タイトル: | 公表特許公報(A)_細胞、組織、臓器、および生物の生存能力を高めるための方法、組成物、および製造物 |
出願番号: | 2008507930 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 45/00,A61P 17/02,A61P 7/04,A61P 41/00,A61P 7/06,A61K 33/04,A61K 33/06,A61K 33/44,A61P 43/00,A61P 9/10,A61P 9/00,G01N 33/15,G01N 33/50 |
ロス マーク ビー. モリソン マイク ミラー ダナ ブラックストーン エリック JP 2008538569 公表特許公報(A) 20081030 2008507930 20060420 細胞、組織、臓器、および生物の生存能力を高めるための方法、組成物、および製造物 フレッド ハッチンソン キャンサー リサーチ センター 506139369 清水 初志 100102978 刑部 俊 100119507 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 井上 隆一 100142929 ロス マーク ビー. モリソン マイク ミラー ダナ ブラックストーン エリック US 60/673,037 20050420 US 60/673,295 20050420 US 60/713,073 20050831 US 60/731,549 20051028 US 60/762,462 20060126 A61K 45/00 20060101AFI20081003BHJP A61P 17/02 20060101ALI20081003BHJP A61P 7/04 20060101ALI20081003BHJP A61P 41/00 20060101ALI20081003BHJP A61P 7/06 20060101ALI20081003BHJP A61K 33/04 20060101ALI20081003BHJP A61K 33/06 20060101ALI20081003BHJP A61K 33/44 20060101ALI20081003BHJP A61P 43/00 20060101ALI20081003BHJP A61P 9/10 20060101ALI20081003BHJP A61P 9/00 20060101ALI20081003BHJP G01N 33/15 20060101ALI20081003BHJP G01N 33/50 20060101ALI20081003BHJP JPA61K45/00A61P17/02A61P7/04A61P41/00A61P7/06A61K33/04A61K33/06A61K33/44A61P43/00 105A61P9/10A61P9/10 103A61P9/00G01N33/15 ZG01N33/50 Z AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW US2006015158 20060420 WO2006113914 20061026 176 20071210 2G045 4C084 4C086 2G045AA29 2G045AA40 2G045CB19 2G045FA16 2G045GC22 4C084AA17 4C084MA12 4C084MA16 4C084MA27 4C084MA32 4C084MA34 4C084MA52 4C084MA56 4C084MA58 4C084MA59 4C084MA60 4C084MA63 4C084MA66 4C084ZA362 4C084ZA402 4C084ZA532 4C084ZA552 4C084ZA892 4C084ZB212 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA06 4C086HA08 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA12 4C086MA16 4C086MA27 4C086MA32 4C086MA34 4C086MA52 4C086MA56 4C086MA58 4C086MA59 4C086MA60 4C086MA63 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZA36 4C086ZA40 4C086ZA53 4C086ZA55 4C086ZA89 4C086ZB211.発明の分野 本発明は、一般的には細胞生物学および生理学の分野に関する。より具体的には、それは、低酸素または無酸素状態を含むが、これらに限定されない特に有害な条件の下に於いて酸素と競合する物質を含む一つまたは複数の物質を用いて、細胞、組織、臓器、および生物の生存能力を高めるため、および/またはそれらに対する損傷を軽減するための方法、組成物、および器具に関する。特定の態様では、本発明は、被験体を、本明細書に記載された目的を達成できる、酸素アンタゴニスト、保護的代謝作用物質、または本明細書の中で論ずる他の化合物、あるいはそれらの前駆体(まとめて「活性化合物」と呼ぶ)に暴露することによって、疾患および状態を処置、予防、および診断するための方法、組成物、および器具を包含する。発明の背景 本出願は、共に2005年4月20日出願の米国仮特許出願第60/673,037号および第60/673,295号、ならびに2005年8月31日出願の米国仮特許出願第60/713,073号、2005年10月28日出願の米国仮特許出願第60/731,549号および2006年1月26日出願の米国仮特許出願第60/762,462号に関し、それらの全ての内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる。 政府は、National Institute of General Medical Sciences (NIGMS)からの認可番号GM048435にしがって一定の権利を有する。2.関連技術の説明 スタシス(Stasis)とは、「静止」を意味するラテン語である。生体組織に於けるスタシスとの関係で最も一般的なスタシスの形態は、移植または再付着のための組織の保存に関係する。典型的には、このような組織は食塩水などの生理学的流体の中に浸され、低温に置かれて、細胞の損傷をまねく生化学的プロセスを低下させる。このスタシスは不完全であり、長期間これに頼ることはできない。事実、臓器移植および四肢再付着の成功は、臓器または四肢が無傷の生物から分離された時間に反比例する。 スタシスのより極端な形は、ある生物全体を、「仮死状態」として日常的に知られる状態にすることを含む。今のところは、ほとんど科学フィクションの話と考えられているが、裕福な個人が未来の医学の飛躍的進歩によって生き返り、死亡原因となった病気が治療されることを希望して、死後に凍結保存されることを望んでいるという悪評を得ている。伝え聞くところによれば、1967年の初めての試みから100名を越える人々が凍結保存されており、さらに1000名を越える人々が、複数ある組織の一つ、例えばAlcor Life Extension Foundationと人体冷凍術に関する法的および経済的手続きを取っている。このような方法は、抗虚血薬の投与、低温保存、および凍結懸濁液での生物の全身を潅流する方法を包含する。生物のスタシスのこの型が可逆性であるということがまだ実証されていない。 本明細書に記載の組成物、方法、または製造物により企図するところの、生物物体をスタシスに誘導することの有用性は、スタシスを誘導または開始した後にスタシスを一定期間維持し、続いて全体または一部が、正常または正常に近い生理状態に、あるいはスタシスを経験しなかった生物物体の状態に比べて良好である状態と当業者が認識する状態に復帰することを特徴とする。スタシスはまた、このようなものでない状態と定義できる。生物のスタシスは、次のいずれの状態でもない:睡眠、昏睡状態、死、麻酔状態、または痙攣大発作。 通常、冷水に浸され、低体温状態に暴露された後、脈拍および呼吸が明瞭に停止した状態で生存した個体が数多く報告されている。科学者によって完全に理解されてはいないが、このような状況で生存する能力は、おそらく「哺乳類潜水反射」と呼ばれる現象に由来するものだろう。この反射は、重要臓器を保護するために、肺、心臓、咽頭、および食道を制御する迷走神経系を刺激すると信じられている。おそらく、冷水による皮膚神経受容体の刺激が、脳および心臓への血液の短絡を引き起こし、皮膚、胃腸管、および四肢から分離するのだろう。同時に、保護的反射による徐脈または心拍数を下げることで、漸減する体内の酸素供給量を節約する。残念なことにこの反射の発現は、全ての人々に同じではなく、該当するものの割合は冷水浸漬例の10〜20%に過ぎないと信じられている。 低温および/または酸素に完全には頼らないまたは全く頼らない組成物および方法は、酸素保存、ならびに組織または細胞保存との関連に於いて有用であろう。現在、細胞および組織は、低温、多くは液体窒素中などの、実質的に凍結温度より低い温度を用いて保存されている。しかしながら、温度依存性は、このような低温を生み出す器具および薬剤が、必要時またはそれらの交換が必要になった時に容易に入手できないことから問題を起こすことがある。例えば、組織培養細胞は、液体窒素の入ったタンクの中にある期間貯蔵されることが多い;しかしこれらのタンクは、装置内の液体窒素を定期的に交換することを頻繁に必要とし、さもなければ液体窒素は枯渇して温度が維持されない。さらには、凍結/融解のプロセスの結果として、細胞および組織への損傷が発生する。かくして、改良された技術が求められている。 さらには、切断などの外傷および低体温に暴露された生物全体の細胞および生理学的代謝を制御することができないことは、医学分野の大きな欠点である。一方、上記に論じた逸話的な証拠は、もし正しく理解され、かつ調節されれば、細胞、組織、および生物全体にスタシスを誘導できる可能性を強く示唆している。このように、特に外傷状態での代謝プロセスを制御するための、改良された方法が強く求められている。発明の概要 それ故に、本発明は、生物内に在る、または由来する細胞、組織、および臓器に、ならびに生物そのものにスタシスを誘導する方法、組成物、製造物、および器具を提供する。このような方法、組成物、製造物、および器具は、生物物体を保護するだけでなく、生物の疾患および状態を予防、処置、または診断することにも用いることができる。これに加えて、このような方法は、スタシスそのものを直接誘導することもでき、あるいはそれらはスタシスそのものを誘導するのではなく、傷害もしくは疾患状態に反応してスタシスになる生物物体の能力を高めることによって、例えばスタシス達成に必要な時間、または傷害もしくは疾患のレベルを下げることによって間接的に働くこともできる。このような状態は、プレスタシスと呼ぶことができる。このような応用および他の使用の詳細を、以下に説明する。 本発明は、保護機能を有すること、即ち保護剤として役立つことが明らかにされた化合物を用いた研究に一部基づいている。さらには、様々な化合物が関与する研究の全体の結果は、利用可能な電子供与中心を持つ化合物が、スタシスまたはプレスタシスの誘導には特に有用であることを示している。これに加えてこれら化合物は、可逆的スタシスも誘導し、これは、それら化合物が特定の生物物体に対して、生物物体が死亡または分解するほど有毒でないことを意味している。さらには、本発明を用いて、有害状態にさらされるか、または有害状態下に在る生物物体の生存能力を高めること、および/または生物物体への損傷を防止または軽減できることも企図される。 特定の態様では、本発明の方法は、傷害または疾患の処置の前、最中、または後に、傷害または疾患に伴う損害から生物物体を保護するために、傷害(例えば外傷性の傷害)後または疾患の発生もしくは進行後に、生物物体、例えば細胞、組織、臓器、および/または生物にスタシスまたはプレスタシスを誘導するのに用いられる。別の態様では、本発明の方法を用いて、傷害または疾患などの有害状態を伴う損傷から生物物体を保護するために、傷害事象(例えば選択的手術(elective surgery))を受ける前、あるいは疾患が発生または進行する前に生物物体にスタシスまたはプレスタシスを誘導または促進する。このような方法は、一般的には活性化合物を用いた「前処置」と呼ばれる。前処置としては、生物物体が有害状態(例えば傷害または疾患の発生もしくは進行)にさらされる前および最中の両方、ならびに前、最中、および後に、生物物体に活性化合物が提供される方法、ならびに生物物体が有害状態にさらされる前だけに活性化合物が生物物体に提供される方法が挙げられる。 本発明の方法の様々な態様によれば、スタシスは、スタシスそのものを直接誘導する活性化合物で生物物体を処置するか、あるいはそれ自体はスタシスを誘導しないが、それに代わって生物物体が、これらに限定されないが、傷害、疾患、低酸素、過度の出血、または他の活性化合物による処置などの別の刺激に反応して、スタシスを達成する能力を促進もしくは高めるか、またはそれに必要な時間を短縮する活性化合物で生物物体を処置することによって誘導できる。 特定の態様では、活性化合物による処置は、生物物体がスタシスに達するために通過しなければならない低代謝状態とされる「プレスタシス」を誘導する。プレスタシスは、代謝に於ける生物物質の量の減少が、スタシスとして定義されたものよりは小さいことを特徴とする。活性化合物を用いてスタシスを達成するには、生物物体は、生物物体に於ける酸素消費およびCO2産生の低下が2倍未満に等級分けされる低代謝状態を必ず通過しなければならない。活性化合物によって代謝または細胞の呼吸が2倍未満の程度まで低下するこのような一連の現象を「プレスタシス」の状態と表すことができる。 スタシスがCO2産生またはO2消費のいずれかの2倍低下(即ち50%またはそれ未満に低下)を含む範囲では、2倍未満の低下を検出する、当業者に公知の方法を用いた生物物体のこれらパラメータの直接測定がプレスタシスを示す。それゆえに本発明においては、血液中の二酸化炭素および酸素レベル、ならびに血液のpO2、VO2、pCO2、pH、および乳酸塩レベルを含むが、これらに限定されない当業者に馴染みのある他の代謝マーカーの確実な測定を利用して、プレスタシスの開始または進行をモニタリングすることができる。代謝活性の指標、例えば細胞呼吸を介したCO2産生およびO2消費が、正常な状態に比べて2倍未満まで低下すると同時に、プレスタシスに伴って、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%のCO2発生が低下することがあるが、これは肺から放出されるCO2の量に関連する。これに加えて、様々な態様において、プレスタシスは、正常な生理学的状態に比べて1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または49%より低いか、またはそれに等しい、代謝活性の一つまたは複数の指標の低下によって特徴付けられる。別の態様では、プレスタシスは、別の刺激(この場合、別の刺激として同一活性作用物質による長期処置を含んでよい)に反応してスタシスへ入るのを速めるか、または促進する能力、あるいは傷害から生じた損傷、疾患の発生もしくは進行、または出血、特に不可逆的な組織損傷、出血性ショック、または死に至る可能性のある出血から生物物体の生存を高めるか、または保護するその能力を特徴とする。 本明細書に明示的に例示された本発明の方法は、「スタシス」の誘導に関連するものであるが、これらの方法は、「プレスタシス」の誘導にも容易に適応させることができること、および本発明によりプレスタシスを誘導するこのような方法が企図されることが理解される。これに加えて、スタシス誘導に用いられたものと同一の活性化合物を用いて、それらをスタシス誘導に使用した場合より低用量、および/または短時間、生物物体に提供することによってもプレスタシスを誘導できる。 ある態様では、本発明は生物物体を一定量の作用物質に暴露し、生物物体のスタシスを達成させることを含む。いくつかの態様では、本発明は、以下を含む、インビボの生物物体をスタシスに誘導する方法に関係している:a)スタシスが望まれる生物を同定する段階;およびb)生物を有効量の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露してインビボの生物物体をスタシスに誘導する段階。生物物体に「スタシス」を誘導するということは、生物物体は生きているが、以下事項の一つまたは複数を特徴とすることを意味している:生物物体が産生する二酸化炭素の速度または量が少なくも2倍低下すること;生物物体による酸素消費の速度または量が少なくとも2倍(即ち50%)低下すること;および行動または運動性の少なくとも10%の減少(精子細胞または心臓もしくは四肢のような動く細胞または組織、あるいは生物全体にスタシスが誘導される場合にのみ適用される)(「細胞呼吸インジケータ」と総称される)。本発明の態様において、生物物体による酸素消費の速度は、約、少なくとも約、または最大でも約2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、25-、30-、35-、40-、45-、50-、60-、70-、80-、90-、100-、150-、200-、250-、300-、350-、400-、450-、500-、600-、700-、800-、900-、1000- 、1100-、1200-、1300-、1400-、1500-、1600-、1700-、1800-、1900-、2000-、2100-、2200-、2300-、2400-、2500-、2600-、2700-、2800-、2900-、3000-、3100-、3200-、3300、3400-、3500-、3600-、3700-、3800-、3900-、4000-、4100-、4200-、4300-、4400-、4500-、5000-、6000-、7000-、8000-、9000-もしくは10000-倍またはそれ以上の減少、あるいはそこから導き出せる任意の範囲であることが企図される。または、本発明の態様は、生物物体による酸素消費の速度の減少に関して、約、少なくとも約、または最大でも約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲として検討され得ることが企図される。酸素消費を測定する任意のアッセイが利用できること、ならびに典型的なアッセイは閉鎖された環境が利用できることおよび環境内に持ち込また酸素と一定時間後に環境内に残っている酸素の差を測定することを含むことが企図される。さらには、二酸化炭素の産生を測定して、生物物体による酸素消費量を決定できることも企図される。しがって二酸化炭素産生が低下した場合は、上記のようにそれに対応して酸素消費量も低下するだろう。 本発明の方法では、スタシスまたはプレスタシスは一時的および/または可逆的であるが、このことはいくらか後の時点で生物物体がもはやスタシスの特徴を示さないことを意味する。本発明の幾つかの態様では、酸素アンタゴニストに代わって、酸素アンタゴニストとしての資格を持たない化合物が投与される。酸素アンタゴニストに関連して論じた方法は、酸素アンタゴニスト、保護的代謝作用物質、式I、II、III、またはIVの構造を有する化合物、本明細書の中で論ずる任意の他の化合物、あるいはそれらの塩または前駆体である任意の化合物に対して応用できることが企図される。本発明の任意の方法を達成し、酸素アンタゴニストとしての資格を持つ化合物、保護的代謝作用物質、式I、II、III、またはIVの構造を有する化合物、あるいはそれらの塩または前駆体は、「活性化合物」と見なされる。特定の態様では、スタシスの誘導は、化合物が「活性スタシス化合物」と呼ぶことができる例で望まれる。本発明の幾つかの態様では、方法はスタシスを誘導することによって達成されることが企図される。例えば、治療方法は、スタシスを誘導する段階を含むことができるが、その場合活性化合物は活性スタシス化合物である。活性化合物を検討する態様では、本発明は酸素アンタゴニストを含み、かつこれに限定できることが特に企図される。 本発明のある態様では、生物物体は、それ自体はスタシスを誘導しない(少なくとも提供されたレベルおよび/または期間内では)が、しかし生物物体を誘導して、治療的便益を有するプレスタシス状態、ならびに例えば傷害、疾患状態、もしくは別の活性化合物による、またはより長期間もしくは高用量で用いた同一活性化合物による処置などの別の刺激に反応してスタシスを達成する生物物体の能力を高めるプレスタシス状態に入れる活性化合物で処置される。 用語「生物物体」(好ましい態様では哺乳類の生物物質)は、細胞、組織、臓器、および/または生物、ならびにそれらの組み合わせを含む任意の生きている生物物質を指す。スタシスは、その部分が生物内にとどまっているか、または生物の外に取り出されているか、または生物全体がスタシス状態に置かれるかどうかに関わらず、生物の一部分(細胞内、組織内、および/または一つもしくは複数の臓器内など)に誘導できることが企図される。さらには、細胞および組織との関係では、均一および不均一な細胞集団が本発明の態様の被験体になり得ることが企図される。用語「インビボの生物物体」は、インビボ、即ちまだ生物内に存在しているか、または付着している生物物体を指す。さらには、用語「生物物体」は、用語「生物物質」と同義であるものとして理解される。ある態様では、一つまたは複数の細胞、組織、または臓器が生物から分離されることが企図される。用語「単離された」は、このような生物物体を表すのに用いることができる。スタシスは単離された生物物体に誘導できることが企図される。 スタシスを必要とする生物またはその他生物物体は、生物の全体または一部のスタシスが直接または間接的な生理学的便益を生じうる生物または生物物体である。例えば、出血性ショックのリスクを伴う患者は、スタシスが必要であると見なすことができ、または冠動脈バイパス手術を受ける患者は、虚血/再潅流傷害から心臓を保護することから便益を受けるであろう。他の応用は、本出願の中で論じられている。いくつかの例では、生物または他の生物物体は、スタシスを経験したことによって防止もしくは処置できる状態もしくは疾患、または状態もしくは疾患のリスクを示す、一つまたは複数の試験、スクリーニング、または評価に基づいて、スタシスが必要であることが確認または決定される。または、患者の病歴または家族の病歴(患者インタビュー)を得ることは、生物または他の生物物体がスタシスを必要としているかについての情報をもたらすことがある。当業者には明らかにであるように、本発明の一つの応用は、スタシスを誘導することによって生物物質の全体的なエネルギー需要を下げることである。 あるいは、生物または他の生物物体は、生存率を高めるための活性化合物を必要とすることもある。例えば、患者は本明細書で論じた傷害もしくは疾患、または任意の他の応用について処置を必要とすることがある。それらは、生存率を高めるか、または患者の病歴または家族の病歴を得るなどの前述のパラグラフで論じた方法に基づく処置を必要とすると決定されるかもしれない。 用語「酸素アンタゴニスト」は、それが生存するために酸素を必要としている生物物体(「酸素利用生物物体」)が用いる範囲に於いて、酸素と競合する物質を指す。酸素は、典型的には、容易に利用可能なエネルギーの生物物体の一次供給源を作り出す様々な細胞のプロセスに用いられる、または必要とされる。酸素アンタゴニストは、酸素利用生物物体が入手できる酸素の量、および/または酸素利用生物物体による利用が可能な酸素の量を効果的に減らすか、もしくは排除する。一つの態様では、酸素アンタゴニストは、その酸素拮抗作用を直接的に実現できる。別の態様では、酸素アンタゴニストは、その酸素拮抗作用を間接的に実現できる。 直接酸素アンタゴニストは、酸素結合部位または酸素結合能力を有する分子(例えばタンパク質)への結合について分子酸素と競合する。アンタゴニストは、薬理学または生化学の分野に公知の競合的でも、不競合的でも、非競合的なものでよい。直接酸素アンタゴニストの例としては、ヘモグロビンおよびチトクロームCオキシダーゼへの酸素の結合を競合する一酸化炭素(CO)が挙げられるが、これらに限定されない。 間接酸素アンタゴニストは、酸素結合分子への酸素の結合について直接競合しない状態で、エネルギー産生(例えば細胞呼吸において)のために酸素を使用する細胞への酸素の利用可能度または送り込みに影響する。間接酸素アンタゴニストの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)ボーア効果として公知のプロセスを通して、ヘモグロビン(またはミオグロビンなどの他のグロビン)の、酸素利用動物の血液または血液リンパ中の酸素と結合する能力を低下させ、それによって生物の酸素利用細胞、組織、および臓器へ送られる酸素の量を減らし、それにより酸素を用いる細胞への酸素の利用可能度を低下させる、二酸化炭素;(ii)肺または他の呼吸器官中の二酸化炭素の水和を阻害することによって二酸化炭素の濃度を上げ、それによって酸素利用動物の血液または血液リンパ中の酸素に結合するへモグロビン(またはミオグロビンなどの他のグロビン)の能力を低下させ、それによって生物の酸素利用細胞、組織、および臓器へ送られる酸素の量を減らし、それにより酸素を用いる細胞への酸素の利用可能度を低下させる、炭酸脱水酵素阻害薬(Supuran et al., 2003、全体が参照により組み入れられる);および(iii)酸素に結合し、酸素結合分子から酸素を隔離するか、またはそれを酸素結合分子に結合できないようにする酸素キレート剤、抗体等が挙げられるが、これらに限定されない、分子。 いくつかの態様では、酸素アンタゴニストは直接および間接酸素アンタゴニストの両方である。例としては、チトクロームcオキシダーゼへの酸素の結合について直接競合する化合物、薬剤、または作用物質、および炭酸脱水酵素に結合しその酵素活性を阻害できる化合物、薬剤、または作用物質も挙げられるが、これらに限定されない。しがっていくつかの態様では、酸素アンタゴニストは、例えば、その他の場合は酸素に結合するチトクロームcオキシダーゼの部位に結合することによって、細胞内で起こる細胞呼吸を阻害、またはその量を減らす。チトクロームcオキシダーゼは、酸素に特異的に結合し、次にそれを水に変換する。いくつかの態様では、チトクロームcオキシダーゼへのこのような結合は、解除可能および可逆的な結合であることが好ましい(例えば、少なくとも10-2、10-3、または10-4Mのインビトロ解離定数、Kdを有し、かつ10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、または10-11Mより大きくないインビトロ解離定数Kdを有する)。いくつかの態様では、酸素アンタゴニストは、ATPおよび/または二酸化炭素排出量を測定することによって評価される。 用語「有効量」は、規定の結果を達成しうる量を意味する。本発明のある方法では、「有効量」は、例えばスタシスを必要とする生物物体をスタシスに誘導する量である。別の方法では、「有効量」は、例えば、スタシスを必要とするか、または増進された生存を必要とする生物物体にプレスタシスを誘導する量である。さらなる態様では、「有効量」は、生物またはその他の生物物体の生存能力を高める量を指してもよい。この量は、未処置の生物物体、または生存能力の差を経験しない別の用量またはレジメンで処置された生物物体との比較または以前の比較に基づいて決定(または推定)できる。 組織または臓器にスタシスを誘導する場合は、有効量は、組織または臓器の合計細胞呼吸量に基づき決定する時に、組織または臓器にスタシスを誘導する量であることが理解されるだろう。しがって、例えば心臓による酸素消費レベル(心臓の細胞に関する集計)が、ある酸素アンタゴニストまたは他の活性スタシス化合物の特定量に暴露された後に少なくとも約2倍(即ち50%)低下すれば、この量が心臓にスタシスを誘導する有効量であることが理解されるだろう。同様に、ある生物をスタシスに誘導する作用物質の有効量は、スタシスの特定パラメータの集計または総計レベルについて評価された量である。ある生物をスタシスに誘導した時に、有効量は、生物の特定部分が標的でない限り、生物全体に一般にスタシスを誘導する量であることも理解されるだろう。これに加えて、有効量は、それ自体がスタシスを誘導するのに十分な量でも、または別の作用物質もしくは刺激、例えば別の活性化合物、傷害、もしくは疾患状態と組み合わせてスタシスを誘導するのに十分な量でもよいことも理解される。 特定化合物の有効量の概念は、いくつかの態様では、生物物体が利用できる利用可能な酸素がどれだけあるかに関係する。一般的には、少しの酸素アンタゴニストも存在しない状態では、約100,000ppmまたはそれ未満の酸素が存在する時に(大気中には約210,000ppmの酸素が存在する)スタシスを誘導できる。酸素アンタゴニストは、有効に利用できる酸素の量を変える役割を果たす。10ppmの酸素濃度で仮死状態が誘導される。しがって、生物物体が暴露される実際の酸素濃度が10ppmよりも高くとも、遙かに高い場合でさえ、生物物体に於ける、必須酸素代謝タンパク質への結合のための酸素に対する酸素アンタゴニストの競合効果によりスタシスを誘導することができる。換言すれば、酸素アンタゴニストの有効量は、存在する酸素を使用することができない程度まで有効酸素濃度を下げる。これは、前記量の酸素アンタゴニストが有効酸素濃度を、必須酸素代謝タンパク質に対する酸素結合のKm未満にした時(即ち、10ppmの酸素と同程度)に起こるだろう。したがって、幾つかの態様において、酸素アンタゴニストは有効酸素濃度を、約、または少なくとも約2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、25-、30-、35-、40-、45-、50-、60-、70-、80-、90-、100-、150-、200-、250-、300-、350-、400-、450-、500-、600-、700-、800-、900-、1000-、1100-、1200-、1300-、1400-、1500-、1600-、1700-、1800-、1900-、2000-、2100-、2200-、2300-、2400-、2500-、2600-、2700-、2800-、2900-、3000- 、3100-、3200-、3300、3400-、3500-、3600-、3700-、3800-、3900-、4000-、4100-、4200-、4300-、4400-、4500-、5000-、6000-、7000-、8000-、9000-もしくは10000-倍またはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲で減少させる。または、本発明の態様は、約、少なくとも約、または最大でも約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%もしくはそれ以上の、あるいはそこから導き出せる任意の範囲に有効酸素濃度の減少に関して検討できることが企図される。これは細胞呼吸における減少を示す別の方法であると理解される。 さらには、いくつかの態様では、スタシスは生物の中心体温の低下によって間接的に測定できる。本発明の方法では、約、少なくとも約、または最大でも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50°Fまたはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲での中心体温の低下が観察できることが企図される。本発明のいくつかの態様では、中度低体温(少なくとも10゜Fの低下)または高度低体温(少なくとも20゜Fの低下)などの低体温を誘導できる。 よりさらには、有効量は、暴露時間の長さの制限が付いた、または付かない濃度として表すことができる。いくつかの態様では、スタシスを誘導する、または本発明の記載の他の最終目標を達成するために、生物物体を約、少なくとも約、または最大でも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60秒、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2、3、4、5週、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年またはそれ以上、およびそこから導き出せる任意の組み合わせまたは範囲の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露することが一般的に企図される。さらには、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の投与の理由または目的によっては時間を定めないことも企図される。その後、生物物体を継続して酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露しても、または、本発明の別の態様では、生物物体をそれ以上酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露しなくともよい。この後者の段階は、スタシスが望まれる生物物体の存在場所から酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物を取り除くまたは効果的に取り除くのいずれかによって達成できるが、あるいは生物物体を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物を含む環境から取り除いてもよい。これに加えて、生物物体を任意の活性化合物に継続的に(暴露の中断がなく、一定期間)、間欠的に(複数回に分けての暴露)または定期的に(規則的な、複数回に分けての暴露)暴露してもよい。これら異なる方針での活性化合物の投与量は同一でも変更してもよい。ある態様において、活性化合物を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60分ごとに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間ごとに、1、2、3、4、5、6、7日ごとに、1、2、3、4、5週ごとに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月ごとに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年、またはそれ以上ごとに、あるいはそこから導き出せる任意の範囲ごとに、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回、活性化合物に生物物体を提供するまたは暴露することによって定期的に提供される。 さらには、本発明のいくつかの態様では、生物物体は、活性化合物に持続した期間暴露されるか、またはそれが提供されるが、この場合「持続した」とは、少なくとも約2時間の期間を意味する。別の態様では、生物物体は、一日より多い日数、持続的な形で活性化合物に暴露されても、またはそれが提供されてもよい。このような状況では、生物物体には、連続的に、持続した形で活性化合物が提供される。ある態様では、生物物体は、活性化合物に約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12時間またはそれ以上(あるいはそこから導き出せる任意の範囲)、2、3、4、5、6、7日間、および/または1、2、3、4、5週間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年またはそれ以上(あるいはそこから導き出せる任意の範囲)連続的に、間欠的に(複数回に分けての暴露)または定期的に(規則的に反復して暴露する)暴露しても、あるいはそれが提供されてもよい。 いくつかの態様では、生物物体は、特定の傷害、外傷、または処置(例えば手術)、有害状態、あるいは他の関連事象または状況の少なくとも前および最中;前、最中、および後;最中および後;または後にだけ、活性物質に暴露するか、またはそれを与えてもよい。この暴露は、持続してもしなくともよい。 これら異なる方針での活性化合物の投与量は、同一でも変えてもよい。 よりさらには、特定の態様では、活性化合物は、「低」レベルと見なされるレベルで連続的に、持続した形で提供することができるが、この場合の低レベルは、CBT、心拍数、またはCO2もしくはO2の消費もしくは産生の低下を伴って見られるような代謝的順応性を引き起こす量に比べ少ないレベルを意味する。 ある態様では、生物物体は、無呼吸(「被験体の呼吸数が10%またはそれ以下まで呼吸が顕著に減少している期間」)、観察可能な骨格筋運動の欠如、失調、および/または過敏症などの有害な生理学的悪影響の前に、従来は最大許容用量と考えられていた量を超える量の代謝性作用物質などの活性化合物に暴露されるか、またはそれが提供される。このような量は、本発明のいくつかの態様での生存能力の上昇、例えば、出血性ショックによる死を誘導するであろう有害な状態から生き延びる機会を増やすことに関係する。 生理学的状態は、生存能力の増強を必要とする生物において生存能力を高めかつ活性化合物の有効量に反応する一連の観察可能な生理学的変化を含む、本発明の活性化合物によって誘導することができ、該変化は過呼吸、無呼吸、および筋神経系緊張もしくは持続的心拍を伴う運動の随意制御の随伴的もしくは後続的な消失、の一つ、複数、または全てを含む。動脈血の色の、一過性の測定可能な変化も観察できる。過呼吸は、せわしない浅い呼吸を指す。無呼吸は、上記のような呼吸の停止または減少を指す。 ある態様では、呼吸が停止して、および続いて短時間後の無呼吸を特徴とする無呼吸になる。ラットでは、これは約20秒後に起こる。それゆえに、無呼吸に誘導された被験体は、活性化合物へ暴露された後に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%の呼吸数を示すことがある。被験体は、その後偶発的呼吸を行うことがあるが、これは無呼吸の一つと考えることができる。本発明のある態様では、無呼吸は被験体が活性化合物にそれ以上暴露されなくなるまで継続する。 本発明のいくつかの態様では、有効量は、LD50として表すことができるが、これは動物の集団の半数を殺す(50%死亡率をもたらす)投与用量を意味する「半数致死用量」を指す。よりさらには、さらなる態様では、有効量は生物物体の重量に無関係である(「重力非依存的」)。齧歯類およびヒトでは、例えばH2SガスのLD50は、有害事象が発生する前は、おおよそ700ppmである。よりさらには、本発明のいくつかの態様では、生存能力の上昇は一般的により長く生きることを指し、これは本発明の一つの態様である。 本発明は、生物に活性化合物の有効量を投与することを含む、生物に無呼吸を誘導する方法にも関係する。ある態様では、生物もまた、活性化合物の結果として骨格筋運動を示さない。生物はヒトを含む哺乳類でよいことが特に企図される。別の態様では、有効量は致死濃度と考えられる濃度を超える。さらなる態様では、暴露時間が約、少なくとも約、または最大でも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60秒、1、2、3、4、5分、またはそれ以上(あるいはあるいはそこから導き出せる任意の範囲またはこの開示に明記されているその他の期間)であっても、濃度は致死量でよい。特定の態様では、哺乳類は少なくとも約600ppmの、H2Sなどの活性ガス化合物に暴露される。 これに加えて、ある態様では、処置を必要とする動物を同定する段階が存在する。別の態様では、生物の無呼吸を観察する段階が存在する。よりさらなる態様では、方法は、生物から血液サンプルを得る段階、および/または生物の血液の色を評価する段階を含む。H2Sへの暴露により動物の血液の色が変わることが観察されている;血液は鮮血色からより濃い、赤ワイン色に、さらに赤レンガ色になる。色の評価は、任意の機器または機械を使わず目視で行うことができ、一方他の態様では、分光光度計などの機器を用いることができる。さらには、血液サンプルは、生物から得ることができ、それについて別のタイプの分析を行うことができる。あるいは、血液サンプルは必要ないが、その代わりにサンプルなしに血液を評価することができる。例えば、指でIRまたは可視光を照射する改良型パルスオキシメータを用いて、血液の色変化をモニタリングできる。 ある態様では、生物物体は、スタシスまたはプレスタシスに導かない活性化合物の有効量に暴露される。いくつかの態様では、活性化合物は存在しているが、酸素消費量または二酸化炭素産生の低下を示す証拠は存在しない。 さらなる態様では、生物は睡眠中に活性化合物に暴露することができる。よりさらには、上で検討したように、暴露は、毎日(少なくとも1日1回の暴露を意味する)など定期的でよい。 いくつかの態様では、活性化合物は、噴霧器によって被験者に提供されることが特に企図される。これは、本発明の任意の態様と共に用いることができる。ある例では、噴霧器は出血性ショックの処置に用いられる。さらなる態様では、活性化合物は単回用量として被験体に提供される。特別な例では、単回用量または複数回用量が被験体に無呼吸を誘導する用量である。いくつかの態様では、被験体には、少なくとも約1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000ppm、またはそれ以上のH2Sガスが与えられる。暴露時間は、約、またはほぼ最大で10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1分またはそれ未満(あるいはそこから導き出せる任意の範囲)を含む、本明細書内で論じられる任意の時間でよい。 さらなる態様では、活性化合物に暴露後、生物物体の代謝速度は変わることがある。ある態様では、生物物体のRQ比(CO2産生/O2消費)は、活性化合物に暴露した後で変化する。これは、初回暴露または暴露を反復した後、あるいは急性暴露後に起こることがある。いくつかの態様では、RQ比は暴露後に低下する。この低下は、約、少なくとも約、または最大でも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80%、またはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲の低下であろう。低下は、O2消費に対するCO2産生の減少によるO2消費の増加の結果であろう。 いくつかの態様では、そのRQ比が暴露後に変化すること以外、活性化合物に暴露された生物物体には生理学的変化は観察されない。それゆえに、本発明のいくつかの態様では、方法は被験体のRQ比を測定することを含む。これは、活性化合物への暴露の前、および/または後でもよい。 しがって、スタシスが誘導される本発明のいくつかの態様では、本発明の方法のさらなる段階は、スタシスの状態にある関連する生物物体を維持することである。これは、生物物体を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露し続けること、および/または生物物体を非生理学的温度またはその他の酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物に暴露することによって達成できる。あるいは、生物物体は、保存剤または保存液に入れても、あるいは酸素正常状態または低酸素状態に暴露してもよい。生物物体は、約、少なくとも約、最大でも約30秒、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2、3、4、5週、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年またはそれ以上および任意の組み合わせ、あるいはそこから導き出せる任意の範囲でスタシスで維持することができることが企図される。よりさらには、温度を変更することに加えて、またはそれに代わって、圧力の変化または凍結保護物質もしくは凍結保存環境(例えばグリセロールを含有するもの)を達成するなどの環境の別の変化を実施できることが企図される。 動物全体に関する「スタシス」および細胞または組織に関する「スタシス」は、異なる長さのスタシス時間を必要とすることがあることが認識されるだろう。したがって、ヒト被験体、例えば外科的処置、悪性低体温症に対する処置、または外傷性の被害を受けている被験体に関しては、12、18、または24時間までのスタシス時間が一般的に企図される。ヒト以外の動物被験体、例えば商業目的で発送または保管されているヒト以外の動物に関しては、2または4日間、2または4週間、あるいはそれ以上の期間のスタシスが企図される。 用語「暴露する」は、その通常の意味に従って用いられ、生物物体が酸素アンタゴニストまたは他の活性物質の作用を受けるようにすることを示す。これは、いくつかの態様では、生物物体を酸素アンタゴニストまたは活性化合物と接触させることによって達成できる。別の態様では、これは、生物物体を、酸素アンタゴニストでも酸素アンタゴニストでなくともよい活性化合物と接触させることによって達成される。インビボの細胞、組織、または臓器の場合、「暴露する」は、これらの物体を、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物と接触できるように「さらすこと(to lay open)」をさらに意味することもある。これは、例えば手術的に行うことができる。酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物への生物物体の暴露は、アンタゴニストの中での、もしくはアンタゴニストとの(浸漬を含む)インキュベーション、アンタゴニストの潅流もしくは注入、酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物と一緒の生物物体の注射、または酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物を生物物体に作用させることによって行える。これに加えて、動物全体のスタシスが望ましい場合は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の使用に関しては、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の吸入または摂取、あるいは他の任意の薬学的投与経路が企図される。さらには「提供する」は、その通常かつ平易な意味で用いられており、「供給する」ことを意味する。化合物は生物物体にある形で提供することができ、化学的反応によってその形を活性化合物に変換されることが企図される。用語「提供する」は、本発明に従った用語「有効量」と関連した場合の用語「暴露する」を含む。 いくつかの態様では、有効量は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の致死未満量として特徴付けられる。細胞、組織、または臓器(生物全体ではない)のスタシス誘導との関連では、「致死未満量」は、投与24時間以内に、生物物体中の少なくとも大部分の細胞に死をもたらす酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の量の半量より少ない量の酸素アンタゴニストまたは活性化合物の単回投与を意味する。生物全体のスタシスが望ましい場合には、「致死未満量」は、投与24時間以内に生物に死をもたらす酸素アンタゴニストの量の半量より少ない量の酸素アンタゴニストまたは活性化合物の単回投与を意味する。別の態様では、有効量は、酸素アンタゴニストまたは活性化合物の近致死量として特徴付けられる。同様に、細胞、組織、または臓器(生物全体ではない)のスタシス誘導との関連では、「近致死量」は、投与24時間以内に、少なくとも大部分の細胞に死をもたらす阻害剤の量の25%以内である酸素アンタゴニストまたは活性化合物の単回投与を意味する。生物全体のスタシスが望ましい場合は、「近致死量」は、投与24時間以内に生物に死をもたらす阻害剤の量の25%以内である酸素アンタゴニストまたは活性化合物の単回投与を意味する。いくつかの態様では、致死未満量は、所定量の酸素アンタゴニストまたは活性化合物を生物物質に投与することによって投与される。これは、任意の活性化合物に対し実施できることが特に企図される。 さらには、いくつかの態様では、有効量は酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の超致死量として特徴付けられる。細胞、組織、または臓器(生物全体ではない)のスタシス誘導との関連では、「超致死量」は、投与24時間以内に、生物物体中の少なくとも大部分の細胞に死をもたらす活性化合物の量の少なくとも1.5倍(1.5x)である活性化合物の単回投与を意味する。生物全体のスタシスが望ましい場合は、「超致死量」は、投与24時間以内に生物に死をもたらす活性化合物の量の少なくとも1.5倍である活性化合物の単回投与を意味する。超致死量は、投与24時間以内に生物物体(または生物全体)中の少なくとも大部分の細胞に死をもたらす活性化合物の量の、約、少なくとも約、または最大でも約1.5x、2x、3x、4x、5x、10x、20x、30x、40x、50x、60x、70x、80x、90x、100x、150x、200x、250x、300x、400x、500x、600x、700x、800x、900x、1000x、1100x、1200x、1300x、1400x、1500x、1600x、1700x、1800x、1900x、2000x、3000x、4000x、5000x、6000x、7000x、8000x、9000x、10,000x、またはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。 生物物体に提供される活性化合物の量は、約、少なくとも約、または最大でも約mg、mg/kg、またはmg/m2、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。または、前記量はmMまたはM、あるいはそこから導き出せる任意の範囲として表すことができる。 いくつかの態様では、有効量は、投与された酸素アンタゴニストまたは活性化合物の量を、単独または組み合わせでのモニタリングによって、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の投与期間をモニタリングによって、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の投与に対する生物物体の生理学的反応(例えば脈拍、呼吸、疼痛反応、運動もしくは運動性、細胞のエネルギー産生もしくはレドックス状態などの代謝パラメータ等)をモニタリングによって、ならびにその反応に於ける変化に関し予め定められていた下限および上限値が測定された時等には、化合物の投与を減量、中断、または中止することによって、投与される。よりさらには、これらの段階は、本発明の任意の方法に於いて、追加的に実施できる。 スタシス状態にあるか、またはスタシスを経験した組織は、多くの応用に用いることができる。それらは、例えば、輸血または移植(臓器移植を含む治療応用);研究目的;スタシスを誘導するその他化合物を同定、特徴付け、または製造するためのスクリーニングアッセイ;それら組織を得たサンプルの試験(診断応用);それらを得た生物に戻される組織の保存または損傷防止(保護的応用);および輸送または貯蔵中のそれらの保存、または損傷防止に用いることができる。そのような応用および他の使用の詳細は、以下に記載される。用語「単離された組織」は、生物内に存在していない組織を意味する。いくつかの態様では、組織は、臓器全体または一部である。用語「組織」および「臓器」はそれらの通常かつ平易な意味に用いられる。組織は細胞から構成されているが、用語「組織」は、一定の構造物体を形作っている類似細胞の集合体を指すことが理解されよう。よりさらには、臓器は特定のタイプの組織である。 本発明は、以下を含む、単離された組織にスタシスを誘導する方法に関する:a)スタシスが望まれる組織を特定する段階;およびb)スタシスを導入するために組織を酸素アンタゴニストの有効量に暴露する段階。 本発明の組成物、方法、および製造物は、生物物体に用いることができ、生物物体はそれを得たドナー生物(自己)または別のレシピエント(異種)被験体に戻されるだろう。いくつかの態様では、生物物体は、ドナー生物から直接得られる。別の態様では、生物物体は酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露する前に、培養される。いくつかの状況では、生物物体は、生物物体回復前に、生物物体保存を補助するために実施される技術である膜型人工肺による酸素供給を受けたドナー生物から得られる。よりさらには、方法は、スタシスが誘導された生物物体を生きているレシピエント生物に投与する段階、または移植する段階を含む。 いくつかの態様では、回復され、次に移植される臓器または組織は、ドナー被験体の中に存在する状態のまま酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露される。いくつかの例では、ドナーの脈管構造を用いて臓器または組織を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露することが企図される。これは、心臓がまだ拍動し続けているか、またはポンプ、カテーテル、もしくはシリンジを用いて酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物を脈管構造に投与し、臓器または組織に送達できる場合に可能である。 本発明の方法は、組織を酸素アンタゴニストまたは組織がスタシス状態になるのに有効な期間、低酸素状態を作り出す活性スタシス化合物とインキュベートする段階を含む、単離された組織にスタシスを誘導することにも関する。 スタシス状態の細胞、またはスタシスを経験した細胞は、様々な応用に用いることができる。それらは、例えば、輸血または移植(治療応用);研究目的;スタシスを誘導するその他化合物を同定、特徴付け、または製造するためのスクリーニングアッセイ;細胞を得たサンプルの試験(診断応用);それらを採取した生物に戻される細胞の保存、または損傷防止(保存応用);および輸送または貯蔵中のそれらの保存、または損傷防止に用いることができる。このような応用およびその他使用の詳細を以下に説明する。 本発明は、以下を含む、生物から分離された一つまたは複数の細胞にスタシスを誘導する方法に関する:a)スタシスが望まれる細胞を特定する段階;および b)該細胞を有効量の酸素アンタゴニストまたは活性化合物に暴露してスタシスを誘導する段階。 細胞は、任意の酸素利用細胞でよいことが企図される。細胞は真核生物細胞でも原核生物細胞でもよい。ある態様では、細胞は真核生物細胞である。より具体的には、いくつかの態様では、細胞は哺乳類細胞である。本発明での使用に企図される哺乳類細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、フェレット、ウシ、ヒツジ、およびウマ由来の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。 さらには、本発明の細胞は二倍体でよいが、いくつかの例では、細胞は半数体(性細胞)である。これに加えて、細胞は多数体、異数体、または無核体でよい。細胞は特定の組織または臓器からのものでよく、例えば:心臓、肺、腎臓、肝臓、骨髄、膵臓、皮膚、骨、静脈、動脈、角膜、血液、小腸、大腸、脳、脊髄、平滑筋、骨格筋、卵巣、精巣、子宮、および臍帯からなる群由来のものでよい。よりさらには、細胞はまた、次の細胞タイプの一つとして特徴付けることもできる:血小板、骨髄球、赤血球、リンパ球、脂肪細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、内分泌細胞、グリア細胞、ニューロン、分泌細胞、バリアー機能細胞、収縮細胞、吸収細胞、粘膜細胞、角膜細胞(角膜由来)、幹細胞(全能、多能、または多分化能)、未受精または受精卵細胞、あるいは精子。 本発明は、関心対象の生物物体に於ける代謝性要求、酸素必要量、温度、またはそれらの任意の組み合わせを低下させることによって、有害状態下での生物物体の生存能力を高め、かつ/またはそれらに対する損傷を軽減するための方法、組成物、および器具も提供する。本発明のいくつかの態様では、生物物体の生存能力は、それに有効量の保護的代謝作用物質を提供することによって高められる。作用物質は、作用物質に暴露していない生物物体に対して、生物物体を保護または生物物体への損傷を軽減すること、瀕死の状態もしくは老化から生物物体の全体もしくは一部を保護すること、および/または生物物体の全体もしくは一部の寿命を延長することによって、生存能力を高める。または、いくつかの態様では、作用物質は、作用物質が無い場合には生存できない組織および/または臓器の生存期間を延長する。 「保護的代謝作用物質」は、それに暴露するかまたは接触した生物物体の代謝を可逆的に変えることができ、かつ該生物物体の生存能力を促進または高める、物質または化合物である。 ある態様では、保護的代謝活性物質は、処理された生物物体をスタシスに誘導する;一方、他の態様では、保護的代謝活性物質は、それ自体は、処理された生物物体に直接スタシスを誘導しない。保護的代謝活性物質、および他の活性化合物は、生物物体自体にスタシスを誘導することなく、むしろ細胞の呼吸およびそれに対応する代謝活性を、酸素消費量または二酸化炭素産生量で約50%低下より低いレベルまで下げることによって、生物物体の生存能力を高め、かつ/または生物物体に対する損傷を軽減できる。これに加えて、このような化合物は、傷害または疾患状態に反応して、例えば生物物体を誘導してプレスタシス状態を達成することによって、生物物体をより素早く、容易に、または効果的にスタシス状態に移すか、または達成することができる。 生存能力は、有害状態、即ち生物物体に対し有害かつ不可逆的な損傷または傷害が存在する状態に生物物体が在る時の生存能力を含む。有害状態としては、以下の場合を含むがこれらに限定されない:環境内で酸素濃度が低下している場合(高所または水中などの低酸素または無酸素環境);以下の原因であり得る、生物物体がその酸素を受け取ることができない場合(虚血中など) i) 血管閉塞(例えば心筋梗塞、および/または卒中)の結果としての臓器(例えば心臓、脳、および/もしくは腎臓)への血流減少、ii) 心臓/肺バイパス手術中に起こる体外血液分流(例えば、心肺バイパスの結果として、心臓または脳組織が損傷を受ける「ポンプヘッド症候群」)、あるいはiii) 外傷(出血性ショックまたは手術)による失血の結果;低体温状態、この場合、生物物質が、生物物質の適切な酸素化が維持できなくなるような寒冷環境または生物物質の低温状態に暴露することにより亜生理学的温度に付される;高体温状態、この場合、生物物質が、高温環境または悪性熱などによる生物物質の高温状態に暴露することによって、亜生理学的温度に付される;重金属過剰状態、例えばヘモクロマトーシス、後天性鉄過剰、鎌状赤血球貧血、若年性ヘモクロマトーシス・アフリカ鉄沈着症、地中海貧血、晩発性皮膚ポルフィリン症、鉄芽球性貧血、鉄欠乏性貧血、および慢性疾患の貧血などの鉄疾患(遺伝性および環境性)。保護的代謝作用物質は、本発明のある態様では、酸素アンタゴニストであることが企図される。ある別の態様では、酸素アンタゴニストは保護的代謝作用物質でないことが企図される。本発明の別の態様では、一または複数の化合物を用いて、生物物体の生存能力を高め;生物物体の代謝および/または活性を可逆的に阻害し;生物物体の酸素要求を下げ;有害条件下での生物物体への損傷を軽減または予防し;生物物体への損傷または傷害を予防または軽減し;生物物体のエージングまたは老化を予防し;および、酸素アンタゴニストに関する応用全体を通して記載されているような治療的便益を提供することができる。スタシス誘導に関係する態様は、これらその他態様にも同様に応用できることが企図される。したがってスタシスに関連して論じる態様は、これらその他の態様にも実施できる。 スタシスの誘導、またはこれらの任意のその他態様に用いられる活性化合物は、それらの所望効果を、それらが生物物体と関連している時だけ導き、もしくは提供でき(即ち、持続的効果を持たない)、および/またはそれらは、生物物体がもはやそれに暴露されなくなった後24時間を超えてそれらの効果を提供できる。よりさらには、これは、活性化合物の組み合わせを用いた場合にも当てはめることができる。 ある態様では、生物物体は、生物物体による二酸化炭素産生の速度もしくは量を少なくとも2倍、約、少なくとも約、または最大で約3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、25-、30-、35-、40-、45-、50-、100-、200-、300-、400-、500-倍、またはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲で低下させる量の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露させられる。または、本発明の態様は、生物物体による二酸化炭素産生の速度または量の、約、少なくとも、または最大で約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、またはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲で低下に関して論じることができることが企図される。さらに別の態様では、生物物体は、生物物体による酸素消費の速度または量を、少なくとも2倍、約、少なくとも、または最大で約3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、25-、30-、35-、40-、45-、50-、100-、200-、300-、400-、500-倍、もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲で低下させる量の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露させられる。または、本発明の態様は、生物物体による酸素消費の速度または量の、約、少なくとも、または最大で約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲で低下に関して論じることができることが企図される。さらに別の態様では、生物物体は運動または運動性を少なくとも10%まで、約、少なくとも、または最大で約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、または100%、あるいはそこから導き出せる任意の範囲まで低下させる量の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露される。別の態様と同様に、これらの特徴およびパラメータは、スタシス状態に誘導される生物物体に関係する。しがって、スタシスが生物の心臓で導かれる場合は、これらのパラメータは心臓について評価され、生物全体については評価されない。生物との関係では、およそ約8倍の酸素消費低下は、「冬眠」と呼ばれるスタシスの種類である。よりさらには、この応用では、およそ約1000倍の酸素消費低下は、「仮死状態」と見なせることが理解されるだろう。スタシスに関係する本発明の態様は、適切であれば、冬眠または仮死状態のレベルで達成できることが理解されるだろう。「-倍の低下」は、低下した量に関係することが理解される;例えば、冬眠していない動物が800単位の酸素を消費する場合、冬眠中の動物は100単位の酸素を消費する。 これに加えて、本発明のいくつかの態様では、細胞の呼吸を低下させるための方法が提供され、これはスタシスに達するのに必要な程度のものでもそうでなくともよい。本発明の方法では、約、少なくとも約、または最大で約1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%までの酸素消費の低下が提供される。これはまた任意の細胞呼吸指標の形で表現および評価することもできる。 生物物体は、一つまたは複数の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に、一回を超えて暴露できることが企図される。生物物体は、生物物体を複数回暴露する場合、その間に小休止があることを意味しながら(活性化合物への暴露に関して)、一つまたは複数の活性化合物に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上暴露できることが企図される。 活性化合物は、傷害性の発作または疾患状態が発生または進行する前、最中、後、またはそれらの組み合わせに投与できることも企図される。ある態様では、生物物体の活性化合物への予備処置は、生存能力を高め、かつ/または傷害性または疾患性の発作からの損傷を軽減するのに十分である。予備処置は、傷害性または疾患性の発作が発生または検出される前に、活性化合物に生物物体を暴露することと定義される。前処置については、発作の発生時またはその前後に暴露を中止しても、または発作の発生後も暴露を継続することもできる。 ある態様では、活性化合物への予備暴露(即ち予備処置)を含む方法を用いて、傷害性または疾患性の発作が 1) 事前に予定されているかもしくは決定されているか、または 2) 事前に発生するらしいと予想されている状態を処置する。