タイトル: | 公開特許公報(A)_高純度酢酸ブチルの製造方法 |
出願番号: | 2008159836 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 67/54,C07C 67/08,C07C 69/14,C07B 61/00 |
土田 牧弘 岡 憲治 JP 2008308500 公開特許公報(A) 20081225 2008159836 20080619 高純度酢酸ブチルの製造方法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 後藤 幸久 100101362 土田 牧弘 岡 憲治 C07C 67/54 20060101AFI20081128BHJP C07C 67/08 20060101ALI20081128BHJP C07C 69/14 20060101ALI20081128BHJP C07B 61/00 20060101ALN20081128BHJP JPC07C67/54C07C67/08C07C69/14C07B61/00 300 1 1 2002165099 20020606 OL 10 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC48 4H006AD11 4H006BA28 4H006BA36 4H006BC51 4H006BC52 4H006BD84 4H006KA06 4H039CA66 4H039CD10 4H039CD30 本発明は、酢酸とn−ブタノールを原料として硫酸等の触媒の存在下に反応させ、その反応粗液から硫酸由来物質及び硫酸を分離精製することにより得られる高純度酢酸ブチルの製造方法に関する。詳しくは、イオンクロマトグラフ分析により検出される未同定の硫酸由来物質及び硫酸の合計濃度が20ppb以下の高純度酢酸ブチルを製造する方法に関する。 酢酸ブチル(本発明では酢酸n−ブチルを示す)は、沸点124〜125℃の無色透明、果実の芳香を持つ液体で、多くの種類の物質を溶解させる、優れた溶解性を有している。従って、その用途はニトロセルロースラッカーの溶剤の他、多くの樹脂の溶剤や、合成皮革、合成繊維、合成樹脂の製造溶媒、油脂、医薬の抽出溶剤、香水や合成香料の一成分等として広く利用されている。 従来、酢酸ブチルの製造方法としては、酢酸とn−ブタノールを硫酸等の酸触媒の存在下にエステル化して得られた粗酢酸ブチルを脱低沸物蒸留塔に導入して低沸物を除去し、その缶出液を脱高沸物蒸留塔に導入してその塔頂から酢酸ブチルを留出製品として得る方法『CHEM SYSTEMS’PERP-Ethyl Acetate/Buthyl Acetate 97/98S5』等が知られている。 しかしながら、この方法では、原料であるn−ブタノールあるいはn−ブタノール中に含まれるアルコール類と硫酸が反応して、硫酸の中性エステルであるジブチル硫酸のような硫酸ジアルキルR2SO4やイオン解離可能なモノブチル硫酸のような硫酸モノアルキルRHSO4(両者を硫酸アルキル類という)等が生成することが知られており、これらが酢酸ブチル中に混入することになる。 近年、酢酸ブチルは電材向け溶剤としての需要を伸ばしており、フォトレジストを使用した半導体製造時にトラブルの原因となる硫酸由来物質及び硫酸の低減が望まれているが、上記の方法で得られた酢酸ブチルは、純度99.5wt%以上、n−ブタノール0.50wt%以下、水分0.050wt%以下、酸分(酢酸換算)0.01wt%以下の品質を有しているものの、上記硫酸由来物質及び硫酸の除去が不十分であり、フォトレジスト等の用途には適していない。 従来、酢酸ブチルの精製方法としては、蒸留精製による方法、蒸留精製後さらにイオン交換樹脂または活性炭処理する方法(特開昭60−237043号公報)等が知られている。