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タイトル:公開特許公報(A)_架橋ゴムのシミュレーション方法
出願番号:2008156696
年次:2009
IPC分類:C08J 3/24,G01N 3/00


特許情報キャッシュ

芥川 恵造 JP 2009298959 公開特許公報(A) 20091224 2008156696 20080616 架橋ゴムのシミュレーション方法 株式会社ブリヂストン 000005278 藤本 英介 100112335 神田 正義 100101144 宮尾 明茂 100101694 芥川 恵造 C08J 3/24 20060101AFI20091127BHJP G01N 3/00 20060101ALI20091127BHJP JPC08J3/24 ZG01N3/00 K 6 1 OL 13 2G061 4F070 2G061CA10 2G061DA11 4F070AA06 4F070AB16 4F070AC32 4F070AC56 4F070AE03 4F070AE04 4F070AE08 4F070AE30 4F070GA05 4F070GB05 4F070GB09 本発明は、加硫ゴム等の架橋ゴムの3次元網目構造を解析、力学モデル化することができる架橋ゴムのシミュレーション方法に関する。 一般に、加硫ゴム等の架橋ゴムの力学的性質は、その架橋点間分子量の均一・不均一性に大きく依存することが知られている(非特許文献1参照)。 一方、ゴムの架橋は、条件によっては、かなりの不均一架橋が起きている可能性が高いとされているが、その詳細は判っておらずゴムの架橋の物理化学における今後の課題に挙げている。これは、ゴムの架橋が本質的には、高分子鎖の三次元化、ネットワーク化の問題でその解析が難しいことによるとしている(非特許文献2参照)。 他方、架橋ゴムに対して樹脂包埋設法を適用することで網目構造を直接的に透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、架橋ゴムの架橋点間分子量分布(均一・不均一性)が定量化が可能であることが紹介されている(非特許文献3参照)。 しかしながら、この手法は、二次元のTEMを用いて架橋点間分子量を画像解析により求めることで網目の不均一性を評価することを紹介しているが、三次元での網目の微細構造、並びに、不均一性には何等言及も示唆もしておらず、その力学的性質との関係まで説明ができていないのが現状である。 ところで、最近では、有限要素法(FEM)等の数値解析手法や計算機環境の発達により、架橋前のゴム材料の充填剤領域及びゴム領域の3次元モデルを作成して変形挙動等を解析する方法、例えば、実際のゴム材料の充填剤の配置を透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影し、得られたデータを計算機トモグラフィー法(CT法)により3次元基本モデルに再構成し、有限要素法(FEM)によりゴム材料の変形挙動を予測する技術が知られている(例えば、本願出願人による特許文献1参照)。 しかしながら、この予測技術は、架橋前のゴム材料の変形挙動を予測するものであり、架橋ゴムの三次元での網目の微細構造、並びに、不均一性には何等言及も示唆もしておらず、その力学的性質との関係まで説明ができていないのが現状である。Mark,J.E.,Erman,B.:Rubberlike Elasticity A Molecular Primer 2nd ed.,Cambridge,UK(2007)西敏夫雄、日本ゴム協会誌、75、No2、P24(2002)、「架橋の物理化学」椎橋透・広瀬和正・田形信雄、「高分子鎖の直接電子顕微鏡観察」、高分子論文集 Vol.46,N08,pp,473−479(Aug.,1989)特開2006−200937号公報(特許請求の範囲、第1の実施形態等) 本発明は、上記従来の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、架橋ゴムの架橋網目構造を三次元で観察、定量化し、その構造データを有限要素法に適用することで三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析するための架橋ゴムのシミュレーション方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、架橋ゴムに対して樹脂包埋設法等を用いて染色した試料ゴムを電子顕微鏡により観測して3次元膨潤モデルを生成し、得られた3次元膨潤モデルを特定の手段にて膨潤前の3次元モデルに生成して有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析することにより、上記目的の架橋ゴムのシミュレーション方法が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。 すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。(1) 架橋ゴムに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段と、該作製手段により得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段と、該3次元膨潤モデル生成手段により得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段と、該膨潤前3次元モデル生成手段により得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段と、を有することを特徴とする架橋ゴムのシミュレーション方法。(2) 前記作製手段により作製される試料ゴムが、架橋ゴムに対して良溶媒である重合性ポリマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ四酸化オスミウムにて染色した試料ゴムであることを特徴とする上記(1)記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(3) 前記3次元膨潤モデル生成手段に用いる電子顕微鏡が透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(4) 前記3次元膨潤モデル生成手段は、電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元CTスライス画像を取得し、該3次元CTスライス画像を有限要素法を用いて3次元膨潤モデルを生成することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(5) 前記膨潤前3次元モデル生成手段は、3次元膨潤モデルをトレースラインにより三次元に区切られた体積領域に対して、各膨潤体積、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数Nを求めると共に、各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定して、その膨潤前の体積及び各膨潤体積領域に相当するゴムの体積分率を求め、かつ、各重心点ごとの網目密度を求め、各膨潤体積に対応する重心座標ごとに有限要素法のボクセルを対応させ、この際に、ボクセル体積は、膨潤前の均一体積とし、膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付与し、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の3次元モデルを作成することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(6) 架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段が架橋ゴムの歪と応力を定めた構成条件が付与された前記膨潤前の3次元モデルの変形挙動を有限要素法を用いて解析することを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 本発明によれば、架橋ゴムの架橋網目構造を三次元で観察、定量化し、その構造データを有限要素法に適用することで三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析することができる架橋ゴムのシミュレーション方法が提供される。 