タイトル: | 公開特許公報(A)_イムノクロマトグラフ法による高感度測定キット |
出願番号: | 2008271649 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 33/543,G01N 33/53 |
望月 一芳 岩本 久彦 JP 2010101673 公開特許公報(A) 20100506 2008271649 20081022 イムノクロマトグラフ法による高感度測定キット TANAKAホールディングス株式会社 000217228 佐伯 憲生 100102668 望月 一芳 岩本 久彦 G01N 33/543 20060101AFI20100409BHJP G01N 33/53 20060101ALI20100409BHJP JPG01N33/543 521G01N33/53 UG01N33/543 525E 24 OL 19 本発明は、ビオチンを認識するポリクローナル抗体を固定化したクロマトグラフ媒体、ビオチンが結合した第一試薬、及び、被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬を含有してなるイムノクロマトグラフ法のための測定キット又はクロマトグラフ媒体、及び、それらを用いた測定方法に関する。 抗原とこれに対する抗体による特異的な結合反応を利用して、特定の抗原又は抗体からなる被検出物質を検出する免疫測定法が知られている。標識物質により標識化した抗体又は抗原を試料中の被検出物質に結合させ、被検出物質と複合体を形成した標識物質からのシグナルを測定することで高い感度が得られるため、免疫測定法は広く臨床検査の領域で利用されている。 このような免疫測定法の1つに、イムノクロマトグラフ法がある。免疫測定法では、一般に、被検出物質を、標識物質により標識化した抗体等と反応させた後、被検出物質と複合体を形成した標識物質を、被検出物質と結合していない標識物質から分離する工程が必要となる。イムノクロマトグラフ法は、この工程を、クロマトグラフィーの原理を応用して、固定相とそれに接して連続的に流れる移動相からなる系で行う点に特徴がある。 例えば、イムノクロマトグラフ法により、試料中の抗原からなる被検出物質を検出する場合には、以下のような操作が行われる。(1)被検出物質である抗原に特異的に結合する抗体を第一試薬とし、この第一試薬をクロマトグラフ媒体の所定の部位に所定の形で塗布すること等により、クロマトグラフ媒体に判定部位を形成する。(2)一方、被検出物質と特異的に結合する抗体を第二試薬とし、この第二試薬を酵素等の標識物質により標識、又は、当該第二試薬を不溶性担体等の標識物質に感作することにより、標識試薬を調製する。(3)移動相を構成する展開液を、被検出物質を含む試料及び標識試薬と共に、固定相であるクロマトグラフ媒体上で展開させる。 以上の操作により、試料中に被検出物質が存在する場合には、クロマトグラフ媒体に形成した判定部位において、被検出物質である抗原が、判定部位に固定した第一試薬である抗体と結合することにより捕捉されると共に、この抗原と、標識試薬を構成する抗体とによって抗原−抗体反応が生ずる結果、当該判定部位においては第一試薬(固定化された抗体)−被検出物質(抗原)−標識試薬(標識化された抗体)の三者のサンドイッチ型複合体が生成する。その結果、判定部位に間接的に標識物質が結合することによって所定のシグナルが現れ、これによって被検出物質の検出を行うことができる。 このようなイムノクロマトグラフ法は、特別な装置を必要とせず、操作が簡便であり、短時間で測定可能であることから、臨床検査や研究室における測定試験等で広く利用されている。さらに、近年においては、その簡便な検出方法としての利用価値のみならず、より高感度で信頼性の高い測定データの取得が希求されるに至っている。 しかし、イムノクロマトグラフ法において、低濃度の被検出物質を精度よく検出することは非常に難しい。抗原と抗体との反応を促進するためには、反応時間を長くする、流動性を上げて抗原分子及び抗体分子の衝突確率を高める等の方法が考えられるが、いずれもイムノクロマトグラフ法の原理から見て、採用することは難しい。 即ち、イムノクロマトグラフ法では、標識物質と複合体を形成した被検出物質と、判定部位に固定された第一試薬との反応は、展開液とともに被検出物質が判定部位を移動する極めて短い時間に行われ、反応時間を長くすることは難しいからである。展開液の粘性を高める等の手段により反応時間を延長することも可能ではあるが、移動時間が長くなり短時間で測定可能というイムノクロマトグラフ法の利点が損なわれることとなるだけでなく、標識物質等がクロマトグラフ媒体に非特異的に吸着することにより、バックグラウンドのシグナルが上昇し、良好なシグナルノイズ比(S/N)を得ることが困難となる。 また、イムノクロマトグラフ法では、被検出物質と複合体を形成した標識物質を、被検出物質と結合していない標識物質から分離する方法として、膜状のクロマトグラフ媒体に固定した第一試薬と結合させる手段を採用している。そのために、第一試薬はクロマトグラフ媒体に固定されて分子としての運動が制限されており、抗原分子及び抗体分子の衝突確率を高めることができず、被検出物質との反応の促進が図れない。他の免疫測定法では、第一試薬を固定する固相として流動性のある粒子が多く採用され、被検出物質を含む試料溶液中で撹拌されることにより、第一試薬と被検出物質との結合反応の効率が高められていることに比較して、対照的である。 このような問題を解決するために、イムノクロマトグラフ法において、第一試薬をクロマトグラフ媒体に固定することなく、液相中で被検出物質と接触させることにより結合反応を促進し、測定の高感度化を図ろうとする試みも行われている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、ビオチンを共有結合した第一試薬と、アビジンを判定部位に固定したクロマトグラフ媒体を使用する。ビオチン化第一試薬は、標識化した第二試薬と共に、液相中で被検出物質と結合し、展開液で展開され、クロマトグラフ媒体の判定部位でアビジンにより捕捉される。ビオチンとアビジンの結合は、解離定数Kdが10−15Mであり、通常の抗原抗体反応より100万倍以上強く結合することが知られており、固定化された抗原抗体反応を利用する方法に比べてより効率的に複合体を形成した標識物質を捕捉できるものと期待された。しかし、実際には、目的とする測定の高感度化を達成することはできなかった。そこで、ビオチン−アビジンの結合による捕捉手段に代えて、FITCと抗FITCモノクローナル抗体の使用が提案された(特許文献2参照)。また、ビオチン化第一試薬を効率よく捕捉するための、抗ビオチンモノクローナル抗体の開発も行われた(特許文献3及び4)。しかし、そのいずれも、イムノクロマトグラフ法において、ある程度の効果はあるものの、実用に足る高感度化を達成することは困難であった。特表平5−506095号公報特開2004−219241号公報特開2008−92802号公報特開2008−94721号公報 本発明は、イムノクロマトグラフ法において、良好なS/N比で高感度な測定を達成するために、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を、第一試薬を介して効率よく、クロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉する新たな手段を提供するものである。 