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タイトル:特許公報(B2)_ペプチドの製造方法
出願番号:2008502643
年次:2013
IPC分類:C07K 1/06


特許情報キャッシュ

村尾 博 森尾 健一郎 満田 勝 JP 5171613 特許公報(B2) 20130111 2008502643 20060731 ペプチドの製造方法 株式会社カネカ 000000941 植木 久一 100075409 菅河 忠志 100115082 二口 治 100125184 伊藤 浩彰 100125243 村尾 博 森尾 健一郎 満田 勝 JP 2006055094 20060301 20130327 C07K 1/06 20060101AFI20130307BHJP JPC07K1/06 C07K 1/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表平06−509821(JP,A) 特開2003−055396(JP,A) 米国特許第06846806(US,B1) 14 JP2006315174 20060731 WO2007099656 20070907 35 20090601 松田 芳子 本発明は、簡便な操作により、高純度のペプチド化合物を効率的に製造する、ペプチドの製造方法に関する。 ペプチドは、複数のアミノ酸がペプチド結合により縮合した化合物であり、構成要素であるアミノ酸の性質(親水性、疎水性、酸性、塩基性など)に基づく多様性を有している。また、アミノ酸の配列に依存した固有の立体構造を有する。これらの特徴により、ペプチドはタンパク質等との相互作用を介して生理活性を発現するなど、様々な機能を有している。 例えば、生理活性を有するペプチド化合物は、医薬品への展開が可能であり、現段階においても多数のペプチド系医薬品が承認、市販されており、ペプチド化合物の簡便で高効率な汎用的合成法の開発に対する期待が高まっている。 ペプチドは、そのアミノ酸配列に応じて、一方のアミノ酸成分のアミノ基と、他方のアミノ酸成分のカルボキシル基との脱水縮合反応(ペプチド鎖の伸長反応)を繰り返すことにより合成される。このペプチド結合形成に関与する2つのアミノ酸成分の内、アミノ基を提供するものをアミン成分、カルボキシル基を提供するものを酸成分と称する。 ペプチドの化学的合成法では、酸成分を種々の活性エステル法やジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、プロパンホスホン酸無水物(T3P)等に代表されるカップリング試薬により活性化して、これをアミン成分と反応させることによりペプチド結合を形成させる。化学的合成法では、所望のアミノ酸配列を有するペプチドを得るために、縮合反応に関与してはならない官能基、例えば、アミン成分のカルボキシル基や酸成分のアミノ基を保護して縮合反応を行った後、得られた縮合体のN末端のアミノ基保護基を脱保護して、新たなアミン成分とすることにより、反応を制御している。このペプチド化学合成法には、大きく分けて、固相担体上でペプチド鎖を伸長する固相法と液相中で反応を行う液相法がある。 固相法は、アミン成分として、C末端のカルボキシル基がリンカーを介してポリスチレンのような不溶性固相担体に結合した形で保護されたものを用い、固相担体に結合したままで逐次伸長反応を行い、所望の配列が完成した後に固相担体より切断して、目的のペプチドを得る合成法である。ほとんど配列に依存することなく、広範囲のペプチドを合成することができるため、全自動化も容易である。 しかしながら、固相法は、固−液2相系の不均一反応であること、また、固相担体上ではアミン成分の反応点が立体的に込み合っていることもあり、固相担体上の全てのアミン成分を完全に反応させることは、一般的に困難である。縮合反応において固相担体に結合したアミン成分が未反応のまま一部残存した場合には、大過剰の試薬(酸成分、カップリング試薬)を使用してアミン成分を完全に反応させる必要がある。 また、固相法では、反応変換率や品質のモニターが困難である上に、副生した不純物ペプチドが目的とするペプチドと共に固相担体に結合していることから、所望の配列が完成して固相担体より切断するまで不純物ペプチドの除去は一切できない。不純物ペプチドは、目的とするペプチドと共通の部分構造を有しているため性質が似ていることから、その除去は一般的に困難である。以上の理由から、特に高純度のペプチド化合物を合成する方法としては不完全である。 更に、固相法を工業的な規模でのペプチド化合物の製造に適用する場合には、製造設備などの面で制約があること、並びに、比較的高価な固相担体や大量の試薬、溶媒を使用すると共に、それに応じた大量の廃棄物が発生するために、原料および廃液処理のコストもかかることから、経済的に有利な方法とは言い難い。 一方、液相法は、アミン成分のカルボキシル基の保護基として、縮合体が反応溶媒に可溶となるものを用いることで、ペプチド結合を形成する縮合反応と、得られた縮合体のN末端のアミノ基保護基を脱保護して、新たなアミン成分とする脱保護反応とを、液相(溶液)中で行う方法である。液相法では、ペプチド鎖伸長の途中段階で精製を行って不純物ペプチドを除去することができるが、アミノ酸側鎖の官能基を保護しない場合、個々の縮合工程において、中間体のクロマト精製や、晶析操作、及び、複数の溶媒系による結晶洗浄操作など煩雑な精製工程が必要であった(非特許文献1)。さらに、アミノ酸側鎖の官能基が完全に保護されたアミノ酸を使用した場合であっても、溶液中に残存する活性エステルを完全に分解できないため、不純物ペプチドの副生を招き、目的とするペプチドの純度が低くなるといった欠点を有していた(非特許文献2)。 以上の状況から、中間体の精製操作を極力省略し、簡便な操作により高品質で取得するペプチド液相合成法の開発が望まれていた。近年では、目的とするペプチドの純度を高く保ちながら、かつペプチド合成における各操作を簡略化した、ペプチドの連続的液相合成法が開発されてきている。 この連続合成法の1つに、Carpinoらが報告(非特許文献3、特許文献1)している以下の液相合成法がある。この方法では、C末端カルボキシル基をt−ブチル基にて保護したアミン成分に対して、N末端アミノ基を9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基で保護した酸成分を過剰量用いてペプチド縮合反応を行った後、溶液中に残存する活性エステルを、捕捉剤と称するトリス−(2−アミノエチル)アミンなどを用いてアミド体に変換して無害化すると共に、活性エステルのアミノ基保護基の脱保護を同時に行なっている。更に、目的とする縮合体のN末端アミノ基保護基の脱保護も進行し、上記捕捉剤の使用により、活性エステルの分解とN末端アミノ基保護基の脱保護を一度に完了させている。この活性エステル分解反応により生じた化合物は、弱酸性の水溶液で洗浄することにより容易に水層へと除去される。この一連の操作を繰り返すことにより、目的とするペプチド化合物を高純度で連続的に合成することができる。 また、同様の連続合成法である、Diosynth社のDioRaSSP法(特許文献2)では、C末端カルボキシル基をt−ブチル基にて保護したアミン成分に対して、N末端アミノ基をベンジルオキシカルボニル(Z)基で保護した酸成分を過剰量用いて縮合した後、溶液中に残存する活性エステルを、捕捉剤としてβ−アラニンベンジルエステルを用いてアミド体に変換して無害化する。活性エステル分解反応により生じたアミド体は、引き続く接触水素化による縮合体のN末端アミノ基の脱保護反応の際に、N末端及びC末端の保護基が共に脱保護を受けて水溶性の高い分解物へと変換されるため、洗浄操作により容易に水層へと除去される。この一連の操作を繰り返すことにより、目的とするペプチドを高純度で連続的に合成することができる。 これらの手法は、従来の液相合成法において問題であった、個々の縮合工程における煩雑な精製操作を簡略化しつつ、かつ比較的純度良く目的とするペプチド化合物が得られる手法であり、連続的液相合成法は、ペプチド化学合成において有用性の高い方法論であると言える。 しかしながら、Carpinoらの方法及びDioRaSSP法、いずれも、活性エステルを分解する捕捉剤の種類に応じて、目的ペプチドの保護基の選択に制約を受ける。また、捕捉剤として、高価なアミン又は非天然アミノ酸誘導体を用いる必要がある。従って、用いる保護アミノ酸の種類に依存せず、なおかつ高価な試薬を使用しない、より汎用的で経済性に優れた活性エステルの分解法の開発が望まれている。 ところで、液相法においては、目的とするペプチド化合物、並びに、その中間体ペプチドが、液相中に溶解しているのが理想的であり、少なくとも、液相媒体中に均一に分散していることが好ましい。ペプチドの有機溶媒溶液がエマルジョンやゲル状になっていても、液相媒体中に均一に分散している状態であれば、反応および後処理において不具合を生じることはない。ところが、ペプチド化合物が凝集して塊状になってしまった場合等には、未反応のアミン成分が凝集物内に取り込まれて反応が完結しないとか、後処理時の分液操作が不能となるといった不具合が生じる。従って、液相法においては、広範囲のペプチド化合物を、そのアミノ酸配列に依存することなく、液相媒体中に均一に分散することができる汎用的な新たな媒体(溶媒系)の開発が望まれている。 以上のように、所望のアミノ酸配列を有する、高純度のペプチド化合物を効率的に合成する汎用的な化学的合成法は、充分確立された状態にはなく、特にペプチドの品質に大きな影響を及ぼす、活性エステルの効率的な分解方法、並びに、連続的液相法における分液などの各操作に適合した、ペプチド高溶解性溶媒系の開発が強く望まれている。US5516891特開2003−55396泉屋ら、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(1985年)Bull. Chem. Soc. Jpn., 55, 2165 (1982)Org. Proc. Res. Dev., 7, 28 (2003) 本発明は、上記に鑑み、N末端アミノ基及びC末端カルボキシル基の保護基の種類に依存しない、汎用的、且つ、簡便な活性エステル分解法、並びに、該分解法を利用した効率的で経済性に優れたペプチドの連続的液相合成法を提供することを目的とする。また、上記連続的液相合成法にも適用可能な、広範囲のペプチド化合物を溶解し得る、ペプチド高溶解性溶媒系を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するため、捕捉剤を用いることなく、効率的に、且つ確実に活性エステルを分解する方法の確立に向けて鋭意検討した結果、縮合反応後の反応液を塩基と接触させて未反応の酸成分活性エステルを分解する際に、塩基性条件を維持することが重要な管理ポイントであることを見出し、本発明の活性エステル分解法を完成するに至った。 また、本発明者らは、連続的液相合成法にも適用可能な、広範囲のペプチド化合物を溶解し得る、ペプチド高溶解性溶媒系の確立についても鋭意検討した。その結果、疎水性が高く、水と混和しないアミド系溶媒は、ペプチド溶解性も高く、液相合成法、中でも連続的液相合成法に理想的な物性を有することを見出し、本発明のペプチド高溶解性溶媒系を確立するに至った。 即ち本発明は、液相合成法によるペプチドの製造方法であって、(工程A)酸成分の活性エステルとアミン成分を反応させて縮合体を得る工程、(工程B)工程Aで得られた反応液中の不純物を除去して、縮合体を精製する工程、(工程C)工程Bで得られた縮合体のN末端アミノ基保護基を脱保護する工程、(工程D)必要に応じて、工程Cで得られた反応液中の不純物を除去して、N末端アミノ基が脱保護された縮合体を精製する工程、を含み、工程Bで、工程Aで得られた反応液と塩基を接触させ、未反応の酸成分活性エステルを残存量が1%以下となるまで塩基性条件を維持して加水分解することを特徴とする方法である。 また、本発明は、液相合成法によるペプチドの製造方法であって、(工程A)酸成分の活性エステルとアミン成分を反応させて縮合体を得る工程、(工程B)工程Aで得られた反応液中の不純物を除去して縮合体を精製する工程、(工程C)工程Bで得られた縮合体のN末端アミノ基保護基を脱保護する工程、(工程D)必要に応じて、工程Cで得られた反応液中の不純物を除去して、N末端アミノ基が脱保護された縮合体を精製する工程、を含み、少なくとも1つの工程において水と混和しないアミド系溶媒を用いることを特徴とする方法である。 本願第1発明のペプチド製造方法によれば、縮合反応後に溶液中に残存している活性エステルを、従来の連続液相合成法に用いられていた高価な捕捉剤を用いることなく、簡便、且つ効率的な方法により分解できる。溶液に残存する活性エステルを1%以下まで分解すれば、引き続くペプチド伸長反応にて、不純物ペプチド化合物の副生は大幅に抑制され、純度良く目的とするペプチド化合物が得られることから、所望のアミノ酸配列を有する高純度ペプチド化合物を、工業的に有利に製造することができる。 また、本願第2発明のペプチド製造方法によれば、ペプチド液相合成法におけるアミノ酸数およびアミノ酸配列の適用範囲を拡大することができる。 以下に、本発明を詳述する。本発明におけるペプチドとは、アミノ基とカルボキシル基との間で酸アミド結合(ペプチド結合)を形成することにより、複数のアミノ酸が縮合された構造を有する化合物を表す。上記アミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基をそれぞれ1個以上ずつ有する化合物であればよく、特に制限されない。尚、ペプチド結合形成に関与する2つのアミノ酸成分の内、カルボキシル基を提供するものを酸成分、アミノ基を提供するものをアミン成分と称する。 本発明における酸成分としては、特に限定されず、各種アミノ酸誘導体を用いることができる。また、アミノ酸誘導体のアミノ基が、更にペプチド結合により他のアミノ酸と縮合したペプチド化合物を用いることもできる。尚、目的とするペプチド化合物が、例えばN末端のアミノ基にアシル型置換基(保護基)を有する場合には、酸成分として、アミノ酸誘導体に代えてアシル型置換基に対応するカルボン酸誘導体を用いることで、目的とするアシル基を導入することもできる。 本発明におけるアミン成分としては、特に限定されず、各種アミノ酸誘導体を用いることができる。また、アミノ酸誘導体のカルボキシル基が、更にペプチド結合により他のアミノ酸と縮合したペプチド化合物を用いることもできる。また、縮合反応により得られた縮合体もペプチド化合物の1種であり、N末端を脱保護して更なる伸長反応(縮合反応)のアミン成分として用いることができる。尚、目的とするペプチド化合物が、例えばC末端のカルボキシル基にアミド型置換基(保護基)を有する場合には、アミン成分として、アミノ酸誘導体に代えてアミド型置換基に対応するアミン誘導体を用いることで、目的とするアミド基を導入することもできる。 酸成分におけるN末端アミノ基の保護基、及び、アミン成分におけるC末端カルボキシル基の保護基は、所望のペプチド結合を形成するために協働する。従って、N末端アミノ基とC末端カルボキシル基の保護基の組み合わせは、一定の制約を受ける。即ち、酸成分におけるN末端アミノ基の保護基は、ペプチド鎖を更に伸長しない場合は特に制約はないが、伸長する場合には、縮合体を新たなアミン成分とするために脱保護される必要がある。このような保護基を一時的(temporary)保護基と称する。これに対し、アミン成分におけるC末端カルボキシル基の保護基は、アミン成分が酸成分として振る舞ってペプチド結合形成に関与しないように、縮合体のN末端アミノ基を脱保護する条件においても除去されることなく、所望のアミノ酸配列が完成するまで保持される必要がある。このような保護基を半永続的(semipermanent)保護基と称する。 