タイトル: | 公開特許公報(A)_芽胞形成細菌芽胞からのゲノムDNAの抽出方法 |
出願番号: | 2008142578 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
中西 弘一 木ノ内 智之 JP 2009284853 公開特許公報(A) 20091210 2008142578 20080530 芽胞形成細菌芽胞からのゲノムDNAの抽出方法 キリンビバレッジ株式会社 391058381 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 中西 弘一 木ノ内 智之 C12N 15/09 20060101AFI20091113BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20091113BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A 6 OL 11 4B024 4B063 4B024AA11 4B024AA20 4B024CA01 4B024GA30 4B024HA20 4B063QA01 4B063QA08 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR62 4B063QS16 4B063QS25 4B063QS39 4B063QX01 本発明は、芽胞形成細菌の芽胞の遺伝的分析等における試料を調製するために、芽胞からゲノムDNAを抽出・取得する方法、特に、芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得を発芽による栄養細胞の調製を行なうことなく、温和な条件下で、効率的に行なうゲノムDNAの抽出・取得方法に関する。 従来より、細菌を分析するには、培地に細菌を移し、細菌を培養し、増殖させて観察する培養法が主流であった。しかしながら、培養に日数を要するため、近年では、細菌の遺伝子を抽出して増幅し、その遺伝子を検出することで、目的とする細菌の有無を判別する遺伝子検査法が取り入れられてきている。これらの遺伝子検査法においては、細菌試料からの遺伝子、すなわちゲノムDNAを分離、取得し、遺伝子解析のための試料を調製することが必要となる。しかしながら、バチルス目などの芽胞形成細菌においては、周囲に水分が少なく、栄養が枯渇した状況になると芽胞を形成するため、遺伝子解析のためのゲノムDNAを直接取り出すことが難しくなる。すなわち、芽胞は硬い芽胞殻に覆われ、熱や化学物質等に強い抵抗力をもっており、その内側にある染色体ゲノムDNAを直接取り出すことは非常に困難である。 したがって、従来法では、芽胞形成細菌の芽胞から遺伝子を取り出し分子生物学的な解析を行うには、まず、芽胞を発芽させた後、栄養細胞として増殖させ、培養後ゲノムDNAを抽出するステップが必要であった。かかる芽胞を発芽させた後、遺伝子を取り出す方法においては、芽胞の発芽に日数がかかることから、アラニン、アデノシン、グルコースを含有するブイヨン等の芽胞の発芽促進剤を用いる方法が開示されている(特開2005−253365号公報、特開2006−345727号公報)。 また、細胞からDNAを高純度で、かつ簡便に分離精製するために、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムのような界面活性剤や、リゾチームやクロモペプチダーゼのような細胞壁多糖類分解酵素を用いて、細胞崩壊を行なう方法(特開平7−143879号公報)や、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸のようなイオン性界面活性剤を用いて、超音波破壊や凍結融解等による破壊操作を行なうことなく細胞膜を破壊して、細胞内容物を溶出する方法(特開2000−350595号公報)が開示されている。 しかしながら、これらの方法は、その処理に日数がかかったり、また、細胞からのDNAの効率的な取得が難しかったり、或いは、取得した細胞内容物からのDNA等の分離・精製が難しかったりして、更には、分離・取得する成分の酵素的分解等の問題があり、例えば、芽胞形成細菌の芽胞からの遺伝子の分離・取得手段としては十分なものではなかった。したがって、従来、芽胞形成細菌からのゲノムDNAの分離・取得には、主として芽胞形成細菌の芽胞を発芽させ栄養細胞を調製した状態で物理的に破壊し、抽出する方法が採られていた。 芽胞形成細菌からの遺伝子の分離・取得方法として、芽胞形成細菌を物理的に破壊する方法としては、「凍結破砕法」、「超音波破壊方法」、「摩砕剤、圧力、又はホモジナイザーを用いた物理的破壊法」などが知られている。凍結破砕法は、試料を極低温で凍結させ、脆弱化したところに強い外圧を加えて細胞を破壊し、内容物を抽出する方法であり、処理や、設備的な問題と、芽胞のような難溶性の物質には使用が難しいというような問題がある。超音波破壊方法は、超音波をかけて細胞を破壊するものであるが、破壊力が強力であるため、芽胞とともにDNA等が細片に寸断されるという問題がある。摩砕剤を用いた物理的破壊法は、ガラスビーズやアルミナの粉末とサンプルとを混合し機械的に摺り合わせることで細胞等の破壊を行なうものであり、圧力を用いた物理的破壊法は、急な減圧や、小孔から高圧で試料を噴射させて細胞等の破壊を行なうものであり、また、ホモジナイザーを用いた物理的破壊法は、ホモジナイザーを用いて細胞等の破壊を行なうものであるが、安全性や設備の問題、或いは試料が微量の場合に適用が困難であったり、DNAなどの寸断の問題もあり、芽胞から直接、効率的に分離・取得することはできない。 