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タイトル:特許公報(B2)_糸球体疾患の予防及び/または治療剤
出願番号:2008521264
年次:2013
IPC分類:A61K 31/787,A61K 45/00,A61P 13/12,A61P 3/10


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山森 雅彦 JP 5147695 特許公報(B2) 20121207 2008521264 20070615 糸球体疾患の予防及び/または治療剤 田辺三菱製薬株式会社 000002956 高島 一 100080791 山森 雅彦 JP 2006166854 20060616 20130220 A61K 31/787 20060101AFI20130131BHJP A61K 45/00 20060101ALI20130131BHJP A61P 13/12 20060101ALI20130131BHJP A61P 3/10 20060101ALI20130131BHJP JPA61K31/787A61K45/00A61P13/12A61P3/10 A61K 31/787 A61K 45/00 A61P 3/10 A61P 13/12 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表2005−523910(JP,A) 特開平09−295941(JP,A) 特開平05−155776(JP,A) 楢崎晃史 他,Colestyramine投与にて血清コレステロール値の著名な改善をみた糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群の二例,糖尿病,2000年,Vol.43, No.3,P.257 新村英也 他,Medical Practice,2003年,Vol.20 No.1,p.157-159 青柳一正 他,診断と治療,1992年,vol.80,p.521-522 平山浩一 他,医学のあゆみ,2001年 6月16日,vol.197, No.11,p.870-872 8 JP2007062083 20070615 WO2007145308 20071221 18 20100514 関 景輔 本発明は、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を有効成分とする糸球体疾患の予防及び/または治療剤に関する。 腎疾患は傷害される部位により糸球体疾患、尿細管間質性疾患、腎血管性疾患に大別され、このなかで糸球体疾患は頻度が高いものとして認識されている。糸球体疾患は糸球体を構成する基底膜、メサンギウム細胞、メサンギウム基質、上皮細胞、内皮細胞いずれかの構成成分の障害により、複雑な糸球体構造に破綻を来たすことに始まる。その成因は免疫学的機序、代謝異常、感染症と様々であるが、タンパク尿や血尿の出現により発見される場合がほとんどである。感染症などによる急性糸球体疾患の場合、多くの患者では数ヶ月で病態の改善がみられるが、糖尿病性腎症やIgA腎症などの慢性糸球体疾患になると、糸球体障害による機能ネフロンが減少し、高血糖や高血圧等により糸球体血漿流量の増加および糸球体毛細血管圧の上昇が生じる。それにより糸球体細胞障害を惹起し、糸球体硬化へと進展する。そして糸球体硬化により機能ネフロン数がさらに減少し、一連の悪循環により末期腎不全に陥る。 このように糸球体疾患は、末期腎不全になると透析や腎移植が必要となる等、進行すると極めて治療が困難な疾患であり、また、社会的にも莫大な費用負担が生じる疾患である。従って、出来る限り早期に糸球体疾患の発見を行い、発症後も出来る限り進行を食い止める必要がある。 糸球体疾患の有無を診断し、その程度を判断するうえで、尿タンパクは最も基本的な検査である。特に糸球体疾患では尿中にみられるタンパクはアルブミンが主体であり、他のタンパクに先駆けて尿中への出現がみられる。尿中アルブミンの測定方法も高感度の免疫比濁法やラテックス凝集法などが確立しているため、尿中アルブミン値は糸球体疾患発症の指標や治療効果判定の指標に有用である。 近年、タンパク尿が尿細管・間質病変を惹起してネフロンの荒廃をきたし、腎障害進展の因子となることが注目されており、タンパク尿を抑制することは糸球体疾患の進行抑制においても重要である。 早期の糸球体疾患の治療には、血圧コントロール、タンパク摂取制限、減塩が必要であり、食事療法、運動療法、薬物療法によって腎症の進行を抑制することが行なわれている。このうち、薬物療法としては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬が使用されている。しかし、これらはあくまでも対象患者が高血圧を呈する場合に使用可能であり、正常血圧の患者に対しても広く適用可能な薬剤が望まれていた。 一方、コレスチミドに代表されるような、コレステロール低下剤として知られる陰イオン交換樹脂に関しては、これまで一定期間投与した後の血糖降下に関する報告(非特許文献1)や2型糖尿病を合併した高コレステロール血症患者における血糖日内変動に対する影響に関する報告(特許文献1)がある。さらに、その作用機序のひとつとして、インスリン抵抗性改善作用を有することが知られており(特許文献2)、コレスチミドの糖尿病治療に対する有効性自体はこれまでの報告例により示唆されている。しかし、これらの報告例には、当該陰イオン交換樹脂を有効成分とする薬剤が糖尿病性腎症自体の治療に有効である旨の記載はない。また、既存の糖尿病治療薬の一部には、糖尿病性腎症の指標であるアルブミン尿やタンパク尿の改善作用を有さないとの報告例もある。