タイトル: | 公開特許公報(A)_活性汚泥に有用微生物を導入する方法 |
出願番号: | 2008134189 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C02F 3/10,C02F 3/12,C02F 3/34,C02F 1/00,C02F 3/00,C12N 1/00 |
岡本 吉博 倉根 隆一郎 JP 2009279515 公開特許公報(A) 20091203 2008134189 20080522 活性汚泥に有用微生物を導入する方法 日鉄環境エンジニアリング株式会社 000156581 学校法人中部大学 500433225 近藤 利英子 100098707 吉田 勝広 100077698 梶原 克哲 100146042 岡本 吉博 倉根 隆一郎 C02F 3/10 20060101AFI20091106BHJP C02F 3/12 20060101ALI20091106BHJP C02F 3/34 20060101ALI20091106BHJP C02F 1/00 20060101ALI20091106BHJP C02F 3/00 20060101ALI20091106BHJP C12N 1/00 20060101ALI20091106BHJP JPC02F3/10 ZC02F3/12 DC02F3/12 ZC02F3/34 ZC02F1/00 PC02F3/00 DC12N1/00 S 10 OL 16 4B065 4D003 4D027 4D028 4D040 4B065AA01X 4B065AA04X 4B065AA10X 4B065AA27X 4B065AA41X 4B065AA45X 4B065AC20 4B065BA22 4B065CA54 4D003AA12 4D003AB01 4D003EA14 4D003EA38 4D027CA00 4D028AA02 4D028AC06 4D028BB02 4D040DD03 4D040DD11 4D040DD31 本発明は、廃水処理に使用される活性汚泥の廃水処理能力を向上させる方法に関し、より詳しくは、従来の活性汚泥に有用微生物を安定的に導入・定着させ、活性汚泥の廃水処理能力を向上させる方法に関する。 廃水を微生物の力で浄化する廃水処理方法には、生育に酸素を必要とする微生物を用いる好気性処理と、生育に酸素を必要としない微生物を用いる嫌気性処理とがある。 好気性処理技術のうち、廃水処理や下水処理などに広範に用いられている代表的な技術が活性汚泥法である。活性汚泥法では、廃水中に存在している微生物に酸素を供給することにより、好気性微生物を増殖させ、フロックと呼ばれる微生物の集合体(数10μm〜数mm)を形成させる。フロックには廃水処理を担う細菌に加えて、細菌を捕食する原生動物も存在し、廃水中の有機物はこれら微生物の働きによって最終的には炭酸ガスと水に分解される。活性汚泥とは、このフロックに汚水中の浮遊性の有機物、無機物及び種々の原生動物などが吸着、付着して泥状となったもののことである。 活性汚泥法では、処理の過程で生じる余剰汚泥の問題や、バルキングの問題に対しては、種々の検討がなされている(特許文献1及び特許文献2を参照のこと。)ものの、活性汚泥中の微生物については、現状では廃水中に存在する微生物をいわばブラックボックスの状態で使用している状況にある。 これに対して、廃水中の処理対象となる有機物は多様であり、その種類によっては、容易に微生物処理が行われない場合もあり、活性汚泥中の微生物(群)は、廃水処理のために必ずしも最適化されているとはいい難かった。このため、対象とする廃水に対して最適な微生物を利用できれば、活性汚泥やそれを含む廃水処理槽の廃水処理能力をさらに向上できると考えられる。 近年、廃水処理槽に廃水処理に有用な微生物を添加することが種々検討されている。例えば、特許文献3は、有機性廃水に内生胞子形成細菌を添加して混合し、これを曝気槽に供給することを特徴とする有機性廃水の処理方法を開示する。また、特許文献4は、回分式酸化溝型曝気槽に、高濃度有機性汚水を投入し、該汚水に光合成細菌を添加した後、該汚水を活性汚泥により浄化する汚水の処理方法を開示する。 しかし、処理槽中の処理水は基質濃度が低いことが多く、外部の微生物を添加しても成育が捗らず、添加した微生物が処理槽中に定着せずに、その効果を発揮できないことが多いという問題がある。