生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_エステル化抑制剤及びエステル化抑制方法
出願番号:2008283699
年次:2010
IPC分類:A61K 47/02,A61K 9/70,A61K 47/22,A61K 45/00,A61K 31/045,A61K 31/192,A61K 31/405,A61P 29/00


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黒川 隆夫 藤井 拓也 鶴田 清美 太田 重雄 堤 信夫 JP 2010090099 公開特許公報(A) 20100422 2008283699 20081007 エステル化抑制剤及びエステル化抑制方法 久光製薬株式会社 000160522 黒川 隆夫 藤井 拓也 鶴田 清美 太田 重雄 堤 信夫 A61K 47/02 20060101AFI20100326BHJP A61K 9/70 20060101ALI20100326BHJP A61K 47/22 20060101ALI20100326BHJP A61K 45/00 20060101ALI20100326BHJP A61K 31/045 20060101ALI20100326BHJP A61K 31/192 20060101ALI20100326BHJP A61K 31/405 20060101ALI20100326BHJP A61P 29/00 20060101ALN20100326BHJP JPA61K47/02A61K9/70 401A61K47/22A61K45/00A61K31/045A61K31/192A61K31/405A61P29/00 8 書面 11 4C076 4C084 4C086 4C206 4C076AA72 4C076BB31 4C076CC04 4C076DD24Q 4C076DD60Q 4C076FF64 4C084AA19 4C084MA02 4C084MA05 4C084MA32 4C084MA63 4C084NA03 4C084ZA892 4C084ZB112 4C086AA10 4C086BC15 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA32 4C086MA63 4C086NA03 4C086ZA89 4C086ZB11 4C206AA10 4C206CA13 4C206DA25 4C206MA03 4C206MA05 4C206MA52 4C206MA83 4C206NA03 4C206ZA89 4C206ZB11 本発明は、外用剤中における、非ステロイド系抗炎症薬の保存安定性を向上させるエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法に関する。 例えば消炎鎮痛剤として、イブプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、フェルビナクなどのカルボキシル基を有する抗炎症薬を含有し、さらに、清涼感を付与するためにl−メントールのような水酸基を有する化合物を含有する貼付剤が提供されている。 このような貼付剤においては、製剤の保存中に、薬物の有するカルボキシル基と水酸基を有する化合物とがエステル化合物を生成し、特に非水系の貼付剤において薬物の含有量が経時的に減少することが知られている。 そこで、薬物の経時的な含有量の減少を防ぐため、以下のように特定の化合物を配合することによって前記エステル化合物の生成を抑制することが検討されている。 例えば、特許文献1は、分子中にカルボン酸基を有する抗炎症薬(例えば、ケトプロフェン)、l−メントール、脂肪酸金属塩を含有する外用貼付剤が開示され、外用貼付剤に脂肪酸金属塩を含有させることにより、薬物とl−メントールとのエステル化合物の生成が抑制され、安定性に優れ、しかも薬物の吸収性にも優れる外用貼付剤が開示されている。 また、特許文献2は、インドメタシン、及びその溶解剤としてポリエチレングリコールを含有する貼付剤が開示され、特定のポリエチレングリコールを使用することによってエステル化反応が抑制された安定な貼付剤が記載されている。 ところが、これまで開示されている脂肪酸金属、ポリエチレングリコールなどによるエステル化防止技術は未だ十分なものとは言えず、薬物とl−メントールのエステル化反応を更に抑制する技術が求められていた。 一方、分子中にイオウ原子を有する酸化防止剤(抗酸化剤)は、医薬製剤や食品分野などにおいて薬剤等の酸化を防止し、保存安定性を向上させるために広く用いられている。 例えば特許文献3は、外用消炎鎮痛剤組成物の発明であって、非ステロイド性消炎鎮痛剤(例えば、ケトプロフェン)、抗酸化剤として亜硫酸水素ナトリウム、2−メルカプトベンズイミダゾールなどについて開示し、剤形は、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、貼付剤、エアゾール剤などを記載し、必要に応じて添加される成分としてl−メントール、を記載している。しかし、薬物である非ステロイド消炎鎮痛剤とl−メントールとのエステル化を抑制し、薬物を安定化する点については何ら開示も示唆もされていない。 また、特許文献4においても、ジクロフェナクナトリウムを含有する乳化外用剤が開示され、l−メントール、亜硫酸水素ナトリウムを含有する乳化外用剤の実施例を開示しているが、同様に薬物であるジクロフェナクナトリウムとl−メントールとのエステル化を抑制する点については開示も示唆もされていない。 特許文献5は、インドメタシンの安定化剤及び着色防止剤としてチオ硫酸ナトリウムを配合したインドメタシン含有の外用剤組成物を開示し、チオ硫酸ナトリウムを配合することによって安定性及び着色防止効果に優れたインドメタシン含有外用剤組成物が提供される。ただし、チオ硫酸ナトリウムがエステル化合物の生成を抑制するなどの記載はない。 再公表特許WO96/08245(A1)特開2001−302502特開2002−128701特開平9−012452特開2000−072672 本発明の課題は、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がl−メントールと共存する組成物において、エステル化合物の生成を効果的に抑制するエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法を提供する点にある。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がl−メントールと組成物中に共存した場合、平衡反応が進行し、エステル化合物が生じる。この反応は、組成物の保存中において進行する他、特に組成物の製造中における熱負荷によって促進して生成される。