タイトル: | 公開特許公報(A)_ヒアルロン酸の製造方法 |
出願番号: | 2008133501 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12P 19/26,C12R 1/46 |
龍野 孝一郎 JP 2009028032 公開特許公報(A) 20090212 2008133501 20080521 ヒアルロン酸の製造方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 龍野 孝一郎 JP 2007175086 20070703 C12P 19/26 20060101AFI20090116BHJP C12R 1/46 20060101ALN20090116BHJP JPC12P19/26C12P19/26C12R1:46 5 OL 6 4B064 4B064AF21 4B064CA02 4B064CD09 4B064DA01 4B064DA10 4B064DA16 本発明は、効率の良いヒアルロン酸の製造方法に関する。 近年、ヒアルロン酸は醗酵法によっても製造されるようになった。醗酵法によって製造されるヒアルロン酸は、一定の条件下で製造されることから、製品の品質が一定に保たれるので、得られるヒアルロン酸の産業上の利用価値が大きいからである。 醗酵法においても、効率良くヒアルロン酸を製造する方法が検討されている。 例えば、(1)培養液のpHを中性に制御して培養する方法、(2)有酸素条件で培養する方法、(3)醗酵原料としてグルタミンやグルタミン酸を添加して培養する方法(非特許文献1参照)、(4)醗酵原料としてアルギニン及び/又はグルタミン酸を添加して培養する方法(特許文献1参照)、(5)醗酵原料としてウリジンを添加して培養する方法(特許文献2)等が挙げられる。 しかしながら、上記の方法では、ヒアルロン酸の生産、蓄積に伴って培養液粘度が上昇し、培養液中にグルコース等の炭素源が残存しているにもかかわらず、ヒアルロン酸生産が停止するという問題があった。すなわち、従来の方法では、培養液が生産したヒアルロン酸により高粘度になる環境下では、ヒアルロン酸生産能が低かった。J. Soc. Cosmet. Chem. Japan Vol.22, No.1 1988特開昭62-289198号公報登録特許第2547965号公報 本発明は、培養液中にヒアルロン酸を高濃度に蓄積させることにより、より効率良くヒアルロン酸を得ることを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養する際に、培養液中0.5g/L以上の単糖類及び/又は二糖類存在下に培養後期に熱処理を行うことにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養することによりヒアルロン酸を製造する方法において、培養後期に0.5g/L以上の単糖類及び/又は二糖類存在下、培養液を熱処理することを特徴とするヒアルロン酸の製造方法である。 本発明によれば、培養液中にヒアルロン酸を高濃度に蓄積することができるので、効率良くヒアルロン酸を得ることができる。 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。 <ヒアルロン酸生産能を有する微生物> 本発明において使用するヒアルロン酸生産能を有する微生物とは、通常の培養によりヒアルロン酸を生産することができる微生物のことであり、種類は限定されない。例えば、ストレプトコッカス属の微生物を好ましく使用することができる。ストレプトコッカス属に属しない微生物でも、通常の遺伝子工学的手法を用いてヒアルロン酸生産能を得た微生物も使用することができる。 ヒアルロン酸生産能を有するストレプトコッカス属に属する微生物は、一般に牛鼻腔粘膜、牛眼球に存在していることが知られている。本発明ではそこから単離された微生物を利用することもできる。 ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物としては、例えば、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、ストレプトコッカス・ピオゲニス(Streptococcus pyogenes)等が挙げられる。ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)が好ましく使用することができる。 さらに、ストレプトコッカス属の属する微生物等のヒアルロン酸生産能を有する微生物を、紫外線、NTG(N−メチル−N´−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)、メチルメタンスルホン酸等で処理することにより、ヒアルロニダーゼ非生産菌や非溶血性菌に改良することがより好ましい。人体または動物に悪影響を及ぼす可能性が低くなるからである。 