タイトル: | 特許公報(B2)_双連続キュービック液晶構造をとり得る重合性を有する化合物及び双連続キュービック液晶構造を有するイオン伝導性ポリマー |
出願番号: | 2008310537 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07C 217/58,C07F 9/54,H01M 10/00,C08F 36/14,C08F 38/00,C08F 2/44 |
加藤 隆史 吉尾 正史 一川 尚広 大野 弘幸 JP 5552667 特許公報(B2) 20140606 2008310537 20081205 双連続キュービック液晶構造をとり得る重合性を有する化合物及び双連続キュービック液晶構造を有するイオン伝導性ポリマー 国立大学法人 東京大学 504137912 国立大学法人東京農工大学 504132881 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 加藤 隆史 吉尾 正史 一川 尚広 大野 弘幸 20140716 C07C 217/58 20060101AFI20140626BHJP C07F 9/54 20060101ALI20140626BHJP H01M 10/00 20060101ALI20140626BHJP C08F 36/14 20060101ALI20140626BHJP C08F 38/00 20060101ALI20140626BHJP C08F 2/44 20060101ALI20140626BHJP JPC07C217/58C07F9/54H01M10/00C08F36/14C08F38/00C08F2/44 A C07C C07F C08F H01M CAplus/REGISTRY(STN) 特開2008−037823(JP,A) Journal of the American Chemical Society,2007年,Vol.129,p.10662-10663 12 2010132610 20100617 21 20111205 新留 素子 本発明は、双連続キュービック液晶構造をとり得る重合性を有する化合物、この化合物を用いた双連続キュービック液晶構造をとり得るポリマーとその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、重合性を付与した液晶性イオン液体を用いて自己組織化によりナノイオンチャンネルを構築し、構築された液晶状態を維持しつつ重合(例えば、光重合)により、ナノ構造を固定化して、固体電解質材料等に有用な新規なポリマー材料とその製造方法に関する。 近年、イオン液体が次世代電池電解質材料として非常に注目を集めている。固体電解質への応用を目指して、このイオン液体を重合またはゲル化により固定化するといった研究が行われている(例えば、特許文献1、2)。従来の方法の重合による固定化では、イオン液体の流動性の低下によるイオン伝導度の極度な低下といった問題がある。また、ゲル化による固定化は非常に有用であると考えられるが、ナノオーダーのイオンチャンネルのような規則的な構造を有する材料の構築は見込めない。液晶材料の持つ配向性を利用したイオン伝導体を実用に供されるには、電極間に配置される場合に、液晶性イオン伝導体が、広い温度範囲で電極間の方向に高いイオン伝導性を有することが必要とされるが、そのような性質を有する液晶性イオン伝導体を電極間で均一に配向させることは困難であった。 それに対して、本発明者らは、互いに交じり合わない分子骨格を有するジブロック分子の自己組織化に注目し、イオン液体骨格を有するジブロック分子を設計・合成した。これらの分子は、イオン液体部位・非イオン部位のナノ相分離により自己組織的に様々なナノ構造を形成する。このナノ構造の形成により、液晶構造が自己組織的に形成できる。特に、本発明者らは、ナノ相分離構造の中でも、3次元的なチャンネル構造を有する双連続キュービック相に注目し、双連続キュービック構造を有するイオン伝導体として機能するジブロック分子を開発した。双連続キュービック相の3次元的なチャンネル構造は、ドメインの配向制御不要なパスとして機能しうることをすでに報告している(非特許文献1、特許文献3)。T. Ichikawa, M. Yoshio, A. Hamasaki, T. Mukai, H. Ohno, and T. Kato, J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 10662.特開2002-358821号公報特開2003-20479号公報特開2008-37823号公報 上記双連続キュービック構造を有するイオン伝導体を形成するジブロック分子は、低分子化合物であるため、イオン伝導体の形状保持性に問題があった。 そこで、本発明が解決すべき課題は、双連続キュービック構造等の液晶構造を自己組織的に形成できる材料であって、しかも、イオン伝導体として用いる場合に優れた形状保持性を示す材料を提供することにある。特に本発明は、双連続キュービック構造等の液晶構造を自己組織的に形成できる重合性を有する材料と、この重合性を有する材料を用いて得られる双連続キュービック構造等の液晶構造を保持したポリマーを提供することを目的とする。 本発明者らは、前記ジブロック分子の非イオン部位に重合基を導入し、ナノ相分離構造の非イオン部位による相のみを重合し固定化することで、イオン液体の液体的性質を保ちつつ、固体化することができると考え、種々の化合物を合成し、それらの化合物が、双連続キュービック構造等の液晶構造を自己組織的に形成できるか否かを検討した。