本発明者らは、前記のようなエステル化合物生成を抑制すべく鋭意研究を行った結果、意外なことに、亜硫酸水素ナトリウム、2−メルカプトベンズイミダゾール等を配合することによりエステル化合物の生成が極めて抑制されることを見出した。 すなわち、本発明は、外用剤中において、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を抑制する、エステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールを提供する。 また、本発明は、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬が、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンからなる群から選択される1つであることを特徴とするエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールを提供する。 さらに本発明は、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がケトプロフェンであることを特徴とするエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールを提供する。 また本発明は、70℃で10日間保存した場合に、非ステロイド系抗炎症薬に対する前記エステル化された化合物の生成モル数の比が0.007以下であることを特徴とするエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールを提供する。 また本発明は、外用剤中において、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を抑制する、亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールによるエステル化抑制方法を提供する。 また、本発明は、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬が、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンからなる群から選択される1つであることを特徴とするエステル化抑制方法を提供する。 さらに本発明は、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がケトプロフェンであることを特徴とするエステル化抑制方法を提供する。 また、本発明は、70℃で10日間保存した場合に、非ステロイド系抗炎症薬に対する前記エステル化された化合物の生成モル数の比が0.007以下であることを特徴とするエステル化抑制方法を提供する。 以下、本発明のエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法について詳細に説明する。 本発明でいうエステル化抑制剤は、亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールが用いられる。 亜硫酸水素ナトリウムは、ナトリウムの亜硫酸水素塩であり、化学式NaHSO3であらわされる化合物であり、重亜硫酸ナトリウムとも呼ばれる。亜硫酸水素ナトリウムは、一般的には抗酸化剤として食品、医薬品などに配合される。 2−メルカプトベンズイミダゾールも一般的には抗酸化剤として外用剤等に配合され、ゴム工業においては老化防止剤と呼ばれることがある。 亜硫酸水素ナトリウム及び2−メルカプトベンズイミダゾールを配合することによって、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を優れて抑制することができる。 また、本発明でいう分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とは、例えば、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンなどが好ましい。また、これらの薬物は薬学的に許容できる塩であることもできる。薬学的に許容できる塩は、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムなどとの塩である。 本発明においては、ケトプロフェンのような熱負荷や光に不安定な薬物が特に好ましく使用される。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と、l−メントールと、エステル化抑制剤との質量比が、それぞれ1:0.2〜5:0.01〜1の範囲で用いられることが好ましく、さらには、1:1〜2:0.05〜0.5で用いられることがより好ましい。この所定の範囲で各成分を用いることにより、エステル化合物の生成量を極めて低く抑制することができる。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤を混合し、70℃で10日間保存した場合、生成するエステル化合物の割合は、混合した当初の非ステロイド系抗炎症薬のモル数に対するモル数の比として0.007以下(百分率であらわすと0.7%以下)となる。 亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールによって前記エステル化合物の生成が抑制される理由は明らかでないが、製造工程での熱負荷等によって生じる何らかのラジカル種またはそれを経由して生じる化学種が薬物のエステル化合物の生成に関与している可能性が考えられ、エステル化抑制剤がかかる生成反応を効果的に抑制するものと推察される。 本発明のエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールは、組成物に配合して使用することができる。すなわち、エステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールは、エステル結合が生じる状況、言い換えれば分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとが存在する系に共存させることができ、それは、水系の組成物、非水系の組成物を問わず用いることができるが、特に本発明は非水系の組成物において有効であり、例えば、非水系の医薬組成物または製剤に使用することができる。非水系の医薬製剤としては、特に限定はされないが、例えば、貼付剤、軟膏剤、エアゾール剤が挙げられ、外用剤として特に貼付剤において有効である。 なお、本発明でいう非水系の組成物とは、実質的に水分を含有しない組成物であり、組成物中の水分が5質量%以下、好ましくは3質量%以下である組成物をいう。 本発明を適用した外用剤として、例えば貼付剤は以下のような製剤である。 