生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_敗血症の予防及び治療剤
出願番号:2008258709
年次:2011
IPC分類:A61K 31/702,A61P 31/04,C07H 3/06


特許情報キャッシュ

西村 益浩 澁谷 直応 吉柳 公雄 福永 徹也 土居 雅子 田村 望 渡邊 光 山本 朗子 西本 友之 JP 2011256111 公開特許公報(A) 20111222 2008258709 20081003 敗血症の予防及び治療剤 株式会社林原生物化学研究所 000155908 株式会社大塚製薬工場 000149435 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 西村 益浩 澁谷 直応 吉柳 公雄 福永 徹也 土居 雅子 田村 望 渡邊 光 山本 朗子 西本 友之 A61K 31/702 20060101AFI20111125BHJP A61P 31/04 20060101ALI20111125BHJP C07H 3/06 20060101ALN20111125BHJP JPA61K31/702A61P31/04C07H3/06 6 OL 11 4C057 4C086 4C057BB04 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA01 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA17 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZB35 本発明は、敗血症の予防及び治療剤に関する。 敗血症は、肺炎や腹膜炎などの細菌感染症や、悪性腫瘍の化学療法によって免疫力が低下したときに生じた細菌感染症等が全身に波及したものである。発熱、頻呼吸、頻脈、白血球増加等の症状を現し、進行すれば意識障害、血圧低下などの循環不全、さらに、腎・肺・肝・凝固機能異常などの臓器機能障害をきたす。そして、重篤に至れば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や播種性血管内凝固症候群(DIC)などを併発し、敗血症ショックによる心停止・死亡などの最悪の結果に至る。 敗血症は、段階が進むにつれて予後が悪くなり、死亡率が高くなるので、可能な限り初期の段階で早期診断・早期治療を行う必要がある。 敗血症の治療法としては、輸液蘇生法や、リポポリサッカライド(LPS)の産生を抑制する目的の抗生物質や炎症性反応を抑える非ステロイド抗炎症薬の投与が行われており、重症の敗血症に対しては、低血圧症を改善する昇圧剤の投与や、炎症を抑えるステロイド、血液凝固阻害薬などの投与が臨床現場で行われている。 敗血症の治療薬として知られているXigris(ジグリスDrotrecogin alfa、activated:米国Eli Lilly社)は、活性型プロテインC製剤であり、血液凝固阻害効果とともに細胞のアポトーシスを抑制する効果があるが、初期の敗血症患者には無効であり、重症の敗血症患者のみに使用が制限されている。 また、輸液、抗生物質、抗炎症薬等の投与については、満足できる治療効果が得られず、重症の段階においては対症療法しかない。 従って、敗血症の疾患に対しては、予後を考慮して初期の段階から積極的に治療効力を発揮する薬剤の開発が望まれている。 ところで、主に食品添加物として用いられている環状オリゴ糖としては、6〜8分子のグルコースがα−1,4結合で結合して環状構造を形成したα−、β−及びγ− シクロデキストリンが知られている。これらのα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンについて、敗血症に対する効果があるという報告がある(下記特許文献1参照)。しかしながら、α−及びβ−シクロデキストリンには溶血性という問題があり(下記非特許文献1、非特許文献2等参照)、更に、β−シクロデキストリンには腎毒性があり、γ−シクロデキストリンについては、効力が十分でないという様々な問題点がある。このため、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンについては、敗血症の治療剤として十分に要望を満たすものとはいえない。特開平3−133931号公報International Journal of Pharmaceutics Vol.101,NO.1/2 PAGE.97-103 1994Journal of Pharmaceutical Sciences Vol.86,NO.2 PAGE.147-162 1997 本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、敗血症に対して十分な治療効果を有し、しかも副作用のない敗血症の予防及び治療剤を提供することである。 