続的に薬物を投与できる経皮吸収型貼付剤の開発が期待されている。 しかしながら、抗真菌薬は、その多くが水溶性であり、貼付剤の基剤には極めて溶け難いことから、抗真菌薬を貼付剤に配合しても、貼付剤表面に抗真菌薬の結晶が析出してしまう場合が多かった。そして、抗真菌薬が結晶析出してしまうことにより、貼付剤からの抗真菌薬の放出が低下すると共に、爪及び/又は皮膚への粘着力も低下し、それに伴って爪及び/又は皮膚への抗真菌薬の移行が低下し、薬物を持続的に効率よく吸収させることが困難となっていた。その一方、爪は、角質層よりも100〜200倍厚いため、貼付剤には、十分な量の薬剤を含有させる必要がある。これらの理由から、従来、有効成分である抗真菌薬を標的部位に十分な濃度で到達させることのできる貼付剤はほとんどなく、爪白癬症の局所療法は一般的に今まで無効であった。 このため、爪及び皮膚における抗真菌薬の局所組織濃度を高く維持することができるとともに、有効量の薬剤を特に爪床に局所投与することができる、爪白癬症を含む真菌症の治療法が求められていた。 上記の問題を解決するために、塩酸テルビナフィンなどの各種抗真菌薬の基剤に対する溶解性を改善した経皮吸収型貼付剤として、薬剤の結晶析出を防止する溶解剤を添加した経皮吸収型貼付剤(特許文献1)、塩酸テルビナフィンなどの各種抗真菌薬の爪への浸透吸収を改善した経皮吸収型貼付剤として、透過促進剤を含んだ貼付剤(特許文献2,3)が、開発されている。 透過促進剤を含む貼付剤についてみると、脂肪族アルコールや脂肪酸など透過促進剤として使用される物質は、皮膚に透過することによりその効果を発揮することから、皮膚刺激の原因物質となることも多く(非特許文献1,2)、透過促進剤を使わないで製剤設計することが望ましいとされている。しかし、薬物自体の皮膚透過性が乏しいことがほとんどであり、透過促進剤の配合が必要である場合が多い。そして透過促進剤を配合した場合であっても、爪への薬剤移行性は高いものの、爪床側への薬剤移行は満足できるものではなかった。 一方、前述の溶解剤を用いた製剤は、皮膚への貼付を主眼とするものであり、爪白癬の治療及び/又は予防を目的とした、爪にも貼付できる製剤として開発されたものではないため、上記の問題は解決されていない。 また、局所投与による爪白癬症の治療には、厚いハードケラチン層である爪板に薬剤の浸透が阻まれて、爪床側へ薬剤が移行しにくいという欠点があり、また、溶解剤や透過促進剤などの添加剤の配合により、爪及び/又は皮膚への粘着力のコントロールが困難であり、更にまた皮膚刺激性を有するといった欠点もある。更に、これら添加剤は、液状あるいは油状であるため、貼付剤の保存温度の急激な変化や長時間の保存により、添加剤が粘着剤から染み出したり、粘着特性が変化しやすいといった欠点もある。また、添加量によっては、製剤の剥離時も「糊残り」の現象を起こすことがある。特開2002−363070特表2003−525641特表2005−501885Tanojo H. et al. : In vitro human barrier modulation by topical application of fatty acids, Skin pharmacol appl skin physiol. 11(2),1998kanikkannan N. et al. : Skin permeation enhancement effect and skin irritation of saturated fatty alcohols. 6, 2002 これらの理由から、爪及び/又は皮膚での真菌症を予防及び治療する為の貼付剤であって、爪及び/又は皮膚角質層において薬物濃度を長時間高濃度で維持しつつ、有効量の薬物を最小の全身暴露で標的部位に局所投与することが可能であり、長時間貼付においても優れた付着性を有し、皮膚刺激性の少ない貼付剤を提供することが求められていた。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、爪及び/又は皮膚での真菌症を予防及び治療することを目的とした貼付剤において、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を基剤として用い、オクタノール/水分配係数を表すlogKo/w値が4以上である抗真菌薬を有効成分として基剤に配合することによって、特に薬剤の結晶析出を防止する溶解剤や、爪及び/又は皮膚への薬剤透過を促す透過促進剤を加えることなく、爪及び/又は皮膚角質層において薬物濃度を長時間高濃度で維持することができ、長時間貼付においても優れた付着性を有し、皮膚刺激性の少ない貼付剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、真菌症の予防又は治療用の爪及び/又は皮膚用貼付剤であって、アクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層に、オクタノール/水分配係数であるlogKo/w値が4以上である抗真菌剤を溶解状態で含有する貼付剤に関する。 本発明の真菌症の予防又は治療用の爪及び/又は皮膚用貼付剤においては、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を基剤として用い、オクタノール/水分配係数を表すlogKo/w値が4以上である抗真菌薬を有効成分とすることによって、抗真菌薬が、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤に高濃度で溶解している。