本発明者は、イムノクロマトグラフ法において、第一試薬にビオチンを結合したビオチン化第一試薬と、抗ビオチンポリクローナル抗体を判定部位に固定化したクロマトグラフ媒体を用いることにより、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を、効率よく判定部位に捕捉することができることを見出した。また、本発明者は、第一試薬にリンカーを介してビオチンを結合したビオチン化第一試薬と、ビオチン及びリンカーを認識する抗ビオチンポリクローナル抗体を用いることにより、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体の捕捉効率がさらに高まることを見出した。このような新たな捕捉手段を採用することにより、本発明者は、イムノクロマトグラフ法において良好なS/N比で高感度な測定を実現できることを示した。 即ち、本発明は、ビオチンを認識するポリクローナル抗体を固定化したクロマトグラフ媒体、ビオチンが結合した、被検出物質に特異的に結合し得る第一試薬、及び、被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬を含有してなるイムノクロマトグラフ法のための測定キット又はクロマトグラフ媒体に関する。また、本発明は、それらの測定キット又はクロマトグラフ媒体を用いたイムノクロマトグラフ法による測定方法に関する。 より詳細には、本発明は、以下の(1)〜(24)に関する。(1)ビオチンを認識するポリクローナル抗体を固定化したクロマトグラフ媒体、ビオチンが結合した、被検出物質に特異的に結合し得る第一試薬、及び、被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬、を含有してなるイムノクロマトグラフ法のための測定キット。(2)ビオチンと第一試薬とが、リンカーを介して結合したものである(1)に記載の測定キット。(3)ポリクローナル抗体が、免疫用担体にリンカーを介して結合したビオチンを認識するポリクローナル抗体である(1)又は(2)に記載の測定キット。(4)リンカー基が、5〜50個の炭素を含む直鎖状のリンカー基である(2)又は(3)に記載の測定キット。(5)リンカー基が、次の一般式(I) −[−Z−(CH2)n−R−]m− (I)(式中、Zは、NH又はOであり、RはCH2又はCOであり、nは3〜8の整数であり、mは1〜5の整数である。)で表される基である(2)〜(4)のいずれかに記載の測定キット。(6)mが2〜4であり、nが4〜6である(5)に記載の測定キット。(7)ZがNHで、RがCOである(5)又は(6)に記載の測定キット。(8)第一試薬とビオチンとの結合におけるリンカー基と、免疫用担体とビオチンの結合におけるリンカー基が同じである(2)〜(7)のいずれかに記載の測定キット。(9)ビオチンを認識するポリクローナル抗体が固定化され判定部位を形成したクロマトグラフ媒体に、ビオチンが結合した、被検出物質に特異的に結合し得る第一試薬、及び、被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬を、前記判定部位から離隔した位置で前記クロマトグラフ媒体にてクロマト展開可能なように配置してなる、イムノクロマトグラフ法のためのクロマトグラフ媒体。(10)ビオチンと第一試薬とが、リンカーを介して結合したものである(9)に記載のクロマトグラフ媒体。(11)ポリクローナル抗体が、免疫用担体にリンカーを介して結合したビオチンを認識するポリクローナル抗体である(9)又は(10)に記載のクロマトグラフ媒体。(12)リンカー基が、5〜50個の炭素を含む直鎖状のリンカー基である(10)又は(11)に記載のクロマトグラフ媒体。(13)リンカー基が、次の一般式(I) −[−Z−(CH2)n−R−]m− (I)(式中、Zは、NH又はOであり、RはCH2又はCOであり、nは3〜8の整数であり、mは1〜5の整数である。)で表される基である(10)〜(12)のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。(14)mが2〜4であり、nが4〜6である(13)に記載のクロマトグラフ媒体。(15)ZがNHで、RがCOである(13)又は(14)に記載のクロマトグラフ媒体。(16)第一試薬とビオチンとの結合におけるリンカー基と、免疫用担体とビオチンの結合におけるリンカー基が同じである(10)〜(15)のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。(17)ビオチンを認識するポリクローナル抗体が固定化され判定部位を形成したクロマトグラフ媒体で、被検出物質を含む試料、ビオチンが結合した、被検出物質に特異的に結合し得る第一試薬、及び、被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬を、クロマト展開することを特徴とする、イムノクロマトグラフ法による測定方法。(18)ビオチンと第一試薬とが、リンカーを介して結合したものである(17)に記載の測定方法。(19)ポリクローナル抗体が、免疫用担体にリンカーを介して結合したビオチンを認識するポリクローナル抗体である(17)又は(18)に記載の測定方法。(20)リンカー基が、5〜50個の炭素を含む直鎖状のリンカー基である(18)又は(19)に記載の測定方法。(21)リンカー基が、次の一般式(I) −[−Z−(CH2)n−R−]m− (I)(式中、Zは、NH又はOであり、RはCH2又はCOであり、nは3〜8の整数であり、mは1〜5の整数である。)で表される基である(18)〜(20)のいずれかに記載の測定方法。(22)mが2〜4であり、nが4〜6である(21)に記載の測定方法。(23)ZがNHで、RがCOである(21)又は(22)に記載の測定方法。(24)第一試薬とビオチンとの結合におけるリンカー基と、免疫用担体とビオチンの結合におけるリンカー基が同じである(18)〜(23)のいずれかに記載の測定方法。 本発明者は、イムノクロマトグラフ法において、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を、第一試薬を介して効率よく、クロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉する手段を確立するために、鋭意研究を行った。イムノクロマトグラフ法における被検出物質、第一試薬、及び標識試薬として、ヤケヒョウヒダニ抽出物を抗原として特異的に認識するヒトIgE分子、ヤケヒョウヒダニ抽出物、マウス由来の抗ヒトIgE抗体を金コロイドで標識化したものをそれぞれ使用したアッセイ系を例として詳細な検討を行った。 第一試薬のヤケヒョウヒダニ抽出物とビオチンとを結合することにより、第一試薬のビオチン化を行った。一方、ニトロセルロースからなるイムノクロマト媒体の所定の位置に、マウス由来の抗ビオチンモノクローナル抗体又はヤギ由来の抗ビオチンポリクローナル抗体を塗布し判定部位を作成した。使用した抗ビオチンポリクローナル抗体は、市販されているものの他、ビオチン(以下、短鎖ビオチンともいう)又は6−[6−(ビオチニルアミノ)ヘキサノイルアミノ]ヘキサン酸(以下、長鎖ビオチンともいう)を免疫用担体に結合させたものを免疫原として作製したものであった。 