1を満たす条件の例は、突発的または作業の結果として失血が起こることがある大手術、血液の酸素化に悪影響が及ぶかまたは血管への血液供給量が減ることがある(冠動脈バイパスグラフト(CABG)手術の状況などの)心肺バイパス、あるいは輸送および臓器移植が必要なレシピエントへの移植のためにドナーの臓器を除去する前のドナー臓器の処置が挙げられるが、これらに限定されない。2を満たす状態の例としては、傷害または疾患進行のリスクを伴う状態(例えば不安定狭心症、血管形成術後、出血性動脈瘤、出血性卒中、大きな外傷または失血後)、あるいは医学的診断試験を用いてリスクが診断できる状態が挙げられる、これらに限定されない。 活性化合物への暴露は、暴露が傷害性または疾患性発作の発生または検出後に行われて治療効果を達成する場合は、生存能力を高めるか、または損傷を軽減できる。活性化合物への暴露は、短時間でも長時間でもよい。暴露時間は、スタシス活性またはプレスタシスの指標(例えば血液pCO2、pO2、pH、乳酸、もしくはスルホヘモグロビンのレベル、または体温)に到達するのに必要なだけの長さでも、それよりも長くともよい。ある態様では、暴露は外傷性傷害(医原性および/または非医原性障害を含む)後に生物に対し行われ、これを用いて生物全体またはその中の傷害された組織にスタシスまたはプレスタシスを誘導し、処置前、最中、および/または後に、例えば虚血および再潅流傷害などの傷害を防止または最小限に止める。 一つの態様では、本発明は、手術前に哺乳類をプレスタシスに入るのを誘導するのに十分な量の硫化水素または他の活性化合物を哺乳類に提供することを含む、手術による細胞損傷を哺乳類が被らないように保護する方法を含む。手術は、選択的(elective)、計画的、または、例えば心肺手術などの緊急手術でもよい。硫化水素は、例えば静脈内または吸入を含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって投与できる。 別の態様では、本発明は、疾患または有害な医学的状態が発生または進行する前に、哺乳動物がプレスタシスまたはスタシスに入るのを誘導するのに十分な量の硫化水素または他の活性化合物を哺乳類に提供することを含む、疾患または有害な医学的状態による細胞損傷を哺乳類が被らないように保護する方法を含む。この態様は、不安定狭心症、血管形成術後、出血性動脈瘤、出血性卒中もしくはショック、外傷、および失血を含む様々な疾患および有害な医学的状態と関係して用いることができる。 特別な態様では、本発明は、出血により動物が死なないようにするのに十分な量の硫化水素または他の活性化合物を哺乳類に提供することによって、哺乳類などの生物が出血によって死亡する、または出血の結果としての不可逆的な組織損傷を被ることを防止する方法に関係する。さらなる態様では、生物は出血性ショックに陥るものの、大量出血によって死亡することはないだろう。用語「出血」および「大量出血」は互換的に用いられて、血管からの血液の放出を指す。これには内出血および外出血、傷害による出血(内的原因であっても、銃創、刺し傷、物理的外傷等の外的な物理的原因でもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。 よりさらには、本発明のさらなる態様は、失血または適切な血液供給の欠如などの他の細胞または組織の酸素化の欠如による、死または不可逆的な組織損傷の防止に関係する。これは、例えば、実際の失血の結果か、または細胞または組織への潅流を妨げる状態または疾患(例えば、再潅流傷害)によるものであり、これが細胞または組織への血液を遮断するか、生物の血圧を局所または全身性に下げるか、血液によって運ばれる酸素の量を減らすか、または血液中の酸素運搬細胞の数を減らす。関係する可能性のある状態および疾患としては、血液凝固および塞栓症、嚢胞、増殖、腫瘍、貧血(鎌状赤血球貧血を含む)、血友病、他の血液凝固疾患(例えばフォン・ウィルブランド病、ITP)、およびアテローム性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。このような状態及び疾患は、傷害、疾患、または状態のために、生物中の細胞または組織に低酸素または無酸素状態を必ず作り出すものも含んでいる。 いくつかの例では、半致死的集計用量(sublethal collective dose)または非致死的集計用量(nonlethal collective dose)が生物物体に投与される。上記で論じたように、生物全体ではない生物物体へのスタシス誘導に関連しては、「半致死的集計用量」は、合計しても、一回の投与で、24時間以内に少なくとも大部分の細胞を死滅させる活性化合物量の半分よりも少ない活性化合物を複数回投与した時の量を意味する。他の態様では、有効量は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の近致死的用量として特徴づけられる。同様に、「近致死的集計用量」(near-lethal collective dose)は、一回の投与で24時間以内に少なくとも大部分の細胞を死滅させる活性化合物量の25%以内である、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物を複数回投与した時の量を意味する。また、「超致死的集計用量」(supra-lethal collective dose)は、一回の投与で24時間以内に少なくとも大部分の細胞(または生物全体)を死滅させる活性化合物量の少なくとも1.5倍である、活性化合物を複数回投与した時の量を意味する。複数回投与は、生物全体にスタシスを誘導するために投与できることが企図される。「半致死的集計用量」、「近致死的集計用量」、および「超致死的集計用量」の定義は、先に論じた生物全体へのスタシスに関する個別用量に基づいて推定できる。 生物物体は、一つより多い酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露または接触させてもよい。生物物体は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれ以上の酸素アンタゴニストまたは活性化合物、あるいはそこから導き出せる任意の範囲を含む、少なくとも一つの活性化合物に暴露できる。複数の活性化合物を用いる場合、用語「有効量」は、活性化合物の集計量を指す。例えば、生物物体を第1活性化合物に暴露してから、次に第2活性化合物に暴露することができる。または、生物物体は、同時または重複する形で、一つより多い活性化合物に暴露できる。さらには、一つより多い活性化合物を、単一組成物のように含ませ、または一つに混合し、これに生物物体を暴露できることが企図される。したがって、いくつかの態様では、本発明の組成物、方法、および製造物に活性化合物の組み合わせを用いることが企図される。 生物物体は、吸入、注射、カテーテル法、液浸、洗浄、潅流、局所適用、吸収、吸着、または経口投与により、活性化合物を提供されまたは活性化合物に暴露されることができる。よりさらには、生物物体は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹膜内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、鼻腔内に、髄膜内に、硝子体内に、膣内に、内部直腸に、局所に、腫瘍内に、筋肉内に、腹膜内に、眼球内に、皮下に、結膜下に、膀胱内に、粘膜内に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、経口的に、局所に、局部に、吸入によって、注射によって、注入によって、持続性点滴によって、局所化潅流によって、カテーテルを介して、または洗浄を介して、生物物体への投与によって活性化合物を提供されまたは活性性化合物に暴露されることができる。 本発明の方法および器具は、いくつかの態様では酸素アンタゴニストである保護剤を含む。そしてさらなる態様では、酸素アンタゴニストは還元剤である。これに加えて、酸素アンタゴニストはカルコゲニド化合物と特徴付けることができる。活性化合物は、保護剤でもよいことが理解されるだろう。よりさらには、任意のカルコゲニド化合物は、それが酸素アンタゴニストであるか否かにかかわらず、それが本発明の目的を達成する限りにおいては、活性化合物と考えることができる。 ある態様では、カルコゲニド化合物は硫黄を含み、一方、別の態様では、それはセレン、テルル、またはポロニウムを含む。ある態様では、カルコゲニド化合物は、一つまたは複数の露出したスルフィド基を含有する。このカルコゲニド化合物は、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の露出したスルフィド基、あるいはそこから導き出せる任意の範囲を含有することが企図される。特定の態様では、このスルフィド含有化合物はCS2 (二硫化炭素)である。 よりさらには、本発明のいくつかの方法では、スタシスは、次式(式Iと呼ぶ)の化学構造を有する還元剤に細胞を暴露することによって細胞で誘導される:式中、 Xは、N、O、Po、S、Se、またはTeであり; Yは、NまたはOであり; R1は、H、C、低級アルキル、低級アルコール、またはCNであり; R2は、H、C、低級アルキル、低級アルコール、またはCNであり; nは、0または1であり; mは、0または1であり; kは、0、1、2、3、または4であり;かつ pは、1または2である。 用語「低級アルキル」および「低級アルコール」はそれらの通常の意味で用いられており、記号は化学元素を指すのに用いられる記号である。この化学構造は、「還元剤構造」とも呼ばれ、この構造を有する任意の化合物は、還元剤構造化合物と呼ばれる。さらなる態様では、還元剤構造中では、kは0である。さらには、別の態様では、R1および/またはR2基はアミンまたは低級アルキルアミンでよい。他では、R1および/またはR2は単鎖アルコールまたは単鎖ケトンでよい。これに加えて、R1および/またはR2は直鎖または分岐鎖の架橋でよく、かつ/または化合物は環式化合物でよい。そしてさらなる態様では、Xはまたハロゲンでよい。用語「低級」は、1、2、3、4、5、もしくは6個、またはそこから導き出せる任意の範囲の炭素原子を指すことを意味する。よりさらには、R1および/またはR2は、C2〜C5エステル、アミド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エーテル、ニトリル、アンヒドリド、ハライド、アシルハライド、スルフィド、スルホン、スルホン酸、スルホキシド、および/またはチオールを含む他の小型有機基でもよい。このような置換基は、R1および/またはR2に関して明確に企図される。ある他の態様では、R1および/またはR2は、上記小型有機基の単鎖型でよい。「単鎖」とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素分子、あるいはそこから導き出せる任意の範囲を意味する。 還元剤構造化合物は、いくつかの例ではカルコゲニド化合物のことがあることが企図される。ある態様では、カルコゲニド化合物は、暴露されたカルコゲニドを持つアルキル鎖を有する。他では、カルコゲニド化合物は、生物物体内に取り込まれると露出するようになるカルコゲニドを有する。この点に関してカルコゲニド化合物は、酸素アンタゴニストなどのプロドラッグに似ている。したがって、カルコゲニド化合物への生物物体の暴露に続いて、化合物上の一つまたは複数の硫黄、セレン、酸素、テルル、ポロニウム、またはウンウンヘキシウム分子が利用可能となる。この場合、「利用可能」とは、硫黄、セレン、酸素、テルル、ポロニウム、またはウンウンヘキシウムが負の電荷を保持することを意味する。 ある態様では、カルコゲニドは塩であり、好ましくはカルコゲンが-2酸化状態にある塩である。本発明の態様に包含されるスルフィド塩としては、硫化ナトリウム(Na2S)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHS)、硫化カリウム(K2S)、硫化水素カリウム(KHS)、硫化リチウム(Li2S)、硫化ルビジウム(Rb2S)、硫化セシウム(Cs2S)、硫化アンモニウム((NH4)2S)、硫化水素アンモニウム(NH4)HS、硫化ベリリウム(BeS)、硫化マグネシウム(MgS)、硫化カルシウム(CaS)、硫化ストロンチウム(SrS)、硫化バリウム(BaS)等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の態様は、同様の様式で、対応するセレニドおよびテルニド塩を含むが、これらに限定されない。本発明は、カルコゲニド塩(塩であるカルコゲニド化合物)を薬学的に許容される担体と一緒に含有するか、または薬学的に許容される製剤として調製された組成物を含むことが特に企図される。よりさらなる態様では、還元剤構造化合物は、H2S、H2Se、H2Te、およびH2Poからなる群より選択される。いくつかの例では、式(I)の還元剤構造は、SであるXを有する。他では、XはSeであるか、またはXはTeであるか、またはXはPoであるか、またはXはOである。さらには、いくつかの態様では、還元剤構造中のkは0または1である。ある態様では、還元剤構造化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルフィド(DMS)、一酸化炭素、メチルメルカプタン(CH3SH)、メルカプトエタノール、チオシアナート、シアン化水素、メタンチオール(MeSH)、またはCS2である。特定の態様では、酸素アンタゴニストは、H2S、H2Se、CS2、MeSH、またはDMSである。これら分子のおおよそのサイズの化合物が特に企図される(つまり、それらの分子量の50%以内)。 ある態様では、H2Seなどのセレン含有化合物が用いられる。H2Seの量は、本発明のいくつかの態様では、1〜1000ppbの範囲内でよい。硫黄含有化合物の関係で論じる任意の態様は、セレン含有化合物で実施できることがさらに企図される。これは、硫黄含有分子中の一つまたは複数の硫黄原子を対応するセレン原子で置換することを含む。 本発明のさらなる局面は、式IVで表される化合物を包含する:式中、 Xは、N、O、P、Po、S、Se、Te、O-O、Po-Po、S-S、Se-SeまたはTe-Teであり; nおよびmは、独立に、0または1であり;ならびに 式中、R21およびR22は、独立に、水素、ハロ、シアノ、リン酸、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミノアルキル、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシハロアルキル、アルキルスルホン酸、チオスルホン酸、アルキルチオスルホン酸、チオアルキル、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、カルボニル、アルキルカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルキルチオカルボニル、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アルキルアミノチオカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノアルキルチオ、ヒドロキシアルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、スルホン酸、スルホン酸アルキルエステル、チオ硫酸またはスルホンアミドであり;ならびに Yは、シアノ、イソシアノ、アミノ、アルキルアミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアルキル、アルキルカルボニルアミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジノ、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロ アリールオキシ、シロアルキルオキシ、カルボニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ、ハロアルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、カルボニルペルオキシ、アルキルカルボニルペルオキシ、アリールカルボニルペルオキシ、リン酸、アルキルリン酸エステル類、スルホン酸、スルホン酸アルキルエステル、チオ硫酸、チオスルフェニル、スルホンアミド、-R23R24であり、ここで、R23は、S、SS、Po、Po-Po、Se、Se-Se、Te、またはTe-Teであり、およびR24は、本明細書でR21についての定義のとおりであるか、あるいは Yは:であり、式中、 X、R21およびR22は、本明細書に定義のとおりである。 よりさらには、本発明のいくつかの態様では、化学的または酵素的手段などにより生物物体への暴露によって、式IまたはIVの化合物の活性型になる前駆体化合物が生物物体に提供されることが企図される。これに加えて、化合物は、遊離ラジカルの形、または負に帯電した、正に帯電した、または多価の種の形をした化合物の塩として生物物体に提供することもできる。いくつかの化合物は、式Iおよび式IVの化合物の両方としての資格を与え、この様な場合、「式Iまたは式IV」という表現の使用は、このような化合物を排除することを暗示するものではない。 式Iまたは式IVの構造により区別される化合物は、ある態様では、酸素アンタゴニスト、保護的代謝剤、またはその前駆体、プロドラッグ、もしくは塩としても特徴付けることができる。化合物は、それが本発明の特定の方法を達成できる限りにおいては、そのようなものとして特徴付けることも、または本発明の中で用いられる化合物であるものに制限する必要もないことがさらに企図される。いくつかの他の態様では、化合物はカルコゲニド化合物と考えられる。式Iもしくは式IVの構造により同定されるか、または本開示に記載されている、任意の化合物は、本発明の方法、組成物、および器具の中で、酸素アンタゴニストに代わって、またはそれに追加して用いることができる;同様に、式Iもしくは式IVを有するか、さもなければ本開示に記載されている任意の構造に関して論じられる任意の態様は、酸素アンタゴニストの代わり、またはそれに追加して用いることができることが特に企図される。よりさらには、式Iもしくは式IVの構造によって同定されるか、または本開示に記載されている任意の化合物は、本明細書に記載されている任意の酸素アンタゴニストまたは任意の他の活性化合物と組み合わせることができる。このような化合物の任意の組み合わせは、本発明の方法、組成物、および他の製造物の中で、連続的に(重複もしくは重複しない)、および/または重複して連続する形で(一つの化合物の投与を開始し、それが完了する前に別の化合物の投与を開始する)提供されるか、または一緒に調合されて、本明細書に記載の所望効果を達成できることも企図される。 ある態様では、式Iまたは式IVの構造を有する一つより多い化合物が提供される。ある態様では、同一式(即ち式Iまたは式IV)由来の構造を持つ複数の異なる化合物が用いられるが、一方、別の態様では、複数の化合物を用いる時、それらは異なる式に由来する。 特別な態様では、複数の活性化合物が用いられ、その内の化合物の一つが二酸化炭素(CO2)であることが企図される。少なくとも一つの他の化合物は、いくつかの態様での式Iおよび/または式IV化合物でもあることが企図される。ある例では、二酸化炭素は、H2S、またはH2S前駆体と組み合わせて(一緒に、連続して、または重複する形で連続的に)生物物体に提供される。 生物物体に暴露できる二酸化炭素の量は、約、少なくとも約、または最大で約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30%、またはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。ある態様では、量はppmの単位で表すことができ、例えば、約、少なくとも約、または最大で約ppmまたはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲、ならびに同等のモルで表わされる。これら濃度は、気体の形の任意の他の活性化合物にも応用できることが企図される。 別の態様では、活性化合物は硫化ナトリム、チオメトキシドナトリウム、システアミン、チオシアン酸ナトリウム、システアミン-S-リン酸塩、またはテトラヒドロチオピラン-4-オールであることが特に企図される。さらなる態様では、活性化合物はジメチルスルホキシド、チオ酢酸、セレノウレア、2-(3-アミノプロピル)-アミノエタンチオール-ジヒドロゲン-リン酸-エステル、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸エーテル、ナトリウムセレナイド、ナトリウムメタンスルフィナート、チオウレア、またはジメチルスルフィドである。これらの化合物、または式I、II、III、もしくはIVを有する任意の化合物を含む本明細書で論じる任意の他のものは、約、少なくとも約、もしくは最大で約mM、またはmmol/kg (生物物体の)、あるいはそこから導き出せる任意の範囲の量を生物物体に提供し、または投与できることが特に企図される。 名称または構造によって同定される活性化合物の任意のサブセットは、方法、組成物、および製造物に用いてよいことが特に企図される。これら化合物の任意のサブセットは、本発明の態様を構成しないものとして放棄できることも特に企図される。本発明は、一つまたは複数の活性化合物を治療有効量含む薬学的組成物にも関する。このような薬学的組成物は、薬学的に許容される組成物に調合されることが理解される。例えば、組成物は薬学的に許容される希釈剤を含んでよい。 ある態様では、薬学的組成物は、患者に投与した時に、活性化合物のCmaxまたは定常状態血漿濃度を提供して、治療有効便益をもたらす活性の有効用量を含有する。ある態様では、到達するCmaxまたは定常状態血漿濃度は、約、少なくとも約、または最大で約もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。ある態様では、H2Sなどの場合、所望のCmaxまたは定常状態血漿濃度は、約10μM〜約10mMの間、または約100μM〜約1mMの間、または約200μM〜約800μMの間である。適切な測定を行って、硫黄などの血中に存在している化合物のレベルを考察および評価できる。 ある態様では、薬学的組成物は、患者に投与した時に有効用量のH2Sを提供し、約10μM〜約10mMの間、約100μM〜約1mMの間、または約200μM〜約800μMの間のCmaxまたは定常状態血漿濃度を提供する。硫化水素の投与と硫化塩の形での投与との関係では、典型的な態様では、塩の投与は、H2Sの場合とほぼ同じ硫黄当量を投与することに基づく。適切な測定を行って、血中に存在する硫黄のレベルを考察および評価できる。 ある態様では、組成物は、気体の形をした一つまたは複数の上に特記した活性化合物を含む。別の態様では、組成物はこれら化合物の一つまたは複数の塩を含む。一つの特定の態様では、薬学的組成物は、式IもしくはIVの形をした気体、または式IもしくはIVの塩を含む。本発明のいくつかの局面では、気体の形をした、または塩であるH2Sが特に企図される。生物物体に提供される気体の量は、約、少なくとも約、または最大で約ppmもしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。または、気体の有効量は、生物物体が暴露される空気中の濃度に関して、約、少なくとも約、または最大で約、あるいはそこから導き出せる任意の範囲で表してもよい。よりさらには、いくつかの態様では、生物物体に提供される気体の量は、約、少なくとも約、または最大で約10億分の1量(ppb)あるいはそこから導き出せる任意の範囲であることが企図される。特定の態様では、生物物体に提供されるセレン化水素の量はおおよそこの規模である。 本発明のいくつかの態様では、薬学的組成物は脂質である。他所で論ずるように、組成物は、組成物中に関係化合物を溶解または気泡化した脂質でよい。いくつかの例では、薬学的組成物は医療ガスである。United Staes Food and Drug Administrationによれば、「医療ガス」は、Federal Food, Drug and Cosmetic Act (「法令」)の§201(g)(1)(21 U.S.C.§321(g)の意味する範囲内であり、かつ法令(21 U.S.C.§353(b)(1)(A)の§503(b)(1)(A)に従う薬物であり、かつ処方にしたがって製剤化されることが求められる気体である。このようにして、このような医用ガスは、適切なFDAラベルを必要とする。医療ガスは、少なくとも一つ活性化合物を含む。 本発明は、以下を含む、器具および製造物をさらに含む:包装材料、および包装材料の中に活性スタシス化合物を収容し、該包装材料はインビボ生物物体内にスタシスを誘導するために用いることができることを示すラベルを含む。 いくつかの態様では、器具または製造物は、薬学的に許容される希釈剤をさらに含む。特定の他の態様では、器具または製造物は、緩衝化剤を有する。活性化合物は第1密封容器内に収められ、薬学的に許容される希釈剤は第2密封容器に提供される。他の態様では、器具または物品は、活性化合物と希釈剤を混合するための指示を有している。これに加えて、活性化合物は、インビボ生物物体をスタシスに誘導するなどの本発明の任意の方法を達成するために再構成することができる。ラベルは、達成される結果およびその結果が必要とする患者への化合物の使用を明示することが企図される。 本発明はまた、以下を含む、一緒に包装された製造物にも関する:活性化合物、活性スタシス化合物の使用に関する以下を含む、指示:(a)スタシス処置を必要とするインビボ組織を同定すること;および(b)活性化合物の有効量をインビボ生物物体に投与すること。 本発明のさらなる態様では、活性化合物を含む医療ガス、ならびに生物物体をスタシスに誘導するための詳細、または使用および投与、または本発明の他の任意の方法を含むラベルを含む製造物が存在する。 本発明は、キットおよびこれらキットの使用方法にも関する。いくつかの態様では、スタシス処置または本発明が請求する任意の他の処置を必要とする組織部位に活性化合物を送達するための以下を含む、キットが存在する:組織部位を密封したエンベロープを形成するのに適したドレープ;酸素アンタゴニストを含む容器;およびドレープ内の注入口、ここで、活性物質を含む容器は注入口と連絡している。ある態様では、キットはドレープ内に排出口を備えており、前記排出口は陰圧源に連絡している。いくつかの例では、ドレープは、エラストマー材料を含み、かつ/またはドレープの周囲を覆う圧感受性接着剤を有している。排出口は、陰圧源と流体連絡させてもよく、陰圧源は真空ポンプであってもなくともよい。また排出口と陰圧源間を連絡する可撓性導管が存在してもよい。いくつかの態様では、キットは取り外し可能でもなくともよい、排出口と陰圧源の間が流体連絡しているキャニスターを含む。容器は、注入口と気体連絡している活性化合物を含むことが企図される。ある態様では、容器は、気体または液化ガスである活性化合物を含む。キットは、酸素アンタゴニストの入った容器と排出口との間を連絡する気化器を備えてもよい。これに加えて、キットは活性化合物の入った容器と連絡している戻り排出口を有してもよい。 特定の態様では、キット内の活性化合物は一酸化炭素、二酸化炭素、H2Se、および/またはH2Sである。ある態様では、キットまたは方法が用いられる組織部位は傷を負っている。 よりさらには、本明細書で酸素アンタゴニストとして論じる任意の化合物は、生物物体にプロドラッグの形で提供することができると一般的に理解されるが、これは生物物体または生物物体の環境内にある他の物質が該プロドッグをその活性型、即ち酸素アンタゴニストに変えることを意味する。用語「前駆体」は、「プロドラッグ」と見なされる化合物もその範囲に含むことが企図される。 酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物は、気体、半固体液体(ゲルまたはペーストなどの)、液体、または固体として提供することができる。生物物体は、一つより多いこれら活性化合物および/または一つより多い状態のその活性化合物に暴露できることが企図される。よりさらには、活性化合物は、本明細書に論ずるように、投与の固有の形態に合わせて調合できる。ある態様では、活性化合物は、静脈内送達のための薬学的に許容される調合である。 ある態様では、活性化合物は気体である。特定の態様では、気体活性化合物としては、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、硫黄、セレン、テルル、もしくはポロニウム、またはそれらの混合物が挙げられる。よりさらには、活性化合物は、気体のカルコゲニド化合物であることが特に企図される。いくつかの態様では、活性化合物は一つより多い気体を含む気体混合物である。他の気体は、いくつかの態様で、非毒性および/または非反応性気体である。いくつかの態様では、他の気体は希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、もしくはウンウンオクチウム)、窒素、亜酸化窒素、水素、またはそれらの混合物である。例えば、非活性気体は、単純に「大気」を構成する混合物でよく、それは窒素、酸素、アルゴン、および二酸化炭素、ならびにネオン、ヘリウム、メタン、クリプトン、および水素などの微量の他の分子の混合物である。典型的なサンプルは、約窒素78%、酸素21%、アルゴン0.9%、および二酸化炭素0.04%を含むが、それぞれの正確な量は変わる。本発明との関係では、「大気」は窒素を約75〜81%、酸素の約18〜約24%、アルゴンを約0.7〜約1.1%、および二酸化炭素を約0.02%〜約0.06%を含有する混合物であることが企図される。気体活性化合物は、生物物体に投与または暴露する前に、まず非毒性および/または非反応性気体を用いて希釈してよい。これに加えて、またはこれに代わって、生物物体に投与または暴露する前に任意の気体活性化合物を大気と混合するか、あるいは化合物を生物物体に大気中で投与または暴露してよい。 いくつかの例では、気体混合物は酸素も含む。本発明の別の態様では、活性化合物の気体を酸素と混合して酸素気体(O2)混合物を作る。酸素気体混合物中の酸素の量が、該混合物中の他の全ての気体の総量よりも少ない酸素気体混合物が特に企図される。 いくつかの態様では、活性化合物気体は一酸化炭素であり、一酸化炭素の量は、酸素気体混合物中の任意の酸素の量とほぼ同じかまたはこれを超える。特定の態様では、一酸化炭素は無血生物物体に用いられる。用語「無血生物物体」は、移植のための臓器などの、酸素化が脈管構造には依存しないかまたはもはや依存しない細胞および臓器を指す。好ましくは、大気は100% COであるが、しかし当業者には明らかな様にCOの量は、利用可能な酸素の量を細胞の呼吸を妨害するレベルまで下げれば、酸素以外の気体でバランスを取ることができる。この関係では、一酸化炭素−対−酸素の割合は、好ましくは85:15もしくはそれ以上、199:1もしくはそれ以上、または399:1もしくはそれ以上である。ある態様では、前記比は、約、少なくとも、または最大で約1:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1. 35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、100:1、110:1、120:1、130:1、140:1、150:1、160:1、170:1、180:1、190:1、200:1、210:1、220:1、230:1、240:1、250:1、260:1、270:1、280:1、290:1、300:1、310:1、320:1、330:1、340:1、350:1、360:1、370:1、380:1、390:1、400:1、410:1、420:1、430:1、440:1、450:1、460:1、470:1、480:1、490:1、500:1もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。 よりさらなる態様では、上記の数値は酸素の混合物および一または複数の他の気体に対する一酸化炭素の割合に関係する。いくつかの例では、その他の気体は窒素(N2)などの非反応性気体であることが企図される。したがって、本発明の他の態様では、上記の数値は、本発明の方法および器具で使用できる酸素と窒素(O2/N2)の組み合わせに対する一酸化炭素の割合に応用できる。したがって、他の気体が存在してもしなくともよいことが理解されるだろう。いくつかの態様では、CO:酸素比は、一つまたは複数の他の気体(非一酸化炭素および非酸素気体)でバランスがとられる。特定の態様では、CO:酸素比は窒素でバランスがとられる。よりさらなる態様では、COの量は、上記数値で記載されたように、大気と比較したCOの割合である。 いくつかの例では、一酸化炭素の量は、酸素の量に対する量であるが、一方、他では、それは絶対量である。例えば、いくつかの本発明の態様では、酸素の量は、標準温度および20℃の圧での空気100万部中の酸素の容積の割合の量である「百万分の一(ppm)」で表され、一大気圧および気体容積のバランスは一酸化炭素で取られる。この関係では、酸素に対する一酸化炭素の量は、一酸化炭素でバランスが取られた100万分の一で表された量に関係する。生物物体が暴露する、またはインキュベートされる大気は、一酸化炭素でバランスが取られた、少なくとも0、50、100、200、300、400、500、1000、または2000百万分の一(ppm)の酸素であり、いくつかの例では、一酸化炭素が非毒性および/または非反応性の気体と混合されることが企図される。用語「環境」は、生物物体の直近の環境、即ちそれが直接接触している環境を指す。したがって生物物質は、一酸化炭素に直接暴露されなければならず、生物物体と同じ空間に一酸化炭素の密封タンクに存在するだけでは不十分であり、本発明にしがって「環境」とインキュベートされると見なされる。または、大気は、kPaを用いて表すことができる。一般には、1気圧で100万部 = 101 kPaであると理解されている。本発明の態様では、生物物質がインキュベートまたは暴露される環境は、約、少なくとも約、または最大で約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20. 0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.5、0.90、0.95、1.0 kPaのO2もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。上記したように、このようなレベルは、一酸化炭素および/またはその他非毒性および/または非反応性規定でバランスを取ることができる。また、大気は、kPaの単位のCOレベルで定義してもよい。ある態様では、大気は、約、少なくとも約、または最大で約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、101、101.3 kPa CO、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。特定の態様では、分圧は、約または少なくとも約85、90、95、101、101.3 kPa CO、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。 サンプルを一酸化炭素にインキュベートまたは暴露する時間もまた、本発明の態様で変えることができる。いくつかの態様では、サンプルは一酸化炭素と、約、少なくとも約、または最大で約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60分、もしくはそれ以上、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日、またはそれ以上、インキュベートされるかまたは暴露される。 いくつかの態様では、本発明は一つまたは複数の活性化合物を含有する組成物および製造物に関する。ある態様では、組成物は、これら活性化合物の一つまたは複数を、生物物体が組成物に暴露した時に生物物体に化合物を提供するようにその中に泡立てられた気体として有している。このような化合物は、ゲル、液体、または他の半固形物でよい。ある態様では、気体の形で泡立てられた量は、溶液に暴露した生物物体に適切量の化合物を提供することが企図される。ある態様では、溶液は、その中を通し泡立てられた気体として酸素アンタゴニストを有している。気体として泡立てられた量は、溶液に暴露される生物学的物質に相応しい量の化合物を提供するだろうと企図される。溶液中に泡立てられる気体の量は、生物物体に効果的に提供される量の約、少なくとも約、または最大で約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍、もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲である。 生物物体は、本発明のいくつかの態様では、閉鎖された容器内でガスに暴露される。いくつかの例では、閉鎖容器は、特定の環境を維持できるか、または環境を所望通りに変えられる。環境とは、生物物体が暴露される酸素アンタゴニストの量、および/または環境の温度、気体組成、もしくは圧を指す。いくつかの例では、生物物体は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露する前、最中、または後に真空に置かれる。よりさらには、他の例では、生物物体は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露した後で正常酸素環境に暴露される。ある態様では、本発明は、別のスタシス誘導活性化合物または環境条件を生物物体に提供するのに合わせて、生物物体に活性化合物を提供することを含む、スタシスを誘導するかまたは傷害または疾患から生物物体を保護するための方法を含む。このような組み合わせ処置は、任意の順番、例えば同時または連続的に行える。ある態様では、活性化合物が生物物体に提供され、続いて生物物体は5% O2などの低酸素状態に置かれるか、または連続的に5% O2に続いて4% O2、3% O2、2% O2、1% O2、または無O2状態などのように徐々に低酸素状態にするか、このような状態の任意の連続的な組み合わせに暴露される。 よりさらには、別の態様では、生物物体が含まれる環境を少なくとも一回、異なる量または濃度の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物のサイクルにかけられるが、このとき量または濃度の差は、少なくとも1%の差である。環境は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の一つまたは複数の量または濃度の間を行ったり来たりしてもよいか、あるいは前記化合物の量または濃度を徐々に増しても減らしてもよい。いくつかの例では、量または濃度の差は、生物物体が最初に暴露された酸素アンタゴニストまたは他の活性物質の量または濃度の約0〜99.9%の間である。量および/または濃度の差は、約、少なくとも約、または最大で約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲であることが企図される。 本発明の方法は、また生物物体を制御された温度環境下に置く段階を含むことができる。ある態様では、生物物体は、生物物体が96時間を超えて生存することができない温度を指す「非生理学的温度環境」である温度に暴露される。制御された温度環境は、約、少なくとも約、または最大で約もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲の温度を取ることができる。生物物体はまた、室温で酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露されてもよく、これは室温が約20℃から約25℃の間の温度を意味する。さらには、生物物体は論じた任意の量または量の範囲の中心温度に到達することが企図される。 生物物体は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露させる前、最中、または後に非生理学的温度環境、または制御温度環境下に付すことができることが企図される。さらには、いくつかの態様では、生物物体は、約1分間〜約1年間の間の期間、非生理学的温度環境または制御温度環境下に付される。期間は、約、少なくとも約、または最大で約30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、1、2、3、4、5週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲でよい。よりさらには、下げられた温度に対し室温を上昇させる段階が存在してもよい。 よりさらには、温度は、温度が制御される工程の間、変えるか、または循環させてもよいことが企図される。いくつかの態様では、生物物体の温度は、酸素アンタゴニストまたは他の活性物質が存在する環境内にそれを置く前に最初に下げてよいが、一方他では、生物物体は、生物物体の温度より低い環境内に活性化合物と一緒にそれを入れることによって冷却されるだろう。生物物体または環境の温度は、ある温度から始まり次に別の温度に到達するように、生物物体および/または環境は、徐々に冷却または加熱してもよい。 本発明の方法は、生物物体を制御圧環境下に付す段階を含むことができる。ある態様では、生物物体は、生物が典型的に存在している圧力より低い圧力に暴露される。ある態様では、生物物体は、その下では96時間を超えて生物物体が生存できない圧力を指す「非生理学的圧力環境」の下に付される。制御圧環境は、約、少なくとも約、または最大で約10-14、10-13、10-12、10-11、10-10、10-9、10-8、10-7、10-6、10-5、10-4、10-3、10-2、10-1、0.2、0.3、0.4、または0.5atm、もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲の圧力を有することができる。 生物物体は、活性化合物に暴露する前、最中、または後に非生理学的圧力環境、または制御圧力環境下に付することができることが企図される。さらには、いくつかの態様では、生物物体は、約1分間〜約1年間の間の期間、非生理学的圧力環境または制御圧力環境下に付される。前記時間の量は、約、少なくとも約、または最大で30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、1、2、3、4、5週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲でよい。 よりさらには、圧力は、圧力が制御される工程の間、変えるか、または循環させてもよいことが企図される。いくつかの態様では、生物物体が暴露される圧力は、活性化合物が存在する環境内にそれを置く前に最初に下げられるが、一方他では、生物物体は、生物物体の活性化合物に暴露させられた後に圧力の下に置かれる。環境の圧力は、ある圧力から始まり次に10、20、30、40、50、60秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、および/または1、2、3、4、5、6、7日間、もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出せる任意の範囲以内に別の圧力に達するように、圧力は徐々に下げてよい。ある態様では、方法は、環境の酸素レベルを変更する段階、または酸素を含む環境から生物物質を移動する段階を含む。場合によっては、生物物質を酸素が減少または存在しない環境内に暴露する段階は、酸素アンタゴニストへの生物物質の暴露を模擬してもよい。本発明のいくつかの態様では、生物物体は、以下さらに詳しく記載するように、生物物体の環境が低酸素または無酸素である状態で活性化合物に暴露されるか、それと共に提供されることが企図される。これは、意図的であっても無くともよい。したがって、本発明のいくつかの態様では、生物物体は無酸素もしくは低酸素の環境または無酸素または低酸素にされた環境に意図的に置かれる。他の態様では、生物物体は、例えば生物物体を虚血または潜在的虚血状態に置かれた場合などの意図的でない状況の結果としての状態の下に置かれる。したがって、いくつかの例では、活性化合物が存在しない状態で、低酸素または無酸素状態が生物物体を損傷することが企図される。 本発明のある方法では、スタシスが誘導された生物物体の、酸素アンタゴニストおよび/または酸化的リン酸化のレベルを評価する段階も存在する。よりさらには、本発明のいくつかの態様では、生物物体に一般的に起こる細胞代謝のレベルを評価する段階が存在する。いくつかの例では、生物物体中の活性化合物の量は測定され、かつ/または生物物体の温度の低下が評価される。よりさらには、本発明のいくつかの方法では、一つまたは複数の治療効果の程度が評価される。 ある別の態様では、活性化合物および/または環境変化(温度、圧力)からの生物物体への任意の有毒効果がモニタリングまたは制御される。毒性は、生物物体が暴露される活性化合物および/または環境変化のレベル、量、期間、または頻度を変えることによって制御できることが企図される。ある態様では、変化は減少であるが、ある他の態様では、変化は増加である。当業者は、生物物体での毒性効果を評価する多くの方法を承知していることが企図される。 本発明の方法に関する他の任意選択的な段階としては、以下が挙げられる:適切な活性化合物を同定する段階;患者を診断する段階;患者病歴を得る段階、および/または患者に活性化合物を投与または処方する前に、患者に一つまたは複数の検査を受けさせる段階。 本発明の組成物、方法、および製造物は、それを得たドナー生物(自家)または別のレシピエント(異種)被験体に戻される生物物体に用いることができる。いくつかの態様では、生物物体は、ドナー生物から直接得られる。別の態様では、生物物体は酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露する前に、培養される。いくつかの状況では、生物物体は、生物物体の回復前に体外膜酸素化が行われたドナー生物から得られるが、これは生物物体の保存を補助するために行われる技術である。よりさらには、方法は、スタシスが誘導された生物物体を生きているレシピエント生物に投与する段階、または移植する段階を含む。 本発明の方法は、生物物体をスタシスに入るために有効な時間、低酸素状態を作り出す酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物と生物物体をインキュベートする段階を含む、インビボ生物物体をスタシスに誘導する方法にも関する。 さらには、本発明の別の態様は、生物物体を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量と接触させて、それらの酸素要求を下げる段階を含む、インビボ生物物体の酸素要求を下げる方法を含む。酸素要求は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露していないか、またはもはや暴露していない生物物体の細胞または生物物体からの細胞の代表的サンプルの酸素要求量に関して、約、少なくとも約、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%、あるいはそこから導き出せる任意の範囲で低下することが企図される。 本発明の別の局面は、インビボ生物物体を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に暴露して生物物体をインビボで保存する段階を含む、インビボ生物物体の保存方法に関する。 本発明は、外傷のリスクを持つ生物物体を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に暴露する段階を含む、生物物体表面または内部への外傷の影響を遅延または軽減する方法にも関する。 本発明の他の局面では、患者を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に暴露する段階を含む、患者の出血性ショックを処置する、または予防するための方法が存在する。あるいは、いくつかの態様では、方法は出血および/または出血性ショックの結果としての患者の致死性(lethality)を予防する。出血による患者の死亡を防止、または出血患者に於ける致死性を予防するこのような方法では、患者を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に暴露する段階が含まれる。ある態様では、酸素アンタゴニストは、H2Sなどのカルコゲニド化合物であることが特に企図される。 生物の心拍数を下げるための方法もまた、本発明の一部に含まれる。このような方法は、生物学的サンプルまたは生物を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に接触させる段階を含む。 本発明の一つの態様は、哺乳類を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に接触させる段階を含む、哺乳類に冬眠を誘導する方法に関する。 別の態様では、麻酔が望まれる生物物体を、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に暴露する段階を含む、生物を麻酔する方法が存在する。麻酔は局所または全身麻酔と同様でよいことが企図される。 本発明は、放射線療法または化学療法の前、または最中に、哺乳動物を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に暴露する段階を含む、放射線療法または化学療法から哺乳類を保護する方法をさらに含む。癌治療薬の局所投与では、酸素アンタゴニストまたは活性化合物は、患部臓器、組織、および/または細胞に局所的に投与できることも特に企図される。ある態様では、方法は、化学療法患者の脱毛の予防または軽減にも用いることができる。このような患者は、既に化学療法を受けていても、または化学療法の候補であってもよいことが企図される。特定の例では、活性化合物は、脱毛が予想または存在する場所に塗布する局所ゲルとして患者に提供されることが企図される。 本発明はまた、生物物体の酸素要求を下げることもその範囲に含み、このことは生物物体が生存のために必要とする酸素の量を下げることを意味している。これは一つまたは複数の活性化合物の有効量を提供することによって達成できる。特定の生物物体が生存に必要とする酸素量は一般的に公知であり、それは時間、圧力、および温度にも依存するだろう。本発明のある態様では、生物物体の酸素要求は、活性化合物の有効量が存在しない場合の生物物体の要求に比べて、約、少なくとも約、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%あるいはそこから導き出せる任意の範囲で低下する。 さらなる態様では、哺乳類を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に接触させる段階、および該哺乳類を温熱療法にかける段階を含む、哺乳類の過剰増殖性疾患(例えば癌)を処置する方法が存在する。 本発明の方法は、移植のための臓器の保存に応用できるが、本発明の別の局面はレシピエント生物に関する。いくつかの態様では、哺乳動物に酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量を提供する段階を含む、哺乳動物での臓器移植体の拒絶を阻止する方法が存在する。 生物物体の温度制御は、酸素アンタゴニストまたは活性化合物を用いることで達成できる。いくつかの態様では、以下を含む、低体温の被験体を処置する方法が存在する:(a)被験体を酸素アンタゴニストの有効量に接触させる段階、および次に(b)被験体を、被験体の温度より高い環境温度に付す段階。別の態様では、(a)被験体を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に接触させる段階を含む、高体温の被験体を処置する方法が存在する。いくつかの例では、高体温の処置は、(b)被験体を、被験体の体温よりも少なくとも約20℃低い環境温度に付す段階も含む。上記のように、被験体を非生理学的または制御温度環境に暴露することは、さらなる態様に用いることができる。この方法は、一般的には、活性化合物を用いて達成できることが企図される。 いくつかの例では、本発明は、患者に酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量を投与する段階を含む、バイパス手術を受けている患者に心臓停止を誘導するための方法に関する。投与は、心臓を保護するように、心臓に局所的に行うことができることが企図される。 本発明の他の局面は、患者に酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量を投与する段階を含む、患者の出血性ショックを予防するための方法に関する。 よりさらには、生物または創傷に酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量を投与する段階を含む、生物の創傷治癒を促進する方法が存在する。 これに加えて、本発明は、哺乳類に酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量を投与する段階を含む、哺乳類の神経変性を予防または処置する方法をその範囲に含む。 本発明はまた、生物物体の酸素要求を低下させることもその範囲に含み、これは生物物体が生存するのに要求する酸素の量を下げることを意味する。これは、酸素アンタゴニストまたは一つまたは複数の活性化合物の有効量を提供することによって達成できる。特定の生物物体が生存に必要とする酸素量は公知であり、それは時間、圧力、および温度にも依存するだろう。本発明のある態様では、生物物体の酸素要求は、活性化合物が有効量存在しない場合の生物物体の要求に比べて、約、少なくとも約、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%あるいはそこから導き出せる任意の範囲まで下げられる。 本発明のさらなる態様では、化学療法を受けるかまたはこれから受ける患者に少なくとも一つの活性化合物の有効量を投与することによって、化学療法などに起因する脱毛を防止するための方法に関する。 生物物体を損傷またはさらなる損傷から保護する例では、最初の傷害(外傷または創傷または変性)が起こった後で、生物物体を約、少なくとも約、または最大で約30秒間以内、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間以内、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間以内、1、2、3、4、5週間以内、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年間以内、もしくはそれ以上、および任意の組み合わせ、あるいはそこから導き出せる任意の範囲以内で酸素アンタゴニストに暴露できることが企図される。 本発明のある態様では、任意の造血細胞または組織に影響を及ぼす疾患、障害、または状態を意味する出血性障害を患っている患者を処置する方法が存在する。例としては、鎌状赤血球疾患および地中海貧血が挙げられる。したがって、いくつかの態様では、鎌状赤血球疾患または地中海貧血の患者を、活性化合物の有効量を用いて処置する方法が存在する。他の態様では、活性化合物の有効量を投与または提供することによって、嚢胞性繊維症(CF)患者の生存能力を高めるための方法が存在する。本発明の他の方法には、活性化合物の有効量を投与する段階を含む、被験体におけるシアン化合物中毒を処置するための方法が存在する。ある態様では、化合物はH2Sである。 本発明の他の局面は、細胞を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の有効量に接触させて一つまたは複数の細胞を保存する段階を含む、生物から分離された一つまたは複数の細胞を保存するための方法に関する。上記および本出願中の他所に論じた細胞または細胞型に加えて、本発明との使用についてエビの胚を特に想定することが企図される。 よりさらには、本発明のいくつかの態様では、血小板を保存するための方法が存在する。従来技術の欠点は、本開示の技術を用いて軽減または排除される。血小板および酸素低下に関する態様には、血小板の長期間保存から便益を受けることができる任意の応用を含むがこれに限定されない広い応用がある。 一つの態様では、酸素低下技術は、キットの形に具現化できる。例えば、現在Becton Dickinsonから製品番号261215で販売されているキットは、ここに記載の選択技術を利用している。このキットには、嫌気性発生装置(例えば水素ガス発生装置)、パラジウム触媒、嫌気性インジケータ、および上記構成要素(気体透過性バッグに入れられた血小板と一緒に)が入れられて密封される気体透過性の密封性「BioBag」を含む。 本発明の他の態様では、活性化合物の有効量を提供することによって、細胞および/または生物の代謝を可逆的に阻害するための方法が存在する。ロテノンはこの方法または本発明の可能な他の方法で用いられる化合物でないことが特に企図される。よりさらには、いくつかの態様では、ロテノンは活性化合物から除外されることも企図される。同様に、一酸化窒素も活性化合物から除外されることが企図される。 本発明の他の態様では、活性化合物の有効量を提供し、それにより損傷または傷害から生物物体を保護し、それによって生物物体の生存を高めることによって、傷害または疾患に反応してスタシスに入る生物物体の能力を高めるための方法が提供される。関係する態様は、活性化合物の有効量を提供することによって傷害または疾患に反応してスタシスに入るように生物物体を調製またはプライミングする方法を含む。他の関係する態様は、生物物体をプレスタシスに入れ、それによって損傷または傷害から生物物体を保護する方法を含む。例えば、スタシスの誘導に必要なものより少ない投与量または時間の活性化合物での処置によって生物物体は、傷害または疾患に反応して、より簡便またはより完全にスタシスの便益状態に到達できるようになるが、一方活性化合物による処置がない場合は、生物物体は、それがスタシスの保護的レベル、例えば生物物体に致死的低酸素状態に対する耐性を付与するのに十分なレベルに到達する前に死亡するか、または損傷もしくは傷害を被るだろう。 ある傷害および疾患状態は、生物物体の代謝および/または体温をスタシスが達成されない程度まで下げさせる。例えば低酸素状態、虚血、および失血は全て利用可能なおよび酸素利用生物物体に供給される酸素の量を減らし、それによって生物物体の細胞での酸素利用を減らし、酸化的リン酸化から生ずるエネルギー産生を減らし、ならびにそれによって熱発生を減らして低体温をもたらす。「スタシス」は、傷害または疾患発作の重篤度または発生もしくは進行に続く経過時間に応じて、達成することもあればしないこともある。活性化合物による処置は、スタシス誘導の閾値(即ちスタシス達成に必要な発作の重篤度または期間)を下げるか、または傷害もしくは疾患の刺激に付加もしくは相乗して、活性化合物処置がなければスタシスを起こさない傷害状態に置かれた生物物体をスタシスに誘導することができる。活性化合物のこのような活性は、傷害または疾患刺激単独のスタシス誘導効果(大きさ、動態)を、生物物体を活性化合物に事前、同時、事後、またはそれらの任意の組み合わせで暴露した時のスタシス誘導効果と比較することによって決定される。例えば、本出願の実施例11に記載されているように、マウスを空気中で150ppmのH2Sに予備暴露させると、低酸素状態(5% O2)に暴露させる前に比べてCO2の産生は約2倍低下した。その後予備処理されたマウスのCO2産生は、低酸素状態で約50倍低下した。これに対し、コントロールのH2S未処置マウスでもCO2産生は低下するもののマウスの低酸素状態での生存は得られなかったが、これはマウスがスタシスを達成する前に死亡したためと思われた。 本発明の他の局面では、生物を活性化合物の有効量に暴露する段階を含む、生物に睡眠を誘導する方法が存在するが、この場合の有効量は生物をスタシスに誘導できる量よりも少ない。用語「睡眠」は、医学分野でのその通常かつ平易な意味にしたがって用いられる。睡眠は、他の無意識状態とは区別され、本発明の方法を用いて達成できる状態としても企図される。 本発明は、生物物体を活性化合物の有効量に暴露する段階を含む、生物物体を麻酔する方法にも関するが、この場合の有効量は、生物をスタシスに誘導できる量よりも少ない。 上記で論じた方法では、生物をスタシスに誘導できる量より少ない有効量は、期間および/または量に関係して減らすことができる。その減少は、スタシスを誘発する量の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、またはそこから導き出せる任意の範囲の量の減少でよい。減少は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、1、2、3、4、5週間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、またはそこから導き出せる任意の範囲の、期間(暴露時間の長さ)の減少でよい。または、減少は、生物物体に提供される全体の有効量に関してであってもよく、それは、その種および/またはサイズの有機体にスタシスを誘導する全体の有効量に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、またはそこから導き出せる任意の範囲の減少であってよい。 本発明は、ハエ、カエル、魚、マウス、ラット、イヌ、エビ、およびそれらの胚などの、消費または研究室での研究に用いられる生物を保存するのに利用できることが特に企図される。 本発明の方法は、生物物体がその中に置かれるか、暴露される環境を維持する器具またはシステムを使用する段階を含むことができる。本発明は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物が特に気体として供給される器具を含む。いくつかの態様では、器具は、生物物体を保持するためのサンプルチャンバーを持つ容器を含むが、この場合容器は酸素アンタゴニストを含む気体供給元に連結している。容器は固体容器でも、バッグなどの柔軟な容器でもよい。 いくつかの態様では、本発明は、以下を含む、細胞を保存するための器具である:該器具は775リットルを超えない容積を持つサンプルチャンバーを有する容器;およびサンプルチャンバーと流体連絡している第1気体供給源を備えており、該第1気体供給源は一酸化炭素を含んでいる。さらなる態様では、器具は、サンプルチャンバー内側の温度を制御する冷却ユニット、および/あるいはチャンバー内の酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物の量、またはチャンバー内に存在する溶液内の酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物の量を制御する気体制御装置も備えている。 第2もしくは追加の気体のための気体供給源、または酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物のための第2もしくは追加の気体供給源が存在できることが企図される。第2気体供給源はサンプルチャンバーに連結しても、または第1気体供給源に連結してもよい。上に論じたように、追加の気体は非毒性および/または非反応性気体でよい。 気体制御装置は、本発明のいくつかの態様では器具の一部である。1、2、3個、またはそれ以上の気体制御装置を用いることができる。いくつかの例では、気体制御装置は、第1気体供給源からサンプルチャンバーへ供給される気体を制御する。または、それはサンプルチャンバーまたは第2気体供給源から第1気体供給源に供給される気体を制御するか、あるいは第1および第2気体供給源の両方について制御装置が存在してもよい。気体制御装置は、サンプルチャンバーおよび/または別の気体供給源に供給される気体の量を制御するようにプログラムできることがさらに企図される。制御は、指定された期間であってもなくともよい。サンプルチャンバーに直接または間接的に連結している任意の気体供給源について、プログラムできてもできなくともよい気体制御装置が存在してよい。いくつかの例では、気体制御装置は電子的にプログラムすることができる。 いくつかの例では、チャンバー内の圧力および/または温度は、圧力制御装置または温度制御装置のいずれかによってそれぞれ制御できる。気体制御装置と同様に、これら制御装置は電子的にプログラムできてもよい。本発明の器具は、上に論じた温度を達成するための冷却および/または加熱ユニットを有してもよい。ユニットは、電子的にプログラムできてもできなくともよい。 