以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。 本発明の架橋ゴムのシミュレーション方法は、図1に示すように、架橋ゴムAに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段Bと、該作製手段Bにより得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段Cと、該3次元膨潤モデル生成手段Cにより得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段Dと、該膨潤前3次元モデル生成手段Dにより得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段とを有することにより、三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析することができる架橋ゴムのシミュレーション方法である。 本発明において、作製(準備)する試料ゴムは、架橋ゴムと、この架橋ゴムを飽和状態まで膨潤させることができる重合性モノマーと、架橋ゴムのゴム鎖を良好に染色することができる染色剤とを用いることにより得ることができる。 用いることができる架橋ゴムとして、架橋可能なゴム成分であれば、特に限定されず、例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、ニトリルゴム(NBR)などのジエン系合成ゴム、ポリジメチルシロキサン、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。 また、これらの架橋ゴムには、充填剤、カップリング剤、老化防止剤、架橋剤なども配合されていてもよい。 用いることができる重合性モノマーは、上述の架橋可能なゴム成分の良溶媒となり架橋ゴムを飽和状態まで膨潤させることができ、かつ、膨潤したゴム成分を該モノマーで重合させることができるものであれば、特に限定されず、例えば、スチレンモノマー、スチレン誘導体モノマー、エポキシ、フラン、キシレン、シリコーン、ジアリルフタレートなどが挙げられる。 更に、用いることができる染色剤としては、架橋ゴムのゴム鎖を良好に染色することができものであれば、特に限定されず、ルテニウム(RuO4)、ヨウ素、金、セレン、タングステンなどの各種の染色化合物を用いることができ、好ましくは、更に重合性モノマーを染色しないものが望ましく、具体的には、試料中の炭素−炭素二重結合に付加する性質がある(炭素−炭素二重結合のある部分のみを染色する)四酸化オスミニウムや、試料中のスチレン部分のみを染色する場合は、四酸化ルテニウムなどを用いることができる。 具体的に作製する試料ゴムの調製としては、上述の各種架橋ゴムを濃度1〜100%の重合性モノマー溶液に浸漬等させて架橋ゴムを飽和状態まで膨潤させ、これらのモノマー溶液又は膨潤液を重合剤等を用いて重合・固化した後、染色剤を用いてゴム鎖を染色・固定することにより調製することができ、また、上記重合・固化の前に、染色剤を用いてゴム鎖を染色・固定した後に、重合・固化して調製することもできる。 図2は、架橋ゴムから試料ゴムを作製するための説明図であり、(a)は用いる架橋ゴム1の概略図であり、(b)は重合性モノマー2により膨潤された架橋ゴム(膨潤ゴム)3の概略図であり、(c)はゴム鎖が染色・固定され、膨潤された膨潤ゴム3の概略図である。 好ましくは、架橋ゴムとして、合成イソプレンゴムなどのジエン系ゴムを用いる場合には、重合性モノマーとしてスチレンモノマー、染色剤として四酸化オスミウムを好適に用いることができ、この場合の調製法としては合成シスイソプレンゴムなどのジエン系ゴム(0.5cm×0.5cm×0.2cm)を、1〜100%の濃度で十分な量(平衡膨潤で吸収される量相当)となるスチレンモノマー溶液で平衡膨潤させ、該スチレンモノマー溶液に過酸化ベンゾイル等の重合剤をスチレンに対して0.1〜3%加えて重合・固化した後、四酸化オスミウム溶液に浸漬することにより架橋ゴムのゴム鎖のみを効率的に染色・固定化した試料ゴムを調製することができる。 上記作製手段により得られた試料ゴムは、電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する。 試料ゴムから3次元膨潤モデルの生成は、電子顕微鏡の分析技術、並びに、コンピュータトモグラフィー(CT)解析技術を導入することで、三次元に広がった膨潤された網目の構造データを定量化することができる。 用いる電子顕微鏡としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)などを挙げることができる。 具体的に用いる電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)としては、1)透過型電子線トモグラフィー法(Transmission Electron Microtomography、TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置として構成されるCTスキャナや、2)集束イオンビーム(FIB)−走査型電子顕微鏡(SEM)装置とコンピュータとから構成さるFIB−SEM装置などを挙げることができる。 上記1)の透過型CTスキャナは、透過型電子顕微鏡と膨潤された架橋ゴムが載置された試料台とを所定の角度範囲(例えば、−80度から+80度の範囲)で所定角度(例えば、2度間隔)ずつ相対的に回転移動させつつスキャンすることにより試料ゴムの連続傾斜画像を撮影することができる。このCTスキャナは、撮影した多数枚の傾斜画像の画像データを用い、各画像間の回転軸を求め、計算機トモグラフィー法により3次元膨潤モデルに再構成する。また、このCTスキャナは、再構成した3次元膨潤モデルを各面に平行な所定間隔でスライスしたスライス画像を生成する。3次元膨潤モデルの生成開始の所定操作が行われると、3次元膨潤モデル生成処理が実行される。 また、上記2)のFIB−SEM装置では、走査型電子顕微鏡と試料台とを内蔵し、試料ゴムに集束イオンビームを照射する機能と、集束イオンビームによって加工された試料断面に電子ビームを照射して走査電子顕微鏡像を観察することができるSEM機能とを備えたものであり、試料台に載置された解析対象の試料ゴムを集束イオンビーム(FIB)でエッチング処理、走査型電子顕微鏡により撮影を繰り返しながら表面観測して、所定間隔(例えば、厚さ20μm)で撮影したスライス画像データを生成する。このFIB−SEM装置のコンピュータは、撮影した多数枚のスライス画像の画像データを用い、計算機トモグラフィー法により3次元膨潤モデルに再構成する。3次元膨潤モデルの生成開始の所定操作が行われると、3次元膨潤モデル生成処理が実行される。 なお、上述の方法で得られるスライス画像の染色部分が不鮮明である場合は、画像解析ソフトによりコントラスト、並びに、トレースラインの検出を行い、各厚さ方向のコントラストが鮮明な画像を得ることができる。 図3(a)〜(d)は、透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置からなるCTスキャナにより得られた試料ゴムの一部(4枚)の各厚さ方向のコントラストが鮮明なCTスライス画像の一例である。図3(a)中の図示符号3の囲まれた領域を「要素」とした。 