生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ウイルス不活性化薬剤およびその製造方法
出願番号:2008324201
年次:2012
IPC分類:A61K 33/30,A01N 55/02,A01N 37/36,A01N 37/06,A01P 1/00,A61K 47/22,A61K 47/12,A61K 9/16,A61K 9/20,A62B 18/02


特許情報キャッシュ

田中 秀彦 堤 一浩 JP 4980337 特許公報(B2) 20120427 2008324201 20081219 ウイルス不活性化薬剤およびその製造方法 株式会社シガドライウィザース 505172178 大前 要 100101823 板東 義文 100117293 田中 秀彦 堤 一浩 20120718 A61K 33/30 20060101AFI20120628BHJP A01N 55/02 20060101ALI20120628BHJP A01N 37/36 20060101ALI20120628BHJP A01N 37/06 20060101ALI20120628BHJP A01P 1/00 20060101ALI20120628BHJP A61K 47/22 20060101ALI20120628BHJP A61K 47/12 20060101ALI20120628BHJP A61K 9/16 20060101ALI20120628BHJP A61K 9/20 20060101ALI20120628BHJP A62B 18/02 20060101ALN20120628BHJP JPA61K33/30A01N55/02 BA01N37/36A01N37/06A01P1/00A61K47/22A61K47/12A61K9/16A61K9/20A62B18/02 C A61K 31/00−33/44 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表2009−526828(JP,A) 特表2006−526026(JP,A) 特開2003−221304(JP,A) 8 2010143875 20100701 9 20090312 福井 悟 本発明は一般にウイルス不活性化薬剤に関するものであり、より特定的には、少なくとも鳥インフルエンザウイルスの不活性化を行うことができるように改良されたウイルス不活性化薬剤に関する。この発明は、またそのようなウイルス不活性化薬剤の製造方法に関する。 従来のマスクは、マスク基材である不織布の目を細かくするなど物理的に粒子の通過を防ぐだけのものであった。しかし、不織布の目を細かくするだけでは、鳥インフルエンザウイルス、猫、犬、ヒトのカリシウイルス、ノロウイルスが口から体内に入るのを防止することはできなかった。 抗菌性に注目した場合、超微粒子酸化亜鉛を優れた特性を有することが知られている。従来、抗菌・抗黴・防臭剤の大部分は有機系化合物であり、樹脂からのブリードアウトや効果の持続性の点で問題が指摘されることがあり、また人体や食品に接触するような場合は安全面で使いにくいものであった。 無機系抗菌剤としては、銀系抗菌剤が一般的に用いられているが、酸化による黒化、銀イオンの溶出の問題を抱えており、必ずしも万能でない。一方、超微粒子酸化亜鉛は無機化合物であるため、ブリードアウトの問題がなく、非着色性であり、また安定した効果を持続する。さらに、化粧品や消炎剤等に用いられていることからわかるように、人体に対して安全性が高いことも大きな特徴である。 しかしながら、超微粒子酸化亜鉛はクロカビ、白癬菌以外の黴に対して効果が小さいという欠点があるため、目的にあった使い方をする必要があるという課題があった。 本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、鳥インフルエンザウイルスの不活性化を行うことができるように改良されたウイルス不活性化薬剤を提供することにある。 本発明に係るウイルス不活性化薬剤は、酸化亜鉛ナノ粒子を、水に溶かせると一部ラクトン化する有機酸を40〜50重量%含む有機酸水溶液に分散させてなる、有機酸亜鉛を5,000ppm〜10,000ppmの濃度で含む水溶液である。 