タイトル: | 特許公報(B1)_プリン体吸収抑制剤及び血中尿酸値低減剤 |
出願番号: | 2008266267 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 35/68,A61P 19/06 |
織谷 幸太 柳江 高次 西村 栄作 伊藤 良一 稲垣 宏之 杉山 和久 JP 4305785 特許公報(B1) 20090515 2008266267 20081015 プリン体吸収抑制剤及び血中尿酸値低減剤 森永製菓株式会社 000006116 松井 茂 100086689 織谷 幸太 柳江 高次 西村 栄作 伊藤 良一 稲垣 宏之 杉山 和久 20090729 A61K 35/68 20060101AFI20090709BHJP A61P 19/06 20060101ALI20090709BHJP JPA61K35/68A61P19/06 A61K 35/68 A61P 19/06 WPI BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開昭60−196157(JP,A) 特開2000−245386(JP,A) 栄養のゆがみを直しデトックス作用もある新・注目食材 ユーグレナ,日経ヘルス,2007年 9月,p.99-104 4 9 20081021 遠藤 広介 本発明は、プリン体吸収抑制剤及び血中尿酸値低減剤に関するものである。 生物では、プリン環骨格を共通の基本構造とするプリン体と呼ばれる化合物群が生合成され、これらが、核酸を構成しているアデニン、グアニンなどのように、遺伝情報伝達、エネルギーの貯蔵、細胞機能の調節、細胞内の情報伝達など、様々な役割を果たしている。また、プリン体は毎日の食事により、その飲食品中からも摂取され、体内に取り込まれる。 ヒトにおけるプリン体の最終代謝産物は尿酸であり、尿酸は、腎臓から尿へと、また、肝臓から胆汁へと排泄される。プリン体の代謝や尿酸の排泄のバランスが崩れると、血中尿酸値が上昇し、関節内、関節周囲に尿酸塩の結晶が沈着することにより、痛風の原因ともなる(下記非特許文献1参照。)。 痛風の薬物療法には、アロプリノール、ベンズブロマロン、ブロベネシド、ブコロム、シンコファン、及びコルヒチン等の医薬品が用いられている。また、上記の医薬品以外にも、例えば、下記特許文献1には、水溶性食物繊維を有効成分とするプリン体吸収抑制剤が開示され、下記特許文献2には、活性炭を含有することを特徴とする、尿酸値抑制剤が開示され、下記特許文献3には、酵母の菌体に由来するマンノースの重合体あるいはマンナンを有効成分として、血中尿酸値の上昇抑制作用もしくは低下作用を有する血中尿酸値低下物質が開示されている。 一方、ユーグレナ(Euglena)は、藻類として池や沼などの淡水中に広く分布しているユーグレナ属に属する原生生物であり、近年では、これを栄養健康食品として利用することも行われている(下記非特許文献2,3参照。)。しかしながら、ユーグレナに、プリン体の吸収を抑制する効果や、血中尿酸値を低減する効果のあることは知られていなかった。特開2005−47828号公報特開2005−187405号公報特開2006−213607号公報金子希代子 著、「食品に含まれるプリン体について−血清尿酸値に影響を与える食品と食品中のプリン体含量−」 痛風と核酸代謝Vol.31 No.2 p119-131 (2007)日経ヘルス(株式会社 日経BP)2007年9月号 p99-104、日経ヘルス(株式会社 日経BP) 2007年10月号 p129-134、 本発明の目的は、天然自然素材を有効成分として、プリン体を経口的に摂取したときの腸管からの吸収を抑えることができ、また、生体における尿酸代謝バランスを調節して、より有効に血中尿酸値を低減することができ、ひいては、痛風の予防改善にもつながる、プリン体吸収抑制剤及び血中尿酸値低減剤を提供することにある。 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究の結果、下記の発明を完成するに至った。 すなわち、本発明のプリン体吸収抑制剤は、ユーグレナを有効成分とすることを特徴とする。本発明のプリン体吸収抑制剤によれば、有効成分のユーグレナが食事により腸管から吸収されようとしているプリン体の吸収を抑制し、体外へ排出させることができる。本発明においては、該プリン体吸収抑制剤の剤型が、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤、及び丸剤からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。