このようにして得られた酢酸ブチルは、純度99.5%以上、エステル価480mg−KOH/g以上、酸価0.05mg−KOH/g以下、硫酸着色20以下、蒸発残分0.005%以下、色相APHA4以下、屈折率1.392〜1.396、沸点124〜125℃、初留点120℃以上、乾点130.5℃以下、比重(20/20℃)0.879〜0.885の品質を有するが、フォトレジスト用等には不十分である。 本発明者らは、フォトレジスト用等に使用されるべき酢酸ブチル中の上記のような硫酸由来物質及び硫酸を低減するために、脱低沸蒸留後、脱高沸蒸留し、さらにイオン交換樹脂により硫酸由来物質及び硫酸を吸着除去させる方法を先に提案(特願2002−031760)した。しかし、この方法には処理設備の建設及び運転に費用がかかること、劣化したイオン交換樹脂の交換等の作業が必要であるといった問題があった。 本発明の目的は、イオンクロマトグラフ分析により検出される硫酸由来物質及び硫酸の合計濃度が著しく低く、且つ、経時変化による硫酸の増加が少ない高純度酢酸ブチルの製造方法を提供することである。 本発明者は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、精製工程の段階で硫酸アルキル類等が加熱されて硫酸由来物質となり製品酢酸ブチル中に混入すること、及びこの硫酸由来物質が除去されていない酢酸ブチルは、経時的に硫酸濃度が増加することを見出した。また、硫酸アルキル類等は酢酸ブチルより高沸物であるので脱低沸物蒸留塔の塔底液中に濃縮させ、脱低沸物蒸留塔からの酢酸ブチルを(缶出抜き取りでなく)サイドカット抜き取りとすることにより、脱高沸物蒸留塔に導入される硫酸アルキル類等を削減できること、及びこの硫酸アルキル類等の少ない酢酸ブチルを脱高沸物蒸留塔にて蒸留することにより、硫酸由来物質及び硫酸の合計濃度が20ppb以下の高純度酢酸ブチルを経済的に製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。また、硫酸アルキル類等が含まれていても脱高沸物蒸留塔での塔内温度を低減する又は滞留時間を短縮するなどの手段で熱履歴を軽減することにより、硫酸由来物質の生成を抑制できることを見出した。特に、脱高沸物蒸留塔内の温度を低減することにより、硫酸由来物質の生成が著しく抑制され、硫酸由来物質及び硫酸の合計濃度が20ppb以下の高純度酢酸ブチルを経済的に製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、「硫酸触媒の存在下、酢酸とn−ブタノールから酢酸ブチルを合成し、脱低沸蒸留後、脱高沸蒸留することにより酢酸ブチルを製造する際、脱高沸物蒸留塔の塔頂圧力を50〜700mmHg、塔頂温度を40〜120℃、塔底温度を70〜130℃にコントロールすることを特徴とする高純度酢酸ブチルの製造方法」である。 本発明によれば、イオンクロマトグラフ分析により検出される硫酸由来物質および硫酸の合計濃度が20ppb以下の高純度酢酸ブチルが得られた。 以下、本発明について詳細に説明する。原料等 本発明で原料に使用される酢酸は、特に限定されるものではなく、例えば純度99重量%以上、好ましくは純度99.5重量%以上のものであり、工業用グレードが使用できる。 本発明で原料に使用するn−ブタノールは、特に限定されるものではなく、例えば純度98重量%以上、好ましくは純度99重量%以上のものであり、工業用グレードが使用できる。 本発明でエステル化反応に使用する触媒は硫酸である。 上記硫酸は、特に限定されるものではなく、例えば純度96重量%以上、好ましくは純度97重量%以上、さらに好ましくは純度98重量%以上のものであるが、希硫酸を供給して、所定濃度範囲に脱水しながら使用することもできる。反応工程 以下、触媒に硫酸を使用した場合を例にして本発明を説明する。エステル化方法は特に限定されるものではなく、回分式、半回分式、または連続式のいずれでも行うことができる。連続式は槽型反応器でも管型反応器でも行うことが可能である。