貼付剤は、リザーバー型、マトリックス型いずれのタイプの使用も可能であるが、マトリックス型であれば、通常、支持体と、少なくともその片面に薬物を含有する粘着層と、使用直前までその粘着層を保護する保護フィルムを有する。 前記粘着層は、少なくとも、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール及びエステル化抑制剤を含有し、更に感圧接着性を付与するために粘着剤を含有する。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬はその効果を示す濃度であれば特に限定することなく粘着層に配合されるが、粘着層全体に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜8質量%、さらに好ましくは0.3〜5質量%であれば、抗炎症作用による治療効果を得ることができる。 前記薬物の含有濃度が0.1質量%未満であると十分な治療効果が得られず、濃度を増すとこの効果が高まるが、10質量%を超えると粘着層の粘着性を低下させ貼付剤の皮膚に対する付着性を低下させる場合がある。 l−メントールは、求める清涼感に応じて配合されたり、薬物の溶解、吸収促進などの目的で配合され、粘着層全体に対して0.5〜10質量%で配合される。 エステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールは、粘着層全体に対して0.01〜2質量%で配合されることが好ましい。0.01質量%より少ないと、エステル化合物生成の抑制効果が不十分であり、濃度を増すと抑制効果が高まるが、2質量%を超えて配合しても効果は格段に増さない。 粘着層に配合する粘着剤は、通常貼付剤に使用できる粘着剤であれば特に限定されず、アクリル系粘着剤や、天然又は合成ゴムを主体とするゴム系の粘着剤を用いることができる。特にカルボキシル基や水酸基などの反応性官能基を有さないポリマーであれば、l−メントール若しくは非ステロイド系抗炎症剤とエステル化を生じないため、より安定的な製剤を得ることができ、この点で反応性官能基を有さない、すなわち無官能のゴム系の粘着剤がより好ましく用いられる。 前記の天然又は合成ゴムとは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(S−I−Sブロック共重合体)、スチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴムから選択される1種又は2種以上が挙げられ、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。天然又は合成ゴムは、粘着層全体に対し10〜40質量%が配合され、10質量%未満であれば感圧接着性が不足し、濃度を増すとこの効果は高まるが、40質量%を超えると貼付剤として適切な感圧接着性が得られなくなる傾向にある。 粘着層は前記粘着剤の他、必要に応じて粘着付与樹脂、軟化剤、その他の添加剤を加えることができる。 前記の粘着付与樹脂とは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリテルペン樹脂、ロジンエステル樹脂、水素添加ロジンエステル樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂などが好ましい。粘着付与樹脂は、粘着層全体に対して10〜40質量%が配合され、10質量%未満であれば粘着性付与する効果が不足し、濃度を増すとこの効果は高まるが、40質量%を超えると貼付剤として適切な感圧接着性が得られなくなる傾向にある。 前記の軟化剤とは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン、動植物油などが好ましい。軟化剤は、粘着層全体に対して30〜70質量%が配合され、この範囲では適切な感圧接着性を付与することができる。 前記のその他の添加剤とは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例示するとすれば、前記した薬物以外に配合される薬物、吸収促進剤、充填剤、酸化防止剤、可溶化剤、溶解剤、紫外線吸収剤、香料、色素などが挙げられる。 前記した薬物以外に配合される薬物とは、非ステロイド消炎鎮痛薬に加えて、カプサイシンなどのトウガラシ成分やノニル酸ワニリルアミドなどの温感賦与成分、精油成分、その他の成分(例えば、植物エキス、酢酸トコフェロールなど)などを配合することができる。 貼付剤の粘着層の厚みは、好ましくは20〜300μmであり、この範囲で貼付剤として適切な感圧接着性を保つのに有効である。 貼付剤の支持体とは、前記した粘着層に積層して設けられる層であり、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル‐塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ナイロン、セルロース誘導体、ポリウレタンなどの合成樹脂を使用することができ、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体や、織布、編布、不織布などの布帛、又はこれらの積層体を用いることができる。支持体は、編布のような伸縮性を有するものが皮膚に対する付着性に優れる貼付剤とする上で好ましい。また、支持体は、自己支持性を有するものが貼付剤をハンドリングする上で好ましい。 貼付剤の保護フィルムは、粘着層に仮着され、貼付剤の使用に際して除去されるライナーであり、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、紙、或いはこれらの積層体からなるシート状材料があげられ、表面にシリコーンコーティングなどの離型処理を施したものが好ましく使用される。 溶融塗布法: 溶融塗布法は、先ず、エステル化抑制剤と、粘着剤、粘着付与樹脂、可塑剤などの粘着層の成分を所定の割合で、不活性雰囲気下に混合して溶融させる。その後、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントールを前記の溶融物に加え、混合して均一な溶融物とする。混合温度は例えば100〜220℃であり、混合の所要時間は例えば30〜120分間である。 次に、この溶融物を保護フィルム上に所定の厚みで塗布し、その上に支持体を積層した後、所定の大きさに裁断して貼付剤とする。 溶液塗布法: 溶液塗布法は、先ず、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤と、粘着剤、粘着付与樹脂、可塑剤などの粘着層の成分を所定の割合に対し、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサンなどの適当な溶媒を加え、混合して均一に溶解させる。 