アミン成分におけるC末端カルボキシル基の保護基としては、例えば、ペプチド合成の基礎と実験、丸善株式会社出版(1985年)や、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている、エステル型保護基、アミド型保護基、ヒドラジド型保護基等を挙げることができる。 エステル型保護基としては、置換若しくは無置換のアルキルエステル、置換若しくは無置換のアラルキルエステルが好ましく用いられる。置換若しくは無置換のアルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、t−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、トリクロロエチルエステル、フェナシルエステル等が好ましく用いられる。置換若しくは無置換のアラルキルエステルとしては、ベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、ジフェニルメチルエステル、9−フルオレニルメチル(Fm)エステル、4−ピコリル(Pic)エステル等が好ましく用いられる。 アミド型保護基としては、無置換のアミド、N−メチルアミド、N−エチルアミド、N−ベンジルアミド等の1級アミド、N,N−ジメチルアミド、ピロリジニルアミド、ピペリジニルアミド等の2級アミド等が好ましく用いられる。 ヒドラジド型保護基としては、無置換のヒドラジド、N−フェニルヒドラジド、N,N’−ジイソプロピルヒドラジド等が好ましく用いられる。 以上のC末端カルボキシル基の保護基は、以下に説明するN末端アミノ基の保護基との組み合わせに関する制約を受けて、適切なものを用いる必要がある。尚、当該保護基は、カルボキシル基が酸成分として振る舞ってペプチド結合形成に関与しなければよい。例えば、目的とするペプチド化合物が、エステル型、アミド型、或いはヒドラジド型誘導体である場合は、C末端に予め所望の保護基(置換基)を導入しておき、これに適当なN末端アミノ基の保護基を組み合わせることで、C末端カルボキシル基の保護基が除去されることなく目的とするペプチド化合物を合成することもできる。 N末端アミノ基とC末端カルボキシル基の保護基の組み合わせとしては、N末端アミノ基の保護基が縮合反応条件において安定であり、且つ、C末端カルボキシル基の保護基が縮合反応、並びに、N末端アミノ基の保護基の脱保護条件において安定であれば、特に限定されない。上記組み合わせの条件を満たすN末端アミノ基の保護基としては、例えば、ペプチド合成の基礎と実験、丸善株式会社出版(1985年)や、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている、ウレタン型保護基、アシル型保護基、スルホニル型保護基等を挙げることができる。 一般的には、アミノ酸のラセミ化が起こりにくいこと、保護基の導入が比較的容易であること、選択的な脱保護が容易であることから、ウレタン型保護基が好ましい。ウレタン型保護基としては、具体的には、t−ブトキシカルボニル(Boc)基、イソボルニルオキシカルボニル(Iboc)基等の分枝アルキルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル(Bpoc)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基等のアラルキルオキシカルボニル基等があげられる。なかでもペプチドの化学合成法において実績がある、以下の保護基が好ましい。 まず、1つ目として、t−ブトキシカルボニル(Boc)基を挙げることができる。Boc基は、比較的穏和な酸性条件下で脱保護ができるアミノ基保護基である。Boc基は酸性条件下であれば、禁水条件下でも脱保護ができるため、例えば酸性条件下で加水分解を受けるカルボキシル基のエステル型保護基を残しながら、選択的にBoc基を除去することも可能である。 Boc基と組み合わせることができるC末端カルボキシル基の保護基としては特に限定されず、前述のエステル型保護基、アミド型保護基、ヒドラジド型保護基等より、Boc基の脱保護条件下で安定なものを選ぶことができる。エステル型保護基としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、置換若しくは無置換のベンジルエステル等が好ましく用いられる。なかでも置換若しくは無置換のベンジルエステルが、塩基性条件下での加水分解に対して比較的安定であり、穏和な条件で選択的に脱保護できることから、特に好ましく用いられる。 次に、2つ目として、ベンジルオキシカルボニル(Z)基を挙げることができる。Z基は、比較的穏和な接触還元条件で脱保護ができるアミノ基保護基である。 Z基と組み合わせることができるC末端カルボキシル基の保護基としては特に限定されず、エステル型保護基、アミド型保護基、ヒドラジド型保護基等より、Z基の脱保護条件下で安定なものを選ぶことができる。エステル型保護基としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、t−ブチルエステル等が好ましく用いられる。なかでもt−ブチルエステルが、塩基性条件下での加水分解に対して比較的安定であることから、特に好ましく用いられる。 最後に、3つ目として、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基を挙げることができる。Fmoc基は、比較的穏和な塩基性条件下で脱保護ができるアミノ基保護基である。 Fmoc基と組み合わせることができるC末端カルボキシル基の保護基としては特に限定されず、前述のエステル型保護基、アミド型保護基、ヒドラジド型保護基等より、Fmoc基の脱保護条件下で安定なものを選ぶことができる。エステル型保護基としては、例えば、t−ブチルエステル、置換若しくは無置換のベンジルエステル等が好ましく用いられる。なかでも置換若しくは無置換のベンジルエステルが、比較的合成が容易であることから、特に好ましく用いられる。 ウレタン型保護基のなかでも、縮合反応および活性エステルの分解反応において非常に安定であること、脱保護反応が容易であること等から、Boc基が特に好ましく用いられる。 本発明に使用する酸成分およびアミン成分は、ペプチド結合の形成に関与するアミノ基、又はカルボキシル基の他にも、アミノ基、カルボキシル基又は水酸基等のペプチド結合の形成反応に活性のある官能基を有する場合が多い。これらの官能基を、主鎖のペプチド結合を形成するアミノ基およびカルボキシル基と区別して、側鎖官能基と称する。側鎖官能基は、本発明の本質を損なわない限り、必ずしも保護する必要はないが、通常は、縮合反応によるペプチド結合の形成、並びに、N末端アミノ基の脱保護反応時に、望ましくない副反応を防ぐために、適切な保護基により保護するのが好ましい。 側鎖官能基の保護基は、前述のアミン成分におけるC末端カルボキシル基の保護基と同様に、N末端アミノ基の保護基との組み合わせにおいて、一定の制約を受ける。即ち、側鎖官能基の保護基は、N末端アミノ基を脱保護する条件においても除去されることなく、所望のアミノ酸配列が完成するまで保持される必要がある。尚、当該保護基は、縮合反応によるペプチド結合の形成、並びに、N末端アミノ基の脱保護反応時に、側鎖官能基が望ましくない副反応を引き起こさなければ特に限定されない。例えば、目的とするペプチド化合物が、側鎖官能基を特定の保護基で保護した化合物であった場合は、対応する酸成分の側鎖官能基に予め所望の保護基(置換基)を導入しておき、これに適当なN末端アミノ基の保護基を組み合わせることで、側鎖官能基の保護基が除去されることなく目的とするペプチド化合物を合成することもできる。 側鎖官能基の保護基としては、N末端アミノ基の保護基(一時的保護基)の脱保護条件において安定であれば、特に限定されず、例えば、ペプチド合成の基礎と実験、丸善株式会社出版(1985年)や、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている保護基を挙げることができる。 側鎖官能基がカルボキシル基である場合は、前述のアミン成分におけるC末端カルボキシル基の保護基と同じく、エステル型保護基、アミド型保護基、ヒドラジド型保護基等を挙げることができる。 側鎖官能基がアミノ基である場合は、ウレタン型保護基、アシル型保護基、スルホニル型保護基等を挙げることができる。ウレタン型保護基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、Boc基、Z基等が好ましく用いられる。N末端アミノ基の保護基がBoc基の場合は、側鎖官能基であるアミノ基の保護基はメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、Z基等が好ましく用いられる。なかでもZ基は、水素供与体として水素ガス、又はギ酸化合物を用いた加水素分解条件下で選択的に脱保護ができることから、特に好ましく用いられる。N末端アミノ基の保護基がZ基又はFmoc基の場合は、側鎖官能基の保護基はメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、Boc基等が好ましく用いられる。なかでもBoc基は、比較的穏和な酸性条件下で選択的に脱保護ができることから、特に好ましく用いられる。 アシル型保護基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基等が好ましく用いられる。 スルホニル型保護基としては、例えば、p−トルエンスルホニル(Ts)基、p−トリルメタンスルホニル基、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル基等が好ましく用いられる。 上記以外の側鎖官能基についても、同様にN末端アミノ基の保護基(一時的保護基)の脱保護条件において安定なものを選んで用いることができる。 側鎖官能基は目的のペプチド結合を形成した後に、必要に応じて脱保護すればよい。 続いて、本願第1の発明であるペプチドの製造方法について説明する。本願第1の発明は、液相合成法によるペプチドの製造方法であって、(工程A)酸成分の活性エステルと、アミン成分を反応させて縮合体を得る工程、(工程B)工程Aで得られた反応液中の不純物を除去して、縮合体を精製する工程、(工程C)工程Bで得られた縮合体のN末端アミノ基保護基を脱保護する工程、(工程D)必要に応じて、工程Cで得られた反応液中の不純物を除去して、N末端アミノ基が脱保護された縮合体を精製する工程、を含み、工程Bで、工程Aで得られた反応液を塩基と接触させて、未反応の酸成分活性エステルを残存量が1%以下となるまで塩基性条件を維持して加水分解することを特徴とする方法である。 まず、工程Aについて説明する。工程Aは、酸成分の活性エステルとアミン成分を反応させペプチド結合を形成する工程である。別途調製した酸成分活性エステルとアミン成分を反応させる態様はもちろん、酸成分とアミン成分が共存する系中で酸成分を活性エステルへと変換し、引き続いて生成した酸成分活性エステルとアミン成分とを反応させる態様も本工程に含まれる。 通常、ペプチド合成では、酸成分を以下に説明する酸成分活性エステルに変換することにより、カルボニル炭素の親電子性を高めて反応を促進する。 本発明における酸成分活性エステルとは、酸成分カルボキシル基の水酸基の代わりに、カルボニル炭素の親電子性を高めるような電子吸引性の置換基を導入した化合物を表す。以後、カルボニル炭素の親電子性を高めるような電子吸引性の置換基を活性化置換基と称する。又、酸成分のカルボキシル基と反応して活性化置換基に変換される試薬を活性化試薬と称する。 水酸基の代わりに導入する活性化置換基としては特に制限されないが、置換アリールオキシ基、置換若しくは無置換のアリールチオキシ基、ヒドロキシルアミン化合物の水酸基より水素原子を除いた基、有機酸のカルボキシル基より水素原子を除いた基(いわゆる混合酸無水物を形成する)等を挙げることができる。 置換アリールオキシ基としては、p−ニトロフェノキシ基(ONp)、2,4−ジニトロフェノキシ基、1,3,5−トリクロロフェノキシ基、ペンタクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基等、電子吸引基を有するものが好ましく用いられる。なかでもp−ニトロフェノキシ基が、活性エステルの合成が比較的容易であり、結晶性、保存性もよいことから、特に好ましく用いられる。 置換若しくは無置換のアリールチオキシ基としては、フェニルチオキシ基、p−ニトロフェニルチオキシ基等が好ましく用いられる。 ヒドロキシルアミン化合物としては、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOObt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシピペリジン等を挙げることができる。以上のヒドロキシルアミン化合物の水酸基より水素原子を除いた基は、それぞれ1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ(OBt)基、1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ(OAt)基、4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イルオキシ(OObt)基、スクシンイミジルオキシ(ONSu)基、フタルイミジルオキシ基、ピペリジン−1−イルオキシ基であるが、なかでも、OBt基、OAt基、OObt基、ONSu基等が、特に好ましく用いられる。 有機酸としては、特に制限されないが、副反応を抑えるために、炭酸モノアルキルエステル(モノカルボン酸)、又は、立体障害の大きな有機酸が好ましく用いられる。炭酸モノアルキルエステルとしては、炭酸モノメチルエステル、炭酸モノエチルエステル、炭酸モノイソブチルエステル等を挙げることができる。立体障害の大きな有機酸としては、イソ吉草酸やピバル酸等を挙げることができる。 活性化置換基としては、縮合反応後に余剰の活性エステルを塩基性で加水分解した際の分解物が水溶性であるため、水溶液による洗浄で容易に除去できることから、ヒドロキシルアミン化合物の水酸基より水素原子を除いた基、および有機酸のカルボキシル基より水素原子を除いた基が好ましく、とりわけヒドロキシルアミン化合物の水酸基より水素原子を除いた基が好適に用いられる。 酸成分活性エステルの調製法としては特に限定されず、公知の方法を用いて酸成分より誘導すればよい。以下に、一例として、ペプチド合成に最もよく利用されているOBtエステルを取り上げ、その調製法について説明する。 OBtエステルは、通常、酸成分と活性化試薬であるHOBtとを脱水縮合して調製する。この脱水縮合を進行させる縮合剤としては、カルボジイミド化合物が好適に用いられる。カルボジイミド化合物は、酸成分とHOBtとを縮合させるとともに、自身は尿素誘導体に変換される。例えば、カルボジイミド化合物として、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いた場合には、反応溶媒に難溶性のジシクロヘキシル尿素(DCUrea)が副生するため、固−液分離操作により可溶性の活性エステルより除去することができる。一方、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)に代表される水溶性カルボジイミド(WSC)化合物を用いた場合には、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチル尿素(EDUrea)等の水溶性の尿素誘導体が副生するため、希酸洗浄等の水洗浄により除去することができる。