被検出物質であるヤケヒョウヒダニ特異的ヒトIgEを、ビオチン化第一試薬及び標識試薬と反応させ、イムノクロマト媒体に展開し、判定部位のシグナルをイムノクロマトリーダーによって数値化した。結果を表1、2及び図1に示す。 陽性検体(ヤケヒョウヒダニ特異的ヒトIgE濃度が2.24IU/mL)の測定値をシグナル、陰性検体(ヤケヒョウヒダニ特異的ヒトIgE濃度が0.15IU/mL)の測定値をノイズとして、S/N比を算出したところ、驚くべきことにイムノクロマト法における固定化抗体としては、抗ビオチンモノクローナル抗体をビオチン化第一試薬の捕捉に用いた場合に比較して、抗ビオチンポリクローナル抗体を使用した場合に良好なS/N比が得られることが明らかとなった。さらに、ポリクローナル抗体においては、ビオチン(短鎖ビオチン)を免疫用担体に結合して作製したポリクローナル抗体よりも、6−[6−(ビオチニルアミノ)ヘキサノイルアミノ]ヘキサン酸(長鎖ビオチン)を免疫原として作成したポリクローナル抗体を、クロマトグラフ媒体の判定部位に固定し捕捉用抗体として用いた方が、S/N比が高く、高感度な測定系を確立できることが明らかとなった。 次に、第一試薬に結合するビオチンについて検討を行った。第一試薬であるヤケヒョウヒダニ抗原に、ビオチン(短鎖ビオチン)、6−(ビオチニルアミノ)ヘキサン酸(以下、中鎖ビオチンともいう)又は6−[6−(ビオチニルアミノ)ヘキサノイルアミノ]ヘキサン酸(長鎖ビオチン)を結合して、ビオチン化第一試薬を作製した。 被検出物質であるヤケヒョウヒダニ特異的ヒトIgEを、ビオチン化第一試薬及び標識試薬と反応させ、イムノクロマト媒体に展開し、判定部位のシグナルをイムノクロマトリーダーによって数値化した。結果を表3、4及び図2に示す。 陽性検体及び陰性検体について測定を行ったところ、第一試薬にビオチンが直接結合したもの(短鎖ビオチン標識ヤケヒョウヒダニ抽出物)よりも、第一試薬にリンカーを介してビオチンが結合したビオチン化第一試薬(中鎖ビオチン標識又は長鎖ビオチン標識ヤケヒョウヒダニ抽出物)を用いた測定系の方が、良好なS/N比が得られることが明らかとなった。さらに、ビオチンと第一試薬の間に存在するリンカーは、その長さが長い方が、測定系のS/N比が向上することも明らかとなった。また、長鎖ビオチンに対するポリクローナル抗体を使用した方が、陰性検体を測定した際のノイズがより低く、さらに陽性検体において高いシグナルが得られるので、非常に良好なS/N比が得られ、高感度な測定系を提供できることが明らかとなった。 以上の検討より、本発明者は、イムノクロマトグラフ法において、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を、第一試薬を介して効率よく、クロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉する新たな手段を見出すことができた。すなわち、従来法では、第一試薬に直接ビオチンを結合し、ビオチン化第一試薬をアビジン又は抗ビオチンモノクローナル抗体を使用してビオチン上の単一の認識部位により捕捉していたのに対して、本発明は、ビオチン化第一試薬を、多様なエピトープを認識するポリクローナル抗体を使用することにより、効率よくクロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉する手段を提供する。さらに、本発明では、第一試薬にリンカーを介してビオチンを結合し、これをビオチン及びリンカーに対するポリクローナル抗体を用いて、クロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉する手段を提供する。このような新たな捕捉手段を採用することにより、液相中で被検出物質を第一試薬及び標識試薬と反応させ、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体の形成を促進することができ、かかる複合体を効率よくクロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉することができるので、イムノクロマトグラフ法において良好なS/N比で高感度な測定が実現できる。 本発明で使用することができるビオチン化第一試薬は、被検出物質に特異的に結合する抗体又は抗原等の物質である第一試薬に、ビオチンが共有結合したものをいい、好ましくは、第一試薬にリンカーを介してビオチンが共有結合したものをいう。本発明のリンカー基は、直鎖状のリンカー基であり、炭素を5〜50、好ましくは10〜30含むものであって、より好ましくは、このうちの1個以上の炭素原子がCO基、NH、又はOに置き換わっていてもよいリンカー基をいう。本発明の好適なリンカー基としては、次の一般式(I) −[−Z−(CH2)n−R−]m− (I)(式中、Zは、NH又はOであり、RはCH2又はCOであり、nは3〜8の整数であり、mは1〜5の整数である。)で表される直鎖状のリンカー基が挙げられる。ビオチンがリンカーを介して第一試薬に結合する場合には、リンカーが長いほど、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を効率よく判定部位に捕捉することができる。直鎖状のリンカーはその基本骨格に、CO基、NH、又はOを含んでいても良く、それらはアミド結合、エステル結合、又はエーテル結合を形成していてもよい。本発明で用いられるリンカーの好ましい態様としては、ω−アミノアルカン酸を単位とする繰り返し構造を有し、より好ましくは炭素数3〜8、さらに好ましくは4〜6のω−アミノアルカン酸、さらに好ましくは6−アミノヘキサン酸を単位とする繰り返し構造を有する。リンカーが繰り返し構造を有する場合には、その繰り返し数が多いほど、それをビオチン化第一試薬に使用したイムノクロマトグラフ法において良好なS/N比を得ることができる。好ましい繰り返し数としては1〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4である。リンカー基は、式(I)のZがビオチンのカルボキシル基とアミド結合又はエステル結合することにより結合する。ビオチンと結合したリンカーは、第一試薬のアミノ基、SH基又は還元糖末端などに公知の方法により共有結合することができる。例えば、市販のビオチンラベル化剤、6−[6−(ビオチニルアミノ)ヘキサノイルアミノ]ヘキサン酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル又は6−(ビオチニルアミノ)ヘキサン酸N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル等を使用して、第一試薬をビオチン化することができる。 本発明で使用することができるポリクローナル抗体としては、ビオチンに対するポリクローナル抗体であり、より好ましくはビオチン及びリンカーに対するポリクローナル抗体である。このようなポリクローナル抗体は、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、オボアルブミン(OVA)、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)、チオグロブリン(TG)、免疫グロブリン等の免疫用担体に、ビオチンを直接又はリンカーを介して結合したものを免疫原に用いることにより公知の方法で作製することができる。