さらなる態様では、器具は、その上に容器を乗せる車輪の付いたカートを含むか、またはそれが一つまたは複数のハンドルを有してよい。 本発明は、細胞、組織、臓器、およびさらに生物全体のための器具を含み、器具はその中に、以下を含むことが特に企図される:サンプルチャンバーを有する容器;サンプルチャンバーと流体連絡している第1気体供給源であって、酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物を含む第1気体供給源;および第1気体供給源からサンプルチャンバーに供給される気体を制御する、電子的なプログラムが可能な気体制御装置。 いくつかの態様では、器具は、サンプルチャンバー内に真空を提供するように作られた構造も有している。 よりさらには、本出願に記載されている酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物は、本発明の器具と一緒の使用が企図される。特別な態様では、一酸化炭素はこの器具を用いて投与することができる。別の例では、カルコゲニド化合物を投与することができるか、または化合物は還元剤構造を有する。よりさらなる態様では、活性化合物は、器具を用いて投与される。特別な態様では、本発明は装置またはその使用を範囲に含む。ある態様では、装置は、単回用量送達装置である。別の態様では、装置は吸入器または噴霧器である。よりさらなる態様では、他の装置として、ペンなどの注射装置、注入ポンプなどのポンプ、またはパッチが挙げられるが、これらに限定されない。よりさらには、これら装置は単回用量送達装置であってもなくともよいことが企図される。 これに加えて、本発明はスクリーニングアッセイに関する。いくつかの態様では、候補物質を、酸素アンタゴニストまたは、特に保護的代謝剤を含む活性化合物として機能する能力についてスクリーニングにかけられる。これは二酸化炭素排出量を測定することによるような本明細書に記載されるアッセイを用いて実施できる。酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の特徴を示すことが確認された任意の物質については、さらに特徴付けまたは試験することができる。よりさらには、このような物質を生物物体に投与してスタシスを誘導できること、またはこのような物質をその後製造できることが企図される。 ある態様では、活性スタシス化合物を含む活性化合物のためのスクリーニング法が存在する。さらには、スクリーニング法は、酸素アンタゴニストまたは本明細書で論ずる方法に影響を及ぼす他の任意の化合物についてのものでよい。いくつかの態様では、以下を含むスクリーニング法が存在する:a) ゼブラフィッシュ胚を物質に暴露する段階;b) 胚の心拍数を測定する段階;c) 物質が存在する状態での胚の心拍数と物質が存在しない状態での心拍数を比較する段階を含み、例えば50%またはそれ以上の心拍数減少したとき、物質を候補活性化合物と同定する。ゼブラフィッシュ胚の代わりに、魚、カエル、ハエ、エビ、またはそれらの胚などの、他のヒト以外の生物も同様に用いてよいことが企図される。さらなる態様では、胚の心拍数は、心臓の拍動数を数えることで測定される。これは、いくつかの例では、解剖顕微鏡下で胚を観察することによって実施できる。 他のスクリーニング態様は:a) 物質に線虫を暴露する段階;b) 次の細胞呼吸因子の一つまたは複数をアッセイする段階:i) 中心体温;ii) 酸素消費;iii) 運動性;またはiv) 二酸化炭素産生;c)物質存在時の線虫の細胞の呼吸因子を物質非存在時の細胞の呼吸因子と比較する段階を含み、この場合、上記特徴が低下したとき物質は候補活性化合物とされる。線虫の運動性は、本発明のいくつかの態様でアッセイされることが特に企図される。 いくつかの態様では、方法はまずスクリーニング対象となる適切な物質を同定する段階を含む。ある態様では、物質はカルコゲニド、還元剤であるか、または式Iもしくは式IVの構造を有するか、または本明細書で論ずる任意の他の化合物であろう。 予備または初回スクリーニングに用いられた生物よりも高等または複雑と考えられる生物について、続いてスクリーニングが実施できることがさらに企図される。したがって、一つまたは複数の細胞呼吸要素がこれら別の生物でアッセイされ、候補化合物をさらに評価することが企図される。ある態様では、続くスクリーニングは、マウス、ラット、イヌ等の使用を含む。 本発明のスクリーニング方では、複数の異なる生物または生物物体(その他細胞もしくは組織)を用いることができ、かつ複数の異なる細胞呼吸要素をアッセイできることが企図される。これに加えて、いくつかの態様では、複数のこのようなスクリーニングが同時に実施されることが企図される。 物質が候補活性化合物(または酸素アンタゴニストもしくはスタシス誘導剤、もしくは保護的代謝剤等)と見なされるためには、該物質はアッセイ時に生物または細胞を殺してはならず、かつ作用が可逆的でなければならない(即ち、改変される特質については、物質暴露前にそのレベルを測る必要がある)ことが当然理解されるだろう。 指定された疾患または状態に対する処置または予防のための医薬品の調製には、任意の処置法を用いてよいことが当然理解される。これには、出血性もしくは血液学的ショック、創傷および組織損傷、高体温、低体温、神経変性、敗血症、癌、および外傷のための医薬品の調製が挙げられるが、これらに限定されない。よりさらには、本発明は、死、ショック、外傷、臓器もしくは組織拒絶、癌治療による損傷、神経変性、および創傷もしくは組織損傷を予防する処置のための医薬品の調製を包むが、これらに限定されない。 上記で論じたように、生物のスタシスは次のいずれの状態でもない:睡眠、昏睡、死、麻酔、または大発作。しかしながら、本発明のいくつかの態様では、これらの状態は、本発明の方法、組成物、および製造物を使用することに望まれる目的であることが企図される。本発明の一つの局面について論じられた態様は、本発明の別の局面に同様に適用される。よりさらには、態様は組み合わせてもよい。 生物物体を活性化合物に「暴露すること」を含む態様は、生物物体に活性化合物を提供するか、または活性化合物を投与することによって実施することもできる。用語「提供する」は、通常の平易な意味で用いられる:「使用のために供給または支給すること」(Oxford English Dictionary)であり、患者の場合は、特定の活性化合物を処方または患者に直接それを投与する医師またはその他医療従事者が行う活動を指す。 実施例の項の態様は、本発明の全ての局面に応用できる本発明の態様と理解すべきである。 請求項での用語「もしくは、または、あるいは」の使用は、たとえ開示が選択肢だけ、および「および、ならびに/もしくは、または、あるいは」を指す定義を支持していても、特に選択肢だけを明確に指示しているか、または選択肢が相互排他的でない限り「および、ならびに/もしくは、または、あるいは」を意味する。 本出願全体を通して、用語「約」は、数値が、数値決定に用いられる装置または方法の誤差の標準偏差を含むことを示すのに用いられる。用語「約」と一緒に用いられる数値と関係して論じられる態様では、用語、約は省略できることが特に企図される。 長年の特許法にしがって、語「a」および「an」は、請求項または明細書の中で用語「含む/具備する」と一緒に用いられる場合、特に明記されない限り一つまたは複数を意味する。 本発明のその他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、この詳細な説明より当業者には本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正は明らかとなることから、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の態様を示すものの、例示のみを目的として示されているものであることを理解しなければならない。例示的態様の説明I. スタシス 「スタシス」または「仮死状態」では、細胞、組織、臓器、または生物(「生物物質」と総称する)は生存しているが、細胞分裂、発生進行、および/または代謝状態に必要な細胞機能は減速または停止している。この状態は、様々な状況に於いて望ましい状態である。スタシスは単独で保存方法として用いる事ができ、または低温保存レジメンの一部として導入することもできる。生物物質は、研究使用、輸送、移植、治療的処置(エキソビボ治療)、および、例えば外傷の発生を予防するために保存することができる。生物全体が関係するスタシスも同様の用途がある。例えば、生物の輸送は、生物がスタシス状態になっていれば容易に行うことができる。これによってストレスまたは物理的傷害を軽減または排除し、生物への物理的および生理学的傷害を軽減できる。これらの態様を以下にさらに詳しく論じる。スタシスは、生物物質の酸素需要を下げ、それにより血流を下げることによって便益を示すことができる。スタシスは、生物物質は生命維持環境から分離されてから死誘導環境に暴露されるまでの期間を延長できるだろう。 事故による比較的長期間の低体温からの回復は報告されているが(Gilbert et al., 2000)、最近、生物に仮死状態を意図的に誘導する事に関心が集まっている(参照資料の考察は、参照が先行技術を構成することを是認するものと解釈してはならない。事実、本明細書の中で論じるいくつかの参照は、優先権出願に関する先行技術ではない。)。管理された高体温だけでなく、動脈内への溶液のコールドフラッシュ投与(Tisherman、2004)、心臓停止誘導(Behringer et al., 2003)、または一酸化窒素誘導仮死状態(Teodoro et al., 2004)が検討されている。 スタシスにある生物は、全身麻酔をかけられた生物と区別できる。例えば室内空気に暴露された軽度のスタシスにある生物(細胞呼吸の約2〜約5倍の低下)は、身震いを始めるが、一方、麻酔を掛けられた生物は身震いを始めることはないだろう。また、軽度のスタシスにある生物は、つま先の圧迫に反応することが期待されるが、一方、麻酔をかけられた生物は、通常は反応しない。しがってスタシスは、一般に行われている麻酔下の状態とは同じではない。 CO2産生は、生物の代謝に関係する細胞呼吸の直接的なマーカーである。これは、肺から排出されるCO2量を指す「CO2放出」とは区別できる。ある活性化合物、例えば硫化水素は、肺内で炭酸脱水素酵素活性を阻害し、これが炭酸塩からCO2への変換および肺血液からのCO2遊離を阻害し、それによって、それに応じた細胞のCO2産生を低下させることなく、それに伴うCO2の放出の減少を示す。 本発明は、あるタイプの化合物が生物物体に可逆的スタシスを効率的に誘導するという観察に基づく。以下を含む、他の特許出願がスタシスの誘導を論じている:米国特許出願10/971,576、10/972,063、および10/971,575;;米国特許出願10/971,576;米国特許出願10/972,063;ならびに米国特許出願10/971,575、これらの全ては、参照により本明細書に組み入れられる。A. 体温制御 温血動物のスタシスは、体温制御に影響するであろう。体温制御は、いわゆる「温血」動物の特徴であり、これにより生物は、大きく変動する(低温または高温)環境温度に暴露された時でさえ、比較的一定の中心体温を維持できる。スタシスの誘導による体温制御を制御する能力は本発明の一つの局面であり、上に論じたのと同様の使用を可能にする。 体温制御は、生物、脚部、または単離された臓器もしくは組織をチャンバー/装置内に入れることによって促進することができ、その温度を制御できる。例えば、暖かな部屋、または高圧チャンバーに似たチャンバー様の装置は、生物全体を取り囲むことができ、体温制御装置に連結できる。毛布、スリーブ、カフ、または手袋(例えばAVAcore Technologies, Palo Alto, CA,製CORE CONTROL冷却システム、米国特許第6,602,277号)などの小型の装置も企図される。このようなチャンバー/装置は、室温の上昇・下降の両方に用いることができる。B. 生物物体 本発明との使用が企図される生物物体としては、哺乳類を含む無脊椎動物および脊椎動物に由来する物質;生物を含む生物物質が挙げられる。ヒトに加えて、本発明は、次の分類に由来する哺乳類を含む、獣医学的および農業的に重要な哺乳類に関して用いることができる:イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ブタ、ヤギ、齧歯類、ウサギ、オオカミ(lupine)、およびクマ。本発明は、魚および鳥にも拡張される。他の例を以下に開示する。 よりさらには、生物物体のタイプは多様である。それは細胞、組織、および臓器だけでなく、様々な組成物、方法、および器具が関係する生物でよい。非仮出願米国特許出願第10/971,576号、第10/972,063号、および第10/971,575号は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。 いくつかの態様では、生物物質は、細胞であるかまたはこれを含む。細胞は任意の酸素利用細胞であることが企図される。細胞は真核細胞でも前核細胞でもよい。ある態様では、細胞は真核細胞である。より具体的には、いくつかの態様では、細胞は哺乳類細胞である。本発明との使用が企図される哺乳類細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、フェレット、ウシ、ヒツジ、およびウマ由来の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。 よりさらには、本発明の細胞は二倍体でよいが、いくつかの例では、細胞は半数体(生殖細胞)である。これに加えて、細胞は多数体、異数体、または無核体でもよい。細胞は、心臓、肺、腎臓、肝臓、骨髄、膵臓、皮膚、骨、静脈、動脈、角膜、血液、小腸、大腸、脳、脊髄、平滑筋、骨格筋、卵巣、精巣、子宮、および臍帯からなる群に由来する組織または臓器などの、特定の組織または臓器に由来してよい。よりさらには、細胞はまた、次の細胞タイプの一つとして特徴付けることができる:血小板、骨髄細胞、赤血球、リンパ細胞、脂肪細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、内分泌細胞、グリア細胞、ニューロン、分泌細胞、バリアー機能細胞、収縮細胞、吸収細胞、粘膜細胞、角膜輪部細胞(角膜由来)、幹細胞(全能、多能、または多分化能)、未受精または受精卵細胞、あるいは精子。1. さまざまな供給源 以下は、生物物体を得ることができる供給源の例である。本発明の態様は、これらの例を含むが、これらに限定されない。a. 哺乳類 本発明のある局面では、哺乳動物は、カモノハシ目、有袋目、食虫目、皮翼目、翼手目、ツパイ目、霊長目、異節亜目、有鱗目、管歯目、兎、齧歯目、鯨目、食肉目、長鼻目、イワダヌキ目、シレニア(Sirenia)、奇蹄目または偶蹄目である。 単孔目の例は、ハリモグラ科(例えば、ハリモグラ)およびカモノハシ(例えば、カモノハシ)を含む。有袋目の例は、オポッサム科(例えば、オポッサム)、ミクロビオテリウム科(例えば、チロエオポッサム)、ケノレステス科(例えば、ラットオッポサム)、フクロネコ科(例えば、フクロネズミ)、フクロアリクイ科(例えば、フクロアリクイ)、フクロオオカミ科(例えば、フクロオオカミ)、バンディクート科(例えば、バンディクート)、ミミナガバンディクート科(例えば、ラビットバンディクート)、フクロモグラ科(例えば、フクロモグラ)、ユビムスビ科(例えば、クスクス)、フクロモモンガ科(例えば、アライグマ)、ブーラミス科(例えば、ピグミーポッサム)、カンガルー科(例えば、カンガルー、ワラビー)、フクロミツスイ科(例えば、フクロミツスイ)、ウォンバット科(例えば、ウォンバット)およびコアラ科(例えば、コアラ)を含む。 食虫目は、例えば、ソレノドン科(例えば、ソレノドン)、テンレック科(例えば、テンレック、カワウソ トガリネズミ)、キンモグラ科(例えば、キンモグラ)、ハリネズミ科(例えば、ハリネズミ、ジヌムラ)、トガリネズミ科(例えば、トガリネズミ)およびモグラ科(例えば、モグラ、デスマン)を含む。ハネジネズミ目は、ハネジネズミ科(例えば、ハネジネズミ)を含む。ツパイ目は、ツパイ科(例えば、ツパイ)を含む。ヒヨケザル目は、ヒヨケザル科(例えば、ヒヨケザル)を含む。翼手目は、オオコウモリ科(例えば、フルーツコウモリ、オオコウモリ)、オナガコウモリ科(例えば、オナガコウモリ)、(例えば、ホッグノーズまたはマルハナバチコウモリ)、サシオコウモリ科(例えば、サシオコウモリ)、ミゾコウモリ科(例えば、ミゾコウモリ)、アラコウモリ科(例えば、アラコウモリ)、キクガシラコウモリ科(例えば、キクガシラコウモリ)、ウオクイコウモリ科(例えば、ブルドッグコウモリ、フィッシャーマンバット(Fisherman Bats)、クチビルコウモリ科、ヘラコウモリ科(例えば、新世界カグラコウモリ)、アシナガコウモリ科、ツメナシコウモリ科、スイツキコウモリ科、サラモチコウモリ科、ヒナコウモリ科(例えば、コモンバット)、ツギホコウモリ科(例えば、ショートテイルコウモリ(Short-Tailed Bats))およびオヒキコウモリ科(例えば、オヒキコウモリ(Free-Tailed Bats))を含む。 サル目は、キツネザル科(例えば、キツネザル)、コビトキツネザル科(例えば、コビトキツネザル)、インドリ科(例えば、インドリ、アバヒ)、アイアイ科(例えば、アイアイ)、ロリス科(例えば、ロリス、ブッシュベイビ、ガラゴ)、メガネザル科(例えば、メガネザル)、オマキザル科(例えば、新世界サル、マーモセット、タマリン)、テナガザル科(例えば、ギボンズ)、オランウータン科(例えば、類人猿)およびヒト科(例えば、ヒト)を含む。 異節亜目の例は、アリクイ科(例えば、アリクイ)、ナマケモノ科(例えば、ミツユビナマケモノ)、フタユビナマケモノ科(例えば、フタツユビナマケモノ)およびアルマジロ科(例えば、アルマジロ)を含む。有鱗目の例は、センザンコウ科(例えば、センザンコウ)を含む。管歯目の例は、ツチブタ科(例えば、ツチブタ)を含む。兎の例は、ナキウサギ科(例えば、ナキウサギ)およびウサギ科(例えば、ノウサギおよびラビット)を含む。 ネズミ目は、ヤマビーバー科(例えば、ヤマビーバー)、リス科(例えば、リス、マーモット、シマリス)、ホリネズミ科(例えば、ホリネズミ)、ポケットネズミ科(例えば、ポケットマウス、カンガルーネズミ)、ビーバー科(例えば、ビーバー)、ウロコオリス科(例えば、ウロコオリス)、トビウサギ科(例えば、ネズミ科(例えば、ネズミおよびマウス)、ヤマネ科(例えば、ヤメネ)、サバクヤマネ科(例えば、サバクヤマネ)、トビハツカネズミ科(例えば、トビハツカネズミ)、トビネズミ科(例えば、トビネズミ)、ヤマアラシ科(例えば、旧世界ヤマアラシ)、キノボリヤマアラシ科(例えば、新世界ヤマアラシ)、テンジクネズミ科(例えば、モルモット、マラ)、カピバラ科(例えば、カピバラ)、パカラナ科(例えば、パカラナ)、パカ科(例えば、パカ)、アグーチ科(例えば、アグーチ)、チンチラ科(例えば、チンチラ、ビスカーチャ)、カプロミス科(例えば、フチア)、ヌートリア科(例えば、ヌートリア)、ツコツコ科(例えば、ツコツコ)、オクトドン科(例えば、オクトドン、デグー)、チンチラネズミ科(例えば、チンチラネズミ)、アメリカトゲネズミ科(例えば、トゲネズミ)、ヨシネズミ科(例えば、ヨシネズミ)、アフリカイワネズミ科(例えば、アフリカイワネズミ)、デバネズミ科(例えば、メクラネズミ)およびグンディ科(例えば、グンディ)を含む。 クジラ目は、サバクヤマネ科(例えば、アマゾン ポポイス(Amazon Popoise))、ヨウスコウカワイルカ科、カワイルカ科、ラプラタカワイルカ科、アカボウクジラ科(例えば、オオギハクジラ)、マッコウクジラ科(例えば、マッコウクジラ)、イッカク科(例えば、シロイルカ クジラ、イッカク)、マイルカ科(例えば、マイルカ、シャチ)、ネズミイルカ科(例えば、ネズミイルカ)、ナガスクジラ科(例えば、ナガスクジラ)、セミクジラ科(例えば、セミクジラ)およびコククジラ科(例えば、コククジラ)を含む。 ネコ目は、イヌ科(例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、ジャッカル、コヨーテ)、クマ科(例えば、クマ)、アライグマ科(例えば、アライグマ、ハナグマ、キンカジュ、レッサーパンダ)、パンダ科(例えば、パンダ)、イタチ科(例えば、イタチ、スカンク、アナグマ、カワウソ)、ジャコウネコ科(例えば、シベット、ジェネット)、マングース科(例えば、マングース)、プロテリダ(Protelidae)(例えば、ツチオオカミ)、ハイエナ科(例えば、ハイエナ)、ネコ科(例えば、ネコ)、アシカ科(例えば、アシカ、アシカ)、セイウチ科(例えば、セイウチ)およびアザラシ科(例えば、アザラシ)を含む。 ゾウ目は、ゾウ科(例えば、ゾウ)を含む。イワダヌキ目は、ハイラックス科(例えば、ハイラックス)を含む。海牛目は、ジュゴン科(例えば、ジュゴン)およびカイギュウ科(例えば、カイギュウ)を含む。ウマ目は、ウマ科(例えば、ウマ、ロバ、シマウマ)、バク科(例えば、バク)およびサイ科(例えば、サイ)を含む。ウシ目は、イノシシ科(例えば、ブタ、バビルサ)、ペッカリー科(例えば、ペッカリー)、カバ科(例えば、カバ)、ラクダ科(例えば、ラクダ、ラマ、ビクーナ)、マメジカ科(例えば、マメジカ)、ジャコジカ科(例えば、ジャコウジカ)、シカ科(例えば、シカ、ヘラジカ、ムース)、キリン科(例えば、キリン、オカピ)、プロングホーン科(例えば、エダツノカモシカ)およびウシ科(例えば、ウシ、ヒツジ、アンテロープ、ヤギ)を含む。b. 爬虫類 ある態様では、生物物質は、爬虫類または爬虫類から派生する。爬虫類は、カメ目、曲頸亜目、トカゲ目、喙頭目またはワニ目であろう。カメ目の爬虫類は、例えば、スッポンモドキ科、カミツキガメ科(例えば、カミツキガメ)、ウミガメ科(例えば、アカウミガメ、アオウミガメ)、カワガメ科(例えば、オサガメ)、エミス科(例えば、ポンドスライダー(Pond Sliders)、ポンドタートル(Pond Turtles)、カタツムリグイカメ(Snail-Eating Turtles)、アメリカハコガメ)、ドロガメ科(例えば、ニオイガメ)、サウロチビダ(Saurotypidae)、リクガメ科(例えば、ガラパゴスゾウガメ、サバクゴファーガメ(Desert Tortoises)、アルダブラガメ、Spu-Thighed Tortoises、ヘルマントカゲ)、スッポン科(例えば、チャイニーズソフトシェル(Chinese Softshells)、スピニーソフトシェル(Spiny Softshells))またはオオクビガメ科であろう。曲頸亜目の爬虫類は、例えば、ヘビクビガメ科(例えば、ヘビクビガメ)またはペロメジューサ科 (例えば、ヌマヨコクビガメ)であろう。 有鱗目の爬虫類は、例えば、アガマ科(例えば、ニジトカゲ、フトアゴヒゲトカゲ、インディアンブラッドサッカー(Indian Bloodsuckers)、ヨロイトカゲ)、カメレオン科(例えば、カメレオン)、イグアナ科(例えば、アノールトカゲ、バシリスク、クビワトカゲ、イグアナ、ツノトカゲ、チャクワラ、セイジブラッシュリザード(Sagebrush Lizards)、サイド-ブロッチドリザード(Side-Blotched Lizards))、ヤモリ科(例えば、ヤモリ)、ピゴープス科、テグートカゲ科(例えば、ハシリトカゲ、テグー)、カナヘビ科(例えば、ハシリトカゲ、オセラテドリザード(Ocellated Lizards)、コモチトカゲ、カナヘビ、オナガトカゲ)、Xantuslidae、トカゲ科(例えば、スキンク)、ヨロイトカゲ科(例えば、スンガザー(Sungazers))、ディバムストカゲ科、ワニオトカゲ科、アンギストカゲ科(例えば、スローワーム(Slow Worm)、アリゲータートカゲ、ボアコンストリクター)、ドクトカゲ科(例えば、アメリカドクトカゲ)、ランタノトゥス科、オオトカゲ科(例えば、オオトカゲ)、ホソメクラヘビ科、メクラヘビ科、アメリカメクラヘビ科、アニリウス科(例えば、パイプスネーク(Pipe Snakes))、ミジカオヘビ科、サンビームヘビ科、ボア科(例えば、ボア、アナコンダ、ロックパイソン(Rock Pythons)、ヤスリミズヘビ科(例えば、ヤスリヘビ)、ヘビ科(例えば、マングローブヘビ、ムチヘビ、スムースヘビ、タマゴヘビ、ブームスラン、ネズミヘビ、エスキュラピスヘビ、シマヘビ、オリエンタルスジオ、テンタクルドスネイク(Tentacled Snakes)、ハナダカヘビ、キングスネイク(Kingsnakes)、モントピーリアスネイク(Montpelier Snakes)、ヨーロッパヤマカガシ、ミズヘビ、ガーターヘビ、小枝ヘビ(Twig Snakes)、オリーブミズヘビ)、メガネヘビ科(例えば、デスアダー、アマガサヘビ、マンバ、サンゴヘビ、コブラ、カッパーヘッド、ハナダカヘビ)、クサリヘビ科(例えば、クサリヘビ、ライトアダー、ガラガラヘビ、ヒメガラガラヘビ、クサリヘビ)、ウミヘビ科(例えば、シーブレイト(Sea Brait))、ミミズトカゲ科(例えば、ミミズトカゲ)、フタアシミミズトカゲ科またはフトミミズトカゲ科(例えば、モグラトカゲ)であろう。 ムカシトカゲ目の爬虫類は、例えば、ムカシトカゲ科(例えば、ムカシトカゲ)であろう。ワニ目の爬虫類は、例えば、アリゲーター科(例えば、アリゲーター、カイマン)、ワニ科(例えば、ワニ)またはガビアル科(例えば、ガリアル(Gharials))であろう。c. 両生類 本発明の生物物質は、両生類または両生類から派生したのであろう。両生類は、例えば、カエルまたはヒキガエルであろう。カエルまたはヒキガエルは、例えば、サエズリガエル科(例えば、スクリーチングフロッグ(screeching frogs))、アスカフス科(例えば、テイルドフログ(tailed frogs))、コガネガエル科(例えば、コガネガエルおよびシールドトード(shield toads))、ヒキガエル科(例えば、ヒキガエル)、アマガエルモドキ科(例えば、アマガエルモドキおよびリーフフロッグ(leaf frogs))、ヤドクガエル科(例えば、ヤドクガエル)、スズガエル科(例えば、スズガエル)、アマガエル科(例えば、アマガエル)、クチボソガエル科(例えば、クチボソガエル)、アマガエル科(例えば、新世界アマガエル)、アカガエル科(例えば、アフリカツリーフロッグ(African tree frogs))、ムカシガエル科(例えば、ニュージーランドフロッグ(New Zealand frogs))、ユビナガガエル科(例えば、ネオトロピカルフロッグ(neotropical frogs))、コノハガエル科(例えば、サウスアジアンフロッグ(South Asian frogs))、ヒメアマガエル科(例えば、ヒメアマガエル)、カメガエル科(例えば、オーストラリアフロッグ(Australian frogs))、ペロバテス科 (例えば、スキアシガエル)、ペロディテス科(例えば、パースリフロッグ(parsley frogs))、ピパ科(例えば、タングレスフロッグ(tongueless frogs))、アベコベガエル科(例えば、アベコベガエル)、アカガエル科(例えば、リパリアンフロッグ(riparian frogs)およびツリューフロッグ(true frogs))、アオガエル科(例えば、旧世界アマガエル)、ハナガエル科(例えば、ダーウィンのカエル)、メキシコジムグリガエル科(例えば、メキシコジムグリガエル)、セーシェルガエル科(例えば、セーシェルガエル)、有尾目(例えば、サンショウウオ)またはアシナシイモリ目(例えば、アシナシイモリ)であろう。 両生類は、サンショウウオであろう。サンショウウオは、例えば、ラフサンショウウオ科(例えば、トラフサンショウオ)、アンフューマ科(例えば、アンフューマ)、オオサンショウウオ科(例えば、オオサンショウウオおよびヘルベンダー)、オオトラフサンショウウオ科(例えば、オオトラフサンショウウオ)、サンショウウオ科(例えば、アジアサンショウウオ(アジアサンショウウオ(Asiatic salamanders))、プレトドン科(例えば、肺のないサンショウウオ)、ホライモリ科(例えば、ホライモリおよびウォータードッグ(waterdogs))、オリンピアサンショウウオ科(例えば、オリンピアサンショウウオ)、イモリ科(例えば、イモリおよびサンショウウオ)またはサイレン科(例えば、サイレン)であろう。あるいは、両生類は、アシナシイモリであろう。アシナシイモリは、例えば、アシナシイモリ科(例えば、アシナシイモリ)、ヌメアシナシイモリ科(例えば、アジアティックテイルドアシナシイモリ(Asiatic tailed caecilians))、オナシアシナシイモリ科(例えば、ネオトロピカルタイルドアシナシイモリ(neotropical tailed caecilians))、アフリカアシナシイモリ科(例えば、アフリカアシナシイモリ)、ミズアシナシイモリ科(例えば、ミズアシナシイモリ)またはケララアシナシイモリ科(例えば、ケララアシナシイモリ)であろう。d. 鳥類 本発明の生物物質は、鳥類または鳥類から派生したのであろう。鳥類は、例えば、カモ目(例えば、水鳥)、アマツバメ(例えば、ハチドリおよびアマツバメ亜目)、ヨタカ目(例えば、ヨタカ)、チドリ目(例えば、チドリ)、コウノトリ目(例えば、コウノトリ)、ネズミドリ目(例えば、ネズミドリ)、ハト目(例えば、ハトおよびハト)、ブッポウソウ目(例えば、カワセミ)、Craciforme (例えば、chacalacas、ホウカンチョウ、シャクケイ、ツカツクリ)、カッコウ目(例えば、カッコウ、ツメバケイ、エボシドリ)、タカ目(例えば、昼行性の猛禽(diurnal birds of prey))、キジ目(例えば、チキンライクバード(chicken-like birds))、アビ目(例えば、アビ)、ツル目(例えば、オオバン、ツル、クイナの類)、スズメ目(例えば、パーチングバード(perching birds))、ペリカン目(例えば、ペリカン)、フラミンゴ目(例えば、フラミンゴ)、キツツキ目(例えば、キツツキ)、カイツブリ目(例えば、カイツブリ)、ミズナギドリ目(例えば、tube-nosed seabirds)、オウム目(例えば、オウム)、ペンギン目(例えば、ペンギン)、フクロク目(例えば、フクロウ)、ダチョウ目(例えば、cassowaires、エミュー、キーウィ、ダチョウ、レア)、シギダチョウ目(例えば、シギダチョウ)、キヌバネドリ目(例えば、キヌバネドリ)またはミフウズラ目(例えば、ミフウズラ)であろう。e. 魚類 本発明の生物物質は、魚類または魚類から派生したのであろう。魚類は、例えば、チョウザメ目(例えば、ヘラチョウザメ、スプーンフィッシュ(spoonfishes)およびチョウザメ)、ポリプテルス目(例えば、ビッチャー、ビッチャー、lobed-finned pikeおよびリードフィッシュ)、トウゴロウイワシ目(例えば、グッピーおよびトウゴロウイワシ)、ダツ目(例えば、ハーフビーク(halfbeeks)およびダツ)、キンメダイ目、Channiforme、メダカ目(例えば、小魚)、セミホウボウ目(例えば、セミホウボウ)、トゲウオ目(例えば、ヨウジウオおよびトゲウオ)、ボラ目(例えば、ボラ)、ウミテング目(例えば、ネズッポおよびウミテング)、スズキ目(例えば、パーチライクフィッシュ(perch-like fishes))、カレイ目(例えば、カレイ、ヒラメおよびソール)、カサゴ目(例えば、カサゴおよびカジカ)、カンムリキンメダイ目、タウナギ目(例えば、タウナギ)、フグ目(例えば、カウフィッシュ(cowfishes)、カワハギ、カワハギ、マフグ、モンガラカワハギおよびハコフグ)、マトウダイ目(例えば、ボアーフィッシュ、ニシマトウダイおよびマトウダイ)、トウゴロウイワイシ、ニシン目(例えば、カタクチイワシおよびニシン)、ヒメ目、ソトイワシ目、ウナギ目(例えば、ウナギ)、カライワシ目(例えば、ターポン)、ソコギス目(例えば、クロソコギスおよびソコギス)、フウセンウナギ目、アカマンボウ目(例えば、アカマンボウおよびリボンフィッシュ)、カラシン目(例えば、レポリン(leporins)およびピラニア)、コイ目(例えば、ミノウ、サッカー(suckers)、ゼブラフィッシュ)、ネズミギス目(例えば、サバヒーおよびshellears)、デンキウナギ目、ナマズ目(例えば、ナマズ)、Aphredoderiforme (例えば、ケイブフィッシュ(cavefishes)およびパイレットパーチ)、バトラコイデス目、タラ目(例えば、タラおよびメルルーサ)、ウバウオ目、カエルアンコウ亜目(例えば、アンコウ)、アシロ目、サケスズキ目(例えば、サケスズキ)、ギンメダイ目(例えば、ギンメダイ)、クジラウオ目、Ctenothrissiforme、カワカマス目(例えば、ヨーロピアンマッドミノーおよびカワカマス)、キュウリウオ目(例えば、ニギスおよびキュウリウオ)、サケ目(例えば、サケ)、ハダカイワシ目(例えば、ラターン フィッシュ(Latern Fishes))、シャチブリ目、ワニトカゲギス目、アミア目(例えば、アミア)、セミオノータス目(例えば、ガー)、ヨウジウオ目(例えば、ヨウジウオおよびタツノオトシゴ)、ケラトードゥス目(例えば、オウストラリアハイギョ)、レピドシレン目(例えば、レピドシレンおよびレピドシレン)またはシーラカンス目(例えば、シーラカンス)であろう。f. 無脊椎動物 本発明の生物物質は、無脊椎動物または無脊椎動物から派生したのであろう。無脊椎動物は、例えば、海綿動物門(例えば、海綿)、刺胞動物門(例えば、クラゲ、ヒドラ、イソギンチャク、カツオノエボシおよびサンゴ)、扁形動物門(例えば、扁虫、プラナリアを含む、フルークおよびサナダムシ)、線形動物門(例えば、カイチュウ、輪虫綱を含むおよびネマトーダ)、軟体動物門(例えば、軟体動物、カタツムリ、ナメクジ、タコ、イカ)、環形動物門(例えば、条虫類、ミミズを含む、ヒルおよびマリーンウォーム(marine worms))、棘皮動物門(例えば、ヒトデ、ナマコ、タコノマクラ、ウニ)、箒虫動物門(例えば、ホースシュー ウォーム(Horseshoe Worms))、緩歩動物門(例えば、クマムシ)、鈎頭虫門(例えば、鈎頭虫)、有櫛動物門(例えば、有櫛動物)または節足動物門(例えば、クモ形類動物、甲殻綱、ゲジゲジ、ムカデ、昆虫)であろう。 節足動物は、例えば、甲虫目(例えば、カブトムシ)、双翅目(例えば、ハエ)、膜翅目(例えば、アリ、ハチ、スズメバチ)、鱗翅目(例えば、蝶、ガ)、長翅目(例えば、シリアゲムシ)、広翅亜目、脈翅目(例えば、クサカゲロウおよびその類)、隠翅目(例えば、ノミ)、撚翅目(例えば、寄生性昆虫およびネジレバネ寄生虫)、トビケラ目(例えば、トビケラ)、シラミ目(例えば、シラミ)、カメムシ目(例えば、ナンキンムシおよびその類)、食毛目(例えば、ハジラミ)、チャタテムシ目(例えば、チャタテムシ)、総翅目(例えば、アザミウマ)、直翅目(例えば、バッタ、イナゴ)、革翅目(例えば、ハサミムシ)、Dictyoptera、紡脚目(例えば、シロアリモドキ)、ガロアムシ目、踵歩目(例えば、グラジエーター(gladiators))、カワゲラ目(例えば、カワゲラ)、絶翅目(例えば、ジュズヒゲムシ)、カゲロウ目(例えば、カゲロウ)、トンボ目(例えば、トンボおよびイトトンボ)、ナナフシ目(例えば、ナナフシ)、シミ目(例えば、シミ)、総尾目、トビムシ目(例えば、トビムシおよびトビムシ)、唇脚綱(例えば、ムカデ)、倍脚綱(例えば、ゲジゲジ)、少脚類(例えば、ヤスデモドキ、pauropodansおよびprogoneates)、結合類(例えば、ニセムカデおよびコムカデ)、軟甲類(例えば、カニ、クリール、ダンゴ虫、シュリンプ)、顎脚綱、鰓脚亜綱(例えば、鰓脚類)、カシラエビ亜綱、貝形虫綱(例えば、カイムシ)、ムカデエビ亜綱、鰓尾亜綱、蔓脚亜綱(例えば、フジツボ)、蛛形綱(例えば、クモ形類動物、ウデムシを含む、クモ、メクラグモ、メクラグモ、マイクロスコーピオン(microscorpions)、カニムシ、ニセサソリ(false scorpions)、ニセサソリ、サソリ、solpugids、ヒヨケムシおよびサソリモドキ)、節口綱(例えば、カブトガニ)またはウミグモ亜門(例えば、ウミグモ)であろう。g. 菌類 本発明の生物物質は、菌類または菌類から派生したのであろう。菌類は、例えば、子のう菌類(子のう菌)、担子菌類(棍棒状菌)、ツボカビ門(ツボカビ)、不完全菌門または接合菌類。菌類は、リゾープス菌、ミズタマカビ、線虫捕食糸状菌、アスペルギルス属、カワリミズカビ属、ツボカビ、アガリクス、テングタケ、フウセンタケ、アカパンカビ属、アミガサタケ、サッカロミセス属、ピキア、カンジダ菌、分裂酵母または麦角菌であろう。特別な態様において菌類は、出芽酵母、シゾサッカロミセス・ポンベ、カンジダ・アルビカンスまたはメタノール資化酵母(Pichia pastoris)であろう。h. 植物 本発明の生物物質は、植物または植物から派生したのであろう。植物は、コケ植物類(例えば、コケ、ゼニゴケ類、マツモ)、ヒカゲノカズラ類(例えば、ヒカゲノカズラ、アスヒカズラ)、スフェノファイト(Sphenophyte) (例えば、トクサ)、シダ植物門(例えば、シダ)、ソテツソテツ植物門(例えば、ソテツ)、グネツム植物門(例えば、グネツム、マオウ、ウェルウィッチア)、球果植物門(例えば、針葉樹)、イチョウ植物門(例えば、イチョウ)または被子植物門(例えば、顕花植物)。被子植物は単子葉植物または双子葉植物であろう。単子葉植物の非限定的例は、小麦、トウモロコシ、ライムギ、イネ、芝草、モロコシ、キビ、サトウキビ、ユリ、アイリス、リュウゼツラン、アロエ、ラン、アナナスおよび椰子の木を含む。双子葉植物の非限定的例は、タバコ、トマト、ジャガイモ、大豆、ヒマワリ、アルファルファ、カノーラ、バラ、シロイヌナズナ、コーヒー、柑橘類果実、豆、アルファルファおよびワタを含む。i. 原生生物 本発明の生物物質は、原生生物または原生生物から派生したのであろう。原生生物は、紅藻類(例えば、紅藻)、褐藻類(例えば、褐藻、コンブ)、緑色植物門(例えば、緑藻)、ミドリムシ植物門(例えば、ミドリムシ類) ミキソマイコット(Myxomycot) (例えば、変形菌)、(オオマイコット)(Oomycot) (例えば、水生菌、ベト病菌、ジャガイモ胴枯れ病)またはバシラリオファイト(Bacillariophyte) (例えば、ケイ藻)であろう。j. 原核生物 本発明のある局面では、生物物質は、原核生物または原核生物から派生している。ある態様では、原核生物は、古細菌(古細菌)である。古細菌は、例えば、クレンアーキオータ門、ユリアーキオータ門、コルアーキオータ門またはナノアーキオータ門であろう。ある局面では、ユリアーキオータ門は、ハロバクテリウム網、メタノバクテリウム網、メタノコッカス綱、メタノミクロクロビウム網、メタノサルシナ、メタノピルス綱、アーケオグロブス網、テルモプラズマ網またはテルモコックス網である。古細菌の特有な、非限定的例は、以下を含む:エアロパイラム ペルニクス、メタノコックス ジャンナスキイ(Methanococcus jannaschii)、ハロバクテリウム マリスモルツイ(Halobacterium marismortui)および好熱菌。 ある態様では、原核動物は、真正細菌である。真正細菌は、例えば、放線菌門、アキフェックス門、Bacteroidetes、緑色硫黄細菌、クラミジア門、ヴェルコミクロビウム門、クロロフレキシ門(Chloroflexi)、クリシオゲネス門、シアノバクテリア、デフェリバクター門、デイノコックス-テルムス門、ディクティオグロムス門、フィブロバクター門/アシドバクテリウム門、グラム陽性細菌門、フソバクテリア門、ジェマティモナデテス門、ニトロスピラ門、オムニバクテリア綱、プラクトミセス門、プロテオバクテリア門、スピロヘータ(Spirochaetes)、テルモデスルフォバクテリウム門またはテルモトガ門であろう。放線菌門の非限定的例は、放線菌、アルトロバクター属、コリネバクテリウム属、フランキア属、球菌属、ミクロモノスポラ属、マイコバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属およびストレプトミセス属の細菌を含む。放線菌門の特有の例は、癩菌、結核菌、ミコバクテリウム アビウム(Mycobacterium avium)、コリネバクテリウム属グルタミクム、嫌気性細菌およびロドコックスエクイ(Rhodococcus equi)の細菌を含む。 アキフェックス門の非限定的例は、属アキフェックス、Hydrogenivirga、ヒドロゲノバクテル(Hydrogenobacter)、ヒドロゲノバクルム(Hydrogenobaculum)、テルモクリニス(Thermocrinis)、ヒドロゲノテルムス(Hydrogenothermus)、ペルセホネラ(Persephonella)、スルフリヒドロゲニビウム(Sulfurihydrogenibium)、バルネアリウム(Balnearium)、デスルフロバクテリウム(Desulfurobacterium)およびテルモビブリオ(Thermovibrio)の細菌を含む。。グラム陽性細菌門の非限定的な例は、桿菌、クロストリジウム属およびモレクテスの細菌を含む。グラム陽性細菌門の特有な例は、以下を含む:リステリア インノクア(Listeria innocua)、リステリア モノサイトゲネス、枯草菌、炭疽菌、バチルスチューリンゲンシス、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム ディフィシル(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌、マイコプラズマ ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)、マイコプラズマ ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、肺マイコプラズマ、肺炎連鎖球菌、化膿レンサ球菌、ミュータンス連鎖球菌、ラクトコッカス ラクチスおよびエンテロコッカス フェカーリス。 クラミジア/ヴェルコミクロビウム門の非限定的例は、クラミジア トラコマチス、肺炎クラミジア、Iオウム病クラミジアなどの細菌を含む。デイノコックス-テルムス門の非限定的例は、デイノコックスおよびテルムス属の細菌を含む。 プロテオバクテリアは、グラム陰性菌である。プロテオバクテリアの非限定的例は、エシェリヒア属、サルモネラ菌属、ビブリオ属、リケッチア属、アグロバクテリウム属、ブルセラ属、リゾビウム属、ナイセリア属、ボルデテラ属、ブルコルデリ(Burkholderi)、ブクネラ(Buchnera)、エルシニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌属、ヘモフィルス属、パスツレラ属、アクチノバチルス属、レジオネラ、マンハイミア属、コキシエラ属、アエロモナス属、フランキセラ属、モラクセラ属、シュードモナス属、カンピロバクター菌およびヘリコバクター属の細菌を含む。プロテオバクテリアの特有な例は、以下を含む:丘疹熱リケッチア、リケッチア プロワツェキイ、発疹熱リケッチア、エールリヒア属ボビス、アグロバクテリウム チュメファシエンス、ブルセラメリテンシス、リゾビウム属リゾゲネス、髄膜炎菌、パラ百日咳菌、百日咳菌、鼻疽菌(Burkholderi mallei)、類鼻疽菌(Burkholderi pseudomallei)、淋菌、大腸菌、サルモネラ エンテリカ、ネズミチフス菌、ペスト菌、肺炎桿菌、エンテロコリチカ菌、変形菌、フレキシナ赤痢菌、ソンネ赤痢菌、赤痢菌ジセンテリカ(Shigella dysenterica)、インフルエンザ菌、パスツレラ ムルトシダ菌、アクチノバチルス属アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アクチノバチルス属プレウラニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ヘモフィルス属ソムナス、レジオネラ ニューモフィラ菌、マンハイミア ハエモリチカ(Mannheimia haemolytica)、コレラ菌、病原性好塩菌、コクシエラ・バーネッティ、アエロモナス・ハイドロフィラ、アエロモナス サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)、フランキセラ属ツラレシス(Francisella tularesis)、モラクセラカタラーリス、緑膿菌、プチダ菌、カンピロバクター ジェジュニおよびヘリコバクター ピロリ。 スピロヘータの非限定的例は、Brachyspiraceae、レプトスピラ科およびスピロヘータ科の細菌を含む。スピロヘータの特有な例は、ボレリア バーグドルフェリーおよび梅毒トレポネーマを含む。2. 様々なタイプの生物物体 本発明の方法および器具は、生物に応用できる。スタシスは生物に誘導、および/または生物の細胞、組織、および/または臓器内に誘導できる。本発明の方法および器具との使用が企図される、スタシスを誘導できる生物物体は、酸素を利用してエネルギーを産生する細胞を含むものに限定される。 スタシスは、細胞、組織、または心臓、肺、腎臓、肝臓、骨髄、膵臓、皮膚、骨、静脈、動脈、角膜、血液、小腸、大腸、脳、脊髄、平滑筋、骨格筋、卵巣、精巣、子宮、および臍帯を含む臓器に誘導できる。 よりさらには、スタシスは次のタイプの細胞に誘導できる:血小板、骨髄細胞、赤血球、リンパ細胞、脂肪細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、内分泌細胞、グリア細胞、ニューロン、分泌細胞、バリアー機能細胞、収縮細胞、吸収細胞、粘膜細胞、角膜輪部細胞(角膜由来)、幹細胞(全能、多能、または多分化能)、未受精または受精卵細胞、あるいは精子。 よりさらには、スタシスは植物または、果実、花、葉、茎、種、切り花を含む植物の一部分に誘導できる。植物は、農業用、薬用、または装飾用でよい。植物へのスタシスの誘導は、植物全体もしくは一部分の保存寿命または病原菌耐性を高めることができる。 本発明の方法および器具は、インビボの生物物体をスタシスに誘導するのに用いることができる。これは、生物物体または生物そのものを保護および/または保存するか、またはそれらまたは生物全体に対する損傷もしくは傷害(またはさらなる損傷または傷害)を予防するのに役立てることができる。3. アッセイ スタシスは、生物学的サンプルが消費する酸素量、サンプルが産生する二酸化炭素の量を定量化する(細胞呼吸の間接的測定)、または運動性を特徴付けることを含む、様々な方法で測定できる。 酸素消費速度または二酸化炭素産生速度を決定するためには、生物物体を二つの開口部:気体取り入れ口および排出口を備えた、密封チャンバーに入れる。気体(室内空気またはその他の気体)を所与流速でチャンバー内に通し、かつチャンバー内の圧力をほぼ1大気圧に保つために出口から出す。チャンバーを暴露する前後に、気体を二酸化炭素検出器および酸素検出器に通して、混合気体中の各化合物の量を測定する(毎秒)。これらの値を経時的に比較して、酸素消費速度または二酸化炭素産生速度を得る。II. 酸素アンタゴニストおよび他の活性化合物 本発明は、以下を含みこれに限定されないが、生物物体に働いて、様々な効果を生み出す、一つまたは複数の作用物質が関与する方法、組成物、および製造物に関する:スタシス誘導、生存能力の強化または増加、代謝の可逆的阻害、細胞もしくは生物代謝および活動の低下、酸素要求の低下、損傷の軽減もしくは予防、虚血損傷の予防、加齢もしくは老化の予防、ならびに/または本明細書に論ずる様々な治療応用の達成。ある態様では、作用物質は「活性化合物」としての資格を有する。 いくつかの態様では、作用物質は酸素アンタゴニストであり、それは直接または間接的に作用できる。酸素代謝は、好気性後生動物の生活にとって基本的要求である。有気呼吸は、多くの動物において殆どのエネルギーを産生するものであり、かつ重要な細胞反応の遂行に必要な酸化還元電位を維持する働きもしている。低酸素状態では、酸素利用度の低下によって電子伝達鎖の最終段階に於ける分子酸素への電子の伝達の効率が悪化する。この非効率化は、主に複合体IIIでの早過ぎる電子放出およびチトクロームオキシダーゼによるO2- 形成によって、好気的エネルギー産生の低下と損傷性のフリーラジカルの産生増加の両方をもたらす(Semenza, 1999)。エネルギー供給が制限されたことと、フリーラジカル損傷は、タンパク質合成および膜の極性維持などの必要不可欠な細胞プロセスを妨害でき(Hochachka et al., 1996)、最終的に細胞死に導くだろう。 別の態様では、作用物質は保護的代謝作用物質である。代謝は、生活に必要な(細胞または生物内の)化学的プロセスと称されることが一般的に理解されている;それらにはエネルギー産生を維持し、かつ複雑な分子を合成(同化)および分解(異化)する様々な反応が関係している。 本発明のある態様では、活性化合物は、本明細書に記載の式IもしくはIVで表される化学構造を有するか、または式IもしくはIVの前駆体である。 本明細書には、様々な化学構造および化合物が記載されている。本明細書で論ずるこれらの構造および化合物を記載するために用いられる用語には、次の定義が適用される。 「アルキル」は、単独または他の用語の中に用いられるかのいずれかで、例えば「アリールアルキル」、「アミノアルキル」、「チオアルキル」、「シアノアルキル」、および「ヒドロキシアルキル」のように、1〜12個の炭素原子を有する、直鎖または分岐ラジカルを指す。用語「低級アルキル」は、C1〜C6アルキルラジカルを指す。本明細書で使用する用語アルキルは、ヒドロキシ、ハロ(F、Cl、Br、Iなど)、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオ、シアノ、イソシアノ、カルボキシ(-COOH)、アルコキシカルボニル(-COOR)、アシル、アシルオキシ、アミノ、アリカミノ(alykamino)、ウレア(--NHCONHR)、チオール、アルキルチオ、スルホキシ、スルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールスルホンアミド、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アミジル、アルキルイミノカルボニル、アミジノ、グアニドノ、ヒドラジノ、ヒドラジド、ナトリウムスルホニル(-SO3Na)、ナトリウムスルホニルアルキル(-RSO3Na)などの基で置換されるラジカルを含む。このようなラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。 「ヒドロキシアルキル」は、本明細書に定義されるように、1個または複数のヒドロキシルラジカルで置換された、アルキルラジカルを指す。ヒドロキシアルキルラジカルの例としては、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチル、および2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピル等が挙げられるが、これらに限定されない。 「アリールアルキル」は、式中のアルキルラジカル「R」がアリールラジカル「R'」で置換されたラジカルR'R-を指す。アリールアルキルラジカルの例としては、ベンジル、フェニルエチル、3-フェニルプロピル等が挙げられるが、これらに限定されない。 「アミノアルキル」は、ラジカルH2NR'-を指し、ここで、アルキルラジカルはアミノラジカルで置換されている。このようなラジカルの例としては、アミノメチル、アミノエチル等が挙げられる。「アルキルアミノアルキル」は、アルキルアミノラジカルで置換されたアルキルラジカルを指す。 「アルキルスルホンアミド」は、本明細書に定義されているようなアルキル基に付加されたスルホンアミド基(-S(O)2-NRR')を指す。 「チオアルキル」は、アルキルラジカルが1個または複数のチオールラジカルで置換されていることを指す。「アルキルチオアルキル」は、アルキルラジカルが一つまたは複数のアルキルチオラジカルで置換されていることを指す。例としては、メチルチオメチル、エチルチオイソプロピル等が挙げられるが、これらに限定されない。「アリールチオアルキル」は、本明細書に定義されるようなアルキルラジカルが、1個または複数のアリールチオジカルで置換されていることを指す。 「カルボキシアルキル」は、ラジカル-RCO2Hを指し、ここで、アルキルラジカルはカルボキシルラジカルで置換されている。例としては、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル等が挙げられるが、これらに限定されない。 「アルキレン」は、架橋されたアルキルラジカルを指す。 用語「アルケニル」は、少なくとも一つの二重結合を含んでいる、不飽和の非環式炭化水素ラジカルを指す。このようなアルケニルラジカルは、約2〜約20個の炭素原子を含んでいる。用語「低級アルケニル」は、C1〜C6アルケニルラジカルを指す。本明細書で使用する用語アルケニルラジカルは、アルキルラジカルに関して置換されたラジカルを含む。好適なアルケニルラジカルの例としては、プロペニル、2-クロロプロペニル、ブテン-1-イル、イソブテニル、ペンテ-1-エン-1-イル、2-2-メチル-1-ブテン-1-イル、3-メチル-1-ブテン-1-イル、ヘキサ-2-エン-1-イル、3-ヒドロキシヘキサ-1-エン-1-イル、ヘプト-1-エン-1-イル、およびオクト-1-エン-1-イル等が挙げられる。 用語「アルキニル」は、約2〜約20個の炭素原子を含むラジカルなどの、一つまたは複数の三重結合を含む不飽和の、非環式炭化水素ラジカルを指す。用語「低級アルキニル」は、C1〜C6アルキニルラジカルを指す。本明細書で使用する、用語アルキニルラジカルは、アルキルラジカルに関して置換されたラジカルを含む。好適アルキニルラジカルの例としては、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-2-イル、ペンタ-1-イン-1-イル、ペンタ-1-イン-2-イル、4-メトキシペンタ-1-イン-2-イル、3-メチルブタ-1-イン-イル、ヘキサ-1-イン-1-イル、ヘキサ-1-イン-2-イル、ヘキサ-1-イン-3-イル、3,3-ジメチル-1-ブチン-1-イルラジカル等が挙げられる。 「アルコキシ」はラジカルR'O-を指し、ここで、R'は本明細書に定義されているアルキルラジカルである。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシアルキル等が挙げられるが、これらに限定されない。「アルコキシアルキル」は、1個または複数のアルコキシラジカルで置換されたアルキルラジカルを指す。例としては、メトキシメチル、エトキシエチル、メトキシエチル、イソプロポキシエチル等が挙げられるが、これらに限定されない。 「アルコキシカルボニル」は、ラジカルR-O-C(O)-を指し、ここで、Rは本明細書に定義されたアルキルラジカルである。アルコキシカルボニルラジカルの例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル等が挙げられるが、これらに限定されない。アルコキシチオカルボニルはR-O-C(S)-を指す。 「アリール」は、1個の個別の環からなるか、または少なくとも1個の環が実際に芳香族である1個もしくは複数の縮合環からなる、一価芳香族炭素環ラジカルであり、別に記載がない限り、それは任意で、ヒドロキシ、ハロ(F、Cl、Br、Iなど)、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオ、シアノ、カルボキシ(-COOH)、アルコキシカルボニル(-COOR)、アシル、アシルオキシ、アミノ、アリカミノ、ウレア(--NHCONHR)、チオール、アルキルチオ、スルホキシ、スルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールスルホンアミド、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アミジル、アルキルイミノカルボニル、アミジノ、グアニドノ、ヒドラジノ、ヒドラジド、ナトリウムスルホニル(-SO3Na)、ナトリウムスルホニルアルキル(-RSO3Na)などの1個または複数、好ましくは1個または2個の置換基で置換されていることができる。または、アリール環の二つの隣接する原子をメチレンジオキシまたはエチレンジオキシ基で置換することもできる。アリールラジカルの例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インダニル、アントラキノリル、tert-ブチル−フェニル、1,3-ベンゾジオキソリル等が挙げられるが、これらに限定されない。 「アリールスルホンアミド」は、本明細書に定義されるアリール基に付加された、本明細書に定義されるスルホンアミド基を指す。 「チオアリール」は、1個または複数のチオールラジカルで置換されたアリール基を指す。 「アルキルアミノ」は、1個または2個のアルキルラジカルで置換されたアミノ基を指す。例としては、一置換N-アルキルアミノラジカルおよびN,N-ジアルキルアミノラジカルが挙げられる。例としては、N-メチルアミノ、N-エチルアミノ、N,N-ジメチルアミノN,N-ジエチルアミノ、N-メチル、N-エチル-アミノ等が挙げられる。 「アミノカルボニル」は、ラジカルH2NCO-を指す。「アミノカルボニルアルキル」は、1個または複数のアミノカルボニルラジカルによる、本明細書に定義されるアルキルラジカルの置換を指す。 「アミジル」は、RCO-NH-を指し、ここで、RはHまたは本明細書に定義するアルキル、アリール、もしくはヘテロアリールである。 「イミノカルボニル」は、四つある供給結合部位の内の二つをアミノ基と共有している炭素ラジカルを指す。このようなイミノカルボニルラジカルの例としては、例えばC=NH、C=NCH3、C=NOH、およびC=NOCH3が挙げられる。用語「アルキルイミノカルボニル」は、アルキル基で置換されたイミノラジカルを指す。用語「アミジノ」は、二つの利用可能なイミノカルボニルラジカルの結合のうちの一つに結合した置換または非置換アミノ基を指す。このようなアミジノラジカルの例としては、例えばNH2-C=NH、NH2-C=NCH3、NH-C=NOCH3、およびNH(CH3)-C=NOHが挙げられる。用語「グアニジノ」は、上記に定義されたアミノ基に結合したアミジノ基を指し、該アミノ基は第3の基に結合できる。このようなグアニジノラジカルの例としては、例えばNH2-C(NH)-NH-、NH2-C(NCH3)-NH-、NH2-C(NOCH3)-NH-、およびCH3NH-C(NOH)-NH-が挙げられる。用語「ヒドラジノ」は、-NH-NRR'を指し、この時のRおよびR'は独立に水素、アルキル等である。「ヒドラジド」は、-C(O=)-NH-NRR'を指す。 用語「ヘテロシクリル」は、飽和および一部飽和した、4〜15個の環メンバーを有する、ヘテロ原子を含む環形状のラジカルであり、ここでは炭素、窒素、硫黄、および酸素より選択される「C4〜C15ヘテロシクリル」を指し、ここで、少なくとも一つの環原子はヘテロ原子である。ヘテロシクリルラジカルは、1個、2個、または3個の環を含むことができ、ここで、このような環はペンダント様式につなぐか、または融合することができる。飽和複素環ラジカルの例としては、1〜4個の窒素原子を含む飽和3〜6員複素単環式基[例えばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル等];1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む飽和3〜6員複素単環式基[例えばモルホリニル等];1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含む飽和3〜6員複素単環基[例えばチアゾリジニル等]が挙げられる。部分飽和ヘテロシクリルラジカルの例としては、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、およびジヒドロチアゾールが挙げられる。複素環ラジカルの非限定例としては、2-ピロリニル、3-ピロリニル、ピロリンジニル、1,3-ジオキソラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ピペリジニル、1,4-ジオキサニル、モルホニリル、1,4-ジチアニル、チオモルホリニル等が挙げられる。このようなヘテロシクリル基は、任意で、ヒドロキシ、ハロ(F、Cl、Br、Iなどの)、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオ、シアノ、カルボキシ(-COOH)、アルコキシカルボニル(-COOR)、アシル、アシルオキシ、アミノ、アリカミノ、ウレア(--NHCONHR)、チオール、アルキルチオ、スルホキシ、スルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールスルホンアミド、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アミジル、アルキルイミノカルボニル、アミジノ、グアニドノ、ヒドラジノ、ヒドラジド、ナトリウムスルホニル (-SO3Na)、ナトリウムスルホニルアルキル(-RSO3Na)などの置換基などの基で置換されていてもよい。 「ヘテロアリール」は、環当たり4〜8個の原子の、1個または複数の環、好ましくは1〜3個の環を有し、環中に1個または複数のヘテロ原子、好ましくは1個または2個のヘテロ原子(窒素、酸素、または硫黄から選択される)を組み入れた、一価芳香族環ラジカルを指し、別に記載がない限り、それは任意で、ヒドロキシ、ハロ(F、Cl、Br、Iなど)、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオ、シアノ、カルボキシ(-COOH)、アルコキシカルボニル(-COOR)、アシル、アシルオキシ、アミノ、アリカミノ、ウレア(--NHCONHR)、チオール、アルキルチオ、スルホキシ、スルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールスルホンアミド、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アミジル、アルキルイミノカルボニル、アミジノ、グアニドノ、ヒドラジノ、ヒドラジド、ナトリウムスルホニル(-SO3Na)、ナトリウムスルホニルアルキル(-RSO3Na)などの置換基から選択される1個または複数、好ましくは1個または2個の置換基で置換されていることができる。ヘテロアリールラジカルの例としては、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピラニル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、ベンゼンスルホニル-チオフェニル等が挙げられるが、これらに限定されない。 「ヘテロアリールオキシ」は、オキシラジカルに結合したヘテロアリールラジカルを指す。このようなラジカルの例としては、2-チオフェニルオキシ、2-ピリミジルオキシ、2-ピリジルオキシ、3-ピリジルオキシ、4-ピリジルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。 「ヘテロアリールオキシアルキル」は、1個または複数のヘテロアリールラジカルで置換されたアルキルラジカルを指す。このようなラジカルの例としては、2-ピリジルオキシメチル、3-ピリジルオキシエチル、4-ピリジルオキシメチル等が挙げられる。 「シクロアルキル」は、環当たり3〜8個の炭素の、1個または複数の環、典型的には1個または2個の環からなる、一価飽和炭素環ラジカルを指し、特に指示がない限り、それは、典型的にはヒドロキシ、ハロ(F、Cl、Br、Iなど)、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオ、シアノ、カルボキシ(-COOH)、アルコキシカルボニル(-COOR)、アシル、アシルオキシ、アミノ、アリカミノ、ウレア(--NHCONHR)、チオール、アルキルチオ、スルホキシ、スルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールスルホンアミド、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アミジル、アルキルイミノカルボニル、アミジノ、グアニドノ、ヒドラジノ、ヒドラジド、ナトリウムスルホニル(-SO3Na)、ナトリウムスルホニルアルキル(-RSO3Na)などの1個または複数の置換基で置換することができる。シクロアルキルラジカルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、3-エチルシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘプチル等が挙げられるが、これらに限定されない。「シクロアルケニル」は、3〜10個の炭素原子および一つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有するラジカルを指す。典型的なシクロアルケニルラジカルは、3〜7個の炭素原子を有する。例としては、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等が挙げられる。「シクロアルケニルアルキル」は、本明細書に定義されるアルキルラジカルが、1個または複数のシクロアルケニルラジカルで置換されているラジカルを指す。 