タイトル: | 公開特許公報(A)_潰瘍性大腸炎治療剤 |
出願番号: | 2008287204 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/201,A61P 1/04,A61K 35/64,A61K 9/20,A61K 9/08,A61K 9/14 |
谷口 美文 岩城 完三 福田 恵温 JP 2010111646 公開特許公報(A) 20100520 2008287204 20081107 潰瘍性大腸炎治療剤 株式会社林原生物化学研究所 000155908 谷口 美文 岩城 完三 福田 恵温 A61K 31/201 20060101AFI20100423BHJP A61P 1/04 20060101ALI20100423BHJP A61K 35/64 20060101ALI20100423BHJP A61K 9/20 20060101ALI20100423BHJP A61K 9/08 20060101ALI20100423BHJP A61K 9/14 20060101ALI20100423BHJP JPA61K31/201A61P1/04A61K35/64A61K9/20A61K9/08A61K9/14 4 OL 13 4C076 4C087 4C206 4C076AA11 4C076AA29 4C076AA37 4C076BB01 4C076CC03 4C076CC16 4C076DD38 4C076DD51 4C076DD67 4C076DD69 4C076EE30 4C076EE58 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB22 4C087CA06 4C087CA22 4C087CA24 4C087CA37 4C087MA17 4C087MA35 4C087MA43 4C087MA52 4C087NA06 4C087NA14 4C087ZA68 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA04 4C206DA07 4C206MA01 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA05 4C206MA37 4C206MA55 4C206MA63 4C206MA72 4C206NA06 4C206NA14 4C206ZA68 本発明は、10−ヒドロキシ−2−デセン酸を有効成分とする副作用の少ない優れた潰瘍性大腸炎治療剤に関する。 潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜の粘膜層あるいは粘膜下層にびらんや潰瘍を形成する非特異性炎症性腸疾患であり、その臨床症状として下痢、血便、腹痛及び体重減少などの特徴的所見が挙げられる。わが国においては従来比較的まれな疾患であったが、近年食生活の欧米化などに伴い患者数は年々急増している。その原因として、腸内細菌感染、食物アレルギー、血管障害、自律神経障害や免疫異常などの種々の要因が考えられているものの、詳細は未だ不明であり、根本的治療法が確立されていないのが現状である。現在のところ薬物療法としては、ステロイドホルモン、サラゾスルファピリジンなどのサルファ剤、アザチオプリンやメルカプトプリンなどの免疫抑制剤などの単独投与あるいは併用投与が行われている。また、食品素材として汎用されている成分についてみても、潰瘍性大腸炎治療剤の有効成分として、特許文献1にはトレハロースが、特許文献2にはカテキン類が、特許文献3にはリジンが、特許文献4イソフラボン類などが提案されている。 しかしながら、潰瘍性大腸炎治療剤は、一般的に、長期間継続的に使用する必要があるので、単一の成分だけでは、人によっては使用を嫌がる場合や、十分な効果が得られない場合もあるので、新規潰瘍性大腸炎治療剤の開発が望まれている。特開平10−17478号公報特開平11−116475号公報国際公開WO2006/46746号パンフレット特開2007−63138号公報 治療効果に優れた潰瘍性大腸炎治療剤を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記の課題に鑑み、種々の物質を検索した結果、意外にも10−ヒドロキシ−2−デセン酸(以下、本明細書では「デセン酸」という。)