例えば、グリベンクラミドやトログリタゾンに関し、顕性アルブミン尿を改善しないとの報告例(非特許文献2)があり、糖尿病治療薬として有効な薬剤が必ずしも糖尿病性腎症の治療薬として有効であるとは限らない。また、血糖、血圧コントロールが良好でもネフローゼ症候群となりうる場合もある。 薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂のうち、コレスチミドや塩酸セベラマーは、高リン血症治療剤として有効であることも知られている(特許文献3)。特許文献3には、当該陰イオン交換樹脂を有効成分とする薬剤が、腎機能障害に伴う高リン血症に有効であることが記載されているが、ここで治療対象とされているのは、あくまでも血清リン濃度上昇に伴う腎機能障害である。すなわち、高リン血症の治療において指標とされるのは、血清リン濃度低下作用であり、本発明の糸球体疾患の治療において指標とされるアルブミン尿やタンパク尿改善作用とは全く異なる。従って、腎機能障害に伴う高リン血症に有効である薬剤が、糸球体疾患に有効であるとは限らない。国際公開第03/011398号パンフレット国際公開第05/092349号パンフレット欧州特許出願公開第793960号公報臨床医薬12巻8号1996年6月1641頁Diabet Med. 2001 Apr.; 18(4): 308-13 本発明の目的は、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を有効成分とする新規な糸球体疾患の予防及び/または治療剤を提供することである。 本発明者は、上記した課題を達成すべく鋭意研究した結果、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂として知られているコレスチミド等が、尿中アルブミン値の減少を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明の要旨は以下のとおりである。(1)薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を有効成分とする糸球体疾患の予防及び/または治療剤。(2)糸球体疾患が、原発性糸球体疾患または続発性糸球体疾患である(1)記載の予防及び/または治療剤。(3)原発性糸球体疾患が、微小変化群、巣状糸球体硬化症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、膜性腎症、管内増殖性糸球体腎炎、半月体形成糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎または硬化性糸球体腎炎である(2)に記載の予防及び/または治療剤。(4)メサンギウム増殖性糸球体腎炎が、IgA腎症又は非IgA型糸球体腎炎である(3)に記載の予防及び/または治療剤。(5)原発性糸球体疾患がIgA腎症である(2)または(3)に記載の予防及び/または治療剤。(6)続発性糸球体疾患が、ループス腎炎、糖尿病性腎症又は遺伝性腎炎である(2)に記載の予防及び/または治療剤。(7)続発性糸球体疾患が、糖尿病性腎症である(2)または(6)に記載の予防及び/または治療剤。(8)糖尿病性腎症が、早期腎症期である(6)または(7)に記載の予防及び/または治療剤。(9)尿中アルブミン値を減少させる(1)から(8)のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。(10)薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂が、胆汁酸吸着能を有する(1)に記載の予防及び/または治療剤。(11)薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂が、コレスチミド、コレスチラミンレジン、コレスチポール、塩酸セベラマーまたは塩酸コレセベラムから選ばれる(1)または(10)のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。(12)薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂が、エピクロロヒドリン誘導体とイミダゾール誘導体に代表されるアミン類の重合反応にて合成される陰イオン交換樹脂である(1)、(10)または(11)のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。(13)薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂が、コレスチミドである(1)、(10)から(12)のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。(14)アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬が既に投与されている患者に使用する(1)から(13)のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。(15)アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬を、同時に、別々に、または、経時的に使用する(1)から(14)のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。(16)正常血圧患者に使用される(1)から(15)のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。(17)薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂を有効成分とする糖尿病性腎症の予防及び/または治療剤。 