以上の厚さ方向にスライスした画像をCT法等により三次元再構築を行い、膨潤した網目の三次元分布画像を得る。 本実施形態では、以下の手順等により膨潤した網目の三次元分布画像を得た。 まず、染色した部分に囲まれた部分を三次元で特定し、その体積と重心を画像解析により求めることで三次元での網目分布の位置情報、並びに、架橋密度を求めることとした。 得られた三次元分布画像に対して、染色した部分に囲まれた体積領域、好ましくはトレースラインにより三次元に区切られた体積領域をゴムが膨潤して生成した膨潤体積として定義した。この体積をCT等による三次元化した構造情報を元にして、各要素ごとの膨潤体積を算出し、それと同時にその各体積の重心座標を求めた。具体的には、三次元画像解析ソフト(Matlab imaginng tool box)を用いて、各要素ごとの膨潤体積〔各膨潤体積をVL,Swollen,Nと定義〕、各膨潤体積ごとの重心点を計算し、ラベリング番号nを割り振り、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数N(要素の総数、nの総数)を求めた。各膨潤体積の総数Nから、膨潤前の体積を計算した。 各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定すれば、その膨潤前の全体の体積VL,totalは、以下の式(I)によって求めることができる。 次いで、各膨潤体積ごとにその膨潤後体積と膨潤前体積からオリジナルゴムの体積分率を算出した。 各膨潤体積領域に相当する膨潤後にあるオリジナルゴムの体積分率Vrを以下の式(II)を用いて算出した。 また、各重心点ごとの網目密度Vnを下記式(III)のFlory−Reinerの式を用いて、各膨潤体積ごとの網目密度を計算した。これにより各膨潤体積に対応する重心点ごとに網目密度が得られる。 この網目密度のヒストグラムを作成することで、そのピークの高さ、半値幅、スキューネスを評価することで対象試料の網目の不均一性を定量的に表すことができる。 一方、各膨潤体積に対する重心座標ごとにボクセル有限要素法によるボクセル(voxel、微小立方体)を対応させる。この際に、ボクセル体積は、膨潤前の均一体積とした。 有限要素法による力学的性質の計算には、膨潤前の試料情報を用いる必要があることから、次の手法により膨潤前の試料ゴム(架橋ゴム)の有限要素法入力モデルを作製する。 膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付けをし、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の試料形状の有限要素モデルを作成した。 図4は、3次元膨潤モデルの概略図であり、図5は、膨潤前3次元モデル(架橋ゴム)の概略図を示すものである。 得られた膨潤前の試料ゴムの有限要素モデルは、各ボクセルの番号に従い、その網目密度を有限要素法で用いている構成方程式の網目密度が反映されるパラメータ(Mooney−Rivilin式ならばC1)に各ボクセルごとに代入する。C1は、以下の式(IV)に従い計算する。 上記膨潤した網目の3次元膨潤モデルを上述の如く、ゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前3次元モデル(架橋ゴムモデル)を有限要素法解析を用いて架橋ゴムの力学的特性を解析することができる。 本発明では、架橋ゴムの力学的特性を解析する解析手段としては、例えば、架橋ゴムの歪と応力を定めた構成条件が付与された前記膨潤前の3次元モデルの変形挙動を有限要素法を用いて解析する手段、ボクセル法、粒子法、メシュフリー法などを挙げることができる。 これらの解析手段は、解析対象とする膨潤前3次元モデルと解析条件とが指定され、解析開始の所定操作が行われると、架橋ゴムの力学特性を解析する処理を実行して解析が行なわれることとなる。 具体的には、解析条件として、図6に示すように、3次元モデルを変化させる方向と、その方向へ3次元モデルを伸張又は圧縮やせん断変化させる変化率を指定することができる。解析処理では、ゴム材料の3次元モデルを解析条件として指定されて方向へ伸張又は圧縮やせん断した場合の3次元モデルの歪み、内部応力分布、3次元モデル全体で応力値を解析して解析結果をコンピュターのディスプレイに表示して行うことができる。 また、他の解析条件としては、例えば、汎用画像解析ソフトウェアのMATLABなどを挙げることができる。 本発明の架橋ゴムのシュミレーション方法は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の形態で変更することができる。 例えば、あらゆる高分子材料の不均一な形態のシュミレーション方法としてもよく、また、自己組織化材料などのシュミレーション方法としてもよい。 このように構成される本発明では、架橋ゴムに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段と、該作製手段により得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段と、該3次元膨潤モデル生成手段により得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段と、該膨潤前3次元モデル生成手段により得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法解析を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段とを有することにより、架橋ゴムの架橋網目構造を三次元で観察、定量化でき、その構造データを有限要素法解析に適用することで、三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析することができる架橋ゴムのシミュレーション方法が得られるものとなる。 次に、実施例となる試験例により本発明を更に詳述するが、本発明は下記試験例に限定されるものではない。〔試験例1〕 一般的に知られている架橋網目の不均一が異なる下記表1に示す二種類のゴムA,Bを準備した。網目の不均一性は、架橋温度と時間の比率を変化させることで網目の均一性の異なる架橋ゴムサンプルA、Bを作製した。 下記の手順に従い、不均一網目の有限要素法モデルを作成し、モデル試料を50%歪み相当で伸張した際の各ボクセルごとの歪みエネルギーを計算した。〔有限要素法モデルの作成方法〕(試料ゴムの作製) ゴムA、Bに対して、重合性モノマーとしてスチレンモノマー、染色剤として四酸化オスミウムを用いた。具体的には、ゴム(0.5cm×0.5cm×0.2cm)を、1〜100%の濃度で平衡膨潤量相当となる十分な量となるスチレンモノマー溶液で平衡膨潤させ、該スチレンモノマー溶液を重合・固化した後、四酸化オスミウム溶液に浸漬することにより架橋ゴムのゴム鎖のみを効率的に染色・固定化した試料ゴムA、Bを調製した。(膨潤前有限要素法モデルの作成) 得られた試料ゴムA、Bに対して、透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置として構成されるCTスキャナを用いて膨潤後3次元モデルを作成した。 この透過型CTスキャナは、透過型電子顕微鏡と膨潤された試料ゴムが載置された試料台とを所定の角度範囲(例えば、−80度から+80度の範囲)で所定角度(例えば、2度間隔)ずつ相対的に回転移動させつつスキャンすることにより試料ゴムの連続傾斜画像(各々80枚)を撮影した。このCTスキャナは、撮影した68枚の傾斜画像の画像データを用い、各画像間の回転軸を求め、計算機トモグラフィー法により3次元膨潤モデルに再構成した。 具体的には、上述の手順に従い、三次元画像解析ソフト(Mathwaks社製、MATLAB)を用いて、各要素ごとの膨潤体積〔各膨潤体積をVL,Swollen,Nと定義〕、各膨潤体積ごとの重心点を計算し、ラベリング番号nを割り振り、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数N(4050)を求めた。