「シクロアルコキシ」は、オキシラジカルに結合したシクロアルキルラジカルを指す。例としては、シクロヘキソオキシ、シクロペントキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。 「シクロアルコキシアルキル」は、1個または複数のシクロアルコキシラジカルで置換されたアルキルラジカルを指す。例としては、シクロへキソオキシエチル、シクロペントキシメチル等が挙げられる。 スルフィニルは-S(O)-を指す。 「スルホニル」は-S(O)2-を指し、ここで、「アルキルスルホニル」はアルキルラジカル、RSO2-で置換されたスルホニルラジカルを指し、アリールスルホニルは、スルホニルラジカルに結合したアリールラジカルを指す。「スルホンアミド」は、-S(O)2-NRR'を指す。「スルホン酸」は、-S(O)2OHを指す。「スルホン酸エステル」は、-S(O)2ORを指し、ここで、Rはスルホン酸アルキルエステル中などのアルキルなどの基である。 「チオ」は、-S-を指す。「アルキルチオ」は、チオールラジカルがアルキルラジカルRで置換されたRS-を指す。例としては、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等が挙げられる。「アリールチオ」はR'S-を指し、ここで、チオラジカルは本明細書に定義されるアリールで置換されている。例としては、フェニルチオ等が挙げられるが、これに限定されない。例としては、フェニルチオメチル等が挙げられるが、これに限定されない。「アルキルチオスルホン酸」は、ラジカルHO3SR'S-を指し、ここで、アルキルチオラジカルはスルホン酸ラジカルで置換されている。 「チオスルフェニル」は-S-SHを指す。 「アシル」は、単独または組み合わせて、例えばヒドリド、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アルキリルチオ、アリールチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルコキシ、アリールチオ、およびアルキルチオアルキルより選択されるラジカルに結合しているカルボニルまたはチオノカルボニル基を指す。「アシル」の例は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、フタロイル、マロニル、ニコチニル等である。 用語「アシルチオール」および「アシルジスルフィド」は、それぞれラジカルRCOS-およびRCOSS-を指す。 用語「チオカルボニル」は、硫黄原子に二重結合で結合している炭素-C(=S)-を含む化合物および成分を指す。「アルキルチオカルボニル」は、チオカルボニル基が本明細書に定義されているアルキルラジカルRで置換され、一価のラジカルRC(=S)-を形成しているものを指す。「アミノチオカルボニル」は、アミノ基で置換されたチオカルボニル基、NH2C(=S)-を指す。 「カルボニルオキシ」は-OCORを指す。 「アルコキシカルボニル」は-COORを指す。 「カルボキシル」は-COOHを指す。 立体異性体を持つ化合物の場合、cis/trans幾何異性体、ジアステレオマー、および個々のエナンチオマーを含む、それらの全ての立体異性体が企図される。A. 一酸化炭素 一酸化炭素(CO)は、ヒトを含む動物にとって有毒な無色、無臭、無味な気体である。Center for Disease Controlによれば、毎年450名を越える人々が一酸化炭素により事故死している。 一酸化炭素は、血液が酸素を運搬してその生存を維持している生物にとって有毒であり得る。それは、正常な呼吸を通して肺に入り、血流の酸素と置き換わることで毒性を発揮するだろう。正常な酸素供給の中断は、心臓、脳、および体の他の生命機能を脅かす。しかしながら、医学的用途での一酸化炭素の使用が模索されている(Ryter et al., 2004)。 一酸化炭素は、50の百万分の一(ppm)の量では、それに暴露したヒトは何の兆候も示さない。しかし200ppmでは、一酸化炭素は、2〜3時間内に軽い頭痛を引き起こす;400ppmでは、1〜2時間以内に前頭部頭痛を引き起こし、それは3時間以内に広がるだろう;さらに800ppmでは、それは45分以内に目眩、悪心、および/または痙攣を引き起こし、2時間以内に被験体を無意識状態にするだろう。約1000ppmのレベルでは、生物は、約1〜2分を越えて暴露すると死亡に至る。 生物に対する一酸化炭素の毒作用は周知かつ十分裏付けられていることから、一酸化炭素を用いて生きている生物学的サンプルのスタシス誘導および/または保存を補助できることは意外かつ予想外である。したがって、一酸化炭素を用いて、無血生物物体(スタシス誘導に関係する以外の経路のヘモグロビンに対する一酸化炭素の作用を考慮して)などの単離された生物物体をスタシスに誘導できることが企図される。 一酸化炭素に暴露してスタシスを誘導するか、またはスタシス誘導剤が引き起こす損傷を制限もしくは防止することのいずれかに加えて、本発明は、一酸化炭素を生物物体の保存および/または移植/グラフティングのプロセスを補助する作用物質または方法と一緒にもちいることを企図する。B. カルコゲニド化合物 カルコゲン元素:酸素を除く周期律表第6属の元素を含む化合物は、一般的に「カルコゲニド」または「カルコゲニド化合物(本明細書では互換的に用いられる)」と呼ばれている。これら元素は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、およびポロニウム(Po)である。一般的なカルコゲニドは、他の元素に加えて、一つまたは複数のS、Se、およびTeを含む。カルコゲニドは、SおよびSeのミクロン単位および/またはナノ単位に加工された微粒子などの要素形態を含む。カルコゲニド化合物は、還元剤として用いることができる。 本発明者らは、以下の理論に拘束されることはないが、細胞にスタシスを誘導し、動物の中心体温を変えることができるカルコゲニドの能力は、これら分子がチトクロームオキシダーゼに結合できることに由来すると確信している。そうすることでカルコゲニドは酸化的リン酸化の活性を阻害または低下する。カルコゲニドの自律的体温調整を遮断する能力、即ち環境温度の制御を通して「温血」動物の中心体温を操作できるようにする能力は、上記と同じメカニズム−チトクロームオキシダーゼへの結合、および酸化的リン酸化の活性遮断または低下に由来するものと信じられる。カルコゲニドは、液体だけでなく気体の形でも提供できる。 カルコゲニドは哺乳類に対し有毒となり、あるレベルでは致死的になり得る。本発明によれば、カルコゲニドのレベルは、適切な環境において致死レベルを超えないと予想される。カルコゲニドの致死レベルは、例えば各カルコゲニドに関するMaterial Safety Data Sheetsまたは米国政府のOccupational Safety and Health Administration(OSHA)から入手できる情報シートに見いだせる。 一酸化炭素およびカルコゲニド化合物は共に、酸素アンタゴニストとして作用することでスタシスを誘導することができるが、それらは、スタシスを誘導するそれらの能力とは別に、異なる有毒作用も有している。よりさらには、スタシス作用を伝達するのに必要な濃度は、チトクロームオキシダーゼの親和性が多様であることから様々である。酸素に関するチトクロームオキシダーゼの親和性は一酸化炭素と比較した場合、約1:1であるのに対し、H2Sに関する親和性は酸素と比較した場合、おおよそ約300:1と思われる。これは、スタシス誘導濃度で観察される有毒作用に大きく影響する。したがってカルコゲニド化合物は、生物全体の中にある生物物体のスタシス誘導、および生物全体のスタシス誘導に特に適していると企図される。 カルコゲニド撤去前に追加の刺激を生物物体に提供することが有用であることも証明できる。具体的には、カルコゲニド供給源を取り除く前に、動物に高い室温を作用させることが考えられる。1. H2Sおよび他の硫黄含有化合物 硫化水素(H2S)は、石油化学および天然ガス、下水、製紙用パルプ、皮のなめし、ならび食品加工に付随することの多い、極めて毒性の高い気体である。細胞レベルでの主な作用は、チトクロームオキシダーゼおよび他の酸化酵素の阻害と思われ、細胞を低酸素状態にする。高レベル(500ppm)への暴露は、いわゆる「ノックダウン」効果である突然の虚脱および意識消失を招き、その後回復する。暴露後作用は数年間持続することがあり、協調運動障害、記憶喪失、運動機能障害、人格変化、幻覚、および不眠症が挙げられる。 しかしながら、H2Sとの接触の多くは、このような急性毒性レベルよりはるかに低い。しかしながら、亜急性レベルでの長期接触については一般的な問題が存在する。平衡感覚および記憶の持続的欠陥を示すいくつかの報告があり、さらに慢性的な低レベルH2Sへの暴露によってヒトに感覚運動機能が変化することもある。Kilburn and Warshaw (1995); Kilburn (1999)。他に、ラットを、妊娠期間から出産後21日目まで低(20または50 ppm)レベルのH2Sに、1日7時間周産期に暴露すると、樹状細胞の枝がより長くなり、それに伴って小脳のプルキンエ細胞の定着化が低下するという報告がある。比較的低レベルのH2Sに関係する他の神経学的欠陥としては、脳の神経伝達物質濃度の変化および海馬θEEG活動の上昇などの神経学的反応の変化が挙げられる。 行動毒性は、中レベルのH2Sに暴露されたラットで研究された。結果は、H2Sが暴露直後に同定型回避反応を阻害すること(Higuchi and Fukamachi, 1997)およびラットの餌付けによるラジアルアーム迷路作業の学習能力も妨げられることを示した(Partlo et al., 2001)。80ppmのH2Sを用いた別の周産期研究では、暴露された子ラットについて、神経病理的作用は認められず、または運動活動の変化、受動回避、または音響に対する驚愕反射の変化も認められなかった。Dorman et al. (2000)。最後に、Struveら(2001)は、ラットを様々なレベルの気体を使って、1日当たり3時間、5連続日H2Sに暴露させた。80ppmまたはそれ以上のH2Sに暴露すると、運動活動、水迷路成績、および体温の顕著な低下が観察された。まとめると、これらの報告は、H2Sが哺乳類組織の生化学に様々な影響を有し得るが、行動に関して明瞭な反応パターンが存在しないことを示している。 血漿中に一度溶解すると、H2Sは様々な化学反応に関与するようになる。化学反応は:(1)分子状H2Sの解離によるビスルフィドイオンの形成、(2)ビスルフィドイオンのスルフィドイオンへの解離、および(3)水の自己イオン化である。反応は次式で表される: H2S(aq) ⇔ HS(aq) + H+(aq) HS-(aq) ⇔ S2(aq) + H+(aq) H2O ⇔ H+(aq) + OH-(aq) 平衡定数をK1=1.039 E-07、K2=6.43 E-16、およびKW=1.019 E-14、pH7.4とすると、全S濃度に対するそれぞれの種の計算量はおおよそ23%H2Sおよび77%HS-となり、一方S2-の量はゼロに近くなる。 本発明者らは、ガスクロマトグラフィーおよび質量特異的検出器に抽出アルカリ化法を組み合わせた方法を用いて硫化水素を定量化する(Hyspler et al., 2002より採用)。この方法は、最初に、窒素パージして脱酸素化した水で濃度1mg/mlに希釈した、50μLの血液サンプル、血清、または組織抽出サンプルを、5mM塩化ベンズアルコニウム(BZK)から成る反応バッファー150μLと一緒に飽和ホウ酸バッファーに加える段階を含む。これに、最初に15μMの4-クロロ-ベンジル硫化メチル(4CBMS)酢酸エチル溶液100μLを加え、次に20mMのペンタフルオロベンジルブロミド(PFBBr)のトルエン溶液100μLを加える。次にこの溶液を密封して、回転または撹拌しながら2時間、55℃でインキュベートする。このインキュベーション期間後、次にKH2PO4の飽和溶液200μLを加えて、有機相を取り出し、Hysplerら、2002に記載されている方法にしがって、ガスクロマトグラフィーおよび質量特異的検出器により分析する。次にこれら測定値を、内在硫化水素のレベルの濃度を決定するために、上記と同じ方法を用いて作成する、窒素パージした脱酸素化H2Oで調製した1μM〜1mMの範囲のNa2Sの公知標準濃度を用いた標準曲線と比較する。結合および/または酸化した硫化物のレベルを分析するために、上記反応バッファーに代わって、1%の水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)および1mMのトリス(2-カルボキシエチル)-塩酸化ホスフィン(TCEP)を含む5mMのBZKの飽和ホウ酸バッファーから成る変性/還元反応バッファーを用いることを除いて同じ方法を用いる。 本発明による使用に企図される硫化水素の典型的なレベルとしては、約1〜約150ppm、約10〜約140ppm、約20〜約130ppm、および約40〜約120ppmの値、または同等のその経口、静脈内、もしくは経皮用量が挙げられる。他の関連域としては、約10〜約80ppm、約20〜約80ppm、約10〜約70ppm、約20〜約70ppm、約20〜約60ppm、および約30〜約60ppm、または同等のその経口、静脈内、もしくは経皮的範囲が挙げられる。所与の動物について、所与の期間カルコゲニド雰囲気を下げて、被験体内に潜在的に致死的なカルコゲニドの蓄積を回避することも企図される。例えば、80ppmの初期環境濃度を30分後に60ppmに下げ、1時間目(40ppm)および2時間目(20ppm)にさらに下げることができる。a. H2S前駆体 本発明は、生物物体に暴露した時、またはその後すぐなどの一定の条件の下でH2Sを生ずることができる化合物および作用物質にも関する。このような前駆体は、一つまたは複数の酵素的または化学的反応によってH2Sを生ずることが企図される。3. その他のカルコゲニド ある態様では、還元剤構造化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルフィド(DMS)、メチルメルカプタン(CH3SH)、メルカプトエタノール、チオシアナート、シアン化水素、メタンエチオール(MeSH)、またはCS2である。特定の態様では、酸素アンタゴニストは、CS2、MeSH、またはDMSである。これら分子のおおよそのサイズの化合物が特に企図される(即ち、これら分子量の約50%以内)。 スタシス誘導に有用と考えられる追加の化合物としては、以下の構造物が挙げられるが、これらに限定されず、その多くは容易に入手可能であり、かつ当業者に公知である(CAS番号により同定される):104376-79-6 (セフトリアキソンナトリウム塩);105879-42-3;1094-08-2 (エトプロパチンHCl);1098-60-8 (トリフルプロマジンHCl);111974-72-2;113-59-7;113-98-4 (ペニシリン G K+);115-55-9;1179-69-7;118292-40-3;119478-56-7;120138-50-3;121123-17-9;121249-14-7;1229-35-2;1240-15-9;1257-78-9 (プロクロルペラジンエジシル酸塩 );128345-62-0;130-61-0 (チオリダジンHCl) 132-98-9 (ペニシリンV K+);13412-64-1 (ジクロキサシリンNa+ 水和物);134678-17-4;144604-00-2;146-54-3;146-54-5 (フルフェナジン 2HCl);151767-02-1;159989-65-8;16960-16-0 (アドレノコルチコトロパ酸ホルモンフラグメント1-24);1982-37-2;21462-39-5 (クリンダマイシンHCl);22189-31-7;22202-75-1;23288-49-5 (プロブコール);23325-78-2;24356-60-3 (セファピリン);24729-96-2 (クリンダマイシン);25507-04-4;26605-69-6;27164-46-1 (セファゾリンNa+);2746-81-8;29560-58-8;2975-34-0;32672-69-8 (メソリダジンベンゼンスルホナート);32887-01-7;33286-22-5 ((+)-cis-ジルチアゼムHCl);33564-30-6 (セホキシチンNa+);346-18-9;3485-14-1;3511-16-8;37091-65-9 (アズロシリンNa+);37661-08-8;3819-00-9;38821-53-3 (セフラジン);41372-02-5;42540-40-9 (セファマンドールナファート);4330-99-8 (トリメプラジンヘミ-(+)-酒石酸塩);440-17-5 トリフロペラジン 2HCl;4697-14-7 (チカルシリン2Na+);4800-94-6 (カルベニシリン2Na+);50-52-2;50-53-3;5002-47-1;51481-61-9 (シメチジン);52239-63-1 (6-プロピル-2-チオウラシル);53-60-1 (プロマジンHCl);5321-32-4;54965-21-8 (アルベンダゾール);5591-45-7 (チオチキセン);56238-63-2 (セフロキシムNa+);56796-39-5 (セフメタゾールNa+);5714-00-1;58-33-3 (プロメタジン HCl);58-38-8;58-39-9 (ペルフェナジン);58-71-9 (ファロチンNa+);59703-84-3 (ピペラシリンNa+);60-99-1 (メトトリメプラジンマレイン酸塩塩);60925-61-3;61270-78-8;6130-64-9 (ペニシリンG プロカイン塩水和物 );61318-91-0 スルコナゾール硝酸塩);61336-70-7アモキシシリン三水和物);62893-20-3セホペラゾンNa+);64485-93-4 (セホタキシムNa+);64544-07-6;64872-77-1;64953-12-4 (モキサラクタムNa+);66104-23-2 (ペルゴリドメシラート塩);66309-69-1;66357-59-3 (ラニチジン HCl);66592-87-8 (セホドロキシル);68401-82-1;69-09-0 (クロルプロマジンHCl);69-52-3 (アンピシリンNa+);69-53-4 (アンピシリン);69-57-8 ペニシリンG Na+);70059-30-2;70356-03-5;7081-40-5;7081-44-9 (クロキサシリンNa+ H2O);7177-50-6 ナフシリンNa+ H2O);7179-49-9;7240-38-2 (オキサシリンNa H2O);7246-14-2;74356-00-6;74431-23-5;74849-93-7;75738-58-8;76824-35-6 (ファモチジン);76963-41-2;79350-37-1;81129-83-1;84-02-6 (プロクロルペラジンジマレイン酸塩);87-08-1 (フェノキシメチルペニシリン酸);87239-81-4;91-33-8 (ベンズチアジド);91832-40-5;94841-17-5;99294-94-7;154-42-7 (6-チオグアニン);36735-22-5;536-33-4 (エチオナミド);52-67-5 (D-ペニシラミン);304-55-2 (メソ-2,3-ジメルカプトコハク酸);59-52-9 2,3-ジメルカプト+ プロパノール 6112-76-1 (6-メルカプトプリン);616-91-1 (N-アセチル-L-システイン);62571-86-2 (カプトプリル);52-01-7 (スピロノラクトン);および 80474-14-2 (フルチカゾンプロピオン酸)。スタシスのためにおそらく有用なものとして企図するさらなる化合物は、式IまたはIVの化学構造を有する化合物である。C. 他のアンタゴニストまたは活性化合物、および関係する環境条件1. 低酸素状態および無酸素状態 低酸素状態は、一般的な自然のストレスであり、低酸素環境への細胞の適応を促進するいくつかの、よく保存された反応が存在する。低酸素状態での好気的エネルギー産生能力の低下を補償するためには、細胞は嫌気的エネルギー産生を増やすか、またはエネルギー要求量を下げなければならないのいずれかである(Hochachka et al., 1996)。これら両反応の例は、後生動物では普通であり、用いられる具体的な反応は、一般的には、細胞が利用できる酸素の量に依存する。 軽度の低酸素状態では、酸化的リン酸化は依然として一部活性であり、しがっていくつかの好気的エネルギー産生が可能である。この状態に対する、低酸素誘導転写因子、HIF-1によって一部伝達される細胞の反応は、解糖系酵素およびグルコーストランスポータなどの、嫌気的エネルギー産生に関わる遺伝子をアップレギュレーションすることによって低下した好気的エネルギー産生を補うものである(Semenza, 2001; Guillemin et al., 1997)。この反応は、フリーラジカルが誘発する損傷を防御するカタラーゼおよびスーパーオキシドジムスターゼなどの抗酸化剤のアップレギュレーションも促進する。結果として、細胞は、軽度の低酸素状態では、活動をほぼ正常酸素レベルに保つことができる。 「無酸素状態」と呼ばれる、−本明細書では<0.001kPa O2として定義される、極端な低酸素状態では、酸化的リン酸化は停止し、その結果エネルギー産生能力は劇的に低下する。この環境で生存するために、細胞は、細胞活動を下げることによってエネルギー要求を下げなければならない(Hochachka et al., 2001)。例えば、酸素が取り除かれたカメの肝細胞では、タンパク質合成、イオンチャンネル活動、および好気的経路などの活動を細胞自身が直接制限することによってATPの需要を94%低下させる(Hochachka et al., 1996)。ゼブラフィッシュ(Danio rerio)胚では、無酸素状態への暴露は心臓拍動、運動、細胞周期の進行、および発生進行を完全に停止する(Padilla et al., 2001)。同様に、シノラブディス・エレガンス(C. elegans)は無酸素状態に反応して仮死状態に入り、細胞分裂および発生進行を含む観察可能な運動が停止する(Padilla et al., 2002; Van Voorhies et al., 2000)。シノラブディス・エレガンス(C. elegans)は、24時間またはそれ以上停止状態を保つことができ、正常酸素状態に戻すと、高い生存率で回復する。この反応は、シノラブディス・エレガンスを、高エネルギープロセスの比率を下げ、異数性などの、損傷性の不可逆的事象の発生を予防することによって、低酸素状態ストレスから生き延びさせる(Padilla et al., 2002; Nystul et al., 2003)。 最近発見された一つの反応は、低酸素状態が誘導するヘモオキシゲナーゼ-1による一酸化炭素の生成である(Dulak et al., 2003)。内因性に産生された一酸化炭素は、抗アポトーシス(Brouard et al., 2003)および抗炎症(Otterbein et al., 2000)活性を通して低酸素状態による損傷を軽減するシグナルカスケードを活性化することができ、また同様の細胞保護作用は、外因性の一酸化炭素の注入によって移植モデルに達成することができる(Otterbein et al., 2003; Amersi et al., 2002)。より高い濃度では、一酸化炭素は、ミトコンドリアチトクロームおよびヘモグロビンなどの鉄含有タンパク質への結合を巡り酸素と競合するが(Gorman et al., 2003)、この活性が低酸素状態で有する可能性がある細胞保護作用についてはこれまでに研究されていない。 これら精巧な低酸素損傷に対する防御メカニズムの存在にもかかわらず、低酸素状態は今なお損傷性ストレスであることが多い。例えば、哺乳類は、ヘモオキシゲナーゼ-1およびHIF-1の両方を有しており、いくつかの証拠は哺乳類でも仮死状態が可能であることを示唆している(Bellamy et al., 1996; Alam et al., 2002)。それでもなお心臓発作、卒中、または失血などの外傷による低酸素損傷は主要な死亡原因である。低酸素ストレスを生き延びるための二つの基本的ストラテジー、即ち活気維持および仮死状態の限界を理解することは、それが様々な条件の下での様々なシステムの研究に基づいてきたという事実によって妨げられている。 「低酸素」は、酸素の正常な生理学的レベルが細胞または組織に供給されない時に起こる。「正常酸素」は、特定の細胞タイプ、問題の細胞または組織の状態にとって正常な生理学的な酸素レベルを指す。「無酸素」は、酸素が無いことを指す。「低酸素状態」は、細胞に低酸素をもたらす状態である。これらの状態は、細胞のタイプ、および組織もしくは臓器内の細胞の具体的構造または位置、ならびに細胞の代謝状態に依存する。本発明の目的に関しては、低酸素状態としては、酸素濃度が正常大気条件またはそれ未満、即ち20.8、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0%未満の濃度が挙げられる;または、これらの数は、1大気圧(101.3kPa)における大気のパーセントを表してもよい。ゼロパーセントの酸素濃度は無酸素状態と定義される。したがって、低酸素状態は無酸素状態を含むが、いくつかの態様では、少なくとも0.5%未満の低酸素状態を組み入れている。本明細書に用いる「正常酸素状態」は、おおよそ20.8%またはそれ以上の酸素濃度から成る。 低酸素または無酸素を達成する標準的方法は十分確立されており、化学的触媒の力を借りてチャンバーから酸素を除去する環境チャンバーを使用することを含む。このようなチャンバーは、例えばBD Diagnostic Systems (Sparks, MD)よりGASPAK Disposable Hydrogen + Carbon Dioxide Envelopesとして、またはBIO-BAG Envrionmental Chambersとして市販されている。または、酸素は、チャンバー内の空気を窒素などの酸素以外の気体と交換することによって枯渇させることもできる。酸素濃度は、例えば、FYRITE Oxygen Analyzer(Bacharach, Pittsburgh PA)を用いて決定できる。 本発明の方法は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露することと酸素濃度を室内空気と比べて変えることの組み合わせを利用できることが企図される。よりさらには、生物物体が存在している環境の酸素濃度は、約、少なくとも約、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%、あるいはそこから導き出せる任意の範囲であり得る。よりさらには、濃度の変化は、室内空気または管理された環境に比べた増減に関して、上記パーセンテージまたは範囲のいずれでもよいことが企図される。D. ミトコンドリア標的化剤 ミトコンドリアを選択的に標的にすることは、活性を高めるためのいくつかの局面において本発明の態様である。このような選択的なミトコンドリア標的化は、作用物質を脂肪親和性トリフェニルホスホニウムカチオンに結合することによって達成でき、それは脂質二重層を容易に通過して、ミトコンドリア内膜を横切る大きな電位(150〜180mv)によってミトコンドリアマトリックス内にほぼ1000倍に蓄積される。ビタミンEおよびユビキノンの類似体が両方が調製されており、ミトコンドリアの標的化に上手く用いられている(Smith et al., 1999; Kelso et al., 2001; Dhanasekaran et al., 2004)。チオールの一種、チブチルトリホスホニウムブロミド(以下参照)が調製され、ミトコンドリアの標的化に用いられ、ここで、それは数百倍蓄積した(Burns et al., 1995; Burns & MurpHey), 1997)。 このような錯体は、活性化合物に好適な候補と思われる。遊離チオール作用物質に加えて、チオスルフェニル置換化合物、(H-S-S-R)が有用だろう。いくつかの態様では、作用物質は次式の構造を有することが企図される:式中、 Zは、PまたはNであり; R1、R2、およびR3はアリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、シクロアルキル、またはアルキル(好適にはフェニル、ベンジル、トリル、ピリジル、シクロヘキシル、C3〜C10アルキル、ハロゲン化してもよい)であり; R4は-R5SR6であり、ここで、R5はC1〜C10アルキルであり、R6はHまたはSH、SO3H、もしくはPO3Hである。III. スタシスの試験 スタシス誘導に有用な各種化合物は、まず様々な試験を用いて評価できる。スタシスは、生物学的サンプルが消費する酸素量、サンプルが産生する二酸化炭素の量(細胞呼吸の間接的測定)を定量化すること、または運動性を特徴付けることを含む、様々な方法で測定できる。 酸素消費速度または二酸化炭素産生速度を決定するには、生物物体を二つの開口部:気体取り入れ口および排出口を備えた、密封チャンバーに入れる。気体(室内空気または他の気体)を所与流速でチャンバー内に通し、かつ出口から出してチャンバー内の圧力をほぼ1大気圧に保つ。チャンバーを暴露する前後に、気体を二酸化炭素検出器および酸素検出器に通して、混合気体中の各化合物の量を測定する(毎秒)。これらの値を経時的に比較して、酸素消費速度または二酸化炭素産生速度を得る。 候補活性スタシス化合物を同定する別のスクリーニングが確立されている。これらのスクリーニングおよびその変形は、本発明の一部として、または局面の局面を実施するのに用いることができる。A. ゼブラフィッシュを使ったアッセイ スタシス誘導因子のスクリーニングアッセイを、48時間齢のゼブラフィッシュ(D. rerio)胚を用いて確立した。これらの胚は透明であり、4〜20倍のレンズを備えた解剖顕微鏡を用いて、心臓の拍動、およびそこから生ずる背に沿って尾に入る主要血管の血流を見ることができる。これら動物の心拍数は、生物の代謝活性のインジケータであり、心拍数の減少は代謝の減少を表す。胚をそれぞれの卵鞘から切り出し、平底型のピリエチレン製組織培養プレートの各ウエルに5個ずつ入れ、1mLの標準的な魚用の水の中でインキュベートした。魚用の水は、5ガロン当たり1匙のInstant Ocean (人工海水混合物、Aquarium Systems, Inc)から成る。塩化カルシウムを150ppm、かつ重炭酸ナトリウムを約100ppmに調節する。水の伝導率は900ミクロジーメンスであり、pHは約6.5〜7.4である。硫化水素溶液は、室内空気でバランスを取った硫化水素(100ppm)の混合物を、魚用の水150mLの入ったフラスコ内に、毎分100立方センチメートルの速度で60〜90分間吹き込んで調整した。これにより、飽和またはほぼ飽和した、あるいはおおよそ飽和した硫化水素溶液が十分達成できることが予想された。1大気圧および室温でのpH7のリンゲル液への硫化水素の公知溶解度に基づいて、魚用の水は、おおよそ0.1モルの硫化水素を含有していると推測された。魚を硫化水素溶液に暴露し、その心拍数を、分当たりの心拍数を数えて、24時間連続してモニタリングした。コントロールの魚(魚用の水だけに暴露)は、おおよそ毎分160〜200打の心拍を示し、これは24時間の観察期間を通して大きく変化することはなかった。硫化水素含有魚用水に暴露した後2〜3時間までに、心拍数は約半分の毎分60〜80打まで減少した。4時間までに、心拍数はさらに低下し、心拍数がゼロまたは毎分数打のみであった例もいくつかあった。暴露5時間後、硫化水素溶液を普通の魚用の水と交換し、胚を一晩、28℃で回復させた。硫化水素に初めて暴露してから24時間までに、処置およびすすぎ洗いされた動物は、毎分160〜200打の正常な心拍数を示した。硫化水素は心臓の拍動の鎮静をもたらすことから、硫化水素は、このスクリーニングアッセイの判断基準によって、スタシス誘導因子または他の活性化合物と同定されたと考えられた。B. 線虫を使ったアッセイ スクリーニングアッセイを、線虫(シノラブディス・エレガンス)を使って確立した。線虫は、4℃では十分に生存せず、線虫は、この温度では24時間ですべて死亡する。虫を4℃に16時間暴露する前に、それらをX分間、室温でY%の一酸化炭素を含む大気に暴露させた。室内空気に予備暴露したコントロールの虫が全例死亡したのに比べ、一酸化炭素処理した虫は、冷気に暴露させた後も高い生存率で生き残った。一酸化炭素は、線虫およびヒト新生児包皮ケラチノサイトの公知スタシス誘導因子であることから、線虫アッセイは、虫をスタシス誘導因子または他の活性化合物で予備平衡化した時の、それらが持つ致死的低温に暴露された虫の生存率を上げる能力からスタシス誘導化合物を同定することができる。IV. 治療的または予防的応用A. 外傷 ある態様では、本発明は、外傷を受けているか、または外傷を受けやすい患者の処置に使用を見いだせる。外傷は、火傷、創傷、切断、銃創、もしくは外科的創傷などの外的な傷害、血行の急激な低下をもたらす卒中もしくは心臓発作などの内的な傷害、または冷気または放射線への暴露などの非侵襲性のストレスによる血行の低下によって起こることがある。細胞レベルでは、外傷は、細胞、組織、および/または臓器の低酸素への暴露をもたらし、それによりプログラムされた細胞死または「アポトーシス」を誘導することが多い。全身性には、外傷は、凝固、炎症、低血圧などの一連の生化学的プロセスを誘導し、ショックを起こすことがあるが、ショックが持続すると、臓器の機能不全、不可逆的な細胞損傷、および死に至ることがある。生物学的プロセスは、外傷性の傷害に対し体を守るように出来ている;しかしながらそれらは危険であることが分かっている、かつ一部の例では致死的である一連の事象を招くことがある。 したがって本発明は、組織、臓器、四肢、および、さらに生物全体を、それらを外傷の有害な影響から守る方法としてスタシス状態にすることを企図する。医学的対応が容易でない特別な場合に、スタシスのインビボもしくはエキソビボでの誘導は、または組織、臓器、もしくは生物の温度の低下と組み合わせて、被験体まで医学的対応を運搬するか、または被験体を医学的対応まで運搬するまでのことによって、被験体のために「時間を稼ぐ」ことができる。本発明はまた、創傷治癒および組織再生の遅延を生ずることがある生物学的プロセスを妨害/遅延することによって組織再生および創傷治癒を誘導するための方法も企図する。この関係では、四肢または生物に実質的な創傷が在る場合、インビボまたはエキソビボのスタシス誘導は、または組織、臓器、もしくは生物の体温低下と組み合わせて、治癒および再生を阻害する生物学的プロセスを管理することによって、創傷治癒および組織再生プロセスを支援できる。 以下に論ずる創傷治癒および出血性ショックに加えて、本発明の方法は、心臓停止または発作などの外傷の予防または処置を行うことができる。本発明は、開胸術、開腹術、および脾臓切除術(splenic transection)などの緊急手術の外傷リスクに関して特に重要である。1. 創傷治癒 多くの例では、創傷および組織損傷は、難治性であるかまたは治癒するまでに長い時間がかかる。例は、慢性の開放性創傷(糖尿病性の足部潰瘍ならびにステージ3および4の圧迫潰瘍)、急性および外傷性の創傷、弁およびグラフト、ならびに亜急性の創傷(即ち裂開性の切り口)である。これは、他の組織損傷、例えば火傷および喫煙/熱気吸入による肺の損傷にも当てはまる。 これまでの実験は、冬眠が傷害(例えば脳内のピン)に対し予防的であることを示しており、したがって冬眠には治癒効果がある可能性がある。結論として、この技術は、より代謝的に制御された環境に組織を持ち込むことによって、創傷の治癒プロセスを制御するのに役立ち得る。より詳しくは、細胞または組織がスタシス状態に保たれる期間は、傷害によって変えることができる。本発明のいくつかの態様では、生物物体は酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に、約、少なくとも約、または最大で約、30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2、3、4、5週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間またはそれ以上暴露される。2. 血液学的ショック(出血性ショック) ショックは、介入が遅れた場合に急激に進行して生命を脅かす状態である。ショックは、臓器組織の生理学的要求を維持するための適切な潅流がない状態である。これは、生きている臓器の適切な潅流を維持する循環系の機能不全を特徴とする、甚大な血液動態障害および代謝障害の状態である。ショックは、不適切な血液容量(低血液量ショック)、不適切な心臓機能(心臓性ショック)、または分配性ショック(神経性ショック、敗血症ショック、アナフィラキシーショック)とも呼ばれる、不適切な血管運動緊張から起こることがある。ショックは、しばしば患者に急激な死をもたらす。敗血症、失血、障害を受けた自己制御、および自律神経性緊張の消失を含む多くの状態が、ショックまたはショック類似の状態を生ずる。本発明は、上記ショック状態の全ての有害作用を防止し、このようなショックを起こしている生物物体の生命を維持すると予想される。 出血性ショックでは、失血が、体が代償しかつ組織に適切な潅流および酸素化を提供する能力を超える。これは、外傷によって起こることが多いが、偶発的な出血(例えば胃腸管出血、出産)、手術、およびその他原因によっても起こる。臨床的な出血性ショックは、不連続的に勃発する事象を伴う急性の出血エピソードによって起こることが最も多い。出血性ショックが、亜急性失血を伴う慢性状態で見られることは、それほど一般的ではない。 出血に対する生理学的代償メカニズムとしては、初期の末梢および腸管膜の血管収縮による中心循環への血液の遮断が挙げられる。これは次に進行性の頻脈によって増強される。侵襲性モニタリングは、心係数の上昇、酸素供給量(即ちDO2)の増加、組織による酸素消費量(即ちVO2)の増加を示し得る。乳酸レベル、酸−塩基状態、および他のマーカーもまた生理学的状況の有用なインジケータとなり得る。年齢、投与薬、および合併因子は全て、出血性ショックに対する患者の反応に影響し得る。 出血性ショックにおける代償メカニズムの失敗は、死をもたらすことがある。介入が無い場合、出血性ショックでは、古典的な三峰性の死亡分布が見られる。最初の死亡ピークは、急激な放血によって数分の出血で起こる。次のピークは、進行性の代償不全によって1時間から数時間後に生ずる。第3のピークは、敗血症および臓器不全により数日から数週間後に生ずる。 米国では、年齢1〜44歳では、事故による傷害が第1の罹病原因および死亡原因である。2001年には、157,078名が傷害の結果死亡している。この内の64.6%は過失に分類され、19.5%が自殺、12.9%が他殺、2.7%が原因不明、そして0.3%が法的介入または戦争行動であった。傷害による死亡の第1原因は、自動車、小火器、および落下であった。これら死亡者の大部分は、出血性ショックをもたらす、外傷による大量出血によるものであった。 多くの外傷性傷害例の場合、病院の救急科に運ばれた患者は、救急救命医によって処置され、手術を必要とすることなく退院するか、外傷科の治療を受ける。しかしながら、重大な障害を持つ患者は、生存機会を高め、機能不全を最小限に止めるために、傷害発生後の「ゴールデンアワー」の間、安定化を必要とする。 大部分のショック例は事故による傷害によるものであることから、患者の生存にとって病院搬送前のケアが重要である。このケアには、素早い評価、安定化、ならびに確実なケアのための適切な医療施設への迅速な搬送が含まれる。ショック症候群を示す全ての患者について、緊急処置の主たる関心は、患者の気道、適切な呼吸、および適切な血行の確保である。患者の状態の変化は、ショック症候群の進行を示すことから、評価は必須である。早期の介入は、組織および臓器への損傷を最小限に止め、永久的機能不全を最小限に止めるために重要であり、かつ臨床的一次原因を早期に確認することも重要である。処置は、ショック症候群の原因を正すこと、および進行を遅らせることに向けられる。静脈内アクセスおよび液流の蘇生(典型的にはIV食塩水)が標準的だが、これについては論議がある。血液量減少の急激な回復は、出血を増加させ、部分的に形成された凝固塊を除去し、および凝固因子を希釈することがある。 ひとたび緊急診療部に在れば、生命維持に重要な臓器の潅流および酸素化の最適化に焦点が当てられる。基礎の出血の診断および管理は、迅速かつショックの管理と同時に実施されなければならない。二つの大きなショック段階:初期代償段階および進行段階が存在する。本発明の態様は、いずれか一方または両方の段階にある患者に応用できることが企図される。 血液減少ショックが大規模出血から生じた場合は、選択する交換液は全血または濃縮赤血球である。結晶溶液は、一時的に循環容積を回復するが、患者は組織に酸素を運搬するために赤血球の交換も必要とする。ショックの管理は、体液管理、酸−塩基平衡、および心筋収縮に焦点を当てている。ショックの基礎原因の処置は、ショック症候群の進行を遅らせるためにも必要な処置である。全身冬眠をマウスに誘導すると、直ちに全身の代謝率(CO2排出から測定された)は低下した。これは可逆的であって、そしてマウスは、繰り返し暴露した後でさえ正常に機能するように思える。したがって、本発明は、生存重要臓器および生命を保護するための、H2S(または酸素アンタゴニストもしくは他の活性化合物)を用いた全身冬眠状態の誘導に関する。これによって、管理された環境(例えば手術)への運搬が可能となり、そこではショックの初期原因を扱い、次に患者を管理された様式で正常な機能に復帰させることができる。この適応に関して、上首尾な結果にとっては、「ゴールデンアワー」と称される傷害から最初の1時間が重要である。この期間に患者を安定化することが大きな目的であり、患者は傷害に適切に取り組むことができる救急救命施設(例えば救急治療室、外科等)へ搬送される。このように、患者をスタシス状態に維持して、これを可能にし、ショックの原因、失血の補充、およびホメオスタシスの再確立などの緊急の問題に取り組むことが理想である。これは極めて幅があるが、多くの例では、スタシスを維持する時間は傷害後約6〜約72時間の間である。いくつかの態様では、生物物体は酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に、約、少なくとも約、または最大で約、30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間またはそれ以上、およびそこからの任意の範囲もしくは組み合わせで暴露される。 致死的出血ならびにショックおよび最終的には死をもたらす生理学的事象の生物学は完全には理解されていない。しかしながら、H2Sが虚血性の低酸素の致死作用を低下させるメカニズムが存在する。硫化水素はチトクロームCオキシダーゼを阻害し、この酵素を阻害することで酸素要求を低下させる可能性がある3。酸素要求の低下は、代謝性アシドーシスの誘導を含む、低酸素レベルの有害作用を低下させる場合がある。よりさらには、ショックの間、組織の硫水化物は低下する(Beck et al., 1954)。外因性のH2Sは、この低硫化物状態を阻止し、硫黄のホメオスタシスを維持し得る。 硫化水素は、動物内に自然に作られ、強力な生物学的活性を示す(Kamoun, 2004)。ほとんどのタンパク質がジスルフィド結合したシステイン残基を含んでおり、遊離チオールからジスルフィドへの可逆的変換は、特異的な酵素活性を制御できる(Ziegler, 1985)。さらには、スルフィドは負に帯電しており、遷移金属に対し高い親和性を示す。チトクロームオキシダーゼなどの遷移金属原子を含有するタンパク質は、H2Sによって大きな影響を受け得る。最終的には、H2Sの他の低硫黄含有分子への代謝は、特異的生物活性を示すチオールの数を増やす。このような潜在的な作用様式に加えて(またはおそらくその作用様式によって)、H2Sは、心肺、神経内分泌、免疫、および/または止血系に影響することができ、それが最終的に傷害および疾患にとって有益となる。 「Methods, compositions and articles of manufacture for treating shock」と題する、Mark B. Roth、Mike Morrison、およびEric Blackstone名義の、2006年4月20日出願の米国仮特許出願は、ショックの処置を記載しており、参照により本明細書に組み入れられる。B. 低体温 さらに別の態様では、本発明は、極端な低体温で人々を処置する本発明の使用を提案する。本発明の方法および組成物は、低体温を必要とする哺乳類に低体温を誘導するのに有用である。低体温は、軽度、中度、または高度であり得る。軽度の低体温は、中心体温を哺乳類の正常中心体温よりおよそ0.1〜5℃低くするように達成することを含む。哺乳類の正常中心体温は、通常は35〜38℃の間である。中程度の低体温は、中心体温を哺乳類の正常中心体温よりおおよそ5〜15℃低くするように達成することを含む。高度な低体温は、中心体温を哺乳類の正常中心体温よりおおよそ15〜37℃低くするように達成することを含む。 軽度の低体温は、当技術分野において、治療的に有効であり、かつヒト以外の哺乳類およびヒトの両方に有効であることが公知である。軽度の低体温の治療的便益は、病院外での心臓停止に関するヒト臨床試験で観察されている。心臓停止に関係してヒトを軽度の低体温に暴露すると、正常体温の標準的ケアまたは軽度の低体温が存在しない場合に比べて、生存に有利であり、神経学的結果の改善をもたらす(Bernard et al., 2002; The Hypothermia After Cardiac Arrest Study Group et al. 2002)。 本発明の方法および組成物は、当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、被験体を氷漬けする方法、または被験体を、冷たい空気または液体が循環している「冷却テント」で包む方法を含む他の方法に対し、哺乳類またはヒトに軽度、中度、または高度の低体温を誘導することに関して利点を有している。これらの例では、被験体は、中心体温を正常体温より低くすることに抵抗し、身震いによって熱を発生させようとする。身震い、およびそれにより発生した体熱は、軽度の低体温の達成に、例えば低体温誘導の標準的な方法を用いて達成される中心体温の低下速度を遅らせることによって悪影響を及ぼす。その結果、治療レベルの低体温に付されるヒトはまた、身震いを止める薬物で処置される(神経伝達を神経筋接合部で遮断することによって) (Bernard et al., 2002)。 好ましい態様では、本発明の方法および組成物は、当技術分野で知られている侵襲的方法または医学的装置と組み合わせて、哺乳類またはヒトに治療的低体温を誘導する。このような侵襲的方法および装置としては、低体温を必要とする被験体の脈管系に挿入できる可撓性のプローブまたはカテーテルであって、その温度が、被験体の正常体温より低く調節されており、その結果カテーテルに接触している血液が冷却されるカテーテルが挙げられるが、これに限定されない。冷却された血液は続いて、哺乳類の中心体温を下げる。哺乳類の中心体温のサーモカップルモニタリングからのフィードバックを組み込むことによって、カテーテルの温度を調整して、事前に指定した中心体温を維持することができる。軽度または中度の低体温を達成および維持するためのこのような医療装置は、当技術分野ではエンドバスキュラー温度治療と呼ばれ、当技術分野では周知であり、かつ例えばinnercool.comおよびradiantmedical.comのワールドワイドウェブに説明されている。 方法は、極端な低体温の患者に酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物を投与するかまたは患者をそれらに暴露し、次に制御された形で酸素アンタゴニストまたは活性化合物を取り除きながら徐々に正常体温に回復させることを提供する。このように酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物は、被験体内の生物学的システムを緩衝して、被験体をショック(または危険)に曝すことなく生物学的システムを漸次的に初期化することができる。 一つの態様では、低体温状態にある被験体に、酸素アンタゴニストまたは活性化合物の経口または静脈内用量が提供される。被験体に潜在的に非反応性でありおよび長期間に制御された投与量を提供できることから、静脈投与が好ましい。または、利用可能であれば、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物は、例えば吸入用マスクまたは被験体全体を収納できる密封チャンバーを用いて気体の状態で提供することができる。 理想的には、患者は、何らかの変化が起こる前に、心拍数、呼吸、および体温について安定化される。一度安定化すると、周囲環境温度を再度、徐々に上げられる。これは、被験体を低体温状態から単純に移動させることで達成される可能性がある。体温を制御した形で上昇させることは、衣類またはブランケットの連続層を加えるか、徐々に温度を上げるサーマルラップを利用するか、または可能であれば、被験体を、その体温を徐々に上げることができるチャンバー内に置くことによって実施してもよい。 被験体の生命徴候を、体温上昇の経過中モニタリングすることが好ましい。また、体温の上昇に合わせて、被験体の環境から酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物は取り除かれる。熱および酸素アンタゴニスト(または他の活性化合物)処置は共に、状況をモニタリングする医療関係者によって適当なエンドポイントで中止されるが、いずれにしろ被験体の体温およびその他の生命徴候が正常範囲に復帰した場合には中止される。処置中止後もモニタリングを少なくとも24時間続けることが推奨される。C. 高体温 ある条件では、遺伝的、感染症、薬物、または環境原因の結果として患者がホメオスタティックな体温制御を失い、重い、制御不能な高熱(高体温)を発することがあり得る。これは、適切に管理されない場合には、死亡または長期の病的状態、特に脳損傷を引き起こすことがあり得る。 H2Sを80ppm吸入したマウスは、直ちに冬眠に入った。これには、環境温度を室温より低く下げた時に、それらの体温を制御できないことも含まれた。したがってこの技術は、ある高体温状態で全身体温制御するのに用いられる可能性がある。これは、H2S (または他の酸素アンタゴニストもしくは活性化合物)を吸入または血流内への潅流によって投与し、冬眠状態を誘導することも含むと考えられる。患者を、その間に発熱源に対処できる約6〜約24時間の間スタシスの状態にすることは有益であると考えられる。本発明のいくつかの態様では、患者は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に、約、少なくとも約、または最大で約、30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、またはそれ以上、およびそこからの任意の範囲もしくは組み合わせで暴露される。 これは、いくつかの全身体温制御(氷浴/ブランケット/冷却システム)と組み合わせることができる。D. 心臓麻痺および冠動脈心疾患 ある態様では、本発明は、心臓バイパス手術(CABG)のための心臓麻痺のための使用を含む、冠動脈疾患(CHD)処置のための解決法としての使用を見いだす可能性がある。 CHDは、アテローム性動脈硬化、即ち心筋に酸素に富む血液を供給する動脈の狭窄および硬化から起こる。動脈は、動脈の内壁または内層にプラークが形成されることで堅くなり、徐々に狭くなる。心臓への血流は、プラークが冠動脈を狭めるために減少する。これが心筋への酸素供給を減らす。これは、1)心臓が十分な血液が得られない時に胸部疼痛または不快感が起こる狭心症;2)血栓が心臓の一部および心筋中の細胞への血流の大部分または全てを突然遮断し、十分な酸素運搬血液を受け取れずに死亡し始めた時に起こり、心筋の永久的な損傷の原因となる可能性のある心臓発作;3)心臓が血液を効率的にその他の体部に送り出すことができない心不全;正常な心拍リズムが変化する不整脈、において明らかになることがある。 1990年以来、任意の他の原因で亡くなった人よりもCHDで亡くなった人の数が多くなっている。毎年、3.8百万人の男性および3.4百万人の女性がCHDで死亡している。2002年には、米国内だけで500,000名を越える人々が、心臓疾患の直接的な結果として死亡している。生存率は改善されているものの、米国ではまだ男性で4人に1人、そして女性で3人に1人が、確認された最初の心臓発作から1年以内に死亡している。 CHDの医学的処置としては、心臓発作、心不全、および卒中のリスクを下げると共に重要なライフスタイルを変更して冠動脈に脂肪の蓄積がそれ以上形成されるのを、投薬により防ぐことが挙げられる。それでもなお、いくつかのタイプの外科的介入も頻繁に用いられている。 約CHD患者の三分の一は、冠動脈血管形成術およびステント挿入を受ける。バルーン血管形成の間、バルーンが先端に付いたカテーテルを用いて、プラークを動脈壁に押しつけ、動脈内の血流を改善することができる。冠動脈ステント挿入は、血管形成作業を伴うことが多い。ステントは、損傷された動脈壁を支える足場を提供して、血管形成術後に血管が再度閉鎖(再狭窄)する機会を減らす小型の金網状の金属管である。米国では、毎年、百万件近い血管形成術が行われている。全ての患者がこの技術で処置できるわけではない;このような患者は心臓手術を受けなければならない。Michaelsら、2002。 約10%のCHD患者が冠動脈バイパスグラフト(CABG)手術を受ける。左主冠動脈に重症の狭窄または遮断がある患者、または2本もしくは3本の冠動脈が関係する疾患を持つ患者は、一般的にバイパス手術の候補と考えられる。CABGでは、外科医は、他の体部の健康な血管の一部(動脈または静脈のいずれか)を用いて冠動脈の遮断部位を迂回する経路(またはバイパス)を創る。患者には、典型的には、一回の手術で1〜5個のバイパスが創られる。手術中、一般的には、心臓は心臓麻痺(CP)として知られる麻痺状態に置かれ、その間循環は心肺装置によって人工的に維持される。患者は、手術中は全身麻酔にかけられ、通常3〜6時間で終了する。 おおよそ全患者の13%が、CABGに関係した理由によって、30日以内に再入院する。Hannanら、2003;Mehlhornら、2001。再入院の主たる理由の一つは心不全であり、恐らく手術間の虚血性損傷によるものである。したがって、心臓が正常に潅流されない間、心筋の保護を改善するために多くの処置が行われる。 心臓手術の最近の進歩は、手術後の心室機能不全を防止し、全体の結果を改善することを期待した、心臓麻痺パラメータの最適化に集中している。Cohenら、1999。 心筋保護液を心臓の血管および心室・心房に潅流して、心臓の生存を維持しながらその固有の鼓動を停止する。開心術中および心臓移植手術に用いるドナーの心臓の準備、輸送、および保存の間、心臓麻痺(心臓の麻痺)が望ましい。 初期の心臓麻痺技術は、冷晶質溶液を用いて、手術中の心臓停止を導入および維持した。しかしながら、血液心臓麻痺は、交差金具使用中の好気的心筋代謝を促進し、嫌気的乳酸産生を減らすことが次第に明らかになった。さらには、血液心臓麻痺は酸素運搬能力を改善し、心筋の酸素消費を高め、かつ心筋の高エネルギーリン酸塩の貯蔵を保全する。当技術分野では、数種類の心筋保護液が入手可能であり、心筋保護液を用いる様々な技術が周知である。例えば、心筋保護液は、様々な量のカリウム、マグネシウム、および複数のその他微量成分を有することが多い。時に、心筋保護液には薬物が加えられて、筋肉の弛緩および虚血からの保護を助ける。現在用いられている方法には、グルタミン酸塩−アスパラギン酸塩のような電解質が適切に補充された血液だけの製剤も含まれる。頻繁に用いられる溶液の具体例は、St Thomas Hospital液、University of Wisconsin Solution、Stanford Solution、およびBretschneider Solutionである。他の最近の溶液例としては、アデノシン、インスリン、またはL−アルギニンを含む先に言及した溶液が挙げられる。心筋保護液を用いる温度を変えることにも便益的効果があることもある。 間欠的な順行性の心臓麻痺と連続的な逆行性心臓麻痺の組み合わせは、心筋の乳酸産生を下げ、ATP貯蔵を保全し、交差金具解放後の代謝回復を改善した。微温(29℃)心臓麻痺は、心臓麻痺心停止中の乳酸および酸の産生を下げ、手術後の心室機能を改善する。心筋保護液流は、有害な代謝最終産物を洗い流し、心室機能を改善するには少なくとも200mL/分が必要である。現在、心臓麻痺管理の今後の方向が、保護作用をさらに改善するための心臓麻痺添加物の使用を含むことは明白である。例えば、アデノシンを用いた虚血性プレコンディショニングの便益的効果を利用する試みがなされている。同様に、手術後初期の好気的代謝を刺激することによって心室機能を高めるために、インスリン心臓麻痺が用いられている。最後に、一酸化窒素ドナーのL−アルギニンが、実験的研究に於いて便益的であることが証明されており、手術中の心筋保護強化のためのさらなる選択肢となる可能性がある。心臓麻痺補充のさらなる便益は、現在の保護技術が不適切である心室機能が不良であるハイリスクにおいても見られると思われる。ハイリスク患者の割合は増え続けており、これらの例、および結果として生ずる合併症は、医療システムに大きな負担をかけている。したがってこの領域の改善は、この分野の医療の進歩にとって非常に重要である。 心臓麻痺を誘導する現行法がもたらす保護的効果にもかかわらず、なお心筋に対する虚血性−再潅流傷害はある程度存在する。心臓バイパス手術中の虚血性−再潅流傷害は、特に既に弱った状態の心臓に対して、不良な結果(罹病率および死亡率の両方)をもたらす。心筋虚血は、嫌気的心筋代謝を招く。嫌気的代謝の最終産物は、アシドーシス、ミトコンドリア機能不全、および筋細胞壊死を起こす。高エネルギーリン酸塩の枯渇がほぼ即時的に起こり、10分以内にATP貯蔵の50%が失われる。1〜2分以内に収縮性低下が起こり、正常体温(37℃)虚血から30〜40分後には虚血性痙縮および不可逆的傷害が発生する。 再潅流傷害は、冠循環修復後の周知の現象である。再潅流傷害は、異常な心筋の酸化的代謝を特徴とする。虚血中に生じる構造的変化に加えて、再潅流は、細胞毒性を有する酸素フリーラジカルを生ずることがある。これら酸素フリーラジカルは、筋細胞膜のリン脂質を酸化し、それによって膜の完全性を破壊することによって、再潅流傷害の病因に大きな役割を果たしている。酸化した遊離脂肪酸は、冠静脈血内に放出され、かつ心筋膜リン脂質過酸化のマーカーである。プロタミンは補体の活性化を誘導し、これが好中球を活性化する。活性化された好中球およびその他白血球は、酸素フリーラジカルおよびその他細胞毒性物質のさらなる供給源である。 本発明は、バイパス手術中の心臓に、より強い保護を提供する心臓麻痺を誘導するための方法および組成物を提供する。ある態様では、本発明は、溶液中に溶解されるか、または溶液中に気体として泡立てられたH2S(または他の活性化合物)を含む心筋保護液を提供する。いくつかの態様では、本発明はさらに、カテーテルまたはカニューレなどの、心臓に適切用量の心筋保護液を導入するための第1装置を少なくとも含む。ある局面では、本発明はさらに、カテーテルまたはカニューレなどの、心筋保護液を心臓から取り除くための第2装置を少なくとも含む。 バイパス手術は、典型的には3〜6時間で終了するが、しかしながら合併症および複数の血管のCABGによってその長さは12時間またはそれ以上に伸びることがある。心臓は、手術中スタシス状態に保たれることが企図される。したがって本発明のいくつかの態様では、心臓は酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に、約、少なくとも約、または最大で約、30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18時間、またはそれ以上、およびそこからの任意の範囲もしくは組み合わせで暴露される。E. 癌治療からの損傷の軽減 癌は、世界中の先進工業国に於ける第1の死亡原因である。癌処置の最も一般的な方法は、細胞毒性作用物質を癌患者に、作用物質が正常細胞に比べて癌細胞により致死的作用を有するように投与することである(または組織のエキソビボ処置)。作用物質の用量が高いほどより致死的であり、より効果的である;しかしながら、同様の理由から、このような作用物質は全て正常細胞に対してもより毒性(および時に致死的)である。したがって、化学療法および放射線療法は、重い副作用を特徴とすることが多く、そのうちのいくつかは生命を脅かすものであり、例えば、嚥下を困難にする口腔内の痛み、口渇、悪心、下痢、嘔吐、疲労、出血、脱毛および感染、皮膚刺激、ならびにエネルギー消失である(Curran, 1998; Brizel, 1998)。 最近の研究は、中心体温の一過性の可逆的低下、または「低体温」が癌との戦いに改善をもたらすことを示唆している。最近、28℃の低体温がマウスに於いて、放射線、ドキソルビシン誘発性毒性およびシスプラチン誘発性毒性を低下させることが見出されている。これら薬物/処置の癌と戦う能力は、冷却された動物に投与した場合でも損なわれることはかった:むしろ、それは、特にシスプラチンについては増強された(Lundgren-Eriksson et al., 2001)。このこと、およびその他発表された研究に基づき、本発明者らは、さらなる中心体温の低下が癌患者に便益を提供すると提案している。したがって本発明は、癌患者正常組織へのスタシスを誘導し、それによりこれら組織への化学療法または放射線療法の潜在的影響を減じることへの酸素アンタゴニストまたは他の活性スタシス化合物の使用を企図する。それはまた、より高用量の化学療法および放射線療法の使用を可能にし、それによりこれら処置の抗癌効果を高める。 良性および悪性新生物、非新生物性増殖過剰状態、前新生物段階、および前癌傷害を含む、実際の増殖過剰障害の処置を企図する。このような障害としては、狭窄、癌、多剤耐性癌、原発性乾癬、および転移性腫瘍、血管新生、リウマチ関節炎、炎症性腸疾患、乾癬、湿疹、および二次性白内障、ならびに口腔毛状白板症、気管支機能不全、肉腫インサイチュー、および上皮内過形成が挙げられる。特に、本発明は、前立腺癌、肺癌、脳癌、皮膚癌、肝臓癌、乳房癌、リンパ系癌、胃癌、精巣癌、卵巣癌、膵臓癌、骨癌、骨髄癌、胃腸癌、頭頚部癌、頚部癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、腎臓癌、副腎癌、心臓癌、結腸癌、および血液癌を含むヒトの癌の処置を目的とする。上皮および内皮細胞が関与する癌もまた、処置について企図される。 一般的に、化学療法および放射線療法は、腫瘍サイズを縮小し、腫瘍細胞の増殖を低下させ、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、腫瘍の血管形成を低下し、転移を減少または阻止し、腫瘍の成長速度を低下し、腫瘍細胞の死を加速し、腫瘍細胞を殺滅するように計画される。本発明の目的も、これと異ならない。したがって、増殖過剰疾患の処置に於いて、本発明の酸素アンタゴニスト(または他の活性化合物)組成物を二次抗癌剤(二次作用物質)と組み合わせるであろうことが企図される。「抗癌」剤は、被験体中の癌に、例えば癌細胞を殺滅すること、癌細胞にアポトーシスを誘導すること、癌細胞の成長速度を低下させること、転移の頻度または数を減らすこと、腫瘍のサイズを縮小すること、腫瘍の成長を阻止すること、腫瘍または癌細胞への血液供給を減らすこと、癌細胞に対する免疫反応を促進すること、癌の進行を妨害または阻害すること、あるいは癌を持つ被験体の寿命を延ばすことによって被験体の癌に悪影響を及ぼすことができる。 二次抗癌剤としては、生物剤(生物学的療法)、化学療法剤、および放射線療法剤が挙げられる。より一般的には、これらその他組成物は、癌または腫瘍細胞を殺滅または増殖を阻害するのに有効であると同時に、二次作用物質の正常細胞への影響を減じるか、または最小限に止める合計量で提供される。このプロセスは、細胞を、酸素アンタゴニスト(または他の活性化合物)および二次作用物質に同時に接触させるか、または暴露させることを含んでよい。これは、両作用物質を含む単一の組成物または薬学的製剤に細胞を接触させるか、または細胞を二種類の組成物または製剤に同時に接触させるかまたは暴露させることによって達成できるが、このとき一つの組成物は酸素アンタゴニストを、かつ他方は第二の作用物質を含む。 あるいは、酸素アンタゴニスト(または他の活性化合物)治療は、分から週の範囲の間隔で二次剤に先行するかまたは続けることができる。他の作用物質および発現構築物を別々に細胞に作用させる態様では、一般的には、それぞれを投与する間に有意な時間が終了することはなく、作用物質および発現構築物は細胞に対し、有益な複合効果を発揮することは、一般的に確実である。このような例では、細胞を両モダリティーに、互いに約12〜24時間、より好ましくは相互に約6〜12時間の範囲内で接触させることができることが企図される。