生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_機能性ナノ粒子充填カーボンナノチューブおよびその製造のための方法
出願番号:2008505616
年次:2008
IPC分類:C01B 31/02,C01B 31/06,B82B 3/00,B82B 1/00,A61P 35/00,A61K 9/51


特許情報キャッシュ

ゴゴツィ,ユリー コルネヴァ,グゼリヤ フリードマン,ゲイリー JP 2008535760 公表特許公報(A) 20080904 2008505616 20060406 機能性ナノ粒子充填カーボンナノチューブおよびその製造のための方法 ドレクセル ユニバーシティー 502347401 葛和 清司 100102842 ゴゴツィ,ユリー コルネヴァ,グゼリヤ フリードマン,ゲイリー US 60/668,636 20050406 C01B 31/02 20060101AFI20080808BHJP C01B 31/06 20060101ALI20080808BHJP B82B 3/00 20060101ALI20080808BHJP B82B 1/00 20060101ALI20080808BHJP A61P 35/00 20060101ALI20080808BHJP A61K 9/51 20060101ALI20080808BHJP JPC01B31/02 101FC01B31/06 ZB82B3/00B82B1/00A61P35/00A61K9/51 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW US2006013215 20060406 WO2006113192 20061026 15 20071204 4C076 4G146 4C076AA65 4C076AA95 4C076CC27 4C076DD21 4C076FF68 4G146AA04 4G146AA11 4G146AA13 4G146AA16 4G146AA19 4G146AB06 4G146AC01B 4G146AC04B 4G146AD17 4G146AD40 4G146BC09 4G146CB19 4G146CB24 4G146CB32 4G146CB34 4G146CB35 本特許出願は、2005年4月6日に出願された米国仮出願第60/668,636号に対する優先権の利益を主張するものであり、前記仮出願の教示は、その全体が本明細書において参照により援用される。 発明の分野 本発明は、機能性ナノ粒子の懸濁液またはコロイド溶液で充填されたカーボンナノチューブ(CNT)を提供する。本発明はまた、機能性ナノ粒子で充填されたCNTの製造のための方法を提供する。一態様において、磁性ナノ粒子で充填されたCNTおよびそれらの製造のための方法が提供される。他の態様において、金コロイドナノ粒子およびナノダイヤモンドで充填されたCNTが記載される。 発明の背景 カーボンナノチューブ(CNT)に特有の物理化学的特性は、工学の多様な分野における可能な用途についての大々的な研究を触発してきた(Baughman et al. Science 2002 297, 787-792; Rossi et al. Nano Letters 2004 4, 989-993; Tolles, W. M. and Rath, B. B. Current Science 2003 85, 1746-1759; Gogotsi, Y. Materials Research Innovations 2003 7, 192-194; Lin et al. Journal of Materials Chemistry 2004 14,527-541)。 エンジニアは、CNTに特有の伝導特性に惹かれてCNTを磁性化する方法をも研究してきた(Gao et al. Carbon 2004 42:47-52; Coey, J.M.D. and Sanvito, S. Physics World 2004)。本発明者らの知識の及ぶ限りでは、従来の試みは限定された成功しか収めていない。 例えば、合成中にCNT中へ包埋された磁性粒子を有するナノチューブは、有用な磁性特性を有さない。さらに、チューブ内部の磁性材料の量および位置を制御することは困難である。 これまでに開示された磁針を製造するための技術は、費用がかかり、時間を要し(Singh et al. Journal of Nanoscience and Nanotechnology 2003 3:165-170)、収量が比較的低い。