タイトル: | 公開特許公報(A)_海洋ミネラル成分からなる動脈硬化治療及び/または予防剤 |
出願番号: | 2008214092 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 35/56,A61K 33/00,A61K 33/06,A61K 33/24,A61K 33/26,A61K 33/30,A61K 33/32,A61K 33/34,A61P 9/10,A61K 9/20 |
杉山 俊博 川越 政美 小椋 武 JP 2010047531 公開特許公報(A) 20100304 2008214092 20080822 海洋ミネラル成分からなる動脈硬化治療及び/または予防剤 国立大学法人秋田大学 504409543 小椋 武 596153634 大家 邦久 100081086 林 篤史 100121050 杉山 俊博 川越 政美 小椋 武 A61K 35/56 20060101AFI20100205BHJP A61K 33/00 20060101ALI20100205BHJP A61K 33/06 20060101ALI20100205BHJP A61K 33/24 20060101ALI20100205BHJP A61K 33/26 20060101ALI20100205BHJP A61K 33/30 20060101ALI20100205BHJP A61K 33/32 20060101ALI20100205BHJP A61K 33/34 20060101ALI20100205BHJP A61P 9/10 20060101ALI20100205BHJP A61K 9/20 20060101ALI20100205BHJP JPA61K35/56A61K33/00A61K33/06A61K33/24A61K33/26A61K33/30A61K33/32A61K33/34A61P9/10 101A61K9/20 10 OL 11 特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年度秋田大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー研究成果発表会(主催者:秋田大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー、平成20年2月29日開催)冊子 4C076 4C086 4C087 4C076AA36 4C076BB01 4C076CC11 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA01 4C086HA02 4C086HA03 4C086HA04 4C086HA06 4C086HA08 4C086HA09 4C086HA28 4C086MA03 4C086MA04 4C086MA34 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA45 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087BB70 4C087MA02 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZA45 本発明は、海洋ミネラル成分からなる治療剤に関する。さらに詳しく言えば、海水濃縮物から塩化ナトリウム及び有毒成分を除去した海洋ミネラル複合体を有効成分とする、動脈硬化治療及び/または予防剤に関する。 近年、話題となり特定健診制度の対象ともなっているメタボリックシンドロームは代謝症候群、シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、内臓脂肪症候群とも呼ばれる複合生活習慣病である。生活習慣病には、「肥満症」「糖尿病」「高血圧症」「高脂血症」といったものがあり、中高年がかかりやすい病気である。 これらの生活習慣病は、それぞれが独立した病気ではなく、肥満から引き起こされるため、たびたび症状は重複する。この生活習慣病の症状が重複すると動脈硬化を促進し、さらには致命的な心筋梗塞や脳梗塞などを起こしやすいことが分かっている。最近、これらの病気を起こす大元の原因として、糖代謝や脂質代謝などさまざまな代謝異常があることがわかってきた。 これらの症状のうち、例えば高脂血症とは、血液中に溶けている脂質の値が必要量よりも異常に多い状態をいう。高脂血症は「沈黙の病気」といわれ、血中脂質が異常に増加しても殆どの場合において自覚症状がないのが特徴である。 血中脂質値とは、血液の中の脂肪分の濃度(濃さ)のことである。血液中の脂肪分はいくつかのタイプに分けられ、健康な人は、LDL−コレステロールが140未満、HDL−コレステロールが40以上、トリグリセライド(中性脂肪)が150未満である。この三つの値のいずれかがその範囲を超えた状態が、脂質異常症である。 血中脂質にはコレステロール、リン脂質、中性脂肪、遊離脂肪酸などがある。血液中に多い脂質の種類により高脂血症のタイプが決まる。1)総コレステロール値が高いタイプ、2)中性脂肪値が高いタイプ、3)両方の値が高いタイプ。 血中脂質が高い状態が続くと狭心症、心筋梗塞などの心臓病にかかる危険性が高くなる。 なお、脂質異常症という病名について、これは以前、高脂血症と呼ばれていた状態と同じである。しかし、善玉のHDL−コレステロールは高いほうが良いので、高脂血症という病名ではそぐわない点があるため、最近は脂質異常症と呼ばれている。 