タイトル: | 公開特許公報(A)_エポキシ樹脂組成物及びその製造方法 |
出願番号: | 2008226284 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07D 407/14,C08G 59/26,C08G 59/42,C09J 163/00,C09J 11/06 |
山本 裕輔 重原 淳孝 片山 義博 政井 英司 中村 雅哉 大塚 祐一郎 大原 誠資 JP 2010059095 公開特許公報(A) 20100318 2008226284 20080903 エポキシ樹脂組成物及びその製造方法 株式会社豊田自動織機 000003218 国立大学法人東京農工大学 504132881 国立大学法人長岡技術科学大学 304021288 独立行政法人森林総合研究所 501186173 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 中村 和広 100108903 渡辺 陽一 100117019 中村 和美 100134784 山本 裕輔 重原 淳孝 片山 義博 政井 英司 中村 雅哉 大塚 祐一郎 大原 誠資 C07D 407/14 20060101AFI20100219BHJP C08G 59/26 20060101ALI20100219BHJP C08G 59/42 20060101ALI20100219BHJP C09J 163/00 20060101ALI20100219BHJP C09J 11/06 20060101ALI20100219BHJP JPC07D407/14C08G59/26C08G59/42C09J163/00C09J11/06 8 OL 10 特許法第30条第1項適用申請有り 繊維学会予稿集 2008 63巻1号・2号(年次大会・シンポジウム)(発行所:社団法人 繊維学会 発行日:平成20年6月18日) (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度、農林水産省、「バイオマス・マテリアル製造技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願) 4C063 4J036 4J040 4C063AA03 4C063CC78 4C063DD71 4C063EE05 4J036AJ01 4J036AJ16 4J036BA01 4J036DB15 4J036JA01 4J036JA05 4J036JA06 4J040EC001 4J040EC041 4J040EC261 4J040HB22 4J040HB43 4J040JB02 4J040KA16 4J040NA19 4J040NA20 4J040PA30 本発明は、接着剤、塗料、電気電子材料等に幅広い用途を持つ、新規エポキシ化合物を含むエポキシ樹脂組成物、及びその製造方法に関する。 本発明者らは、代表的なバイオマス資源であるリグニンからバイオリアクターにより2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(2-pyron-4,6-dicarboxylic acid)(以下「PDC」と略す)を効率的に得る方法を確立してきた(特許文献1)。また、本発明者らは、PDCの2官能性を利用して、生分解性のポリエステル、ポリアミド等のポリマーを製造する方法を報告している(例えば、特許文献2)。 一方、エポキシ樹脂はその優れた硬化物性のため、コーティング剤、接着剤等として広く利用されているが、従来のエポキシ樹脂組成物は、使用時に主剤と硬化剤とからなる2成分を混合する二液型のものが主流で、主剤及び硬化剤の計量、混合時の精密な作業が必要な上に、経時的に増粘するという問題点があった。これを解決したものとして一液型の熱硬化性エポキシ樹脂組成物が開発されているが、硬化温度が高く、硬化時間も長い。また、生分解性のエポキシ樹脂も知られてはいるが(例えば、特許文献3)、その数は非常に少ない。特開2005−278549号公報特開2004−256747号公報特開2006−111654号公報 従って、本発明は、PDCのエポキシ化合物を含む、引張接着強度が高くかつ低温速硬化性の生分解性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、PDCに特定の不飽和アルコールを脱水反応させてエステルとし、次いで該エステルをエポキシ化するか、あるいは脱水縮合剤の存在下に、PDCに特定のエポキシアルコールを反応させることにより、新規なPDCのエポキシ化合物が得られることを見出した。また、該エポキシ化合物を含むエポキシ樹脂組成物、及び該組成物の硬化方法を見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、(1)本発明は、下記一般式(I):[式中、nは、1〜4の整数を示す。]で表される化合物を提供する。 (2)本発明は、前記nが1である、(1)記載の化合物を提供する。 (3)本発明は、(1)又は(2)記載の化合物を含むエポキシ樹脂組成物を提供する。 (4)本発明は、硬化剤を更に含む、(3)記載のエポキシ樹脂組成物を提供する。 (5)本発明は、前記硬化剤が、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸及び4-メチルフタル酸無水物から選ばれる、(4)記載のエポキシ樹脂組成物を提供する。 (6)本発明は、接着剤組成物である、(4)又は(5)記載のエポキシ樹脂組成物を提供する。 (7)本発明は、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(2-pyron-4,6-dicarboxylic acid)にR1-OH(R1は、CH2=CH-(CH2)n-を示し、nは、1〜4の整数を示す)を脱水反応させてエステルとし、次いで該エステルをエポキシ化するか、又は脱水縮合剤の存在下に、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸に下記式:[式中、nは、1〜4の整数を示す。]で表されるエポキシアルコールを反応させることを特徴とする、(1)又は(2)記載の化合物の製造方法を提供する。 (8)本発明は、(4)〜(6)のいずれか1記載のエポキシ樹脂組成物を100〜130℃の温度で硬化させることを特徴とする、該組成物の硬化方法を提供する。 本発明によれば、引張接着強度が高くかつ低温速硬化性の生分解性エポキシ樹脂組成物を製造できる。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に接着剤に好適に用いることができる。 本発明の新規エポキシ化合物は、下記一般式(I):[式中、nは、1〜4の整数を示す。]で表される。本発明の新規エポキシ化合物は、好ましくは、一般式(I)においてnが1であるPDCのジグリシジルエステルである。 本発明の式(I)で表されるエポキシ化合物は、以下の2つの合成法によって製造できる。 合成法1: すなわち、PDCに、式(III):R1-OH(R1は、CH2=CH-(CH2)n-を示し、nは、1〜4の整数を示す)で表されるアルコールを脱水反応させてエステル(IV)とし、次いで該エステル(IV)を常法によりエポキシ化する。以下に合成法1について詳述する。 先ず、PDCと式(III)で表される不飽和アルコールとを酸触媒の存在下に脱水反応させて、対応するエステルとする。 PDCは、例えば、特開2005-278549号公報に記載の発酵法により、バニリン、シリンガアルデヒド、バニリン酸、シリンガ酸もしくはプロトカテク酸のようなリグニン等の植物由来の低分子化合物、又はその混合物から容易に得ることができる。 式(III)で表される不飽和アルコールとしては、2-プロペン-1-オール(アリルアルコール)、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-へキセン-1-オールが挙げられる。アリルアルコールは市販されており、他の不飽和アルコールについては例えば特願2006-212496号公報に記載の方法によって合成できる。不飽和アルコールは、理論的にはPDC 1モルに対して2当量以上使用すればよいが、PDCの脱水反応をスムーズに進行させるために10当量以上使用することが好ましい。 酸触媒としては、硫酸、クロル硫酸、リン酸等の鉱酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類、ヘテロポリ酸、固体酸、ポリマー担持酸など、種々のものを用いることができる。 反応は、反応溶媒の還流温度で数時間行えばよい。反応溶媒としては、共沸下に水を除去できるものが好ましく、例えば、べンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。 あるいは、対応するエステル(IV)は、脱水縮合剤の存在下に、PDCと式(III)で表される不飽和アルコールとを反応させて得てもよい。 脱水縮合剤としては、N.N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)等が使用できる。脱水縮合剤の添加量はPDC 1モルに対して、1〜3当量、好ましくは1.3〜1.7当量である。 脱水反応には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミンン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-N-メチルジピペリジン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルモルホリン、ナトリウムエトキシド等の塩基を存在させる。 反応は、0℃〜室温の温度で1時間程度行えばよい。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸エステル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等のジオール系溶媒などが使用できる。 このようにして得られたエステル(IV)を、過酸化物、例えばm-クロロ過安息香酸、によるエポキシ化反応に供することにより、定量的に式(I)の化合物が得られる。 