次に、この溶液を保護フィルム上に所定の厚みで塗布し、乾燥器中で加熱して塗布した液に含まれる溶媒を加熱して蒸発除去することにより粘着層を形成し、その上に支持体を積層した後、所定の大きさに裁断して貼付剤とする。 本発明を適用した外用剤として、例えば軟膏剤は以下のような製剤である。 軟膏剤は、油性の軟膏基剤中に、少なくとも、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤を含有する。 前記の軟膏剤は、好ましくは実質的に水を含有しない非水系の組成物、医薬製剤であり、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤及び軟膏基剤を配合する。 前記の軟膏基剤は、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、プラスチベース、精製ラノリン、白色ワセリン、脂肪酸トリグリセリド、シリコーンオイル、シリコーンワックス、ミツロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、セレシンなどからなる油性基剤に対し、吸収促進剤、溶解剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定化剤、界面活性剤、その他の添加剤を配合することができる。 前記の溶解剤は、例えばオリブ油、大豆油、トウモロコシ油、ツバキ油、アーモンド油、ゴマ油、テルペン油、パーム油などの植物種、ミンク油、スクワレン、スクワランなどの動物油、脂肪酸エステル類などが挙げられる。 前記の酸化防止剤は、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。 本発明を適用した外用剤として、例えばエアゾール剤は以下のような製剤である。 エアゾール剤は、少なくとも、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤を含有する。 エアゾール剤においても、好ましくは実質的に水を含有しない非水系の組成物、医薬製剤であり、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤に対し、溶解剤、界面活性剤、充填剤などのエアゾール基剤および噴射剤を配合することができる。 以下、外用剤のひとつとして貼付剤に関し、実施例により本発明のエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾール及びこれらによるエステル化抑制方法についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。 実施例1〜6、及び比較例1〜2の貼付剤は、以下のように調製した。 表1及び表3に記載の各成分を所定の量で混合し均一に溶融した(120〜220℃)後、シリコーンコーティングによる離型処理を施したポリエステルフィルムに70cm2あたりの粘着層が1gとなる厚みで均一に塗布し、支持体としてメリヤス編布をその上に貼り合わせ、70cm2の長方形に裁断し、貼付剤とした。 実施例7〜12、及び比較例3〜4の貼付剤は、以下のように調製した。 表2及び表3に記載の各成分を所定の量で均一に混合した(120〜160℃)後、シリコーンコーティングによる離型処理を施したポリエステルフィルムに70cm2あたりの粘着層が1gとなる厚みで均一に塗布し、支持体としてメリヤス編布をその上に貼り合わせ、70cm2の長方形に裁断し、貼付剤とした。 試験例: 長期保存における製剤安定性の良否を確認する方法として、実施例及び比較例で得られた貼付剤をアルミラミネート袋に密封包装し、通常の保存条件よりも過酷な70℃で10日間恒温オーブン中で保存した後、粘着層における薬物とl−メントールのエステル化合物の生成量をHPLC法によって測定した。なお、エステル化合物の生成率は、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬であるケトプロフェン、インドメタシンなどの薬物を配合したモル数と、エステル化合物の生成したモル数とを用いて次式により換算し、その結果を表1〜3に示す。 本発明のエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法は、特に医療分野において広く利用し得るものである。 外用剤中において、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を抑制する、エステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾール。 前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬が、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンからなる群から選択される1つであることを特徴とする請求項1に記載のエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾール。 前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がケトプロフェンであることを特徴とする請求項2に記載のエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾール。 70℃で10日間保存した場合に、非ステロイド系抗炎症薬に対する前記エステル化された化合物の生成モル数の比が0.007以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾール。 外用剤中において、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を抑制する、亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールによるエステル化抑制方法。 前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬が、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンからなる群から選択される1つであることを特徴とする請求項5に記載のエステル化抑制方法。 前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がケトプロフェンであることを特徴とする請求項6に記載のエステル化抑制方法。 70℃で10日間保存した場合に、非ステロイド系抗炎症薬に対する前記エステル化された化合物の生成モル数の比が0.007以下であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のエステル化抑制方法。 【課題】 本発明は、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がl−メントールと共存する組成物において、エステル化合物の生成を効果的に抑制するエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法を提供する点にある。【解決手段】 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールがエステル化合物を生成することを抑制する、エステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールを提供する。また、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールがエステル化合物を生成することを抑制する、亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールによるエステル化抑制方法を提供する。【選択図】なし