虚血性心疾患や脳卒中に関して、とくに危険な因子とされるのが、「肥満」、「高血圧」、「高脂血症」、「耐糖機能異常」の4因子は、重なるほど危険が高くなるのは当然であるが、これら4つはとくに「死の四重奏」として恐れられていて、これらがいずれも異常と診断された人の場合、虚血性心疾患や脳卒中になる可能性が、いずれも正常な人の約30倍以上になるといわれている。 また、動脈硬化はさまざまな危険因子が重なり合って起こるので、それらの危険因子を除いていけば、ある程度動脈硬化を防止することができる。 高血圧が動脈硬化の大きな危険因子の一つだということはよく知られているが、高脂血症も重大な危険因子である。 一方で微量ミネラル成分の欠乏と老化との関連が注目されている。老化症状と微量ミネラル欠乏症状との間には類似性があるといわれている。一般に中高年にさしかかると生体内の微量ミネラルは、摂取・吸収量の低下や代謝・排泄過程の障害でバランスが崩れ、慢性的な欠乏状態に陥るとされている。従って、微量ミネラルの摂取はこれから中高年にさしかかる人たちの健康維持・疾病予防に重要な役割を果たすことになる。 海水中には、地球誕生後36億年間に海底の熱泉鉱床から湧き出したミネラル及び陸地から流出したミネラルが溶解しており、上記老化症状に関係する微量元素はすべて含まれている。人体内に流れる血液あるいは体液の成分は、原始海洋成分に酷似するといわれており、微量元素が生体の生命活動を支える細胞レベルの代謝に必須な構成要素であることは以前から予想されている。 最近、生体内に低濃度しか存在しない元素の分析に必要な測定法が進歩し、また生化学的検討で種々の微量元素の機能が明らかにされ、微量元素の人体における必須性が確認されるようになっている。 蛋白質、核酸、血液等として、生体を構成している主要元素は、水素(H)、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)であり、これに少量のリン(P)や硫黄(S)が含まれている。さらに骨や体液を構成する元素として、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、塩素(Cl)がある。これら常量元素に対して、生体内には必須微量元素が存在する。すなわち、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ひ素(As)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、セレン(Se)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、珪素(Si)、フッ素(F)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、よう素(I)等である。 老化の病態学的背景には活性酵素・フリーラジカルの増加、免疫性の低下、血圧上昇や高脂血症などの循環疾患、耐糖能異常ないし発がん等があるが、多くの種類の微量ミネラル欠乏で同じ病態が引き起こされる。 上記いくつかの症状に対しては、例えば海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる海洋ミネラル複合体(Marina Crystal Minerals;以下、MCMと略記することがある。)を経口的に投与することが、肝炎、高血圧、腫瘍、アトピー性皮膚炎、鼻炎などのアレルギーの治療剤として有効であり、また高脂血症が改善されコレステロール値が低下することも見出され、特許されるに至っている(特許第3247620号公報;特許文献1参照)。 また、同じくMCMを肝炎治療に有用なインターフェロンγ産生増強剤として活用すること(特開2008−94762号公報;特許文献2参照)、及び骨粗鬆症治療剤として活用すること(特開2008−94763号公報;特許文献3参照)が提案されている。特許第3247620号公報特開2008−94762号公報特開2008−94763号公報 本発明の課題は、MCMのさらなる効能を開発し,必須微量元素を含む海洋ミネラル成分を有効利用した動脈硬化治療及び/または予防剤を提供することにある。 本発明者らは、海水濃縮物から製造したMCMを経口的に投与することが、上記各症状ばかりでなく動脈硬化治療剤及び/または予防剤として有効であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。その要旨は海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる海洋ミネラル複合体(MCM)を有効成分とする動脈硬化治療及び/または予防剤である。 すなわち、本発明は、以下に示される動脈硬化治療及び/または予防剤を提供する。1.海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる海洋ミネラル複合体を有効成分とする動脈硬化治療及び/または予防剤。2.原料海水を加熱濃縮し、ついで、この濃縮液から塩化ナトリウムを除去するとともに、水銀等の有毒成分を固形化物としてろ去し、ろ液から得られる海洋ミネラル複合体(MCM)を用いる前記1に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。3.原料海水を加熱濃縮し、ついで、この濃縮液に対し酢酸と木炭粉を添加し、加熱後冷却して、固形化した塩化ナトリウムを主体とし水銀等の有毒成分を含む固形化物をろ去し、ろ液から得られる海洋ミネラル複合体(MCM)を用いる前記1または2に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。4.