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タイトル:公開特許公報(A)_S−エクオールの製法およびそれに用いる微生物
出願番号:2008276667
年次:2010
IPC分類:C12N 1/20,C12P 17/06,C12N 15/09,C12R 1/01


特許情報キャッシュ

石田 均司 丸尾 俊也 山田 勝重 JP 2010104241 公開特許公報(A) 20100513 2008276667 20081028 S−エクオールの製法およびそれに用いる微生物 静岡県公立大学法人 507219686 フジッコ株式会社 391003129 西藤 征彦 100079382 石田 均司 丸尾 俊也 山田 勝重 C12N 1/20 20060101AFI20100416BHJP C12P 17/06 20060101ALI20100416BHJP C12N 15/09 20060101ALN20100416BHJP C12R 1/01 20060101ALN20100416BHJP JPC12N1/20 AC12P17/06C12N15/00 AC12P17/06C12R1:01 7 OL 15 4B024 4B064 4B065 4B024AA05 4B024BA77 4B024CA01 4B024CA09 4B024CA11 4B024CA20 4B064AC13 4B064CA02 4B064DA01 4B064DA10 4B065AA01X 4B065AC14 4B065BB27 4B065CA05 4B065CA18 4B065CA41 4B065CA44 本発明は、S−エクオールの製法およびそれに用いる微生物に関するものである。 大豆に含まれるイソフラボン(大豆イソフラボン)は、女性ホルモン作用や抗酸化作用を有しており、大豆イソフラボンを摂取すると、乳がん、前立腺がん、女性の更年期障害等の予防・症状緩和が認められるとの報告が多数なされている。エクオールは、大豆イソフラボンの腸内代謝産物であり、もとのイソフラボンよりも女性ホルモン作用や抗酸化作用が強いことが知られている(非特許文献1および2参照)。また、エクオールには光学異性体(S体とR体)が存在し、S体かR体かによって、エストロゲン受容体α,βへの結合活性が異なることが知られており、その違いから、S体のエクオール(S−エクオール)のほうが生体には有用であると考えられている(非特許文献3参照)。 今日、植物等の食材にエクオールがそのまま含まれているとの報告は殆どないが、例えば、大豆を食物として摂取すると、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが、体内の腸内細菌によって発酵され、その活性型代謝産物としてエクオールが生成されることが知られている。しかし、人間の場合、イソフラボンの代謝には個人差があり、上記のようなエクオール産生能を有する腸内細菌を保有する人は少なく、その保有率は、日本人で約5割、欧米人で約3割程度であることが研究によりわかってきている(非特許文献4および5参照)。そのため、エクオール産生菌を保有しない人の場合、大豆(大豆加工食品を含む)を摂取しても、所望の女性ホルモン作用や抗酸化作用の効果は期待できないと考えられる。このような人において所望の効果を発現させるためには、エクオールそのものを摂取させればよいと考えられる。 以上のことから、近年、ダイゼインに、乳酸菌等の細菌を作用させ、体外的にエクオールを生成する研究が各種なされている。このように体外的に生成されたエクオールを摂取することにより、エクオール産生能を有する腸内細菌を保有する人でなくとも、容易にエクオールを摂取することができるようになる(例えば、特許文献1〜4参照)。特許第3864317号公報WO99/0392公報特開2006−204296公報特表2006−504409公報KD Setchell et al.,(2002)J Nutr,132,3577−3584N Sathyamoorthy and TT Wang(1997)Eur J Cancer,33,2384−2389RS Muthyala et al.,(2004)Bioorg Med Chem,12,1559−1567Y Arai et al.,(2000)J Epidemiol,10,127−135KD Setchell et al.,(2003)J Nutr,133,1027−1035 ところで、大豆イソフラボンには、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、およびこれらに糖が付加した配糖体(上記3つのイソフラボンに対し、それぞれ3種類ずつ)が存在する。このように、大豆イソフラボンは、ダイゼインをはじめとし、12種類が存在する。