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タイトル:特許公報(B2)_セルロースの加水分解および/または加水分解物の還元用触媒およびセルロースから糖アルコールの製造方法
出願番号:2008502845
年次:2010
IPC分類:B01J 29/44,B01J 29/74,B01J 23/46,B01J 23/755,C07C 31/26,C07C 29/10,C07C 29/76,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

福岡 淳 デーペ パリッシュ・ラキシミカント JP 4423432 特許公報(B2) 20091218 2008502845 20070301 セルロースの加水分解および/または加水分解物の還元用触媒およびセルロースから糖アルコールの製造方法 国立大学法人北海道大学 504173471 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 福岡 淳 デーペ パリッシュ・ラキシミカント JP 2006054342 20060301 20100303 B01J 29/44 20060101AFI20100210BHJP B01J 29/74 20060101ALI20100210BHJP B01J 23/46 20060101ALI20100210BHJP B01J 23/755 20060101ALI20100210BHJP C07C 31/26 20060101ALI20100210BHJP C07C 29/10 20060101ALI20100210BHJP C07C 29/76 20060101ALI20100210BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100210BHJP JPB01J29/44 ZB01J29/74 ZB01J23/46 301ZB01J23/74 321ZC07C31/26C07C29/10C07C29/76C07B61/00 300 B01J 21/00-38/74 WPI JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) Science Direct 特開2004−532275(JP,A) 18 JP2007053935 20070301 WO2007100052 20070907 26 20090120 岡田 隆介関連出願の相互参照 本出願は、2006年3月1日出願の日本特願2006−54342号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。 本発明は、セルロース加水分解還元触媒およびセルロースから糖アルコールの製造方法に関する。特に本発明は、セルロースから直接糖アルコールを製造できる触媒およびこの触媒を利用したセルロースから糖アルコールの製造方法に関する。本発明において製造される糖アルコールは、特に、ソルビトール及び/又はマニトールである。 バイオマスは再生可能な資源であり、二酸化炭素の排出抑制により地球温暖化の防止に役立つ。バイオマスからの化学品製造(バイオリファイナリー)では、酵素法、化学法によりエタノール、乳酸などの有用化学品への変換プロセスの検討が行われている。現在、バイオリファイナリーの原料としてはとうもろこし由来のデンプンが主に用いられているが、植物の主構成成分として資源量の上でデンプンよりも圧倒的に多く存在するセルロースを低分子化して有用化学品に変換する技術開発は遅れており、ほとんど手つかずの状態である(越島ら、機能性セルロース、シーエムシー出版(2003)、日本エネルギー学会編、バイオマスハンドブック、オーム社(2002)参照、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される)。例えば、酵素によるセルロースの分解について多くの研究が行われているが、酵素法では反応速度が低く活性の大幅な向上と酵素と生成物の分離が必要という大きな問題が残っている。一方、触媒によるセルロース分解としては、硫酸やフッ酸で加水分解してグルコースを得るプロセスが試みられてきたが、酸による装置腐食、危険性、大量の中和廃棄物の生成など環境負荷が大きいため実用化には至っていない。 触媒によるセルロース化学変換の先行研究としては、BalandinとVasyuninaらが硫酸水溶液中、担持ルテニウム触媒による水素化を行っており、亜硫酸セルロースからソルビトールが82%の収率で生成している(A. A. Balandin, N. A. Vayunina, G. S. Barysheva, S. V. Chepigo, Izv. Akad. Nauk SSSR, Ser. Khim., 392 (1957)参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)。しかし、セルロースそのものを原料とした結果は記載されていない。また、この反応では硫酸を使用しているため生成物の分離が必要であり、中和廃棄物の生成、装置腐食という問題も生じる。さらに同グループは、絹セルロースをアルカリと酸で処理したものを原料として、水溶液中で硫酸ニッケルを添加し担持ニッケル触媒で水素化してソルビトールを得ている(N. A. Vasyunina, A. A. Balandin, G. S. Barysheva, S. V. Chepigo, Yu. L. Pogpsov, Z. Prik. Khim., 37, 2725 (1964)参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)。ここでも、セルロースの前処理が必要であるとともに反応後の生成物分離が容易ではない。Spechtらはセルロースとヘミセルロースを含む混合物を加水分解処理したものを原料に用い、pH 8以上に調整し担持ニッケル触媒による水素化で糖アルコールを合成しているが(H. Specht and H. Dewein, DE 1066567 (1959)参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)、セルロースの前処理とpH調整が必要である。 セルロースは水に不溶性であるが、類似の構造をもつデンプンは大部分のものが水溶性である。水溶性デンプンの加水分解・水素化反応は容易に進行するため、これまでに多くの研究が行われている。Atlas Powder社はNi/珪藻土を触媒としてデンプンの水素化によりポリオールを得ている(Atlas Powder, GB 872809 (1961)参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)。 また、KruseらはRu/USY触媒によりコーンデンプンから二段階でソルビトールを合成している(W. M. Kruse and L. W. Wright, US 3963788 (1976)参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)。 