そのため、必ずしも薬剤の結晶析出を防止する溶解剤や、爪及び/又は皮膚への薬剤透過を促す透過促進剤を貼付剤に加える必要がなく、貼付剤の粘着力のコントロールが容易であり、爪及び/又は皮膚に対する貼付剤の付着を長時間維持することができる。また、貼付剤の保存温度の急激な変化や長時間の保存による溶解剤や透過促進剤の粘着剤からの染み出しや特性の変化などを防止することができるため、安定な貼付剤を提供することができる。 このように、本発明の爪及び/又は皮膚用貼付剤においては、有効成分としてオクタノール/水分配係数を表すlogKo/w値が4以上である抗真菌薬を溶解状態でアクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層中に高濃度で含有させることによって、高濃度の抗真菌薬を爪及び/又は皮膚に対し移行させることができるため、抗真菌剤の爪床への透過率の低下という爪真菌症外用剤の問題点が解消され、特に爪真菌症などの真菌症に対して高い効果が得られる。 したがって、本発明の貼付剤は、爪及び皮膚の真菌症の治療に十分な効果を発揮することができ、水虫、たむし等の表在性真菌症等の治療に特に有用である。フリー体化したテルビナフィンの累積爪透過量を示す図である。 本発明の、真菌症の予防又は治療用の爪及び/又は皮膚用貼付剤は、以降詳細に説明するように、アクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層に、オクタノール/水分配係数であるlogKo/w値が4以上である抗真菌剤を溶解状態で含有する貼付剤である。 本発明においては、logKo/wは、以下のように求められる。まず、32℃において、薬剤を適量のオクタノール(もしくは水)に溶解し、これと等量の水(もしくはオクタノール)を更に加え、十分に混合した後、2層に分離し、各層中の薬物濃度をHPLC法で測定することにより、次式にて求められる。log Ko/w = log(オクタノール層中の薬剤濃度/水層中の薬剤濃度) また、本発明の貼付剤においては、「溶解状態で」とは、25℃の条件下で、粘着剤層を目視で観察した場合に、抗真菌剤の結晶及び粉末が観察されず、粘着剤層が透明状態であるこという。 本発明の貼付剤においては、抗真菌剤を含有するアクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層は、支持体又は剥離ライナー上に形成されていることができる。当該アクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層の厚さは、必要に応じて適宜決定することができるが、具体的には10〜200μm、好ましくは20〜100μmであることができる。抗真菌剤 本発明の貼付剤に配合される抗真菌薬においては、オクタノール/水分配係数を表すlogKo/w値は、4以上である。この分配係数logKo/wは、上述の式で算出することができる、薬剤の脂溶性を表す値である。本発明の貼付剤においては、logKo/w値が4以上である抗真菌薬をアクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層に配合することにより、抗真菌薬が該粘着剤層に高濃度で溶解した状態で安定に保持され、ひいては、爪や皮膚への抗真菌薬の高濃度での移行が可能となる。 このような分配係数logKo/w値が4以上である抗真菌薬としては、具体的にはフリー体化したテルビナフィンが挙げられる。前述のlogKo/wの計算方法による、フリー体化したテルビナフィンのlogKo/w値は5.8である。 また、テルビナフィンの酸付加塩(例えば塩酸塩、水素フマル酸塩、ナフタリン−1,5―ジスルホン酸塩)は、logKo/w値がおよそ1であるが、このような酸付加塩は、塩基と一緒に貼付剤に配合して、logKo/w値が4以上であるフリー体化したテルビナフィンに変換することによって、本発明の貼付剤に配合することができる。係る場合に使用しうる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、アンモニア、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどを用いることができる。 テルビナフィンの酸付加塩を上記のような塩基でフリー体化する場合、テルビナフィンの酸付加塩に対する塩基の使用量は、テルビナフィンの酸付加塩1に対し、0.01(重量比)以上あればよく、好ましくは0.01〜1の割合の量(重量比)であり、テルビナフィンの酸付加塩及び塩基の種類によって適宜決定することができる。具体的には、テルビナフィンの酸付加塩をアクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤に混合し、更にテルビナフィンの酸付加塩1に対し0.01〜1の割合(重量比)で上記塩基を加えることによってフリー体化することができる。この場合、塩基は、結晶又は粉体状態で粘着剤液に添加するか、又は結晶又は粉体を適当な有機溶媒に溶解又は分散させて粘着剤液中に添加することができるが、これに限定されない。アクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層 本発明の粘着剤層には、粘着剤成分としてアクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤が配合される。 