特開平7−148500号公報特許第3699570号公報特開2001−162297号公報特開2000−126792号公報 従って、本発明の目的は、廃水処理に関わる有用微生物を活性汚泥中に人為的に導入し、それを安定的に維持、定着するための方法を提供することである。 上記目的は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、活性汚泥を酵素処理する工程A、工程Aで得られた活性汚泥に少なくとも有用微生物を添加する工程B及び活性汚泥を超音波処理する工程Cを有することを特徴とする活性汚泥に有用微生物を導入する方法を提供する。 前記活性汚泥に有用微生物を導入する方法においては、工程Bにおいて、有用微生物とともに有用微生物を活性汚泥中に安定に維持する作用を持つ微生物を活性汚泥に添加すること;該有用微生物を活性汚泥中に安定に維持する作用を持つ微生物が、バイオポリマー生産菌であること;該バイオポリマー生産菌が、ロードコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)KR−S−1株(FERM P-3530)であること;前記酵素がプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼ、グルカナーゼ、リゾチーム又はセルラーゼのいずれかであることが好ましい。 また、前記有用微生物が、多環芳香族分解菌を少なくとも含むこと;該多環芳香族分解菌が、シュウドモナス・プウシモビルス(Pseudomonas paucimobilis)421Y株(FERM BP-5122)であること;前記有用微生物が、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインへイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株及びフラボバクテリウム(Flavobacterium)属に属する菌株からなる群より選ばれる1種以上の微生物を少なくとも含むこと;前記有用微生物が、ステノトロホモナス マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)CWT−4株(FERM P-15162)を少なくとも含むことが好ましい。 また、本発明は、前記の方法で活性汚泥に有用微生物を導入し、該活性汚泥を用いて廃水処理をすることを特徴とする廃水処理方法を提供する。 本発明によれば、廃水処理に関わる有用微生物を活性汚泥中に人為的に導入し、それを安定的に維持、定着するための方法が提供される。また、本発明によれば、上記方法により有用微生物が導入された活性汚泥を用いる廃水処理方法が提供される。 以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。 本発明において、「有用微生物」とは廃水中の汚濁物質を分解、消化することにより廃水の浄化に寄与する微生物のことをいう。 また、本発明において「微生物」とは、肉眼では観察できないような微細な生物のことをいい、具体的には、原核生物並びに糸状菌、酵母、単細胞性の藻類及び原生動物などの真核生物の一部を含むものとする。 本発明の活性汚泥に有用微生物を導入する方法(以下、スウィング法と略す。)は、以下の工程A、工程B及び工程Cを有する。 工程Aは、活性汚泥を酵素処理する工程である。活性汚泥を構成するフロックは、その表面が多糖やペプチドグリカンなどの物理的に強固な高分子で覆われ、その中に微生物が生息している。工程Aの酵素処理は、このようなフロックの表面を覆う高分子を生化学的又は酵素的に切断し、又は高分子に切れ目を入れることを目的とする。 従って、工程Aで使用する酵素としては、フロック表面の高分子を消化又は分解するものであればよい。このような酵素の例として、グルカナーゼ、セルラーゼ及びアミラーゼなどの多糖分解酵素、パパイン及びペプシンなどのプロテアーゼ又はペプチダーゼ、リパーゼなどの脂質分解酵素、並びに、リゾチームなどのペプチドグリカン分解酵素を挙げることができ、市販の酵素を好適に使用することができる。 工程Bは、上記工程Aの処理を行った活性汚泥に有用微生物を添加する工程である。有用微生物は、上記工程Aの酵素処理によってフロック表面に形成された隙間からフロックの内部に入り込み、そこで定着することができる。 