その結果、重合基として特定の基を導入した化合物においてのみ、双連続キュービック構造等の液晶構造を自己組織的に形成できることを見出し、さらに、この化合物が重合後も、双連続キュービック構造等の液晶構造を維持し、即ち、ナノオーダーのイオンチャンネルを有する材料であることを見出して、本発明を完成させた。 本発明は以下のとおりである。[1]式(1)または(2)[式(1)及び(2)中、X-は、Cl-、Br-、I-、F-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO2)2N-のいずれかであり、1R、2R、3Rは、同一でも異なっていてもよく、(CH2)k-1CH3、(CF2)k-1CF3、(CH2)l(CF2)k-l-1CF3、又は(CH2CH2O)lCH3であり、4R、5R、6Rは、少なくとも1つがジエン基CH2=CH−CH=CHまたはジアセチレン構造を含む基H(CH2)q-C≡C-C≡C-の重合性基であり、残りは、同一でも異なっていてもよく、CH3、CF3(CF2)p-1、CH2=CH−COO、CH2=CCH3−COO、Hのいずれかであり、kは1から18までの数、lは0から4までの数、mは1から5までの数、nは6から22までの数、k-lは1以上、pは1から18までの数、qは0から5までの数である。]で表される化合物又はその塩。[2]4R及び6Rがジエン基CH2=CH−CH=CHである、[1]に記載の化合物又はその塩。[3][1]または[2]に記載の化合物又はその塩と光重合開始剤の混合物を調製し、前記混合物が自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有するように処理し、得られた材料に光を照射して双連続キュービック液晶構造を有するポリマーを得ることを含む、液晶構造を有するポリマーの製造方法。[4]前記混合物が、電荷を有する原子または分子をさらに含有する[3]に記載の製造方法。[5]前記混合物をフィルム状に成形し、その後フィルム状の混合物を、自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有するように処理して、フィルム状のポリマーを得る、[3]または[4]に記載の製造方法。[6]ポリマーが、2次元若しくは3次元架橋構造を有するか、または2次元及び3次元架橋構造が共存する、[3]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。[7][1]の式(1)または(2)で示される化合物又はその塩が、式(1)または(2)中の重合性基により重合したポリマーであり、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマー。[8]重合性基が、ジエン基CH2=CH−CH=CHである[7]に記載のポリマー。[9]前記ポリマーが、電荷を有する原子または分子をさらに含有する[7]または[8]に記載のポリマー。[10]ポリマーが、2次元若しくは3次元架橋構造を有するか、または2次元及び3次元架橋構造が共存する、[7]〜[9]のいずれかに記載のポリマー。[11][4]に記載の方法で製造された、電荷を有する原子または分子を含有し、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマー、または[9]に記載の、電荷を有する原子または分子をさらに含有し、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマーからなる、電解質材料。[12]電気化学デバイスに用いられる[11]に記載の電解質材料。 本発明によれば、重合性のイオン性双連続キュービック液晶が提供される。この重合性のイオン性双連続キュービック液晶を液晶状態で重合することで、ナノオーダーのイオンチャンネルを有するポリマーフィルムも提供できる。本発明の化合物から形成される液晶構造が有するチャンネルは、自己組織化により形成されるチャンネルであるため、チャンネルの太さはナノレベルで均一なものである。そのため、これらのイオンチャンネルはイオン伝導パスとしての機能ばかりでなく、選択的イオン透過チャンネルなどへの応用なども十分期待できる。 本発明によれば、ドメインや分子の配向制御を行わなくても、マイクロメートルオーダーで連続的なイオン性のナノチャンネルを有するポリマーフィルム材料の提供が可能となる。本発明で得られた双連続キュービック構造の3次元的なイオンチャンネルを巧みに利用すれば、高いイオン伝導性を有する固体電解質の開発やサイズ選択的イオン透過膜などへの応用が期待できる。[重合性ジブロック分子] 本発明の第1の態様は、式(1)または(2)で示される化合物又はその塩である。この化合物は、イオン液体部位と非イオン部位とからなるジブロック分子であって、イオン液体部位はアンモニウム塩構造またはホスホニウム塩構造を含み、非イオン部位は長鎖アルキル構造を含む。 上記式(1)及び(2)中、X-は、Cl-、Br-、I-、F-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO2)2N-のいずれかである。X-は、熱安定性や高いイオン伝導性の発現を目指す上で、マイナスチャージを非局在化させるような電気吸引性基のFやCF3を有するペルフルオロアニオン(BF4-, PF6-, CF3SO3-, (CF3SO2)2N- など)であることが好ましい。 1R、2R、3Rは、同一でも異なっていてもよく、(CH2)k-1CH3、(CF2)k-1CF3、(CH2)l(CF2)k-l-1CF3、又は(CH2CH2O)lCH3である。式中のkは1から18までの数であるが、好ましくは1から10の整数である。lは0から4までの数であるが、好ましくは1から3の整数である。