タイトル: | 公開特許公報(A)_キサンチンオキシダーゼ阻害剤 |
出願番号: | 2008227090 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/353,A61K 31/7048,A61K 36/75,A61P 43/00,A61P 19/06,A61K 36/00 |
近藤 誠 山川 実紀 JP 2010059104 公開特許公報(A) 20100318 2008227090 20080904 キサンチンオキシダーゼ阻害剤 株式会社ポッカコーポレーション 308009277 国立大学法人信州大学 504180239 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 近藤 誠 山川 実紀 A61K 31/353 20060101AFI20100219BHJP A61K 31/7048 20060101ALI20100219BHJP A61K 36/75 20060101ALI20100219BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100219BHJP A61P 19/06 20060101ALI20100219BHJP A61K 36/00 20060101ALI20100219BHJP JPA61K31/353A61K31/7048A61K35/78 KA61P43/00 111A61P19/06A61K35/78 Y 5 OL 11 4C086 4C088 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA08 4C086DA37 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA96 4C086ZC20 4C088AB62 4C088AC04 4C088BA08 4C088CA25 4C088NA14 4C088ZA96 4C088ZC20 本発明は、キサンチンオキシダーゼの活性を阻害するキサンチンオキシダーゼ阻害剤に係り、詳しくは特定のポリフェノール類を有効成分として含有するキサンチンオキシダーゼ阻害剤に関するものである。 キサンチンオキシダーゼは、哺乳類では肝臓や小腸等に局在する酵素であり、プリン系化合物の代謝過程において、ヒポキサンチンからキサンチンへの酸化反応及びキサンチンから尿酸への酸化反応を触媒している。このキサンチンオキシダーゼにより産生される尿酸は、ヒトにおいてはプリン系化合物の最終分解産物として尿中に排泄される。 プリン系化合物の代謝過程において、尿酸の排泄低下や産生増加等の代謝異常が生じると、体内(血中内)の尿酸値が上昇して高尿酸血症となり、痛風関節炎(痛風結節)、尿路結石(尿酸結石)、痛風腎(腎障害)等を発症させる危険性が高まることが知られている。また、近年では、高尿酸血症は、心・脳血管障害(例えば動脈硬化)の独立した危険因子であることが示唆されるとともに、メタボリックシンドロームのバイオマーカーとしての重要性も指摘されている。 従来、高尿酸血症の治療には、例えば、尿酸産生抑制剤であるアロプリノールが使用されている。アロプリノールはキサンチンオキシダーゼの強力な阻害剤であり、キサンチンオキシダーゼを阻害することによって尿酸の産生を抑制して血中の尿酸値を低下させる作用を有する。しかしながら、アロプリノールには肝障害等の副作用が発現するおそれがあることが報告されている。そのため、副作用の少ない天然物由来、とくに食品成分由来のキサンチンオキシダーゼ阻害剤が注目されている。このような天然物由来のキサンチンオキシダーゼ阻害剤としては、例えば特許文献1〜3に開示されるものが知られている。特開2003−174857号公報特開2003−252776号公報特開2006−036787号公報 ところで、レモン等の柑橘類の果実には、エリオシトリン、ヘスペリジン及びナリンジン等のポリフェノール類が多量に含有されることが知られている。そして、それらのポリフェノール類は、抗酸化作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用及び抗炎症作用等の健康機能の向上効果があることが確認されている。 この発明は、本研究者らによる鋭意研究の結果、レモンに含有される特定のポリフェノール類がキサンチンオキシダーゼ阻害作用を発揮することを見出したことに基づいてなされたものである。その目的は、キサンチンオキシダーゼ阻害作用に優れたキサンチンオキシダーゼ阻害剤を提供することにある。 上記の目的を達成するために請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体から選ばれる少なくとも一種のポリフェノール類を有効成分として含有することを特徴とする。 請求項2に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、請求項1に記載の発明において、前記ポリフェノール類がエリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン又はジオスメチンであることを特徴とする。 請求項3に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ポリフェノール類は、レモン抽出物又は該レモン抽出物をβ−グルコシダーゼ処理した酵素処理物として配合されていることを特徴とする。 請求項4に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、尿酸産生抑制剤として使用されることを特徴とする。 請求項5に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、尿酸の代謝異常によって起こる疾患の予防剤又は治療剤として使用されることを特徴とする。 本発明によれば、キサンチンオキシダーゼ阻害作用に優れたキサンチンオキシダーゼ阻害剤を提供することができる。 以下、本発明を具体化したキサンチンオキシダーゼ阻害剤の一実施形態を詳細に説明する。 本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体から選ばれる少なくとも一種のポリフェノール類を有効成分として含有する。