本発明のスウィング法の工程Bにおいて、上述の有用微生物に加えて、有用微生物を活性汚泥中に安定に維持する作用を持つ微生物を活性汚泥に添加することにより、有用微生物のフロック内部への定着をより安定化し、本発明の方法によって得られる活性汚泥の廃水処理能力をさらに高めることができる。 上記有用微生物を活性汚泥中に安定に維持する作用を持つ微生物の例として、バイオポリマー生産菌を挙げることができる。有用微生物とともにバイオポリマー生産菌をフロック内部に導入することにより、工程Aでフロック表面に生じた生化学的又は酵素的な破壊がバイオポリマー生産菌により迅速に修復され、有用微生物をフロック内部に安定的に保持することに寄与する。 本発明のスウィング法において好適に使用できるバイオポリマー生産菌の一例として、ロードコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)KR−S−1株(FERM P-3530)を挙げることができる。 また、本発明の工程Bにおいて、上述の有用微生物に加えて、バルキング原因菌又はスカム原因菌の増殖抑制効果を持つ微生物を添加すること、及び、高濃度廃水条件においてもデフロック防止効果を有する微生物を添加することも、本発明の好適な実施形態である。 工程Cは、活性汚泥を超音波処理する工程である。本発明のスウィング法では、上記工程Bで有用微生物を導入した活性汚泥に超音波処理(工程C)を適用することにより、フロックに物理的な衝撃を与えて揺らし(スウィング)、有用微生物をより強固にフロック内部に導入することができる。 上記超音波処理の適用は工程Bの後に限られず、工程A又は工程Bと同時に行ってもよい。 工程Bで活性汚泥中に導入される有用微生物は、廃水中の汚濁物質を分解、消化して廃水の浄化に寄与する微生物である。本発明のスウィング法に好適に使用できる有用微生物の例としては、多環芳香族分解菌、有機物分解能力を有する細菌及び油分解能力を有する細菌などを挙げることができる。 本発明のスウィング法に好適に使用できる多環芳香族分解菌の一例として、シュウドモナス・プウシモビルス(Pseudomonas paucimobilis)421Y株(受託番号:FERM BP-5122)を挙げることができる。 また、本発明のスウィング法に好適に使用できる有機物分解能力の高い細菌としては、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインへイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株及びフラボバクテリウム(Flavobacterium)属に属する菌株などを挙げることができる。 これらの細菌は単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。 また、本発明のスウィング法に好適に使用できる油分解能力の高い菌株の一例として、ステノトロホモナス マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)CWT−4株(受託番号:FERM P-15162)を挙げることができる。 また、本発明は、上述のスウィング法により活性汚泥に有用微生物を導入し、該活性汚泥を用いて廃水処理をする廃水処理方法を提供する。 当該廃水処理方法は、従来の活性汚泥法で処理が行われている有機性廃水の浄化処理に適用できる。さらに本発明によって導入した有用微生物の種類によっては、従来の活性汚泥法では処理が困難であった芳香族炭化水素のような難分解性の有機物廃水にも適用が可能となる。 さらに、本発明は、上述のスウィング法により有用微生物を導入した活性汚泥の生産方法を提供する。 活性汚泥法には従来法である標準活性汚泥法のほか、回分式活性汚泥法及び膜分離活性汚泥法など種々の変法があるが、本発明のスウィング法により有用微生物を導入した活性汚泥は、特に制限なく、活性汚泥法及びその変法に使用できると考えられ、効率のよい廃水処理に寄与することができる。 以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 [実施例1] <活性汚泥へのスウィング法の適用> 実験室内にて希釈豆乳で馴致した活性汚泥(以下、「活性汚泥」と略す。)200mL(MLSS:2,000 mg/L)に終濃度が100ppmとなるようにパパイン(和光純薬工業株式会社製)を加え、1時間、35℃にて酵素処理した。 