本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、敗血症の治療剤としてこれまで使用されたことのない、グルコースを構成糖とする環状四糖、環状五糖やその誘導体が、敗血症に対して早い段階から十分に強い効力を発揮し、さらに溶血性や腎毒性等の副作用がほとんどないことを見出し、ここに本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、下記の敗血症の予防及び治療剤を提供するものである。1. グルコースを構成糖とする環状四糖、グルコースを構成糖とする環状五糖、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を有効成分として含有する敗血症の予防及び治療剤。2. シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}、シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}、シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を有効成分として含有する敗血症の予防及び治療剤。3. シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を有効成分として含有する敗血症の予防及び治療剤。4. 静脈内投与用製剤である上記項1〜3のいずれかに記載の敗血症の予防及び治療剤。5. 静脈内投与用製剤が水溶液又は用時溶解用固形剤である上記項4に記載の敗血症の予防及び治療剤。6. 濃度0.1〜30質量%のシクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の水溶液である上記項5に記載の敗血症の予防及び治療剤。 以下、本発明の敗血症の予防及び治療剤について具体的に説明する。 有効成分 本発明の敗血症の予防及び治療剤は、グルコースを構成糖とする環状四糖、グルコースを構成糖とする環状五糖及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含むものである。 グルコースを構成糖とする環状四糖とは、4個のグルコースが結合して環状に連なった化合物であり、グルコースを構成糖とする環状五糖とは5個のグルコースが環状に連なった化合物である。環状四糖及び環状五糖については、それぞれの結合部位の違いにより、幾つかの種類があるが、本発明では、いずれの種類のものも用いることができる。 本発明では、特に、以下の環状四糖及び環状五糖が、製造量、製造コスト、効力、体内動態、副作用(溶血など)のいずれかの点で好ましい。・シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}(別名:環状ニゲロシルニゲロース;以下「CNN」ということがある)・シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}(別名:環状マルトシルマルトース;以下「CMM」ということがある)・シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}(別名:イソサイクロマルトペンタオース;以下「ICG5」ということがある) 上記した環状四糖のうちで、CNNは、グレゴリー・エル・コテ氏らによって見出された化合物であり(European Journal of Biochemistry,226,641(1994))、その後(株)林原生物化学研究所により澱粉からの大量製法が実現化された。CNNは、それ自体、高い溶解性(20℃で100gの水に46.1g溶ける。)を示し、低甘味(砂糖の27%の甘味度)であり、pH安定性・熱安定性がよい。CNNの用途としては、いくつかの医薬用途が期待されるとの報告があるが、敗血症の予防及び治療効果については全く知られていない。 CMMは、(株)林原生物化学研究所により見出された化合物であり、特開2005−95148号公報に記載されている、CMMは、CNNと同様に、高い溶解性と安定性を示す化合物であり、その用途については、現在検討が進められているが、敗血症の予防及び治療効果についての報告はない。 ICG5は、(株)林原生物化学研究所により見出された化合物であり、WO2006/35725に記載されている。ICG5は、殆ど甘みがなく、高い溶解性と安定性を示す化合物であり、その用途についても、現在検討が進められているが、敗血症の予防及び治療効果についての報告はない。 上記した環状四糖及び環状五糖は、更に、これらの環状糖を構成するグルコース残基中の一個以上の水酸基の水素原子が各種の置換基で置換された誘導体としても用いることができる。