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タイトル:特許公報(B2)_ジシアノノルボルナンの製造方法、トリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒、および2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの製造方法
出願番号:2008522298
年次:2012
IPC分類:C07C 253/10,C07C 255/47,C07C 209/48,C07C 211/18,B01J 31/24,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

深津 典彦 森尻 博之 島川 千年 徳永 幸一 小林 誠一 JP 5038305 特許公報(B2) 20120713 2008522298 20070622 ジシアノノルボルナンの製造方法、トリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒、および2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの製造方法 三井化学株式会社 000005887 速水 進治 100110928 佐藤 浩司 100127074 深津 典彦 森尻 博之 島川 千年 徳永 幸一 小林 誠一 JP 2006181025 20060630 20121003 C07C 253/10 20060101AFI20120913BHJP C07C 255/47 20060101ALI20120913BHJP C07C 209/48 20060101ALI20120913BHJP C07C 211/18 20060101ALI20120913BHJP B01J 31/24 20060101ALI20120913BHJP C07B 61/00 20060101ALN20120913BHJP JPC07C253/10C07C255/47C07C209/48C07C211/18B01J31/24 ZC07B61/00 300 C07C 253/00 B01J 31/00 C07C 209/00 C07C 211/00 C07C 255/00 CA/REGISTRY(STN) 特開2003−055328(JP,A) 特開2002−069043(JP,A) 特開平03−095151(JP,A) 特開平06−184082(JP,A) 特開平03−232850(JP,A) 12996の化学商品,化学工業日報社,1996年 1月24日,第992頁 7 JP2007000680 20070622 WO2008001490 20080103 9 20090410 前田 憲彦 本発明は、ジシアノノルボルナンの製造方法、トリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒、および2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの製造方法に関するものである。 従来、シアノノルボルネン(以下、CNNと省略する。)のシアン化水素化によるジシアノノルボルナン(以下、DCNと省略する。)の製造方法としては、例えば以下のものが知られている:1)コバルトカルボニル触媒とトリフェニルホスフィンとを触媒系とする方法(特許文献1参照)。2)ゼロ価ニッケル錯体触媒とルイス酸とを触媒系とする方法(特許文献2および3参照)。 しかしながら、上記1)および2)の方法では、収率が低かったり、高価な触媒を使用していたり、精製工程を含んだ錯体を単離する方法であったりするため、収率の低下や作業性が煩雑化する問題があった。 そこで、このような従来の技術の問題点を克服可能とする、ゼロ価ニッケル錯体触媒合成などに関する新たな方法が提案された(特許文献4参照)。特許文献4に記載の方法によれば、ゼロ価ニッケル錯体触媒の合成が非常に容易、かつ高収率となった。 しかしながら、特許文献4に記載の方法を使用して得られたDCNを原料として、接触水素化することで得られた2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(以下NBDAと省略する)は経時着色が非常に大きいという性質を有することが知られている。原料であるDCN中に残存しているフェノールがNBDA中にも不純物として混入することにより経時着色が起きることが知られている。すなわち、この着色の主原因はNBDA中に含まれるフェノールである。したがって、着色を低減させるためにNBDA中のフェノール量を規定し、さらに精製工程でフェノール量を低下させる方法が提案されている(特許文献5参照)。米国特許2666780号明細書特開平3−95151号公報米国特許3328443号明細書特開2003−55328号公報特開2002−69043号公報 特許文献5の方法を使用すればNBDAの経時着色を防止することが可能となった。しかし、CNNにシアン化水素を付加する際に用いられるゼロ価ニッケル錯体触媒の原料により、フェノール量にばらつきがあった。すなわち、原料として使用されるホスファイト類の製造メーカや製造ロットの違い、さらには、使用直前の取り扱い状況などにより、得られたDCNを接触水素化してNBDAを得る際に生成するフェノール類の量がばらついていた。そのため、苛性ソーダを添加してNBDAを蒸留する時にDCN中のフェノール類の量にあわせて苛性ソーダを調整するなど操作が煩雑である上に、DCN中のフェノール類をあらかじめ取り除いても得られたNBDA中にフェノール類が存在し経時着色を引き起こす場合があった。 本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のことを見出した。すなわち、CNNをシアン化水素化してDCNを製造する際に使用する錯体触媒の配位子となるホスファイト類中に不純物として存在するホスフェート類が、DCN中でも不純物として存在し、かかる不純物の存在により、DCNを接触水素化してNBDAを得る際にフェノール類が生成されることを確認した。