合成法2: すなわち、脱水縮合剤の存在下に、PDCと上記式(II)(式中、nは、1〜4の整数を示す。)で表されるエポキシアルコールを反応させることにより、式(I)の化合物が得られる。式(II)のエポキシアルコールとしては、2,3-エポキシ-1-プロパノール(グリシドール)、3,4-エポキシ-1-ブタノール、4,5-エポキシ-ヘプタノールが挙げられる。グリシドールは市販されており、他のエポキシアルコールは対応する不飽和アルコールをエポキシ化することにより容易に得ることができる。 あるいは、式(I)の化合物は、PDCを塩化チオニル等により酸クロリドに変換し、塩基存在下にこの酸クロリドを式(II)のエポキシアルコールと反応させて得てもよい。 式(II)のエポキシアルコールは、PDC 1モルに対して、1〜3当量、好ましくは1.3〜1.7当量使用すればよい。また、使用できる脱水縮合剤、及びその添加量は、合成法1と同様である。 本発明の組成物は、上記の方法によって得られた式(I)のエポキシ化合物を含み、好ましくは硬化剤を更に含む。硬化剤としては、種々の酸無水物やポリアミンが使用できるが、硬化を加温下で行う場合には、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、4-メチルフタル酸無水物、4-メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物を使用することが好ましい。これらの中で、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、4-メチルフタル酸無水物、又は4-メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。 硬化剤は、式(I)のエポキシ化合物に対する当量比(硬化剤/エポキシ化合物)が、0.3〜1.5の範囲内であって、組成物全体量において30〜60質量%の範囲内で含まれていることが好ましい。 本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化は、本発明のエポキシ樹脂組成物を例えば接着剤として使用する場合には、該組成物をガラス、セラミックス、金属、耐熱性プラスチック等の材料間に介在させ、必要により最大50 MPaの圧力を加えて圧着しながら、100〜130℃の比較的低い温度で、約10分間〜約1時間、好ましくは約10〜約30分間で行うことができる。 硬化反応においては、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、アミド系化合物等の、一般的な硬化促進剤を添加してもよい。また、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、反応性希釈剤、可塑剤、シリカ等の無機充填剤、難燃剤、離型剤、消泡剤、沈降防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、染料、顔料、着色剤等を配合することができる。 本発明の組成物は、接着剤、コーティング剤、塗料、電気電子材料等に利用できる。また、本発明の接着剤組成物は、各種のガラス、セラミックス、金属、耐熱性プラスチック等に適用可能である。 本発明の式(I)の化合物は、上記の組成物の主剤の他に、PDCを含む生分解性グリーンプラスチックス製造の原料として好適に使用できる。例えば、式(I)の化合物をジオール、ジカルボン酸又はジアミンとそれぞれ反応させて、ポリ(エステル-エーテル)、ポリ(エステル-エステル)、ポリ(エステル-アミン)を製造できる。 次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。製造例1 2-ピロン-4,6-ジカルボン酸 ジグリシジルエステル(合成法1) 塩化カルシウム管、フットボール型磁気攪拌子、ディーンスターク装置、及びジムロート冷却器を備えた100 ml四つ口フラスコに、PDC(1.0 g,5.43 mmol)、アリルアルコール(75 ml)、乾燥ベンゼン(75 ml)、触媒としてp-トルエンスルホン酸一水和物(0.1 g)を加えて、沸点還流下に6時間反応した。反応途中、ディーンスターク装置から、随時、水混じりのベンゼンを抜き取り、相当する分量の乾燥ベンゼンを加える操作を10回行った。反応終了後に液体を減圧留去して得られる薄茶色固体にメタノール(25 ml)を加えて60℃に加温して溶解させ、−5℃に冷却してPDCのジアリルエステル(DAPDC)を再結晶させ、ろ集し、乾燥させた。収率97.5%、1.40 g。融点 59.8℃(DSC, 10℃/分の昇温速度におけるピーク温度)。 1H-NMR (300 MHz, CDCl3)δ(ppm):7.48 (1.0H, d, J = 0.9 Hz), 7.12 (1.0H, d, J = 1.1 Hz), 6.01-5.88 (2.1H, m), 5.34 (4.4H, dt, J = 20.8, 8.6 Hz), 4.79 (4.5H, t, J = 2.8 Hz)。 