本発明によると、糸球体疾患の予防及び/または治療に有効な新規な薬剤の提供が可能である。特に、本発明によれば、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬など現在糸球体疾患の治療に使用されている薬剤と併用も可能であり、なおかつ、正常血圧患者に対しても適用可能な薬剤の提供が可能である。実施例1のケース1における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース2における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース3における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース4における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース5における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース6における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース7における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース8における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例1のケース9における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例2のケース1における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例2のケース2における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。実施例3における尿中アルブミンとHbA1cの変化を示した図である。 以下、本発明を更に詳細に説明する。 本発明において、薬学的に許容し得る陰イオン交換樹脂とは、医薬品として投与可能な陰イオン交換樹脂であり、好ましくは胆汁酸吸着能を有する陰イオン交換樹脂が挙げられる。 その一例としては、コレスチミド(2−メチルイミダゾール−エピクロロヒドリン共重合体)が最も好ましいものとして挙げられる。コレスチミドは、不規則に入り乱れた複雑な立体構造を有するが、下記式(I)の基本構造で示され、また、その構造は部分的には下記式(II)で示され、エピクロロヒドリン誘導体とイミダゾール誘導体に代表されるアミン類の重合反応、すなわち、特開昭60−209523号公報に記載の製造方法によって得られる。 なお、コレスチミドは、JANでは一般名colestimide (化学名:2-methylimidazole-epichlorohydrin copolymer)として登録されているが、INNでは一般名colestilan(化学名:2-methylimidazole polymer with 1-chloro-2,3-epoxypropane)として登録されている。 その他の好ましい陰イオン交換樹脂としては、前述のコレスチラミンレジンやコレスチポール((クロロメチル)オキシランを付加したN-(2−アミノエチル)−N’−[2−[(2−アミノ−エチル)アミノ]エチル]−1,2−エタンジアミン重合体)等が挙げられ、これらはシグマ社から市販されている。なお、コレスチラミンレジンは4級アンモニウム基を付加したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を含む強塩基性陰イオン交換樹脂で、その基本構造は下記式(III)で表される。また、塩酸セベラマーの基本構造は下記式で表され、米国特許第5496545号公報に記載の方法、またはそれに準ずる方法により製造することができる。 塩酸コレセベラムの基本構造は下記式で表され、米国特許第5607669号公報に記載の方法、またはそれに準ずる方法により製造することができる。 なお、その他、特表平9−504782号、9−500368号、10−501264号、10−501842号、11−507093号、11−512074号及び5−512332号、並びに、特開平8−208750号、9−202732号、10−114661号及び11−228449号各号公報等に記載の陰イオン交換樹脂も、本発明の要旨を超えない限り、本発明において使用することができる。 本発明の薬剤は、有効成分である上記化合物それ自体を用いてもよいが、汎用の製剤用添加物を用いて上記有効成分を含む医薬組成物を製造して用いることが好ましい。 このような医薬組成物としては、錠剤、カプセル剤、細粒剤、丸剤、トローチ剤、液剤等を挙げることができ、これらは経口的(舌下投与を含む)に投与される。 経口用の医薬組成物は、混合、充填または打錠等の従来汎用の方法により製造することができる。また反復配合操作を用いて、多量の充填剤を使用した医薬組成物中に有効成分を分布させてもよい。例えば、経口投与に用いられる錠剤またはカプセル剤は単位投与物として提供されることが好ましく、結合剤、充填剤、希釈剤、打錠剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤および湿潤剤等の通常使用される製剤用担体を含有していてもよい。錠剤は、当業界において周知の方法に従って、例えばコーティング剤を用いてコーティング錠としてもよい。 好ましい充填剤としては、セルロース、マンニトール、ラクトース等を挙げることができ、崩壊剤であるでん粉、ポリビニルピロリドン、ナトリウムでん粉グリコラート等のでん粉誘導体等や、滑沢剤であるラウリル硫酸ナトリウム等を製剤用添加物として用いることができる。