そこで、ホスファイト類中に不純物として存在するホスフェート類の量を管理することで、ホスフェート類から生成するフェノール類の量を低減し、経時着色の小さいNBDAを得ることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、〔1〕 配位子としてP(x)(y)(z)(Pはリン原子であり、x、y、zはそれぞれORで、Rは炭素数18以下のアリール基を表す。)で表されるホスファイト類を使用して、ニッケルハロゲン化物を亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、コバルトから選ばれる少なくとも1種類の金属で還元することによりトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒を製造するに際し、ホスファイト類中に含有されるホスフェート類の含有量が、ホスファイト類の総重量に対して0.7重量%以下であるホスファイト類を使用することにより製造されるトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒の存在下、シアノノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−カルボニトリル)にシアン化水素を付加反応させることを特徴とするジシアノノルボルナンの製造方法、〔2〕 Rがフェニル基であることを特徴とする〔1〕に記載の製造方法、〔3〕 少なくとも1種類の金属が亜鉛であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の製造方法、〔4〕 上記ジシアノノルボルナンの製造方法に用いられる触媒であって、 配位子としてP(x)(y)(z)(Pはリン原子であり、x、y、zはそれぞれORで、Rは炭素数18以下のアリール基を表す。)で表されるホスファイト類を使用して、ニッケルハロゲン化物を亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、コバルトから選ばれる少なくとも1種類の金属で還元することによりトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒を製造するに際し、ホスファイト類中に含有されるホスフェート類の含有量が、ホスファイト類の総重量に対して0.7重量%以下であるホスファイト類を使用することにより製造されるトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒、〔5〕 Rがフェニル基であることを特徴とする〔4〕に記載のトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒、〔6〕 少なくとも1種類の金属が亜鉛であることを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載のトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒、〔7〕 〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の製造方法によってジシアノノルボルナンを得る工程と、 得られた前記ジシアノノルボルナンを接触水素化する工程と、を含むことを特徴とする2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの製造方法、であり、従来技術では非常に困難であった課題が克服されることを提案したものである。 本発明では、ホスファイト類中に含有されるホスフェート類が、ホスファイト類の総重量に対して0.7重量%以下であるホスファイト類を使用することにより、得られたDCNを接触水素化してNBDAを得る際に生成するフェノール類の量を抑制することができる。本発明は、NBDAの蒸留時に煩雑な苛性ソーダを添加する操作なしに安定的に経時着色のないNBDAを提供するものである。 本発明は、ジシアノノルボルナンの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ゼロ価ニッケル錯体触媒とルイス酸助触媒とを使用して、シアノノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−カルボニトリル、以下、CNNと省略する。)のシアン化水素化を行うことにより、ジシアノノルボルナン(以下、DCNと省略する)を製造する方法に関するものである。 本発明の第一の実施形態では、配位子としてP(x)(y)(z)(Pはリン原子であり、x、y、zはそれぞれORで、Rはそれぞれ独立して炭素数18以下のアリール基を表す。)で表されるホスファイト類を使用して、ニッケルハロゲン化物を亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、コバルトから選ばれる少なくとも1種類の金属で還元することによりトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒を製造するに際し、以下のようなホスファイト類を用いる。すなわち、ホスファイト類中に含有されるホスフェート類が、ホスファイト類の総重量に対して0.7重量%以下であるホスファイト類を使用する。本発明は、かかるホスファイト類を使用することにより製造されるトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒の存在下、シアノノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−カルボニトリル)にシアン化水素を反応させることを特徴とするジシアノノルボルナンの製造方法に関する。 ゼロ価ニッケル錯体触媒およびルイス酸助触媒は、下記の化学反応式(1)に従い合成される。 