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タイトル:特許公報(B2)_液状乳化栄養組成物
出願番号:2008298073
年次:2015
IPC分類:A61K 38/00,A61K 33/06,A61K 33/10,A61K 33/08,A61K 31/19,A61K 31/191,A61K 31/194,A61K 31/198,A61K 9/107,A61K 31/661,A23L 1/305,A23L 1/304


特許情報キャッシュ

谷阪 理子 金 達 JP 5665009 特許公報(B2) 20141219 2008298073 20081121 液状乳化栄養組成物 味の素株式会社 000000066 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 谷阪 理子 金 達 20150204 A61K 38/00 20060101AFI20150115BHJP A61K 33/06 20060101ALI20150115BHJP A61K 33/10 20060101ALI20150115BHJP A61K 33/08 20060101ALI20150115BHJP A61K 31/19 20060101ALI20150115BHJP A61K 31/191 20060101ALI20150115BHJP A61K 31/194 20060101ALI20150115BHJP A61K 31/198 20060101ALI20150115BHJP A61K 9/107 20060101ALI20150115BHJP A61K 31/661 20060101ALI20150115BHJP A23L 1/305 20060101ALI20150115BHJP A23L 1/304 20060101ALI20150115BHJP JPA61K37/02A61K33/06A61K33/10A61K33/08A61K31/19A61K31/191A61K31/194A61K31/198A61K9/107A61K31/661A23L1/305A23L1/304 A61K 38/00 A23L 1/29 A61K 9/00 A61K 31/00−33/44 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 国際公開第2007/026474(WO,A1) 特表2002−520004(JP,A) 特開平10−136940(JP,A) 特開平04−234960(JP,A) 8 2010120906 20100603 12 20111005 上條 のぶよ 本発明は、栄養剤、流動食や経管経腸栄養用になどに好適に用いることができる液状乳化栄養組成物に関するものである。特に、溶解状態にあるカルシウム分とそれと反応する有機酸に由来して経時的に発生する粗大白色沈殿を有効に防止することができる液状乳化栄養組成物関するものである。 これまでに高齢者や各種疾病を持つ入院患者や在宅療養者に対して、栄養補給を目的に使用される製品として、各種流動食や栄養剤が市販されている。これらには栄養素としてたんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルが配合されるが、使用対象となる患者の状態に応じて組成配合が異なっている。例えば糖尿病においては、各種糖質や食物繊維が配合され、また機能性食品素材が使用された栄養組成物(特許文献1及び2)、たんぱく質及びエネルギー低栄養状態の患者に対する高ミネラル・ビタミンの総合栄養組成物(特許文献3)、肝疾患患者用栄養組成物(特許文献4)等が知られている。 一方、液状の栄養組成物中に栄養素としてカルシウムを十分量配合しようとする場合、一般的に高カルシウム高含有の食品素材や各種無機塩、有機酸塩の形態で添加されている。特に製剤的な観点からすると、カルシウムが製品中に溶解した状態であるか、若しくは不溶化した状態で存在しているかが重要である。溶解状態においては、製造時や保存時にタンパク質の凝集を引き起こすことや乳化破壊を促進することが知られ、また不溶化した状態においては保存中にそれ自身が沈殿を引き起こし、成分の分離や官能的に好ましくないとの問題が生じる。このため、これらの問題を解決する手段として、水溶性カルシウムを添加する場合は不溶性カルシウムを溶解状態として配合する技術(特許文献5)やカルシウム強化乳と各種安定剤、キレート剤と併用する技術(特許文献6)が知られ、不溶性カルシウムを使用する場合は乳化剤を併用すること(特許文献7)や微粉のリン酸カルシウムを使用(特許文献8)することで沈殿を抑制する技術が知られている。 