各膨潤体積の総数Nから、各膨潤前の体積(43210nm3)を計算した。各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定すれば、その膨潤前の全体の体積VL,totalは、0.175μm3であった。 次いで、各膨潤体積ごとにその膨潤後体積と膨潤前体積から膨潤後の体積分率Vr全ての平均で21%を算出した。また、各重心点ごとの網目密度Vnは全平均で8.2×10−5mol/cm3であった。 膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付けをし、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の試料形状の有限要素モデル(試料ゴムA、Bのモデル、図7(a),(b)参照)を作成した。(モデル試料を50%歪み相当で伸張した際の各ボクセルごとの歪みエネルギーの計算) 図7(a)及び(b)に示したモデルのz軸方向に50%歪相当で伸張し各ボクセルごとの歪エネルギーを有限要素法ソフトウェアを用いて算出した。各ボクセルサイズは3μm×3μm×3μmで用いた。有限要素法の構成方程式には、各ボクセルごとに割りふった網目密度から計算したC1値を以下のMorrisの構成方程式に代入して用いた。 次に、以下の、Morris〔Morris,M.C.joumal of applicd polymer science.8.5435-553(1964)〕の手法に従い、本試料の架橋点間分子量から統計的リンクの数を求めると、両者とも室温でn=50となった。 理想的伸張比は、nを用いて以下の式(V)で表される。なお、Ebは破断伸び(%)である。また、図8に示すように、どのくらい伸びたかは、n1/2で表される。なお、式(V)における計算Ebは、図9に示す網目長さの分布図などに用いることができる。 次に、n=38の場合は、理想Ebは約500%となることから、各ボクセルの歪(引っ張り歪)が500%を超えるものを抽出し、それらの歪エネルギーの全合計値を算出した。 具体的には、下記式により算出した。 上記結果から、試料ゴムAに較べて試料ゴムBは約二倍の歪エネルギー和(500%以上変形している部分の歪エネルギー和)が得られたことから、不均一網目を持つ試料ゴムBはその網目の不均一性から大変形状態の緊張した網目の比率が増加し破断している確率が高いことを表している。これは試料ゴムAに較べて試料Bの強力(ゴムA:1.0MPa、ゴムB:0.7MPa)が低くなる結果と一致している。 以上の点から、本発明の架橋ゴムのシミュレーション方法は、三次元の網目構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発言機構を解析するための解析方法として好適であることが確認された。本発明の架橋ゴムのシミュレーション方法の処理の流れを示すフローである。架橋ゴムから試料ゴムを作製するための説明図であり、(a)は用いる架橋ゴムの概略図であり、(b)は重合性モノマーにより膨潤された架橋ゴム(膨潤ゴム)の概略図であり、(c)はゴム鎖が染色・固定され、膨潤された膨潤ゴムの概略図である。(a)〜(d)は、透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置からなるCTスキャナにより得られた試料ゴムの一部(4枚)の各厚さ方向のコントラストが鮮明なCTスライス画像の一例である。3次元膨潤モデルを説明する概略図である。膨潤前3次元モデルを説明する概略図である。ディスプレイに表示される膨潤前3次元モデルを伸張した場合の一例を示す図である。試料ゴムA,Bの3次元膨潤モデルを説明する説明図であり、(a)は試料ゴムAの膨潤前3次元モデル画像、(b)は試料ゴムBの膨潤前3次元モデル画像である。理想的伸張比を説明する説明図である。網目長さの分布図である。符号の説明 1 架橋ゴム 2 重合性ポリマー 3 膨潤ゴム 架橋ゴムに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段と、該作製手段により得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段と、該3次元膨潤モデル生成手段により得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段と、該膨潤前3次元モデル生成手段により得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段と、を有することを特徴とする架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記作製手段により作製される試料ゴムが、架橋ゴムに対して良溶媒である重合性ポリマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ四酸化オスミウムにて染色した試料ゴムであることを特徴とする請求項1記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記3次元膨潤モデル生成手段に用いる電子顕微鏡が透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡であることを特徴とする請求項1又は2記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記3次元膨潤モデル生成手段は、電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元CTスライス画像を取得し、該3次元CTスライス画像を有限要素法を用いて3次元膨潤モデルを生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記膨潤前3次元モデル生成手段は、3次元膨潤モデルをトレースラインにより三次元に区切られた体積領域に対して、各膨潤体積、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数Nを求めると共に、各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定して、その膨潤前の体積及び各膨潤体積領域に相当するゴムの体積分率を求め、かつ、各重心点ごとの網目密度を求め、各膨潤体積に対応する重心座標ごとに有限要素法のボクセルを対応させ、この際に、ボクセル体積は、膨潤前の均一体積とし、膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付与し、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の3次元モデルを作成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段が架橋ゴムの歪と応力を定めた構成条件が付与された前記膨潤前の3次元モデルの変形挙動を有限要素法を用いて解析することを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 【課題】架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析することができる架橋ゴムのシミュレーション方法を提供する。【解決手段】架橋ゴムAに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段Bと、該作製手段により得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段Cと、該3次元膨潤モデル生成手段Cにより得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段Dと、該膨潤前3次元モデル生成手段Dにより得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法解析を用いて力学特性を解析する解析手段Eと、を有する。【選択図】図1


