タイトル: | 公開特許公報(A)_熱可塑性樹脂の評価装置及びその利用 |
出願番号: | 2008198470 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 3/08,G01N 11/00 |
城本 征治 桝谷 泰士 JP 2010038565 公開特許公報(A) 20100218 2008198470 20080731 熱可塑性樹脂の評価装置及びその利用 住友化学株式会社 000002093 特許業務法人原謙三国際特許事務所 110000338 城本 征治 桝谷 泰士 G01N 3/08 20060101AFI20100122BHJP G01N 11/00 20060101ALI20100122BHJP JPG01N3/08G01N11/00 C 7 1 OL 13 2G061 2G061AA01 2G061AB01 2G061AC03 2G061BA19 2G061CA09 2G061DA11 2G061DA12 2G061EC02 2G061EC04 本発明は、押出ラミネート加工等において、熱可塑性樹脂のネックインが小さいか否かを判定するための熱可塑性樹脂の評価装置及びそれを利用した技術に関するものである。 プラスチックフィルム、アルミ箔、紙等の基材に対して、熱可塑性樹脂を押出ラミネート加工する場合、熱可塑性樹脂を押出すダイの出口幅に対して当該熱可塑性樹脂のコート幅が短くなるという現象が発生する。ダイ幅に対してフィルム幅が減少した長さをネックインという。ネックイン現象が発生すると、製品幅が制限されたり、収率が低下したりする。 ネックインを小さくするためには、高い溶融張力の樹脂が用いられる。このような樹脂としては、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、特許文献1には、一軸伸長粘度とせん断粘度との比が大きく、かつMFRの高いポリエチレンのネックインが小さいことが開示されている。 ところで、ネックイン性を評価する方法として、従来、加工機を用いた実験が行なわれてきた。特開2000−319322号公報(2000年11月21日公開) しかしながら、上述の高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体及び特許文献1に記載のポリエチレン等の樹脂においても、そのネックインは十分に小さいものではない。 また、加工機を用いた実験による従来のネックイン性の評価方法においては、多くの樹脂が必要となる。実験には加工機内に残存する樹脂の排出、置換に多くの樹脂を必要とするためであり、また、加工条件が安定するまでに多くの樹脂が消費されるためである。一方、樹脂の新規開発には少量スケールの重合装置が用いられる。このため、加工機を用いた評価に必要な樹脂の準備には多大な労力と時間が必要となり、迅速な樹脂の研究開発に対して大きな障害である。なお、特許文献1にも上述のように如何なるポリエチレンのネックインが小さいか記載されているが、やはり加工機を用いた検証実験が必要である。 そこで、本発明は、押出ラミネート加工等に用いるときにおいて、大量の樹脂を用いて加工機により検証することを必要とせずに、熱可塑性樹脂のネックインが小さいか否かを判定するための、熱可塑性樹脂の評価装置及びそれを利用した技術を提供することを目的としている。 上記課題を解決するために本発明に係る評価装置は、熱可塑性樹脂の評価装置であって、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、平面伸長粘度ηPと一軸伸長粘度ηUとの比<ηP/ηU>を算出するネックイン性評価手段を備えることを特徴としている。 本発明に係る評価装置では、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、せん断粘度ηSと一軸伸長粘度ηUとの比<ηS/ηU>を算出するドローダウン性評価手段をさらに備えることがより好ましい。 上記ネックイン性評価手段が算出した<ηP/ηU>と、上記ドローダウン性評価手段が算出した<ηS/ηU>との関係が以下の式(1) 3≦<ηU/ηS>≦−250(<ηP/ηU>−1)+40 ・・・(1)を満たし、かつ条件(A)又は(B)(A)上記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であり、ηP、ηU、ηSは、融点+20℃以上、融点+40℃以下における値である;(B)上記熱可塑性樹脂が非結晶性樹脂であり、ηP、ηU、ηSは、ガラス転移温度+50℃以上、ガラス転移温度+80℃以下における値である;を満たすか否かを判定する判定手段をさらに備えることがより好ましい。 