以上、栄養組成物の製剤化においては、各種目的用途を考慮し栄養組成や原料組成が設定され、特にカルシウムの配合については慎重な検討が求められるが、本発明者らは製品開発途上においてこれまでに知られていない問題に直面した。すなわち栄養組成上の要請から、乳たんぱく質の含有量を抑える必要がある液状乳化組成物において、水溶性カルシウム及びクエン酸及び/又はその塩を共存させる場合、経時的に不溶性のクエン酸カルシウムが発生し、この不溶性カルシウム塩は粗大粒子であることから、使用上極めて問題となることが判明した。例えば経口摂取時にザラツキ感が著しく、風味上好ましくないことや、使用前に振盪し均一に分散させても容易に沈降してしまうこと、経管投与するために使用した場合、チューブやカテーテルに詰まりを生じ、使用性が著しく損なわれることなどが挙げられる。これらの問題の解決方法として、栄養素として配合が必須では無いクエン酸を使用しないことも考えられるが、乳化安定性が悪くなりクリームの発生が著しくなるという問題が生じた。この問題の解決方法は、特許文献1〜4に全く開示されておらず、また特許文献5及び6の実施形態はカルシウムが溶解状態にあることから、長期(6ヶ月以上)安定性に問題があり、特に高温保存時に容易にクエン酸カルシウムが生成してしまうと考えられるため上記問題を解決するためにこの技術を用いることは難しい。更に特許文献7及び8は製造当初から配合されている不溶性カルシウムの沈殿防止に関するものであり、保存時に発生する粗大な不溶性カルシウムの防止については、何ら述べられていない。このため、保存中に溶解状態にあるカルシウムが不溶化し粗大なクエン酸カルシウムとなる現象を抑制することが必要になっている。特開2008−94754号公報WO2003/022288号公報WO2006/033349号公報特表2006−515287号公報特開平4−234960号公報特表2005−523034号公報特開平9−238645号公報特開2007−295830号公報 本発明は、液体栄養組成物中に溶解状態にあるカルシウムが、経時的に遊離有機酸と結合して不溶化することに由来する粗大白色沈殿の発生を防止し、且つ気液界面へのクリーム生成を抑え、使用上好ましい形態で使用者に提供できる液体栄養組成物を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、乳たんぱく質の含有量が比較的少ない液状乳化栄養組成物に、水溶性カルシウム及びカルシウムと反応して不溶性塩を形成する有機酸を共存させる場合、予め水不溶性カルシウムを存在させ、かつ水溶性カルシウム化合物と有機酸の比率を特定の範囲内に調整すると、特に高温保存下における乳化安定性を確保することができ、かつ溶解状態にあるカルシウムが不溶化することによる沈殿を防止することができることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、乳たんぱく質、水溶性カルシウム化合物、分子量500以下の有機酸及び/又は無機酸と結合した不溶性カルシウム化合物、ヒドロキシ多価カルボン酸及び/又はその水溶性塩を含有する液状乳化栄養組成物であって、乳たんぱく質を固形分として液状乳化栄養組成物100ml当たり1.8〜4.5g含有し、(水溶性カルシウム化合物のモル数)/(該ヒドロキシ多価カルボン酸残基のモル数に価数を乗じた値)が、0.05〜0.23の範囲にあることを特徴とする液状乳化栄養組成物を提供する。 本発明で用いる乳たんぱく質は、脱脂粉乳や全粉乳、カゼインやホエー及びその分解物等として配合され、特にカゼイン及び/又はその塩であることが好ましく、酸カゼイン、カゼインナトリウム及びカゼインカリウムの少なくとも一つから選択されることが特に好ましい。配合量は、固形分として100mlあたり1.8〜4.5gであり、2.2〜4.2gが特に好ましい。ここで、固形分は、乳たんぱく質原料から水分量やミネラル分、脂質等を除いた、実質たんぱく質としての重量である。 本発明で用いる乳たんぱく質として、乳たんぱく質としてカゼイン及び/又はその塩を用いることにより、乳化が良好となりまたカルシウムに由来する粗大粒子の形成防止効果も向上する。すなわち、カゼイン分子中のリン酸基とカルシウムイオンが反応し、水溶液中で良好な分散状態を保つことが可能となる。またカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウムの少なくとも一つを用いることにより、製造時の溶解性が容易となり、また乳化、加熱、保存安定性もよりよい結果が得られるという利点が得られる。 