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特許公報(B2)_架橋ゴムのシミュレーション方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_架橋ゴムのシミュレーション方法
出願番号:2008156696
年次:2013
IPC分類:C08J 3/24,G01N 3/00


特許情報キャッシュ

芥川 恵造 JP 5215053 特許公報(B2) 20130308 2008156696 20080616 架橋ゴムのシミュレーション方法 株式会社ブリヂストン 000005278 藤本 英介 100112335 神田 正義 100101144 宮尾 明茂 100101694 芥川 恵造 20130619 C08J 3/24 20060101AFI20130530BHJP G01N 3/00 20060101ALI20130530BHJP JPC08J3/24 ZG01N3/00 K C08J 3/00−3/28 99/00 G01N 3/00−3/62 特開2007−271369(JP,A) 特開2006−200937(JP,A) 特開2006−138810(JP,A) 特開2002−055034(JP,A) 6 2009298959 20091224 14 20110422 長谷川 大輔 本発明は、加硫ゴム等の架橋ゴムの3次元網目構造を解析、力学モデル化することができる架橋ゴムのシミュレーション方法に関する。 一般に、加硫ゴム等の架橋ゴムの力学的性質は、その架橋点間分子量の均一・不均一性に大きく依存することが知られている(非特許文献1参照)。 一方、ゴムの架橋は、条件によっては、かなりの不均一架橋が起きている可能性が高いとされているが、その詳細は判っておらずゴムの架橋の物理化学における今後の課題に挙げている。これは、ゴムの架橋が本質的には、高分子鎖の三次元化、ネットワーク化の問題でその解析が難しいことによるとしている(非特許文献2参照)。 他方、架橋ゴムに対して樹脂包埋設法を適用することで網目構造を直接的に透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、架橋ゴムの架橋点間分子量分布(均一・不均一性)が定量化が可能であることが紹介されている(非特許文献3参照)。 しかしながら、この手法は、二次元のTEMを用いて架橋点間分子量を画像解析により求めることで網目の不均一性を評価することを紹介しているが、三次元での網目の微細構造、並びに、不均一性には何等言及も示唆もしておらず、その力学的性質との関係まで説明ができていないのが現状である。 ところで、最近では、有限要素法(FEM)等の数値解析手法や計算機環境の発達により、架橋前のゴム材料の充填剤領域及びゴム領域の3次元モデルを作成して変形挙動等を解析する方法、例えば、実際のゴム材料の充填剤の配置を透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影し、得られたデータを計算機トモグラフィー法(CT法)により3次元基本モデルに再構成し、有限要素法(FEM)によりゴム材料の変形挙動を予測する技術が知られている(例えば、本願出願人による特許文献1参照)。 しかしながら、この予測技術は、架橋前のゴム材料の変形挙動を予測するものであり、架橋ゴムの三次元での網目の微細構造、並びに、不均一性には何等言及も示唆もしておらず、その力学的性質との関係まで説明ができていないのが現状である。Mark,J.E.,Erman,B.:Rubberlike Elasticity A Molecular Primer 2nd ed.,Cambridge,UK(2007)西敏夫雄、日本ゴム協会誌、75、No2、P24(2002)、「架橋の物理化学」椎橋透・広瀬和正・田形信雄、「高分子鎖の直接電子顕微鏡観察」、高分子論文集 Vol.46,N08,pp,473−479(Aug.,1989)特開2006−200937号公報(特許請求の範囲、第1の実施形態等) 本発明は、上記従来の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、架橋ゴムの架橋網目構造を三次元で観察、定量化し、その構造データを有限要素法に適用することで三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析するための架橋ゴムのシミュレーション方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、架橋ゴムに対して樹脂包埋設法等を用いて染色した試料ゴムを電子顕微鏡により観測して3次元膨潤モデルを生成し、得られた3次元膨潤モデルを特定の手段にて膨潤前の3次元モデルに生成して有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析することにより、上記目的の架橋ゴムのシミュレーション方法が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。 すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。(1) 架橋ゴムに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段と、該作製手段により得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段と、該3次元膨潤モデル生成手段により得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段と、該膨潤前3次元モデル生成手段により得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段と、を有することを特徴とする架橋ゴムのシミュレーション方法。(2) 前記作製手段により作製される試料ゴムが、架橋ゴムに対して良溶媒である重合性ポリマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ四酸化オスミウムにて染色した試料ゴムであることを特徴とする上記(1)記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(3) 前記3次元膨潤モデル生成手段に用いる電子顕微鏡が透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(4) 前記3次元膨潤モデル生成手段は、電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元CTスライス画像を取得し、該3次元CTスライス画像を有限要素法を用いて3次元膨潤モデルを生成することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(5) 前記膨潤前3次元モデル生成手段は、3次元膨潤モデルをトレースラインにより三次元に区切られた体積領域に対して、各膨潤体積、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数Nを求めると共に、各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定して、その膨潤前の体積及び各膨潤体積領域に相当するゴムの体積分率を求め、かつ、各重心点ごとの網目密度を求め、各膨潤体積に対応する重心座標ごとに有限要素法のボクセルを対応させ、この際に、ボクセル体積は、膨潤前の均一体積とし、膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付与し、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の3次元モデルを作成することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。