ビオチンと免疫用担体の間に存在するリンカーが長いほど、それを免疫原として得られる抗ビオチンポリクローナル抗体が、クロマトグラフ媒体の判定部位に固定された場合に、効率よくビオチン化第一試薬を捕捉することができる。直鎖状リンカーの好ましい長さは、炭素を5〜50、より好ましくは10〜30含むものであって、このうちの1個以上の炭素原子がCO基、NH、又はOに置き換わっていてもよいリンカーである。好ましいリンカーとしては、例えば、ω−アミノアルカン酸を単位とする繰り返し構造を有する場合が挙げられ、この場合の好ましい繰り返し数は1〜5、好ましくは2〜4である。より好ましいリンカーとしては、前記した第一試薬とビオチンとの結合に用いられるリンカーが挙げられる。 ビオチンと結合したリンカーは、第一試薬のビオチン化と同様に、免疫用担体のアミノ基、SH基又は還元糖末端などに公知の方法で結合することができる。作製した免疫原は、公知の方法に従って、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、又はウシ等に投与される。投与された動物の血清中で抗体価の上昇が確認されると、動物から血液が採取され、γグロブリン画分が回収される。アフィニティー精製等の公知の方法で、免疫原に使用した免疫用担体に対して生じた抗体を除去することにより、ビオチンのみ又はビオチン及びリンカーを認識するポリクローナル抗体を調製することができる。本発明でいう抗体は、FabフラグメントやF(ab’)2フラグメント等の抗原結合性を有する抗体断片も包含する。 本発明においては、抗ビオチンポリクローナル抗体は、イムノクロマトグラフ法で使用するクロマトグラフ媒体の任意の位置に固定化することで判定部位を形成することができる。抗ビオチンポリクローナル抗体をクロマトグラフ媒体に固定化する方法としては、抗ビオチンポリクローナル抗体をクロマトグラフ媒体に物理吸着等の物理的手段又は共有結合等の化学的手段により直接固定化する方法と、抗ビオチンポリクローナル抗体をラテックス粒子等の微粒子に物理的又は化学的に結合し、この微粒子をクロマトグラフ媒体に捕捉して固定化する間接固定化方法等を用いることができる。クロマトグラフ媒体への抗ビオチンポリクローナル抗体の固定化には、例えば、マイクロシリンジ、調節ポンプ付きペン、インキ噴射印刷等、種々の技術が使用可能である。反応部位の形態としては特に限定されないが、円形のスポット、クロマトグラフ媒体の展開方向に垂直にのびるライン、数字、文字や+、−などの記号等として固定化することもできる。 抗ビオチンポリクローナル抗体を固定化した後、非特異的な吸着により分析の精度が低下することを防止するため、必要に応じて、クロマトグラフ媒体に、公知の方法でブロッキング処理を行うこともできる。一般にブロッキング処理はウシ血清アルブミン、スキムミルク、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質が好適に用いられる。 本発明のクロマトグラフ媒体は、毛管現象を示す微細多孔性物質からなる不活性のものであって、使用される第一試薬、標識試薬、被検出物質などと反応しないものであれば、特にその素材が限定されるものではない。具体的には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ニトロセルロース又は酢酸セルロース等のセルロース誘導体等で構成される繊維状又は不織繊維状マトリクス、膜、濾紙、ガラス繊維濾紙、布、綿等が挙げられる。好ましくはセルロース誘導体やナイロンの膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等であり、より好ましくはニトロセルロース膜、混合ニトロセルロースエステル(ニトロセルロースと酢酸セルロースの混合物)膜、ナイロン膜、濾紙である。 クロマトグラフ媒体の形態及び大きさは特に制限されるものではなく、実際の操作の点及び結果の観察の点において適切であればよい。操作をより簡便にするためには、判定部位が表面に形成されているクロマトグラフ媒体の裏面に、プラスチックなどよりなる支持体を設けることもできる。この支持体の性状は特に制限されるものではないが、目視判定によって測定結果の観察を行う場合には、支持体は、標識物質によりもたらされる色彩と類似しない色彩を有するものであることが好ましく、通常、無色又は白色であることが好ましい。 本発明のクロマトグラフ媒体に固定化された抗ビオチンポリクローナル抗体は、第一試薬に結合したビオチン及びリンカーを認識することにより、液相中で形成した標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を捕捉する。抗ビオチンポリクローナル抗体により、間接的に標識試薬を構成する標識物質がクロマトグラフ媒体の判定部位に結合することにより、被検出物質の検出を行うことができる。 本発明により検出することのできる被検出物質としては、それに特異的に結合する物質が存在するものであれば特に限定されず、蛋白質、ペプチド、糖(特に糖タンパク質の糖部分、糖脂質の糖部分等)、複合糖質などを例示することができる。本明細書において「特異的に結合する」とは、生体分子が持つ親和力に基づいて結合することを意味する。このような親和力に基づく結合としては、抗原と抗体との結合が代表的なものであり、免疫測定法で広く利用されるが、このような結合のみならず、本発明では、糖とレクチンとの結合、ホルモンと受容体との結合、酵素と阻害剤との結合、核酸と核酸結合蛋白質との結合なども利用できる。具体的な被検出物質としては、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、HER2タンパク、前立腺特異抗原(PSA)、CA19−9、α−フェトプロテイン(AFP)、免疫抑制酸性タンパク(IPA)、CA15−3、CA125、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、便潜血、トロポニンI、トロポニンT、CK−MB、CRP、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、梅毒抗体、インフルエンザウイルス、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原、HBs抗体、HBs抗原、ロタウイルス、アデノウイルス、アルブミン、糖化アルブミン、及び、花粉、ダニ、室内塵、食品などのアレルゲン、アレルゲン特異的IgE等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 上記被検出物質を含む試料としては、例えば、生体試料、即ち、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、鼻腔又は咽頭拭い液、髄液、羊水、乳頭分泌液、涙、汗、皮膚からの浸出液、組織や細胞及び便からの抽出液等の他、牛乳、卵、小麦、豆などやそれらを含む食品等の抽出液等が挙げられるがこれらに限定されない。 本発明における第二試薬は、被検出物質に特異的に結合し得る物質であり、さらに第二試薬は、第一試薬とは異なる部位で被検出物質と特異的に結合する物質である。