生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ヒト胚の体外受精及び培養用培養液及びヒト胚の体外受精及び培養方法
出願番号:2008534212
年次:2011
IPC分類:C12N 5/02,C12N 5/07,A01K 67/02


特許情報キャッシュ

乾 裕昭 水野 仁二 中村 寛子 赤石 一幸 JP 4739420 特許公報(B2) 20110513 2008534212 20080331 ヒト胚の体外受精及び培養用培養液及びヒト胚の体外受精及び培養方法 乾 裕昭 508212912 中谷 智子 100120293 長谷川 洋 100110973 乾 裕昭 水野 仁二 中村 寛子 赤石 一幸 20110803 C12N 5/02 20060101AFI20110714BHJP C12N 5/07 20100101ALI20110714BHJP A01K 67/02 20060101ALI20110714BHJP JPC12N5/02C12N5/00 202ZA01K67/02 C12N 5/00 A01K 67/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 日生殖医会誌, vol.52(4), p.198, P162(2007) 聖隷浜松病院医学雑誌, vol.4(2), pp.37-40 (2004) 5 JP2008056424 20080331 WO2009122541 20091008 20 20080714 特許法第30条第1項適用 平成19年10月1日 社団法人日本生殖医学会発行の「『日本生殖医学会雑誌』 第52巻 第4号 第198(308)頁」に発表 長井 啓子 本発明は、生殖補助医療技術(ART)においてヒトの不妊治療、特に体外受精治療の際にヒト胚を体外で受精及び培養するのに用いられるヒト胚の体外受精及び培養用培養液及びこれを用いてヒト胚を体外で受精及び培養するヒト胚の体外受精及び培養方法に関するものである。 不妊は、子を持つことを望む夫婦にとって深刻な問題であると共に、少子高齢化の問題にも関わるものであるため、早急に解決することが望まれている。従来、不妊治療としては、薬物療法や外科的手段による生殖細胞の通過性の回復、人工授精や体外受精(IVF)などが行われている。このうち体外受精は、採卵から1〜3時間後にシャーレの中で調整済みの精子を振りかけて受精を行い、この受精した卵を培養した後、分裂した卵(胚)を子宮内に移植することによって行われている。ここで、受精卵の培養には様々な培養液が開発されて用いられている(例えば、特許文献1参照。)。特開2003−24055号公報 しかし、従来の培養液は、ヒト胚の代謝(metabolism)に適したものではないので、質の良い受精卵を得るのが難しく、妊娠率を高めることができないという問題がある。 また、近年においては安心・安全な医療が求められているが、従来の培養液には例えばヒト血清アルブミン(HSA)等のようなヒト由来の血清成分が含まれているため、感染症の危険性が否定できないという問題もある。そして現在のところ血清成分を含まない完全無血清培養液は存在しない。 本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、安全性が高く、質の良い受精卵を得ることができ、妊娠率を高めることができるヒト胚の体外受精及び培養用培養液及びヒト胚の体外受精及び培養方法を提供することを目的とするものである。 本発明の請求項1に係るヒト胚の体外受精及び培養用培養液は、ヒトの精子と卵子の受精を行うのに用いられる第1培養液と、受精後から16細胞期までのヒト胚を培養するのに用いられる第2培養液と、桑実期から胚盤胞期までのヒト胚を培養するのに用いられる第3培養液とを備え、第1〜第3培養液は、グルコース、乳酸塩、ピルビン酸塩を含有し、かつ無血清であると共に、グルコース濃度は第1培養液が最も高く、第2培養液が最も低く、乳酸塩濃度及びピルビン酸塩濃度は第3培養液が最も低いことを特徴とするものである。 請求項2に係る発明は、請求項1において、第1培養液は、グルコース濃度が2.2±1.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mM、かつ無血清であり、第2培養液は、グルコース濃度が0.2±0.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mM、かつ無血清であり、第3培養液は、グルコース濃度が2.1±1.05mM、乳酸塩濃度が10±5mM、ピルビン酸塩濃度が0.15±0.075mM、かつ無血清であることを特徴とするものである。 請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、第1〜第3培養液の少なくともいずれかに上皮細胞成長因子及びインスリンが添加されていることを特徴とするものである。 請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、第1〜第3培養液の少なくともいずれかに完全無血清化のために血清及びアルブミン代替物質としてヒアルロナンが添加されていることを特徴とするものである。 請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、第1〜第3培養液の少なくともいずれかにはリコンビナントヒトアルブミンが添加されていることを特徴とするものである。 