いくつかの状況では、処置の時間を有意に延長し、しかしながら、その場合各投与の間は数日(2、3、4、5、6、または7日)〜数週(1、2、3、4、5、6、7、または8週)が経過することが望ましいかもしれない。ある態様では、生物物体をスタシス状態に約2〜約4時間保ちながら癌処置を加えることが考えられる。本発明のいくつかの態様では、生物物体は、約、少なくとも約、または最大で約、30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6時間、またはそれ以上、およびそこからの任意の範囲もしくは組み合わせで、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に暴露される。 様々な組み合わせを用いることができる;活性化合物は「A」であり、放射線療法剤または化学療法剤などの二次抗癌剤は「B」である。 本発明の酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の患者への投与は、存在する場合には、化合物の毒性を考慮に入れながら、化学療法薬の投与の一般的なプロトコールに従う。処置サイクルは、必要に応じて反復することが期待される。様々な標準的治療、ならびに外科的介入が、上記抗癌治療と組み合わせて用いることも企図される。活性化合物および非活性化合物(化学療法などの)との使用について企図される任意の併用処置は、複数の活性化合物に関して応用できることがさらに企図される。1. 化学療法 癌治療はまた、化学および放射線を基礎とする処置の両方との様々な併用療法も含む。併用化学療法薬としては、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスアミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲンタマイシン、ナブレルビン、ファルネシル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチン、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、テマゾロミド(DTICの水性型)、または前述の任意の類似体もしくは誘導化変異体が挙げられる。2. 放射線療法 DNA損傷を起こし、かつ広く用いられているその他要素としては、腫瘍細胞に向けられ放射されるγ線、X線、および/または放射性同位元素として一般的に知られるものが挙げられる。マイクロ波およびUV照射などの、他の形状のDNA損傷要素も企図される。これら全ての要素は、おそらくは、DNA、DNA前駆体、DNA複製および修復、ならびに染色体の集合および維持を広く損傷するだろう。X線の線量範囲は、長期の場合(3〜4週間)は50〜200レントゲン日線量の範囲であり、単回照射の場合は2000〜6000レントゲンの範囲である。放射性同位元素の線量範囲は、同位元素の半減期、放射線の強度およびタイプ、ならびに新生物細胞の取り込みに応じて広範囲に変わる。 細胞に用いる場合、用語「接触させる」および「暴露させる」は、本明細書では本発明の組成物(例えば低酸素抗腫瘍化合物)または化学療法剤もしくは放射線療法剤が標的細胞に送り出されるか、または標的細胞に直に接して置かれるプロセスを表す。併用治療では、細胞の死滅またはスタシスを達成するために、両作用物質を細胞を殺滅するかまたはその分裂を妨げるのに有効な合計量を細胞に送ることができる。3. 免疫治療 免疫治療は、一般には、免疫エフェクター細胞および分子を用いて、癌細胞を狙い、かつ破壊することに基づいている。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞表面上にあるいくつかのマーカーに特異的な抗体でよい。抗体は単独で治療のエフェクターとして働いても、または実際に細胞殺滅を行う他の細胞を集めてもよい。抗体は、薬物もしくは毒素(化学療法剤、放射核、リシンA鎖、コレラトキシン、百日咳トキシン等)に接合することができ、単に標的化作用物質として用いてもよい。あるいは、エフェクターは、標的の腫瘍細胞に直接的または間接的のいずれかで相互作用する表面分子を担持するリンパ細胞でよい。各種エフェクター細胞としては、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が挙げられる。 免疫治療はまた、併用治療の一部として用いることもできる。併用治療の一般的方法を以下に論ずる。免疫治療の一つの局面において、腫瘍細胞は標的化に好都合である、即ち多くのその他細胞には存在しないいくつかのマーカーを担持していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在しており、これらの任意のものは、本発明の関係での標的化に適切であり得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155が挙げられる。免疫治療の別の局面は、免疫刺激効果を用いた抗癌効果に関する。免疫刺激分子も存在しており:IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、およびFLT3リガンドなどの増殖因子が挙げられる。併用免疫刺激分子は、タンパク質としてmda-7などの腫瘍サプレッサーと組み合わせるか、または遺伝子デリバリーとして使用するかのいずれかで抗腫瘍効果を高めることが示されている(Ju et al., 2000)。 先述したように、現在研究中または使用されている免疫治療の例は、免疫補助剤(例えばマイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物)(米国特許第5,801,005号;米国特許第5,739,169号;Hui and Hashimoto, 1998; Christodoulides et al., 1998)、サイトカイン治療(例えばインターフェロンα、β、およびγ;IL-1、GM-CSFおよびTNF) (Bukoswski et al., 1998; Davidson et al., 1998; Hellstrand et al., 1998)、遺伝子治療(例えばTNF、IL-1、IL-2、p53) (Qin et al., 1998; Austin-Ward and Villaseca, 1998; 米国特許第5,830,880号および米国特許第5,846,945号)、ならびにモノクローナル抗体(例えば抗−ガングリオシドGM2、抗−HER-2、抗−p185) (Pietras et al., 1998; Hanibuchi et al., 1998)である。ハーセプチン(トラスツズマブ)は、HER2-neu受容体を遮断するキメラ(マウス−ヒト)モノクローナル抗体である。それは抗腫瘍活性を有し、悪性腫瘍処置への使用が認可されている(Dillamn, 1999)。ハーセプチンおよび化学療法を用いた癌の併用治療は、個々の治療に比べより効果的であることが示されている。したがって、一つまたは複数の抗癌治療を、本明細書に記載の抗腫瘍治療と一緒に用いることが企図される。F. 神経変性 本発明は、神経変性疾患の処置を用いることができる。神経変性疾患は、神経組織の編成を特徴とし、記憶消失、運動機能消失、および認知症を伴うことが多い。認知症疾患では、知性および高度の認知能力が長期間の間に次第に傷害を受ける。65歳以上の人のおおよそ15%は軽度から中度の認知症と予測されている。神経変性疾患としては、パーキンソン病;原発性神経変性疾患;ハンチントン舞踏病;卒中および他の低酸素もしくは虚血性プロセス;神経外傷;代謝誘発性神経損傷;脳性発作の後遺症;出血性ショック;二次性神経変性疾患(代謝性または中毒);アルツハイマー病、他の記憶障害;あるいは欠陥性認知症、多発塞栓性認知症、レビー小体型認知症、または神経変性認知症が挙げられる。 生物の健康、特に神経系は酸化状態と還元状態の循環に依存しており、それは最終的に概日リズムと結びついている。即ち、覚醒時に体に加わった酸化的ストレスは、睡眠中に還元的環境に循環することを示す証拠がある。このことが、健康にとって睡眠が重要である理由の大部分であると考えられている。ハンチントン病やアルツハイマー病などのある種の神経変性疾患状態、ならびに正常な加齢のプロセスは、この循環パターンの不調と関連付けられている。これらの状態では、脳のH2Sレベルが低下することを示す証拠も存在する(Eto et al., 2002)。 本発明は、酸化的状態と還元状態の間の循環を調節するおよび制御するために用いることができ、例えば神経変性疾患およびプロセスの効果を予防または逆転させることができる。概日リズムを制御することには、例えばある時間帯から別の時間帯に旅行した後にこれら循環パターンを調整し、新しい時間帯に合わせる別の応用もあり得る。さらには、全体的な代謝活性の低下は、高齢の動物およびヒトの健康と相関することが示されている。したがって、本発明は、全体的に代謝機能を抑制して、高齢者の寿命および健康を増進するのにも有用であると考えられる。このタイプの処置は、毎日、夜間、6〜10時間の睡眠中に投与されるであろうことが企図される。これは、数ヶ月から数年という長期間、毎日処置することを必要とすることもある。G. 加齢 さらには、生物物体が仮死状態状態にある状況を含むがこれに限定されない特定のスタシス状態では、生物物体がこの状態にある期間、加齢そのものが徹底的または完全に阻止される可能性がある。したがって本発明は、生物物質が正常に生存できる時間の延長に関して、および/または生活のある発生段階から別の段階への進行に関して、生物物質の加齢を阻止するかもしれない。H. 血液疾患 本発明の組成物および方法を用いて様々な血液疾患および状態に取り組むことができる。これらの疾患としては、地中海貧血および鎌状赤血球貧血が挙げられる。1. 地中海貧血 正常のヘモグロビンは、2本のαおよび2本のβグロビンポリペプチド(タンパク質)鎖を含み、それぞれが鉄含有ヘム環に結合している。地中海貧血は、α鎖とβ鎖がアンバランスであり、対を形成しない鎖が、正常の、脆弱な赤血球膜上に沈積して、細胞を破壊する一群の状態である。これは、骨髄がより多くの赤血球を作ることによって代償しようとする、重い貧血をもたらす。不幸にも対を形成しない鎖の毒性によって、このプロセスは極めて効率が低く、骨髄腔を大きく拡張させ、造血空間を体部の他所にまで拡張する。このことと貧血が大きな毒性をもたらす。対を形成しない鎖がこれほど傷害的であることに関していくつかのモデルが存在するが、多くは対を形成しない鎖に結合した鉄によるフリーラジカル発生の上昇が赤血球の初期破壊にとって重要であることを必然的な結果としている。したがって、これらフリーラジカルによる酸化的損傷を低下する任意の介入は、赤血球の寿命を延ばし、貧血を改善し、赤血球造血の必要性を下げ、骨髄拡張および展開による損傷を少なくする可能性がある。 毎年、重症地中海貧血の子供が30,000例以上生まれると推測されており、先進工業国ではそのほとんどが20歳まで生きるが、第三世界の国々(患者の多くが生活する)ではほとんどが若年小児で死亡する。ここに示した他のモデルシステムの現時点での結果からは、地中海貧血の動物を硫化水素に暴露することは、それらの赤血球が酸化的損傷に耐える能力を高め、赤血球の生存を延長することが期待される。2. 鎌状赤血球疾患 正常ヘモグロビン(HbA)は、2本のαおよび2本のβグロビンポリペプチド(タンパク質)鎖を含み、それぞれが鉄含有ヘム環に結合している。鎌状赤血球疾患(SCD;鎌状赤血球貧血とも呼ばれる)は、突然変異β鎖が変化したヘモグロビン(HbS)をもたらす一群の状態である。脱酸素化によってHbSは重合(結晶化)して沈着し、正常の、脆弱な赤血球膜を損傷し、細胞を破壊して低赤血球(RBC)の貧血を起こす。これに加えて、重合HbSを持つ細胞は、形状を変えて(鎌状)、粘着性になり、凝固をもたらすメカニズムを活性化して血流を遮断する。これは、周囲組織の低酸素損傷をもたらし、疼痛、臓器機能不全、および時に早期死亡を招く。患者では、硫黄含有酸化防止剤の貯蔵の減少が記録されている。これに加えて、酸化的損傷および反応性酸素種(ROS)の増加は、不適切な血流に関係する結晶化、RBC膜損傷、および組織損傷に関与している。スルフィドは、酸化防止剤の貯蔵の「再充填」に関与し、酸化的損傷を最小限にとどめる可能性がある。スルフィドが鎌状赤血球の病理の複数の段階で問題を防止していると考える理由がある。さらには、酸素アンタゴニストが他のシステムにおいて低酸素から保護できることを考えると、このことがこの疾患状態が引き起こす有害状態に曝された動物およびヒトも保護できることが示唆される。 毎年、SCDを持つ子供が120,000名以上生まれる。先進工業国の患者は、現在は40歳代〜50歳代まで生きるが、疼痛および、発作、肺、心臓、および皮膚の問題を含む臓器損傷を伴う大きな問題を抱えている。第三世界(患者の多くが生活する)では、大部分が若年小児で死亡する。本発明者らは、SCDを持つ動物および最終的にヒトをスルフィドに暴露することで、健康の改善をもたらすと仮定している。IV. 保存的応用 本発明は、輸送および/または貯蔵目的のために、細胞、組織、臓器、および生物全体を含む様々な生物物体を保存または貯蔵するのに用いることができる。ある態様では、生物物体は、有害状態からの損傷を防止するように保存される。 本発明の態様では、生物物体を、約、少なくとも約、または最大で約、30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、1、2、3、4、5週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年間、もしくはそれ以上、およびそこから導き出せる任意の組み合わせもしくは範囲で、活性化合物に暴露することができる。活性化合物を用いてスタシスを誘導し、他の作用物質を用いてスタシスを維持し、任意の有意な期間それらを保存できることが企図される。あるいは、活性化合物を用いてスタシスを誘導および/または維持できることが企図される。これは、圧力および/または温度の環境変化などの他の作用因子と組み合わせることができる。1. 細胞 上記で論じたように、本発明との使用については様々な細胞が企図される。このような細胞は、本発明の方法、器具、および組成物中に保存できることが企図される。a. 血小板 ある態様では、本発明は、血小板の保存に使用を見いだせる。血小板は、出血部位での血餅形成に重要な役割を果たす、小さな細胞断片(赤血球の約1/3のサイズ)である。止血は、血管壁への付着、凝固化学物質の放出、血管壁内および/または狭窄血管内の断裂を埋める血餅の形成により達成される。正常血小板数は、150,000〜400,000個/μLである。濃縮血小板は、様々な適用、例えば:1)血小板減少症による出血の防止;2)出血患者の血小板数を50,000に維持するため;3)先天的、または投薬、敗血症、悪性疾患、組織外傷、妊娠合併症、体外循環、または肝臓もしくは腎臓疾患などの臓器不全による異常な血小板機能に対処するために、輸血される。 各単位の血小板は、平均して0.8〜0.85 ×1011個の血小板を含む。濃縮血小板はまた、約60mLの血漿(凝固因子)ならびに少数の赤血球および白血球も含んでいる。単位血小板は、室温(20〜24℃)に維持され、貯蔵中は震盪されなければならない。それらは血液センターに5日間まで貯蔵できる。現時点では、血小板の破壊および微生物汚染のリスクにより、それ以上の貯蔵は不可能である。現在、二種類の血小板の供給源が存在する。 1) ランダムドナー・プール濃縮血小板は、数単位の全血を遠心分離することによって採集された血小板から調製される。それぞれ別のドナーに由来する、最大8単位の血小板を、輸血のために単一のバックにプールすることができる。血小板は、プールしてから4時間後に期限が切れる。全ての単位は、同一のABO型から得る。もしABO適合血小板が入手できない場合は、ほとんどリスクなしにABO不適合血小板を代用することができる。通常の成人の用量は、ランダムドナー・プール濃縮血小板4〜6単位である。 2) 単一ドナーから集められるアフェレーシス血小板は、標準(約4プール単位に相当)および「大」(約6プール単位に相当)のサイズで調製される。アフェレーシス濃縮血小板は、血漿200〜400mLを含む。それらはランダムな単位(ランダムなアフェレーシス血小板)として集められるか、特定のレシピエントのために、家族またはボランティアのHLA適合「指名」ドナーから得ることができる。アフェレーシス血小板は、血液センターからの出荷に合わせ処理されてから4時間後に期限が切れる。 血小板貯蔵には、全血または他の成分の貯蔵にはない問題がある。全血、赤血球、および白血球は、4℃で数週間貯蔵できるが、血小板は低温貯蔵して沈殿を許すと凝集を起こす。そのため、血小板の標準的な貯蔵法は、ゆっくり震盪しながらの室温、おおよそ20〜24℃である。このような条件でさえ、血小板は、廃棄が必要とされるまで僅か5日間しか貯蔵できない。この期限切れ問題は、米国の病院にとって年間おおよそ500百万ドルの収益損失をもたらしている。たとえ貯蔵期間が少し延びただけでも、この損失のおおよそ90%が回避できる可能性がある。 血小板貯蔵に関係するその他の問題は細菌汚染である。汚染は、主に静脈穿刺中の皮膚に由来するブドウ球菌、またはその他ドナー由来の細菌によるものである。血小板の細菌汚染は、輸血操作に伴う最大の感染リスクである。 血小板の生存率に影響する重要要素は、pHの制御である。実際、現在受け入れられている方法にしたがって貯蔵された全ての血小板単位は、それらの初期値7.0よりも低いpHを示す。この低下は、主に血小板の解糖による乳酸の産生および酸化的リン酸化で生じたCO2の僅かな蓄積によるものである。pHが低下すると、血小板はその形を円形から楕円形に変える。pHが6.0未満になると、血小板の形態および生理学の不可逆的な変化によってそれらは輸血後生存できなくなる。血小板保存の重要な目標は、したがって、このpHの低下を防止することである。従来血小板は、酸素利用可能性が制限された時に解糖が刺激を受けることから、酸素透過性の容器に貯蔵しなければならないと考えられていた(例えば米国特許第5,569,579号を参照されたい)。しかしながら、本発明は、貯蔵血小板の生存は、それらを無酸素環境内に貯蔵することによって延長できることを証明している。 本発明は、貯蔵血小板の生存時間を延ばし、細菌汚染を減らす方法および組成物を提供する。一つの態様では、本発明は、その中に血小板を入れる密封可能な、酸素不透過性の容器を提供する。密封後、嫌気状態発生器(例えば白金触媒を伴う水素化ホウ素ナトリウムの錠剤)が容器内の大気酸素を水に変える。容器はまた、酸素圧のレベルを示すインジケータを収容できる。一度無酸素状態になれば、血小板は低温で貯蔵することができる。 血小板は、血漿中に、または当技術分野で公知である任意の血小板貯蔵溶液の中に浮遊させて貯蔵することができる。例えば、米国特許第4,828,976号および第4,447,415号は、血小板の貯蔵に適した、複数の一般的に使用されている溶液を開示している。 典型的には、血小板は、ドナーの血漿中に貯蔵され、その形で投与される。 一般的には、本発明は、酸素圧を1% (10,000ppm)未満まで、より詳しくは10〜100ppmの範囲内、またはそれ未満まで減じることができる密封された環境(容器、ジャー、不透過性バッグ、またはチャンバー)からなる。この環境中の大気酸素の減少は、当技術分野で公知の様々な方法によって達成できる。例えば、大気酸素の減少は、触媒を用いるかまたは用いることなく水素ガスを発生させ、酸素と結合させて水を生成することによって達成できる。他の反応を触媒して、酸素を炭素などの別の化合物と結合させて二酸化炭素を生成させること等もできる。また酸素は、チャンバー内の全ての空気を、酸素を含まない任意の気体の組み合わせを含む気体と交換することによって置き換えることもできる。また酸素は、チャンバーを真空下に置いて全ての気体を取り除くことで除去することもできる。あるいは、酸素は、酸素と競合するCOなどの別の気体または化合物を用いて競合させることもできる。酸素の除去と含有酸素の競合の組み合わせも用いることができる。装置はまた、酸素濃度を測定して、適切な嫌気状態が達成されたことを保証する方法も含むことができる。例えば、酸素濃度は、酸素が無い場合に青色から無色に変わるメチレンブルーに基づく嫌気性インジケータを用いて測定できる。あるいは、酸素メータまたはその他酸素測定装置を用いてもよい。 装置はまた、密封環境内に血小板を納め、血小板を含む溶液からだけでなく血小板そのものからも酸素を除去することができるようにするいくつかの方法を含む。この一例は、血小板を密封環境の内側に置かれた気体透過性バッグに入れることである。血小板はまた、密封環境の内側の開放容器に保持することもできる。または、血小板は、不透過性の密封容器/バッグの中に直接入れられてもよい。 Becton DickinsonのBio-Bag (登録商標)(製品番号261215)は、血小板貯蔵のための無酸素環境の創出に用いることができる密封可能な、酸素透過性容器の一例である。嫌気性細菌の単離用として販売されているキットのBio-Bagは、密封可能な、気体不透過性バッグ;嫌気性インジケータ;嫌気性発生器(水素ガス発生器);および白金触媒を含む。気体透過性バッグ内の血小板は、Bio-Bagの内側に密封されると考えられる。 Bio-Bag内の嫌気性発生器は、水の添加により作動する装置であり、水は一連のチャンネルを通り濾紙の芯に運ばれる。芯はタブレットチャンバー内への水の導入を遅らせ、かつ調節して、制御された水素ガスの放出を提供する。気体発生錠剤は、ホウ酸水素ナトリムからなる。この反応で放出された水素は、密封容器内の大気の酸素と結合して水を生ずる。この反応は、容器内の白金によって触媒される。 Puget Sound Blood Center (PSBC)は、無酸素状態で貯蔵された血小板の状態を、第0日目、第5日目、および第8日目に、標準化されたインビトロ試験パネルを用いて独自に評価した。結果は、無酸素状態で貯蔵された血小板は、8日目まで、標準状態で貯蔵された血小板と同じかそれ以上に良好に機能することを示した。進行中の研究は、この実験を繰り返し、観察時間を13日まで延長している。 当業者は、血小板の機能をアッセイする方法を熟知していると考えられる。例えば、米国特許第6,790,603号に記載されているように、血小板の機能は、以下によってアッセイできる:(1)活性化誘導アゴニストを作用させたことに反応した細胞膜への内部タンパク質の発現;(2)アゴニストを作用させた時の凝集能力;および(3)アデノシン三リン酸の分泌。血小板機能の活性化を引き起こすことができるアゴニストの例としては、トロンビン、エピネフィリン、ADP、およびコラーゲンが挙げられる。 内部タンパク質の発現は、蛍光色素を用いて分子を標識し、続いて蛍光セルソーターでのソーティングによって測定できる。一般的には、二種類のモノクローナル抗体、一つは構成的に発現している細胞表面分子に結合するものであり、もう一方は、活性化後にだけ発現する細胞表面分子に結合するものを用いることが好ましい。各モノクローナル抗体は、分光蛍光計によって区別できる、異なる色の色素に結合される。構成的に発現する細胞表面分子の非限定的例は、GPIIbIIIaである;活性化後に発現する細胞表面分子の非限定的例は、P-セレクチンである。タンパク質に対するモノクローナル抗体の作製は当技術分野では周知である。米国特許第5,470,738号はGPIIIaに対するモノクローナル抗体の作製の一例である。別の抗血小板モノクローナル抗体は、米国特許第5,231,025号が開示するようなGP IVに対するものである。抗体は、Becton-Dickinson (Philadelphia)などの会社から購入することもできる。 血小板機能のその他のパラメータは、アゴニストを作用させた時に凝集する能力である。血小板浮遊液は緻密でかつ乳白色をしている。凝集およびそれに続く凝集塊の沈殿は、肉眼で評価またはデンシトメーターを使って測定できる。 血小板機能のさらに別の尺度はATPの分泌である。十分に機能できる血小板はATPを分泌できるが、既に活性化されているか、または別の形で機能を失っている細胞はATPを分泌できない。2. 細胞培養 本発明は、保護がなければ死滅するかアポトーシスが誘導される培養細胞の保護に拡大できる。本発明との関係では、細胞は培養前および/または培養中に活性化合物に暴露される。本発明にしたがって培養することができる細胞としては、最終的に生理学的関係に戻すことができる細胞、即ちその後移植される細胞が挙げられる。このような細胞としては、骨髄、皮膚細胞、および上皮細胞が挙げられるが、これらに限定されない。またいくつかの移植可能な細胞は、培養によって拡大し、それにより宿主内に導入できる物質量を増やすことによって大きな便益を得るだろう。胃腸管由来の上皮細胞は、活性化合物への暴露から便益を得ることができる細胞として特に企図される。 さらには、本発明は、腫瘍細胞にも拡大する。腫瘍細胞の培養は表現型の変化を、いくつかの例では死をもたらすことが公知である。これは、腫瘍死亡を用いた組織培養実験を極めて予測不可能にしている。 一般的な細胞培養技術は、当業者に周知である。この知識の例は、Shaw(1996)およびDavis(1994)に見出すことができ、共に参照により本明細書に組み入れられる。伝統的な細胞培養技術の一般的情報および変更は、米国特許第5,580,781号にも見出され、これは参照により組み入れられる。さらには、皮膚細胞の培養方法は、米国特許第6,057,148号に記載されており、これは参照により組み入れられる。これらの技術、および当業者に公知の他の技術には、一つまたは複数の活性化合物を含む媒体が追加されるか、または液体および/もしくは気体として活性化合物が潅流されることが企図される。E. 細胞、組織、および臓器の保存 本発明のある態様では、生物物体を保存し、可能な限り生物物体への損傷を防止して死または腐敗から守ることが望ましい。1954年に初めて腎臓移植が成功し、1967年には最初の心臓および肝臓移植が実施されたが、毎年何千人もの人々が臓器移植を必要としながら死んでいる。彼らは、様々な理由から心臓、肺、腎臓、および肝臓を必要とする。これに加えて、膵臓または角膜が活用できる患者も存在する。臓器ドナーは絶えず必要とされているが、臓器移植を必要とする人々に臓器を提供する上での別の大きな障害は、現在の臓器保存技術の限界である。例えば、ヒトの心臓は、後に続く移植のいかなる機会も成功させるためには4時間以内に運搬しなければならないと広く信じられている。Rager 2004(下表参照)。最大冷虚血時間 さらに、移植された心臓の場合、初期30日間における臓器移植失敗の第一の原因は虚血−再潅流傷害である。 臓器移植の成功にとって、臓器の摘出および保存、組織の適合、および免疫抑制が重要な要素である。臓器の摘出作業の技術的局面は、複数のチームが一緒に作業し、一人のドナーから有用な全ての臓器が調達される。一人の死亡したヒトから平均で3.6個の臓器が調達される。 固形の臓器の保存は、インサイチューでの急激な血管内冷却、続く臓器摘出、氷冷保存液内での臓器の保存、レシピエントの病院への迅速な輸送にかかっている。冷虚血時間は、血流のない状態で臓器が氷上に置かれる時間の長さである。最長冷虚血時間は、臓器回復から臓器移植までの経過可能な時間を制限する(表5)。適合しおよび摘出された臓器の2〜10%は、臓器のタイプによっては、虚血時間が長いという理由から用いることができない。同様に、摘出臓器のおおよそ10〜20%は、臓器の機能不良および/または感染から使用されない(HIV/CMV/肝炎は含まない)。 現在の保存技術は、電解質、酸化防止剤、水素イオンバッファー、および糖類を含む氷冷溶液の使用を含む。Punchら、2001。適切な組織適合は、全ての臓器について血液型適合(例えば血液型A、B、またはO)に依存する。免疫抑制レジメンは、典型的には3種類の薬物:プレドニゾロンなどのグルココルチコイド、アザチオプリンまたはマイコフェノラートなどの代謝拮抗剤、およびシクロスポリンまたはタクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤を含む。 移植のための心臓を保存/輸送するために最も多く用いられている二つの方法は、低温貯蔵および連続潅流である。前者の方法では、心臓を停止させ、ドナーから摘出した後直ちに冷却して低温貯蔵室内に運ぶ。後者の方法では、次の段階が典型的に用いられる:1) 拍動流;2) 低体温;3) 膜型人工肺(membrane oxygenation)、および4) 潅流液含有槽浴(perfusate containing both)。 移植成功の見込みを向上させるために、移植用臓器をより良く保存するための技術が開発されている。二つの大まかな開発分野が存在するが、その一つは保存液の分野であり、もう一つは臓器容器の分野である。 移植などの特定の状況では、創傷の治癒結果の不良が移植された組織の適切な生着を害し、または妨げることがある。本発明との関係では、ドナーおよびレシピエント側の組織を、創傷治癒に関して上記したように、炎症、アポトーシス、および移植された組織を損傷する他の創傷治癒/移植後事象などの生物学的プロセスを阻止することを図って酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物で移植前処置することが考えられる。F. 生物 そのような生物は、実験用マウス(マウスバンキング)のように研究目的に、または魚のように消費を目的に用いることができるだろう。このような状況では、スタシスは無期限に維持できることが企図される。よりさらには、スタシスは、植物および果実、花、葉、茎、種、切り花を含む植物の一部分に誘導できる。植物は、農業用、医療用、または装飾用でよい。植物へのスタシスの誘導は、植物全体または一部分の保管寿命または病原菌耐性を高める可能性がある。したがって、本発明の態様では、生物またはその一部分を酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物に約、少なくとも約、または最大で約、30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、1、2、3、4、5週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年間、もしくはそれ以上、およびそこから導き出せる任意の組み合わせもしくは範囲で暴露することができる。G. 保存剤 輸送される間、保存液を用いて臓器を囲むかまたは潅流するための各種保存液が開示されている。最も一般的に用いられている溶液の一つはViaSpan (登録商標)(Belzer UW)であり、これは保冷剤と一緒に用いられる。このような溶液またはこのような溶液の構成要素の別の例としては、St. Thomas液 (Ledingham et al., Thorac. Cardiobasc. Surg. 93:240-246, 1987)、Broussais液、UW液(Ledingham et al., Circulation 82 (Part 2) IV351-8, 1990)、Celsior液 (Menasche et al., Eur. J. Cardio. Thorax. Surg. 8:207-213, 1994)、Stanford University液、および溶液B20 (Bernard et al., J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 90:235-242, 1985)ならびに米国特許第6,524,785号;第6,492,103号;第6,365,338号;第6,054,261号;第5,719,174号;第5,693,462号;第5,599,659号;第5,552,267号;第5,405,742号;第5,370,989号;第5,066,578号;第4,938,961号;および第4,798,824号に記載および/または請求の溶液が挙げられる。 溶液に加えて、他のタイプの物質も臓器および組織の輸送での使用について公知である。そのようなものとしては、例えば米国特許第5,736,397号に記載されているような、ゼラチン状物質または他の半固体物質が挙げられる。 酸素化された環境内で臓器または組織を維持することが生存率を改善すると信じられていることから、臓器保存のためのいくつかのシステムおよび溶液は、特に臓器を酸素に暴露する溶液またはシステム内での酸素潅流に用いられる。Kurodaら(Transplantation 46(3):457-460, 1988)ならびに米国特許第6,490,880号;第6,046,046号;第5,476,763号;第5,285,657号;第3,995,444号;第3,881,990号;および第3,777,507号を参照されたい。4時間を超えて酸素が枯渇した単離された心臓は、虚血/再潅流傷害によって活力を失っており、レシピエントに有用ではないと信じられている。米国特許第6,054,261号を参照されたい。 さらに、全てではなくとも多くの臓器保存および輸送用の溶液および容器は、「臓器および組織保存のあらゆる有用な方法の基礎」と呼ばれる低温(室温未満で、多くは0℃に近いが0℃未満ではない温度)を必要とする。米国特許第6,492,103を参照されたい。 移植成功の見込みを向上させるために、移植用臓器をより良く保存するための技術が開発されている。二つの大まかな開発分野が存在するが、その一つは保存液の分野であり、もう一つは臓器容器の分野である。 さらに、全てではなくとも多くの臓器保存および輸送用の溶液および容器は、「臓器および組織保存のあらゆる有用な方法の基礎」と呼ばれる低温(室温未満で、多くは0℃に近いが0℃未満ではない温度)を必要とする。米国特許第6,492,103を参照されたい。 臓器移植の分野では、次の特定の条件が移植成功のための臓器の状態および予後に関係すると信じられている:1) 細胞膨潤および浮腫の最小化;2) 細胞内アシドーシスの防止;3) 虚血性損傷の最小化;ならびに4) 再灌流中の高エネルギーリン酸化合物およびATP再生のための基質の供給。臓器移植時の虚血/再灌流傷害は、摘出された臓器は体外に取り出され、血液供給源から単離され、それによって長期間酸素および栄養が奪われることから特に問題である(米国特許第5,912,019号)。事実、今日の移植で最も重要な問題の一つは、手術後の急性尿細管壊死(ATN)による遅延型移植体機能不全(DGF)の発生頻度が比較的高いことである。現在の方法もやはりこれらの分野の問題を経験しており、このことは本発明の重要性を際立たせている。 それでもなお、本発明は、他の保存組成物および方法と一緒に用いることができる。米国特許第5,952,168号、第5,217,860号、第4,559,258号、および第6,187,529号(参照により特に組み入れられる)に論じられているように、生物物質は、例えば移植可能または交換可能な臓器を長期維持するために保存することができる。 細胞、組織/臓器、または死体に、移植するための臓器の状態を高めるか、または維持する化合物を提供することができる。このような方法および組成物としては、米国特許5,752,929号および第5,395,314号に記載のものが挙げられる。 さらに、本発明の方法は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物への暴露に加えて、論じたような保存液に生物物体を暴露することを含んでよい。 生きている材料、および生きている材料として用いられる生物学的サンプルと一緒に用いられる任意の作用物質または溶液は、薬学的に許容されるかまたは薬理学的に許容されることが企図される。「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という表現はヒトに投与された時にアレルギーまたは類似の不利益な反応を起こさない分子成分および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は、当技術分野で十分理解されている。典型的には、このような組成物は、溶液または懸濁液のいずれかに調製され、溶液または懸濁液に好適な固体を、使用前に液体に調製することもできる。 移植のための臓器を、それらの状態、特に移植体としての使用に関してモニタリングし、評価することができる。このような方法は、米国特許第5,699,793号に記載されている。 臓器移植が行われた後に、回復のプロセスを支援するために多くの薬物が投与されることがある。このような薬物としては、供与された臓器に対する免疫反応を減じるかまたは阻止する化合物および作用物質が挙げられる。 さらに、臓器移植のための、米国特許第6,552,083号(N-(3,4-ジメトキシシンナモイル)アントラニル酸を含む阻害性作用物質)および第6,013,256号(ヒト化抗-Tax抗体などのIL-2受容体に結合する抗体)に記載されているようなさらなる薬物が引き続き研究されており、かつ提供されている。H. 保存器具および応用 臓器および組織を輸送するためのシステムまたは容器も長年にわたり開発されてきた。これらの態様のいくつかは、本発明の器具と組み合わせることができ、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物と一緒に使用することができる。 大部分は、例えば、米国特許第4,292,817号、第4,473,637号、および第4,745,759号に記載されているようなポンプを使って冷却液をシステム全体に送る積極的冷却を利用する冷却システムを用いて実行される。米国特許第5,434,045号および第4,723,974号のように、いくつかの精巧な装置は、複数のチャンバーまたは二重の容器を含むように設計されている。 いくつかは、米国特許第6,490,880号;第6,100,082号;第6,046,046号;第5,326,706号;第5,285,657号;第5,157,930号;第4,951,482号;第4,502,295号;および第4,186,565号に記載されているように、保存液中で臓器または組織を潅流するための器具を備えたシステムを構成要素としている。 酸素化された環境内で臓器または組織を維持することが生存率を改善すると信じられていることから、臓器保存のためのいくつかのシステムおよび溶液は、溶液またはシステム内での酸素潅流に特に用いられて、臓器を酸素に暴露する。Kurodaら、(Transplantation 46(3):457-460, 1988)ならびに米国特許第6,490,880号;第6,046,046号;第5,476,763号;第5,285,657号;第3,995.444号;第3,881,990号;および第3,777,507号を参照されたい。酸素が4時間を超えて枯渇した単離された心臓は、虚血/再潅流傷害によって活力を失っており、レシピエントに有用ではないと信じられている。米国特許第6,054,261号を参照されたい。 さらに、本発明のいくつかの態様には、上記のようにして血小板を保存する方法が存在する。先行技術の短所は、本明細書が開示した技術を用いることを減らされているかまたは取り除かれている。血小板および酸素減少に関する態様は、血小板の長期貯蔵による便益が期待できる任意の応用を含むが、これに限定されない広い応用を見出す。 一つの態様では、酸素低減技術は、キットの中に具現化できる。例えば、現在Becton Dickinsonより製品番号261215で販売されているキットは、本明細書に記載されている選択技術を用いている。このキットは、嫌気性発生器(例えば、水素ガス発生器);白金触媒、嫌気性インジケータ;および上記構成要素(ガス透過性バッグ内の血小板と共に)が入れられ密封される密封可能な気体不透過性バッグ「BioBag」を含む。 このキット例の嫌気性発生器は、水の添加により作動して、水は一連のチャンネルを通り濾紙の芯に運ばれる。芯はタブレットチャンバー内への水の導入を遅らせ、かつ調節して、水素ガスを制御しながら放出させる。気体発生錠剤は、ホウ酸水素ナトリムを含む。この反応で放出された水素は、密封容器内の大気の酸素と結合して水を生ずる。この反応は、容器内の白金によって触媒される。 より一般的な局面では、この開示技術は酸素圧を下げることができる様々な密封環境(例えばジャーなどの容器、不透過性バッグ、またはチャンバー)を用いて実施できる。一つの態様では、容器内および/または血小板内もしくは付随する溶液内の酸素レベルを、約1% (約10,000ppm)未満まで下げてもよい。別の態様では、酸素を約10〜100ppmの範囲、またはそれ未満まで下げてもよい。さらに別の態様では、酸素を容器内および/または血小板もしくは付随する溶液内の酸素の低下を表す任意のパーセンテージ値まで下げてもよい。好ましい態様では、容器は気体不透過性であり、また密封性である。当業者は「気体不透過性」が必ずしも絶対または100%レベルの不透過性を意味しないことを認識すると考えられる。むしろ、「気体不透過性」は、当技術分野では、例えば(室内空気の勾配、典型的には210,000ppmに対して)10ppm未満の大気を、少なくとも4日間維持できることを表すと解釈される。典型的には、市販のバッグは6週間またはそれ以上不透過性である。 容器は、付属の酸素低減要素を内側に入れた後に密封されてもよい。この環境内の大気の酸素の減少は、触媒を用いるかまたは用いることなく水素ガスを発生させ、酸素と結合させて水を生成することによって達成される。別の反応を触媒して、炭素と結合させて二酸化炭素を生成するように、酸素を他の化合物と結合させることもできる。その他の反応および組み合わせは、当業者には明らかであると考えられる。また酸素は、チャンバー中の気体を、酸素を含まない気体の任意の組み合わせを含む気体と交換することによって置き換えることもできる。これに加えて気体を取り除くのに十分な、および特に酸素を好ましい、減量したレベルまで取り除くのに十分な真空下に容器を置くことにより、酸素を取り除くことができる。または、酸素は、酸素と競合するCOなどの別の気体または化合物を用いて競合させることもできる。酸素の除去と含有酸素の競合の組み合わせも用いることができる。 異なる態様では、装置を用いて酸素レベルを測定し、適切な嫌気状態が達成されたことを測定することができる。酸素が無い場合に青色から無色に変わるメチレンブルーに基づく嫌気性インジケータを用いることができる。あるいは、市販の酸素メータ(例えば機械式および/もしくは電気式メータ)または他の酸素測定装置を用いてもよい。 異なる態様では、血小板は、血小板の入った溶液からだけでなく血小板そのものからも酸素を除去することができるように密封された環境内に入れられる。例えば、気体透過性バックの中の血小板を、密封環境の内側に置くことができる。別の非限定例は、密封環境の内側に血小板を保持する開放容器を持つことができる。または、血小板を不透過性の密封容器(例えばバッグ)の中に入れて、酸素除去メカニズムを組み入れることもできる。 一つの態様では、本発明は、血小板および溶液を気体不透過性容器内に導く方法を含む。容器は密封される。酸素は、容器または血小板および溶液から除去される。気体不透過性バッグ中の酸素の約、少なくとも約、または最大で約、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%、そこから導きだされる任意の範囲で除去することが企図される。 この方法はまた、酸素除去後に容器内の残留酸素レベルを示す段階も含んでよい。容器内の酸素は、約10,000ppmまたはそれ未満のレベルまで下げることができる。容器内の酸素は、約10〜約100ppmの間のレベルまで下げることができる。血小板を導入する段階は、血小板および溶液の入った気体透過性容器を気体不透過性容器に入れる段階を含んでよい。血小板を導入する段階は、血小板および溶液を、密封可能な柔軟なバッグ、または密封可能な硬質のチャンバーに入れる段階を含んでよい。容器を密封する段階は、あるプロセスの任意の段階で行うことができ、接着剤を用いてもよい。 酸素を除去する段階は、容器から酸素をポンプで排出する段階を含んでよく、このようなポンプによる排出段階はラッフィングおよび/またはターボポンプを使ったポンプ排出を含む。酸素を除去する段階は、水素を容器内に導入する段階を含んでよく、水素は酸素と結合して水を生じる。水素は、化学反応を通して導入することができる。化学反応は触媒されてもよい。酸素を除去する段階は、気体発生錠剤を用いて容器内に水素を導入する段階を含んでよい。水素化ホウ素ナトリウムを含む気体発生錠剤に水を加えて、水素を発生させることができる。このような水は、遅効性でかつ規則的な様式で加えることができる。例えば、濾紙の芯を使うことができる。水は一つまたは複数のチャンネルを通り濾紙の芯の中に運ばれる。白金は水素を発生する化学反応を触媒できる。酸素を除去する段階は、容器内に一つまたは複数の、酸素と結合する作用物質を入れる段階を含んでよい。COを容器の中に入れてもよく、それは酸素と結合してCO2を形成する。酸素を除去する段階は、一つまたは複数の気体で酸素を置き換える段階を含んでよい。 残留酸素レベルを表示する段階は、酸素非存在時に色を変えるメチレンブルーインジケータの使用を含んでもよい。または、酸素メータを用いてもよい。容器内の残留酸素レベルを表示する段階は、血小板または溶液中の残留酸素レベルを表示する段階を含んでよい。 一つの態様では、本発明は、血小板および溶液を気体不透過性容器に入れる方法を含む。容器は密封される。水素は、水素化ホウ素ナトリウムに水を加えることによって化学反応を通して発生させる。化学反応は、水素との結合により水を形成することを通して、血小板および溶液から酸素を除去する。残留酸素レベルは、酸素除去後の容器内に示される。 化学反応は、白金を用いて触媒されてもよい。水の添加は、濾紙の芯の使用を含んでよい。 一つの態様では、本発明は、血小板および溶液から酸素を除去するためのシステムを含む。システムは(a)密封可能な気体不透過性容器、(b)酸素低減器(oxygen-reducing generator)、および(c)酸素インジケータを含む。密封可能な気体不透過性容器は、血小板および容器を受け取る形とサイズに形成される。酸素低減器は、容器に連結され、ポンピングまたは化学反応を通して血小板および溶液から酸素を除去するように形成される。酸素インジケータは容器に連結されており、酸素除去後の容器内の酸素レベルを示すように形成される。 容器は、密封可能な、柔軟なバッグでよい。酸素低減器は、酸素と結合して水を生成するように形成された水素発生装置を含んでよい。水素発生装置は、作用物質と一緒になると水素を発生させる気体発生物質を含んでよい。その気体発生物質は、水素化ホウ素ナトリウム錠剤を含んでよく、作用物質は水を含んでよい。水素発生装置は、白金触媒を含んでよい。システムは、化学反応の一つまたは複数の構成要素の導入を制御することによって、化学反応を遅延または調節するように形成された部材を含んでもよい。例えば、部材は、化学反応を遅延および制御する芯を含んでよい。 一つの態様では、本発明は、水素発生装置;気体不透過性の密封可能容器;および酸素インジケータを含むキットを含む。 水素発生装置は、作用物質と一緒になった時に水素ガスを発生する気体発生物質を含んでよい。その気体発生物質は、水素化ホウ素酸ナトリウム錠剤を含んでよく、作用物質は水を含んでよい。キットは、白金触媒を含んでよい。キットは、水素を発生する化学反応を遅延または調節するように形成された芯を含んでもよい。 上記で論じたように、本発明の方法は、生物物体が置かれるかまたは暴露される環境を維持する器具またはシステムを用いる段階を含むことができる。本発明は、活性化合物が、特に気体として供給される器具を含む。いくつかの態様では、器具は生物物体を保持するためのサンプルチャンバーを持つ容器を含み、ここで、容器は活性化合物を含む気体供給源に連結されている。容器は、固体容器でも、バッグなどの柔軟な容器でもよいことが特に企図される。 いくつかの態様では、本発明は、細胞を保存するための器具であり、器具は775リットルを超えない容積のサンプルチャンバー、およびサンプルチャンバーと流体連絡(fluid communication)している第1気体供給源を含み、第1気体供給源には一酸化炭素が入っている。さらなる態様では、器具は、サンプルチャンバー内の温度を調節する冷却ユニットおよび/またはチャンバー内の活性化合物の量またはチャンバー内にある溶液中の活性化合物の量を調節する気体制御装置も含んでいる。 第2のもしくは追加の気体のための気体供給源、または活性化合物のための第2のもしくは追加の気体供給源が存在できることが企図される。第2気体供給源は、サンプルチャンバーに連結されるか、または第1気体供給源に連結されてもよい。上記で論じた追加の気体は、無毒および/または非活性の気体でよい。 気体制御装置は、本発明のいくつかの態様では器具の一部分である。1、2、3、またはそれ以上の気体制御装置を用いることができる。いくつかの例では、気体制御装置は、第1気体供給源からサンプルチャンバーへ供給される気体を調節する。あるいは、気体制御装置は、第2気体供給源からサンプルチャンバーもしくは第1気体供給源に供給される気体を調節するか、または第1および第2の気体供給源の両方のための制御装置であってもよい。気体制御装置は、サンプルチャンバーおよび/または別の気体供給源に供給される気体の量を管理するようにプログラムされ得ることがさらに企図される。調節は、指定期間の間であってもなくてもよい。サンプルチャンバーに直接的にまたは間接的に連結した任意の気体供給源用に、プログラムができてもできなくてもよい気体制御装置が存在してもよい。いくつかの例では、気体制御装置は、電子的にプログラムされ得る。 いくつかの例では、チャンバー内側の圧力および/または温度は、圧力制御装置または温度制御装置のいずれかによってそれぞれ調節できる。気体制御装置を用いる場合、これらの制御装置は電子的にプログラムされてもよい。本発明の器具は、上記で論じた温度を達成するように冷却および/または加熱ユニットも有してもよい。ユニットは、電子的にプログラムされてもされなくてもよい。 さらなる態様では、器具は、容器を乗せるホイールカートを含むか、または一つもしくは複数のハンドルを有してもよい。 本発明は、細胞のための以下を有する器具を含むことが、特に企図される:サンプルチャンバーを有する容器;サンプルチャンバーと流体連絡しており、活性化合物を含んでいる第1気体供給源;および第1気体供給源からサンプルチャンバーに供給される気体を調節する電子的にプログラムできる気体制御装置。 いくつかの態様では、器具は、サンプルチャンバー内に真空を提供するように形成された構造も有する。 さらに、本出願中に記載されている酸素アンタゴニストは、本発明の器具と共に用いることが企図される。特定の態様では、一酸化炭素は、この器具を用いて投与され得る。別の例では、カルコゲニド化合物が投与でき、または化合物は還元剤構造を有する。 図19は、血小板および溶液から酸素を除去するための例示的システムの概略図であり、上記で論じた概念を包含する。気体透過性バッグ1902は、密封可能な気体不透過性容器1904内に置くことができる。気体不透過性容器1904は、酸素低減器1906に連結できる。酸素低減器1906は、一つの態様では、密封可能な気体不透過性容器1904を包むことができる。別の態様では、酸素低減器1906は、別の形をとることができる。例えば、それはポンプ(例えばラッフィングおよび/またはターボポンプ)あるいは水素発生装置でよい。酸素低減器1906には、一つまたは複数の、芯またはその他の遅延機構などの構成要素が付属してもよい。密封可能な気体不透過性容器1904には、センサー1908および制御装置1910が連結されている。センサー1908は、一つの態様では、酸素メータでよく、それは様々な形をとれる。一つの態様では、センサー1908は、温度メータまたは圧力メータでもよい。もちろん一つより多いセンサーを用いてもよい。一つの態様では、制御装置1901は温度制御装置または圧力制御装置でもよい。例えば、制御装置1901は、密封可能な気体不透過性容器1904の内側の温度を調節するヒーターまたは冷却装置でもよい。V. 診断応用 亜硫酸は、硫黄含有アミノ酸の正常代謝中に体内の全ての細胞から産生される。亜硫酸オキシダーゼは、硫化物を除去し、それによってそのレベルを制御する。これら酵素の差異的活性が、組織特異的な様式で放出される硫化物のレベル差をもたらす。上記の例では、低酸素状態の固形腫瘍では、亜硫酸が高レベルで産生されて、代謝状態の低下ならびに免疫監視の阻害を通じて、腫瘍細胞に局所的な保護状態を提供しうる。したがって、亜硫酸のレベルを測定し、これを診断の一部として組み入れることは、固形腫瘍などの複数の疾患状態について有益であると考えられる。さらには、発明者らは様々な応用に亜硫酸の使用を提案していることから、ある種の画像化またはその他モニタリング工程を用いて、これを追跡することは有用であると考えられる。 現在の技術(例えばHPLC)を用いて血清の亜硫酸レベルを測定し、全亜硫酸レベルを知ることができる。亜硫酸を画像化する可能性を探ることは価値がある。または、プロテオミクス的なアプローチによって、亜硫酸代謝に関与する酵素の制御が、ある疾患状態でどのように変化するか知ることができ、このアプローチで診断することができる。VI. スクリーニング応用 なおさらなる態様では、本発明は、酸素アンタゴニスト、およびスタシス誘導に関して同様の様式で機能する分子、ならびに他の活性化合物を同定するための方法を提供する。いくつかの例では、求められている酸素アンタゴニストまたは活性化合物は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物が存在しなければ生物物体を殺傷する低酸素または無酸素環境において、中心体温低下または生存の保存に関してカルコゲニド化合物と同様に働くものである。これらのアッセイは、候補物質の大規模ライブラリーの無作為スクリーニングを含む;またはアッセイは、それらを酸素アンタゴニストまたは活性化合物として機能させると思われる特性を考慮して選択される、特定クラスの化合物に焦点を当てて用いることができる。候補活性化合物の場合は; (a) 候補化合物を生物物体と混合し; (b) 酸素アンタゴニスト処置に特徴的な一つまたは複数の細胞反応を測定し; (c) 候補活性化合物非存在時の生物物体を用いた時の一つまたは複数の反応と比較する。 アッセイは、単離された細胞、組織/臓器、または無処置の生物を用いて実施できる。 当然、本発明のスクリーニング法はすべてそれ自体有用であるが、有効な候補が見つからないこともあることが理解されるだろう。本発明は、このような候補をスクリーニングする方法を提供するのであり、それを見つけ出す方法のみを提供するものではない。しかしながら、候補活性化合物は、一つまたは複数のアッセイにより有効活性化合物と同定できること、即ち候補活性化合物が、例えば生物物体をスタシスに誘導することによって、いくつかの活性化合物として働く能力を有するように見えることも理解されるだろう。スクリーニングは、いくつかの態様では、実施例または開示の他所に記載されているアッセイを用いてモジュレータを同定することも含む。よりさらには、この節に記載した方法に加えて、またはそれに代わって、候補活性化合物を、酸素アンタゴニストまたは保護的代謝剤もしくは治療物質などの活性化合物の特性を有する別の化合物としての活性について試験することができる。スクリーニング法のいくつかの態様は上記に提供している。 有効な活性化合物は、さらに特徴付けを行うか、アッセイを行うことができる。よりさらには、有効な活性化合物は一種類のインビボ動物または動物モデル(以下に論ずるような)に用いることができ、または複数種類のインビボ動物または動物モデルでさらに用いることができ、この場合、同種の動物または異なる動物種が関係してよい。 さらには、本発明の態様により同定された活性化合物をスクリーニング後に製造することも企図される。また、生物物体は、特に治療または保存の態様に関して、本発明の方法による有効活性化合物に暴露させるか、または接触させることができる。A. 活性化合物 本明細書で用いる用語「候補活性化合物」は、例えば中心体温を変えることによって生物物体をスタシスに誘導できる任意の分子を指す。候補活性化合物は、タンパク質もしくはその断片、低分子、または核酸分子でもよい。「総当たり的(brute force)」に有用な化合物を同定するための、有用薬物の基礎判断基準を満たすと信じられている小分子ライブラリーは、様々な商業的供給元から入手することもできる。コンビナトリアル技術によって作られたライブラリー(例えばペプチドライブラリー)を含む、このようなライブラリーのスクリーニングは、非常に多くの関連(および非関連)化合物を活性についてスクリーニングするための迅速かつ効率的な方法である。コンビナトリアル法はまたそれ自体が、活性ではあるが望ましくない化合物をモデルにして、第2、第3、および第4の世代の化合物を作り出し、可能性のある薬物を急速に発展させるのに役立つ。 候補活性化合物は、天然の化合物の断片または一部分を含んでよく、または、そうでない場合には不活性である、公知化合物の活性型の組み合わせとして見出すこともできる。動物、細菌、真菌、葉および樹皮を含む植物供給源、ならびに海産サンプルなどの天然供給源から単離された化合物を、潜在的に有用な薬学的作用物質の存在についての候補としてアッセイできることが提案されている。スクリーニング対象となる薬学的作用物質は、化学的組成物または人工化合物からも誘導または合成できることが理解されるだろう。したがって、本発明で同定された候補活性化合物は、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子阻害剤、もしくは公知阻害剤または刺激因子から出発して、合理的な薬物デザインを経てデザインされる任意の他の化合物でよいことが理解される。 他の好適な活性化合物としては、アンチセンス分子、siRNAs、リボザイム、および抗体(単鎖抗体を含む)が挙げられるが、それぞれは標的分子に対し特異的であると考えられる。このような化合物は、本文書内の他所により詳しく記載されている。例えば、翻訳または転写開始部位、あるいはスプライシング結合部に結合するアンチセンス分子は、理想的な候補阻害剤であると考えられる。 最初に同定された活性化合物に加えて、本発明者らは、他の構造的に類似する化合物を調合して、活性化合物の構造の重要部分を模倣できることも企図する。このような化合物は、ペプチドモジュレータのペプチドミメティクスを含め、最初の活性化合物と同様の様式で用いることができると考えられる。B. インビボアッセイ インビボアッセイは、様々な動物の使用を必要とする。マウスは、それらのサイズ、取り扱い易さ、それらの生理学および遺伝的性質に関する情報から、好ましい態様である。しかしながら、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、アレチネズミ、マーモット、マウス、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、およびサル(チンパンジー、テナガザル、およびヒヒを含む)を含む他の動物も同様に適している。インビボアッセイでの使用に関しては、魚も線虫同様に企図される。モジュレータのアッセイは、これらの種に由来する動物モデルを用いて行うことができる。 このようなアッセイでは、一つまたは複数の候補物質が動物に投与され、不活性賦形剤(陰性対照)およびH2S(陽性対照)と比較した、候補物質のスタシス誘導、中心体温低下、または生物学的材料に低酸素もしくは無酸素環境条件を生き抜く能力を付与する能力からモジュレータを同定する。試験化合物による動物の処置は、適切な形状をした化合物の動物への投与を含む。候補化合物(気体または液体)の投与は、経口、経鼻(吸入または噴霧)、口腔、または局所を含むがこれらに限定されない、臨床または非臨床的な目的に利用できる任意の経路から行われる。または、投与は気管内注入、気管支注入、皮内、皮下、筋肉内、腹膜内、または静脈内注射でも行うことができる。特に企図される経路は、全身性の静脈内注射、血液またはリンパ供給を介した局所投与、または作用部位への直接経路である。VII. 投与様式および薬学的組成物 カルコゲニド、酸素アンタゴニスト、または他の活性化合物の薬学的組成物の有効量は、一般的には、関心対象の状態の程度を検知可能に軽減、低下、最小化、または制限するのに十分な量と定義される。疾患の排除、根治、または治癒を含む、より厳しい定義を適用してもよい。A. 投与 カルコゲニドまたは他の活性化合物の投与経路は、処置対象の状態の場所および性質に伴って必然的に変わり、例えば吸入、皮内、経皮、非経口、静脈内、筋肉内、鼻内、皮下、経皮、気管内、腹膜内、腫瘍内、潅流、洗浄、直接注射、ならびに経口投与および製剤が挙げられる。以下説明するように、活性化合物は、吸入または挿管法によって医用ガスとして、血管内、静脈内、動脈内、脳室内、腹膜内、皮下投与により注射液として、局所液またはゲルとして、あるいは固体経口投与形状として投与できる。 さらに、量は、生物物体のタイプ(細胞型、組織型、生物の属および種等)ならびに/またはそのサイズ(体重、表面積等)に依存して変わり得る。大型の生物ほど用量は多くなることが一般的である。したがって、マウスにとっての有効量は、ラットにとっての有効量よりも一般的には少なく、ラットにとっての有効量は、イヌにとっての有効量より一般的に少なく、イヌにとっての有効量はヒトにとっての有効量よりも一般的に少ない。ヒトでスタシスを達成する硫化水素の有効濃度は、投与形態または投与経路に依存する。吸入の場合、いくつかの態様では、連続的に送り込まれた場合、有効濃度は50ppm〜500ppmの範囲内である。静脈内投与の場合、いくつかの態様では、連続的に送り込まれた場合の有効濃度は0.5〜50ミリグラム/キログラム体重である。 同様に、投与期間も生物物体のタイプ(細胞型、組織型、生物の属および種等)ならびに/またはそのサイズ(体重、表面積等)に依存して変わり、かつ投与形態および投与経路に一部依存し得る。特定の態様では、活性化合物は、約または少なくとも約30秒間、1分間、2分間、3分間、5分間、10分間、15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、24時間、または24時間を超える間提供される。活性化合物は、単回または複数回用量で投与でき、投与間の時間は変えることができる。 移植例では、本発明は手術前および手術後に、宿主または移植材料を休止させるのに用いることができる。特別な態様では、手術部位にカルコゲニドを含む製剤を注射または潅流してもよい。潅流は、例えば、手術部位に埋め込まれたカテーテルを残すことによって手術後も続けてよい。B. 注射可能組成物および製剤 本発明の酸素アンタゴニストまたは活性化合物を送達するための好ましい方法は、吸入、静脈内注射、特定領域の潅流、および経口投与である。しかしながら、本明細書に開示された薬学的組成物は、米国特許第5,543,158号;第5,641,515号、および第5,399,363号(各々が、全体として参照により本明細書に特に組み入れられる)に記載されているように、これに代わって非経口的、皮内、筋肉内、経皮的に、または腹膜内的にも投与できる。 活性化合物の溶液は、水の中に、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と共に好適に混合して調製できる。分散物もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中ならびに油中に調製できる。通常の貯蔵および使用条件では、これら調製物は微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。注射使用に好適な薬学的形状としては、無菌水溶液または分散物、および無菌注射液または分散物の即時調合向け無菌粉末が挙げられる(米国特許第5,466,468号、全体として参照により本明細書に特に組み入れられる)。全ての例で、該形状は無菌でなければならず、かつ容易に注射可能性が存在する程度の流体でなければならない。それは、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)を含む溶媒または分散媒体、好適なそれらの混合物、ならびに/または植物油でよい。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いることによって、分散物の場合は必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持できる。微生物の活動の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等を用いてもたらすことができる。多くの例では、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能組成物の長期吸収は、作用物質組成物中に遅延吸収剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することでもたらすことができる。 水溶液の非経口投与では、例えば、溶液は必要に応じて好ましく緩衝化されなければならず、まず希釈液を十分な食塩またはグルコースで等張にする。これらの特別な水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内、および腹膜内投与に特に好適である。この関係では、使用できる無菌水性媒体は、本発明の開示に照らせば、当業者に公知となると考えられる。