すなわち、被検出物質が抗原性を有する物質である場合、第一試薬又は第二試薬として用いることができる物質は、被検出物質に対するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体等である。また、被検出物質が抗体、すなわち特定の抗原に対する免疫グロブリン分子である場合には、第一試薬又は第二試薬として用いることができる物質は、抗体が認識する抗原又は免疫グロブリン分子に対する抗体等である。さらに、被検出物質が糖の場合、第一試薬又は第二試薬としては糖に対する抗体の他、レクチンタンパク質等を用いることもできる。 第二試薬は、標識物質により標識化して使用されるのが好ましい。第二試薬の標識化に使用できる標識物質としては、酵素又は不溶性担体が挙げられる。酵素としては、アルカリフホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ等があり、それぞれの酵素に対応する公知の発色基質と共に用いることができる。不溶性担体としては、金、銀、白金のようなコロイド状金属粒子、酸化鉄のようなコロイド状金属酸化物粒子、硫黄などのコロイド状非金属粒子及び合成高分子よりなるラテックス粒子、その他を用いることができる。コロイド状金属粒子及びコロイド状金属酸化物粒子には、例えば、コロイド状金粒子、コロイド状銀粒子、コロイド状白金粒子、コロイド状酸化鉄粒子、コロイド状水酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。特に、コロイド状金粒子とコロイド状銀粒子が適当な粒径において、コロイド状金粒子は赤色、コロイド状銀粒子は黄色を示す点で好ましい。これらのコロイド状金属粒子の平均粒径は1〜500nm、特に強い色調が得られる10nm〜150nm、より好ましくは40〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。ラテックス粒子としては、例えばスチレンとメタクリル酸との共重合体、スチレンとイタコン酸との共重合体などを挙げることができる。これらのラテックス粒子の平均粒径は50〜500nmの範囲内であることが好ましい。 本発明で使用する第二試薬を標識物質で標識化する方法としては、物理吸着や化学結合などの公知の方法が使用できる。例えば、第二試薬としての抗体をコロイド状金粒子に感作した標識試薬は、金粒子がコロイド状に分散した溶液に抗体を加えて物理吸着させた後、牛血清アルブミン溶液を添加して抗体が未結合である粒子表面をブロッキングすることにより調製する。 本発明の態様の1つとしては、被検出物質を含む試料溶液は、予めビオチン化第一試薬及び標識試薬と混合され、液相中で標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を形成した後、クロマトグラフ媒体と接触する。試料溶液と共に又は遅れて、展開液がクロマトグラフ媒体と接触し、移動相を構成して、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体と共に移動する。複合体が、クロマトグラフ媒体の判定部位を移動する際に、固定化された抗ビオチンポリクローナル抗体により捕捉され、標識物質が間接的に判定部位に結合することにより、標識物質が発するシグナルを検出することができる。標識物質が不溶性担体である場合には直接、標識物質が酵素である場合には基質を作用させ反応産物について、目視又はデンシトメーター等により、その存在の確認又は定量化を行うことができる。 本発明において使用できる展開液としては、通常、水を溶媒とし、リン酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グッドの緩衝剤等の緩衝剤を含有することが好ましい。さらに、必要に応じて、ウシ血清アルブミン(BSA)等のタンパク質成分(含有量は通常0.01重量%〜10重量%)、非イオン性界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。 本発明のクロマトグラフ媒体には、任意で、被検出物質を含む試料を添加するための試料添加部位(サンプルパッド等)、試料中の血球等の固形成分を除去する部位(血球分離部位等)、展開液を添加するための展開液添加部位、判定部位に捕捉されなかった標識試薬や展開液を吸い取る吸収部位(吸収パッド等)、測定が正常に行われたことを示す対照部位等を組み入れてもよい。これらの部位の部材は、毛管現象により試料液や展開液が移動できれば特に限定されず、一般的には、ニトロセルロース膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等の複数の多孔性物質からその目的に応じたものを選択して用い、抗ビオチン化ポリクローナル抗体が固定化されたクロマトグラフ媒体と毛管で繋がるように配置することができる。 本発明のさらなる態様としては、ビオチン化第一試薬及び標識試薬の両者又はいずれか一方を、クロマトグラフ媒体における移動相の展開移動経路上、すなわち展開液が適用される端部と判定部位との間の領域に存在させて適用することもできる。クロマトグラフ媒体に存在させる場合、ビオチン化第一試薬又は標識試薬が展開液に速やかに溶解して毛管作用によって自由に移動できるように、それらの試薬を支持させるのが好ましい。支持させる部位には、それらの試薬の再溶解性を良好にするため、サッカロース、マルトース、ラクトース等の糖類、マンニトール等の糖アルコールを添加して塗布したり、これらの物質を予めコーティングしたりしておくこともできる。ビオチン化第一試薬又は標識試薬を塗布・乾燥等によりクロマトグラフ媒体に存在させる場合には、直接、塗布・乾燥等により行うこともできるし、別の多孔性物質、例えばセルロース濾紙、ガラス繊維濾紙、ナイロン不織布に塗布・乾燥等してビオチン化第一試薬又は標識試薬保持部材を形成した後、抗ビオチンポリクローナル抗体が固定化されたクロマトグラフ媒体と毛管で繋がるように配置してもよい。 本発明は、イムノクロマトグラフ法において、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を、第一試薬を介して効率よく、クロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉する新たな手段を提供する。このような新たな捕捉手段を採用することにより、液相中で被検出物質を第一試薬及び標識試薬と反応させることができるので、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体の形成を促進することができる。そして、かかる複合体を効率よくクロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉することができるので、イムノクロマトグラフ法において良好なS/N比で高感度な測定が実現できる。 また、従来のイムノクロマトグラフ法では、目的とする被検出物質ごとに、それに特異的に結合する第一試薬を予め判定部位に固定化したクロマトグラフ媒体を調製しなければならないという煩雑さがあった。さらに、第一試薬の種類のよっては、固定化される効率が悪い、固定化の際に反応部位が変性する等の問題があった。しかし、本発明のクロマトグラフ媒体とビオチン化第一試薬は汎用性が高く、被検出物質の種類によらず調製が可能であるという利点も有している。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。