本発明の爪及び/又は皮膚用貼付剤においては、爪及び/又は皮膚用貼付剤に通常使用されている任意のアクリル系粘着剤を使用することができるが、アクリル系粘着剤は、アルキル基の炭素原子数が4から12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須の単量体成分として含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体をベースとすることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体成分としては、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸エステルとして、メタクリル酸−n−デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリルなどが挙げられる。 該(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体成分のうち、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル及びメタクリル酸ラウリルが特に好ましい。 係る(メタ)アクリル酸エステル共重合体においては、単量体成分として上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのほか、その他の単量体成分として、例えば官能基を有するビニルモノマーを好ましく配合することができる。具体例としては、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル及びアクリル酸−4−ヒドロキシブチルなどの水酸基を有するモノマー;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸及びマレイン酸モノブチルなどのカルボキシル基を有するモノマー;アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリルアミド及びN−メチロールアクリルアミドなどのアミノ基を有するモノマー;並びに、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基を有するモノマーなどを挙げることができる。 これら官能基を有するビニルモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。 該(メタ)アクリル酸エステル共重合体の上述したその他の単量体成分、例えば官能基を有するビニルモノマーの共重合割合は、共重合体全体に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。 該(メタ)アクリル酸エステル共重合体には、上述したその他の単量体成分のほか、更にその他含有可能な単量体成分を配合することができる。かかる成分としては、酢酸ビニルなどのビニルエステル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、並びに、スチレンなどのビニル芳香族化合物などが挙げられる。更にその他含有可能な単量体成分は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。このような更にその他含有可能な単量体成分の共重合割合は、共重合体全体に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。 (メタ)アクリル酸エステル共重合体全体に対する上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体成分の割合は、60〜100質量%であり、なかでも(メタ)アクリル酸エステル単量体成分を共重合体全体に対して70〜100質量%含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。 (メタ)アクリル酸エステル共重合体として具体的には、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸の共重合体が好ましく、配合比は、85:15〜99:1(質量比)が好ましい。 係る(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、一般にラジカル重合により合成することができる。重合法としては、溶液重合法、乳化重合法又は塊状重合法などが挙げられるが、良好な粘着特性を得られることから溶液重合法が好ましい。 重合反応は、全単量体成分質量に対して0.1〜1質量%程度の割合でラジカル重合開始剤を加え、窒素気流下、40から90℃程度の温度下にて、数時間から数十時間攪拌して重合させる。なおここで用いる重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤などが挙げられる。 本発明の爪及び/又は皮膚用貼付剤においては、爪及び/又は皮膚用貼付剤に通常使用されている任意のシリコーン系粘着剤も使用することができる。例えば、特開2006−213650号公報記載のシリコーン系粘着剤を用いることができる。係るシリコーン系粘着剤としては、シリコーンゴムとシリコーンレジンの混合物又は部分縮合物が挙げられる。