に潰瘍性大腸炎に対する予防又は治療効果があることを見出して、本発明を完成した。すなわち、本発明は、デセン酸を有効成分とする潰瘍性大腸炎治療剤に関する。 本発明の潰瘍性大腸炎治療剤は、経口的に摂取することにより、大腸粘膜のびらんや潰瘍の形成を抑制し、下痢、血便、腹痛及び体重減少などの症状を予防乃至改善することから、潰瘍性大腸炎に対して優れた治療効果を発揮することができる。 本発明でいう潰瘍性大腸炎治療とは、潰瘍性大腸炎における大腸粘膜の粘膜層あるいは粘膜下層のびらんや潰瘍の発生や増悪を、予防、改善することをいい、その臨床症状である下痢、血便、腹痛及び体重減少などを予防、改善することを意味する。また、潰瘍性大腸炎の緩解期の延長、再燃、再発予防などを含む。 本発明で使用するデセン酸は、その由来や製法に制限はなく、合成品であっても、天然物由来であってもよく、合成の際に使用する原料に由来する成分や合成過程で生成する成分を含んだままであってもよく、さらに、分画などにより部分精製したものや、高度に精製したものを使用してもよい。天然物としては、食経験が豊富で、滋養効果や安全性に優れたローヤルゼリーが、デセン酸を豊富に含んでいるので好ましい。ローヤルゼリーとしては、具体的には、生ローヤルゼリー、乾燥ローヤルゼリー、調製ローヤルゼリーや、これらローヤルゼリーの無機溶媒及び/又は有機溶媒による抽出物を例示することができ、ローヤルゼリー抽出物を、さらに、クロマトグラフィーや、限外濾過膜などの膜を使用するなどして分画した、デセン酸を含むローヤルゼリー分画物であってもよい。これらのうち、保存やハンドリングの容易さからは、ローヤルゼリー抽出物やその分画物が望ましい。また、ローヤルゼリー由来の蛋白には、潰瘍性大腸炎に対する治療効果は認められないことから、治療効果の強さの点及びアレルゲン性の低さの点からは、アレルゲン性を有する蛋白成分量を低減させたローヤルゼリー分画物が望ましい。ローヤルゼリー分画物としては、例えば、下記実施例4で示すように、同じ出願人が、国際特許出願PCT/P2008/60126号明細書で開示した、分画分子量が30,000乃至6,000程度の限外濾過膜や、ゲルカラムクロマトグラフィーなどの方法により、ローヤルゼリーに含まれる蛋白を含む高分子画分を除去した画分、望ましくは分子量30,000ダルトン以上の画分、さらに望ましくは、分子量が10,000ダルトン以上の画分、特に望ましくは分子量が6,000ダルトン以上の画分を除去して得られる、アレルゲン性の低減されたものを使用するのが望ましい。 本発明の潰瘍性大腸炎治療剤は、デセン酸や、ローヤルゼリーのようにデセン酸を含む組成物を有効成分として配合してなり、通常、経口摂取物の形態で使用する。その場合の剤形に特に制限はなく、固状、粉末、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル、液状、シラップ、ペースト、乳液などの形態で利用してもよく、通常の飲食品に混合して摂取することも随意である。また、非経口的な投与経路で使用する場合には、座剤、液剤、懸濁剤、乳剤などの形態で利用すればよい。 本発明の潰瘍性大腸炎治療剤は、デセン酸を、そのまま製剤として単独で使用してもよいが、必要に応じて、製剤学的に許容される添加剤と組み合わせた経口用製剤又は高カロリー輸液製剤などとするか、若しくは、輸液製剤などに添加して使用する非経口用の製剤とすることもできる。具体的には、例えば、界面活性剤、防腐剤(抗菌剤)、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、抗酸化剤、キレート剤、色素、香料、pH調整剤、賦形剤、崩壊剤、コーティング剤、結合剤、滑沢剤、ビタミン類、各種アミノ酸、電解質、動物や植物のエキスなどと組み合わせて、公知の方法により製剤化すればよい。