タイトル: | 特許公報(B2)_カロテノイド系色素の安定化方法 |
出願番号: | 2008306969 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A23L 1/27,C12H 1/02 |
三内 剛 西野 雅之 JP 5519143 特許公報(B2) 20140411 2008306969 20081202 カロテノイド系色素の安定化方法 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 000175283 三内 剛 西野 雅之 20140611 A23L 1/27 20060101AFI20140522BHJP C12H 1/02 20060101ALI20140522BHJP JPA23L1/27C12H1/02 A23L 1/27 C12H 1/02 特表平10−509590(JP,A) 特開2008−063476(JP,A) 特開昭57−003861(JP,A) 特開2004−267041(JP,A) 5 2010130903 20100617 8 20111124 平塚 政宏 本発明は、微細化された結晶性微細化粒子のカロテノイド系色素を、アルコールを含有する溶液中でも安定に分散保持することができるカロテノイド系色素の安定化方法に関する。 従来より、飲料等を赤系の色調に着色するための着色料としては、コチニール色素、ラック色素等のキノン系色素;赤キャベツ色素、ベリー類色素、紫サツマイモ色素等のアントシアニン系色素;その他クチナシ赤色素、ベニコウジ色素が知られている。 しかし、これらの色素は特定の飲料の着色に用いた際に問題を生じることが知られている。例えば、コチニール色素等のキノン系色素は、pH5以下の場合黄色〜橙色となり、赤キャベツ色素等のアントシアニン系色素では、pHが中性になると紫色になり、ベニコウジ色素は耐光性に欠けるため褪色が著しく、クチナシ赤色素は紫がかった暗い色調になる。これら色素の性質上、天然色素を用いて、飲料を鮮明な赤橙色または赤色に着色することは困難であった。 これに対し、油溶性のカロテノイド系色素を用いて飲料を鮮明な赤色に着色する方法が検討されている。具体的には、カロチノイドを天然精油と植物性油とからなる均質物に添加してなる均質系を120〜160℃・4〜15分間加熱し、これを乳化すること(特許文献1)、植物油、アラビアガム、水及び白糖から成る基材中に、色素としてβ−カロチンを含有する着色剤(特許文献2)、カロチノイドとアラビアゴムと製造用添加剤とを混合粉砕すること(特許文献3)、パーム油カロチンに精油、動植物油などの油脂類を加え、約50〜150℃の温度で約5〜約30分間加熱撹拌して溶解し、得られた溶液をアラビアガム、化工澱粉などの保護コロイド物質又は乳化剤などを用いて常法により乳化処理した後、噴霧乾燥等によって粉末化して得る製剤(特許文献4)、カロチノイドを分散させた油性相とマトリックス、安定剤及び非油溶性溶剤を分散させた水性相とを混合し、これを乳化剤で乳化することによって得られるカロチノイド・コンポジション(特許文献5)、カロテノイドのトルエン懸濁液を、加熱した導管中へ特定滞留時間で流通させ、特定温度に加熱してカロテノイドを溶解させ、この溶液を乳化剤の存在下、特定温度の水と混合・乳化させた後、減圧下にトルエンを留去することによるカロテノイド乳化液の製法(特許文献6)、カロチノイド系色素を微細化した後、水性原料に分散させるか、または水性原料に分散させた後に微細化させて得た赤橙色着色料(特許文献7)、プロピレングリコールとアラビアガムを含むことを特徴とする微細化固形物(カロテノイド類の結晶)分散製剤(特許文献8)等が開示されている。特公昭54−28858号公報特開昭54−135822号公報特開昭57−3861号公報特開平06−172170号公報特表平07−501211号公報国際公開公報WO04/087645特開平09−84566号公報特開2004−267041号公報 しかしながら、上述の特許文献1〜6のように乳化した製剤は、熱やpHの影響により、乳化が壊れることが知られていた。例えば、乳化色素を使用した飲料を調製した場合では、飲料の製造工程における加熱殺菌やホット飲料とした場合、乳化製剤が壊れ、油性色素が飲料中に溶出して分離層や沈殿となり、飲料の商品価値が損なわれるという問題が生じていた。 特に、アルコール存在下におけるカロテノイド系色素の保存安定性を保持することについては、上記特許文献においては具体的な解決方法は何ら開示されていない。また、アルコール含有飲料の製造では、一旦アルコール濃度が25質量%程度の濃縮液を調製し、これを水や炭酸水で希釈して所望のアルコール濃度を有する飲料を製造するのが一般的である。従来の技術では、このような高濃度のアルコールを含有する状況では乳化状態を良好に維持することができず、改善が求められていた。 