磁針の磁化を増大させる場合、磁場が適用されていないときのナノニードルの凝集を防止することもまた重要である。したがって、磁針を安定にするので、CNT中への常磁性粒子の封入が好ましい。 湿らせることができるキャピラリー(wettable capillary)への液体の自然浸透の現象は、ナノチューブを磁性ナノ粒子で充填することを導く発想として採用されてきた。日々の経験から知られているように、湿潤させる流体とキャピラリーとを接触させた場合、流体は自然に内部に浸透する。ナノチューブを融解金属で充填するこの方法が提案されている(Ajayan, P.M. and Iijima, S. Nature 1993 361:333-334; Dujardin et al. Science 1994265:1850-1852; Ugarte et al. Science 1996 Science 274:1897-1899)。しかし、このようにして融解物を用いる欠点として、かかる方法が極めて長い時間を要する点において時間消費が挙げられ、ナノチューブの開口の工程が予測できないことが挙げられる。さらに、充填効率が低すぎて、この方法を大規模製造のために考慮することができない。加えて、磁性用途についての対象である鉄を含む金属は、融点が高く(1565℃)、炭素と反応し得る。 米国特許第5,543,378号は、異物を取り込んだナノメートルサイズのカーボン小管を開示する。この異物は、異物を熱処理と共にカーボン小管の頂部と接触させること、または熱処理と共にカーボン小管の頂部で異物を蒸発させることのいずれかにより、カーボン小管の頂部に開口を形成することによって、ナノチューブ内へ導入される。 米国特許第5,543,378号は、パラジウム晶子が中へ封入されたカーボンナノ構造を開示する。 米国特許第6,090,363号は、キャップされたナノチューブを硝酸などの酸化性酸で処理することによって、少なくとも一端が開口したカーボンナノチューブを作製する方法を開示する。この特許はまた、一旦開口されたカーボンナノチューブ内に材料を堆積させる(deposit)ための方法を開示する。 米国特許第6,129,901号は、均一なサイズで均一に整列したナノチューブを製造して、それらのナノチューブを例えば無電解めっき(electroless deposition)を使用して金属で充填するための方法を開示する。 鋳型合成によって製造される化学気相蒸着(CVD)CNTは、水で充填することも(Rossi et al. Nano Letters 2004 4:989-993; Naguib et al. Abstracts of Papers of the American Chemical Society Annual Meeting 2003 226:U535)、エチレングリコール、炭化水素および他の液体で充填することもできる。さらに、コールター・カウンタでの最近の実証(Henriquez et al. Analyst 2004 129:478-482)によって、ナノチューブの内部を粒子が流れることが可能であることが示される。 発明の要旨 本発明の目的は、機能性ナノ粒子で充填されたカーボンナノチューブを製造するための方法を提供することであり、その方法は、開口カーボンナノチューブを合成する工程、および開口カーボンナノチューブを機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填する工程を包含する。一態様において、カーボンナノチューブは、鋳型の内壁へのカーボンナノチューブの化学気相蒸着によって合成される。カーボンナノチューブは、鋳型からのカーボンナノチューブの分離前または分離後のいずれかにおいて、機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填される。 本発明の別の目的は、機能性ナノ粒子で充填されたカーボンナノチューブを提供することである。一態様において、磁性カーボンナノチューブが提供され、これは磁性ナノ粒子の懸濁液で充填された中空カーボンナノチューブを含む。この態様において、カーボンナノチューブは、好ましくはフェロフルイド(ferrofluid)で充填される。他の態様において、中空カーボンナノチューブは、機能性ナノ粒子で充填される。かかる機能性ナノ粒子は、コロイド状金ナノ粒子および非金属性ダイヤモンドナノ粒子などであるが、これらに限定されない。 図1(a)および(b)は、有機ベースのフェロフルイドEMG911で充填されたCNTの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。図1(a)は、磁場中のフェロフルイドで充填されたCNTを示す。