本発明に係る評価方法は、熱可塑性樹脂の評価方法であって、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、平面伸長粘度ηPと一軸伸長粘度ηUとの比<ηP/ηU>を算出するネックイン性評価値算出工程と、上記ネックイン性評価値算出工程によって算出した<ηP/ηU>が小さければ小さいほどネックイン性に優れていると評価するネックイン性評価工程と、を含むことを特徴としている。 本発明に係る評価方法は、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、せん断粘度ηSと一軸伸長粘度ηUとの比<ηS/ηU>を算出するドローダウン性評価値算出工程と、上記ドローダウン性評価値算出工程によって算出した<ηS/ηU>が高ければ高いほどドローダウン性に優れていると評価するドローダウン性評価工程と、をさらに含むことがよりこのましい。 なお、上記評価装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記評価装置の各手段をコンピュータにて実現させるプログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。 本発明に係る評価装置によれば、大量の樹脂を用いて加工機により検証することを必要とせずに熱可塑性樹脂のネックインが小さいか否かを判定できるという効果を奏する。換言すれば、少量の樹脂さえあれば、これを用いて評価に必要なパラメータを測定することで、ネックイン性を評価できる。 以下、本発明に係る評価装置の一実施形態について図1を用いて説明する。図1は本実施の形態に係る評価装置1の構成の概略を模式的に示す図である。 〔評価装置1の構成〕 図1に示すように評価装置1は、入力部11、表示部12、処理部13を備えている。 入力部11は、処理部13が計算を行なう際に必要とする数値を受け付けて、処理部13に送信するためのものである。上記数値としては、熱可塑性樹脂における伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、平面伸長粘度ηP、一軸伸長粘度ηU、せん断粘度ηSが挙げられる。これらの数値については、実測値をユーザが手入力してもよいし、別途計算機を接続して、当該計算機が別のパラメータに基づいて計算した上記数値を、入力部11が受信することにより受け付けてもよい。なお、このような計算機としては、粘弾性モデルとして、例えばPhan−Thien/Tannerモデル(以下、「PTTモデル」という。)を用いて得られる値を用いてもよい。PTTモデルは、例えば、Phan−Thien、Journal of Rheology、22巻、259〜283頁(1978年)に記載されている。PTTモデルを式(2)に示す。ただし、ηは粘度を、τは異方性応力テンソルを、Dは変形速度テンソルを、λは緩和時間を、ξ及びεは非線形パラメータを表す。△はlower−convected時間微分を、▽はupper−convected時間微分をそれぞれ表す。 また、ユーザが入力部11に上記数値として実測値を入力する場合、ηP、ηU及びηSの測定法としては、例えば、「フィルム製膜・延伸の最適化とトラブル対策」、技術情報協会編、98〜102頁(2007年)に記載されている方法を採用することができる。また、例えば、RHEOLOGY PRINCIPLES, MEASUREMENTS, AND APPLICATIONS、Christopher W. Macosko、WILEY−VCH(1994)に記載されている方法を採用してもよい。 また、測定温度としては、次の条件(A)又は(B)を満たすことが好ましい。条件(A)結晶性樹脂においては、融点+20℃以上、融点+40℃以下;条件(B)非結晶性樹脂においては、ガラス転移温度+50℃以上、ガラス転移温度+80℃以下。後述する判定部16が判定するネックイン性及びドローダウン性は、条件(A)又は(B)を満たすことを評価の指標の一つとしているからである。 また、入力部11は、ηP、ηU及びηSの値が結晶性樹脂及び非結晶性樹脂のいずれであるか、結晶性樹脂においては当該値が如何なる融点における値か、非結晶性樹脂においては当該値が如何なるガラス転移温度における値かを受け付けるものでもある。