以上のように調製した酸成分の活性エステルは、続いてアミン成分と反応させることにより、置換反応によりペプチド結合を形成する。 カルボジイミド化合物を用いて調製した活性エステルは、一旦単離してもよく、またHOBtと酸成分との混合物にアミン成分も加えておき、これにカルボジイミド化合物を作用させることにより、反応系中でOBtエステルを調製してそのままアミン成分と反応させてもよい。 また、カルボジイミド化合物を用いないで、OBtエステルを調製する活性化試薬も知られている。例えば、1H−ベンゾトリアゾール1−イルオキシ−トリス−ジメチルアミノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)等の活性化試薬は、酸成分とアミン成分の混合物に直接作用させることにより、反応系中で酸成分を対応するOBtエステルに変換して、効率的にアミン成分と脱水縮合することができる。 続いて、酸成分活性エステルとアミン成分の縮合反応条件について説明する。本反応に用いる試薬の使用量は特に制限されないが、残存すると除去が困難となるアミン成分を完全に反応させる必要があることから、通常はアミン成分以外の試薬をアミン成分に対して過剰量使用するのが好ましい。 酸成分活性エステルの使用量は、アミン成分を基準とした場合、通常下限は1.0モル倍以上であり、好ましくは1.1モル倍以上であり、より好ましくは1.2モル倍以上である。酸成分活性エステルの使用量が多いほど反応速度は大きくなるが、後処理時の余剰酸成分の除去操作に大きな負荷がかかるため、上限は、10モル倍以下であり、好ましくは3モル倍以下であり、より好ましくは1.5モル倍以下である。 先述のように、酸成分活性エステルは反応系中で調製しても良いし、別途調製したものを使用しても良い。反応系中で調製する場合には、アミン成分、酸成分、活性化試薬及び縮合剤の添加順序に特に制限はないが、アミン成分に酸成分と活性化試薬を添加しておき、これに縮合剤を添加するのが一般的である。このように反応系中で活性エステルを調製する方法は、活性化試薬としてHOBt、HOAt、HOObt等を用いる場合に特に好ましく用いられる。以下に各成分の使用量について説明する。 酸成分の使用量は、アミン成分を基準とした場合、通常下限は1.0モル倍以上であり、好ましくは1.1モル倍以上であり、より好ましくは1.2モル倍以上である。酸成分の使用量が多いほど反応速度は大きくなるが、後処理時の余剰酸成分の除去操作に大きな負荷がかかるため、上限は、10モル倍以下であり、好ましくは3モル倍以下であり、より好ましくは1.5モル倍以下である。 活性化試薬の使用量は、酸成分を基準とした場合、通常下限は1.0モル倍以上であり、好ましくは1.1モル倍以上であり、より好ましくは1.2モル倍以上である。活性化試薬の使用量が多いほど反応速度は大きくなるが、後処理時の余剰酸成分の除去操作に大きな負荷がかかるため、上限は、10モル倍以下であり、好ましくは3モル倍以下であり、より好ましくは1.8モル倍以下である。 縮合剤の使用量は、酸成分を基準とした場合、通常下限は1.0モル倍以上であり、好ましくは1.1モル倍以上であり、より好ましくは1.2モル倍以上である。上限は、20モル倍で充分に反応が完結し得ることから、これを使用量上限の目安とすればよい。好ましくは10モル倍以下であり、より好ましくは5モル倍以下であり、さらに好ましくは2モル倍以下である。 縮合反応において使用される反応溶媒は、酸成分およびアミン成分、並びに、活性エステル、又は活性化試薬および縮合剤等の本反応に用いる各試薬に対して本質的に不活性な有機溶媒であれば、特に限定されない。反応溶媒の例としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の水と混和する非プロトン性極性溶媒、N,N−ジ−n−プロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド(DBF)等の水と混和しない非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。 なかでも、本反応に用いる各試薬やペプチド化合物の溶解性が比較的良好なハロゲン化炭化水素類、脂肪酸エステル類、非プロトン性極性溶媒が好ましく用いられる。ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタンおよびクロロベンゼンが特に好ましい。脂肪酸エステル類としては、酢酸エチルが特に好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、DBF,DMFおよびDMSOが特に好ましく、とりわけ水と混和しない非プロトン性極性溶媒であるDBFが好ましい。溶媒として特に好ましくはジクロロメタン、クロロベンゼンおよびDBFである。これらの溶媒は、単一で使用してもよく、又2種以上を混合して使用しても良い。2種以上を混合して用いる場合、混合比に特に制限はない。 また、これらの溶媒には、水を共存させていても良い。特に縮合剤としてEDC等の水溶性カルボジイミドを用いた場合には、副生したEDUrea等の水溶性尿素誘導体が凝集又は固化して反応液の流動性が悪化すると共に、反応の円滑な進行を妨げる場合があるが、水を共存させることにより、水溶性尿素誘導体を溶解又は分散させることができるため、好適である。 尚、本願において「水と混和しない」とは、20℃で同容量の水と混合し静置した場合に2層に分離するものをいう。 本反応の反応温度は、反応混合物の固化温度以上、沸点以下の温度であれば特に制限されないが、一般に、反応温度が高いほど好ましくない副反応が増加する傾向にある。従って、反応温度は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。特に、酸成分活性エステルを反応系中で調製する場合には、アミン成分、酸成分および活性化試薬からなる混合物に縮合剤を添加するが、このときの温度をできるだけ低温で、例えば水を含有する場合には0〜10℃程度で実施するのが好ましい。 本反応の反応濃度は、酸成分、アミン成分、縮合体ペプチド化合物等の各成分が溶解するか、少なくとも均一に分散する状態であれば、特に制限されない。反応濃度は、溶媒および溶質である上記各成分の種類や、それらの使用量、反応温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常はアミン成分の重量に対して有機溶媒を4〜50倍容量使用する条件(反応液のアミン成分濃度2〜25%に相当)で実施することができる。 本工程において、縮合反応は定量的に進行し得る。縮合反応の反応変換率は、少なくとも99%以上、通常99.5%以上、好ましくは99.9%以上が期待できる。 次に、工程Bについて説明する。工程Bは、工程Aで得られた反応液に含まれる不純物を除去して、縮合体を精製する工程である。本工程は、反応液に残存する未反応の酸成分活性エステル等、以降の工程における副反応の原因となる不純物をそのまま、又は、分解した後に除去する、高純度ペプチド化合物の液相合成法における重要な工程である。本工程の具体的な操作としては、未反応の酸成分活性エステルの分解、抽出洗浄及び晶析等があげられる。通常、必要に応じてこれらの操作を組み合わせて実施し得るが、とりわけ、残存する酸成分活性エステルの分解・除去が重要である。本願第1発明は、この酸成分活性エステルの分解を特定の条件下に行うことを特徴とする。 従来のペプチド液相合成法においては、縮合反応の後処理として、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムの水溶液による塩基性洗浄、並びに、クエン酸や硫酸水素カリウムの水溶液による酸性洗浄を実施しており、この水洗操作によって、上記活性エステルが分解され除去されているものと想定している。ところが、本発明者らが従来法について検討したところ、活性エステルの分解、除去が不十分な場合が多数存在することが確認された。 そこで、上記活性エステルの分解について鋭意検討した結果、本発明者らは、活性エステルの分解しやすさが、活性エステルを構成する酸成分や、共存する縮合体ペプチド化合物(中間体)の種類によって、大幅に異なっていることを見出した。また、活性エステルの分解が進行するに伴い、分解に使用したアルカリ水溶液層のpHが低下すること、更に特定のpHを下回ると分解反応が進行しなくなることを突き止めた。 本願第1の発明は上記知見に基づいて達成されたもので、工程Aで得られた反応液を塩基と接触させて未反応の酸成分活性エステルを分解するに際し、塩基性条件を維持して活性エステルの残存量を1%以下とすることを特徴とする。尚、ここでいう塩基性条件とは、酸成分活性エステルの分解を好適に進行させるpH条件を意味する。 活性エステルの分解を好適に進行させるために必要なpHは、以下の要領で容易に特定することができる。反応液に、例えば5%炭酸ナトリウム水溶液を塩基として加えると、多くの場合は、活性エステルが充分分解されずに残存している。この活性エステルが残存している反応混合物に、pHを測定しながら少しずつ塩基を追加していくと、初めのうちは追加量に応じてpHが上昇するが、あるところから塩基を追加して上昇したpHがすぐさま低下し始める現象を観察することができる。このpH低下が観察されたところで塩基の追加を中断し、その直後から10分毎にpHを測定する。pHの低下幅が0.1以下となったpHが、その系において活性エステルの分解を好適に進行させるために必要なpHである。この操作により、活性エステルを構成する酸成分や共存する縮合体ペプチド化合物(中間体)、並びに溶媒の種類に応じた、活性エステルの分解が進行するために必要な水層のpHを管理値として特定することができる。 実際の製造においては、反応混合物のpHを確認しながら、pHが低下しなくなるまで塩基を追加するか、又は上記の要領で予め確認しておいた活性エステルの分解が進行するために必要なpHを管理値とし、塩基添加によりpHをこの管理値以上に調整、維持することが好ましい。pH測定は、反応混合物のpHを直接測定してもよいし、活性エステルを分解するために添加したアルカリ水溶液層のpHを測定してもよい。活性エステルの分解が進行するために必要なpHは、前述の通り、活性エステルを構成する酸成分や、共存する縮合体ペプチド化合物(中間体)の種類によって、大幅に異なっているため、pHの管理値を一律に規定することは難しいが、通常はpH10.0以上に維持することが好ましい。より好ましくは、pH10.5以上であり、更に好ましくは、pH11.0以上である。一般にpHが高いほど分解反応が速やかに進行する。ただし、塩基の使用量は、pHの値に対して指数関数的に増大するため、過度の塩基使用は非効率であり、分解反応の効率との兼ね合いでpHの上限値も定めておくのが好ましい。pHの上限値も一律に規定することは難しいが、pH13.0以下に維持することが好ましい。通常はpH12.0以下でも充分に活性エステルの分解は進行する。 或いは、活性エステルの分解が進行するのに伴いpHが低下した水層を分液して除去し、新たに塩基水溶液を添加(いわゆる繰り返し洗浄)して、管理値以上のpHを維持することもできる。塩基水溶液による洗浄の回数としては、活性エステルを構成する酸成分や、共存する縮合体ペプチド化合物(中間体)、並びに、洗浄に使用する塩基水溶液の種類によって異なるため、一律に規定することは難しいが、通常は2回以上洗浄することが好ましい。より好ましくは3回以上であり、更に好ましくは4回以上である。洗浄回数は、活性エステルの分解率と操作時間との兼ね合いを考慮して適切に設定すればよい。 上記活性エステルの分解に用いる塩基としては、特に限定されず、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩等の無機塩基を用いることができる。なかでもアルカリ金属塩の無機塩基が好ましく、とりわけ、ナトリウムの水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩が好ましい。これらの塩基は、粉体をそのまま投入してもよいし、水溶液や水懸濁液の状態で添加してもよいが、通常は適当な濃度の水溶液として取り扱うのが好ましい。工程Aで水を含む反応溶媒を用いた場合には、粉体を投入して系中でアルカリ水溶液とすることもできる。 活性エステルの残存量を確認する方法としては、特に制限されない。例えば、適宜反応液(有機層)をサンプリングして、HPLC分析等により縮合体ペプチド化合物に対する活性エステルの残存量を測定することにより把握し、活性エステル分解反応の終点を判断すればよい。 前記工程Aで得られた反応液をそのまま塩基と接触させても良いし、必要に応じて、工程Aの反応液を濃縮あるいは溶媒置換した後、または、工程Aの反応液に溶媒を添加した後、塩基と接触させても良い。また、必要に応じて不溶物を濾過等により除去した後、塩基と接触させても良い。溶媒を置換または添加する場合、置換または添加する溶媒は縮合体に対して本質的に不活性な溶媒であれば特に制限されず、前記工程Aの説明において例示した反応溶媒を使用することができる。 本反応の温度は、反応混合物の固化温度以上、沸点以下の温度であれば特に制限されないが、一般に、反応温度が高いほど好ましくない副反応が増加する傾向にある。従って、反応温度は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。通常は0〜30℃程度で実施するのが好ましい。 本反応の反応濃度は、各成分が有機層又は水層の何れかに溶解するか、少なくとも均一に分散する状態であれば、特に制限されない。反応濃度は、溶媒および溶質である上記各成分の種類や、それらの使用量、反応温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常は縮合体の重量に対して有機溶媒を4〜50倍容量使用する条件(有機層の縮合体濃度およそ2〜25w/v%に相当)で実施することができる。 本反応により得られた反応混合物(加水分解処理後の反応液)における活性エステルの残存量は、反応混合物に対して通常1%以下まで低減することが好ましい。好ましくは0.5%以下まで、更に好ましくは0.1%以下まで低減することが好ましい。本工程にて、酸成分活性エステルを低減することにより、引き続く脱保護反応において、不純物ペプチドの副生を抑えて、収率および純度よくペプチド鎖を伸長することができる。 ところで、上記反応混合物は、酸成分活性エステルの分解物である酸成分及び活性化置換基由来の不純物、並びに縮合剤及び縮合剤由来の不純物を多数含有している。例えば、水溶性カルボジイミドとしてEDCを用いて、酸成分とHOBtを脱水縮合してOBtエステルを調製した場合、上記反応液は、酸成分及びHOBt、並びにEDC及びEDUreaが不純物として含まれている。従って、上記の酸成分活性エステルの分解操作に加えて、これら不純物についても除去することが好ましい。 これらの不純物の除去方法としては特に限定されず、抽出、晶析等の一般的な分離・精製方法を用いることができるが、通常は、縮合体を有機層中に保持して、塩基性および酸性の水溶液、または、必要に応じて水で順次洗浄して水溶性の不純物を除去する抽出洗浄を行うことが好ましい。 次に、抽出洗浄操作について説明する。 前記工程Aの反応液および酸成分活性エステルを分解して得られた反応液をそのまま抽出洗浄しても良いし、必要に応じて反応液を濃縮した後、または、新たな溶媒を追加したり、他の溶媒に置換した後に抽出洗浄を行っても良い。また、必要に応じて濾過等により不溶物を除去した後、抽出洗浄を行っても良い。溶媒を置換または添加する場合、置換または添加する溶媒は縮合体に対して本質的に不活性な溶媒であれば特に制限されず、前記工程Aの説明において例示した反応溶媒を使用することができる。 