ナノチューブはアルミナ中に包埋されている。図1(b)は、磁場なしでの充填ナノチューブのフラグメントの高解像度TEM画像である。粒子がナノチューブ内部で凝集している。 図2は、磁場なしの充填チューブのTEM画像である。示したナノチューブの閉端は、NaOH中でのアルミニウム鋳型の分解と、その後の超音波分解、ろ過、およびアルコール中でのリンスの後で、露出される。この画像は、数時間の処理の後ですらナノチューブ内部に高密度の粒子があることを示す。 図3(a)および(b)は、個々のナノチューブの充填のプロセスを示す。図3(a)は分枝CNTの一部のTEM画像であり、図3(b)は、開口端を備えるCNTのTEM画像であり、水ベースのフェロフルイドEMG508由来の磁性粒子で充填されている。これらの画像は、ナノ粒子がCNTの内部に集積されて極めて高密度の構造を形成することを示す。粒子は、接着力によってCNTの壁に結合し、処理の後でも損なわれていない。 図4は、回転するCNT中での磁気モーメントmおよび磁場Hの配向の模式図である。 図5(a)、(b)および(c)は、磁場による磁性ナノチューブの操作を示す。図5(a)および(b)は、支持ウェハの平面に沿って配向された磁性CNTを示す。μ0H=0.01テスラ。図5(c)は、ウェハに垂直に適用された磁場中でフリーズされた磁性ナノチューブを示す。μ0H=0.03テスラ。 図6は、磁性粒子、薬物または量子ドット(QD)が封入されたCNTをベースとして磁気的に駆動されるナノサブマリン(nanosubmarine)の例を提供する。QDは、ナノサブマリンの位置の光学的制御を可能にする。薬物は腫瘍領域に送達されて、ポリマーの生分解の際に放出され得る。 図7は、コロイド状金ナノ粒子で充填されたCNTのTEM画像である。差込図は、ナノチューブ内部の金ナノ粒子の高解像度TEM画像を示す。金ナノ粒子の平均サイズは10nmである。 図8(a)および8(b)は、ナノダイヤモンド粒子で充填されたCNTのTEM画像である。図8(a)は、非金属ナノダイヤモンドで充填されたCNTのフラグメントを示す。図8(b)は、ナノチューブ内部のナノダイヤモンド粒子の高解像度TEM画像を示す。カーボンの層の間の間隔は0.206nmに等しく、これは、ダイヤモンド格子構造の特性距離である。ナノダイヤモンド粒子の平均サイズは5nmである。 発明の詳細な説明 本発明は、機能性ナノ粒子で充填されたカーボンナノチューブ(CNT)を製造するための方法に関する。これらの方法において、開口CNTが合成される。開口CNTの合成のための任意の方法が使用され得る。例示的な方法は、アルミナ膜などの鋳型上への化学気相蒸着を介する合成である。開口CNTは、次いで、機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填される。ナノチューブ内へのナノ粒子の引き込みは、大抵は流体塊を初期に完全な連続体とする過程によって影響を受けるため(Kornev K. G. and Neimark, A.V. Journal of Colloid Interface Science 2003 262:253-262)、慣性に支配される流動が、開口CNTの充填のための有用な手段を提供することが期待される。一旦充填されると、CNTは、種々の公知の方法論を用いて密封される。一態様において、CNTの先端は、双極電気化学(bipolar electrochemistry)を使用して、ポリピロールで選択的に密封される(Bradley et al. Chemistry Preprint Archive 2003 3:245-250)。充填ナノチューブ内の機能性ナノ粒子の分離の作用は、浸透の最終段階でのみ起こると予測され、その段階では、準定常メニスカス(quasi-stationary menisci)が既に形成されている(Karnis A. and Mason, S.G. Journal of Colloid and Interface Science 1967 23 : 120)。 本明細書において記載される方法論は、機能性磁性ナノ粒子で充填されたCNTを製造するために使用された。結果として生じる磁性構造は、本明細書において磁針としてもまた言及され、多数の用途において有用であり、かかる用途として、ナノテクノロジー、記憶デバイス、および医薬が挙げられるが、これらに限定されない。 本明細書において示すように、本発明の方法論は、CNTを常磁性の酸化鉄粒子(直径約10nm)で充填することにより磁性チューブを製造する、簡易で多用途な技術を提供する。