(6) 架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段が架橋ゴムの歪と応力を定めた構成条件が付与された前記膨潤前の3次元モデルの変形挙動を有限要素法を用いて解析することを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 本発明によれば、架橋ゴムの架橋網目構造を三次元で観察、定量化し、その構造データを有限要素法に適用することで三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析することができる架橋ゴムのシミュレーション方法が提供される。 以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。 本発明の架橋ゴムのシミュレーション方法は、図1に示すように、架橋ゴムAに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段Bと、該作製手段Bにより得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段Cと、該3次元膨潤モデル生成手段Cにより得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段Dと、該膨潤前3次元モデル生成手段Dにより得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段とを有することにより、三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析することができる架橋ゴムのシミュレーション方法である。 本発明において、作製(準備)する試料ゴムは、架橋ゴムと、この架橋ゴムを飽和状態まで膨潤させることができる重合性モノマーと、架橋ゴムのゴム鎖を良好に染色することができる染色剤とを用いることにより得ることができる。 用いることができる架橋ゴムとして、架橋可能なゴム成分であれば、特に限定されず、例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、ニトリルゴム(NBR)などのジエン系合成ゴム、ポリジメチルシロキサン、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。 また、これらの架橋ゴムには、充填剤、カップリング剤、老化防止剤、架橋剤なども配合されていてもよい。 用いることができる重合性モノマーは、上述の架橋可能なゴム成分の良溶媒となり架橋ゴムを飽和状態まで膨潤させることができ、かつ、膨潤したゴム成分を該モノマーで重合させることができるものであれば、特に限定されず、例えば、スチレンモノマー、スチレン誘導体モノマー、エポキシ、フラン、キシレン、シリコーン、ジアリルフタレートなどが挙げられる。 更に、用いることができる染色剤としては、架橋ゴムのゴム鎖を良好に染色することができものであれば、特に限定されず、ルテニウム(RuO4)、ヨウ素、金、セレン、タングステンなどの各種の染色化合物を用いることができ、好ましくは、更に重合性モノマーを染色しないものが望ましく、具体的には、試料中の炭素−炭素二重結合に付加する性質がある(炭素−炭素二重結合のある部分のみを染色する)四酸化オスミニウムや、試料中のスチレン部分のみを染色する場合は、四酸化ルテニウムなどを用いることができる。 具体的に作製する試料ゴムの調製としては、上述の各種架橋ゴムを濃度1〜100%の重合性モノマー溶液に浸漬等させて架橋ゴムを飽和状態まで膨潤させ、これらのモノマー溶液又は膨潤液を重合剤等を用いて重合・固化した後、染色剤を用いてゴム鎖を染色・固定することにより調製することができ、また、上記重合・固化の前に、染色剤を用いてゴム鎖を染色・固定した後に、重合・固化して調製することもできる。 図2は、架橋ゴムから試料ゴムを作製するための説明図であり、(a)は用いる架橋ゴム1の概略図であり、(b)は重合性モノマー2により膨潤された架橋ゴム(膨潤ゴム)3の概略図であり、(c)はゴム鎖が染色・固定され、膨潤された膨潤ゴム3の概略図である。 好ましくは、架橋ゴムとして、合成イソプレンゴムなどのジエン系ゴムを用いる場合には、重合性モノマーとしてスチレンモノマー、染色剤として四酸化オスミウムを好適に用いることができ、この場合の調製法としては合成シスイソプレンゴムなどのジエン系ゴム(0.5cm×0.5cm×0.2cm)を、1〜100%の濃度で十分な量(平衡膨潤で吸収される量相当)となるスチレンモノマー溶液で平衡膨潤させ、該スチレンモノマー溶液に過酸化ベンゾイル等の重合剤をスチレンに対して0.1〜3%加えて重合・固化した後、四酸化オスミウム溶液に浸漬することにより架橋ゴムのゴム鎖のみを効率的に染色・固定化した試料ゴムを調製することができる。 上記作製手段により得られた試料ゴムは、電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する。 試料ゴムから3次元膨潤モデルの生成は、電子顕微鏡の分析技術、並びに、コンピュータトモグラフィー(CT)解析技術を導入することで、三次元に広がった膨潤された網目の構造データを定量化することができる。 用いる電子顕微鏡としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)などを挙げることができる。 具体的に用いる電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)としては、1)透過型電子線トモグラフィー法(Transmission Electron Microtomography、TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置として構成されるCTスキャナや、2)集束イオンビーム(FIB)−走査型電子顕微鏡(SEM)装置とコンピュータとから構成さるFIB−SEM装置などを挙げることができる。 上記1)の透過型CTスキャナは、透過型電子顕微鏡と膨潤された架橋ゴムが載置された試料台とを所定の角度範囲(例えば、−80度から+80度の範囲)で所定角度(例えば、2度間隔)ずつ相対的に回転移動させつつスキャンすることにより試料ゴムの連続傾斜画像を撮影することができる。このCTスキャナは、撮影した多数枚の傾斜画像の画像データを用い、各画像間の回転軸を求め、計算機トモグラフィー法により3次元膨潤モデルに再構成する。また、このCTスキャナは、再構成した3次元膨潤モデルを各面に平行な所定間隔でスライスしたスライス画像を生成する。3次元膨潤モデルの生成開始の所定操作が行われると、3次元膨潤モデル生成処理が実行される。 また、上記2)のFIB−SEM装置では、走査型電子顕微鏡と試料台とを内蔵し、試料ゴムに集束イオンビームを照射する機能と、集束イオンビームによって加工された試料断面に電子ビームを照射して走査電子顕微鏡像を観察することができるSEM機能とを備えたものであり、試料台に載置された解析対象の試料ゴムを集束イオンビーム(FIB)でエッチング処理、走査型電子顕微鏡により撮影を繰り返しながら表面観測して、所定間隔(例えば、厚さ20μm)で撮影したスライス画像データを生成する。このFIB−SEM装置のコンピュータは、撮影した多数枚のスライス画像の画像データを用い、計算機トモグラフィー法により3次元膨潤モデルに再構成する。3次元膨潤モデルの生成開始の所定操作が行われると、3次元膨潤モデル生成処理が実行される。 