かかる問題については今まで明確な技術的な解決策は開示されておらず、上記特許文献7及び8においても、カロテノイド系色素を溶解せずに固体の状態のまま飲料中に分散させる技術が開示されているが、該技術のアルコールを含有する飲料に対する効果については、何も開示されていない。 本発明は、従来の技術では困難であったアルコール含有溶液の着色に関し、具体的にはカロテノイド系色素を用いてアルコール含有溶液を鮮明で安定な赤色に着色することを目的とする。 本願発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、カロテノイド系色素を結晶性微細化粒子としてアルコール含有溶液に添加することにより、従来にはない鮮明な赤色に着色することが可能となり、かつ、分散安定性にも優れた溶液とすることが可能となる知見を得て本発明を完成した。さらに該溶液を水等で希釈することにより、カロテノイド系色素を含有するアルコール含有飲料とすることもできる。 詳しくは、リコピン、β−カロテン、カンタキサンチン、β−アポカロテナール、ルテインの1種以上からなるカロテノイドの結晶性微細化粒子によりアルコール含有溶液を着色することで、上記課題を解決することが可能となる。 本発明におけるカロテノイド系色素の結晶性微細化粒子とは、食品に通常利用できるカロテノイド系色素の結晶成分を微細化して添加できるものであれば制限無く利用できる。具体的なカロテノイド系色素の結晶としては、トマト色素(リコピン)、ニンジン色素、デュナリエラカロテン(β−カロテン、α−カロテン)、マリーゴールド色素(ルテイン)、などの天然物由来の色素より抽出、精製したもの、カンタキサンチン、β−カロテン、β−アポカロテナールなどの合成品、半合成品など市販されているものが例示でき、これらを単独で、又は複数を組み合わせて用いることが出来る。 上記カロテノイド系色素の結晶は、溶液中で微細化しても、溶液へ添加される前に予め微細化されていても良い。微細化の方法は公知の技術である粉砕器、乳化器等を利用すれば良く、結果として固形物の粒子径が0.1〜1μmの範囲になればよい。 アルコール含有溶液へのカロテノイド系色素の添加方法は、該溶液の製造原料のひとつに上記の方法で微細化された結晶性のカロテノイド系色素を加え、適宜攪拌をする等の常法によりアルコール含有溶液を調製すればよい。これにより、アルコール存在下であっても溶液を鮮明な赤色に着色することが可能となり、カロテノイド系色素の結晶性微細化粒子の安定化を達成することができる。このようなアルコール含有溶液の製造のためには、カロテノイド系色素の微細化を予め行っておけばよく、それ以外に特別な処理や条件を必要としないため、容易に本発明に係るアルコール含有溶液を提供することが可能となる。 さらに、本発明で得られたアルコール含有溶液を適宜水や炭酸水で希釈することにより、アルコール含有飲料を調製することも可能である。一般的に、アルコール含有飲料を製造する際には、一旦25質量%程度の濃縮液を調製し、これを水や炭酸水で希釈することにより所望のアルコール含有飲料を調製する製造方法がとられている。本発明で得られたアルコール含有飲料を利用できるアルコール含有飲料の例として、飲料用アルコール(エタノール)を含有する飲料、具体的にはビール、カクテル、チューハイ飲料、サワー、リキュール等が例示できる。 飲料へのアルコールの添加量は、一般の飲料に該当するアルコール濃度となるものから、上述のように製造段階で調製される濃縮液の濃度を含む2〜25質量%の範囲が例示できる。一般に市販されているアルコール含有飲料のアルコール濃度は、チューハイ飲料で2.5〜5質量%程度、ビールで5質量%程度である。本願発明では、このような最終製品に留まらず、製造段階にある高アルコール濃度の溶液であっても、カロテノイド系色素の鮮明な赤色を呈する事が可能であり、かつ、リングや不溶物を生じない安定性に優れた溶液を提供することが可能である。 本願発明では、カロテノイド系色素の結晶性微細粒子に加え、従来より食品分野で利用されている各種添加剤を、本願発明の効果を妨げない範囲でアルコール含有溶液に添加することができる。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、キラヤ抽出物等の乳化剤;アラビアガム、ガティガム、グァーガム、ペクチン、キサンタンガム等の増粘多糖類;砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、デアンデオリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)等の甘味料;アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末等の甘味成分;デキストリン、化工・加工澱粉等の澱粉類;カゼイン、ゼラチン等の蛋白質のほか、香料、着色料、ビタミン類、ミネラル類、機能性素材、ココア末、ピューレ、チョコレート、乳成分、果汁やエキス類等が挙げられる。 