この例示的態様において、市販の流体を使用して、平均外径が300nmの化学気相蒸着されたCNTを充填した。充填ナノチューブの透過型電子顕微鏡(TEM)による精査は、CNT内部に高密度の粒子を示した。外部磁場を使用した実験は、ナノチューブのほぼ100%が磁性となり、磁場中で容易に操作され得ることを実証した。これらの充填ナノチューブは、哺乳動物の血管を通して磁場によって外部から駆動されてナノスケールの量の薬物または複数の薬物をある点から他の点へと輸送するナノサブマリンとして使用することができる。また、これらの充填CNTは、ナノウェブ(nanoweb)またはフィルムの形態において、ウェアラブルエレクトロニクスのための磁気記録または光変換器のために使用することができる。 これらの実験のために、例1において記載される方法論に従って製造されたCNTを使用した。 一態様において、CNTが堆積するアルミナ膜の充填を介して、CNTを磁性粒子で充填した。膜上へのフェロフルイドの小滴の堆積の際に、流体が孔に進入した。磁場を適用して、調製された磁性ピーポッド(peapod)の磁気異方性を制御した。約4kガウスの永久磁石Hを膜の下に設置した。磁場(field)が存在しなくとも、殆ど即時的に浸透が起こった。適用された磁場は、磁性ナノ粒子を磁石に向かって、すなわちチューブの内部へ導く追加のエネルギーを生むことにより、浸透の速度を増加した。室温での運搬流体の蒸発の後で、TEM精査のために膜を小片へ破砕してイソプロパノール中で分散させた。処理の間に、ナノチューブの外部に堆積した磁性粒子は洗い流されたが、内部に堆積した粒子は接着エネルギーによって保持された。図1において、TEM顕微鏡写真は、ナノチューブ内部の磁性粒子の代表的な充填形態を示す。詳細なTEM分析は、ナノ粒子は、磁場が存在しても存在しなくても同等にナノチューブを充填することを示し、したがって、充填が毛管力によって駆動されることを示している。 別の態様において、個々のナノチューブを磁性ナノ粒子で充填した。この技術を使用して、CVD法によるCNTの調製後に、アルミナ鋳型を4.0MのNaOH中で溶解した。超音波分解後、溶液をポアサイズ0.2μmのPolyester nucleopore membrane(Osmonic Corp.)を通して真空ろ過した。次いで、ろ過物をトルエン中に分散した。このトルエン中に分散したCNTのろ液の数ミリリットルを、次いで、同様のPolyester膜を使用して再ろ過した。ろ過後、残留物を、アルコールおよび蒸留水でリンスし、次いで乾燥させた。典型的には、濃縮されたナノチューブの灰色の領域が、乾燥後の基材上に現れた。この灰色のスポット上にフェロフルイドの小滴を堆積させた。再度、溶媒の完全な蒸発の後で、基材をアルコールでリンスし、小さいバイアル中へ浸漬して5mlのアルコールを添加した。バイアルを超音波処理器にかけて、堆積物を膜から除去した。この溶液をTEMによって分析した。TEM画像を、図3および図4に示す。 TEM画像に示されるように、アルミナ膜を介するナノチューブの充填または個々に行われたナノチューブの充填は、ほぼ同じ結果を生じ、ナノチューブは磁性ナノ粒子で充填される。磁性粒子の密度は非常に高いので、粗い肉眼的な技法によって粒子を探査することができる。特に、磁性粒子で充填されたアルミナ膜は、乾燥後に永久磁石によって容易に引き込むことができる。磁性ナノチューブは液体中に懸濁されると、適用された磁場の方向の変化に従う。図5は、μ0H=0.01テスラの磁場中に置かれた磁性ナノチューブの懸濁液の代表的な挙動を示す。ここで、μ0は真空の透過性である。磁性ナノチューブは、ゴールデンアイランド(golden island)を備えたシリコンウェハの平面に配向されることも(図5(a)および(b)を参照のこと)、ウェハに垂直にフリーズされることもできる(図5(c)を参照のこと)。磁場(field)中で、ナノチューブは、長さがゴールデンアイランドの幅(25μm)より大きい長鎖を形成する。そのパネルから観察されるように、全てのナノチューブは、磁場の適用に対して感受性である。特に、カメラのスポットにおいて観察される全てのナノチューブは、ウェハに対して垂直を保った(図5c)。このことは、充填後の磁性ナノチューブの100%の収量を実証する。 膜内における磁性ナノチューブの磁化の分析は、極めて困難である。なぜならば、充填後の膜の重量の漸進的増加は非常に小さく、利用できる秤では違いを区別できないからである。また、膜をリンスした後ですら、膜表面にいくらかの粒子が残っている。しかし、膜について得た実験的磁化曲線に基づく概算は、膜表面上の磁性粒子が磁化に著しく寄与することを示す。