本発明の請求項6に係るヒト胚の体外受精及び培養方法は、グルコース、乳酸塩、ピルビン酸塩を含有し、かつ無血清である第1〜第3培養液を用いてヒト胚を体外で培養する方法であって、グルコース濃度が最も高い第1培養液でヒトの精子と卵子の受精を行い、グルコース濃度が最も低い第2培養液で受精後から16細胞期までのヒト胚を培養し、乳酸塩濃度及びピルビン酸塩濃度が最も低い第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのヒト胚を培養することを特徴とするものである。 請求項7に係る発明は、請求項6において、第1培養液として、グルコース濃度が2.2±1.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mM、かつ無血清であるものを用い、第2培養液として、グルコース濃度が0.2±0.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mM、かつ無血清であるものを用い、第3培養液として、グルコース濃度が2.1±1.05mM、乳酸塩濃度が10±5mM、ピルビン酸塩濃度が0.15±0.075mM、かつ無血清であるものを用いることを特徴とするものである。 請求項8に係る発明は、請求項6又は7において、第1〜第3培養液の少なくともいずれかに上皮細胞成長因子及びインスリンが添加されていることを特徴とするものである。 請求項9に係る発明は、請求項6乃至8のいずれか1項において、第1〜第3培養液の少なくともいずれかに完全無血清化のために血清及びアルブミン代替物質としてヒアルロナンが添加されていることを特徴とするものである。 請求項10に係る発明は、請求項6乃至9のいずれか1項において、第1〜第3培養液の少なくともいずれかにはリコンビナントヒトアルブミンが添加されていることを特徴とするものである。 本発明の請求項1に係るヒト胚の体外受精及び培養用培養液によれば、安全性が高く、質の良い受精卵を得ることができ、妊娠率を高めることができるものである。 請求項2に係る発明によれば、安全性が高く、質の良い受精卵を得ることができ、妊娠率を高めることができるものである。 請求項3に係る発明によれば、生産効率と生産胚の品質を高めることができるものである。 請求項4に係る発明によれば、卵子・精子細胞を保護したり、受精・発育を促進したりすることができるものである。 請求項5に係る発明によれば、感染の心配がなく安全であるので、第1〜第3培養液を受精・培養に適したものにすることができるものである。 本発明の請求項6に係るヒト胚の体外受精及び培養方法によれば、安全性が高く、質の良い受精卵を得ることができ、妊娠率を高めることができるものである。 請求項7に係る発明によれば、安全性が高く、質の良い受精卵を得ることができ、妊娠率を高めることができるものである。 請求項8に係る発明によれば、生産効率と生産胚の品質を高めることができるものである。 請求項9に係る発明によれば、卵子・精子細胞を保護したり、受精・発育を促進したりすることができるものである。 請求項10に係る発明によれば、感染の心配がなく安全であるので、第1〜第3培養液を受精・培養に適したものにすることができるものである。 以下、本発明の実施の形態を説明する。 本発明においてヒト胚の体外受精及び培養用培養液は、第1培養液と、第2培養液と、第3培養液とを備えている。 第1培養液は、ヒトの精子と卵子の受精を行うのに用いられるものであり、また第2倍溶液は、受精後(前核期)から16細胞期までのヒト胚を培養するのに用いられるものであり、また第3培養液は、桑実期から胚盤胞期までのヒト胚を培養するのに用いられるものである。いずれの培養液も、無機塩、エネルギー源(糖、アミノ酸など)、細胞保護物質(ポリビニールアルコール、ヒアルロナンを代表とするグリコスアミノグリカンなど)、抗生物質、生理活性物質(成長因子、サイトカインなど)を超純粋又は再蒸留水に溶解させることによって調製することができる。ただし、いずれの培養液も無血清である。また第1〜第3培養液においてエネルギー源の濃度は異ならせ、エネルギー源以外の成分の濃度は同じにしてある。 ここで、エネルギー源以外の成分としては、次のようなものを用いることができる。すなわち、塩化ナトリウム(NaCl)を95±47.5mM、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)を0.7±0.35mM、塩化カリウム(KCl)を2.50±1.25mM、塩化カルシウム(CaCl2)を1.70±0.85mM、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4・7H2O)を0.20±0.10mM、L−アラニン(L-Alanine)を0.05±0.025mM、L−アルギニン一塩酸塩(L-Arginine HCl)を0.30±0.15mM、L−アスパラギン一水和物(L-Asparagine H2O)を0.05±0.025mM、L−アスパラギン酸(L-Aspartic acid)を0.05±0.025mM、L−シスチン二塩酸塩(L-Cystine 2HCl)を0.05±0.025mM、L−グルタミン酸(L-Glutamic acid)を0.05±0.025mM、グリシン(Glycine)を0.05±0.025mM、L−ヒスチジン塩酸塩一水和物(L-Histidine