(1)精製抗Biotin-(AC5)2-OSuポリクローナル抗体の作製 23.3mg/mLのKLH(CALBIOCHEM社製) 100μLに28mg/mLのBiotin-(AC5)2-OSu(同仁化学社製)(以下、長鎖ビオチンと表記する。)を40μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、長鎖ビオチン標識KLHを得た。 得られた長鎖ビオチン標識KLHを2.0mg/mLの濃度でヤギに1週間ごとに計4回免疫を行った。最終免疫実施日の1週間後に全採血を行い、抗血清を得た。 得られた抗血清はProtein Gカラム及びKLH結合アフィニテイーカラムを用いて精製を行い、精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体を得た。(2)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体固定化クロマトグラフィー媒体の作製 ニトロセルロースから成る、幅が16mmの膜担体(ミリポア社製:HF120)に、塗布機(BioDot社製)を用いて、実施例1(1)で作製した精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体をリン酸緩衝液(pH6.0)で3mg/mLの濃度になるように希釈後塗布し、50℃で1時間乾燥させた。その後、一晩室温で乾燥させた。(3)Biotin-OSu標識タンパク質の作製 0.15MのNaClを含むリン酸緩衝液(pH7.4)(以下、PBSと略すこともある)に溶解した1.0mg/mLのヤケヒョウヒダニ抽出物(LSL社製) 1mLに対して、PBSに溶解した28mg/mLのBiotin-OSu (同仁化学社製)(以下、短鎖ビオチンと表記する)を20μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、短鎖ビオチン標識ヤケヒョウヒダニ抽出物を得た。(4)標識物質溶液の作製 金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製: 平均粒子径40 nm)0.5mLに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈したマウス由来の抗ヒトIgEモノクローナル抗体を0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1mL加え、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行った。上清を除去した後、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液とした。(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製 上記作製した短鎖ビオチン標識タンパク質及び標識物質溶液の各々を幅が16mmのグラスファイバー製パッドに均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、短鎖ビオチン標識タンパク質保持部材及び標識保持部材とした。次いで、バッキングシートから成る基材に、上記調製したクロマトグラフィー媒体、短鎖ビオチン標識タンパク質保持部材、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド、及び展開した試料、不溶性担体を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。最後に、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフィー用試験片を作製した。(6)測定 上記作製したイムノクロマトグラフィー用試験片を用いて、以下の方法で陰性検体及び陽性検体中のヤケヒョウヒダニに対する特異IgE抗体を測定した。 0.3%のTritonX-100、150mM塩化ナトリウムを含むトリス緩衝溶液(pH8.0)から成る展開溶媒を作製した。陰性検体(0.15IU/mL)、陽性検体(2.24IU/mL)を試料とし、各試料20μLをイムノクロマトグラフィー用試験片のサンプルパッド上に載せ、次いで展開溶媒を80μL載せて展開させ、15分後にイムノクロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)を用いて判定部位の発色強度を数値化した。陰性検体及び陽性検体の発色値よりS/N比を求めた。 図1に結果を示す。(比較例1) 実施例1(1)で作製した精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体の代わりに市販品の抗ビオチンモノクローナル抗体(ミリポア社製)を用いて以下、実施例1と同様に測定した結果を図1に示す。(比較例2) 実施例1(1)で作製した精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体の代わりに市販品の抗ビオチンモノクローナル抗体(生化学工業社製)を用いて以下、実施例1と同様に測定した結果を図1に示す。(比較例3) 実施例1(1)で作製した精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体の代わりに市販品の抗ビオチンポリクローナル抗体(ICL社製)を用いて以下、実施例1と同様に測定した結果を図1に示す。(比較例4)(1)抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体の作製 23.3mg/mLのKLH(CALBOICHEM社製) 100μLに28mg/mLの短鎖ビオチンを40μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、短鎖ビオチン標識KLHを得た。 得られた短鎖ビオチン標識KLHを2.0mg/mLの濃度でヤギに1週間ごとに計4回免疫を行った。最終免疫実施日の1週間後に全採血を行い、抗血清を得た。 得られた抗血清はProtein Gカラム及びKLH結合アフィニテイーカラムを用いて精製を行い精製抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体を得た。 得られて精製抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体を用いて実施例1と同様に測定した結果を図1に示す。(1)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体の作製 実施例1(1)と同じものを使用した。(2)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体固定化クロマトグラフィー媒体の作製 実施例1(2)と同じものを使用した。(3)長鎖ビオチン標識タンパク質の作製 PBSに溶解した1.0mg/mLのヤケヒョウヒダニ抽出物(LSL社製) 1mLに対して、PBSに溶解した28mg/mLの長鎖ビオチンを20μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、長鎖ビオチン標識ヤケヒョウヒダニ抽出物を得た。(4)標識物質溶液の作製 実施例1(4)と同様に作製した。