タイトル: | 公表特許公報(A)_アポリポタンパク質及びホスホリピド−アポリポタンパク質粒子を含む、膜タンパク質用のインビトロタンパク質合成システム |
出願番号: | 2008533693 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12P 21/02,C12N 15/09 |
クドリッキ ウィースロー フレッチャー ジュリア カッツェン フェデリコ JP 2009521209 公表特許公報(A) 20090604 2008533693 20060927 アポリポタンパク質及びホスホリピド−アポリポタンパク質粒子を含む、膜タンパク質用のインビトロタンパク質合成システム ライフ テクノロジーズ コーポレーション 502221282 清水 初志 100102978 刑部 俊 100119507 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 井上 隆一 100142929 クドリッキ ウィースロー フレッチャー ジュリア カッツェン フェデリコ US 60/721,339 20050927 US 11/535,960 20050927 US 60/724,213 20051004 US 60/815,695 20060621 US 60/815,750 20060621 C12P 21/02 20060101AFI20090508BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090508BHJP JPC12P21/02 CC12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2006038173 20060927 WO2007038755 20070405 49 20080507 4B024 4B064 4B024AA01 4B024BA80 4B024CA02 4B024CA11 4B064AG01 4B064CA21 4B064CA50 4B064CC24 4B064DA01 本発明は広義にはインビトロタンパク質合成システム、より詳細には膜タンパク質のインビトロ翻訳システムの提供に関する。 本特許出願は、米国仮特許出願60/721339号(発明の名称:"In vitro Translation Systems for Membrane Proteins that Include Phospholipid−Protein Particles”、2005年9月27日出願)、米国仮特許出願60/724213号(発明の名称:"In vitro Translation Systems for Membrane Proteins that Include Phospholipid−Protein Particles”、2005年10月4日出願)、米国仮特許出願60/815750号、発明の名称:"Cell−Free Protein Synthesis Systems Including Apolipoproteins”、2006年6月21日出願)、及び米国仮特許出願60/815695号、発明の名称:"Cell−Free Protein Synthesis of Membrane Proteins Using Apolipoproteins”、2006年6月21日出願)の優先権を主張し、各々の全開示内容を本願明細書に援用する。配列表 本特許出願はまた、配列表を包含し、その全開示内容を本願明細書に援用する。 加齢関連の障害、自己免疫疾患及び癌などの医学的症状を治療するためのストラテジーは、タンパク質の機能を解明することに大きく依存している。大多数の薬物標的はタンパク質であり、タンパク質薬物標的の大半が膜タンパク質であると考えられている。タンパク質及び特に膜タンパク質を効率的に合成し、その構造及び機能の解析に十分な量を確保することは、疾患に対処できる新薬の開発にとりきわめて重要である。 インビトロタンパク質合成システムでは、無細胞抽出物中の核酸鋳型からタンパク質を調製でき、タンパク質の効果的な合成及びそれに続く単離が容易になるため、タンパク質のハイスループットな構造・機能解析が可能となり、薬剤の開発及び探索を加速させる効果が期待できる。 残念なことに、全てのタンパク質が、インビトロ合成システムにおいて、可溶性の形態で合成されるわけではない。膜タンパク質は特に、無細胞翻訳システムで調製した場合には不溶性となることが多く、それらの天然の構造及び活性を解析するためには、変性用の界面活性剤中で当該タンパク質を可溶化し、更にタンパク質の再度のフォールディングを試みる必要がある。これらの試みは煩雑であり、また成功しないことが多い。 Bayburtらは、界面活性剤で可溶化したアポリポタンパク質A1(「Apo A1」)と、リン脂質とを混合したとき、ナノスケールの脂質−タンパク質粒子が即座に形成されることを報告している(非特許文献1)。界面活性剤を透析除去してナノスケールの脂質−タンパク質粒子を得、それを構造解析した結果、Apo A1タンパク質で取り囲まれた脂質二重層が構成されていることが解明された。Bayburt及びSligarは、界面活性剤の存在下で、脂質−タンパク質粒子を形成する際のApo A1と同様に機能するApo A1(「足場タンパク質」)の合成変異体について記載している(非特許文献2、特許文献1及び2、全開示内容を本願明細書に援用する)。これらの研究者は、他の膜タンパク質を界面活性剤で可溶化した際、同じセルフアセンブリ用の界面活性剤ミックスに存在させ、更に透析した場合にそれらがナノディスクの脂質二重層に組み込まれることを解明している。 しかしながら、可溶化形態の膜タンパク質を調製するこの技術は未だ、セルフアセンブリ用の界面活性剤ミックス中でナノディスク成分と結合させる前に膜タンパク質を精製し、可溶化するための更なる工夫を必要としている。これらの方法では、特定のタンパク質を個々に区別する必要があり、時間を要し、操作が煩雑で、しばしばタンパク質機能に影響を及ぼしうる過激な変性剤の使用が必要となる場合もある。すなわち、膜タンパク質をインビトロシステムで簡便に発現させるための方法を開発し、可溶性の、天然の形態の、又は実質的に精製されたが若しくはより簡便な精製方法を使用して迅速に精製できる形態のタンパク質を調製することに対するニーズが存在する。米国特許第7048949号米国特許出願公開第2005/0182243号Bayburt,T.H.,Carlson,J.W.,and Sligar,S.G.(1998)”Reconstitution and Imaging of a Membrane Protein in a Nanometer−Sized Phospholipid Bilayer.”Journal of Structural Biology,123,37−44.Civjan,N.R.,Bayburt,T.H.,Schuler,M.A.,and Sligar,S.G.(2003)"Direct Solubilization of Heterologously Expressed Membrane Proteins by Incorporation into Nanoscale Lipid Bilayers.”BioTechniques,35,556−563 本発明は、アポリポタンパク質(改変アポリポタンパク質及び天然のアポリポタンパク質の変異型を含む)を含んでなる無細胞インビトロ合成システムにおいてタンパク質を合成するための効率的なシステム及び方法の提供に関する。その様々な態様及び実施形態では、本発明は、無細胞システムにおいて可溶化形態の膜タンパク質を合成するための効率的なシステム及び方法の提供に関する。 本発明の一態様は、インビトロで目的タンパク質を合成する方法の提供に関し、当該方法は、アポリポタンパク質を含有するインビトロタンパク質合成システムに当該目的タンパク質をコードする核酸鋳型を添加し、当該インビトロタンパク質合成システムをインキュベートして目的タンパク質を合成することを含んでなる。幾つかの好ましい実施形態では、当該目的タンパク質は可溶化形態において合成される。幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質である。 例えば、本発明の方法で使用するアポリポタンパク質は、いかなるアポリポタンパク質であってもよく、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリン(Apoliphorin)I、アポリフォリンII又はアポリフォリンIII、上述したアポリポタンパク質のあらゆる変異体、又は、天然のアポリポタンパク質の1つ以上のドメインの配列若しくはそれらに実質的に相同な配列を使用して改変されるアポリポタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。 本発明の幾つかの実施形態は、アポリポタンパク質の少なくとも15の一連のアミノ酸を有する、70%以上のアミノ酸配列同一性を有するアポリポタンパク質変異体又は改変アポリポタンパク質の使用に関し、かかるタンパク質としては、限定されないが、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリンI、アポリフォリンII又はアポリフォリンIIIが挙げられる。 本発明の幾つかの実施形態は、アポリポタンパク質の螺旋形ドメインの少なくとも10の一連のアミノ酸を有する、90%以上のアミノ酸配列同一性を有するアポリポタンパク質変異体又は改変アポリポタンパク質の使用に関し、かかるタンパク質としては、限定されないが、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリンI、アポリフォリンII又はアポリフォリンIIIが挙げられる。 インビトロ合成システムに添加されるアポリポタンパク質は、野生型アポリポタンパク質のアミノ酸配列に対して1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入又は置換を行い、アミノ酸配列を修飾してもよい。インビトロ合成システムに添加されるアポリポタンパク質は、1つ以上の化学的若しくは酵素的修飾を有してもよい。幾つかの実施形態では、インビトロ合成システムに添加されるアポリポタンパク質は、ラベル又はタグを(例えばペプチドタグ)含んでなる。 幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質であり、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートすることにより、アポリポタンパク質の非存在下でタンパク質を翻訳する場合よりも多量の目的タンパク質が可溶化形態で合成される。幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質であり、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートすることにより、アポリポタンパク質の非存在下で目的タンパク質を翻訳した場合よりも、合成された全ての目的タンパク質に対してより高いパーセンテージで目的の可溶性タンパク質が得られる。 本発明の方法の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質の存在下での目的タンパク質の合成の後、目的タンパク質はアポリポタンパク質と共に会合する。幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質の存在下でインビトロ合成した目的タンパク質は、アポリポタンパク質と共単離する。 本発明の方法の幾つかの実施形態では、インビトロタンパク質合成システムで提供されるアポリポタンパク質は、リン脂質−アポリポタンパク質粒子として存在する。本発明の方法の幾つかの実施形態では、インビトロタンパク質合成システムにおけるアポリポタンパク質はリン脂質−アポリポタンパク質粒子として存在し、当該システムで合成される目的タンパク質はリン脂質−アポリポタンパク質粒子と会合する。幾つかの好ましい実施形態では、リン脂質−アポリポタンパク質粒子を含むインビトロ反応において、合成される目的タンパク質は、リン脂質−アポリポタンパク質粒子と共に単離できる。 本発明の幾つかの実施形態では、当該方法は更に、インビトロ合成混合物から目的タンパク質を単離することを含んでなる。当該単離は、例えば、目的タンパク質の一部であるペプチドタグを用いて行ってもよく、又はインビトロタンパク質合成反応において得られるアポリポタンパク質の一部であるペプチドタグを用いて行ってもよい。 別の態様では、本発明は細胞抽出物及びアポリポタンパク質を含んでなるインビトロタンパク質合成システムの提供に関する。タンパク質合成機構の構成要素を含有する細胞抜粋は従来技術において公知で、原核若しくは真核生物細胞由来であってもよい。本発明の方法で使用するアポリポタンパク質はいかなるアポリポタンパク質であってもよく、限定されないが、本明細書に記載のアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリン(Apoliphorin)I、アポリフォリンII又はアポリフォリンIII、上述したアポリポタンパク質のあらゆる変異体、又は、天然のアポリポタンパク質の1つ以上のドメインの配列若しくはそれらに実質的に相同な配列を使用して改変されるアポリポタンパク質が挙げられる。 インビトロ合成システムにおいて得られるアポリポタンパク質は修飾若しくは誘導体化されたアポリポタンパク質であってもよく、当該修飾若しくは誘導体化されたアポリポタンパク質は1つ以上の化学的修飾がなされている。インビトロ合成システムで提供されるアポリポタンパク質はタグ又はラベルを含んでなってもよい。 インビトロタンパク質合成システムは好ましくは、エネルギーをタンパク質合成に提供するための1つ以上の化学エネルギー供給源を含んでなる。当該エネルギー供給源の非限定的な例としては、ヌクレオチド(例えばATP又はGTP)、解糖中間体、リン酸化された化合物及びエネルギーを発生させる酵素)である。本発明のインビトロタンパク質合成システムは更に、遊離アミノ酸、塩、緩衝化合物、酵素、阻害薬又は補因子を含んでなってもよい。 インビトロタンパク質合成システムは、1つ以上の核酸鋳型を更に含んでなってもよい。当該核酸鋳型は、DNA鋳型又はRNA鋳型であってもよく、インビトロ合成しようとするいかなる目的タンパク質をコードしてもよい。インビトロタンパク質合成システムに存在する核酸鋳型は、複数の目的タンパク質をコードしてもよい。例えば、IVPSシステムの核酸鋳型は、固体支持体(例えばビーズ、マトリックス、チップ、アレイ、膜、シート、ディッシュ又はプレート)に結合させてもよい。 本発明のインビトロタンパク質合成システムは、1つ以上の界面活性剤又は1つ以上の脂質(例えば1つ以上のリン脂質)を更に含んでなってもよい。幾つかの例示的実施形態では、本発明のインビトロ合成システムは、1つ以上の脂質と会合したアポリポタンパク質を含んでなってもよい。幾つかの例示的実施形態において、本発明のインビトロ合成システムは、リン脂質−アポリポタンパク質粒子中の1つ以上のリン脂質と会合したアポリポタンパク質を含んでなる。これらの実施形態では、好ましくはインビトロ合成システムにおいて合成される目的タンパク質は、リン脂質−アポリポタンパク質粒子と会合体を形成する。好ましい実施形態では、インビトロ合成システムにおいて合成される目的タンパク質は、リン脂質−アポリポタンパク質粒子と共に単離できる。 更に他の態様では、本発明はインビトロでタンパク質を合成方法の提供に関し、詳細には当該方法は、インビトロ合成システムに、アポリポタンパク質をコードする核酸構築物と、目的タンパク質をコードする核酸構築物を添加し、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートし、アポリポタンパク質及び目的タンパク質を合成することを含んでなる。幾つかの好ましい実施形態では、当該目的タンパク質は可溶化形態で合成される。幾つかの好ましい実施形態では、当該目的タンパク質は膜タンパク質である。 幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は第1の核酸構築物に提供され、目的タンパク質は第2の核酸構築物に提供される。本発明の本態様の他の実施形態では、アポリポタンパク質をコードする配列及び目的タンパク質をコードする配列は、同じ核酸構築物上に提供される。アポリポタンパク質をコードする配列、及び目的タンパク質をコードする配列を含むDNA構築物は、2つの遺伝子配列のためのプロモータを別個に有し、及び/又は2つの遺伝子配列との間にIRES配列を有してもよい。 これらの本発明の態様では、アポリポタンパク質をコードする核酸構築物は、いかなるアポリポタンパク質もコードしてもよく、例えば、本願明細書に記載の、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリンI、アポリフォリンII若しくはアポリフォリンIII、又は、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリンI、アポリフォリンII若しくはアポリフォリンIIIの変異体、これらのアポリポタンパク質のあらゆる変異体、又は天然のアポリポタンパク質との実質的な相同性を有する1つ以上のドメインを有する改変アポリポタンパク質が挙げられる。 アポリポタンパク質をコードする当該核酸構築物は、野生型アポリポタンパク質のアミノ酸配列を修飾したアミノ酸配列を有する、アポリポタンパク質をコードしてもよい。幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質変異体をコードする核酸構築物は、アポリポタンパク質配列に融合するタグ配列をコードする。 幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質であり、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートした後で合成される可溶化形態の目的タンパク質の量は、同じ反応でアポリポタンパク質の翻訳の非存在下で翻訳される目的タンパク質の量よりも大きい。幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質であり、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートすることにより、同じ反応でアポリポタンパク質の翻訳の非存在下で目的タンパク質を翻訳した場合よりも、目的の可溶性タンパク質が、目的タンパク質の全量に対するパーセンテージが高い状態で合成される。 幾つかの実施形態では、本発明のインビトロタンパク質合成システムは、目的タンパク質をコードする1つ以上の核酸構築物、及び1つ以上の脂質(例えば1つ以上のリン脂質)を含むアポリポタンパク質を含んでなる。幾つかの実施形態では、本発明の方法は可溶化形態の目的タンパク質を合成する方法に関し、当該方法は、1つ以上の脂質を含むインビトロ合成システムに、アポリポタンパク質をコードする核酸構築物及び目的タンパク質をコードする核酸構築物を添加することと、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートし、リン脂質−アポリポタンパク質粒子と、当該アポリポタンパク質粒子と会合した目的タンパク質を合成することを含んでなる。これらの方法では、アポリポタンパク質をコードする核酸配列は、目的タンパク質をコードする配列と同じ核酸分子上に存在してもよく、又は、インビトロタンパク質合成反応において合成されるアポリポタンパク質及び目的タンパク質をコードする配列は、別個の核酸分子上に存在してもよい。 これらの本発明の態様の幾つかの実施形態では、当該方法は更に、インビトロ合成混合物から目的タンパク質を単離することを含んでなる。