尚、前記工程Aまたは酸成分活性エステルの分解により得られた反応液における溶媒が水と混和する非プロトン性極性溶媒である場合、当該溶媒は水溶性が非常に高いために、不純物を水洗により溶媒層から除去する際に、ペプチド化合物を同伴して水層に一部移行してしまうために、ペプチドの収率が低下する場合がある。この場合には、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、脂肪酸エステル類など、ペプチド化合物の溶解性が比較的良好な溶媒と組み合わせて用いることにより抽出率を向上させることが特に好ましい。 抽出洗浄に使用される塩基性の水溶液としては、一般的な塩基性の化合物を含有する水溶液であれば、特に制限されることなく用いることができる。塩基性の化合物としては特に限定されず、酸成分活性エステルを分解する工程で用いる塩基と同様なものがあげられる。当然ながら、酸成分活性エステルを分解する工程で塩基の水溶液を添加して加水分解した場合、反応混合物から水層(水溶液)を分離するだけで、本工程の塩基性の水溶液による洗浄を兼ねることもできる。 抽出洗浄に使用される酸性の水溶液としては、一般的な酸性の化合物を含有する水溶液であれば、特に制限されることなく用いることができる。酸性の化合物としては特に限定されず、アルカリ金属の硫酸水素塩、リン酸二水素塩等の無機酸性塩、塩酸や硫酸等の鉱酸類、クエン酸などの有機酸類を用いることができる。なかでも、硫酸水素カリウムやリン酸二水素カリウムなどの酸性塩が好ましい。 尚、上記塩基性又は酸性の水溶液を用いた抽出洗浄においては、有機層と水層の2層に分離しやすくするために、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機塩を添加する等、一般的な抽出操作で行われる処理を施してもよい。 抽出洗浄時の温度は、反応混合物の固化温度以上、沸点以下の温度であれば特に制限されないが、一般に、温度が高いほど好ましくない副反応が増加する傾向にある。従って、温度は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。通常は0〜30℃程度で実施するのが好ましい。 抽出洗浄時の濃度は、各成分が有機層又は水層の何れかに溶解するか、少なくとも均一に分散する状態であれば、特に制限されない。抽出洗浄時の濃度は、溶媒および溶質である各成分の種類や、それらの使用量、反応温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常は縮合体の重量に対して有機溶媒を4〜50倍容量使用する条件(抽出洗浄に供する有機層における縮合体濃度およそ2〜25w/v%に相当)程度で実施することができる。 尚、上記不純物のなかでも、酸成分活性エステルの分解物である酸成分は、アミノ酸側鎖や官能基やその保護基の種類によっては、充分除去できないことがある。このような場合には、例えば、上記抽出洗浄操作によりEDCやEDUrea等の塩基性不純物を除去した後の有機層を次に述べる晶析に付しても良い。 以下に、縮合体ペプチド化合物を晶析させて精製する方法について説明する。ペプチド化合物の晶析における良溶媒としては、前記工程Aで用いられる反応溶媒のなかでも、ペプチド化合物の溶解性が比較的良好なハロゲン化炭化水素類、脂肪酸エステル類、非プロトン性極性溶媒が好ましく用いられる。ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタンおよびクロロベンゼンが特に好ましい。脂肪酸エステル類としては、酢酸エチルが特に好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、DBF、DMFおよびDMSOが特に好ましく、とりわけ水と混和しない非プロトン性極性溶媒であるDBFが特に好ましい。良溶媒として特に好ましくはジクロロメタン、DBF、DMFおよびDMSOである。とりわけ水と混和しない非プロトン性極性溶媒であるDBFが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。 ペプチド化合物を晶析するには、良溶媒又は良溶媒を含有する混合溶媒の溶液に、適切な貧溶媒をそのまま添加するか、或いは不要な溶媒を濃縮により留去しながら又は留去した後に添加することにより、溶解度を減じてペプチド化合物を析出させる。また、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒中で工程A及び工程Bを実施し、生成した縮合体を逐次析出させる、いわゆる反応晶析も好適に実施することができる。 貧溶媒は、ペプチド化合物の溶解度が、良溶媒と比べて小さく、ペプチド化合物に対して本質的に不活性な溶媒であれば、特に限定されない。貧溶媒の例としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なかでも、酸成分、活性化試薬、縮合剤、脱保護試薬等の、ペプチド液相合成法に一般的に用いる各試薬の溶解度が比較的高いハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、脂肪酸エステル類が好ましく用いられる。 ハロゲン化炭化水素類としては、クロロベンゼンが特に好ましく、芳香族炭化水素類としては、トルエンが特に好ましく、エーテル類としては、t−ブチルメチルエーテルおよびジイソプロピルエーテルが特に好ましく、脂肪酸エステル類としては、酢酸エチルが特に好ましい。また、水を貧溶媒として用いることも好適である。例えば、上述の洗浄工程において不純物の洗浄に用いた塩基性又は酸性の水溶液を、そのまま貧溶媒として使用しても差し支えない。これらの貧溶媒は、単一で使用してもよく、又2種以上を混合して使用しても良い。 良溶媒の使用量は特に制限されないが、一般的に、使用量が少ないほど、ペプチド化合物の収率向上の観点からは好ましい。良溶媒の使用量は一律に規定することはできないが、通常はペプチド化合物のモル数に対する有機溶媒の総使用量が0.1〜10倍容量(L/mol)程度で実施することができる。好ましくは5倍容量以下とすることができ、より好ましくは2倍容量以下とすることができる。 貧溶媒の使用量は、晶析液の流動性が維持でき、晶析収率が確保できる範囲であれば、特に制限されない。貧溶媒の使用量は、ペプチド化合物の種類や良溶媒の使用量、晶析温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常はぺプチド化合物のモル数に対する溶媒の総使用量が4〜50倍容量(縮合体濃度およそ0.02〜0.25mol/Lに相当)程度で実施することができる。 晶析時の温度は特に制限されないが、性状の良い晶析液(スラリー)とするためには、ゆっくりと晶析を進行させるのが好適である。当然ながら、徐々に冷却してゆっくりと晶析を進行させる、いわゆる冷却晶析も好適に実施することができる。また、スムースに晶析させるために、種晶を添加するのも好適である。 上記の洗浄や晶析によっても充分除去できなかった酸成分は、後述する工程Cにおいて脱保護した後に、工程Dにおいて除去する方法も、好適に実施することができる。 次に、工程Cについて説明する。工程Cは、工程Bで得られた縮合体のN末端アミノ基保護基を脱保護する工程である。得られたN末端アミノ基が脱保護された縮合体は、ペプチド鎖伸長の途中段階にあっては、更なる縮合反応(伸長反応)のアミン成分となる。 N末端アミノ基保護基の脱保護方法としては、C末端カルボキシル基および側鎖官能基の保護基(半永続的保護基)が安定であれば特に制限されず、例えば、ペプチド合成の基礎と実験、丸善株式会社出版(1985年)や、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY&SONS)出版(1999年)等に記載されている、公知の脱保護方法を用いることができる。ウレタン型保護基、アシル型保護基、スルホニル型保護基等を挙げることができ、例えば、酸性条件下、脱保護する方法、接触還元条件下で脱保護する方法、塩基性条件下で脱保護する方法などがあげられ、保護基に応じて選択してやることができる。以下に、代表的なN末端アミノ基保護基の脱保護方法について例示する。 まず、Boc基の脱保護方法について説明する。Boc基は、比較的穏和な酸性条件下で脱保護ができるアミノ基保護基である。酸性条件下とするには、脱保護試薬として酸性物質を添加すればよい。添加する酸性物質としては特に限定されないが、フッ化水素、塩化水素、臭化水素といったハロゲン化水素、硫酸、硝酸等の鉱酸類、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸(TFA)等のカルボン酸類、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類等、又はこれらの混合物を用いることができる。混合物としては、例えば、臭化水素/酢酸、塩化水素/ジオキサン、塩化水素/酢酸等を挙げることができる。なかでも、水溶液ではない酸、例えば、非水系でギ酸又はメタンスルホン酸等を用いた場合には、例えば酸性条件下で加水分解を受けるカルボキシル基のエステル型保護基を残しながら、選択的にBoc基を除去することも可能である。とりわけ、メタンスルホン酸等の常温で液体であり、かつ水溶性のスルホン酸類は、非水系で用いた場合に、室温下で比較的少ない使用量で速やかに反応を進行させることができ、反応終了後には容易に水層に除去できるため、特に好適である。 次に、Z基の脱保護方法について説明する。Z基は、比較的穏和な接触還元条件下で脱保護ができるアミノ基保護基である。接触還元条件下とするには、脱保護試薬として触媒および水素供与体を添加すればよい。触媒としては特に限定されないが、パラジウム黒や5〜10%パラジウム−炭素、5〜10%水酸化パラジウム−炭素等を用いることができる。水素供与体としては特に限定されないが、通常は水素ガス、ギ酸化合物等が用いられる。 最後に、Fmoc基の脱保護方法について説明する。Fmoc基は、比較的穏和な塩基性条件下で脱保護ができるアミノ基保護基である。塩基性条件とするには、脱保護試薬として塩基性物質を添加すればよい。添加する塩基性物質としては特に限定されないが、ジエチルアミン、ピペリジン、モルホリン等の2級アミン、ジイソプロピルエチルアミン、p−ジメチルアミノピリジン等の3級アミン等が好ましく用いられる。 本工程において使用される反応溶媒は、縮合体および新たなアミン成分、並びに、脱保護試薬等の、本工程に用いる各試薬に対して本質的に不活性な溶媒であれば、特に限定されない。反応溶媒の例としては、前記工程Aで用いた反応溶媒と同様なものがあげられる。当然ながら、前記工程Bで用いた反応溶媒をそのまま用いても良いし、新たな溶媒を追加したり、他の溶媒に置換したりしても良い。 本工程の反応温度は、反応混合物の固化温度以上、沸点以下の温度であれば特に制限されないが、一般に、反応温度が高いほど好ましくない副反応が増加する傾向にある。従って、反応温度は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。通常は0〜30℃程度で実施するのが好ましい。 本工程の反応濃度は、各成分が溶解するか、少なくとも均一に分散する状態であれば、特に制限されない。反応濃度は、溶媒および溶質である各成分の種類や、それらの使用量、反応温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常は縮合体の重量に対する有機溶媒の総使用量が4〜50倍容量(縮合体濃度およそ2〜25w/v%に相当)程度で実施することができる。 本工程において、脱保護反応は定量的に進行し得る。本工程の反応変換率は、少なくとも99%以上、通常99.5%以上、好ましくは99.9%以上が期待できる。 脱保護反応後は、必要に応じて反応液から不純物を除去し、N末端アミノ基が脱保護された縮合体を精製することができる。精製された当該縮合体は、ペプチド鎖伸長の途中段階にあっては、アミン成分として更なる縮合反応(伸長反応)に付される。以下、当該精製工程を工程Dとし、詳細を説明する。 工程Cで得られた反応混合物中には、脱保護したN末端アミノ基保護基に由来する副生物、並びに脱保護試薬を不純物として含有している。 また、前記工程Bにおいて、余剰の酸成分が充分除去できていなかった場合には、酸成分の脱保護された化合物、即ち、酸成分に由来する、N末端アミノ基及びC末端カルボキシル基が共に無保護のアミノ酸誘導体またはペプチド、も不純物として含まれている。この酸成分の脱保護された化合物は、更なる伸長反応(次のサイクルのA工程(縮合反応))において、酸成分およびアミン成分として振る舞うことができ、様々な不純物ペプチドを副生する原因となるため、本工程を実施してこれら不純物を除去することが好ましい。 これらの不純物の除去方法としては特に限定されず、抽出、晶析等の一般的な分離・精製方法を用いることができるが、通常は、縮合体を有機層中に保持して、塩基性及び/または酸性の水溶液で洗浄して水溶性の不純物を除去する抽出洗浄に付すことが好ましい。 工程Cの反応液をそのまま抽出洗浄しても良いし、必要に応じて反応液を濃縮若しくは溶媒置換した後、または、反応液に溶媒を添加した後に抽出洗浄を行っても良い。また、必要に応じて濾過等により不溶物を除去した後、抽出洗浄を行ってもよい。溶媒置換または溶媒添加に用いられる溶媒は、前記工程Bにおける抽出洗浄の場合と同様である。尚、前述したように、工程Bと同じく水と混和する非プロトン性極性溶媒は、水溶性が非常に高いためその他の溶媒と組み合わせて用いることが特に好ましい。 また、水溶液での洗浄を実施した後の有機層から、N末端アミノ基が脱保護された縮合体またはその酸との塩を晶析させて精製しても良い。本態様で用いる良溶媒としては工程Bにおける晶析して精製する方法で用いたものと同じである。ペプチド化合物を晶析するには、適切な貧溶媒をそのまま添加するか、或いは不要な溶媒を濃縮により留去しながら又は留去した後に添加することにより溶解度を減じて、ペプチド化合物を析出させる。また、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒中で、塩基を添加してペプチド化合物と酸との塩を中和して、生成したペプチド化合物を逐次析出させる、いわゆる中和晶析も好適に実施することができる。 用いる貧溶媒の種類や溶媒の使用量、温度などの晶析の条件としては、工程Bで記載した晶析して精製する方法と同様な条件で実施することができる。 一方、残存する酸成分以外の不純物は、ほとんどの場合、次サイクルのA工程(縮合反応)に悪影響を及ぼさないことから、本工程での精製は必ずしも必要ではない。例えば、N末端アミノ基の保護基がBoc基であり、前記工程Bにおいて、余剰の酸成分が充分除去された縮合体精製品を、脱保護試薬としてメタンスルホン酸を用いて脱保護した場合、反応混合物には、イソブチレン、炭酸ガス及びメタンスルホン酸が不純物として含まれている。イソブチレン及び炭酸ガスは何れも引き続くA工程(縮合反応)に悪影響を及ぼさず、又、常温で気体であるため、除去も容易にできる。メタンスルホン酸については、縮合反応におけるアミン成分の反応部位であるアミノ基の求核性をマスクしてしまうことから、悪影響を及ぼすが、例えば、縮合反応に悪影響を及ぼさない3級アミン等の塩基、例えばトリエチルアミンにより中和することで、メタンスルホン酸を無害化することができるため、本工程による不純物の除去を省略することもできる。 抽出洗浄時の温度や縮合体の濃度等の条件も、前述の工程Bにおける抽出洗浄と同様である。 以上のように、本願第1の発明においては、工程Bで未反応の酸性分活性エステルを残存量が1%以下となるまで分解するため、上記の工程A、B、CおよびD工程を順次連続的に実施する場合でも、酸成分活性エステルに由来する不純物ペプチドの副生とその蓄積を抑制して、高純度の目的ペプチドを得ることができる。