(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製 上記作製した長鎖ビオチン標識タンパク質及び標識物質溶液の各々を幅が16mmのグラスファイバー製パッドに均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、長鎖ビオチン標識タンパク質保持部材及び標識保持部材とした。次いで、バッキングシートから成る基材に、上記調製したクロマトグラフィー媒体、長鎖ビオチン標識タンパク質保持部材、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド、及び展開した試料、不溶性担体を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。最後に、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフィー用試験片を作製した。(6)測定 実施例1(6)と同様に測定した。図2に結果を示す。(比較例5)(1)精製抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体の作製 比較例4(1)と同じものを使用した。(2)精製抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体固定化クロマトグラフィー媒体の作製 比較例4(2)と同じものを使用した。(3)Biotin-AC5-OSu標識タンパク質の作製 PBSに溶解した1.0mg/mLのヤケヒョウヒダニ抽出物(LSL社製) 1mLに対して、PBSに溶解した28mg/mLのBiotin-AC5-OSu (同仁化学社製)(以下、中鎖ビオチンと表記する)を20μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、中鎖ビオチン標識ヤケヒョウヒダニ抽出物を得た。(4)標識物質溶液の作製 実施例1(4)と同様に作製した。(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製 上記作製した中鎖ビオチン標識タンパク質及び標識物質溶液の各々を幅が16mmのグラスファイバー製パッドに均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、中鎖ビオチン標識タンパク質保持部材及び標識保持部材とした。次いで、バッキングシートから成る基材に、上記調製したクロマトグラフィー媒体、中鎖ビオチン標識タンパク質保持部材、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド、及び展開した試料、不溶性担体を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。最後に、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフィー用試験片を作製した。(6)測定 実施例1(6)と同様に測定した。図2に結果を示す。(比較例6)(1)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体の作製 実施例1(1)と同じものを使用した。(2)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体固定化クロマトグラフィー媒体の作製 実施例1(2)と同じものを使用した。(3)中鎖ビオチン標識タンパク質の作製 比較例5(3)と同じものを使用した。(4)標識物質溶液の作製 実施例1(4)と同様に作製した。(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製 比較例5(5)と同様に行った。(6)測定 実施例1(6)と同様に測定した。図2に結果を示す。(比較例7)(1)精製抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体の作製 比較例4(1)と同じものを使用した。(2)精製抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体固定化クロマトグラフィー媒体の作製 比較例4(2)と同様に作製した。(3)長鎖ビオチン標識タンパク質の作製 実施例2(3)と同じものを使用した。(4)標識物質溶液の作製 実施例1(4)と同様に作製した。(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製 実施例2(5)と同様に作製した。(6)測定 実施例1(6)と同様に測定した。図2に結果を示す。(1)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体の作製 実施例1(1)と同じものを使用した。(2)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体固定化クロマトグラフィー媒体の作製 実施例1(2)と同じものを使用した。(3)長鎖ビオチン標識タンパク質の作製 PBSに溶解した0.5mg/mLのマウス由来の抗PSA(前立腺癌特異抗原)モノクローナル抗体500μLに対してPBSに溶解した28mg/mLの長鎖ビオチンを20μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD−10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、長鎖ビオチン標識抗PSAモノクローナル抗体を得た。(4)標識物質溶液の作製 金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製: 平均粒子径40 nm)0.5mLに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈したマウス由来の抗PSAモノクローナル抗体を0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1mL加え、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行った。上清を除去した後、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液とした。(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製 実施例2(5)と同様に作製した。(6)測定 上記作製したイムノクロマトグラフィー用試験片を用いて、以下の方法で試料中のPSAを測定した。0.3%のTritonX-100、150mMの塩化ナトリウムを含むトリス緩衝溶液(pH8.0)から成る展開溶媒を作製した。PSA濃度を0ng/mL及び0.5ng/mLになるように調整したものを試料とし、各濃度の試料40μLをイムノクロマトグラフィー用試験片のサンプルパッド上に載せ、次いで展開溶媒を80μL載せて展開させ、15分後にイムノクロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)を用いて判定部位の発色強度を数値化した。PSA濃度0ng/mL及び0.5ng/mLの発色値よりS/N比を求めた。結果は、18.3であった。