さらに、入力部11は受け付けた融点又はガラス転移温度をそれぞれηP、ηU及びηSに関連付けて、ネックイン性評価部14にはηP及びηUを送信し、ドローダウン性評価部15にはηU及びηSを送信する。 表示部12は、処理部13から受信する評価の結果を表示するものである。表示部12の具体的な構成は、上記評価結果を表示可能なものである限り限定されない。例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、CRT(cathode-ray tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置によって構成してもよい。 処理部13は、入力部11が受け付けた上述の数値に基づいて熱可塑性樹脂のネックイン性及びドローダウンを評価するものであり、ネックイン性評価部(ネックイン性評価手段)14、ドローダウン性評価部(ドローダウン性評価手段)15、判定部(判定手段)16を備えている。 ネックイン性評価部14は、入力部11からηP及びηUを受信して<ηP/ηU>を算出するものである。また、ネックイン性評価部14は、算出した<ηP/ηU>を表示部12及び判定部16に送信する。ユーザは、表示部12が表示した<ηP/ηU>を見て、これが低ければ低いほどネックイン性がよいと評価することができる。なお、本発明に係る評価装置が備えるネックイン性評価手段は、ネックイン性評価部14のように単に<ηP/ηU>を表示部12に表示させる形態ではなく、それ自身がネックイン性の程度を判定し、判定結果を示す符号等を表示部に表示させてもよい。例えば、<ηP/ηU>が1.110以下であるときに、ネックイン性が優れていることを示す旨の文字情報を表示部に表示させてもよい。<ηP/ηU>は、本発明者らにより見出された、熱可塑性樹脂のネックインに影響を与えるパラメータである。<ηP/ηU>が低ければ低いほどネックイン性に優れ、1.110以下の熱可塑性樹脂は特にネックイン性に優れている。 ドローダウン性評価部15は、入力部11からηU及びηSを受信して<ηS/ηU>を算出するものである。また、ドローダウン性評価部15は算出した<ηS/ηU>を表示部12及び判定部16に送信する。ユーザは、表示部12が表示した<ηS/ηU>を見て、これが高ければ高いほどドローダウン性がよいと評価することができる。なお、本発明に係る評価装置が備えるドローダウン性評価手段は、ドローダウン性評価部15のように単に<ηS/ηU>を表示部12に表示させる形態ではなく、それ自身がドローダウン性の程度を判定し、判定結果を示す符号等を表示部に表示させてもよい。例えば、<ηS/ηU>が予め設定された所定の値以上であるときに、ドローダウン性が優れていることを示す旨の文字情報を表示部に表示させてもよい。 ここで、ドローダウンについて説明する。合成樹脂を押出ラミネート加工等によって押出して、ローラー等によって引取る場合、引取速度が高いと、ウェブが不安定になったり切れたりする現象が発生する。ウェブを安定して引き取ることができる最高速度をドローダウン速度という。ドローダウン速度が低い熱可塑性樹脂は、引取速度が制限されることにより生産効率が低下することから問題とされている。そこで、従来、ドローダウン速度を改良するためには溶融粘度が低い方がよいとされており、MFRの高い樹脂が用いられている。また、一般に、ネックインとドローダウンとは相反する性質がある。一方、特許文献1には、一軸伸長粘度とせん断粘度との比が大きく、かつMFRの高いポリエチレンが、ドローダウン性及びネックイン性に優れると記載されている。しかしながら、両者の改良は未だ十分ではない。なお、その評価方法としても、上述したネックイン性の従来の評価方法のように加工機を用いた検証が必要であり、検証に必要な樹脂の準備には多大な労力と時間が必要となり、迅速な樹脂の研究開発に対して大きな障害である。 そこで、本発明者らはこの点について検討した結果、<ηS/ηU>が、ドローダウンに影響を与えるパラメータであることを見出した。つまり、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した<ηS/ηU>が高いほど、ドローダウンの速度が高くなることを見出したのである。従って、少量の樹脂さえあれば、これを用いて評価に必要なパラメータを測定することで、ドローダウン性を評価できる。 なお、本明細書では、ネックインの小ささを「ネックイン性」と表記し、ドローダウン速度の高さを「ドローダウン性」と表記する。