この様な誘導体としては、特に限定的ではなく、任意の置換基を有する誘導体を用いることができ、例えば、アシル化誘導体;エーテル化誘導体;硫黄含有誘導体;糖質誘導体等を挙げることができる。 これらの内で、アシル化誘導体としては、アセチル化誘導体、プロピオニル化誘導体、ブチリル化誘導体、ペンタノイル化誘導体、ヘキサノイル化誘導体、ヘプタノイル化誘導体等の炭素数1〜6程度のアルキル基を有する低級アルカノイル基によって置換された低級アルカノイル化誘導体を挙げることができる。また、エーテル化誘導体としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、ペンチルエーテル、ヘキシルエーテル等の炭素数1〜6程度の低級アルキルエーテル誘導体を挙げることができる。硫黄含有誘導体としては、スルホン化誘導体を挙げることができる。糖質誘導体としては、グルコースなどの糖がエーテル結合して分岐鎖を形成したものを挙げることができ、例えば、CNNの糖質誘導体についてはWO2002/72594に記載され、CMMの糖質誘導体については特開2007−84462号公報に記載されている。 本発明では、上記した環状四糖、環状五糖及びこれらの誘導体を、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。 本発明の敗血症予防及び治療剤 本発明の敗血症の予防及び治療剤は、上記した有効成分を含む種々の製剤形態とすることができる。特に、敗血症治療の必要な段階で充分な効果と即効性を得るためには、注射剤として、静脈内投与することが好ましい。 注射剤としては、液剤、特に注射用水性製剤が好適例として挙げられる。注射用水性製剤における水性媒体としては、水または水を含有する媒体が挙げられる。水としては、通常滅菌水、好ましくは発熱性物質が含有されていない滅菌水が使用される。水を含有する媒体としては、医薬製剤において用いられている公知の溶媒であればよく、例えば、生理食塩水、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、乳酸配合リンゲル液などが挙げられる。 本発明の敗血症予防及び治療剤では、当技術分野で通常使用されている添加剤を適宜用いることができる。この様な添加剤としては、例えば、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などが挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール等の糖類、塩化ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤などが挙げられる。無痛化剤としては、例えばアルブミン、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、リドカイン塩酸塩、ベンジルアルコールなどが挙げられる。 本発明の敗血症予防及び治療剤には、pHを調整するために、当技術分野で通常用いられている種々のpH調整剤が含有されていても良い。pH調整剤は、酸類であっても塩基類であってもよい。具体的には、酸類としては、例えば、アスコルビン酸、塩酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸、リン酸、硫酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。塩基類としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。その他のpH調整剤として、グリシン、ヒスチジン、ε−アミノカプロン酸などのアミノ酸類なども用いることができる。 本発明の注射用水性製剤は、常法により製造できる。例えば、まず、水性媒体に、本発明に係る注射用水性製剤に含有される成分(以下、含有成分という)を溶解させる。含有成分の混合順序は特に問わず、全ての含有成分を同時に混合してもよいし、一部の含有成分のみを先に上記水性媒体に溶解し、その後、残りの含有成分を溶解させてもよい。 ついで、得られた溶液を、通常、例えばメンブランフィルターによるろ過滅菌、オートクレーブによる加圧熱滅菌、間欠滅菌法等による熱滅菌処理等の滅菌処理を施す。このようにして得られる溶液は、pHが約6〜8程度とするのが好適である。 得られた水性製剤は、例えば輸液バッグやアンプルなどの容器に充填後密封する。 一方、通常用いられる添加剤を必要に応じて使用し、水性媒体に用時溶解して使用する固形剤に加工することもできる。 固形剤は、生理食塩液や、電解質、糖質、アミノ酸、ビタミン、微量元素等を含む輸液に、上記した環状四糖、環状五糖、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分の濃度が0.1〜30質量%となるように溶解して使用できる。 