Jacobsらは、Ru/USY触媒により一段階でソルビトールを合成している(P. Jacobs and H. Hinnekens, EP 0329923 (1989)、日本特開平1-268653号公報、または英文ファミーであるEP0329923A1、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される)。これらの文献では、水に不溶性のセルロースの水素化は行われていない。さらに、触媒はRu分散度0.58以上の高分散触媒に限定されている。 上記のように、従来のセルロースの加水分解・水素化によるソルビトール等の糖アルコールの製造においては、いずれも酸またはアルカリでセルロースを処理して水溶性にしたものを反応基質として用いており、水に不溶のセルロースそのものを反応させた例はなかった。さらに、触媒と生成物の分離、pH調整、酸・アルカリの中和、触媒再使用時に活性化が必要など環境に与える負荷が大きいという問題もあった。 そこで本発明の目的は、セルロースを前処理することなく利用でき、触媒と生成物の分離が容易であり、かつpH調整、酸・アルカリの中和、触媒再使用時の活性化が不要な、セルロースの加水分解・水素化による糖アルコール製造用の触媒、およびこの触媒を用いたセルロースから糖アルコールの製造方法を提供することにある。 上記課題を解決するために、本発明者らが、固体触媒によるセルロースの低分子化を目的として反応を行ったところ、下記反応式に示すように、担持金属触媒により水中、水素加圧下においてセルロースの加水分解と水素化反応が進行して、糖アルコール(ソルビトールとマニトール)を一段合成できることを見いだした。 本発明は以下のとおりである。[1]セルロースを加水分解するために用いられる、固体担体に8〜10族の遷移金属が担持されたセルロースの加水分解および/または加水分解物の還元用触媒。[2]固体担体は、少なくとも一部が多孔質材料からなる[1]に記載の触媒。[3]固体担体は、少なくとも一部が無機酸化物からなる[1]または[2]に記載の触媒。[4]固体担体は、少なくとも一部が酸性を示す材料からなる[1]〜[3]のいずれかに記載の触媒。[5]固体担体は、少なくとも一部がシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、活性炭から成る群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれかに記載の触媒。[6]固体担体が粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ハニカム構造、押出し型、リング状、円柱状、リブ押出し型、リブリング状を呈する[1]〜[5]のいずれかに記載の触媒。[7]遷移金属が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケル、コバルトおよび鉄から成る群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[6]のいずれかに記載の触媒。[8]遷移金属が、0.01〜0.6の分散度で固体担体表面に担持されている[1]〜[7]のいずれかに記載の触媒。[9]遷移金属が、0.01〜60質量%担持されている[1]〜[8]のいずれかに記載の触媒。[10]セルロースを加水分解し、かつセルロースの加水分解物を還元するために用いられる[1]〜[8]のいずれかに記載の触媒。[11][1]〜[9]のいずれかに記載の触媒の存在下、かつ水素含有雰囲気であり、かつ加圧下で、セルロースを加水分解し、かつセルロースの加水分解物を還元することを含む糖アルコールの製造方法。[12]セルロースが結晶性を有する、または結晶性を低下させたα−セルロースである[11]に記載の製造方法。[13]加水分解および還元は、水の存在下で行う[11]または[12]に記載の製造方法。[14]触媒の使用量は、セルロースに対して質量比0.05〜5とする[11]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。[15]水素含有雰囲気は、1〜100MPaの水素圧とする[11]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。[16]加水分解および還元は、150〜250℃の加熱下で行う[11]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。[17]糖アルコールがソルビトール及び/又はマニトールである[11]〜[16]のいずれかに記載の製造方法。[18]加水分解および還元終了後、反応混合物を固液分離に供し、糖アルコールを含む水溶液と少なくとも触媒および未反応セルロースを含む固体とを分離する[11]〜[17]のいずれかに記載の製造方法。 本発明の特徴は以下のとおりである。1.セルロースを原料として糖アルコール(ソルビトールとマニトール)が直接合成できることを初めて見いだした。糖アルコールのうち主成分はソルビトールである。2.触媒のうち、担持PtおよびRu触媒が高活性を示すことを見いだした。デンプンからソルビトールを合成する先行特許触媒Ru/HUSYに相当する触媒(図1中のRu/HUSY(2.9, NH3, IE))は、本セルロース反応ではきわめて低い活性(収率0.7%)しか示さない。従って、今回見いだした触媒によって初めてセルロースの反応が可能となった。無機酸化物担体のなかで、固体酸性を示すものが高活性を与える。3.分離した触媒はそのまま再使用できる。活性化処理は必要ない。 ソルビトールは糖アルコールの一種であり、その用途は三つある。第一は甘味料としての用途であり、現在、食品工業で広く用いられている。第二は将来的な用途であり、イソソルビド、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、1,4-ソルビタン、乳酸など有用化合物の合成中間体とするものである。特にイソソルビドは、ポリエチレンテレフタレート(PET)製造時に共重合させてポリエチレンイソソルビドテレフタレート(PEIT)の製造が現行プロセスでも行われている。このPEITポリマーはPETよりもガラス転移点が高いので、お湯を入れられる透明プラスチック容器としての用途が期待されている。第三も将来的な用途であり、バイオマスから再生可能な水素と液体炭化水素(主成分はC5,C6アルカン)を製造する中間体とすることである。水素は燃料電池用であり、炭化水素は石油化学原料となる。担持金属触媒を用いてグルコースやソルビトールから水素を製造することが可能であるが、Dumesicらの研究によれば水素およびアルカン選択率はグルコースよりもソルビトールを原料とする方が高い(J. A. Dumesic et al., Chem. Commun., 36 (2004))。従って、本発明の成果を応用すれば、セルロース原料からソルビトールを中間体として燃料電池用水素や石油化学用炭化水素を製造することが可能となる。マニトールはソルビトールのC2位の異性体(エピマー)であり、その性質はソルビトールと同様である。[触媒] 本発明の触媒は、固体担体に8〜11族の遷移金属が担持されたセルロースの加水分解および/または加水分解物の還元用触媒である。加水分解物とは、セルロースの加水分解物であり、具体的にはグルコースである。固体担体 本発明の触媒に用いられる固体担体は、少なくとも一部が多孔質材料からなるものであることが適当であり、多孔質材料の表面に遷移金属が担持されることが適当である。