(比較例8) 実施例3(1)で使用した精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体の代わりに精製抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体を使用した。また、実施例3(3)の長鎖ビオチンの変わりに短鎖ビオチンを使用し、短鎖ビオチン標識抗PSAモノクローナル抗体を作製した。以下、実施例3と同様に測定した。結果は、9.6であった。 本発明は、イムノクロマトグラフ法において、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を、第一試薬を介して効率よく、クロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉することができるので、高感度で信頼性の高い臨床検査の実施を可能にするという、産業上の利用可能性を有する。図1は、第一試薬にヤケヒョウヒダニ抗原を使用し、標識試薬にはマウス由来の抗ヒトIgE抗体を金コロイドで標識化したものを使用したイムノクロマトグラフ法によって、ヤケヒョウヒダニを特異的に認識するヒトIgE分子を測定した結果を示す。第一試薬は、短鎖ビオチンによりビオチン化されている。縦軸は、陽性検体測定値をシグナル、陰性検体をノイズとした場合のS/N比を表す。判定部位に固定化されている抗体は、それぞれ、抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体(実施例1)、市販の抗ビオチンモノクローナル抗体(比較例1及び2)、市販の抗ビオチンポリクローナル抗体(比較例3)又は抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体(比較例4)である。図2は、図1と同様に、ヤケヒョウヒダニ特異的ヒトIgEを測定した結果を示す。第一試薬はそれぞれ、短鎖ビオチン(比較例4及び実施例1)、中鎖ビオチン(比較例5及び6)又は長鎖ビオチン(比較例7及び実施例2)でビオチン化されている。判定部位に固定化されている抗体は、抗短鎖ビオチンポリクローナル抗体(比較例4、5及び7)又は抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体(実施例1、2及び比較例6)である。 (1)ビオチンを認識するポリクローナル抗体を固定化したクロマトグラフ媒体、 (2)ビオチンが結合した、被検出物質に特異的に結合し得る第一試薬、及び、 (3)被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬、を含有してなるイムノクロマトグラフ法のための測定キット。 ビオチンと第一試薬とが、リンカーを介して結合したものである請求項1に記載の測定キット。 ポリクローナル抗体が、免疫用担体にリンカーを介して結合したビオチンを認識するポリクローナル抗体である請求項1又は2に記載の測定キット。 リンカー基が、5〜50個の炭素を含む直鎖状のリンカー基である請求項2又は3に記載の測定キット。 リンカー基が、次の一般式(I) −[−Z−(CH2)n−R−]m− (I)(式中、Zは、NH又はOであり、RはCH2又はCOであり、nは3〜8の整数であり、mは1〜5の整数である。)で表される基である請求項2〜4のいずれかに記載の測定キット。 mが2〜4であり、nが4〜6である請求項5に記載の測定キット。 ZがNHで、RがCOである請求項5又は6に記載の測定キット。 第一試薬とビオチンとの結合におけるリンカー基と、免疫用担体とビオチンの結合におけるリンカー基が同じである請求項2〜7のいずれかに記載の測定キット。 ビオチンを認識するポリクローナル抗体が固定化され判定部位を形成したクロマトグラフ媒体に、 (1)ビオチンが結合した、被検出物質に特異的に結合し得る第一試薬、及び、 (2)被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬を、前記判定部位から離隔した位置で前記クロマトグラフ媒体にてクロマト展開可能なように配置してなる、イムノクロマトグラフ法のためのクロマトグラフ媒体。 ビオチンと第一試薬とが、リンカーを介して結合したものである請求項9に記載のクロマトグラフ媒体。 ポリクローナル抗体が、免疫用担体にリンカーを介して結合したビオチンを認識するポリクローナル抗体である請求項9又は10に記載のクロマトグラフ媒体。 リンカー基が、5〜50個の炭素を含む直鎖状のリンカー基である請求項10又は11に記載のクロマトグラフ媒体。 リンカー基が、次の一般式(I) −[−Z−(CH2)n−R−]m− (I)(式中、Zは、NH又はOであり、RはCH2又はCOであり、nは3〜8の整数であり、mは1〜5の整数である。)で表される基である請求項10〜12のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。 mが2〜4であり、nが4〜6である請求項13に記載のクロマトグラフ媒体。 ZがNHで、RがCOである請求項13又は14に記載のクロマトグラフ媒体。 第一試薬とビオチンとの結合におけるリンカー基と、免疫用担体とビオチンの結合におけるリンカー基が同じである請求項10〜15のいずれかに記載のクロマトグラフ媒体。 ビオチンを認識するポリクローナル抗体が固定化され判定部位を形成したクロマトグラフ媒体で、 (1)被検出物質を含む試料、 (2)ビオチンが結合した、被検出物質に特異的に結合し得る第一試薬、及び、 (3)被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬を、クロマト展開することを特徴とする、イムノクロマトグラフ法による測定方法。 ビオチンと第一試薬とが、リンカーを介して結合したものである請求項17に記載の測定方法。 ポリクローナル抗体が、免疫用担体にリンカーを介して結合したビオチンを認識するポリクローナル抗体である請求項17又は18に記載の測定方法。 リンカー基が、5〜50個の炭素を含む直鎖状のリンカー基である請求項18又は19に記載の測定方法。 リンカー基が、次の一般式(I) −[−Z−(CH2)n−R−]m− (I)(式中、Zは、NH又はOであり、RはCH2又はCOであり、nは3〜8の整数であり、mは1〜5の整数である。)で表される基である請求項18〜20のいずれかに記載の測定方法。 mが2〜4であり、nが4〜6である請求項21に記載の測定方法。 ZがNHで、RがCOである請求項21又は22に記載の測定方法。 第一試薬とビオチンとの結合におけるリンカー基と、免疫用担体とビオチンの結合におけるリンカー基が同じである請求項18〜23のいずれかに記載の測定方法。 【課題】本発明は、イムノクロマトグラフ法において、良好なS/N比で高感度な測定を達成するために、標識試薬−被検出物質−第一試薬からなる複合体を、第一試薬を介して効率よく、クロマトグラフ媒体の判定部位に捕捉する新たな手段を提供することを目的としている。【解決手段】本発明は、ビオチンを認識するポリクローナル抗体を固定化したクロマトグラフ媒体、ビオチンが結合した第一試薬、及び、被検出物質に特異的に結合し得る第二試薬が標識物質に結合した標識試薬を含有してなるイムノクロマトグラフ法のための測定キット又はクロマトグラフ媒体、及び、それらを用いた測定方法に関する。 【選択図】 なし