なお、上述の方法で得られるスライス画像の染色部分が不鮮明である場合は、画像解析ソフトによりコントラスト、並びに、トレースラインの検出を行い、各厚さ方向のコントラストが鮮明な画像を得ることができる。 図3(a)〜(d)は、透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置からなるCTスキャナにより得られた試料ゴムの一部(4枚)の各厚さ方向のコントラストが鮮明なCTスライス画像の一例である。図3(a)中の図示符号3の囲まれた領域を「要素」とした。 以上の厚さ方向にスライスした画像をCT法等により三次元再構築を行い、膨潤した網目の三次元分布画像を得る。 本実施形態では、以下の手順等により膨潤した網目の三次元分布画像を得た。 まず、染色した部分に囲まれた部分を三次元で特定し、その体積と重心を画像解析により求めることで三次元での網目分布の位置情報、並びに、架橋密度を求めることとした。 得られた三次元分布画像に対して、染色した部分に囲まれた体積領域、好ましくはトレースラインにより三次元に区切られた体積領域をゴムが膨潤して生成した膨潤体積として定義した。この体積をCT等による三次元化した構造情報を元にして、各要素ごとの膨潤体積を算出し、それと同時にその各体積の重心座標を求めた。具体的には、三次元画像解析ソフト(Matlab imaginng tool box)を用いて、各要素ごとの膨潤体積〔各膨潤体積をVL,Swollen,Nと定義〕、各膨潤体積ごとの重心点を計算し、ラベリング番号nを割り振り、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数N(要素の総数、nの総数)を求めた。各膨潤体積の総数Nから、膨潤前の体積を計算した。 各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定すれば、その膨潤前の全体の体積VL,totalは、以下の式(I)によって求めることができる。 次いで、各膨潤体積ごとにその膨潤後体積と膨潤前体積からオリジナルゴムの体積分率を算出した。 各膨潤体積領域に相当する膨潤後にあるオリジナルゴムの体積分率Vrを以下の式(II)を用いて算出した。 また、各重心点ごとの網目密度Vnを下記式(III)のFlory−Reinerの式を用いて、各膨潤体積ごとの網目密度を計算した。これにより各膨潤体積に対応する重心点ごとに網目密度が得られる。 この網目密度のヒストグラムを作成することで、そのピークの高さ、半値幅、スキューネスを評価することで対象試料の網目の不均一性を定量的に表すことができる。 一方、各膨潤体積に対する重心座標ごとにボクセル有限要素法によるボクセル(voxel、微小立方体)を対応させる。この際に、ボクセル体積は、膨潤前の均一体積とした。 有限要素法による力学的性質の計算には、膨潤前の試料情報を用いる必要があることから、次の手法により膨潤前の試料ゴム(架橋ゴム)の有限要素法入力モデルを作製する。 膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付けをし、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の試料形状の有限要素モデルを作成した。 図4は、3次元膨潤モデルの概略図であり、図5は、膨潤前3次元モデル(架橋ゴム)の概略図を示すものである。 得られた膨潤前の試料ゴムの有限要素モデルは、各ボクセルの番号に従い、その網目密度を有限要素法で用いている構成方程式の網目密度が反映されるパラメータ(Mooney−Rivilin式ならばC1)に各ボクセルごとに代入する。C1は、以下の式(IV)に従い計算する。 上記膨潤した網目の3次元膨潤モデルを上述の如く、ゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前3次元モデル(架橋ゴムモデル)を有限要素法解析を用いて架橋ゴムの力学的特性を解析することができる。 本発明では、架橋ゴムの力学的特性を解析する解析手段としては、例えば、架橋ゴムの歪と応力を定めた構成条件が付与された前記膨潤前の3次元モデルの変形挙動を有限要素法を用いて解析する手段、ボクセル法、粒子法、メシュフリー法などを挙げることができる。 これらの解析手段は、解析対象とする膨潤前3次元モデルと解析条件とが指定され、解析開始の所定操作が行われると、架橋ゴムの力学特性を解析する処理を実行して解析が行なわれることとなる。 具体的には、解析条件として、図6に示すように、3次元モデルを変化させる方向と、その方向へ3次元モデルを伸張又は圧縮やせん断変化させる変化率を指定することができる。解析処理では、ゴム材料の3次元モデルを解析条件として指定されて方向へ伸張又は圧縮やせん断した場合の3次元モデルの歪み、内部応力分布、3次元モデル全体で応力値を解析して解析結果をコンピュターのディスプレイに表示して行うことができる。 また、他の解析条件としては、例えば、汎用画像解析ソフトウェアのMATLABなどを挙げることができる。 本発明の架橋ゴムのシュミレーション方法は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の形態で変更することができる。 例えば、あらゆる高分子材料の不均一な形態のシュミレーション方法としてもよく、また、自己組織化材料などのシュミレーション方法としてもよい。 このように構成される本発明では、架橋ゴムに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段と、該作製手段により得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段と、該3次元膨潤モデル生成手段により得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段と、該膨潤前3次元モデル生成手段により得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法解析を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段とを有することにより、架橋ゴムの架橋網目構造を三次元で観察、定量化でき、その構造データを有限要素法解析に適用することで、三次元の網目微細構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発現機構を精密に解析することができる架橋ゴムのシミュレーション方法が得られるものとなる。 次に、実施例となる試験例により本発明を更に詳述するが、本発明は下記試験例に限定されるものではない。〔試験例1〕 一般的に知られている架橋網目の不均一が異なる下記表1に示す二種類のゴムA,Bを準備した。網目の不均一性は、架橋温度と時間の比率を変化させることで網目の均一性の異なる架橋ゴムサンプルA、Bを作製した。 下記の手順に従い、不均一網目の有限要素法モデルを作成し、モデル試料を50%歪み相当で伸張した際の各ボクセルごとの歪みエネルギーを計算した。〔有限要素法モデルの作成方法〕(試料ゴムの作製) ゴムA、Bに対して、重合性モノマーとしてスチレンモノマー、染色剤として四酸化オスミウムを用いた。具体的には、ゴム(0.5cm×0.5cm×0.2cm)を、1〜100%の濃度で平衡膨潤量相当となる十分な量となるスチレンモノマー溶液で平衡膨潤させ、該スチレンモノマー溶液を重合・固化した後、四酸化オスミウム溶液に浸漬することにより架橋ゴムのゴム鎖のみを効率的に染色・固定化した試料ゴムA、Bを調製した。(膨潤前有限要素法モデルの作成) 得られた試料ゴムA、Bに対して、透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置として構成されるCTスキャナを用いて膨潤後3次元モデルを作成した。 この透過型CTスキャナは、透過型電子顕微鏡と膨潤された試料ゴムが載置された試料台とを所定の角度範囲(例えば、−80度から+80度の範囲)で所定角度(例えば、2度間隔)ずつ相対的に回転移動させつつスキャンすることにより試料ゴムの連続傾斜画像(各々80枚)を撮影した。