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タイトル:特許公報(B2)_糖鎖分析用血清前処理方法
出願番号:2008522650
年次:2013
IPC分類:C07K 1/113,C07C 309/14,G01N 1/28,C12P 19/28


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西村 紳一郎 篠原 康郎 三浦 嘉晃 古川 潤一 喜多 陽子 瀧本 明生 中野 美佳 JP 5192376 特許公報(B2) 20130208 2008522650 20070629 糖鎖分析用血清前処理方法 国立大学法人北海道大学 504173471 塩野義製薬株式会社 000001926 田村 恭生 100068526 鮫島 睦 100100158 新田 昌宏 100138900 西村 紳一郎 篠原 康郎 三浦 嘉晃 古川 潤一 喜多 陽子 瀧本 明生 中野 美佳 JP 2006181292 20060630 20130508 C07K 1/113 20060101AFI20130411BHJP C07C 309/14 20060101ALI20130411BHJP G01N 1/28 20060101ALI20130411BHJP C12P 19/28 20060101ALI20130411BHJP JPC07K1/113C07C309/14G01N1/28 JC12P19/28 C07K 1/00-1/36 CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第03/102225(WO,A1) 特表2005−521724(JP,A) Fette,Seifen,Anstrichmittel,Vol.72,No.9(1970),800-803 新生化学実験講座 第1巻 タンパク質I 分離・精製・性質、1990 年2月26 日発行,p.53-66 5 JP2007063100 20070629 WO2008001888 20080103 11 20100603 三原 健治 自然界に広く分布している複合糖質の糖鎖は生体内の重要な構成成分であり、細胞間の相互作用に深く関わっていることが明らかにされつつある。このため、糖鎖構造を微量解析する技術が多く開発されている。本発明は、これら糖鎖構造解析に先立って、生体から単離された試料を処理するための試薬、および前処理の方法に関する。 複合糖質の糖鎖分析においては、まずタンパク質から糖鎖を切り出す必要があり、これにはN型糖鎖遊離酵素、例えばペプチドN-グリコシダーゼF(PNGaseF)で酵素的に糖鎖を切断する方法と化学的に加ヒドラジン分解する方法とが知られている。 一般には、酵素的方法は基質中の糖鎖部分の大きさや構造に影響されることなく糖鎖の切り出しが可能であるため、化学的方法よりも好適に用いられるが、糖タンパク質は複雑多様であり、糖鎖部分がタンパク質の二次的および/または三次的構造で囲まれている結果、N型糖鎖遊離酵素による酵素消化が妨げられる場合も少なくない。 そこで、N型糖鎖遊離酵素による消化の効率を改善する目的で、還元剤や、界面活性剤若しくはタンパク質分解酵素により、またはこれらを適宜組み合わせて試料を前処理する方法が種々提案されている。 還元アルキル化はタンパク質の複雑な三次的構造を単純化し酵素消化を促進するための重要な前処理となり得る。この場合に、尿素および界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶液中に添加しタンパク質の可溶化を促進することが行われる。しかしながら、尿素および/またはSDSの除去が十分でないと続く質量分析においてMSシグナルが低下することが知られている。 タンパク質分解酵素、例えばトリプシンによるタンパク質部分の断片化も前処理として有用である。上記の還元アルキル化と組み合わせて利用されることが多いが、尿素および/またはSDSが残存するとトリプシン消化を妨げる。 最近、尿素やSDSに代わる添加剤として酸分解性界面活性剤(ALS)が新しく開発された(特許文献1参照)。このものをタンパク質可溶化剤として添加すると、トリプシンやPNGaseFによる消化を促進する効果を示し、また消化反応が完了した後は酸性条件下で分解できるのでその後の質量分析が妨害されることはない。既に下記のスルホン酸塩(ALS−I)が「ラピジェスト(RapiGest)SF」の商品名で製品化されている。 