経口用の液剤形態の医薬組成物は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ剤もしくはエリキシル剤等の医薬組成物、あるいは使用前に水または適当な媒体により再溶解され得る乾燥医薬組成物として提供される。 このような液剤には、通常の添加剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂肪のような沈殿防止剤;レシチン、ソルビタンモノオレエート、アラビアゴムのような乳化剤;アーモンド油、精留ココナッツ油、グリセリンエステル等の油状エステル;プロピレングリコール、エチルアルコールのような(食用油も包含し得る)非水性媒体;p−ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル若しくはプロピルエステル、またはソルビン酸のような保存剤、および必要に応じて通常の香味剤または着色剤などを配合することができる。 上記経口用の医薬組成物、例えば錠剤、カプセル剤、細粒剤等の場合は、通常5〜95%重量、好ましくは25〜90%重量の有効成分を含有する。 なお、コレスチミドは、三菱ウェルファーマ株式会社よりコレバイン(登録商標)として市販されており、本発明においてはコレバインをそのまま使用しても良い。また、塩酸セベラマーは、中外製薬株式会社及びジェンザイム社より商品名レナジェルとして、並びに、麒麟麦酒株式会社より商品名フォスブロックとして市販されており、本発明においてはレナジェルをそのまま使用しても良い。さらに、塩酸コレセベラムは、三共ファルマインクにより商品名ウェルコールとして市販されており、本発明においてはウェルコールをそのまま使用しても良い。 本発明において糸球体疾患とは、糸球体を構成する基底膜、メサンギウム細胞、メサンギウム基質、上皮細胞、内皮細胞いずれかの構成成分の障害により引き起こされる腎疾患を指すが、原発性糸球体疾患、続発性糸球体疾患又はネフローゼ症候群が好ましく、原発性糸球体疾患と続発性糸球体疾患が特に好ましい。本発明において原発性糸球体疾患とは、微小変化群、巣状糸球体硬化症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎(IgA腎症、非IgA型糸球体腎症)、膜性腎症、管内増殖性糸球体腎炎、半月体形成糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎又は硬化性糸球体腎炎を指すが、メサンギウム増殖性糸球体腎炎が好ましく、IgA腎症が特に好ましい。 本発明においてIgA腎症とは、以下の(1)〜(3)のすべての所見を満たす症例もしくは腎生検にて以下のA〜Cのいずれか1つを満たす症例を指す。(1)持続的顕微鏡的血尿(尿沈渣で、赤血球5〜6/HPF以上)、(2)間欠的または持続的タンパク尿、(3)血清IgA値315mg/dL以上。A.光学顕微鏡所見にて巣状分節性からびまん性全節性(球状)までのメサンギウム増殖性変化、B.蛍光抗体法または酵素抗体法所見にてびまん性にメサンギウム領域を主体とするIgAの顆粒状沈着、C.電子顕微鏡所見にてメサンギウム基質内、特にパラメサンギウム領域を中心とする高電子密度物質の沈着。 IgA腎症は腎生検時の組織所見に基づき、また臨床所見も加味して、予後良好群、予後比較的良好群、予後比較的不良群、予後不良群に分類される。 予後良好群とは、軽度のメサンギウム細胞増殖と基質増加のみで、糸球体の硬化・半月体の形成・ボウマン嚢との癒着は認めず、尿細管・間質・血管には著変を認めない。以上の状態で、透析療法に至る可能性がほとんどないと判断された症例を指す。 予後比較的良好群とは、軽度のメサンギウム細胞増殖と基質増加を認めるが、糸球体の硬化・半月体の形成・ボウマン嚢との癒着を認める糸球体は全生検糸球体の10%未満である。尿細管・間質・血管には著変を認めない。以上の状態で、透析療法に至る可能性が低いと判断された症例を指す。 予後比較的不良群とは、中等度、びまん性のメサンギウム細胞増殖と基質増加を認め、糸球体の硬化・半月体の形成・ボウマン嚢との癒着を認める糸球体は全生検糸球体の10〜30%である。尿細管萎縮は軽度で、間質への細胞浸潤も一部の硬化糸球体周囲以外には軽度である。血管には軽度の硬化性変化を認める。以上の状態で、5年以上・20年以内に透析療法に移行する可能性があると判断された症例を指す。 予後不良群とは、高度、びまん性のメサンギウム細胞増殖と基質増加を認め、糸球体の硬化・半月体の形成・ボウマン嚢との癒着を認める糸球体は全生検糸球体の30%以上である。さらに硬化部位を加算し全節性硬化に換算すると、その硬化率は全糸球体の50%以上である。また代償性肥大を示す糸球体をみることがある。尿細管萎縮、間質の細胞浸潤・線維化は高度である。一部の腎内小動脈壁に、肥厚あるいは変性を認める。以上の状態で、5年以内に透析療法に移行する可能性があると判断された症例を指す。 本発明において続発性糸球体疾患とは、ループス腎炎、糖尿病性腎症又は遺伝性腎炎を指すが、糖尿病性腎症が好ましい。 本発明において糖尿病性腎症とは、以下の(1)〜(5)を満たす症例を指す。(1)糖尿病の罹病期間が5年以上であること、(2)網膜症・神経症などの他の合併症が存在すること、(3)尿中タンパク(アルブミン)排泄量の持続的増加が見られ、その他の原因疾患(糸球体腎炎、高血圧性腎障害、痛風腎など)が除外されること、(4)顕著な顕微鏡的血尿や肉眼的血尿など、他の尿異常が存在しないこと、(5)初期では、ときに糸球体濾過量(GFR)の高値、腎臓の肥大が存在すること。 糖尿病腎症は尿タンパク値と腎機能の経時的変化により、腎症前期、早期腎症期、顕性腎症前期、顕性腎症後期、腎不全期、透析療法期に病期分類される。 腎症前期とは、尿中アルブミン値も腎機能も正常であり、糸球体過剰濾過を認める状態を指す。 