13C-NMR (300 MHz, CDCl3)δ(ppm):161.95, 159.44, 158.53, 149.43, 142.90, 130.70, 130.60, 122.64, 120.02, 119.92, 108.22, 67.24, 67.06。 FT-IR (液状,ν(cm-1)):3091, 2950, 1734, 1647, 1560, 1452, 1414, 1398, 1370, 1328, 1247, 1173, 1116, 982, 942, 869, 779, 762, 713, 652, 557。 次いで、塩化カルシウム管、フットボール型磁気攪拌子及びジムロート還流管を備えた100 mL四つ口フラスコに、上で得られたDAPDC(0.302 g,1.14 mmol)とクロロホルム(5 ml)を入れ、攪拌した。m-クロロ過安息香酸(1.44 g,5.44 mmol)のクロロホルム(60 ml)溶液を加え、油浴中で66℃に昇温、5日間沸点温度で還流した。反応後生じた固体をろ去し、ろ液を10 %-Na2SO3水溶液、0.05 M-塩酸水溶液、飽和食塩水でそれぞれ1回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ去後、溶媒を減圧留去し、得られた黄色の粘性液体を60℃のメタノール(10 ml)に溶解した。−5℃に冷却して析出する無色針状結晶をろ集し、標題化合物(DGPDC)を収率89 %(収量0.301 g)で得た。融点 59.8℃(DSC, 10℃/分の昇温速度におけるピーク温度)。 1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ(ppm):7.52 (1.0H, d, J = 1.5 Hz), 7.16 (1.0H, d, J = 1.5 Hz), 4.65 (2.2H, ddd, J = 14.6, 11.9, 2.6 Hz), 4.14 (2.2H, ddd, J = 13.4, 6.9, 5.4 Hz), 3.30 (2.1H, tt, J = 5.3, 2.0 Hz), 2.88 (2.2H, q, J = 4.7 Hz), 2.70-2.67 (2.2H, m)。 13C-NMR (300 MHz, CDCl3) δ(ppm):161.95, 159.17, 158.49, 149.02, 142.36, 123.14, 108.45, 67.32, 66.99, 48.71, 48.69, 44.65, 44.56。 FT-IR (液状,ν(cm-1)):3086, 3005, 1738, 1641, 1564, 1398, 1358, 1327, 1245, 1176, 1118, 982, 907, 861, 762, 709, 668, 615, 559, 505, 440, 404。製造例2 2-ピロン-4,6-ジカルボン酸 ジグリシジルエステル(合成法1) 塩化カルシウム管及びフットボール型磁気攪拌子を備えた100 ml四つ口フラスコに、PDC(1.00 g,5.43 mmol)、アリルアルコール(1.02 ml,15.0 mmol)のTHF(20 ml)溶液を入れ、攪拌した。0〜5℃に冷却し、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド (DIC) (1.64 ,13.0 mmol) と4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン (DMAP)(0.133 g,1.09 mmol) のTHF(20 ml)溶液を10分かけて滴下した。その後30分間攪拌し、常温以下で減圧濃縮して溶液量を約1/2に減じ、0〜5℃に冷却して副生成物の尿素誘導体をろ去した。溶媒を減圧留去してクロロホルム(50 ml)を加え、0.05M-塩酸、蒸留水、飽和食塩水で各1回ずつ洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ去し、減圧濃縮した。この溶液を5φ×20 cmの200メッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム: THF = 20: 1) で精製、第一流出分を集めて減圧留去し、ジイソプロピルエーテルで再結晶してDAPDCを白色塊状固体として収率95.0 % (収量1.36 g) で得た。 次いで、製造例1と同様にして、標題化合物を収率87 %(収量0.294 g)で得た。該化合物の融点、1H-NMR、13C-NMR及びFT-IRスペクトルは、製造例1で得られたDGPDCのそれと同じであった。製造例3 2-ピロン-4,6-ジカルボン酸 ジグリシジルエステル(合成法2) 塩化カルシウム管及びフットボール型磁気攪拌子を備えた100 ml 四つ口フラスコにPDC(10.0 g,54.3 mmol)、グリシドール(11.1 g,150 mmol)、THF(50 ml)を加え、攪拌した。0〜5℃に冷却して、DIC(16.4 g,130 mmol)とDMAP(1.31 g,10.8 mmol)のTHF(27 ml)溶液を10分かけて滴下した。