例えば、連続式の槽型反応器で予備反応させた後、連続式の反応蒸留塔により、蒸留塔の塔頂から酢酸ブチル/n−ブタノール/水の共沸混合物として、副生する水を系外に除去しながら反応させると効率よく製造できる。 反応蒸留塔から得られた酢酸ブチル粗液については、硫酸分をアルカリ中和し、水で洗浄した後、水分の除去を行う。精製工程 本発明の具体例を図1に基づいて説明する。なお、図1は主要な装置の概略のみを示している。反応系(図示せず)で得られた粗反応生成物を中和水洗し、デカンターにより大部分の水及び硫酸を分離した後の酢酸ブチル、n−ブタノール、水、硫酸及び微量の副生物を含む供給液は、ラインAを経てn−ブタノール及び水等の低沸物を除去する目的の脱低沸物蒸留塔1−1に供給される。 なお、図1において、点線は従来(たとえば、前記特願2002−031760等)行われていた方法における脱低沸物蒸留塔から缶出され、脱高沸物蒸留塔1−2へ供給される、主として酢酸ブチル及び高沸点物からなる混合物の供給ラインCである。 脱低沸物蒸留塔1−1は気液の交流多段接触機構を備えるものであれば特にその形式に制約条件は無いが、通常は設備の簡便性から塔形式の装置が選ばれる。塔の充填物はラシヒリング、インターロックサドル、ポールリング、カスケードミニリング、ネットリング等の不規則充填物、或いはメラパック、スルーザーパック、フレキシパック等の規則充填物、或いはシーブトレイ、フレキシトレイ、バルブトレイ、キャップトレイ等の棚段等から幅広く1種或いは2種以上の組合せにおいて自由に選択でき、かつこれら内容物の材質も金属、プラスチック、磁製等制限されない。 脱低沸物蒸留塔1−1は通常、常圧、塔頂温度105〜115℃、塔底温度130〜140℃、還流比5〜15で運転される。 塔頂部からは酢酸ブチルの一部、n−ブタノール、水及び副生物が留出する。 塔底部からは酢酸ブチルの他に、反応系から持ち込まれる微量の硫酸、モノブチル硫酸、ジブチル硫酸等の硫酸アルキル類、希には硫酸由来物質及び副生物が缶出する。なお、本発明では、硫酸由来物質とは、未同定の物質であり、イオンクロマトグラフ分析により硫酸の直前に検出され、経時的に減少し、代わりに硫酸が増加する原因物質を指す。 脱高沸物蒸留塔は気液の交流多段接触機構を備えるものであれば特にその形式に制約条件は無いが、通常は設備の簡便性から塔形式の装置が選ばれる。塔の充填物はラシヒリング、インターロックサドル、ポールリング、カスケードミニリング、ネットリング等の不規則充填物、或いはメラパック、スルーザーパック、フレキシパック等の規則充填物、或いはシーブトレイ、フレキシトレイ、バルブトレイ、キャップトレイ等の棚段等から幅広く1種或いは2種以上の組合せにおいて自由に選択でき、かつこれら充填物の材質も金属、プラスチック、磁製等制限されない。 脱高沸物蒸留塔は通常、常圧条件下では、脱高沸物蒸留塔の塔頂及び塔底温度はそれぞれ124〜130℃、130〜135℃である。 この範囲内で脱高沸物蒸留塔内の温度が変動しても、製品の品質などには特に影響は現れない(理論上は、より低温なほど熱履歴が軽減されるので、硫酸由来物質の発生量は減少することも考えられる)。 還流比は通常0.1〜1.0の範囲内で特に制限されないが、還流比を高くすると製品酸価が若干高くなる傾向がある。反対に低くすると、プロピオン酸ブチルなどの(比較的低分子量の)高沸点物が塔の上方にまで移動し、製品酢酸ブチルに混入するようになる。 本発明においては、脱低沸物蒸留塔から取り出される脱高沸物蒸留塔への供給液を、図1における点線のように塔底から抜き取る方式を採用し、塔頂圧力を50〜700mmHg、塔頂温度40〜120℃、塔底温度70〜133℃にコントロールする。 塔頂圧力、塔頂温度、塔底温度はどれも低くなるほど、脱高沸物蒸留塔での熱履歴が軽減されるようになるので、より好ましい。 脱高沸物蒸留塔1−2からの製品酢酸ブチルの取り出し方法は、塔頂からの取り出し、或いは塔側面からのサイドカット等いずれの方法も使用できる。