シリコーンゴムとしては、両末端にシラノール基のようなケイ素官能基を有する高分子量の直鎖状ポリジオルガノシロキサンが挙げられ、シリコーンレジンとしては、1官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位を含み、分子中にシラノール基又はメトキシ基のようなケイ素官能基を有する分岐状もしくは網状構造を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。より具体的には、このようなシリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサンの長鎖の共重合体を、シリコーンレジンとしては、MQレジン(M単位((CH3)3SiO1/2)とQ単位(SiO2)からなる3次元構造のシリコーンレジン)を挙げることができる。 シリコーン系粘着剤を構成するシリコーンゴム/シリコーンレジンの構成比は特に限定されるものではないが、好ましくは30:70〜60:40、より好ましくは35:65〜45:55である(質量比)。本発明において特に好ましいシリコーンゴム/シリコーンレジンの構成比としては、40/60(w/w)(BIO−PSA4501、ダウコーニング社)、45/55(w/w)(BIO−PSA4601、ダウコーニング社)などを挙げることができる。 シリコーン系粘着剤は、分子中に存在するケイ素官能基によって、感圧接着性を有する粘着剤である。ケイ素原子に結合した有機基としては、メチル、エチル、ビニル、フェニルなど各種の1価の炭化水素基が挙げられ、置換基の種類を選ぶことによって粘着性を調節することができる。シリコーン系粘着剤は、その主成分であるポリオルガノシロキサンの分子間距離が大きいので、通気性及び透湿性に富む。アクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層に対する抗真菌剤の配合割合 アクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層における抗真菌剤の配合割合は、製剤中で抗真菌剤を溶解状態で含有できる量を上限とし、抗真菌剤の種類によって適宜決定することができる。抗真菌剤として、フリー体化したテルビナフィンを、アクリル系粘着剤層に配合する場合には、フリー体化したテルビナフィンを、アクリル系粘着剤層全体に対して、全質量基準で好ましくは35質量%以下、より好ましくは5〜35質量%、更により好ましくは15〜35質量%、特に好ましくは20〜35質量%配合する。 抗真菌剤として、フリー体化したテルビナフィンをシリコーン系粘着剤層に配合する場合、フリー体化したテルビナフィンを、シリコーン系粘着剤層全体に対して、全質量基準で好ましくは10質量%以下、より好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは2〜10質量%配合する。その他の添加剤 本発明の爪及び/又は皮膚用貼付剤のアクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層には、上記粘着剤成分の他に、通常貼付剤等に用いられる充填剤、酸化防止剤などを含有させることができる。充填剤として、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸塩、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムを、酸化防止剤として、具体的には、ブチルヒドロキシトルエンを配合することができる。 本発明の重要な特徴の一つは、粘着剤層中での薬剤の結晶析出を防止する為の溶解剤、並びに爪及び/又は皮膚への薬剤透過を促す透過促進剤を必ずしも配合する必要はない点にある。かかる溶解剤は、例えば、多価アルコール類(グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,3−テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等)、フェノール類(チモール、サフロール、イソサフロール、オイゲノール、イソオイゲノール等)、高級アルコール類(ベンジルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)、エステル系界面活性剤(セスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル等)、脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等)及び有機酸類(乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸等)から選択される溶解剤である。