これに対し、上記特許文献に開示のエクオール生成方法は、その殆どがダイゼインを基質とするエクオールの生成法であり、例えばグリシテインおよびその配糖体を基質として体外的にエクオールを生成する方法は、いまだ確立されていない。 グリシテインおよびその配糖体は、大豆種子中のイソフラボンの約10%を占め、大豆胚軸中においては、その胚軸中のイソフラボンの約40%を占める。そのため、これらを基質として用いた場合であってもエクオール(特に、生体に有用であるS−エクオール)を生成することができれば、大豆イソフラボンを基質とするエクオール産生能を高めることができるため、その製法の確立が期待されている。 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、従来とは異なる方法で、体外的にS−エクオールを生成することができるS−エクオールの製法およびそれに用いる微生物をその目的とする。 上記の目的を達成するために、本発明は、6−ヒドロキシダイゼインを、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens) により発酵させ、S−エクオールを生成するS−エクオールの製法を第一の要旨とする。 また、本発明は、ダイゼイン、ジヒドロダイゼインおよび6−ヒドロキシダイゼインからなる群から選ばれた少なくとも一種のイソフラボンを資化してS−エクオールを産生する能力を有するアドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(Adlercreutzia equolifaciens KI0628 ,NITE P-527)を第二の要旨とする。 すなわち、ダイゼインを基質とするエクオールの生成法は、先に述べたように、各種乳酸菌等を作用させる方法等が既に確立されているが、例えばグリシテインおよびその配糖体を基質として体外的にエクオールを生成する方法は、いまだ確立されていないのが現状である。一方、グリシテインおよびその配糖体を、各種微生物や酵素を作用させることにより、体外的に、6−ヒドロキシダイゼインを生成する方法は既に確立されている(例えば、HG Hur and F Rafii(2000)FEMS Microbiol Lett,192,21−25等を参照)。この知見に基づき、本発明者らは、6−ヒドロキシダイゼインを基質としてエクオールを生成する能力を有する微生物が、動物の腸内細菌にあるのではないかと想起し、各種実験を重ねた。その結果、本発明者らは、各種腸内細菌のなかから分離し選定されたアドレクラウチア・エクオーリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens) に、その能力があることを突き止めた。また、本発明者らは、上記アドレクラウチア・エクオーリファシエンスにより6−ヒドロキシダイゼインを発酵させて得られたエクオールが、生体に有用なS−エクオールのみであることを突き止めた。上記エクオールがS体であることは、例えば、クロマトグラムによる溶出時間の違いによって確認することができる。そして、このように6−ヒドロキシダイゼインからS−エクオールを生成する方法が確立されたことにより、グリシテインおよびその配糖体から、体外的にS−エクオールを生成する方法も確立されるようになる。しかも、アドレクラウチア・エクオーリファシエンスは、各種実験により、ダイゼインを基質としてもS−エクオールを生成する能力を有することが明らかになったことから、本発明の製法を適用することにより、S−エクオールを効率良く生成することができるようになることを見いだし、本発明に到達した。 以上のように、本発明のS−エクオールの製法は、6−ヒドロキシダイゼインを、アドレクラウチア・エクオーリファシエンスにより発酵させることにより行われる。これにより、従来確立されていなかった、6−ヒドロキシダイゼインからS−エクオールを体外的に生成する方法を確立することができ、さらに、グリシテインおよびその配糖体から体外的に6−ヒドロキシダイゼインを生成する方法と組み合わせることにより、従来確立されていなかったグリシテインおよびその配糖体から体外的にS−エクオールを生成する方法も確立することができる。そして、本発明の製法により得られたS−エクオールは、骨粗鬆症、前立腺がん、女性の更年期障害等の予防およびその症状の緩和に優れた効果を発揮することができる。 特に、上記アドレクラウチア・エクオーリファシエンスが、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(Adlercreutzia equolifaciens KI0628 ,NITE P-527)であると、S−エクオールの生成効率がより優れるようになる。 また、上記6−ヒドロキシダイゼインが、グリシテインをユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum) により発酵させて得られたものであると、グリシテインからの6−ヒドロキシダイゼイン生成が効率良くなされ、6−ヒドロキシダイゼインを基質としてS−エクオールを生成する本発明の製法を、より有利に行うことができる。 