本発明は特に乳たんぱく質の配合量が少ない場合に効果を発揮する。すなわち、乳たんぱく質中に存在するリン酸基とカルシウムが反応し、カゼイン-カルシウム複合体を形成することが知られており、たんぱく質の量に対して溶解状態のカルシウム量に対して乳たんぱく質の量が少なくなると、凝集を引き起こし耐熱性や保存安定性の低下を招く。本発明は、このような乳たんぱく質の量が少ない液状乳化栄養組成物であるので、たんぱく質の摂取が制限される腎不全患者を対象とした栄養組成物として有用であるばかりでなく、分枝鎖アミノ酸の摂取が有効とされる肝障害を有する患者、イソロイシンやロイシンの摂取が有効されている糖尿病患者、手術前後の摂取が有用とされるアルギニンの摂取が有効とされる手術処置後の患者等の栄養組成物について、それぞれ必要な種類及び量のアミノ酸を総窒素量が過多とならない状態で別途追加可能となり、極めて有用な製剤化が実用可能となる。 本発明で用いる水溶性カルシウム化合物として、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、その他の有機酸及び無機酸塩等、食品添加物や日本薬局方(医薬品である場合)として摂取・使用が認められている素材が用いられる。これらの水溶性カルシウム化合物は、各種食品素材に由来して液状乳化栄養組成物に配合されてもよい。好ましくは、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選らばれる少なくとも1種である。 水溶性カルシウム化合物は、液状乳化栄養組成物にもたらされるカルシウムとして、100mlあたり50mg(1.25mmol)以下であるのが好ましく、より好ましくは、20〜45mg(0.5〜1.13mmol)である。 本発明で用いる分子量500以下の有機酸は、分子量500以下の分子である。本発明で用いる分子量500以下の有機酸及び/又は無機酸と結合した不溶性カルシウム化合物としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、焼成・未焼成カルシウム、ドロマイト、酸化カルシウムや、その他の有機酸及び無機酸塩等、各種食品素材、食品添加物ならびに食品添加物製剤や、日本薬局方(医薬品である場合)として摂取・使用が認められている原材料が使用される。これらのうち、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、焼成・未焼成カルシウム、ドロマイト及び酸化カルシウムからなる群から選らばれる少なくとも1種であるのが好ましい。これらのうち、リン酸カルシウムを使用するのがより好ましい。特に、リン酸カルシウムを使用すると、官能的にもエグ味、収斂味が抑制されると共に、高温保管条件下における粗大白色粒子発生防止効果も一層向上するので好ましい。尚、不溶性カルシウム化合物としては、微細な不溶性カルシウム化合物、例えば、150メッシュの篩を通過できる大きさのものが好ましい。 上記不溶性カルシウム化合物は、液状乳化栄養組成物を調合する時に添加する際、原料粉末を直接投入するか、分散性を向上させるために冷水や温水等に分散し、懸濁液として混合するのが好ましい。また懸濁液は必要に応じて、をミキサーや高速攪拌機による分散操作や、超音波処理されることにより、より水中において分散度合いが増し調合操作が容易になる。本発明の液状乳化栄養組成物では、目開き0.07〜0.11mmの篩を通液させた際に、不溶性カルシウムの篩上の残存率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、残存しないのが更に好ましい。また篩は、0.075mm(200メッシュ)の目開きのものを使用し、評価するのがより好ましい。添加量は、カルシウム量として100ml当たり10〜150mgであることが好ましく、20〜80mgであるとより好ましい。 本発明で使用するヒドロキシ多価カルボン酸としては、種々のものがあげられるが、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選らばれる少なくとも1種であるのが好ましい。これらの水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などがあげられる。本発明では、ヒドロキシ多価カルボン酸とその水溶性塩を組み合わせてもちいることもできる。