早期腎症期とは尿中アルブミン値が30〜299mg/gCrである状態を指す。 顕性腎症前期とは、持続性タンパク尿が1g/日以上で糸球体濾過量(GFR)が正常(60ml/分以上)である状態を指す。 顕性腎症後期とは持続性タンパク尿が1g/日以上でGFRが低下(30〜60ml/分)している状態を指す。 腎不全期とは、持続性タンパク尿が1g/日以上でGFRが著明低下(30ml/分以下)している状態を指す。 透析療法期とは透析療法導入以降の状態を指す。 本発明においてネフローゼ症候群とは、1日3.5g以上の尿タンパクが3日以上持続し、血清総タンパクが6g/dl以下または血清アルブミンが3g/dl以下の状態を指す。 本発明の薬剤の投与量は、使用する有効成分、患者の年齢、健康状態、体重、疾患の重篤度、同時に行う治療・処置の種類や頻度、所望の効果の性質等により適宜決定すればよい。一般的には、コレスチミドを例にすると、成人1日あたりの投与量を、有効成分量として0.5〜60gとして、1日あたり1回ないしは数回投与すればよい。また本発明においては、上記で挙げた本発明の薬剤を、既にアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬が投与された患者に投与することも可能である。 本発明においてアンジオテンシン変換酵素阻害薬とは、特に限定はされないが、カプトリル、マレイン酸エナラプリル、アラセプリル、塩酸デラプリル、シラザプリル、リシノプリル、塩酸ベナゼプリル、塩酸イミダプリル、塩酸テモカプリル、塩酸キナプリル、トランドラプリル、ペリンドプリルエルブミン等が挙げられる。 本発明においてアンジオテンシン受容体拮抗薬とは、特に限定はされないが、カンデサルタン・シレキセチル、ロサルタンカリウム、バルサルタン、テルミサルタン等が挙げられる。 さらに、本発明においては、本発明の薬剤と、上記で挙げたアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬とを、同時に、別々に、または、経時的に使用することが可能である。すなわち、上記で挙げた薬学的に許容される陰イオン交換樹脂を有効成分とする医薬と、アンジオテンシン変換酵素阻害薬等とを、それぞれ患者の年齢、病態、性別、症状等により適宜増減して決定した投与量に基づいて、一つの医薬組成物として投与することも可能であるし、それぞれ別々の医薬組成物として投与することも可能である。別々の医薬組成物として投与する場合には、それぞれ同じか、または、異なる投与形態で、同時に投与することも可能である。さらに、それぞれ同じか、または、異なる投与形態で、同じ日に時間をずらして、あるいは、患者の年齢、病態、性別、症状等に併せて数日間、数週間または数ヶ月にわたり所定間隔で投与することも可能である。 なお、上記で挙げたアンジオテンシン変換酵素阻害薬等は、試薬として市販されているものを使用してもよいし、すでに医薬品として上市されている場合には、それを用いてもよい。本発明において正常血圧とは、収縮期血圧が130mmHg以下かつ拡張期血圧が80mmHg以下の状態を指す。 本発明の薬剤は、後述の実施例に示すように、糸球体疾患を発症した患者の尿中アルブミン値を減少させるため、糸球体疾患の予防及び/または治療剤として有用であり、糖尿病性腎症の早期腎症期から腎不全期に至るまで、また、IgA腎症の予後良好群から予後不良群まで腎症の幅広い進行度に対して有効である。また、従来糸球体疾患の治療に使用されているアンジオテンシン変換酵素阻害薬等と異なり、正常血圧患者にも使用可能である。 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下で使用したコレスチミドは、特に言及しない限り、三菱ウェルファーマ株式会社より市販されているコレバイン(登録商標)ミニ83%を使用した。 実施例1(対象および方法) 2型糖尿病を合併した高コレステロール血症患者であって、随時尿において微量アルブミン尿(30mg/g・Cr以上300mg/g・Cr未満)あるいは顕性アルブミン尿(300mg/g・Cr以上)を呈する外来患者(成人、性別不問)を対象に、コレスチミド投与による血清脂質、HbA1c(%)及び随時尿中アルブミン値を、約3ヶ月毎に、約6ヶ月以上の期間観察した。 試験スケジュールについては、以下のとおりとした。(1)観察期: 観察期において、血清脂質値、HbA1cが安定し、過去1年以上に遡って併用薬の変更がないことを確認した。(2)治療期: コレスチミド投与開始後約3ヶ月毎に、血清脂質、HbA1c及び尿中アルブミン値を経時的に、6ヶ月以上の期間、観察期と比較した。(試験薬及び用法・用量) コレバインミニ83%(三菱ウェルファーマ株式会社より市販)をコレスチミドとして1回1.5gを1日2回、朝・夕食前に服用した。ただし、ケース5においては、コレバイン錠500mg(三菱ウェルファーマ株式会社より市販)をコレスチミドとして1回0.5gを1日1〜2回、朝・夕食前に服用した。(食事療法及び併用薬剤) 観察期・治療期を通じて、指示カロリーは一定(標準体重1kgあたり約30kcal)とした。観察期・治療期を通じて、血清脂質値に影響を与える可能性のある薬剤(HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系薬剤)が既に投与されている場合、観察期・治療期を通じて、用法・用量を変更しないこととし、また新たに追加投与も行わないこととした。血糖値に影響を与える可能性がある薬剤(スルホニル尿素薬、α―グルコシダーゼ阻害薬、インスリン)が既に投与されている場合、観察期・治療期を通じて、用法・用量を変更しないこととし、また新たに追加投与も行わないこととした。