また、かかる透過促進剤は、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジエチル等)、脂肪酸アミド、脂肪アルコール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、グリセロールのエステル、グリセロールモノラウレート、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、不飽和ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリセリド、α−ヒドロキシ酸、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ピロリドン類、サリチル酸、乳酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ドデシル硫酸ナトリウム、リン脂質、オレイン酸、オレイン酸/2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、蛋白質分解酵素から選択される透過促進剤である。 また、本発明の爪及び/又は皮膚用貼付剤の粘着剤層に用いるアクリル系粘着剤の凝集力を増大させる目的で、各種架橋剤を粘着剤層に更に添加することができる。架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物及び多価金属塩などが挙げられる。具体的にはポリイソシアネート(例えば、コロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネートHDIーTMPアダクト、日本ポリウレタン工業社))が好ましい。 一方、本発明の爪及び/又は皮膚用貼付剤の粘着剤層に用いるシリコーン系粘着剤の付着性を向上させる目的で、各種シリコーンフルイドを添加することもできる。このようなシリコーンフルイドとしては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された、ポリジメチルシロキサンフルイド、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体フルイド、ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体フルイド、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体フルイド、ジメチルシロキサン・メチル(2−フェニルプロピル)シロキサン共重合体フルイド、ジメチルシロキサン・メチル(2−フェニルプロピル)シロキサン・メチルオクチルシロキサン共重合体フルイド、ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンフルイドを配合することができる。本発明の貼付剤の製法 本発明の貼付剤を製造するには、有効成分である抗真菌剤及び粘着剤(アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤)並びに所望によりその他の添加剤の混合物を、適当な剥離ライナー上に塗布し、その上に適当な支持体を貼り合わせ、必要により適当な大きさに裁断して、最終的な製品とすることができる。 本発明の貼付剤に使用しうる支持体は、患部への追従性ならびに貼付時の貼りやすさなどを加味して、柔軟性、伸縮性ならびに厚さなどを考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。このような支持体として、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙及びグラシン紙などの紙;ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリウレタンフィルム及びセロハンフィルムなどのプラスチックフィルム;発泡体;ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維及びポリプロピレン繊維などからなる不織布、織布及び編布などの布基材;これらの積層体などが挙げられる。これらの中でも伸縮性及び使用性の面で、特にポリエチレンなどのオレフィン系のプラスチックフィルムが好ましい。 用いる支持体の厚さは、プラスチックフィルムであれば好ましくは1μmから200μm、より好ましくは30μmから100μmである。 本発明の貼付剤に使用しうる剥離ライナーは、粘着剤層からの剥離性、通気性、通水性ならびに柔軟性などを考慮して、目的に応じて適宜選択することができる。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエステル等の高分子材料からなる、厚さ10〜200μm程度のフィルムが使用され、剥離性を高めるためにフィルム表面をシリコーン処理又はフルオロカーボン処理して用いることもできる。 本発明の貼付剤を製造するには、通常の貼付剤を製造する方法を適宜用いることができる。具体的には、以下に述べる製造方法を挙げることができる。 (メタ)アクリル酸エステル共重合体をベースとするアクリル系粘着剤を用いる場合には、まず、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を、例えば前述の溶液重合法で合成し、得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体溶液を用いて、溶液塗工法により、貼付剤の製造を行う。 溶液塗工法では、まず、調製した(メタ)アクリル酸エステル共重合体(粘着剤)溶液及びフリー体化したテルビナフィンなどの抗真菌薬(有効成分)、さらに所望により架橋剤、その他の添加剤を添加した溶液を調製する。この溶液には、希釈剤として有機溶媒を添加して適宜濃度を調製することもできる。 