したがって、本発明の触媒に用いられる固体担体は、少なくとも遷移金属が担持される部分の表面が多孔質材料からなることが適当であり、固体担体全体が多孔質材料からなっていても、あるいは非多孔質材料からなる支持体の表面に多孔質材料が被覆されたものであっても良い。また、支持体が別の多孔質材料からなっていても良い。 本発明の触媒に用いられる固体担体は、少なくとも一部が、例えば、無機酸化物からなることができる。そして、無機酸化物は前記多孔質材料であることが好ましい。さらに、本発明の触媒に用いられる固体担体は、少なくとも一部が、酸性を示す固体担体であることが好ましく、酸性を示す固体担体は前記多孔質材料であることが好ましい。本発明者らの検討の結果、固体担体はPt等の金属により水素分子が解離して担体上にプロトン酸点を発現するものが好ましい。 固体担体の具体例としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、活性炭を挙げることができる。 シリカのうち、アモルファスシリカとして和光純薬工業(株):ワコーゲル(C-100、C-100E、C-200、C-200E、C-300、C-300E、C-300HG、C-400HG、C-500HG、50C18、100C18、DX、FC-40、FC-40FM、G、LP-20、LP-40、LP-60、Q-12、Q-22、Q-23、Q-50、Q-63、S-1)、ワコーシル(C-200、C-300、25SIL、25C18、40SIL、40C18)、関東化学(株):シリカゲル(60、60N)、メルク(株):Silica gel (40、60、100)、シグマアルドリッチジャパン(株):Silica gel (03, 12, 15, 22, 40, 41, 62, 922, 923, high-purity grade, 70-230 mesh 60 A, 70-270 mesh 60 A, 130-270 mesh 60 A, 200-400 mesh 60 A), Silicon dioxide(particle size 0.5-10 μm)、富士シリシア(株):CARiACT (Q, G, P)、Grace Davison社:Davisil (633, 634, 635, 636, 643, 644, 645, 646, 710)、デグサ社(日本アエロジル(株)):Aerosil (90, 130, 150, 200, 300, 380)、日揮化学(株):シリカ触媒(N601, N601A, N601T, N601R3, N601A3, N601T3, N602, N602A, N602T, N608R, N608A, N608T)、触媒学会:シリカ参照触媒(JRC-SIO-1、JRC-SIO-5、JRC-SIO-6、JRC-SIO-7、JRC-SIO-9A)、Riedel-de Haen社:Cabosil M-5等を挙げることができる。 メソポーラスシリカとしては、細孔径2-50 nm、表面積500-1500 m2 g-1のものでFSM-16(S. Inagaki, et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680 (1993)、MCM-41 (C. T. Kresge, et al., Nature, 359, 710 (1992); J. S. Beck, et al. J. Am. Chem. Soc., 114, 10834 (1992)).、SBA-15 (D. Zhao, et al., Science, 279, 548 (1998)、太陽化学(株):NPM(ナノポーラスマテリアル、孔径1-10nm)シグマアルドリッチジャパン(株):Silica (mesostructured, hexagonal framework, MCM-41 type)等を挙げることができる。 アルミナとしては、例えば、ガンマ-アルミナとして和光純薬工業(株):活性アルミナ、関東化学(株):酸化アルミニウム(α型、NanoTek、活性)、メルク(株):Alumina (90, 90(activated, acidic, activity I), 90(activated, basic, activity I), 90(activated, neutral, activity I))、シグマアルドリッチジャパン(株):Aluminum oxide (99.99%, -100 mesh 99.9%, powder <10 micron, nanopowder, nanopowder whiskers, -100 mesh 99%, pellets 3 mm, activated acidic Brockmann I, activated weakly acidic Brockmann I, activated basic Brockmann I, activated neutral Brockmann I, fused).、西尾工業(株):ガンマ-アルミナA-11、日揮化学(株):アルミナ触媒(N611N, N611N3, N612N, N613N)、触媒学会:アルミナ参照触媒(JRC-ALO-1, JRC-ALO-2, JRC-ALO-3, JRC-ALO-5, JRC-ALO-1A, JRC-ALO-5A, JRC-ALO-6, JRC-ALO-7, JRC-ALO-8)等を挙げることができる。 チタニアとしては、ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型であり、例えば和光純薬工業(株):酸化チタン(IV)(アモルファス、アナターゼ型、ルチル型、80nm)、関東化学(株):酸化チタン(IV)(ルチル型、アナターゼ型、3N、NanoTek)シグマアルドリッチジャパン(株):Titanium(IV) oxide (99.999%, 99.99%, mesoporous 32A pore 99.95%, powder <5 micron 99.9+%, powder 99.9+%, -325 mesh 99+%、日本アエロジル(株):AEROXIDE TiO2 (NKT90, P25, PF2, T805)、堺化学工業(株):酸化チタン(SR-1, R-42, R-GL, R-GX, R-GX-2, R-45M, R-650, R-32, R-5N, R-5N-2, R-61N, R-62N, R-7E, R-3L, R-3L-SN, R-11P, R-21, R-25, R-310, D-918, A-110, A-150, ST-G, A-190, SA-1, SA-1L)、石原産業(株):超微粒子酸化チタン(TTO-51(A), TTO-51(C), TTO-55(A), TTO-55(B), TTO-55(C), TTO-55(D), TTO-S-1, TTO-S-2, TTO-S-3, MPT-136, TTO-V-3, TTO-V-4, TTO-F-2, TTO-F-6)、中性チタニアゾルTSK-5、触媒担体用酸化チタン(MC-50, MC-90, MC-150)、光触媒酸化チタン(ST-01, ST-21, ST-31, ST-41, ST-30L)、触媒学会:チタニア参照触媒(JRC-TIO-1, JRC-TIO-2, JRC-TIO-4, JRC-TIO-5, JRC-TIO-6, JRC-TIO-7, JRC-TIO-8, JRC-TIO-9, JRC-TIO-10, JRC-TIO-11, JRC-TIO-12, JRC-TIO-13)等を挙げることができる。 