より具体的には、経口剤の製造に際しては、例えば、通常用いられる乳糖、白糖、マルトース、トレハロース、トレハロースの糖質誘導体、環状四糖などの還元性或いは非還元性の糖質、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、デキストリン、澱粉、結晶セルロース、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース、寒天、ゼラチン末、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを使用すればよい。また、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などの経口液剤、注射剤の製造に際しては、デセン酸又はそれを含む組成物を、注射用蒸留水、生理食塩水などに溶解、乃至、懸濁し、例えば、無機又は有機の酸あるいは塩基などのpH調整剤、等張化剤、安定化剤、希釈剤などを必要により添加すればよい。 本発明の潰瘍性大腸炎治療剤は、さらに、必要に応じ、有効成分であるデセン酸又はそれを含む組成物に加えて、他の潰瘍性大腸炎治療剤や抗炎症剤などの潰瘍性大腸炎の臨床症状を改善する効果をもつ薬効成分を添加することも、これら薬効成分を含有する製剤と併用することも随意である。 本発明の潰瘍性大腸炎治療剤の投与量は、投与の方法、患者の年齢、体重、症状などにより異なるが、通常、成人に対して経口投与の場合、固形物換算で、デセン酸を、1日当たり0.02乃至20mg/kg・体重、好ましくは0.05乃至10mg/kg・体重、特に好ましくは0.5乃至5mg/kg・体重の範囲で適宜調節して投与すればよい。1日あたり0.02mg未満/kg・体重の摂取では所期の効果が得られない場合があり、20mg/kg・体重を越えて摂取しても、摂取量に見合う効果が得られない場合がある。 本発明の潰瘍性大腸炎治療剤へのデセン酸の配合割合は、潰瘍性大腸炎の治療効果が得られるのであれば特に制限はなく、上記1日当たりの必要量が摂取できるように調整すればよい。具体的には、デセン酸の配合量は、通常、固形製剤の形態とする場合は、0.01乃至100質量(w/w)%、液状製剤の形態とする場合には0.001乃至10質量(w)/容積(v)%の範囲で、各々適宜選択すればよい。また、ローヤルゼリー抽出物などのようにデセン酸を含む組成物を使用して製剤を調製する場合は、該組成物中のデセン酸量に基づき、製剤中のデセン酸量を計算して配合量を決めればよい。 本発明の潰瘍性大腸炎治療剤は、潰瘍性大腸炎の発生や、緩解期を延長する作用を有しているので、潰瘍性大腸炎の予防剤や緩解期の延長剤として利用することも有利に実施できる。 以下、実験により本発明をさらに具体的に説明する。<実験1><潰瘍性大腸炎に及ぼすデセン酸の影響> <被験試料> デセン酸を被験試料として使用し、潰瘍性大腸炎モデルラットに及ぼす影響を調べた。すなわち、市販の試薬級デセン酸(アルフレッサファーマ社販売、純度99質量(w/w)%以上)15mgを秤量し、蒸留水75mLに溶解し(200μg/mL)、小分けして、冷蔵保存したものを使用した。 <被験動物> 被験動物として、SD系雄性ラット(4週齡、日本チャールスリバー社販売)13匹を、1週間予備飼育した後に使用した。すなわち、ラットはポリカーボネート製のケージに金網を敷いて自動給水ラックで予備飼育した。予備飼育中は、表1に示す配合組成のラット用市販粉末飼料(商品番号「CE−2」、日本クレア社販売、以下「CE食」と略記する。)を、給餌器を使用して与えた。予備飼育後、各ラットの体重を測定し、各試験群の体重の平均が均等になるように、試験群1に3匹、試験群2に6匹、及び、試験群3に4匹を割り付け、各々代謝ケージに移した。 <潰瘍性大腸炎の誘導> ヒトの潰瘍性大腸炎治療剤開発のためのモデルとして利用されているラットの潰瘍性大腸炎は、Kanauchiらの方法により、デキストラン硫酸ナトリウム(以下、「DSS」と略記する。)を経口摂取させることにより誘導した(『J. Gastroenterol. Hepatol.』、第16巻、第160乃至168頁(2001年)参照)。すなわち、表1に示す配合組成のCE食中のコーンスターチの一部を、DSS(平均分子量5,000、和光純薬株式会社販売)で置き換えて、その配合量が5質量(w/w)%となるように調製した飼料(以下、「DSS食」という。