従って、アミノ酸残基数が3残基以上、好ましくは4残基以上、とりわけ5残基以上のペプチドを合成する場合に、本発明の効果が最大限に発揮される。 尚、本願第1の発明は、必ずしも工程Aから始めて工程Cまたは工程Dで終了する必要はない。また、工程A、BおよびCは各1回以上実施されれば良く、工程A、BおよびCが必ずしも同一回数実施される必要はない。尚、工程Dは必要に応じて実施すればよく、本願第1の発明において必須の工程ではない。入手できる原料に応じて、例えば、N末端アミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドが容易に入手できる場合には工程Cから開始する等、どの工程から開始しても良い。また目的とするペプチド化合物に応じて、例えば工程Bまで実施して得られたN末端アミノ基が保護されたペプチドを、公知の方法による側鎖官能基の脱保護反応に供する等、どの工程で終了しても良い。 続いて、本願第2の発明である、ペプチドの製造方法について説明する。本願第2発明は、液相合成法によるペプチドの製造方法であって、(工程A)酸成分の活性エステルとアミン成分を反応させて縮合体を得る工程、(工程B)工程Aで得られた反応液中の不純物を除去して縮合体を精製する工程、(工程C)工程Bで得られた反応液に含まれる縮合体のN末端アミノ基保護基を脱保護する工程、(工程D)必要に応じて、工程Cで得られた反応液中の不純物を除去して、N末端アミノ基が脱保護された縮合体を精製する工程、を含み、少なくとも1つの工程において、溶媒として水と混和しないアミド系溶媒を用いる方法である。 反応溶媒として、例えば水と混和するアミド系溶媒であるDMFを用いてペプチド液相合成を行った場合には、前述したように、工程Bの抽出洗浄工程において、不要な試薬を水洗により溶媒層から除去する際に、ペプチド化合物を同伴して水層に一部移行してしまい、ペプチドの収率が低下する場合がある。このような場合には、例えば、高沸点のDMFを濃縮除去したり、抽出溶剤を大量に使用して、抽出率の向上をはかることもできるが、操作の煩雑化や抽出溶剤量の増大を招く。また、前記のような処理を行ったとしても、DMFが十分に溶媒層に保持されずに水層に分配されてしまうことにより、溶媒層からペプチドが大量に析出して、分液不能に陥る場合もある。 これに対して、反応溶媒として水と混和しないアミド系溶媒を用いてペプチド液相合成を行った場合には、水と混和しないアミド系溶媒は溶媒層に保持されることから、ペプチド溶解性を維持したまま分液操作を行うことができる。 更に、ペプチド液相合成においては、ペプチド鎖の伸長に伴って、縮合反応の反応速度が低下する傾向にあるが、水と混和しないアミド系溶媒を反応溶媒として用いることにより、縮合反応の反応速度を向上させて、速やかに反応を完結させることができることが分かった。 以上のように、水と混和しないアミド系溶媒は、液相合成法全般、中でも連続的液相合成法に理想的な物性を有していることを見出した。本願第2発明は、当該知見に基づき、前記A〜Dの少なくとも1工程において、水と混和しないアミド系溶媒を用いる。具体的には、下記の少なくとも1つを含むことを表す。a)工程Aの縮合反応において、反応溶媒として水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用する、b)工程Bにおいて、精製(酸成分活性エステルの分解、抽出洗浄、及び/又は晶析)に供する、縮合体を含んだ有機溶媒層の溶媒として、水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用する、c)工程Cにおいて縮合体のN末端アミノ基の保護基を脱保護する際に、反応溶媒として水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用する、d)工程Dにおいて、精製(抽出洗浄、及び/又は晶析)に供する、縮合体を含んだ有機溶媒層の溶媒として、水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用する。 言うまでもなく、複数の工程、精製操作において水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用しても良い。BまたはDにおいて複数の精製方法を実施する場合は、操作を簡略化し、本発明の効果を最大化する観点から、全ての精製操作において水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用するのが好ましい。同様に、工程A〜Dの全ての工程において、水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用するのが好ましい。 なお、工程A〜Dを複数サイクル繰り返して目的のペプチド化合物を製造する場合には、最初のサイクルから水と混和しないアミド系溶媒を含む溶媒を使用しても良いし、途中段階からアミド系溶媒を含む溶媒を使用しても良い。 本発明における水と混和しないアミド系溶媒とは、カルボン酸とジアルキルアミンとが脱水縮合した構造を有する、常温で液体であり、水と混和しないアミド化合物を表し、本願第1発明において例示した反応溶媒のうち、水と混和しない非プロトン性溶媒に含まれる。水と混和しないアミド系溶媒は、ペプチド化合物と同じアミド結合を有することから、ペプチド化合物との親和性は非常に高く、ペプチドの溶解性が高い。例えば、N,N−ジプロピルホルムアミドやN,N−ジブチルホルムアミド(DBF)等のホルムアミド化合物やN,N−ジプロピルアセトアミドやN,N−ジブチルアセトアミド等のアセトアミド化合物等が挙げられるが、これらアミド化合物の中でも炭素数が7以上のものが好ましい。なかでもDBFは、ペプチド溶解性および分液特性が優れていることに加え、入手も容易であることから、特に好ましく用いられる。 水と混和しないアミド系溶媒は、反応溶媒または抽出溶媒として、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、水と混和しないアミド系溶媒を、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類等、その他の一般的な有機溶媒、なかでも、ペプチド液相合成に用いる各試薬やペプチド化合物の溶解性が比較的良好なハロゲン化炭化水素類、脂肪酸エステル類等の有機溶媒に添加することも、好適に実施できる。ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタンおよびクロロベンゼンが特に好ましく、脂肪酸エステル類としては、酢酸エチルが特に好ましい。 水と混和しないアミド系溶媒の使用量は、ペプチド液相合成に用いられる各試薬が有機層又は水層の何れかに溶解するか、少なくとも均一に分散する状態であれば、特に制限されないが、一般的に、水と混和しないアミド系溶媒の使用量が多いほど、ペプチド溶解性の観点からは好ましい。水と混和しないアミド系溶媒の使用量は、溶質であるペプチド液相合成に用いられる各試薬および混合して用いるその他の有機溶媒の種類や、それらの使用量、反応温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常は前記アミン成分、縮合体およびN末端アミノ基が脱保護された縮合体のモル数の和に対する水と混和しないアミド系溶媒の総使用容量(L/mol)が0.1倍容量以上、さらに好ましくは1倍容量以上、とりわけ好ましくは2倍容量以上である。上限は、50倍容量以下、さらに好ましくは20倍容量以下、とりわけ好ましくは10倍容量以下である。 水と混和しないアミド系溶媒は溶解性が極めて高く、極少量を添加するだけでも、ペプチドを溶解して液性状を改善することができるため、生産性の観点からは、できる限り使用量を抑えるのが好ましく、溶解状態を確認しながら必要最低限の使用量を設定すればよい。好ましくは10倍容量以下であり、さらに好ましくは5倍容量以下とすることができ、とりわけ好ましくは2倍容量以下とすることができる。当然ながら、本願第1の発明において、工程Bの抽出洗浄工程でペプチド化合物の析出等の不具合が認められた場合には、析出したペプチド化合物を溶解させる等、不具合を解消する目的で、水と混和しないアミド系溶媒を添加することも好適に実施できる。 水と混和しないアミド系溶媒を用いたペプチド液相合成において、前記アミン成分、縮合体および新たなアミン成分の有機溶媒層の濃度は、用いる各試薬の種類とそれらの使用量、有機溶媒の組成(溶媒の混合比)、反応温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常は前記アミン成分、縮合体および新たなアミン成分のモル数の和に対する有機溶媒の総使用容量(L/mol)が1〜50倍容量程度で実施することができる。好ましくは20倍容量以下とすることができ、より好ましくは10倍容量以下とすることができる。 水と混和しないアミド系溶媒を用いることを特徴とするペプチド化合物の液相合成法においては、前記工程A、C及びDの詳細な方法については、溶媒として、前述のものを用いる以外は第1の発明の方法と同じである。 前記工程Bの詳細な方法としては特に制限されず、前述の活性エステルを分解する工程、抽出洗浄工程、晶析工程を実施しても良いし、Carpinoらの方法(Org. Proc. Res. Dev., 7, 28 (2003)、US5516891)やDiosynth社のDioRaSSP法(特開2003−55396)といった、捕捉剤を用いて酸成分活性エステルを分解する方法など、既知の方法を制限無く用いることができる。 言うまでもなく第2の発明においても、B工程で未反応の酸成分活性エステルを残存量が1%以下となるまで塩基性条件を維持して加水分解する、本願第1の発明を実施しても良い。本願第2の発明の工程Bにおいては、未反応の酸成分活性エステルの残存量に特に制限はないが、本願第1の発明と同様に、残存量が1%以下とするのがより好ましい。 水と混和しないアミド系溶媒は、ペプチド化合物との親和性が高いことから、各種不純物を含有するペプチド混合物において、ペプチド化合物と選択的に相互作用を持つことにより、ペプチド化合物の精製において好適に作用する。水と混和しないアミド系溶媒を含有する有機溶媒溶液に含まれるペプチド化合物を精製する方法としては、前述の工程Bや工程Dにおける洗浄方法や晶析方法による精製方法が好適に実施できる。また、晶析方法における良溶媒として水と混和しないアミド系溶媒を用いると、より効果的に不純物を除去できる。また、工程Dにおいて、水と混和しないアミド系溶媒を用いて、酸共存下、不純物を晶析することにより除去して、N末端アミノ基が無保護で、且つC末端カルボキシル基を保護したペプチド化合物と酸との塩を精製するとさらに高純度のペプチド化合物が得られるので好ましい。 ここで、前述の工程Dにおいて、水と混和しないアミド系溶媒を用いて晶析することにより、混入する不純物を析出させて除去し、N末端アミノ基が無保護で、かつ、C末端カルボキシル基を保護したペプチド化合物と酸との塩を精製する方法について説明する。本精製法はペプチド化合物と酸との塩が、水と混和しないアミド系溶媒と親和性が高いことを利用して、ペプチド化合物と酸との塩を有機溶媒層に保持したまま、不純物を分離する。例えば、活性エステルの分解物である酸成分の親水性が低い場合等には、工程Bにおいて酸成分が充分除去できないことがある。このような場合、酸成分は、引き続く脱保護反応により、酸成分の脱保護体へと変換されるが、脱保護した後に、酸を添加すれば、この酸成分脱保護体の酸との塩は、水と混和しないアミド系溶媒と親和性が低いため、有機溶媒から固体として析出する等、容易に除去することができる。従って、ペプチド化合物と酸との塩を効率的に精製することができる。工程Cにおける脱保護を酸性条件下にて実施した場合は、特に酸を添加しなくとも良い。ペプチド化合物が酸との塩を形成していない場合は、適宜酸を添加してペプチド化合物を酸との塩に変換すればよい。この場合に追加する酸は、一般的に使用される無機酸や有機酸を使用すれば良い。 水と混和しないアミド系溶媒の使用量は特に制限されないが、一般的に、使用量が少ないほど、酸成分脱保護体の酸との塩の除去率向上の観点からは好ましい。水と混和しないアミド系溶媒の使用量は一律に規定することはできないが、通常はペプチド化合物のモル数に対する有機溶媒の総使用溶量(L/mol)が0.1〜10倍容量程度で実施することができる。好ましくは5倍容量以下とすることができ、より好ましくは2倍容量以下とすることができる。 水と混和しないアミド系溶媒は、その他の溶媒との有機溶媒混合物として用いても良い。その他の溶媒としては、工程Aで用いた反応溶媒と同じものがあげられる。なかでも、ペプチド化合物の溶解性が比較的良好なハロゲン化炭化水素類、脂肪酸エステル類が好ましく用いられる。ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタンおよびクロロベンゼンが特に好ましく、脂肪酸エステル類としては、酢酸エチルが特に好ましい。特に好ましくはジクロロメタンおよびクロロベンゼンである。 その他の溶媒の使用量は、酸成分脱保護体の酸との塩が析出した反応液の流動性が維持でき、ペプチド化合物と酸との塩の溶解量が飽和しない範囲であれば、特に制限されない。その他の溶媒の使用量は、上記ペプチド化合物の種類や水と混和しないアミド系溶媒の使用量、晶析温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、通常は上記ペプチド化合物のモル数に対する溶媒の総使用量が4〜100倍容量(新たなアミン成分濃度およそ0.01〜0.25mol/Lに相当)程度で実施することができる。 上記晶析時の温度は特に制限されないが、性状の良い晶析液(スラリー)とするためには、ゆっくりと晶析を進行させるのが好適である。当然ながら、徐々に冷却してゆっくりと晶析を進行させる、いわゆる冷却晶析も好適に実施することができる。また、スムースに晶析させるために、種晶を添加するのも好適である。 尚、本精製法では、ペプチド化合物と酸との塩は、水と混和しないペプチド系溶媒を含有する溶液として取得されるが、続いて、本願第1の発明の方法と同様に、工程Dの抽出洗浄工程において塩基性の水溶液での洗浄を実施した際に中和されて遊離のペプチド化合物に変換することができる。得られた遊離のペプチド化合物は、本願第1の発明の方法と同様に、工程Dの晶析工程に供して晶析することもできる。 水と混和しないアミド系溶媒によりもたらされるもう一つの効果としては、縮合反応の促進を挙げることができる。縮合反応の促進効果は、縮合する酸成分とアミン成分の組み合わせや、活性化試薬、縮合剤等の各試薬の種類とそれらの使用量、有機溶媒の種類や組成(溶媒の混合比)、反応温度等により影響を受けるため、一律に規定することはできないが、促進効果により通常は10時間以内に反応を完結させることができる。好ましくは5時間以内に完結させることができ、より好ましくは3時間以内に完結させることができる。また、短時間で反応を完結させることができるために、反応時間を短縮することで、比較的不安定なペプチド化合物でも分解させることなく高収率、高純度で取得することができる。 以上の水と混和しないアミド系溶媒を用いることを特徴とするペプチド化合物の液相合成法は、例えば、活性エステルの分解方法等、その製法については特に制限されず、ペプチド液相合成法全般に適用することができる。 さらに、本願の第1の発明であるペプチド液相合成法と組み合わせることで、より効率的に高純度ペプチド化合物を製造することもできる。 以下、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 本実施例においては、アミノ酸、ペプチド化合物、保護基等に関し、IUPAC−IUB合同委員会による規約、或いは当該分野において慣用的に用いられている略号を用いた。