ここで用いられる有機溶媒としては、n−ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの有機溶媒を希釈剤として添加する場合には、これらの有機溶媒を用いて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を、溶液全体の質量に対して好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%含む溶液を調製する。 また、当該溶液中に配合する抗真菌剤の量は、抗真菌剤の種類、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の量に応じて適宜決定することができる。 架橋剤及びそのほかの添加剤の量は、各成分の量に応じて、適宜決定することができる。 次に、各成分を含有する上記溶液(希釈液)を攪拌して、各成分を均一に溶解、分散させる。このようにして得られた溶液をナイフコーター、コンマコーター又はリバースコーターなどの塗工機を用いて、たとえば剥離ライナー(シリコーン処理したポリエステルフィルム)上に均一に塗布する。上記溶液の塗布量は、目的とするアクリル系粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層の厚さ、用いる粘着剤の種類、抗真菌剤の種類、及びそれらの量に応じて適宜決定することができる。例えば(メタ)アクリル酸エステル共重合体を、溶液全体の質量に対して20質量%、フリー体テルビナフィンを溶液全体の質量に対して10質量%含有する溶液の場合、好ましくは、10〜200μm、より好ましくは20〜100μmの厚さに塗布する。 塗布後、約40℃〜130℃の温度に保持した乾熱雰囲気下に約30秒から10分間保持して有機溶媒を揮散させる。使用する有機溶媒の種類及び塗布する粘着剤の厚みにより、乾燥条件を適宜選択する。 前記の方法にて得られた粘着剤層の表面に支持体をラミネートすることにより、抗真菌薬貼付剤を得ることができる。支持体の種類によっては、支持体上に粘着剤層を形成した後、粘着剤層の表面に剥離ライナーをラミネートしても良い。 以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。なお実施例中、「%」「部」は、それぞれ「質量%」「質量部」を意味する。なお、以降の実施例及び比較例においては、テルビナフィンと記載のときは、フリー体化したテルビナフィンを意味するものとする。<実施例1> 以下の組成及び製法により、貼付剤を得た。1.テルビナフィン*1 20.0%2.アクリル系粘着剤*2 79.7%(固形分)3.ポリイソシアネート*3 0.3%*1:カネダ株式会社より購入*2:アクリル酸2−エチルヘキシル96%、アクリル酸4%を重合開始剤ラウリルパーオキサイド0.5部を用いて、酢酸エチル中33%の濃度で、常法の溶液重合法により重合し得た。以下、粘着剤の数値は固形分を示すものとする。*3:コロネートHL(日本ポリウレタン工業(株))(製法)上記成分を秤量後、全体の固形分が酢酸エチル中25%となるよう調製し、均一になるまで攪拌した。塗工時の粘着剤層の厚みが30μmとなるように、75μm片面シリコーン処理PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(フィルムバイナ75E−0010 No.23、藤森工業(株))上に塗工し、110℃で3分間乾燥させた。 次いで、粘着剤層の片面に25μmのPETフィルム(ルミラーS10、(株)東レ)を貼り合わせて貼付剤を得た。<実施例2〜6>テルビナフィンを30.0%、32.0%、35.0%、5%、1%とし、表1の組成表及び実施例1と同様の製法を用いて、貼付剤を得た。*1:<実施例1>と同じ*2:<実施例1>と同じ*3:コロネートHL(日本ポリウレタン工業(株))<実施例7>テルビナフィンを10.0%、基剤をシリコーン系粘着剤とし、以下の組成表及び製法を用いて、貼付剤を得た。1.テルビナフィン*1 10.0%2.シリコーン系粘着剤*4 90.0%*1:<実施例1>と同じ*4:BIO−PSA4501(ダウコーニング社) ポリジメチルシロキサンとMQレジン(M単位((CH3)3SiO1/2)とQ単位(SiO2)からなる分岐状ポリシロキサン)の構成比60:40(質量比)の混合物をヘプタン中63%の濃度で、常法の溶液重合法により重合し得た。以下、粘着剤の数値は固形分を示すものとする。(製法)上記成分を秤量し、均一になるまで攪拌した。塗工時の粘着剤層の厚みが30μmとなるように、75μm片面シリコーン処理PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(フィルムバイナ161−8066 FN-75、藤森工業(株))上に塗工し、110℃で3分間乾燥させた。 次いで、粘着剤層の片面に25μmのPETフィルム(ルミラーS10、(株)東レ)を貼り合わせて貼付剤を得た。<比較例1>薬物を塩酸テルビナフィン10.0%とし、以下の組成表及び実施例1と同様の製法を用いて、貼付剤を得た。1.塩酸テルビナフィン5* 10.0%2.アクリル系粘着剤*2 89.8%3.ポリイソシアネート*3 0.2%*2:<実施例1>と同じ*3:<実施例1>と同じ*5:カネダ株式会社より購入<比較例2>透過促進剤としてポリエチレングリコールを添加し、以下の組成表及び実施例1と同様の製法を用いて、貼付剤を得た。1.塩酸テルビナフィン*5 10.0%2.アクリル系粘着剤*2 39.8%3.