また、該プリン体吸収抑制剤を、飲食用組成物に含有させて利用することが好ましい。 また、本発明の血中尿酸値低減剤は、ユーグレナを有効成分とすることを特徴とする。本発明の血中尿酸値低減剤によれば、ユーグレナを経口的に摂取することにより、尿酸の血中滞留量を低減し、痛風の原因となる尿酸値を低減することができる。本発明においては、該血中尿酸値低減剤の剤型が、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤、及び丸剤からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。また、該血中尿酸値低減剤を、飲食用組成物に含有させて利用することが好ましい。 本発明によれば、有効成分のユーグレナが食事により腸管から吸収されようとしているプリン体の吸収を抑制し、体外へ排出させることができる。また、本発明によれば、ユーグレナを経口的に摂取することにより、尿酸の血中滞留量を低減し、痛風の原因となる尿酸値を低減することができる。したがって、痛風の予防改善にも有用である。 以下、本発明について好ましい態様を挙げて、更に詳細に説明する。 本発明において、プリン体とは、共通の基本構造としてプリン環骨格を有する化合物又はその誘導体をいう。例えば、アデニン、グアニン等のプリン塩基、アデノシン、グアノシン、イノシン等のプリンヌクレオシド、アデニル酸、グアニル酸、イノシン酸等のプリンヌクレオチド、及びオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド等の低分子又は高分子核酸などを含むが、これらには限定されない。 本発明において用いられるユーグレナは、その属種に特に制限はなく、一般に動物学または植物学の分類上ユーグレナ属に属するものであればよく、その変種、変異種であってもよい。例えば以下の種が挙げられる:ユーグレナ グラシリス(Euglena gracilis)、ユーグレナ グラシリス バシラリス(Euglena gracilis var. bacillaris)、ユーグレナ ビリデディス(Euglena viridis)、アスタシア ロンガ(Astasia longa)。これらの種のうち、好ましくは、i)培養が容易である、ii)増殖速度が速い、iii)安全性が確認できている、などの観点から、ユーグレナ グラシリスを用いることが特に好ましい。 本発明において用いられるユーグレナは、培養により生産することができる。ユーグレナの培養に用いる培地には、従来公知の培地を用いることができ、具体的には、Cramer-Myers培地(Arch,Mikrobiol.,17,384-402(1952))、Hutner培地(J.Protozool.,14,Suppl.,p17(1967))、Koren-Hutner 培地(J.Protozool.,6,p23(1959))などが挙げられる。ユーグレナの培養は、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などにより行なわれる。また、屋外プールなどに水深20センチ程度のミネラル含有培地をはり、攪拌装置を移動させて攪拌しながら太陽光に曝し、光合成によるCO2固定により、光をエネルギー源としCO2を炭素源として利用して、エネルギー・培地の利用効率的よく培養することができる。 本発明において、ユーグレナに含まれるいかなる成分が直接的な有効成分となるかについてのメカニズムは明らかではないが、ユーグレナが、その細胞内にパラミロン粒と呼ばれるβ-1,3-グルカンの高分子構造体を糖貯蔵体として備えているという特徴を有する原生生物であることから、これが関与していることが考えられる。したがって、本発明においては、ユーグレナ菌体をそのまま用いてもよいが、上記のようにして培養により得られた菌体を、スプレードライなどにより、加熱、乾燥することが好ましい。これにより、ユーグレナの細胞膜は破砕され、パラミロン粒などの細胞内成分が表面に露出した組成物とすることができる。 ユーグレナに関しては、特に、経口摂取した場合の副作用も少なく安全な素材と考えられるので、その摂取量は、適宜設定できるが、本発明の効果を発揮させるための好ましい摂取量としては、後述する試験例の結果から概算すると、ユーグレナの乾燥重量に換算したときに、1日あたり約1〜1,000mg/体重1kgであることが好ましく、約3〜100mg/体重1kgであることがより好ましくは、約10〜20mg/体重1kgであることが更により好ましい。 