本発明に係るウイルス不活性化薬剤は、顔部に着用してマスクに含浸させると、少なくとも鳥インフルエンザウイルスの不活性化を行うことができた。マスクとしては、外側不織布層/中間不織布層/内側不織布層の3層構造のもので、中間不織布層に本発明に係るウイルス不活性化薬剤を含浸させるのが好ましい。外側不織布層を設けることにより、中間不織布層に付着した酸化亜鉛および/又は有機酸の外部への飛散が防止され、内側不織布層を設けることにより、中間不織布層に付着した酸化亜鉛および/又は有機酸が鼻、口への侵入を防止することができる。 本発明に係るウイルス不活性化薬剤を含浸させたマスクを顔部に着用すると、外部から鼻孔、口腔内に進入するウイルスを効率よく死滅させることができた。その理由は、酸化亜鉛並びに有機酸の抗菌力により、鳥インフルエンザウイルスの細胞を破壊させ、これを不活性化させるからであると考えている。有機酸と酸化亜鉛の相乗効果により、抗菌力が一層高まるものと考えられる。 前記酸化亜鉛ナノ粒子を分散させてなる有機酸水溶液を、薬用の固形剤又は粉末剤用添加剤を使用して、錠剤化又は顆粒化させて服用するようにしてもよい。 有機酸は、グルコン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、りんご酸、乳酸等であり、中でも水に溶かせると一部ラクトン化するグルコン酸が好ましい。 1,3ジメチル−2−イミダゾリジンを添加することにより、有機酸亜鉛の水への溶解度を増加させることができる。1,3ジメチル−2−イミダゾリジンは毒性を有しない。 上記酸化亜鉛ナノ粒子は、直径50nm〜70nm(1ナノは10億分の1)の酸化亜鉛ナノ粒子を含むのが好ましい。超微粒子の酸化亜鉛は有機酸に良く分散することも利点である。金属イオンには、Hg>Ag>Cu>Zn>Fe>TiO2の順で殺菌力があるといわれ、一般に銀系抗菌剤が用いられているが、酸化亜鉛を超微粒子にすることにより、銀に劣らない抗菌性を示すようになった。超微粒子の酸化亜鉛の抗菌メカニズムは銀イオンと同じと考えられ、金属の毒性、殺菌性によるものでなく、空気中あるいは水中の酸素の一部を活性酸素化し、ウイルスの細胞膜を破壊すると考えられる。ナノ粒子を使うことにより、比表面積が大きくなり、ウイルスの表面での接触が拡大されて、ウイルスの増殖が抑制されると考えられる。金属イオン粉は溶出が少なく、抑制効果維持性が高く安全であり、直接接触するウイルスに対しては、銀と同等の抗菌性を示す。なお、ウイルスの径は75nmである。ウイルスの径に近い径を有する超微粒子の酸化亜鉛を選んで、有機酸水溶液に分散させることにより、鳥ウイルスを不活性化させることができることが見出された。 当該ウイルス不活性化薬剤をマスクの不織布に含浸させる場合、上記酸化亜鉛ナノ粒子の付着量は、5g/m2〜15g/m2であるのが好ましい。 上記有機酸として、水に溶かせると一部ラクトン化する有機酸が好ましい。特に、グルコン酸を用いるのが好ましい。この場合、より好ましくは、グルコン酸亜鉛を約7500ppm含むように濃度を調整する。 グルコン酸を水に溶かすと、次の[化1]に示すように、一部はグルコノラクトンになる。これを平衡という。グルコノラクトンとグルコン酸の割合は、温度、濃度、pHなどによって変わる。酸性にすると水中の酸が多くなるので、グルコノラクトンの割合が多くなる。アルカリ性にするとグルコン酸は塩になって安定化するので、グルコノラクトンの割合は少なくなる。平衡とは2つの水槽をチューブで連結したようなもので、左側の水槽に水を入れると、バランスを保つために水はチューブを通って右側に流れる。 酸化亜鉛ナノ粒子とグルコン酸を併用することによる相乗効果が生じることの説明について、タンパク質である鳥インフルエンザウイルスにグルコン酸が触れた場合を考える。[化2]に示すように、タンパク質には酸性のアミノ酸と塩基性のアミノ酸が含まれている。酸性のアミノ酸は、-COOHなどを持っており、マイナスイオンに(COO-)になる。塩基性のアミノ酸は、-NH2を持っていて、プラスイオン(-NH3+)になる。タンパク質中のプラスイオンが多かったり、マイナスイオンが多かったりするとタンパク質は水に溶けるが、マイナスとプラスのイオンが同じだけ(等電点という)だと、ちょうど中性になり電荷を持たないので水に溶けなくなる。ウイルスを等電点にすると、ウイルスは溶けなくなり、固まり死滅する。 