ろ液について、(1)酢酸と木炭粉の添加、(2)加熱後冷却、及び(3)固形化物のろ去、の(1)〜(3)の操作を繰り返し、最終ろ液を濃縮して得られる残留固形物からなる海洋ミネラル複合体(MCM)を用いる前記2または3に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。5.海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する前記海水の濃縮液に木炭粉と酢酸を添加し、加熱後冷却することにより塩化ナトリウムと有毒成分を沈殿として除去し、得られるキレート化したミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体(MCM)を使用する前記1〜4のいずれか1項に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。6.前記ミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体(MCM)がプランクトン由来の有機成分を20〜30質量%含有する前記5に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。7.海洋ミネラル複合体(MCM)が、常量元素としてのカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、及びマグネシウム(Mg)のほかに、生体内必須微量元素を含む、前記1〜6のいずれか1項に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。8.海洋ミネラル複合体(MCM)が、生体内必須微量元素として、少なくとも鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、クロム(Cr)、セレン(Se)、マンガン(Mn)、及び珪素(Si)のいずれか1以上を含む前記7に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。9.海洋ミネラル複合体(MCM)を経口投与する前記1〜8のいずれか1項に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。10.海洋ミネラル複合体(MCM)を、経口投与のための固体組成物、液体組成物及びその他の組成物として用いる前記9に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 本発明で使用する海洋ミネラル複合体(MCM)は、海水濃縮液から、塩化ナトリウム、有機水銀などの有毒成分を除去した成分から構成される常量元素としてのカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムのほかに生体内必須微量元素成分を含んでおり、後述の実施例に示される通り、その経口投与により驚くべきことにメタボリックシンドロームの起因となる動脈硬化に深く関係する善玉のHDL−コレステロールの増加がみられ、この動脈硬化治療効果及び/または予防効果が血液化学検査値との明らかな関連を見ることができ、メタボリックシンドロームの治療や予防に対しても有効である。 以下、本発明をさらに詳しく説明する。[常量及び生体内必須微量元素含有ミネラル複合体(MCM)の製造方法] 本発明の骨粗鬆症治療及び/または予防剤では、海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる海洋ミネラル複合体(MCM)を得、これをその有効成分とする。 本発明では、前記ミネラル分を含有する海水の濃縮液に酢酸カルシウムを加えて反応させ、これにより骨格生成に必要なカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体を作製することができる。好適には、炭酸カルシウムを焼成し、これに酢酸を投入することにより酢酸カルシウムに変化させ、これを、加熱した前記海水濃縮液に投入することにより、骨格生成に必要なカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体を作製することができる。 前記ミネラル分を含有する海水の濃縮液に、通常体積比10〜30%量、好ましくは20%量の炭酸カルシウムを、通常約300〜500℃、好ましくは約400℃に焼成し、これに通常含量約90〜100%、好ましくは98〜99.9%グレード酢酸を投入することにより酢酸カルシウムに変化させ、これを通常約100〜200℃、好ましくは約150℃の火源温度で加熱した前記海水濃縮液に投入し、反応開始後、通常約24〜120時間、好ましくは約48〜96時間、より好ましくは約72時間放置することにより反応を沈静させ、これにより、骨格生成に必要なカルシウムを強化した海洋ミネラル複合体を作製するのが好ましい。 本発明で使用する有効成分であるMCMは、例えば水深約80〜120m程度の清浄な海水域から汲み上げた海水を原料として調製される。表1に、典型的な黒潮海域(大洗沖)の海面下約100mで汲んだ清浄な海水18リットルに含まれる主要元素とその含有量を示す。 この原料海水を、常圧あるいは減圧下で加熱して、容量が60分の1程度となるまで濃縮する。ついで、この濃縮液から可能な限り塩化ナトリウムを除去する。すなわち、濃縮液に対し、ほぼ等容量の99%グレード酢酸と木炭粉約0.5重量%を添加し、400℃程度に加熱した後、−12℃程度まで冷却すると、塩化ナトリウムを主体とし水銀等の成分を含む成分が固形化する。この固形物をろ過する。ろ液について、上記と同様に、(1)酢酸と木炭粉の添加、(2)加熱後冷却、及び(3)固形物のろ去(ろ過)の(1)〜(3)の操作を4回程度繰り返し、最終ろ液を濃縮する。