タイトル: | 公開特許公報(A)_加硫ゴム製品の加硫度評価方法 |
出願番号: | 2008249160 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 33/44,C08L 21/00 |
作田 学 甚野 史彦 木村 憲仁 JP 2010078524 公開特許公報(A) 20100408 2008249160 20080926 加硫ゴム製品の加硫度評価方法 東海ゴム工業株式会社 000219602 西藤 征彦 100079382 作田 学 甚野 史彦 木村 憲仁 G01N 33/44 20060101AFI20100312BHJP C08L 21/00 20060101ALI20100312BHJP JPG01N33/44C08L21/00 1 2 OL 8 4J002 4J002AC001 4J002AC011 4J002DA037 4J002DA046 4J002DE107 4J002FD017 4J002FD020 4J002FD146 4J002FD150 本発明は、加硫ゴム製品のゴム物性に影響を与える加硫度を評価する方法に関するものである。 加硫ゴムは、原料ゴムに硫黄やその他の架橋剤,加硫促進剤等を加え、加熱を行なうことによって、ゴム分子鎖間あるいはその分子鎖の中に三次元網目状の架橋構造が形成されている。この加硫ゴムの加硫度(架橋密度)を測定する手段としては、加硫ゴムの適宜箇所を切り出し、加硫ゴム膨張前後の体積変化、すなわち膨潤度(加硫ゴムの良溶媒浸漬前後の体積変化の割合)からフローリイーレーナー(Flory−Rehner)の式を用いて架橋密度を求め、架橋構造を分析するのが一般的である(例えば、特許文献1等を参照。)。 一方、工場等で得られる加硫ゴム製品について、加硫工程終了後の架橋度合い(加硫度)を定量的に測定することができれば、製品である加硫ゴムの物性(弾性,耐久性等)を推測することができる。このことから、加硫工程等の製造現場においては、上記のような厳密な加硫度の測定に代わり、簡易的に加硫度合いを推測する方法として、ゴム製品から切り出した試験片(テストピース)を室温下でトルエンに一定時間浸漬し、その浸漬前と浸漬後の試験片の膨潤度(体積変化率=浸漬後の体積/浸漬前の体積)を比較する「トルエン膨潤法」が用いられている(例えば、特許文献2〜3等を参照。)。特開2000−309665号公報特開2001−261891号公報特開2007−153209号公報 この「トルエン膨潤法」は、大掛かりな設備なしに簡単に行なうことができるうえ、試験片のサイズ・形状に制限がなく、異なる条件のサンプルを同時に比較することができるという利点がある。図1にトルエン膨潤法による膨潤度測定の結果の一例を示す。なお、図において、点A1〜A4が測定されたトルエン膨潤度の値である。 このグラフのように、トルエン膨潤法によれば、簡便にゴム製品の膨潤度(加硫度合い)を測定することができる。しかしながら、トルエン膨潤法による膨潤度の測定は、未反応部位の多いサンプル(A1)と、反応(架橋)が進み過ぎたサンプル(A4)とが同じような値を取ってしまうため、加硫度合いの大小の判別が難しいという問題があった。すなわち、加硫が不充分では、満足のできるゴム物性が得られず、逆に加硫が過度に行なわれると、ゴムの線状分子に破断が生じ易く、ゴムの性能が早期に劣化してしまうこととなる。 本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複雑な操作を必要とせず、ゴム製品の加硫度合いを、加硫工程等の製造現場において、容易にかつ精度良く推定することのできる加硫ゴム製品の加硫度評価方法の提供をその目的とする。 上記の目的を達成するため、本発明の加硫ゴム製品の加硫度の評価方法は、加硫工程後のゴム製品から所定形状の試験片を採取し、この試験片の初期厚さt0を測定した後、上記試験片にこの厚さ方向の荷重をかけ、試験片の厚さが上記初期厚さt0の25%減少するように圧縮した状態(圧縮時の厚さt2)で、所定温度で所定時間の加熱処理を行なうとともに、加熱処理後に上記圧縮を開放して、室温下で30分放冷した後、この試験片の老化後厚さt1を測定して、圧縮永久ひずみ率CS〔((t0−t1)/(t0-t2))×100〕を求め、この圧縮永久ひずみ率CSを基準にして加硫度合いを評価するという方法をとる。 