また、アミノ酸に関し、光学異性体が存在する場合には、特に明示しなければL体を示すものとする。 試剤の略号としては、EDC:1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、を用いた。 保護基及び置換基の略号としては、Bn:ベンジル基、Boc:t−ブトキシカルボニル基、Et:エチル基、OBt:1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ基、Ts:p−トルエンスルホニル基、を用いた。 アミノ酸の略号としては、Arg(Ts):Ng―p−トルエンスルホニルアルギニン、D−Leu:D−ロイシン、Gly:グリシン、Leu:ロイシン、Phe:フェニルアラニン、Pro:プロリン、Ser(Bn):O−ベンジルセリン、Tyr(Bn):O−ベンジルチロシン、を用いた。 以下の実施例等におけるpH測定は、堀場製作所社製ハンディpHメーターD21S型(ガラス電極法)を用い、JIS Z 8802 pH測定法で定められたフタル酸塩標準液、中性リン酸塩標準液及びホウ酸塩標準液を用いた3点校正を行った上で実施した。 目的とするペプチド化合物(主成分)の純度、不純物含量及び活性エステル残存量は、UV検出器を備えたHPLC(カラム:株式会社ワイエムシー社製、YMC−Pack ODS−A A303、移動相:10mMリン酸緩衝液(pH2.5)/アセトニトリル=60/40〜20/80、検出器:UV210nm)を用いて測定した。活性エステルの残存量は、目的とするペプチド化合物中の活性エステル含量の推移により追跡した。 主成分の純度、不純物含量及び活性エステル含量は以下の計算式により算出した。尚、総ピーク面積値は、クロロベンゼン、DBF等の溶媒ピークの面積値を除いて補正した。 反応変換率 = 目的物面積値/(目的物面積値+原料面積値)×100[%] 主成分純度 = 主成分面積値/総ピーク面積値×100[%] 不純物含量 = 不純物面積値/主成分面積値×100[%] 活性エステル含量 = 活性エステル面積値/主成分面積値×100[%] (実施例1)Boc−Arg(Ts)−Pro−NHEtの合成 Boc−Pro−NHEt2.0g及びジクロロメタン20mlからなる溶液に、室温でメタンスルホン酸1.90gを加え、室温で4時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、加えたメタンスルホン酸と同モル等量のトリエチルアミン(3ml)を加えた後、15分間攪拌を行った。このようにして得られたPro−NHEtのジクロロメタン溶液にBoc−Arg(Ts)4.24g及びHOBt一水和物1.67gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩2.37gを加えて1時間攪拌した後、室温に昇温して15時間攪拌し、縮合反応を行った。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液20mlを加えて15分攪拌した後、水層を分離した。この時点における水層のpHは7.6であり、得られた有機層中のBoc−Arg(Ts)−OBt(活性エステル)含量は0.2%、Boc−Arg(Ts)(酸成分)は不検出であった。この操作をもう1回繰り返して得られた水層のpHは10.9であり、得られた有機層中のBoc−Arg(Ts)−OBt含量は0.04%であった。この操作を更に1回繰り返して得られた水層のpHは11.8であり、得られた有機層中にはBoc−Arg(Ts)−OBtは検出されなかった。 このようにして得られた有機層を水20mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液20mlで2回洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物4.39gを得た。目的とするBoc−Arg(Ts)−Pro−NHEtの純度は96%、収率は94%であった。 (実施例2)Boc−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtの合成 実施例1で得られたBoc−Arg(Ts)−Pro−NHEtとBoc−Leuとから、実施例1と同様の操作にてBoc−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtを調製した。該化合物0.969g及びジクロロメタン10mlからなる溶液に、室温でメタンスルホン酸0.78gを加え、室温で4時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、加えたメタンスルホン酸と同モル等量のトリエチルアミンを加えた後、15分間攪拌を行った。このようにして得られたLeu−Arg(Ts)−Pro−NHEtのジクロロメタン溶液にBoc−D−Leu0.40g及びHOBt一水和物0.33gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.42gを加えて1時間攪拌した後、室温に昇温して15時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液10mlを加えて15分攪拌した後、水層を分離した。この時点における水層のpHは9.3であり、得られた有機層中のBoc−D−Leu−OBt(活性エステル)含量は11.5%、Boc−D−Leu含量は0.8%であった。この操作をもう1回繰り返して得られた水層のpHは11.0であり、得られた有機層中のBoc−D−Leu−OBt含量は0.2%、Boc−D−Leuは不検出であった。この操作を更に1回繰り返して得られた水層のpHは12.4であり、得られた有機層中にはBoc−D−Leu−OBt及びBoc−D−Leuは検出されなかった。 このようにして得られた有機層を水10mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液10mlで2回洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物0.97gを得た。目的とするBoc−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtの純度は95%、収率は85%であった。 (実施例3)Boc−Ser(Bn)−Tyr(Bn)−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtの合成 実施例2で得られたBoc−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtとBoc−Tyr(Bn)とから、実施例2と同様の操作にてBoc−Tyr(Bn)−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtを調製した。該化合物0.46g及びジクロロメタン5mlからなる溶液に、室温でメタンスルホン酸0.42gを加え、室温で1時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率99.9%)。反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5mlを加えて15分間攪拌した後、水層を分離した。このようにして得られたTyr(Bn)−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtのジクロロメタン溶液にBoc−Ser(Bn)0.19g及びHOBt一水和物0.12gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.15gを加えて1時間攪拌した後、室温に昇温して15時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率99.9%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5mlを加えて15分攪拌した後、水層を分離した。この時点における水層のpHは11.1であり、得られた有機層中のBoc−Ser(Bn)−OBt(活性エステル)含量は4.4%、Boc−Ser(Bn)は0.1%であった。この操作をもう1回繰り返して得られた水層のpHは11.3であり、得られた有機層中のBoc−Ser(Bn)−OBt含量は2.8%、Boc−Ser(Bn)含量は1.3%であった。この操作を更に1回繰り返して得られた水層のpHは11.5であり、得られた有機層中のBoc−Ser(Bn)−OBt含量は0.1%、Boc−Ser(Bn)は不検出であった。 このようにして得られた有機層を水5mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液5mlで2回洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物0.50gを得た。目的とするBoc−Ser(Bn)−Tyr(Bn)−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NHEtの純度は83%、収率は84%であった。 (実施例4)Boc−Phe−Leu−OBnの合成 Leu−OBn・TsOH塩10.02g、トリエチルアミン2.58g及びジクロロメタン100mlからなる溶液に、Boc−Phe10.13g及びHOBt一水和物7.01gを加えて氷冷した。次いでEDC塩酸塩8.80gを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して13時間攪拌しし、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液100mlで洗浄して得られた水層のpHは8.3であり、得られた有機層中のBoc−Phe−OBt(活性エステル)含量は1.6%、Boc−Phe(酸成分)含量は5.0%であった。この有機層を更に5%炭酸ナトリウム水溶液100mlで洗浄して得られた水層のpHは10.4であり、得られた有機層中にはBoc−Phe−OBt(活性エステル)含量は0.1%、Boc−Phe含量は0.4%であった。 このようにして得られた有機層を水100mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和食塩水100mlで洗浄して、有機層135.76gを得た。目的とするBoc−Phe−Leu−OBnの純度は95%であった。 尚、上記有機層135.57gを減圧下に濃縮してジクロロメタンからヘキサンに溶媒置換したところ、固体が析出した。氷冷下、1時間撹拌して熟成した後、析出した固体を濾取し、更にヘキサン100mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色固体10.16gを得た。目的とするBoc−Phe−Leu−OBnの純度は99%、収率は84%であった。 得られた結晶を標準品としたHPLC定量の結果、上記有機層中のBoc−Phe−Leu−OBnの収率は、95%であった。 (実施例5)Boc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの合成 実施例4と同様の操作にて得られた有機層(Boc−Phe−Leu−OBn0.55g及びジクロロメタン5mlからなる溶液)に、室温でメタンスルホン酸0.23gを加え、室温で2時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5mlを加えて、15分間攪拌した後、水層を分離した。このようにして得られたPhe−Leu−OBnのジクロロメタン溶液にBoc−Gly0.31g及びHOBt一水和物0.32gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.41gを加えて1時間攪拌した後、室温に昇温して15時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率99.7%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5mlを加えて15分攪拌した後、水層を分離した。この時点における水層のpHは8であり、得られた有機層中のBoc−Gly−OBt(活性エステル)含量は0.1%であった。この操作を更に2回繰り返して得られた水層のpHは12であり、得られた有機層中にはBoc−Gly−OBtは検出されなかった。 このようにして得られた有機層を水5mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液5mlで2回洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物0.54gを得た。目的とするBoc−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は87%、収率は88%であった。 このようにして得られたBoc−Gly−Phe−Leu−OBn0.54g及びジクロロメタン5mlからなる溶液に、室温でメタンスルホン酸0.26gを加え、室温で1.5時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5mlを加えて、15分間攪拌した後、水層を分離した。このようにして得られたGly−Phe−Leu−OBnのジクロロメタン溶液にBoc−Gly0.27g及びHOBt一水和物0.28gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.36gを加えて1時間攪拌した後、室温に昇温して15時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5mlを加えて15分攪拌した後、水層を分離した。この時点における水層のpHは8であり、得られた有機層中のBoc−Gly−OBt(活性エステル)含量は0.1%であった。この操作を更に2回繰り返して得られた水層のpHは12であり、得られた有機層中にはBoc−Gly−OBtは検出されなかった。 このようにして得られた有機層を水5mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液5mlで2回洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物0.44gを得た。目的とするBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は92%、収率は73%であった。 (実施例6)Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの合成 実施例5と同様の操作にて得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBn0.97g及びジクロロメタン15mlからなる溶液に、室温でメタンスルホン酸0.46gを加え、室温で2時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液15mlを加えた後、15分間攪拌した後、水層を分離した。このようにして得られたGly−Gly−Phe−Leu−OBnのジクロロメタン溶液にBoc−Tyr(Bn)0.93g及びHOBt一水和物0.46gを加えた後、反応溶液を氷冷した。EDC塩酸塩0.57gを加えて1時間攪拌した後、室温に昇温して15時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液15mlを加えて15分攪拌した後、静置して水層を分離した。