配合組成は表1参照)を8日間摂取させて潰瘍性大腸炎を誘導した。なお、以下、DSS食摂取開始後の日数は、DSS食摂取開始日を0日として表記する。 <潰瘍性大腸炎の症状に及ぼすデセン酸の影響> 上記の予備飼育後代謝ケージに移した3群のラットにつき、表2に示すスケジュールで、試料と餌を摂取させて、デセン酸の潰瘍性大腸炎に及ぼす影響を調べた。すなわち、3群のラットに、試料として、1日1回、毎日、蒸留水(試験群1及び試験群2)又は被験試料(試験群3)を、5mL/匹/日、ゾンデを用いて経口摂取させながら、CE食で1週間飼育した(飼育期間1)。この飼育期間1終了の翌日から、試験群1のラットには、蒸留水を、1日1回、毎日、5mL/匹/日、ゾンデを用いて経口摂取させながら、CE食で8日間飼育した(飼育期間2)。試験群2のラットには、蒸留水を、1日1回、毎日、5mL/匹/日、ゾンデを用いて経口摂取させながら、DSS食で8日間飼育した(飼育期間2)。試験群3のラットには、被験試料を、1日1回、毎日、5mL/匹/日、ゾンデを用いて経口摂取させながら、DSS食で8日間飼育した(飼育期間2)。各ラットについて、飼育期間2の期間中(8日間)とその翌日(DSS食摂取8日)、肉眼による糞便観察を行い、下記評価方法で、潰瘍性大腸炎の症状スコアを計算した。結果を表3に示す。また、飼育期間2終了の翌日(DSS摂取8日)の各群のラットの生存数を確認し、及び、この生存ラットを各々、麻酔下で解剖し、腹部大静脈から採血して、そのヘマトクリット値(%)を、常法(ミクロヘマトクリット法)により測定して平均値を求めた。結果を表3に併せて示す。<潰瘍性大腸炎症状の評価方法> DSS食摂取により誘導される潰瘍性大腸炎症状を、糞便の肉眼観察による症状スコア(Disease Activity Index:DAI)により評価した。すなわち、Tsubouchiら(『Digestion』、第74巻、第91乃至100頁(2006年))の方法に従い、糞便の性状および色調に基づきスコア化した。下痢の症状は、糞便の性状により、正常(0)、少し軟便(1)、軟便(2)、水様便(3)の4段階で判定して、スコア化した。また血便は、糞便の色調により、正常(0)、茶色(1)、赤茶けた色(2)、血便(3)の4段階で判定してスコア化した。そして下痢スコアと血便スコアとの合計をDAI(最大6)とした。統計処理はDSS摂取群と被験試料摂取群のDAIについて、Mann−Whitney Uテストにより有意差検定を行ない、p<0.05を有意とした。 表3から明らかなように、CE食を摂取させると共に、蒸留水を摂取させた試験群1のラットのDAIは0で、糞便に異常は認められなかった(表3には有意差の有無は表示せず)。これに対して、CE食摂取期間(飼育期間1)中及びDSS食を8日間摂取させた期間(飼育期間2)中、蒸留水を、1日1回、毎日、摂取させた試験群2のラットのDAIは、DSS食摂取開始の翌日(DSS摂取1日)から上昇し、DSS食を8日間摂取させた翌日(DSS摂取8日)には6.0となって、血便を伴う水様便が確認され、潰瘍性大腸炎が誘導された。6匹中2匹が、症状悪化により死亡した。CE食摂取期間(飼育期間1)中及びDSS食を8日間摂取させた期間(飼育期間2)中、被験試料(デセン酸を1mg/kg・体重/日)を、1日1回、毎日、摂取させた試験群3のラットのDAIは、試験群2に比して有意に低値を示した。死亡したラットはいなかった。また、3群のラットのヘマトクリット値を比較すると、試験群2は25.5%と低値を示したのに対して、デセン酸を摂取させた試験群3では、有意にその低下が抑制され、潰瘍性大腸炎を発症していない試験群1とほぼ同じ値となり、デセン酸には、潰瘍性大腸炎の特徴的な症状として挙げられる貧血の指標となるヘマトクリット値の低下に対しても有意な改善作用があることが確認された。この結果は、デセン酸に、潰瘍性大腸炎の進行を抑制する効果があり、ヒトの潰瘍性大腸炎の予防や改善、治療に利用できることを物語っている。 <実験2> <ローヤルゼリー成分の潰瘍性大腸炎に及ぼす影響> 実験1において、デセン酸に潰瘍性大腸炎に対する治療効果が確認されたので、デセン酸を豊富に含むことが知られているローヤルゼリーでも同様の効果があることを確認する試験をおこなった。