その方法は特に限定されるものではないが、製品酢酸ブチルに残存する低沸成分である硫酸由来物質の量を低減することを目的とするには、サイドカットで抜き取る方がより好ましい。 塔底部からは酢酸ブチルの他に、硫酸、モノブチル硫酸、ジブチル硫酸等の硫酸アルキル類及び副生物が缶出する。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で用いられている「部」は、特別の説明がない限り「重量部」を意味する。[評価方法]1.分析試料の前処理:試料となる酢酸ブチルはイオンクロマトグラフ分析の妨害成分となるので、酢酸ブチルからイオン性物質(硫酸由来物質、硫酸およびモノブチル硫酸)を水抽出して、酢酸ブチルの含まれない水溶液を調製する。具体的には、試料となる酢酸ブチル50ミリリットルとイオン交換水50ミリリットルを分液漏斗に入れ、3分間振とう、2分間静置、分液した後、下層水をイオン交換水で洗浄した100ミリリットルビーカーに採取し、採取した下層水が酢酸ブチルの臭いがしなくなるまで、例えば、30℃の恒温槽内で3分間振とうした水溶液を調製する。2.イオンクロマトグラフ分析:上記1の前処理方法により得られた水溶液をイオンクロマトグラフにて分析し、濃度既知の硫酸ナトリウムの標準液と比較することにより、硫酸由来物質の濃度を算出する。この分析での硫酸イオンSO42−の検出限界は1ppb以下である。硫酸由来物質の感度係数は、硫酸由来物質を60℃、90時間加熱処理して硫酸イオンにまで完全に変化させ、硫酸イオンの増量から求めた。本実施例では、硫酸由来物質の硫酸イオン換算濃度[ppb]=硫酸由来物質のピーク面積/333.6である。 イオンクロマトグラフ分析の条件は以下の通りである。 装置:DX−320(ダイオネクス製) 検出器:電気伝導度計 プレカラム:IonPacAG17(ダイオネクス製) 分離カラム:IonPacAS17(ダイオネクス製) 恒温槽温度:30℃ 溶離液:25ミリモルKOH水溶液 溶離液流量:1.5ミリリットル/分 試料注入量:10μリットル3.ガスクロマトグラフ分析:蒸留塔の仕込液及び各留分をガスクロマトグラフにて分析し、濃度既知のジブチル硫酸で作成した検量線を元にして、ピーク面積から絶対検量線法にて試料中のジブチル硫酸濃度を算出する。 ガスクロマトグラフ分析の条件は以下の通りである。 装置:HP6890(ヒューレットパッカード製) 検出器:FID カラム:HP5(60m×0.32mm×1.0μm)(ヒューレットパッカード製) 昇温速度:100℃で10分保持→5℃/分で昇温→230℃で14分保持 Heキャリア:2.4ミリリットル/分、22.5psi 試料注入量:1μリットル4.経時変化試験:脱高沸物蒸留塔の塔頂から留出した酢酸ブチルを褐色の広口瓶に入れ、気相部を窒素シールした後密栓した試料を、25[℃]に設定した恒温槽に3ヶ月間保持し、イオンクロマトグラフ分析及びガスクロマトグラフ分析を行った。[参考例1〜2、比較例1] 図1に示されるフローシートに従って本発明を説明する。原料として、酢酸100部、n−ブタノール124部、触媒として硫酸1.7部を槽型反応器(図示せず)に仕込んだ。槽型反応器を温度95〜105℃、圧力760mmHgに、1時間保持した。槽型反応器から取り出した液を反応蒸留塔(図示せず)に供給し、エステル化反応により生成する水を塔頂より共沸により除去しながら反応を完結させた。反応蒸留塔は、塔頂温度95〜105℃、塔底温度125〜135℃、塔頂圧力760mmHgに保持した。 ここでは、仕込み液量100部に対して水、n−ブタノール及び低沸点物が塔頂より14部留出された。 塔底からは缶出液として、酢酸ブチル、硫酸、未反応の酢酸及び高沸点物が86部取り出された。 反応蒸留塔の缶出液は、中和洗浄槽(図示せず)に仕込まれ、水酸化ナトリウム水溶液により、硫酸及び未反応の酢酸を中和し、高沸点物の一部を水酸化ナトリウムにより分解させた後、静置分液された。