このCTスキャナは、撮影した68枚の傾斜画像の画像データを用い、各画像間の回転軸を求め、計算機トモグラフィー法により3次元膨潤モデルに再構成した。 具体的には、上述の手順に従い、三次元画像解析ソフト(Mathwaks社製、MATLAB)を用いて、各要素ごとの膨潤体積〔各膨潤体積をVL,Swollen,Nと定義〕、各膨潤体積ごとの重心点を計算し、ラベリング番号nを割り振り、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数N(4050)を求めた。各膨潤体積の総数Nから、各膨潤前の体積(43210nm3)を計算した。各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定すれば、その膨潤前の全体の体積VL,totalは、0.175μm3であった。 次いで、各膨潤体積ごとにその膨潤後体積と膨潤前体積から膨潤後の体積分率Vr全ての平均で21%を算出した。また、各重心点ごとの網目密度Vnは全平均で8.2×10−5mol/cm3であった。 膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付けをし、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の試料形状の有限要素モデル(試料ゴムA、Bのモデル、図7(a),(b)参照)を作成した。(モデル試料を50%歪み相当で伸張した際の各ボクセルごとの歪みエネルギーの計算) 図7(a)及び(b)に示したモデルのz軸方向に50%歪相当で伸張し各ボクセルごとの歪エネルギーを有限要素法ソフトウェアを用いて算出した。各ボクセルサイズは3μm×3μm×3μmで用いた。有限要素法の構成方程式には、各ボクセルごとに割りふった網目密度から計算したC1値を以下のMorrisの構成方程式に代入して用いた。 次に、以下の、Morris〔Morris,M.C.joumal of applicd polymer science.8.5435-553(1964)〕の手法に従い、本試料の架橋点間分子量から統計的リンクの数を求めると、両者とも室温でn=50となった。 理想的伸張比は、nを用いて以下の式(V)で表される。なお、Ebは破断伸び(%)である。また、図8に示すように、どのくらい伸びたかは、n1/2で表される。なお、式(V)における計算Ebは、図9に示す網目長さの分布図などに用いることができる。 次に、n=38の場合は、理想Ebは約500%となることから、各ボクセルの歪(引っ張り歪)が500%を超えるものを抽出し、それらの歪エネルギーの全合計値を算出した。 具体的には、下記式により算出した。 上記結果から、試料ゴムAに較べて試料ゴムBは約二倍の歪エネルギー和(500%以上変形している部分の歪エネルギー和)が得られたことから、不均一網目を持つ試料ゴムBはその網目の不均一性から大変形状態の緊張した網目の比率が増加し破断している確率が高いことを表している。これは試料ゴムAに較べて試料Bの強力(ゴムA:1.0MPa、ゴムB:0.7MPa)が低くなる結果と一致している。 以上の点から、本発明の架橋ゴムのシミュレーション方法は、三次元の網目構造の変形による変化と架橋ゴムの力学的性質の発言機構を解析するための解析方法として好適であることが確認された。本発明の架橋ゴムのシミュレーション方法の処理の流れを示すフローである。架橋ゴムから試料ゴムを作製するための説明図であり、(a)は用いる架橋ゴムの概略図であり、(b)は重合性モノマーにより膨潤された架橋ゴム(膨潤ゴム)の概略図であり、(c)はゴム鎖が染色・固定され、膨潤された膨潤ゴムの概略図である。(a)〜(d)は、透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)を用いたコンピュータ構成を含む計測装置からなるCTスキャナにより得られた試料ゴムの一部(4枚)の各厚さ方向のコントラストが鮮明なCTスライス画像の一例である。3次元膨潤モデルを説明する概略図である。膨潤前3次元モデルを説明する概略図である。ディスプレイに表示される膨潤前3次元モデルを伸張した場合の一例を示す図である。試料ゴムA,Bの3次元膨潤モデルを説明する説明図であり、(a)は試料ゴムAの膨潤前3次元モデル画像、(b)は試料ゴムBの膨潤前3次元モデル画像である。理想的伸張比を説明する説明図である。網目長さの分布図である。符号の説明 1 架橋ゴム 2 重合性ポリマー 3 膨潤ゴム 架橋ゴムに対して重合性モノマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ染色剤にて染色した試料ゴムを作製する作製手段と、該作製手段により得られた試料ゴムを電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元膨潤モデルを生成する3次元膨潤モデル生成手段と、該3次元膨潤モデル生成手段により得られた3次元膨潤モデルをゴムの密度が一定に戻るように収縮させた膨潤前の3次元モデルを生成する膨潤前3次元モデル生成手段と、該膨潤前3次元モデル生成手段により得られた膨潤前3次元モデルを有限要素法を用いて架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段と、を有することを特徴とする架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記作製手段により作製される試料ゴムが、架橋ゴムに対して良溶媒である重合性ポリマーを用いて飽和状態まで膨潤させた後、モノマーを重合させてゴムの網目構造を固定かつ四酸化オスミウムにて染色した試料ゴムであることを特徴とする請求項1記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記3次元膨潤モデル生成手段に用いる電子顕微鏡が透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡であることを特徴とする請求項1又は2記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記3次元膨潤モデル生成手段は、電子顕微鏡及びコンピュータトモグラフィー(CT)を用いて3次元CTスライス画像を取得し、該3次元CTスライス画像を有限要素法を用いて3次元膨潤モデルを生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 前記膨潤前3次元モデル生成手段は、3次元膨潤モデルをトレースラインにより三次元に区切られた体積領域に対して、各膨潤体積、各膨潤体積ごとの重心点座標とその総数Nを求めると共に、各膨潤体積領域は、膨潤前にはゴムが均一密度であった仮定して、その膨潤前の体積及び各膨潤体積領域に相当するゴムの体積分率を求め、かつ、各重心点ごとの網目密度を求め、各膨潤体積に対応する重心座標ごとに有限要素法のボクセルを対応させ、この際に、ボクセル体積は、膨潤前の均一体積とし、膨潤前の均一体積をもつボクセルの重心座標が、座標原点に近いものからx軸座標、y軸座標、z軸座標の優先順位で番号を付与し、その順番に従い計算に用いる試料の形状に合わせて各ボクセルを充填することで膨潤前の3次元モデルを作成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。 架橋ゴムの力学特性を解析する解析手段が架橋ゴムの歪と応力を定めた構成条件が付与された前記膨潤前の3次元モデルの変形挙動を有限要素法を用いて解析することを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の架橋ゴムのシミュレーション方法。


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