例えば、一回投与量を等張NaCl溶液1mlに溶解することができ、1000mlの皮下注入液に加えるか、または推薦された注入部位に注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」15th Edition, 1035〜1038ページおよび1570〜1580ページを参照されたい)。処置対象の状態に応じて、投与が必然的にいくらか変わることがあると考えられる。投与を担当する者は、いずれにしても、個々の被験体にとって適切な用量を決定する。よりさらには、ヒトへの投与については、調合物は、FDA Office of Biologics標準規格が求める、無菌性、発熱性、一般安全性、および純度の標準規格を満たさなければならない。 無菌注射液は、要求量の活性化合物を、必要に応じて上記の各種他の成分と共に適切な溶媒中に組み入れ、続いて濾過滅菌して調製される。一般的には、分散物は、様々な無菌活性成分を、基本分散媒体および上記の他の成分から必要な成分を含む無菌賦形剤の中に組み入れることによって調製される。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、前もって無菌濾過されたその溶液から、活性成分に追加の所望成分が加わった粉末を生ずる真空乾燥および凍結乾燥技術である。 本明細書で使用する「担体」とは、ありとあらゆる溶媒、分散物媒体、賦形剤、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、バッファー、担体溶液、懸濁液、コロイド等を含む。このような薬学的活性物質のための媒体および作用物質の使用は、当技術分野では周知である。任意の通常の媒体または作用物質が活性成分と不適合でない範囲に於いて、治療組成物でのその使用が企図される。補助活性成分も組成物中に組み入れることができる。 「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という表現はヒトに投与された時にアレルギーまたは類似の不利益な反応を起こさない分子成分および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は、当技術分野で十分理解されている。典型的には、このような組成物は、溶液または懸濁液のいずれかに調製される;溶液または懸濁液に好適な固体を、使用前に液体に調製することもできる。C. 静脈内製剤 一つの態様では、本発明の活性化合物は、非経口投与(例えば静脈内、動脈内)に合わせて調製できる。活性化合物が室温で気体の場合は、非経口投与用の液体または溶液に溶解された既知の所望濃度の気体分子を含有する溶液が企図される。活性化合物溶液の調製は、例えば、気体を溶液と接触(例えば発泡または注入)させて気体分子を溶液中に溶解させることによって達成できる。当業者は、溶液中に溶解する気体の量は、液体または溶液中の気体の溶解性、液体または溶液の化学組成、その温度、そのpH、そのイオン強度、ならびに気体の濃度および接触の強さ(例えば泡立てまたは注入の速度および長さ)を含むが、これらに限定されない様々な変数に依存することを理解するだろう。非経口投与のための液体または溶液中の活性化合物の濃度は、当業者に公知の方法を用いて決定できる。液体または溶液中の活性化合物の安定性は、酸素アンタゴニスト溶液を調製または製造した後に、様々な時間間隔後に溶解した酸素アンタゴニストの濃度を測定することによって決定でき、ここで、出発濃度に対する酸素アンタゴニスト濃度の減少は、活性化合物の消失または化学変換を示している。 いくつかの態様では、カルコゲニド化合物を含み、塩の形状をしたカルコゲニドを無菌水または食塩水(0.9%塩化ナトリウム)に溶解して薬学的に許容される静脈内投薬形状にした溶液が存在する。液体の静脈内投薬形状は、あるpHに緩衝化して、カルコゲニド化合物の溶解性を高めるか、またはカルコゲニド化合物のイオン化状態に影響することができる。硫化水素またはセレン化水素の場合、ナトリウム、カルシウム、バリウム、リチウム、またはカリウムを含むが、これらに限定されない、当業者に公知のいくつもの塩の形状の任意のもので十分である。別の好ましい態様では、硫化ナトリウムまたはセレン化ナトリウムを無菌リン酸緩衝化食塩水に溶解し、塩酸でpHを7.0に調節して、被験体に静脈内または動脈内投与できる、公知の濃度の溶液が作られる。 いくつかの態様では、本発明の薬学的組成物は、活性化合物に関して飽和溶液であることが企図される。溶液は、任意の薬学的に許容される製剤でよく、その多くはリンゲル液のように周知である。ある態様では、活性化合物の濃度は、約、少なくとも約、または最大で0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0M、もしくはそれ以上、あるいはそこから導き出される任意の範囲である(標準温度および標準圧力(STP)にて)。例えばH2Sの場合、いくつかの態様では、濃度は約0.01〜約0.5M (STPで)でよい。上記濃度は、溶液中の一酸化炭素および二酸化炭素について、別々または一緒に、適応できることが特に企図される。 さらには、投与が静脈内の場合、次のパラメータが適用できることが企図される。約、少なくとも約、または最大で約、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100gtts/分またはμgtts/分、あるいはそこから導き出せる任意の範囲の流速。いくつかの態様では、溶液の量は、溶液の濃度に応じて、容積で指定される。時間は、約、少なくとも約、または最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、1、2、3、4、5週間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月間、あるいはそこから導き出せる任意の範囲でよい。 全体または一回のセッションで、mlもしくはリットル、またはそこからの任意の範囲の容積が投与できる。 いくつかの態様では、非経口投与のための活性化合物溶液は、液体または溶液を活性化合物と接触させる前に、酸素を除去しておいた液体または溶液で調製される。ある種の酸素アンタゴニスト、特にある種のカルコゲニド化合物(例えば硫化水素、セレン化水素)は、それらが酸素と化学的に反応して酸化および化学的に変換できる能力のせいで、酸素が存在する場合は安定でない。酸素は、陰圧(真空脱気)を液体または溶液に加える、あるいは溶液または液体を、酸素と結合させるか「キレート化」させて溶液から酸素を効率よく除去する試薬と接触させることを含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の方法を用いて液体または溶液から除去できる。 別の態様では、非経口投与のための酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の溶液は、気密容器に貯蔵できる。これは、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の酸化を制限または防止するために酸素が溶液から事前に除去されている場合に特に望ましい。加えて、気密容器での貯蔵は、酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物の液体または溶液からの揮発を阻止し、溶解した酸素アンタゴニストを一定圧に維持できるようにすると考えられる。気密容器は、当業者に公知であり、気体不透過性構造材料を含む「i.v.バッグ」または密封されたガラス製バイアルが挙げられるが、これらに限定されない。気密貯蔵容器内での空気への暴露を防止するために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを閉じる前に容器に入れてもよい。D. 局所製剤およびその使用 本発明の方法および組成物は、毛嚢細胞、毛細血管内皮細胞、ならびに口腔および舌の上皮細胞を含むが、これらに限定されない、皮膚の表面層および口腔粘膜にスタシスを誘導するのに有用である。癌処置のための放射線療法および化学療法は、毛嚢および口腔粘膜の正常細胞を損傷し、癌治療の意図しない衰弱性の副作用をもたらし、それぞれ脱毛および口腔粘膜炎を起こす。毛嚢細胞および/または毛嚢に血液を供給している血管細胞にスタシスを誘導すると、放射線療法および化学療法に伴う毛嚢細胞への変化および脱毛、あるいは他の脱毛症、男性型脱毛症、女性型脱毛症、または正常では毛が存在する皮膚領域のその他の無毛症を遅らせ、制限し、または防止できる。口腔上皮および間葉細胞へのスタシス誘導は、口腔、食道、および舌内側層の細胞への損傷、ならびに口腔粘膜炎から起こる疼痛状態を遅らせ、制限し、または阻止できる。 ある態様では、活性化合物は局所的に投与される。これは、活性化合物をクリーム、ゲル、ペースト、または口内洗浄剤に調合し、このような製剤を活性化合物への暴露を必要とする領域(頭皮、口、舌、喉)に直接使用することによって達成される。 本発明の局所組成物は、適切な担体を選ぶことによって、油、クリーム、ローション、軟膏等として調合できる。好適な担体としては、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色軟質パラフィン)、分岐鎖脂肪または油、動物性脂肪、ならびに高分子アルコール(C12を超える)が挙げられる。好ましい担体は、その中では活性成分が可溶性である担体である。必要に応じて、色または芳香を加える物質だけでなく、乳化剤、安定化剤、湿潤剤、および酸化防止剤も含めることができる。これに加えて、これら局所製剤には、経皮浸透促進剤も使用できる。このような促進剤の例は、米国特許第3,989,816号および第4,444,762号に見出すことができる。 クリームは、その中に少量のアーモンドオイルなどの油に溶解された活性化合物が混合された、鉱油、自己乳化性蜜蝋、および水の混合物から調合されるのが好ましい。このようなクリームの典型例は、水を約40、蜜蝋を約20、鉱油を約40、およびアーモンドオイルを約1の割合で含むものである。 軟膏は、アーモンドオイルなどの植物油の活性成分溶液を温軟質パラフィンと混合し、混合物を冷ますことによって調合できる。このような軟膏の典型例は、アーモンドオイルを約30重量%および白色軟質パラフィンを約70重量%含むものである。 ローションは、活性成分を、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどの好適な高分子アルコールに溶解することによって都合よく調製できる。 直腸に使用できる、可能な薬学的製剤としては、例えば、一つまたは複数の活性化合物と坐薬基剤との組み合わせから成る坐薬が挙げられる。好適な坐薬基剤は、例えば天然もしくは合成トリグリセリド、またはパラフィン系炭化水素である。加えて、活性化合物と基剤の組み合わせから成るゼラチン直腸カプセルを使用することもできる。可能な基剤材料としては、トリグリセリド液、ポリエチレングリコール、またはパラフィン系炭化水素が挙げられる。E. 固体投薬形状 薬学的組成物は、結晶性の固体状態をとることができる多孔性担体フレームワークの中に活性化合物が捕捉または隔離されている、固体投薬形状を含む。気体貯蔵能力を持つこのような固体投薬形状は、当技術分野で公知であり、薬学的に許容される形状に生成することができる(例えばYaghi et al. 2003)。このような薬学的組成物の特別な利点は、それらの遊離形状の場合、ある濃度である哺乳類にとって有毒となり得るカルコゲニド化合物(例えば硫化水素、一酸化炭素、セレン化水素)に関連する。ある態様では、化合物は経口投与向けに調合できる。F. 潅流システム 細胞向けの潅流システムは液体または半固体形状の活性化合物に、組織または臓器を暴露させるのに用いることができる。潅流とは、細胞集団の中または上を流れる、溶液の連続的な流れを指す。これは、連続フロー培養に対し、細胞を培養ユニット内に保持し、細胞を引き込まれた媒体(例えばケモスタット)で洗い流すことを意味する。潅流は、培養環境(pH、pO2、栄養レベル、活性化合物レベル等)のより良い制御を可能にし、細胞接着用の培養体内の表面積を有意に増やすための手段である。 潅流の技術は、細胞に血液、リンパ液、または他の体液が連続的に供給されるインビボの細胞環境を模倣して開発された。生理学的栄養液の潅流がないと、培養細胞は相を栄養補給相から飢餓相に変え、その結果それらの成長および代謝的潜在能力の完全な発現が制限される。本発明との関係では、潅流システムは、細胞を酸素アンタゴニストで潅流してスタシスを誘導するのに用いることもできる。 当業者は、潅流システムを熟知しており、多くの潅流システムが市販されている。本発明には、任意のこれら潅流システムが利用できる。潅流システムの一例は、不繊布のベッドマトリックスを用いた潅流充填層リアクター(CelliGen (商標)、New Brunswick Scientific, Edison, NJ; Wang et al., 1992; Wang et al., 1993; Wang et al., 1994)である。簡単に説明すると、このリアクターは、固定依存細胞または非固定依存細胞の両方を培養するための改良型リアクターを含む。リアクターは、内部再循環を提供する手段を備えた充填層としてデザインされている。好ましくは、繊維マトリックス担体が、リアクター容器内のバスケットの中に配置される。バスケットの頂部および底部には穴があけられ、バスケットを通して媒体を流すことができる。特別にデザインされた推進器が、繊維マトリックスが占有する空間内の媒体を再循環させ、栄養分の均一な供給および排出物の除去を保証する。これは同時に、媒体中に浮遊する細胞が全体に比べ無視できる程度であることも保証する。バスケットと再循環の組み合わせは、気泡を含まない酸素化媒体の繊維マトリックスを通る流れを提供する。繊維マトリックスは、「孔」直径が10μm〜100μmの不繊布であり、個々の細胞の体積の1〜20倍に相当する孔容積を持つ、高い内部容積を提供する。 潅流型の充填層リアクターにはいくつかの利点がある。繊維マトリックス担体を用いることで、細胞は、撹拌および発泡の機械的ストレスから保護される。バスケット内を通る自由な媒体の流れは、最適に制御された酸素、pH、および栄養分のレベルを細胞に提供する。産物は連続的に培養体から取り出すことができ、収集した産物は細胞を含まず、かつ低タンパク質媒体の中で産生でき、その後の精製段階を容易にすることができる。この技術は、WO 94/17178(1994年8月4日、Freedman et al.)に詳しく説明されており、これは全体として参照により本明細書に組み入れられる。 Cellcube(商標)(Corning-Costar)モジュールは、基質に接着した細胞の固定化および成長のための広いスチレン表面を提供する。それは、一連の平行に連結された培養プレートを有し、隣接するプレート間に、薄い、密封された層流空間を作り出している、一体的に封入された単回使用装置である。 Cellcube (商標)モジュールは、互いに対角線上に対向し媒体の流れの制御を助ける、注入口および排出口を有している。初回接種後、当初数日間の成長の間、培養は、一般的にはシステム内の媒体によって十分支えられる。初回接種から媒体潅流までの期間は、接種物内の細胞密度および細胞成長速度に依存する。循環中の媒体の栄養濃度の測定は、培養状態の良いインジケータである。手順を確立する時は、様々な潅流速度で栄養組成物をモニタリングして、最も経済的かつ生産的な運転パラメータを決定する必要があり得る。 市販されている他の潅流システムとしては、たとえばCellPerf (登録商標)(Laboratories MABIO International, Tourcoing, France)およびStovall Flow Cell (Stovall Life Science, Inc., Greensboro, NC)が挙げられる。 培養の生産段階のタイミングおよびパラメータは、具体的な細胞系列のタイプおよび使用に依存する。多くの培養は、培養の成長段階に必要とされたものとは異なる媒体を必要とする。ある段階から別の段階へ移行する場合、伝統的な培養では、複数の洗浄ステップを必要とする可能性がある。しかしながら、潅流システムの便益の一つは、様々な運転段階の間を緩やかに移行できることである。潅流システムは、成長段階から酸素アンタゴニストにより誘導される静的段階への移行も容易にできる。同様に、潅流システムは、酸素アンタゴニストを含む溶液を、例えば生理学的栄養媒体と交換することによる、静的段階から成長段階への移行も容易にできる。G. カテーテル ある態様では、カテーテルを用いて、活性化合物を生物に提供する。特にこのような作用物質を心臓または血管系に投与する場合が関心対象である。カテーテルは、この目的に使用されることが多い。Yaffeら、2004は、特に仮死状態と関係してカテーテルを論じているが、カテーテルの使用は、この刊行物以前に公知であった。H. 気体の送達1. 呼吸系 例示的な気体送達システム100が図9に描かれている。送達システム100は、活性化合物を含む呼吸可能な気体を、被験体の呼吸系に送るのに適している。気体送達システム100は、一つまたは複数の気体供給源102を含む。各気体供給源102は制御装置104および流量計106に連結している。気体送達システム100は、活性作用物質供給源107、任意の気化器108、および排出口制御装置110、スカベンジャー112、およびアラーム/モニタリングシステム114も含む。 送達システム100は、麻酔薬送達装置に一般的に用いられているある要素を含んでよい。例えば、麻酔薬送達装置は、一般的に高圧回路、低圧回路、呼吸回路、およびスカベンジャー回路を含む。図10〜11に記載されているように、一つまたは複数の気体供給源102、気化器108、排出口制御装置110、スカベンジャー112、および/またはアラーム/モニタリングシステム114には、高圧、低圧、呼吸、および/またはスカベンジャー回路を有する装置の一部として備えることができ、これら要素は、麻酔薬送達装置に一般的に使用されているものと同様でよい。麻酔薬送達装置は、例えば、米国特許第4,034,753号;第4,266,573号;第4,442,856号;および第5,568,910号に記載されており、これらの内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。 気体供給源102は、圧縮ガスのタンクにより提供できる;しかしながら気体供給源102は、気体または気体に変換される液体供給源のどちらでもよいことを理解しなければならない。例えば、気化器108を用いて、液体ガス供給源を気化することができる。制御装置104は、各気体供給源102の圧力を下げる弁を含む。低圧された気体は、次に流量計106の一つの中を通り、流量計はそれぞれの気体供給源102からの気体流を測定および制御する。 気体供給源102は、活性作用物質107の送達に使用する担体気体でよい。担体気体は、供給源107から活性作用物質を送る被験体にとって望ましい環境を提供するように選択することができる。例えば、活性作用物質が呼吸可能な気体として患者に送られる場合は、担体気体は、患者の需要を満たす十分な量の酸素、亜酸化窒素、または空気を含むことができる。他の不活性気体または活性気体も使用できる。 いくつかの態様では、気体供給源102の一つは、活性作用物質供給源107を含む。供給源107からの活性作用物質は、気化器108によって気化される液体ガス供給源でも、または活性作用物質は高圧下の圧縮気体などの気体供給源でもよい。活性作用物質は、一つまたは複数の気体供給源102と混合できる。排出口制御装置110は、被験体に提供される気体混合物の量を制御する。 スカベンジャー112は、被験体に提供される気体から不要物を取り除き、かつ/または換気する装置またはシステムである。例えば、供給源107からの活性作用物質が呼吸可能な気体として患者に提供される場合は、スカベンジャー112を用いて吸入物(活性作用物質などの)の廃ガス、未使用の酸素、および排気された二酸化炭素を取り除くことができる。 アラーム/モニタリングシステム114は、送達システム100内の一カ所または複数カ所に、気体流および/または気体含有量をモニタリングするセンサーを含む。例えば、酸素の流れおよび量は、供給源107からの活性作用物質が呼吸可能な気体として患者に提供される際にモニタリングされ、担体気体が患者にとって十分な酸素を含むことを保証することができる。アラーム/モニタリングシステム114は、デリバリーシステム100の使用者に、視覚的表示装置、光、または聴覚アラームなどの、聴覚または視覚的警告を提供するか、またはモニタリング情報を提供するように作られたユーザーインターフェイスも含む。アラーム/モニタリングシステム114は、所定の状態に合致した時にユーザーに通知し、かつ/または気体レベルに関する情報を提供するように構成することができる。 図10を参照すると、システム100Aは、高圧回路116、低圧回路118、呼吸回路120、およびスカベンジャー回路112を含んでいる。 高圧回路116は圧縮気体供給源102を含み、これは制御装置弁104b、104aに連結している。制御弁104aは、各気体供給源102から流れる気体の量を制御し、制御弁104bは開けられて、例えば周囲大気に対し開放することによって、気体の圧力を上げることができる。 低圧回路118は、流量計106、活性作用物質供給源107、および気化器108を含む。気体供給源102からの気体混合物は流量計106が提供し、流量計は気体供給源102からの各気体の量を制御する。図10に描かれているように、活性作用物質供給源107は液体である。活性作用物質供給源107は、気化器108によって気化され、気体混合物に加えられる。 呼吸回路120は、排出口制御装置110、二つの一方向弁124、126、および救急装置128を含む。スカベンジャー回路112は、弁112a、リザーバー112b、および排出口112cを含む。被験体130は、気体混合物を排出口制御装置110から受け取り、得られた気体はスカベンジャー回路122によって換気される。より具体的には、排出口制御装置110は、一方向弁124を介して被験体130に送られる気体混合物の量を制御する。吐出された気体は、一方向弁126を通り弁112aおよびリザーバー112bに流れる。余分な気体は、スカベンジャー112の排出口112cから出て行く。気体の一部は再循環でき、吸収装置128を通過して呼吸回路120に流れる。吸収装置128は、吐出された気体から二酸化炭素を減らすための二酸化炭素吸収キャニスターでよい。この構成では、吐出された酸素および/または活性作用物質は再循環および再利用できる。 システム100Aには、様々な位置に、一つまたは複数のセンサーSを追加できる。センサーSは、システム100A内の気体を感知および/またはモニタリングする。例えば、気体供給源102の一つが酸素だとすると、センサーSの一つは、システム100A内の酸素をモニタリングして、患者が好適な量の酸素を受け取れるように構成および配置された酸素センサーでよい。センサーSは、アラーム/モニタリングシステム114と連絡している(図9参照)。システム100内に望ましくないか有害な気体レベルが存在すると、アラーム/モニタリングシステム114は、被験体130に提供される酸素レベルを上げるか、または被験体130を送達システム100Aから切り離すなどの適切な行動をとるようにシステム100Aの使用者に警告することができる。 図11を参照すると、活性作用物質供給源107が二つの制御弁104b、104aに連結されている、システム100Bが示されている。活性作用物質供給源107が液体ガスの場合は、液体ガス供給源を気化するための任意の気化器108が提供される。活性作用物質供給源107が気体(例えば高圧ガス)の場合、気化器108は省くことができる。活性作用物質供給源107は、流量計106によって制御された量の低圧回路118中の他の気体供給源102と混合される。低圧回路118は、それが呼吸回路120に流れるときの混合気体のオーバーフローを含む気体リザーバー109を含む。活性作用物質供給源107および/または任意の気体供給源102は、気化器の付いた液体ガス供給源として提供できることを理解しなければならない。図11に描かれたシステム100Bの要素は、本質的に図10に関する上記の要素に同じであるため、これ以上記載しない。 システム100、100A、100Bを用いて実施できる本発明の態様による方法が図12に描かれている。一つまたは複数の呼吸可能な気体供給源の混合物が提供される(ブロック202)。呼吸可能な気体供給源は、図9〜11に関係して記載されたように、気体供給源102から得ることができる。図9〜11の活性作用物質供給源107に関して示したように、気体混合物に所定量の活性作用物質が加えられる(ブロック204)。気体混合物は、被験体120に投与される(ブロック306)。吐出された気体は、例えばスカベンジャー112によって換気および/または再循環される(ブロック208)。図12の方法は、図9〜11のシステム100、100A、100Bに関して記載されているが、図12の段階の実施には、任意の好適システムまたは装置を用いてよいことを理解しなければならない。2. 減圧送達システム 気体送達システム300の態様が、図13に関係して描かれている。気体送達システム300は、被験体302の上に配置されている。気体送達システム300は、気体混合物の活性作用物質を被験体302の組織、例えば創傷組織に送るのに特に適している。 システム300は、被験体302の処置領域を覆うスクリーン306を有する減圧チャンバー304を含む。減圧チャンバー304は、ポンプ排出口310aにより真空ポンプ310に連結されている。減圧チャンバー304は、注入口308aおよび排出口308bを含み、これらは次に活性作用物質供給源307に連結される。コントローラ320は、活性作用物質供給源307および真空ポンプ310に連結される。減圧チャンバーおよび真空ポンプシステムは、米国特許第5,645,081号および第5,636,643号に論じられており、これらの内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。 減圧チャンバー304は、被験体302の領域を密閉して、流体密封性または気密性の密閉容器を提供し、減圧または陰圧および作用活性物質供給源307による該領域の処置を実施できるように作られる。圧力チャンバー304は、柔軟で接着性の流体不透過性ポリマーシートなどのカバー(未表示)で被験体302に貼り付けることができる。カバーは、処置対象領域の縁を囲む皮膚を覆い、気密性または流体密封性のシールを提供し、チャンバー304を所定位置に保持するように機能する、接着性の裏面を有することができる。 スクリーン306は、被験体302の処置領域を覆って配置される。例えば、被験体302の処置領域が創傷を含む場合、スクリーン306は創傷を覆うように配置することができ、その過剰な拡大を防止することができる。スクリーン306のサイズおよび輪郭は、調節して個々の処置領域に合わせることができ、かつ様々な多孔性材料から作ることができる。材料は十分に多孔性であり、酸素および活性作用物質供給源307からの気体などの任意の他の気体が処置領域に到達できようにするものでなければならない。例えば、スクリーン306は、十分多孔性であり、処置領域へ、または処置領域から気体を流すことができる、ポリウレタン発泡体などのオープンセル型のポリマー発泡体であり得る。様々な厚さおよび剛性の発泡体を用いることができるが、処置中、患者がその上に横たわらなければならない場合には、患者の快適さからスポンジ状の材料を用いることが望ましい場合がある。発泡体は、気体の流れを高め、かつシステム300の重量を下げるために、孔を開けることもできる。スクリーン306は、処置領域内に納まるように適切な形およびサイズにカットしてもよく、またはスクリーン306は、周囲の皮膚に重なる十分な大きさでもよい。 真空ポンプ310は、減圧チャンバー304内に吸引源を提供する。活性作用物質供給源307は、減圧チャンバー内304にある量の活性作用物質を提供する。コントローラ320は、真空ポンプ310によって減圧チャンバー304に加える真空度および活性作用物質供給源307によってチャンバー304に供給される活性作用物質の量を制御する。 コントローラ320は、真空および/または活性作用物質を、実質的に一定様式、周期的、または様々な変動もしくはパターン、あるいはそれらの任意の組み合わせで加えることができる。いくつかの態様では、活性作用物質は、活性作用物質供給源307とそれに代わる真空ポンプ310によって真空ポンプ作用によって供給される。即ちコントローラ320は、活性作用物質供給源307を停止させながら真空ポンプ310を作動させ、次に真空ポンプ310を停止させながら活性作用物質供給源307を作動させることを交互に行う。減圧チャンバー304内の圧力は、変動してよい。別の態様では、真空ポンプ310によって実質的に一定圧力が維持され、活性作用物質供給源307は実質的に一定量の活性作用物質を、減圧環境にあるチャンバー304に提供する。いくつかの態様では、真空ポンプ310によって実質的に一定圧力が維持され、活性作用物質の量は周期的に変化する。他の態様では、減圧チャンバー304内の圧力は、真空ポンプ310によって変動させられ、供給源307から供給される活性作用物質の量も変動する。真空ポンプ310およびその結果のチャンバー304内の圧力、または供給源307から供給される活性作用物質の量のどちらかの変動は、周期的であってもなくてもよい。 システム300を用いて実施できる本発明の態様の方法が図14に描かれている。チャンバー304は、被験体302の処置領域の上に配置される(ブロック402)。圧力は、室内304で真空ポンプ310によって下げられる(ブロック404)。活性作用物質供給源307から所定量の活性作用物質がチャンバーに加えられる(ブロック406)。図14の方法は、図12のシステム300に関して記載されているが、任意の好適システムまたは装置を用いて図14の段階を実施できることを理解しなければならない。例えば、排出口308bは省くことができ、作用物質を単一の注入口308aからチャンバー304に加えることもできる。他の気体も、例えば単一の注入口を用いるか、または活性作用物質供給源307および注入口308aおよび排出口308bに関して描かれているように一つの注入口および一つの排出口を用いて、チャンバー304に加えることもできる。いくつかの態様では、例えば米国特許第5,636,643号に記載されているように、ポンプ310とチャンバー304の間に、処置領域からの噴出物を収集するための追加の収集容器が真空ポンプに取り付けられる。 いくつかの態様では、図22Aに描かれているような、陰圧気体送達システム500は、容器502内に、注入口506を介して、導管508によってドレープ504に連結している活性酸素アンタゴニスト供給源を含む。ドレープは、組織部位510に対して密閉エンベロープを形成し、組織部位は創傷部位でもよい。いくつかの態様では、ドレープは陰圧供給源514と、導管516を介して連絡している排出口512を有する。いくつかの態様では、廃棄物キャニスター518が排出口と陰圧供給源の間の連絡内に存在しており、キャニスターは取り外し可能な廃棄物キャニスターでよい。いくつかの態様では、戻り排出口520が導管522を介して容器502と連結している。いくつかの態様では、図22Bに示すように、容器502とドレープ504の間の連絡内に気化器524が置かれている。 導管は可撓性でよく、ホースの材料などのプラスチックが好適である。陰圧供給源514は、真空ポンプが好適であり、いくつかの態様では、当技術分野で公知のように、排液を容易にするために導管516を介して排出口512に流体連絡している。いくつかの態様では、廃物キャニスター518は真空下に置かれて、流体連絡を通して排液を収集する。好ましくは、キャニスター内に吸引された排液からの汚染を防止するために、キャニスターと陰圧供給源の間にフィルター(未表示)を挿入できるが、このフィルターは疎水性のメンブレンフィルターでよい。いくつかの態様では、ドレープ504はエラストマー性材料を含んでおり、そのため陰圧供給源が間欠的に運転される間の組織部位領域の圧力変化に適応できる。いくつかの態様では、ドレープの外周は、組織部位を覆ってドレープを密封するために粘着剤で覆われており、それはアクリル系接着剤でよい。 図12および図22A〜Bに描かれている陰圧気体送達システム300および500は、処置対象となる様々な領域の処置、特に創傷を処置するのに有用である。システム300を用いて処置できる創傷には、感染した開放創傷、褥瘡、裂傷、中間層熱傷、およびフラップまたはグラフトが取り付けられた各種傷害が含まれる。創傷の処置は、先に示し説明した気体送達システムを処置部位に固定し、減圧チャンバー304内を実質的に連続的または周期的な減圧状態に維持し、所望する改善状態に創傷が達するまで、実質的に連続的または周期的な様式でチャンバー304に活性作用物質を供給することによって実施できる。選択された改善状態としては、フラップまたはグラフトの付着にとって十分な肉芽組織の形成、創傷内の微生物感染の低下、熱傷貫通の停止または逆行、創傷の閉鎖、フラップまたはグラフトの下部創傷組織との統合、創傷の完治、またはあるタイプの創傷または複合創傷にとって適切な改善または治癒の他の段階が挙げられる。気体送達システムは、処置中、特に創傷の上または中にスクリーンを組み入れた気体送達システムを使用する場合、48時間周期のように周期的に変えることができる。この方法は、0.01〜0.99大気圧の陰圧または減圧を用いて実施できるか、または方法は0.5〜0.8大気圧の範囲の陰圧または減圧を用いて実施できる。創傷に方法を使用する長さは、少なくとも12時間でよいが、例えば一日またはそれ以上に延長できる。方法の使用がもはや有益でない上限は存在しない;方法は、創傷が実際に閉鎖する時間まで閉鎖速度を上げることができる。各種タイプ創傷の十分な処置は、大気圧より約2〜7インチHg低い圧に等しい減圧を用いて得ることができる。 上記のように、間欠的または周期的な様態の気体送達システムへの減圧の供給は、活性作用物質存在下での創傷の処置にとって有益であり得る。気体送達システムへの低圧の間欠的または周期的な供給は、真空システムの手動または自動制御によって達成できる。間欠的な減圧処置での周期比、「オフ」時間に対する「オン」時間の比率は、1:10ほど低くとも10:1ほど高くともよい。典型的な比率は、おおよそ1:1であり、通常は5分間の減圧の供給と停止が交互に実施される。 好適な真空システムは、少なくとも0.1ポンド、または3ポンド吸引まで、または14ポンドまでの吸引を創傷に加えることができる吸引ポンプを含む。ポンプは、必要な吸引を提供できる医療目的に適した任意の普通の吸引ポンプでよい。ポンプと低圧器具を相互に連結するチューブの寸法は、作業に求められる吸引レベルを提供するポンプの能力によって調整される。直径が1/4インチのチューブが好適であり得る。 本発明の態様は、損傷組織を処置する方法も含み、方法は陰圧を創傷に加える段階、および創傷内の細菌密度を下げるのに十分である選択した時間および選択した量、活性作用物質を作用させる段階を含む。開放創傷は、ほぼ常に有害な細菌で汚染されている。一般に、105個/組織グラムの細菌密度を感染と見なす。このレベルの感染では、移植された組織は創傷に接着しないことが、一般に受け入れられている。これらの細菌は、創傷部での、ヒトの自然な免疫反応またはいくつかの外的方法のいずれかによって、創傷が閉鎖する前に殺さなければならない。創傷への陰圧および活性作用物質の使用は、創傷の細菌密度を下げる。この効果は、細菌の陰圧環境への不適合性、または作用物質への暴露と組み合わさり、創傷領域への血流が増加し、血液が創傷に細菌を破壊する細胞および酵素を運ぶためと信じられている。本発明の態様による方法を用いて、創傷の細菌密度を少なくとも半減させることができる。いくつかの態様では、それを用いて、細菌密度を少なくとも1,000倍、または少なくとも1,000,000倍まで減らすことができる。 本発明の態様は、火傷を処置する方法も含み、該方法は、陰圧および活性作用物質を、火傷が拡がる領域に全層火傷の形成を阻止するために所定の減圧および十分な時間で適用する段階を含む。表面層が死滅し、その下部組織がスタシス状態にある中間層火傷は、しばしば重症の感染をおこし、24〜48時間以内に全ての上皮構造が破壊される全層性火傷に移行する。陰圧およびある量の活性作用物質を創傷に作用させることで、感染が重症化して下部上皮構造が破壊されるのを防ぐことができる。加える圧の強さ、パターン、および期間は、個々の創傷に応じて変えることができる。 本発明の態様は、生組織を創傷にまず結合して創傷−組織複合体を形成する段階、次に複合体に向かう上皮および皮下組織の移動を促進するのに十分なように、選択した強さの陰圧または減圧およびある量の活性作用物質を領域上の創傷−組織複合体に加え、陰圧および活性作用物質への暴露を、創傷の閉鎖を促進するのに十分な選択した時間維持する段階を含む、生組織の創傷への接着を高める方法も含む。創傷への生組織の付着は、多くの形態をとることができる一般的な作業である。例えば、一つの一般的技術は、創傷に隣接する領域から皮膚組織を3面について剥離し、第4面は付着した状態で残した状態で創傷の上に移動する、「フラップ」を用いる技術である。別の頻繁に用いられる技術は、皮膚を別の皮膚表面から完全に剥離し、創傷の上に移植する開放皮膚グラフトである。創傷−グラフト複合体への陰圧および活性作用物質の使用は、複合体内の細菌密度を下げ、創傷への血流を改善し、それによって移植された皮膚の付着を向上させる。I. 他の器具 本発明のある態様では、外傷を受けるかまたは受けた患者を処置するために、本発明の方法に患者の中心体温を外から操作する能力を補うことが望まれる。これに関して、患者の中心体温は、本発明の方法と組み合わせて、侵襲的または非侵襲的経路によって操作できる。中心体温を操作するための侵襲的方法としては、例えば、患者の血液を加熱または冷却して患者の中心体温を上げるかまたは冷やす心肺ポンプの使用が挙げられる。中心体温を操作する非侵襲的経路は、患者の内部または外部に熱を送るシステムおよび器具が挙げられる。J. さらなる送達装置または器具 いくつかの態様では、方法または組成物は、特殊な送達装置または器具を含むことが企図される。本明細書で論ずる任意の方法は、本明細書に論じられている装置を含むが、これに限定されない送達または投与のための任意の装置を用いて実行できる。 本発明の活性化合物の局所投与の場合、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液等、当技術分野において周知のものに調合できる。全身用製剤としては、注射または注入による投与、例えば皮下、静脈内、筋肉内、髄膜内、または腹膜内注射、ならびに経皮、経粘膜、口腔、または肺投与に合わせてデザインされたものが挙げられる。 経口投与の場合は、本発明の活性化合物は、処置を受ける患者が経口摂取するための錠剤、ピル、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等、または例えば懸濁液、エリキシル、および溶液などの液体製剤に調合される。 口腔投与の場合、組成物は、通常の様式で調合された錠剤、ロゼンジ等の形を取ることができる。他の粘膜内送達は、坐薬によってまたは鼻腔内に実施される。 吸入による肺への直接投与の場合、本発明の化合物は、様々な装置によって肺に都合良く送ることができる。例として次のものがある。 定量吸入器 (MDI);好適な低沸点発射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素を含むキャニスターを利用する定量吸入器(「MDI」)か、またはその他好適な気体を用いて本発明の化合物を肺に直接送ることができる。MDI装置は、3M Corporation (例えば、www.3m.com/us/healthcare/manufacturers/dds/pdf/idd_valve_canister_brochure.pdf-)、AventisのNasacort(例えばwww.products.sanofi-aventis.us/ Nasacort_HFA/nasacort_HFA.html - 63k -)、Boehringer Ingelheim(例えばwww.boehringer-ingelheim.com/corporate/home/download/r_and_d2003.pdf)、Forest LaboratoriesのAerobid(例えばwww.frx.com/products/aerobid.aspx)、Glaxo-Wellcome(例えば、www.gsk.com/research/newmedicines/newmedicines_pharma.html)、およびSchering Plough (www.shering-plough.com/schering_plough/pc/allergy_respiratory.jsp)などの多くの供給元から入手できる。 乾燥粉末吸入器(DPI):DPI装置は、典型的には、ガスの爆発などのメカニズムを用いて容器内に乾燥粉末雲を創出して、次に患者がそれを吸入する。DPI装置も当技術分野で既知であり、例えばSchering CorporationのForadilアエロライザー(例えば、www.spfiles.com/piforadil.pdf)、Glaxo-WellcomのAdvair Diskus (例えば、www.us.gsk.com/products/assets/us_advair.pdf-)が挙げられる。普及している変形は、一回を超える治療用量を送達できる複数回用量DPI(「MDDPI」)である。MDDPI装置は、AstraZenecaのPulmicort Tubuhaler(例えばwww.twistclickinhale.com/GlaxoWellcomem、(例えば、www.us.gsk.com/products/assets/us_advair.pdf-)およびSchering Plough (例えば、www.shering-plough.com/schering_plough/pc/allergy_respiratory.jsp)などの会社から入手できる。このような装置、または本明細書で論ずるその他の装置は、単回使用に変更できることがさらに企図される。 電磁流体力学(EHD)エアゾール送達;EHDエアゾール装置は、電気エネルギーを用いて薬液溶液または懸濁液をエアゾール化する(例えばNoakes et al.,米国特許第4,765,539号;Coffee、米国特許第4,962,885号;Coffee、PCT出願、WO94/12285;Coffee、PCT出願、WO94/14543;Coffee、PCT出願、WO95/26234;Coffee、PCT出願、WO95/26235;Coffee、PCT出願、WO95/32807を参照)。EHDエアゾール装置は、既存の肺送達技術に比べ、肺へより効率的に薬物を送ることができる。 噴霧器:噴霧器は、例えば超音波エネルギーを用いて液薬製剤からエアゾールを創り、容易に吸入できる微粒子を形成する。噴霧器の例としては、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery Ltdから供給されている装置 (Armer et al.,米国特許第5,954,047号;van der Linden et al.,米国特許第5,950,619号;van der Linden et al.,米国特許第5,970,974号を参照)、AventisのIntal噴霧器溶液(例えば、www.fda.gov/medwatch/SAFETY/2004/feb_PI/Intal_Nebulizer_PI/pdf)が挙げられる。 吸入による肺への気体の直接投与については、酸素送達の市場では現在様々な送達方法を用いることができる。例えば、アンビューバッグなどの呼吸回復装置が用いることができる(米国特許第5,988,162号および第4,790,327号を参照)。アンビューバッグは、フェイスマスクに取り付けられた柔軟な圧搾バッグ(squeeze bag)から成り、治療者による負傷者の肺への空気/気体の送り込みに用いられる。 携帯用の手で持てる医薬送達装置は、呼吸器病を患う患者が噴霧器を通して吸入するのに適した噴霧化された作用物質を生成できる。加えて、このような送達システムは、吸入された作用物質の用量を遠隔的にモニタリングすることができ、必要に応じて、治療者または医師により変更できる。米国特許第7,013,894号を参照されたい。本発明の化合物の送達は、ヒトの換気のモニタリングと組み合わせたヒトに補助気体を送るための方法により達成でき、両方法は米国特許第6,938,619号に記載されているような密封フェイスマスクを使用せずに達成される。患者の呼気の前半部分だけが酸素または他の治療気体を含むような呼吸治療中に用いられる、酸素または他の気体を効率的に分配するための空気式酸素節約装置(米国特許第6,484,721号参照)。患者が吸入を開始した時に発射される気体送達装置が用いられる。気体流の後半は、患者への気体送達の脈動を阻止するタイミングで初期吸入後に患者に送られる。このようにして、気体は吸入の前半中に患者に送られ、患者の肺に至る空気通過路を満たす気体しか送られない事態は防止される。酸素を効率的に使用することによって、患者が移動する際に用いられる酸素のシリンダボトルは長持ちし、より小型になり、運搬し易くなり得る。空気圧を用いて気体を患者に送るため、電池または電子装置は用いられない。 本明細書に記載される全ての装置は、本発明の化合物を結合または噴霧化する排気システムを有してよい。 本発明の化合物の経皮投与は、患者の皮膚に貼る薬の入った装置またはパッチによって達成できる。パッチは、パッチ内に含まれる薬効化合物を、皮膚層を通して患者の血流内に吸収できるようにする。このようなパッチは、Nicoderm CQパッチとしてGlaxo Smithkline (www.nicodermcq/NicodermCQ.aspx \)およびOrtho-McNeil PharmaceuticalsからOrtho Evraとして(www.ortho-mcneilpharmaceutical.com/healthinfo/womenshealth/products/orthoevra.html)販売されている。経皮薬物送達は、薬物注射および静脈内薬物投与に伴う疼痛だけでなくこれら技術に伴う感染リスクも下げる。経皮薬物送達は、投与された薬物の胃腸管代謝も回避し、肝臓による薬物排除を減らし、投与された薬物の持続的放出を提供する。経皮薬物送達は、比較的投与が容易であり、かつ薬物が持続的に放出されることから、薬物レジメンについての患者のコンプライアンスも高める。 パッチの別の変更として、パッチ内に蓄えられた医薬の送達を実施し、超音波薬物送達プロセスと一緒に用いられる、パッチの中を超音波が伝導できるようにする材料を用いてデザインされた超音波パッチがある(米国特許第6,908,488号を参照されたい)。パッチインボトル(Patch in a bottle )(米国特許第6,958,154号)は、流体として表面に用いられるが、その後乾燥して、宿主の表面上にパッチなどの被覆要素を形成する流体組成物、例えばいくつかの態様ではエアゾールスプレーを含む。こうして形成された被覆要素は、ベタつきのない外面被覆およびパッチの基体への接着を助ける下部粘着面を有する。 別の薬物送達システムは、一つまたは複数の球状半導体集合体を含み、リザーバーに貯蔵された薬物の放出を促進する。第1集合体は、感知およびメモリーに用いられ、第2集合体は、薬物のポンプ注入および分配などの制御局面に用いられる。システムは、遠隔制御システムと通信できるか、または患者の要求に基づいて薬物を送達するために局所電源とは無関係に長期間運転でき、システムによる制御の下に定期的放出ができ、または測定されたマーカーにしたがって送達できる。米国特許第6,464,687号を参照されたい。 PUMPSおよび注入装置:注入ポンプまたは潅流装置は、流体、薬剤、または栄養物を患者の循環系に注入する。注入ポンプは、流体を高信頼性かつ安価に投与できる。例えば、それらは1時間あたり0.1mLなどの少量(点滴には少な過ぎる)を投与し、毎分注射し、患者の要求により、最大の時間当たり回数まで繰り返しボーラスを注射し(患者制御無痛覚)、または時刻に合わせて流体の容積を変えることができる。様々なタイプの注入装置が、以下の米国特許庁への特許出願に記載されている。これらは、米国特許第7,029,455号、米国特許第6,805,693号、米国特許第6,800,096号、米国特許第6,764,472号、米国特許第6,742,992号、米国特許第6,589,229号、米国特許第6,626,329号、米国特許第6,355,019号、米国特許第6,328,712号、米国特許第6,213,738号、米国特許第6,213,723号、米国特許第6,195,887号、米国特許第6,123,524号および米国特許第7,022,107号を含むが、これらに限定されない。これに加えて、注入ポンプは、Baxter International Inc. (www.baxter.com/products/medication_management/infusion_pumps/)、Alaris Medical Systems(www.alarismed.com/products/infusion.shtml)、およびB Braun Medical Inc. (www.bbraunusa.com/index.cfm?uuid=001AA837D0B759A1E34666434FF604ED)からも入手できる。 酸素/気体ボーラス送達装置:このような、気体を慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に送るための装置は、Tyco Healthcare (www.tycohealth-ece.com/files/d0004/ty_zt7ph2.pdf)から入手できる。それはまた、本発明の化合物の送達にも用いることができる。上記装置は、経済的で、軽量で、目立たず、かつ携帯可能である。 「パッチインボトル」 (米国特許第6,958,154号)は、流体組成物、例えばいくつかの態様では、流体として表面に用いられるが、続いて乾燥してパッチのように宿主の表面に被覆要素を形成するエアゾールスプレーを含む。こうして形成された被覆要素は、ベタつきのない外面被覆およびパッチの基体への接着を助ける下部粘着面を有する。 埋め込み可能薬物送達システム:別の薬物送達システムは、一つまたは複数の球状半導体集合体を含み、リザーバーに貯蔵された薬物の放出を促進する。第1集合体は、感知およびメモリーに用いられ、第2集合体は、薬物のポンプ注入および分配などの制御に用いられる。システムは、遠隔制御システムと通信できるか、または患者の要求に基づいて薬物を送達するために局所電源とは無関係に長期間運転でき、システムによる制御の下で持続放出ができ、または測定されたマーカーにしたがって送達できる。米国特許第6,464,687号を参照されたい。 本節の中で論じた引用特許およびウェブサイトアドレスのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れられる。VIII. 併用治療 本発明の化合物および方法は、多くの治療および診断応用の中で用いることができる。酸素アンタゴニストまたは他の活性化合物などの本発明の組成物を用いた処置の効果を上げるために、これら組成物を問題の疾患および状態の処置(二次治療)に有効な他の作用物質と組み合わせることが望ましいことがある。例えば、卒中の処置(抗卒中処置)は、典型的には抗血小板剤(アスピリン、クロピドグレル、ジピリダモール、チクロピジン)、抗凝固剤(ヘパリン、ワーファリン)、または血栓溶解剤(組織プラスミノゲンアクチベータ)を含む。 様々な組み合わせを利用してもよい:例えば、H2Sなどの活性化合物は「A」であり、二次治療薬は「B」である。 本発明の酸素アンタゴニストおよび/または他の活性化合物の生物物体への投与は、存在する場合には、酸素アンタゴニスト(または他の活性化合物)処置の毒性を考慮しながら、具体的な二次治療の投与に関する一般的なプロトコールに従うと考えられる。処置サイクルは、必要に応じて繰り返されることが予想される。様々な標準的な治療ならびに手術介入が記載の治療と組み合わせて利用できることも企図される。IX. 実施例 以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すために含める。当業者は、以下の実施例に開示する本発明者により発見された技術が、本発明の実行に上手く機能し、それ故、本発明をその好ましいモードを構成し得ることを理解するであろう。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施態様に多数の変更を行うことができ、尚、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、類似のまたは同様の結果が得られることを理解するであろう。実施例1:一酸化炭素中での線虫の維持 雰囲気は210,000ppmの酸素を含む。低いレベルの酸素、すなわち低酸素に対する暴露は、ヒトにおいて細胞損傷および死をもたらす。線虫、シノラブディス・エレガンスでは、100ppm〜1000ppm間の酸素濃度も致命的である。ある範囲の酸素張力に対する線虫の応答を決定的に調べることにより、10ppm未満および5000ppmを越える酸素濃度は、致命的ではないことが見出された。窒素とバランスした10ppm酸素中で、線虫は、光学顕微鏡下で観察可能な活動の局面の全てが停止する、可逆的仮死状態に入る(Padilla et al., 2002)。5000ppm (窒素とバランスした)およびそれ以上の酸素濃度中で、線虫は、その生命サイクルを正常に進行する。低酸素損傷から線虫を保護する薬物の調査において、一酸化炭素を試験した。 特定の大気状態を達成するために、以下の器具を使用した:LUER-LOKなどの固定装置を備えた先端を有し、その大きい開口が、特注の機械加工の鋼およびゴムフィッティングで封止されて気密シールを構成するガラス製注射筒が、固定装置を介して環境チャンバーの吸気ポートに固定され、該環境チャンバーは、各々が例えばLUER-LOKフィッティング等の固定装置が装着された吸気および排気ポートを有していた。最初に、圧縮タンク(Byrne Specialty Gas, Seattle, WA)からの気体を、二重蒸留水で満たした気体洗浄瓶(500ml Kimex)を介して通気させることにより規定の気体を加湿して、環境チャンバーに提供された。気体洗浄瓶は、ガスフローメーターを越えて環境チャンバーに接続されてた。ガスフローメーターは、24時間のインキュベーション中、調節された70cc/分の流れを、環境チャンバーを通して提供するように使用された。 誘導された可逆的スタシスがシノラブディス・エレガンス線虫に達成され得ることを試験するために、2細胞のシノラブディス・エレガンス胚、L3幼虫または成虫の線虫を収集して、事実上100% COの環境、100% N2の環境、一酸化炭素とバランスした500ppm酸素を含む環境、または窒素とバランスした100、500または1000ppm酸素を含む環境のいずれかに、室温で暴露した。微分干渉顕微鏡(Normarski opticsとしても公知の)を使用して、線虫を視覚化した。像を収集して、NIH imageおよびAdobe Photoshop 5.5を使用して解析した。胚は、約50μm長であった。 これらの実験の結果は、100%一酸化炭素が致命的ではなく、可逆的仮死状態を誘発することを示した。線虫は、窒素とバランスした500ppm酸素を生き延びなかったが、一酸化炭素とバランスした500ppm酸素で処置した線虫は、仮死状態に入り、そして生き延びた。以下を参照されたい。実施例2:一酸化炭素中でのヒト皮膚の維持 一酸化炭素はヒトに対して非常に有毒であり、これは一酸化炭素が、組織に酸素を分配する主要な分子であるヘモグロビンとの結合に関して、酸素と強く競合するためである。ヘモグロビンを有さない線虫が、一酸化炭素に対して耐性であり、むしろこの薬物により低酸素損傷から保護される事実により、例えば一酸化炭素が、組織移植または血液フリーの手術分野などの血液が存在しない状況下で、ヒト組織を低酸素損傷から保護する可能性が示唆された。この仮説を試験するために、ヒト皮膚を使用する。 この目的のために3個のヒト包皮を獲得した。インスリン、EGF (0.1ng/ml)、ヒドロコルチゾン(0.5mg/ml)およびウシ下垂体抽出物(タンパク質約50マイクログラム/ml)を含有するケラチノサイト増殖培地(KGM)中に、包皮組織を保存した。包皮をPBSで濯ぎ、過剰の脂肪組織を除去した。各包皮サンプルを2個の同一部分に分割した。各部分を、ディスパーゼII (Bacillus Polymyxa EC 3.4.24.4:Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, INより入手) 24mg/mlと共にPBS溶液を含む別個の容器内に配置した。一方の容器(ディスパーゼIIと共にPBS中の包皮部分を含む)を、ドラフト内の加湿チャンバー内に保持した。他方の容器(ディスパーゼIIと共にPBS中の包皮の他の半分を含む)を、加湿した、100% COを分散した環境チャンバー内の同一のドラフト内に配置した。両方のサンプルを室温で24時間維持した。規定の大気状態の確立に使用した方法は、実施例1に記載した方法と同一であった。 正常酸素圧または100% COに24時間暴露した後、Boyceら(1983; 1985; この各々が全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている方法にしたがって、包皮からケラチノサイトを分離した。すなわち、各包皮サンプルからの表皮を、PBSを含む新鮮皿に移動した。0.05%トリプシン、1mM EDTA 3ml中でのインキュベーションに先だって、室温で表皮を細かく切り、ホモジナイズして、表皮から基底細胞を分離した。インキュベーション後、400μg/ml (マイクログラム/ml)大豆トリプシン阻害因子、1mg/ml BSA 6mlを加え、サンプルを900RPMで遠心分離した。各サンプルからの上清を廃棄し、サンプルペレットをKGM 10mlに再懸濁した。各サンプルを、各々、KGM 5mlおよびHEPES 100μl、pH7.3 (N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸)を含む2個の10cmプレート内に分割した。95%室内空気、5%二酸化炭素を分散した37℃インキュベーター内で、プレートを5日間インキュベートした。 逆位相コントラスト顕微鏡(inverted phase contrast microscope)を用いて、細胞を視覚的に検査した。正常酸素圧に暴露した3つのケラチノサイト集団の全部が、殆どまたは全く増殖を示さなかった。100% COに暴露した3つのケラチノサイト集団の全部が、有意な増殖を示した。コロニー形成により判断される生存ケラチノサイト数の定量化は、3個の包皮のうち2個に関して行った。図1を参照されたい。 (表1) コロニー形成の定量化実施例3:線虫による更なる維持実験 以下の実施例は、実施例1に開示した情報と重複し、またその延長上にある情報を含む。A. 材料および方法 環境チャンバーおよび器具 W. Van Voorhies (Van Voorhies et al., 2000)により設計されたカスタム大気チャンバーを使用して、酸素欠乏実験を実施した。チャンバーは、2個のバイトン0リングで裏打ちされて密封を確実にした、カスタム鋼栓を装着した30mL注射筒(Fisher #14-825-10B)である。栓には穴が通され、また外側面上に鋼製のルアーロックを有するため、圧縮気体を運ぶホースを取り付ることができる。圧縮タンクから、規定の気体混合物を、最初にロータメーター(Aalborg、フローチューブ番号032-41ST)または質量流コントローラ(Sierra Instruments #810)に通して流速を監視し、次に水250mlを入れた500ml気体洗瓶(Fisher #K28220-5001)に通して気体を水和して、チャンバーに一定圧力および流速で供給する。1/4" ODナイロン(Cole-Parmer #P-06489-06)またはFEP (Cole-Parmer #A-06450-05)チューブを使用し、チューブと調節装置間、およびチューブとロータメーター間の接続を、真鍮John-Guest型フィッティング(Byrne Gas)で形成した。他の全接続は、マイクロフロー迅速接続フィッティング(Cole-Parmer #A-06363-57、 #A-06363-52)または標準的なルアーフィッティング(Cole-Parmer #A-06359-37、#A-06359-17)のいずれかで形成した。 低酸素中での線虫の生存率 ブリストル株N2を、集団が飢餓しないことを確実にするよう注意して、連続して20℃で維持した。対数期の成虫シノラブディス・エレガンスを、ガラスプレート上の100μg/mlアンピシリン、15μg/mlテトラサイクリンおよび200μg/mlストレプトマイシンを含有する一滴の無菌水中に抓み入れた。成虫を剃刀で切り、マウスピペットを使用して2細胞胚を抓んだ。30〜60個の2細胞胚を、M9中の1%アガロース3mlで満たした小さいガラスボート(環境チャンバーに適応するよう誂えた、Avalon Glass Works, Seattle WA)に移動した。次に、ボートを加湿チャンバー内に2時間配置し、胚を加齢させた後、次に大気チャンバー内に配置した。純粋なN2 (4.5等級)、100ppm O2/N2、500ppm O2/N2、1000ppm O2/N2、または5000ppm O2/N2のいずれかを70cc/分で24時間、室温で環境チャンバーに連続して分散した。暴露後、胚を含有するアガロース塊をボートから切り出し、大腸菌(OP50)を播種した中型のNGMプレート上に、胚を上向きにして配置した。暴露から24時間後、胚を孵化に関してスコアし、孵化したL1をNGMプレートの表面に移動して、成虫まで追跡した。勘定できない虫は、総数から削除した。全気体は、Byrne Gas (Seattle, WA)により供給した。純粋なN2は、10ppm未満の不純物を含むよう保証され、全O2/N2混合物の酸素含有率は±2%であると保証された(例、100ppm O2/N2は、98ppm O2〜102ppm O2を含むよう保証された)。百万分の一のkPaへの変換は、1気圧において100万部 = 101kPaに基づいていた。 一酸化炭素を基礎とする雰囲気中での線虫の生存率 上述したように、継続的に維持したBristol N2およびhif-2 (iaO4)株から、30〜60胚を回収した。環境チャンバーに、連続して純粋なCO (CP等級)または500ppm O2/COを室温にて70cc/分で24時間、連続して分散した。2500ppm O2/COまたは2500ppm O2/N2を達成するために、5000ppm O2/N2を、流量を正確に監視するために2個の質量流コントローラ(Sierra Instruments 810)を使用して、純粋なCOまたは純粋なN2のいずれかと1:1比で混合した。24時間の暴露中、各気体を50cc/分で三方弁(Cole-Parmer #A-30600-23)内に供給した後、得られた混合物を気体洗瓶に通過させて、環境チャンバー内へ移送した。全気体は、Byrne Gas (Seattle, WA)から供給した。500ppm O2/CO混合物は±2%の酸素含有率に保証され、タンク使用の間中、7000ppm N2を含有して一貫したO2/CO比を確実にした。 細胞生物学的分析 窒素を基礎とする雰囲気中での発達の進行の程度を測定するために(表2)、上述したように、2細胞胚を様々な程度の低酸素に暴露し、直ちに撮影するか、または加湿チャンバー内での12時間の回復期間後に撮影するかのいずれかを行った。胚が一酸化炭素を基礎とする雰囲気中で停止したことを測定するために、2細胞胚を室内空気中で2時間加齢させ、直ちに撮影するか、または100%一酸化炭素もしくは0.05kPa O2/CO中に24時間入れ、暴露後直ちに撮影するかのいずれかを行った。全ての場合において、胚をカバーガラス下の薄い1%アガロースパッド上に配置して、Zeiss 蛍光顕微鏡(axioscope)上で観察することにより、DIC顕微鏡法を実施した。写真は、RS ImageおよびAdobe Photoshopソフトウエアを使用して撮影した。B. 結果 HIF-1は、以前に、軽度の低酸素中のシノラブディス・エレガンスに要求されることが報告され(0.5kPa O2 (Padilla et al., 2002)および1kPa O2 (Jiang et al., 2001))、無酸素中で仮死状態が可能であることは公知である(>0.001kPa O2) (Padilla et al., 2002)。これらの各応答が有効な範囲を正確に定義するために、野生型シノラブディス・エレガンス胚を軽度の低酸素と無酸素間の様々な酸素張力に24時間暴露後、生存率を測定した。無酸素に暴露した胚は、以前に報告したように、仮死状態に入り、したがって高い生存率で暴露を生き延びた。0.5kPa O2中の胚は、暴露の間中、活動し、また高い生存率で生き延び得た。しかしながら、軽度の低酸素と無酸素間の酸素張力の中間範囲(0.1kPa O2〜0.01kPa O2)に暴露した胚は、驚くべき事に、生き延びなかった(図2)。 