次いで、酵素処理した活性汚泥に有用微生物として、シュウドモナス・プウシモビルス(Pseudomonas paucimobilis)421Y株(以下、「421Y株」と略す。)を終濃度100 mg DrySS/Lとなるように添加し、この活性汚泥を35℃にて1分間、超音波洗浄機(アズワン株式会社製)にて超音波処理を行った。 なお、421Y株は、多環芳香族分解菌であり、フェノール分解能を有することが知られている。 <活性汚泥によるフェノール廃水の処理> 表1の組成のモデルフェノール廃水(以下、「フェノール廃水」と略す。)を調製し、CODCr(化学的酸素要求量)、BOD(生化学的酸素要求量)及びTOC(全有機炭素)の分析を行った。分析値を表2に示す。 上記フェノール廃水に本発明のスウィング処理を行った上記活性汚泥をMLSSが2,000 mg/Lとなるように加え、以下の条件で8日間処理を行い、フェノール分解率の経日変化を測定した。結果を図1に示す。 反応容器:三角フラスコ(200mL) 処理方式:回分方式 活性汚泥濃度(MLSS):2,000 mg/L 廃水成分:フェノール 0.1kg/kg-SS/日 曝気槽滞留時間(HRT):2日(100 mL/日入替) 汚泥滞留時間(SRT):40日(5 mL/日) 試験期間:8日間 また、試験開始から8日後のフェノール廃水中の421Y株由来のフェナントレン分解遺伝子量をリアルタイムPCR法により定量した。その結果を表4に示す。 [実施例2] 活性汚泥へのスウィング法の適用において、有用微生物として421Y株とともに、ロードコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)KR−S−1株(以下、「S1株」と略す。)の両方を合わせて終濃度100 mg DrySS/L使用したこと以外は実施例1と同様にして、活性汚泥にスウィング法を適用し、処理後の活性汚泥を実施例1と同様にしてフェノール廃水に添加し、フェノール廃水中のフェノール分解率の経日変化を測定した。結果を図1に示す。 また、試験開始から8日後のフェノール廃水中の421Y株由来のフェナントレン分解遺伝子量を表4に示す。 なお、S1株は、バイオポリマー生産菌として知られている菌株である。 [実施例3] 活性汚泥へのスウィング法の適用において、酵素としてパパインの代わりにアミラーゼを使用したこと以外は実施例1と同様にして、活性汚泥にスウィング法を適用し、処理後の活性汚泥を実施例1と同様にしてフェノール廃水に添加し、フェノール廃水中のフェノール分解率の経日変化を測定した。結果を図1に示す。 また、試験開始から8日後のフェノール廃水中の421Y株由来のフェナントレン分解遺伝子量を表4に示す。 [比較例1] 活性汚泥にスウィング法を適用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、フェノール廃水に活性汚泥を添加、処理し、フェノール廃水中のフェノール分解率の経日変化を測定した。結果を図1に示す。 また、試験開始から8日後のフェノール廃水中の421Y株由来のフェナントレン分解遺伝子量を表4に示す。 実施例1〜3及び比較例1について活性汚泥へのスウィング法の適用の詳細をまとめると、表3のようになる。 図1から、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用しなかった場合(比較例1)には、処理開始から8日後でもフェノール分解率は40%程度に留まったが、活性汚泥にスウィング法を適用した場合(実施例1〜3)には、いずれの条件においても処理開始から3日後にはフェノールが100%分解されたことが明らかとなった。特に、スウィング法に使用する微生物として、421Y株とS1株の両方を用いた場合(実施例2)、最も迅速にフェノールを分解できることが明らかとなった。 以上の結果より、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用することにより、フェノール廃水中のフェノール分解を促進し、かつ、フェノール分解率を向上できることが明らかとなった。 表4に示す結果より、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用した場合、処理開始8日後にはスウィング法を適用しなかった場合に比べて、活性汚泥中のフェナントレン分解遺伝子量が10万倍程度増加することが明らかとなった。