タイトル: | 公表特許公報(A)_過酸の調製方法 |
出願番号: | 2008530553 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 409/24,C07C 409/26,A01N 37/02,A01N 59/00,A01P 3/00,A01N 25/02,A01N 25/22 |
アクセラ,レイヨ レンヴォル,イルッカ JP 2009507903 公表特許公報(A) 20090226 2008530553 20060913 過酸の調製方法 ケミラ オイ 504186286 福村 直樹 100087594 アクセラ,レイヨ レンヴォル,イルッカ FI 20050913 20050913 C07C 409/24 20060101AFI20090130BHJP C07C 409/26 20060101ALI20090130BHJP A01N 37/02 20060101ALI20090130BHJP A01N 59/00 20060101ALI20090130BHJP A01P 3/00 20060101ALI20090130BHJP A01N 25/02 20060101ALI20090130BHJP A01N 25/22 20060101ALI20090130BHJP JPC07C409/24C07C409/26A01N37/02A01N59/00 AA01P3/00A01N25/02A01N25/22 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW FI2006000303 20060913 WO2007031596 20070322 15 20080428 4H006 4H011 4H006AA02 4H006AA05 4H006AD40 4H011AA02 4H011BA06 4H011BB06 4H011BB18 4H011DA13 4H011DD01 この発明は、比較的高濃度の貯蔵可能な、過ギ酸を含有する過酸溶液の調製方法に関する。この発明はまた、比較的高濃度の貯蔵可能な過酸溶液及びこの溶液の使用に関する。 過酸化水素は、細菌発育抑制力を有する温和で効果的な殺菌剤として知られている。過酸化水素は下水等を殺菌するのに用いられる。過酸化水素と金属イオンとの反応性(フェントン反応)は殺菌における過酸化水素の最も効果的に使用される。過酸化水素を活性化させる別の方法として紫外線照射がある。フェントン反応及び紫外線照射においては共に反応媒体としてヒドロキシラジカルが生成する。しかし、過酸化水素の殺菌力は大部分の細菌に対して有効ではない。 過酢酸(PAA)は一般的な細菌の大部分に対してその増殖を早急に抑えることのできる効果的な殺菌剤として知られている。過酢酸は酪農業における装置の殺菌に利用されている。さらに、過酢酸は工程用水(プロセス水)における細菌増殖を制御することを目的としてパルプ製紙工業に利用されている。加えて、過酢酸は脱リグニン工程及び過酸化物漂白工程の後に実施されるクラフトパルプの漂白に利用されている。 過酢酸は、従来、酢酸と過酸化水素との平衡反応によって生じる下記平衡溶液を経て、調製されている。 酢酸+過酸化水素 <−−−−> 過酢酸+水 この平衡反応は、例えば硫酸等の強酸性の鉱酸による触媒作用が及ぼされたときにのみ、起こる。 過酸化水素の平衡溶液は、例えば、工程用水、温室、酪農業等における殺菌剤として利用されている。 同様の平衡反応がギ酸と過酸化水素とでも起こり、その結果、過ギ酸(PFA)を含有する溶液が生じる。過ギ酸溶液は過酢酸溶液よりも効果的な殺菌剤であることが知られている。過ギ酸溶液の不安定性及び高反応性のため過ギ酸溶液は安定に存在しない。したがって、過ギ酸溶液は系内で調整されることになる。温室、業務用洗浄、及び、例えばパルプ製紙工業における工程用水の細菌増殖の制御を目的として過ギ酸に比べて安定な殺菌剤が切望されている。 公開公開第94/20424号パンフレットには、園芸分野において過ギ酸が細菌増殖の制御に首尾よく利用されていることが記載されている。栄養溶液又は排水に添加される過ギ酸の希薄溶液は、藻類が輸送管路内で植物に成長して増殖することを抑えて、輸送管路が閉塞することを防止することができる。