中和洗浄槽へは、缶出液100部に対して1部の水酸化ナトリウム及び50部の水が仕込まれた。中和洗浄槽への仕込み液全量100部に対して、硫酸を除去された酢酸ブチル、高沸点物の残り及び水酸化ナトリウムによる分解により生じた低沸点物の一部が66部、上層に取り出された。中和により生じた硫酸塩、酢酸塩及び水酸化ナトリウムによる分解により生じた低沸点物の一部を含む水が34部、下層に排出された。<参考例1(気体サイドカット)> 中和洗浄槽の上層液を分析した結果、硫酸由来物質濃度は2ppb、硫酸イオン濃度は26ppb、モノブチル硫酸濃度は360ppb、ジブチル硫酸濃度は780ppmであった。 段数40段の多孔板塔からなる内径30mmの脱低沸物蒸留塔1−1の下から30段目に上層液100部を仕込み、塔内が温度110〜130℃、圧力760mmHg、還流比10となるように保持した。 これにより、塔頂液1として低沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔頂より5部排出された。脱低沸物蒸留塔1−1の塔底からは、塔底液1として酢酸ブチル及び硫酸アルキル類等の高沸点物が5部排出された。 脱低沸物蒸留塔1−1の下から5段目の棚からは、サイドカット気体1として酢酸ブチル及び高沸点物が90部取り出された。 サイドカット気体1の凝縮液を分析した結果、硫酸由来物質濃度は6ppb、硫酸イオン濃度は12ppb、モノブチル硫酸濃度は1ppb以下、ジブチル硫酸濃度は7ppmであった。(表1) 段数30段の多孔板塔からなる内径30[mm]の脱高沸物蒸留塔1−2の下から3段目に、上記サイドカット気体1の凝縮液を100部仕込み、塔内が温度124〜135℃、圧力760mmHg、還流比0.5となるように保持した。これにより、塔底液2として高沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔底より5部排出された。 脱高沸物蒸留塔1−2の塔頂からは、塔頂液2として酢酸ブチルが95部留出された。 上記方法により製造された酢酸ブチルについて、製造直後と製造3ヶ月後イオンクロマトグラフ及びガスクロマトグラフにより、硫酸等の分析を行った。結果を表2に示す。製造直後の塔頂液2を分析した結果、硫酸由来物質濃度は7ppb、硫酸イオン濃度は2ppb、モノブチル硫酸濃度は1ppb以下、ジブチル硫酸濃度は1ppm以下であった。製造3ヶ月後においても、硫酸由来物質濃度は検出限界以下であり、硫酸イオン濃度は10ppbであった。<参考例2(液サイドカット)> 段数40段の多孔板塔からなる内径30mmの脱低沸物蒸留塔1−1の下から30段目に、参考例1記載の上層液100部を仕込み、塔内が温度110〜130℃、圧力760mmHg、還流比10となるように保持した。 これにより、塔頂液1として低沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔頂より5部排出された。 脱低沸物蒸留塔1−1の塔底からは、塔底液1として酢酸ブチル及び硫酸アルキル類等の高沸点物が5部排出された。 脱低沸物蒸留塔1−1の下から5段目の棚からは、サイドカット液体1として酢酸ブチル及び高沸点物が90部取り出された。 サイドカット液体1を分析した結果、硫酸由来物質濃度は1ppb以下、硫酸イオン濃度は40ppb、モノブチル硫酸濃度は95ppb、ジブチル硫酸濃度は180ppmであった。(表1) 段数30段の多孔板塔からなる内径30mmの脱高沸物蒸留塔1−2の下から3段目に、上記サイドカット液体1を100部仕込み、塔内が温度124〜135℃、圧力760mmHg、還流比0.5となるように保持した。これにより、塔底液2として高沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔底より5部排出された。 脱高沸物蒸留塔1−2の塔頂からは、塔頂液2として酢酸ブチルが95部留出された。 