例えば、「ネックイン性に優れる」とはネックインが小さいことを意味し、「ドローダウン性に優れる」とはドローダウン速度が高いことを意味する。 判定部16は、ネックイン性評価部14から受信した<ηP/ηU>と、ドローダウン性評価部15から受信した<ηS/ηU>との関係が以下の式(1) 3≦<ηU/ηS>≦−250(<ηP/ηU>−1)+40 ・・・(1)を満たし、かつ上記条件(A)又は(B)のいずれかを満たすか否かを判定する。上記式(1)を満たすか否かは、ネックイン性評価部14及びドローダウン性評価部15からそれぞれ受信した<ηP/ηU>及び<ηS/ηU>を上記式(1)に当てはめることによって判定する。なお、<ηU/ηS>について、本実施の形態では、判定部16が<ηS/ηU>の逆数を算出することで求める形態について説明するが、ドローダウン性評価部15が<ηS/ηU>を逆数にして判定部16に送信してもよい。 また、判定部16は、上記条件(A)又は(B)を満たすか否かについて、ηP、ηU及びηSに関連付けられた融点又はガラス転移温度に基づいて判定する。 判定部16は、上記式(1)を満たし、かつ条件(A)又は(B)を満たすか否かについて表示部12に送信して表示させる。上記式(1)を満たし、かつ条件(A)又は(B)を満たす熱可塑性樹脂は、ネックイン性に優れ、かつドローダウン性にも極めて優れていることを本発明者らは見出した。したがって、ユーザは、表示部12に表示された結果を見れば、熱可塑性樹脂のネックイン性及びドローダウン性を判定することができる。 なお、<ηU/ηS>の上限は上記式(1)に示すように−250(<ηP/ηU>−1)+40であれば熱可塑性樹脂のネックイン性及びドローダウン性を評価できるが、より優れているか否かを評価する場合は、当該上限は−250(<ηP/ηU>−1)+35であることが好ましく、−250(<ηP/ηU>−1)+32であることがより好ましい。 〔評価装置1の動作〕 次に評価装置1の動作の一例について説明する。 まず、入力部11が、熱可塑性樹脂における伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化したηP、ηU、ηSを受け付ける。 また、入力部11はηP、ηU及びηSの値が結晶性樹脂及び非結晶性樹脂のいずれであるか、結晶性樹脂においては当該値が如何なる融点における値か、非結晶性樹脂においては当該値が如何なるガラス転移温度における値かを受け付ける。そして、当該融点又はガラス転移温度をそれぞれηP、ηU及びηSに関連付けて、ネックイン性評価部14にはηP及びηUを送信し、ドローダウン性評価部15にはηU及びηSを送信する。 次に、ネックイン性評価部14は<ηP/ηU>を算出する。そして、算出した<ηP/ηU>を表示部12に表示させる。また、算出した<ηP/ηU>を判定部16に送信する。 一方、ドローダウン性評価部15は<ηS/ηU>を算出する。そして、算出した<ηU/ηS>を表示部12に表示させる。また、算出した<ηS/ηU>を判定部16に送信する。 次に、判定部16は、受信した<ηP/ηU>及び<ηS/ηU>が上記式(1)を満たすか否か、またηP、ηU、ηSのそれぞれに関連付けられた融点又はガラス転移温度に基づいて条件(A)又は(B)を満たすか否かを判定してその結果を文字情報等によって表示部12に表示させる。 なお、このように評価装置1が動作することにより、本発明に係る評価方法である、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、平面伸長粘度ηPと一軸伸長粘度ηUとの比<ηP/ηU>を算出するネックイン性評価値算出工程と、上記ネックイン性評価値算出工程によって算出した<ηP/ηU>が小さければ小さいほどネックイン性に優れていると評価するネックイン性評価工程と、を含む評価方法、ひいては、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、せん断粘度ηSと一軸伸長粘度ηUとの比<ηS/ηU>を算出するドローダウン性評価値算出工程と、上記ドローダウン性評価値算出工程によって算出した<ηS/ηU>が高ければ高いほどドローダウン性に優れていると評価するドローダウン性評価工程と、をさらに含む評価方法が好適に実現される。 〔その他〕 本発明に係る評価装置の評価対象となる熱可塑性樹脂としては、例えば次のものが挙げられる。結晶性樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂等を例示でき、非結晶性樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体等を例示することができる。 