したがって、回転磁場(rotation field)実験を用いて、個々のCNTの磁化パラメータを概算した。回転する磁場において、磁性粒子で充填されたCNTは、磁場に従って回転する。しかし、磁場と共役する磁気モーメントは、各々の個々の磁性粒子の和と見なすことができない。なぜならば、ナノチューブ内に集積された磁性粒子は、多ドメイン磁性ナノチューブを構成するからである。 磁場を適用すると、各磁性粒子の磁気モーメントは、局所磁場に従って回転する。この局所磁場は、隣接部によって複雑に影響を受ける。磁気スピンの運動が第一近似(first approximation)において原子格子(atomic lattice)の変形とは独立して考慮し得る典型的な磁性固体と異なり、充填ナノチューブにおいては、磁性モーメントおよび磁性粒子の回転の両方が相互に関連している。本発明者らの知識の及ぶ限りでは、このような粒状材料の磁化の問題は、これまで文献において考察されたことがない。このことが、CNTの磁性特性の推定を困難にする。しかし、ナノチューブに沿って配向する磁性モーメントに関連する有効磁化の概算は行うことができる。 固定参照系に関して、外部磁場Hの方向と参照軸Xの間の角度は、Ω=ωtとして時間と共に変化する。磁化の軸mであると考えられるナノチューブ軸と、磁場の方向との間の角度はθであり、チューブ回転の以下の式(Landau, L.D. and Lifshitz, E.M. Electrodynamics of continuous media (Pergamon, Oxford 1960))を書くことができる: γ(ω−θ’)=μmHsinθ (1)ここで、ダッシュ(prime)は時間導関数を表し、γはチューブの摩擦係数であり(Doi , M. and Edwards, S. F. The theory of polymer dynamics Oxford University Press, London 1986)、 γ=πηL3/(3ln(L/d)−3A),A−0.8 (2)である。 ここで、Lはチューブ長であり、dはチューブ外径であり、ηは流体粘度である。式(1)に示されるように、θ=定数となる解が存在し、これは、磁場の周波数が、 ωcr=μ0mH/γとなるため消去される。 チューブ長の分散に起因して、異なるCNTは、異なる周波数でスピンを停止する。実験は、CNTについて水ベースの懸濁液を用いて0.007テスラの磁場中で行った。臨界周波数は、fcr=6〜10Hzの間で変化する。これらの値を用いて、磁化は以下の式を介して概算される: m=ωcrγ/μ0H=2π・fcrπηL3[(3ln(L/d)−2.4)μ0H]−1ここで、L=10〜15μm、d=300nm、およびμ0H=0.007テスラである。実験データから、m=5×10−15〜2×10−14A・m2が得られる。磁鉄鉱の飽和磁化がMs=4.46×105A/mである場合(Rosensweig, R.E. Ferrodynamics (Cambridge University Press, Cambridge 1985))、個々の磁性粒子の磁性モーメントは、mg=πMsdg3/6=2×10−19A・m2である。充填ファクターが0.74であると仮定すると、チューブ内の磁性粒子の数は、N〜3×104〜105として概算される。 本発明の充填されたCNTの高い磁化、ならびに多数のポリマー材料に対するCNTの適合性は、本発明に従って製造されるこれらの磁性ナノチューブを、多用途の非常に魅力的な工学材料とする。例えば、機能性ナノ粒子で充填されたCNTは、体内の所望の位置における薬物送達のため、ならびに外科的介入を伴わない診断のためのナノサブマリンとして用いてもよい。 さらに、図5(c)において示す実験は、DNA分離のための流体チップにおけるナノポスト(nanopost)(Bakajin et al. Analytical Chemistry 2001 73:6053-6056; Cao et al. Applied Physics Letters 2002 81 :3058-3060)の代替としてのこれらの磁性ナノチューブの用途を示唆する。すなわち、例えばBakajinら(Analytical Chemistry 2001 73:6053-6056)、Caoら(Applied Physics Letters 2002 81:3058-3060)、Doyleら(Science 2002 295:2237)、およびMincら(Analytical Chemistry 2004 76:3770-3776)に従った所定の様式において、DNAコイルを解いてそれらを分離するために、磁場を適用してナノチューブをフリーズさせ、チューブ間の間隔を変化させることができる。 