これらの物理的破壊法の問題を解決しようとする試みも開示されている。例えば、特開2006−141292号公報には、ビーズを用いた細胞破砕処理において、細胞破砕用ビーズの大きさを調整したり、細胞破砕時の容器の空間容量を調整したり、界面活性剤を含まない状態で細胞破砕処理を行ない、細胞破砕後に界面活性剤を添加し、核酸抽出操作を行なうこと等により、簡便、迅速、かつ高効率に細胞を破砕し、核酸の抽出効率を上昇させる方法が開示されている。しかしながら、これらの方法も、温和な条件下で、芽胞形成細菌の芽胞から簡便・迅速かつ効果的にゲノムDNAを抽出・取得できるというものではなかった。特開平7−143879号公報。特開2000−350595号公報。特開2005−253365号公報。特開2006−141292号公報。特開2006−345727号公報。 従来、細菌の細胞から遺伝子ゲノム等の試料を抽出・採取するために用いられていた方法では、芽胞形成細菌の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得に当たっては、培養法を併用し、芽胞を発芽させ栄養細胞を調製しなければならず時間がかかったり、例えば、試料中に芽胞菌が存在するかどうか直接判断したい場合には、培養法を必要としない芽胞からの直接ゲノム抽出が必須となり、培養法だけでは直接判断ができないという問題点があった。また、物理的破砕を使用する方法では、ビーズ等の選択により、効率をあげること等が紹介されているが、処理条件の設定や操作が煩雑であり、菌数が少ない場合は効率良くゲノムを抽出できないという問題があった。更に、リゾチームやアクロモペプチダーゼなどの細胞壁溶解酵素を使用する方法でも、処理条件の設定や操作が煩雑になることや、有効な菌が限られてしまったり、酵素が混入してしまうという問題があり、また界面活性剤を使用する方法では、細胞を変性させることは、グラム陰性菌については極めて有効であるが、グラム陽性菌、特にバチルス目などの芽胞形成細菌には十分な溶菌効果を発揮できないという問題があった。 そこで、本発明の課題は、芽胞形成細菌の芽胞からゲノムDNAを抽出・取得する場合に適用することができ、かかる芽胞からゲノムDNAを抽出・分離する場合に、芽胞の粉砕手段のような手段を用いることなく、温和な条件下で、芽胞からゲノムDNAを簡便・迅速に抽出・取得する方法を提供することにある。 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、芽胞形成細菌の芽胞の外観が、静菌性乳化剤を接触させることにより、膨潤した状態に変化することをナノサーチ顕微鏡による観察結果から見出した。更に、本発明者は、静菌性乳化剤を接触させた芽胞がゲノムDNA等の内容物を溶出し易い状態に変化することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、芽胞形成細菌の芽胞を、静菌性乳化剤の存在下に、溶液中でインキュベートするという、温和な条件下で、芽胞からゲノムDNAを溶出・抽出するものであり、かかる方法により、簡便・迅速に芽胞からゲノムDNAを抽出・取得することを可能としたものである。本発明の芽胞からゲノムDNAを抽出・取得する方法は、従来方法では、抽出・取得が困難であった芽胞形成細菌の芽胞から、ゲノムDNAの細片化等の変性を生じることなく、直接ゲノムを簡便な手段で抽出することを可能としたものである。 本発明の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法において用いられる静菌性乳化剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び糖アルコール脂肪酸エステル等を挙げることができる。本発明において、グラム陽性細菌の芽胞形成細菌の代表的な細菌としては、バチルス目に属する細菌を挙げることができる。 本発明において、芽胞形成細菌の芽胞の静菌性乳化剤の存在下での溶液中のインキュベートは、常温下、静置状態で行なわれる。本発明の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法を用いることにより、芽胞形成細菌の芽胞からのゲノムDNAを分離、取得し、ゲノムDNAの試料を調製して、遺伝的解析を行い、芽胞形成細菌の芽胞の遺伝的分析を行なうことができる。 すなわち具体的には本発明は、[1]芽胞形成細菌の芽胞を、静菌性乳化剤の存在下に、溶液中でインキュベートすることを特徴とする芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法や、[2]静菌性乳化剤が、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び糖アルコール脂肪酸エステルから選択される1又は2以上であることを特徴とする上記[1]記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法や、[3]芽胞形成細菌が、グラム陽性細菌であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法からなる。 