シリカ−アルミナとしては、シグマアルドリッチジャパン(株):Silica-alumina catalyst support grade 135、日揮化学(株):シリカ・アルミナ触媒(N631L, N631HN, N632L, N632HN, N633L, N633HN)、触媒学会:シリカ・アルミナ参照触媒(JRC-SAH-1、JRC-SAL-2)等を挙げることができる。 ゼオライトとしては、ベータ型(構造コードBEA、以下同じ) 触媒学会:ゼオライト(ベータ)参照触媒 JRC-Z-B25(1)、JRC-Z-HB25(1)、JRC-HB150(1)、Zeolyst社:CP814N*, CP814E*, CP814C*, CP814Q*, CP811E-150, CP811C-300、東ソー(株):930NHA, 940NHA, 940HOAY型(FAU) シグマアルドリッチジャパン(株):Molecular sieves catalyst support, sodium Y Zeolite, powder; Molecular sieves catalyst support, ammonium Y Zeolite, powder、触媒学会:ゼオライト(Y型)参照触媒 JRC-Z-Y4.8、JRC-Z-Y5.6、JRC-Z-HY4.8(2)、JRC-Z-Y5.5、JRC-Z-Y5.3、JRC-Z-HY5.5、JRC-Z-HY5.3、UOP LLC社:Y-52(NaY), Y-64(NH4Y), Y-74(HY), Y-84(NH4Y), LZ-15(HY)、Zeolyst社:CBV100, CBV300, CBV400, CBV 600, CBV 712, CBV 720, CBV 740, CBV760, CBV780, CBV 901)、東ソー(株):320NAA, 320HOA, 331HSA, 341NHA, 350HUA, 360HUA, 385HUA, 390HUA、触媒化成工業(株):ZCP-50S, ZCP-50, ZCP-150, ZCP-300, ZCP-700, ZCP-1000, ZCP-2000, ZCE-50S, ZCE-50, ZCE-150〜2000, ZCB-50S, ZCB-2000。なお、本稿ではY型のゼオライトのうち脱アルミ処理を施したものをUSY、しないものを単にYと呼ぶことにする。従って、陽イオンがプロトンのものをそれぞれHUSY、HYと記す。ZSM-5型(MFI) 触媒学会:ゼオライト(ZSM-5)参照触媒 JRC-Z5-25H、JRC-Z5-70H、JRC-Z5-1000H、JRC-Z5-70NA、JRC-Z5-1000NA、JRC-Z5-90NA(1)、JRC-Z5-90H(1)、Zeolyst社:CBV2314, CBV3020E, CBV3024E, CBV5524G, CBV8014, CBV28014モルデナイト型(MOR) 触媒学会:ゼオライト(モルデナイト)参照触媒 JRC-Z-M15(1), JRC-Z-M20(1), JRC-Z-HM20(5), JRC-Z-HM90(1)、Zeolyst社:CBV10A, CBV21A, CBV90A、東ソー(株):642NAA, 640HOA, 690HOAを挙げることができ、Y型のうち脱アルミ処理をしたUSY型が好ましい。 活性炭としては和光純薬工業(株):活性炭素(クロマトグラフ用、破砕状0.2〜1mm、破砕状2〜5mm、顆粒状、粉末、粉末酸洗浄、粉末アルカリ性、粉末中性、棒状)、関東化学(株):活性炭素(粒状、粉末)シグマアルドリッチジャパン(株):Activated carbon granule 4-14 mesh日本ノリット(株):PK, PKDA 10x30 MESH (MRK), ELORIT, AZO, DARCO, HYDRODARCO 3000/4000, DARCO LI, PETRODARCO, DARCO MRX, GAC, GAC PLUS, DARCO VAPURE, GCN, C GRAN, ROW/ROY, RO, ROX, RB/W, R, R.EXTRA, SORBONORIT, GF 40/45, CNR, ROZ, RBAA, RBHG, RZN, RGM, SX, SA, D 10, VETERINAIR, PN, ZN, SA-SW, W, GL, SAM, HB PLUS, A/B/C EUR/USP, CA, CN, CG, GB, CAP/CGP SUPER, S-51, S-51 A, S-51 HF, S-51 FF, DARCO GFP, HDB/HDC/HDR/HDW, GRO SAFE, DARCO INSUL, FM-1, DARCO TRS, DARCO FGD/FGL/Hg/Hg-LH, PAC 20/200日本エンバイロケミカルズ(株):白鷺(A、C、DO-2、DO-5、DO-11、FAC-10、M、P、PHC、エレメントDC)、アルデナイト、カルボラフィン、カルボラフィンDC、ハニカムカーボ白鷺、モルシーボン、強力白鷺、精製白鷺、特製白鷺、X-7000/X7100、X7000-3/X-7100-3、LPM006、LPM007、粒状白鷺(APRC、C2c、C2x、DC、G2c、G2x、GAAx、GH2x、GHxUG、GM2x、GOC、GOHx、GOX、GS1x、GS2x、GS3x、GTx、GTsx、KL、LGK-100、LGK-400、LGK-700、LH2c、MAC、MAC-W、NCC、S2x、SRCX、TAC、WH2c/W2c、WH2x、WH5c/W5c、WHA、X2M(モルシーボン5A)、XRC、X7000H/X7100H、X7000H-3/X7100-3、LGK-700、DX7-3)クラレケミカル(株):気相用粒状活性炭GG/GS/GA、気相用活性炭GW/GL/GLC/KW/GWC、粉末活性炭PW/PK/PDX三菱化学カルゴン(株):ダイヤホープ(006, 006S, 007, 008, 008B, 008S, 106, 6D, 6MD, 6MW, 6W, S60, C, DX, MM, MZ, PX, S60S, S61, S70, S80, S80A, S80J, S80S, S81, ZGA4, ZGB4, ZGN4, ZGR3, ZGR4, ZS, ZX-4, ZX-7)、ダイヤソープ(F, G4-8, W 8-32, W 10-30, XCA-C, XCA-AS, ZGR4-C)、カルゴン(AG 40, AGR, APA, AP3-60, AP4-60, APC, ASC, BPL, BPL 4x10, CAL, CENTAUR 4x6, CENTAUR 8x30, CENTAUR 12x40, CENTAUR HSV, CPG 8x30, CPG 12x40, F-AG 5, Filtrasorb 300, Filtrasorb 400, GRC 20, GRC 20 12x40, GRC 22, HGR, HGR-LH, HGR-P, IVP 4x6, OL 20x50, OLC 20x50, PCB, PCB 4x10, RVG, SGL, STL 820, URC, WS 460, WS 465, WS 480, WS490, WSC 470)味の素ファインテクノ(株):BA, BA-H, CL-H, CL-K, F-17, GS-A, GS-B, HF, HG, HG-S, HN, HP, SD, Y-180C, Y-4, Y-4S, Y-10S, Y-10SF, YF-4, YN-4, YP, ZN(株)キャタラー: Aシリーズ、BC-9、BFGシリーズ、CTシリーズ、DSWシリーズ、FM-150、FW、FYシリーズ、GA、PGシリーズ 、WAシリーズを挙げることができ、比表面積が800〜1500 m2g-1のものが好ましい。 