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特許公報(B2)_エステル化抑制剤及びエステル化抑制方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_エステル化抑制剤及びエステル化抑制方法
出願番号:2008283699
年次:2014
IPC分類:A61K 47/02,A61K 47/22,A61K 9/70,A61K 45/00,A61K 31/045,A61K 31/192,A61K 31/405,A61P 29/00


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黒川 隆夫 藤井 拓也 鶴田 清美 太田 重雄 堤 信夫 JP 5410071 特許公報(B2) 20131115 2008283699 20081007 エステル化抑制剤及びエステル化抑制方法 久光製薬株式会社 000160522 特許業務法人セントクレスト国際特許事務所 110001047 黒川 隆夫 藤井 拓也 鶴田 清美 太田 重雄 堤 信夫 20140205 A61K 47/02 20060101AFI20140116BHJP A61K 47/22 20060101ALI20140116BHJP A61K 9/70 20060101ALI20140116BHJP A61K 45/00 20060101ALI20140116BHJP A61K 31/045 20060101ALI20140116BHJP A61K 31/192 20060101ALI20140116BHJP A61K 31/405 20060101ALI20140116BHJP A61P 29/00 20060101ALN20140116BHJP JPA61K47/02A61K47/22A61K9/70 401A61K45/00A61K31/045A61K31/192A61K31/405A61P29/00 A61K 9/00− 9/72 A61K47/00−47/48 特開平02−142727(JP,A) 国際公開第2008/069283(WO,A1) 特開2006−328015(JP,A) 特開2006−151836(JP,A) 特開2002−128701(JP,A) 国際公開第96/008245(WO,A1) 特開平09−012452(JP,A) 特開平11−079979(JP,A) 5 2010090099 20100422 10 20110808 辰己 雅夫 本発明は、外用剤中における、非ステロイド系抗炎症薬の保存安定性を向上させるエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法に関する。 例えば消炎鎮痛剤として、イブプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、フェルビナクなどのカルボキシル基を有する抗炎症薬を含有し、さらに、清涼感を付与するためにl−メントールのような水酸基を有する化合物を含有する貼付剤が提供されている。 このような貼付剤においては、製剤の保存中に、薬物の有するカルボキシル基と水酸基を有する化合物とがエステル化合物を生成し、特に非水系の貼付剤において薬物の含有量が経時的に減少することが知られている。 そこで、薬物の経時的な含有量の減少を防ぐため、以下のように特定の化合物を配合することによって前記エステル化合物の生成を抑制することが検討されている。 例えば、特許文献1は、分子中にカルボン酸基を有する抗炎症薬(例えば、ケトプロフェン)、l−メントール、脂肪酸金属塩を含有する外用貼付剤が開示され、外用貼付剤に脂肪酸金属塩を含有させることにより、薬物とl−メントールとのエステル化合物の生成が抑制され、安定性に優れ、しかも薬物の吸収性にも優れる外用貼付剤が開示されている。 また、特許文献2は、インドメタシン、及びその溶解剤としてポリエチレングリコールを含有する貼付剤が開示され、特定のポリエチレングリコールを使用することによってエステル化反応が抑制された安定な貼付剤が記載されている。 ところが、これまで開示されている脂肪酸金属、ポリエチレングリコールなどによるエステル化防止技術は未だ十分なものとは言えず、薬物とl−メントールのエステル化反応を更に抑制する技術が求められていた。 一方、分子中にイオウ原子を有する酸化防止剤(抗酸化剤)は、医薬製剤や食品分野などにおいて薬剤等の酸化を防止し、保存安定性を向上させるために広く用いられている。 例えば特許文献3は、外用消炎鎮痛剤組成物の発明であって、非ステロイド性消炎鎮痛剤(例えば、ケトプロフェン)、抗酸化剤として亜硫酸水素ナトリウム、2−メルカプトベンズイミダゾールなどについて開示し、剤形は、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、貼付剤、エアゾール剤などを記載し、必要に応じて添加される成分としてl−メントール、を記載している。しかし、薬物である非ステロイド消炎鎮痛剤とl−メントールとのエステル化を抑制し、薬物を安定化する点については何ら開示も示唆もされていない。 また、特許文献4においても、ジクロフェナクナトリウムを含有する乳化外用剤が開示され、l−メントール、亜硫酸水素ナトリウムを含有する乳化外用剤の実施例を開示しているが、同様に薬物であるジクロフェナクナトリウムとl−メントールとのエステル化を抑制する点については開示も示唆もされていない。 特許文献5は、インドメタシンの安定化剤及び着色防止剤としてチオ硫酸ナトリウムを配合したインドメタシン含有の外用剤組成物を開示し、チオ硫酸ナトリウムを配合することによって安定性及び着色防止効果に優れたインドメタシン含有外用剤組成物が提供される。ただし、チオ硫酸ナトリウムがエステル化合物の生成を抑制するなどの記載はない。 