さらに、上記グリシテインが、大豆由来のイソフラボンであると、本発明の製法への適用により、安価にS−エクオールを生成することができる。 また、上記6−ヒドロキシダイゼインとともに、ダイゼインを基質とし、上記発酵を行うと、ダイゼインからもS−エクオールを生成することができ、S−エクオールの生成効率がより優れるようになる。 さらに、上記ダイゼインが、大豆由来のイソフラボンであると、本発明の製法への適用により、安価にS−エクオールを生成することができる。 なお、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(Adlercreutzia equolifaciens KI0628 ,NITE P-527)は、本出願人が新たに発見した新規微生物であり、この菌株は、ダイゼイン、ジヒドロダイゼインおよび6−ヒドロキシダイゼインからなる群から選ばれた少なくとも一種のイソフラボンを資化してS−エクオールを産生する能力を有する。そのため、上記のように、本発明のS−エクオールの製法に有利に用いることができる。また、この菌株は、ダイゼインやジヒドロダイゼインのみを資化してS−エクオールを産生することも可能である。 つぎに、本発明の実施の形態について説明する。 本発明のS−エクオールの製法は、先に述べたように、6−ヒドロキシダイゼインを、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens) により発酵させて行うことを特徴としている。なお、上記発酵により、6−ヒドロキシダイゼインが直ちにS−エクオールに変換されるのではなく、下記の化学式で示されるエクオールの生成経路からも明らかなように、6−ヒドロキシダイゼインは、中間代謝物であるダイゼイン, ジヒドロダイゼイン(DHD)を経て、S−エクオールに変換される。なお、本発明の製法により得られたエクオールがS体のエクオールであることは、例えば、クロマトグラムによる溶出時間の違いによって確認することができる。 また、本発明のS−エクオールの製法では、6−ヒドロキシダイゼインとともに、ダイゼイン, ジヒドロダイゼイン(DHD)を基質として用いることもできる。特に、ダイゼインは、大豆中にもそのまま含まれているイソフラボンであり、また、市販品としての入手も容易であるため、上記6−ヒドロキシダイゼインとともにダイゼインを併用することにより、S−エクオールの生成をより有利に行うことができるようになる。なお、大豆中には、ダイゼインのほか、ダイゼインの配糖体も含まれるが、各種微生物や酵素を作用させることにより、上記配糖体から糖を外すことができ、これにより、上記配糖体を容易にダイゼインに変換することができる。このように、上記ダイゼインが、大豆由来のイソフラボンであると、本発明の製法への適用により、安価にS−エクオールを生成することができるため、好ましい。 ところで、本発明のS−エクオールの製法において基質として用いられる6−ヒドロキシダイゼインは、下記の化学式で示される生成経路からも明らかなように、グリシテインを変換することにより得ることができる。そして、この変換は、好ましくは、グリシテインを、ユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum) により発酵させることにより行われる。すなわち、ユーバクテリウム・リモサムは、グリシテインから効率良く6−ヒドロキシダイゼインを生成する能力を有することから、上記発酵により、6−ヒドロキシダイゼインを基質としてS−エクオールを生成する本発明の製法を、より有利に行うことができるようになる。 なお、上記グリシテインは、大豆中にそのまま含まれているイソフラボンであり、また、市販品としての入手も可能である。大豆中には、グリシテインのほか、グリシテインの配糖体も含まれるが、各種微生物や酵素を作用させることにより、上記配糖体から糖を外すことができ、これにより、上記配糖体を容易にグリシテインに変換することができる。このように、上記グリシテインが、大豆由来のイソフラボンであると、本発明の製法への適用により、安価にS−エクオールを生成することができるため、好ましい。 また、上記グリシテインおよびその配糖体から6−ヒドロキシダイゼインを生成する工程は、前記の6−ヒドロキシダイゼインからS−エクオールを生成する工程とは別に行うこともできるが、同一培地内で同時に行うことも可能である。また、これらの工程を別に行う場合、6−ヒドロキシダイゼインの生成後、その生成に用いた微生物を殺菌あるいは除去してから、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス、好ましくはアドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(NITE P-527)を加えて培養することが好ましい。