かくして得られる残留固形物からなる海洋ミネラル複合体(MCM)は、海水中の有機成分であるピコプランクトンによりキレート化されており、これをそのまま本発明の治療・予防剤に使用することができる。 表2に塩化ナトリウム及び有毒成分が除去され海水中の有機物でキレート化された結晶性固形分(MCM)1g中に含まれる元素成分を示す。前記ミネラルを含む結晶性固体粉末(MCM)がプランクトン由来の有機成分を約20〜30質量%、特に好ましくは約25質量%含有する治療及び/または予防剤が好ましい。[毒性] 本発明の海洋ミネラル複合体(MCM)の毒性は十分に低いものであり、医薬品として十分安全に使用できることが確認されている。[MCMの薬理活性] 後述の実施例に示すように、ヒトの本態性高血圧症のモデル動物であるSHRマウス(雄性)を使い、高血圧発症以前の幼若時(5週齢)より成鼠時(24週齢)まで0.5%MCM含有水を自由飲水させ、その高血圧予防効果を血圧等と血液の生化学検査値の両面から検討した。 その結果、成鼠時(20〜24週齢)に対照群に比べて平均で12mmHg程度の有意な血圧上昇抑制作用があることが確認された。さらに血中の中性脂肪、悪玉コレステロールのLDLは、0.5%MCM群の方が低かった。善玉コレステロールと呼ばれるHDL−コレステロールは、0.5%MCM群の方が高い傾向にあった。[医薬品への適用] 本発明の動脈硬化治療及び/または予防剤は、海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物、すなわちMCMを有効成分とすることを特徴とする。すなわち、本発明にかかる海洋ミネラル複合体(MCM)は、すでに知られている糖尿病、肝炎、高血圧、腫瘍、アトピー性皮膚炎、鼻炎などのアレルギー、骨粗鬆症の治療及び予防剤の他、動脈硬化治療剤及び/または予防剤として有効である。本発明による海洋ミネラル複合体(MCM)を動脈硬化治療及び/または予防の目的で用いるには、通常、経口の形で投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療・予防効果、投与方法、処理時間等により異なる。 本発明の海洋ミネラル複合体(MCM)を投与する際には、経口投与のための固体組成物、液体組成物及びその他の組成物として用いられる。経口投与のための固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、さらには不活性な希釈剤(例えば精製水、エタノール)を含有する。この組成物には、さらに湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有せしめてもよい。 以下、本発明について実施例に基づき説明するが、本発明は下記の例にのみ限定されるものではない。実施例1: MCMは、黒潮海域(大洗沖)の海面下約100mの清浄な海水を18リットル採取し、塩化ナトリウムと有機水銀等の生体に有害な成分を除去し、加熱と凍結・除去を繰り返し、その海洋ミネラルを凝縮・結晶化させて得た天然海洋ミネラルの微粉体であり(特許文献1参照)、薬品ではなく食品であり、株式会社海洋化学研究会から供与されたものを使用した。 ヒトの本態性高血圧症のモデル動物であるSHRラット(雄性)を使い、高血圧発症以前の幼若時(5週齢)より成鼠時(24週齢)まで0.5%MCM含有水を自由飲水させ、その高脂血症の抑制効果について血圧予防効果とあわせて、血圧等と血液の生化学検査値の両面から検討した。 動物の飼育並びに実験は、すべて秋田大学医学部附属動物実験施設において行われた。また、本動物実験は秋田大学医学部動物実験委員会の許可を受けて行った。 実験用ラットとして、22匹の生後4週齢の雄性SHRを(株)星野試験動物飼育所より購入し、用いた。1週間の予備飼育後、まずMCMの高血圧予防効果を検討する実験として、5週齢の雄性SHRを二群に分け、0.5%MCM含有水を自由飲水させる群(0.5%MCM群)には11匹、対照として水道水を自由飲水させる群(対照群)には3匹をそれぞれ使用した。 体重の変動は、対照群、0.5%MCM群とも加齢とともに緩やかな上昇曲線を描いたが、実験開始10週目(15週齢目)からは0.5%MCM群の方が対照群よりも増加傾向を示し、有意差が実験終了(24週齢)まで認められた。その間の体重差は、平均約20g前後であった。 血圧に対するMCM水飲水の効果について検討した。 SHRに5週齢から24週齢まで0.5%MCM含有水を自由飲水させると、実験開始2週目(7週齢目)から9週目(14週齢目)まで、対照群に比べて危険率5%以下で有意に低い値を示した。しかし、その血圧差は平均で5mmHg前後しかなかった。対照群の収縮期血圧(最高血圧)の変動カーブは、加齢と共に上昇を示し、21〜24週齢では、200mmHg前後の値を示した。 0.5%MCM群でも同様に、加齢と共に上昇したが対照群に比べ、18週齢目から24週齢目にかけて、その値は低く推移した。その中で、18、19、20、22、24週齢時には危険率5%以下で有意の低値を示した。その血圧差は平均で12mmHg前後あり、幼若時よりも増加した。 以上の実験結果から、MCM水を幼若時から飲水させると、血圧上昇抑制作用があることが判明した。 MCM水を幼若時から継続して飲水させ、24週齢時の対照群及び0.5%MCM群SHRの血液化学検査値を測定した。善玉コレステロールと呼ばれるHDL−コレステロールでも0.5%MCM群の方が高く、中性脂肪(図1)悪玉コレステロールのLDL(図2)は、0.5%MCM群の方が低かった。超低比重リポ蛋白値(VLDL)については対照群に比べて0.5%MCM群の方が危険率4.2%で有意の低値を示した(図3)。 