当該単離は、例えばアポリポタンパク質又は目的タンパク質の配列中に組み込んだタグと結合するアフィニティ試薬を用いて実施できる。 更なる態様では、本発明はまた、細胞抽出物、アポリポタンパク質をコードする核酸鋳型、及び目的タンパク質をコードする核酸鋳型を含んでなるインビトロタンパク質合成システムの提供に関する。ある特定の実施形態では、本発明には、細胞抽出物、アポリポタンパク質をコードする第1の核酸分子、及び目的タンパク質をコードする第2の核酸分子を含んでなるインビトロタンパク質合成システムが包含される。他の実施形態では、細胞抽出物、並びにアポリポタンパク質及び目的タンパク質をコードする核酸鋳型を含んでなるインビトロタンパク質合成システムに関する。 本発明のインビトロシステムにおいて、使用する核酸鋳型によってコードされるアポリポタンパク質はいかなるアポリポタンパク質でもよく、本発明の方法で使用するアポリポタンパク質は、いかなるアポリポタンパク質でもよく、限定されないが例えば、本願明細書に記載の、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリンI、アポリフォリンII若しくはアポリフォリンIII、これらのアポリポタンパク質のあらゆる変異体、又は天然のアポリポタンパク質に対して実質的な相同性を有する1つ以上のドメインを有する改変アポリポタンパク質が挙げられる。 本発明に係る方法及びインビトロ合成システムにおいて使用する核酸構築物によってコードされるアポリポタンパク質配列は、天然又は野生型配列を修飾した配列であってもよく、野生型アポリポタンパク質配列に1つ以上の欠失、変異又は付加を施した配列であってもよい。アポリポタンパク質をコードする構築物はまた、アポリポタンパク質配列とインフレームの形で融合するアミノ酸タグをコードしてもよい。アポリポタンパク質をコードする核酸鋳型は、DNA鋳型又はRNA鋳型であってもよい。アポリポタンパク質をコードする核酸鋳型は、固体支持体(例えばビーズ、マトリックス、チップ、アレイ、膜、シート、ディッシュ又はプレート)と結合していてもよい。 目的タンパク質をコードする核酸鋳型は、DNA鋳型又はRNA鋳型であってもよく、いかなる目的タンパク質をコードしてもよく、限定されないが例えば、酵素、構造蛋白質、輸送タンパク質、ホルモン、成長因子、阻害剤又は活性剤などが挙げられる。幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質である。目的タンパク質をコードする構築物はまた、目的タンパク質の配列とインフレームで融合するアミノ酸タグをコードしてもよい。 本発明のインビトロタンパク質合成システムに存在させる核酸構築物は、複数の目的タンパク質をコードしてもよい。目的タンパク質をコードする核酸鋳型は、固体支持体(例えばビーズ、マトリックス、チップ、アレイ、膜、シート、ディッシュ又はプレート)と結合していてもよい。 本発明のインビトロ合成システムに存在する単一の核酸構築物上に、アポリポタンパク質及び目的タンパク質がコードされてもよい。これらの実施形態では、本発明は細胞抽出物、エネルギー源、アポリポタンパク質をコードする核酸鋳型、アポリポタンパク質及び目的タンパク質をコードする核酸鋳型を含んでなるインビトロタンパク質合成システムの提供に関する。 本発明のインビトロタンパク質合成システムは、1つ以上の化学的エネルギー供給源、遊離アミノ酸、塩、酵素、阻害剤又は補因子を更に含んでなってもよい。本発明のインビトロタンパク質合成システムは更に、1つ以上の界面活性剤又は1つ以上の脂質(例えば1つ以上のリン脂質)を含んでなってもよい。 本発明はまたキット提供に関し、当該キットは、細胞抽出物及び1つ以上のアポリポタンパク質、又はアポリポタンパク質をコードする1つ以上の核酸を含んでなる。当該キットは更に、1つ以上のアミノ酸溶液、1つ以上のバッファ、1つ以上の塩、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の酵素、1つ以上の阻害剤、1つ以上のエネルギー源、1つ以上の脂質、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の核酸ベクター又は1つ以上の核酸構築物のうちの1つ以上を任意に含んでなってもよい。 本発明のキットの一実施形態では、当該キットはインビトロタンパク質合成用に構成され、細胞抽出物及び1つ以上のアポリポタンパク質を含んでなる。当該アポリポタンパク質は細胞抽出物中に存在してもよく、又は固体若しくは溶液として別個に準備してもよい。本発明の多くの別の実施形態は、細胞抽出物及びアポリポタンパク質をコードする1つ以上の核酸構築物の提供に関する。当該核酸構築物はRNA構築物又はDNA構築物であってもよく、固体(親油化品など)、又は溶液として準備してもよい。 本発明のキットの別の実施形態では、当該キットはインビトロタンパク質合成用に構成され、細胞抽出物及び1つ以上のリン脂質−アポリポタンパク質粒子組成物を含んでなる。リン脂質−アポリポタンパク質粒子組成物は、細胞抽出物中に存在してもよく、又は別個に準備してもよい。 本願明細書に記載の本発明は、特定の組成物又は工程段階に限定されず、適宜変化させてもよい。本願明細書に記載のセクション見出しは飽くまで便宜上のものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。発明の詳細な説明定義 特に定めのない限り、本願明細書において用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明に関連する分野の当業者が従来技術において通常理解するのと同じ意味を有する。本願明細書に記載する以下の用語は、本発明では以下のように定義される。単数形「ある〜」、「その〜」などは、前後関係から特に明示されない限り、対象となる物事の複数形を包含する。すなわち、例えば「リガンド」の用語は複数のリガンドを含み、「抗体」の用語は複数の抗体を含む、など。 本発明では、いかなる数値に関連して、用語「約」又は「およそ」をもちいるときは、ある一定の値の±10%の値を意味するものとする。例えば、「約50℃」(又は「およそ50℃」)とは、45℃〜55℃の温度範囲(包括的)を包含する。同様に、「約100mM」(又は「およそ100mM」)とは、90mM〜110mMの濃度範囲(包括的)を包含する。 用語「インビトロタンパク質合成」(IVPS)、「インビトロ翻訳」、「無細胞翻訳」、「RNA鋳型依存性インビトロタンパク質合成」、「RNA鋳型依存性無細胞タンパク質合成」及び「無細胞タンパク質合成」は、本願明細書で交換して用いてもよく、あらゆるタンパク質の無細胞合成方法のことを指すものとする。インビトロ転写−翻訳(IVTT)は、IVPSの1つの非限定的な例である。 用語「インビトロ転写」(IVT)及び「無細胞転写」は本願明細書で交換して用いてもよく、RNAからタンパク質の合成のない、あらゆるDNAからRNAを無細胞合成する方法のことを指すものとする。好ましいRNAはタンパク質をコードメッセンジャーRNA(mRNA)である。 用語「インビトロ転写−翻訳」(IVTT)、「無細胞転写−翻訳」、「DNA鋳型依存性vitroタンパク質合成」及び「無細胞のDNA鋳型依存性タンパク質合成」は本願明細書で交換して用いてもよく、あらゆるDNAからのmRNAの(転写)、及びmRNA(翻訳)からのタンパク質の無細胞合成方法のことを指すものとする。 本明細書中で使用する場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチド、タンパク質又は翻訳されないRNA(例えばrRNA、tRNA、アンチセンスRNA)の発現のために必要な情報を含む核酸を意味する。当該遺伝子がタンパク質をコードするとき、プロモータ及び構造遺伝子のオープンリーディングフレーム配列(ORF)、並びにタンパク質の発現に関係する他の配列を含んでなる。遺伝子が翻訳されないRNAをコードするとき、プロモータ及び翻訳されないRNAをコードする核酸を含んでなる。 本発明で使用する用語「核酸分子」とは、あらゆる長さの一連の隣接するヌクレオチド(riboNTPs、dNTPs、ddNTPs又はそれらの組み合わせ)を指す。核酸分子は、全長のポリペプチド又はそのあらゆる長さの断片をコードしてもよく、又は非コード配列であってもよい。本発明では、用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」を交換して用いてもよく、RNA及びDNAが包含されうる。 「制御可能に連結される」とは、対象となる複数の構成要素が、それらの意図された方法で機能することができる関係において並列していることを指す。例えば、制御配列が制御可能な状態でコード配列に連結するとは、制御配列と適合性を有する状態でコード配列の発現がなされる態様で連結していることを指す。 本発明で使用する「ポリペプチド」の用語は、あらゆる長さの一連の隣接するアミノ酸を指す。用語「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」と交換して本願明細書に用いることができる。 「突然変異」とは、標準的な野生型配列のゲノムにおいて生じる変化のことを指す。突然変異としてはゲノムの位置における核酸配列の欠失、挿入又は再構成が挙げられ、又は「点突発変異」と呼ばれる、ゲノム位置での一塩基置換を指す場合もある。 本明細書で用いられる「置換」とは、1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドの、それぞれ異なるアミノ酸又はヌクレオチドによる置換のことを指す。 本発明で用いるポリペプチド又はタンパク質の「変異体」とは、対象となるポリペプチド又はタンパク質における、1つ以上のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を意味する。好ましくは、ポリペプチドの変異体はポリペプチドの1つ以上の活性を保持する。好ましくは、ポリペプチドの変異体は、少なくとも15のアミノ酸配列を有する対象となるタンパク質に対して、少なくとも60%の同一性を有する。好ましくは、ポリペプチドの変異体は、少なくとも15のアミノ酸配列を有する対象となるタンパク質に対して、少なくとも70%の同一性を有する。好ましくは、ポリペプチドの変異体は、少なくとも15のアミノ酸配列を有する対象となるタンパク質に対して、少なくとも80%、90%、95%若しくは99%の同一性を有する。好ましくは、ポリペプチドの変異体は、少なくとも20アミノ酸配列を有する対象となるタンパク質に対して、少なくとも80%、90%、95%若しくは99%の同一性を有する。変異体は「保守的」な変異を有する場合もあり、その場合には、置換後のアミノ酸が置換前のアミノ酸と同様の構造若しくは化学的特性(例えばイソロイシンによるロイシンの置換)を有することが多い。変異体は、「非保守的」な置換(例えばトリプトファンによるグリシンの置換)である場合もある。類似する変異としては、アミノ酸の欠失、挿入又はその両方が包含される。生物学的若しくは免疫学的活性を損なうことなく、いずれのアミノ酸残基を置換、挿入、欠失させるかを決定するためのガイドラインとしては、公知技術のコンピュータプログラム(例えばDNASTARソフトウェア)を使用して検出することができる。 「保存的アミノ酸置換」とは、元のタンパク質の特性を損なうことの非常に少ない置換のことを指し、すなわち、タンパク質の構造及び特に機能が維持され、かかる置換により顕著な変化を受けないことを指す。保守的なアミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造(例えばβシート又はαヘリックス構造)、(b)置換部位における分子の荷電又は疎水性、及び/又は(c)側鎖のかさ(バルク)などが維持される。保守的置換としては、例えば負に荷電するアミノ酸の、別の1アミノ酸による置換(負荷電アミノ酸としてはアスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる)、正に荷電するアミノ酸の、別の1アミノ酸による置換(正荷電アミノ酸としてはリシン及びアルギニンが挙げられる)、及び同様の親水性値を有する非荷電の極性基を有するアミノ酸による置換、(同様の疎水性を有するアミノ酸の第1の群としては、ロイシン、イソロイシン及びバリンの群、他の群としてはグリシン及びアラニンの群、第3の群としてはアスパラギン及びグルタミンの群、第4の群としてはセリン及びトレオニンの群、及び第5の群としてはフェニルアラニン及びチロシンの群を挙げることができる)。 「欠失」とは、1つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドが失われる結果となる、アミノ酸又はヌクレオチド配列の変異のことを指す。 「誘導体」という用語は、化学修飾を施したポリヌクレオチド又はポリペプチドのことを指す。ポリヌクレオチドの化学的処理としては、例えばアルキル基、アシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基による水素の置換が挙げられる。誘導体ポリヌクレオチドは、天然分子の1つ以上の生物学的若しくは免疫学的機能を保持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドはグリコシル化、PEG化、ビオチン化、又は得られるポリペプチドの1つ以上の生物学的若しくは免疫学的機能が保持されるあらゆる同様の方法によって修飾してもよい。 ポリペプチド配列に適用されるにつれて、用語「%同一性」とは、標準化されたアルゴリズムを使用して、少なくとも2つのポリペプチド配列アラインメント間の、マッチする残基のパーセンテージのことを指す。ポリペプチド配列のアラインメント方法は公知である。幾つかのアラインメント方法は、保存的アミノ酸置換に基づく。かかる保守的な置換(上記で更に詳細に説明)では通常、置換部位における荷電及び疎水性が維持されるため、ポリペプチドの構造(すなわち機能)が維持される。%アイデンティティは、例えば特定の配列番号で定義されるような全ての定義済みのポリペプチド配列にわたり測定する場合もあり、又はより短い配列長にわたり測定する場合もある。例えば、長い配列長の定義済みのポリペプチド配列から取り出される断片長としては、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70又は少なくとも150の隣接残基によるフラグメントが挙げられる。かかる長さは典型的なものであり、本願明細書(表、図又は配列表)に示される配列でサポートされるいかなる断片長を用いて、%アイデンティティを測定してもよいと理解される。 ポリペプチド配列間の%アイデンティティは、MEGALIGN版3.12e配列アラインメントプログラム(本発明に記載、上記)に組み込まれているような、CLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメータを使用して算出できる。CLUSTAL Vを使用したポリペプチド配列のペアワイズ配列用のデフォルトパラメータは、以下の通りに設定されている:Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、及び“diagonals saved”=5。PAM250マトリックスがデフォルトの残基重量テーブルとして選択される。ポリヌクレオチド配列と同様に、%アイデンティティでは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「パーセント類似性」として、CLUSTAL Vにより出力される。 あるいは、NCBI BLASTソフトウェアセットを用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列のペアワイズ比較を行う場合、「BLAST 2 Sequences」ツール、Version 2.0.12(2000年4月21日)又は後のバージョンVersion 2.2.12(2005年8月28日リリース)、2.2.13(2005年12月6日リリース)、又は2.2.14(2006年5月7日リリース)を用い、デフォルトパラメータをblastpでセットアップして行う。かかるデフォルトパラメータとしては、例えば:Matrix:BLOSUM62、Open Gap:11、及びExtension Gap:1 penalties、Gap x drop−off 50、Expect:10、Word Size:3、Filter:onが挙げられる。 「実質的に精製された」とは、ある物質種又は活性が支配的な物質種又は活性である状態(例えば、組成物の他のいかなる個々の種又は活性よりもモルベースで豊富である)のことを指し、好ましくは、実質的に精製されたフラクションとは、その物質種又は活性が、全ての高分子又は活性に対して少なくとも約50%(モル、重量又は活性ベース)含有する組成物のことを指す。通常、実質的に純粋な組成物とは、全ての高分子種又は活性に対して約80%以上、好ましくは約85%以上、90%以上又は95%以上存在する組成物のことを指す。 「検出可能的に標識された」「標識された」の用語は本願明細書では交換して使用してもよく、分子(例えば核酸分子、タンパク質、ヌクレオチド、アミノ酸など)が、他の部分、又は様々な検出手段(例えば測定装置、目視、写真撮影、X線撮影など)により検出可能なシグナルを発生させる分子を付与されている状態のことを指すものとする。かかる場合、共有結合若しくはイオン結合、凝集、アフィニティカップリング(例えば一次及び/又は二次抗体(片方又は両方のいずれかが検出可能な標識を有する)の使用を含む)などの様々な公知の方法によって、シグナル(「ラベル」又は「検出可能なラベル」)を発する分子又は部分を、当該分子に付与する(又は「標識する」)ことができる。本発明に係る標識された、若しくは検出可能に標識された分子の調製に用いられる適切な検出可能なラベルとしては、例えば重同位元素ラベル、重原子ラベル、放射性同位元素ラベル、蛍光ラベル、化学発光ラベル、生物発光ラベル及び酵素ラベル及び他の当業者に公知のものが挙げられる。 本明細書で用いられる「標識」という用語は、(例えばそのスペクトル特性、形態又は活性に基づき)直接若しくは間接的に検出可能な化学基又はタンパク質を意味し、目標又は化合物に結合させて本発明の方法で使用する。当該標識は、直接検出可能(フルオロフォア)であってもよく、間接的に検出可能(ハプテン又は酵素)であってもよい。かかる標識としては、限定されないが、放射線計数装置で測定できる識別用放射性同位元素、分光光度計で視覚的に観察若しくは測定できる色素、染料又は他のクロモゲン、スピンラベルアナライザで測定できるスピンラベル、例えば、X線結晶構造解析及びNMRにおいて使用される重原子標識、例えば質量解析において使用される重同位元素標識、及び蛍光標識(フルオロフォア)(出力シグナルは、適切な分子アダクトの励起によって発生させることができ、光を色素に吸収させて励起させることによって視覚化でき、又は、例えば標準的な蛍光測定器又は画像処理システムで正確に測定できる)などが挙げられる。当該標識は、化学発光物質(出力シグナルがシグナル化合物の化学的処理によって発生する)、金属含有物質、又は酵素(酵素依存的な二次的なシグナルが発生(例えば無色の基質からの着色生成物の形成)。本発明の用語「標識」には、特別な場合として、天然のアミノ酸(例えばわずかに蛍光性を有する(例えばトリプトファン)か又はUV吸収性のアミノ酸)が包含される。但しかかるアミノ酸は通常、用語「標識」又は「検出可能な標識」に包含されない。用語「標識」にはまた、共役分子と選択的に結合できる「タグ」又はハプテンのことを指す場合もあり、当該共役分子を用いることにより、それを基質の後で添加した場合に、検出可能なシグナルが生成される。