タイトル: | 公開特許公報(A)_はんだフラックス中の金属成分分析方法 |
出願番号: | 2008174179 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 30/88,G01N 30/06,B23K 1/00,B23K 35/363 |
須田 裕貴 JP 2010014513 公開特許公報(A) 20100121 2008174179 20080703 はんだフラックス中の金属成分分析方法 富士電機ホールディングス株式会社 000005234 松井 茂 100086689 須田 裕貴 G01N 30/88 20060101AFI20091218BHJP G01N 30/06 20060101ALI20091218BHJP B23K 1/00 20060101ALI20091218BHJP B23K 35/363 20060101ALN20091218BHJP JPG01N30/88 HG01N30/06 ZB23K1/00 AB23K35/363 E 5 OL 8 本発明は、はんだ合金とはんだフラックスとを含むはんだ組成物の、該はんだフラックスに含まれる金属成分の分析方法に関する。 クリームはんだ等のはんだ組成物には、接合面の酸化被膜を除去する目的で、通常、有機酸などの有機化合物により構成されるはんだフラックスを含有させている。このようなはんだ組成物の劣化は、はんだフラックスの組成変化による影響が大きいとされている。このため、はんだ組成物の劣化具合の評価や、品質管理をするにあたり、はんだ組成物に含まれるはんだフラックスの成分分析を行う必要がある。 はんだフラックスの代表的な分析方法として、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)により、フラックスを構成する溶媒、活性剤、チクソ剤、ロジンなどの有機化合物の構造解析やその定量を行う方法や、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)などの他の分析手法と組み合わせてフラックス成分を多角的に分析する方法が知られている。 また、はんだフラックスには有機酸が用いられているが、有機酸成分の分析方法としては、例えば、下記特許文献1には、イオンクロマトグラフィーによって有機酸成分を分離し、電気伝導度を測定して各有機酸量を定量することが開示されている。特開平8−211035号公報 はんだフラックスを含むはんだ組成物では、はんだ合金と、はんだフラックス中の有機酸とが反応して、金属塩が形成される。このため、はんだ組成物が劣化すると、はんだフラックスには、はんだ由来の金属が溶解していることがある。しかしながら、はんだフラックスに含まれるこれらの金属は極めて微量であることから、GC−MSや、LC−MSや、イオンクロマトグラフィーなどのような従来から行われている分析方法では、感度に劣ることから、分析精度が悪く、はんだフラックス中の金属成分を精度良く分析することはできない。 また、試料中に含まれる金属成分の定量分析方法として、原子吸光分析法がある。かかる分析装置としては、大きく分類すると、アセチレンと空気の燃焼により生成される炎で、分析対象成分を原子化して分析するフレーム原子吸光光度計と、グラファイトカーボン製のキュベットに電流を流して電気抵抗により加熱して分析対象成分を原子化して分析するフレームレス原子吸光光度計とがある。 しかしながら、フレーム原子吸光光度計では、フレーム生成条件を測定毎に調整する必要があり、更には、感度を維持するために試料吸い込み量を測定毎に調整する必要があった。このため、測定毎に煩雑な調整を行う必要があるため、迅速な測定は困難であった。 また、フレームレス原子吸光光度計では、測定時に試料液を乾燥,灰化する工程を有するが、揮発性が高い(沸点が低い)試料の場合においては、乾燥工程時に試料液が突沸して試料液が飛散するなどするため分析精度が低下する問題があった。 また、フレーム原子吸光光度計及びフレームレス原子吸光光度計のいずれにおいても、単元素毎の測定となるため、著しく測定時間が掛かる問題があった。 