出願人による徹底的な研究によって、細菌に対する反応性が低いことから、過酢酸の平衡混合物がこのような用途に利用することができないことが明らかになっている。さらに、過酸化水素の不存在下におけるギ酸の殺菌力は過酸の殺菌力に対して無視できるほどでしかないことが示されている。 過酸の安定性は分子量の増大に伴って増すことが知られている。一方、過酸の殺菌力は反応性と共に、分子量の減少に伴って増大する。過ギ酸は過酸の中でも最も殺菌力の強い殺菌剤であることが知られている。ある研究によると、細菌増殖の制御に過ギ酸が効果的であることが示されている。古い文献の1つとして、J.Hyg.Epidem.Microbiol.Immunol.、1968年、12、115.が挙げられる。 国際公開第94/20424号パンフレットには、1:10〜10:1、好ましくは1:1〜1:5のモル比でのギ酸と過酸化水素との反応によって系内で過ギ酸溶液を調製する方法が記載されている。この過ギ酸溶液は有害な微生物の増殖を阻止してこの微生物に抵抗するのに使用されることができる。過ギ酸は、一般的には、1〜1000ppmの濃度で使用される。 欧州特許出願公開第231632号明細書には、消毒剤として過ギ酸を工業的に使用することが記載されている。この過ギ酸溶液は、10〜50質量%の過酸化水素を含有する水溶液と5〜100質量%のギ酸を含有する水溶液とを、触媒の存在下、過酸化水素のギ酸に対する質量比が1:6〜1:1.5の範囲内で反応させることによって、系内で調製されている。 温室殺菌目的において、過ギ酸溶液は、例えば35%過酸化水素と15%ギ酸溶液とを混合して調製される。次いで、得られた溶液は栄養溶液で希釈され、植物に供給される。 高濃度の過ギ酸溶液は爆発性を有しているので、低濃度の過ギ酸溶液しか安全に取り扱うことができない。 過ギ酸と過酢酸の希薄混合溶液は近年の特許文献で知られている。 米国特許第6211237号明細書には、過ギ酸と過酢酸とを少量含有する希薄殺菌剤が記載されている。この殺菌剤において、これら過酸の全量は一般的には4質量%以下である。この殺菌剤における主成分は過酸化水素であり、その量は一般的には約50質量%である。この殺菌剤は例えばスイミングプール水の殺菌に使用することができる。過ギ酸と過酢酸との、過酸化水素を含有する希薄溶液は系内で調製される。たとえ過ギ酸の平衡溶液であっても2質量%までの低濃度過酸溶液であれば数日間は比較的安定に存在することもまた当業者において知られている。 米国特許出願公開第2004/0035537号明細書には、過酢酸と過ギ酸とを含有する溶液を用いてパルプを漂白する方法が記載されている。また、この出願において、酢酸とギ酸とを過酸化水素に50質量%以上の濃度で接触させることで、希薄過酸溶液が系内で調製されている。ギ酸と過ギ酸との合計体積に対する酢酸と過酢酸との合計体積の比は1対9であるのが好ましい。得られる溶液中の過酸量は非常に少なく、一般的には2質量%未満である。 米国特許第6284793号明細書には、バラスト海水を処理する殺生物剤が記載されている。この殺生物剤は過酢酸、過ギ酸、酢酸、ギ酸、過酸化水素及び水、所望により鉱酸触媒及び活性酸素安定剤を含有する溶液である。このような溶液は過酢酸の平衡溶液一般的には過酢酸を1〜15質量%含有する平衡溶液にギ酸を添加することによって調製することができる。この特許明細書によれば、過ギ酸は過酢酸と比較してより効果的であるが過酢酸よりも分解しやすく、したがって、使用する直前に過酢酸を含有する平衡溶液にギ酸を添加して調製されている。平衡状態にある過酢酸とギ酸とを組み合わせて使用する場合には、ギ酸が過酢酸又は同時にバラスト海水に直接添加され、このギ酸は過酢酸と酢酸との合計質量を基準として10〜1000質量%の量で使用される。実施例において、ギ酸は過酢酸と酢酸との合計質量を基準として約800質量%の平衡状態にある過酢酸に添加されている。 最も一般的には過酸溶液は過酸化水素と適当なカルボン酸との平衡反応によって調製されることができる。過酢酸とより大きな分子量を持つカルボン酸との反応の場合には適切な時間で平衡状態に到達させるための酸触媒が必要になる。例えば、硫酸、塩酸等の鉱酸がこの反応における酸触媒として一般的に使用されている。ギ酸の場合には、文献(ジョーンズ.C.W.(jones,C.W.)