例えば、タグとしてビオチンを使用し、更にアビディン又はストレプトアビジンのセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)とのコンジュゲートを使用して当該タグと結合させ、更に比色基質(例えばテトラメチルベンジジン(TMB))又は蛍光発生基質(例えばAmplex Red試薬、Molecular Probe社)を用いてHRPの存在を検出することができる。多数の標識が当業者に公知であり、上記「RICHARD P.HAUGLAND(MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH PRODUCTS)」(第9版、CD−ROM、2002年9月)に記載の粒子、フルオロフォア、ハプテン、酵素及びそれらの比色気質、蛍光基質及び化学発光基質、並びにその他の標識が挙げられるが、これらに限定されない。 「タグ」又は「アミノ酸配列タグ」は、アフィニティ試薬に特異的に結合できる一連のアミノ酸である。タンパク質を捕捉するために組み込むことができるタグ、又はアフィニティ試薬を使用したタンパク質検出の例としては、ヒスチジン多量体(4以上、通常は6)、FLAGタグ、ヘマグルチニンタグ、mycタグ、グルタチオン−S−転移酵素、マルトース結合タンパク質、カルモジュリン、キチン質結合タンパク質などのタグが挙げられるが、これらに限定されない。他のアミノ酸配列タグとしてはテトラシステイン含有lumioタグが挙げられ、四ヒ素若しくは二ヒ素含有試薬を使用したタンパク質の精製又は検出に使用できる(米国特許第6054271号、第6008378号、第5932474号、第6451569号、国際公開第99/21013号(参照によって本発明に援用))。 「固体支持体」とは、分子、化合物、細胞又は他の物質と結合するための表面を有する固体材料のことを指す。固体支持体は表面を含むチップ又はアレイであってもよく、例えばガラス、シリコン、ナイロン、ポリマー、プラスチック、セラミック又は金属などが挙げられる。固体支持体は膜(例えばナイロン、ニトロセルロース又はポリマーの膜)又はプレート若しくはディッシュであってもよく、例えばガラス、セラミック、金属又はプラスチックから構成されてもよく、例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート又はポリアロマー製の96ウェルプレートが挙げられる。固体支持体はビーズ又はいかなる形状の粒子であってもよく、好ましくは球形若しくは球形に近い形態であり、好ましくは当該ビーズ又は粒子は1mm以下の、好ましくは、0.1〜100μの直径又は最大幅を有する。かかる粒子又はビーズは、いかなる適切な材料(例えばガラス又はセラミック)、及び/又は1つ以上のポリマー(例えばナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、TEFLON(商標)、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、セファロース、アガロース、セルロース、セルロース誘導体又はデキストランなど)、及び/又は金属(特に常磁性金属、例えば鉄)を含んでなってもよい。 本発明では、「会合する」の用語は、直接又は間接的に結合することを意味する。第2の生体分子と会合する第1の生体分子は、1つ以上の捕捉分離方法を使用して、第2の生体分子の結合又は可動性特性に基づき、第2の生体分子と共単離することができる。 「リン脂質−アポリポタンパク質粒子」とは分子複合体の一種であり、1つ以上のアポリポタンパク質及び1つ以上のリン脂質(リン脂質が二重層に配置される)を含んでなり、通常nm単位(例えば直径約1nm〜約995nm、より典型的には直径約2〜約700nm、又は直径約4〜約600nmの円板状の形状で存在する。天然及び合成リン脂質−アポリポタンパク質粒子は、例えばPownallら、(1978)Biochemistry 17:1183−1188、Pownallら、(1981)Biochemistry 20:6630−6635、Jonasら、(1984)J.Biol.Chem.259:6369−6375、Jonasら、(1989)J.Biol.Chem.264:4818−4824、Jonasら、(1993)J.Biol.Chem.268:1596−1602、Leroyら、(1993)J.Biol.Chem.268:4798−4805、Tricerriら、(2000)Biochemistry 39:14682−14691、Segallら、(2002)J.Lipid Res.43:1688−1700、Manchekarら、(2004)J.Biol.Chem.279:39757−39766、Pearsonら、(2005)J.Biol.Chem.280:38576−38582に記載されている。 組換え核酸技術の分野において使用する他の用語、及び本明細書で用いられる分子及び細胞生物学用語は、通常その技術分野の当業者にとり公知若しくは自明である。IVPSシステム 本発明は公知技術のインビトロタンパク質合成システムを使用するが、原核若しくは真核生物細胞の細胞抽出物を含んでなってもよい。当該細胞抽出物は、1つ以上の遺伝子(例えばヌクレアーゼをコードする遺伝子又はプロテアーゼをコードする遺伝子)を変異させた細胞に由来してもよく、又は1つ以上の内在性若しくは外来遺伝子(例えばtRNA、ポリメラーゼ、酵素阻害物質などをコードする遺伝子)を発現又は過剰発現させるように改変させた細胞に由来してもよい。細胞抽出物には鋳型の分解を防止できるタンパク質又は他の分子を補充し、転写又は翻訳などを強化してもよい。 本発明の方法及び組成物に使用できるインビトロタンパク質合成(IVPS)システムの非限定的な例としては、例えば以下の文献に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第5478730号、Alakhovら、発明の名称"Method of preparing polypeptides in cell−free translation system”、米国特許第5665563号、第5492817号及び第5324637号、Becklerら、発明の名称"Coupled transcription and translation in eukaryotic cell−free extract”、米国特許第6337191号、Swartzら、発明の名称"In vitro Protein Synthesis using Glycolytic Intermediates as an Energy Source”、米国特許第6518058号、Biryukovら、発明の名称"Method of preparing polypeptides in cell−free system and device for its realization”、米国特許第6670173号、Schelsら、発明の名称"Bioreaction module for biochemical reactions”、米国特許第6783957号、Biryukovら、発明の名称"Method for synthesis of polypeptides in cell−free systems”、米国特許出願公開第2002/0168706号、Chatterjeeら、2002年11月14日公開、発明の名称"Improved インビトロ synthesis system”、米国特許第6168931号、Swartzら、2002年1月8日登録、発明の名称"In vitro macromolecule biosynthesis methods using exogenous amino acids and a novel ATP regeneration system”、米国特許第6548276号、Swartzら、2003年4月15日登録、発明の名称"Enhanced インビトロ synthesis of active proteins containing disulfide bonds”、米国特許出願公開第2004/0110135号、Nemetzら、2004年6月10日公開、発明の名称"Method for producing linear DNA fragments for the インビトロ expression of proteins”、米国特許出願公開第2004/0209321号、Swartzら、2004年10月21日公開、発明の名称"Methods of インビトロ protein synthesis”、米国特許出願公開第2004/0214292号、Motodaら、2004年10月28日公開、発明の名称"Method of producing template DNA and method of producing protein in cell−free protein synthesis system using the same”、米国特許出願公開第2004/0259081号、Watzeleら、2004年12月23日公開、発明の名称"Method for protein expression starting from stabilized linear short DNA in cell−free インビトロ transcription/translation systems with exonuclease containing lysates or in a cellular system containing exonucleases”、米国特許出願公開第2005/0009013号(2005年1月13日公開)、及び第2005/0032078号(2005年2月10日)、いずれもRothschildら、発明の名称"Methods for the detection,analysis and isolation of nascent proteins”、米国特許出願公開第2005/0032086号、Sakanyanら、2005年2月10日公開、発明の名称"Methods of RNA and protein synthesis”、国際公開第00/55353号、Swartzら、2000年3月15日公開、発明の名称"In vitro macromolecule biosynthesis methods using exogenous amino acids and a novel ATP regeneration system”。これらの特許及び特許出願の全てを本願明細書に援用する。 細胞抽出物の調製は、精製されたmRNA転写産物からの、又はインビトロ合成反応の間、DNAから転写されるmRNAからのインビトロでタンパク質の合成の基礎となるものであり、それはまた公知である。解析対象のタンパク質を合成するため、翻訳抽出物は、解析対象の遺伝子及びタンパク質に対応するmRNAによって「プログラム」されることとなる。mRNAはDNAから調製してもよく、又は精製された形のmRNAを外因的に添加してもよい。RNAは、インビトロ反応において、RNAポリメラーゼを用いて、クローニングされたDNAから合成して調製することができる。 原核細胞及び真核生物細胞を用いて、本発明のタンパク質及び/又は核酸合成できる(Pelhamら、European Journal of Biochemistry,67:247,1976)。原核細胞系のシステムを用いて、同時若しくは「カップル」において転写及び翻訳を実施できる。IVTTに使用する細胞抽出物は、単一システムにおける転写(mRNAを生産)及び翻訳(タンパク質を合成)に必要な成分を含有する。かかるシステムでは、添加する鋳型核酸分子はDNAである。 本願明細書に記載する実施例に示すように、本発明の方法で使用する無細胞抽出液は原核若しくは真核生物の抽出物が使用できる。真核生物のインビトロタンパク質合成(IVPS)抽出物としては、限定されないが、ウサギ網状赤血球溶解物、小麦麦芽溶解物、ショウジョウバエ胚抽出物、ホタテガイ溶解物(Storchら、J.Comparative Physiology B,173:611−620,2003)、マウス脳(Campagnoniら、J Neurochem.28:589− 596,1977、 Gilbertら、J Neurochem.23:811−818,1974)からの抽出物、並びにニワトリのひなの脳(Liuら、Transactions of the Illinois State Academy of Science,Volume 68,1975)などが挙げられる。IVPS用の真核生物抽出物は、培養細胞からの抽出物であってもよい。培養細胞はいかなるタイプであってもよい。非限定的な例として、HeLa又はCHO細胞抽出物を用いて、インビトロ翻訳システムを実施してもよい。 真核生物抽出物(任意に酵素、基質及び/又は補因子を添加する)を用いて、翻訳後修飾を有するタンパク質として翻訳産物を調製してもよい。翻訳後修飾のための酵素、基質及び/又は補因子を、IVPS用の原核抽出物に添加してもよい。界面活性剤を使用して無細胞抽出液を調製してもよく、溶解物を遠心分離する前に細胞又は細胞可溶化物(米国特許出願公開第2006/0110788号(出願番号:11/240,651号)に記載、本願明細書に全開示内容を援用する)に添加してもよく、又はインビトロタンパク質合成システム用の組成物中に添加してもよい。例えば、CMC濃度か、あるいはそれをわずかに越える濃度で非イオン性又は双性イオン性の界面活性剤を用い、翻訳抽出物の調製を実施することができる。 原核抽出物はいかなる原核細胞であってもよく、グラム陰性及びグラム陽性の細菌であってもよく、限定されないが、エシェリチア属(例えば大腸菌)、クレブシエラ属、ストレプトマイセス属、ストレプトコッカス属、シゲリア属、スタフィロコッカス属、エルウィニア属、クレブシエラ属、バチルス属(例えばB.セレウス、B.ズブティリス及びB.メガテリウム)、セラチア属、シュードモナス属(例えばP.アエルギノザ及びP.シリンガエ)、サルモネラ属(例えばS.チフィ及びS.チフムリウム)及びロドバクター属などが挙げられる。本発明に適する細菌株及びセロタイプは、大腸菌セロタイプK、B、C及びWなどが挙げられる。典型的な原核細胞抽出物は、大腸菌K−12株から調製される。細胞抽出物を変異細菌株から調製してもよく、それによりヌクレアーゼ又はプロテアーゼ活性を欠如させることができ、又は精製又は翻訳タンパク質の検出を妨げうる1つ以上のタンパク質の活性を欠如させることができる(本願明細書に全開示内容を援用する米国特許公開第2005/0136449号を参照)。 IVPSシステムにより、多重化構成(例えばアレイフォーマット)において様々なタンパク質を同時及び迅速に発現させることができ、また多数のタンパク質のスクリーニングにも使用できる。DNA鋳型を使用するIVTTシステムでは、別個にRNA転写産物を合成し、その後精製する必要がないため、これらのフォーマットの効率が向上する。更に、様々な非天然アミノ酸を用いて、IVPSシステムを使用して合成しようとする具体的なタンパク質にそれらを能率的に組み込むこともできる(例えば、Norenら、Science 244:182−188、1989を参照) 特定の態様では、細胞抽出物又はその抽出物を使用するIVPSシステムは更に、米国特許出願公開第2002/0168706号(全開示内容を本願明細書に援用する)基際の成分のうちのいずれか1つ以上を含んでなる。例えば、当該細胞抽出物は、1つ以上の酵素(例えばヌクレアーゼ、ホスファターゼ及びポリメラーゼからなる群から選択される酵素)の阻害剤の1つ(任意に、当該抽出物は1つ以上の酵素(例えばヌクレアーゼ、ホスファターゼ及びポリメラーゼからなる群から選択される酵素)の活性を減少させるために、天然若しくは野生型の抽出物を修飾してもよい)、及びタンパク質及び/又は核酸合成に対してエネルギーを供給する少なくとも2つのエネルギー源を含有してもよい。特定の態様では、当該抽出物はGamタンパク質を含有する。 翻訳後修飾用の酵素、基質及び/又は補因子は、IVPS用の原核若しくは真核生物抽出物に任意に添加してもよく、又は真核生物細胞抽出物中に元々存在してもよい。 IVPSは通常、細胞抽出物に加えて、1つ以上のアミノ酸を含んでなる。IVPSは通常、細胞抽出物、1つ以上のアミノ酸及び翻訳をサポートする1つ以上のエネルギー源を含んでなる。インビトロ翻訳システムが転写/翻訳システムである場合、更にポリメラーゼを添加するこが好ましい。インビトロ翻訳システムが転写/翻訳システムである場合、更にポリメラーゼを添加するこが好ましい。インビトロタンパク質合成システムは、それらの製造及び使用方法を含め、公知である。例示的実施形態では、最低2つのアミノ酸及び翻訳のためのエネルギーを提供する1つ以上の化合物を細胞抽出物に添加し、IVPSシステムを構成する。幾つかの例示的実施形態では、IVPSは、細胞抽出物、20の天然アミノ酸及びエネルギーを翻訳に提供する1つ以上の化合物を含んでなる。幾つかの好ましい実施形態では、IVPSは、翻訳のためのエネルギー源として機能する少なくとも2つの化合物(少なくとも1つが解糖中間体であってもよい)を含む。IVPSシステムに提供される少なくとも1つのアミノ酸を任意に標識してもよく、例えば1つ以上のアミノ酸を放射性同位元素で標識し、当該識別アミノ酸を組み込んで翻訳産物としてのタンパク質を検出してもよい。幾つかの実施形態では、1つ以上の追加的なエネルギー源及び追加的なアミノ酸を含む供給溶液を、IVPSの第1のインキュベーションの後に添加する。IVPSシステム及びそれらの使用法の供給用液は、米国特許出願公開第2006/0110788号(本願明細書に援用)に記載されている。 IVPSシステム及び他の関連の実施態様に関する幾つかの例として、以下のものが挙げられる:米国特許出願公開第2002/0168706号,”Improved In vitro Synthesis Systems”(出願日:2002年3月7日)、米国特許出願公開第2005/0136449号、”Compositions and Methods for Synthesizing,Purifying,and Detecting Biomolecules”(出願日:2004年10月1日)、米国特許出願公開第2006/0084136号、”Production of Fusion Proteins by Cell−Free Protein Synthesis”(出願日:2005年7月14日)、米国特許出願公開第2006/0110788号、”Feeding Buffers,Systems,and Methods for In vitro Synthesis”(出願日:2005年10月1日)、米国特許出願公開第2006/0110788号、”Feeding Buffers,Systems,and Methods for In vitro Synthesis”(出願日:2005年10月1日)、及び米国特許出願公開第2006/0211083号(出願日:2006年1月20日)"Products and Processes for In vitro Synthesis of Biomolecules”(以上の特許出願の全開示内容を本願明細書に援用する)。 幾つかの実施形態では、本発明はInvitrogen社のEXPRESSWAY(商標) インビトロ翻訳システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)を用い、無細胞S30抽出物及び翻訳バッファを含んでなることを特徴とする。当該S30抽出物は、完全な細胞から抽出した開始、伸長及び終結因子、リボソーム及びtRNAなどの、多くの可溶性の翻訳構成要素を含有する。翻訳バッファは、アミノ酸、エネルギー源(例えばATP及びGTP)、ホスホエノールピルビン酸/ピルビン酸キナーゼ、アセチルリン酸/酢酸キナーゼ又はクレアチンリン酸/クレアチンキナーゼなどのエネルギー再生成分及び他の様々な重要なコファクタを含有する(Zubay,Ann.Rev.Genet.7:267−87,1973、 Pelham and Jackson,Eur J Biochem.67:247,1976、 and Erickson and Blobel,Methods Enzymol.96、38−50,1983)。