本発明のプリン体吸収抑制剤や血中尿酸値低減剤には、上記の基本的成分以外に、炭水化物、食物繊維、たんぱく質、ビタミン類等その他の成分を含むことができる。 本発明のプリン体吸収抑制剤や血中尿酸値低減剤は、医薬品、健康食品、加工食品等の各種分野で用いられ、医薬の有効成分、食品原料等として使用することができる。 例えば、医薬品とする場合には、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化し、医薬組成物として提供することができる。この医薬組成物には、基材や担体の他、薬学的に許容されることを限度として、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、保湿剤、抗菌剤、防腐剤、香料、顔料、界面活性剤、安定剤、溶解補助剤等の添加剤を任意に配合してもよい。そして、当該医薬組成物の剤型としては、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤、丸剤等を好ましく例示できる。 また、本発明のプリン体吸収抑制剤や血中尿酸値低減剤を、飲食品に添加して摂取する場合には、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品等に配合して用いることができる。このような食品としては、例えば、チョコレート、ビスケット、ガム、キャンディー、クッキー、グミ、打錠菓子等の菓子類;シリアル;粉末飲料、清涼飲料、乳飲料、栄養飲料、炭酸飲料、ゼリー飲料等の飲料;アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓が挙げられる。更に、そば、パスタ、うどん、そーめん等の麺類も好ましく例示できる。また、特定保健用食品や栄養補助食品等の場合であれば、粉末、顆粒、カプセル、シロップ、タブレット、糖衣錠等の形態のものであってもよい。 以下に例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。 <試験例1> (プリン体吸着能) ユーグレナのプリン体吸着能を調べた。 まず、ユーグレナ菌体をスプレードライして得られた、ユーグレナ乾燥粉末(株式会社ユーグレナ製)を、前処理した。すなわち、100mgまたは300mgのユーグレナ乾燥粉末を50mLチューブに秤量し、40mLの水を添加して混和、3500rpmで10分遠心し、その上清を除去した。ついで、40mLの水を添加して、懸濁、遠心、上清除去の操作を繰り返し、沈殿残渣物として回収されたユーグレナを以下の試験に用いた。 また、プリン体含有溶液を調製した。すなわち、106.9mgのアデノシン(M.W.=267.25)、あるいは146.1mgのアデノシン一リン酸一水和物(5'-AMP)(M.W.=365.24)を、20mLの0.1M HClで溶解し、ついで、60mLの0.1M Tris-HCl/2mM MgCl2buffer(pH7.0)を加えた後、0.1M NaOHでpH7に調製し、水で200mLにメスアップした。このとき、アデノシン及び5'-AMPの濃度は、それぞれ2mMである。 上記の前処理後のユーグレナに、上記プリン体含有溶液を10mL添加し、振とう恒温槽内(37℃、150strokes/min)で2時間混和した後、3500rpm、10分遠心分離を行った。その上清50μLをマイクロシリンジで分取して、反応buffer 425μL(反応buffer:30mM Tris-HCl/10mM NaCl/0.6mM MgCl2buffer,pH7.0)と、1g/L尿酸 25μL(内部標準)とを混和し(反応bufferと尿酸溶液は、予め17:1で混合した溶液を分注して使用した。)、その300μLを限外ろ過した(分子量3,000カット「Microcon YM-3」Millipore社製)。 得られたろ過液50μLを、下記HPLC測定条件に示す移動相950μLに加えて混和後、その10μLを、以下の条件で、HPLCに供した。<HPLC測定条件>・試料注入量 10μL ・カラム Hydrosphere C18 4.6×150mm(D) (5μm)・流速 0.7mL/min・波長 254nm・カラム温度 37℃・移動相 50mM Na2HPO4-H3PO4(pH3.0) 各種素材による吸着能は、アデノシンあるいは5'-AMPの添加量と、HPLCデータに基づいて算出した全溶液中に含まれる量との差分が、各種素材に吸着した量であるとして、下記式(1)により求めた。 図1に示すように、ユーグレナでは、その添加濃度に応じて、アデノシンあるいは5'-AMPに対して約3〜10%の吸着率を示し、プリン体に対する吸着能が認められた。