HClH2O)を0.10±0.05mM、L−イソロイシン(L-Isoleucine)を0.20±0.10mM、L−ロイシン(L-Leucine)を0.20±0.10mM、L−リシン一塩酸塩(L-LysineHCl)を0.20±0.10mM、L−メチオニン(L-Methionine)を0.05±0.025mM、L−フェニルアラニン(L-Phenylalanine)を0.10±0.05mM、L−プロリン(L-Proline)を0.05±0.025mM、L−セリン(L-Serine)を0.05±0.025mM、L−トレオニン(L-Threonine)を0.20±0.10mM、L−トリプトファン(L-Tryptophan)を0.025±0.0125mM、L−チロシン(L-Tyrosine)を0.10±0.05mM、L−バリン(L-Valine)を0.20±0.10mM、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を21.43±10.7mM、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA 2Na 2H2O)を0.01±0.005mM、ゲンタマイシン硫酸塩(Gentamicin Sulfate)を5.0±2.5mg/L用いることができ、また培養時の操作性を向上させるために血清の代替成分としてポリビニルアルコール(Polyvinylalcohol)を100.0±50.0mg/L用いることができる。またL−グルタミン(L-Glutamine)を1.00±0.50mM用いることができるが、アンモニア/アンモニウムが発生するおそれがあるので、L−グルタミン(L-Glutamine)の代わりにアラニル−L−グルタミン(Alanyl-L-Glutamine)を1.00±0.50mM用いるのが好ましい。またpH調整用として塩酸(HCl)を0.003±0.0015mM用いることができる。 また、エネルギー源としては、D−グルコース(D-Glucose)等のグルコース、DL−乳酸ナトリウム(DL-Lactate Na)等の乳酸塩(Lactate)、ピルビン酸ナトリウム(Na-pyruvate)等のピルビン酸塩(Pyruvate)を用いることができるものであるが、これらの濃度は第1〜第3培養液において異ならせている。すなわち、グルコース濃度は第1培養液が最も高く、第2培養液が最も低い。また、乳酸塩濃度及びピルビン酸塩濃度は第3培養液が最も低い。 具体的には、第1培養液は、グルコース濃度が2.2±1.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mMである。このように第1培養液は精子のエネルギー代謝に必要なグルコースを豊富に含んでいるものである。なお、第1培養液の浸透圧は260〜275mOsmであることが好ましく、pHは7.2〜7.4であることが好ましい。 また第2培養液は、グルコース濃度が0.2±0.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mMである。第2培養液では初期胚の発育にグルコースを余り必要としないので、上記のようにグルコース濃度が低く設定されている。なお、第2培養液の浸透圧は260〜275mOsmであることが好ましく、pHは7.2〜7.4であることが好ましい。 また第3培養液は、グルコース濃度が2.1±1.05mM、乳酸塩濃度が10±5mM、ピルビン酸塩濃度が0.15±0.075mMである。第3培養液では後期胚の卵割に多くのエネルギーを必要とするので、上記のようにグルコース濃度が高く設定されている。また第3培養液では卵子の栄養要求性に合わせて乳酸塩濃度及びピルビン酸塩濃度が低く設定されている。なお、第3培養液の浸透圧は260〜275mOsmであることが好ましく、pHは7.2〜7.4であることが好ましい。 ここで、生産効率と生産胚の品質の観点から、特に第1〜第3培養液の少なくともいずれかには上皮細胞成長因子(EGF)を20±10ng/ml及びインスリン(Insulin)を10±5μg/ml添加しておくのが好ましい。上皮細胞成長因子(EGF)は細胞の成長と発育を促進するものであり、またインスリン(Insulin)は糖代謝を円滑に進めるものであり、これらのものは細胞の分割促進と受精卵の子宮内への着床を行わせるのに重要な役割を演ずる。なお、同様に第1培養液にも上皮細胞成長因子(EGF)及びインスリン(Insulin)を添加しておいてもよい。 また第1〜第3培養液の少なくともいずれかには完全無血清化のために血清及びアルブミン代替物質としてヒアルロナンを0.05〜7.0mg/ml添加しておくのが好ましい。これにより、卵子・精子細胞を保護したり、受精・発育を促進したりすることができるものである。なお、ヒアルロナンとはヒアルロン酸やヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸塩のことをいう。 また第1〜第3培養液の少なくともいずれかにはリコンビナントヒトアルブミン(r−HA)を0.1〜2質量%添加しておくのが好ましい。リコンビナントヒトアルブミンは、感染の心配がなく安全であるので、第1〜第3培養液を受精・培養に適したものにすることができるものである。 また各培養液の浸透圧及びpHは、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)等を適宜に増量又は減量することによって調整することができる。 