固体担体の形状、形態は、特に制限されないが、例えば、粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ハニカム状、押出し型、リング状、円柱状、リブ押出し型、リブリング状を呈することができる。粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状の担体は、例えば、前記の多孔質材料、酸化物または酸性を呈する材料のみからなることができる。それに対してハニカム構造の担体は、非多孔質材料、例えば、コージエライト等からなる支持体の表面に前記の多孔質材料、酸化物または酸性を呈する材料が被覆されたものであっても良い。また、前述のように支持体は、別の多孔質材料からなっていても良い。 遷移金属が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、銀および金から成る群から選ばれる少なくとも1種である。これら遷移金属は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。遷移金属としては、触媒活性が高いという観点からは、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムの白金族金属から選ばれることが好ましい。 遷移金属は、0.01〜0.95の分散度、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.3〜0.8の分散度で固体担体表面に担持されていることが適当である。分散度が低すぎると、金属の凝集により水素分子からのプロトン生成速度が減少して、反応速度は低下する。遷移金属の分散度は、以下のように調整出来る。原料として用いる遷移金属化合物の量、触媒調製時に酸素焼成するときの温度条件(昇温速度、最高温度)および水素還元するときの温度条件(昇温速度、最高温度)で調整できる。 遷移金属の固体担体への担持量は、遷移金属の種類や分散度を考慮して適宜決定されるが、例えば、触媒の0.01〜50質量%、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.01〜10質量%であることが適当である。 本発明の触媒は、通常の金属担持固体触媒の製造方法を参照して製造することが出来る。例えば、含浸法により次のように調製する。 担体を150℃で1時間、真空乾燥する。次に水を加えて分散させ、ここに所定量の金属塩を含む水溶液を加えて15時間撹拌する。その後、減圧で水を留去して得られた固体を酸素気流下、400℃で2時間、焼成する。さらに、水素気流下、400℃、2時間、還元して得られた固体を触媒とする(下のフローチャート図)。 本発明の触媒は、セルロースの加水分解物を還元するために用いられる。即ち、セルロースの加水分解物であるグルコースを還元して糖アルコールを調製するために用いることができる。あるいは、本発明の触媒は、セルロースを加水分解し、かつセルロースの加水分解物を還元するために用いられる。即ち、セルロースを加水分解してグルコースとし、さらにこのグルコースを還元して糖アルコールを調製するために用いることができる。本発明の触媒が加水分解する対称であるセルロースについて、以下の糖アルコールの製造方法において詳述する。[糖アルコールの製造方法] 本発明の糖アルコールの製造方法は、上記本発明の触媒の存在下、かつ水素含有雰囲気下で、セルロースを加水分解し、かつセルロースの加水分解物を還元することを含む。 原料となるセルロースには特に制限はなく、市販されている粉末状のセルロースをそのまま用いることができる。セルロースは植物性のものであり、例えば、脱脂木粉を塩素処理で漂白して得られる化学パルプ(ホロセルロース)をアルカリ処理してヘミセルロースを除いた、水に不溶のα−セルロースである。 一般に、セルロースは、2本またはそれ以上のα−セルロースが水素結合により結合して、結晶性を示す。本発明では、そのような結晶性を有するセルロースを原料として使用することもできるが、そのような結晶性セルロースを、結晶性低下のための処理を施して結晶性を低下させたセルロースも用いることができる。結晶性を低下させたセルロースは、結晶性を部分的に低下させたものでも、完全にまたはほぼ完全に消失したものであることもできる。結晶性低下処理の種類には特に制限はないが、上記水素結合を切断して、1本鎖のα−セルロースを少なくとも部分的に生成できる結晶性低下処理であることが好ましい。少なくとも部分的に1本鎖のα−セルロースを含むセルロースを原料とすることで、加水分解の効率を大幅に向上することができる。 原料となるセルロースの結晶性低下処理としては、ボールミル法などの、物理的にα−セルロースの水素結合を切断して1本鎖のα−セルロースを得る方法(H. Zhao, J. H. Kwak, J. A. Franz, J. M. White, J. E. Holladay, Energy & Fuels, 20, 807 (2006)参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)や、リン酸処理などの、化学的にα−セルロースの水素結合を切断して1本鎖のα−セルロースを得る方法(Y. -H. P. Zhang, J. Cui, L. R. Lynd, L. Kuang, Biomacromolecules, 7, 644 (2006) 参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)を挙げることができる。セルロースの結晶性低下処理では、セルロースの結晶性低下を完全に消失させるまでの処理でなくても、実施例7に示すように、処理前のセルロースが有する結晶性を部分的にでも低下させたセルロースを原料とすることで、加水分解の効率を大幅に向上することができる。 さらに、原料となるセルロースの結晶性低下処理としては、例えば、加圧熱水処理(林信行、藤田修二、入江剛郎、坂本剛、柴田昌男、J. Jpn. Inst. Energy, 83, 805 (2004)、M. Sasaki, Z. Fang, Y. Fukushima, T. Adschiri, K. Arai, Ind. Eng. Chem. Res., 39, 2883 (2000)参照、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される)を挙げることができる。 加水分解および還元は、水の存在下で行う。水の存在量は、少なくともセルロースを全量加水分解できる量とし、より好ましく、反応混合物の流動性や攪拌性等を考慮して、セルロースに対して、例えば、質量比5〜500の範囲とすることが出来る。 