再公表特許WO96/08245(A1)特開2001−302502特開2002−128701特開平9−012452特開2000−072672 本発明の課題は、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がl−メントールと共存する組成物において、エステル化合物の生成を効果的に抑制するエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法を提供する点にある。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がl−メントールと組成物中に共存した場合、平衡反応が進行し、エステル化合物が生じる。この反応は、組成物の保存中において進行する他、特に組成物の製造中における熱負荷によって促進して生成される。本発明者らは、前記のようなエステル化合物生成を抑制すべく鋭意研究を行った結果、意外なことに、亜硫酸水素ナトリウム、2−メルカプトベンズイミダゾール等を配合することによりエステル化合物の生成が極めて抑制されることを見出した。 すなわち、本発明は、非水系の外用剤中において、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を抑制するエステル化抑制剤であって、亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールからなり、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と前記l−メントールと前記エステル化抑制剤との質量比が1:1〜2:0.05〜0.5となる範囲で用いられることを特徴とするエステル化抑制剤を提供する。 また、本発明は、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬が、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンからなる群から選択される1つであることを特徴とするエステル化抑制剤を提供する。 さらに本発明は、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がケトプロフェンであることを特徴とするエステル化抑制剤を提供する。 また本発明は、70℃で10日間保存した場合に、非ステロイド系抗炎症薬に対する前記エステル化された化合物の生成モル数の比が0.007以下であることを特徴とするエステル化抑制剤を提供する。 さらに本発明は、前記本発明のエステル化抑制剤を用い、非水系の外用剤中において、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と前記l−メントールとのエステル化を抑制するエステル化抑制方法であって、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と前記l−メントールと前記エステル化抑制剤との質量比が1:1〜2:0.05〜0.5となる範囲で前記エステル化抑制剤を用いることを特徴とするエステル化抑制方法を提供する。 以下、本発明のエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法について詳細に説明する。 本発明でいうエステル化抑制剤は、亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールが用いられる。 亜硫酸水素ナトリウムは、ナトリウムの亜硫酸水素塩であり、化学式NaHSO3であらわされる化合物であり、重亜硫酸ナトリウムとも呼ばれる。亜硫酸水素ナトリウムは、一般的には抗酸化剤として食品、医薬品などに配合される。 2−メルカプトベンズイミダゾールも一般的には抗酸化剤として外用剤等に配合され、ゴム工業においては老化防止剤と呼ばれることがある。 亜硫酸水素ナトリウム及び2−メルカプトベンズイミダゾールを配合することによって、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を優れて抑制することができる。 また、本発明でいう分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とは、例えば、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンなどが好ましい。また、これらの薬物は薬学的に許容できる塩であることもできる。薬学的に許容できる塩は、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムなどとの塩である。 本発明においては、ケトプロフェンのような熱負荷や光に不安定な薬物が特に好ましく使用される。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と、l−メントールと、エステル化抑制剤との質量比が、それぞれ1:0.2〜5:0.01〜1の範囲で用いられることが好ましく、さらには、1:1〜2:0.05〜0.5で用いられることがより好ましい。この所定の範囲で各成分を用いることにより、エステル化合物の生成量を極めて低く抑制することができる。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤を混合し、70℃で10日間保存した場合、生成するエステル化合物の割合は、混合した当初の非ステロイド系抗炎症薬のモル数に対するモル数の比として0.007以下(百分率であらわすと0.7%以下)となる。 亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールによって前記エステル化合物の生成が抑制される理由は明らかでないが、製造工程での熱負荷等によって生じる何らかのラジカル種またはそれを経由して生じる化学種が薬物のエステル化合物の生成に関与している可能性が考えられ、エステル化抑制剤がかかる生成反応を効果的に抑制するものと推察される。 本発明のエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールは、組成物に配合して使用することができる。すなわち、エステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールは、エステル結合が生じる状況、言い換えれば分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとが存在する系に共存させることができ、それは、水系の組成物、非水系の組成物を問わず用いることができるが、特に本発明は非水系の組成物において有効であり、例えば、非水系の医薬組成物または製剤に使用することができる。非水系の医薬製剤としては、特に限定はされないが、例えば、貼付剤、軟膏剤、エアゾール剤が挙げられ、外用剤として特に貼付剤において有効である。 