、「過酸化水素及びその誘導体の利用」、ロイヤルソサイエティオブケミストリ;クリーンテクノロジーモノグラフ(Royal society of Chemistry;Clean Technology Monographs)、1999年、第66頁〜第77頁)によれば、追加の酸触媒は必要ではない。 この発明によれば、驚くべきことに、0.5:1〜8:1のモル比(酢酸のモル/過酸化水素のモル)で酢酸と過酸化水素とを混合することによって調製される平衡溶液において、酢酸の20質量%までをギ酸に置換するとさらに安定な溶液を生じることが、見出された。一般的な過酸化物安定剤の存在下においては、このような高濃度の過酸溶液は数週間貯蔵できるほどに安定に存在する。この発明によれば、得られる過酸溶液の安定性を損なうことなく、十分な量のギ酸を生成させることができる。 したがって、この発明の第1形態において、過ギ酸を含む第1の過酸と第2の過酸とを含有する溶液の調製方法であって、ギ酸を含む第1のカルボン酸と第2のカルボン酸と過酸化水素とを、前記ギ酸量が前記第2のカルボン酸量に対して0.5〜20質量%の割合で、含有するカルボン酸溶液を調製する工程と、前記成分を反応させて、過ギ酸と前記第2の過酸とを、過酸量が少なくとも5質量%となる割合で、含有する溶液を調製する工程とを有する溶液の調製方法が提供される。 前記過酸溶液は、前記第1のカルボン酸と前記第2のカルボン酸とが前混合された後に過酸化水素溶液が添加されることによって、調製される。あるいは、前記過酸溶液は、前記第2のカルボン酸の水溶液例えば酢酸溶液と過酸化水素溶液とが前混合された後に、この平衡溶液に前記第1のカルボン酸例えばギ酸が添加されることによって、調製される。反応平衡は、1〜2時間又はさらに長い時間に設定され、反応混合物の温度に大きく依存する。反応温度は0〜80℃の範囲に限定される。反応温度は、0〜50℃の範囲であるのが好ましく、最も安定な過酸溶液を調製することができる点で0〜25℃の範囲であるのが最も好ましい。 過酸溶液の調製に使用される前記カルボン酸溶液の濃度それぞれは30〜100質量%の範囲内で調整される。一般に、過酸の最終到達濃度が高くなる点で前記カルボン酸溶液の濃度は高濃度であるのが好ましい。 過酸溶液の調製に使用される過酸化水素溶液の濃度は10〜80質量%である。過酸化水素は、好ましくは10〜55質量%、より好ましくは30〜55質量%の濃度を有する過酸化水素水溶液として、前記溶液に添加される。一般に、過酸の最終到達濃度が高くなる点で過酸化水素の濃度は高濃度であるのが好ましい。しかし、高濃度過酸溶液の調製には安全性を考慮する必要がある。過酸化水素と有機物との混合物を調製することに関する安全性の指針は、例えば、「高濃度過酸化水素:研究データと安全性限界との要約(Concentrated Hydrogen Peroxide:Summary of Reseach Data and Safety Limitations)」(シェル ケミカル コーポレーション、ブレテン エスシー(Shell Chemical Corp.,Bull.SC)、59〜44))に記載されている。 反応時間は用いたカルボン酸に大きく依存する。過ギ酸の生成に関する反応速度論は、モゾルフスキー(Mosovsky)らによる「Collect Czech.Chem.Commun.、61巻、1996年、1457〜1463頁」に、また、O.D.シャピロフ(shapilov)とUa.L.コスチュコフスキー(Kostyukovskii)とによる「Kinetika Kataliz、15巻、No.4、1974年、1065頁」に、論じされている。過酢酸の生成に関する反応速度論は前記文献でよく知られている。しかし、過酸混合物の生成に関する反応速度論はカルボン酸混合物を用いた場合には異なる。 得られる溶液における過酸の含有量は、5〜20質量%であるのが好ましく、10〜20質量%であるのがより好ましい。 ギ酸の含有量は、第2のカルボン酸の含有量に対して2〜15質量%であるのが好ましい。 カルボン酸溶液中における、過酸化水素に対するカルボン酸のモル比(カルボン酸:過酸化水素)は、0.5:1〜8:1の範囲内であるのが好ましく、0.7:1〜2:1の範囲内であるのがより好ましい。このモル比は2:1〜8:1の範囲内にあってもよい。 