尿中アルブミン値に影響を与える可能性のある薬剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、カルシウムチャネル拮抗薬)が既に投与されている場合、観察期・治療期を通じてその用法・用量を変更せずに投与継続し、またこれらの薬剤を新たに追加投与も行わないこととした。その他の薬剤においては、治療期における追加投与、用法・用量の変更、投与中止は可能とした。(結果) 対象患者及びその結果を以下に示す。なお、以下で示すTCは総コレステロール値(mg/dL)を、HbA1cはglycohemoglobinA1c値(%)を、CrはCreatinine値(mg/dL)を示し、矢印の前後はコレスチミド投与前観察期及び3ヶ月毎の各々の値を示す。 なお、すべての図において、●は尿中アルブミン値を、■はHbA1c値を示し、横軸は3ヵ月毎の測定ポイントを、左縦軸は尿中アルブミン値(mg/g・Cr)を、右縦軸はHbA1c(%)を示す。 ケース1:66才男性、アスピリン(一般名:100mg/日投与)、一硝酸イソソルビド(一般名:40mg/日投与)、センノシド(一般名:24mg/日投与)TC 166→169→147→148→140→155→141→160Cr 0.9→0.9→0.9→0.8→0.8→0.8→0.9→0.9随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図1に示す。 ケース2:75才男性、硝酸イソソルビド徐放錠(一般名:60mg/日投与)、塩酸ジラゼプ(一般名:300mg/日投与)、アカルボース(一般名:300mg/日投与)、テオフィリン徐放剤(一般名:200mg/日投与)、グリベンクラミド(一般名:2.5mg/日投与)、ツロブテロール貼付剤(一般名:2mg/日投与)、塩酸ベニジピン(一般名:4mg/日投与)、レバミピド(一般名:300mg/日投与)TC 208→219→223→205→218→222→189→220→213Cr 0.6→0.6→0.6→0.6→0.6→0.6→0.6→0.6→0.6随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図2に示す。 ケース3:85才女性、フェノフィブラート(一般名:100mg/日投与)、塩酸バルニジピン(一般名:10mg/日投与)、レボチロキシンナトリウム(T4)(一般名:50μg/日投与)、アスピリン(一般名:81mg/日投与)、カンデサルタンシレキセチル(一般名:4mg/日投与)、エチゾラム(一般名:0.5mg/日投与)TC 211→165→179→179→169→168→164Cr 0.5→0.7→0.5→0.5→0.6→0.5→0.5随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図3に示す。 ケース4:57才女性、ボグリボース(一般名:0.6mg/日投与)、グリメピリド(一般名:3mg/日投与)、アトルバスタチンカルシウム水和物(一般名:10mg/日投与)、カンデサルタンシレキセチル(一般名:4mg/日投与)TC 197→(測定せず)→208→147→133→149→(測定せず)→146→185Cr 0.6→(測定せず)→0.6→0.6→0.6→0.6→(測定せず)→0.6→0.6随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図4に示す。 ケース5:81才女性、カンデサルタンシレキセチル(一般名:8mg/日投与)、ベシル酸アムロジピン(一般名:5mg/日投与)、アロプリノール(一般名:100mg/日投与)、アズレンスルホン酸ナトリウム(一般名:4.5mg/日投与)、L−グルタミン(一般名:1485mg/日投与)TC (測定せず)→208→220→235→(測定せず)Cr (測定せず)→0.56→0.6→0.53→(測定せず)随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図5に示す。 ケース6:65才男性、ベシル酸アムロジピン(一般名:5mg/日投与)、マレイン酸エナラプリル(一般名:5mg/日投与)、テルミサルタン(一般名:40mg/日投与)、アロプリノール(一般名:200mg/日投与)、センノシド(一般名:24mg/日投与)TC 196→187→204→204→237→(測定せず)→196→216→204Cr 2.0→1.8→1.7→1.8→1.7→(測定せず)→1.7→1.8→2.0随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図6に示す。 ケース7:74才女性、併用薬なしTC 210→178→187→177Cr 0.5→0.5→0.5→0.6随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図7に示す。 ケース8:57才女性、併用薬なしTC 250→194→220Cr 0.4→0.4→0.4随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図8に示す。 ケース9:86才女性、塩酸ベニジピン(一般名:4mg/日投与)、ミソプロストール(一般名:400μg/日投与)、ニコランジル(一般名:10mg/日投与)、センノシド(一般名:12mg/日投与)、ボグリボース(一般名:0.6mg/日投与)、リセドロン酸ナトリウム水和物(一般名:2.5mg/日投与)、ブロチゾラム(一般名:0.125mg/日投与)TC 233→199→(測定せず)→186Cr 0.4→0.4→(測定せず)→0.4随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図9に示す。 