それらの有効成分は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤中に単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの有効成分の中でも、キサンチンオキシダーゼ阻害作用が優れることから、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、及びジオスメチンから選ばれる少なくとも一種のポリフェノール類が好ましい。 キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有するエリオディクティオール(eriodictyol;3',4',5,7-tetrahydroxyflavanone;C15H12O6)、ヘスペレチン(hesperetin;3',5,7-trihydroxy-4'-methoxyflavanone;C16H14O6)、ナリンゲニン(naringenin;4',5,7-trihydroxyflavanone;C15H12O5)及びジオスメチン(Diosmetin;3',5,7-trihydroxy-4'-methoxyflavone;C16H12O6)はポリフェノールの一種であり、天然物としては自身をアグリコンとして糖が結合した配糖体の形で存在している。これら配糖体は、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン又はジオスメチンをアグリコンとして単糖類又は二糖類がグリコシド結合により結合したエリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体である。そして、上記各配糖体は、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン及びジオスメチンと同様にキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する。なお、上記各配糖体に含有される単糖類及び二糖類の構造は特に限定されるものではない。 エリオディクティオール配糖体としては、例えば、エリオディクティオールとルチノース(L−ラムノシル−D−グルコース)との配糖体であるエリオシトリン(eriocitrin)、エリオディクティオールとグルコースとの配糖体であるエリオディクティオール−7−グルコシド(eriodictyol-7-glucoside)等が挙げられる。ヘスペレチン配糖体としては、ヘスペレチンとルチノースとの配糖体であるヘスペリジン(hesperidin)(ビタミンP)等が挙げられる。ナリンゲニン配糖体としては、ナリンゲニンとネオヘスペリジオース(neohesheridiose)との配糖体であるナリンジン(naringin)、ナリンゲニンとルチノースとの配糖体であるナリルチン(narirutin)等が挙げられる。ジオスメチン配糖体としては、ジオスメチンとルチノースとの配糖体であるジオスミン(diosmin)等が挙げられる。 これらエリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体としては、生合成品、化学合成品、それらの成分を含有する天然物、同天然物を原料として抽出・精製処理して得られる精製品のいずれを使用してもよい。 以下では、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体を天然物から得る方法の一例について説明する。 エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体を含有する天然物としては、例えば、レモン、ライム、グレープフルーツ、スダチ等の柑橘類が挙げられる。そして、これら柑橘類の葉、果実又はその果実の構成成分の一部を含有するものが上記原料として好ましく用いられる。とくに、レモン果実を構成する果皮(アルベド、フラベド)、じょうのう膜及びさのう等を用いることが好ましい。また、エリオシトリンはミント類にも含有されるため、柑橘類以外にミント類の葉、果実等を原料として使用することもできる。 そして、これら原料に対して、極性溶媒(メタノール、エタノール、水等)による抽出処理、及びクロマトグラフィによる精製処理を行なうことにより、上記各配糖体を得ることができる(例えば、特開2000−217560号公報及び特開2007−230878号公報参照)。 また、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン及びジオスメチンは、上記原料を抽出処理して得られる抽出物に対してβ−グルコシダーゼ処理した酵素処理物、又は該酵素処理物からさらに精製処理を行なうことにより得られる精製品として得ることができる。β−グルコシダーゼ処理は、上記抽出物にβ−グルコシダーゼを作用させ、同抽出物に含有される上記各配糖体のグリコシド結合を切断する酵素反応を行なわせる処理である。このβ−グルコシダーゼ処理により、上記各配糖体から、そのアグリコンであるエリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン及びジオスメチンが生成される。なお、このβ−グルコシダーゼ処理は、微生物を用いた発酵処理又は酵素を用いたグリコシダーゼ処理等の公知の方法を用いて行なうことができる(例えば、特開2007−230878号公報参照)。 微生物による発酵処理は、上記抽出物にアスペルギルス(Aspergillus)属微生物を接種し、該微生物を所定の発酵条件下で所定期間培養することにより行われる処理である。この微生物発酵処理は、微生物(特に栄養菌糸)が生産するβ−グリコシダーゼにより上記各配糖体からアグリコンを遊離させる。上記微生物としては、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ウサミ等の黒麹菌、又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーイエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)等の黄麹菌が挙げられる。