すなわち、被験試料として、表4に示す量のデセン酸を含有する4種類のローヤルゼリー成分を使用した。SD系雄性ラット(4週齡、日本チャールスリバー社販売)30匹を、実験1と同じ方法、スケジュールで予備飼育し、表5に示す試験群(5群)に、各群の体重の平均が均等になるように、各6匹を割り付けて代謝ゲージに移した。このラットのうち、4群は、表2に示す試験群3のスケジュールと同じスケジュールで、試料(被験試料の何れか)を、1日1回、毎日、5mL/匹/日、ゾンデを用いて経口摂取させながら、CE食で1週間飼育した(飼育期間1)後、DSS食で8日間飼育(飼育期間2)して、潰瘍性大腸炎を誘導した(各々被験試料として摂取させたローヤルゼリー成分に基づき、「生ローヤルゼリー摂取群」、「ローヤルゼリー分画物A摂取群」、「ローヤルゼリー分画物B摂取群」、「ローヤルゼリー 蛋白摂取群」という。)。残りの1群は、対照として、表2に示す試験群2のスケジュールと同じスケジュールで、試料(蒸留水)を、1日1回、毎日、5mL/匹/日、ゾンデを用いて経口摂取させながら、CE食で1週間飼育した(飼育期間1)後、DSS食で8日間飼育(飼育期間2)して、潰瘍性大腸炎を誘導した(蒸留水群)。各ラットについて、飼育期間2の期間中(8日間)とその翌日(DSS食摂取8日)、肉眼による糞便観察を行い、実験1と同じ評価方法で、潰瘍性大腸炎の症状スコアを計算した。結果を表5に示す。また、飼育期間2終了の翌日(DSS摂取8日)の各群のラットの生存数を確認し、及び、この生存ラットを各々、麻酔下で解剖し、腹部大静脈から採血して、そのヘマトクリット値(%)を、常法(ミクロヘマトクリット法)により測定して平均値を求めた。結果を表5に併せて示す。 試験に使用した各被験試料の詳細を以下に示す。また、各被験試料中の蛋白量をローリー法で(Lowry法)、デセン酸量を高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)で測定した。結果を表4に示す。さらに、各被験試料を摂取させた際の、ラットの体重・kg当たりに換算した、ローヤルゼリー由来蛋白及びデセン酸摂取量を計算した。結果を表4に併せて示す。 <生ローヤルゼリー> 2006年台湾産の市販生ローヤルゼリーを使用した。生ローヤルゼリーを蒸留水で100倍に希釈(質量(w)/容積(v))して被験試料とし、一日の摂取に必要な量に小分けして冷蔵保存したものを使用した。 <ローヤルゼリー分画物> 後述の実施例4で調製したローヤルゼリー分画物を使用した。このローヤルゼリー分画物を蒸留水で500倍希釈(ローヤルゼリー分画物A)又は100倍希釈(ローヤルゼリー分画物B)して被験試料とし、一日の摂取に必要な量に各々小分けして冷蔵保存した。 <ローヤルゼリー由来蛋白> 14kgの生ローヤルゼリーに、50kgの脱イオン水を加えて均一に分散し、限外濾過膜(UF膜、分画分子量10,000)を使用して10Lになるまで濃縮して、ローヤルゼリー由来蛋白を含む画分を調製した。これを精製水200Lに対して2回透析して脱塩し、凍結乾燥して、ローヤルゼリー由来蛋白画分として粉末55.15gを調製した。この粉末178mgを蒸留水120mLに懸濁して被験試料とし、1日の摂取に必要な量に小分けし、冷蔵保存したものを使用した。 表5から明らかなように、CE食摂取期間(飼育期間1)中及びDSS食を8日間摂取させた期間(飼育期間2)中に、蒸留水を摂取させたラットのDAIは、DSS食摂取1日から上昇し、8日では6.0となって、血便を伴う水溶便が確認され、潰瘍性大腸炎が誘導された(蒸留水群)。蒸留水群では、潰瘍性大腸炎の増悪により6匹中2匹が死亡した。CE食摂取期間(飼育期間1)中及びDSS食を8日間摂取させた期間(飼育期間2)中、被験試料としてローヤルゼリー分画物B又は生ローヤルゼリーを摂取させたラットのDAIは、DDS摂取4日以降、蒸留水群に比して、明らかに、低値で推移し、これらの成分に潰瘍性大腸炎の進行を抑制する作用があることが確認された(ローヤルゼリー分画物B摂取群、生ローヤルゼリー摂取群)。生ローヤルゼリー摂取群では、潰瘍性大腸炎の増悪により6匹中1匹が死亡した。