本発明に係る評価装置によって実現される評価方法は、押出樹脂の引取りやすさや高速加工性の評価基準となるため、押出ラミネート加工以外にも、Tダイ法フィルム成形、インフレーションフィルム成形、テンター法二軸延伸フィルム成形、シート成形、押出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、二軸延伸ブロー成形、フィラメント成形、溶融紡糸成形、チューブ成形等に用いることができる。 なお、評価装置1の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。 すなわち、評価装置1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである評価装置1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記評価装置1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。 上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。 また、評価装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。 以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。 〔1.動的粘弾性測定〕 測定装置としてティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製ARESを用いて、下記の条件(1)〜(4)において、複素粘度η*(Pas)、貯蔵弾性率G’(Pa)、損失弾性率G’’(Pa)を測定した。Cox−Merzの経験則に従い、複素粘度η*の周波数(rad/s)をせん断速度(s−1)に換算することにより、せん断粘度ηS(Pas)を得た。Cox−Merzの経験則は、Cox,W.P., Merz,E.H., Jounal of Polymer Science, 28巻, 619−622頁(1958年)に記載されている。(1)試料固定部:パラレルプレート、直径25mm、プレート間隔:1.8mm(2)せん断歪み:5%(3)角周波数:0.1〜100rad/s(4)温度:130℃。 〔2.一軸伸長粘度測定〕 測定装置としてMalvern Instruments社製RH7−Dを用いて、下記の条件(1)〜(4)において、一軸伸長粘度ηU(Pas)を測定した。(1)リザーバー直径:15mm(2)キャピラリー形状: キャピラリー1:直径1mm、長さ0mm、流入角度度180° キャピラリー2:直径1mm、長さ16mm、流入角度度180°(3)一軸伸長速度:10〜390s-1(4)温度:130℃また、測定装置としてティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製ARES−EVFを用いて、下記の条件(5)〜(7)においても、一軸伸長粘度ηU(Pas)を測定した。(5)試料形状:幅10mm、長さ18mm、厚さ0.5mm(6)一軸伸長速度:0.1、0.3、1、3、10s−1(7)温度:130℃。 〔3.平面伸長粘度計算〕 測定により得られたせん断粘度ηS、一軸伸長粘度ηU、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’に対して、粘弾性モデルによる予測値をフィッティングさせることにより、モデルパラメータを決定した。得られたモデルパラメータを粘弾性モデルに代入することにより、平面伸長粘度ηP(Pas)を得た。粘弾性モデルの計算には、ソフトウェアPolymat(開発元:ベルギー国、Polyflow S.A.社)を用いた。粘弾性モデルとして、Phan−Thien/Tannerモデル(以後、PTTモデルとする)を用いた。PTTモデルは、上記式(2)に示すものを用いた。緩和時間には多重モードを用いた。 〔4.平面伸長粘度と一軸伸長粘度の比の平均値<ηP/ηU>〕 同一歪み速度における平面伸長粘度ηPと一軸伸長粘度ηUの比を、10−3〜102s−1の範囲で平均化して<ηP/ηU>(−)を得た。各粘度は後述するPTTモデルから得られる値を用いた。 〔5.せん断粘度と一軸伸長粘度との比の平均値<ηS/ηU>〕 同一歪み速度におけるせん断粘度ηSと一軸伸長粘度ηUとの比を、10−3〜102s−1の範囲で平均化して<ηS/ηU>(−)を得た。