1R、2R、3Rは、異なっていてもよいが、同一の基である方が、合成上は容易である。 4R、5R、6Rは、少なくとも1つがジエン基CH2=CH−CH=CHまたはH(CH2)q-C≡C-C≡C-の重合性基であり、残りは、同一でも異なっていてもよく、CH3、CF3(CF2)p-1、CH2=CH−COO、CH2=CCH3−COO、Hのいずれかである。4R、5R、6Rは、いずれか1つが重合性基であるか、いずれか2つが重合性基であるか、または3つすべてが重合性基であることができる。4R、5R、6Rのいずれか2つが重合性基である場合には、4R、5Rのいずれか2つ、5R 、6Rのいずれか2つ、または4R、6Rのいずれか2つが重合性基であることができる。4R、5R、6Rのいずれか1つが重合性基である場合には、この化合物を用い、重合して得られるポリマーは、2次元架橋構造を有する。4R、5R、6Rのいずれか2つが重合性基であるか、または3つすべてが重合性基である場合には、この化合物を用い、重合して得られるポリマーは、3次元架橋構造を有する。4R、5R、6Rは、例えば、4R及び6Rがジエン基CH2=CH−CH=CHであり、残りの一つである5RがCH3、CF3(CF2)p、CH2=CH−COO、CH2=CCH3−COO、Hのいずれかであることができる。 mは1から5までの数であるが、好ましくは1から3の整数である。nは6から22までの数であるが、好ましくは6から14の整数である。k-lは1以上であり、pは1から18までの数であるが、好ましくは6から14の整数である。qは0から5までの数であり、好ましくは0から3の整数である。 本発明の式(1)で示される化合物又はその塩は、非特許文献1及び特許文献3に記載の重合性基を有さないジブロック分子の製造方法を一部応用して製造することができる。例えば、下記式(3)で示される本発明の化合物を例に説明する。 上記式(3)で示される化合物は、以下の反応スキーム1に従って、製造することができる。 上記反応スキーム1においては、化Aを出発原料として、第一ステップで重合性基を導入し、その後のステップでアンモニウム基を導入する。詳細は実施例に示す。アンモニウム基の導入ステップは、上記非特許文献1及び特許文献3に記載の重合性基を有さないジブロック分子の製造方法とほぼ同様に実施できる。重合性基を導入する第一ステップでは、重合性基を導入したい位置に水酸基を導入した化合物を出発原料として準備することで、所望の位置に、所望の数の重合性基を導入した化合物を合成できる。また、重合性基としてジエン基以外の基を有する化合物も、同様のスキームで合成することができる。即ち、第一ステップにおいて、臭化ジエン化合物を用いて重合性基としてジエン基を導入する代わりに、臭化ジアセチレン化合物を用いることで、重合性基としてジアセチレン基(構造)を同様の方法で導入することができる。尚、化Aは、公知の方法(例えば、"Masafumi Yoshio, Takayoshi Kagata, Koji Hoshino, Tomohiro Mukai, Hiroyuki Ohno, and Takashi Kato, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 5570-5577."に記載の方法)で合成することができる。 本発明の式(2)で示される化合物又はその塩は、上記反応スキーム1に例を示すように化Aを出発原料として、第一ステップで重合性基を導入して化Bとし、さらに化Cとした後に、下記スキーム2に示すように、その後のステップでアンモニウム基に代えてホスホニウム基を導入することで、上記式(1)で示される化合物又はその塩と類似の合成方法により製造することができる。以下の反応スキーム2では、上記化Cから化G及び化Hで示される本発明の化合物の合成例を示す。[ポリマーの製造方法] 本発明の第2の態様は、液晶構造を有するポリマーの製造方法であり、この製造方法は、(1)上記式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩と光重合開始剤の混合物を調製する工程、(2)上記工程で得られた混合物が自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有するように処理する工程、(3)上記工程で得られた、自己組織的に双連続キュービック液晶構造を付与された材料に光を照射して液晶構造を有するポリマーを得る工程を含む。工程(1) 工程(1)で使用される式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩は、単独でも、2以上の混合物であってもよい。架橋構造の形式(2次元、3次元)や架橋構造の密度等を考慮して適宜選択することができる。 光重合開始剤は、式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩が有する重合性基の種類に応じて、また、光重合で用いる光の種類に応じて適宜決定できる。式(1)で示される本発明の化合物又はその塩が有する重合性基がジエン基であり、光重合で用いる光が紫外線の場合には、光重合開始剤としては、反応の溶媒として使用する有機溶媒に可溶性のものであれば、特に制限なく利用でき、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを用いることができ、さらに、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、 ベンゾインイソブチルエーテル、2-ベンゾイル安息香酸メチル等も用いることができると考えられる。但し、使用する紫外線の波長に応じて、光重合開始剤の種類を選択することもできる。 