前記ヒアルロニダーゼ活性及び溶血性を欠損させた菌株としては、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスNH-131(FERM P-7580)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスHA-116(ATCC39920)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P-21487)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカスYIT2030(FERM BP-1305)が好ましく、その中でもストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P-21487)が特に好ましい。 <培養> 本発明においては、上記微生物を培養液中で培養することによりヒアルロン酸を得ることができる。培養条件は、上記微生物がヒアルロン酸を生産できる条件であれば限定されず、微生物の種類に応じた通常の培養条件を用いることができる。 例えば、グルコース、シュクロース等の炭素源、ポリペプトン、酵母エキス等の窒素源、グルタミン酸、グルタミン等の遊離アミノ酸の窒素源、ビタミン、無機塩等、タンニン等のフェノール性水酸基を有するヒアルロニダーゼ阻害剤を含む培地中で、pHを6〜8.5、好ましくは7〜7.5、温度を25〜38℃、好ましくは30〜37℃に制御して好気的に培養することが好ましい。 <熱処理> 本発明においては、前記条件での培養に際し、培養後期に、培養液中0.5g/L以上の単糖類及び/又は二糖類存在下に熱処理を行うことが必要である。当該処理を行うことにより、培養液中のヒアルロン酸濃度の上昇による培養液の粘度上昇が防がれ、培養液中により高濃度のヒアルロン酸を蓄積することができるからである。その結果、効率良くヒアルロン酸を製造することができる。 ここで「培養後期」とは、培養(本培養)開始から熱処理期間を含む全培養期間において、培養開始時から70%以降、好ましくは80%以降、より好ましくは90%以降の期間をいう。例えば、培養期間の70%以降の期間とは、全培養期間が30時間とすると、培養開始後21時間後以降(培養開始21時間後から30時間後)のことをいうとする。 「熱処理」とは、培養温度以上の温度に加熱して、所定時間、一定温度で保温することをいう。熱処理の際の温度は、ヒアルロン酸の生産が抑制されない温度であって、通常の培養温度よりも高ければ限定されないが、30〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。また、熱処理の時間もヒアルロン酸の生産が抑制されない限り限定されない。さらに、培養温度から熱処理に必要な温度に上昇させるための昇温時間は限定されず、例えば1〜120分、好ましくは20〜80分とすればよい。 熱処理の方法としては、培養液を、バッチ式で攪拌して熱処理する方法、熱交換器等に連続的に通液処理する方法が挙げられ、これらの方法を組み合わせたり、繰り返したりすることも可能である。 前記の熱処理において、熱処理中は、培養液中に0.5g/L以上、好ましくは0.5〜50g/L、より好ましくは0.5〜5.0g/Lの単糖類及び/又は二糖類を含んでいる必要がある。 単糖類としてはグルコース、ガラクトース、マンノース及びフルクトースからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられ、二糖類としてはスクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロースからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。これらの糖類は、一種又は二種以上を併用することもできる。この中でも、グルコースを用いることが特に好ましい。 培養開始時点から熱処理を含んだ全培養期間において、培養液中に0.5g/L以上の単糖類及び/又は二糖類を含んでいても良いし、熱処理の期間中だけ当該条件を満たしていてもよい。また、培養液中の単糖類及び/又は二糖類の濃度が0.5g/Lより低くなったときに、適宜単糖類及び/又は二糖類を追添加して0.5g/L以上の濃度を保持することが好ましい。 生産したヒアルロン酸は、培養終了後に培養液からを採取することができる。その方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、アルコール沈殿法を用いることができ、適宜、活性炭、イオン交換樹脂、限外濾過による精製等を組み合わせて高純度のヒアルロン酸を得ることも可能である。 本発明により得られたヒアルロン酸は、医薬品、化粧品、食品添加物等、あらゆる用途に用いることができる。 以下、参考例、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。 <参考例1> ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)MK5(FERM P-21487)を使用して、特公平4-6356号公報の実施例1記載の培養液組成及び培養方法に従って28時間培養した。 すなわち、グルコース6%、ポリペプトン(和光純薬工業株式会社製)1.5%、酵母エキス(オリエンタル酵母工業製)0.5%、リン酸第二カリウム0.2%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、塩化カルシウム0.005%、グルタミン酸ナトリウム0.1%、アデカノールL61(消泡剤 旭電化工業製)の組成からなる培地(pH7.0)を3Lのジャーファーメンターに2L入れ、滅菌後、前培養したストレプトコッカス・ズーエピデミカスMK5(FERM P-21487)を1%接種し、12%水酸化ナトリウム水溶液にて培養液のpHを7.4に制御しながら37℃で28時間通気攪拌培養した(本培養)。 