反応バッファ、メチオニン、T7酵素Mix及び目的のDNA鋳型(制御可能な状態でT7プロモータに結合)を、大腸菌抽出物と混合する。DNA鋳型の転写終了後、mRNAの5’末端がリボソームと結合し、翻訳が開始されコードされたタンパク質が合成される。アポリポタンパク質 本発明は、1つ以上のアポリポタンパク質をインビトロタンパク質合成システム中に存在させることを特徴とする方法及び組成物に関する。アポリポタンパク質は、POIをコードする鋳型を添加するときに細胞抽出物に存在させてもよく、又は合成反応の間に添加してもよく、又はアポリポタンパク質はIVPSシステムに添加した核酸構築物から翻訳されてもよい。 アポリポタンパク質とは、動物の循環系において、脂質を結合させて輸送する機能を有するタンパク質である。種間の配列ホモロジー解析、並びに構造解析及び予測の結果、アポリポタンパク質は同様の構造(幾つかの両親媒性のヘリックス)を共有することが示されている。したがって、本願明細書に提供される変異体アポリポタンパク質又は改変アポリポタンパク質は通常、1つ、あるいは少なくとも2、3、4又はそれ以上の両親媒性のヘリックスを有し、通常は野生型アポリポタンパク質の両親媒性ヘリックスの配列、又はその保守的なアミノ酸置換を含んでなる。更にまた、本発明の方法及び組成物に使用する変異体又は改変アポリポタンパク質は通常、脂質と結合する能力を保持している。 本発明では、用語「アポリポタンパク質」は広義には、脂質と結合するタンパク質を指すのに用いられ、そのフリーの形態、及び脂質と結合した形態の両方においても水溶性を有する。本発明のアポリポタンパク質は1つ以上のヘリックス状ドメインを有し、好ましくは両親媒性ヘリックスを形成するか、又は形成すると予測される。本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質は、好ましくは天然のアポリポタンパク質であってもよく(後述するように、いかなる種起源の、天然のアポリポタンパク質の配列変異体であってもよい)、又は、天然のアポリポタンパク質の1つ以上のヘリックス状ドメインと少なくとも90%のホモロジーを有する1つ以上のヘリックス状ドメインを有する改変タンパク質であってもよい。本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質は、インビトロタンパク質合成システム(インビトロ翻訳システム)に存在させた場合、可溶性膜タンパク質の収率を少なくとも10%上昇させる特性を有し、可溶性タンパクの収量(率)は、全合成タンパク質に対する、可溶性タンパク質の合成量、又は可溶性タンパク質のパーセンテージとして算出する。 本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質にはアポリポタンパク質変異体が包含され、少なくとも10、15、20、25、50、75、100、150又は200の隣接するアミノ酸を有し、あらゆる種の野生型アポリポタンパク質に対して少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有するタンパク質が包含され、当該変異体をIVPSシステム中に存在させた場合、IVPSシステムで発現される1つ以上のタンパク質の可溶性が少なくとも10%増加する。特定の態様では、IVPSシステムで調製した可溶性タンパク質は、アポリポタンパク質又はその変異体の非存在下でIVPSシステムにおいて調製した同じタンパク質と比較し、少なくとも15%、20%又は25%増加するか、又は検出可能な態様で増加する。アポリポタンパク質変異体は、天然のアポリポタンパク質に対して1つ以上の配列の欠失又は挿入を有してもよい。非限定的な例として、幾つかのアポリポタンパク質変異体にタグ配列を添加してもよく、あるいは非ヘリックス状ドメインを欠失させてもよい。 特定の態様における変異体アポリポタンパク質は、野生型哺乳類のアポリポタンパク質(特にアポリポタンパク質A−I(Apo A−I)、アポリポタンパク質A−II(Apo A−II)、アポリポタンパク質A−IV(Apo A−IV)、アポリポタンパク質A−V(Apo A−V)、アポリポタンパク質B−100(Apo B−100)、アポリポタンパク質B−48(Apo B−48)、アポリポタンパク質C−I(Apo C−I)、アポリポタンパク質C−II(Apo C−II)、アポリポタンパク質C−III(Apo C−III)、アポリポタンパク質D(Apo D)、アポリポタンパク質E(Apo E)、アポリポタンパク質H(Apo H)又はリポタンパク質(a)(Lp(a))の変異体)の変異体である。 幾つかのアポリポタンパク質(交換可能なアポリポタンパク質と呼ばれる)は可逆的に脂質と結合し、脂質と結合したときも、また脂質と結合しないときも、安定な形態を有する。交換可能なアポリポタンパク質は通常約50kDa未満のサイズを有し、リポタンパク質粒子の表面と結合すると考えられる可変的な数の両親媒性のαヘリックス型ドメインに基づく構造類似性を共有する(Segrestら、J.Lipid Res.33:141−166(1992)、Pearsonら、J.Biol.Chem.280,38576−38582(2005)、Boguskiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:8457−8461(1985))。交換可能なアポリポタンパク質としては、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質E及びアポリフォリンIIIが挙げられるが、これらに限定されない。 本発明の組成物及び方法において使用するアポリポタンパク質はいかなる動物の起源であってもよく、又はいかなる動物種のアポリポタンパク質の配列に基づいて構成されてもよい。幾つかの実施形態では、本発明の方法で使用するアポリポタンパク質は哺乳類のアポリポタンパク質であって、1つ以上の哺乳類のアポリポタンパク質配列に由来する1つ以上のアポリポタンパク質変異体配列を有するものであり、例えばアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H又はリポタンパク質(a)が挙げられる。本発明に用いられるこれらのアポリポタンパク質の同一性は1つ以上の種のものに由来してもよく、多くの場合、当該名称はヒトをタンパク質として称する。例えば、以下のヒトのアポリポタンパク質の配列:gi37499465(ヒトアポリポタンパク質A−I、配列番号1)、ヒトプロアポリポタンパク質A−I(配列番号2)、ヒトアポリポタンパク質A−II(gi296633、配列番号3)、ヒトアポリポタンパク質A−IV(gi178759、配列番号4)、ヒトアポリポタンパク質A−V(gi60391728、配列番号5)、アポリポタンパク質B−100、(gi114014、配列番号6)、アポリポタンパク質B−48(gi178732、配列番号7)、アポリポタンパク質C−I(gi30583123、配列番号8)、アポリポタンパク質C−II(gi37499469、配列番号9)、アポリポタンパク質C−III(gi521205、配列番号10)、アポリポタンパク質D(gi5466584、配列番号11、gi1246096、配列番号12)、アポリポタンパク質E(gi178853、配列番号13)、アポリポタンパク質H(gi178857、配列番号14)、アポリポタンパク質Lp(a)(gi5031885、配列番号15)、並びに、少なくとも10、15、20、25、50、75、100、150、又は200の隣接アミノ酸を有するそれらの変異体であって、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17及び配列番号18が、本発明の方法及び組成物に含まれるアポリポタンパク質であるが、これらに限定されない。 但しアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H又はリポタンパク質(a)の呼称はまた、ヒト以外の種(哺乳類、魚類、鳥類、有袋類、爬虫類及び両生類の種が包含されるがこれに限定されない)のこれらのタンパク質アナログのことも指すものとして本願明細書において使用される。ゆえに、ヒトタンパク質として割り当てられた名称として本願明細書に参照される当該タンパク質のアナログは、本発明のアポリポタンパク質として同様に包含される。本発明のかかるアポリポタンパク質、及びヒト以外の種由来のアポリポタンパク質変異体は、他の種と同じ名称を有する場合もあり、又は有しない場合もある。 非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質A−I:例えばラット(gi6978515)、マウス(gi2145141)、ゴールデンハムスター(gi4063843)、大西洋サケ(gi64356)、ゼブラフィッシュ(gi18858281)、カモ(gi627301)、フグ(gi57157761)、オランウータン(gi23379768)、チンパンジ(gi23379764)、ゴリラ(gi23379766)、ブタ(gi47523850)、ヒヒ(gi86653)、ウサギ(gi71790)又はその変異配列を使用できる。非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質A−Il:例えばラット(gi202948)、マウス(gi7304897)、マカーク(gi38049)、ウシ(gi6225059)、ウマ(gi47115663)又はその変異配列を使用できる。非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質A−IV:例えばラット(gi8392909)、マウス(gi6680702)、チキン(gi45384392)、ヒヒ(gi510276)、ブタ(gi47523830)、チンパンジ(gi601801)又はその変異配列を使用できる。非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質A−V:例えばラット(gi18034777)、マウス(gi31560003)、ウシ(gi76635264)又はイヌ(gi57086253)又はその変異配列を使用できる。 非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質B:例えばラット(gi61098031)、チキン(gi114013)、ウサギ(gi114015)、キツネザル(gi31558958)、ブタ(gi951375)、マカーク(gi930126)、リス(gi31558956)、ハリラット(gi31558952)又はその変異配列を使用できる。 非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質C−I:例えばラット(gi6978521)、マウス(gi6680704)、マカーク(gi114017)、ウサギ(gi416626)又はその変異配列を使用できる。非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質C−II:例えばマウス(gi6753100)、イヌ(gi50979236)、マカーク(gi342077)、モルモット(gi191239)、ウシ(gi114019)フグ(gi74096407)又はその変異配列を使用できる。非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質C−III:例えばラット(gi8392912)、マウス(gi15421856)、イヌ(gi50979230)、ブタ(gi50657386)、ウシ(gi47564119)又はその変異配列を使用できる。 非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質D:例えばラット(gi287650)、マウス(gi75677437)、チキン(gi58696426)、モルモット(gi1110553)又はシカ(gi82469911)又はその変異配列を使用できる。 非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質E:例えばラット(gi20301954)、マウス(gi6753102)、チンパンジ(gi57113897)、アカゲザル(gi3913070)、ヒヒ(gi176569)、ブタ(gi311233)、ウシ(gi312893)又はその変異配列を使用できる。 非限定的な例として、あらゆるアポリポタンパク質H:例えばラット(gi56971279)、マウス(gi94400779)、ウッドチャック(gi92111519)、イヌ(gi54792721)、ウシ(gi27806741)又はその変異配列を使用できる。 幾つかの実施形態では、本発明の方法で使用するアポリポタンパク質は、昆虫由来アポリポタンパク質であるか、又は昆虫アポリポタンパク質の配列に由来する配列(例えばアポリフォリンI、アポリフォリンII又はアポリフォリンIII)を有する。かかるタンパク質は、いかなる種(例えばDrospophila属の種、Manduca属の種、Locusta属の種、Lethocerus属の種、Ostrinia属の種、Bombyx属の種)に由来してもよく、更には他の昆虫若しくは非昆虫種のそれらのアナログであってもよい。例えば、アポリポフォリン(gi2498144、配列番号16)、アポリポフォリンII(gi2746729、配列番号17)、アポリポフォリンIII(gi159481、配列番号18)、並びに、少なくとも10、15、20、25、50、75、100、150又は200の隣接アミノ酸を有し、配列番号16、配列番号17及び配列番号18に対して少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有するアポリポタンパク質変異体が、本発明の組成物及び方法で使用できるアポリポタンパク質である。 本発明のIVPSシステムに存在させてもよいアポリポタンパク質はとしては、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリンI、アポリフォリンII又はあらゆる種のアポリフォリンIIIアナログ(いかなる種のアナログの変異体も含まれる)などが挙げられるが、これらに限定されない。 幾つかの例示的実施形態では、IVPSシステムに存在するアポリポタンパク質は交換可能なアポリポタンパク質であり、例えばアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−IlI、アポリポタンパク質E又はアポリフォリンIIIが挙げられる。 幾つかの実施形態では、本発明の組成物及び方法で使用するアポリポタンパク質は、いかなる種由来のアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリフォリンI、アポリフォリンII又はアポリフォリンIIIなどのアポリポタンパク質の、少なくとも20の連続的若しくは隣接するアミノ酸に対して、少なくとも70%の同一性を有する。アポリポタンパク質は、好ましい実施形態では、アポリポタンパク質の少なくとも20アミノ酸の連続配列、少なくとも30アミノ酸の連続配列、少なくとも40アミノ酸の連続配列、少なくとも50アミノ酸の連続配列、少なくとも60アミノ酸の連続配列、少なくとも70アミノ酸の連続配列、少なくとも80アミノ酸の連続配列、少なくとも90アミノ酸の連続配列、又は少なくとも100アミノ酸の連続配列において、アポリポタンパク質に対して少なくとも70%の同一性を有する。幾つかの好ましい実施態様では、IVPSシステム中にアポリポタンパク質を存在させることにより、IVPSシステムにおいて合成される1つ以上のタンパク質の可溶性が向上し、アポリポタンパク質の少なくとも20アミノ酸の連続配列、少なくとも30アミノ酸の連続配列、少なくとも40アミノ酸の連続配列、少なくとも50アミノ酸の連続配列、少なくとも60アミノ酸の連続配列、少なくとも70アミノ酸の連続配列、少なくとも80アミノ酸の連続配列、少なくとも90アミノ酸の連続配列、又は少なくとも100アミノ酸の連続配列において、アポリポタンパク質に対して少なくとも70%の同一性を有する。幾つかの実施形態では、本発明の方法及び組成物において使用するアポリポタンパク質は、IVPSシステムにおいて存在させることにより、IVPSシステムにおいて合成される1つ以上のタンパク質の可溶性が向上し、あらゆる種のアポリポタンパク質の少なくとも20アミノ酸の連続配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%の同一性を有する。 幾つかの実施形態では、本発明の組成物及び方法で使用されるアポリポタンパク質は例えば、交換可能なアポリポタンパク質(例えば限定されないが、あらゆる種のアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質E又はアポリフォリンIII)の少なくとも20アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも70アミノ酸、少なくとも80アミノ酸又は少なくとも100アミノ酸の連続配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%の同一性を有する。幾つかの実施形態では、本発明の方法及び組成物において使用するアポリポタンパク質は、IVPSシステムに存在させることによりIVPSシステムにおいて合成される1つ以上のタンパク質の可溶性が向上し、いかなる種のアポリポタンパク質の少なくとも20アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも70アミノ酸、少なくとも80アミノ酸又は少なくとも100アミノ酸の連続配列に対して少なくとも70%の同一性を有する。 幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は哺乳類のアポリポタンパク質であるか、又は、哺乳類のアポリポタンパク質(例えば限定されないがアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H又はリポタンパク質(a)の少なくとも20アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも70アミノ酸、少なくとも80アミノ酸又は少なくとも100アミノ酸の連続配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%の同一性を有する。 幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は昆虫アポリポタンパク質(例えばアポリフォリンI、アポリフォリンII又はアポリフォリンIII)であるか、又は、昆虫アポリフォリンI、アポリフォリンII若しくはアポリフォリンIIIの少なくとも20アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも70アミノ酸、少なくとも80アミノ酸又は少なくとも100アミノ酸の連続配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%の同一性を有する。 幾つかの例示的実施形態では、本発明の方法及び組成物に使用されるアポリポタンパク質は、野生型の交換可能なアポリポタンパク質の少なくとも100の隣接するアミノ酸に対して少なくとも90%の配列同一性を有する野生型の交換可能なアポリポタンパク質又は変異体であり、インビトロタンパク質合成反応において細菌EmrEタンパク質又はヒトGABA受容体タンパク質の可溶性タンパク質の産生を少なくとも10%増加させることができる。