本発明によれば、酸化亜鉛ナノ粒子がグルコン酸と反応し、グルコン酸亜鉛となり、これが上記等電点の調整をうまく行ない、鳥インフルエンザウイルスの細胞を破壊させ、これを不活性化させたものと考えられる。 この場合、フマール酸、リンゴ酸又はクエン酸をさらに添加することにより、抗菌性を増大させることができる。 上記不織布は、30g/m2〜50g/m2のPET(ポリエチレンテレフタレート)スパンボンド布を含むのが好ましい。 また、上記不織布は、30g/m2〜50g/m2の、レーヨン70%とPET30%の混抄不織布であってもよい。 本発明の他の局面に従う方法においては、水に溶かせると一部ラクトン化する有機酸を40〜50重量%含む水溶液を準備し、得られる有機酸亜鉛が5,000ppm〜10,000ppmの濃度になるように量を選んで、上記水溶液中に直径50nm〜70nmの酸化亜鉛ナノ粒子を、室温で、かき混ぜて分散させることを特徴とする。有機酸にはグルコン酸を用いるのが好ましい。超微粒子の酸化亜鉛は、超微粒子の状態で、有機酸の補助を受けて、水中に均一に分散し、溶ける状態になるものと考えられる。 上記酸化亜鉛ナノ粒子を上記有機酸水溶液中に分散させる工程は温度を上昇させないように行なうのが好ましい。 本発明にかかるウイルス不活性化薬剤を含浸させたマスクを顔部に着用すれば、外部から鼻孔、口腔内に進入するウイルスを効率よく死滅させることができた。 鳥インフルエンザウイルスの不活性化を行うことができるように改良された薬剤を得るという目的を、グルコン酸を40〜50重量%含むグルコン酸水溶液に、直径50nm〜70nmの酸化亜鉛ナノ粒子を、得られるグルコン酸亜鉛の濃度が5,000ppm〜10,000ppmになるように、室温で、温度を上昇させないように、かき混ぜて分散させることによって実見した。グルコン酸水溶液に酸化亜鉛ナノ粒子を分散させていくと、発熱し、温度が上がり過ぎるとゲル化することが認められた。また、グルコン酸亜鉛の濃度が60,000ppmを超えると、真っ白にゲル化することが認められた。したがって、分散させるときの温度、グルコン酸亜鉛の濃度の調整は厳格にすることが留意すべき点である。以下実施例について説明する。 グルコン酸50%水溶液に、直径50nm〜70nmの酸化亜鉛ナノ粒子を室温で、温度を上げないように、かき混ぜて分散させ、グルコン酸亜鉛(Gluconic Zn)を30,000ppm、10,000ppm、7,500ppm、5,000ppm、3,750ppm、2,000ppm含む薬剤の試験品を6種類作成した。それぞれの試料0.5ml(対照として滅菌蒸留水)と鳥インフルエンザウイルス(A/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3)107.5EID50/0.1ml)0.5mlを加え、ボルテックスで混合し、室温(20℃)で10分間反応させた。試験品とウイルス混合液を抗生物質を含む滅菌PBSで10倍段階希釈し、3個の10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔内に0.1mlずつ接種する。発育鶏卵を37℃、2日間培養した後、赤血球凝集試験により漿尿膜腔内でのウイルス増殖の有無を確認し、ウイルス感染価をReed and Munchの方法により算出した。結果を表1に示す。 図1は、試験品中の Gluconic Zn の濃度とウイルス感染価との関係をプロットしたものである。図1から明らかなように、グルコン酸濃度7,5000ppmで、ウイルス感染価2.25と極小値を示した。このような極小値を示す理由は定かでない。 本発明を応用した実施例である。図2は、本発明に係るウイルス不活性化薬剤を適用したウイルス不活性化マスクの概念図である。図3は、マスクを構成するマスク基材の断面図である。これらの図を参照してマスク1は、酸化亜鉛が分散された有機酸溶液を不織布に含浸させてなる中間不織布層3を備える。中間不織布層3の表側に、外気と接触する外側不織布層2が設けられている。中間不織布層3の裏側に、鼻、口の肌面と接触する内側不織布層4が設けられている。酸化亜鉛を有機酸水溶液に分散させてなる、グルコン酸亜鉛を5,000ppm〜10,000ppmを含むウイルス不活性化薬剤を含浸させる不織布は、30g/m2〜50g/m2のPET(ポリエチレンテレフタレート)スパンボンド布又は30g/m2〜50g/m2の、レーヨン70%とPET30%の混抄不織布である。