そしてヒトの卵子の採取は、ヒト卵子採取用培養液を用いて行うことができる。このヒト卵子採取用培養液は、第1培養液に11±5.5mMのHepes(4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid;C6H18N2O4S)及び9±4.5mMのNa−Hepes(Sodium 4-(2-hydroxyethyl)piperazin-1-ylethanesulphonate;C8H17N2NaO4S)を添加して調製することができる。このようにHepes及びNa−Hepesが添加されていることによって、インキュベータ外の空気中でヒトの卵子を採取する場合に、ヒト卵子採取用培養液のpHを安定させることができるものである。なお、ヒトの卵子の採取は、卵子採取用ツールの注射筒にあらかじめヒト卵子採取用培養液を吸引した後、超音波ガイド下で卵子採取用ツールの注射針を卵胞に穿刺し、卵胞内の卵胞液と共に卵子を注射筒内に吸引することによって行うことができる。 また、不妊患者から採取した卵子は、ガラス化保存法によって、すなわち卵子凍結保存液に入れて液体窒素で凍結することによって半永久的に保存することができる。ここで、卵子凍結保存液は、ヒト卵子採取用培養液にメチルセルロースを0.1〜1.0質量%添加して調製することができる。必要に応じてさらに、糖類(ラフィノース、シュークロース、トレハロース及びラクトースなど)、高分子化合物(Dextrin, PVA;Poly Vinyl Alcohol,PVP;Poly Vinyl Pyrrolidoneなど)等の毒性の低いあるいは毒性の無い凍結保護剤(エチレングリコール、DMSO:Dimethyl Sulphoxide)を10〜40質量%添加してもよい。この凍結保護剤は、卵子の凍結保存前に卵子細胞内外の自由水及び結合水と置き換わって、卵子に耐凍能を付与することができる。 また、上記のヒト卵子採取用培養液は、ヒト卵子マイクロタクタイルセンサ(MTS)測定用培養液として用いることができる(例えば、文献日本受精着床学会雑誌 25,116-119,2008及び文献Human Cell2006,19,119-125)。このヒト卵子MTS測定用培養液は、ヒト卵子の品質を評価するためにMTSを用いて卵子透明帯の弾性率を測定するために用いられるものである。そして弾性率の測定は、インキュベータ外の空気中で行われるが、ヒト卵子MTS測定用培養液にはHepes及びNa−Hepesが添加されているので、pHが安定しているものである。 他方、ヒトの精子の採取は、ヒト精子採取用培養液を用いて、ヒトから採取した精液を洗浄すると共に遠心分離することによって行うことができる。ここで、ヒト精子採取用培養液は、ヒト卵子採取用培養液と同様に、第1培養液に11±5.5mMのHepes(4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid;C6H18N2O4S)及び9±4.5mMのNa−Hepes(Sodium 4-(2-hydroxyethyl)piperazin-1-ylethanesulphonate;C8H17N2NaO4S)を添加して調製することができる。このようにHepes及びNa−Hepesが添加されていることによって、インキュベータ外の空気中でヒトの精液を洗浄したり遠心分離したりする場合に、ヒト精子採取用培養液のpHを安定させることができるものである。なお、精液の洗浄・遠心分離によって、細菌や白血球などの不純物を除去し、運動性の高い精子のみを得ることができるものである。 また、一旦採取した精子は、精子凍結保存液に入れて液体窒素で凍結することによって半永久的に保存することができる。ここで、精子凍結保存液は、ヒト精子採取用培養液にメチルセルロースを0.1〜1.0質量%、ヒアルロナンを0.1〜5.0mg/ml添加して調製することができる。必要に応じてさらに、糖類(ラフィノース、シュークロース、トレハロース及びラクトースなど)、高分子化合物(Dextrin, PVA;Poly Vinyl Alcohol,PVP;Poly Vinyl Pyrrolidoneなど)等の毒性の低いあるいは毒性の無い凍結保護剤を10〜30質量%添加してもよい。この凍結保護剤は、精子の凍結保存前に精子細胞内外の自由水及び結合水と置き換わって、精子に耐凍能を付与することができる。 次に、上記のように採卵・採精した後、第1〜第3培養液を備える体外受精及び培養用培養液を用いてヒト胚を体外で培養するにあたっては、インキュベータ内において、まず第1培養液でヒトの精子と卵子の受精を行う。このとき特に精子の活力が芳しくなく自力受精が不可能な場合には、顕微授精法(卵細胞質内精子注入法;ICSI)によって受精を行うこともできる。 受精確認後、第1培養液を第2培養液に交換し、この第2培養液で受精確認後から16細胞期までのヒト胚(初期胚)を培養する。このヒト胚は、胚細胞緊密化(compaction)を起こす前のものである。 なお、2〜8細胞期に至ったヒト胚は、医師の判断により、第2培養液と共に移植用カテーテルによって、非外科的(経膣的)に子宮内に移植することができる。ここで、着床率をより向上させるためには、第2培養液をヒト胚移植用培養液に交換した後に移植するのが好ましい。