これらの微生物のうち、アグリコン化反応の効率が良好であることから黒麹菌が好適に用いられ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ又はアスペルギルス・ウサミが特に好適に用いられる。 また、酵素を用いたグリコシダーゼ処理は、上記原料にβ−グリコシダーゼを作用させ、原料中に含まれる配糖体のグリコシド結合を切断する酵素反応を行わせる処理である。このグリコシダーゼ処理としては、該処理の効率を高めるために、上記抽出物にβ−グリコシダーゼを添加して酵素反応を行わせるのが好ましい。或いは、酵素活性を有するβ−グリコシダーゼを固定化させた担体と、上記抽出物とを接触させることにより前記酵素反応を行わせてもよい。β−グリコシダーゼとしては、上記アスペルギルス属微生物が産生する上記β−グリコシダーゼ又はペニシリウム・マルチカラー(Penicillium multicolor)が産生するβ−グリコシダーゼ等が好適に用いられる。β−グリコシダーゼは、上記微生物より抽出精製したものを使用しても、市販品を使用してもよい。 本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を効果・効用とする医薬品、医薬部外品、健康食品、特定保健用食品、健康飲料、栄養補助食品等の組成物に配合されることにより摂取される。 本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤を医薬品として使用する場合、又は医薬品中に配合させて使用する場合における投与方法としては、例えば、服用(経口摂取)により投与する方法(経口投与)、腸内投与(経腸投与)等が挙げられる。剤形としては、特に限定されないが、例えば、ガム製剤、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等が挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲において、添加剤としての賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。 本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤を飲食品として使用する場合には、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、例えば、粉末状、錠剤状、顆粒状、液状(ドリンク剤等)、カプセル状、シロップ、キャンディー等の形状に加工して健康食品製剤、栄養補助食品等として使用することができる。上記の飲食品としては、具体的にはスポーツドリンク、茶葉やハーブなどから抽出した茶類飲料、牛乳やヨーグルト等の乳製品、ペクチンやカラギーナン等のゲル化剤含有食品、グルコース、ショ糖、果糖、乳糖やデキストリン等の糖類、香料、ステビア、アスパルテーム、糖アルコール等の甘味料、植物性油脂及び動物性油脂等の油脂等を含有する飲料品や食料品が挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲において、基材、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤等を適宜添加してもよい。 本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤の投与量(摂取量)は、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン又はジオスメチンが有効成分として配合される場合には、成人1日当たり、好ましくは0.1〜2500mg/kg体重、より好ましくは1〜700mg/kg体重である。1日当たりの投与量(摂取量)が0.1mg/kg未満の場合には、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を十分に発揮することができなくなるおそれがある。また、1日当たりの投与量(摂取量)が2500mg/kgを超える場合には、それ以上のキサンチンオキシダーゼ阻害作用を得ることが難しく、不経済である。 また、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体又はジオスメチン配糖体が有効成分として配合される場合のキサンチンオキシダーゼ阻害剤の投与量(摂取量)は、成人1日当たり、好ましくは0.4〜5000mg/kg体重、より好ましくは4〜700mg/kg体重である。1日当たりの投与量(摂取量)が0.4mg/kg未満の場合には、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を十分に発揮することができなくなるおそれがある。また、1日当たりの投与量(摂取量)が5000mg/kgを超える場合には、それ以上のキサンチンオキシダーゼ阻害作用を得ることが難しく、不経済である。 次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。 (1)本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体から選ばれる少なくとも一種のポリフェノール類を有効成分として含有する。したがって、キサンチンオキシダーゼを効果的に阻害することができる。 (2)本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤において、好ましくは、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン又はジオスメチンが有効成分として適用される。かかる場合には、より効果的にキサンチンオキシダーゼを阻害することができる。 (3)本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤において、好ましくは、有効成分である上記ポリフェノール類として、レモン等の天然物からの抽出物、又は同抽出物をβ−グルコシダーゼ処理した酵素処理物が適用される。