他方、本発明で好適に使用されるスルホン酸塩は界面活性剤の一種であり、洗剤としての用途が既に知られている(特許文献2参照)が、タンパク質の変性剤として機能し、後述する還元アルキル化やタンパク質分解酵素による消化を促進し、糖タンパク質から糖鎖を効率よく遊離させ得る作用については全く知られていない。PCT国際公開公報WO03/102225号公報PCT国際公開公報WO03/082811号公報 新しく開発されたタンパク質可溶化剤ALSは、酵素消化が終了した後は酸処理で容易に分解され、簡単に除去できる点が特徴である。しかしながら、検出限界を拡げるために糖鎖を例えばアミノピリジル化してラベル化しその解析を行おうとする場合には、当該酸処理により生じるケトン体が糖鎖解析上の妨げとなる。 本発明は、ALSの優れた可溶化能を損なわず、かつ、酸にも安定で糖鎖解析上妨げとならない新たなタンパク質可溶化剤を提供することを目的とする。 本発明の他の目的は、当該タンパク質可溶化剤を利用して、糖タンパク質の糖鎖解析のための前処理方法を提供することである。 本発明者らは、ALSの類縁体から酸に安定な化合物を選択し、還元アルキル化やタンパク質分解酵素による消化等の前処理法との組み合わせを種々検討して、糖タンパク質から糖鎖を効率よく遊離させ得るものを探索した。 その結果、下式(I)(式中、Zは酸素原子または硫黄原子;Xは酸素原子または−N(R3)−;R3は水素原子または低級アルキル;R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子またはヒドロキシ;Mは1価のカチオン;mは6〜16の整数;nは3〜5の整数を表す。)で表されるスルホン酸塩が上記目的にかなうこと、さらには広くタンパク質可溶化剤として利用できることを確認して本発明を完成した。 本発明のスルホン酸塩はタンパク質可溶化剤として有用であり、特に生体由来の糖タンパク質中の糖鎖解析をする場合、最初の工程で本剤を用いて還元アルキル化やタンパク質分解酵素による消化等を実施することにより、試料から糖鎖部分を効率よく切り出すことができる。実施例3の条件(2)で前処理した場合のHPLCクロマトグラムである。実施例3の条件(1)〜(7)で前処理した場合に切り出された全糖鎖量を比較したグラフである。条件(3)、(6)、(7)による前処理により得られた個々の糖鎖の相対的量比を表したグラフである。可溶化剤HSD(ラウリン酸2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)、PHL(2−ヒドロキシ−3−ラウルアミド−1−プロパンスルホン酸ナトリウム)またはPHM(2−ヒドロキシ−3−ミリストアミド−1−プロパンスルホン酸ナトリウム)と、還元アルキル化およびタンパク質分解酵素処理を組み合わせた場合に遊離される全糖鎖量を比較したグラフである。糖鎖ピークごとに、可溶化剤HSD、PHLまたはPHMと、還元アルキル化およびタンパク質分解酵素(トリプシン)による処理との組み合わせの影響を比較したグラフである。STD、LSTD、MSTD、HSD、PHL、PHL+RAおよびPHM+RAは表1を参照。 本発明のタンパク質可溶化剤は下式(I)で表されるスルホン酸塩を含む。 式中、Zは酸素原子または硫黄原子;Xは酸素原子または−N(R3)−;R3は水素原子または低級アルキル;R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子またはヒドロキシ;Mは1価のカチオン;mは6〜16の整数;nは3〜5の整数をそれぞれ表す。中でも、Zが酸素原子、Xが酸素原子または−NH−、−(CR1R2)n−が−CH2−CH(OH)−CH2−である化合物が好ましく、mは8〜14の化合物が好適に使用される。 ここで、低級アルキルとは直鎖若しくは分枝鎖を有する炭素数1から6のアルキル基を包含し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル等が例示される。また、1価のカチオンとしてはアルカリ金属カチオンを包含し、ナトリウム、リチウム、カリウム等が例示される。 本発明により提供されるタンパク質可溶化剤としては、アミド型のPHLおよびPHMが好ましく、要すれば後述する還元アルキル化やタンパク質分解酵素による前処理等と適宜組み合わせ、N型糖鎖遊離酵素で処理すれば、糖タンパク質の糖鎖解析を好適に実施することができる。 当該スルホン酸塩(I)中、エステル型(Zおよび酸素が酸素原子)の化合物は、例えばPCT国際公開公報WO03/82811号に記載された方法に従い、または準じて製造することができる。 また、例えば下記のスルホン酸ナトリウム塩(HSD)は市販品として入手することもできる。 