このヒト胚移植用培養液は、第2培養液にヒアルロナンを0.1〜5.0mg/ml、上皮細胞成長因子(EGF)を10〜50ng/ml添加して調製することができる。そしてこのヒト胚移植用培養液中のヒアルロナンが、上皮細胞成長因子(EGF)との相乗効果により血管新生を促進させ、着床率をより向上させるものである。 ここで、受精後から16細胞期に至るまでの間、ヒト胚の品質を評価するためにマイクロタクタイルセンサ(MTS)を用いて透明帯の弾性率を測定することができる。この測定には初期胚MTS測定用培養液を用いることができ、この初期胚MTS測定用培養液は、第2培養液に11±5.5mMのHepes(4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid;C6H18N2O4S)及び9±4.5mMのNa−Hepes(Sodium 4-(2-hydroxyethyl)piperazin-1-ylethanesulphonate;C8H17N2NaO4S)を添加して調製することができる。このようにHepes及びNa−Hepesが添加されていることによって、インキュベータ外の空気中でヒト胚の透明帯の弾性率を測定する場合に、初期胚MTS測定用培養液のpHを安定させることができるものである。 また、初期胚は、ガラス化保存法によって、すなわち初期胚凍結用培養液に入れて液体窒素で凍結することによって半永久的に保存することができる。ここで、初期胚凍結用培養液は、初期胚MTS測定用培養液にメチルセルロースを0.1〜1.0質量%、ヒアルロナンを0.1〜5.0mg/ml添加して調製することができる。必要に応じてさらに、糖類(ラフィノース、シュークロース、トレハロース及びラクトースなど)、高分子化合物(Dextrin, PVA;Poly Vinyl Alcohol,PVP;Poly Vinyl Pyrrolidoneなど)等の毒性の低いあるいは毒性の無い凍結保護剤(エチレングリコール、DMSO:Dimethyl Sulphoxide)を10〜40質量%添加してもよい。この凍結保護剤は、卵子の凍結保存前に精子細胞内外の自由水及び結合水と置き換わって、初期胚に耐凍能を付与することができる。 そして16細胞期又は桑実期に至ると、第2培養液を第3培養液に交換し、この第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのヒト胚(後期胚)を培養する。このように発育ステージに応じて第1培養液を第2培養液に交換し、さらに第2培養液を第3培養液に交換するものである。なお、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%CO2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行うのが好ましい。 ここで、16細胞期又は桑実期に至るまでの間、ヒト胚の品質を評価するためにマイクロタクタイルセンサ(MTS)を用いて透明帯の弾性率を測定することができる(例えば、文献日本受精着床学会雑誌 25,116-119,2008及び文献Human Cell2006,19,119-125)。この測定には後期胚MTS測定用培養液を用いることができ、この後期胚MTS測定用培養液は、第3培養液に11±5.5mMのHepes(4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid;C6H18N2O4S)及び9±4.5mMのNa−Hepes(Sodium 4-(2-hydroxyethyl)piperazin-1-ylethanesulphonate;C8H17N2NaO4S)を添加して調製することができる。このようにHepes及びNa−Hepesが添加されていることによって、インキュベータ外の空気中でヒト胚の透明帯の弾性率を測定する場合に、後期胚MTS測定用培養液のpHを安定させることができるものである。 また、後期胚は、ガラス化保存法によって、すなわち後期胚凍結用培養液に入れて液体窒素で凍結することによって半永久的に保存することができる。ここで、後期胚凍結用培養液は、後期胚MTS測定用培養液にメチルセルロースを0.1〜1.0質量%、ヒアルロナンを0.1〜5.0mg/ml添加して調製することができる。必要に応じてさらに、糖類(ラフィノース、シュークロース、トレハロース及びラクトースなど)、高分子化合物(Dextrin, PVA;Poly Vinyl Alcohol,PVP;Poly Vinyl Pyrrolidoneなど)等の毒性の低いあるいは毒性の無い凍結保護剤を10〜30質量%添加してもよい。この凍結保護剤は、卵子の凍結保存前に精子細胞内外の自由水及び結合水と置き換わって、後期胚に耐凍能を付与することができる。 そして、胚盤胞期に至ったヒト胚は、医師の判断により、第3培養液と共に移植用カテーテルによって、非外科的(経膣的)に子宮内に移植することができる。ここで、着床率をより向上させるためには、第3培養液をヒト胚移植用培養液に交換した後に移植するのが好ましい。このヒト胚移植用培養液は、第3培養液にヒアルロナンを0.1〜5.0mg/ml、上皮細胞成長因子(EGF)を10〜50ng/ml添加して調製することができる。そしてこのヒト胚移植用培養液中のヒアルロナンが、上皮細胞成長因子(EGF)との相乗効果により血管新生を促進させ、着床率をより向上させるものである。 従来は受精から胚盤胞期までのヒト胚を単一の培養液で培養するのが一般的であったが、このような培養方法では質の良い受精卵を得ることが難しい。