なお、アドレクラウチア・エクオーリファシエンスを加える前に、上記6−ヒドロキシダイゼインを抽出し、それを、上記S−エクオール生成の際の基質として用いることもできる。 本発明のS−エクオールの製法に用いられるアドレクラウチア・エクオーリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens) としては、例えば、本出願人が、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託した菌株であるアドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(Adlercreutzia equolifaciens KI0628 ,NITE P-527)、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0634(Adlercreutzia equolifaciens KI0634 ,NITE P-528)、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス YK−12(Adlercreutzia equolifaciens YK-12,NITE P-526)等が用いられる。なかでも、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628は、S−エクオール産性能が最も高いことから、この微生物を使用することにより、S−エクオールの生成効率がより優れるようになり、好ましい。 上記のアドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628から抽出したDNAの、16S rRNA遺伝子の塩基配列は、以下の通りである。〔KI0628株の16S rRNA遺伝子の塩基配列(塩基対:1458bp)〕 TGAACGCTGGCGGCGTGCTTAACACATGCAAGTCGAACGATTAAGACGGCTTCGGYCGTGTATAGAGTGGCGAACGGGTGAGTAACACGTGACCAACCTGCCCCGCGCTCCGGGACAACCGCTGGAAACGGCGGCTAATACCGGATGCTCCGGGGAGGCCCCATGGCCTCCCCGGGAAAGCCCCGACGGCGCGGGATGGGGTCGCGGCCCATTAGGTAGACGGCGGGGTAACGGCCCACCGTGCCCGCGATGGGTAGCCGGACTGAGAGGTCGACCGGCCACATTGGGACTGAGATACGGCCCAGACTCCTACGGGAGGCAGCAGTGGGGAATTTTGCGCAATGGGGGRAACCCTGACGCAGCAACGCCGCGTGCGGGACGAAGGCCTTCGGGTTGTAAACCGCTTTCAGCAGGGAAGACATAGACGGTACCTGCAGAAGAAGCTCCGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATACGTAGGGGGCGAGCGTTATCCGGATTCATTGGGCGTAAAGCGCGCGTAGGCGGCCGCCTAAGCGGAACCTCTAATCCCGGGGCTCAACCTCGGGCCGGGTTCCGGACTGGGCGGCTCGAGTGCGGTAGAGGCAGGCGGAATTCCCGGTGTAGCGGTGGAATGCGCAGATATCGGGAAGAACACCGATGGCGAAGGCAGCCTGCTGGGCCGCCACTGACGCTGAGGCGCGAAAGCTGGGGGAGCGAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCCAGCCGTAAACGATGGACGCTAGGTGTGGGGGGACCATCCCCCCGTGCCGCAGCCAACGCATTAAGCGTCCCGCCTGGGGAGTACGGCCGCAAGGCTAAAACTCAAAGGAATTGACGGGGGCCCGCACAAGCAGCGGAGCATGTGGCTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGGCTTGACATGCGAGTGAAGCCGCGGAGACGCGGTGGCCGAGAGGAGCTCGCGCAGGTGGTGCATGGCTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGATGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCCCGTCCCGTGTTGCCAGCATTGAGTTGGGGACTCGCGGGAGACTGCCGGCGTCAAGCCGGAGGAAGGTGGGGACGACGTCAAGTCATCATGCCCCTTATGCCCTGGGCTGCACACGTGCTACAATGGCCGGTACAGAGGGTTGCCACCCCGCGAGGGGGAGCGGATCCCGGAAAGCCGGTCCCAGTTCGGATCGCAGGCTGCAACCCGCCTGCGTGAAGTCGGAGTTGCTAGTAATCGCGGATCAGCATGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACACACCGCCCGTCACACCACCCGAGTCGTCTGCACCCGAAGCCGCCGGCCGAACCCTTCTGGGGCGGAGGCGTCGAAGGTGTGGAGGGTAAGGGGGGTGAAGTCGTAACAAGGTAGCCGTACCGGAAGG 上記塩基配列を、日本DNAデータバンク(DDBJ)の核酸データベースでBLASTプログラムを用いて相同性検索を行ったところ、KI0628株は、アドレクラウチア・エクオーリファシエンスの基準株であるアドレクラウチア・エクオーリファシエンス FJC−B9T (Adlercreutzia equolifaciens FJC-B9T ,Accession No.AB306661)と99. 8%の相同性を示す。また、核酸データベースより入手した、アドレクラウチア(Adlercreutzia) 属と相同性の高い、エガセラ(Eggerthella) 属、デニトロバクテリウム(Denitrobacterium)属、スラキア(Slackia) 属に属する菌種の各基準株の塩基配列を多重整列後、NJ法により分子系統樹を作成したところ、KI0628株は、アドレクラウチア・エクオーリファシエンスの基準株と同じクラスターを形成し、エガセラ属、デニトロバクテリウム属、スラキア属とは別のクラスターを形成する。このような分子系統解析から、KI0628株はアドレクラウチア・エクオーリファシエンスに属するものと判断される。 また、KI0628株の分類学的性質は、以下に示すとおりである。1.グラム陽性桿菌2.カタラーゼ陰性3.運動性なし4.内生胞子なし5.絶対嫌気性6.至適発育温度:37℃7.至適発育pH:7. 08.糖分解性状:L−アラビノース (−) D−キシロース (−) D−グルコース (−) シュクロース (−) L−ラムノース (−) D−ラフィノース (−) D−マンニトール (−) インドール (−) ラクトース (−) マルトース (−) サリシン (−) ゼラチン (−) グリセリン (−) D−セロビオース (−) D−マンノース (−) D−メレチトース (−) D−トレハロース (−) なお、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0634、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス YK−12も、上記アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628と同様、DNAによる菌種の同定により、アドレクラウチア・エクオーリファシエンスに属するものであることが確認されている。 本発明のS−エクオールの製法は、例えば、つぎのようにして行うことができる。 すなわち、まず、一般的な嫌気性菌の培養に用いられる培地(例えば、Difco社製のBHI培地、日水盤薬社製のGAM培地等)を殺菌後、その培地に、6−ヒドロキシダイゼイン溶液を添加する。続いて、この培地にアドレクラウチア・エクオーリファシエンスを植菌し、30〜50℃で1〜10日間嫌気的に培養して発酵を促した後、抽出を行うことにより、目的とするS−エクオールを生成することができる。 また、上記6−ヒドロキシダイゼイン溶液とともに、ダイゼイン溶液を添加し、上記発酵を行うと、S−エクオールの生成効率がより優れるようになる。 上記のようにして得られたS−エクオールは、医薬品ないしサプリメントとして提供する場合、その製剤化には、通常製剤化に用いられる各種の成分が使用され、例えば、デンプン、デキストリン、乳糖、コーンスターチ、無機塩類等が用いられる。 また、上記医薬品ないしサプリメントとして提供する際の剤型としては、例えば、アンプル、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、輸液、ドリンク剤等があげられる。 さらに、上記のようにして得られたS−エクオールは、飲食品に添加することにより、飲食品に関与させた形態としても提供することができる。上記飲食品としては、例えば、健康食品、清涼飲料、お茶、ミルク、プリン、ゼリー、飴、ガム、ヨーグルト、チョコレート、スープ、クッキー、スナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、パン、ケーキ、シュークリーム、ハム、ミートソース、カレー、シチュー、チーズ、バター、ドレッシング等があげられる。 