上記方法により製造された酢酸ブチルについて、製造直後と製造3ヶ月後イオンクロマトグラフ及びガスクロマトグラフにより、硫酸等の分析を行った。製造直後の塔頂液2を分析した結果、硫酸由来物質濃度は8ppb、硫酸イオン濃度は7ppb、モノブチル硫酸濃度は1ppb以下、ジブチル硫酸濃度は1ppm以下であった。製造3ヶ月後においても、硫酸由来物質濃度は検出限界以下であり、硫酸イオン濃度は15ppbであった。(表2)<比較例1(図1のラインCによる缶出抜き取り)> 段数40段の多孔板塔からなる内径30[mm]の脱低沸物蒸留塔1−1の下から30段目に、参考例1記載の上層液100部を仕込み、塔内が温度110〜130[℃]、圧力760[mmHg]、還流比10となるように保持した。 これにより、塔頂液1として低沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔頂より5部排出された。 脱低沸物蒸留塔1−1の塔底からは、塔底液1として酢酸ブチル及び硫酸アルキル類等の高沸点物が95部取り出された。 塔底液1を分析した結果、硫酸由来物質濃度は24ppb、硫酸イオン濃度は428ppb、モノブチル硫酸濃度は435ppb、ジブチル硫酸濃度は1276ppmであった。(表1) 段数30段の多孔板塔からなる内径30[mm]の脱高沸物蒸留塔1−2の下から3段目に、上記塔底液1を100部仕込み、塔内が温度124〜135[℃]、圧力760[mmHg]、還流比0.5となるように保持した。 これにより、塔底液2として高沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔底より5部排出された。 脱高沸物蒸留塔1−2の塔頂からは、塔頂液2として酢酸ブチルが95部留出された。 上記方法により製造された酢酸ブチルについて、製造直後と製造3ヶ月後イオンクロマトグラフ及びガスクロマトグラフにより、硫酸等の分析を行った。製造直後の塔頂液2を分析した結果、硫酸由来物質濃度は460ppb、硫酸イオン濃度は27ppb、モノブチル硫酸濃度は1ppb以下、ジブチル硫酸濃度は1ppm以下であった。製造3ヶ月後においては、硫酸由来物質濃度は検出限界以下となり、硫酸イオン濃度が483ppbに増加していた。(表2) これら蒸留において、脱低沸物蒸留塔から取り出し、脱高沸物蒸留塔に仕込んだ酢酸ブチルの分析結果を、以下の表1に示す。 *1:硫酸由来物質の濃度は硫酸イオンSO42-に換算した値である。検出限界は硫酸イオン換算で1ppb以下である。 *2:検出限界は1ppb以下である。 *3:検出限界は1ppm以下である。 (表2および表3において同じ。) これら蒸留において、脱高沸物蒸留塔から留出した酢酸ブチルの分析結果を、以下の表2に示す。[実施例1〜2、比較例2] 酢酸ブチルの合成については、参考例1および2と同様に仕込み、合成、中和等を行ない上層液を得た。<実施例1(塔底温度100℃)> 40段の多孔板塔からなる内径30mmの脱低沸物蒸留塔1−1の下から30段目に上層液100部を仕込み、塔内が温度110〜130℃、圧力760mmHg、還流比10となるように保持した。 これにより、塔頂液1として低沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔頂より5部排出された。 脱低沸物蒸留塔1−1の塔底からは、塔底液1として酢酸ブチル及び硫酸アルキル類等の高沸点物が95部取り出された。塔底液1を分析した結果、硫酸由来物質濃度は6ppb、硫酸イオン濃度は513ppb、モノブチル硫酸濃度は317ppb、ジブチル硫酸濃度は968ppmであった。 段数30段の多孔板塔からなる内径30mmの脱高沸物蒸留塔1−2の下から3段目に、上記塔底液1を100部仕込み(図1のラインC)、塔内が温度92〜100℃、圧力280mmHg、還流比0.5となるように保持した。