光重合開始剤の使用量は、式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩が有する重合性基の種類や量に応じて適宜調整できるが、例えば、式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲とすることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。 式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩と光重合開始剤の混合物の調製は、通常のモノマーの混合と同様に行うことができる。 尚、上記混合物には、電荷を有する原子または分子をさらに含有させることもできる。これらの原子または分子は、例えば、本発明の方法で製造されたポリマーを固体電解質材料として用いる場合の、イオン伝導剤として機能することができるものであることかできる。そのような電荷を有する原子または分子としては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはイオン液体を形成するような有機塩(イミダゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩)等であることができる。電荷を有する原子または分子の含有量は、得られる固体電解質材料に求められる性能を考慮して適宜決定される。工程(2) 工程(1)または(2)で調製された混合物は、自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有するように処理される。具体的には、ポリマーとなった場合に所望の形状、例えば、薄膜状に保たれた状態で、等方相を示す温度まで加熱した後に、所望の液晶構造を示す温度に冷却する。所望の液晶構造は、双連続キュービック液晶構造であり、双連続キュービック液晶構造を示す温度は、式(1)または(2)で示される本発明の化合物の組成及び構造により変化する。例えば、上記式(3)で示される本発明の化合物の場合、-5℃から21℃の温度領域において、双連続キュービック液晶構造を示す。双連続キュービック液晶構造を示す温度領域は、示差走査熱量の測定により求めることができる。工程(3) 工程(2)で自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有するように処理された混合物は、光照射に付され、双連続キュービック液晶構造を有するポリマーが得られる。光照射に用いられる光は、光重合開始剤の種類や、式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩に含まれる重合性基の種類により適宜決定できるが、ポリマーの光重合に一般に用いられる光を適宜利用できる。例えば、紫外線であることができる。但し、紫外線以外に可視光線や赤外線を用いることもできる。また、光以外の電磁波を用いることも重合開始剤の選択によっては可能である。光照射による重合は、未反応の重合性基が、ほぼまたは完全に消滅するまで実施することが好ましく、重合時間は、未反応の重合性基の残留状態を考慮して適宜決定できる。重合時間は、例えば、10分〜48時間の範囲であることができるが、この範囲に限定される意図ではない。また、光重合を行った後、熱を加えることにより熱重合を行い、未反応の重合性基を完全に消滅させることも可能である。 工程(2)で前記混合物をフィルム状に成形し、その後フィルム状の混合物を、自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有するように処理することで、フィルム状のポリマーを得ることができる。得られるポリマーは、式(1)または(2)で示される本発明の化合物又はその塩の種類に応じて、2次元または3次元架橋構造を有するもの、あるいは2次元及び3次元架橋構造が共存するものである。上記式(3)で示される本発明の化合物を用いた場合、図1に示すように、重合基としてジエン基を有する、アンモニウム塩構造を有する重合性扇型分子1は、自己組織的に3次元的なイオンチャンネルを有する双連続キュービック相を発現する。 この化合物(3)と光重合開始剤を混合し、液晶状態で薄膜状に成形しUV照射を例えば、1時間行うことで光重合を行うと、自立性を有する透明なポリマーフィルムを得ることができる。このポリマーフィルムが、双連続キュービック構造を保ったまま重合されたことは、例えば、偏光顕微鏡観察及びX線散乱測定により確認することがでる。 さらに、化合物(3)にリチウム塩を複合化(モル比 1 : 0.25)したサンプルも双連続キュービック相を発現する。この複合化サンプルを用い、双連続キュービック相状態で光重合をすることで同様にポリマーフィルムが得られる。このポリマーフィルムのイオン伝導度は、50℃で 3.3×10-5 S cm-1 程度であり、3次元的なイオンチャンネルが良好なイオン伝導パスとして機能することを示す。詳細は実施例に示す。[双連続キュービック液晶構造を有するポリマー] 本発明の第3の態様は、双連続キュービック液晶構造を有するポリマーである。双連続キュービック液晶構造を有するポリマーは、上記本発明の第2の態様である方法により製造されたポリマーであり、このポリマーは、例えば、上記式(1)で示される化合物又はその塩が、式(1)中のジエン基CH2=CH−CH=CHにより重合したポリマーであり、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマーであることができる。重合性基がジアセチレン構造を含む基H(CH2)q-C≡C-C≡C-である場合には、ジアセチレン基により重合したポリマーであり、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマーであることができる。 本発明の双連続キュービック液晶構造を有するポリマーは、電荷を有する原子または分子をさらに含有するものであることができる。これらの原子または分子は、例えば、本発明のポリマーを固体電解質材料として用いる場合の、イオン伝導剤として機能することができるものであることかできる。そのような電荷を有する原子または分子としては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはイオン液体を形成するような有機塩(イミダゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩)等であることができる。電荷を有する原子または分子の含有量は、得られる固体電解質材料に求められる性能を考慮して適宜決定される。[電解質材料] 本発明の第4の態様は、上記の製造方法で製造された電荷を有する原子または分子を含有し、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマー、または上記本発明の電荷を有する原子または分子を含有し、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマーからなる、電解質材料である。本発明の電解質材料は、例えば、種々の電気化学デバイスの電解質材料として用いることができる。本発明の電解質材料は、本発明の化合物から形成される双連続キュービック液晶構造が有するチャンネルが、自己組織化により形成されるチャンネルであるため、チャンネルの太さはナノレベルで均一なものである。そのため、これらのイオンチャンネルはイオン伝導パスとしての高い性能を有するものである。 また、本発明のポリマーは、イオン伝導パスとしての機能ばかりでなく、選択的イオン透過チャンネルなどへの応用なども十分期待できるものである。即ち、本発明のポリマーは、イオン伝導性膜のみならず、選択的物質透過膜としても利用価値がある可能性がある。 以下、本発明を実施例により詳細に説明する。実施例1 下記式(3)の化合物を設計・合成した。[合成方法] 式(3)で示される化合物(以下、化合物(3)と表記する)の合成方法を説明する一連のスキーム(反応スキーム1)を以下に示す。 まず、化Aに示す化合物をK2CO3の存在下で溶媒としてDMFを用いて8時間CH2=CHCH=CH(CH2)8Brと反応させることによって化Bに示す化合物を得た。収率は92 %であった。 次に、化Bに示す化合物をLiAlH4によって還元し、化Cに示す化合物を得た。この際には、溶媒としてTHFを使用し、室温で2時間反応を行った。収率は88 %であった。 次に、化Cに示す化合物をSOCl2によって塩素化し、化Dに示す化合物を得た。この際には、溶媒としてCH2Cl2を使用し、室温で2時間反応を行った。収率は70 %であった。 次に、化Dに示す化合物をN(CH2CH3)3と80 ℃で10時間反応させ、化Eに示す化合物を得た。収率は74 %であった。 次に、化Eに示す化合物をAgBF4によってアニオン変換を行い、上記反応スキーム1の最終生成物として化合物(3)を得た。この際には、溶媒としてMeOHを使用し、室温で2時間反応を行った。収率は94 %であった。 化合物(3)の同定はプロトンおよび13C NMR測定並びに元素分析によって行った。1H NMR (400 MHz): δ = 6.63 (s, 2 H), 6.30 (m, 2 H), 6.04 (m, 2 H) , 5.70 (m, 2 H), 5.08 (d, J = 17.2 Hz, 2 H), 4.95 (d, J = 10.4 Hz, 2 H), 4.32 (s, 2 H), 3.96 (m, 6 H), 3.26 (q, 7.2 Hz, 6 H), 2.08 (m, 6 H), 1.82-1.70 (m, 6H), 1.47-1.26 (m, 45 H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H) .13C NMR (100 MHz) : δ = 152.98, 139.54, 136.86, 134.94, 130.43, 121.48, 114.06, 110.58, 73.03, 69.01, 61.11, 57.03, 52.38, 49.29, 32.07, 31.45, 29.87, 29.27, 29.20, 29.12, 28.99, 28.92, 28.73, 28.68, 25.66, 25.62, 22.21, 17.92, 13.65, 7.84.Elemental analysis calcd. (%) for C49H86BF4NO3: C, 71.42; H, 10.52; N, 1.70. Found: C, 71.29; H, 10.79; N, 1.64. 上記合成方法で得られた化合物(3)は、既報の双連続キュービック液晶に重合基としてジエン基を導入した分子構造を有している。以下に、偏光顕微鏡観察、示差走査熱量測定、X線散乱測定によってこの化合物の液晶性を調べた。また、リチウム塩との複合化を行い、液晶性の変化を調べた。液晶状態で光重合することで、ナノ秩序構造を有するポリマーフィルムの合成を行った。重合前および重合後において、イオン伝導度の測定を行い、イオン伝導材料としての評価を行った。 化合物(3)のサンプルを1 mgほど二枚のガラス板に挟み込み、温度可変で偏光顕微鏡観察を行った。図2は15℃における偏光顕微鏡写真である。