また、アミド型化合物(Zが酸素原子、XがNH)は、例えば下式スキームに従って容易に調製することができる。低級アルキルアミド(R3が低級アルキル基)型の場合は上記アンモニア水(NH3aq)に代えて低級アルキルアミンと反応させればよい。生成物はエステル型の場合と同様に、通常、再結晶により精製することができる。 これらスルホン酸塩はタンパク質可溶化剤として使用する場合、制限はされないが、通常、試料溶液中0.001 %から10 %の濃度で使用される。HSDの場合は、通常、0.4〜0.004%、PHLの場合は0.4〜0.004 %、PHMの場合は0.4〜0.0004 %で使用することができる。 本発明のタンパク質可溶化剤は、糖タンパク質試料の還元アルキル化を実施する際に添加して使用することができる。還元アルキル化について特に制限はなく、例えば、後記実施例に記載のとおり、還元剤としてはジチオトレイトール(DTT)、アルキル化剤としてはヨード酢酸アミド(IAA)を用い、室温〜60℃で30分から1、2時間反応させて実施することができる。その他、還元剤としては例えば、2-メルカプトエタノール、トリ-n-ブチルホスフィン、アルキル化剤としてはヨード酢酸、ヨードメタン、エチレンイミン、4-ビニルピリジン等を使用することができる。 試料をタンパク質分解酵素で前処理する場合にも本発明のタンパク質可溶化剤を用いることができる。特に、糖タンパク質の糖鎖解析を目的とする場合は、試料の糖鎖部分が変化しなければ使用するタンパク質分解酵素に制限はなく、例えば後記実施例で使用したトリプシンの他、キモトリプシン、エンドペプチダーゼ(Asp-N、Glu-C、Lys-C)等を使用してタンパク質を断片化できる。 本発明のタンパク質可溶化剤はさらに、N型糖鎖遊離酵素、例えばPNGaseFにより糖タンパク質から糖鎖を遊離させる工程においても、促進効果を発揮する。上記の還元アルキル化やタンパク質分解酵素による前処理と組み合わせて行う場合には、以下の実施例に示す通り、最初の処理において添加した本発明のタンパク質可溶化剤をそのまま継続して使用することができる。 なお、本発明のタンパク質可溶化剤は糖タンパク質に限らず、広くタンパク質試料の加水分解に応用可能であり、例えば、上記のトリプシン、キモトリプシン、エンドペプチダーゼ(Asp-N、Glu-C、Lys-C)等を用いるタンパク質試料の消化の際に添加することにより、反応促進効果が期待できる。 また、本発明のタンパク質可溶化剤を添加することにより、可溶化されたタンパク質を容易に調製することができる。こうして得られた可溶化タンパク質は、上記の加水分解反応に限らず、還元アルキル化やその他任意の反応を好適に実施することができる。 本発明による試料の前処理条件(プロトコール)を以下に例示するが、本発明は決してこれに限定されるものではない。上記のスキーム中に示したとおり、0.4%HSD溶液を0.04%PHL溶液で置き換えてもよい。実施例1 アミド型可溶剤PHLの合成3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(1.97 g、10 mmol)を12.5%アンモニア水溶液に溶解し室温で終夜攪拌した。反応溶液をエバポレーターで濃縮することでアンモニアを除去し、3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムを得た。3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(177 mg、1 mmol)を水(10 mL)に溶解し、NaHCO3(84 mg、1 mmol)および塩化ラウロイル(231 μL、1 mmol)を加え室温で2時間反応した。反応終了後、反応液にワコーゲル50C18(2 cm3)を加えることで化合物を吸着させ、カラムに充填したのち水50mLでよく洗浄し、メタノール(10 mL)で溶出した。溶出液を冷却することによりPHL(2-ヒドロキシ-3-ラウルアミド-1-プロパンスルホン酸ナトリウム;1-Propanesulfonic acid, 2-hydroxy-3-lauramido)を結晶として得た。MALDI−TOF−MSによる解析により、目的物の[M+Na]+イオンをm/z:381.75に観測した。実施例2 アミド型可溶剤PHMの合成塩化ラウロイルのかわりに塩化ミリストイルをもちいて上記と同様の方法により反応をおこなうことでPHM(2-ヒドロキシ-3-ミリストアミド-1-プロパンスルホン酸ナトリウム;1-Propanesulfonic acid, 2-hydroxy-3-myristamido)を調製した。