触媒の使用量は、触媒の活性、反応条件(例えば、温度、時間、水素圧等)を考慮して、適宜決定できるが、例えば、セルロースに対して、質量比0.05〜5の範囲とすることが適当である。 反応雰囲気は、水素含有雰囲気とするが、水素含有雰囲気は、例えば、1〜100MPaの水素圧、好ましくは1.5〜50、好ましくは2〜20MPaの水素圧とすることが適当である。 加水分解および還元は、例えば、150〜250℃の加熱下で行うことが適当である。好ましくは180〜230℃の加熱下、より好ましくは190〜210℃の加熱下で行うことが適当である。 加水分解および還元の反応時間は、反応の規模や、反応条件、触媒とセルロースの使用量等を考慮して適宜決定できるが、通常、1〜100時間とすることが適当である。また、反応の形式は、バッチ式または連続式等のいずれでもよい。さらに、反応は、反応混合物を攪拌しながら行うことが好ましい。 加水分解および還元終了後、反応混合物を固液分離に供し、液相として糖アルコールを含む水溶液を回収し、固相として少なくとも触媒および未反応セルロースを含む固体を分離する。固液分離方法には、特に制限はなく、触媒の形状、形態等や未反応セルロースの存在量等を考慮して常法から適宜決定できる。例えば、濾過法、遠心分離法、沈降法等を利用できる。触媒および未反応セルロースを含む固体は、次の反応にそのまま供することが出来る。 本発明の触媒は、再使用に際して、特に活性する必要はない。しかし、例えば、通常の金属担持固体触媒の活性化を用いて、活性化した後に再使用することも出来る。 触媒の活性化処理としては、触媒を水で洗浄して乾燥後、水素気流下、200〜500℃で1〜5時間加熱することにより、担持金属表面を還元状態に戻すとともに金属および担体上の残留有機物を熱分解して除き、使用することができる。 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。[実施例1]1.1 触媒の調製 触媒担体としては、アモルファスシリカ(以下SiO2と表記、富士シリシア化学(株)キャリアクトQ-10)、メソポーラスシリカ(FSM-16、自作 (S. Inagaki, et al.、J. Chem. Soc., Chem. Commun.,680 (1993)))、ガンマ-アルミナ(γ-Al2O3、西尾工業(株)A-11)、チタニア(TiO2、Merck社)、ジルコニア(ZrO2、和光純薬工業(株))シリカ−アルミナ(SiO2-Al2O3、Sigma-Aldrich社grade 135)、HY(Zeolyst社CBV600、Si/Al原子比2.6)、HUSY(Zeolyst社CBV720(Si/Al比15)、740(同20)、760(同30)、780(同40)、HUSY(触媒化成工業(株)ZCP-2000、Si/Al比100)、ZSM-5(Zeolyst社CBV4024E)、H-β(触媒学会参照 触媒JRC-Z-B25(1))、HMOR(触媒学会参照 触媒JRC-Z-M15(1))、活性炭(武田薬品工業(株)(現、日本エンバイロケミカルズ(株))LPM007)を用いた。NaY(Union Carbide社LZY-52)から特許文献4、5に記載の方法により調製したHUSYは蛍光X線分析よりSi/Al比2.9であることが分かった。以下、HUSYを区別するためにSi/Al原子比を括弧内に入れてHUSY(40)のように記すことにする。ZSM-5は空気中550℃で8時間焼成してHZSM-5とした。担体は前処理として150℃で1時間、加熱排気を施してから触媒調製に用いた。金属原料としては、市販の塩化白金酸(H2PtCl6・xH2O)、塩化ルテニウム(RuCl3・xH2O)、塩化ヘキサアンミンルテニウム([Ru(NH3)6]Cl3)、塩化ロジウム(RhCl3・xH2O)、塩化パラジウム(PdCl2)、塩化イリジウム(IrCl3・xH2O)、塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)を用いた。PdCl2は水に不溶性なので、少量の塩酸を加えてエバポレーターで真空蒸留し水溶性のH2PdCl4として用いた。その他の金属塩はそのまま使用した。水はイオン交換水を用いた。 触媒の調製方法としてPt/HUSY(40)の例を以下に示す。HUSY(40)粉末(200 mg)を真空ラインにより150℃で1時間加熱して乾燥した(真空度約10-3 Torr = 0.13 Pa)。室温に冷却後、水(20 ml)を加えて粉末を分散させた。これにH2PtCl6・xH2O(15 mg)の水溶液(5 ml)を加えて、室温で15時間撹拌した。その後、エバポレーターで水を蒸発させ、得られた粉末を真空ライン中、室温で2時間真空乾燥した。次に、粉末をガラスU字管に入れ、酸素ガス流通下(流量20 ml/min)、400℃で2時間加熱して焼成した。室温に冷却後、窒素ガスを流して酸素を除いた後、水素ガス流通下(流量20 ml/min)、400℃で2時間加熱して還元した。室温に冷却後、窒素ガスを流して水素を除き粉末を回収した。触媒中の金属担持量はNi/SiO2-Al2O3では60質量%としたが、それ以外は2.5質量%とした。なお、HUSY(2.9)にRuを担持した触媒については[Ru(NH3)6]Cl3を原料としてイオン交換(IE)法[特許文献4、5]により調製したRu/HUSY(2.9, NH3, IE)の他に、[Ru(NH3)6]Cl3の含浸担持・蒸発乾固(IMP)法によるRu/HUSY(2.9, NH3, IMP)、およびRuCl3・xH2Oの含浸担持・蒸発乾固法によるRu/HUSY(2.9, Cl, IMP)も調製して触媒活性を比較した。別途、HUSY(20)にRuCl3・xH2Oを含浸担持し蒸発乾固法で調製したRu/HUSY(20, Cl, IMP)も触媒として用いた。 パルス法による一酸化炭素吸着による分散度(CO/Pt、Quantachrome社 Chembet-3000により測定)を表1に示す。担体によりPtの分散度は大きく異なる。また、Ru触媒の分散度は0.01〜0.03程度と特許文献4、5で記載されている値よりも低くなった。これは、Ru表面が空気に対して敏感で、操作中に混入した微量空気で表面が酸化されたためと思われる。しかし、このRu触媒を用いてデンプンの加水分解・水素化を行うと特許文献4、5と同様に高活性を示し触媒性能は失われていないので、以後の実験でそのまま用いた。1.2 触媒反応 Pt/HUSY(40)での反応手順を示す。以下、この条件を標準条件と呼ぶ。ステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)、TPR2型、内容積30 ml)にセルロース0.16 g(Merck社、微結晶、粒径20-160μmが80%以上)、Pt/HUSY(40)(0.068 g)、水20 gおよび撹拌子をいれて蓋を閉じた。このとき、セルロース中のC6H10O5単位のモル数Sは0.99 mmolとなり、触媒中の金属の全原子数をCとしてS/C = 110とした。触媒をかえるときにはS/C = 110となるように触媒質量を調節し、Pt触媒0.068 g、Ru触媒0.036 g、Rh触媒0.037 g、Pd触媒0.037 g、Ir触媒0.068 g、Ni触媒0.009 gとした。次に、室温で5 MPaの水素ガスを導入した。オートクレーブを190℃のオイルバスに入れ、磁気撹拌機で撹拌しながら24時間反応させた。