この操作を更に2回繰り返して得られた水層のpHは12であり、得られた有機層中にはBoc−Tyr(Bn)−OBt(活性エステル)は検出されなかったが、Boc−Tyr(Bn)(酸成分)含量は44%であった。 このようにして得られた有機層を水15mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液15mlで2回洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物1.25gを得た。目的とするBoc−Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は61%であった。また、Boc−Tyr(Bn)の含量は44%であった。 このようにして得られたBoc−Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnを含有する濃縮物1.25g及びジクロロメタン10mlとからなる溶液に、室温でメタンスルホン酸1.32gを加え、室温で1時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。 反応終了後、トリエチルアミン1.82gを加えて5分間攪拌を行った後、5%炭酸ナトリウム水溶液10mlを加えたところ、白色固体が析出した。30分間静置して熟成した後、析出した固体をろ過し、更にジクロロメタン20mlで洗浄した。このようにして得られたろ液及び洗液を合わせ、5%炭酸ナトリウム水溶液20mlで3回洗浄して、水層を分離除去後、得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物0.67gを得た。目的とするTyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は82%、収率は57%であった。また、Tyr(Bn)の含量は8%であった。 一方、ろ過、洗浄により得られた固体は、主成分がTyr(Bn)であった。Tyr(Bn)の純度は87%、Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの含量は14%(収率4%)であった。 (実施例7)Boc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの抽出(DBF添加) 実施例5と同様の操作にて得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBn0.117gにクロロベンゼン0.8mlを加えたところ、完全に溶解しなかったが、これにDBF0.2mlを加えると、完全に溶解した。このようにして得られた溶液に5%炭酸ナトリウム水溶液0.8ml及び飽和食塩水2.4mlを加えて振盪混合した後に静置すると、速やかに澄明な2層に分層したので、有機層と水層を分離した。Boc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの有機層への抽出率は99%、DBFの水層への分配率は1.4%であった。 (比較例1)Boc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの抽出(DMF添加) 実施例5と同様の操作にて得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBn0.117gにクロロベンゼン0.8mlを加えたところ、完全に溶解しなかったが、これにDMF0.2mlを加えると、完全に溶解した。このようにして得られた溶液に5%炭酸ナトリウム水溶液0.8ml及び飽和食塩水2.4mlを加えて振盪混合した後に静置すると、有機層より結晶が多量に析出して流動しなくなった。水層を抜き取って分析した結果、DMFが100%分配されていることが分かった。 実施例6及び比較例1から、水と混和しないアミド系溶媒(DBF)により、抽出操作が改善されることが分かる。 (実施例8)Boc−Phe−Leu−OBnの合成(クロロベンゼン溶媒) Leu−OBn・TsOH塩0.984g、トリエチルアミン0.257g及びクロロベンゼン10mlからなる溶液に、Boc−Phe0.997g及びHOBt一水和物0.702gを加えて氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.835gを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して1時間攪拌したし、縮合反応を行った(反応変換率99.7%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液10mlで洗浄して得られた水層のpHは8.5であり、得られた有機層中のBoc−Phe−OBt(活性エステル)含量は7.9%、Boc−Phe(酸成分)含量は3.8%であった。この操作をもう1回繰り返して得られた水層のpHは10.5であり、得られた有機層中のBoc−Phe−OBt含量は1.8%、Boc−Phe含量は3.6%であった。この操作を更に1回繰り返し洗浄して得られた水層のpHは11.0であり、得られた有機層中のBoc−Phe−OBt含量は0.1%、Boc−Phe含量は1.6%であった。 このようにして得られた有機層を水20mlで1回洗浄した後、10%クエン酸水溶液10mlで洗浄し、次いで飽和食塩水10ml及び水10mlを加えて洗浄して、有機層12.268gを得た。目的とするBoc−Phe−Leu−OBnの純度は93%、抽出率は99%であった。 (実施例9)Boc−Phe−Leu−OBnの合成(クロロベンゼン−DBF溶媒) Leu−OBn・TsOH塩4.00g、トリエチルアミン1.08g、クロロベンゼン40ml及びDBF10mlからなる溶液に、Boc−Phe4.04g及びHOBt一水和物2.81gを加えて氷冷した。次いでEDC塩酸塩3.53gを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して1時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、クロロベンゼン15mlで希釈した後、5%炭酸ナトリウム水溶液40ml及び飽和食塩水20mlを加えて洗浄して得られた水層のpHは8.3であり、得られた有機層中のBoc−Phe−OBt(活性エステル)含量は9.5%、Boc−Phe(酸成分)含量は1.2%であった。この5%炭酸ナトリウム水溶液及び飽和食塩水による洗浄操作を更に3回繰り返して得られた水層のpHは11.1であり、得られた有機層中のBoc−Phe−OBt含量は0.8%、Boc−Phe含量は0.03%であった。 このようにして得られた有機層を水20ml及び飽和食塩水40mlを加えて洗浄して、有機層67.34gを得た。目的とするBoc−Phe−Leu−OBnの純度は98%、抽出率は98%であった。また、水分濃度は0.37%であった。この有機層61.98gを減圧下に脱水濃縮した後、クロロベンゼンで希釈して、脱水溶液53.23gを得た。水分濃度は0.03%であった。 (実施例10)Boc−Gly−Phe−Leu−OBnの合成(クロロベンゼン−DBF溶媒) 実施例9で得られたBoc−Phe−Leu−OBnを含有する脱水溶液49.11gに、室温でメタンスルホン酸8.30g(10当量)を加え、室温で10時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率99.8%)。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液50ml及び飽和食塩水5mlを加えて15分間攪拌した後、水層を分離した。このようにして得られたPhe−Leu−OBnのクロロベンゼン溶液にBoc−Gly2.26g(1.5当量)及びHOBt一水和物2.37g(1.8当量)を加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩2.96g(1.8当量)を加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して10時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率99.9%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液34ml及び飽和食塩水17mlを加えて洗浄して得られた水層のpHは7.9であり、得られた有機層中のBoc−Gly−OBt(活性エステル)含量は0.1%、Boc−Gly(酸成分)は不検出であった。この5%炭酸ナトリウム水溶液及び飽和食塩水による洗浄操作をもう1回実施して得られた有機層中のBoc−Gly−OBt及びBoc−Glyは不検出であった。この有機層を飽和食塩水17mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液17ml及び飽和食塩水34mlを加えて洗浄した。次いで飽和食塩水34mlで洗浄して、クロロベンゼン15mlで洗い込んで、有機層63.90gを得た。Boc−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は91%、抽出率は99.6%であった。この有機層59.95gを減圧下に脱水濃縮した後、クロロベンゼンで希釈して、脱水溶液46.28gを得た。水分濃度は0.06%であった。 (実施例11) Boc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの合成(クロロベンゼン−DBF溶媒) 実施例10で得られたBoc−Gly−Phe−Leu−OBnを含有する脱水溶液43.94gに、実施例10と同様の操作を実施して得られた脱水溶液をジクロロメタンで希釈して、Boc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnを含有するジクロロメタン溶液137.01gを得た。 目的とするBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は87%、抽出率は100%であった。水分濃度は0.09%であった。 (実施例12)Boc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの晶析(クロロベンゼン−DBF溶媒) 実施例11で得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBn(純度87%)を含有するジクロロメタン溶液35.41gを、強撹拌下、氷冷したところ、固体が析出した。氷冷下、1時間撹拌して熟成した後、析出した固体を濾取し、更にヘキサン100mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色固体0.68gを得た。目的とするBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は95%、晶析収率は71%であった。 得られた結晶を標準品としたHPLC定量の結果、実施例9〜10で得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの収率は82%(対Leu−OBn・TsOH塩)であった。 (実施例13)Boc−Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの合成(ジクロロメタン−DBF溶媒) 実施例11で得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnを含有するジクロロメタン溶液57.74gを減圧下に脱水濃縮して、脱水溶液34.90gを得た。水分濃度は0.04%であった。このようにして得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnを含有する脱水溶液30.02gに、室温でメタンスルホン酸4.70gを加え、室温で10時間攪拌したてBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、減圧下に12.82gまで濃縮した。この濃縮液に炭酸ナトリウム3.5g及び水20mlを加えて15分間攪拌した後、水層を分離した。このようにして得られたGly−Gly−Phe−Leu−OBnのジクロロメタン溶液にBoc−Tyr(Bn)1.502g及びHOBt一水和物0.750gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.911gを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して10時間攪拌した、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液12ml及び水6mlを加えて洗浄して得られた水層のpHは9.3であり、得られた有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt(活性エステル)含量は0.3%、Boc−Tyr(Bn)(酸成分)含量は16.6%であった。このようにして得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液12mlで洗浄した後、更に水12mlで洗浄して得られた水層のpHは10.6であり、得られた有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt含量は0.2%、Boc−Tyr(Bn)含量は2.5%であった。 このようにして得られた有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液12mlを加えて撹拌したところ、固体が析出した。室温下、1時間撹拌して熟成した後、析出した固体を濾取し、更にジクロロメタン30mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色固体0.622gを得た。目的とするBoc−Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は99%、晶析収率は37%、取得収率(対Leu−OBn・TsOH塩)は27%であった。また、得られた有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt含量は0.1%未満、Boc−Tyr(Bn)は不検出であった。 一方、得られたろ液及び洗液を合わせ、水層を分離した後、更に飽和食塩水34mlで洗浄して、ジクロロメタン溶液41.78gを得た。Boc−Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は78%、抽出率は99.5%、収率(対Leu−OBn・TsOH塩)は45%であった。また、得られた有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt含量は0.3%、Boc−Tyr(Bn)含量は7.4%であった。 (実施例14)Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの合成(クロロベンゼン−DBF溶媒、Tyr(Bn)酸性塩の除去) 実施例13で得られた白色固体0.183g及びジクロロメタン12.28gを混合し、減圧下に脱水濃縮した後にクロロベンゼンで希釈して、脱水溶液8.95g(Boc−Tyr(Bn)−OBt含量0.2%、Boc−Tyr(Bn)含量4.5%)を取得した。