特に、本発明では、クエン酸とクエン酸の水溶性塩とを組み合わせて用いるのが好ましい。ヒドロキシ多価カルボン酸及び/又はその水溶性塩は、液状乳化栄養組成物100ml当たり1.85〜3.7ミリモルとなるように使用するのが好ましく、特に1.96〜3.17ミリモルであるのが好ましい。この量の範囲で使用すると、有機酸カルシウム粒子が形成する可能性を抑え、特に高温での保存安定性の問題を生じることがなく、クリームの発生も良好に抑制することができる。 本発明では、特に、ヒドロキシ多価カルボン酸として、クエン酸が好ましい。クエン酸は溶解性カルシウム分の安定化に寄与する他、他の溶解状態にあるミネラル分、特にマグネシウムに由来する好ましくない効果の発現防止を達成できる。クエン酸及び/又はその塩の形態で用いるのが好ましく、具体的には食品添加物及び/又は日本薬局方(医薬品である場合)の、クエン酸(結晶、無水)やクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸鉄等が使用される他、食品としてクエン酸を含有する素材、例えば果汁や果実の発酵醸造物等を用いてもよい。液状乳化栄養組成物100mlあたりの好ましい配合量は遊離クエン酸として350〜700mg(1.85〜3.70mmol、3価陰イオンとしての分子量189.1より算出)が好ましく、より好ましい量は370〜600mg(1.96〜3.17mmol)である。 本発明では、(水溶性カルシウム化合物のモル数)/(該ヒドロキシ多価カルボン酸残基のモル数に価数を乗じた値)が、0.05〜0.23の範囲にあるのが重要である。より好ましくは、0.05〜0.16である。この範囲内であると、液状乳化栄養組成物における水溶性カルシウムに由来する不溶性粗大粒子の発生を有効に抑制することができる。 本発明では、上記成分に加えて、液状乳化栄養組成物とするための水が必要である。 本発明の液状乳化栄養組成物は、上記必須成分に加えて、遊離アミノ酸及び/又はペプチドを含有することができる。一般にアミノ酸やペプチドは乳化安定性に悪影響を及ぼすことが知られており、特に乳たんぱく質の使用量が少ない場合においてその影響は顕著となる。本発明は乳化安定性に影響を及ぼす物質の使用を適切に規定し、また同時に粗大な不溶性カルシウムの生成を抑制することが可能となるため、アミノ酸やペプチドを配合しても保存安定性に優れた製剤となり得る。遊離アミノ酸及び/又はペプチドは100mlあたり0.1〜4gが良く、より好ましくは0.3〜3gである。遊離アミノ酸は塩の形態で配合されてもよく、ペプチドは植物性や動物性由来、化学合成品、微生物産生由来のものを使用してもよい。分解度(天然原料を酵素処理や加水分解することにより製造されたペプチドに関する)は制限されないが、液状製剤であるため、容易に水に分散し、殺菌耐熱性が良好であり、保存時に分離や沈殿、浮遊物の発生が極力抑えられるといった特徴を有したものが好ましい。 本発明では、さらに、コラーゲン及びその分解物、卵たんぱく質及びその分解物、分離大豆たんぱく質や小麦たんぱく質及びその分解物などの植物性たんぱく質やその加水分解物(ペプチド)を用いてもよい。 本発明の液状乳化栄養組成物は、特に高温での保存時に効果を発揮する。液状乳化栄養組成物は、通常、室温にて保管されるが、夏期の保存や輸送においては40℃程度の環境下に晒される可能性があり、また、熱帯や亜熱帯、乾燥帯においてもそのような環境下におかれることは珍しくない。このような過酷な保存条件においても本発明品はカルシウムに由来する粗大不溶性粒子の発生やクリームの著しい発生を抑えて、少なくとも40℃保存下6週間良好な物性を保つことができる。栄養組成物のカルシウム量をより多く含有させたい場合においては、不溶性カルシウムとしてリン酸カルシウムを使用すると粗大不溶性粒子発生防止に一層効果を発揮する。 本発明の液状乳化栄養組成物は、記栄養素の他に、脂質、炭水化物やビタミン類、各種ミネラルを配合することにより、液状総合栄養組成物とすることができる。脂質としては、食用油脂、例えば、パーム油、やし油、綿実油、ひまわり油、落花生油、シソ油、あまに油、なたね油、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、こめ油、コーン油、ごま油、カカオバター等の植物性油脂や、牛脂、豚脂、魚油、バター、バターオイル等の動物性油脂の他、ショートニングに代表される加工油脂等が挙げられ、用途に応じて数種類を選択し組み合わせて使用する。