本発明は、加硫ゴム製品の製造現場で加硫条件を決定するにあたり、「製品の加硫度が加硫曲線のどのあたりまで来ているか、簡単に確認したい」というニーズに応えるべくなされたものである。 先に述べたように、従来から、加硫ゴムの加硫度合いを簡便に判定する方法として「トルエン膨潤法」が知られていたが、この測定方法は精度に欠ける面があった。そこで、本発明者らは、1)低架橋状態では、加硫ゴムの可塑性変形が大きく、永久ひずみも大きくなるが、架橋が進むにしたがって弾性体となり、永久ひずみが小さくなる。つまり、圧縮永久ひずみが少ない状態が、適正な架橋状態(加硫状態)である。2)加硫ゴムの圧縮永久ひずみの値が大きくばらついたり、基準値より大きく外れる場合は、成形(加硫)状態が適正でないと考えられる、という点に着目し、鋭意検討を重ねた。その結果、JIS K 6262:2006(加硫ゴム及び熱可塑性樹ゴム−常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方)に規定される「圧縮永久ひずみ試験」を応用し、予備的実験により予め求めた基準値(基準加硫度曲線)と供試体の圧縮永久ひずみ率とを比較することにより、ゴム製品の加硫度合いの推定の精度を向上させることが可能であることを見出し、本発明に到達した。 本発明は、以上のような知見にもとづきなされたものであり、本発明の加硫ゴム製品の加硫度評価方法は、ゴム製品から採取した試験片の初期厚さt0を測定し、その試験片に厚さ方向の荷重をかけて、試験片の厚さが初期厚さt0の75%となるように圧縮した状態(圧縮時の厚さt2)で所定の加熱処理を行なうとともに、加熱処理後に圧縮を開放して放冷した後、この試験片の加熱処理(老化)後厚さt1を測定して、圧縮永久ひずみ率CS〔((t0−t1)/(t0-t2))×100〕を求める。そして、この圧縮永久ひずみ率(%)を、予め実験により求めた基準値あるいは加硫度曲線(上記ひずみ率と加硫工程で加えられた積算熱量との相関を表すグラフ等)と比較することにより、ゴム製品の加硫度合いを簡単にかつ精度良く推定し、評価することができる。 また、この加硫度合いの測定方法は、大掛かりな設備や、複雑な操作を必要とせず、試験片の形状を比較的自由に設定することが可能である。したがって、本発明の加硫ゴム製品の加硫度評価方法は、加硫工程等の製造現場において、容易にかつ精度良く実施することができる。 なお、加硫ゴム製品の製造現場において、加硫工程における加熱条件の設定等に、本発明の加硫ゴム製品の加硫度評価方法を用いれば、その製品に最適な加硫条件(加硫温度,加硫時間等)を簡易に設定することができる。また、出来上がった加硫ゴム製品の加硫度合いを、容易に判定することが可能になる。したがって、本発明の加硫ゴム製品の加硫度評価方法は、製造現場における生産効率および歩留まりを向上させ、ひいては加硫ゴム製品のコストダウンを達成することが可能になる。 つぎに、本発明の実施の形態を実際に行なった試験にもとづいて詳しく説明する。 なお、本発明の加硫ゴム製品の加硫度評価方法は、加硫工程終了後のゴム製品から、所定形状の試験片を直接採取して行なわれるものであるが、以下の実施例では、工程(製造現場)における試験片採取に代えて、実験室で作製した検体から採取したサンプルを用いて行なった。また、本発明は、これら実施例に限定されるわけではない。〔試験片の作製〕 本実施例においては、製造工程における試験片採取に代えて、実験室レベルでの再現試験として、下記「表1」に示す割合で混合してなる加硫天然ゴム材料を用いて、加硫条件(加硫時間)を変えながら、縦100mm×横100mm×厚さ10mmの板状サンプルを作製し、得られた板状サンプルを10mm角の立方体にカットして供試試験片とした。なお、サンプルは全て170℃で加硫作業を行ない、その加硫時間は、サンプルA1が8分、A2が9分、A3が10分、A4が11分である。サンプル作成条件:加硫温度:170℃ 加硫時間:8,9,10,11分〔圧縮永久ひずみ率の測定〕 つぎに、本実施例における「圧縮永久ひずみ率」の測定方法を説明する。 