なお、本発明でいう非水系の組成物とは、実質的に水分を含有しない組成物であり、組成物中の水分が5質量%以下、好ましくは3質量%以下である組成物をいう。 本発明を適用した外用剤として、例えば貼付剤は以下のような製剤である。 貼付剤は、リザーバー型、マトリックス型いずれのタイプの使用も可能であるが、マトリックス型であれば、通常、支持体と、少なくともその片面に薬物を含有する粘着層と、使用直前までその粘着層を保護する保護フィルムを有する。 前記粘着層は、少なくとも、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール及びエステル化抑制剤を含有し、更に感圧接着性を付与するために粘着剤を含有する。 分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬はその効果を示す濃度であれば特に限定することなく粘着層に配合されるが、粘着層全体に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜8質量%、さらに好ましくは0.3〜5質量%であれば、抗炎症作用による治療効果を得ることができる。 前記薬物の含有濃度が0.1質量%未満であると十分な治療効果が得られず、濃度を増すとこの効果が高まるが、10質量%を超えると粘着層の粘着性を低下させ貼付剤の皮膚に対する付着性を低下させる場合がある。 l−メントールは、求める清涼感に応じて配合されたり、薬物の溶解、吸収促進などの目的で配合され、粘着層全体に対して0.5〜10質量%で配合される。 エステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールは、粘着層全体に対して0.01〜2質量%で配合されることが好ましい。0.01質量%より少ないと、エステル化合物生成の抑制効果が不十分であり、濃度を増すと抑制効果が高まるが、2質量%を超えて配合しても効果は格段に増さない。 粘着層に配合する粘着剤は、通常貼付剤に使用できる粘着剤であれば特に限定されず、アクリル系粘着剤や、天然又は合成ゴムを主体とするゴム系の粘着剤を用いることができる。特にカルボキシル基や水酸基などの反応性官能基を有さないポリマーであれば、l−メントール若しくは非ステロイド系抗炎症剤とエステル化を生じないため、より安定的な製剤を得ることができ、この点で反応性官能基を有さない、すなわち無官能のゴム系の粘着剤がより好ましく用いられる。 前記の天然又は合成ゴムとは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(S−I−Sブロック共重合体)、スチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴムから選択される1種又は2種以上が挙げられ、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。天然又は合成ゴムは、粘着層全体に対し10〜40質量%が配合され、10質量%未満であれば感圧接着性が不足し、濃度を増すとこの効果は高まるが、40質量%を超えると貼付剤として適切な感圧接着性が得られなくなる傾向にある。 粘着層は前記粘着剤の他、必要に応じて粘着付与樹脂、軟化剤、その他の添加剤を加えることができる。 前記の粘着付与樹脂とは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリテルペン樹脂、ロジンエステル樹脂、水素添加ロジンエステル樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂などが好ましい。粘着付与樹脂は、粘着層全体に対して10〜40質量%が配合され、10質量%未満であれば粘着性付与する効果が不足し、濃度を増すとこの効果は高まるが、40質量%を超えると貼付剤として適切な感圧接着性が得られなくなる傾向にある。 前記の軟化剤とは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン、動植物油などが好ましい。軟化剤は、粘着層全体に対して30〜70質量%が配合され、この範囲では適切な感圧接着性を付与することができる。 前記のその他の添加剤とは、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例示するとすれば、前記した薬物以外に配合される薬物、吸収促進剤、充填剤、酸化防止剤、可溶化剤、溶解剤、紫外線吸収剤、香料、色素などが挙げられる。 前記した薬物以外に配合される薬物とは、非ステロイド消炎鎮痛薬に加えて、カプサイシンなどのトウガラシ成分やノニル酸ワニリルアミドなどの温感賦与成分、精油成分、その他の成分(例えば、植物エキス、酢酸トコフェロールなど)などを配合することができる。 貼付剤の粘着層の厚みは、好ましくは20〜300μmであり、この範囲で貼付剤として適切な感圧接着性を保つのに有効である。 貼付剤の支持体とは、前記した粘着層に積層して設けられる層であり、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル‐塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ナイロン、セルロース誘導体、ポリウレタンなどの合成樹脂を使用することができ、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体や、織布、編布、不織布などの布帛、又はこれらの積層体を用いることができる。支持体は、編布のような伸縮性を有するものが皮膚に対する付着性に優れる貼付剤とする上で好ましい。また、支持体は、自己支持性を有するものが貼付剤をハンドリングする上で好ましい。 貼付剤の保護フィルムは、粘着層に仮着され、貼付剤の使用に際して除去されるライナーであり、貼付剤のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、紙、或いはこれらの積層体からなるシート状材料があげられ、表面にシリコーンコーティングなどの離型処理を施したものが好ましく使用される。 溶融塗布法: 溶融塗布法は、先ず、エステル化抑制剤と、粘着剤、粘着付与樹脂、可塑剤などの粘着層の成分を所定の割合で、不活性雰囲気下に混合して溶融させる。その後、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントールを前記の溶融物に加え、混合して均一な溶融物とする。混合温度は例えば100〜220℃であり、混合の所要時間は例えば30〜120分間である。 次に、この溶融物を保護フィルム上に所定の厚みで塗布し、その上に支持体を積層した後、所定の大きさに裁断して貼付剤とする。 