これらの油脂を乳化状態に保つため、脂肪酸モノグリセリドや有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤を用い、乳化処理され、エマルジョンとして分散状態とすることができる。 炭水化物としては、でんぷんやその分解物(デキストリン)、ショ糖、果糖、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、糖アルコール、オリゴ糖などが挙げられる。水溶性食物繊維源としては、難消化性デキストリン、ペクチン、ガラクトマンナンが挙げられ、不溶性食物繊維としては大豆や小麦に由来するフスマや結晶セルロースが例示される。ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンD3、ニコチン酸アミド、葉酸、β-カロチン、パントテン酸、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられ、ミネラルとしては、先に述べたカルシウムの他、リン、銅、亜鉛、マンガン、クロム、モリブデン、セレン、鉄、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ヨウ素などがあげられる。これらは、有機酸塩や無機酸塩、化学合成品等に代表される食品添加物としての他、各種食品からの抽出エキスや酵母など、食品素材から由来して配合されてもよい。本発明の栄養組成物には、さらに各種天然や合成甘味料、着色剤、香料及び、カルニチンやα-リポ酸、CoQ10、カテキン、アントシアニン、イソフラボンに代表されるポリフェノールなど、いわゆる機能性栄養素を配合することができる。 本発明の液状乳化栄養組成物は、理由は明らかではないが、これまでの市販栄養剤と比較して耐酸性に優れる。すなわち、殺菌包装後の当該組成物100mlに2.5%酢酸水溶液を8ml添加したときの粘度変化が2倍以下に抑えられる。栄養組成物中の酸の増加によっても、粘度変化が小さいことから、カテーテルへの胃酸逆流が生じた場合に流動食の凝固が発生しにくく、カード化の原因として報告されている菌の増殖が発生した場合、酸性を示す薬剤と同時或いはその前後で使用された場合においても、チューブ詰まりを起こしにくいと言える。以上から、本発明品は経管経腸栄養用としても、極めて好ましい形態を有している。経管栄養用途としてより簡便に利用するためには、易開封性の容器であるのが好ましく、又、自立性があるのが好ましい。更にフィルムバッグに封入され、1回の使いきりで衛生的に使用される形態であることが好ましい。当該組成物の殺菌の方法としては、容器への充填の前後においてUHT殺菌やレトルト殺菌等の方法が採られ、容器は使用目的に応じて紙パックやフィルムパウチ、口栓付フィルムバッグ、金属缶等が採用される。製品が充填後にレトルト殺菌処理される場合、可能な限り容器内の残気量を抑制することが好ましい。それにより、残気部に発生する栄養組成物の凝集、変性、濃縮等に起因する褐色付着物の生成を抑制することができる。一個あたりの残気量は、15ml以下であると好ましく、10ml以下であるとより好ましく、5ml以下であると更に好ましい。 以下本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。比較例1:実生産規模(3,000L)での試験 原材料を表1、組成物Aに示す配合割合となるように計量し、調合タンクに精製水1164kg(70〜80℃)を張込み、攪拌しながら、デキストリン、不溶性食物繊維、ミネラル含有酵母、クエン酸第一鉄ナトリウムを投入分散した。次いで、食用油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、β―カロテン懸濁液、ビタミンEオイル及び乳化剤を70〜80℃にて混合溶解した液を投入した。次いで、これに乳たんぱく質、パラチノース、水溶性食物繊維を投入し、溶解した。 別のタンクに温水135kg(30〜40℃)をはり、クエン酸、水酸化カルシウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸カリウム、塩化マグネシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルタミン酸ナトリウムを順次溶解し、この液を、先に調製した調合タンクの液に投入、混合した。この作業を2回繰り返した。次いで、イソロイシン、エリソルビン酸ナトリウム、ビタミンミックスをこれに投入して分散溶解させ、次いで葉酸と香料を投入した。この液を脱気処理(約20cmHg)後、高圧ホモジナイザーにて乳化圧98MPaで処理し、プレートクーラーにより液温10℃以下とした。