中間相特有の粘性を有していたが光学的に等方であり、複屈折を示さなかった。これらの結果は、キュービック相の形成を示唆する。 図3は、化合物(3)の小角X線散乱測定の結果である。測定は15℃で行われた。二つの鋭いピークがそれぞれ、33.2 Å・28.7 Åの位置に観測された。これらの値は、1/√6:1/√8であり、Ia3d型の双連続キュービック構造の(211),(220)面に帰属できる。これらの二つのピークが鋭く観察されるのがIa3d型の双連続キュービック相のXRDパターンの特徴である。これらの結果から、得られた化合物(3)はキュービック格子の一辺が約81ÅのIa3d型の双連続キュービック相(図4)を形成することが示唆される。図4の赤い3次元的なチャンネル部位がアンモニウム塩骨格により形成され、青い部分がアルキル鎖により占有されていると考えられる。示差走査熱量測定の結果(図5)と合わせて、-5℃から21℃で双連続キュービック相を発現するサーモトロピック液晶であることがわかった。実施例2[リチウムイオンとの複合化] リチウム塩との複合化を試みた。リチウム塩としてテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)を用いた。複合化の割合は、化合物(3)に対して、LiBF4が0.25等量となるように調整した。[複合化方法] 化合物(3)を20mg小サンプル管にとりわけた。次に、LiBF4を56.9 mgを50mlメスフラスコにとり、テトラヒドロフラン(THF)を50 ml標線まで加え、1.2×10-2 mmol/mlの溶液を調製した。この溶液を0.5 mlはかりとり、化合物(3)の入った小サンプル管へ入れた。THFをゆっくり減圧留去することで複合体を得た。 図6は複合体の50℃における偏光顕微鏡写真、図7は複合体の15℃における偏光顕微鏡写真である。複合体は60℃まで加熱することで、等方相液体状態へと転移した。冷却過程において、図6に示すようなヘキサゴナルカラムナー相に特有のテクスチャーを56℃で示した。徐々に冷却をおこなうと、19℃で図7に示したような光学的等方相へと転移した。サーモトロピック液晶において、カラムナー相の低温領域に双連続キュービック相が発現することは一般的である。これらの結果からも、複合体および化合物(3)は低温領域において双連続キュービック相を発現していることが示唆される。 図8は、複合体の小角X線散乱測定の結果である。測定は15℃で行われた。Ia3d型の双連続キュービック構造の(211),(220)面に帰属できるピークが観測された。これらの結果から、得られた複合体は15℃で双連続キュービック相を形成することが示唆される。実施例3[ポリマーフィルムの作製] 化合物(3)とLiBF4をモル比1 : 0.25になるように複合化した。複合化したサンプルに光重合開始剤(2,2-Dimethoxy-2-phenyl acetophenone)を重量比で200 : 1で複合化した。複合化の際には、LiBF4および重合開始剤をそれぞれTHFに溶解させ、必要量を取り出し、溶液状態で混合し、溶媒留去することで調製した。 ガラス基板の間にサンプルを封入した。サンプルの厚みを一定にするために厚さ80μmのテフロンシールをガラス板の間に用いた。作製したサンプル封入基板をメトラーにて等方相まで加熱した後、-10℃まで冷却した。-10℃で10分ほど冷却を続けた後、0℃まで温度をあげ安定させ、光照射により重合を開始させた。光照射は、波長365 nmの光を用いた。また、その強度は30 mW/cm2であった。照射は約2時間行った。照射後、カバーガラスをはがすと、自立性フィルムがカバーガラスに付着した状態で得られた。このフィルムを丁寧にはがし取ることで、ポリマーフィルムが得られた。また、このフィルムの厚みはテフロンシールの厚みと同じ80μmであると考えられる。重合後、偏光顕微鏡観察で複屈折の有無を調べた。暗視野であった。液晶状態でのキュービック構造が維持されていると考えられる。このポリマーフィルムは種々の有機溶媒(メタノール・アセトン・クロロホルム・ヘキサン・酢酸エチル)・水などに対して不溶であった。 図9は、ポリマーフィルムの小角X線散乱測定の結果である。測定は室温で行われた。双連続キュービック構造の(211),(220)面に帰属できるピークが観測された。これらの結果から、得られたポリマーフィルムは双連続キュービック構造をたもったままであることが示唆される。重合性のサーモトロピック液晶の中で、双連続キュービック相を発現するような分子およびその液晶状態での重合に関する報告例はほとんどない。特に、イオン性のチャンネル構造を有する双連続キュービック液晶構造を有するポリマーフィルムの開発としては世界で初めてである。 リチウム塩を含まないサンプルについても同様に双連続キュービック相状態で重合をおこなった。SAXS測定により同様のピークが観測された(図10)。試験例1[イオン伝導度] 実施例2で得た複合体のイオン伝導度を、くし型金電極を用いて測定した。イオン伝導度の測定法として、交流インピーダンス法(周波数の異なる交流電場を印加することにより、イオンの動きを抵抗値として検出する方法)を採用した。この方法は、測定試料内部でのイオン伝導挙動を定量的に評価することができ、電極界面近傍でおこる特異なイオン伝導挙動を除去することができる。 25℃の双連続キュービック液晶状態では4.3×10-5 Scm-1を示し、35℃のヘキサゴナルカラムナー液晶状態では2.0×10-5 Scm-1を示した。この結果は、双連続キュービック相がヘキサゴナルカラムナー相より高い伝導性を有することを示していた。 実施例3で得たポリマーフィルムの伝導度の測定も同様にくし型金電極を用いて行った。