得られる溶液は、ギ酸、第2のカルボン酸及び過酸化水素をさらに含有する平衡溶液であるのが好ましい。 平衡溶液中におけるギ酸と過ギ酸との合計の含有量は2〜20質量%であるのが好ましい。 第2のカルボン酸は、C2〜C18の脂肪族カルボン酸であるのが好ましく、例えば、酢酸、プロピオン酸、フタル酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸及びこれらの混合物等が挙げられる。第2の過酸は、C2〜C18の脂肪族ペルオキソカルボン酸であるのが好ましく、例えば、過酢酸、過プロピオン酸、パーオキシフタル酸、パーオキシシュウ酸、パーオキシマレイン酸、パーオキシリンゴ酸、パーオキシフマル酸及びこれらの混合物等が挙げられる。特に好ましいものとして酢酸及び過酢酸が挙げられる。 過酸の平衡混合物は、強酸の添加による触媒作用を受けて、生成する。強酸としては有機酸が挙げられる。好ましくは、低分子カルボン酸が反応触媒として用いられる。特に好ましくは、ギ酸が触媒として用いられる。 あるいは、過酸の平衡混合物は、鉱酸の添加による触媒作用を受けて、生成することもできる。過酸の生成を触媒するのに用いられる鉱酸としては、硫酸、リン酸、塩酸、ピロリン酸、ポリリン酸及びこれらの混合物が挙げられる。例えば硫酸触媒の利点の1つは、ある程度まで、硫酸も過酸(カロン酸)を形成することにある。 酸触媒の量は、溶液の質量に対して0.1〜2.0質量%の範囲内に設定することができ、溶液の質量に対して1〜10質量%の範囲内に設定するのがより好ましく、溶液の質量に対して1〜5質量%の範囲内に設定するのが特に好ましい。 加えて、前記反応の触媒として酸性状態にあるイオン交換樹脂を用いることもできる。 さらに、従来の添加剤を溶液に添加することもできる。このような添加剤としては、安定剤例えば1−ヒドロキシエチレン−1,1−二リン酸(HEDPA)等のホスホン酸塩及び例えばジピコリン酸等のピリジンカルボン酸、キレート剤並びに遊離基捕捉剤等が挙げられる。安定剤の混合物を用いることもできる。安定剤の量は、0.01〜1質量%であるのがよく、0.05〜0.5質量%であるのが好ましい。 この発明の第2形態において、過ギ酸を含む第1の過酸と第2の過酸とギ酸を含む第1のカルボン酸と第2のカルボン酸と過酸化水素とを含有する貯蔵可能溶液であって、前記第2のカルボン酸と前記第2の過酸との合計質量に対して前記ギ酸と前記過ギ酸との合計量が0.5〜20質量%であり、過酸の合計量が少なくとも5質量%である貯蔵可能溶液が提供される。 この明細書において、用語「貯蔵可能」は、過酸溶液を室温で7日間貯蔵したときの、前記過酸溶液中における活性酸素(過酸+過酸化水素)の減少量が、20モル%未満であることを意味する。この減少量は、15モル%未満であるのが好ましく、10モル%未満であるのが好ましい。 この溶液中における過酸の含有量は、5〜20質量%であるのが好ましく、10〜20質量%であるのがより好ましい。 この溶液中における、過酸化水素に対する過酸とカルボン酸との合計モル比(過酸+カルボン酸:過酸化水素)は、0.5:1〜8:1の範囲内にあるのが好ましく、0.7:1〜2:1の範囲内にあるのがより好ましい。このモル比は2:1〜8:1の範囲内にあってもよい。 この溶液は平衡溶液であるのが好ましい。 この溶液中におけるギ酸と過ギ酸との合計量は2〜20質量%であるのが好ましい。 前記第2のカルボン酸及び前記第2の過酸は前記した通りである。 この溶液は、前記した安定剤をさらに含有するのが好ましい。 この発明は、微生物の増殖を制御する殺菌剤として前記した溶液を使用することに関する。この発明に係る溶液は、例えば、工程用水用、温室用、酪農業用、業務用洗浄用及びパルプ製紙工業用の殺菌剤、並びに、抄紙機等における細菌増殖の制御用殺菌剤として使用されることができる。この過酸溶液は、パルプ漂白において漂白剤としても使用されることができ、例えば残留リグニンのポスト漂白剤として使用されることもできる。さらに、過酸溶液は、機械パルプを生産する前に用いられる、木材チップの効果的な含浸剤でもある。 この発明に係る、過ギ酸と過酢酸との高濃度溶液は、純過酢酸溶液に比して、工程用水用、温室用栄養溶液における細菌の増殖制御及び下水等の殺菌等に、特に高い効果を有する。 