したがって、本発明の目的は、はんだフラックスに含まれる金属成分の種類および含有量を、短時間で、かつ、精度よく分析できるはんだフラックス中の金属成分分析方法を提供することにある。 上記目的を達成するため、本発明は、はんだ合金と、はんだフラックスと、を含むはんだ組成物の、前記はんだフラックス中の金属成分分析方法であって、前記はんだ組成物に含まれる前記はんだフラックスを有機溶媒で抽出し、得られた有機溶媒抽出液に含まれる金属成分を、ICP法にて定量分析して、前記はんだフラックス中の金属成分量を算出することを特徴とする。 本発明のはんだフラックス中の金属成分分析方法は、前記はんだ組成物に含まれる前記はんだフラックスを、超音波抽出により前記有機溶媒で抽出することが好ましい。また、この態様においては、超音波抽出を5分以上行うことが好ましい。 本発明のはんだフラックス中の金属成分分析方法は、前記有機溶媒としてキシレンを用いることが好ましい。 本発明のはんだフラックス中の金属成分分析方法は、前記有機溶媒抽出液に含まれる金属成分を、ICP発光分光分析法又はICP質量分析法により定量分析することが好ましい。 はんだ組成物に含まれるはんだフラックスには、はんだ合金と、はんだフラックス中の有機酸とが反応して形成された金属塩が含まれている。この金属塩は、有機溶媒に溶解し易いので、はんだ組成物に含まれるはんだフラックスを有機溶媒で抽出することで、はんだフラックスに含まれる金属成分を効率よく抽出できる。また、ICP法による定量分析は、多元素を、高感度で同時に分析することができる。 このため、本発明によれば、はんだ組成物に含まれるはんだフラックスを有機溶媒で抽出し、得られた有機溶媒抽出液に含まれる金属成分を、ICP法にて定量分析し、はんだフラックス中の金属成分量を算出することで、はんだフラックス中の金属成分量を、短時間で、かつ、精度よく分析できる。 また、超音波による抽出では、はんだ組成物が有機溶剤中に均一分散し易いので、はんだ組成物に含まれるはんだフラックスを、超音波抽出により前記有機溶媒で抽出することで、はんだフラックスの抽出を、より短時間で、かつ、効率よく行える。 また、はんだフラックスの抽出に用いる有機溶媒としてキシレンを用いることで、ICP法による分析結果のバラつきがより小さくなり、分析精度がより向上し、極めて精度のよい分析結果が得られる。 本発明は、Sn,Ag,Bi,Inなどを含むはんだ合金と、脂肪族アルコール,芳香族アルコール,脂肪族カルボン酸,脂肪族アミド,脂肪族エステルなどの有機化合物で構成されているはんだフラックスと、を含むはんだ組成物の、該はんだフラックスに含まれている金属成分の種類及び含有量の分析方法である。このようなはんだ組成物としては、クリームはんだ等が一例として挙げられる。そして、本発明のはんだフラックス中の金属成分分析方法は、はんだ組成物に含まれるはんだフラックスを有機溶媒で抽出する抽出工程と、抽出工程で得られた有機溶媒抽出液に含まれる金属成分を定量分析し、算出する分析工程と、で主に構成されている。以下、各工程について説明する。 (抽出工程) 抽出工程では、はんだ組成物中のはんだフラックスを、有機溶媒で抽出して有機溶媒抽出液を得る。 抽出に用いる有機溶媒としては、エタノール、クロロホルム、キシレンなどが挙げられる。なかでも、ICP(高周波誘導結合プラズマ)法による定量分析において、感度が高く、安定した分析値が得られるという理由からキシレンが特に好ましい。 はんだフラックスの抽出方法としては、はんだ組成物と有機溶媒とを混合し、超音波を照射して、有機溶媒中にはんだフラックスを抽出させる超音波抽出や、有機溶媒とはんだ組成物とをシェーカーに入れて、一定時間上下方向に振り動かして攪拌して有機溶媒中にはんだフラックスを抽出させるシェーカー抽出等が挙げられる。なかでも、超音波抽出では、はんだ組成物が有機溶剤中に均一分散し易いので、はんだフラックスの抽出を、より短時間で、かつ、効率よく行える。また、専用の容器や機器が不要なので、比較的簡単に用いることができる。 