したがって、ユーグレナには、プリン体吸着の作用効果のあることが明らかとなった。 <試験例2> (血中尿酸値低減効果) 20歳以上、65歳未満の健常男子、もしくは試験責任医師が高尿酸血症予備群(境界域)と判断した者で、負荷試験実施2日前から禁酒が可能な4人の被験者を選び、ユーグレナ摂取による血中尿酸値低減の効果について、試験を行った。 試験食として、試験例1で使用したのと同じユーグレナ乾燥粉末(株式会社ユーグレナ製)の334mg入りカプセルを準備した。また、プリン体負荷源として、アデニル酸、グアニル酸2ナトリウム、イノシン酸2ナトリウム(いずれも食品添加物、ヤマサ醤油(株)製)を1:1:1の重量割合で混合したもの(以下、プリン体負荷源という。)を準備した。 試験は、次のようなクロスオーバ試験で行った。すなわち、第1期目として、早朝空腹時に採血し、プリン体負荷源(プリン体500mg)を経口的に摂取してもらい、摂取後1〜6時間まで1時間ごとに採血を行い、血清尿酸値を酵素法(ウリカーゼPOD法)により測定した。1期目の後には、プリン体負荷による影響を消失させるため、被験者に6日間以上通常に生活してもらった。第2期目として、プリン体負荷源(プリン体500mg)負荷と同時にユーグレナカプセル3カプセル(1 g)を摂取させる以外は、1期目と同一条件にて血清尿酸値を測定した。 図2には第1期目における結果を示す。すなわち、ユーグレナカプセルを摂取しないときのプリン体負荷後の血清尿酸濃度上昇値を、負荷後の時間に対してプロットしたグラフから得られる、血清尿酸濃度上昇値−時間曲線下面積(AUCI)を、プリン体負荷後の時間に対してプロットしたグラフである。また、図3には、第2期目における結果を示す。すなわち、ユーグレナカプセルを摂取したときのプリン体負荷後の血清尿酸濃度上昇値を、負荷後の時間に対してプロットしたグラフから得られる、血清尿酸濃度上昇値−時間曲線下面積(AUCII)を、プリン体負荷後の時間に対してプロットしたグラフを示す。そして、図4には、第2期目におけるAUCIIから第1期目におけるAUCIを差し引いた値(ΔAUC)を、プリン体負荷後の時間に対してプロットしたグラフを示す。 図4に示されるように、第2期目におけるAUCIIから第1期目におけるAUCIを差し引いた値(ΔAUC)が、1人の被験者を除いてプリン体負荷後の時間がたつにつれて減少していることから、ユーグレナの摂取により、これを摂取しない場合に比べて、尿酸の血中滞留量の差分が増大していることが分かる。したがって、ユーグレナには、血中尿酸値低減の作用効果のあることが明らかとなった。<製造例1> 上記ユーグレナ乾燥粉末を、プルラン製ハードカプセル(日本薬局方1号サイズ)に1カプセル当たり334mgずつ充填し、ハードカプセル剤を得た。ユーグレナ乾燥粉末によるアデノシンあるいは5'-AMPに対する吸着能を示す図表である。ユーグレナカプセルを摂取しない第1期目のプリン体負荷後の血清尿酸濃度上昇値−時間曲線下面積(AUCI)を負荷後の時間に対してプロットしたグラフである。ユーグレナカプセルを摂取した第2期目のプリン体負荷後の血清尿酸濃度上昇値−時間曲線下面積(AUCII)を、負荷後の時間に対してプロットしたグラフである。第2期目におけるAUCIIから第1期目におけるAUCIを差し引いた値(ΔAUC)を負荷後の時間に対してプロットしたグラフである。 ユーグレナを有効成分とすることを特徴とするプリン体吸収抑制剤。 剤型が、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤、及び丸剤からなる群より選ばれる1種である、請求項1に記載のプリン体吸収抑制剤。 ユーグレナを有効成分とすることを特徴とする血中尿酸値低減剤。 剤型が、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤、及び丸剤からなる群より選ばれる1種である、請求項3に記載の血中尿酸値低減剤。【課題】 天然自然素材を有効成分としたプリン体吸収抑制剤及び血中尿酸値低減剤を提供する。【解決手段】 ユーグレナをプリン体吸収抑制のための有効成分とする。これにより、食事により腸管から吸収されようとしているプリン体の吸収を抑制し、体外へ排出させることができる。また、ユーグレナを血中尿酸値低減のための有効成分とする。これにより、ユーグレナを経口的に摂取することにより、尿酸の血中滞留量を低減し、痛風の原因となる尿酸値を低減することができる。本発明においては、該血中尿酸値低減剤を、飲食用組成物に含有させて利用することが好ましい。【選択図】なし