胚は、この低酸素の中間範囲に対する暴露中に孵化せず、これは、HIF-1仲介応答を首尾良く行わなかったことを示している。これらの仮死の可能性を決定するために、この中間範囲内の胚が、暴露中、胚形成を停止するか否かを検査した。致死的酸素張力中の胚は、胚形成を停止せず、酸素量の増大は、胚の発達の進行の範囲の増大と相関していた(表2)。再酸素化により、これらの胚の大部分は孵化せず、孵化した多数は、異常なL1として停止した。これらのデータは、この低酸素の中間範囲の酸素レベルが、継続的な活動を促すに十分高くなく、かつ仮死状態を誘導するに十分低くない唯一のストレスであることを示している。 これらの発見に基づき、もし酸素結合の競合的阻害剤である一酸化炭素が、低い酸素レベルの存在下、仮死状態を誘導し得る場合、一酸化炭素は、この低酸素の致死的範囲に対する保護を提供し得ることが仮定された。この可能性を検査するために、最初に様々な濃度の一酸化炭素中でのシノラブディス・エレガンス胚の生存率を測定した。数種の系には高いレベルの一酸化炭素が毒性作用を有し得るにも関わらず、シノラブディス・エレガンス胚は、幅広い範囲の一酸化炭素張力に極めて耐性であることが見出だされた。事実、シノラブディス・エレガンス胚は、101kPa CO (100% CO)の24時間の連続的な暴露に高い生存率で耐え得る(成虫への81.5%生存率、図3)。とりわけ、101kPa COでは、胚は、暴露中、胚形成を経て進行せず、これは仮死状態に入ったことを示した。一酸化炭素が致死的酸素張力の存在下で胚を保護し得るか否かを試験するために、一酸化炭素でバランスした0.05kPa O2に暴露した胚の生存率を測定した。N2でバランスした0.05kPa O2に暴露した胚(その殆どは生き延びない)と対照的に、これらの胚は、96.2%生存率で復活して成虫となった(図3)。よりさらに、101kPa COで処置した胚と同様、一酸化炭素でバランスした0.05kPa O2中の胚は、胚形成を停止し、これは仮死状態に入ったことを示した。したがって、一酸化炭素は、致死的酸素張力の存在下、仮死状態を誘導することにより、低酸素損傷から保護し得る。 過剰の一酸化炭素により保護し得る酸素張力の範囲をさらに試験するために、HIF-1機能を欠いた胚(hif-1 (iaO4)株)を用いて、低酸素損傷に対する保護が、軽度の低酸素中でも可能か否かについて取り組んだ。窒素でバランスした0.1kPa O2〜1kPa O2間の様々な酸素張力を試験した後、HIF-1に関する最大要求が、窒素でバランスした0.25kPa O2にあることが見出された。この雰囲気中で、野生型胚は、発達を経て正常に進行し、高い生存率を示すが、hif-1 (iaO4)胚は、胚形成を完了せず、100%の死亡率を示す(表3)。したがって、一酸化炭素が0.25kPa O2にてhif-1 (iaO4)胚を保護し得るか否かを試験した。一酸化炭素でバランスした0.25kPa O2中、野生型およびhif-1 (iaO4)胚の両方は、仮死状態に入り、暴露を高い生存率で生き延びた(各々、成虫への78.7%および84.0%生存率)(表3)。したがって、一酸化炭素による仮死状態の誘導は、0.25kPa O2もの高い酸素張力で可能であり、また一酸化炭素は、HIF-1機能の不在下でも、軽度の低酸素に対して保護し得る。 (表2) 低酸素における発達の進行の定量 野生型の2-細胞胚を様々な程度の低酸素中に24時間配置し、胚形成を経過して進行する範囲をスコアした。増大する量の酸素を含有する雰囲気への暴露は、胚形成を経過する進行を増大させた。胚形成の所与の20〜40分間の範囲内で停止した胚の百分率を測定した。データは、3つの独立した実験の結果である。 (表3) 一酸化炭素は、hif-1胚を軽度の低酸素に対して保護する 野生型およびhif-1 (iaO4)胚において、0.25kPa O2/N2または0.25kPa O2/COに対する24時間の暴露後の成虫への生存率をアッセイした。全てのデータポイントは、少なくとも3つの独立した実験の結果であり、勘定できない虫は、総数から削除した。低体温に応じた線虫の生存率 線虫の生存率は温度にも感受性であり、集団の100%が、低温に24時間暴露した後死亡した(4℃;図15)。しかしながら、線虫が、温度低下前に、1時間の無酸素条件(<10ppm酸素)への平衡によりスタシスに誘導された場合、それらのかなりの割合が、4℃に対する24時間の暴露後に生存する(図15)。この実験では、線虫は、低体温期間中、および室温に戻された後の1時間、スタシスに保たれた。無酸素条件(純粋なN2)、成長条件、および生存率の測定を以下に記載する。実施例4:マウスにおける中心体温および呼吸の低下A. 材料および方法 遠隔測定装置の移植 雌のC57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories - Bar Harbor, Maine)に遠隔測定装置(PDT-4000 HR E-Mitter - MiniMitter Inc. - Bend, OR)を、製造業者により提供された標準的なプロトコルにしたがって移植した。マウスを数週間かけて回復させ、体温および心拍数シグナルを安定化させた。マウスの中心体温、心拍数、および動きを、遠隔測定装置により連続的に監視し、VitalViewソフトウエアを用いて記録した(MiniMitterより提供)。HOBO (Onset Computer Corp. - Pocasset, MA)を用いて周囲温度を監視し、BoxCarソフトウエアを用いてデータを解析した(Onset Computer Corp.より提供)。 マウスの調節雰囲気への暴露 各マウスを、(a)室内空気と混合して(Aalborg - Orangeburg, New York製の3チャネル気体比例混合計器を使用)、最終濃度80ppm H2Sおよび17% O2とした、500ppm H2Sバランス窒素を含有する雰囲気(Byrne Specialty Gas - Seattle, Washington)、または(b)室内空気と混合して最終濃度17% O2とした窒素雰囲気のいずれかに、1L/分で暴露した。H2SおよびO2は、Innova GasTech GTシリーズのポータブル気体監視装置(Thermo Gas Tech - Newark, California)を用いて測定した。 調節された雰囲気および調節されていない雰囲気中で試験する暴露の前または暴露中に、大気の導入および通気のためにCole-Parmer (Vernon Hills, Illinois)製のFEPチューブからなる注入および排出チューブを装着したガラスケージを備えた気体処理チャンバー(飲料水と伴に、食物は存在せず)内に、マウスを配置した。Dow Corningシリコーン真空グリース(Sigma - St. Louis, Missouri.)を使用して、ケージを蓋で密封した。各ケージからの気体は、排出チューブを通して化学フード内に排気した。システムが気密であることを確実にするために、GasTech GTポータブル監視装置を使用して漏れを検出した。 呼吸 数個の実験において、PA-10a O2分析装置(Sable Systems)を使用して、製造業者の指示に従って酸素の消費を測定した。同様に、LI-7000 CO2/H2O分析装置(Li-Cor company)を使用して、製造業者の指示に従って、動物により生産された二酸化炭素を監視した。これらの装置は、これらが気体注入および排出チューブをサンプリングするように、環境チャンバーと直列に配置した。 周囲温度の調節 マウスをShel Lab低温日周光照射インキュベーター(Sheldon Manufacturing Inc. - Cornelius, Oregon)内に収容して、マウスに関して温度および光サイクル(8AM点灯、8PM消灯)の両方を調節した。マウスを上述した調節雰囲気に暴露した。マウスを調節雰囲気に暴露した際、インキュベーター内の温度を、所望の温度、例えば10℃または15℃に低下させた。調節雰囲気中およびより低い温度にて、マウスを6時間保持した。気体処理チャンバー内の雰囲気を室内空気と交換し、マウスを通常の室温(22℃)に戻して回復させた。B. 結果 ベースラインデータ 亜致死量の硫化水素に対するマウスの応答を測定するために、本発明者は、最初に、周囲温度に維持し、かつ室内空気を分散したインキュベーター内で、送受信機を移植した4匹のマウスからデータを1週間スコアすることにより、中心体温、心拍数および動きのベースラインを確立した。ベースラインデータは、マウスが、消灯直後の夕方と点灯直前の早朝に活動がピークとなる概日リズムを有することを示した。中心体温は、マウスの活動期間中の高温37℃から、不活動期間の低温33.5℃の間で変動した。心拍数は、活動期間中の750bpm (鼓動/分)から、不活動期間の250bpmに変動した。心拍数は、中心体温と相関すると思われる(体温が高くなると、心拍数が増加する)。同様に、粗大運動は、夕方および夜明け直前に最も高かった。 室温でのマウスの調節雰囲気への暴露 マウスの硫化水素への暴露の第一の試験は、最初に、マウスをインキュベーター内で27℃に保持した気体暴露チャンバー内に1時間配置することを含んだ。1時間後、概して上述したようにチャンバーに80ppmを分散し、実験中のインキュベーターの温度を18℃に低下させた。心拍数および粗大運動の急速な変化は検出されなかったが、一方、中心体温の劇的な減少が観察された。実験を90分間進行させ、その間、中心体温は、上述したベースライン試験において4匹のマウスのいずれかに記録された最低温度を5℃下回る28.6℃に低下した。チャンバーに室内空気を分散した後の回復中、本発明者は、動物が最初は比較的不動(捕獲が容易)であるが;それは60分以内であることに気付いた。動物は、通常の中心体温範囲および活動性に戻っていた。第二のマウスを同一のプロトコルに暴露した;しかしながら、今回は、80ppmでの気体暴露を3時間実施した。この期間中、本発明者は、心拍数が600bpmから250bpmに有意に低下し、粗大運動を殆ど行わず、中心体温が18.6℃に低下したことに気付いた。 呼吸の変化は、中心体温の低下を伴う マウスを80ppm H2Sに暴露したら、酸素消費および二酸化炭素生産計測により測定して、代謝速度も低下した。例えば、中心体温および二酸化炭素生産を同時に計測したマウスでは、動物の中心体温の低下に先立って二酸化炭素生産が急速に低下することが示された(図4A)。二酸化炭素生産の約3倍の低下は、H2Sへの暴露から約5分後に新しいベースラインを確立した。 表4は、CO2を取り除いてあった(したがって対照では0値)室内空気に暴露したマウスからの、H2S (80ppm)を伴うかまたは伴わない、O2およびCO2濃度の同時測定による実験の結果を示す。測定は、流速500cc/分の0.5L密閉環境チャンバー内のマウスを用いて、15分間かけて行った。酸素消費は、マウスが存在するときの酸素濃度を、マウスが不在のときの対照から引くことにより獲得する。同様に、二酸化炭素生産は、マウスが存在するときの二酸化炭素濃度を、マウスが不在のときの対照から引くことにより獲得する。RQは呼吸商を表し、生産された二酸化炭素、対、生産された酸素の比に等しい。この結果は、H2Sの存在下、酸素消費の2〜3倍の低下、および二酸化炭素生産の3〜4倍の低下を示す。呼吸商の変化は、H2Sの存在または不在下での、マウスによる酸素消費と二酸化炭素生産との差異を反映する。 (表4) H2S暴露は、マウスの呼吸を阻害する。 異なるスタシスパラメータ(酸素消費の低下、二酸化炭素生産の減少、または運動性の低下)は、様々なアッセイおよび方法により評価し得る。例えば、H2Sを投与したマウスにおけるスタシスの誘導を測定する最も簡易な方法は、おそらくそれらの呼吸の観察である。事実、これは、酸素消費、二酸化炭素生産および運動性の低下を示すことから、3つのパラメータの全てを包含する。標準的な条件下での室内空気内の正常なマウスは、1分間に約200回呼吸する。H2Sが80ppmにてマウスに投与された場合、中心体温は15℃に低下し、呼吸は少なくとも1桁減少しておおよそ1分間に1〜10回間になる。実際、これらの条件下でマウスを観察して、マウスは1時間を超えて呼吸せず、これは深いレベルのスタシスが獲得可能であることを示した。したがって、これは少なくとも約1〜20倍の細胞呼吸(すなわち、酸素消費および二酸化炭素生産)の低下を示す。 低下した周囲温度でのマウスの調節雰囲気への暴露 マウスの活動を低下させる硫化水素の能力の限界の定義を開始するために、本発明者は、非遠隔測定マウスを使用し、次に遠隔測定を支持するマウスを暴露して、データを獲得するいくつかの実験を実施した。第一の実験では、気体暴露および周囲温度低下の前にマウスを気体処理チャンバー内にて27℃で1時間配置した以外は、基本的に材料および方法に記載したように、温度を10℃に低下させたキャビネット内で、非遠隔測定マウスを80ppm H2Sの調節雰囲気に付した。非遠隔測定マウスは、この処置では上手く働き、気体処理チャンバーから移動した約90分以内に、活性を回復した。同一条件に付した遠隔測定マウスも上手く働き、中心体温の約12.5℃への低下を示した。本発明者は、電子機器が15.3℃にて故障した為、この温度を正確に測定することが不可能であった。12.5℃への温度低下は、したがって、故障前の低下の勾配と、電子機器の故障後にチャンバー内に残留した動物の時間に基づく概算値である。 設備の限界により、本発明者は、次に4匹の遠隔測定マウスの各々を、基本的に上述したような約80ppm硫化水素を含有する調節雰囲気、または室内空気を伴う気体処理チャンバー内で6時間試験した。インキュベーターの温度を、実験開始時(調節雰囲気への暴露、または室内空気に暴露したマウスに関して、時間0)の温度から、一定な15℃に低下させた。6時間の終わりに、マウスを概して上述した室内空気雰囲気および周囲温度22℃に戻した。4匹の全マウスにおいて80ppm硫化水素の使用に応じた中心体温の低下が明らかであった(図4B)。温度低下に関連した心拍数と粗大運動の動きの顕著な低下も存在した。マウスを4週間保持し、該動物の挙動に明らかな変化はなかった。実施例5放射線障害の低下に関するハツカネズミでの試験A. 科学的論拠 放射線損傷モデルの局面は、細胞培養物中で評価でき、また評価されているが、一方、実験薬物が損傷および治癒過程に影響を与える能力を試験するためには、影響を受けた全応答系を含む必要がある。現在の時点で、これを達成する唯一の方法は、動物全体である。本発明者は、最適なモデルとして、その試験にマウスを使用することを提案する。試験のためにC57BL/6マウスが選択され、これはこのマウス株が、放射線胸損傷を受け易く、この株が耐性を有する放射線レベルが確立されており、また本発明者は、H2Sがこのマウス株の中心体温を低下させることを最近示したためである。 このプロトコル下で、2つの同一の実験を計画する。各実験は、放射線誘導による胸損傷の発達に対する、H2S誘導による低体温症の効果を調べる。1グループ当たり10匹のマウスを、4つの試験条件(H2S/17.5 Gy胸部照射、H2S/胸部照射なし、H2S/17.5Gy胸部照射、またはH2Sなし/胸部照射なし)のうちの1つに暴露した後、13週間追跡する。1グループ当たり12匹の動物を同様に暴露し、26週間追跡する(疾病過程の後期に生じる死亡率の増加を補償するために、nの増大が必要である)。 これらの実験に関して、データ分析のために統計的モデルとして分散分析(ANOVA)を使用する。4グループ(H2Sを受容したまたはH2Sを受容していない照射または非照射マウス)および2つの時間差(13週間または26週間)を使用した、完全交差および無作為2因子ANOVAにより、気管支肺胞洗浄炎症性細胞数、および総タンパク質濃度、ならびに肺ヒドロキシプロリンレベルにおける経時変化を分析する。80%検出力、5%有意性および両側検定をとり、損傷グループ、介入グループおよび時間点の組み合わせ当たり5匹の生存マウスは、グループ内の標準偏差の1.7倍に等しいかまたはそれ以上のグループ平均間の検出可能な差異が可能となる。グループ内での標準偏差は、約25%に等しいと期待される。したがって、これらの実験で、炎症性細胞数または胸コラーゲン含有率の対照値からの35〜50%の変化が識別可能な筈である。 SLU AHR内で線形加速器一式により、H2S暴露および胸部照射を行う。AHRマウス剖検室内で、剖検にて気管支肺胞洗浄および胸獲得を実施する。別の研究室(D3-255)内で、気管支肺胞洗浄細胞数およびタンパク質濃度ならびに胸ヒドロキシプロリン含有率の測定を実施する。野生遺伝子型C57BL/6マウスは、17.5Gyの胸部照射を受ける。腹膜内Avertinを用いてマウスに麻酔にかけ、個々のマウス拘束布内に配置し、線形加速器を用いて8.5Gyにて、3Gy/分の線量率で、胸部のみを標的とするように視準を合わせた2個の側面フィールドを介して照射する(総胸部線量17.5Gy)。B. プロトコル 麻酔 野生遺伝子型C57BL/6マウスに、イソフルランを気管内投与して麻酔をかける。触覚刺激に対する応答に関する呼吸速度によって、麻酔の深度を監視する。胸部照射手順のために、Avertinの腹膜内注入(0.4〜0.7ml/マウスi.p.)を用いて動物に麻酔をかける。呼吸速度および触覚刺激に対する応答により、麻酔の深度を監視する。 硫化水素への暴露 マウス(IR1606)に関して以前に使用されたものと同様の、閉鎖したプレキシガラス気体処理チャンバー内にマウスを配置する。チャンバーは、2個の孔(注入および排出)を有する。室内空気とバランスさせたH2S (80ppm)を含有する気体を、チャンバーを介して1リットル/分の速度で通気する。排気口から延びるホースを伴うハウス換気システムを用いて、室から気体を室の排気口へ換気する。 有害な薬剤投与 気体処理チャンバー内にいる間、線形加速器を使用して、総線量17.5Grayにてマウスを照射する。この放射線量は、線維症に進行する亜急性肺損傷をマウスに誘発する。マウスは、放射能を有さず、または他の動物に別様に害を与えることはない。照射による特別な監視、抑制または処理は必要としない。 計画的安楽死 胸部照射から約13および26週後、深い麻酔により(avertin 0.4〜0.7ml i.p.を使用して)動物を安楽死させ、次に下大静脈穿孔により瀉血する。気管支肺胞洗浄を実施して、炎症性細胞数、分化数および洗浄流体のタンパク質濃度を測定する。肺および食道組織を除去して、組織学的評価およびコラーゲン含有率の分析を実施する。 瀕死動物 胸部放射線はマウスの絶対死亡率に関連し、照射後10週目までに15%、22週目までに50%が死亡する。研究者等は、副作用に関して動物を連日監視する(最初は、マウスが安定した様子になるまで2〜3回/日、次に疾病が進行を開始するまで1日1回、この時点で、本発明者は複数回の連日監視に戻る)。動物の体重が減少している、毛繕いをし損なう、重篤な呼吸困難を示す、および/または動きがぎこちないかもしくは有意に減少した場合、マウスをavertin過剰投与により安楽死させる。実行の際、これらの非計画的安楽死に関する気管支肺胞洗浄および組織学的検査のための組織収集を実施する。 胸部照射は、それ自体痛みを感じない胸損傷を生成するが、呼吸速度の上昇、軽度の食欲不振、軽度の体重減少および/または毛繕いの失敗により明らかであり得る(10週目)。研究者等および動物施設の職員は、それらの副作用に関して動物を連日監視する。動物が摂食する様子がない場合、柔らかい食物および流動物の援助を提供する。動物が疼痛を知覚し、鎮痛状態にある場合、必要に応じてブトルファノール(0.2mg/kg i.p.)またはブプレノルフィン(1.0mg/kg bid s.q.)を投与する。動物が苦しみ、また軽減手段が改善に繋がらない様子の場合、該動物を直ちに安楽死させる。組織病理学的評価およびコラーゲン含有率分析のために、計画的剖検にて、肺および食道組織を収集する。 照射後の飼育 任意の病原体の他の施設への伝染の危険性を最小にするため、またこれらの動物を、該動物が幾分か免疫抑制状態にある間保護するため、これらの動物にすべての飼育作業を毎日最初に行い(施設内の任意の他の動物に先だって)、またバイオセーフティーキャビネット内で行う。偶発的な感染の危険性を最小にするために、マウスは加熱滅菌したケージおよび床を有する。加えて、マウスには、病原体を殺滅するために照射された標準的な齧歯類用食物が付与される。 野生遺伝子型C57BL/6マウスは、17.5Gyの胸部照射を受ける。マウスは、腹膜内Avertinにより麻酔をかけられ、個々のマウス拘束布内に配置され、マウス(IRl606)に関して以前に使用したものと同様の、閉鎖したプレキシガラス気体処理チャンバーに移動される。チャンバーは、2個の孔(注入および排出)を有する。室内空気とバランスさせたH2S(80ppm)を含有する気体を、チャンバーを介して1リットル/分の速度で通気する。排気口から延びるホースを伴うハウス換気システムを用いて、室から気体を室の排気口へ通気する。気体処理チャンバーに入れた後、8.5Gyの線形加速器によりマウスを照射する。線量率3Gy/分にて、胸部のみを標的とするよう視準を合わせた2個の側面フィールドを介して照射する(総胸部線量17.5Gy)。胸部照射の完了後、動物をそのマイクロアイソレーターケージに戻し、麻酔から回復するまで監視する。 計画的安楽死 動物の一組を、照射から13週後に剖検して、損傷の炎症段階を評価する。第二組を26週目に安楽死させて、損傷の繊維化段階を評価する。avertinを用いて動物に麻酔をかけた後、瀉血する。肺を1000μl PBSで洗浄し、総細胞計数および分化細胞計数のために、洗浄流体を氷上に保持する。次に、ヒドロキシプロリン含有率に関して右胸を回収し、また左胸に気管を介して25〜30cm圧で10%NBFを注入する。食道、気管、左胸および心臓を10% NBF中に浸漬し、過程および病理学的評価のために、FHCRC組織共用資源研究所に向かう。 胸部照射は、それ自体痛みを感じない胸損傷を生成するが、呼吸速度の上昇、軽度の食欲不振、軽度の体重減少および/または毛繕いの失敗により明らかであり得る(10週目)。研究者等および動物施設の職員は、それらの副作用に関して動物を連日監視する。動物が摂取する様子がない場合、柔らかい食物および流動物の援助を提供する。動物が疼痛を知覚し、鎮痛状態にある場合、必要に応じてブトルファノール(0.2mg/kg i.p.)またはブプレノルフィン(1.0mg/kg bid s.q.)を投与する。動物が苦しみ、また軽減手段が改善に繋がらない様子の場合、該動物をCO2窒息により直ちに安楽死させる。 主な問題点は、食道炎(食物および水摂取の低下の結果)および呼吸不全(酸素注入の低下)であると思われる。本発明者は、該動物が安定し、かつ元気を取り戻したことを確認するまで、これら動物1日2〜3回検査する。この時点で、本発明者は、疾病の進行が開始するまで、検査の頻度を一日一回に低下してもよい。疾病の進行が開始した時点で、動物は一日数回の検査に戻る。数種の方法にて支持的ケアを提供する。動物が良く摂食または水を飲まない場合(体重減少および毛繕いの問題により示される)、本発明者は、柔らかい食物を提供し、流体補給を試みる(乳酸リンゲル液、1〜2ml/マウス、sc 小孔付きの針を使用して(>20G)、1日1〜2回)。動物が疼痛を知覚している場合、必要に応じて、ブトルファノール(0.2mg/kg i.p.)またはブプレノルフィン(1.0mg/kg bid s.q.)を投与して鎮痛する。動物が苦しみ、また軽減手段が改善に繋がらない様子の場合、該動物をCO2窒息により直ちに安楽死させる。動物が胸部照射の際に有意な疼痛または苦痛を経験する場合、動物をCO2窒息により直ちに安楽死させる。 第三の実験は、基本的に上述したように、対象遠隔測定マウスを10.5℃に低下した温度のキャビネット内で、80ppmH2Sの調節雰囲気に付する。実験中、マウスを視覚的に観察し、その動きをウエブカメラにより記録し、上述したように遠隔測定値を記録した。マウスを80ppm H2Sの調節雰囲気に暴露し、キャビネット温度を一定の10.5℃に低下させた。約6時間の終わりに、キャビネット温度を25℃に設定して、キャビネットに熱を適用した。マウスを、マウスの中心体温が17℃〜18℃間となるまで、調節H2S雰囲気内で暖め、その後、調節雰囲気を室内空気と入れ替えた。マウスの中心体温は、調節雰囲気内で明らかに10.5℃に低下し、粗大運動の顕著な低下が付随した。呼吸速度は、約1時間15分の視覚的観察により、検出不能な速度に低下した。キャビネットを暖めた後、マウスの中心体温が14℃に到達した際に、弱い呼吸が観察された。暖め段階中、中心体温が17℃〜18℃に上昇し、またマウスが呼吸および動きを示した時に、調節雰囲気を室内空気と入れ替えた。中心体温が25℃に戻った際に、正常な動きおよび呼吸が完全に明らかであった。マウスは、未処置動物と比較して、挙動において明らか変化を全く示さなかった。実施例6:細胞および哺乳動物試験A. 犬での試験 中心体温を監視するために遠隔測定装置を外科的に移植した犬を用いて、試験を実施する。動物を亜致死用量の硫化水素の存在または不在下で10時間試験する。この期間中、動物を生命徴候に関して、遠隔測定法により連続的に監視する。環境温度も15℃に30分間低下させ、これが動物の中心体温に任意の効果を有するか否かを測定する。 この手順を2匹の犬の2グループ(合計4匹)で実施する。遠隔測定設備の経費のため、本発明者は、これらの実験を連続して行った。第一グループからの結果が、仮説が間違いであることを示した場合、試験を2匹の犬の第二グループにて反復する。第二グループからの結果が仮説を支持しない場合、計画を中止する。 毒性学試験では、H2Sレベルが、ヒトに関してはOSHA限界を上回る(10ppm)が、一方、ラットおよびマウスの両方の80ppm H2Sへの1日6時間、1週間に5日、90日間の暴露により、副作用は全く観察されなかった。これは、処置の終わりに実施した腸、肺、心臓、肝臓、腎臓、または他の器官の、肉眼試験および組織病理学的試験の両方を含む。本発明者の知識によれば、犬の硫化水素への暴露に関する情報は全く入手し得ない。 H2Sを用いた処理の重要な事項は、硫化水素に暴露した齧歯類に関する試験を公開し、および有害な影響を観察しなかった他の者が記載した、用量(80ppm)を越えないことである。気体科学における相当量の経験が利用でき、本発明者は気体を処方量にてマウスに供給することができる。多数の事前注意を行って、動物および研究者等の両方が被害を受けないことを確実にする。これらの事前注意には、OSHA限界およびおよび1ppmの感度に設定した警報により気体混合物を常時監視すること、ならびに気体をシステム内またはシステム外に漏らすことなく仕様書に従って混合および供給することが可能な様々な設備を含む。 プロトコルに関する時間記録を表5に示す。 (表5) 試験の時間記録B. ヒト血小板 酸化的リン酸化の阻害剤の使用をヒトの利益に使用し得る構想を試験するために、本発明者は、ヒト組織内に仮死状態を誘導して、それらを酸素に対する致死的暴露から保護した。試験的実験において、本発明者は、ヒト皮膚を100% CO環境内に配置した。本発明者は、24時間後、皮膚細胞生存率が、室内空気と比較してCO内で100倍高いことを観察した。この結果は、非常に刺激的である;これらは、酸化的リン酸化の阻害剤が、ヒト組織に有効であり得る証拠を提供する。 実験の別の組において、誘導した仮死状態の血小板に対する保護効果を示す。一単位の血小板を半分に分割した。第一の半分を標準的な保管条件に保ったが、これは持続的に振とうしながら血小板を室温(22〜25℃)に保つことを含む。他方の半分は、酸素を除去する標準的な方法を用いて、無酸素環境(<10ppm酸素)内に配置した。2組の血小板を0、5および8日目に比較した。無酸素条件下に保持された血小板も、5個の異なるインビトロでの試験のパネル全体で、凝集、細胞形態、アネキシンV染色(早期アポトーシスマーカーとしての外側膜に反転するホスファチジルセリン)等の能力を含み、標準的な条件下に保たれた血小板と同様にまたはより良好に遂行した。このことは、代謝活性、特に酸化的リン酸化の制御が、酸素の除去により達成することができ、また長期間のスタシスに亘り細胞機能上に保護効果を有することを示す。 硫化水素は、チトクロームCオキシダーゼおよびCOに結合して、要求に応じてで酸化的リン酸化を停止することができる。これは酸化的リン酸化を強力に妨害するため、ヒトは0.1%硫化水素を含む雰囲気中で一回でも呼吸をすれば、さらなる呼吸を行わないであろう。その代わり、ヒトは直ちに床に倒れ、これは工業的設定において通常「ノックダウン」と称される事象である。このことはまた可逆的であると思われ、これは、これら個人が新鮮な空気と急速に入れ替えると(また倒れた際に無傷であると)、時には元気を回復し、また神経的問題を有さずに生命を継続できるためである。本明細書に、世界で日常的なだけでなく、事実、我々自身の細胞内でも生成され、酸素送達に影響を与えない酸化的リン酸化の強力な可逆的阻害剤である作用物質がある。C. ハツカネズミでの試験 H2Sを使用した冬眠様の状態の誘導 恒温動物は、定義によれば、中心体温を周囲温度より10〜30℃高く維持する。これらの動物がこれを行うためには、酸化的リン酸化により生成するエネルギーから熱を生成する必要がある。酸化的リン酸化における最終酵素複合体は、チトクロームcオキシダーゼである。硫化水素はこの複合体を阻害するため(Petersen, 1977; Khan et al., 1990)、本発明者は、恒温動物を硫化水素に暴露すると、その動物の中心体温が周囲温度を遙かに越えて維持されるのを防止されることを予測する。 この仮説を試験するために、本発明者は、恒温動物(マウス)の中心体温および活性レベルの両方を連続的に監視することを所望した。マウスの腹膜内に移植した遠隔測定装置は、これら両方を行うことができ、またマウスの取り扱いによる読み取りの偏りが導入されない利点を有する(Briese, 1998)。加えて、これらは、硫化水素ガスへの暴露中、マウスを遠隔的に監視することができる。80百万分率(ppm)の硫化水素の用量は、10週間まで継続する暴露が、マウスに無害であることが以前に示された(CIIT 1983; Hays, 1972)。したがってこれらの実験に関して、本発明者は、80ppm硫化水素の用量を用いて、本発明者の仮説を試験した。80ppmの硫化水素を含有する雰囲気を作り上げることは些細な事ではない。時間が経過すると、酸素の存在下、硫化水素は酸化されて硫酸塩になる。そのため、80ppm硫化水素を含有する雰囲気にマウスを連続的に暴露するために、本発明者は、500ppm硫化水素でバランスした窒素のタンクを用いて、室内空気を常に混合する。中心体温制御の特徴付け マウスの80ppm H2Sへの暴露は、その中心体温を周囲温度から約2℃低下させた(図5)。この効果は、80ppm硫化水素に6時間暴露した7匹のマウスの平均中心体温が、同様のパターンに従った為、高い再現性を有した(図5)。これらの7匹のマウスの最低平均中心体温は、周囲温度13℃内で15℃であった。これらの全マウスは、雰囲気を室内空気のみ含むものに切り替えた際に、再度暖めた後に成功裏に回復した。対照として、本発明者は、硫化水素の代りに窒素を用いたが、中心体温の実質的な低下は観察されなかった。 これらのマウスは、中心体温と呼吸速度の両方の一時的な低下にも関わらず、表面上は正常に見えたが、本発明者は、一連の挙動試験を実施して、神経損傷が硫化水素ガスへの暴露、中心体温の極度の低下、呼吸速度の低下、またはこれらの効果の組み合わせのいずれかにより生じる可能性を排除した。全ての試験は、マウスの硫化水素への暴露前および暴露後の両方にて実施した。これらの挙動試験は、ヒト疾病コンソーシアムにおけるマウスモデルにより開発されたSHIRPAプロトコルから選択された(Rogers et al., 1997)。気体暴露後のマウスに、検出可能な挙動的差異は存在しなかった。ここから、本発明者は、冬眠様の状態に入ることが有害ではないことを結論付けた。 H2S用量の予備的な最適化 上記の実験は、マウス中心体温に対する80ppm硫化水素の効果を記載している。体温調節の損失に十分な硫化水素の濃度を測定するために、本発明者は、マウスを、ある範囲の硫化水素濃度に暴露した(20ppm、40ppm、60ppm、および80ppm)(図6)。20ppmおよび40ppmの硫化水素は、マウスの中心体温を低下させるに十分である一方、60ppmおよび80ppmの硫化水素に見られる低下と比較して小さかった。この実験から、本発明者は、熱発生が、マウスに付与された硫化水素の濃度に直接依存することを結論付けた。この硫化水素の用量範囲および薬物動態に関する予備試験は、より広範囲の分析が必要であることを強調する。 低い中心部温度の限界の予備的な定義 本発明者は、この状態のマウスに可能な中心体温範囲および時間長の両方の耐性のより完全な理解を確立することにも興味がある。上記の実験は、本発明者が必要に応じて、マウスの中心体温を、13〜15℃に反復して低下させ得ることを示す。さらに、マウスは何時間も処置に耐えるように思われる。同一のプロトコルを使用して、周囲温度を低下させる一方で、本発明者は、マウスの中心体温を10.7℃に低下させることに成功した(図7)。将来、中心体温をより低く、およびより長い時間になるようさらなる試みを実施する。予備的ではあるが、これらの結果は、マウスの生物学により可能な中心体温の有意な範囲が存在し、またこの範囲は、硫化水素暴露による体温調節の損失を介して研究し得ることを示している。 内因的H2Sレベルの調節 哺乳動物細胞が、硫化水素を内因的に生成することは周知である(Wang 2002)。この化学物質は細胞内で動的に生産されるため、異なる条件下での基礎レベルを理解することは、該レベルが、内因的に投与される硫化水素の薬物動態に劇的に影響を与え得るため重要である。本発明者の研究の本質的な局面に取り組むため、本発明者は、マウスの内因的硫化水素レベルのアッセイを開始した。本発明者は、ガスクロマトグラフィーおよび質量特異的な検出に結合した抽出アルキル化技術を使用して、硫化水素を定量した(Hyspler et al., 2002)。この方法を使用して、本発明者は撹乱されていないマウスの硫化水素レベルに注目した。図8Aは、マウスに有意な量の硫化水素が存在することを示す。加えて、硫化水素レベルは、マウスの周囲温度に依存するように思われる。詳細には、マウスが低温内にある場合、該マウスは低い内因的硫化物レベルを有し、マウスが暖かい周囲温度にある場合、該マウスは高い内因的硫化物レベルを有する。ここから、本発明者は、マウスが、周囲温度に応答して、自身の硫化物レベルを調節することを結論付ける。 H2Sの効力に影響する内因的レベルの変化 周囲温度がマウスの内因的硫化物レベルを変化させるため、本発明者等は、周囲温度が、外因的硫化水素への暴露による中心体温の変化に影響を与え得ることを仮定する。マウスを約12℃の低温に順応させると、本発明者が中心体温の最初の低下後に見る長時間のプラトーを形成する(図8B)。したがって、この低温に対する順応は、硫化水素ガスの作用による身体中心部冷却に対して、より高い耐性をマウスに付与したように思われる。しかしながら、気体暴露前にマウスを暖かい常温環境温度に順応させると、このプラトーが排除される。事実、正常体温のマウスは、硫化水素に暴露した場合、低温順応マウスと比較してより素早く冷却した(図8B)。これらのデータは、マウスの硫化水素の内因的レベルが、外因的硫化水素の効力に対して直接影響することを示唆している。 H2Sは、マウスを低酸素から保護する 正常な室内空気は、約21%の酸素を含有する。マウスモデルで低酸素に対するスタシスの保護効果を調査する予備実験において、80ppmの硫化水素に暴露したマウスは、5.2%酸素を11分間生き延び、3週後、まだ元気であった。以前に公開された研究は、硫化水素無しで、このように暴露したこれらの動物(C57B1)の90%が、生き延びないことを示した(Zhang et al., 2004)。この実験では、マウスを80ppm H2Sに3時間、予め平衡させた後、上記の実験で記載したように、チャンバー内の酸素張力を低下させた。上述したものと同一の流速を使用した(すなわち、0.5Lチャンバー内で500cc/mL)。当該分野に馴染みのある当業者には、マウスのグループを4%酸素に暴露した場合、100%が15分以内に死ぬことが確立している。しかしながら、酸素張力が4%に低下する期間中にH2Sを投与されたマウスは、これらの低酸素条件において、より長期間でさえも生存する(1時間まで)。マウスは、回復後、これらの条件に影響を受けたように見えず、24時間後に試験した際も生存し、かつ正常に反応した。この実験は、マウスが、酸素張力が正常レベル(21% O2)に戻るまで、低酸素暴露の終了時にH2S内に保持された上記の実験とは異なる。実施例7更なる動物試験A. 悪条件からの保護 マウスが通常死亡する条件で、「冬眠様」状況のマウスの生存能力を試験する実験を実施した。悪条件は低酸素であり、文献では、マウス(C57BL6/J雄)が5%酸素で最大20分間生存し得ることが記述されている(Zhang et al. 2004)。 表6に示すように、この実験では、マウスを80ppm (別に示さない限り)H2Sに指定時間暴露し、次に、H2S下にある間に、チャンバー内の酸素張力を低下させた。低酸素暴露を時間を定め(下に示す)、マウスの生存率を測定した。 H2S (少なくとも80ppmの)に対するマウスの短時間の暴露は、低酸素からのマウスの保護にて成功率が低かったが、少なくとも一匹は、H2S中に8分間のみ暴露された後、低酸素を50分間生き延びた。さらに、90ppm H2Sに10分間のみ暴露したマウスは、最終的には死亡したが、5%酸素条件内でより長く生き延びることを観察した。 マウスを80ppm H2Sにより長時間暴露すると、1時間まで、それらを低酸素から保護する強い効果があった。B. 無酸素耐性の向上1. 背景 二酸化炭素(CO2)および硫化水素(H2S)の使用が、無酸素中の複雑な後生動物、キイロショウジョウバエの生存率を上昇させることを研究した。これらの実験は、これらの薬剤、特にH2Sが、成虫キイロショウジョウバエの無酸素耐性を増大させ得ることを示した。 シノラブディス・エレガンス胚は、仮死状態に入ることで無酸素(<10ppm O2)を生き延び、そして発達は、0.5% O2中で進行し得る。しかしながら、10倍の範囲(0.01〜0.1% O2)の致死的酸素濃度が存在する。よりさらに、胚において酸素利用を一酸化炭素で防止すれば、低酸素損傷を防止することができる。したがって、効率的な生物活性に利用し得る酸素が十分存在しなければ、幾分の酸素を有さない(または使用しない)方がよい。 より複雑な後生動物では、細胞酸素濃度は、必ずしも環境酸素レベルと同一ではない。シノラブディス・エレガンスでは、酸素は分散により組織に送達される。しかしながら、より高次の生物では、組織に輸送するために酸素に結合する、例えばヘモグロビンなどのタンパク質が存在する。したがって、環境酸素レベルが低下した際、細胞に残留酸素が存在し得る。 殆どの生物は、無酸素環境への暴露を生き延びることができない。一つの可能性は、細胞レベルでの残留酸素が、シノラブディス・エレガンス胚に観察された致死的酸素範囲内に対応する毒性を有することである。この筋書きにおいて、無酸素中での生存は、残留酸素が除去されるか、または利用不可能となれば向上するであろう。CO2は、ヘモグロビンからのO2の放出を促進し、H2Sは、酸化的リン酸化の強力な阻害剤である。2. 材料および方法 基礎的実験の設定 成虫の蝿を、気密ゴム栓を備えたガラス製の35mL管(Balsh管)に導入した。これは、通常、蝿をCO2で麻酔し、蝿のグループを食物を備えたバイアルに移動して、少なくとも2時間回復させた後、該蝿をBalsh管内に移動することにより遂行される。Balsh管内の気体環境を交換するために、2個の18ゲージ針をゴム栓に挿入し、100mL/分の速度で、針内に気体を吹き込む。乾燥を防止するために、Balsch管に通す前に、水10mLを介して気体を泡立て入れることにより加湿した。実験の開始前に、バブラー内の水を気体で少なくとも20分間平衡化した。 「ストップフロー」実験のために、管を封止する前に、気体交換を60分間進行させた。「低流量」実験のために、実験全体を通して、気体流を持続させた。CO2は、ハウス源(100%)に由来し、100%窒素(N2)で室内空気をフラッシュして出して、無酸素環境を確立した。雰囲気をCO2からN2に切り替える間、システム内へ室内空気が導入されるのを防ぐように注意した。 無酸素処置後、ハウス空気を20分間フラッシュして、Balsh管内に酸素を再導入した。次に、ゴム栓を除去し、パラフィルムを有するBalsh管の頂部上にて食物バイアルを反転させた。動きが再開した場合、生きているとして蝿をスコアした。無酸素処置後、生存率を少なくとも18時間記録した。2週間後、食物バイアルが幼虫および/または蛹を含んでいた場合、蝿は繁殖力を有すると考慮した。3. 結果 無酸素暴露前のCO2による処置 成虫の蝿は、最初にCO2で前処置された場合に、無酸素生存率がより高いことが示された。ストップフロー実験における19時間の無酸素暴露後、CO2で30分間または90分間前処置した成虫の蝿は、各々54%または28%の生存率を示した。CO2前処置を伴わない、または続く無酸素暴露を伴わないCO2では、無酸素に暴露した対照には全く生存が観察されなかった。さらに、無酸素暴露の直後にCO2にも20分間暴露された場合、CO2前処置を伴う無酸素暴露を生き延びた蝿は全く存在しなかった。 CO2に対する短時間の暴露は、無酸素に対する生存率を十分高めた。22時間無酸素暴露を伴うストップフロー実験において、生き延びた蝿の割合は、窒素雰囲気に切り替える前に、CO2が0.5〜5分間投与された場合に最高であった(図16)。したがって、続く実験のための標準的なプロトコルは、無酸素暴露前にCO2で10分間処置することであった。このプロトコルを用いた低流量実験において、6%の成虫蝿が20時間無酸素暴露を生き延び、この生存は、CO2前処置を必要とした。 実験は、CO2処置と、N2環境の確立との間に、O2の再導入を防止することが重要であることを示唆した。空気の加湿に使用したバブラー内の水を、CO2をフラッシュして出す前に、N2と平衡化しなかった場合、N2を10、50、または100mL/分にて導入したいずれの場合のこれらの実験において、1匹の蝿も13時間無酸素暴露を生き延びなかった。これらの条件下で、水中に溶解したO2から得られたN2/O2混合物で、CO2雰囲気をフラッシュして出した。 一連の低流量実験を実施して、CO2暴露により耐え得る無酸素暴露の時間を、前処置を行わなかった場合と比較して、各条件を2回試験して決定した(図17)。これらのデータにおいて、CO2前処置が生存を非常に高める傾向がある。重要な補足として、これらの実験は、CO2処置の開始前に、蝿にCO2で麻酔をかけ、Balsh管に移動して10〜20分間のみ回復させる、標準的なプロトコルから逸脱している(試験2の18時間点を除く)。 CO2による前処置が有益であるか否かの情報を提供しない、数種の他の実験を実施した。例えば、一実験において、10分間のCO2前処置時間を行う低流量実験では、17、22、および24時間の無酸素後に、生存は全く観察されなかった。しかしながら、他の実験では、17時間後に多数の蝿が生き延びた。これは、ある場合に、例えば成虫の年齢、概日リズムまたは室温の変化等、他の因子が結果に影響することを示し得る。ストップフロー設定を、低流量設定と比較する他の一実験では、1匹の蝿も17時間または19.5時間の無酸素暴露を生き延びず;しかしながら、この場合、蝿の死に、かび汚染が寄与していた可能性がある。 無酸素暴露前のH2Sによる処置 前処置プロトコルにH2Sを含めると、成虫蝿が無酸素を生き延びる能力を、より劇的に向上させる。図17に示した実験と類似した一連の実験において、CO2前処置(H2S/CO2)に50ppm H2Sを追加すると、処置を生き延びた蝿の割合が増大した(図18)。これらの蝿は健康に見え、暴露後に子孫を産出した。しかしながら、同様の実験にて、H2S/CO2中で10分間後、18、20、25、または30時間の無酸素を生き延びた蝿は全く存在しなかった。この矛盾の原因は、明らかでない。H2S処置の有益な影響と一致して、15時間の無酸素暴露後、H2Sで前処置した蝿の50%が生き延びたが、一方、H2Sに暴露しなかった対照の蝿は全く回復しなかった。この実験において、蝿は、低流量実験の継続期間中、CO2で10分間処置された後、H2S/CO2で10分間処置され、次にN2/H2Sで10分間処置され、最後にN2で処置された。 無酸素での生存率のH2S依存的な上昇に、CO2処置は必要としない。18.5時間無酸素にされる前に、50ppm H2S室内空気中で処置した蝿の25%が生き延びた。生き延びた蝿の割合は、無酸素環境の確立前にH2S/CO2への10分間の暴露が追加されても影響を受けなかった。蝿を無酸素暴露前にCOのみで10分間処置する対照実験では、蝿の11%のみが回復した。 H2Sの投与時間が無酸素での生存の向上に重要と思われる。CO2前処置中にH2Sが存在するか否かに関わらず、H2Sが無酸素暴露(20時間)中を通して存在する場合、蝿は全く回復しない。しかしながら、CO2前処置中に50ppm H2Sが存在し、続く無酸素環境を確立する際に除去された場合、35%の蝿が生き延びる。平行実験において、CO2 (H2Sは無し)を用いた10分間の前処置後、無酸素に暴露した蝿の6%が生き延びた。 幼虫および胚を用いた予備実験 COと、COおよびHSとを用いた処置後の、無酸素での生存の向上は、胚および幼虫にも観察される。無酸素に24時間暴露後、0〜19時間齢の胚のプールから7匹の蛹が形成された。しかしながら、CO2で10分間前処置した同等のプールからは、20匹の蛹が観察された。同様に、無酸素に24.5時間暴露した幼虫は、それらがCO2またはH2S/CO2で前処置された場合にのみ、再酸素化により動きを再開し得る。CO2またはH2S/CO2のいずれかで前処置した0〜24時間齢の胚は、18.5時間無酸素暴露を生き延び、成虫まで発達する。 無酸素中の低温処置 環境温度の低下は、成虫蝿が無酸素暴露を生き延び得る時間の長さを延長し得る。室温では、ストップフロー設定において15.5時間の無酸素暴露を生き延びた蝿は全く存在しなかったが、無酸素中に4℃に保った蝿の20%は回復した。同様に4℃の無酸素に遷移し、次に室温に移動して16.5時間の蝿は、全く生き延びなかった。しかしながら、16.5時間後、および40時間後でさえも、完全暴露中に4℃に保たれた蝿は、回復し、繁殖力を有した。無酸素環境確立前のCO2による前処置は、これらの実験において、顕著な相違を有さなかった。実施例8:中心体温の低下 ラットおよびマウスの両方において、H2SおよびCO2を使用すると代謝生産が低下し得ることが示され、これは低下した中心体温として示される。図20A〜図20Bは、H2SまたはCO2が最初に適用される時間0において、動物の中心体温の低下が開始することを示す。6時間後、H2SまたはCO2が除去された時、体温は正常に戻り始める。より大きい哺乳動物が、代謝に影響を与えるために、より多量のH2Sを必要とすることは明らかである。予言的実施例9:気体マトリクス 哺乳動物の代謝的柔軟性を制御する最も高い能力を提供する、特別に混合した雰囲気中の各気体成分の濃度を測定するために、以下の実験を実施し得る。気体は、酸素(O2)、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、およびヘリウム(He)を含有する。H2Sが、おそらく、ミトコンドリア内の酸素要求量を低下させる一方、CO2は酸素要求をさらに低下させ得る。加えて、低下した中心体温は、代謝の低下に必須であることが見出された。したがって、高い熱容量を有するヘリウムガスは、簡易で、かつ非侵襲的な冷却方法を提供し得る。さらに、100% O2を使用して、他の成分が全体の79.05%を占める任意の気体混合物中で、正常酸素圧20.95%酸素を維持することができる。そして最終的に、窒素を使用して混合物を100%にバランスさせる。 これらの実験では、ガスを単独で、および組み合わせにて、最初にマウス、次にラット、次に犬でアッセイする進歩的手法を記載する。この気体マトリクスによって、複数の変数を論理的順序で用いて研究する基礎を開発することを目的とする。図21に、実験の設計を示す。 気体マトリクスの特徴の一つは、実験が、前の実験(矢印により結合)が完了した場合のみ実施されることを明確にすることである。混合実験は、いずれの動物モデルにおいても、最初に気体成分を最適化することなく実施されない。さらに、気体または気体混合物は、最初に用量をマウスで最適化されていない場合、ラットおよび犬では使用しない。したがって、一種の気体から複数の気体混合物を用いた(右上から左下へ読む)、マウス〜ラット〜犬(左上から右下へ読む)の実験の進行を示す。マウスを常に最初に使用して、代謝的柔軟性を最高に制御する気体成分の濃度を決定する。マウスを用いて気体の最も有効な用量が決定されたら、同一の実験をラットにて実施する。同時に、マウスを用いて次の気体または気体混合物をアッセイする。ラットにて濃度が決定されたら、気体を犬にて試験する。下の表では、気体マトリクスを見る僅かに異なる方法を提供し、また実験の順序を規定する。手順1 二酸化炭素(CO2) マウス:15% CO2は、マウスにて代謝的柔軟性を制御することが見出された。しかしながら、本発明者等の混合能力の限界から、本発明者等はより高い濃度を試験できなかった。これは現在では真実ではなく、本発明者等はCO2濃度を80%まで試験できる。したがって、本発明者等は、15% CO2から開始し、5%増分で40%まで上昇した後、10%増分で80%まで上昇する。動物を6時間暴露する。375mlガラスチャンバーを用いてマウスを暴露し、該チャンバー内では動物は水を供給され、混合した気体雰囲気が速度500ミリリットル/分でチャンバー内に流れる。これらのチャンバーをインキュベーター内に収容して、周囲温度を制御し得る。この表は、本発明者等の高濃度CO2実験の構成を提供するが、効果をより深く理解するためには、更なる実験が必要であり得る。多数の実験にマウスを使用し得るが、本発明者は、週に1回を越える頻度で動物を使用しない。さらに、動物は、続く実験において、それら自身の対照として機能し得る。 代謝(O2消費および中心体温)ならびに活動を監視する。15% CO2において、1回換気量は増大するが、呼吸速度は不変のままである。マウスは、「あえぐ」ようには見えない。CO2濃度の増大は、麻酔効果を増大させるはずである。 これらの実験はインキュベーター内で実施されるため、本発明者は周囲温度を10℃に低下させて、中心体温と代謝生産との関係をアッセイすることができる。 ラット:3% CO2および21% O2でバランスした窒素環境を用いて、ラットでの試験を開始する。これは、吐き出されたCO2濃度であるため、炭酸正常状態として見なされる。本発明者等は、3%から2%の増分にて15%まで増大させる。この増大は、代謝において変化が見られるまでCO2濃度を増大させる、本発明者の単一ベースライン実験により行う。代謝は、O2消費および中心体温を測定することにより監視する。一つの実験に一匹のラットを使用してこの最小CO2用量を測定し得る。6時間のCO2暴露の効果をアッセイする続く実験において、一つのCO2用量につき一匹のラットを使用する(すなわち、実験中、レベルは変化しない)。ラットを多数の実験に使用し得る;ラットは週に1回を越えずに使用する。ラットが水を供給され、かつ予め混合された気体が速度3リットル/分で流される2800mlガラス容器を用いて、該動物を暴露する。この表は、ラットを用いた第一CO2実験の構成を示すが、効果を完全に研究するには他の構成も必要であり得る。 15%〜80%実験を、マウスを用いて行ったように進行させる(15%〜40%の間は5%増分、40%〜80%の間は10%増分)。代謝および挙動を監視する。ラットに関するCO2有効用量が決定したら、周囲温度を低下させて、H2Sを用いた場合と同様、低下した中心体温によりさらに代謝が低下するか否かを調べる。これらの実験を、実験の開始時および実験中に冷却し、実験の終了時に熱を提供するインキュベーター内で実施する。 ラットCO2試験の完了後、ラットがマウスと比較して、その代謝を低下させるためにより多量の(H2Sと同様に)、同量のまたはより少量のCO2を必要とするかが分かる。このキーとなる非比例的な傾向を理解することにより、犬の活性CO2用量に関するより良い仮説が提供される。 マウスおよびラットにおけるこれらの手順の停止地点は、O2消費の99%の低下、またはCO2生産の99%の低下である。 犬:犬に関する実験デザインは、ラットおよびマウスに使用したものと同一である(流速10リットル/分を使用)。実験は、実験は3% CO2を使用して開始し、生理学的応答が見られるまで増大させる。麻酔マスクを使用して、犬を、それらが暴露前にプレコンディショニングされた混合気体に暴露する。O2消費および中心体温を監視する。これらの実験に、同一の一匹または二匹の犬を使用し得る。手順2. 硫化水素および二酸化炭素(H2S+CO2) 本発明者等は、H2SとCO2を混合して2種の気体の相乗効果を模索する。すなわち、H2SとCO2を一緒に使用して、より高い濃度の1種の気体と同等に代謝を著しく低下させることができるかを試験する。第一の実験では、マウスを使用して、20ppm H2Sで、CO2を15% (または手順1にて決定すべき他の濃度)に漸増する。1匹の動物を使用し、H2Sを一定に保持する一方、CO2濃度を変化させる。第二の実験では、本発明者は40ppm H2Sを使用し、CO2を15%まで加える。第三の実験では、本発明者等は80ppm H2Sを使用し、CO2を15%に上昇させる。これらの各実験において、1匹の動物を使用し得る。O2消費、中心体温、および挙動を監視する。表に列挙した実験は、H2SH+CO2混合物の効果を調べる基礎を提供し、効果を理解するためには他の実験を必要とする。 有効な混合物が決定されたら、周囲温度を低下させ、最適な気体混合物が、より低い中心体温と相乗作用して、代謝速度をさらに低下させるか否かを調べる。これらの温度依存的な実験において、混合物中の気体濃度は変化しない。再度、1匹の動物を多数の実験に使用し得、動物当たりの実験手順は、週に1回を越えない。 同一の方法体系により、ラットおよび犬を使用した実験を実施する。ラットおよび犬に関するCO2濃度は、手順1にて最適化されるが、5%〜15%間であることが仮定される。犬に関して、高いH2S濃度は400ppmを越え得るが、未だ決定されていない。手順3 ヘリウム(He) ヘリウムは、有効な熱消散物質である;その熱伝導率は、窒素と比較して6倍高い。ヘリウムはラット、犬、およびヒトを含む多数の哺乳動物において、冷却の促進に使用されている。ヘリウムは無毒であり、安価で、取り扱いが容易である。酸素との80%/20%混合物(He-O2)で他が有する、呼吸による熱伝導率の向上に、ヘリウムを使用することが望ましい。代謝および挙動におけるHe-O2の効果を分析するために、5つの予備実験を提案する。広く使用されている標準的な80%〜20%混合物を使用する。本発明者等は、H2S、CO2およびHeを混合するプロトコル5で使用する最小He-O2混合物をより反映するために、60% Heを含有する混合物も試験する。 酸素消費、二酸化炭素生産、中心体温、および挙動を監視して、他が有すると同様の効果を、He-O2を使用して誘導し得ることを監視する。手順4:酸素(O2) 低下した酸素濃度が、中心体温を低下させ得ることは、GellhornおよびJanusにより1936年にモルモットを使用して示されている。これらの実験を、最初にマウス、次にラット、最後に犬にて再現して、低下したO2濃度が代謝を低下させるか否かを調べることが望ましい。 マウス:O2濃度を6%まで低下させて、マウスを暴露する実験を提案する。実験は5%増分にて進行する。O2消費、CO2生産、中心体温および挙動をアッセイする。過度の低酸素を示す痙攣が観察された場合、O2を21%に戻す。下の表に、O2実験の一般的な概略を示す。暴露時間は、内部に予め混合した気体を流した制御チャンバー(水を伴う)内で6時間である。低酸素プレコンディショニングの痕跡が存在するため、これらの4つの実験に4匹の別々の動物を使用する。 O2張力と代謝間の関係が決定されたら、実験を低温環境で反復することが重要であり得る。これらの実験は、インキュベーターの温度を10℃に低下させる以外は、以前の実験と全く同様に行う。 ラット:以前にマウスで実施したものと同一の実験を、ラットを用いて実施することが望ましい。過度の低酸素を示す痙攣が観察された場合、O2濃度を21%に戻す。 犬:マウスおよび/またはラットにおいて、低下した酸素張力と低下した代謝速度間に正の相関が観察された場合、犬を用いて同一の一連の実験を実施することが望ましい。手順5:硫化水素、二酸化炭素.ヘリウム、および酸素(H2S+CO2+He+O2) これらの実験は、気体マトリクスの目標であり;すなわち最も強力かつ可逆的な代謝制御を与える、最適化周囲温度と組み合わせたO2、CO2、H2SおよびHeの混合物を決定することである。したがって、以前の手順にて測定した個々の気体の濃度を土台として使用して、4種の気体の混合物をアッセイして、代謝的柔軟性を最良に制御する混合物を見出す。O2、CO2、およびH2Sを互いに関して変更すると共に、ヘリウムを用いて混合物をバランスする。以下に示すマウス実験では、CO2を変化させると共にO2およびH2Sを一定に保持し;ヘリウムを変更して一定の流れを維持する。本発明者等は、酸素消費および中心体温を含む、同一の代謝アッセイを用いる。複数の実験に、一匹の動物を使用し得る。マウスを6時間暴露する。次に、より低い周囲温度を用いてこれらの実験を繰り返し、低下した中心体温が、気体混合物を使用した代謝に影響する量を調べる。マウス: ラット:マウスに関する最適な気体混合物を調べた後、H2S濃度が100、200、および300ppmである以外は、マウスを使用して実施した実験と同一の実験を、ラットを使用して実施する。ラットを6時間処置する。 犬:犬を使用した実験は、マウスおよびラットを使用した実験と同一である。濃度を300ppmから開始して、測定すべき濃度に上昇させる。多数の実験に一匹の動物を使用し得るが、週に1回を越えない。マウスおよびラットは6時間処置し、犬は2時間処置する。予言的実施例10:ヒトにおける硫化水素用量の選択 硫化水素の気体剤形の吸引、または硫化水素溶液の静脈内投与を含むが、これらに限定されない任意数の剤形および投与経路により、硫化水素を動物またはヒトに投与して、スタシスを誘導し得る。スタシスを必要とする全生物をスタシスに誘導するに十分な硫化水素の剤形および投与経路の決定方法を記載する。試験生物(例えば、ラット、犬、豚、猿)を、大量瞬時投与、断続的投与、または連続的投与のいずれかで、増大する濃度の硫化水素に暴露し、中心体温、酸素消費、二酸化炭素生産、心拍数、血圧、呼吸速度、血液pH、動き、および覚醒状態を含むが、これらに限定されない生理学的状態を監視する一方、様々な時間点で血液サンプル(0.5mL)を採取する。X誘導体化、Y抽出、およびガスクロマトグラフィーおよび質量分析を使用した定量化を含むが、これらに限定されない当該技術分野にて公知の方法により、試験動物の血液由来の血漿中に存在する硫化水素の濃度を測定する。 試験動物における特定の投与計画により発生した硫化水素の安定状態血漿濃度と、スタシスの達成との、試験動物における様々な程度の相関は、試験動物にスタシスを誘導するに十分な硫化水素の有効用量を定義する。スタシスを必要とするヒトにスタシスを誘導する有効用量は、硫化水素の用量、投与経路、および投与計画を同定することにより決定され、該投与計画は、鬱血が誘導される条件下で、試験動物にて達成されるものと同一の硫化水素の安定状態血漿濃度を、人で達成する。ヒトでスタシスを達成する硫化水素の有効濃度は、剤形および投与経路に依存する。吸入の場合、いくつかの実施態様において、有効濃度は、連続して送達されて50ppm〜500ppmの範囲内である。静脈内投与に関しては、数個の実施態様において、有効濃度は連続して送達されて体重1キログラム当たり0.5〜50ミリグラムである。 各場合の範囲は、硫化水素の用量の増大により達成されるスタシスの程度の増大により特徴付けられる。院外心不全に罹患し、また心拍の蘇生と回復により無意識のヒトの中心体温を3〜5℃程度低下させて32〜34℃にした、持続的な12〜24時間の低下をもたらすに十分な硫化水素の用量は、Bernardら 2002に記載されているように、硫化水素に暴露されていない同様の人と比較して、生存に関する優位な利点が予測される。実施例11:動物の前処置試験 実施例7に示した試験は、H2Sによる雄C57B1/6マウスの前処置および連続的な処置が、5%酸素または4%酸素の低酸素条件下で生存する能力を向上させ得ることを示した。 低酸素条件下での生存能に関するH2S前処置単独の効果を測定するために(低酸素中の連続的なH2S暴露を行わず)、マウスを、5% O2 (5%)、4% O2 (4%)、1時間5% O2の次に4% O2 (4%+1時間5%)、または1時間5% O2の次に3% O2 (3%+1時間5%)に暴露する前に、室内空気(PT無し)に30分間、または室内空気10分間の次に室内空気(PT)中150ppm H2Sに20分間のいずれかに暴露し、その生存時間を測定した。実験は60分間で停止し、なお生存する動物を、それらのケージに戻した。図23に示すように、室内空気中150ppm H2Sに20分間予め暴露した動物集団中の全マウスは、続く5% O2への暴露を生き延びたが、一方、室内空気単独に暴露した全対照動物は、5% O2に暴露した15分間以内に死亡した。したがって、マウスをH2Sへ予め暴露することは、さもなくば致死的な低酸素における生存を延長させる、マウスの生理学的状態を確立する。H2S前処置マウスに観察された保護は、5% O2中での生存能が2倍のみ延長した(Zhang et al. 2004)、文献に報告されている全身低酸素プレコンディショニングの公知の保護効果を遙かに越える。図23に示していないが、数匹のH2S前処置マウスは、5% O2中で4時間を越えて生き延びることでき、動きまたは挙動に顕著な欠陥を有さずに回復できた。 H2S前処置がさらにより低い酸素張力に対する生存能を向上させることを測定するために、マウスをより低いO2濃度に暴露した。図24に示すように、H2S前処置は、5% O2の存在下、生存率を多大に向上させる。対照的に、H2S前処置は、4% O2の存在下、生存率を僅かに増加したのみであった。しかしながら、H2S前処置したマウスが段階的に低下するO2レベルに暴露された場合、例えば最初に前処置した後、5% O2に1時間暴露し、次に4% O2または3% O2のいずれかに暴露した場合、マウスの生存時間は、H2S前処置に続いて5% O2に暴露した場合に観察されたものと同じレベルに延長した(図28)。したがって、H2Sに前暴露することにより、80%を越える酸素張力の段階的な低下(21%正常酸素圧が3% O2に低下)を生き延び得る生理学的状態が確立される。さらに、数個の実験において、H2S前処置後の酸素張力の段階的な低下により、マウスが2.5%もの低い酸素張力を1時間生き延び得ることが示された。 これらのおよび実施例7で示したデータは、H2Sに対する暴露が、さもなくば致死的な低酸素中での生存が非常に向上される薬理作用を有することを示す。この文脈において、H2Sの薬理作用は、当業者が、致死的低酸素に対する最適な生存能を達成するよう変更することができるパラメータである、H2Sの用量レベルおよび暴露の持続時間に依存する。当業者は、哺乳動物において、投与経路(例、吸入対非経口投与)もまた、致死的低酸素に対する耐性の所望の効果を達成するよう変更し得ることを理解するであろう。加えて、薬理作用は、H2S暴露が前処置に限定され、または低酸素期間内に延長された場合のいずれにおいても観察し得る。同様に、致死的低酸素の開始に関するH2Sへの暴露のタイミングは、生存能の向上を最大にするために変更し得る。これらのデータは、活性化合物、例えば酸素アンタゴニストを用いた前処置の結果としての酸素要求の低下が、さもなくば動物に致命的である低下した酸素供給で生存することを可能にする仮説と一致する。 H2S処置により得られた、致死的低酸素に対する生存能向上の開始時に生じる代謝の変化を特徴付けるために、H2Sへの暴露中と、その後のH2S処置終了に続く5% O2に対する暴露中の、マウスによるCO2生産を測定した。図25に、CO2生産の変化を示す。5% O2または4% O2のいずれかへの移行によるCO2生産の変化は、室内空気に30分間(PT無し)または室内空気に10分間のいずれか暴露した後、150ppm H2Sに20分間(PT)暴露したマウスで測定した。加えて、5% O2への段階的な移行にて1時間と、続く4% O2におけるCO2生産の変化を測定した。これらの実験の結果を、図29に提供する。 CO2生産は、H2S前処置の最初の5〜10分間で約2〜3倍低下し、室内空気中150ppm H2Sによる20分間前処置中に、マウスにスタシスが誘導されたことが示唆される。しかしながら、動物のO2消費および中心体温は、H2S前処置(データは示さず)中有意に変化せず、H2S暴露中に、マウスに致死的低酸素に対する生存能を向上させるスタシス以外の生理学的状態が確立し得ることが示唆される。そのような状態は、スタシスに定義された大きさ未満の、生物物質の代謝の低下の大きさにより特徴付けられ得る。