各粘度は後述するPTTモデルから得られる値を用いた。 〔6.ネックイン比NIR〕 ダイの出口幅WDと、押出ラミネート加工により得られたフィルム幅WFの差の半分(WD−WF)/2を、エアギャップの距離Lで除した値(WD−WF)/2Lをネックイン比NIR(−)とした。 〔7.ドローダウン速度DD〕 押出ラミネート加工において、フィルムを安定して引取れた最高引取速度をドローダウン速度(m/分)とした。 <実施例1> 本実施例では<ηP/ηU>、<ηS/ηU>と、ネックイン性(ネックイン比)、ドローダウン性(ドローダウン速度)との関係を評価した。 (1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)の測定 JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定した。 (2)粘弾性データの測定 ポリエチレン樹脂(住友化学(株)社製スミカセンL405(MFR=4g/10分))を用いて、130℃におけるせん断粘度ηS(Pas)、貯蔵弾性率G’(Pa)、損失弾性率G’’(Pa)、一軸伸長粘度ηU(Pas)を測定した。 (3)粘弾性モデルのパラメータの決定 測定により得られたせん断粘度ηS、一軸伸長粘度ηU、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’に対して、PTTモデルによる予測値をフィッティングさせることにより、モデルパラメータを決定した。本実施例において用いたPTTモデルのパラメータを表1に示す。 また、実施例1に用いたポリエチレン樹脂のせん断粘度ηS、一軸伸長粘度ηU、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’の測定値、およびPTTモデルによるせん断粘度ηS、一軸伸長粘度ηU、平面伸長粘度ηP、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’の予測値を図1に示す。図1中、それぞれのシンボルが示す実施例1の測定値であるηS、ηU、G’、G’’を示すシンボルに最も近接している線が、それぞれPTTモデルによるηS、ηU、G’、G’’を示す。図1に示すように上記測定値は上記予測値に極めて近い値となった。 (4)粘度比<ηP/ηU>、<ηS/ηU>の計算 測定により得られた粘弾性データに対して、カーブフィッティングを行い決定されたパラメータを用いたPTTモデルより得られた、せん断粘度ηS、一軸伸長粘度ηU、平面伸長粘度ηPを、10−3〜102s−1の範囲で平均化して<ηP/ηU>(−)および<ηS/ηU>(−)を得た。粘度比<ηP/ηU>、<ηS/ηU>を後記の表4に示す。 (5)ネックイン比NIR、ドローダウン速度DDの測定 ポリエチレン樹脂を直径が65mmの単軸スクリュを有する押出機により、温度320℃、押出量50kg/hの条件で、幅が600mm、ダイギャップが0.8mmのTダイから押出して、エアギャップが160mm、引取速度が120m/分の条件で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製(株)東洋紡エステルフィルムE5100)厚さ=12μm)に対して、厚さ20μmに押出コーティングして積層フィルムを得た。同一加工条件にて引取速度のみを徐々に増加させた場合の、フィルムが安定して引取れた最高速度をドローダウン速度DDとして測定した。得られたネックイン比NIR、ドローダウン速度DDを後記の表4に示す。 <実施例2> ポリエチレン樹脂を、住友化学(株)社製スミカセンCE4009(MFR=7g/10分)に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。なお、本実施例において用いたPTTモデルのパラメータを表2に示す。 PTTモデルより得られた粘度比<ηP/ηU>、<ηS/ηU>、押出ラミネート加工により得られたネックイン比NIRおよびドローダウン速度DDを後記の表4に示す。 <実施例3> ポリエチレン樹脂を、住友化学(株)社製スミカセンF411−0(MFR=4g/10分)に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。なお、本実施例において用いたPTTモデルのパラメータを表3に示す。 