かかる場合、天然物由来であるため、副作用が少なく、生体に対して、より安全に適用することができる。それにより、医薬品、飲食品に容易に適用することができる。 (4)本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、効果的にキサンチンオキシダーゼを阻害する。したがって、生体内における尿酸の産生を抑制することができる。よって、血中の尿酸値をコントロールする尿酸産生抑制剤として好適に使用することができる。 (5)本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、生体内における尿酸の産生を抑制することができる。したがって、尿酸の代謝異常(例えば高尿酸血症)によって起こる疾患の予防剤又は治療剤として好適に使用することができる。 なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。 ・本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤において、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体又はジオスメチン配糖体が有効成分として配合される場合には、これら有効成分又はこれらの有効成分が含有される天然素材とβ−グルコシダーゼとを同時に摂取してもよい。 ・ 本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤を、例えば馬、牛等のヒト以外の動物に使用してもよい。 次に、各試験例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。 <キサンチンオキシダーゼ阻害作用に関する試験> 本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤のキサンチンオキシダーゼ阻害作用を評価した。本試験では、キサンチンオキシダーゼ阻害剤の有効成分として、エリオディクティオール(Extrasynthese.S.A.社製)、ヘスペレチン(SIGMA社製)、ナリンゲニン(SIGMA社製)、ジオスメチン(SIGMA社製)、エリオシトリン(Extrasynthese.S.A.社製)、ヘスペリジン(SIGMA社製)、ナリンジン(SIGMA社製)、ナリルチン(Extrasynthese.S.A.社製)、ジオスミン(SIGMA社製)、レモン抽出物及び同レモン抽出物をβ−グルコシダーゼにより処理した酵素処理物の11種を用いた。 [試験例1−1:各種ポリフェノール類を用いた試験] まず、キサンチンオキシダーゼ阻害剤の有効成分として各種ポリフェノール類を用いた試験を行なった。ポリフェノール類であるエリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン及びジオスメチンをそれぞれ100μg/mlとなるように50%エタノール溶液に溶解させて試験溶液を調製した。また、ポリフェノール類であるエリオシトリン、ヘスペリジン、ナリンジン、ナリルジン及びジオスミンをそれぞれ300μg/mlとなるように50%エタノール溶液に溶解させて試験溶液を得た。また、ポリフェノール類未添加の50%エタノール溶液を用意し、これをコントロールとして用いた。 続いて、pH7.5に調製した1/15Mリン酸緩衝液(375μl)と1.8mUキサンチンオキシダーゼ[bovine milk由来](100μl)とを混合した溶液に、上記試験溶液及びコントロールをそれぞれ100μl添加して反応溶液を作成した。各反応溶液を25℃にて15分間プレインキュベートした後、基質として0.15mMキサンチン溶液(300μl)を添加して、25℃にて30分間インキュベートした。なお、この酵素反応時におけるポリフェノール類の濃度は、同ポリフェノール類がエリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン及びジオスメチンである場合には11.4μg/mlである。そして、上記ポリフェノール類がエリオシトリン、ヘスペリジン、ナリンジン、ナリルジン及びジオスミンである場合には34.2μg/mlである。 その後、反応溶液に1N HCl(125μl)を添加して酵素反応を停止させるとともに、反応溶液中に産生された尿酸産生量を測定した。尿酸産生量の測定は、290nmにおける吸光度を吸光度計にて測定することにより行なった。そして、得られた尿酸産生量に基づいて、以下の計算式によりキサンチンオキシダーゼ阻害率を算出した。その結果を下記表1に示す。 キサンチンオキシダーゼ阻害率(%)=(1−A/B)×100 A:試験試料添加時における尿酸産生量 B:コントロール添加時における尿酸産生量 表1に示すように、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオシトリン、ヘスペリジン、ナリンジン、ナリルチン及びジオスミンのいずれもキサンチンオキシダーゼ阻害作用を示した。また、エリオディクティオールを添加した場合には、その配糖体であるエリオシトリンを添加した場合と比較して、質量比にして約1/3(モル比にして約2/3)程度の添加量であるにも拘らず、エリオシトリンよりも高いキサンチンオキシダーゼ阻害作用を示した。同様に、ヘスペレチン及びナリンゲニンも、それぞれの配糖体であるヘスペリジン、ナリンジン、ナリルジンと比較して高いキサンチンオキシダーゼ阻害作用を示した。これらの結果から、ポリフェノール類は、配糖体の状態よりも、糖部のない状態で配合することがより効果的であることが確認された。 [試験例1−2:レモン抽出物及びその酵素処理物を用いた試験] 次に、キサンチンオキシダーゼ阻害剤の有効成分としてレモン抽出物及び酵素処理物を用いた試験を行なった。レモン果皮を粉砕したものに対して、蒸留水を抽出溶媒として抽出処理を行なった後、固液分離処理を行なうことによりレモン抽出液を得た。そして、このレモン抽出液を合成吸着樹脂に供するとともに、蒸留水にて同合成樹脂の洗浄を行なった。その後、合成樹脂に吸着した吸着成分を30%エタノールにて溶出させるとともに、その中で、エリオシトリンが最も多く含まれる画分を回収し、濃縮・凍結乾燥することにより粉末状のレモン抽出物を得た。