CE食摂取期間(飼育期間1)中及びDSS食を8日間摂取させた期間(飼育期間2)中、被験試料としてローヤルゼリー分画物A又はローヤルゼリー由来蛋白を摂取させた場合も、蒸留水摂取群よりはDAIが低値で推移し、ヘマトクリット値は、生ローヤルゼリー摂取群やローヤルゼリー分画物B摂取群に近い値を示した(ローヤルゼリー分画物A摂取群、ローヤルゼリー由来蛋白摂取群)。ローヤルゼリー由来蛋摂取群では、潰瘍性大腸炎の増悪により6匹中2匹が死亡した。ローヤルゼリー分画物Bを摂取させた場合と生ローヤルゼリーを摂取させた場合とを、潰瘍性大腸炎の症状の進行を抑制する効果の強さで比較すると、ローヤルゼリー分画物B摂取群は蒸留水摂取群に比して、DSS食摂取4日以降はDAIが有意に低く、ヘマトクリット値も有意に高かったのに対して、生ローヤルゼリー摂取群では蒸留水摂取群に比して、DSS食摂取4日以降でもDAIに有意差がない場合があり、ヘマトクリット値も有意な差がなかったため、ローヤルゼリー分画物Bの方が生ローヤルゼリーよりも強いと判断した。この点は、ローヤルゼリー分画物Bを摂取させた場合には死亡したマウスはいなかったのに対して、生ローヤルゼリーを摂取させた場合には、6匹中1匹が死亡したことともよく相関していると考えられる。また、表4から明らかなように、各被験試料を摂取した場合のデセン酸の摂取量を比較すると、ローヤルゼリー分画物Bを摂取した場合が最も高く、生ローヤルゼリー、ローヤルゼリー分画物A、ローヤルゼリー由来蛋白画分の順となり、各被験試料を摂取させたときの潰瘍性大腸炎治療効果とデセン酸の摂取量には、相関が認められるので、実験1の結果も併せて考えると、ローヤルゼリーのもつ潰瘍性大腸炎治療効果の主要な成分は、デセン酸であることを物語っている。また、この結果は、生ローヤルゼリーやその分画物も、デセン酸と同様に、ヒトの潰瘍性大腸炎の予防、改善或いは治療に有用であることを物語っている。 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例により、本発明の技術範囲が、何ら限定的に解釈されるべきものではない。<潰瘍性大腸炎治療剤> デセン酸0.1質量部に対して、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)99.9質量部を均質に混合して、潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品は、このままで、造粒して、打錠して、他の成分と混合して、或いは、飲食物に配合して、潰瘍性大腸炎の予防や治療に使用することができる。本品はこの作用効果を表示して販売することもできる。<潰瘍性大腸炎治療剤> デセン酸0.2質量部に対して、難消化性デキストリン(株式会社松谷化学工業株式会社販売、商品名「ファィバーソル2」)49.8質量部、シクロニゲロシルニゲロース(株式会社林原生物化学研究所製造、純度98質量(w/w)%以上)50質量部を均質に混合して、潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品は、このままで、造粒して、打錠して、他の成分と混合して、或いは、飲食物に配合して、潰瘍性大腸炎の予防や治療に使用することができる。本品はこの作用効果を表示して販売することもできる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 生ローヤルゼリー1質量部に対して、α,α−トレハロース4質量部を添加し、減圧乾燥して、潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品は、このままで、造粒して、打錠して、他の成分と混合して、或いは、飲食物に配合して、潰瘍性大腸炎の予防や治療に使用することができる。本品はこの作用効果を表示して販売することもできる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 国際特許出願PCT/JP2008/60126号明細書の実施例1に記載された方法に基づき、ローヤルゼリー分画物を調製した。すなわち、生ローヤルゼリー(ブラジル産)10kgに、4℃の脱イオン水40kgを加えて攪拌し、均一に分散させた。