MALDI−TOF−MSによる解析により、目的物の[M+H]+イオンをm/z:409.84に観測した。実施例3 HSDによる糖鎖遊離促進効果 本発明のタンパク質可溶化剤HSDの効果を確認するため、還元アルキル化(DTTおよびIAA)およびタンパク質分解酵素(トリプシン)による消化と組み合わせて、PNGaseFによるN型糖鎖の切り出し効率に及ぼす影響を比較した。 具体的には以下の条件(1)から(7)について、それぞれn=3とし、記載した方法で血清を処理して遊離する糖鎖を比較した。条件(1) 血清20 μLをNH4HCO3溶液で希釈し、全量を50μLとした(変性剤の添加無し)。条件(2) 血清20 μLをNH4HCO3溶液で希釈し、400 Uトリプシンを加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて80℃で15分間加熱することにより、酵素反応を停止した。最終液量50μLとした。条件(3) 血清20 μLをNH4HCO3溶液で希釈し、DTTを終濃度10mMとなるように加え、60℃で30分間静置した.次に、IAAを終濃度15mMとなるように加え、遮光下で室温下に1時間放置した。その後、400 Uトリプシンを加えて37℃で1時間インキュベートし、続いて80℃で15分間加熱することにより、酵素反応を停止した。最終液量を50μLとした。条件(4) 血清50μLを2% SDS及び2% 2−メルカプトエタノールを含む等量のトリス塩酸緩衝液で希釈し、95℃で5分間静置した。次に、等量の8 % トリトンXを加えた。条件(5) 血清20 μLをNH4HCO3溶液で希釈し、ALS−I及びDTTをそれぞれ終濃度0.1%及び10mMとなるように加えて、60℃で30分間静置した。次に、IAAを終濃度15 mMとなるように加え、遮光下で室温下に1時間放置した。最終液量を50 μLとした。条件(6) 血清20 μLをNH4HCO3溶液で希釈し、HSD及びDTTをそれぞれ終濃度0.2 %及び10 mMとなるように加えて、60℃で30分間静置した。次に、IAAを終濃度15mMとなるように加え、遮光下で室温下に1時間放置した。最終液量を50 μLとした。条件(7) 血清20 μLをNH4HCO3溶液で希釈し、HSD及びDTTをそれぞれ終濃度0.2 %及び10 mMとなるように加え、60℃で30分間静置した.次に、IAAを終濃度15 mMとなるように加え,遮光下で室温下に1時間放置した.その後、400Uトリプシンを加え、37℃で1時間インキュベートし、続いて80℃で15分間加熱することにより酵素反応を停止した。最終液量を50μLとした。 上記の条件(1)から(7)の方法で血清を処理した後、それぞれに2 U〔条件(4)のみ5 U〕のPNGaseFを加えて37℃で24時間インキュベートし、糖鎖切り出し反応を行った。切り出された糖鎖について、プロナーゼ消化をしてからカラムで精製し2-アミノピリジンによる蛍光標識を行った後、ODSカラムを用いてHPLC分析を行った。 条件(2)で得られたクロマトグラムを図1に示す。 条件(1)〜(7)で前処理した試料につき、切り出された全糖鎖量(ピーク#1〜#14の面積の総和に相当)の比較〔条件(1)の場合の糖鎖量を1としたときの、相対量〕を図2に示す。消化条件の違いにより、PNGaseFによって遊離される糖鎖の量は顕著に異なった。トリプシン処理(条件2)は切断効率を〜88%改善し、さらに還元アルキル化処理を併用する〔条件(3)〕ことで〜127%の切断効率の改善を認めた。タンパク質可溶化剤としてSDS〔条件(4)〕、ALS−I〔条件(5)〕、HSD〔条件(6)〕を用い、還元アルキル化処理と併用した場合の切断効率の改善は、それぞれ〜63 %、〜75 %、〜104 %であり可溶化剤の種類により消化効率は異なった。タンパク質可溶化剤としての有用性を初めて評価したHSDは、検討した可溶化剤の中で最も効率的に糖鎖を遊離できることが示された。更にトリプシン処理、還元アルキル化、HSD処理を組み合わせる〔条件(7)〕ことで最大の切断効率(〜134%の改善)を認めた。 糖鎖遊離効率が高かった条件(3)、(6)、(7)の3つの消化条件によって切り出される糖鎖の定量的プロファイルを主要な14個のピークについて比較した(図3)。定量的プロファイルは三者で比較的良く似た結果が得られたが、トリプシン処理を加えない場合〔条件(6)〕、ピーク#5〜#14の相対値が低い傾向が認められたため、トリプシン消化を加えない場合にはPNGaseFの基質となり難いタンパク質が存在することが示唆された。