これにより、塔底液2として高沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔底より5部排出された。 脱高沸物蒸留塔1−2の塔頂からは、塔頂液2として酢酸ブチルが95部留出された。 上記方法により製造された酢酸ブチルについて、製造直後と製造3ヶ月後、イオンクロマトグラフ及びガスクロマトグラフにより、硫酸等の分析を行った。製造直後の塔頂液2を分析した結果、硫酸由来物質濃度は12ppb、硫酸イオン濃度は3ppb、モノブチル硫酸濃度は1ppb以下、ジブチル硫酸濃度は1ppm以下であった。製造3ヶ月後においても、硫酸由来物質濃度は検出限界以下であり、硫酸イオン濃度は16ppbであった。(表3)<実施例2(塔底温度76℃…実験からの推算により、硫酸由来成分の発生が0になる温度)> 段数30段の多孔板塔からなる内径30mmの脱高沸物蒸留塔1−2の下から3段目に、実施例1記載の塔底液1を100部仕込み(図1のラインC)、塔内が温度65〜76℃、圧力115mmHg、還流比0.5となるように保持した。これにより、塔底液2として高沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔底より5部排出された。 脱高沸物蒸留塔1−2の塔頂からは、塔頂液2として酢酸ブチルが95部留出された。 上記方法により製造された酢酸ブチルについて、製造直後と製造3ヶ月後、イオンクロマトグラフ及びガスクロマトグラフにより、硫酸等の分析を行った。製造直後の塔頂液2を分析した結果、硫酸由来物質濃度は1ppb、硫酸イオン濃度は2ppb、モノブチル硫酸濃度は1ppb以下、ジブチル硫酸濃度は1ppm以下であった。製造3ヶ月後においても、硫酸由来物質濃度は検出限界以下であり、硫酸イオン濃度は3ppbであった。(表3)<比較例2(従来の塔底温度(常圧)での蒸留)> 段数30段の多孔板塔からなる内径30mmの脱高沸物蒸留塔1−2の下から3段目に、実施例1記載の塔底液1を100部仕込み(図1のラインC)、塔内が温度124〜135℃、圧力760mmHg、還流比0.5となるように保持した。これにより、塔底液2として高沸点物及び酢酸ブチルの一部が塔底より5部排出された。 脱高沸物蒸留塔1−2の塔頂からは、塔頂液2として酢酸ブチルが95部留出された。 上記方法により製造された酢酸ブチルについて、製造直後と製造3ヶ月後、イオンクロマトグラフ及びガスクロマトグラフにより、硫酸等の分析を行った。製造直後の塔頂液2を分析した結果、硫酸由来物質濃度は322ppb、硫酸イオン濃度は17ppb、モノブチル硫酸濃度は1ppb以下、ジブチル硫酸濃度は1ppm以下であった。製造3ヶ月後においては、硫酸由来物質濃度は検出限界以下となり、硫酸イオン濃度が325ppbに増加していた。(表3) これら蒸留における脱高沸物蒸留塔から留出した酢酸ブチルの分析結果を、以下の表3に示す。本発明の製造方法のフローシートである。符号の説明 1−1:脱低沸物蒸留塔 1−2:脱高沸物蒸留塔 1−1−1、1−2−1:リボイラー 1−1−2、1−2−2:コンデンサー 硫酸触媒の存在下、酢酸とn−ブタノールから酢酸ブチルを合成し、脱低沸蒸留後、脱高沸蒸留することにより酢酸ブチルを製造する際、脱高沸物蒸留塔の塔頂圧力を50〜700mmHg、塔頂温度を40〜120℃、塔底温度を70〜130℃にコントロールすることを特徴とする高純度酢酸ブチルの製造方法。 【課題】イオンクロマトグラフ分析により検出される硫酸由来物質及び硫酸の合計濃度が著しく低く、且つ、経時変化による硫酸の増加が少ない高純度酢酸ブチルの製造方法を提供すること。【解決手段】本発明に係る高純度酢酸ブチルの製造方法は、硫酸触媒の存在下、酢酸とn−ブタノールから酢酸ブチルを合成し、脱低沸蒸留後、脱高沸蒸留することにより酢酸ブチルを製造する際、脱高沸物蒸留塔の塔頂圧力を50〜700mmHg、塔頂温度を40〜120℃、塔底温度を70〜130℃にコントロールすることを特徴とする。【選択図】図1