また、本発明に係る注射用水性製剤は、上述のような溶液状態の注射用水性製剤を凍結乾燥または減圧乾燥など公知の乾燥方法により乾燥して粉末状または顆粒状にし、複室容器の一室に固形剤、他室に水性媒体を充填し、用時に上述の水性媒体に溶解する形態の製剤であってもよい。 投与方法 本発明の敗血症の予防及び治療剤の投与方法については、特に制限はなく、剤形、患者の年令、性別、その他の条件、疾患の程度などに応じた方法で投与される。 投与量は患者の症状、年齢等により異なるが、1日体重1kgあたり、有効成分量として0.001〜1gの範囲で投与することが望ましい。 投与方法としては、例えば、注射用水性製剤の場合には、単独で静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、脊髄腔内、腹腔内などに投与される。また、注射用水性製剤は、輸液と混和でき、本発明に係る注射用水性製剤と輸液との混合物として、特に静脈内に投与することもできる。注射用水性製剤と混和される輸液については特に限定されなく、一般的には、商業的に入手可能なまたは通常の輸液が使用される。この様な輸液の具体例としては、ブドウ糖注射液、キシリトール注射液、D−マンニトール注射液、フルクトース注射液、生理食塩液、デキストラン40注射液、デキストラン70注射液、アミノ酸注射液、リンゲル液、乳酸リンゲル液、糖・電解質・アミノ酸・総合ビタミン液などが挙げられる。 本発明の敗血症の予防及び治療剤によれば、溶血等の副作用を惹起することなく敗血症の予防及び治療を行うことができる。しかも、有効成分の半減期が短いので、進行が速い敗血症に対して、必要時に投与し、薬剤への不必要な暴露を回避することができ、重症敗血症に移行することを防いで治療することができる。 以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。 実施例1 グルコースを構成糖とする環状四糖であるCNN((株)林原生物化学研究所製)50g、塩化カルシウム0.1g、塩化カリウム0.15g、塩化ナトリウム3.0g及び乳酸ナトリウム1.55gを注射用水350mLに溶解し、注射用水を加えて全量を500mLとした。これを、ろ過滅菌後100mLずつバッグに充填、密封して注射液を製造した。この注射液を有効成分濃度が10%(W/V)である実施例1の敗血症予防及び治療剤とした。 実施例2 CNN((株)林原生物化学研究所製)10gをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)100mLに溶解した。無菌濾過後凍結乾燥により乾燥して粉末状にし、これを1gずつガラスバイアル瓶に充填、密封して、用時溶解して使用する敗血症予防及び治療用注射剤とした。 実施例3 CNN((株)林原生物化学研究所製)10gを注射用水100mLに溶解し、これをろ過滅菌後凍結乾燥により乾燥して粉末状にした。これを、下室に生理食塩水100mLが充填されたプラスチック製複室容器の上室に充填して、敗血症予防及び治療剤のキット製品とした。 実施例4 CNN((株)林原生物化学研究所製)5gを注射用水50mLに溶解し、これをろ過滅菌後凍結乾燥により乾燥して粉末状にした。これを上室にアミノ酸輸液300mL、下室に糖・電解質輸液600mLが充填されたプラスチック製複室容器の小室に充填し、常法に従い高圧蒸気滅菌して、敗血症予防及び治療剤のキット製品とした。 試験例1LPSモデルラットを用いたCNNの敗血症予防および治療効果の検証 6週齢のSD系雄性ラット(日本チャールス・リバー株式会社から購入)を7日以上の馴化期間(標準飼料AIN−93G:日本農産工業株式会社を自由摂餌)を設けた後、本発明群、コントロール群並びに比較群の3群に群分けした(n=15)。これらのラットには、後述する方法で、エンドトキシンであるリポポリサッカライドを投与して、敗血症ショックを誘発させた。 本発明群には、一昼夜絶食後(以後、実験終了まで絶食とする。)に、被験液として実施例1で得られた注射液1mL/kgを、投与時間1分間以内で尾静脈内投与した。さらにその直後にEscherichia coli 0111:B4由来のリポポリサッカライド(以下「LPS」)の生理食塩溶液(20mg/mL)を、1mL/kgの投与量で投与時間1分間以内にて腹腔内投与した。 一方、コントロール群については、被験液としてCNNを含まない実施例1の組成の注射液を投与した以外は、本発明群と同様に処理した。 また、比較群については、CNNに代えてα-シクロデキストリン(株式会社林原生物化学研究所)を同濃度となるように溶かした注射液を被験液として、同様に実験を行った。 各群について、LPS投与後4時間毎に死亡例数を測定し、24時間まで生存率をみた。LPS投与後4時間毎における各群の生存率(%)を下記表1に示す。 以上の結果から明らかなように、実施例1の敗血症予防及び治療剤を投与した本発明群は、α-シクロデキストリンを投与した比較群に比べて高い生存率を示した。