次いで、この懸濁液を連続遠心分離機(株式会社久保田製作所製、モデルKT−2000G)を用いて、10,000×gで遠心分離し、上清と沈殿とに分離した。得られた上清に6Nの水酸化ナトリウムを添加して、pHを7.2に調整した後、分画分子量6,000ダルトンの限外濾過膜(旭化成販売、商品名「AIP2013」)で濾過した。少量の脱イオン水にて水押しし、限外濾過液と限外濾過濃縮液とに分離した。この限外濾過液約40Lを減圧濃縮法により7kgまで濃縮して、ローヤルゼリー分画物を調製した。本品は、pH7.0、蛋白の回収率0.003%となり、SDS−PAGEによる蛋白バンドは認められず、アレルゲン性(本品で免疫したマウス血清を10倍希釈して、ラットを使用した受身皮膚アナフィラキシー分析で判定)は認められなかった。本品はデセン酸を20.3mg/mL含有し、デセン酸と蛋白との質量比は1:0.0001、ヒドロキシデセン酸と窒素量の質量比は1:0.15であった。本品は、このままで、他の成分と配合して、或いは、飲食物に配合して、潰瘍性大腸炎の治療や予防に使用することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 実施例4で調製したローヤルゼリー分画物1質量部(固形物換算)に、市販のデキストリン(株式会社三和澱粉工業株式会社販売、商品名「サンデック#100」)12質量部を加えて、攪拌溶解して、常法により、凍結乾燥して、潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品はそのままで、造粒、打錠して、他の成分と混合して、或いは、飲食物に配合して、潰瘍性大腸炎の予防や治療に使用することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 実施例1で調製したデセン酸含有粉末又は実施例4で調製したローヤルゼリー分画物粉末の何れか150質量部と、コーンスターチ45質量部、ヒドロキシプロピルセルロース4質量部、ステアリン酸マグネシウム1質量部とを均質に混合し、常法により、打錠して、1錠剤が200mgの潰瘍性大腸炎治療剤を製造した。本品は、経口摂取することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 実施例3で調製した生ローヤルゼリー粉末又は実施例4で調製したローヤルゼリー分画物粉末の何れか150質量部と、コーンスターチ45質量部、ヒドロキシプロピルセルロース5質量部を均質に混合し、常法により、300mgずつハードカプセルに封入して、カプセル形態の潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品は、経口摂取することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 以下の配合処方に基づき、常法により、固状の潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。 (処方) (%)実施例1の方法で調製したローヤルゼリー分画物粉末 49.25桑の葉の粉末 10大麦若葉 10還元麦芽糖(株式会社林原商事販売、 商品名「粉末マビット」) 14.5α−グルコシルヘスペリジン(株式会社林原生物化学研 究所販売、商品名「アルファグルコシルヘスペリ ジン」) 15L−シトルリン 1香料 適量色素 適量全量を100%とする。 本品は、経口摂取することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 下記の成分を配合し、経口流動食形態の潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。 (処方) (%)実施例2の方法で調製した粉末状の潰瘍性大腸炎治療剤 78含水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名 「サンマルト」) 5L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社 林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」) 5L−カルニチン 2.5L−シトルリン 1α―リポ酸 1.5滑沢剤 2上記配合処方に基づき、これらの成分を均質になるまで攪拌混合し、常法により、0.5gずつ打錠して、錠剤を調製した。 