その後、室温に冷却して残存水素ガスを抜いて常圧に戻し、オートクレーブの蓋を開けて内容物を回収した。 生成物の分析は、液体クロマトグラフ(島津製作所LC10ATVP、示差屈折検出器、カラム:Shodex Asahipak NH2P-50 4Eまたは島津Shim-pack SPR-Ca)を用いて行った。糖アルコール(ソルビトールとマニトール)の同定は液体クロマトグラフ−質量分析(島津LCMS-2010A)で行った。ソルビトールの収率は、仕込みセルロースのC6H10O5単位のモル数Sを基準にした生成ソルビトールのモル数Pの割合とした:ソルビトールの収率(%)=(生成ソルビトールのモル数P)/(仕込みセルロースのC6H10O5単位のモル数S)× 100。マニトールの収率も同様にして算出した。[実施例2] 各種担持金属触媒を用いて標準条件で反応を行った結果を図1に示す。ほとんどの場合について、セルロースの加水分解・水素化が触媒的に進行して糖アルコールが生成し、このうちソルビトールが主生成物となった。例えば、Pt/γ-Al2O3触媒で生成する糖アルコール収率は18%であるが、その内訳はソルビトールが15%でマニトールが3%となった。他の触媒でも同様の生成物選択率となった。この反応条件では、Pt/HUSY(40)とPt/SiO2-Al2O3が20%以上の糖アルコール収率を与え、活性が高いことが分かった。金属の活性序列はPt > Ru > Pd > Rh > Ni > Irの順となる。Ptについて担体による活性序列をみると図2のようになる。HUSY(40), SiO2-Al2O3 > HUSY(20), γ-Al2O3 > HZSM-5, HUSY(30) > HUSY(15) > HUSY(100), H-β > FSM-16, SiO2, HY(2.6), TiO2 > ZrO2 > C(活性炭), HUSY(2.9), HMOR という序列になり、HUSY(40)とSiO2-Al2O3で活性が最大となり、ZrO2、活性炭、HUSY(2.9)、HMORでは収率が低くなった。以上の結果から、担体としては無機酸化物のなかで酸性を示すものが有効であると推測されるが、担体の酸強度の序列とは必ずしも一致しない。従って、セルロースの加水分解の主な活性点は担体上にすでにある酸点ではなく、水素加圧条件下でPtやRuにより水素分子が解離し担体上に移動して(スピルオーバー現象)発現したプロトン酸点と考えられる(服部、触媒, 45, 327 (2003))。実際に図3に示すように、金属を担持しないで各種担体だけを用いて同じ条件で反応を行うと、グルコースが少量生成するだけであり、金属担持により加水分解が促進されることが分かる。 担持Ru触媒はセルロースの加水分解・水素化に活性を示すが、興味深いことに、デンプンの加水分解・水素化で高活性を示すと先行特許で報告されているLZY-52から調製したHUSY(2.9)を用いた触媒[特許文献4、5]は、Ru原料と触媒調製法によらず3%以下のきわめて低い収率となった。しかし、HUSY(20)を担体とするRu触媒では17%の糖アルコール収率を得た。[実施例3] Pt/γ-Al2O3触媒による糖アルコール収率の反応温度依存性を調べた。反応温度以外は標準条件と同じにした。図4に示すように、糖アルコール収率は180℃で14%となり190℃では18%と上昇したが、200℃では16%に低下したので190℃が最適温度である。[実施例4] 反応時間を24時間、72時間としたときの糖アルコール収率を図5に示した。反応時間以外は標準条件と同じにした。三つの触媒で糖アルコール収率は72時間にしてもほとんど上昇しなかった。またどの触媒でも72時間反応では液体クロマトグラフ上で未同定の副生成物のピークが増えることが分かった。[実施例5] 触媒の再使用について検討した。まずPt/γ-Al2O3を触媒として標準条件で一回目の反応を行った。反応後、反応混合物を遠心分離機にかけて固体を沈降させ、上澄み溶液をろ過で分離した。図6に示すように、このときの糖アルコール収率は18%となった。分離した固体にセルロースを補充して水を加えて再度反応を行った。二回目、三回目の反応による糖アルコール収率は15%、15%となり、ほぼ一回目と同じ値となった。従って、触媒は活性化処理を必要とせずに再使用できることが分かった。[実施例6] 仕込量を3倍に増やした実験を行った。すなわち、オートクレーブ中にセルロース0.4807g、Pt/γ-Al2O3を0.209g、水60gをいれて水素初圧5MPaを入れて190℃、24時間反応を行った。反応後に遠心分離によって固体(触媒とセルロース)と水相を分離した。水相の液クロ分析から糖アルコール収率は28%で質量換算すると0.135gである。水相を蒸発乾固するとオイル状のものが0.223g得られた。従って、水相中の糖アルコール選択率(質量基準)は61%である。他の副生成物は未同定である。[実施例7]セルロースの前処理(1) リン酸処理法は、Y. -H. P. Zhang, J. Cui, L. R. Lynd, L. Kuang, Biomacromolecules, 7, 644 (2006) の方法に基づいて行った。ポリプロピレンボトル(内容積250ml)にセルロース(メルク社、アビセル、微粉末)1.0g、蒸留水30ml、磁気撹拌子を入れて室温で5分間撹拌した。次に、氷で冷却したリン酸(関東化学、特級)55mlを加えて、氷で約4℃に冷却しながら激しく撹拌した。撹拌操作は、10分間激しく撹拌後、2−3分間撹拌をとめ静置することを繰り返し、計1時間になるまで行った。この操作中、リン酸を加えて5分後にはセルロースはすべて溶解し、均一な水溶液となった。その後、氷で冷却した水200mlを加えると、セルロースは白色粉末として沈殿したので、遠心分離により白色粉末を分離した。得られた白色粉末を水で5回洗浄したが、水相のpHは2.5〜3.0であった。そこで、2Mの炭酸カルシウム水溶液2mlを加えて洗浄を繰り返し、pHが6.0〜7.0付近になるように中和した。その後、水で5〜6回洗浄した。得られた白色粉末をロータリーエバポレーターで減圧にしながら60℃で乾燥し、さらにシリカゲルをいれたデシケーターに入れ1晩乾燥した。乾燥後、0.96gの白色粉末が得られた。セルロースの前処理(2) ボールミル法は、H. Zhao, J. H. Kwak, J. A. Franz, J. M. White, J. E. Holladay, Energy & Fuels, 20, 807 (2006)の方法に基づいて行った。容量900mlのセラミックポットミルに、ジルコニア球(直径10mm)1kgとセルロース(メルク社、アビセル、微粉末)10gを入れ、卓上型ポットミル回転台(アズワン株式会社、ANZ−51S)を用いて、毎分60回転で2時間、粉砕処理を行った。水などの媒体は使用しなかった。処理後、0.9gの粉末を回収してそのまま触媒反応に用いた。 未処理、リン酸処理およびボールミル処理後のセルロースの粉末X線回折の結果を図7に示す。未処理のセルロースでは2θ=23度付近にセルロースIの(002)結晶面に由来する強い回折ピークが観測されるが、リン酸処理やボールミル処理後にはピーク強度は大きく減少し、結晶構造が崩れたことを示している。触媒反応 内容積100 mlのステンレス製オートクレーブ(オーエムラボテック社、MMJ-100)を反応器として用い、実施例1の反応スケールの3倍で実験を行った。