得られたレモン抽出物の組成を下記表2に示す。 また、得られたレモン抽出物(2g)を蒸留水(350ml)に溶解させた溶液(エリオシトリン濃度が6000ppm)に、β−グルコシダーゼ(200mg)を添加し、45℃にて1時間インキュベートした。その後、上記溶液と同量のエタノールを加え、遠心除去することにより不純物と共にβ−グルコシダーゼを除去した。このものを濃縮・凍結乾燥することにより粉末状の酵素処理物を得た。得られた酵素処理物の組成を下記表3に示す。 そして、得られたレモン抽出物及び酵素処理物を、それぞれ250、500、750、1000μg/mlとなるように50%エタノール溶液に溶解させ、試験試料を得た。そして、上記試験例1−1と同様の方法にて、キサンチンオキシダーゼ阻害率を算出した。その結果を下記表4に示す。なお、本試験例における酵素反応時の各実施例の濃度はそれぞれ85.5、114.0μg/mlである。 表4に示すように、レモン抽出物及び酵素処理物のいずれもキサンチンオキシダーゼ阻害作用を示した。この結果から、レモン抽出物の状態で配合した場合にもキサンチンオキシダーゼ阻害作用を得られることが確認された。また、β−グルコシダーゼ処理を行なった酵素処理物は、同処理を行なっていないレモン抽出物と比較してより高い阻害作用を示した。この結果から、β−グルコシダーゼ処理を行うことがより効果的であることが確認された。 <尿酸値低下作用に関する試験> [試験例2−1:マウスを対象とした試験] 本試験例では、5週齢のオスのddyマウス(日本エスエルシー社から購入)を被験対象として用いた。このマウスを5日間予備飼育した後、上記試験例1−2と同様の方法により調製したレモン抽出物(上記表2参照)及び酵素処理物(上記表3参照)をそれぞれ5%アラビアガム溶液に懸濁させたものを経口投与した。その際、レモン抽出物は、175、350、700mg/kg体重となるように投与した。また、酵素処理物は、700mg/kg体重となるように投与した。また、レモン抽出物及び酵素処理物未添加の5%アラビアガム溶液を投与したものを用意し、これをコントロールとして用いた。 続いて、投与1時間後にイノシンモノリン酸(SIGMA社製)を600mg/kg体重となるように腹腔に投与し、その1時間後にジエチルエーテル麻酔下にて腹部大動脈より採血を行なった。採血した血液を遠心分離することにより得られた上清を血液サンプルとし、同血液サンプルの尿酸値の測定を行なった。この尿酸値測定は、尿酸−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて、ウリカーゼ・TOOS法により行なった(吸光度555nmにて測定)。その結果を下記表5に示す。 表5に示すように、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であるレモン抽出物を投与した場合、同阻害剤を投与していないコントロールと比較して濃度依存的に血漿中尿酸値が減少した。また、酵素処理物を投与した場合においても、コントロールと比較して有意な血漿中尿酸値の低下を示した(t検定における有意差:P<0.05)。 [試験例2−2:ヒトを対象とした試験] 本試験例では、血漿中尿酸値が基準値(7mg/dl)よりも高い男性3名(A・B・C)を被験者とした。各被験者に上記レモン抽出物600mgを配合した試験試料(タブレットサンプル)を毎夕食時に摂取させ、これを2ヶ月間継続した。摂取開始日(摂取前)及び摂取開始日から2ヶ月後(摂取後)にそれぞれ採血を行い、血漿中の尿酸値を測定した。その結果を下記表6に示す。なお、試験期間中は、試験試料を毎夕食時に摂取することを除いては、可能な限り、食生活、喫煙及び運動等の日常生活を変えないようにさせた。また、食事などの外的影響を避けるため、採血は12時間絶食させた後に行なった。 表6に示すように、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であるレモン抽出物を摂取した場合、被験者全員において血漿中尿酸値の減少が確認された。また、その平均値においても血漿中尿酸値の有意な減少が確認された(t検定における有意差:P<0.05)。本実施形態のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、血漿中尿酸値の低下させることを目的とする尿酸産生抑制剤の有効成分として好適に配合することができることが確認された。エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体から選ばれる少なくとも一種のポリフェノール類を有効成分として含有することを特徴とするキサンチンオキシダーゼ阻害剤。前記ポリフェノール類がエリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン又はジオスメチンであることを特徴とする請求項1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。前記ポリフェノール類は、レモン抽出物又は該レモン抽出物をβ−グルコシダーゼ処理した酵素処理物として配合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。尿酸産生抑制剤として使用されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。尿酸の代謝異常によって起こる疾患の予防剤又は治療剤として使用されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。 【課題】キサンチンオキシダーゼ阻害作用に優れたキサンチンオキシダーゼ阻害剤を提供する。【解決手段】本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、エリオディクティオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ジオスメチン、エリオディクティオール配糖体、ヘスペレチン配糖体、ナリンゲニン配糖体及びジオスメチン配糖体から選ばれる少なくとも一種のポリフェノール類を有効成分として含有する。【選択図】なし