溶液塗布法: 溶液塗布法は、先ず、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤と、粘着剤、粘着付与樹脂、可塑剤などの粘着層の成分を所定の割合に対し、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサンなどの適当な溶媒を加え、混合して均一に溶解させる。 次に、この溶液を保護フィルム上に所定の厚みで塗布し、乾燥器中で加熱して塗布した液に含まれる溶媒を加熱して蒸発除去することにより粘着層を形成し、その上に支持体を積層した後、所定の大きさに裁断して貼付剤とする。 本発明を適用した外用剤として、例えば軟膏剤は以下のような製剤である。 軟膏剤は、油性の軟膏基剤中に、少なくとも、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤を含有する。 前記の軟膏剤は、好ましくは実質的に水を含有しない非水系の組成物、医薬製剤であり、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤及び軟膏基剤を配合する。 前記の軟膏基剤は、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、プラスチベース、精製ラノリン、白色ワセリン、脂肪酸トリグリセリド、シリコーンオイル、シリコーンワックス、ミツロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、セレシンなどからなる油性基剤に対し、吸収促進剤、溶解剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定化剤、界面活性剤、その他の添加剤を配合することができる。 前記の溶解剤は、例えばオリブ油、大豆油、トウモロコシ油、ツバキ油、アーモンド油、ゴマ油、テルペン油、パーム油などの植物種、ミンク油、スクワレン、スクワランなどの動物油、脂肪酸エステル類などが挙げられる。 前記の酸化防止剤は、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。 本発明を適用した外用剤として、例えばエアゾール剤は以下のような製剤である。 エアゾール剤は、少なくとも、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤を含有する。 エアゾール剤においても、好ましくは実質的に水を含有しない非水系の組成物、医薬製剤であり、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬、l−メントール、エステル化抑制剤に対し、溶解剤、界面活性剤、充填剤などのエアゾール基剤および噴射剤を配合することができる。 以下、外用剤のひとつとして貼付剤に関し、実施例により本発明のエステル化抑制剤としての亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾール及びこれらによるエステル化抑制方法についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。 実施例1〜6、及び比較例1〜2の貼付剤は、以下のように調製した。 表1及び表3に記載の各成分を所定の量で混合し均一に溶融した(120〜220℃)後、シリコーンコーティングによる離型処理を施したポリエステルフィルムに70cm2あたりの粘着層が1gとなる厚みで均一に塗布し、支持体としてメリヤス編布をその上に貼り合わせ、70cm2の長方形に裁断し、貼付剤とした。 実施例7〜12、及び比較例3〜4の貼付剤は、以下のように調製した。 表2及び表3に記載の各成分を所定の量で均一に混合した(120〜160℃)後、シリコーンコーティングによる離型処理を施したポリエステルフィルムに70cm2あたりの粘着層が1gとなる厚みで均一に塗布し、支持体としてメリヤス編布をその上に貼り合わせ、70cm2の長方形に裁断し、貼付剤とした。 試験例: 長期保存における製剤安定性の良否を確認する方法として、実施例及び比較例で得られた貼付剤をアルミラミネート袋に密封包装し、通常の保存条件よりも過酷な70℃で10日間恒温オーブン中で保存した後、粘着層における薬物とl−メントールのエステル化合物の生成量をHPLC法によって測定した。なお、エステル化合物の生成率は、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬であるケトプロフェン、インドメタシンなどの薬物を配合したモル数と、エステル化合物の生成したモル数とを用いて次式により換算し、その結果を表1〜3に示す。 本発明のエステル化抑制剤及びエステル化抑制方法は、特に医療分野において広く利用し得るものである。 非水系の外用剤中において、分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬とl−メントールとのエステル化を抑制するエステル化抑制剤であって、亜硫酸水素ナトリウム及び/または2−メルカプトベンズイミダゾールからなり、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と前記l−メントールと前記エステル化抑制剤との質量比が1:1〜2:0.05〜0.5となる範囲で用いられることを特徴とするエステル化抑制剤。 前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬が、ジクロフェナク、アンフェナク、インドメタシン、アセメタシン、エトドラク、スリンダク、ナブメトン、モフェゾラク、フェルビナク、アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェンからなる群から選択される1つであることを特徴とする請求項1に記載のエステル化抑制剤。 前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬がケトプロフェンであることを特徴とする請求項2に記載のエステル化抑制剤。 70℃で10日間保存した場合に、非ステロイド系抗炎症薬に対する前記エステル化された化合物の生成モル数の比が0.007以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエステル化抑制剤。 請求項1〜4のいずれか1項に記載のエステル化抑制剤を用い、非水系の外用剤中において、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と前記l−メントールとのエステル化を抑制するエステル化抑制方法であって、前記分子中にカルボキシル基を有する非ステロイド系抗炎症薬と前記l−メントールと前記エステル化抑制剤との質量比が1:1〜2:0.05〜0.5となる範囲で前記エステル化抑制剤を用いることを特徴とするエステル化抑制方法。


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