また本発明は、[4]芽胞形成細菌が、バチルス目に属する細菌であることを特徴とする上記[3]記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法や、[5]芽胞形成細菌の芽胞の静菌性界面活性剤の存在下での、溶液中のインキュベートが、常温下、静置状態で行なわれることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法や、[6]上記[1]〜[5]のいずれか記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法を用いることにより、芽胞形成細菌の芽胞からのゲノムDNAを分離、取得することを特徴とする芽胞形成細菌の芽胞の遺伝的分析を行なうための試料の調製方法からなる。 本発明の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法は、従来法では、その有効な抽出・取得が困難であった、芽胞形成細菌の芽胞からゲノムDNAを抽出・取得する場合に適用することができる。しかも、かかる芽胞からゲノムDNAを抽出・分離する場合に、芽胞の粉砕手段のような手段を用いることがなく、温和な条件下で、芽胞からゲノムDNAを取得することが可能なため、DNAの細片化等の試料の変性を生ずることがなく、正確な試料の遺伝子的な分析を行うためのゲノムDNAの抽出・取得を可能とする。更に、本発明のゲノムDNAの抽出・取得方法は、芽胞形成細菌の芽胞を、静菌性乳化剤の存在下に、溶液中でインキュベートするという処理操作によって行うことが可能であるため、装置や処理操作の複雑さの問題を解消し、簡便・迅速に芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得を可能とする実用的な手段を提供する。 本発明は、芽胞形成細菌の芽胞の遺伝的分析等における試料を調製するに際して、芽胞形成細菌の芽胞を、静菌性界面活性剤の存在下に、溶液中でインキュベートすることにより、芽胞から直接ゲノムを溶出させ、抽出することにより、ゲノムDNAを抽出・取得する方法からなる。 本発明の方法で用いられる静菌性乳化剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び糖アルコール脂肪酸エステルから選択される1又は2以上を挙げることができる。グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステルを挙げることができる。蔗糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の炭素数8〜22の飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン(縮合度は好ましくは2〜30)脂肪酸エステルが好ましく、糖アルコール脂肪酸エステルとしては、糖アルコールとして、エリスリトール、キシリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールが、脂肪酸としては、炭素数7〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸を好適な脂肪酸として挙げることができる。 本発明において、芽胞形成細菌の芽胞の静菌性乳化剤の存在下での、溶液中のインキュベートは、常温(室温)下、静置状態で行なわれることができ、好ましくは、1〜72時間を静置状態でインキュベートを行い、芽胞からのゲノムDNAの抽出を行なうことが好ましい。本発明においては、芽胞の粉砕手段のような手段を用いることがなく、温和な条件下で、芽胞をゲノムDNA等の内容物が溶出し易い状態に変化させるため、適宜公知のDNAの分離・精製手段を適用することにより、効率的にゲノムDNAを分離・精製することができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。 (供試菌株)Bacillus subtilis IFO3134株を供試菌株として用いた。 (芽胞の調製)(1)標準寒天培地(日水製薬)に、Bacillus subtilisの芽胞液を塗抹後、35℃1週間培養した。(2)コロニーをかきとり適量の滅菌水で50mlのカルチャーチューブに懸濁した。(3)5000rpm×10分間遠心し、菌体を回収した。(4)20mlのリゾチーム液[10mM Tris-HCl(buffer pH7.6)にリゾチーム濃度10mg/ml]を添加し、菌体を懸濁した。(5)37℃で5分間静置した。(6)20mlのWash solution[10mM Tris-HCl(buffer pH7.6)、500mlNaCl]を添加し、ボルテックスで混和後、10000rpm×10分間遠心分離した。(7)上澄を取り除き、(6)の操作を3回繰り返した。(8)30〜40mlの保存液に懸濁した。(9)希釈系列を作成し、標準寒天培地(日水製薬)にて細胞濃度を確認した。(10)グラム染色にて、栄養細胞が取り除かれ、芽胞のみとなっていることを確認した。調製した芽胞を図1に示す。 (抽出処理)以下の手順に従って、芽胞からのゲノムDNAの抽出処理を行った:(1)50ml用カルチャーチューブに、少量の滅菌水を添加し、以下の4種類の乳化剤を分散後、終濃度1000ppm(30mg/30g滅菌水)になるように調整した。使用した乳化剤を表1に示す。(2)オートクレーブにて100℃10分加熱し、界面活性剤を溶解した。(3)サンプルに104オーダーCFU/mlになるように供試芽胞を接種した。(4)常温で72時間インキュベートした。(5)市販のゲノム抽出キットPrepMan Ultra Sample Preparation Reagent (Applied Biosystems社製)を用いてゲノムDNAの抽出・分離を行なった。 (PCR反応)16SrRNA全鎖長を増幅するプライマーを準備し、常法に従い、PCR反応による遺伝子増幅を行った。 (電気泳動及びゲル撮影)2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、UVイリュミネーターを用いて撮影した。 (結果)電気泳動結果を図2(ゲル写真)に示す。バンドの濃淡を表2に示す。静菌性乳化剤であるP1670、TRP97RF、S570において、はっきりバンドが確認された。Triton X−100及びW−60接触区、ネガティブコントロールの界面活性剤非接触区においては、バンドが確認できなかった。静菌性乳化剤を添加することによって、ゲノムDNA抽出効率が向上し、PCR反応による遺伝子増幅を確認できることが判明した。 [参考実験例:静菌性乳化剤との接触による芽胞の変化] (供試菌株)Geobacillus stearothermophilus DSM5394株を供試菌株として用いた。 (芽胞の調製)この実施例の上記(芽胞の調製)と同じ方法で、芽胞の調製を行なった。 (静菌性乳化剤との接触処理)(1)50ml用カルチャーチューブに、少量の滅菌水を添加し、静菌性乳化剤(P−1670)を添加・分散後、終濃度500ppm(30mg試料/30g滅菌水)になるように調整した。比較対照として、静菌性乳化剤を添加しないサンプルも調整した。(コンタミネーションを避けるため、操作はすべてクリーンベンチ内で行った。)(2)オートクレーブにて100℃10分加熱し、溶解した。(3)サンプルに104オーダーCFU/mlになるように供試菌株を接種した。(4)常温で3日間インキュベーションした。 (芽胞の観察)ナノサーチ顕微鏡(SFT3500島津製作所)にて、芽胞の表面形状、分散・凝集状況を観察した。 (結果)静菌性乳化剤を接触させたGeobacillus stearothermophilusの芽胞を原子間力顕微鏡で観察したところ、芽胞の膨潤が認められた(図3)。図3に示されるように、静菌性乳化剤無添加の区(3−a)では、芽胞(大きさ:0.2〜0.3μm)は凝集して固まりの状態を示し、静菌性乳化剤添加(P1670 500ppm添加)の区(3−b)では、芽胞(大きさ:0.3〜0.5μm)は膨潤して、分散した状態を示した。本発明の実施例において調製した芽胞のグラム染色の結果(栄養細胞が取り除かれ、芽胞のみになっていることの確認)を示す写真である。本発明の実施例において、静菌性乳化剤に接触させることによって、抽出・取得したサンプルを2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、UVイリュミネターを用いて撮影した結果を示す写真である。本発明の実施例において、静菌性乳化剤を接触させたGeobacillus stearothermophilusの芽胞を原子間力顕微鏡で観察した結果を示す写真である。図中、3−aは、静菌性乳化剤無添加の区を、3−bは、静菌性乳化剤添加(P1670 500ppm添加)の区の写真である。芽胞形成細菌の芽胞を、静菌性乳化剤の存在下に、溶液中でインキュベートすることを特徴とする芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法。静菌性乳化剤が、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び糖アルコール脂肪酸エステルから選択される1又は2以上であることを特徴とする請求項1記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法。芽胞形成細菌が、グラム陽性細菌であることを特徴とする請求項1又は2記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法。芽胞形成細菌が、バチルス目に属する細菌であることを特徴とする請求項3記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法。芽胞形成細菌の芽胞の静菌性界面活性剤の存在下での、溶液中のインキュベートが、常温下、静置状態で行なわれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法。請求項1〜5のいずれか記載の芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法を用いることにより、芽胞形成細菌の芽胞からのゲノムDNAを分離、取得することを特徴とする芽胞形成細菌の芽胞の遺伝的分析を行なうための試料の調製方法。 【課題】芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得を発芽による栄養細胞の調製を行なうことなく、温和な条件下で、効率的に行なうゲノムDNAの抽出・取得方法を提供すること。【解決手段】芽胞形成細菌の芽胞を、静菌性乳化剤の存在下に、溶液中でインキュベートすることにより、芽胞の発芽による栄養細胞の調製を行なうことなく、芽胞から直接ゲノムを溶出・抽出する。本発明において、芽胞からのゲノムDNAの抽出・取得方法において用いられる静菌性界面活性剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び糖アルコール脂肪酸エステル等の静菌性乳化剤を挙げることができる。本発明の方法は、芽胞の粉砕手段のような手段を用いることがないので、ゲノムDNAの細片化等の変性を生じることなく、直接ゲノムを簡便な手段で抽出することができる。【選択図】なし