なお、上記製法では、培地や基質等からS−エクオールの抽出を行っているが、最終製品である医薬品、サプリメント、飲食品等に、上記培地等が含まれていてもよい場合、前記アドレクラウチア・エクオーリファシエンスによる発酵後、その培地ごと上記最終製品の材料に用いることができる。また、上記製法では、効率良くS−エクオールを生成するため、実験に汎用される培地が用いられているが、上記のように培地ごと最終製品の材料に用いる場合、食用に適した材料(ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、無機塩類、ツイーン80、牛乳、脱脂粉乳、豆乳、野菜ジュース、アミノ酸、糖質等。また、必要に応じて、pH調節剤、還元物質等)を用いることが好ましい。 つぎに、実施例について説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。 まず、実施例に先立ち、下記に示すように、基質溶液である6−ヒドロキシダイゼイン溶液およびダイゼイン溶液を調製した。〔6−ヒドロキシダイゼイン溶液の調製〕 6−ヒドロキシダイゼイン(EXTRASYNTHESE社製(フランス)、4’, 6, 7−トリヒドロキシイソフラボン)1.2mgを、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液1.5mlに溶解し、6−ヒドロキシダイゼイン溶液を調製した。〔ダイゼイン溶液の調製〕 ダイゼイン(フジッコ社製(大豆由来))1.2mgを、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液1.5mlに溶解し、ダイゼイン溶液を調製した。 Difco社製のBHI培地に0.05%のシステイン塩酸塩を加えて殺菌し、培地(液体培地)を調製した。この培地1mlに対し、上記調製の6−ヒドロキシダイゼイン溶液またはダイゼイン溶液5μlを添加した後、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(Adlercreutzia equolifaciens KI0628 ,NITE P-527)を植菌(生菌数:1×106 )し、37℃で3日間、アネロパックケンキ(三重ガス化学社製)を用いて嫌気的に培養した。上記培養により、培地中の基質(6−ヒドロキシダイゼインまたはダイゼイン)の発酵を促した後、上記培地に対し1.5倍量の酢酸エチルを加えて2回の抽出を行い、その酢酸エチル層を減圧遠心濃縮乾固した。このようにして得られた乾固物を、50%アセトニトリル水溶液8mlに溶解した。この溶液を試料とし、液体クロマトグラフ−タンデム質量分析装置(LC−MS/MS)(API−2000、アプライドバイオシステムズ社製)による分析を行い、スタンダード溶液の分析結果より、上記試料1ml当たりに含まれる各代謝物量(ng/ml)(培地に添加した基質500ngに対し、その基質が上記発酵により変換された結果得られた各代謝物の量)を定量した。 アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628に代えて、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0634(Adlercreutzia equolifaciens KI0634 ,NITE P-528)を植菌した。それ以外は、実施例1と同様にして発酵を行い、試料1ml当たりに含まれる各代謝物量(ng/ml)を定量した。 アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628に代えて、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス YK−12(Adlercreutzia equolifaciens YK-12,NITE P-526)を植菌した。それ以外は、実施例1と同様にして発酵を行い、試料1ml当たりに含まれる各代謝物量(ng/ml)を定量した。 上記定量の結果、6−ヒドロキシダイゼインを基質として使用したときの各実施例の代謝物量は、下記の表1に示すとおりである。また、ダイゼインを基質として使用したときの各実施例の代謝物量は、下記の表2に示すとおりである。なお、表1および表2の値は、平均値(N=2)±標準偏差で示す(但し、表1の実施例3のみ、N=1)。また、表において「ND」と記したものは、検出されなかったもの(not detectable)を表す。 上記表1の結果より、6−ヒドロキシダイゼインを基質として使用した場合に、全ての実施例において、エクオールが生成されていることがわかる。特に、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628により発酵を行った実施例1では、そのエクオール生成量が極めて高いことがわかる。