その後20分間攪拌し、常温以下で減圧濃縮して溶液量を約1/2に減じ、0〜5℃に冷却して副生成物の尿素誘導体をろ去した。溶媒を減圧留去して50 ml のクロロホルムを加え、0.05M-塩酸、蒸留水、飽和食塩水で各1回ずつ洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ去し、減圧留去した。メタノール(20 ml)を加えて60℃にて溶解し、室温まで放冷した後、0〜5℃に冷却して、標題化合物を無色針状結晶として収率81.5 %(収量13.11 g)で得た。該化合物の融点や1H-NMR、13C-NMR及びFT-IRスペクトルは、製造例1で得られたDGPDCのそれと同じであった。実施例1 磁気攪拌子を備えた試験管に、DGPDC(0.50 g,1.69 mmol)と硬化剤として無水マレイン酸(MA)(0.282 g,2.88 mmol)を入れ、試験管内を窒素置換して40℃に加温しながら攪拌、混合した。更に、硬化促進剤としてN,N−ジメチルベンジルアミン(0.025 ml)を加えて減圧脱気を行い、淡黄色透明の粘性液状の接着剤組成物を得た。5.0×28.0×50.0 mmのステンレス(SUS306、シックスナイン純度)板材の5.0×28.0 mm端面(表面粗さRa=0.6〜0.7 μm)の両側に均一になるように接着剤組成物を塗布し、液膜厚みを0.10 mmに保ちながら、130℃にて30分間硬化させた。常温に戻した後、インストロン引張試験機(鷺宮製作所製「油圧サーボ疲労試験機 FT-5S」)により、JIS K6849に基づき、歪み速度0.6/秒の歪み速度一定モードで測定したところ、引張接着強度は41.9 MPaであり、強力な接着効果を示すことが分かった。なお、破断面の観察から、界面剥離ではなく、硬化した接着剤組成物膜の中央付近で材料破壊されていることが分かった。また、応力−歪み曲線(図示せず)から、硬化した接着剤組成物膜はほとんど伸び歪みを示さず、0.2%以内の歪みで破断されていた。実施例2 硬化剤として無水フタル酸(PA)(0.423 g,2.88 mmol)を用いる以外は実施例1と同様にして接着試験を行った。引張接着強度は66.4 MPaであり、極めて強力な接着効果を示すことが分かった。実施例3、4 SUS306の代わりにシックスナイン純度の鉄の板材を用いる以外は実施例1、2と同様にして接着試験を行った(それぞれ、実施例3、4)。それぞれの引張接着強度を、実施例1、2の結果と併せて表1に示す。比較例1〜4 DGPDCの代わりに、エポキシ樹脂として周知のビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)を用いる以外は、実施例1、2と同様にして接着試験を行った(それぞれ、比較例1、2)。また、DGPDCの代わりにBADGEを用いる以外は、実施例3、4と同様にして接着試験を行った(それぞれ、比較例3、4)(表1)。 表1から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂組成物は、従来のエポキシ樹脂組成物とほぼ同等又はそれ以上の引張接着強度を示した。 下記一般式(I):[式中、nは、1〜4の整数を示す。]で表される化合物。 前記nが1である、請求項1記載の化合物。 請求項1又は2記載の化合物を含むエポキシ樹脂組成物。 硬化剤を更に含む、請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。 前記硬化剤が、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸及び4-メチルフタル酸無水物から選ばれる、請求項4記載のエポキシ樹脂組成物。 接着剤組成物である、請求項4又は5記載のエポキシ樹脂組成物。 2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(2-pyron-4,6-dicarboxylic acid)にR1-OH(R1は、CH2=CH-(CH2)n-を示し、nは、1〜4の整数を示す)を脱水反応させてエステルとし、次いで該エステルをエポキシ化するか、又は脱水縮合剤の存在下に、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸に下記式:[式中、nは、1〜4の整数を示す。]で表されるエポキシアルコールを反応させることを特徴とする、請求項1又は2記載の化合物の製造方法。 請求項4〜6のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を100〜130℃の温度で硬化させることを特徴とする、該組成物の硬化方法。 【課題】PDCのエポキシ化合物を含む、引張接着強度が高くかつ低温速硬化性の生分解性エポキシ樹脂成物を提供する。【解決手段】下記一般式(I):[式中、nは、1〜4の整数を示す。]で表される化合物;該化合物を含むエポキシ樹脂組成物;該化合物の製造方法;並びに該組成物の硬化方法。【選択図】なし