幾つかの実施形態では、本発明の方法及び組成物に使用するアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質E又はアポリフォリンIII、又は野生型の交換可能なアポリポタンパク質の少なくとも100の隣接するアミノ酸に対して少なくとも90%の配列同一性を有するあらゆる変異体であり、インビトロタンパク質合成反応において細菌EmrEタンパク質又はヒトGABA受容体タンパク質の可溶性タンパク質の産生を少なくとも10%増加させることができる。 ある具体的実施形態では、本発明の方法及び組成物において使用するアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A−I、又は野生型アポリポタンパク質A−Iの少なくとも100の隣接するアミノ酸に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアポリポタンパク質A−Iの変異体であり、インビトロタンパク質合成反応において細菌EmrEタンパク質又はヒトGABA受容体タンパク質の可溶性タンパク質の産生を少なくとも10%増加させることができる。 本発明のアポリポタンパク質にはまた、天然のアポリポタンパク質のヘリックス状ドメインの少なくとも10の残基に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する改変アポリポタンパク質が包含される。本発明には、本願明細書に援用する米国特許出願公開第2005/0182243号において開示される改変アポリポタンパク質(「膜足場タンパク質」)が包含され、例えば限定されないが、ヒスチジンタグを付与したMSP1(配列番号19)、MSP1(配列番号20)、MSP2(Hisタグ付き)(配列番号21)、MSP2(Hisタグ付き、長いリンカー)(配列番号22)、MSP1D5D6(配列番号23)、MSP1D6D7(配列番号24)、MAP1T4(配列番号25)、MSP1T5(配列番号26)、MSP1T6(配列番号27)、MSP1N1(配列番号28)、MSP1E3TEV(配列番号29)、MSP1E3D1(配列番号30)、HisTEV−MSP2(配列番号31)、MSP2N1(配列番号32)、MSP2N2(配列番号33)、MSP2N3(配列番号34)、MSP2N4(配列番号35)、MSP2N5(配列番号36)、MSP2N6(配列番号37)、MSP2CPR(配列番号38)、His−TEV−MSP1T2−GT(配列番号39)、MSP1RC12’(配列番号40)、MSP1K90C(配列番号41)及びMSP1K152C(配列番号42)などが挙げられる。 本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質はいかなる給源に由来してもよく、例えば血液、血漿若しくは血清を含む器官若しくは組織から単離してもよく、細胞培養から単離してもよく、又はインビトロ合成システムに添加する前にリコンビナント的に発現させてもおい。好ましくは、インビトロ合成システムに添加する前に少なくとも部分的にアポリポタンパク質を精製する。 本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質のアミノ酸配列は、その野生型配列に対して1つ以上のアミノ酸の欠失若しくは付加、又はアミノ酸置換を施して野生型アポリポタンパク質の配列を修飾したものであってもよく、それにより、当該アポリポタンパク質をインビトロタンパク質合成反応に存在させた場合に、インビトロタンパク質合成反応で調製される可溶化形態のタンパク質の収率が高まるという特性を有するようになる。 例えば、本発明の方法又は組成物で使用するアポリポタンパク質は、N末端又はC末端が欠失してもよく、又は野生型アポリポタンパク質配列の内部に1つ以上の欠失又は挿入を有してもよい。本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の多量体又はその部分であってもよく、例えば、リンカーにより結合したアポリポタンパク質の2つ以上のコピー、又は変異体若しくはその部分であってもよい。本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質はキメラアポリポタンパク質であってもよく、2つの異なるアポリポタンパク質(又はその変異体)の配列を含んでなってもよい。更に、アポリポタンパク質は、融合タンパク質の一部として、ペプチド又は他のタンパク質配列と結合してもよい。例えば、当該ペプチド配列は精製及び/又は検出タグであってもよい。 本発明の幾つかの実施形態では、IVPSにおいて使用するアポリポタンパク質は、米国特許第7048949号A1、米国特許出願公開第2005/0182243号A1、第2005/0152984号A1、第2004/0053384号A1及び第2006/0088524号A1(全開示内容を本願明細書に援用する)において開示されるアポリポタンパク質A−1の配列に基づく膜足場タンパク質(MSP)を含む。 本願明細書に提供されるアポリポタンパク質は、脂質と結合してもよく、又は脂質と結合しないフリーのアポリポタンパク質であってもよい。例えば、アポリポタンパク質は、器官(例えば血液又は血漿)から、培養細胞又は培地から単離してもよく、又は組換えアポリポタンパク質を発現するよう改変された細菌細胞から単離してもよい。単離されたアポリポタンパク質は、公知の技術を使用して脂質と結合させることができる(Pownallら、(1978)Biochemistry 17:1183−1188、Pownallら、(1981)Biochemistry 20:6630−6635、Jonasら、(1984)J.Biol.Chem.259:6369−6375、Jonasら、(1989)J.Biol.Chem.264:4818−4824、Jonasら、(1993)J.Biol.Chem.268:1596−1602、Tricerriら、(2000)Biochemistry 39:14682−14691、Segallら、(2002)J.Lipid Res.43:1688−1700、Pearsonら、(2005)J.Biol.Chem.280:38576−38582,を参照。全開示内容を本願明細書に援用する)。本発明の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は、1つ以上の脂質(例えば1つ以上のリン脂質)を更に含んだ態様でインビトロタンパク質合成システムに提供してもよい。コレステロール、コレステロールエステル又は1つ以上の他の中性脂質(限定的ではないがステロールエステル、モノ−、ジ−若しくはトリアシルグリセリド、又はアシルグリセロールなど)を任意に添加してもよい。当該脂質は、約1μg/mL〜約20mg/mL、又は約5μg/mL〜約10mg/mL、又は約10μg/mL〜約5mg/mLの濃度で存在させてもよい。1つ以上のリン脂質は、インビトロタンパク質合成システムにおいてアポリポタンパク質と結合してもよい。本発明の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は、1つ以上の脂質(例えば1つ以上のリン脂質)を含むインビトロタンパク質システムを使用して翻訳される。無細胞システムにおいて合成されるアポリポタンパク質は、翻訳の間、又は翻訳後に1つ以上の脂質と結合することができる。リン脂質−アポリポタンパク質粒子 本発明の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は、リン脂質−アポリポタンパク質粒子としてインビトロタンパク質合成システムに存在してもよく、詳細には、当該粒子はリン脂質を含んでなり、アポリポタンパク質により二重層ディスクとして構成される。リン脂質−アポリポタンパク質粒子の幾つかの例、並びにリン脂質−アポリポタンパク質ディスク(アポリポタンパク質変異体を含むリン脂質アポリポタンパク質ディスクも包含される)の調製方法は従来技術において公知であり、例えば、Jonasら、(1984)J.Biol.Chem.259:6369−6375、Jonasら、(1989)J.Biol.Chem.264:4818−4824、Jonasら、(1993)J.Biol.Chem.268:1596−1602、米国特許第7048949号、米国特許出願公開第2005/0182243号A1、第2005/0152984号A1、第2004/0053384号A1及び第2006/0088524号A1(本願明細書に全開示内容を援用する)に記載されている。 本願明細書にリン脂質−アポリポタンパク質粒子又はPAPとして開示されているナノスケールの二重層ディスクは、米国特許第7048949号、米国特許出願公開第2005/0182243号、第2005/0152984号、第2004/0053384号及び国際公開第02/040501号(全開示内容を本願明細書に援用する)に記載されており、特にナノスケールのリン脂質二重層ディスク、その成分、その製造及び使用方法に関して開示されている。本発明の方法では、リン脂質−アポリポタンパク質粒子又はナノスケールのリン脂質二重層ディスクに挿入される膜タンパク質が産生される。核酸鋳型を細胞抽出物及びPAPの調製を含むインビトロタンパク質合成システムに添加し、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートし可溶化形態の膜タンパク質(可溶化形態の膜タンパク質がPAPに挿入されている)を合成する。 本発明は、アポリポタンパク質を含むリン脂質二重層粒子若しくはディスクを含んでなる翻訳システム及び方法の提供に関する。好ましくは、リン脂質−アポリポタンパク質として提供されるアポリポタンパク質は、1つ以上の両親媒性のヘリックス状ドメインを有する。アポリポタンパク質は例えば、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、アポリポタンパク質A−IV、アポリポタンパク質A−V、アポリポタンパク質B−100、アポリポタンパク質B−48、アポリポタンパク質C−I、アポリポタンパク質C−II、アポリポタンパク質C−III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、アポリポフォリンI(アポリポフォリンII)若しくはアポリポフォリンIII、又はその誘導体若しくは変異体(例えばキメラアポリポタンパク質、C−端末又はN末端が欠失したアポリポタンパク質、内部的が欠失したアポリポタンパク質、更なるアミノ酸配列若しくは変異アミノ酸配列を含むアポリポタンパク質)であってもよい。好ましい実施形態では、本発明のIVPSのリン脂質−アポリポタンパク質粒子は、ApoA−I、ApoA−IV、ApoA−V、ApoC−I、ApoC−II、ApoC−III、Apo−E又はアポリポフォリンIII又はこれらのいずれかの変異体である。幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質の両親媒性のヘリックス状ドメインの長さを適宜調節し、様々な直径を有するリン脂質−アポリポタンパク質粒子の形成を活性化させることもできる。このことは、リン脂質−アポリポタンパク質粒子内に多種類のタンパク質を適切に取り込む際に有利であると考えられる。 翻訳システムにおいてリン脂質−アポリポタンパク質粒子又はディスクを形成するために用いるリン脂質は、グリセロール又はスフィンゴ脂質ベースであってもよく、例えば、2分子の6〜20の炭素原子の飽和脂肪酸、及び一般的に用いられるヘッド基(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリン)を含んでなってもよい。ヘッド基は、荷電しなくともよく、正に荷電してもよく、負に荷電してもよく、また双性イオンであってもよい。リン脂質は、天然物(自然界で生じる)若しくは合成物(自然界で生じない)、又は天然物と合成物の混合物であってもよい。リン脂質の非限定的な例としては、PC(ホスファチジルコリン)、PE(ホスファチジルエタノールアミン)、PI(ホスファチジルイノシトール)、DPPC(ジパルミトイル−ホスファチジルコリン)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、POPC(1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリン)、DHPC(ジヘキサノイルホスファチジルコリン)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジヘキサノイルホスファチジルエタノールアミン、ジヘキサノイルホスファチジルイノシトール、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン、又は1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジル基イノシトールが挙げられるが、これらに限定されない。 従来技術において記載のように、単離されたアポリポタンパク質及びリン脂質を混合し、リン脂質−アポリポタンパク質として凝集させてもよく、その方法は全開示内容を本願明細書に引用する、Jonasら、(1984)J.Biol.Chem.259:6369−6375、Jonasら、(1989)J.Biol.Chem.264:4818−4824、Jonasら、(1993)J.Biol.Chem.268:1596−1602、米国特許第7048949号、米国特許出願公開第2005/0182243号A1、第2005/0152984号A1、2004/0053384号A1及び第2006/0088524号A1が挙げられる。更にリン脂質−アポリポタンパク質粒子を細胞抽出物又はIVPSシステム中に添加する。 幾つかの他の本発明の態様では、アポリポタンパク質をコードする核酸構築物を、1つ以上のリン脂質を含むIVPSシステム中に添加し、インビトロで翻訳されたアポリポタンパク質がリン脂質と会合し、IVPSシステム中でリン脂質−アポリポタンパク質粉末粒子を形成する。組換えクローニング Invitrogen(カールズバッド、CA)から市販されている、GATEWAY(登録商標)組換えクローニングシステム、ベクター、酵素及びキットを含む、ある特定の組換え部位で組換えを利用するクローニングシステムが、1998年10月23日に出願の米国特許出願第09/177387号、2000年3月2日に出願の米国特許出願第09/517466号、並びに米国特許第5888732号及び第6277608号(本願明細書に全開示内容を援用する)に記載されている。これらのシステムを用いて、インビトロ翻訳用の発現ベクターにMPOIのコード配列及び/又はアポリポタンパク質のコード配列をクローニングし、マルチサイトGATEWAY(登録商標)ベクターを用いて、単一の反応において2つ以上のタンパク質の同時翻訳用のマルチオープンリーディングフレームを設けることができる。 手短に言えば、GATEWAY(登録商標)クローニングシステムでは、in vivo又はインビトロで所望の核酸分子をクローニングするための1つ以上の組換え部位を含むベクターを利用する。より詳細には、野生型(att0)部位を変異させた、バクテリオファージλシステムに基づく少なくとも2つの異なる部位特異的組換え部位(例えばatt1及びatt2)を含むベクターを利用する。各変異部位は、同じタイプのパートナーとしてのatt部位(例えばattP1に対してはattB1、又はattR1に対してはattL1)に由来するユニークな特性(すなわちその結合パートナー組換え部位)を有し、他の変異体タイプの組換え部位、又は野生型att0部位との交差反応を起こさない。それぞれの部位特異性により、所望の分子の一定方向のクローニング又は結合が可能となり、それによりクローニング分子に所望の方向性が提供される。組換え部位が両端に存在する核酸断片をGATEWAYシステムを使用してクローニング及びサブクローニングし、Destinationベクターと称される受容側プラスミド分子上のatt部位が両端に存在する選択マーカー(例えばccdB)を置換する。更にccdB感受性宿主菌株の形質転換し、及び受容体分子上のマーカーを用いたポジティブ選抜により所望のクローンを選抜する。他の生物を用いたネガティブ選択(例えば毒性遺伝子の使用)の場合にも同様のストラテジーを使用でき、例えば哺乳類及び昆虫細胞におけるチミジンキナーゼ(TK)が利用できる。アポリポタンパク質を用いた、In vitroによるタンパク質合成方法及びシステム 本発明は、膜タンパク質がリン脂質−アポリポタンパク質粒子(PAP)の存在下で翻訳されるときに、膜タンパク質がリン脂質−アポリポタンパク質粒子(リン脂質二重層ディスク)に挿入されるという発見に基づく。本願明細書に提供される実施例にて図示するように、PAPを含むインビトロタンパク質合成(IVPS)システムにおいて、目的の膜タンパク質(MPOI)の合成の結果、MPOIがPAPに組み込まれることにより、可溶性の向上したMPOIの製造がもたらされた。 発明者は更に、PAPの一部でないアポリポタンパク質の存在下で膜タンパク質が翻訳でき、アポリポタンパク質の存在下で翻訳されるMPOIは、アポリポタンパク質の非存在下でインビトロで翻訳される同じMPOIよりも可溶性が向上することを発見した。すなわち本発明は、アポリポタンパク質の存在下でタンパク質を翻訳するためのインビトロ合成方法及びシステムの提供に関する。本発明は、アポリポタンパク質の存在下でタンパク質を翻訳するためのインビトロ合成方法及びシステムであって、IVPSシステム中のアポリポタンパク質がPAPに提供されない当該方法及びシステムに関する。本発明はまた、アポリポタンパク質の存在下でタンパク質を翻訳するためのインビトロ合成方法及びシステムであって、外生のリン脂質がIVPSシステムに存在しない当該方法及びシステムに関する。 本発明の更に他の特徴は、アポリポタンパク質を、MPOIが翻訳される同じIVPSシステム中で発現させ、MPOI及びアポリポタンパク質を同じIVPS反応において合成させたときに、アポリポタンパク質を含まないか若しくはアポリポタンパク質鋳型を含まないIVPS反応において合成させた場合よりも、MPOIの可溶性を向上させることができるという発見に基づく。 すなわち一態様では、本発明はインビトロで目的タンパク質を合成する方法の提供に関し、当該方法は、アポリポタンパク質を含むインビトロタンパク質合成システムに目的タンパク質をコードする核酸鋳型を添加し、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートすることにより、目的タンパク質を合成する工程を含んでなる。幾つかの好ましい実施形態では、目的タンパク質の少なくとも一部が可溶化形態において合成される。 例えば、IVPSシステムで発現される目的タンパク質(「POI」)はいかなる目的タンパク質であってもよく、酵素、構造蛋白質、輸送タンパク質、結合タンパク質、抗体、ホルモン、成長因子、レセプタ、阻害剤又は活性剤などが挙げられる。本願明細書に提供される実施例では、IVPS反応におけるアポリポタンパク質の存在が非膜タンパク質の翻訳に有害な影響を及ぼさないことを示す。幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は、膜タンパク質(「MPOI」)、又はその天然の状態が生体膜に関連するタンパク質(例えば膜貫通タンパク質、膜内在型タンパク質又は膜表在性タンパク質)である。 幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質であり、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートした後に合成される目的膜タンパク質(MPOI)は、アポリポタンパク質が存在しない場合に翻訳される当該タンパク質よりも、可溶化形態において多く得られる。