さらに、これらの過ギ酸と過酢酸との溶液(以下、「PFA/PAA溶液」と称することがある。)は、ほとんど分解することなく、調製することができると共に数週間貯蔵することができる。このPFA/PAA溶液は、過ギ酸溶液の抗細菌特性と同等の抗細菌特性を有し、過ギ酸溶液に取って代わり安全である。 過ギ酸溶液は貯蔵することができず、使用前に系内で調製する必要があるから、数週間貯蔵することができるという効果は特筆すべき利点である。この溶液の過ギ酸溶液に対する他の利点は安全性が改善されていることにある。PFA/PAA溶液は、安全性の面でも、純過酢酸溶液に匹敵するほどの高い安全性を有している。 高濃度の過ギ酸溶液が不安定であることからすると、この発明に係るPFA/PAA溶液が優れた安定性を有していることは驚くべきことである。 このPFA/PAA溶液は、腐食性の観点からも、過ギ酸に取って代わり優れている。過ギ酸と比較すると、PFA/PAA溶液は装置の腐食率が著しく低くなる。 前記したように、20質量%まで好ましくは15質量%まで過酢酸又は他の過酸に代えて過ギ酸を用いることができ、その結果、貯蔵可能な溶液が得られる。この発明は以下の利点を有する。 第1に、十分な量の過ギ酸が溶液内で調製され、その結果、過酸溶液の殺菌力が増強する。第2に、現在は過ギ酸溶液をギ酸の溶液と過酸化水素の溶液とから系内で調製する必要があるが、この発明によれば温室用途等に好適な過酸溶液が調製され、この溶液を貯蔵することができる。第3に、この発明で得られる過酸溶液は、パルプ漂白において漂白剤として利用されることができ、例えば残留リグニンのポスト漂白剤として使用されることもできる。さらに、過酸混合物は、機械パルプを生産する前に用いられる、木材チップの効果的な含浸剤でもある。 この明細書において、百分率は特に明記しない限り質量%を表す。この発明を、以下の実施例によって、より詳細に説明する。(実施例1) 0.6%、3.04%、4.99%、10.04%及び15.01%のギ酸(FA)を含有する酢酸(AA)溶液を調製した。これらの溶液と50.5%H2O2とをモル比(AA/H2O2)が2:1となる割合で混合した。各溶液に安定剤としてホスホン酸塩(HEDPA、500mg/L)とジピコリン酸(DPA、300mg/L)とを添加した。得られた溶液を室温で一夜攪拌した。溶液を暗所で7日間室温貯蔵し、過酸の濃度(ここでは過酢酸の濃度として算出される。)と過酸化水素の濃度とを滴定によって測定した。3日間貯蔵後に触媒として硫酸0.48%をさらに添加した。各溶液における全活性酸素量(過酸と過酸化物との合計量)を測定した。試験結果を下記第1表〜第3表に示した。安定性(%)は、過酸及びH2O2の合計分析値(mol/kg)と最初に添加されたH2O2量(mol/kg)との比で示した。 第1表〜第3表から、ギ酸に代えて含有された酢酸の量が異なるときの、過酸の量及び生成率が分かる。酢酸溶液中のギ酸濃度が増加すると、活性酸素量(過酸+過酸化物)が低下し、すべての過酸が分解することを示している。しかし、ギ酸濃度が15%であるときでさえ、7日間貯蔵後に、活性酸素の80%を超える量が分解することなく残存していた。(実施例2)ステンレス鋼表面上の成長前生物膜に対するPFA/PAA混合物の効果 ケミラ(Kemira)によって抗生物膜試薬の即効性試験を対象とする新試験が開発されている。この試験は、公開公開第2005/045132号パンフレットに記載されている。この試験において、種々の生産物は成長前生物膜(バイオフィルム)の不活性化/除去に対する相対的な効果として比較される。抄紙機における実際の状況は、新しい生物膜の生成を妨げるには十分ではないが、抗生物膜試薬もまた予め汚染された表面に適用されることがよくある。この新試験では、成長前生物膜が短時間暴露され、その後、残存生物膜の生存能力が定量される。 生物膜はステンレス鋼の突出部に形成された。この生物膜は、製紙工業における純正な初期生物膜形成物(デイノコッッカス ジェオサーマリス(Deinococcus geothermalis)、シュードキサントモナス タイワネシス(Pseudoxanthomonas taiwanensis)及びメイオテルムス シルヴェナス(Meiothermus silvanus))が中性板紙抄紙機からの透明ろ液に混合され、連続振盪培養(45℃、2日間)されてなる混合物中に、突出部を有するステンレス鋼板を浸漬することによって、形成された。 