触媒としては、γ−アルミナ担持Pt触媒(Pt/Al2O3、0.21 g)、HUSYゼオライト(Si/Al比20)担持Pt触媒(Pt/HUSY(20)、0.21 g)またはγ−アルミナ担持Ru触媒(Ru/Al2O3、0.11 g)を用いた。これらの触媒は、実施例1に示す方法に従って、塩化白金酸または三塩化ルテニウムを原料として、含浸法で調製した。金属担持量は2.5質量%である。反応は以下の手順で行った。セルロース(メルク社、アビセル、0.48 g)、蒸留水(60 ml)を入れてオートクレーブを閉じ、室温で5 MPaの水素を導入した。このとき、グルコース単位と金属原子数のモル比を110(0.9 mol%)とした。反応器付属のモーター付撹拌翼で撹拌しながら(600〜800 rpm)、電気炉で190℃に加熱し24時間反応させた。反応後、遠心分離とろ過で固体と上澄みの水溶液を分離した。水溶液中の生成物は液体クロマトグラフ(HPLC)と液体クロマトグラフ−質量分析(LC-MS)で分析した。 触媒反応の結果を表2に示す。前処理無しのセルロースを用いたとき、Pt/Al2O3触媒では糖アルコールの総収率は35.4%となった(ソルビトール(1):27.7%、マンニトール(2):7.7%)。実施例1では、オートクレーブ中に撹拌子を入れ、磁気撹拌器で撹拌していたが、本実施例では、撹拌翼により撹拌しており、効率が向上し、収率が増加したと思われる。なお、典型的な生成物の液体クロマトグラムを図8に示す(ボールミル処理セルロース、Ru/Al2O3触媒)。ソルビトール(保持時間19.3分)とマンニトール(同15.5分)の他に、保持時間13.9分と10.8分に大きなピークがあり未同定であったが、LC-MS分析により保持時間13.9分のピークはジデヒロキシへキシトール(3)、保持時間10.8分のピークはアンヒドロソルビトール(4)と推定された。これらは、それぞれソルビトールから酸素2原子あるいは水1分子が脱離したソルビトール類縁体である。1〜4の構造を以下に示す。3と4については脱酸素の位置は未確定である。以上、4種の糖アルコール類縁体の総収率は、前処理無しのセルロースでPt/Al2O3触媒では46.6%となった。同様の条件で、Ru/Al2O3触媒では33.9%であった。 セルロースにリン酸処理を施すと収率は増加した。Pt/Al2O3触媒で糖アルコール総収率は61.2%、類縁体総収率は76.9%となった。Ru/Al2O3触媒でもリン酸処理により収率は増加した。 さらに、ボールミル法でも収率の向上が見られた。Pt/Al2O3触媒では糖アルコール総収率51.4%、類縁体総収率70.6%となった。Pt/HUSY(20)でも同様の結果が得られた。Ru/Al2O3では収率がさらに向上し、糖アルコール総収率は69.7%、類縁体総収率は81.9%ときわめて高い収率を与えることが分かった。従って、セルロースの転化率も80%以上である。なお、このときソルビトール/マンニトール比は5.1であった。 以上、本実施例では、リン酸処理法およびボールミル法で前処理したセルロースを原料として、担持金属触媒による水中の水素化分解条件により、糖アルコールおよび類縁体の収率が70%以上になることを明らかにした。 本発明は、セルロース資源からの糖アルコール(ソルビトールとマニトール)の製造技術分野において有用である。各種触媒によるセルロースからの糖アルコール収率各種Pt触媒によるセルロースからの糖アルコール収率各種担体の反応によるセルロースからのグルコース収率糖アルコール収率の反応温度依存性(触媒:Pt/γ-Al2O3)24時間、72時間反応における糖アルコール収率触媒の再使用実験(触媒:Pt/γ-Al2O3)未処理、リン酸処理およびボールミル処理後のセルロースの粉末X線回折の結果を示す。実施例7で得られた典型的な生成物(ボールミル処理セルロース、Ru/Al2O3触媒)の液体クロマトグラムを示す。 セルロースを加水分解するために用いられる、固体担体に8〜10族の遷移金属が担持されたセルロースの加水分解および/または加水分解物の還元用触媒。 固体担体は、少なくとも一部が多孔質材料からなる請求項1に記載の触媒。 固体担体は、少なくとも一部が無機酸化物からなる請求項1または2に記載の触媒。 固体担体は、少なくとも一部が酸性を示す材料からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒。 固体担体は、少なくとも一部がシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、活性炭から成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。 固体担体が粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ハニカム構造、押出し型、リング状、円柱状、リブ押出し型、リブリング状を呈する請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。 遷移金属が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケル、コバルトおよび鉄から成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒。 遷移金属が、0.01〜0.6の分散度で固体担体表面に担持されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒。 遷移金属が、0.01〜60質量%担持されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の触媒。 セルロースを加水分解し、かつセルロースの加水分解物を還元するために用いられる請求項1〜8のいずれか1項に記載の触媒。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒の存在下、かつ水素含有雰囲気であり、かつ加圧下で、セルロースを加水分解し、かつセルロースの加水分解物を還元することを含む糖アルコールの製造方法。 セルロースが結晶性を有する、または結晶性を低下させたα−セルロースである請求項11に記載の製造方法。 加水分解および還元は、水の存在下で行う請求項11または12に記載の製造方法。 触媒の使用量は、セルロースに対して質量比0.05〜5とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造方法。 水素含有雰囲気は、1〜100MPaの水素圧とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の製造方法。 加水分解および還元は、150〜250℃の加熱下で行う請求項11〜15のいずれか1項に記載の製造方法。 糖アルコールがソルビトール及び/又はマニトールである請求項11〜16のいずれか1項に記載の製造方法。 加水分解および還元終了後、反応混合物を固液分離に供し、糖アルコールを含む水溶液と少なくとも触媒および未反応セルロースを含む固体とを分離する請求項11〜17のいずれか1項に記載の製造方法。


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