このことから、本発明の敗血症予防及び治療剤が、敗血症に対する予防および治療効果を有することが確認され、初期の段階から有効に使用できることが示唆された。 試験例2LPSモデルラットを用いたCNNの敗血症治療効果の検証 6週齢のSD系雄性ラット(日本チャールス・リバー株式会社から購入)を7日以上の馴化期間(標準飼料AIN−93G:日本農産工業株式会社を自由摂餌)を設けた後、本発明群およびコントロール群の2群に群分けした(n=15)。 本発明群には、一昼夜絶食後(以後、実験終了まで絶食とする。)に、LPSの生理食塩溶液(20mg/mL)を1mL/kgの投与量で投与時間1分間以内にて腹腔内投与し、更にその2時間後、被験液として実施例1で得られた注射液1mL/kgを、投与時間1分間以内で尾静脈内投与した。 一方、コントロール群は、被験液としてCNNを含まない実施例1の組成の注射液を投与した以外は、本発明群と同様に処理した。 各群について、LPS投与後4時間毎に死亡例数を測定し、24時間まで生存率をみた。LPS投与後4時間毎における各群の生存率(%)を下記表2に示す。 上記結果から明らかなように、本発明群は、コントロール群に比べて高い生存率を示した。このことから、本発明の敗血症予防及び治療剤が、敗血症に感染後の治療効果を有することが確認された。 試験例3 CNNの赤血球溶血に及ぼす影響(β-シクロデキストリンとの比較およびCNN濃度の影響)(1)ハムスター赤血球懸濁液の調製ハムスター4〜6箇月齢のSD系雄・雌計30匹分の血液(心臓採血:ヘパリン処理済)25mLを室温下で遠心分離(2000rpm×15min)して血球成分と血漿を分離した。さらにパスツールピペットで血球層の最上部(buffer coat;白血球層)を除去した。これにPBS(0.15M NaCl+10mMリン酸緩衝液、pH7.4)を加え、血球を懸濁し再度遠心分離し(2000rpm×15min)、この操作を3回繰り返して赤血球を得た。これをPBS25mLに懸濁し、6.07×1010個/mLのハムスター赤血球懸濁液とした。 (2)試験方法 上記(1)で調製したハムスター赤血球懸濁液1mLに、CNNの濃度が0mM,1mM,5mMまたは10mMとなるようにPBSに溶かした溶液5mLと、4mLのPBSを添加混合し、37℃で30分間反応させた。そして、反応後の反応液の遠心上清(12,000rpm×15min)について、577nmにおける吸光度を測定した。 また比較群として、CNNに代えてβ-シクロデキストリンを5mMまたは10mMとなるように溶かしたPBS溶液を調製し、CNNの代わりに添加して同様に行った群を設けた。 (3)結果反応液の遠心上清の577nmにおける吸光度の結果を下記表3に示す。 (4)考察 表3から明らかなように、反応上清の吸光度から求めた溶血率(%:完全溶血を100とした相対値)については、CNNはβ-シクロデキストリンと比較すると、明らかに低い値を示した。 以上の結果より、CNNは、β-シクロデキストリンに見られる強い赤血球溶血作用を示さないことが判った。グルコースを構成糖とする環状四糖、グルコースを構成糖とする環状五糖、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を有効成分として含有する敗血症の予防及び治療剤。シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}、シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}、シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を有効成分として含有する敗血症の予防及び治療剤。シクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を有効成分として含有する敗血症の予防及び治療剤。静脈内投与用製剤である請求項1〜3のいずれかに記載の敗血症の予防及び治療剤。静脈内投与用製剤が水溶液又は用時溶解用固形剤である請求項4に記載の敗血症の予防及び治療剤。濃度0.1〜30質量%のシクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の水溶液である請求項5に記載の敗血症の予防及び治療剤。 【課題】敗血症に対して十分な治療効果を有し、しかも副作用のない敗血症の予防及び治療剤を提供する。【解決手段】グルコースを構成糖とする環状四糖、グルコースを構成糖とする環状五糖、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を有効成分として含有する敗血症の予防及び治療剤。【選択図】なし


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