貯液タンクに貯留後、アスコルビン酸ナトリウムを投入溶解し全量が3000Lとなるように調合水で定量し、均一な液となるまで撹拌した。これをポート付き透明フィルムバッグ(バッグフィルム構成:PET/蒸着PET/Ny/CPP)に1個あたり400mlとなるように充填し、充填後脱気バーにて残気部分を15ml以下とした状態でヒートシールにて密封後、124℃/9分の殺菌保持条件でレトルト殺菌処理を行った。実施例1:組成物B 組成物A中の水酸化カルシウムの一部を不溶性カルシウムである炭酸カルシウム(商品名:カルネクスPN、竹原化学工業(株)製)に置き換えて、組成物Bを調製した。なお原料として使用した炭酸カルシウム1gを温水100gに分散した懸濁液は、目開き200メッシュの篩を全量通過した。配合原料及び配合量を表1に示した。製造手順及び方法は、基本的に比較例1に記載の方法と同一とし、炭酸カルシウムについては、2回目のミネラル溶解液投入後、イソロイシン投入前に、温水(50〜70℃)15kgに分散させたのち投入した。実施例2:組成物C 組成物B中の水溶性カルシウムをさらに減量(水酸化カルシウム無配合)し、減じたカルシウムに相当する量の炭酸カルシウム(実施例1で使用したものと同一)を増量した組成物Cを調製した。配合原料及び配合量を表1に示した。製造手順及び方法は、実施例1と同様である。実施例3:組成物D 組成物C中の水溶性カルシウムをさらに減量(グリセロリン酸カルシウム無配合、水酸化カルシウム使用)し、不溶性カルシウムとしてリン酸三カルシウム(関東化学(株)製)を使用して組成物Dの試作を実施した。なお原料として使用した炭酸カルシウム1gを温水100gに分散し超音波処理(超音波洗浄機を使用し、懸濁液中のリン酸カルシウム粉末のダマを分散させる)を施した懸濁液は、目開き150メッシュの篩を全量通過した。配合原料及び配合量を表1に示した。製造手順及び方法は、実施例1に準じ、リン酸三カルシウムの投入方法は、炭酸カルシウムの投入方法と同様とした。 組成物A〜Dについて、100ml中におけるカルシウム塩を原料として配合された水溶性及び不溶性カルシウムの量及びそれらの和、水溶性カルシウムのmmol数、遊離クエン酸のmmol数×価数(クエン酸は3価の酸であるから、3を乗じる)、並びに水溶性カルシウムのmmol数と遊離クエン酸のmmol数×価数の比を表2に示した。表1.組成物A〜Dで用いた原材料及びそれらの配合量(3,000L仕込み、濃度1kcal/ml)表2.組成物A〜D100ml中の各種物質の存在量及び存在比備考:水溶性カルシウム…水酸化カルシウム、グリセロリン酸カルシウム 不溶性カルシウム…炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム 作製した組成物A〜Dのサンプルの物性イニシャル値を測定し、外観および官能、チューブ流動性評価を行った。結果を表3に示した。また、それぞれの項目についての測定条件は、以下の通りとした。・pH 実験2に記載の方法と同条件にて実施した。・粘度 回転式粘度計(BH−80(商品名)、東機産業社製)にて、ローターNo.10を用い、液温25℃、60rpmの条件下で測定した。・官能(風味)エグ味、収斂味が感じられ、経口として食した際にやや不快に感じる場合を△とし、これと比較してエグ味、収斂味が抑制されている場合を○、○よりも更に抑制され、食した際に不快と感じない場合を◎とした。・外観 クリームの発生や不溶性の塩の形成の有無等、目視にて観察し、レトルト殺菌前後における明らかな性状異常が認められない場合を問題なしとした。・チューブ流動性 試料のポート部にチューブ(JMS栄養セット(商品名)、JMS社製)と5Frのカテーテル(サフィードフィーディングチューブ(商品名)、テルモ社製)を接続し、高さ1mから内容液を自然滴下させ、滴下した量を30分ごとに測定した。バッグ内の液が無くなるまで滴下を続け、時間あたりの平均滴下流量を求め、チューブ流動性とした。・150メッシュを通過しない不溶性カルシウムの量 さらに、組成物A〜Dについて、150メッシュのふるいを通過させ、メッシュ上に不溶性カルシウムが残留するか確認した。表3.組成物A〜Dの物性値(イニシャル) イニシャルにおいては、組成物A〜D間に物性上の差は殆ど認められなかった。官能評価においては、不溶性カルシウムを使用した組成物B、Cは組成物Aと比較し収斂味やエグ味が抑制され、より好ましい経口栄養組成物であることが確認された。また組成物Dは組成物B、Cと比較しより収斂味やエグ味が抑制され、更に好ましい製剤となることを実証した。 