重合して得られたポリマーフィルムを電極に挟み込み、イオン伝導度の測定を行うと、電極とサンプル界面での抵抗が懸念される。そこで、複合体サンプルをくし型金電極に封入し、同様の条件下を用いて、双連続キュービック相状態で重合を行い、イオン伝導度の測定を行った。また、比較サンプルとして、等方相液体状態およびカラムナー相状態で重合を行ったサンプルを調製した。それぞれ70℃・40℃で光重合をおこなうことで得ることができた。これらのサンプルについてもイオン伝導度の測定を行った。 双連続キュービック相状態で重合したポリマーフィルムは90℃において3.1×10-4 S cm-1の伝導度を示した。それに対して、等方相状態で重合したサンプルは7.8×10-5 S cm-1の伝導度、カラムナー相で重合したサンプルは8.8×10-6の伝導度であった。双連続キュービック相状態で重合したサンプルが高い伝導性を示すことが明らかになった。参考例1 上記化合物(4)(スキーム中では化L)は、以下の反応スキーム3に示す要領で合成した。 化Lは化Iから、前記反応スキーム1と類似のスキームにより合成することができる。 化Iに示す化合物をPBr3により臭素化し、化合物Jを得た。この際には、溶媒としてCH2Cl2を使用し、室温で10分間反応を行った。収率は85%であった。 化Jに示す化合物をP(CH2CH3)3と反応させ、化合物Kを得た。この際には、溶媒としてTHFを使用し、室温で10時間反応を行った。収率は79%であった。 化Kに示す化合物をAgBF4によってアニオン変換を行い、化Lに示す化合物を得た。この際には、溶媒としてEtOHを使用し、室温で2時間反応を行った。収率は95 %であった。 化合物(4)(化L)の同定はプロトンNMRおよび13C NMR測定並びに元素分析によって行った。1H NMR (400 MHz): δ = 6.51 (d, J = 2.4 Hz, 2 H), 3.95 (m, 6 H), 3.61 (d, J = 14.8 Hz, 2H), 2.21 (m, 6 H), 1.82-1.70 (m, 6H), 1.46-1.27 (m, 51 H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 9H).13C NMR (100 MHz) : δ = 153.76, 138.00, 122.51, 108.00, 73.37, 69.23, 31.89, 31.88, 30.30, 29.71, 29.65, 29.62, 29.57, 29.48, 29.36, 29.33, 26.10, 26.08, 22.65, 14.07, 11.62, 11.14, 5.54, 5.48.Elemental analysis calcd. (%) for C49H86BF4NO3: C, 67.52; H, 10.81; N, 0. Found: C, 67.42; H, 11.05; N, 0. 前記反応スキーム2に示した、例えば、化GおよびHで示される本発明の式(2)で示される化合物又はその塩の合成は、上記参考例1の方法および条件に基づいて、適宜実施することができる。試験例2 上記参考例1で合成した化合物(4)の試験結果を以下に示す。[X線散乱測定結果] 液晶状態におけるX線散乱測定を行ったところ、32.3, 27.7, 20.7, 17.5, 16.7, および15.4 Aに対応する散乱ピークが観測された。これらはIa3d型の双連続キュービック構造の(211), (220), (321), (420), (332), および(510)面に帰属することができる。(図11参照)[偏光顕微鏡観察・DSC測定・SAXS測定] 化合物について偏光顕微鏡観察・DSC測定・SAXS測定を行った。偏光顕微鏡下、暗視野でありテクスチャーは観測されなかった。粘性が高く、キュービック相であると推測できた。DSC測定の結果、0℃から48℃で液晶相を発現しているということがわかった。液晶状態で、SAXS測定を行った結果、キュービック構造の(211), (220), (321), (332), (422), (510) に帰属できるピークが観測された。Ia3d型の双連続キュービック構造であることがわかった。 上記試験結果から、前記反応スキーム2に従って合成することができる本発明の化合物である化HもIa3d型の双連続キュービック構造をとり得ることが予想される。[応用について] 一般に、液晶は、液晶が自己組織的に形成するナノ構造を均一に配向制御することによって異方的な機能を発現する。液晶性イオン伝導体に関しても同様であり、カラムナー相・スメクチック相を並べることでそれぞれ1次元・2次元の異方的なイオン伝導挙動を示すことがわかっている。しかしながら、双連続キュービック液晶性の材料(ポリマー)は、3次元的なイオン性のチャンネル構造を有しているため、配向制御を行わなくてもドメイン間でイオンのパスがつながり、液晶状態で効率よくイオンを輸送することができる。本実施形態の材料は、この双連続キュービック液晶に重合基を導入し、液晶状態で重合することで、幅広い条件下でこの3次元的なチャンネル構造利用することを可能とした。例えば、広い温度領域での利用が可能となった。今後、リチウムイオン電池の固体電解質などへの応用が主に期待できる。また、オーダーの揃ったイオン性のチャンネル構造を有しているため、選択的イオン透過膜などへの応用も期待できる。 本発明の双連続キュービック液晶性の材料(ポリマー)は、リチウムイオン電池、太陽電池、燃料電池、キャパシタなどの各種エネルギーデバイスの電解質、イオニクスデバイスのイオン伝導体として応用範囲は広い。以下、具体的に用途を説明する。 まず、プロトン伝導体、DNA又はRNAなどの電荷を持つ分子の溶媒、バイオチップ、各種センサなどに本実施形態を応用することが考えられる。