なお、前培養は、グルコース0.2%、ポリペプトン2.0%、酵母エキス0.5%、硫酸マグネシウム7水塩0.05%の組成からなる培地(pH7.0)を綿栓付き500ml容三角フラスコに100ml入れ、滅菌後、同一組成の寒天プレート上に形成したコロニーを一白金糸植菌し、30℃で18時間培養した。 培養後のグルコース濃度は3g/Lであった。このヒアルロン酸含有液をイオン交換水を用いて10倍に希釈し、その2.5L水溶液に活性炭を5g、パーライト30g添加して1時間処理し、ヌッチェを用いて濾過した。この操作を2回繰り返して培養液中の有機成分を除去した。なお、グルコース濃度の測定は、市販のグルコース測定キット(グルコースCII テストワコー:和光純薬工業(株)製)を用いた。 このヒアルロン酸含有液1Lに食塩3gを溶解、pH7に調整後、2-プロパノール6Lで析出を行い、真空乾燥し、0.59gのヒアルロン酸ナトリウムを得た。分析結果を表1に示す。 <参考例2> 培養時間を28時間から36時間にした以外は、参考例1と同様に実施した。培養後のグルコース濃度は0.2g/Lであった。得られたヒアルロン酸ナトリウムは0.56gであった。結果を表1に示す。 <実施例1> 参考例1に従って培養した。本培養(28時間)終了後、温度の設定を37℃から40℃に変更し、15分間かけて40℃に昇温した後、30分間、40℃を維持させた。この時、残存していたグルコース濃度は2g/Lであった。このヒアルロン酸含有液を参考例1と同様の操作を行い、0.64gのヒアルロン酸ナトリウムを得た。分析結果を表1に示す。 <実施例2> 参考例1に従って培養した。本培養(28時間)終了後、温度の設定を37℃から60℃に変更し、35分間かけて60℃に昇温した後、30分間、60℃を維持させた。この時、残存していたグルコース濃度は0.6g/Lであった。このヒアルロン酸含有液を参考例1と同様の操作を行い、0.68gのヒアルロン酸ナトリウムを得た。分析結果を表1に示す。 <実施例3> 参考例1に従って培養した。本培養(28時間)終了後、温度の設定を37℃から80℃に変更し、30分間かけて80℃に昇温した後、30分間、80℃を維持させた。この時、残存していたグルコース濃度は0.5g/Lであった。このヒアルロン酸含有液を参考例1と同様の操作を行い、0.68gのヒアルロン酸ナトリウムを得た。分析結果を表1に示す。 <比較例1> 参考例2に従って培養した。培養終了後、温度の設定を37℃から40℃に変更し、15分間かけて40℃に昇温した後、30分間、40℃を維持させた。この時、残存していたグルコース濃度は0.2g/Lであった。このヒアルロン酸含有液を参考例1と同様の操作を行い、0.56gのヒアルロン酸ナトリウムを得た。分析結果を表1に示す。 <比較例2> 参考例2に従って培養した。培養終了後、温度の設定を37℃から60℃に変更し、35分間かけて60℃に昇温した後、30分間、60℃を維持させた。この時、残存していたグルコース濃度は0.2g/Lであった。このヒアルロン酸含有液を参考例1と同様の操作を行い、0.55gのヒアルロン酸ナトリウムを得た。分析結果を表1に示す。 <比較例3> 参考例2に従って培養した。培養終了後、温度の設定を37℃から80℃に変更し、30分間かけて80℃に昇温した後、30分間、80℃を維持させた。この時、残存していたグルコース濃度は0.2g/Lであった。このヒアルロン酸含有液を参考例1と同様の操作を行い、0.55gのヒアルロン酸ナトリウムを得た。分析結果を表1に示す。 ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養することによりヒアルロン酸を製造する方法において、培養後期に0.5g/L以上の単糖類及び/又は二糖類の存在下、培養液を熱処理することを特徴とするヒアルロン酸の製造方法。単糖類がグルコースである請求項1記載の方法。 ヒアルロン酸生産能を有する微生物が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物である請求項1又は2に記載の方法。 ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物が、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)微生物が、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)MK5(FERM P-21487)である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。 【課題】 本発明は、培養液中にヒアルロン酸を高濃度に蓄積量させることにより、より効率良くヒアルロン酸を得ることを目的とする。 【解決手段】 ヒアルロン酸生産能を有する微生物を培養することによりヒアルロン酸を製造する方法において、培養後期に培養液中0.5g/L以上のグルコース存在下に熱処理を行うことを特徴とする方法。当該方法により、培養液中により高濃度のヒアルロン酸を蓄積することができ、その結果、効率良くヒアルロン産を製造することができる。 【選択図】なし