この結果は、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用することにより、活性汚泥中に多環芳香族分解菌である421Y株が安定に導入・定着されたことを示している。 また、421Y株とS1株の両方を使用した実施例2では、421Y株のみを使用した実施例1及び実施例3と比べて2倍程度のフェナントレン分解遺伝子が存在した。この結果は、421Y株に加えてバイオポリマーを分泌するS1株を用いてスウィング法を行うことにより、活性汚泥への421Y株の導入効率および定着効率が向上することを示している。 [実施例4] <活性汚泥へのスウィング法の適用> 実験室内にて希釈豆乳で馴致した活性汚泥400mL(MLSS:5,000 mg/L)に終濃度が100ppmとなるようにパパインを加え、1時間、35℃にて酵素処理した。 次いで、酵素処理した活性汚泥に有用微生物として、株式会社日鉄環境エンジニアリングが保有する有機物分解能力の高い5種の菌株(シュウドモナス属に属する菌株(Pseudomonas sp.)、アエロモナス属に属する菌株(Aeromonas sp.)、アシネトバクター属に属する菌株(Acinetobacter sp.)、レインへイメラ属に属する菌株(Rheinheimera sp.)、フラボバクテリウム属に属する菌株(Flavobacterium sp.))をそれぞれ終濃度が40 mg DrySS/Lとなるように添加し、この活性汚泥を35℃にて1分間超音波洗浄機(アズワン株式会社製)にて超音波処理を実施した。 <活性汚泥による食品廃水の処理> 豆腐工場から排出された豆乳廃水(以下、「豆乳実廃水」と略す。)に上記活性汚泥を添加し、後述の手順で処理を行った。 豆乳実廃水のCODMn(化学的酸素要求量)、BOD、T−P(総リン)及びK−N(ケルダール窒素)の分析結果を表5に示す。 上記豆乳実廃水を反応槽容量4リットルの曝気沈殿一体型水槽に入れ、それに本発明のスウィング処理を施した上記活性汚泥を添加し、以下の条件で70日間処理を行った。 反応槽:曝気沈殿一体型水槽 反応槽容量:4.0L(沈降部分容積:1.0L) 処理方式:連続方式 曝気槽温度:25℃ 処理開始時のMLSS:5,000 mg/L BOD負荷量:3.0 kg/m3/日 処理期間中、処理水のBOD及びMLSSの測定を行った。BODの経日変化を図2に示す。また、処理開始時から70日後までのBODの平均値及びMLSSの平均値を表6に示す。 また、各菌株の定着性を評価するために、処理開始から0日後、21日後、25日後及び45日後に各菌株由来のゲノム量をリアルタイムPCR法により定量した。その結果を表7に示す。 [比較例2] 活性汚泥に本発明のスウィング法を適用しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、豆乳実廃水の処理及び測定を行った。処理水中のBODの経日変化を図2に、処理開始時から70日後までのBODの平均値及びMLSSの平均値を表6に、各菌株由来のゲノム量の変化を表7に示す。 処理開始から30日後のSVIは、340mL/gであった。このときの汚泥の顕微鏡写真を図化したものを図4に示す。 [比較例3] 豆乳実廃水の処理において、BOD負荷量を0.6kg/m3/日としたこと以外は、比較例2と同様にして、豆乳実廃水の処理及び測定を行った。処理水のBODの経日変化を図2、処理開始時から70日後までのBODの平均値及びMLSSの平均値を表6に示す。 図2及び表6から、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用した場合(実施例4)、処理期間中のBODは良好な処理水質の目安とされる10mg/L前後であり、良好な処理水質を維持できることが明らかとなった。一方、同様の処理条件で活性汚泥にスウィング法を適用しなかった場合(比較例2)、処理期間中の平均BODは30mg/Lを超え、処理水の水質は著しく低かった。 また、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用した場合、処理水中には処理開始から全期間に渡り図3のような良好なフロックが形成されていた。この際の顕微鏡観察では、原生動物も多数確認された。処理開始から30日後に活性汚泥指標(以下、SVIと略す。)を測定したところ、正常値の71mL/gであった。 