圧縮永久ひずみ率CSは、JIS K 6262:2006に規定される「圧縮永久ひずみ試験」を準用したものであり、つぎのとおりである。1.サンプル(加硫ゴム製品)の適当な部位より縦10mm×横10mm×高さ(t0)10mmのゴム立方体(試験片)を切り出す。2.縦90mm×横250mm×厚さ20mmの鉄板2枚の間に、上記試験片と、厚さ(t2)7.5mm(試験片の圧縮率25%に相当)のスペーサーを挟みこみ、ボルト等を用いて、荷重をかけた状態で固定する。3.所定温度(実施例1においては100℃)に設定した熱老化槽(東洋精機社製 ギヤーオーブン)に、上記鉄板に挟んだ状態の試験片を入れ、72時間の熱処理を行なう。4.加熱(老化)処理完了後、試験片を熱老化槽から取り出し、速やかにボルト等を外し、圧縮を開放する。その後、木製等の平板の上に試験片を載置し、30分間室温(25℃)で放冷する。5.30分の放冷時間経過後、素早く試験片の厚さ(t1)を測定する。 なお、試験片の「厚さ」の測定は、JIS K 6250に準じた方法で行なうものとし、厚さの測定にはマイクロメーター(Mitutoyo社製)を用いた。〔圧縮永久ひずみ率の計算〕 圧縮永久ひずみ率CS(%)は、上記で測定した各厚さt0〜t2を用いて、下記式(1)により求めた。圧縮永久ひずみ率CS=〔((t0−t1)/(t0-t2))×100〕・・・(1) なお、本実施例においては、t0=10mm,t2=7.5mmの固定値であるため、以下の式(1)’で代用できる。 圧縮永久ひずみ率CS(%)=〔(10−t1)×40〕 ・・・(1)’〔膨潤度の測定〕 また、[比較例1]として、従来の「トルエン膨潤法」による膨潤度Sも測定した。上記と同じサンプルA1〜A4を用いて、試験片を室温下(25℃)でトルエン中に24時間浸漬し、浸漬前後の体積比(浸漬後の体積/浸漬前の体積)を、比重計および質量計を用いて測定した。 なお、サンプルの膨潤した部位には、トルエン(比重:0.87)が全て充填されているものと仮定し、膨潤後のサンプルの体積V2は、下記式(2)により近似されるものとする。 トルエン浸漬後の体積V2≒V1+((W2−W1)/0.87) ・・・(2)したがって、トルエン浸漬による「膨潤度」は以下の式(3)により計算される。 膨潤度S=(((W2−W1)/0.87)/V1)+1 ・・・(3)〔式中、V1はトルエン浸漬前のサンプル体積、W1はトルエン浸漬前のサンプル質量、W2はトルエン浸漬後のサンプル質量であり、0.87はトルエンの標準比重を表す。〕 比較例1(トルエン膨潤度)の測定結果を図1に、実施例1(圧縮永久ひずみ率)の測定結果を図2に示す。なお、図1および図2における点A1〜A4は、それぞれ同じ試験片による測定結果を示し、図1はトルエン膨潤度と加硫条件(加硫時間)の関係を、図2は圧縮永久ひずみ率(%)と加硫条件(加硫時間)の関係を表すグラフである。 これら図1,2のグラフから、以下のことが分かる。・図1のグラフ(トルエン膨潤度)では、先にも述べたとおり、未反応部位の多い(加硫時間の短い)試験片A1と、反応が進み過ぎた(加硫時間の長い)試験片A4とが同じような値(膨潤度)を取ってしまい、加硫度合いの大小の判別が難しい。・これに対して、図2のグラフ(圧縮永久ひずみ率)では、測定結果が一次(線形)回帰可能で、その相関係数も高いと推察される。したがって、この方法によれば、加硫ゴムの加硫度合い(架橋度合い)と、そのゴム物性(弾性,耐久性等)を定量的にかつ容易に推測することができる。 つぎに、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、EPDM)を用いて行なった実施例2の試験について説明する。〔試験片の作製〕 本実施例においても、製造工程における試験片採取に代えて、実験室レベルでの再現試験として、下記「表2」に示す割合で混合してなるEPDM材料を用いて、加硫条件(加硫時間)を変えながら、縦100mm×横100mm×厚さ10mmの板状サンプルを作製し、得られた板状サンプルを10mm角の立方体にカットして供試試験片とした。なお、サンプルは全て170℃で加硫作業を行ない、その加硫時間は、サンプルB1が9分、B2が10分、B3が11分、B4が12分である。