活性化合物を用いてスタシスを達成するために、生物物体は、生物物体における酸素消費およびCO2生産が2倍未満に低下される、段階的代謝低下状態を遷移する必要がある。代謝または細胞呼吸が活性化合物により2倍未満の程度に低下されるこのような連続体は、「プレスタシス」の状態として説明される。図25に示すH2S前処置終了後のCO2生産と、致死的低酸素誘導の連続的監視は、CO2生産の約50倍の低下を示し、致死的低酸素に対する暴露中に、スタシスが達成されていることが示される。致死的低酸素に対する暴露中のマウスの付随するO2消費の低下および運動性の強い源弱は、致死的低酸素に対する暴露中に、続いてスタシスが達成されていることの観察をさらに支持する。 H2S前処置後の、または前処置を行わない後の、5% O2または4% O2のいずれかの低酸素条件への移行に関連したCO2生産の変化を測定した。図28に示すように、H2S前処置の不在下で5% O2に暴露した、またはH2S前処置の存在下で4% O2に暴露したマウスは、CO2生産が実質的に低下した。対照的に、H2S前処置し、続いて5% O2、または5% O2それに続く4% O2のいずれかに暴露したマウスは、H2S前処置後の新たなベースラインレベルと比較して、CO2生産の有意な変化を全く示さなかった。これらの結果は、代謝活性の低下と、H2S前処置の不在下での5% O2への暴露またはH2S前処置した4% O2への暴露に関連した死との間の相関を示す。加えて、これらのデータは、H2S前処置後の5% O2、または5% O2から4% O2への段階的な低下への暴露が、代謝活性の更なる低下を誘導しないことを示す。これらの結果を纏めると、正常酸素圧から致死的低酸素への移行により生じるCO2発生の低下は、H2Sで前処置したマウスにおいて鈍化された。正常酸素圧から致死的低酸素への移行により、CO2発生は40%低下するが、しかしH2Sによる前処置は、それ自体がCO2発生の新たな、より低いベースラインへの50〜60%の低下をもたらす一方で、致死的低酸素への移行におけるCO2発生の任意の更なる低下を全く防止した。これらのデータは、H2S前処置単独が、一般的に致死的低酸素への移行に関連した代謝活性の更なる低下を防止し、それによって低酸素条件下での生存率を向上させることを示す。加えて、これらのデータは、生物物体を活性化合物に予め暴露することが、生存能の向上に十分であり、および/または外傷または疾病発作からの損傷を低下させるというモデルを支持する。実施例12:セレン化水素は、低濃度でマウスの中心体温を低下させる 以前に文献にて、1ppmを越えるH2Seが動物に致死的であることが報告されている。H2SeをH2Sよりもさらに低い濃度で使用した以外は、実施例4に記載した材料および方法に従って実験を実施した。使用したH2Seの原料タンクからの最初の濃度は、窒素中20ppmであり、次いでこれを室内空気で約10または100十億分率(ppb)に希釈した。次に、動物をこの混合物に暴露した。 2匹のマウスを100ppb H2Seに10分間未満暴露した。図26に、1匹のマウスの呼吸により示された中心体温の低下および代謝活性の3倍の低下を示す。 H2Seの濃度を、さらに10ppbに低下させた。H2Se 10ppbに暴露したマウスも、中心体温および呼吸の低下を体験した(図27)。 さらに、H2Seの効果は、H2Sによる可逆性評価に用いた試験(Blackstone et al., 2005、参照により本明細書に組み入れられる)に基づき、完全に可逆的であるように思われる。実施例13:硫化水素は、致命的出血から保護する 実施例7および実施例11に示す試験は、硫化水素(H2S)によるマウスの処置が、5%酸素または4%酸素の低酸素条件下で生存能を向上させることを示した。H2S処置が、虚血性低酸素症により臨床的に関連した急性損傷モデルに関する罹患率および/または組織損傷の低下にも使用し得ることを測定するために、組織への酸素供給を低下させて死に至らせる、制御された致死的出血(Blackstone et al., 2005)中に、ラットをH2Sで処置した。この試験において、H2Sで処置されたラットは、致死的血液損失を生き延び、完全に回復した。 制御された致死的出血(60%血液損失)中に、ラットをH2Sで処置した。カテーテルの外科的移植および回復後、意識のある動物から40分間血液を除去した。出血の開始から12分間後(すなわち、30%血液損失後)、室内空気と混合した少量(300ppm)のH2Sを処置動物に投与した。出血の終わりに、H2Sを含まない室内空気に動物を戻した。出血の終わりから3時間後、生存する動物に、出血血液の1容積の乳糖リンゲル液を静脈投与した。 H2S処置ラットの殆ど(6/7)が出血および3時間のショック期間を生き延び、完全に回復した(表7)。これらの生存したラットのいずれも、回復後に挙動的または機能的欠陥を示さなかった。H2S処置動物の1匹は、出血の終了から174分後に死亡した。未処置動物の全部が、出血の終了から82分後に死亡した;未処置動物の平均生存時間は、35+/-26分間であった。両側Fisher抽出T試験を用いて、p値は0.0047であった。 出血の最初の20分間において(30%血液損失前)、ラットは、血液損失による低下した酸素運搬能力を補うために呼吸速度および1回呼吸量を増大させた。この呼吸の増大は、呼吸性二酸化炭素生産(VCO2)を低下させた(表7)。60%血液損失後、H2S処置および未処置動物の両方が、VCO2の低下を示した。動脈血乳酸が増大する一方、pCO2、重炭酸([HCO3-])、pH、および塩基過剰が低下した(表7)。したがって、出血は、呼吸代償を伴う代謝性アシドーシスをもたらした。しかしながら、H2S処置ラットでは、これらの変化の大きさが小さく、代謝性アシドーシスの低下を示している。さらに、H2S処置動物では、出血後、VCO2の低下は継続しなかった。未処置動物では、VCO2は、動物が呼吸を停止するまで、着実に低下した。H2S投与は、死への進行の際のショック応答を防止するように思われる。 (表7) H2Sを用いたラット出血モデルの生存および生理機能実施例14:出血中の硫化水素への短時間暴露の利点 体重275〜350グラムの雄のSprague Dawleyラットを、各実験の1週間前に、Charles River Laboratoriesから購入し、順応させた。実験の日、カテーテルを、右大腿動脈および静脈に外科的に移植した。カテーテルを肩甲骨の後部から退出させた。手術後、ラットにブプレノルフィンを投与し、回復させた。 抗凝血剤ヘパリン(80〜100単位)をボーラスとして静脈投与し、血液の凝固能力を低下させ、出血を高めた。ヘパリン投与後、意識のある拘束されていないラットを個別に、ガラス蓋を有する2.75リットル結晶皿内に配置した。カテーテル、温度プローブ、および気体試料採取管を、蓋の中央に開けた孔に通過させた。温度を約等温に維持した(27+/-2℃)。 出血モデルを、40分間の出血による全身の血液の60%の除去により定義した。血液は蠕動ポンプを用いて除去した。全身血液の60%を占める血液の量を測定するために、ラットを計量して、以下の方程式により血液の容積を計算した。(0.06×体重) + 0.77 (Lee et al., (1985)。 処置グループは、加熱流量コントローラーにより投与される、硫化水素を含む室内空気(試験動物)、または窒素を含む室内空気(対照動物)のいずれかに、速度3リットル/分にて暴露された(Sierra Instruments)。 処置のために、硫化水素(H2S) (20,000ppm、窒素でバランスした)(Byrne Specialty Gas)を室内空気中で濃度2000ppmに希釈した。大腿動脈カテーテルを介して、血液を計算された速度で除去した。血液を除去しながら計量した。20分後(または、40分間出血の50%)、試験動物を、2000ppm硫化水素を含有する室内空気に暴露した。動物が無呼吸およびジストニアを示した際に、暴露を終了した。硫化水素(H2S)に対する暴露時間の平均は、一般に1〜2分間であった。チャンバー内の最高H2S濃度は、1000〜1500ppmと概算された。無呼吸およびジストニアが観察された場合、動物は室内空気の暴露を受けた。暴露により試験動物は20〜30秒以内に通常の呼吸パターンを再開した。対照動物は、試験動物と同一速度で出血したが、硫化水素による処置を受けなかった。対照動物は、実験中に無呼吸またはジストニアを示さなかった。 CO2生産を測定することにより、代謝速度を測定した(Licor Li7000)。温度およびCO2データを収集した(ADI PowerLab)。動脈血の値を測定した(I-Stat blood chemistry analyzer)。出血後、動物をケージ内に3時間配置して、観察した。3時間の終わりに、生存するラットに乳酸リンゲル液を自由に与えた。非生存動物に関して、動物が呼吸を停止し、CO2生産が停止された時に、死亡時間を宣言した。蘇生後、ラットを食物および水を備えた清潔なケージ内に移動し、30℃で約16時間収容した。手術によりカテーテルを除去して、動物をコロニーに再度移動する前に、30℃で数時間回復させた。SHIRPAプロトコルに記載されている一連の試験から、挙動および機能的試験を選択した(Rogers et al., 1997)。 これらの実験において、出血中に硫化水素(H2S)で処置した動物8匹中7匹(88%)が、出血を生き延びた。3時間の観察期間中に、処置を受けなかった2匹の対照動物が死亡した。実施例15:実施例2からの更なる結果 上記の実施例2に論じたように、ヒトの包皮を使用して一酸化炭素中での細胞および組織の維持を評価した。最終的に、合計で8つのヒト包皮を評価した(実施例2では、3つに関して報告)。トリパンブルーを使用して、生存ケラチノサイトの数を評価した(表8および図30)。これは、一酸化炭素暴露が、細胞数を増加させたことを示した。 (表8) トリパンブルー(tb)染色を用いて、室内空気(RA)またはCOのいずれかに24時間暴露した包皮から単離したケラチノサイトの生存率を試験した。実施例16:低レベルの長期H2S暴露は、生存率を向上させる 実施例1に記載した方法および装置を使用して、シノラブディス・エレガンス線虫を低いレベルのH2S (<100ppm)に暴露した。この処置を適用した線虫は、寿命の延長と熱ストレスに対する耐性を示したが、スタシスの誘導と同様、代謝活性における識別可能な低下は存在しない。 線虫では、好気的代謝ができないことが(周囲酸素濃度の低下またはCOの追加による)仮死状態またはスタシスを誘導した(実施例1参照)。しかしながら、仮死状態は、ハウス内の空気中の<100ppm H2Sの暴露により誘導されなかった。100ppmを越える用量で、H2Sは暴露した線虫の集団の相当の致死率をもたらし得る。興味深いことに、虫の大部分がH2Sで殺滅される条件においても、生存した虫は正常に見え、明らかに作用物質により害されていない。約50ppm H2S中で成長した虫は、胚形成を完成し、性的成熟を発現し、H2Sを含まない環境内で生育した兄弟と同一の速度で子孫を産み出す。対照的に、代謝速度が低下された酸素濃度(3.5% O2未満)では、これらの全過程が遅延する。さらに、H2S中で生育した虫は、ハウス内の空気中で対照と同一数の子孫を産み出し、これらの条件からの有害な効果は存在しないことを示唆する。これらのデータは、H2Sがこれらの条件下でシノラブディス・エレガンスの代謝活性を低下させないことを示す。 H2S中で成長した線虫は、ハウス内空気のみの中の年齢一致対照と比較して、熱ストレスに対してより耐性である(図31)。このアッセイでは、50ppm H2S中で生育した虫を高温でH2Sに暴露し、ハウス内の空気中で生育した虫は、ハウス内の空気に暴露した。したがって、H2S誘導によるストレスに対する耐性は、代謝活性の低下と相関しない。しかしながら、この熱ストレスに対する耐性は、線虫のH2S環境への適応を必要とする。ハウス内の空気中で生育し、H2S中で熱ストレスに暴露した虫は、それらをハウス内の空気に暴露した場合よりも急速に死亡する。H2S中で生育し、ハウス内の空気中で熱ストレスに暴露された虫が、ハウス内の空気中で生育した対照と比較してより生存率が高い限りは、H2Sへの適応は持続される。加えて、無毒の低濃度H2S (例えば、50ppm)に適応した虫は、未適応の虫の致死的である、より高濃度のH2Sに耐性であった。 これらのデータは、H2Sに一時的に暴露した蝿が、その後、未処置対照と比較して無酸素を生き延びる能力が高いデータと一致する(例えば、実施例7および実施例11)。熱ストレス(虫における)および無酸素ストレス(蝿における)に対する保護は、臨床的に遭遇し得る様々な不都合な状況またはストレス状況下での生存能をH2Sが増大させる可能性があり得ることを示唆する。 50ppm H2Sに適応した虫はまた、同系の未処置対照と比較して長い寿命を有する(図32)。このことは、これらの虫が、加齢に関連した様々なストレスに対してより耐性の状況下にあるという考えと一致する。事実、H2S中で成長した年長の虫は、H2Sで処置されていない同様の年齢の虫と比較してより活気があり健康に見える。よりさらに、虫を各集団と寿命の中間点にて比較した場合(すなわち、ハウス内の空気の対照およびH2S処置虫は、年代順に年齢が一致しないが、各集団の50%が死亡した時点)でも、真実である。したがって、H2Sへの適応は、シノラブディス・エレガンスにおいて加齢に関連した慢性細胞損傷を遅延させ得る。実施例17:気体マトリクス実験の実施 マウスラットおよび犬において、変化する気体環境を用いて代謝柔軟性を評価した。呼吸計測により測定した二酸化炭素生産、酸素消費、および遠隔測定法で測定した中心体温の変化を含む3つのパラメータを使用して、この代謝における低下を定義した。マウスおよびラットを用いた実験では、一つの気体注入口および一つの気体排出口を備えた密閉チャンバー内に、動物を配置した。犬に関して、取り付けた2個の(注入および排出)ホースを有するマスクを、動物の鼻上に配置した。各動物に関する気体の流速は、マウスで500cc/分、ラットで2リットル/分、および犬で40リットル/分であった。別に記さない限り、室内空気中で圧縮気体を希釈することにより各雰囲気を構成した。ラットおよびマウス実験に関して、試験気体に暴露中の周囲温度は、7〜10℃であった。犬に関して、周囲温度は、室温(22℃)であった。 (表9) マウス、ラットおよび犬において代謝的柔軟性を試験するために構成した気体環境の記載。 表9は、別に記さない限り、室内空気雰囲気の百分率で表される各気体の量を示す。6時間処置中の二酸化炭素生産または酸素消費で判断される、5倍を越える代謝速度における低下の証拠は、「Yes」;「No」で記載する(低下またはこれらの値における5倍未満の低下は、このように記載する;「N/D」は、実施されていない実験を示す。犬実験における温度低下(二酸化炭素+低酸素+ヘリウム)は、30分間の暴露中、約1.5℃であった。この温度の低下は、犬が12kgであり、室内空気中の動物の広範なベースライン記録中にそのような温度低下は見られなかった為、有意であると考えられた。 様々な構成雰囲気中に暴露した動物は、周囲温度に接近する中心体温(CBT)の変化によって示されるように、代謝的柔軟性を示した(図33〜図40)。図33に、15% CO2、8% O2、および77% Heを含有する雰囲気に暴露したラットは、同様の条件下で300ppm H2Sに暴露したラットと比較して加速された代謝の低下を有することを示す。図34に、H2Se 1.2ppmに暴露したマウスのCBTの有意な低下を示す。10℃の周囲温度の室内空気に暴露したラットは、7℃の80% He、20% O2に暴露したラットと同様、CBT (図35)にて有意な低下を示さなかった(図36)。7℃の周囲温度の15% CO2、20% O2、65% Heの雰囲気に暴露したラットは、CBTにて有意な低下を示した(図37)。同様に、図38は、7℃の15% CO2、8% O2、77% He雰囲気に暴露したラットにおけるCBTの有意な低下を示す。CBTの有意な低下は、9% CO2、20% O2、71% Heの雰囲気に暴露した犬でも示された(図39)。低下の大きさがより低いが、これはおそらく、動物がより大きいことと、熱分散の限界とを原因とする。異なる濃度のCO2に暴露した犬において、同様の低下が見られた。実施例18:化合物のスクリーニング 化合物スクリーニングを実施して、マウスの皮下温度を可逆的に低下させることができる試験化合物を同定した。次に、同定した試験化合物を、致死的低酸素に対する保護を提供する能力に関して試験した(典型的な環境21% O2に対して、窒素でバランスした4% O2環境で測定)。スクリーニングの全手順は、3つのステップを含んでいた。 1) 試験マウスの皮下温度を測定可能に低下させる、試験化合物の最小有効用量を決定する第一の(1°)スクリーニング; 2) 処置から24時間に正常挙動を有し、24時間またはそれ未満で正常皮下温度に戻った試験マウスにより定義される、温度低下の可逆性を測定する第二の(2°)スクリーニング; 3) 同一の低酸素条件下の未処置対照対象と比較した、致死的低酸素(4% O2)を生き延びる試験マウスの能力を評価する第三の(3°)スクリーニング。 これらの試験に使用したマウスは、皮下RFID温度センサ(IPTT-300, Bio Medic Data Systems, Inc. (BMDS))を背側に移植した5〜6週齢の(Taconic)雄C57BL/6頸静脈カテーテル処置(JVC)マウスであり、少なくとも24時間回復させた。マウスに留置カテーテルを介して、1または5ml Luer-Lok注射器(Becton Dickinson)および注入ポンプ(Harvard Apparatus)を用いて試験化合物を注入して投与した。BMDS製のDAS-6008データ獲得モジュールがトランスポンダを介してマウスの皮下温度を記録し、このデータをコンピュータのスプレッドシート内にインプットして、時間に対してプロットした。第一(1°)のスクリーニング: 第一のスクリーニングのために、最適濃度と考慮される濃度に作製した試験化合物を注入した。NaOHまたはHClでpHを6〜8に調整し、塩化ナトリウムで浸透圧を250〜350mOsmに調整し、試験対象の体重(kgで表す)で割った、投与するべき試験化合物の総用量(mgで表す)は、マウスにおいて、その公開されたmg/kg LD50の400%を越えなかった。 不透明壁を有する高いガラス底広口瓶内にマウスを配置し、頸静脈を介して注入した。ステッププロトコルを用いて、注入速度を2時間に亘り上昇させながら、試験化合物を注入した(表10)。 (表10) 試験化合物注入ステッププロトコル 注入中、マウス皮下温度を3〜5分毎に読み取り、マウス挙動における任意の変化を記録した。第一スクリーニングの結果は、試験化合物が皮下温度を33℃またはそれ未満に低下させる能力を有するか否かを明らかにし、また安定な温度低下が最初に観察された試験化合物の注入速度により測定した、皮下温度の低下に必要な有効用量を示した。第二の(2°)スクリーニング: 第二のスクリーニングにおいて、マウス皮下温度を33℃またはそれ未満に低下させる試験化合物を試験した。第二のスクリーニングでは、第一スクリーニングで測定した有効な注入速度の50%の速度で、マウスに試験化合物を60分間注入した。注入中、マウスの皮下温度を3〜5分毎に測定して監視した。皮下温度が最初の60分間に低下しない場合、注入速度を2倍にして、さらに60分間継続した。マウス皮下温度が33℃またはそれ未満に低下したら、注入を直ちに停止し、マウスの回復を、皮下温度の測定と挙動の観察により評価した。処置から24時間後に、マウスの体温と挙動を観察し、記録した。第二スクリーニングの結果は、試験化合物が、致死性を伴わずに、皮下温度を可逆的に低下させるか否かを決定した。 第三の/致死的低酸素(3°)スクリーニング: 第三のスクリーニングにおいて、第二のスクリーニングで決定した速度で、マウスに試験化合物を注入した。第二のスクリーニングと同様に、マウス皮下温度が33℃に低下するまで、3〜5分毎に測定した。注入を停止し、ビヒクル(塩溶液、148mM、浸透圧 = 300)を注入したかまたは未処置のいずれかである対照マウスと共に、マウスを直ちに低酸素チャンバーに移動した(4% O2)。閉鎖したガラスチャンバーに、空気および窒素を連続的な流れで分散して、4% O2の所望の低酸素雰囲気を達成した。マウスが低酸素雰囲気中で60分間生存した場合、室内空気中に再び移動し、皮下温度を記録しかつ挙動を監視することにより、その回復を24時間監視した。 対照マウスは、一般に、6〜15分間以内に死亡した。 硫化ナトリウム(有効用量0.79mmol/kg)、ナトリウムチオメトキシド(有効用量4.61mmol/kg)、またはチオシアン酸ナトリウム(有効用量4.67mmol/kg)のいずれかを注入したマウスは、致死的低酸素に対する暴露を60分間生き延びた。システアミン(有効用量7.58mmol/kg)を注入したマウスは、致死的低酸素に対する暴露を45分間生き延びた;システアミン-S-リン酸ナトリウム塩を注入したマウスは、致死的低酸素に対する暴露を31分間生き延びた;また、テトラヒドロチオピラン-4-オールを注入したマウスは、致死的低酸素に対する暴露を15分間生き延びた。これらの生存率を、一般に低酸素環境内で6〜15分間以内に死亡する対照マウスの生存率と比較する。 これと比較して、体温をより低くする能力を有する、第一のスクリーニングで同定した所定の他の試験化合物は、致死的低酸素から保護しなかった。チオ酢酸、セレノウレア、およびホスホロチオ酸S-(2-((3-アミノプロピル)アミノ)エチル)エステルは、全て体温を低下させたが、低酸素内での生存率を向上させなかった。2-メルカプト-エタノール、チオグリコール酸、および2-メルカプトエチルエーテルは、全て体温を低下させたが、有効な温度低下用量にて有毒であった。チオウレア、ジメチルフルフィド、セレン化ナトリウム、メタンスルフィン酸ナトリウム、N-アセチル-L-システインは、この試験で提供された最大用量にて、皮下温度を低下させなかった。ジメチルスルホキシドは、有効用量(10% DMSO)が、医薬目的のためには高すぎるため除外された。 これらの試験は、開発したスクリーニング手順が、致死的低酸素に供された動物を保護可能な化合物の同定に首尾良く使用できることを確立する。加えて、この試験の結果は、同定した化合物、およびこの手順を使用して同定するべき他の化合物が、低酸素および虚血性損傷の結果である損傷から患者を保護する際に使用し得ることを示す。実施例19:活性化合物に対する連日暴露 硫化水素(H2S)を用いたより長時間の処置に対して生理学的に適応する能力と、適応に必要な時間とを、マウスにおいて試験した。適応は、動物を長時間処置にて室内空気中80ppm硫化水素に暴露した際の、中心体温の低下の不成功(4℃を越える)として定義した。長時間の処置は、室内空気中の80ppm硫化水素に対する1日4時間、1週間に4日、6週間の暴露として定義する。 これらの試験に使用したマウスは、5〜6週齢の雄C57BL/6マウスまたは雄C129マウスであった。実験の前に、マウスの体腔内に遠隔測定装置を移植して、中心体温を記録した。 各マウスのための別個のチャンバーを伴う1個のプレキシガラスボックス内で、マウス(処置毎に8匹)を10リットル/分の流速の硫化水素に暴露した。500ccガラスボウル内の動物の二酸化炭素生産および酸素消費の検出は、0.5リットル/分の流速を有した。 マウスは、平均1週間で硫化水素暴露に適応した。適応は、動物を室内空気中80ppm硫化水素に4時間暴露した際に中心体温の低下を示さない(4℃を越える)こととして定義した。中心体温の低下を示さなかったマウスは、硫化水素に対する生理学的適応を有するとものと見なされた。適応を発現した、硫化水素で処置したマウスは、未処置対照マウスと比較した際に、二酸化炭素生産(vCO2)と比較して酸素消費(vO2)の増大を示した(図42)。H2Sに適応したマウスは、vCO2/vO2の比として定義される、すなわち生産された二酸化炭素と消費された酸素の比較である呼吸商(RQ比)がより低かった(図43)。実施例20:サラセミアへの適用 本明細書に示した他のモデル系における現在の結果に基づき、血液疾患、サラセミアを有する動物の赤血球を硫化物で処置すると、赤血球の生存の延長に繋がる、酸化的損傷に耐える向上した能力を有するようになることが期待された。活性化合物による処置がサラセミアの動物を酸化損傷から保護し得ることを確認するために、以下の実験を実施する。 最初の一連の実験では、サラセミアの動物を、活性化合物の長期暴露により処置する。ベースラインを確立する最初の試験後、以下にまとめるプロトコルに従って処置を開始する。赤血球新生または赤血球生存が改善された場合、サラセミアの赤血球の半減期は4〜7日と見積もられるため、効果は1〜2週目の早期に観察され得る。本発明者等は、2週目に塗抹を再考し、網状赤血球数を獲得し、その後さらに2週間、より広範な試験を開始する。網状赤血球数および血液塗抹の改善により同定して、マウスにて赤血球の改善が測定された場合、月毎の試験に使用する測定基準にプラトーが観察されるまで、試験を継続する。この試験は、1年の最終地点まで計画されている。1年後に、赤血球生存試験が完了し、動物を犠牲にする。改善が見られない場合、さらに1年間暴露を継続し、生存試験を完了して、動物を犠牲にする。プロトコル1: 1) 動物は最初の試験を受ける。 2) 最初の試験後1週間以内に、動物を同等に収容し:および以下のいずれか: A) 80ppm H2Sに8時間/日暴露する; B) 暴露しない;または C) 0.25%ジメチル硫化物(DMSO)を含む水を与え、自由に飲ませる(以前の試験から概算して、マウスは2.5〜25マイクログラム/日DMSOを含有する5〜10cc/日を一匹当たり消費することが示唆される。マウス当たり平均体重18gを用いて、消費を700〜1,400ug/kg/日と概算する)。 第二の一連の実験において、以下にまとめるプロトコルに従い、活性化合物を用いた子宮内処置の効果を測定する。プロトコル2: 1) プラグドダム(Plugged dam)を受胎の3日後に、以下のグループの一つにて処置する: A) 80ppm H2Sに8時間/日暴露する; B) 暴露しない;または C) 0.25%硫化ジメチル(DMSO)を含む水を与え、自由に飲ませる(以前の試験から概算して、マウスは2.5〜25マイクログラム/日DMSOを含有する5〜10cc/日を一匹当たり消費することが示唆される。マウス当たり平均体重18gを用いて、消費を700〜1,400ug/kg/日と概算する)。 2) プラグドダムを自然にて出産させ、子の遺伝子型を同定し、詳細な分析のために生後直ちに犠牲にする。 これらの試験中、以下に示すように試験動物を監視する。監視: 1)最初の試験: 1. 網状赤血球数; 2. 血液飛沫; 3. 脾臓および骨のコンピュータ断層撮影(CTスキャン); 4. O2消費およびCO2生産; 5. 体重; 6. 硫化物代謝産物、および 7. ヘマトクリット(全血液60μl)。 2) 2週目:網状赤血球数および血液塗抹(血液5μl)。 3) 月毎の試験: 1. 網状赤血球数; 2. 脾臓および骨のCT; 3. O2消費およびCO2生産; 4. 体重;ならびに 5. 硫化物代謝産物(採取する血液は、30μl未満)。 4) 犠牲の1ヶ月前:赤血球生存試験。 5) 犠牲およびインビトロでの詳細な分析。実施例21:鎌状赤血球貧血への適用 この仮説を試験するために、マウスHbaおよびHbbをもはや発現しないが、ヒトHBAおよびHBBを発現するように操作された株の鎌状赤血球疾患(SCD)マウスモデルを使用する(Patsy, et al, 1997)。これは、不可逆的に鎌状となった赤血球、貧血および多臓器病変を含む、鎌状赤血球貧血に罹患したヒトに見出される血液学的および組織病理学的特性を模倣する。鎌状赤血球マウスの有意な割合が、成人マウスへ生き延びない。 このマウスモデルを用いて、様々な薬剤および硫化物含有化合物のSCDに対する効力を試験する。暴露は、短期および長期であり、動物を出生時または子宮内のいずれかにて暴露する。子宮内暴露した子に関する出生時の生存率、または成人マウスへの生存率は、効力の一つの終点である。網状赤血球数、ヘマトクリットおよび赤血球(RBC)半減期測定(SCD野生型対照と比較して、通常20倍低い)により、表現型的な効果を評価する。実施例21:シアン化物暴露実験 この実施例では、マウスが室内空気中の80ppmのシアン化物に暴露された際に、その中心体温が徐々に約34℃に低下することを示す。 これらの代謝的柔軟性の試験の目的の一つは、酸素消費を低下させ、動物を低酸素損傷から保護し得る化合物の同定である。以前、酸素消費の強力な阻害剤である硫化水素(H2S)が、代謝を低下させ、マウスおよびラットを低酸素損傷から保護し得ることが示された。シアン水素(HCN)は、多数の点においてH2Sと類似し、本発明者等は、本発明者等の代謝生産のアッセイに使用して、これが代謝の調整に使用し得るか否かを調べることを所望する。H2Sと同様、HCNは、工業的化学合成にて広く使用され、またヒトを含む多数の生物系に見出される。HCNが炭素-窒素代謝の単なる副産物であるか、または特定の生物活性を有するかは公知でない。H2Sと同様、HCNは、例えばオキシダーゼおよびデヒドロゲナーゼのように、遷移金属含有タンパク質と反応することによって作用すると考えられている。HCNは、ヘモグロビンの成分との強力な反応性を有さない。 ヒトにおいて、NIOSH IDLH値(直ちに生命および健康に危険な)は、50ppmである。OSHA PEL (許容可能な暴露限界) TWA (8時間の時間重み付け平均)は、10ppmである。ラットに関するLC50は、60分間で143ppmである。 HCNの代謝作用を測定するために、マウスを1ppmから開始して、増大する濃度のHCNに暴露した。酸素(O2)消費、二酸化炭素(CO2)生産、中心体温(BCT)および挙動を測定または評価した。代謝上の効果が観察されるまで、または動物が苦痛の徴候を示すまで、HCNの濃度を10ppm増分にて増大させた。代謝作用は、上述した任意のアッセイ値の、10分間未満における10%変化として定義する。 マウスを室温で室内空気中の80ppmシアン化物に暴露すると、その中心体温が約34℃に徐々に低下することが見出された。これは、中心体温が約28℃に低下した、80ppm硫化水素で見られた低下とは異なる。加えて、硫化水素と比較して(約2時間)、シアン化物に暴露したマウスの体温の回復は非常に遅かった(約14時間)。 中心体温により判断したシアン化合物における遅い回復は、80ppm硫化水素への短時間の暴露により救助し得るという仮説を試験した。これは、保存酵素ロダネーゼ(および他の同様の酵素)が硫化水素およびシアン化合物を使用して、比較的毒性の低いチオシアン酸塩を生成するとの考えに基づく。既に、ロダネーゼがシアン化物およびチオ硫酸塩を使用して、チオシアン酸塩を生成することが示されている(Chen 1933)。さらに、チオ硫酸塩の静脈内投与は、米国ではシアン化物中毒の処置において標準的な治療法である。シアン化物の暴露後の中心体温の回復時間は、硫化水素のによる短時間の処置により短縮することが見出された。この結果は、患者がシアン化物中毒に罹患する条件の処置に、硫化水素暴露を使用し得ることを示唆する。 本明細書に開示および特許請求した全組成物および方法は、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく製造および実施することができる。 本発明の組成物および方法の好ましい実施態様について開示してきたが、当業者は、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した組成物および方法、ならびに方法の段階または段階の連続に変更を適用できることが明らかであろう。より詳細には、化学的および物理的に関連した所定の作用物質を本明細書に記載した作用物質と置き換えて、同一または類似の結果を達成し得ることが明らかであろう。これらの類似の置換物および修正の全ては当業者に明らかであり、添付の請求項に定義する本発明の趣旨、範囲および概念に含まれるものと見なされる。参考文献 以下の参考文献は、本明細書に記載されるそれらへの補足の模範的手順であるかまたは他の詳細を提供する程度まで、参照によって本明細書に特に組み入れられる。米国特許第3,777,507号米国特許第3,881,990号米国特許第3,989,816号米国特許第3,995,444号米国特許第4,034,753号米国特許第4,186,565号米国特許第4,266,573号米国特許第4,292,817号米国特許第4,442,856号米国特許第4,444,762号米国特許第4,447,415号米国特許第4,473,637号米国特許第4,502,295号米国特許第4,559,258号米国特許第4,723,974号米国特許第4,745,759号米国特許第4,798,824号米国特許第4,828,976号米国特許第4,938,961号米国特許第4,951,482号米国特許第5,066,578号米国特許第5,157,930号米国特許第5,217,860号米国特許第5,231,025号米国特許第5,285,657号米国特許第5,326,706号米国特許第5,370,989号米国特許第5,395,314号米国特許第5,399,363号米国特許第5,405,742号米国特許第5,434,045号米国特許第5,466,468号米国特許第5,470,738号米国特許第5,476,763号米国特許第5,543,158号米国特許第5,552,267号米国特許第5,568,910号米国特許第5,569,579号米国特許第5,580,781号米国特許第5,599,659号米国特許第5,636,643号米国特許第5,641,515号米国特許第5,645,081号米国特許第5,693,462号米国特許第5,699,793号米国特許第5,719,174号米国特許第5,736,397号米国特許第5,739,169号米国特許第5,752,929号米国特許第5,801,005号米国特許第5,830,880号米国特許第5,846,945号米国特許第5,912,019号米国特許第5,952,168号米国特許第6,013,256号米国特許第6,046,046号米国特許第6,054,261号米国特許第6,057,148号米国特許第6,100,082号米国特許第6,187,529号米国特許第6,365,338号米国特許第6,490,880号米国特許第6,492,103号米国特許第6,524,785号米国特許第6,552,083号米国特許第6,602,277号米国特許第6,790,603号米国特許出願第10/971,575号米国特許出願第10/971,576号米国特許出願第10/972,063号米国仮特許出願第60/513,458号米国仮特許出願第60/548,150号米国仮特許出願第60/557,942号 以下の図面は、本明細書の一部を形作っており、本発明のある局面をさらに示すために含まれている。本発明は、本明細書に示した具体的な態様の詳細な説明と一緒に、これら図面の一つまたは複数を参照することによって、より理解され得る。100% COへ暴露させた時のヒトケラチノサイトの生存。細胞は、倒立位相差顕微鏡を用いて視覚的に調べた。生存ケラチノサイト数の定量化は、細胞死のインジケータであるトリパンブルー染色によって判定した。低酸素状態での生存能力の不連続性。野性型の胚において無酸素状態(純粋N2)、間欠的低酸素状態(0.01kPa O2、0.05kPa O2、0.1kPa O2)、または軽度の低酸素状態(0.5kPa O2)に24時間暴露した後で、成虫の生存率をアッセイした。全てのデータ点は、少なくとも3回、別々に行った実験の結果であり、説明がつけられない虫は、総数から除外した。低酸素状態に対する一酸化炭素の保護。成虫の生存率を、野生型の胚において、純粋な一酸化炭素、0.05kPa O2/N2、0.05kPa O2/COに24時間暴露した後でアッセイした。全てのデータ点は、少なくとも3回、別々に行った実験の結果であり、説明がつけられない虫は、総数から除外した。マウスを硫化水素に暴露させると、中心体温より先に代謝率が低下する。マウスを80ppm(X軸の0分で)に暴露させると、5分間未満で、CO2の産生(黒線)はほぼ3倍低下した。これは動物の中心体温が周囲の温度に向かう低下に先行した(灰色線)。硫化水素に暴露されたマウスの体温。それぞれの線は、80ppmのH2Sまたは大気に暴露した各マウスの中心体温の連続測定値である。縦軸の数値は摂氏度で表した温度である。水平軸上の数値は、一時間単位の時間を表している。実験は、6時間行われ、それに続いて回復を記録した。開始点は1:00であり、6時間の終了は約7:00である。80ppmの硫化水素への暴露によってマウスの中心体温は室温に近づく。時刻0:00に気体を放出すると体温が下がり始めた。時刻6:00に雰囲気を大気に戻した。三角は、無線測定器で測定したマウスの中心体温を示す。中心体温は、時刻0:00ではおおよそ39℃であった。菱形は、室温を示しており、実験の初期3時間の間に23℃から13℃に低下し、その後時刻6:00から23℃に向かって上昇し、時刻9:00付近で安定した。中心体温の低下速度は、マウスに与えた硫化水素の濃度に依存する。線は全て無線測定器で測定した一匹のマウスの中心体温を示している。20ppmおよび40ppmのH2Sを作用させたマウスでは、中心体温の低下はわずかであった。60ppmを作用させると、体温は時刻4:00あたりから大きく低下し始めた。80ppmに暴露させたマウスでは、時刻2:00あたりから体温が大きく下がり始めた。最低中心体温。80ppmの硫化水素に暴露させたマウスに記録された最低中心体温は10.7℃であった。三角は、無線測定器で測定した時刻0で39℃から始まるマウスの中心体温を示している。菱形は、室温を示しており、おおよそ23℃で始まり、実験の中央点までに10℃未満まで低下し、その後体温は再び室温に向かって上昇した。硫化水素の体内レベルは、暖かな温度に順応させたマウスで上昇する。灰色のバー(左側の二つのバー)は4℃に順応させた2匹のマウスそれぞれの体内H2S濃度を示し、黒のバー(右側の二つのバー)は、30℃に順応させた2匹のマウスそれぞれの体内H2S濃度を示す。硫化水素濃度はGC/MSで決定した。硫化水素依存的体温低下に及ぼす室温の影響。硫化水素暴露による中心体温(摂氏度で表示)の低下は、順応温度に依存している。マウスを、時刻1:00でガスに暴露された。三角は、12℃に順応させたマウスの無線測定器で測定した中心体温を表している。四角は、30℃に順応させた動物の中心体温を示す。本発明の態様の呼吸気体送達システムを描いたブロック図である。本発明の態様の呼吸気体送達システムを描いた概略図である。本発明のさらなる態様の呼吸気体送達システムを描いた概略図である。本発明の態様の運転を描いたフローチャートである。本発明の態様の組織処置気体送達システムを描いた概略図である。本発明の態様の運転を描いたフローチャートである。代謝阻害は、線虫に於いて低温誘導死を防止する。低温(4℃)に暴露した線虫は、24時間後まで生存することはできない。しかしながら、低温期間(および前後1時間)を無酸素状態に保つと、かなりの割合の線虫が生存する。短時間のCO2予備処理は、無酸素生存率を最大化する。成虫のハエを、表示した時間100% CO2に暴露し、N2を吹き込んで雰囲気を無酸素状態にしてからチューブを密閉した。22時間後、チューブを大気に対し開放した。ハエを24時間回復させてから、生存率のスコアをつけた。CO2は無酸素生存率を不安定に高める。成虫のハエを、大気(予備処理なし)から直接、または100% CO2に10分間暴露した後、低流実験の中で無酸素状態にした。示した時間の後にチューブを大気に対し開放した。ハエを24時間回復させてから、生存率のスコアをつけた。COに加えた50ppmのH2Sは、無酸素状態を生存するハエの割合を増やす。成虫のハエを、大気(予備処理なし)から直接、またはCOでバランスを取った50ppmのH2Sに暴露した後、低流実験の中で無酸素状態にした。本開示の態様に従った、血小板および溶液から酸素を除去するための例示的システムの概略図である。硫化水素に暴露させたラット(A)および二酸化炭素に暴露させたマウス(B)の中心体温の変化を示す。活性化合物の濃度を決定する段階的実験計画を示す気体マトリックス。活性化合物の送達または投与に使用できる陰圧装置を示す。5%酸素内でのマウスの生存率。マウスを、5% O2に暴露させる前に30分間室温に暴露させるか(対照群;黒線;n=9)または5% O2に暴露させる前に10分間大気に暴露させ、続いて20分間150ppmのH2Sに暴露させ(実験群;赤線;n=20)るかのいずれかで、それらの生存期間を測定した。60分の時点で実験を停止し、動物がまだ生きている場合(実験群の全例、対照群なし)は、それらを元のケージに戻した。H2Sは致死的酸素圧での生存率を上げる。グラフは、図23に記載した実験の結果を示す。x軸は、マウスが低酸素圧で生存した時間を分単位で示す。暗いバーはH2Sが存在しない場合を、一方明るいバーはH2Sが存在する場合を示す。後者のグループでは、マウスを酸素圧を5%〜2.5%の間に下げる前に150ppmのH2Sに暴露させた。生存時間を測定したところ、生存時間はH2S処置群では全例で少なくとも60分であった。5%酸素中でのマウスの代謝速度。マウスを、10分間大気に暴露させた後、5% O2に暴露させる前に20分間150ppmのH2Sに暴露させた。代謝速度をCO2排出量で測定した。予備暴露時のCO2排出量はほぼ2500ppmであり、20分間のH2S暴露後に代謝速度はほぼ2倍低下し、5% O2に数時間暴露した後CO2排出量はおおよそ50ppmまで、予備暴露時のレベルに比べ約50倍低下した。6時間目の時点でマウスを大気に戻して回復させた。このデータは、図23に含まれるマウス(実験群)の一匹から得た。100ppbのH2Seに暴露されたマウス。グラフは、分単位のH2Se暴露(x軸)による中心体温の低下(右側についてプロットされ、漸次的低下を示すラインで表された摂氏温度)および呼吸低下(左側に対しプロットされた低下を示すギザギザの線で表されるppm CO2)を示す。10ppbのH2Seへ暴露されたマウス。グラフは、分単位(x軸)のH2Se暴露による中心体温の低下(右側についてプロットされ、漸次的低下を示すラインで表された摂氏温度)および呼吸低下(左側に対しプロットされた、5分暴露時を最低点として低下を示すギザギザの線で表されるppm CO2)を示す。H2S予備処理は低酸素状態でのマウス生存率を高める。マウスを大気(PTなし)に30分間、または大気に10分間暴露させてから、5% O2 (5%)、4% O2 (4%)、5% O2に1時間、その後4% O2 (4%+1時間5%)、または5% O2に1時間、その後3% O2 (3%+1時間5%)に暴露させる前に150ppmのH2Sに20分間暴露させ、生存期間を測定した。実験は60分の時点で停止し、動物がまだ生存している場合は、元のケージに戻した。致死的な低酸素状態へ移行中のCO2産生。5% O2または4% O2のいずれかに移行する際のCO2産生の変化を、大気に30分間(PTなし)暴露させるか、または大気に10分間暴露させた後に150ppmのH2Sに20分間暴露させた(PT)マウスについて測定した。これに加え、1時間かけて5% O2に、さらに後4% O2まで段階的に移行した際のCO2産生の変化を測定した。CO2産生のパーセント変化は、表中誤差を付けてプロットされている。100%一酸化炭素(CO)に暴露されたヒトケラチノサイトの生存率。細胞を、倒立位相差顕微鏡を用いて視覚的に調べた。生存ケラチノサイト数の定量化は、細胞死のインジケータであるトリパンブルー染色によって判定した。低レベルへH2Sへの恒常的暴露は、シノラブディス・エレガンスに熱耐性をもたらす。大気中にほぼ50ppmのH2Sを含む環境に適合した線虫は、室内空気だけで育てられた同胞に比べ、室温を35℃に上昇させた致死的効果に対しより耐性であった。低レベルへH2Sへの恒常的暴露は、シノラブディス・エレガンスの寿命を延長する。大気中にほぼ50ppmのH2Sを含む環境に適合した線虫は未処置対照に比べ、寿命が長かった。Sprague-Dawleyラットの中心体温低下の推移例。室内空気に混合された0.03%の硫化水素(灰色/破線)または15%二酸化炭素/8%酸素/77%ヘリウム(黒/実線)に暴露されたラットの中心体温測定値。この実験では、環境チャンバーの温度は、処置期間中は10℃であった。環境チャンバーの温度は、気体を室内空気に戻す時に室温(22℃)に戻された。それぞれの例では、これは中心体温が上昇を始めた時点であった(黒/実線についてはおおよそ2時間、灰色/破線についてはおおよそ7.4時間)。5℃の室温で1.2ppmのセレン化水素に2時間、室内空気に10分間暴露されている間のマウスの中心体温。10℃の室温で、環境チャンバーの中で室内空気に間暴露されている間のラットの中心体温。黒線はラットの中心体温を示す。灰色の線は、室温を示す。7℃の室温で80%ヘリウム20%酸素に暴露されたラットの中心体温。時刻をX軸に時間単位で示す。全暴露時間はおおよそ5時間であった(9:15 AM〜2:15 PM)。中心体温の有意な低下は見られなかった。7℃の室温で、15%二酸化炭素、20%酸素、および75%ヘリウムに暴露されている間のラットの中心体温。暴露時間はおおよそ2時間であった。体温が上昇し始めた時点(38512.6と示されている点の直後)からラットを室内空気に暴露し始めた。ラットが室内空気に暴露されている間に、環境温度は室温に戻された。7℃の室温で、15%二酸化炭素、8%酸素、および77%ヘリウムに暴露されている間のラットの中心体温。暴露時間はおおよそ4時間であった。灰色の線は室温を示す。黒線は中心体温を示す。室温および中心体温が上昇した時点で、気体を室内空気に交換した。二酸化炭素/ヘリウム/酸素に暴露されたイヌの中心体温。破線は、送気開始(おおよそ24分)および停止(おおよそ55分)した時点である。二酸化炭素濃度を上昇させながら暴露させたイヌの中心体温。破線は、気体を変えた時点を表す。おおよそ63分の時点で、気体を室内空気から9%の二酸化炭素を含む室内空気に変えた。おおよそ85分の時点で、雰囲気を9%の二酸化炭素を含む室内空気から12%の二酸化炭素を含む室内空気に変えた。おおよそ115分の時点で、雰囲気を12%の二酸化炭素を含む室内空気から15%の二酸化炭素を含む室内空気に変えた。実験は、おおよそ135分の時点で終了した。スクリーニング法に用いた器具。少なくとも一週間、一日当たり4時間硫化水素を暴露させた動物、または硫化水素を欠く同一条件に暴露された対照動物の酸素消費(灰色のバー)および二酸化炭素産生(黒のバー)。少なくとも一週間、一日当たり4時間硫化水素を暴露させた動物(H2S 2900およびH2S 2865)、または硫化水素を欠く同一条件に暴露された対照動物(2893および2894)の呼吸商。 生物物体に少なくとも一つの活性化合物の有効量を提供する段階を含む、生物物体の生存能力を高めるための方法。 活性化合物が酸素アンタゴニストである、請求項1記載の方法。 生物物体が、活性化合物に暴露される、請求項1記載の方法。 活性化合物がカルコゲニドである、請求項1記載の方法。 活性化合物が式Iまたは式IVの化学構造を有する、請求項1記載の方法。 生物物体が式Iまたは式IVの化学構造の前駆体に暴露される、請求項5記載の方法。 生物物体に活性化合物の組み合わせが提供される、請求項1記載の方法。 生物物体中における傷害、疾患の発生もしくは進行または出血の前、最中、または後に、生物物体に活性化合物を提供される、請求項1記載の方法。 傷害が出血を含む、請求項8記載の方法。 傷害が外因性の物理的起源に由来する、請求項9記載の方法。 活性化合物が、傷害の前、あるいは疾患の発生または進行の前に提供される、請求項8記載の方法。 傷害または疾患が生物物体の代謝または温度の低下を伴う、請求項8記載の方法。 傷害が手術による、請求項12記載の方法。 活性化合物が、傷害または疾患の発生もしくは進行の最中または後には、提供されない、請求項11記載の方法。 活性化合物が疾患進行中に提供される、請求項8記載の方法。 疾患が地中海貧血、鎌状赤血球疾患、または嚢胞性繊維症である、請求項15記載の方法。 生物物体に活性化合物を、CO2放出を少なくとも25%減少させるのに十分な量および時間で提供する、請求項11記載の方法。 生物物体に活性化合物を、生物物体がスタシスに入らせない量および時間で提供する、請求項11記載の方法。生物物体に活性化合物を、傷害または疾患の発生もしくは進行に起因する損傷または死から保護する量および時間で提供する、請求項11記載の方法。 生物物体に活性化合物を、傷害または疾患の発生もしくは進行後に生物物体がスタシスに入る速度を増すのに十分な量および時間で提供する、請求項11記載の方法。 生物物体に活性化合物を、傷害または疾患の発生もしくは進行後にCO2放出のさらなる低下を防止するのに十分な量および時間で提供する、請求項11記載の方法。 生物物体に活性化合物を、生物物体をスタシスに入らせるのに十分な量および時間で提供する、請求項11記載の方法。 生物物体に活性化合物を、低酸素または無酸素状態下で、または低酸素もしくは無酸素状態に暴露される前に提供する、請求項1記載の方法。 低酸素または無酸素状態が、活性化合物がない時の生物物体を損傷する、請求項23記載の方法。 低酸素または無酸素状態に暴露されている間、生物物体が活性化合物に暴露されない、請求項24記載の方法。 活性化合物を生物物体に、気体、半固体液体、液体、または固体として提供する、請求項1記載の方法。 生物物体に、少なくとも一つの活性化合物を気体として提供する、請求項26記載の方法。 生物物体に、少なくとも一つの活性化合物を半固体液体として提供する、請求項26記載の方法。 生物物体に、少なくとも一つの活性化合物を液体として提供する、請求項26記載の方法。 活性化合物が液体中に泡立て入れられる、請求項29記載の方法。 活性化合物が液体中に溶解される、請求項29記載の方法。 少なくとも二つの活性化合物が連続して提供される、請求項1記載の方法。 少なくとも二つの酸素アンタゴニストが一緒に提供される、請求項1記載の方法。 生物物体が酸素アンタゴニストの一つに約30秒〜30日の期間暴露される、請求項1記載の方法。 組み合わせが、次の群の少なくとも一つより選択される化学式を持つ酸素アンタゴニスト:a) 式Iの化合物;v) 式IIの化合物;v) 式IIIの化合物;v) 式IVの化合物;またはその塩もしくは前駆体を含む、請求項7記載の方法。 組み合わせが同じ群に由来する一つより多い活性化合物を含む、請求項35記載の方法。 少なくとも一つの活性化合物が群 a)由来である、請求項35記載の方法。 少なくとの一つの活性化合物がカルコゲニドまたはカルコゲニド塩である、請求項35記載の方法。 少なくとも一つの活性化合物が硫黄を含む、請求項38記載の方法。 少なくとも一つの活性化合物がセレンを含む、請求項38記載の方法。 少なくとも一つの活性化合物がカルコゲニド塩である、請求項38記載の方法。 カルコゲニド塩が、Na2S、NaHS、K2S、KHS、Rb2S、Cs2S、(NH4)2S、(NH4)HS、BeS、MgS、CaS、SrS、およびBaSからなる群より選択される、請求項41記載の方法。 組み合わせが、一つより多い群 a)に由来する活性化合物を含む、請求項36記載の方法。 酸素アンタゴニストの組み合わせがCO2を含む、請求項43記載の方法。 少なくとも一つの活性化合物が群 b)に由来する、請求項35記載の方法。 活性化合物が、式II(a)、式II(b)、または式II(c)の化学式を有する、請求項45記載の方法。 少なくとも一つの活性化合物が群 c)に由来する、請求項35記載の方法。 活性化合物が、式III(a)、式III(b)、式III(c)、式III(d)、式III(e)、式III(f)、式III(g)、または式III(h)の化学式を有する、請求項47記載の方法。 生物物体に活性化合物が吸入、注射、カテーテル法、液浸、洗浄、潅流、局所適用、吸収、吸着、または経口投与により提供される、請求項1記載の方法。 静脈内に、皮内に、動脈内に、腹膜内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、鼻腔内に、髄膜内に、硝子体内に、膣内に、内部直腸に、局所に、腫瘍内に、筋肉内に、腹膜内に、眼球内に、皮下に、結膜下に、膀胱内に、粘膜内に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、経口的に、局所に、局部に、吸入によって、注射によって、注入によって、持続性点滴によって、局所化潅流によって、カテーテルを介して、または洗浄を介して、生物物体に投与にすることによって生物物体に活性化合物が提供される、請求項1記載の方法。 生物物体を制御された温度および/または圧力環境に暴露する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。 生物物体が制御された温度環境に暴露される、請求項51記載の方法。 生物物体が非生理学的な中心温度に到達する、請求項52記載の方法。 生物物体が、約20℃より低い制御された温度環境に暴露される、請求項53記載の方法。 生物物体が、一つまたは複数の活性化合物が提供される前および/または同時に、制御された温度環境に暴露される、請求項52記載の方法。 一つまたは複数の活性化合物が、一つまたは複数の活性化合物のミトコンドリアへの標的化を可能とするカチオン構造を含む、請求項1記載の方法。 生物物体が保存されることになっている、請求項1記載の方法。 生物物体が血小板を含む、請求項57記載の方法。 生物物体が移植される、請求項57記載の方法。 生物物体が虚血−再潅流傷害のリスクが高い、請求項1記載の方法。 心臓麻痺が生物物体に誘導される、請求項60記載の方法。 生物物体が出血性ショックのリスクの高い生物である、請求項1記載の方法。 処置を必要とする生物物体を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。 活性化合物由来の毒性について生物物体をモニタリングする段階をさらに含む、請求項1記載の方法。 活性化合物が生物物体に薬学的組成物として提供される、請求項1記載の方法。 生物物体に、i)活性化合物または活性化合物の組み合わせ、およびii)低酸素状態の有効量を提供する段階を含む、生物物体の生存能力を高めるための方法。 式IIを持つ、一つまたは複数の化合物またはその塩もしくは前駆体を有する組成物の有効量を生物物体に提供する段階を含む、生物物体の生存能力を高めるための方法。 式IIIを持つ、一つまたは複数の化合物あるいはその塩または前駆体を有する組成物の有効量を生物物体に提供する段階を含む、生物物体の生存能力を高めるための方法。 式IVを持つ、一つまたは複数の化合物、あるいはその塩または前駆体を有する組成物の有効量を生物物体に提供する段階を含む、生物物体の生存能力を高めるための方法。 式I、式II、式III、および/または式IVを有する化合物、あるいはその塩または前駆体の有効量を生物物体に提供する段階を含む、生物物体の生存能力を高めるための方法。 損傷が防止または軽減される、活性化合物の有効量を生物物体に提供する段階を含む、有害状態下の生物物体への損傷を防止または軽減するための方法。 以下の一つまたは複数の群に由来する化合物、またはその塩もしくはプロドラッグの有効量を生物に暴露させる段階を含む、生物の保存ストックを作製するための方法:a) 式Iの化合物;b) 式IIの化合物;c) 式IIIの化合物、d) 式IVの化合物。 生物物体にロテノンでない活性化合物の有効量を提供する段階を含む、生物の代謝を可逆的に阻害するための方法。 生物を低酸素状態に暴露する段階をさらに含む、請求項72記載の方法。 生物がハエ、魚、カエル、またはそれらの胚である、請求項72記載の方法。 生物に活性化合物の有効量を提供する段階を含む生物の睡眠を誘導するための方法であって、該有効量が生物をスタシスに誘導できる量より少ない、方法。 生物物体に活性化合物の有効量を提供する段階を含む生物物体を麻酔するための方法であって、該有効量が生物をスタシスに誘導できる量より少ない、方法。 傷害、疾患の発生もしくは進行、または死の前に、生物物体に活性化合物の有効量を提供する段階を含む、生物物体を傷害、疾患の発生もしくは進行、または死から保護する方法であって、該有効量が生物物体をスタシスに誘導できる量より少ない、方法。 生物物体が出血している、請求項78記載の方法。 出血中の生物に活性化合物の有効量を提供して死を防止する段階を含む、生物が出血により死亡するのを防止する方法。 生物が出血性ショック状態になる、請求項80記載の方法。 以下を含む、生物物体をスタシスに誘導するための方法: a)スタシスが望まれる生物物体を同定する段階;および b)インビボ生物物体をスタシスに誘導するために少なくとも一つの活性化合物の有効量を生物物体に提供する段階。 生物物体に有効量の、異なる活性化合物の組み合わせが提供される、請求項82記載の方法。 少なくとも一つの化合物を活性化合物と一緒に含む、薬学的に許容される調合の薬学的組成物。 活性化合物が酸素アンタゴニストである、請求項84記載の薬学的組成物。 酸素アンタゴニストが直接酸素アンタゴニストである、請求項85記載の薬学的組成物。 酸素アンタゴニストがH2Sである、請求項85記載の薬学的組成物。 患者に投与した時に、10μM〜10mMの間のCmaxまたは定常状態血漿濃度を提供するH2Sの有効用量を含む、請求項87記載の薬学的組成物。 活性化合物が、式I、式II、式III、式IV、またはその塩もしくは前駆体の構造を有する、請求項84記載の薬学的組成物。 活性化合物がカルコゲニドである、請求項84記載の薬学的組成物。 カルコゲニドが、H2S、またはその塩もしくは前駆体である、請求項90記載の薬学的組成物。 組成物が脂質である、請求項69記載の薬学的組成物。 包装材料および包装材料の中に収容される活性化合物を含む製造物であって、包装材料は、活性化合物がインビボ生物物体のスタシス誘導に用いることができることを示すラベルを含む製造物。 薬学的に許容される希釈剤をさらに含む、請求項93記載の製造物。 活性化合物が第1密封容器内に提供され、薬学的に許容される希釈剤が第2密封容器内に提供されている、請求項94記載の製造物。 活性化合物および希釈剤を混合するための指示説明をさらに含む、請求項95記載の製造物。 活性化合物がインビボ生物物体をスタシスに誘導するために再構成される、請求項94記載の製造物。 緩衝化剤をさらに含む、請求項93記載の製造物。 活性化合物が式I、式II、式III、式IV、またはその塩もしくはプロドラッグの化学構造を有する、請求項93記載の製造物。 活性化合物が酸素アンタゴニストである、請求項93記載の製造物。 活性化合物がカルコゲニドである、請求項93記載の製造物。 カルコゲニドがH2Sまたはその塩もしくは前駆体である、請求項101記載の製造物。 ラベルが、酸素アンタゴニストがそのような処置を必要としている患者にスタシスを誘導するのに用いることができることを示す、請求項93記載の製造物。 活性化合物と、(a)スタシス処置の必要なインビボ組織を同定すること;および(b)インビボ生物物体に活性化合物の有効量を投与することを含む活性化合物の取り扱い説明書を、一緒に包装して含む製造物。 活性化合物を包含する医療ガス、ならびに生物物体をスタシスに誘導するための詳細または使用および投与を含むラベルを含む製造物。 スタシス処置を必要としている組織部位に活性化合物を送達するための以下を含む、キット: 組織部位に対し密封されたエンベロープを形成するのに適したドレープ; 酸素アンタゴニストを含む容器;および 創傷ドレープ内の注入口;ここで、活性化合物を含む容器は注入口と連絡している。 ドレープに、陰圧供給源と連絡している排出口をさらに含む、請求項106記載のキット。 排出口が陰圧供給源と流体連絡した状態に配置されている、請求項107記載のキット。 排出口と陰圧供給源との間を連絡している可撓性導管をさらに含む、請求項108記載のキット。 排出口と陰圧供給源の間を流体連絡しているキャニスターをさらに含む、請求項109記載のキット。 キャニスターが取り外し可能なキャニスターである、請求項110記載のキット。 活性化合物を含む容器が注入口と気体連絡している、請求項109記載のキット。 容器が気体活性化合物を含む、請求項107記載のキット。 容器が液体ガス活性化合物を含む、請求項109記載のキット。 活性化合物を含む容器と注入口の間を連絡する気化器をさらに含む、請求項114記載のキット。 活性化合物を含む容器と連絡する戻り排出口をさらに含む、請求項109記載のキット。 活性化合物が一酸化炭素、二酸化炭素、または硫化水素である、請求項106記載のキット。 組織が創傷部位を含む、請求項106記載のキット。 ドレープがエラストマー材料を含む、請求項106記載のキット。 ドレープの周囲を覆う圧感受性接着剤をさらに含む、請求項119記載のキット。 陰圧供給源が真空ポンプである、請求項106記載のキット。 請求項106記載のキットを用いることを含む、生物物体に酸素アンタゴニストを送達するための方法。 以下を含む、候補活性化合物をスクリーニングするための方法: a) ゼブラフィッシュ胚を物質に暴露する段階; b) 胚の心拍数を測定する段階; c) 物質が存在する時の胚の心拍数を物質が存在しない時の心拍数と比較し、心拍数の減少により物質を候補活性化合物と認める、段階。 胚の心拍数を心臓の鼓動数を数えて測定する、請求項123記載の方法。 ゼブラフィッシュ胚を解剖顕微鏡で見ながら心拍数を測定する、請求項123記載の方法。 以下をさらに含む、請求項123記載の方法: d)マウスを候補活性化合物に暴露し、次の一つまたは複数をアッセイする段階; i) 中心体温; ii) 酸素消費; iii) 運動性、もしくは iv) 二酸化炭素産生。 化合物が式Iまたは式IVの構造を有する、請求項123記載の方法。 以下を含む、候補活性化合物をスクリーニングするための方法: a)線虫を物質に暴露する段階: b)次の細胞呼吸因子の一つまたは複数をアッセイする段階: i)中心体温; ii)酸素消費; iii)運動性;もしくは iv)二酸化炭素産生、 c)物質が存在する時の線虫の細胞呼吸因子と物質が存在しない時の細胞呼吸因子を比較し、特徴の減少により物質を候補活性化合物と認める、段階。 運動性をアッセイする、請求項128記載の方法。 物質を同定する段階をさらに含む、請求項128記載の方法。 化合物が式Iまたは式IVの構造を有する、請求項127記載の方法。 手術前に哺乳動物を誘導してプレスタシスに入れるのに十分な量の硫化水素を哺乳類に提供する段階を含む、手術による細胞損傷を哺乳類が被むるのを防止する方法。 手術が選択的手術(elective surgery)、予定されている手術、または緊急手術から選択される、請求項132記載の方法。 硫化水素が静脈内に投与される、請求項132記載の方法。 硫化水素が吸入によって投与される、請求項132記載の方法。 手術が心肺手術である、請求項132記載の方法。 疾患の発生または進行前に哺乳動物を誘導してプレスタシスに入れるのに十分な量の硫化水素を哺乳類に提供する段階を含む、疾患または有害な医学的状態からの細胞損傷を哺乳類が被むるのを防止する方法。 疾患または有害な医学的状態が、以下、出血性ショック、心筋梗塞、急性冠動脈症候群、心停止、新生児低酸素症/虚血、虚血性再潅流傷害、不安定狭心症、血管形成後、動脈瘤、外傷、および失血からなる群より選択される、請求項137記載の方法。 被験体に硫化水素の有効量を投与する段階を含む、被験体に無呼吸を誘導するための方法。 被験体が出血中かまたは出血のリスクがある、請求項139記載の方法。 被験体から血液サンプルを得る段階をさらに含む、請求項140記載の方法。 硫化水素暴露のために血液サンプルを評価する段階をさらに含む、請求項141記載の方法。 処置を必要とする被験体を同定する段階をさらに含む、請求項139記載の方法。 患者に3,000ppmを越える硫化水素を提供する、請求項139記載の方法。 患者に硫化水素を約5分またはそれ未満提供する、請求項139記載の方法。 患者に3,000ppmを越える硫化水素を約5分またはそれ未満提供する、請求項145記載の方法。 患者に硫化水素を約3分またはそれ未満提供する、請求項146記載の方法。 硫化水素の有効量を提供する段階を含む、患者の出血性ショックを処置するための方法。 噴霧器を用いて患者に硫化水素を提供する、請求項148記載の方法。 患者に3,000ppmを越える硫化水素を提供する、請求項148記載の方法。 患者に硫化水素を約5分またはそれ未満提供する、請求項148記載の方法。 患者に3,000ppmを越える硫化水素を約5分またはそれ未満提供する、請求項151記載の方法。 患者に硫化水素を約3分またはそれ未満提供する、請求項152記載の方法。 患者に硫化水素を連続的に提供する、請求項148記載の方法。 患者に単回用量の硫化水素を提供する、請求項148記載の方法。 患者に複数回用量の硫化水素を提供する、請求項148記載の方法。 本発明は、インビボの細胞、組織、および/または臓器、もしくは生物全体にスタシスまたはプレスタシスを誘導し、これに加えてそれらの生存能力を高めるための酸素アンタゴニストおよび他の活性化合物の使用に関する。それは、生存能力を高めるため、ならびにそれらを保全および/または保護するためにこれら任意の生物物質においてスタシスまたはプレスタシスを達成するための組成物、方法、製造物、および器具を含む。特定の態様では、臓器移植、高体温、創傷治癒、出血性ショック、バイパス手術のための心臓麻痺、神経変性、低体温、および癌のための、記載の活性化合物を用いる治療方法および器具も存在する。