さらに、電池用の電解質、エンジンオイルなどの潤滑材料、帯電防止膜、におい分子の吸着、分子ふるい、分子選択、分子認識、触媒、バイオモデル化合物への応用も考えられる。 また、電子デバイスや電池材料、ナノテクノロジー、パターニング材料、特殊な電気的性質を有する被覆材料、イオンチャンネルなどの生体被覆材料、特殊な電気的性質を有する被覆材料、異方的なイオン伝導機能を利用した物質・エネルギー・情報輸送材料、反応場(化学反応場)、アクチュエーターなどへの適用も期待できる。 自動車のエンジンに供給する燃料/空気混合ガスの比率などを検知する「酸素濃度センサ」などの酸素センサを含むガスセンサ、高効率次世代発電システムとして期待されている「固体電解質燃料電池」の発電素子などの応用も考えられる。 さらには、相転移に基づく物質の選択的透過/遮断材料、液晶相構造に由来する生体模倣材料などとして、化学工業、電気化学工業、電子工学、さらには生物工学等に関連する分野において極めて有用な機能性材料を提供するものである。 特に、電極-膜接合体(Membrane-Electrolyte-Assembly, MEA)にも応用できる点で注目される。 固体電池、バイオ燃料電池、固体高分子型(PEFC)などの燃料電池向けの電解質膜の材料としても有望である。 上述の通り、本発明では、重合性の双連続キュービック液晶性イオン液体の構築および液晶状態における重合により3次元的なイオンチャンネル構造を有するポリマーフィルムの開発に成功した。 本発明は、イオンを輸送が関連する種々の分野、例えば、リチウムイオン電池の固体電解質などの分野において有用である。重合性アンモニウム塩の自己組織化による双連続キュービック液晶構造の形成、および液晶状態における光重合によるポリマーフィルムの作製の概略説明図。化合物(3)の15℃における偏光顕微鏡写真である。化合物(3)の小角X線散乱測定の結果である。化合物(3)が示すキュービック格子の一辺が約81ÅのIa3d型の双連続キュービック相の説明図。赤い3次元的なチャンネル部位がアンモニウム塩骨格により形成され、青い部分がアルキル鎖により占有されていると考えられる。化合物(3)の示差走査熱量測定の結果である。複合体の50℃における偏光顕微鏡写真である。複合体の15℃における偏光顕微鏡写真である。複合体の小角X線散乱測定の結果である。ポリマーフィルムの小角X線散乱測定の結果である。リチウム塩を含まないサンプルについてのSAXS測定結果である。参考例1で合成した化合物(4)(化L)について、試験例2において得られたX線散乱測定結果(左図)、及びIa3d型の双連続キュービック構造の模式図(右図)を示す。参考例1で合成した化合物(4)(化L)について、試験例2において得られた偏光顕微鏡観察結果(左下図)、及び示差走査熱量測定結果 (右図)を示す。式(1)または(2)[式(1)及び(2)中、X-は、Cl-、Br-、I-、F-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO2)2N-のいずれかであり、1R、2R、3Rは、(CH2)k-1CH3であり、4R及び6Rは、ジエン基CH2=CH−CH=CHであり、5Rは、CH3であり、kは1から10までの数、mは1から5までの数、nは6から14までの数、である。]で表される化合物又はその塩。式(1)で示される化合物であり、かつmは1である、請求項1に記載の化合物又はその塩。X-は、Cl-、Br-、BF4-のいずれかである、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩と光重合開始剤の混合物を調製し、前記混合物を等方相を示す温度まで加熱し、次いで前記混合物が液晶構造を示す温度に冷却して、自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有する材料を得、得られた材料に光を照射して双連続キュービック液晶構造を有するポリマーを得ることを含む、液晶構造を有するポリマーの製造方法。前記混合物が、電荷を有する原子または分子をさらに含有する請求項4に記載の製造方法。前記混合物をフィルム状に成形し、その後フィルム状の混合物から自己組織的に双連続キュービック液晶構造を有するフィルム状の材料を得、次いで光照射によりフィルム状の双連続キュービック液晶構造を有するポリマーを得る、請求項4または5に記載の製造方法。ポリマーが、2次元若しくは3次元架橋構造を有するか、または2次元及び3次元架橋構造が共存する構造を有する、請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。請求項1〜3のいずれかに記載の式(1)または(2)で示される化合物又はその塩が、式(1)または(2)中のジエン基CH2=CH−CH=CHにより重合したポリマーであり、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマー前記ポリマーが、電荷を有する原子または分子をさらに含有する請求項8に記載のポリマー。ポリマーが、2次元若しくは3次元架橋構造を有するか、または2次元及び3次元架橋構造が共存する構造を有する、請求項8〜9のいずれかに記載のポリマー。請求項5に記載の方法で製造された、電荷を有する原子または分子を含有し、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマー、または請求項9に記載の、電荷を有する原子または分子をさらに含有し、かつ双連続キュービック液晶構造を有するポリマーからなる、電解質材料。電気化学デバイスに用いられる請求項11に記載の電解質材料。