本発明によれば、従来着色が困難であったアルコール含有溶液を、安定した状態でカロテノイド系色素により着色することが可能となる。また、飲料中のアルコール濃度が高くなっても安定した状態を維持できるため、製造段階での利便性の向上に加え、従来にはないアルコール含有溶液を提供することが可能となる。 以下に、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、下記処方中の単位は特に言及しない限り「%」は「質量%」であることを意味する。<試料の調製> 下記表1の処方に従い、本発明に係るカロテノイド系色素の結晶性微細化粒子を含有する色素製剤(実施例1及び2)と、比較例となる従来技術による溶解した状態の粒子を含有するカロテノイド色素製剤を調製した。<試料の調製方法> 実施例1および実施例2は、湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製ダイノミルKDL)を用い粉砕し、結晶性微細化粒子分散組成物を調製した。 比較例はβ−カロチン、食用油脂、SAIB(Sucrose acetate isobutylate)を混合して、加熱溶解し、油相成分を調製した。一方、水にアラビアガム、プロピレングリコールを配合して溶解し、水相成分を調製した。この水性成分に上記の油相成分を配合して混合し、高圧ホモジナイザーにて圧力450kg/cm2で乳化して、乳化組成物を調製した。 メジアン径の測定は、レーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製)を用いて行った。<飲料の調製> 下記表2の試験処方に基づき、比較例、実施例1および実施例2のカロテノイド色素製剤を用いたアルコール濃度の異なる飲料(アルコール濃度 0%、2.5%、15%、20%、25%)を調製し、6ヶ月間室温下で保存を行った。保存期間毎に状態評価を行い、アルコール飲料へ添加したカロテノイド色素製剤の安定性を評価した。<飲料の調製方法> 果糖ぶどう糖液糖、95%エタノール、クエン酸(無水)、ビタミンC及びイオン交換水を混合して溶解し、次いで比較例、実施例1及び2のカロテノイド色素製剤の10%水溶液を添加し、マグネットスターラーにて1000rpm10分間混合した。得られた溶液を200mlガラス瓶に充填し、75℃10分間瓶殺菌を行った。<評価方法> 1)粒度分布の測定 飲料の粒度分析をレーザー解析式粒度分布計を用いて下記条件にて測定した。 装 置 :レーザー解析式粒度分布計(SALD−2100 島津製作所社製) 粒度分布:体積基準 2)状態評価 飲料の状態を、下記観察基準に準じて観察評価を行った。 ・リング 0:リングは認めない。 0.1:0.1mm以下のリングを1周未満認める。 0.5:0.1〜0.4mmのリングを1周未満認める。 1:0.5mmのリングを1周程度認める。 2:0.8mmのリングを1周認める。 3:1.4mmのリングを1周認める。 ・沈殿 0:沈殿は認めない。 0.1:沈殿を極僅かに認める。 0.5:沈殿を1/3周程度認める。 1:沈殿を2/3周程度認める。 2:沈殿を1周程度認める。 3:沈殿を完全に1周程度認める。 ・液面不溶物 0:液面不溶物は認めない。 0.1:直径1mm以下の不溶物を認める。 0.5:直径1〜3mmの不溶物を認める。 1:直径3〜5mmの不溶物を認める。 2:直径5〜7mmの不溶物を認める。 3:直径7〜10mmの不溶物を認める。 4:直径10〜12mmの不溶物を認める。 5:直径12mm以上の不溶物を認める。<評価> 実施例1及び2で調製したカロテノイド色素製剤を使用したアルコール飲料では、アルコール濃度が25%の高濃度条件下であっても著しい粒子の劣化や飲料の異常状態は認められず、飲料の安定化に効果が発揮されていることが明らかとなった。 一方の比較例のカロテノイド色素製剤を使用した飲料では、アルコールの影響により乳化粒子が壊れ、特にアルコール濃度が15%以上になると液面不溶物の発生、乳化粒子の劣化(粒子径の肥大化)、フロックが生じ、非常に不安定な飲料となった。カロテノイド系色素の結晶性微細化粒子をアラビアガムの存在下分散させることを特徴とする、アルコール含有溶液中におけるカロテノイド系色素の安定化方法。カロテノイド系色素の結晶性微細化粒子が、リコピン、β−カロテン、カンタキサンチン、β−アポカロテナールおよびルテインのうちの1種以上である請求項1記載のカロテノイド系色素の安定化方法。カロテノイド系色素の結晶性微細化粒子の平均粒子径が0.1〜1μmである、請求項1又は2に記載のカロテノイド系色素の安定化方法。アルコール含有溶液におけるアルコール濃度が2.5〜25質量%である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカロテノイド系色素の安定化方法。請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアルコール含有溶液が、アルコール飲料であるカロテノイド系色素の安定化方法。