しかし、本発明では第1〜第3培養液において、ヒト胚の発育ステージの栄養要求性に合わせて、グルコース濃度、乳酸塩濃度、ピルビン酸塩濃度をそれぞれ増減させているので、質の良い受精卵を得ることができるものであり、その結果、着床率が向上し、妊娠率を高めることができるものである。そして第1〜第3培養液においてグルコース、乳酸塩、ピルビン酸塩以外の成分と濃度はほぼ同一であるので、患者の卵巣から卵子を採取し、精巣から精子を採取してから、受精卵の培養を経て子宮内へ受精卵を移植するまでの間、卵子、精子、受精卵に対するストレスを最小限に抑えることができるものである。従って、第1〜第3培養液は、看者子宮への受精卵移植液あるいはガラス化保存液としての使用も可能である。本発明ではヒト由来の血清成分を除外しているので、病原体の侵入・感染を防止することができ、安全性を高めることができるものである。 以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。 下記[表1]に示す組成で実施例1、2及び比較例1の培養液を調製した。実施例1、2はそれぞれ第1〜第3培養液を備えている。比較例1はKSOM(Potassium Simplex Optimized Medium)をベースとする従来の市販の培養液(Life Global社製「Global」)である。 次に、実施例1及び比較例1の培養液を用いてそれぞれマウス胚を体外で培養した。 実施例1については、まず第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行い、次に第2培養液で受精後から16細胞期までのマウス胚を培養した後、第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。なお、受精・培養は、CO2濃度を5〜6%に保ったインキュベータ内において行った。 比較例1については、上記[表1]に示す培養液のみで受精を行うと共に、受精後から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。 また、実施例1及び比較例1の第2、第3培養液のそれぞれに上皮細胞成長因子(EGF)を20ng/ml添加して上記と同様にマウス胚を培養した。また、実施例1及び比較例1の第2、第3培養液のそれぞれにインスリン(Ins)を10μg/ml添加して上記と同様にマウス胚を培養した。また、実施例1及び比較例1の第2、第3培養液のそれぞれに上皮細胞成長因子(EGF)を20ng/ml及びインスリン(Ins)を10μg/ml添加して上記と同様にマウス胚を培養した。 なお、上記の培養実験では、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%CO2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行った。また上記の培養実験は各2回行った。 そして、EGFもInsも添加していない場合、EGFのみ添加した場合、Insのみ添加した場合、EGFとInsを両方添加した場合のそれぞれの場合について、胚盤胞到達率、総細胞数、総細胞数50未満の胚盤胞の個数と割合、総細胞数100以上の胚盤胞の個数と割合を求めた。その結果を下記[表2]に示す。なお、下記[表2]中、「N」は総細胞数を数えた胚盤胞の個数(総細胞数50未満の胚のデータは含まない)を示し、「STD」は標準偏差を示す。 一方、実施例2及び比較例1の培養液を用いてそれぞれマウス胚を体外で培養した。 実施例2については、まず第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行い、次に第2培養液で受精後から16細胞期までのマウス胚を培養した後、第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。 比較例1については、上記[表1]に示す培養液のみで受精を行うと共に、受精後から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。 また、実施例2及び比較例1の第2、第3培養液のそれぞれに上皮細胞成長因子(EGF)を20ng/ml添加して上記と同様にマウス胚を培養した。また、実施例2及び比較例1の第2、第3培養液のそれぞれにインスリン(Ins)を10μg/ml添加して上記と同様にマウス胚を培養した。また、実施例2及び比較例1の第2、第3培養液のそれぞれに上皮細胞成長因子(EGF)を20ng/ml及びインスリン(Ins)を10μg/ml添加して上記と同様にマウス胚を培養した。 なお、上記の培養実験では、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%CO2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行った。また上記の培養実験は各2回行った。 そして、EGFもInsも添加していない場合、EGFのみ添加した場合、Insのみ添加した場合、EGFとInsを両方添加した場合のそれぞれの場合について、胚盤胞到達率、総細胞数、総細胞数50未満の胚盤胞の個数と割合、総細胞数100以上の胚盤胞の個数と割合を求めた。その結果を下記[表3]に示す。なお、下記[表3]中、「N」は総細胞数を数えた胚盤胞の個数(総細胞数50未満の胚のデータは含まない)を示し、「STD」は標準偏差を示す。 