酸化亜鉛の塗布量は、5g/m2〜15g/m2である。 本実施例によって得られるマスクを顔部に着用すれば、外部から鼻孔、口腔内に進入するウイルスを効率よく死滅させることができた。また、トリエタノールアミン、エチレングリコールを添加して、保湿効果を与えることも好ましい。 なお、上記実施例では3層構造のマスクを例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、4層構造であってもよいし、それ以上の多層構造でもよい。 本発明を応用した他の実施例である。このウイルス不活性化薬剤は、体内に入っても無害であった。加湿器に本発明に係るウイルス不活性化薬剤を入れて、部屋に噴霧することで、鳥インフルエンザを予防する。 本発明を応用したさらに他の実施例である。酸化亜鉛ナノ粒子を分散させてなるグルコン酸水溶液を、薬用の固形剤又は粉末剤用添加剤を使用して、錠剤化又は顆粒化させて、図4に示すような板状や顆粒状に製し、錠剤化させて服用できるようにする。固形剤又は粉末剤用添加剤とは、崩壊剤、被覆剤、結合剤、賦形剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤等を含む。これにより、鳥インフルエンザを予防することができる。糖衣でくるみ、飲みやすくしたり、美観,品種の判別などのため着色してもよい。胃で溶けず、腸で溶けるようにした錠剤や、口中で徐々に溶かす口腔錠、2種以上の薬が別々に作用する多層錠、用時溶かして用いる注射錠などにしてもよい。 なお、上記実施例では、有機酸としてグルコン酸を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、酸化亜鉛と相乗して、タンパク質の膜を破壊するものはいずれも使用できる。 今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。 本発明に係るウイルス不活性化薬剤は、鳥インフルエンザウイルスの不活性化を行う。実施例に係る試験品中のグルコン酸亜鉛の濃度とウイルス感染価との関係をプロットした図である。実施例に係るウイルス不活性化薬剤を応用したウイルス不活性化マスクの概念図である。実施例に係るウイルス不活性化薬剤を応用したウイルス不活性化マスクの断面図である。酸化亜鉛ナノ粒子を分散させてなるグルコン酸水溶液を、賦形剤にしみ込ませて錠剤化した錠剤の斜視図である。符号の説明 1 ウイルス不活性化マスク 2 外側不織布層 3 中間不織布層 4 内側不織布層 酸化亜鉛ナノ粒子を、水に溶かせると一部ラクトン化する有機酸を40〜50重量%含む有機酸水溶液に分散させてなる、有機酸亜鉛を5,000ppm〜10,000ppmの濃度で含むウイルス不活性化薬剤。 前記酸化亜鉛ナノ粒子は、直径50nm〜70nmの酸化亜鉛ナノ粒子を含む請求項1に記載のウイルス不活性化薬剤。 前記有機酸亜鉛はグルコン酸亜鉛を含む請求項1に記載のウイルス不活性化薬剤。 1,3ジメチル−2−イミダゾリジンを添加してなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウイルス不活性化薬剤。 フマール酸、リンゴ酸又はクエン酸をさらに添加してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のウイルス不活性化薬剤。 前記酸化亜鉛ナノ粒子を分散させてなる有機酸水溶液を、薬用の固形剤又は粉末用添加剤を使用して、錠剤化又は顆粒化させた請求項1に記載のウイルス不活性化薬剤。 水に溶かせると一部ラクトン化する有機酸を40〜50重量%含む有機酸水溶液を準備し、 得られる有機酸亜鉛が5,000ppm〜10,000ppmの濃度になるように量を選んで、前記有機酸水溶液中に直径50nm〜70nmの酸化亜鉛ナノ粒子を、室温で、かき混ぜて分散させることを特徴とするウイルス不活性化薬剤の製造方法。 前記酸化亜鉛ナノ粒子を前記有機酸水溶液中に分散させる工程は、温度を上昇させないように行なうことを特徴とする、請求項7に記載のウイルス不活性化薬剤の製造方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る