PTTモデルより得られた粘度比<ηP/ηU>、<ηS/ηU>、押出ラミネート加工により得られたネックイン比NIRおよびドローダウン速度DDを表4に示す。 実施例1〜3の結果から、押出ラミネート加工において、粘度比<ηP/ηU>が低いほどネックイン比NIRは小さいことが示された。また、<ηS/ηU>が高いほどドローダウン速度DDが高いことが示された。このように、押出ラミネート加工性は粘度比<ηP/ηU>および<ηS/ηU>で評価できることが分かった。 本発明に係る評価装置はネックイン性を評価できるので、押出ラミネート加工等に適用する熱可塑性樹脂の評価に好適に適用できる。本発明の一実施形態に係る評価装置1の構成の概略を模式的に示す図である。実施例1に用いたポリエチレン樹脂のせん断粘度ηS、一軸伸長粘度ηU、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’の測定値、及びPTTモデルによるせん断粘度ηS、一軸伸長粘度ηU、平面伸長粘度ηP、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’の予測値を示す図である。符号の説明 1 評価装置 13 処理部 14 ネックイン性評価部(ネックイン性評価手段) 15 ドローダウン性評価部(ドローダウン性評価手段) 16 判定部(判定手段) 熱可塑性樹脂の評価装置であって、 伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、平面伸長粘度ηPと一軸伸長粘度ηUとの比<ηP/ηU>を算出するネックイン性評価手段を備えることを特徴とする評価装置。 伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、せん断粘度ηSと一軸伸長粘度ηUとの比<ηS/ηU>を算出するドローダウン性評価手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂の評価装置。 上記ネックイン性評価手段が算出した<ηP/ηU>と、上記ドローダウン性評価手段が算出した<ηS/ηU>との関係が以下の式(1) 3≦<ηU/ηS>≦−250(<ηP/ηU>−1)+40 ・・・(1)を満たし、かつ条件(A)又は(B)(A)上記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であり、ηP、ηU、ηSは、融点+20℃以上、融点+40℃以下における値である;(B)上記熱可塑性樹脂が非結晶性樹脂であり、ηP、ηU、ηSは、ガラス転移温度+50℃以上、ガラス転移温度+80℃以下における値である;を満たすか否かを判定する判定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の評価装置。 請求項1〜3のいずれか1項に記載の評価装置の各手段としてコンピュータを動作させるプログラム。 請求項4に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。 熱可塑性樹脂の評価方法であって、 伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、平面伸長粘度ηPと一軸伸長粘度ηUとの比<ηP/ηU>を算出するネックイン性評価値算出工程と、 上記ネックイン性評価値算出工程によって算出した<ηP/ηU>が小さければ小さいほどネックイン性に優れていると評価するネックイン性評価工程と、を含むことを特徴とする評価方法。 伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、せん断粘度ηSと一軸伸長粘度ηUとの比<ηS/ηU>を算出するドローダウン性評価値算出工程と、 上記ドローダウン性評価値算出工程によって算出した<ηU/ηS>が高ければ高いほどドローダウン性に優れていると評価するドローダウン性評価工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の評価方法。 【課題】押出ラミネート加工等に用いるときにおいて、大量の樹脂を用いて加工機により検証することを必要とせずに、熱可塑性樹脂のネックインが小さいか否かを判定するための熱可塑性樹脂の評価装置を提供する。【解決手段】本発明の評価装置1は、熱可塑性樹脂の評価装置であって、伸長速度が1×10−3s−1以上、1×102s−1以下である範囲内にて平均化した、平面伸長粘度ηPと一軸伸長粘度ηUとの比<ηP/ηU>を算出するネックイン性評価部14を備える。【選択図】図1