また、実施例2の培養液を用いて次のようにマウス胚を体外で培養した。 まず第1培養液にコスモ・バイオ株式会社製のヒアルロナンを0.125mg/ml、0.5mg/ml、2.0mg/ml、ナカライテスク株式会社製のヒアルロナンを0.125mg/ml、0.5mg/ml、2.0mg/ml、ヒト血清アルブミン(HSA)を1質量%添加し、各第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行った。また比較のため、ヒアルロナンもHSAも添加しない無添加の第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行った。このときの受精数及び受精率を下記[表4]に示す。 次に第2、第3培養液のそれぞれに上皮細胞成長因子(EGF)を20ng/ml及びインスリン(Ins)を10μg/ml添加した。さらにこの第2、第3培養液にコスモ・バイオ株式会社製のヒアルロナンを0.125mg/ml、0.5mg/ml、2.0mg/ml、ナカライテスク株式会社製のヒアルロナンを0.125mg/ml、0.5mg/ml、2.0mg/ml添加し、各第2培養液で受精後から16細胞期までのマウス胚を培養した後、各第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。また比較のため、ヒアルロナンもHSAも添加しない無添加の第2培養液で受精後から16細胞期までのマウス胚を培養した後、同様に無添加の第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。 なお、上記の培養実験では、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%CO2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行った。 そして、上記の各場合について、2cell分割数(受精後2細胞に発育した胚数)、2cell分割率(受精後2細胞に発育した胚の占める占有率)、胚盤胞到達数、胚盤胞到達率、H.ing数(Hatching blastocystのことであり、胚盤胞(blastocyst)に発育したものの中で透明帯から脱出を開始した胚数)、H.ing率(透明帯から脱出を開始した胚の占める占有率)を求めた。その結果を下記[表4]に示す。なお、下記[表4]中、「STD」は標準偏差を示し、「n」は総細胞数を数えた胚盤胞の個数(総細胞数50未満の胚のデータは含まない)を示す。 また、実施例2の培養液を用いて次のようにマウス胚を体外で培養した。 まず第1培養液にリコンビナントヒトアルブミン(r−HA)を0.5質量%、ヒト血清アルブミン(HSA)を1質量%添加し、各第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行った。また比較のため、r−HAもHSAも添加しない無添加の第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行った。さらに比較のため、株式会社ナカメディカル製「QAファティリゼイション(HTF)メディウム」にr−HAを0.5質量%、HSAを1質量%添加し、各HTFでマウスの精子と卵子の受精を行った。このときの受精数及び受精率を下記[表5]に示す。 次に第2、第3培養液のそれぞれに上皮細胞成長因子(EGF)を20ng/ml及びインスリン(Ins)を10μg/ml添加したが、r−HAもHSAも添加しなかった。そして第2培養液で受精後から16細胞期までのマウス胚を培養した後、第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。 なお、上記の培養実験では、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%CO2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行った。 そして、上記の各場合について、2cell分割数(受精後2細胞に発育した胚数)、2cell分割率(受精後2細胞に発育した胚の占める占有率)、胚盤胞到達数、胚盤胞到達率、H.ing数(Hatching blastocystのことであり、胚盤胞(blastocyst)に発育したものの中で透明帯から脱出を開始した胚数)、H.ing率(透明帯から脱出を開始した胚の占める占有率)を求めた。その結果を下記[表5]に示す。なお、下記[表5]中、「STD」は標準偏差を示し、「n」は総細胞数を数えた胚盤胞の個数(総細胞数50未満の胚のデータは含まない)を示す。 次に、実施例2の第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行い、受精後から第2培養液で培養を行い、受精確認後24時間目に2細胞期の胚のみを選定し、48時間目まで第2培養液、48時間目以降は第3培養液で継続して培養を行い、受精確認後96時間目に2細胞期胚のうちの胚盤胞数から総胚盤胞率を求めた。 一方、比較例1の培養液でマウスの精子と卵子の受精を行い、受精後も同様の培養液で培養を行い、受精確認後24時間目に2細胞期の胚のみを選定し、さらに同様の培養液で継続して培養を行い、受精確認後96時間目に2細胞期胚のうちの胚盤胞数から総胚盤胞率を求めた。 