ポリイソシアネート*3 0.2%4.ポリエチレングリコール#400 50.0%*2:<実施例1>と同じ*3:<実施例1>と同じ*5:<比較例1>と同じ<比較例3>透過促進剤としてトリアセチンを添加し、以下の組成表及び実施例1と同様の製法を用いて、貼付剤を得た。1.塩酸テルビナフィン*5 10.0%2.アクリル系粘着剤*2 69.7%3.ポリイソシアネート*3 0.3%4.トリアセチン 20.0%*2:<実施例1>と同じ*3:<実施例1>と同じ*5:<比較例1>と同じ<比較例4>基剤をゴム系粘着剤とし、以下の組成表及び実施例1と同様の製法を用いて、貼付剤を得た。1.テルビナフィン*1 10.0%2.ゴム系粘着剤*6 90.0%*1:<実施例1>と同じ*6:粘着剤としてゴム系粘着剤(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS5002、JSR(株))59.6%、水添ロジンエステル樹脂(パインクリスタルKE311、荒川化学工業(株))29.8%、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT−F、武田キリン食品(株))0.6%)。(製法)上記成分を秤量後、全体の固形分がトルエン/ヘキサン(構成比2/1)溶液中50%となるよう調製し、均一になるまで攪拌した。塗工時の粘着剤層の厚みが30μmとなるように、75μm片面シリコーン処理PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(フィルムバイナ75E−0010 No.23、藤森工業(株))上に塗工し、110℃で3分間乾燥させた。 次いで、粘着剤層の片面に25μmのPETフィルム(ルミラーS10、(株)東レ)を貼り合わせて貼付剤を得た。<比較例5>テルビナフィンを40.0%とし、以下の組成表及び実施例1と同様の製法を用いて、貼付剤を得た。1.テルビナフィン*1 40.0%2.アクリル系粘着剤*2 59.7%3.ポリイソシアネート*3 0.3%*1:<実施例1>と同じ*2:<実施例1>と同じ*3:<実施例1>と同じ<比較例6>テルビナフィンを20.0%、基剤をシリコーン系粘着剤とし、以下の組成表及び実施例1と同様の製法を用いて、貼付剤を得た。1.テルビナフィン*1 20.0%2.シリコーン系粘着剤*4 80.0%*1:<実施例1>と同じ*4:<実施例7>と同じ[評価試験]各実施例及び比較例の貼付剤を下記の評価試験法に従って試験した。[試験例1]テルビナフィン貼付剤の結晶析出性試験 各実施例及び比較例で作製した貼付剤を、アルミ箔をベースとした複合フィルム(PET12μm/PE 15μm/Al 9μm/PE 25μm)の袋にヒートシールで密封した。これを、室温(20℃付近)及び冷所(5℃)に保存し、製剤中の抗真菌薬の状態を目視により経時的に6ヶ月まで確認した。 表2から明らかなように、比較例1〜3の製剤は、目視により、作製時に本製剤の粘着剤層中に塩酸テルビナフィンの結晶が分散していた。比較例5及び6の製剤は、冷所保存2ヶ月で結晶析出が観察された。一方、実施例1〜7及び比較例4の製剤はいずれも室温及び冷所保存6ケ月においても結晶の析出は見られず安定であった。[試験例2]テルビナフィン貼付剤の付着性試験 実施例1〜7及び比較例1〜6の各貼付剤についてフィンガータックにより付着性を以下の基準:○:良好 △:適 ×:不適に基づいて評価した。さらに、粘着剤の残留(糊残り)を評価した。 表2から明らかなように、実施例1〜7の製剤は、糊残りもなく、貼付剤として十分な粘着性及び付着性を示した。比較例4の製剤は、糊残りは認められないが、長時間の付着性に耐えうる粘着性を示さなかった。比較例1〜3、5、6の製剤は、粘着剤中での結晶分散、又は経時による結晶析出により、付着性が乏しく、貼付剤としての機能を示さなかった。比較例2及び3の製剤では、油状成分の添加が原因と考えられる糊残りが観察された。 また、足爪付着性について、実施例1〜7及び比較例4の製剤を、ボランティア3名の足爪に、指先に製剤を巻きつけるようにして貼付し、貼付3日間の付着状態を、付着していたか(良好)あるいは脱落したかで評価した。表2から明らかなように、実施例1〜7の製剤は、長時間の付着性に優れるものであった。比較例4の製剤は、貼付してから1日目で製剤の脱落が観察された。 以上の結果より、ゴム系粘着剤をベースにした製剤では、テルビナフィン10%でも、実用的な粘着力は得られず、アクリル系粘着剤及びシリコーン系粘着剤に優れた実用性を見出した。 また比較例1〜3の通り、アクリル系粘着剤でも塩酸テルビナフィン(logKo/w値:0.87[ラミシール錠125mgインタビューフォームより])を使用した場合、薬物の結晶が析出し付着性が不適であることから高濃度の薬物添加には、塩をはずしてフリー体化し、logKo/w値を4以上にした薬物を使用することが高濃度の薬物を保持する上で必要であることが認められた。 さらに比較例5及び6のようにテルビナフィンをアクリル粘着剤では40%、シリコーン粘着剤では20%まで含有させると薬物を保持しきれず、付着性が不適となることから、好ましい上限濃度は、アクリル粘着剤で35%、シリコーン粘着剤では10%であることが認められた。[試験例3]テルビナフィンの爪透過性試験 ヒト爪を用いて、実施例1、2、4、5、7及び比較例4で得た貼付剤の爪透過性を確認した。