磁性ナノチューブの用途のリストは、以下を含むように拡大することができるが、これらに決して限定されない:ウェアラブルエレクトロニクスのための材料(Wu et al. Science 2004 305:1273-1276; Zrinyi et al. Polymer Gels and Networks 1998 6:441-454; and Nikitin et al. Polymer Science Series A 2004 46:301-309)、磁力顕微鏡用のカンチレバーチップ(cantilever chip)(Yoshida et al. Physica B-Condensed Matter 2002 323:149-150)、微小流体デバイス用のマグネチックスターラー、およびナノ流体デバイス用のマグネチックバルブ(Brochard, F. and DeGennes, P.G. Journal de Physique 1970 31:691-708)。 したがって、本発明の多用途技術は、複合多機能ナノマシンのナノ工学のための手段を提供する。他の粒子状流体、例えば、量子ドットの溶液もまた用いることができる。先行する研究において、水(Rossi et al. Nano Letters 2004 4:989-993; Naguib et al. Abstracts of Papers of the American Chemical Society, Annual meeting 2003 226:U535)、ならびにグリセリン、アルコール、ベンゼンおよびシクロヘキサンを含む多数の有機流体が、同様の種類のナノチューブ中に封入されることが実証された。したがって、これらの液体ならびに同様の特徴を有する他の液体を、ナノチューブ充填のための他の機能性粒子状物質およびエマルジョン系またはバイオポリマー溶液のためのキャリアとして、本発明に従って用いることができる。 本開示を一読すれば当業者には理解されることであるが、他の粒子状流体、エマルジョンおよびポリマー溶液を、本発明に従って中空CNTを充填してそれらを多機能性ナノ構造に変換するために用いてもよい。例えば、本明細書において記載される方法は、中空CNTを金コロイドナノ粒子で機能的に充填するために用いられた(図7を参照のこと)。カーボンナノチューブ内部の金(Au)ナノ粒子は、局所プラズモン共鳴を誘発し得、表面増強ラマンに用いることができ、単一のナノパイプ(nanopipe)の成分から、またはナノチューブに結合する生物学的分子から、ラマンスペクトルを記録することを可能とする。この同じ技術を、非金属ナノ粒子、特にナノダイヤモンドで中空CNTを充填するためにも用いた(図8を参照のこと)。 本明細書において示されるように、本発明は、CNTを機能性ナノ粒子、特に、磁性ナノ粒子、コロイド状金ナノ粒子、ならびに非金属ナノダイヤモンド粒子で充填する比較的容易で安価かつ迅速な方法を提供する。キャピラリーへの湿潤流体の自然浸透の現象に基づいて、この技術は、磁性ナノチューブのエンジニアリングの扉を開くものである。磁性CNTの磁化は、封入されるナノ粒子の量によって制御され、したがって非常に高くなる。これらの実験において、例えば、チューブ内の磁性粒子の数は104と105の間であった。さらに、湿潤充填(wet filling)後の磁性ナノチューブの収量は十分に高く、100%となる傾向がある。このことの証拠として、図5は、適用される磁場中での磁性ナノチューブの代表的な挙動を示す。ナノチューブの大部分は磁場に従い、したがってこれは、それらが磁性であることを示す。 マイクロ磁気ポイントによる磁性ナノチューブの制御可能な操作は、種々のナノ流体および電子デバイスにおけるこれらの磁性ナノニードルの利用のための直接的な方法を提供する。カーボンナノチューブ内部のAuナノ粒子は、局所プラズモン共鳴を誘発し得、表面増強ラマン分光法において用いることができ、単一のナノパイプの成分からのラマンスペクトルの記録を可能にする。他の粒子状流体、エマルジョンおよびポリマー溶液を、ナノチューブを充填してそれらを多機能ナノ構造に変換するために用いてもよい。例として、中空CNTを非金属ナノダイヤモンド粒子で充填した(図8を参照のこと)。 以下の非限定的な例は、本発明をさらに例示するために提供される。 例1:CNTの合成 全ての実験は、化学気相蒸着(CVD)技術によって製造されたカーボンナノチューブを用いて行った。ナノチューブを、アルミナ膜からなる鋳型の両面を接続する真っ直ぐな円柱状の孔中で形成した。