なお、上記のいずれの場合においても、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%O2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行った。 上記のようにして求めた実施例2及び比較例1の総胚盤胞率を棒グラフにして図1に示す。 また、胚盤胞まで到達した胚に対して低張液にて低張処理を施し、これを固定液でスライドガラス上に固定した。引き続きDAPI染色を施した後、蛍光顕微鏡にて観察及び撮影を行った。そして撮影した画像から全ての胚の総細胞数を数えて平均総細胞数を求めた。また、2種の蛍光色素で染色し、平均総細胞数と同様に細胞数を数えて平均ICM(内部細胞塊)数を求めた。 上記のようにして求めた実施例2及び比較例1の平均総細胞数を棒グラフにして図2に示す。 また実施例2及び比較例1について胚盤胞の総細胞数を数えて総細胞数が100個以上の優良胚盤胞率を求めた。この優良胚盤胞率を棒グラフにして図3に示す。 また、実施例2及び比較例1について受胚雌妊娠率及び産仔生産率を求めた。 具体的には実施例2については、まず第1培養液でマウスの精子と卵子の受精を行い、次に第2培養液で受精後から16細胞期までのマウス胚を培養した後、第3培養液で桑実期から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。なお、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%O2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行った。次にこの胚盤胞期のマウス胚をあらかじめ精管結刹を施したICRオスマウスと自然交尾させ偽妊娠の状態にしたICRメスマウスの卵管あるいは子宮に移植した。 また比較例1については、上記[表1]に示す培養液のみで受精を行うと共に、受精後から胚盤胞期までのマウス胚を培養した。なお、受精から胚盤胞期までの培養は、インキュベータを用い、5〜6%O2を含む空気の湿度飽和気相の環境下において温度を37.0℃に設定して行った。次にこの胚盤胞期のマウス胚をあらかじめ精管結刹を施したICRオスマウスと自然交尾させ偽妊娠の状態にしたICRメスマウスの卵管あるいは子宮に移植した。 そして、胚盤胞期のマウス胚を移植した雌のうち、妊娠成立に至った雌の頭数の割合として受胚雌妊娠率(レシピエントの妊娠率)を求めた。また、移植した胚盤胞期のマウス胚の総数のうち、産まれた匹数の割合として産仔生産率を求めた。 上記のようにして求めた実施例2及び比較例1の受胚雌妊娠率及び産仔生産率を棒グラフにして図4に示す。 このように、図1〜図4にみられるように比較例1に比べて実施例2の培養液の方が質の良い受精卵を得ることができることが確認される。その結果、着床率が向上し、妊娠率を高めることができるものである。また本発明ではヒト由来の血清成分を除外しているので、病原体の侵入・感染を防止することができ、安全性を高めることができるものである。実施例2及び比較例1について総胚盤胞率を示す棒グラフである。実施例2及び比較例1について平均総細胞数を示す棒グラフである。実施例2及び比較例1について優良胚盤胞率を示す棒グラフである。実施例2及び比較例1について受胚雌妊娠率(レシピエントの妊娠率)及び産仔生産率を示す棒グラフである。 ヒトの精子と卵子の受精を行うのに用いられる第1培養液と、受精後から16細胞期までのヒト胚を培養するのに用いられる第2培養液と、桑実期から胚盤胞期までのヒト胚を培養するのに用いられる第3培養液とを備え、第1〜第3培養液は、グルコース、乳酸塩、ピルビン酸塩を含有し、かつ完全無血清であると共に、グルコース濃度は第1培養液が最も高く、第2培養液が最も低く、乳酸塩濃度及びピルビン酸塩濃度は第3培養液が最も低いことを特徴とするヒト胚の体外受精及び培養用キット。 第1培養液は、グルコース濃度が2.2±1.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mM、かつ無血清であり、第2培養液は、グルコース濃度が0.2±0.1mM、乳酸塩濃度が20±10mM、ピルビン酸塩濃度が0.3±0.15mM、かつ無血清であり、第3培養液は、グルコース濃度が2.1±1.05mM、乳酸塩濃度が10±5mM、ピルビン酸塩濃度が0.15±0.075mM、かつ無血清であることを特徴とする請求項1に記載のヒト胚の体外受精及び培養用キット。 第1〜第3培養液の少なくともいずれかに上皮細胞成長因子及びインスリンが添加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒト胚の体外受精及び培養用キット。 第1〜第3培養液の少なくともいずれかに完全無血清化のために血清及びアルブミン代替物質としてヒアルロナンが添加されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒト胚の体外受精及び培養用キット。 第1〜第3培養液の少なくともいずれかにはリコンビナントヒトアルブミンが添加されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒト胚の体外受精及び培養用キット。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る