試験は、ヒト爪に実施例1、2、4、5、7及び比較例4の貼付剤を貼付した後、爪を介して反対側のレシーバー側に以下の組成の、実施例1と同様の製法で作製したプラセボテープを貼付した。試験開始後から17日間経過まで1、2、3、4、9、14及び17日にプラセボテープを貼り替えた。 更に実施例2については、42日間の連続貼付を行い、試験終了後の爪を上下2層の2等分に輪切りにし、別々に爪中のテルビナフィン濃度を測定した。 プラセボテープを回収してテルビナフィンを抽出し、また爪を水酸化ナトリウム水溶液で溶解した後に、抽出を行い、HPLC法で爪を透過したテルビナフィンの累積透過量、及び爪中のテルビナフィン貯留量を算出した。各検体について3回試験し平均値を得た。<プラセボテープ>1.アクリル系粘着剤*2 99.9%2.ポリイソシアネート*3 0.1%*2:<実施例1>と同じ*3:<実施例1>と同じ 表3及び図1から明らかなように、アクリル系粘着剤を使用した実施例1、2、4、5の製剤は薬剤濃度に依存した透過量及び爪貯留量を示し、テルビナフィンを5%含有する実施例5の製剤においても、貼付1日目でも極微量であるが薬剤が爪を透過していることがわかった。さらにいずれの実施例においても、貼付17日目での爪中のテルビナフィン量は、125mg塩酸テルビナフィン/日を24週間経口投与したときの、爪中テルビナフィン量0.78±0.3μg/爪g(「爪白癬に対する経口投与テルビナフィンの臨床的、薬物動態学的検討」松本忠彦ら、西日皮膚・56巻2号・1994)に比べ、40〜500倍大きい値を示した。 しかし、白癬菌は爪の下部の爪床にも存在することが知られていること、爪中の薬物濃度分布には薬物の受動拡散により濃度勾配が存在し、爪の下部ほど濃度が低くなることが想定される。事実、42日間連続投与貼付した実施例2の爪の下部では、薬物濃度は2.51μg/gと経口投与時の0.78μg/gの約3.2倍まで低下しており、実施例2の爪全体への移行量が362.79μg/gであることから爪全体への移行量として110μg/g以上が必要と判断される。従って、製剤中のテルビナフィン濃度としては、20%以上配合した製剤がより好ましい。 シリコーン系粘着剤を使用した実施例7の製剤もまた、十分な爪透過性及び爪貯留性を示し、経口投与の場合に比べ、250倍以上の爪貯留量であった。 一方、ゴム系粘着剤を使用した比較例4は、等量の薬剤を含有する実施例7と比較して、顕著に低い爪透過性を示した。また、試験時の爪への付着性は、各実施例の製剤に比べ悪く、長時間貼付には不適であった。[試験例4]テルビナフィン貼付剤の抗菌力試験 ヒト爪を5mmφに打抜き、70%エタノール溶液中で60分間浸透滅菌し、さらに32℃,50%RHの恒温槽*7にて1日放置して馴化した爪を試験に用いた。 培地は、リン酸2カリウム1.0g、硫酸カルシウム0.025g、塩化カルシウム0.025g、寒天7.5g及び蒸留水491mLを500mLの三角フラスコに入れ、95℃、30分加熱して、均一になるよう振り混ぜ、5mLずつ試験管に分注して、更に高圧蒸気滅菌器*8で121℃で15分間高圧蒸気滅菌し、その後、培地を50℃の恒温*7で保温した。 別に白癬菌(Trichophyton mentagrophytes (NBRC 32410))をサブロー斜面培地(日本ベクトンディッキンソン(株))にて28℃の恒温槽*7で14日間培養し、滅菌0.05%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート含有生理食塩水4mLを重層し、カギ型白金線を用いて斜面部表面を擦って得た液を滅菌ガーゼでろ過したものを分生子懸濁液とした。分生子数を血球計算盤で計測し、滅菌生理食塩水で1×107個/mLに調整した。滅菌シャーレに1×107個/mLに調製した分生子懸濁液50μL及び50℃の恒温槽*7に保温した培地5mLを入れ、直ちにシャーレを動かして混釈し、室温冷却にて培地を固化させ、試験培地を調製した。 滅菌した爪を1片ずつ試験培地に乗せ、28℃の恒温槽*7で7日間培養した。7日後に爪を取り出し、周囲に付着した菌を、滅菌生理食塩水に浸した滅菌脱脂綿で軽く拭い、約1時間放置して爪を軽く乾燥させた。爪に4mmφに打抜いた被験物質(実施例1、2、5、6、プラセボテープ)を貼付し、白癬菌を含まない培地に載せ、28℃の恒温槽*7で7日間再培養した。評価は、爪及びその周辺の培地を目視にて観察し、0:菌なし、0.5:僅かに認められる、1:明らかに認められる、2:爪周囲を越える広がり、3:爪が菌で覆われている、の5段階で評価した。 表4に示した通り、テルビナフィン濃度が5%以上の製剤では、優れた抗菌性が確認された。*7:恒温槽 ICB-151L(イワキ社製)*8:高圧蒸気滅菌器 CLS-40S(アルプ社製) 本発明の真菌症の予防又は治療用の爪及び/又は皮膚用貼付剤は、爪及び皮膚の真菌症の治療に十分な効果を発揮することができ、水虫、たむし等の表在性真菌症等の治療に特に有用である。 真菌症の予防又は治療用の爪及び/又は皮膚用貼付剤であって、アクリル系粘着剤層に、フリー体化テルビナフィンを、アクリル系粘着剤層全体に対して20〜35重量%の割合で、溶解状態で含有する貼付剤。 フリー体化テルビナフィンをアクリル系粘着剤層に含有する爪白癬症の予防又は治療用の爪及び/又は皮膚用貼付剤であって、フリー体化テルビナフィンを、アクリル系粘着剤層全体に対して20〜35重量%の割合で溶解状態で含有する貼付剤。 薬剤溶解剤及び薬剤透過促進剤のいずれをも含有しない、請求項1又は2記載の貼付剤。