本品は、経口摂取することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 以下の配合処方に基づき、常法により、ドリンク剤タイプの潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。 (処方) (%)デセン酸 0.1カラギーナン 1キサンタンガム 0.15ローカストビーンガム 0.15マルチトール 0.8乳化ミントオイル 2.6プロポリスエキス 0.5スクラロース 0.3クエン酸 0.25脱イオン水を加えて全量を100%とし、混合、溶解し、膜ろ過により除菌後、100gずつ褐色ガラスビンに封入して、潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品は、経口摂取することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。 本品は、経口摂取することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 以下の配合処方に基づき、常法により、ドリンク剤タイプの潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。 (処方) (%)実施例5の方法で得た粉末状の潰瘍性大腸炎治療剤 35無水結晶マルトース(林原商事販売、商品名「ファイン トース」) 29.5粉末卵黄 19脱脂粉乳 20塩化ナトリウム 0.44塩化カリウム 0.185硫酸マグネシウム 0.4チアミン 0.001コエンザイムQ10 0.01ビタミンEアセテート 0.06ニコチン酸アミド 0.004 この配合物25質量部を蒸留水150質量部に均一に分散・溶解させ、150gずつ褐色ガラスビンに封入して、潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品は、経口摂取することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。<潰瘍性大腸炎治療剤> 常法により、以下の配合組成を有する注射剤のアンプルを製造した。デセン酸 0.2g塩化ナトリウム 0.2g蒸留水 適量滅菌後、アンプルに20mLずつ分注して、注射用の潰瘍性大腸炎治療剤を調製した。本品は、皮下や筋肉内などの非経口的な経路で投与することにより、潰瘍性大腸炎を予防や治療することができる。 以上のように、有効成分としてデセン酸又はそれを含む組成物を含有する本発明の潰瘍性大腸炎治療剤は優れた潰瘍性大腸炎治療乃至予防効果を有している。本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に多大の貢献をする、誠に意義のある発明である。 有効成分として10−ヒドロキシ−2−デセン酸を含有する潰瘍性大腸炎治療剤。 10−ヒドロキシ−2−デセン酸が、ローヤルゼリー、ローヤルゼリー抽出物又はローヤルゼリー分画物の形態で配合された請求項1記載の潰瘍性大腸炎治療剤。 ローヤルゼリー抽出物が、分子量6,000以下の成分からなるローヤルゼリー分画物である請求項2記載の潰瘍性大腸炎治療剤。 さらに、界面活性剤、防腐剤(抗菌剤)、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、糖質、抗酸化剤、キレート剤、色素、香料、pH調整剤、ビタミン類、添加剤から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1乃至3の何れかに記載の潰瘍性大腸炎治療剤。 【課題】 治療効果に優れた潰瘍性大腸炎治療剤を提供することを課題とする。【解決手段】 有効成分として、10−ヒドロキシ−2−デセン酸を配合した潰瘍性大腸炎治療剤を提供することにより解決する。【選択図】 なし