上記の症例すべてにおいて、随時尿中アルブミン値とHbA1c値が明らかに低下しているが、上記の結果のうち、ケース3、ケース4、ケース5及びケース6において、アンジオテンシン受容体拮抗薬(腎保護作用があり、尿中アルブミンを減少させる。)がすでにそれぞれ投与されており、コレスチミドの投与によりさらに尿中アルブミン値は減少していた。また、ケース6においては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アンジオテンシン受容体拮抗薬と同様に腎保護作用があり、尿中アルブミンを減少させる。)も併用されているが、その条件下でもさらにコレスチミドにより尿中アルブミン値の減少がもたらされている。また、ケース5においては投与6ヶ月以降でコレスチミドのみ投与を中止したところ、HbA1c値に変動はなかったものの、随時尿中アルブミン値の急激な上昇がみられたが、その日よりコレスチミドを0.5g/日から再開始し、さらにその2週間後には1.0g/日に増量した。再開始日より3ヶ月後には、随時尿中アルブミン値は激減しており、HbA1c値も減少がみられた。ケース6では、投与21ヶ月後の随時尿中アルブミン値とHbA1c値の上昇がみられ、患者に確認したところ、コレスチミドの服薬不良があったことが明らかになった。その後、用法・用量を遵守したコレスチミドの服薬を行ったところ、随時尿中アルブミン値とHbA1c値の減少がみられた。 以上より、コレスチミドが糖尿病性腎症に対して優れた効果を有することは明らかである。 実施例2(対象および方法) 2型糖尿病を合併した高コレステロール血症患者であって、随時尿において顕性アルブミン尿(300mg/g・Cr以上)を呈する外来患者(成人、性別不問)を対象に、コレスチミド投与による血清脂質、HbA1c(%)及び随時尿中アルブミン値を、約3ヶ月毎に、12〜21ヶ月の期間観察した。 試験スケジュールについては、以下のとおりとした。(1)観察期: 観察期において、血清脂質値、HbA1cが安定し、過去1年以上に遡って併用薬の変更がないことを確認した。(2)治療期:コレスチミド投与開始後約3ヶ月毎に、血清脂質、HbA1c及び尿中アルブミン値を経時的に、12〜21ヶ月間の期間、観察期と比較した。(試験薬及び用法・用量) コレバインミニ83%(三菱ウェルファーマ株式会社より市販)をコレスチミドとして1回1.5gを1日2回、朝・夕食前に服用した。(食事療法及び併用薬剤) 観察期・治療期を通じて、指示カロリーは一定(標準体重1kgあたり約30kcal)とした。観察期・治療期を通じて、血清脂質値に影響を与える可能性のある薬剤(HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系薬剤)は観察期・治療期を通じて、用法・用量を変更しないこととし、また新たに追加投与も行わないこととした。血糖値に影響を与える可能性がある薬剤(スルホニル尿素薬、α―グルコシダーゼ阻害薬、インスリン)は症状に応じて投与量の増減を可能とした。尿中アルブミン値に影響を与える可能性のある薬剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、カルシウムチャネル拮抗薬)は、観察期・治療期を通じてその用法・用量を変更せずに投与継続し、またこれらの薬剤を新たに追加投与も行わないこととした。その他の薬剤においては、観察期・治療期を通じて、用法・用量を変更しないこととした。(結果) 併用薬及びその結果を以下に示す。なお、以下で示すTCは総コレステロール値(mg/dL)を、HbA1cはglycohemoglobinA1c値(%)を、CrはCreatinine値(mg/dL)を示し、矢印の前後はコレスチミド投与前観察期及び3ヶ月毎の各々の値を示す。 なお、すべての図において、●は尿中アルブミン値を、■はHbA1c値を示し、横軸は3ヵ月毎の測定ポイントを、左縦軸は尿中アルブミン値(mg/g・Cr)を、右縦軸はHbA1c(%)を示す。 ケース1:62才男性、アスピリン(一般名:100mg/日投与)、バルサルタン(一般名:40mg/日投与)、ボグリボース(一般名:0.9mg/日投与)、イソフェンインスリン水性懸濁(一般名:8単位/日投与(10ヶ月間)→6単位/日投与(8ヶ月間)→4単位/日投与)TC 205→164→159→(測定せず)→181→166→164→183Cr 1.2→1.3→1.3→(測定せず)→1.4→1.3→1.4→1.4随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図10に示す。 ケース2:81才女性、生合成ヒト二相性イソフェンインスリン水性懸濁(一般名:10単位/日投与(7ヶ月間)→6単位/日投与(3.5ヶ月間)→8単位/日投与)、ベシル酸アムロジピン(一般名:2.5mg/日投与)、アスピリン(一般名:100mg/日投与)、クエン酸第一鉄ナトリウム(一般名:100mg/日投与)、シロスタゾール(一般名:100mg/日投与)、プラバスタチンナトリウム(一般名:10mg/日投与)TC 236→(測定せず)→199→224→204Cr 0.5→(測定せず)→0.5→0.6→0.6随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図11に示す。 上記の症例すべてにおいて、随時尿中アルブミンが明らかに低下しているが、上記の結果のうち、ケース1において、アンジオテンシン受容体拮抗薬(腎保護作用があり、尿中アルブミンを減少させる。)がすでに投与されており、コレスチミドの投与によりさらに随時尿中アルブミン値は減少していた。またケース2においては、カルシウムチャネル拮抗薬(腎保護作用があり、尿中アルブミンを減少させる。)がすでに投与されており、コレスチミドの投与によりさらに随時尿中アルブミン値は減少していた。 