アルミナ膜鋳型はWhatmanRから購入した直径13mmのAnodiscからなった。孔径および膜の厚さが、ナノチューブの寸法を決定する。本明細書において記載される実験について、孔のサイズは、平均300nmであり、膜の厚さは60μmであった。CVDによるCNTの合成は、Bradleyら(Chemistry Preprint Archive 2002 237-242)によって詳細に記載される。 生じたCNTは、片側または両側から開口端を有し、それらの壁は非常に不規則かつ親水性であり、チューブ内への水の進入を可能にする(Rossi et al. Nano Letters 2004 4:989-993; Naguib et al. Abstract of Papers of the American Chemical Society, Annual meeting 2003 226:U535; Ye et al. Nanotechnology 2004 15:232-236)。このことが、有機ベースのフェロフルイドによってのみならず、水ベースのフェロフルイドによってもまたナノチューブを充填することを可能にする。CNTを、以下の市販のフェロフルイドを使用して、磁性粒子で充填した:水ベース(EMG 508)または有機ベース(EMG 911)(Ferrotec Corporation)であって、特徴的な粒子サイズ(characteristic grain size)が10nmである磁鉄鉱粒子(Fe3O4)を担持するもの。 サンプルは、JOEL JEM-2010F(200kV)を使用して、0.23nmの2点間解像度で、透過型電子顕微鏡(TEM)によって特徴付けした。ナノチューブをイソプロパノール中に懸濁し、次いでそれらをレース状のカーボンフィルムでコートされた銅製のグリッド上に置くことによって、TEMサンプルを調製した。110〜120ガウスの強度の外部磁場を用いた実験におけるナノチューブの画像を、Leica DM LFS顕微鏡で、Leica HCX APO 63x/.90 U-V-I液浸レンズおよびMagnaFire SP Model S99805カメラを用いて撮影した。有機ベースのフェロフルイドEMG911で充填されたCNTの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。磁場なしの充填チューブのTEM画像である。個々のナノチューブの充填のプロセスを示した図である。回転するCNT中での磁気モーメントmおよび磁場Hの配向の模式図である。磁場による磁性ナノチューブの操作を示した図である。磁場による磁性ナノチューブの操作を示した図である。磁場による磁性ナノチューブの操作を示した図である。磁性粒子、薬物または量子ドットが封入されたCNTをベースとした、磁気的に駆動されるナノサブマリンを示した図である。コロイド金ナノ粒子で充填されたCNTのTEM画像であり、差込図は、ナノチューブ内部の金ナノ粒子の高解像度TEM画像を示す。ナノダイヤモンド粒子で充填されたCNTのTEM画像である。 機能性ナノ粒子で充填されたカーボンナノチューブを製造するための方法であって: 開口カーボンナノチューブを合成する工程;および 該開口カーボンナノチューブを機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填する工程を含む、前記方法。 開口カーボンナノチューブが、鋳型の内壁へのカーボンナノチューブの化学気相蒸着によって合成される、請求項1に記載の方法。 合成されたカーボンナノチューブが、該カーボンナノチューブを機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填する前に、鋳型から分離される、請求項2に記載の方法。 合成されたカーボンナノチューブが、該カーボンナノチューブを機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填した後に、鋳型から分離される、請求項2に記載の方法。 鋳型がアルミナ膜を含む、請求項2に記載の方法。 機能性ナノ粒子の懸濁液がフェロフルイドを含む、請求項1に記載の方法。 磁性ナノ粒子の懸濁液で充填された中空カーボンナノチューブを含む、磁性カーボンナノチューブ。 中空カーボンナノチューブがフェロフルイドで充填されている、請求項7に記載のカーボンナノチューブ。 コロイド状金ナノ粒子で充填された中空カーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブ。 非金属ダイヤモンドナノ粒子で充填された中空カーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブ。 