突出部上に成長した生物膜を、室温で1.5時間にわたって種々の殺生剤に暴露した。残存生物膜の生存能力は、ステンレス鋼を無菌のR2液体培養液に移して45℃で21時間培養することによって、測定した。新たに形成された生物膜量は、最初でかつ処理された生物膜の生存率である。試験に用いた殺生剤はPFA/PAA混合物及びePAAであった。このPFA/PAA混合物は、ギ酸溶液(濃度75質量%)5.9gを酢酸溶液(濃度99質量%)44.6gに混合してカルボン酸混合物とし、このカルボン酸混合物に冷却下過酸化水素溶液(濃度50質量%)100gを添加し、さらに2.0gの安定剤と7.5gの濃硫酸を添加して、調製された。過酸含有率は9.3質量%であり、H2O2含有率は28質量%であった。 ePAAは、商品名「Kemirox WT」の過酢酸平衡溶液であり、15質量%の純過酢酸と15質量%の過酸化水素と24質量%の酢酸とを含有している。 前記PFA/PAA混合物の使用量は過酸の合計量に基づいて決定した。使用量はそれぞれ、PAA又はPFA/PAA混合物の濃度が0、2、3、4、5、6、7.5、10及び15ppmとなる量とした。これら濃度の殺生剤は、活性成分として処理され、脱イオン水化中で増量され、水道水で希釈された。 試験結果からPFA/PAA混合物はePAAよりも効果的な殺生剤であることが明らかとなった。濃度3ppmで明確な効果が得られ、濃度5ppmで完全な不活性化効果が得られた。通常のePAA溶液を用いた場合には、PPA濃度が10ppmになるまで明確な効果は見られなかった。ePAAの濃度が15ppmであっても細菌を完全に不活性化する効果はなかった。活性PAA含有率を基準にすると、PFA/PAA混合物はePAAよりも3〜4倍も効果的であった。溶液を基準にすると、生物膜不活性化効果において、PFA/PAA混合物はePAAよりも約2倍も効果的であった。 過ギ酸を含む第1の過酸と第2の過酸とを含有する溶液の調製方法であって、 ギ酸を含む第1のカルボン酸と第2のカルボン酸と過酸化水素とを、前記ギ酸量が前記第2のカルボン酸量に対して0.5〜20質量%の割合で、含有するカルボン酸溶液を調製する工程と、 前記成分を反応させて、過ギ酸と前記第2の過酸とを、過酸量が少なくとも5質量%となる割合で、含有する溶液を調製する工程とを有することを特徴とする溶液の調製方法。 調製される溶液における過酸量が5〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。 カルボン酸溶液中における、前記過酸化水素に対する前記カルボン酸のモル比が0.5:1〜8:1の範囲内であり、好ましくは0.7:1〜2:1の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の調製方法。 調製される溶液は、ギ酸、前記第2のカルボン酸及び過酸化水素をさらに含有する平衡溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調製方法。 前記平衡溶液中における前記ギ酸と前記過ギ酸との合計量が2〜20質量%であることを特徴とする請求項4に記載の調製方法。 前記第2のカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、フタル酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸又はこれらの混合物であり、 前記第2の過酸は、過酢酸、過プロピオン酸、パーオキシフタル酸、パーオキシシュウ酸、パーオキシマレイン酸、パーオキシリンゴ酸、パーオキシフマル酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の調製方法。 触媒が溶液中に添加されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の調製方法。 前記触媒は、鉱酸、好ましくは硫酸若しくは塩酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。 前記触媒は、有機酸、好ましくはギ酸であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。 