組成物A〜Dについて、粗大白色沈殿及びクリームの発生を指標とした保存試験を実施した。保存条件は室温(20〜25℃)、40℃及び60℃とし、保存期間は室温及び40℃条件においては2ヶ月、60℃は1ヶ月とした。それぞれの項目についての評価は、以下の通りとした。結果を表4に示した。・粗大白色沈殿評価 試料1個(400ml)を、50メッシュ(目開き0.3mm)のふるいを通過させ、メッシュ上の粗大白色沈殿の存在の有無を確認した。確認された場合を×、確認されなかった場合を○とした。・外観(クリームの評価) クリームの発生が認められなかった場合を◎、僅かに発生を認め、軽く振ったときに容易に分散する程度であった場合を○、クリームの発生を明確に認めるが、振ることにより分散し、経口経管使用上問題とならない場合を△、クリーム層を形成し、試料を振ってもクリームの分散性が著しく悪く、使用上問題となる場合を×とした。表4.組成物A〜Dの保存時の粗大白色沈殿及びクリーム発生量評価結果 組成物A〜Dの保存安定性について、室温においては組成物Aに対して組成物B〜Dではクリーム発生をやや抑制できた。一方、40℃の条件で保存した場合、組成物Aには保存1ヶ月目で粗大白色沈殿が確認されたが、組成物B〜Dでは6週間保存時において発生を認めなかった。クリームの発生に関しても、前者より後者においてその生成が少なく、より好ましい傾向を示した。さらに、60℃の条件で保存した場合、組成物B、Cでは粗大白色沈殿の生成を認めたものの、組成物Dでは1ヶ月経過時においてもその発生を認めなかった。以上より、水溶性カルシウムのみを使用し栄養組成物を製造した場合は、その製品の安定性において問題を発生し易く、水溶性カルシウムの一部を不溶性カルシウムで置き換えることによりその安定性が格段に向上することが示された。また更には、不溶性カルシウムにリン酸三カルシウムを使用すると、より高温保存下においても粗大白色沈殿の抑制効果を維持可能であることが判明した。 カゼイン及びその塩から選ばれる少なくとも1種の乳たんぱく質、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選らばれる少なくとも1種水溶性カルシウム化合物、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ドロマイト及び酸化カルシウムからなる群から選らばれる少なくとも1種の、分子量500以下の有機酸及び/又は無機酸と結合した不溶性カルシウム化合物、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群から選らばれる少なくとも1種のヒドロキシ多価カルボン酸及び/又はその水溶性塩を含有する液状乳化栄養組成物であって、乳たんぱく質を固形分として液状乳化栄養組成物100ml当たり1.8〜4.5g含有し、(水溶性カルシウム化合物のモル数)/(該ヒドロキシ多価カルボン酸残基のモル数に価数を乗じた値)が、0.05〜0.23の範囲にあることを特徴とする液状乳化栄養組成物。 分子量500以下の有機酸及び/又は無機酸と結合した水不溶性カルシウム化合物を、カルシウム量として100ml当たり10〜150mg含有する請求項1記載の液状乳化栄養組成物。 ヒドロキシ多価カルボン酸及び/又はその水溶性塩の量が、液状乳化栄養組成物100ml当たり1.85〜3.7ミリモルである請求項1又は2記載の液状乳化栄養組成物。 乳たんぱく質が、酸カゼイン、カゼインナトリウム及びカゼインカリウムからなる群から選らばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の液状乳化栄養組成物。 遊離アミノ酸及び/又はペプチドを、液状乳化栄養組成物100mlあたり0.1〜4gさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の液状乳化栄養組成物。 炭水化物及びビタミン類、栄養素であるミネラル類をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項記載の液状乳化栄養組成物。 150メッシュを通過しない不溶性カルシウムが10質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の液状乳化栄養組成物。 経管経腸栄養用に用いるための請求項1〜7のいずれか1項記載の液状乳化栄養組成物。


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