このことより、コレスチミドは糖尿性腎症に対して、腎保護作用を持つ薬剤との併用投与でも優れた効果を有することは明らかである。 またケース2において、HbA1c値は観察期に比べ治療期で上昇しているものの、随時尿中アルブミン値は治療期で明らかに減少していた。 このことより、コレスチミドの糖尿病性腎症に対する優れた効果は、従来知られていたコレスチミドの血糖低下作用と何ら関連するものではないことが明らかである。 以上より、コレスチミドが糖尿病性腎症に対して、優れた効果を有しており、この効果は当業者が容易に想到できるものではなかったことが明らかである。 実施例3(対象および方法) IgA腎症を合併した高コレステロール血症患者(血清IgA値414mg/dl)であって、随時尿において顕性アルブミン尿(300mg/g・Cr以上)を呈する外来患者(72歳男性)に、コレスチミドを6ヶ月間投与し、その後3ヶ月間休薬し、さらに3ヶ月間再投与を行った。この間、血清脂質、HbA1c(%)及び随時尿中アルブミン値を、約3ヶ月毎に観察した。 試験スケジュールについては、以下のとおりとした。(1)観察期: 観察期において、血清脂質値が安定し、HbA1cは正常範囲内にあり、過去1年以上に遡って併用薬の変更がないことを確認した。(2)治療期: コレスチミドを6ヶ月間投与し、その後3ヶ月間休薬し、さらに3ヶ月間再投与を行い、約3ヶ月毎に、血清脂質、HbA1c及び尿中アルブミン値を経時的に、12ヶ月間、観察期及び休薬期と比較した。(試験薬及び用法・用量) コレバインミニ83%(三菱ウェルファーマ株式会社より市販)をコレスチミドとして1回1.5gを1日2回、朝・夕食前に服用した。(食事療法及び併用薬剤) 観察期・治療期を通じて、食塩制限(6g/日未満)とタンパク質制限(0.8g/kg/日未満)を行った。観察期・治療期を通じて、血清脂質値に影響を与える可能性のある薬剤(HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系薬剤)は観察期・治療期を通じて、新たに追加投与を行わないこととした。尿中アルブミン値に影響を与える可能性のある薬剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、カルシウムチャネル拮抗薬)は観察期・治療期を通じてその用法・用量を変更せずに投与継続し、またこれらの薬剤を新たに追加投与も行わないこととした。その他の薬剤においては、観察期・治療期を通じて、用法・用量を変更しないこととした。(結果) 併用薬及びその結果を以下に示す。なお、以下で示すTCは総コレステロール値(mg/dL)を、HbA1cはglycohemoglobinA1c値(%)を、CrはCreatinine値(mg/dL)を示し、矢印の前後はコレスチミド投与前観察期及び3ヶ月毎の各々の値を示す。 なお、図において、●は尿中アルブミン値を、■はHbA1c値を示し、横軸は3ヵ月毎の測定ポイントを、左縦軸は尿中アルブミン値(mg/g・Cr)を、右縦軸はHbA1c(%)を示す。 併用薬:アロプリノール(一般名:200mg/日投与)、塩酸イミダプリル(一般名:10mg/日投与)、ベシル酸アムロジピン(一般名:5mg/日投与)、アスピリン(一般名:100mg/日投与)TC 220→182→136→200→172Cr 1.4→1.4→1.3→1.2→1.4随時尿中アルブミンとHbA1cの変化を図12に示す。 上記の症例において、カルシウムチャネル拮抗薬(腎保護作用があり、尿中アルブミンを減少させる。)がすでにそれぞれ投与されており、コレスチミドの投与によりさらに尿中アルブミン値は減少していた。またコレスチミド投与期間中は随時尿中アルブミン値は低下しているものの、休薬期では上昇がみられ、コレスチミド再投与によって再度低下がみられた。 以上より、コレスチミドがIgA腎症に対して優れた効果を有することは明らかである。 本発明によると、糸球体疾患を改善する薬剤が得られる。この作用は、糖尿病性腎症やIgA腎症等の糸球体疾患に対して有効であることが確立しているアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬の併用下においても認められる。また、血圧降下作用がないため正常血圧患者でも使用可能である。 本出願は、日本で出願された特願2006−166854を基礎としており、その内容は、本明細書にすべて包含されるものである。 コレスチミドを有効成分とする糸球体疾患の予防及び/または治療剤であり、糸球体疾患が、糖尿病性腎症又はIgA腎症である、予防及び/または治療剤。 糸球体疾患がIgA腎症である請求項1に記載の予防及び/または治療剤。 糸球体疾患が、糖尿病性腎症である請求項1に記載の予防及び/または治療剤。 糖尿病性腎症が、早期腎症期である請求項3に記載の予防及び/または治療剤。 尿中アルブミン値を減少させる請求項1から4のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。 アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬が既に投与されている患者に使用する請求項1から5のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。 アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬を、同時に、別々に、または、経時的に使用する請求項1から6のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。 正常血圧患者に使用される請求項1から7のいずれかに記載の予防及び/または治療剤。


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