好ましい実施態様では、IVPS反応にアポリポタンパク質存在しない場合よりも、MPOIがアポリポタンパク質の存在下で、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%多い態様で合成される。幾つかの好ましい実施形態では、IVPSシステムをインキュベートした後に、目的の全タンパク質に対する可溶性MPOIの量が、アポリポタンパク質の非存在下でMPOIを翻訳させた場合よりもより高いパーセンテージで合成される。好ましい実施態様では、アポリポタンパク質の存在下でIVPS反応においてMPOIを合成した場合の、全MPOIに対する、可溶性MPOIのパーセンテージは、アポリポタンパク質の非存在下でIVPS反応においてMPOIを合成した場合の、全MPOIに対する可溶性MPOIのパーセンテージよりも、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%増加する。 本願明細書に記載のように、IVPSシステムに提供されるアポリポタンパク質は、天然のアポリポタンパク質(いかなる種起源であってもよい)、天然のアポリポタンパク質の変異配列、又は天然のアポリポタンパク質のヘリックス状ドメインに対して少なくとも90%のホモロジーを有する1つ以上のヘリックス状ドメインを有する改変タンパク質のいずれかであってもよい。本発明の方法及び組成物で使用するアポリポタンパク質は、膜タンパク質の可溶性収率を少なくとも10%上昇させる特性を有する。当該可溶性収率は、アポリポタンパク質がIVPSシステムに提供されるか、又は膜タンパク質も翻訳されるIVPSにおいて、同時に翻訳された場合における、合成される全タンパク質に対する、合成される可溶性タンパク質の量又は可溶性タンパク質のパーセンテージとして算出する。 IVPSシステムに存在するアポリポタンパク質は、MPOIの翻訳を可能にするいかなる濃度で存在してもよい。飽くまでガイドラインであるが、IVPSシステムに提供できるアポリポタンパク質は、約0.5μg/mL〜約2mg/mL、又は約1μg/mL〜約1mg/mL、又は約5μg/mL〜約500μg/mL、又は約10μg/mL〜約250μg/mLの濃度である。複数のアポリポタンパク質を単一のIVPS反応に存在させてもよい。 1つ以上のアポリポタンパク質は、核酸鋳型を反応に添加した後でIVPS反応に添加してもよいが、POIをコードする核酸鋳型が添加されているときにIVPS反応に存在させるのが好ましい。本発明では、「IVPSにシステムを添加する」という用語は、IVPS用に調製された細胞抽出物に添加することを指し、インビトロ合成用の他の成分がすでに添加されていても、又は未だ添加されていなくてもよい。 すなわち本発明は、別の態様では、本願明細書に記載のように、1つ以上のアポリポタンパク質を含むインビトロ翻訳用の細胞抽出物の提供に関する。インビトロ翻訳用の細胞抽出物には、本願明細書に記載されているそれら全てが包含される。幾つかの実施形態では、本発明には、アポリポタンパク質、細胞抽出物及び化学エネルギー供給源を含んでなるIVPSシステムが包含される。幾つかの実施形態では、本発明には、アポリポタンパク質、細胞抽出物、化学エネルギー供給源及び1つ以上のアミノ酸を含んでなるIVPSシステムが包含される。幾つかの実施形態では、本発明には、アポリポタンパク質、細胞抽出物、化学エネルギー供給源、1つ以上のアミノ酸及び核酸鋳型を含んでなるIVPSシステムが包含される。IVPSシステムは、1つ以上の脂質、界面活性剤、塩、緩衝化合物、酵素、阻害剤又は補因子を任意に含んでなってもよい。 本発明の方法の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は、1つ以上の脂質(例えば1つ以上のリン脂質)を含むIVPSシステムに添加される。本発明の方法の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は1つ以上の脂質を含むIVPSシステムに添加され、アポリポタンパク質はIVPSシステムの1つ以上の脂質と会合体を形成する。本発明の方法の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質をIVPSシステムに添加すると、1つ以上の脂質と会合する。本発明の幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は1つ以上の脂質を含むIVPSシステムに添加されるか、又はアポリポタンパク質はIVPSシステムに添加されたときに1つ以上の脂質と会合し、IVPSシステムのインキュベーションの間、合成された目的タンパク質が、IVPSシステム中のアポリポタンパク質及びその関連する1つ以上の脂質と会合体を形成する。 本発明の方法の幾つかの実施形態では、IVPSシステムに添加されるアポリポタンパク質は、リン脂質−アポリポタンパク質粒子(PAP)として添加される。本発明の方法の幾つかの実施形態では、IVPSシステムに添加されるアポリポタンパク質はPAPとして添加され、当該システムにおいて合成されるMPOIがPAPと会合体を形成する。 ゆえに本発明の更なる態様では、本願明細書に記載のように、リン脂質−アポリポタンパク質粒子(PAP)を含有する翻訳用の細胞抽出物が包含される。インビトロ翻訳用の細胞抽出物には、本願明細書に記載されているそれら全てが包含される。幾つかの実施形態では、本発明にはPAP、細胞抽出物及び化学エネルギー供給源を含むIVPSシステムが包含される。幾つかの実施形態では、本発明にはPAP、細胞抽出物、化学エネルギー供給源及び1つ以上のアミノ酸を含むIVPSシステムが包含される。幾つかの実施形態では、本発明にはPAP、細胞抽出物、化学エネルギー供給源、1つ以上のアミノ酸及び核酸鋳型を含むIVPSシステムが包含される。IVPSシステムは、1つ以上の脂質、界面活性剤、塩、緩衝化合物、酵素、阻害剤又は補因子を任意に含んでなってもよい。 上記で詳細に説明したリン脂質−アポリポタンパク質粒子(PAP)は、インビトロ翻訳を可能とするいかなる濃度においてIVPSシステムに添加してもよいが、IVPSで翻訳されるMPOIの可溶性を強化する濃度で添加するのが好ましい。飽くまでガイドラインであるが、PAPは、約0.5μg/mL〜約2mg/mL、約1μg/mL〜約1mg/mL、約5μg/mL〜約500μg/mL、又は約10μg/mL〜約250μg/mLの濃度で適宜添加してもよい(上記濃度はPAPの蛋白質の含有量に対する濃度)。複数のタイプのPAPを単一のIVPS反応中に存在させてもよく、すなわち異なるPAPが異なるアポリポタンパク質及び/又は異なるリン脂質組成物を含有してもよい。 本発明は、可溶化形態の無細胞システムの膜タンパク質を合成するための効率的なシステム及び方法の提供に関する。当該方法は、膜タンパク質をリン脂質−アポリポタンパク質粒子を含む細胞フリーのシステムで発現させることを含んでなる。 本発明の幾つかの実施形態では、当該方法は、IVPS混合物から目的タンパク質を単離することを更に含んでなる。単離方法は例えば、アポリポタンパク質の一部としてのペプチドタグを用いるものであってもよく、又は目的タンパク質の一部としてのペプチドタグを用いるものであってもよい。 アポリポタンパク質は、POIを翻訳するIVPSシステムで翻訳することによって、アポリポタンパク質をIVPSシステムに提供することができる。ゆえに更に他の態様では、本発明は、インビトロでタンパク質を合成する方法の提供に関し、当該方法は、インビトロ合成システムに、アポリポタンパク質をコードする核酸構築物及び目的タンパク質をコードする核酸構築物を添加し、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートし、アポリポタンパク質及び目的タンパク質を合成することを含んでなる。幾つかの好ましい実施形態では、目的タンパク質は可溶化形態で合成される。幾つかの好ましい実施形態では、目的タンパク質は膜タンパク質である。 幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質は第1の核酸構築物により提供され、目的タンパク質は第2の核酸構築物により提供される。本発明の本態様の他の実施形態では、アポリポタンパク質をコードする配列及び目的タンパク質をコードする配列が同じ核酸構築物上に提供される。任意にGATEWAY(登録商標)ベクター及びクローニングシステムを用いて、目的のアポリポタンパク質及びタンパク質の一方又は両方をコードする核酸構築物を作製することができる。幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質をコードする配列及び目的タンパク質をコードする配列を含むDNA構築物は、アポリポタンパク質のコード配列のための第1のプロモータ、及び目的タンパク質のコード配列のための第2プロモータを有する。一変形態様では、アポリポタンパク質をコードする配列及び目的タンパク質をコードする配列を含む核酸構築物は、2つのコード配列の間にIRES配列を有する。 本発明のこれらの態様では、アポリポタンパク質をコードする核酸構築物は本願明細書に開示されていかなるアポリポタンパク質(天然のアポリポタンパク質、天然のアポリポタンパク質の変異配列、又は天然のアポリポタンパク質のヘリックス状ドメインに対して少なくとも90%の相同性を有する1つ以上のヘリックス状ドメインを有する改変アポリポタンパク質を含む)をコードしてもよい。アポリポタンパク質をコードする核酸構築物は、野生型アポリポタンパク質のアミノ酸配列に修飾を施したアミノ酸配列を有するアポリポタンパク質をコードしてもよい。幾つかの実施形態では、アポリポタンパク質又はアポリポタンパク質変異体をコードする核酸構築物は、アポリポタンパク質配列に融合するタグ配列をコードする。 幾つかの好ましい実施形態では、アポリポタンパク質をコードする鋳型及び膜タンパク質をコードする鋳型を含むIVPSにおいて目的タンパク質は翻訳され、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートした後に、同じ反応においてアポリポタンパク質が存在しない又は産生されない条件下で目的の膜タンパク質(MPOI)を翻訳させる場合よりも多い量において、可溶化形態のMPOIが合成される。幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質であり、IVPSシステムをインキュベートした後、同じ反応においてアポリポタンパク質が存在しない又は産生されない条件下で目的のタンパク質を翻訳させる場合よりも高いパーセンテージにおいて、可溶化形態の目的のタンパク質が合成される。 幾つかの実施形態では、目的タンパク質及びアポリポタンパク質をコードする1つ以上の核酸構築物を含む本発明のインビトロタンパク質合成システムは、1つ以上の脂質(例えば1つ以上のリン脂質)を含んでなる。幾つかの実施形態では、可溶化形態で目的タンパク質を合成することを含んでなる本発明の方法は、1つ以上の脂質を含むインビトロ合成システムに、アポリポタンパク質をコードする核酸構築物及び目的タンパク質をコードする核酸構築物を添加し、インビトロタンパク質合成システムをインキュベートし、アポリポタンパク質粒子及びリン脂質−アポリポタンパク質粒子と会合した目的タンパク質を合成することを含んでなる。 本発明の更なる態様は、細胞抽出物、アポリポタンパク質をコードする核酸鋳型及び目的タンパク質をコードする核酸鋳型を含んでなるインビトロタンパク質合成システムの提供に関する。ある特定の実施形態では、本発明には、細胞抽出物、アポリポタンパク質をコードする第1の核酸分子及び目的タンパク質をコードする第2の核酸分子を含むインビトロタンパク質合成システムが包含される。他の実施形態では、細胞抽出物及びアポリポタンパク質及び目的タンパク質をコードする核酸鋳型を含むインビトロタンパク質合成システムが包含される。核酸鋳型はDNA又はRNAのいずれか一方又は両方であってもよい。 本発明の方法及びインビトロ合成システムに使用する核酸構築物によってコードされるアポリポタンパク質配列は、本願明細書に開示されるいかなるアポリポタンパク質の配列であってもよい。アポリポタンパク質をコードする構築物は、アポリポタンパク質配列とインフレームで融合するアミノ酸タグをコードしてもよい。アポリポタンパク質をコードする核酸鋳型はDNA鋳型又はRNA鋳型であってもよい。例えば、アポリポタンパク質をコードする核酸鋳型は固体支持体(ビーズ、マトリックス、チップ、アレイ、膜、シート、ディッシュ又はプレート)に結合していてもよい。 目的タンパク質をコードする核酸鋳型はDNA鋳型又はRNA鋳型であってもよく、いかなる目的のタンパク質(例えば酵素、構造蛋白質、輸送タンパク質、ホルモン、成長因子、阻害剤又は活性剤)をコードしてもよい。幾つかの好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて翻訳される目的タンパク質は膜タンパク質である。目的タンパク質をコードする構築物は、目的のタンパク質配列とインフレームで融合するアミノ酸タグをコードしてもよい。 本発明のインビトロタンパク質合成システムに存在する核酸構築物は、目的の複数のタンパク質をコードすることができる。例えば、目的タンパク質をコードする核酸鋳型は固体支持体(ビーズ、マトリックス、チップ、アレイ、膜、シート、ディッシュ又はプレート)に結合していてもよい。 本発明はまた、効率的なシステムのための方法、及び可溶性の、かつ容易に精製可能な形態の膜タンパク質をインビトロで合成する方法の提供に関する。これらの方法では、アポリポタンパク質を含むインビトロ翻訳反応においてMPOIが合成され、アポリポタンパク質は精製タグを有する。精製タグを使用したアポリポタンパク質の捕捉により、アポリポタンパク質の存在下でインビトロ合成された膜タンパク質との共単離が可能となる。アポリポタンパク質がPAPに取り込まれる実施形態では、精製タグを使用したアポリポタンパク質の捕捉により、MPOIを含むPAPの単離が可能となる。MPOIを組み込んだPAPは多くのアッセイに使用でき、更には構造解析(例えばNMR又はX線結晶解析)に使用できる。 他の実施形態では、目的の(MPOI)膜タンパク質はアポリポタンパク質の存在下で任意に翻訳されることができ、MPOIは合成されたタンパク質を更に識別、単離、結合若しくは精製、又は固定するためにタンパク質タグを結合させてもよい。この場合、アポリポタンパク質は任意にタグを有していてもよい。 本発明は更に、アポリポタンパク質(PAPの周囲、又はPAPの周囲でない)を含むIVPS反応におけるPOI(MPOIを含む)(タンパク質のアイデンティティは公知でも公知でなくてもよい)のインビトロ合成方法の提供に関し、そこでは多くの反応が並行して(例えばマルチウェルプレートで)行われ、アッセイ用の多くの可溶性タンパク質が得られる。ベクター上の鋳型から当該タンパク質を発現させてもよく、当該ベクターはクローニング部位の付近に転写及び翻訳による発現用の配列を有する。ベクターを用いて、配列のライブラリをクローニングしてもよく、POIとインフレームで発現されうるタンパク質タグ配列を任意に含んでなってもよい。 好ましい実施形態では、PAPのアポリポタンパク質は、固体支持体(例えばマイクロウェル面、チップ表面、シート、膜、マトリックス又はビーズ)にMPOIを含むPAPを結合させるのに用いるアフィニティタグ(例えばHisタグ、グルタチオンタグ、ストレプトアビジンタグなど)を含んでなってもよい。PAPと共に翻訳されるMPOIを、結合するPAPへのそれらの挿入を経て、マイクロウェル、チップ表面、シート、膜、マトリックス又はビーズに固定化させてもよい。MPOIの翻訳の前若しくは後に、PAPをPAPの存在下で固体支持体に結合させてもよい。 すなわち、本発明の方法を用いて膜タンパク質アレイ又はマルチウェルアッセイプレートを作製してもよく、PAPを含む局所化されたインビトロ翻訳反応により、アレイ上の特異的な部位に挿入された個々のMPOIを有するPAPの結合が可能となる。かかるアレイを用いて、多くのタイプのスクリーニング及びアッセイ(酵素アッセイ、イオンチャネルアッセイ及び薬物結合試験を含むがこれらに限定されない)を実施できる。後述するような翻訳反応におけるMPOIの標識化を行い、アレイアッセイを簡便化してもよい。 アレイ又はマルチウェルアッセイプレートを、アレイ又はプレート上で実施されるインビトロ翻訳反応によって調製してもよい。例えば、アレイ(又はウェル又はプレート)上の各部位に、細胞抽出物、PAP及びMPOIをコードする核酸鋳型を含むIVPS反応液を添加してもよい。PAPは、アポリポタンパク質に改変的に付与したHis、グルタチオン、ストレプトアビジン又は他のタグを介してアレイと結合させてもよい。MPOIは公知若しくは未知のタンパク質であってもよい。 別の実施形態では、目的タンパク質のN末端又はC末端アミノ酸配列としてのタグをコードする配列を提供するベクターに、MPOIをクローニングしてもよい。会合するリン脂質なしで調製できるアポリポタンパク質の存在下において、又はPAPとの関連において翻訳されうるタンパク質を、当該タグを用いて更に単離、結合若しくは精製、又は固定してもよい。合成されたタンパク質は例えば、アフィニティ捕捉試薬で処置もしくはコーティングされたウェルの底、又はアレイ中の場所若しくはウェル、又はフィルタ、マトリックス、又はビーズに捕捉することができる。 本発明にはまた、アポリポタンパク質を含むIVPSシステムで膜タンパク質を翻訳する方法が包含され、詳細には、MPOIを識別用放射性同位元素、重同位元素標識又は蛍光標識(例えばアミノ基にBODIPY(登録商標)FLフルオロフォアを有するtRNAメチオニン(fmet)(ミスアミノアシル化されている)を用いてBODIPY(登録商標)FLフルオロフォアをN末端に導入する)などによって翻訳の間に標識することを特徴とする。あるいは、MPOIは標識(例えば蛍光標識)と結合できるタグを含む態様で改変されてもよい(非限定的な例として、LUMIO(商標)テトラシステイン配列モティーフ検出技術(本願明細書に全開示内容を援用するInvitrogen,Carlsbad,CAの、例えば米国特許出願公開2003/0083373号、米国特許第5932474号、米国特許第6008378号、米国特許第6054271号、国際公開第99/21013、又はhisタグタンパク質(Invitrogen、カールズバッド、CA)用のPRO−Q(登録商標)Sapphire 532、365又は488 ホリゴヒスチジン染色が使用可能である)。当該方法は、アポリポタンパク質及び合成された膜タンパク質に組み込まれうる1つ以上の標識を含むインビトロ合成反応で膜タンパク質を翻訳することを含んでなる。代替的な実施形態では、当該方法は1つ以上のアポリポタンパク質を含むインビトロ合成反応で膜タンパク質を翻訳することを含んでなり、詳細には、翻訳された膜タンパク質が標識と結合できる1つ以上のタグを有する。当該方法におり、可溶化形態の、標識若しくはタグ付きの膜タンパク質の産生が可能となる。好ましい実施態様における当該方法により、可溶性が向上した、タグ付きの及び/又は標識された膜タンパク質の産生が可能となる。 これらの方法の幾つかの好ましい実施形態では、IVPSシステムに存在するアポリポタンパク質はPAP中に存在する。すなわち本発明には、リン脂質−アポリポタンパク質粒子及び合成された膜タンパク質に組み込まれることができる1つ以上の標識を含むインビトロ合成反応で膜タンパク質を翻訳し、標識された膜タンパク質を調製することが包含される。当該方法は、リン脂質−アポリポタンパク質粒子及び合成された膜タンパク質に組み込まれることができる1つ以上の標識を含むインビトロ合成反応で膜タンパク質を翻訳し、リン脂質−アポリポタンパク質粒子に挿入された状態の標識された膜タンパク質を調製することを含んでなる。