一方、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用しなかった場合、処理開始から30日後の処理水中では、図4から明らかなように固形分が分散しフロックが少なく(デフロック現象)、ツリガネムシなどの原生動物も見当たらなかった。SVIは340mL/gと異常に増加していた。 これらの結果から、従来法で処理した場合には、水質が悪化しデフロック現象が発生するような廃水条件においても、本発明のスウィング法を適用した活性汚泥を用いて廃水処理をすれば、良好な水質を維持しながら安定的に廃水を処理することが可能であることが明らかとなった。 また、比較例3の結果から、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用せずに、BODを良好な処理水質の目安とされる10mg/L前後とするためには、BOD負荷量を0.6kg/m3/日程度まで低下させる必要があることが明らかとなった。この結果は、本発明のスウィング法を適用した活性汚泥を用いて廃水処理をする場合は、スウィング法を適用しなかった活性汚泥を用いる場合に比べて、約5倍程度の高負荷運転が可能となることを示している。 表7の結果は、本発明のスウィング処理を行った活性汚泥を使用して廃水処理をした場合、豆乳由来有機物の分解の初期過程に関わる菌株であるアシネトバクター属及びフラボバクテリウム属に属する菌株が、45日間の処理期間を通して高濃度に存在していることを示している。これらの菌株の存在量は、処理開始から45日後の時点でスウィング処理を行わなかった活性汚泥を使用して廃水処理をした場合と比べてそれぞれ、約69倍、約13倍であり、これらの菌株が活性汚泥に定着したことにより良好な処理水質の維持に寄与していると考えられる。 [実施例5] <活性汚泥へのスウィング法の適用> 実験室内にて希釈豆乳で馴致した活性汚泥400mL(MLSS:5,000 mg/L)に終濃度が100ppmとなるようにパパインを加え、1時間、35℃にて酵素処理した。 次いで、酵素処理した活性汚泥に有用微生物として、株式会社日鉄環境エンジニアリングが保有する油分解能力の高い菌株であるステノトロホモナス マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)CWT−4株(以下、「CWT−4株」と略す。)を終濃度が250 mg DrySS/L(活性汚泥に対し5%)となるように添加し、この活性汚泥を35℃にて1分間超音波洗浄機(アズワン株式会社製)にて超音波処理を実施した。 <活性汚泥による食品油廃水の処理> 表8の組成のモデル食品油廃水(以下、「食品油廃水」と略す。)を調製し、CODCr、CODMn、BOD、TOC、T−P、K−N及びn−Hex(ノルマルヘキサン抽出物質)の分析を行った。分析値を表9に示す。 なお、大豆油は0.1%のTween80でエマルジョン化して使用した。 上記食品油廃水を反応槽容量4リットルの曝気沈殿一体型水槽に入れ、それに上記本発明のスウィング処理を施した活性汚泥を添加し、以下の条件で33日間処理を行った。 反応槽:曝気沈殿一体型水槽 反応槽容量:4.0L(沈降部分容積:1.0L) 処理方式:連続方式 処理水量:2.0L/日 曝気槽温度:25℃ 処理開始時のMLSS:5,000 mg/L SRT:14日 BOD負荷量:1.25 kg/m3/日 処理期間中、処理水のn−Hex及びMLSSの測定を行った。n−Hexの経日変化を図5に示す。また、n−Hex負荷量並びに処理期間中のn−Hex濃度の平均値及びMLSSの平均値を表10に示す。 また、有用微生物の定着性を評価するために、処理開始の日と処理開始から30日後にCWT−4株由来のゲノム量をリアルタイムPCR法により定量した。その結果を表11に示す。なお、定量値は5回の測定の平均値である。 これらの結果から、本発明のスウィング法を適用した活性汚泥を使用して食品油廃水の処理をした場合、廃水中に油分解能力の高いCWT−4株が安定的に導入され定着し、廃水中のn−Hexを迅速に分解でき、また、処理期間中安定して良好な処理水質を維持できることが明らかとなった。 [比較例4] 活性汚泥に本発明のスウィング法を適用しなかったこと以外は、実施例5と同様にして、食品油廃水の処理及び測定を行った。処理水中のn−Hex濃度の経日変化を図5に、処理期間中のn−Hex濃度の平均値及びMLSSの平均値を表10に、処理開始の日と処理開始から30日後のCWT−4株由来のゲノム量を表11に示す。 