これに、室温でメタンスルホン酸1.38g(18当量)を加え、室温で18時間攪拌したところ、反応の進行と共に固体が析出した。得られた反応液(スラリー)中のTyr(Bn)含量は11.1%であった。 この反応液(スラリー)を1時間撹拌して熟成した後、析出した固体をろ過し、更にクロロベンゼン3mlで洗浄した後、真空乾燥した。このようにして得られた白色固体0.06gは、主成分がTyr(Bn)であった。Tyr(Bn)の純度は82%、Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの含量は15%(収率1%相当)であった。 一方、ろ液及び洗液をクロロベンゼン5mlで洗い込んで合わせ、澄明な溶液を得た。これに10%炭酸ナトリウム水溶液12mlを加えたところ固体が析出した。室温で1時間、次いで氷冷下で1時間撹拌して熟成した後、析出した固体をろ過し、更にクロロベンゼン2ml、水2mlで順次洗浄した後、真空乾燥して白色固体を得た。目的とするTyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は88%、Tyr(Bn)含量は4.9%であった。また、晶析収率は88%、取得収率(対Leu−OBn・TsOH塩)は58%であった。 (実施例15)Boc−Tyr(Bn)−Gly−Phe−Leu−OBnの合成(クロロベンゼン−DBF溶媒) 実施例11で得られたBoc−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnを含有するジクロロメタン溶液18.22gを減圧下に脱水濃縮した後、クロロベンゼンで希釈して、脱水溶液5.48gを得た。これに、室温でメタンスルホン酸1.74g(18当量)を加え、室温で5時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液15mlを加えて15分間攪拌した後、溶液総量が18.35gとなるまで減圧下に濃縮してクロロベンゼンを留去した。これに飽和食塩水2mlを加えて15分間攪拌した後、水層を分離した。このようにして得られたGly−Gly−Phe−Leu−OBnのクロロベンゼン溶液にBoc−Tyr(Bn)0.554g及びHOBt一水和物0.273gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.353gを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して13時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5ml及び飽和食塩水5mlを加えて洗浄して得られた水層のpHは8.5であり、得られた有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt(活性エステル)含量は0.8%、Boc−Tyr(Bn)(酸成分)は30.3%であった。 この5%炭酸ナトリウム水溶液及び飽和食塩水による洗浄操作をもう1回実施して得られた水層のpHは9.6であり、得られた有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt含量は0.2%、Boc−Tyr(Bn)含量は0.1%であった。次いで、得られた有機層を飽和食塩水15mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液5ml及び飽和食塩水15mlを加えて洗浄した。次いで飽和食塩水15ml、水15ml及びクロロベンゼン8mlを加えた後、溶液総量が7.29gとなるまで減圧下に濃縮してクロロベンゼンを留去したところ、固体が析出した。これにクロロベンゼン10ml及び水15mlを加えて、室温で1時間熟成すると均一なスラリーとなった。次いで氷冷下で1時間撹拌して熟成した後、析出した固体をろ過し、更にクロロベンゼン2ml、水2mlで順次洗浄した後、真空乾燥して白色固体を得た。目的とするBoc−Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は92%、Tyr(Bn)含量は2.1%であった。また、晶析収率は93%、取得収率(対Leu−OBn・TsOH塩)は64%であった。 一方、ろ液及び洗液を水2ml及びクロロベンゼン2mlで洗い込んで合わせたところ、溶液が澄明な2層に分層したので、水層を分離して有機層18.91gを得た。Boc−Tyr(Bn)−Gly−Gly−Phe−Leu−OBnの純度は71%、抽出率は100%、収率(対Leu−OBn・TsOH塩)は4%であった。 (実施例16)Boc−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnの合成 Boc−Pro−NEtBnとBoc−Arg(Ts)とから実施例1と同様の操作にてBoc−Arg(Ts)−Pro−NEtBnを調製した。該化合物1.00g、クロロベンゼン5.8ml及びDBF1.5mlからなる溶液に、室温でメタンスルホン酸1.41g(9.8当量)を加え、室温で24時間攪拌したてBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液12mlを加え、15分間攪拌して中和した後、水層を分離して、Arg(Ts)−Pro−NEtBnを含有する溶液8.58gを得た。 このようにして得られた溶液8.28gにBoc−Leu・一水和物0.54g、及びHOBt一水和物0.41gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.51g及び水1.5mlを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して0.5時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率99.9%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液6ml及び飽和食塩水6mlを加えて15分攪拌した後、水層を分離した。この時点における水層のpHは7.9であり、得られた有機層中のBoc−Leu−OBt(活性エステル)含量は6.6%、Boc−Leu(酸成分)含量は0.1%であった。この操作をもう1回繰り返して得られた水層のpHは10.1であり、得られた有機層中のBoc−Leu−OBt含量は5.5%、Boc−Leuは不検出であった。この操作を更に5回繰り返して得られた水層のpHは10.6であり、得られた有機層中のBoc−Leu−OBt含量は1.1%であった。 このようにして得られた有機層を飽和食塩水6mlで1回洗浄した後、5%硫酸水素カリウム水溶液6ml及び飽和食塩水12mlを加えて洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物7.65gを得た。目的とするBoc−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnの純度は91%、収率は91%であった。 (実施例17)Boc−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnの合成 実施例16で得られたBoc−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnを含有する濃縮物7.442gに、室温でメタンスルホン酸1.329g(10当量)を加え、室温で6時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液12mlを加え、15分間攪拌して中和した後、水層を分離して、得られた有機層を減圧下に濃縮し、Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnを含有する濃縮物2.283gを得た。 このようにして得られた濃縮物2.226gにBoc−D−Leuのクロロベンゼン溶液(濃度10.1%)4.583g及びHOBt一水和物0.372gを加えた後、反応溶液を氷冷した。次いでEDC塩酸塩0.453g及び水1.3mlを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して13時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率100.0%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液5ml、水5ml及び飽和食塩水10mlを加えて15分攪拌した後、水層を分離した。この時点における水層のpHは7.2であり、得られた有機層中のBoc−D−Leu−OBt(活性エステル)含量は5.3%、Boc−D−Leu(酸成分)含量は0.004%であった。この操作をもう1回繰り返して得られた水層のpHは9.8であり、得られた有機層中のBoc−D−Leu−OBt含量は4.3%、Boc−D−Leuは不検出であった。この操作を更に7回繰り返して得られた水層のpHは10.7であり、得られた有機層中のBoc−D−Leu−OBt含量は0.8%であった。 このようにして得られた有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液5ml及び飽和食塩水15mlを加えて1回洗浄した後、飽和食塩水5mlで洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮し、濃縮物8.024gを得た。目的とするBoc−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnの純度は93%、収率は99%であった。 (実施例18)Boc−Tyr(Bn)−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnの合成 実施例17で得られたBoc−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnを含有する濃縮物3.782gに、室温でメタンスルホン酸0.597g(9.9当量)を加え、室温で15時間攪拌してBoc基を除去した(反応変換率100.0%)。反応終了後、10%炭酸ナトリウム水溶液5mlを加え、15分間攪拌して中和した後、水層を分離して、得られた有機層を減圧下に濃縮し、D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnを含有する濃縮物3.584gを得た。 このようにして得られた濃縮物3.444gにBoc−Tyr(Bn)0.338g及びHOBt一水和物0.167gを加えた後、反応溶液を氷冷した。EDC塩酸塩0.209g及び水0.6mlを加えて2時間攪拌した後、室温に昇温して0.5時間攪拌し、縮合反応を行った(反応変換率99.9%)。 反応終了後、5%炭酸ナトリウム水溶液2.5ml及び飽和食塩水2.5mlを加えて30分攪拌した。この時点における水層のpHは8.4であり、水層を分離せずに静置して分層した有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt(活性エステル)含量は5.6%、Boc−Tyr(Bn)(酸成分)含量は26%であった。この反応混合物に、撹拌下、48%水酸化ナトリウム水溶液0.210gを添加したところ、pHは11.4まで一旦上がったが、10分後には10.8まで下がった。更に10分おきにpHを測定したが、10.8のままであった。水層を分離して得られた有機層中のBoc−Tyr(Bn)−OBt含量は0.2%、Boc−Tyr(Bn)含量は39%であった。 このようにして得られた有機層を飽和食塩水5mlで1回、5%硫酸水素カリウム水溶液2.5ml及び飽和食塩水2.5mlを加えて1回洗浄した後、飽和食塩水2.5mlで洗浄して得られた有機層を減圧下に濃縮、クロロベンゼン4mlで溶媒置換して、濃縮物7.385gを得た。目的とするBoc−Tyr(Bn)−D−Leu−Leu−Arg(Ts)−Pro−NEtBnの純度は66%、Boc−Tyr(Bn)含量は33%であった。又、収率は97%であった。 液相合成法によるペプチドの製造方法であって、(工程A)酸成分の活性エステルとアミン成分を反応させて縮合体を得る工程、(工程B)工程Aで得られた反応液中の不純物を除去して縮合体を精製する工程、(工程C)工程Bで得られた縮合体のN末端アミノ基保護基を脱保護する工程、を含み、少なくともB工程において水と混和しないアミド系溶媒としてN,N−ジプロピルホルムアミド又はN,N−ジブチルホルムアミドから選ばれる少なくとも1つを用いることを特徴とする製造方法。 工程Bにおいて、水と混和しないアミド系溶媒を用いることにより、N末端アミノ基およびC末端カルボキシル基が共に保護されたペプチド化合物を精製することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。 更に、(工程D)工程Cで得られた反応液中の不純物を除去して、N末端アミノ基が脱保護された縮合体を精製する工程を含み、この工程Dにおいても水と混和しないアミド系溶媒を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。 工程A、B及びCにおいて水と混和しないアミド系溶媒を用いることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。 水と混和しないアミド系溶媒とハロゲン化炭化水素系溶媒又は脂肪酸エステル系溶媒を含有する混合溶媒を用いる、請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。 水と混和しないアミド系溶媒とハロゲン化炭化水素系溶媒を含有する混合溶媒を用いる、請求項5に記載の製造方法。 工程Dにおいて、酸性条件下で、水と混和しないアミド系溶媒を用いて晶析することにより、混入する不純物を析出させて除去し、N末端アミノ基が無保護で、且つC末端カルボキシル基が保護されたペプチド化合物と酸との塩を精製することを特徴とする、請求項3〜6の何れかに記載の製造方法。 工程Dにおいて、水と混和しないアミド系溶媒を用いて晶析することにより、N末端アミノ基が無保護で、且つC末端カルボキシル基が保護されたペプチド化合物を精製することを特徴とする、請求項3〜6の何れかに記載の製造方法。 工程Aの溶媒が水を含むことを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の製造方法。 工程Aにおいて酸成分の活性エステルの使用量が、アミン成分を基準としたとき、1.1モル倍以上1.5モル倍以下であることを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載の製造方法。 工程Aにおいて、酸成分が、N末端アミノ基が酸性条件で除去可能な保護基で保護されたアミノ酸またはペプチドであり、アミン成分が、C末端カルボキシル基が酸性条件下で安定な保護基で保護されたアミノ酸またはペプチドであることを特徴とする、請求項1〜10の何れかに記載の製造方法。 工程Bの精製が、未反応の酸成分の活性エステルの分解、抽出洗浄、又は晶析であることを特徴とする、請求項1〜11の何れかに記載の製造方法。 工程Bで、工程Aで得られた反応液と塩基を接触させ、未反応の酸成分の活性エステルを残存量が1%以下となるまで塩基性条件を維持して加水分解することを特徴とする、請求項1〜12の何れかに記載の製造方法。 目的のペプチド結合を形成した後に、ペプチド化合物を構成するアミノ酸の側鎖官能基に導入された保護基を脱保護することを特徴とする、請求項1〜13の何れかに記載の製造方法。


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