NiX2 + M + 4L → NiL4 + MX2 (1)ここで、式(1)中のXはハロゲン原子、Mは亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、コバルトの内から選ばれる少なくとも1種類の金属であり、Lはホスファイト類である配位子P(x)(y)(z)である。配位子P(x)(y)(z)において、Pはリン原子であり、x、y、zはそれぞれORであり、Rは炭素数18以下のアリール基を表す。好ましくは、Rはフェニル基である。 よって、上記NiX2はニッケルハロゲン化物であり、上記NiL4はゼロ価ニッケル錯体触媒である。上記MX2は還元反応の結果生じた金属ハロゲン化物であるが、ルイス酸助触媒として触媒の寿命を延長させる効果があり、それぞれを単離精製することなく同時に使用することが可能である。 なお、Mがアルミニウムの場合は、下記化学反応式(2)に従い合成される。 3NiX2 + 2Al + 12L → 3NiL4 + 2AlX3 (2) ルイス酸助触媒として好ましいものは塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化クロム、三塩化アルミニウムが挙げられる。特に好ましいのは塩化亜鉛である。 本発明において、上記化学反応式(1)または(2)によって、ニッケルハロゲン化物の還元を行う。還元剤としては、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、コバルトの内から選ばれる少なくとも1種類の金属を用いる。最も好ましい還元剤は亜鉛である。ニッケルハロゲン化物が還元された結果、ゼロ価ニッケル錯体触媒及びルイス酸助触媒の合成が行われる。 上記還元剤の使用量は、ゼロ価ニッケル触媒の収率を高める観点から、ニッケルハロゲン化物よりも過剰当量使用するのが好ましい。具体的には、還元剤のニッケルハロゲン化物に対するモル比は1〜6が好ましい。 本発明において、ゼロ価ニッケル錯体触媒及びルイス酸助触媒の合成を行う反応は水の存在下で行う。水の添加方法は、水をそのまま反応系内へ添加してもよいが、ニッケルハロゲン化物が水和物である場合、その水和水も使用することができる。触媒合成の際に必要とする水の量は、好ましくはニッケルハロゲン化物に含有されるニッケル原子1モルに対して0.5〜40モルであり、より好ましくは0.8〜30モルであり、さらに好ましくは1〜20モルである。水の量が上記の範囲内において、高い触媒合成収率が得られる。特に、水の量が40モル以下では高い触媒合成収率が得られると共に、CNNのシアン化水素化を行う際において高い触媒安定性が得られる。 ここで、ニッケルハロゲン化物として好ましいものとしては、例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケルが挙げられ、およびこれらの無水塩または水和物であってもよい。取り扱い上最も好ましいものは塩化ニッケルの水和物である。 本発明における、P(x)(y)(z)と表記されるホスファイト類である配位子として好ましいものとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリ(m−またはp−クロロフェニル)ホスファイト、トリ(m−またはp−メトキシフェニル)ホスファイト、トリ(m−またはp−クレジル)ホスファイト、トリ(m−またはp−ノニルフェニル)ホスファイト等のトリアリールホスファイト類、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましくは、トリアリールホスファイト類であり、さらに好ましくは、トリフェニルホスファイト、トリ(m−またはp−クレジル)ホスファイト、およびトリ(m−またはp−ノニルフェニル)ホスファイトが挙げられる。 本発明のホスファイト類中に含まれる不純物であるホスフェート類の含有量については、種々の状況により大きく異なるため、その使用直前段階での許容量を明確化する必要がある。不純物であるホスフェート類の含有量は、例えば、ホスファイト類製造時および製造後の保管や輸送状況、製造メーカや製造ロットの違い、さらには、使用直前の取り扱い状況などにより変動がある。不純物量の許容量は、得られるDCNを接触水素化して経時着色の少ないNBDAを得るに際し、NBDA中に不純物として存在するフェノール類の増大を抑制する観点から決定される。具体的には、原料となるホスファイト類中に存在するホスフェート類の含有量が、ホスファイト類の総重量に対して1.0重量%以下であるものを選択して使用する。ホスフェート類の含有量は、0.7重量%以下であればより好ましく、0.4重量%以下であればさらに好ましい結果を与える。ここで挙げられるホスファイト類の精製法として1)加熱・減圧下で溶媒、低沸物等を留去する方法、2)蒸留による精製、および3)再結晶による精製が挙げられる。 本発明のホスファイト類である配位子の使用量としては、ニッケルハロゲン化物に対する化学当量、すなわち、4倍モル程度であればよい。前記範囲内であれば、ゼロ価ニッケル錯体の収率には影響が少ない。しかしながら、シアン化水素化反応時の活性及び寿命を高める観点から、より好ましくは5倍モル以上であるが、さらに好ましくは6倍モル以上36倍モル以下、さらにより好ましくは、8倍モル以上20倍モル以下で使用するとよい。36倍モルを超えても反応に差し支えないが、シアン化水素化反応液の後処理及び精製時、および配位子回収の損失を考慮すると必ずしも経済的ではない。 ゼロ価ニッケル錯体触媒の合成では、前述の配位子が溶媒の役割を担うことも可能である。しかしながら、これ以外に反応を阻害しないものであれば新たな溶媒を用いても何ら差し支えない。使用される溶媒種としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリル、CNN等のニトリル類、ジオキサン、o−メトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素類及び類似化合物などである。 