以上の結果から、MCM水を幼若時から飲水させると、抗高脂血症効果が見られ動脈硬化の予防効果の可能性があることがわかった。 動脈硬化(高脂血症)抑制効果についての結果を検討してみると以下のようになった。0.5%MCM群は体重において対照群と比べて15週齢目から24週齢目まで平均約20g有意に重く、その原因は血清コレステロールが有意差はないものの、対照群に比べて約10mg/dl(約18%)多いこと、またその中でも善玉コレステロールと言われているHDL−コレステロールが約6mg/dl(約14%)多いことと、逆に動脈硬化等の原因となる悪玉コレステロールであるVLDLが有意に少ないこと(2倍以上)が挙げられる。 MCMの高血圧及び高脂血症の予防効果と治療効果を総括してみると、MCM摂取により電解質代謝が促進され、降圧作用が生じることを期待したが、結果として若干の降圧作用しか認められなかった。一方、脂質代謝の改善には有効であった。このことは降圧作用よりも、動脈硬化の改善につながることを示唆していると思われる。つまり、MCMは高血圧予防効果や治療効果は弱いものの、動脈硬化の予防効果が期待できる。 海水濃縮物から、塩化ナトリウム、有機水銀などの有毒成分を除去した成分から構成される主成分としてのカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムのほか微量元素成分を含んでいるMCMは動脈硬化の治療薬として、有効に利用することができる。高血圧発症以前の幼若時(5週齢)より0.5%MCM水及び対照(水道水)自由摂水させたSHRラット(雄性)の24週間後の血中の中性脂肪(TG)値を示す。高血圧発症以前の幼若時(5週齢)より0.5%MCM水及び対照(水道水)自由摂水させたSHRラット(雄性)の24週間後の血中のLDL値をを示す。高血圧発症以前の幼若時(5週齢)より0.5%MCM水及び対照(水道水)自由摂水させたSHRラット(雄性)の、24週間後の血中のVLDL値を示す。 海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる海洋ミネラル複合体を有効成分とする動脈硬化治療及び/または予防剤。 原料海水を加熱濃縮し、ついで、この濃縮液から塩化ナトリウムを除去するとともに、水銀等の有毒成分を固形化物としてろ去し、ろ液から得られる海洋ミネラル複合体(MCM)を用いる請求項1に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 原料海水を加熱濃縮し、ついで、この濃縮液に対し酢酸と木炭粉を添加し、加熱後冷却して、固形化した塩化ナトリウムを主体とし水銀等の有毒成分を含む固形化物をろ去し、ろ液から得られる海洋ミネラル複合体(MCM)を用いる請求項1または2に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 ろ液について、(1)酢酸と木炭粉の添加、(2)加熱後冷却、及び(3)固形化物のろ去、の(1)〜(3)の操作を繰り返し、最終ろ液を濃縮して得られる残留固形物からなる海洋ミネラル複合体(MCM)を用いる請求項2または3に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する前記海水の濃縮液に木炭粉と酢酸を添加し、加熱後冷却することにより塩化ナトリウムと有毒成分を沈殿として除去し、得られるキレート化したミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体(MCM)を使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 前記ミネラルを含む結晶性固体粉末からなる海洋ミネラル複合体(MCM)がプランクトン由来の有機成分を20〜30質量%含有する請求項5に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 海洋ミネラル複合体(MCM)が、常量元素としてのカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、及びマグネシウム(Mg)のほかに、生体内必須微量元素を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 海洋ミネラル複合体(MCM)が、生体内必須微量元素として、少なくとも鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、クロム(Cr)、セレン(Se)、マンガン(Mn)、及び珪素(Si)のいずれか1以上を含む請求項7に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 海洋ミネラル複合体(MCM)を経口投与する請求項1〜8のいずれか1項に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 海洋ミネラル複合体(MCM)を、経口投与のための固体組成物、液体組成物及びその他の組成物として用いる請求項9に記載の動脈硬化治療及び/または予防剤。 【課題】本発明は、海洋ミネラル複合体のさらなる効能を開発し必須微量元素を含む海洋ミネラル成分を有効利用した動脈硬化治療及び/または予防剤を提供する。【解決手段】海水中のピコプランクトンに由来する有機成分とその有機成分によりキレート化されたミネラル分を含有する海水の濃縮液を酢酸で処理し、塩化ナトリウム及び有毒成分を除去して得られる、キレート化されたミネラル分を含む残留物からなる海洋ミネラル複合体(MCM)を有効成分とする動脈硬化治療及び/または予防剤。【選択図】なし