安定剤が溶液中に添加されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の調製方法。 前記安定剤は、1−ヒドロキシエチレン−1,1−二リン酸であるホスホン酸塩若しくはジピコリン酸であるピリジンカルボン酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項10に記載の調製方法。 過ギ酸を含む第1の過酸と第2の過酸とギ酸を含む第1のカルボン酸と第2のカルボン酸と過酸化水素とを含有する貯蔵可能溶液であって、 前記第2のカルボン酸と前記第2の過酸との合計質量に対して前記ギ酸と前記過ギ酸との合計量が0.5〜20質量%であり、過酸の合計量が少なくとも5質量%であることを特徴とする貯蔵可能溶液。 前記過酸の合計量が5〜20質量%であることを特徴とする請求項12に記載の貯蔵可能溶液。 前記過酸化水素に対する前記過酸とカルボン酸との合計モル比が0.5:1〜8:1の範囲内にあり、好ましくは0.7:1〜2:1の範囲内にあることを特徴とする請求項12又は13に記載の貯蔵可能溶液。 前記貯蔵可能溶液は平衡溶液であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 ギ酸と過ギ酸との合計量が2〜20質量%であることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 前記第2のカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、フタル酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸又はこれらの混合物であり、 前記第2の過酸は、過酢酸、過プロピオン酸、パーオキシフタル酸、パーオキシシュウ酸、パーオキシマレイン酸、パーオキシリンゴ酸、パーオキシフマル酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 安定剤を含有することを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 前記安定剤は、1−ヒドロキシエチレン−1,1−二リン酸であるホスホン酸塩若しくはジピコリン酸であるピリジンカルボン酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項18に記載の貯蔵可能溶液。 請求項12〜19のいずれか1項に記載の前記貯蔵可能溶液の、微生物増殖制御用殺菌剤としての使用。 温室殺菌若しくは下水殺菌用、又は、抄紙機の細菌増殖制御用殺菌剤としての請求項20に記載の使用。 この発明は、過ギ酸を含む第1の過酸と第2の過酸とを含有する溶液の調製方法であって、ギ酸を含む第1のカルボン酸と第2のカルボン酸と過酸化水素とを、前記ギ酸量が前記第2のカルボン酸量に対して0.5〜20質量%の割合で、含有するカルボン酸溶液を調製する工程と、前記成分を反応させて、過ギ酸と前記第2の過酸とを、過酸量が少なくとも5質量%となる割合で、含有する溶液を調製する工程とを有する溶液の調製方法に関する。また、この発明は、過ギ酸と前記第2の過酸とを含有する貯蔵可能な溶液に関する。この溶液は微生物の増殖制御用の殺菌剤として使用される。【選択図】なし20070716A16333全文3 過ギ酸を含む第1の過酸と第2の過酸とを含有する溶液の調製方法であって、 ギ酸を含む第1のカルボン酸と第2のカルボン酸と過酸化水素とを、前記ギ酸量が前記第2のカルボン酸量に対して0.5〜20質量%の割合で、かつ、過酸化水素に対するカルボン酸のモル比が0.5:1〜8:1の範囲で、含有するカルボン酸溶液を調製する工程と、 前記成分を反応させて、過ギ酸と前記第2の過酸とを、過酸量が少なくとも5質量%となる割合で、含有する溶液を調製する工程とを有することを特徴とする溶液の調製方法。 調製される溶液における過酸量が5〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。 カルボン酸溶液中における、前記過酸化水素に対する前記カルボン酸のモル比が0.7:1〜2:1の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の調製方法。 