ゼロ価ニッケル錯体触媒合成の条件としては、ニッケルハロゲン化物中のニッケル分は特に制限はないが、仕込み総量に対して、0.1〜2%が好ましい。温度条件としては、通常0〜150℃であり、反応収率、反応時間、触媒の分解を考慮すれば40〜100℃であれば好ましい。反応時間は工業的な効率を重視すれば2時間以内であるとより好ましい。 次に、CNNをシアン化水素化してDCNを製造する方法について説明する。 本発明におけるゼロ価ニッケル錯体触媒合成液と原料CNNの仕込み比については、通常、CNNのゼロ価ニッケル触媒合成液に対するモル比は、好ましくは20〜5000であり、容積効率やスラリー性、および後工程での精製負荷を考慮すれば、より好ましくは100〜2000である。 本発明において原料として使用するCNNは、通常、アクリロニトリルとシクロペンタジエンまたは、ジシクロペンタジエンとのディールズアルダー反応により工業的製造したものを使用することができる。 一方、本発明において使用するシアン化水素は、メタン、アンモニア及び空気を原料としたアンモオキシデーション法や、プロピレン、アンモニア、及び空気によるアンモオキシデーション法でアクリロニトリルの副生物として生成するものを取り出すことによって工業的に製造されたものを使用することができる。 シアン化水素の使用量は、CNN1モルに対して1モル以上であれば任意のモル量とすることができるが、通常1モルである。また、CNNのシアン化水素化の反応温度は好ましくは、−20〜200℃、より好ましくは0〜130℃、さらに好ましくは20〜100℃である。反応圧力は、常圧でも加圧でも行えるが、圧力増大による顕著な反応促進効果や選択性の向上はないので、通常は常圧で行われる。 本発明におけるCNNのシアン化水素化の反応形式は、通常回分式が採用されるが、CNN、シアン化水素、ゼロ価ニッケル錯体触媒合成液、また必要によっては溶媒等を連続的に供給するような連続式も採用される。 本発明によって製造されるDCNは、例えば、2,5−ジシアノノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジカルボニトリル)および2,6−ジシアノノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジカルボニトリル)を主成分とする混合物として得られる。 さらに、DCNを接触水素化して2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(以下NBDAと省略する)を製造する方法について説明する。 NBDAを製造する方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、DCNと25重量%アンモニア水(DCNに対し30モル%)およびラネーニッケル触媒(DCNに対し約1重量%)とを仕込み、水素圧約3.5MPa、温度120℃条件下で接触水素化を行う。その後、触媒、アンモニア水、トルエンを除き、蒸留する。 本発明のNBDAに含まれるフェノールの多くは、原料であるDCN製造において使用する、ゼロ価ニッケル錯体触媒及び助触媒の酸分解、加水分解により由来する。経時着色の小さいNBDAのフェノール含有量とは、例えば、0.05重量%以下であり、好ましくは0.02重量%以下である。 NBDAのフェノール含有量は、ガスクロマトグラフィー分析により求めた値である。具体的には、ガスクロマトグラフィー分析で、NBDA中のフェノールを絶対検量線法等により測定する。 NBDAのフェノール含有量を低減する方法としては、強塩基を添加して蒸留を行う等の手段が特許文献5に挙げられている。しかしながら、本発明では、上述の通り、ゼロ価ニッケル錯体触媒を製造するに際し、ホスフェート類の含有量が、一定以下であるホスファイト類を使用している。その結果、従来のように、DCNまたはNBDA中のフェノール含有量を低減する操作を行わなくても、安定的に経時着色の少ないNBDAが得られる。 以下、本発明を実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。ここで使用したホスファイト類であるトリフェニルホスファイト(以下TPPと省略する)およびDCN中のホスフェート類であるトリフェニルホスフェートの量、NBDA中のフェノールの量はガスクロマトグラフィーにより分析した。 経時着色判定法は、一定期間保存したNBDAの色相をJIS K1556の5.1項に従い色相APHA法で表記した。具体的には、白金とコバルトの試薬を溶解して調製した標準液を用い、試料の色と同等の濃さの標準液稀釈液を比較により求め、その「度数」をAPHAの測定値とした。この度数は小さい程、色相が良好である。経時着色の小さいNBDAとはAPHA=10以下のものである。 [実施例1] 攪拌機、温度計、窒素導入口、コンデンサーを備えた50mlのガラス製丸底フラスコに、塩化ニッケル六水和物1.07g(4.5mmol)と亜鉛を0.60g(9.2mmol)、公知の方法により精製した0.2重量%のトリフェニルホスフェートを含有したTPP8.90g(28.7mmol)、CNN26.5g(22.2mmol)を仕込み、気相部の窒素置換を確実に実施し、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル触媒を得た。次に、攪拌機、温度計、窒素導入口、シアン化水素導入口、コンデンサーを備えた1Lガラス製平底セパラブルフラスコに、CNN307.0g(2.58mol)、トルエン90.0gと上記で得られた触媒合成液を仕込み、室温で気相部の窒素置換を十分に行った後60℃に昇温した。次に液体シアン化水素69.13g(2.66mol)を3.5時間かけて供給しシアン化水素化反応を行い、粗DCNを480.7g得た。 得られた粗DCN480.7gに窒素ガス500ml/minの流速で1時間バブリングし、脱気させた後、不溶解物のろ過を行った。