機能性ナノ粒子の懸濁液またはコロイド溶液で充填されたカーボンナノチューブ、および機能性ナノ粒子で充填されたカーボンナノチューブの製造のための方法を提供する。 20070328A16333全文3 機能性ナノ粒子で充填されたカーボンナノチューブを製造するための方法であって: 開口カーボンナノチューブを合成する工程;および 該開口カーボンナノチューブを機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填する工程を含む、前記方法。 開口カーボンナノチューブが、鋳型の内壁へのカーボンナノチューブの化学気相蒸着によって合成される、請求項1に記載の方法。 合成されたカーボンナノチューブが、該カーボンナノチューブを機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填する前に、鋳型から分離される、請求項2に記載の方法。 合成されたカーボンナノチューブが、該カーボンナノチューブを機能性ナノ粒子の懸濁液または機能性ナノ粒子のコロイド溶液で充填した後に、鋳型から分離される、請求項2に記載の方法。 鋳型がアルミナ膜を含む、請求項2に記載の方法。 機能性ナノ粒子の懸濁液がフェロフルイドを含む、請求項1に記載の方法。 磁性ナノ粒子の懸濁液で充填された中空カーボンナノチューブを含む、磁性カーボンナノチューブ。 中空カーボンナノチューブがフェロフルイドで充填されている、請求項7に記載のカーボンナノチューブ。 コロイド状金ナノ粒子で充填された中空カーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブ。 非金属ダイヤモンドナノ粒子で充填された中空カーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブ。 磁性ナノ粒子の懸濁液で部分的に充填された中空カーボンナノチューブを含む、磁性カーボンナノチューブ。 薬物、量子ドット、ポリマーまたはそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項11に記載の、磁性カーボンナノチューブ。 薬物が腫瘍を攻撃し得るものである、請求項12に記載の磁性カーボンナノチューブ。 量子ドットが光学的に検出可能である、請求項12に記載の磁性カーボンナノチューブ。 ポリマーが生分解性である、請求項12に記載の磁性カーボンナノチューブ。 カーボンナノチューブ、該カーボンナノチューブ内に封入された磁性ナノ粒子、および該カーボンナノチューブ内に封入された量子ドット、薬物またはその両方、を含む、ナノサブマリン。 磁性ナノ粒子が、カーボンナノチューブ内にポリマーによって封入されている、請求項16に記載のナノサブマリン。 ポリマーが、磁性ナノ粒子に隣接する少なくとも1つのポリマー膜を含む、請求項17に記載のナノサブマリン。 少なくとも1つのポリマー膜が、量子ドット、薬物またはその両方に隣接している、請求項18に記載のナノサブマリン。 磁性ナノ粒子がカーボンナノチューブの内側部分に封入され、量子ドット、薬物またはその両方が、カーボンナノチューブの一方または両方の末端部分に封入されている、請求項16に記載のナノサブマリン。 量子ドットおよび薬物の両方がカーボンナノチューブ内に封入されている、請求項16に記載のナノサブマリン。 量子ドットと薬物とが、カーボンナノチューブの同じ部分に封入されているか、カーボンナノチューブの異なる部分に封入されているか、または、これらの任意の組み合わせである、請求項16に記載のナノサブマリン。 量子ドット、薬物またはその両方が、カーボンナノチューブ内に生分解性ポリマーによって封入されている、請求項16に記載のナノサブマリン。 開口カーボンナノチューブの部分を、磁性ナノ粒子、薬物、量子ドット、またはそれらの任意の組み合わせで充填すること、および磁性ナノ粒子、薬物、量子ドット、またはそれらの任意の組み合わせを、カーボンナノチューブ内にポリマーによって封入すること、を含む、ナノサブマリンを作製する方法。 ポリマーが生分解性である、請求項24に記載の方法。 カーボンナノチューブの第1の部分を磁性ナノ粒子で最初に充填し、次いでカーボンナノチューブの1つまたは2つ以上の分離した部分を、薬物および量子ドットで充填する、請求項24に記載の方法。 薬物を、生分解性ポリマーでカーボンナノチューブの末端部分に封入する、請求項26に記載の方法。


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