調製される溶液は、ギ酸、前記第2のカルボン酸及び過酸化水素をさらに含有する平衡溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調製方法。 前記平衡溶液中における前記ギ酸と前記過ギ酸との合計量が2〜20質量%であることを特徴とする請求項4に記載の調製方法。 前記第2のカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、フタル酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸又はこれらの混合物であり、 前記第2の過酸は、過酢酸、過プロピオン酸、パーオキシフタル酸、パーオキシシュウ酸、パーオキシマレイン酸、パーオキシリンゴ酸、パーオキシフマル酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の調製方法。 触媒が溶液中に添加されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の調製方法。 前記触媒は、鉱酸、好ましくは硫酸若しくは塩酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。 前記触媒は、有機酸、好ましくはギ酸であることを特徴とする請求項7に記載の調製方法。 安定剤が溶液中に添加されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の調製方法。 前記安定剤は、1−ヒドロキシエチレン−1,1−二リン酸であるホスホン酸塩若しくはジピコリン酸であるピリジンカルボン酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項10に記載の調製方法。 過ギ酸を含む第1の過酸と第2の過酸とギ酸を含む第1のカルボン酸と第2のカルボン酸と過酸化水素とを含有する貯蔵可能溶液であって、 前記第2のカルボン酸と前記第2の過酸との合計質量に対して前記ギ酸と前記過ギ酸との合計量が0.5〜20質量%であり、 過酸化水素に対する過酸とカルボン酸との合計モル比が0.5:1〜8:1の範囲であり、 過酸の合計量が少なくとも5質量%であることを特徴とする貯蔵可能溶液。 前記過酸の合計量が5〜20質量%であることを特徴とする請求項12に記載の貯蔵可能溶液。 前記過酸化水素に対する前記過酸とカルボン酸との合計モル比が0.7:1〜2:1の範囲内にあることを特徴とする請求項12又は13に記載の貯蔵可能溶液。 前記貯蔵可能溶液は平衡溶液であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 ギ酸と過ギ酸との合計量が2〜20質量%であることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 前記第2のカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、フタル酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸又はこれらの混合物であり、 前記第2の過酸は、過酢酸、過プロピオン酸、パーオキシフタル酸、パーオキシシュウ酸、パーオキシマレイン酸、パーオキシリンゴ酸、パーオキシフマル酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 安定剤を含有することを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の貯蔵可能溶液。 前記安定剤は、1−ヒドロキシエチレン−1,1−二リン酸であるホスホン酸塩若しくはジピコリン酸であるピリジンカルボン酸又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項18に記載の貯蔵可能溶液。 請求項12〜19のいずれか1項に記載の前記貯蔵可能溶液の、微生物増殖制御用殺菌剤としての使用。 温室殺菌若しくは下水殺菌用、又は、抄紙機の細菌増殖制御用殺菌剤としての請求項20に記載の使用。