これらの結果から、廃水処理に使用した活性汚泥に本発明のスウィング法を適用しなかった場合、廃水中にCWT−4株はほとんど存在せず、処理水中の平均n−Hex濃度は、スウィング法を適用した場合の6倍程度となることが明らかとなった。 [比較例5] n−Hex負荷量を0.04kg/m3/日と設定したこと以外は、比較例4と同様にして、食品油廃水の処理及び測定を行った。処理水中のn−Hex濃度の経日変化を図5に、処理期間中のn−Hex濃度の平均値及びMLSSの平均値を表10に示す。 これらの結果から、廃水処理において活性汚泥に本発明のスウィング法を適用せずに、スウィング法を適用した場合と同程度の処理水質を得るためには、n−Hex負荷量をスウィング法を適用した場合の約3分の1程度に減少させる必要があることが明らかとなった。このことは、活性汚泥に本発明のスウィング法を適用することにより、n−Hex負荷量が従来法の約3倍であっても良好な処理水質を維持できることを示している。 本発明によれば、従来の活性汚泥に有用微生物を安定的に導入・定着することができる方法が提供される。本発明の方法により有用微生物が導入・定着された活性汚泥を廃水処理に用いることにより、従来法に比べて廃水の処理速度が速く、処理効率の高い廃水処理を行うことができる。処理水中のフェノール分解率の経時変化を示すグラフである。処理水中のBODの経時変化を示すグラフである。本発明の方法を適用した活性汚泥の顕微鏡写真である。本発明の方法を適用していない活性汚泥の顕微鏡写真である。処理水中のn−Hex濃度の経時変化を示すグラフである。 以下の工程A〜Cを有することを特徴とする活性汚泥に有用微生物を導入する方法: 工程A:活性汚泥を酵素処理する工程; 工程B:工程Aで得られた活性汚泥に少なくとも有用微生物を添加する工程;及び、 工程C:活性汚泥を超音波処理する工程。 工程Bにおいて、有用微生物とともに有用微生物を活性汚泥中に安定に維持する作用を持つ微生物を活性汚泥に添加する請求項1に記載の方法。 上記有用微生物を活性汚泥中に安定に維持する作用を持つ微生物が、バイオポリマー生産菌である請求項2に記載の方法。 バイオポリマー生産菌が、ロードコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)KR−S−1株(FERM P-3530)である請求項3に記載の方法。 上記酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼ、グルカナーゼ、リゾチーム又はセルラーゼのいずれかである請求項1に記載の方法。 上記有用微生物が、多環芳香族分解菌を少なくとも含む請求項1に記載の方法。 多環芳香族分解菌が、シュウドモナス・プウシモビルス(Pseudomonas paucimobilis)421Y株(FERM BP-5122)である請求項6に記載の方法。 上記有用微生物が、シュウドモナス(Pseudomonas)属に属する菌株、アエロモナス(Aeromonas)属に属する菌株、アシネトバクター(Acinetobacter)属に属する菌株、レインへイメラ(Rheinheimera)属に属する菌株及びフラボバクテリウム(Flavobacterium)属に属する菌株からなる群より選ばれる1種以上の微生物を少なくとも含む請求項1に記載の方法。 上記有用微生物が、ステノトロホモナス マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)CWT−4株(FERM P-15162)を少なくとも含む請求項1に記載の方法。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法で活性汚泥に有用微生物を導入し、該活性汚泥を用いて廃水処理をすることを特徴とする廃水処理方法。 【課題】廃水処理に関わる有用微生物を活性汚泥中に人為的に導入し、それを安定的に維持、定着させること。また、その方法により得られた活性汚泥を使用して廃水処理を行うこと。【解決手段】活性汚泥を酵素処理する工程A、工程Aで得られた活性汚泥に少なくとも有用微生物を添加する工程B、及び、活性汚泥を超音波処理する工程Cを有することを特徴とする活性汚泥に有用微生物を導入する方法。工程Bにおいては、有用微生物とともに有用微生物を活性汚泥中に安定に維持する作用を持つ微生物を活性汚泥に添加することが好ましい。【選択図】なし