代替的な実施形態では、当該方法は、膜タンパク質を1つ以上のリン脂質−アポリポタンパク質粒子を含むインビトロ合成反応で翻訳することを含んでなり、詳細には、翻訳された膜タンパク質内に標識と結合できる1つ以上のタグが含まれることを特徴とする方法である。当該方法は、膜タンパク質をリン脂質−アポリポタンパク質粒子を含むインビトロ合成反応で翻訳することを含んでなり、詳細には、翻訳された膜タンパク質内に標識と結合できる1つ以上のタグが含まれ、リン脂質−アポリポタンパク質粒子に挿入された状態のタグ付きの膜タンパク質が得られることを特徴とする方法である。 PAPに挿入される膜タンパク質の標識化により膜タンパク質−リガンド結合の解析が可能となり、特にリガンドの結合により標識されたタンパク質の蛍光特性に影響が及ぶ。関連の実施形態では、リガンドを標識し、FRETなどの蛍光検出方法を用いることにより、リガンド−膜タンパク質結合を評価することが可能となる。すなわち本発明には、PAPを含むIVPSシステムで膜タンパク質を翻訳する方法であって、標識と直接又は間接的に結合できる標識又はタグが、翻訳された膜タンパク質に組み込まれる方法が包含される。 PAPに挿入される膜タンパク質を標識することにより、限定されないが、タンパク質−タンパク質相互作用が標識されたタンパク質の蛍光特性に影響を及ぼす場合の、膜タンパク質−タンパク質の相互作用の検討(例えば受容体二量体化の検討)など、あらゆるタンパク質−タンパク質間相互作用を検討することも可能となる。タンパク質の一方又は両方を標識してもよい。 アッセイ(リガンド結合、イオンチャネル活性及びタンパク質−タンパク質相互作用のアッセイを含むがこれに限定されない)をアレイ上で実施してもよく、当該アレイにはMPOIが挿入されたPAPが含まれる。この場合、膜タンパク質上のアッセイをハイスループットで実施できるため、面倒でかつ定型的な精製工程を省略することができる。 本発明にはまた、インビトロ翻訳法を使用した、通常のPAPへの、2つ以上の異なる目的の膜タンパク質を組み込む方法が包含される。これらの実施形態では、異なる膜タンパク質を同じ若しくは異なる核酸鋳型分子を使用して、通常のインビトロ反応で発現されることができる。例えば、マルチサイトGATEWAY(登録商標)ベクター(Invitrogen、カールズバッド、CA)を用いて、同じベクター上の少なくとも2つのオープンリーディングフレームにおいてクローニングすることができる。翻訳の間、標識を当該タンパク質に組み込んでもよく、又は別々のタグを有する別々のタンパク質を合成し、別々の標識化試薬との結合に用いてもよい。このようにして、限定的ではないがFRET及びTRETなどの蛍光測定を用いて、リン脂質二重層のタンパク質−タンパク質間相互作用、特に多くのタンパク質を有するタンパク質複合体内で生じるタンパク質−タンパク質相互作用をモニターしてもよい。幾つかの本発明の態様では、IVPSシステムは細胞抽出物及びナノスケールリン脂質二重層ディスクを含んでもよく、詳細には当該ナノスケールのリン脂質二重層ディスクにはタンパク質転移機構に関与する構成要素が含まれる。タンパク質転移機構に関与する構成要素としてはSec YEGタンパク質が挙げられ、また哺乳類の相対物、タンパク質移動(ポア形成)タンパク質、SRP受容体、リボソーム受容体なども挙げられ、それらにより膜タンパク質の挿入が促進される。他のタンパク質(SecA、SecB又はFtsY(その中に))を反応系中に外添してもよいと考えられる。シャペロニンを添加して、タンパク質のフォールディング及び膜挿入を促進してもよい。 タンパク質移動機構を構成する膜タンパク質成分を事前調製したPAPに提供してもよく、その場合には、タンパク質移動に関与する当該タンパク質は、PAPを調製するための可溶化/透析法により挿入してもよく、又は本願明細書に記載のように、インビトロ翻訳システムを使用してPAPに挿入してもよい。 本発明にはまた、PAP成分(すなわちリン脂質及び可溶化形態のアポリポタンパク質)を含むIVPSシステム及び方法が包含され、詳細には、MPOIがPAP成分の存在下で翻訳され、PAPがMPOIとの反応により会合し、その結果、取り込まれたMPOIを有するPAPが得られる。PAP又は「ナノディスク」の製造方法については、例えば米国特許出願公開第2005/0182243号に開示されている。本発明は、可溶化PAP成分(アポリポタンパク質など、限定されないが本願明細書、及び米国特許出願公開第2005/0182243号に開示)及びリン脂質をIVPS反応中に提供し、MPOIをコードする核酸鋳型を提供することを含んでなり、それにより、MPOIがPAP成分の存在下で翻訳され、翻訳反応中にPAP中に取り込まれる。PAPの凝集は、MPOIの翻訳反応の前、翻訳の間、又は翻訳の後に生じうる。 IVPSシステムに成分を提供することによってPAPを調製する方法に、本願明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることが可能であり、例えばタグ付きのアポリポタンパク質の使用、アレイ又はマルチウェルプレート上における、PAP成分を用いたMPOIの翻訳、PAP成分を用いた2つ以上のMPOIの翻訳、PAP又はPAP成分を含むIVPS反応混合物への、タンパク質転移関連の構成要素の添加、及びPAP又はPAP成分を含むIVPS反応混合物における、1つ以上のタンパク質転移関連の構成要素の翻訳との組み合わせが挙げられる。アポリポタンパク質−膜タンパク質含有組成物 本発明の別の実施態様は、1つ以上のアポリポタンパク質と会合した1つ以上の膜タンパク質を含んでなる組成物の提供に関する。典型的には当該組成物は、1つ以上のアポリポタンパク質と1つ以上の膜タンパク質による、水溶液中の可溶化され、単離された複合体である。当該複合体は脂質(例えばリン脂質)を含んでなってもよい。膜タンパク質及びアポリポタンパク質の複合体は、実施態様によっては実質的に脂質フリーであってもよい。複合体の膜タンパク質は通常、本願明細書に開示されるようにアポリポタンパク質の存在下で、インビトロタンパク質合成システムを使用して合成される。本発明の本実施形態を例示する複合体として、界面活性剤フリーのものが挙げられる。当該複合体は、アポリポタンパク質、膜タンパク質の全長若しくは一部(通常は少なくともN末端部分を含む)、1つ以上のリボソーム、及び1つ以上のRNA分子(例えば膜タンパク質をコードするRNA分子)を含む無細胞複合体であってもよい。当該複合体は脂質を含有してもよく、又は実質的に脂質フリーであってもよい。当該複合体は単離された複合体であってもよい。当該複合体はアポリポタンパク質か膜タンパク質をコードする核酸鋳型を介して固体支持体に結合してもよく、又はアポリポタンパク質若しくは膜タンパク質(そのいずれかはペプチドタグを任意に含んでなってもよい)を経て結合してもよい。 以下の実施例は本発明の例示的態様を示すが、本発明をいささかも限定するものではない。<実施例1>リン脂質−アポリポタンパク質粒子の存在下における非膜タンパク質のインビトロ発現 この実施例は、原核細胞系のインビトロ翻訳システムにおけるナノディスクの存在が非膜タンパク質の翻訳に影響を及ぼすことを示す。 プラスミドDNA鋳型を使用するインビトロタンパク質合成反応液を以下の通りに調製した。スタンダードの50又は100μLのEXPRESSWAY(商標)無細胞発現システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)による反応液を、製造業者の指示に概ね従い調製し、37℃でインキュベートした。当該反応液には、S30バッファ(0.1%のトリトン−X100液中に含まれる1mLあたり2.5μgのGamタンパク質、820UのT7 Enzyme、20UのRNase Out、0.5μLの35S−メチオニン、1.25mMのアミノ酸)を使用して調製した大腸菌抽出物600〜800μg、及び1×IVPSバッファ(58mMのHepes(pH7.6)、1.7mMのDTT、1.2mMのATP、0.88mMのUTP、0.88mMのCTP、0.88mMのGTP、34μg/mLのフォリン酸、30mMのリン酸アセチル、230mMのグルタミン酸カリウム、12mMの酢酸マグネシウム、80mMのNH4OAc、0.65mMのcAMP、30mMのホスホエノールピルビン酸塩、2%のポリエチレングリコール)中の0.5〜1μgの鋳型DNA(環状若しくは直鎖状)を含有させた。ベクターpCR2.1中のCycle 3 GFP遺伝子を鋳型とした。 反応液にはまた、膜足場タンパク質及びリン脂質を含むリン脂質−アポリポタンパク質ナノスケール粒子、又は、本願明細書に全開示内容を援用する米国特許出願公開第2005/0182243号(米国特許出願番号11/033,489号)に記載のような、1μmol〜40μmolの濃度(蛋白質含有量に基づく)の「ナノディスク」を含有させた。MSP1T2足場タンパク質(米国特許出願公開第2005/0182243号)及びDOPCから構成される27mg/mLのPAPストック液を用い、PAPを添加した。反応は、1.5〜2mlのエッペンドルフ微量遠心管中で、30℃若しくは37℃サーモミキサー中で、2〜6時間の中程度に振盪(1000〜1400回転/分)で実施した。反応開始の30分後に、反応液にフィード溶液を1等量(最初の反応ボリュームに対して)添加した。フィード溶液は57.5mMのHEPES−KOH(pH8.0)、230mMのグルタミン酸カリウム、14mMの酢酸マグネシウム、80mMの酢酸アンモニウム、2mMの塩化カルシウム及び1.7mMのDTTを含有した。フィード溶液はまた、各々のアミノ酸を1.25mM(メチオニンの1.5mMを除く)、45mMのグルコース6リン酸、0.5mMのNADH、1mLあたり34μgのフォリン酸及び0.65mMのcAMPを含有した。タンパク質の放射性同位元素識別のため、1175ci/mmoleの特異的な活性を有する35S−メチオニン2μL(100μLの反応液あたり)を反応液に添加した。 インキュベーション終了後、インビトロタンパク質合成反応は10,000×gで短時間に回転し、上澄及びペレット画分をSDS−PAGEゲルのレーンに別々にロードした。詳細には、各反応液の上澄5μlをアセトン沈殿し、ペレット化し、40μlの1×LDSバッファ(Invitrogen、カールズバッド、CA、1mMのDTT含有)中に懸濁した。この懸濁液10μlを4〜12%のBis/トリスNuPAGEゲルにロードした。 合成されたGFP及び可溶性GFPの量を、オートラジオグラフィで測定した(図1)。図1aは、4μmol及び40μmolでリン脂質−アポリポタンパク質ナノスケールの粒子を翻訳反応に含有させても、非膜タンパク質の収率に実質的に有害な影響を及ぼさないことを示す、オートラジオグラフィに基づく棒グラフである。図1bは、NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12%のBis−トリスゲル(Invitrogen、カールズバッド、CA)電気泳動に供した、40μmolのPAPの存在下(レーン3及び4)及び非存在下(レーン1及び2)において合成された全翻訳産物(レーン1及び3)及び可溶性翻訳産物(レーン2及び4)のオートラジオグラフィを示す。結果は、翻訳反応においてリン脂質−アポリポタンパク質ナノスケールの粒子を存在させても、インビトロで合成される非膜タンパク質(GFP)の可溶性フラクションが検出可能な程に増加しないことを示す。<実施例2>ナノディスクの存在下における膜タンパク質のインビトロ合成 本実施例は、インビトロ翻訳システムにおけるリン脂質−アポリポタンパク質粒子の存在により、原核及び真核生物起源の膜タンパク質の可溶化形態における合成収率が向上することを示す。 35S−メチオニンを用いて、20μmolのPAPを含むEXPRESSWAY(商標)無細胞発現システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)で反応を行わせ、EmrE(細菌膜タンパク質、多剤耐性タンパク質)を翻訳した。実施例1にて説明したのと同様にインビトロタンパク質合成反応を実施した。インビトロ合成反応から得られた全タンパク質及び可溶性タンパク質を、実施例1にて説明したように電気泳動に供した。翻訳産物を電気泳動に供した後の、NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12%Bis−トリスゲル(Invitrogen、カールズバッド、CA)のオートラジオグラフィの結果を図2aの棒グラフで示す。インビトロ翻訳混合物中におけるPAPの存在により、可溶性EmrEタンパク質の収率が少なくとも5倍向上した。 また翻訳産物をNativePAGE(商標)Novex(登録商標)3〜12%Bis−トリスゲル電気泳動に供し、オートラジオグラフィを行い、合成されたタンパク質が複合体として存在するか否かを解析した。PAPの非存在下で翻訳されるEmrEタンパク質はゲル中に移動せず、むしろウェルの底に残留し、おそらく凝集しているものと考えられた。20又は25μmolのPAPの存在下で合成されるEmrEタンパク質はゲル中に移動し、PAPのみ(IVPS反応に由来しない)の場合よりも高分子量範囲に移動していた。GFP(可溶性非膜タンパク質)は合成の際のPAPの有無に関係なく、ネイティブゲル中で同様に移動したが、これはEmrE(膜タンパク質)のようにPAPに取り込まれないことを示すものである。 更に、哺乳類の膜タンパク質、ヒトカリウムチャネルサブファミリーKのメンバー13タンパク質(Genbank accession no.NM022054、gi16306554、Ultimate(商標)ORFクローンコレクションから入手可能なcDNA、Invitrogen社、6つの膜貫通ドメインを有する45kDaのタンパク質)を、実施例1において説明したEXPRESSWAY(商標)無細胞発現システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)を用いて反応させ(反応系中に4μmolのPAPを含む)、インビトロで翻訳した。pEXP3ベクターを用い、反応液中に、100μLの反応液あたり700ngで鋳型を添加した。インビトロ合成反応から得られた全タンパク質及び可溶性タンパク質を、実施例1にて説明したように電気泳動に供した。翻訳産物を電気泳動に供した後の、NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12%Bis−トリスゲル(Invitrogen、カールズバッド、CA)のオートラジオグラフィの結果を、図2bの棒グラフに示す。この場合、PAPの存在により可溶性膜タンパク質の量が2倍以上増加した。<実施例3>IN VITRO合成された膜タンパク質の、リン脂質−アポリポタンパク質粒子との共局在化 本実施例は、インビトロ翻訳システムにおけるリン脂質−アポリポタンパク質粒子の存在が、合成された膜タンパク質のPAPへの挿入をもたらすことを示す。 アポリポタンパク質粒子タンパク質又は足場タンパク質(MSP1T2)にHisタグを含有させた。MSP1T2 Hisタグ付きの足場タンパク質を用いて調製した20μmolのPAPを、Ni−NTA樹脂を使用して精製できた(図3a、クーマシー染色したゲルのレーン5−8、カラム溶出フラクションを含む)。コントロールとして、EmrEタンパク質を、実施例1において説明したEXPRESSWAY(商標)無細胞発現システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)を用いて、PAPの非存在下で、35S−メチオニンを含む無細胞翻訳反応中で合成させた。EmrE(Hisタグなし)はNi−NTA樹脂で精製されなかった(図3b、レーン5−8、カラム溶出フラクションを含む)。しかしながら、Hisタグ付き改変アポリポタンパク質タンパク質を有するPAPを反応液に添加することにより、EmrE(PAPのリン脂質結合タンパク質と共精製する)はNi−NTA樹脂で精製された(図3c、レーン5−8は、カラム溶離液分数を含む)。すなわち、EmrEが精製タグを有するPAPに挿入されたことを示すものである。 Native Blueゲルの解析により結果を評価し、PAPなしで発現させた、放射性同位元素識別された細菌の膜タンパク質EmrE(約0.3μgのタンパク質をロード)がゲルの上部で凝集していることが明らかとなった(図5a、レーン2、autorad)。しかしながら、PAPを発現反応液に添加したとき、EmrEは複合体を形成し(図4a、レーン3、4、autorad)、それはゲル中に移行し、PAPより高い分子量で移動した(図4b、レーンJ、クーマシー染色したゲル)。GFP(非膜タンパク質)を、翻訳システムへのPAPの添加の有無に関係なく、同じ分子量を示した(図4a、それぞれレーン5及び6)。<実施例4>Hisタグ付きナノディスクによるインビトロ合成した膜タンパク質は、Ni−NTA樹脂で精製できる 本実施例では、インビトロ翻訳システムにおけるナノディスクの存在が、タグ付きのナノディスクを使用して合成された膜タンパク質の精製を可能にすることを示す。 GFP及びMscL遺伝子(細菌機械感受性チャネル(17kDa)膜タンパク質)をpEXP4ベクターにクローニングした。両方の遺伝子が停止コドンを含むため、発現されたタンパク質のC末端はHisタグが付いていなかった。35S−メチオニンを含み、1μgのGFP及びMscL鋳型を使用するEXPRESSWAY(商標)無細胞発現システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)に、His−タグ付足場タンパク質を含むPAP(40μmol)を添加した(又は添加しなかった)。インキュベート後、反応液をNi−NTAカラム上へロードした。 カラム精製の結果を図5に示す(L=ロード、FT=フロースルー、W=洗浄、E1〜E4=溶出)。ナノディスクの翻訳反応(図5a及び5b)における存在に関わりなく、GFP(膜タンパク質でない)はNi−NTAカラムを使用して精製できないことを示す。MscLは、ナノディスクが翻訳反応(図5c及び5d)に含まれる場合にのみ、Ni−NTAカラムで精製できることが示された。すなわちMscLがPAPに挿入されることを示す。<実施例5>ナノディスクを用いてインビトロ合成された膜タンパク質は、ナノディスクと会合し、可溶性が向上する 本実施例は、インビトロ翻訳システムにおけるリン脂質−アポリポタンパク質粒子の存在により、可溶性が向上した膜タンパク質が合成され、それがPAPに挿入され、可溶性を向上させることを示すものである。 35S−メチオニンを含むEXPRESSWAY(商標)無細胞発現システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)に含まれるpEXP3ベクターを用い、細菌膜タンパク質EmrE及び哺乳類のORFs“IOH5384”(ヒト原形質膜プロテオリピド(plasmolipin)をコードする)及び“IOH22669”(ヒトアドレノメデュリン受容体(ADMR)をコードする)を発現させた。インビトロ合成反応から得た全タンパク質及び可溶性フラクションのアリコートを、NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis−トリスゲル(Invitrogen、カールズバッド、CA)上で泳動させた結果、PAPをインビトロ合成反応に添加したときに細菌及び哺乳類の膜タンパク質の可溶性が向上することを示したが、GFPの可溶性はインビトロ合成反応におけるPAPの存在の有無により影響を受けなかった(図6a及び6b)。 図6cのブルーネイティブゲルのオートラジオグラフィでは、細菌膜タンパク質EmrE、哺乳類のORFsIOH 5384(ヒト原形質膜プロテオリピド(plasmolipin)をコード)、及びIOH22669(ヒトアドレノメデュリン受容体(ADMR)をコード)がPAPに挿入されることを示す。