サンプル作成条件:加硫温度:170℃ 加硫時間:9,10,11,12分〔圧縮永久ひずみ率の測定および計算〕 本実施例における「圧縮永久ひずみ率」の測定方法、および、その計算方法は、上記実施例1と同様である。ただし、天然ゴムの試験とは異なる点は、熱老化槽の温度が125℃に設定され、この条件下で72時間の熱処理が行なわれる点である。〔膨潤度の測定〕 また、[比較例2]として、同じサンプルB1〜B4を用いて、比較例1の方法により「トルエン膨潤度」を測定した。 比較例2(トルエン膨潤度)の測定結果を図3に、実施例2(圧縮永久ひずみ率)の測定結果を図4に示す。なお、図3および図4における点B1〜B4は、それぞれ同じ試験片による測定結果を示し、図3はトルエン膨潤度と加硫条件(加硫時間)の関係を、図4は圧縮永久ひずみ率(%)と加硫条件(加硫時間)の関係を表すグラフである。 これら図3,4のグラフから、以下のことが分かる。・図3のグラフ(トルエン膨潤度)でも、天然ゴムの場合と同様、未反応部位の多い(加硫時間の短い)試験片B2と、反応が進み過ぎた(加硫時間の長い)試験片B4とが比較的近い値を取る傾向にあり、加硫度合いの大小の判別が難しいことが見てとてる。また、加硫時間による膨潤度差があまり見られず、結果のばらつきによっては、誤差が大きくなってしまう恐れがある。・これに対して、図4のグラフ(圧縮永久ひずみ率)では、測定結果が、天然ゴムと同様の一次(線形)回帰が可能であり、しかも上記膨潤度の結果に比べ、加硫時間による差をはっきりと認識することができる。したがって、圧縮永久ひずみ率を用いた方法によれば、加硫ゴムの加硫度合い(架橋度合い)と、そのゴム物性(弾性,耐久性等)を定量的にかつ容易に推測することができる。 これら実施例1,2の結果から、本発明の加硫ゴム製品の加硫度評価方法は、大掛かりな設備や、複雑な操作を必要とせず、加硫工程等の製造現場において、容易にかつ精度良く実施することができる。また、出来上がった加硫ゴム製品の加硫度合い、すなわちその製品のゴム物性を、容易に判定することが可能になる。したがって、本発明の加硫ゴム製品の加硫度評価方法は、製造現場における生産効率および歩留まりを向上させ、ひいては加硫ゴム製品のコストダウンを達成することができる。 本発明の加硫ゴム製品の加硫度を評価する方法は、加硫ゴム製品の製造現場において、最適な加硫条件を決定する方法として好適である。また、製品の加硫度合いが、目標とする範囲内にあるかどうかの判定(品質管理等)に用いることができる。本発明の比較例1における「トルエン膨潤度」の加硫時間ごとの変化を示すグラフ図である。本発明の実施例1における「圧縮永久ひずみ率」の加硫時間ごとの変化を示すグラフ図である。本発明の比較例2における「トルエン膨潤度」の加硫時間ごとの変化を示すグラフ図である。本発明の実施例2における「圧縮永久ひずみ率」の加硫時間ごとの変化を示すグラフ図である。 加硫ゴム製品の加硫度を評価する方法であって、加硫工程後のゴム製品から所定形状の試験片を採取し、この試験片の初期厚さt0を測定した後、上記試験片にこの厚さ方向の荷重をかけ、試験片の厚さが上記初期厚さt0の25%減少するように圧縮した状態(圧縮時の厚さt2)で、所定温度で所定時間の加熱処理を行なうとともに、加熱処理後に上記圧縮を開放して、室温下で30分放冷した後、この試験片の老化後厚さt1を測定して、圧縮永久ひずみ率CS〔((t0−t1)/(t0-t2))×100〕を求め、この圧縮永久ひずみ率CSを基準にして加硫度合いを評価することを特徴とする加硫ゴム製品の加硫度評価方法。 【課題】複雑な操作を必要とせず、ゴム製品の加硫度合いを、加硫工程等の製造現場において、容易にかつ精度良く推定することのできる加硫ゴム製品の加硫度評価方法を提供する。【解決手段】加硫工程後のゴム製品から所定形状の試験片を採取し、この試験片の初期厚さt0を測定した後、上記試験片にこの厚さ方向の荷重をかけ、試験片の厚さが上記初期厚さt0の25%減少するように圧縮した状態(圧縮時の厚さt2)で、所定温度で所定時間の加熱処理を行なうとともに、加熱処理後に上記圧縮を開放して、室温下で30分放冷した後、この試験片の老化後厚さt1を測定して、圧縮永久ひずみ率CS〔((t0−t1)/(t0-t2))×100〕を求め、この圧縮永久ひずみ率CSを基準にして加硫度合いを評価する。【選択図】図2