実施例4 HSD、PHLおよびPHMの比較 HSD、PHLおよびPHMにつき、還元アルキル化(DTTおよびIAA)およびタンパク質分解酵素(トリプシン)による消化と組み合わせて、PNGaseFによるN型糖鎖の切り出し効率に及ぼす影響を検討した。具体的には、以下の3つの条件で下処理した後に血清糖タンパク質のPNGaseF消化を行った。(1) 血清20 μLに、4 μLの100mM 重炭酸水素アンモニウム(pH〜7.8)、16 μLの可溶化剤(0.4% HSDまたは0.04% PHLまたは0.004% PHM)を添加し、60℃で30分静置した。(2) 血清20 μLに、4 μLの100mM 重炭酸水素アンモニウム(pH〜7.8)、16 μLの可溶化剤(0.04% PHLまたは0.004% PHM)を添加し、8 μLの50mM DTTを添加し、80℃で15分間過熱した。5 μLの135mM ヨードアセトアミド(IAA)水溶液を添加し、遮光下に室温で1時間静置した。(3) 血清20 μLに、4 μLの100mM 重炭酸水素アンモニウム(pH〜7.8)、16 μLの可溶化剤(0.4% HSDまたは0.04% PHLまたは0.004% PHM)を添加し、8 μLの50mM DTTを添加し、80℃で15分間過熱した。5 μLの135mM ヨードアセトアミド(IAA)水溶液を添加し、遮光下に室温で1時間静置した。さらに、5μLのトリプシン(400 U)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。トリプシンを80℃で15分間加熱して失活した。 上記(1)〜(3)の各前処理を施した血清試料に、それぞれ2 UのPNGaseFを添加し、37℃で24時間インキュベートした後、90℃で15分加熱することによってPNGaseFを失活し、全ての試料の容量を100mM 重炭酸アンモニウムによって200 μLに調整した。 各条件下のPNGaseF消化後、それぞれの試料のうち50 μLをとり、20 μgのプロナーゼで消化した後に、糖鎖画分をバイオゲル P-4カラムで精製した。糖鎖は定法に従いピリジルアミノ化し、セファデックス G-15カラムにより過剰の試薬から分離した。試薬を減圧留去後に、500 μLのH2Oに溶解し、そのうち5 μLをHPLCに注入した。糖鎖の定量は確立されている逆相HPLCにより行い、主要な14個の糖鎖のピークについて得られた面積から、各消化条件下における遊離効率(図4)と定量的な糖鎖プロファイル(図5)を比較した(各N=3)。 各条件の一覧表を以下に示す。 その結果、(1)、(2)、(3)いずれの消化条件下においても、可溶化剤の種類および濃度の違いは消化効率、定量的プロファイルのいずれにも有意な差を与えなかった。従って、PHLおよびPHMは、糖タンパク質のPNGaseF消化における遊離効率を、少なくともHSDと同等に改善することが明らかになった。 本発明のタンパク質可溶化剤は、タンパク質変性剤として機能し、各種酵素消化において添加すると反応促進効果を発現する。特に糖タンパク質の糖鎖分析を行う場合は、N型糖鎖遊離酵素による糖鎖の切断の他、その他の前処理においても反応促進効果を発揮するので、糖鎖分析の前処理添加剤として極めて有用である。 一般式(I):(式中、Zは酸素原子または硫黄原子;Xは酸素原子または−N(R)3−、R3は水素原子または低級アルキル;R1、R2はそれぞれ独立して水素原子またはヒドロキシ;Mは一価のカチオン、mは6〜16の整数;およびnは3〜5の整数を表す。)で示される塩を含有するタンパク質可溶化剤の存在下で、試料をN型糖鎖遊離酵素で処理する工程を含む、糖タンパク質の糖鎖遊離方法。 以下の工程:1)一般式(I):(式中、Z、X、R1、R2、M、m、およびnは請求項1と同じ。)で示される塩を含有するタンパク質可溶化剤の存在下、試料について還元アルキル化処理を行う工程、2)タンパク質分解酵素で処理する工程、および3)N型糖鎖遊離酵素で処理する工程、を包含する糖タンパク質の糖鎖遊離方法。 N型糖鎖遊離酵素としてペプチドN-グリコシダーゼFを用いる、請求項1または2に記載の方法。 請求項1に記載のタンパク質可溶化剤の存在下で、試料をタンパク質分解酵素で処理するタンパク質の加水分解方法。 タンパク質分解酵素として、トリプシン、キモトリプシン、リジルエンドペプチダーゼ、エンドプロテイナーゼGlu-C、またはエンドプロテイナーゼAsp-Nを用いる、請求項2または4に記載の方法。


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