はんだフラックスの抽出を超音波抽出で行う場合においては、超音波の照射時間は5分以上が好ましく、10分以上がより好ましい。超音波の5分未満であると、はんだフラックスの抽出量が安定しないことがあり、精度のよい分析結果が得られないことがある。5分以上であれば、はんだフラックスの抽出量が安定するので、精度のよい分析結果が得られる。なお、超音波の照射時間の上限は特に限定はないが、長時間超音波照射しても、抽出量の変化はなく、操作に時間を要することとなるので、上限は20分以下とすることが好ましい。 (分析工程) 次に、抽出工程で得られた有機溶媒抽出液を、ICP法により金属成分を定量分析して、はんだフラックスに含まれる金属成分の種類および含有量を分析する。ICP法による定量分析では、各元素について濃度(ppm)と、発光強度(cps)などのICP法での検出値との相関を示す検量線を作成し、それに基づいて各元素の組成分析を行う。 ここで、ICP法とは、気体に高電圧をかけることによってプラズマ化させ、さらに高周波数の変動によってそのプラズマ内部に渦電流によるジュール熱を発生させることによって得られる高温のプラズマ(誘導結合プラズマ)で試料を加熱し、原子化・熱励起させて、元素の同定・定量を行う方法であって、例えば、誘導結合プラズマによって試料を原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際の発光スペクトルを、分光器で分光し、特定波長の強度を計測して分析して、元素の同定・定量を行うICP発光分光分析法や、誘導結合プラズマによってイオン化された原子を質量分析計に導入し、質量分析計により質量選別されたイオンをイオン検出器で検出して、元素の同定・定量を行うICP質量分析法などがある。 上記ICP発光分光分析法は、(1)有機溶媒をそのまま分析可能である、(2)多元素を同時にかつ1ppb〜50ppmレベルの広範囲濃度で分析することが可能である、(3)プラズマ温度が高温であるため、化学干渉やイオン化干渉などのマトリックスによる影響が極めて少ない、(4)自己吸収が少ないため検量線の直線範囲が5桁〜6桁と極めて広い、といった特徴がある。ICP発光分光分析装置としては、特に限定はなく、従来公知のものを使用できる。 また、上記ICP質量分析法は、(1)有機溶媒をそのまま分析可能である、(2)多元素を同時にかつ1ppb〜50ppmレベルの広範囲濃度で分析することが可能である、(3)定性、定量が迅速である、(4)検量線の直線範囲が8桁と極めて広い、(5)同位体比の測定が可能である、といった特徴がある。ICP質量分析装置としては、特に限定はなく、従来公知のものを使用でき、例えば、特開2000−88807号に記載されているものなどが挙げられる。 検量線は、ICP発光分光分析法による分析の場合、各元素の濃度(ppm)と発光強度(cps)との相関関係から作成し、測定対象となる元素の感度が最も高くなる波長の発光強度で作成することが好ましい。例えば、Snの場合は、波長284.000nmにおける発光強度で、検量線を作成することが好ましい。また、Agの場合は、波長328.075nmにおける発光強度で検量線を作成することが好ましい。 また、ICP質量分析法による分析の場合は、各元素の濃度(ppm)と信号強度との相関関係から作成することが好ましい。 このように、ICP法による定量分析は、有機溶媒をそのまま分析することができ、更には、多元素を、高感度で同時に分析することができるので、はんだフラックスに含まれる金属成分の種類および含有量を、短時間で、かつ、精度よく分析できる。 [分析精度の検討] キシレン、エタノール及びクロロホルムのそれぞれに、Sn及びAgを1ppm溶解させて、試料溶液を調製した。そして、各試料溶液を、ICP発光分光分析法(測定装置:「SPS−3100」 セイコーインスツルメンツ製)により分析(N=5)した。測定条件を以下に示す。また、測定結果を表1,2に示す。 ≪測定条件≫・高周波出力:1.6kW・プラズマガス流量:18L/min・補助ガス流量:1.5L/min・キャリアーガス流量:0.1MPa・積分回数:3回・積分時間:2秒・測光高さ:12mm 上記結果より、キシレンを溶媒として用いた試料溶液の変動係数は約0.3%であり、極めて良好な測定精度であった。なお、変動係数とは、次式で表されるものである。 CV(%) =[分析値の標準偏差/分析値の平均値]×100 次に、キシレンに、Sn及びAgを0.1ppm溶解させて、試料溶液を調製し、上記と同様の測定条件で、ICP発光分光分析法(測定装置:「SPS−3100」 セイコーインスツルメンツ製)により分析(N=5)した。測定結果を表3に示す。 上記結果より、Sn及びAgの濃度が0.1ppmであっても、測定結果の変動係数が約3%であり、測定結果にほとんどバラつきがなく良好であった。 (実施例) Sn及びAgを含むクリームはんだ(フラックス量約9質量%)を6種類用意した。それぞれのクリームはんだを約2g秤量し、20mlのガラス製バイアルビンに移し入れた。そして、キシレン10ml添加し、超音波を10分間照射して、キシレン中にフラックス成分を抽出させた。そして、フラックス成分を抽出させたキシレンを試料溶液とし、該試料溶液をICP発光分光分析法(測定装置:「SPS−3100」 セイコーインスツルメンツ製)により分析(N=5)した。分析結果を表4,5に示す。表中、A群は、製造後、未開封状態で保存されていて、開封した直後のクリームはんだであり、B群は、開封後、24時間経過したクリームはんだである。 なお、この分析においては、各元素について濃度(ppm)と発光強度(cps)との相関を示す検量線を作成して、それに基づいて各元素(Sn,Ag)の組成分析を行った。図1に、Snについての濃度と発光強度(波長284.000nm)との関係を示す図表を示す。また、図2に、Agについての濃度と発光強度(波長328.075nm)との関係を示す図表を示す。 上記結果より、試料によって、はんだフラックスに含まれるSn量が異なっていることが確認できた。また、A群とB群との対比から、クリームはんだが劣化すると、はんだフラックスに含まれるSn量が増加していたことが確認できた。また、Agは検出限界値未満であり、このはんだフラックスはAg含有量が極めて微量であることが確認できた。Sn濃度(ppm)と発光強度(cps)との相関を示す図表である。Ag濃度(ppm)と発光強度(cps)との相関を示す図表である。 はんだ合金と、はんだフラックスと、を含むはんだ組成物の、前記はんだフラックス中の金属成分分析方法であって、 前記はんだ組成物に含まれる前記はんだフラックスを有機溶媒で抽出し、 得られた有機溶媒抽出液に含まれる金属成分を、ICP法にて定量分析して、前記はんだフラックス中の金属成分量を算出する ことを特徴とするはんだフラックス中の金属成分分析方法。 前記はんだ組成物に含まれる前記はんだフラックスを、超音波抽出により、前記有機溶媒で抽出する、請求項1に記載のはんだフラックス中の金属成分分析方法。 前記超音波抽出は、5分以上行う、請求項2に記載のはんだフラックス中の金属成分分析方法。 前記有機溶媒としてキシレンを用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のはんだフラックス中の金属成分分析方法。 前記有機溶媒抽出液に含まれる金属成分を、ICP発光分光分析法又はICP質量分析法により定量分析する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のはんだフラックス中の金属成分分析方法。 【課題】はんだフラックスに含まれる金属成分の種類および含有量を、短時間で、かつ、精度よく分析できるはんだフラックス中の金属成分分析方法を提供する。【解決手段】はんだ組成物に含まれるはんだフラックスを有機溶媒で抽出し、得られた有機溶媒抽出液に含まれる金属成分をICP法にて定量分析して、はんだフラックス中の金属成分量を算出する。はんだ組成物に含まれるはんだフラックスを超音波抽出により有機溶媒で抽出することが好ましい。また、有機溶媒としては、キシレンを用いることが好ましい。【選択図】なし