PAPを反応液に添加したとき、放射性同位元素識別されたEmrE、IOH 5384及びIOH22669は上方へシフトした。GFP(非膜タンパク質)は、インビトロ合成反応へのPAPの添加の有無にかかわらず同じ分子量を示した。<実施例6>挿入された膜タンパク質のLUMIO検出 EmrE(細菌膜タンパク質)の遺伝子は、LUMIO(商標)テトラシステインのモティーフタグ(pEXP6、Invitrogen、カールズバッド、CA)を含むN末端ベクターにクローニングした。EmrE構築物はHisタグを含まなかった。PAP(40μm)をEXPRESSWAY(商標)無細胞発現システム(Invitrogen、カールズバッド、CA)の反応液に添加したか又は添加せず、合成終了後、反応液をNi−NTAカラム上へロードした(L=ロード、FT=フロースルー、W=洗浄、E1〜E4=溶出)。LUMIO(商標)検出試薬(Invitrogen、カールズバッド、CA)を、LUMIO(商標)グリーンin−gel検出キット(Invitrogen、カールズバッド、CA)の製造業者の指示に従い、4〜12%NuPAGE(登録商標)Bis−トリスゲルの解析前にサンプルに添加し、当該ゲルをphosphorimagerでイメージングした。図7aにおいて、PAPを含む翻訳反応液を解析した。Ni−NTAカラム(PAPの足場タンパク質のHisタグを使用した精製)から溶出したフラクションにおけるLUMIO(商標)配列(EmrE翻訳産物)を検出した。図7bにおいて、PAPを含まない翻訳反応液を解析した。Ni−NTAカラムからの溶出フラクションにおいて、LUMIO(商標)配列(EmrE翻訳産物)は検出されなかった。以上より、膜タンパク質はPAPに取り込まれて可溶化形態においてインビトロで合成でき、PAPのアポリポタンパク質上のタグを使用して効率的に精製できる。<実施例7>ナノディスクを含む、真核生物系のインビトロタンパク質合成反応 PAPを含まないか、又は0.1〜19μmolのPAPを含む無細胞CHO細胞抽出物において、ルシフェラーゼタンパク質を発現させた。mMessageMachine(AMBION)を使用して、ルシフェラーゼ遺伝子を含むpEXP4ベクターからRNAを調製した。翻訳反応において6μgのRNAを用いた。 CHO細胞抽出物を以下のプロトコルに従って調製した。 細胞数/生存度を測定する。1. 穏やかに遠心分離(10分間、800〜1000rpm)し、細胞を回収する。2. バッファAに4mM DTTを添加する。3. 250mLのバッファAで細胞を洗浄する(非常に穏やか。細胞を完全に再懸濁させてはならない)。4. 250mLのバッファAで細胞を洗浄する(単にバッファを添加するのみ、細胞を再懸濁しない)。5. 半ペレットボリュームのバッファA(+1mM PMSF)にペレットを再懸濁する。6. 細胞計数用にアリコートをサンプリングする。7. 100psiのフレンチプレスを通す。8. 細胞計数用にアリコートをサンプリングする。9. 両方のアリコートの細胞数/生存度を測定する。第1のアリコートでは大部分の細胞が正常でなければならない。第2のアリコートでは細胞は<20%の生存度でなければならない。10. 15分×14000回転/分で遠心分離する(マイクロ遠心分離機で操作)。11. 上澄を回収する(更なる使用法のためペレットを−80℃で保存する)。12. 1mM CaCl2、0.15U/μlのミクロコッカス由来ヌクレアーゼを添加する。13. 5分間、RTでインキュベートする。14. 2mMのEGTAを添加し反応を停止させる。15. 50〜80μlのサンプルを採取し、急速に液体N2中で凍結させ、−80℃で保存する。16. 上澄(1/200希釈)のA260及びA280。を測定する。>100ユニットでなければならない。バッファA 40mMのHepes KOH(pH7.8)、 100mM KOAc、 4mMマグネシウム(OAc)2、 4mM DTT(調製直後のものを使用)。 5mg/ml(0.5μl)クレアチンキナーゼ、Buffer #2 Proteios小麦麦芽システム(1.5μl)、RNaseOut(0.25μl)、Buffer #1(0.85ul)、Smet(0.5μl)及びBHK抽出物(6μl)を使用して翻訳した。翻訳反応液を33℃で1時間にインキュベートした。各翻訳反応液2.5μlをルシフェラーゼ解析用に用いた。 タンパク質合成反応の終了後、ルシフェラーゼ活性を検出した。図8に示すように、PAPの存在によってもCHO細胞抽出物のタンパク質合成において有害な効果が示されなかった。 細菌膜タンパク質EmrE、ヒトORF 21132、小嚢関連のカルモジュリン−結合タンパク質、ヒトORF 21140サイクリン依存性のキナーゼ2(CDK2)及びルシフェラーゼを、35S−メチオニンを含むウサギ網状赤血球溶解物による転写−翻訳発現システム(Promega社製)を用い、製造業者による指示に従い翻訳した。1つの反応セットにおいて、合成システム中に27mg/mLのPAPを1.25μLを添加した。第二の反応セットにおいて、合成システム中にPAPを添加しなかった。翻訳産物はBlue Nativeゲル泳動し、オートラジオグラフィを行った。図9は、膜タンパク質EmrEの場合、溶解度の増加(放射性同位元素識別されたタンパク質生成物がゲル中に入り、移動する)が、PAPの存在下で見られたことを示す。これは、非膜タンパク質 ヒトORF 21132(小嚢関連のカルモジュリン−結合タンパク質)、ヒトORF 21140サイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)及びルシフェラーゼではそのような現象が見られなかった。図10は、同じ結果がCHO細胞抽出物を使用して得られたことを示す。<実施例8>インビトロ合成反応において、アポリポタンパク質と共発現させた場合の、膜タンパク質の可溶性の向上 この実施例は、PAPを含まないインビトロ翻訳システムにおけるアポリポタンパク質構築物の存在により、可溶化形態の膜タンパク質の合成が促進されることを示す。 別個の試験において、細菌膜タンパク質及び哺乳類の膜タンパク質を、無細胞合成システム中でプラスミド構築物から転写、翻訳した。1つの試験セットでは、ベクターpEXP5−NT中に細菌膜タンパク質EmrEをコードする遺伝子をクローニングして目的タンパク質(POI)の構築物を作製した。他の試験セットでは、ベクターpEXP5−NT中にヒト膜タンパク質GABA A受容体(Invitrogen ULTIMATE(商標)ORFコレクション クローンIOH10885(Genbank accession no.BC022449、gi18490266)をコードする遺伝子をクローニングし、目的タンパク質又は「第1の」構築物を作製した。両方の実験において、ヒトアポリポタンパク質A1(Invitrogen ULTIMATE(商標)ORFコレクション クローンIOH7318、Genbank accession no.NM00839、gi4557320をコードする構築物、pEXP3−Apolを幾つかのインビトロ合成反応に用い、その結果、Apo A1が目的の膜タンパク質と同じ反応系内で発現した。 プラスミドDNA鋳型を使用するインビトロタンパク質合成反応液を以下の通りに調製した:標準的な100μLのEXPRESSWAY(商標)の反応液を調製し、基本的に製造業者(Invitrogen社、カールズバッド、CA)の指示に従い、37℃でインキュベートした。1μgのDNA構築物を反応の各々に添加した。1.5〜2mlの微量遠心管中、Eppendorf Thermomixer中で、2〜6時間の中程度に振とう(1000〜1400回転/分)で30℃若しくは37℃で反応を実施した。反応開始の30分後に、製造業者の指示(Invitrogen Expresswayマニュアル、Invitrogen社、カールズバッド、CA)に従って、反応液にフィード溶液を1等量(第1の反応ボリュームに対して)を添加した。タンパク質を放射性同位元素識別するため、35S−メチオニンを反応液に添加した。 目的の膜タンパク質ごとに、pEXP3−Apolの有無において反応を実施した。更に、各反応セットをリン脂質の有無(EmrE翻訳反応の場合、DMPCを100μg/mL、GABA A受容体翻訳反応の場合、DPPCを100μg/mL)において実施した。 インキュベート終了後、インビトロタンパク質合成反応液を10,000×gで短時間にスピンし、上澄及びペレット画分をSDS PAGEゲルのレーンに別個にロードした。各反応の上澄5μlをアセトン沈殿し、ペレット化し、1×LDSバッファ(1mMのDTTを含む)40μl(Invitrogen社製)に懸濁させ、その10μlを4〜12%Bis−トリスNuPAGE(登録商標)ゲルにロードした(図11)。 試験の結果、翻訳反応におけるApo A1構築物の存在により、Apo A1構築物(レーン5及び6)の存在しない場合の翻訳と比較して、可溶性EmrEの収率が増加した(レーン7及び8、図11a)。可溶性の収率と比較してとき、Apo A1も非常にGABA A(レーン7及び8、図11b)の可溶性の歩留まりを改善するApo A1構築物(レーン5及び6)がない場合。オートラジオグラフィにおいても、アポリポタンパク質A1自体が可溶化形態で発現されることが明示された(図11a及び11bのレーン3及び4)。<実施例9>アポリポタンパク質の存在下における膜タンパク質のインビトロ合成 本実施例は、インビトロ翻訳システムにおけるアポリポタンパク質の存在が、可溶化状態の膜タンパク質の合成収率が向上することを示す。 EmrE(細菌膜タンパク質)を、前記の実施例で説明したとおりにEXPRESSWAY(商標)インビトロ合成システム(Invitrogen社、カールズバッド、CA)で、35S−メチオニンを使用して翻訳した。翻訳は2.5〜15μgのApo A1タンパク質を含有させた状態で行った。インビトロ合成により調製された全タンパク質及び可溶性タンパク質をゲル電気泳動に供し、オートラジオグラフィを行った。その結果、インビトロ合成反応によりApo A1タンパク質の産生量が増加し、可溶性の膜タンパク質の産生量が増加した(図12a)。 更に、哺乳類の膜タンパク質(ヒトGABA A受容体蛋白)を、2.5〜15μgのApo A1のタンパク質を含有するインビトロ翻訳システムで翻訳した。この場合も、翻訳システムにおけるApo A1タンパク質の存在により、可溶性膜タンパク質の量が大幅に増加した(図12b)。<実施例10>インビトロ合成システムにおける、アポリポタンパク質と翻訳された膜タンパク質との会合 本実施例は、インビトロ翻訳システム(膜タンパク質が合成される)におけるApo A1タンパク質の存在が、可溶性膜タンパク質の合成を可能とし、Apo A1が翻訳後のタンパク質と会合することを示すものである。本実施例はまた、アポリポタンパク質が存在する場合には、界面活性剤が存在しなくとも、通常界面活性剤の存在時における膜タンパク質の可溶性が維持されることを示すものである。 総液量100μLにおいて、Expressway インビトロ翻訳反応を実施した。EmrE遺伝子を核酸鋳型として用い、N末端にHisタグをコードするpEXP5−NT(Invitrogen、カールズバッド、CA)中に、インフレームとなるようにクローニングした。ヒト血漿から精製したApo A1をインビトロ合成反応中に含有させた。製造業者の指示に従ってインビトロ合成反応を実施した後、インビトロ合成したEmrE(Hisタグ付き)を、20mMのトリス(pH7.5)、200mMのNaClを用い、グラビティフローによってNi−NTAカラムで精製した。ドデシルマルトーシド界面活性剤(通常EmrE可溶性を維持するためにバッファに添加する)を省略した。 同じトリス−NaClバッファ中の1Mのイミダゾールを使用してEmrEタンパク質を溶出した。図13aに示されるクーマシーゲルは、タグ無しのApo A1タンパク質(26kDa)が、Hisタグ付きのEmrEと共精製されたことを示す(Mはタンパク質分子量マーカー、Lはロードしたフラクション、FTはフロースルー、W1及びW2は一連のカラム洗浄、E1〜E4は一連の溶出フラクションを示す)。オートラジオグラフィにより、精製されたApo A1タンパク質と同じフラクションにEmrEタンパク質が溶出されていることを確認し(図13b)、すなわちタンパク質間の物理的な会合を示すものである。a)は、4μmol及び40μmolのPAPの存在下(各対の右カラム)及び非存在下(各対の左カラム)における、IVPS反応で産生されるGFPを表す棒グラフ。b)は、PAPの存在下及び非存在下における、IVPS反応で産生されるGFPを表すautorad。a)は、20μmolのPAPの存在下及び非存在下における、細菌EmrEの総発現及び可溶性発現を示す棒グラフ。b)は、4μmolのPAPの存在下及び非存在下における、哺乳類のカリウムチャネルタンパク質の総発現及び可溶性発現を示す棒グラフ。a)は、Hisタグを融合させた改変アポリポタンパク質を、Ni−NTA樹脂で精製し、クーマシー染色したPAPのゲルを表す。レーン5−8は溶出フラクションである。b)は、EmrEタンパク質(PAPなし)の翻訳、Ni−NTA樹脂への結合後の溶出に関し、クーマシー染色したゲルを表す。レーン5−8は溶出フラクションであるc)は、PAPを用いて翻訳されたEmrEタンパク質のクーマシー染色したゲルを表す。Hisタグを融合させた改変アポリポタンパク質を、Ni−NTA樹脂で精製した。レーン5−8は溶出フラクションである。PAPの存在下(レーン3及び4)、及びPAPの非存在下(レーン2)で翻訳されるEmrEタンパク質、及びPAPの存在下(レーン6)又は非存在下(レーン5)で発現するGFPのオートラジオグラフィである。his−タグ付の改変アポリポタンパク質を有するPAPのa)存在下及びb)非存在下におけるGFPの翻訳産物、並びにhis−タグ付の改変アポリポタンパク質を有するPAPのc)存在及びd)非存在下におけるMscLの翻訳産物の、Ni−NTAによる精製を示すゲルのautoradsを示す。PAPの存在下翻訳されたGFPの翻訳産物(a及びb)、及びPAPの存在下で翻訳されたEmrE翻訳産物(c)のゲルのautoradsを示す。a)はPAPを含有させた翻訳反応において合成されたlumio配列による、EmrEのlumio検出を示す。b)はPAPを含有させなかった翻訳反応において合成されたlumio配列による、EmrEのlumio検出を示す。PAPの量を増加させてルシフェラーゼの翻訳反応を行わせた場合の、ルシフェラーゼ活性を示す棒グラフ。PAPを含有させた場合、若しくは含有させなかった場合の、ウサギ網状赤血球の翻訳反応産物の、ネイティブゲルのオートラジオグラフィを示す。PAPを含有させた場合、若しくは含有させなかった場合の、ウサギ網状赤血球の翻訳反応産物の、ネイティブゲルのオートラジオグラフィを示す。Apo A−Iを含有するか若しくは含有しない場合の、インビトロタンパク質合成反応の翻訳産物を電気泳動に供した後のゲルのオートラジオグラフィを示す。(A)インビトロタンパク質合成反応において、細菌EmiΕタンパク質の全収量は、アポリポタンパク質又はリン脂質の存在下で影響を受けない(レーン1−4)が、可溶性のEmrEタンパク質の収量は、アポリポタンパク質の存在下で強化された(レーン5−8)。(B)インビトロタンパク質合成反応において、哺乳類のGABA Aタンパク質の全収量は、アポリポタンパク質又はリン脂質の存在下で影響を受けない(レーン1−4)が、可溶性のGABA Aタンパク質の収量は、アポリポタンパク質の存在下で強化された(レーン5−8)。Apo A-Iの非存在下、又はApoA-Iの含有量を変えた条件において、インビトロタンパク質合成反応を行い、その翻訳産物を電気泳動に供したときの、ゲルのオートラジオグラフィを示す。(A)インビトロタンパク質合成反応において、細菌EmrΕタンパク質の全収量は、アポリポタンパク質の存在下で影響を受けない(レーン1−4)が、可溶性のEmrEタンパク質の収量は、アポリポタンパク質の存在下で強化された(レーン5−8)。(B)インビトロタンパク質合成反応において、哺乳類のGABA Aタンパク質の全収量は、アポリポタンパク質の存在下で影響を受けない(レーン1−4)が、可溶性のGABA Aタンパク質の収量は、アポリポタンパク質の存在下で強化された(レーン5−8)。Apo A-Iを含有するインビトロタンパク質合成反応における、hisタグを融合させ、35SラベルしたEmrE翻訳産物をNi−NTAカラムで単離した後、電気泳動に供したときの、ゲル染色及びゲルのオートラジオグラフィを示す。(A)カラムフラクションはApo A1とEmrEの共溶出を示す。(B)オートラジオグラフィにより、溶出されたフラクション中におけるEmrEの存在が確認された。 膜タンパク質の合成方法であって、細胞抽出物及びアポリポタンパク質を含むインビトロタンパク質合成システムに核酸鋳型を添加することと、核酸鋳型とインビトロタンパク質合成システムをインキュベートして、可溶化形態の膜タンパク質を合成することを含む方法。 前記膜タンパク質が膜貫通タンパク質、膜内在型タンパク質又は膜表在性タンパク質(peripheral membrane protein)である、請求項1記載の方法。 前記膜タンパク質が可溶化形態において合成される、請求項1記載の方法。 前記細胞抽出物が原核細胞の抽出物である、請求項1記載の方法。 前記細胞抽出物が大腸菌の細胞抽出物である、請求項4記載の方法。 前記細胞抽出物が真核生物の細胞抽出物である、請求項1記載の方法。 前記細胞抽出物が小麦麦芽抽出物、ショウジョウバエ胚抽出物、ウサギ網状赤血球抽出物、ホタテ貝抽出物、マウス脳抽出物、ニワトリヒナ脳抽出物又は培養細胞からの抽出物である、請求項6記載の方法。 前記核酸鋳型がRNA鋳型である、請求項1記載の方法。 前記核酸鋳型がDNA鋳型である、請求項1記載の方法。 前記アポリポタンパク質がリン脂質−アポリポタンパク質粒子中に存在する、請求項1記載の方法。 前記アポリポタンパク質が天然のアポリポタンパク質、天然のアポリポタンパク質の変異体又は改変アポリポタンパク質である、請求項1記載の方法。 前記アポリポタンパク質がアポリポタンパク質A1又はその変異体である、請求項14記載の方法。 前記アポリポタンパク質が1つ以上の両親媒性のヘリックス状ドメインを含む改変アポリポタンパク質である、請求項1記載の方法。 前記アポリポタンパク質が1つ以上のアミノ酸配列タグを含む、請求項1記載の方法。 前記1つ以上のアミノ酸配列タグがHisタグである、請求項14記載の方法。 アポリポタンパク質の配列タグを使用して膜タンパク質を精製することを更に含む、請求項14記載の方法。 細胞抽出物、1つ以上のエネルギー源及び、アポリポタンパク質を含む、インビトロタンパク質合成システム 前記細胞抽出物が原核細胞の抽出物である、請求項17記載のインビトロタンパク質合成システム。 前記インビトロ合成システムが大腸菌の細胞抽出物を含む、請求項17記載のインビトロタンパク質合成システム。 前記細胞抽出物が真核生物の抽出物である、請求項17記載のインビトロタンパク質合成システム。 可溶化形態の膜タンパク質を生産するための、インビトロタンパク質合成システム及び方法の提供に関する。幾つかの態様では、本発明はアポリポタンパク質を含むインビトロタンパク質合成システムを使用してタンパク質を合成する方法を提供し、それによりアポリポタンパク質が存在しない場合よりも可溶性タンパク質の収率が向上する。本発明にとり有用なアポリポタンパク質としては、天然のアポリポタンパク質(野生型アポリポタンパク質の変異配列を含む)及び改変アポリポタンパク質が挙げられる。アポリポタンパク質は、脂質と会合した状態又は脂質と会合しない状態で、インビトロタンパク質合成システムに提供することができる。本発明はまた、可溶化形態のタンパク質合成用の組成物及びキットを提供し、当該組成物及びキットはタンパク質翻訳用の細胞抽出物及び1つ以上のアポリポタンパク質生体分子を含む。 配列表