このろ液に40%硫酸1.9gを加え60℃で3時間加温して触媒の酸分解を行い、更に25重量%水酸化ナトリウム5.5gを加え40℃で2時間加温して中和した後にトルエン449.0gを加えてDCNの抽出を行い、DCNトルエン溶液を得た後、トルエンを留去して85重量%DCNを447.6g得た。得られたDCNを分析したところトリフェニルホスフェートは含有していなかった。 次に500mlオートクレーブに上記で得られたDCN287.8gと25%アンモニア水32.6g、及び触媒ラネーコバルト7.9gを装入して水素圧3.5MPa、120℃で接触水素化反応を430分行った。室温まで冷却し、濾過で触媒ラネーコバルトを除いた後に、ろ液に32wt%苛性ソーダを0.5g添加して、DCN中に含まれていたアンモニア、トルエンを2.6KPa、75℃で留去した。次いで0.1MPaにて、フラスコ内部温度150〜160℃の条件で蒸留し、NBDAを204g得た。フェノール分析を行ったところ、NBDAはフェノールを含有していなかった。また、得られたNBDAを窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ヶ月室温(25〜35℃)保管した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=10以下で経時着色は認められなかった。実験結果を表1に示す。 [実施例2] 0.6重量%のトリフェニルホスフェートを含有したTPPを使用して実施例1と同様に試験を行った。前記TPPは公知の方法により精製した。その結果、得られたDCNを分析したところトリフェニルホスフェートを0.08重量%含有していた。このDCNを使用して得られたNBDAはフェノールを0.04重量%含有していたものの、遮光した容器で1ヶ月室温(25〜35℃)保管した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=10以下で経時着色は認められなかった。実験結果を表1に示す。 [比較例1] 1.1重量%のトリフェニルホスフェートを含有したTPPを使用して実施例1と同様に試験を行った。その結果、得られたDCNを分析したところトリフェニルホスフェートを0.25重量%含有していた。このDCNを使用して得られたNBDAはフェノールを0.20重量%含有していた。遮光した容器で1ヶ月室温(25〜35℃)保管した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=30で経時着色が確認された。実験結果を表1に示す。本発明により安定的に経時着色のないNBDAを提供することが可能である。 配位子としてP(x)(y)(z)(Pはリン原子であり、x、y、zはそれぞれORで、Rは炭素数18以下のアリール基を表す。)で表されるホスファイト類を使用して、ニッケルハロゲン化物を亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、コバルトから選ばれる少なくとも1種類の金属で還元することによりトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒を製造するに際し、ホスファイト類中に含有されるホスフェート類の含有量が、ホスファイト類の総重量に対して0.7重量%以下であるホスファイト類を使用することにより製造されるトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒の存在下、シアノノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−カルボニトリル)にシアン化水素を付加反応させることを特徴とするジシアノノルボルナンの製造方法。 前記Rがフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載のジシアノノルボルナンの製造方法。 少なくとも1種類の前記金属が亜鉛であることを特徴とする請求項1または2に記載のジシアノノルボルナンの製造方法。 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジシアノノルボルナンの製造方法に用いられる触媒であって、 配位子としてP(x)(y)(z)(Pはリン原子であり、x、y、zはそれぞれORで、Rは炭素数18以下のアリール基を表す。)で表されるホスファイト類を使用して、ニッケルハロゲン化物を亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、コバルトから選ばれる少なくとも1種類の金属で還元することによりトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒を製造するに際し、ホスファイト類中に含有されるホスフェート類の含有量が、ホスファイト類の総重量に対して0.7重量%以下であるホスファイト類を使用することにより製造されるトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒。 前記Rがフェニル基であることを特徴とする請求項4に記載のトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒。 少なくとも1種類の前記金属が亜鉛であることを特徴とする請求項4または5に記載のトリアリールホスファイトを配位子とするゼロ価ニッケル錯体触媒。 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法によってジシアノノルボルナンを得る工程と、 得られた前記ジシアノノルボルナンを接触水素化する工程と、を含むことを特徴とする2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの製造方法。


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