なお、最終生成物であるエクオールや、基質として残った6−ヒドロキシダイゼイン以外にも、エクオール生成までの中間代謝物であるダイゼイン, ジヒドロダイゼイン(DHD)も検出されていることがわかる。 また、上記表2の結果より、ダイゼインを基質として使用した場合にも、全ての実施例において、エクオールが生成されていることがわかる。この場合、実施例1よりも、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0634により発酵を行った実施例2のほうが、エクオール生成量が高かった。 一方、各実施例において得られたエクオールがS体かR体かを調べるため、ダイセル化学工業社製のカラム(Chiralcel OJ−RH、4. 6mm×150mm)を使用した液体クロマトグラフ−タンデム質量分析装置(MRMモード)(API−2000、アプライドバイオシステムズ社製)によるクロマトグラムにより、エクオールの溶出時間の違いをみた。 すなわち、図1は、実施例1において得られたエクオールを上記手法により分析したクロマトグラムである。また、図2は、実施例2において得られたエクオールを上記手法により分析したクロマトグラムである。また、図3は、実施例3において得られたエクオールを上記手法により分析したクロマトグラムである。 これに対し、図4は、S−エクオールの純品を上記手法により分析したクロマトグラムである。また、図5は、R−エクオールの純品を上記手法により分析したクロマトグラムである。 上記クロマトグラムの比較からも明らかなように、図4に示すS体のエクオールと、図5に示すR体エクオールとでは、溶出時間が若干違うことがわかる。この結果をもとに、図1〜図3のエクオールのピークをみたところ、図4に示すS体のエクオールと同じ溶出時間でピークがみられることがわかる。このことから、全ての実施例において得られたエクオールがS体であると判断することができる。 なお、上記実施例に使用の6−ヒドロキシダイゼインの試薬(EXTRASYNTHESE社製、4’, 6, 7−トリヒドロキシイソフラボン)に代えて、大豆由来のグリシテインをユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum) により発酵させて得られた6−ヒドロキシダイゼインを用いた場合であっても、上記実施例と同様の結果が得られることを、実験により確認した。本発明の製法の一例により得られたエクオールを分析したクロマトグラムである。本発明の製法の他の例により得られたエクオールを分析したクロマトグラムである。本発明の製法の他の例により得られたエクオールを分析したクロマトグラムである。S−エクオールの純品を分析したクロマトグラムである。R−エクオールの純品を分析したクロマトグラムである。 6−ヒドロキシダイゼインを、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens) により発酵させ、S−エクオールを生成することを特徴とするS−エクオールの製法。 上記アドレクラウチア・エクオーリファシエンスが、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(Adlercreutzia equolifaciens KI0628 ,NITE P-527)である請求項1記載のS−エクオールの製法。 上記6−ヒドロキシダイゼインが、グリシテインをユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum) により発酵させて得られたものである請求項1または2記載のS−エクオールの製法。 上記グリシテインが、大豆由来のイソフラボンである請求項3記載のS−エクオールの製法。 上記6−ヒドロキシダイゼインとともに、ダイゼインを基質とし、上記発酵を行う請求項1〜4のいずれか一項に記載のS−エクオールの製法。 上記ダイゼインが、大豆由来のイソフラボンである請求項5記載のS−エクオールの製法。 ダイゼイン、ジヒドロダイゼインおよび6−ヒドロキシダイゼインからなる群から選ばれた少なくとも一種のイソフラボンを資化してS−エクオールを産生する能力を有することを特徴とするアドレクラウチア・エクオーリファシエンス KI0628(Adlercreutzia equolifaciens KI0628 ,NITE P-527)。 【課題】従来とは異なる方法で、体外的にS−エクオールを生成することができるS−エクオールの製法およびそれに用いる微生物を提供する。【解決手段】6−ヒドロキシダイゼインを、アドレクラウチア・エクオーリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens) により発酵させ、S−エクオールを生成する。【選択図】なし


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