生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_マイクロ加工方法、及びそのための装置
出願番号:2008121709
年次:2009
IPC分類:B81C 5/00,B23C 3/34,B23B 35/00,G01N 37/00


特許情報キャッシュ

青山 藤詞郎 柿沼 康弘 安田 信仁 JP 2009233843 公開特許公報(A) 20091015 2008121709 20080507 マイクロ加工方法、及びそのための装置 学校法人慶應義塾 899000079 江藤 保子 100140198 松本 悟 100127513 青山 藤詞郎 柿沼 康弘 安田 信仁 JP 2008055723 20080306 B81C 5/00 20060101AFI20090918BHJP B23C 3/34 20060101ALI20090918BHJP B23B 35/00 20060101ALI20090918BHJP G01N 37/00 20060101ALI20090918BHJP JPB81C5/00B23C3/34B23B35/00G01N37/00 101 9 2 OL 13 特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年11月5日 「No07−205 Proceedings of the 4th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21 st Centuryの予稿集」に発表 3C022 3C036 3C081 3C022EE11 3C022EE17 3C036AA00 3C081BA03 3C081BA04 3C081BA05 3C081BA23 3C081CA19 3C081DA10 3C081EA27 本発明は、柔軟で自己粘着性を有する高分子材料基板に対するマイクロ加工方法、特にマイクロ流路の製造に適したマイクロ加工方法、及びそのための装置に関する。 マイクロ流体素子は、マイクロ流体デバイス、ラブ・オン・チップ、μ−TAS(micro total analysis system)などと呼ばれるデバイスであり、微細加工技術を用いてチップ上に微小な流路、反応室、混合室等を設けることにより、一つのチップもしくはデバイスで、化学反応、分離、或いは分析等が行えるようにしたものであって、このマイクロ流体素子の利用により、サンプル液を分析機器などを備えた場所に送ることなく現場で直ちに分析できるばかりでなく、非常に少ないサンプル量での分析が可能となるという利点を有する。 こうしたマイクロ流体素子は、医療分野、工業分野、農業分野、遺伝子解析等の幅広い分野での利用が考えられている。 マイクロ流体素子に形成される微細な流路、すなわちマイクロ流路を構成する材料は、流路を流れる、血液やDNAをはじめとする様々な試料の成分、及び反応後の試料の成分等と反応することなく、また化学反応や分析等に影響を与えないものである必要がある。また、マイクロ流路を一面に形成することができ、基板との密着性、粘着性に優れた材料が好ましい。 このような特性を有する代表的な材料として、シリコーン樹脂の一種であるポリジメチルシロキサン(PDMS)がある。 PDMSは、柔軟で自己粘着性を有する樹脂であって、こうした特性を有するPDMS基板におけるマイクロ流路は、通常、フォトリソグラフィ法により作製された型を用い、これに液状のPDMSを流し込み硬化させることで形成されている(特許文献1,2参照)。 図11は、PDMSを用いたマイクロ流路形成法を示すもので、シリコン基板上にフォトレジストをスピンコートして薄膜を形成した後、流路パターンを描いてあるマスクを重ねて露光して硬化し、未硬化部を溶解除去して、シリコン基板上に凸状のパターンを形成する。ついで、これを型にして液状のPDMSを流し込み、硬化させた後、型から外すとPDMSに凹型パターンが転写される。 こうして凹型パターンが形成されたPDMSをセンサーチップに押しつけることでチップ上に微細な空間が生じる。その空間に送液することで、微小量の解析が可能となる。 しかしながら、フォトリソグラフィ法を用いた微細加工方法は、単純流路で流路パターンが一定であるチップの大量生産には適しているが、複雑流路で流路パターンが様々であるチップを受注生産するような多変種少量生産に不向きである。また、多工程が必要なことから加工時間が数日に及ぶことや、溶剤、現像剤、エッチング液などを使用するため環境負荷が非常に大きいことなどの問題がある。 また、従来の凹型を転写する方法では、型から外すために抜け角度をつける必要があり、底面と壁面とが垂直な溝を高精度に形成することはできなかった。 さらに、マイクロ流体素子においては、チップに種々の機能を付加させるために、3次元化する必要があり、最近の研究では、2次元形状の溝を持つチップを積層することで3次元形状の微細な溝を実現することが提案されている(非特許文献1参照)が、フォトリソグラフィ法による加工では、より一層複雑な工程が必要となり、加工時間は著しく長くなる。 一方、プラスチック製品を少量多品種製造する場合、よく用いられる方法として切削加工が挙げられる。 この切削加工法によりマイクロ流路の形成を行うと、加工精度、特に流路の表面の平滑性の点で問題があったところ、特許文献3では、底刃フラット、即ち径方向のすかし角が0℃の底刃を有するエンドミルを用いることにより該問題を解決し、アクリル樹脂などのプラスチック基板へのマイクロ流路の形成を可能としている。 しかしながら、こうした切削加工などの機械的な加工法は、アクリル樹脂などの硬い樹脂基板を用いた場合には適用できるが、前述のとおり、マイクロ流路の材料として好ましいとされているPDMSをはじめ、柔軟で自己粘着性を有する樹脂材料に対して、切削加工などの機械的加工法による微細加工は困難である。 また、従来から、軟質材料を冷凍硬化させ、冷凍硬化したものに、研磨作業、ドリル作業、切削作業等の機械加工を行うことは知られているが(特許文献4,5等)、いずれも、スポンジゴム、発泡ウレタン等の軟質材料を用いるものであって、自己粘着性を有する樹脂材料に関して適用した例はなく、しかも、マイクロ流路に必要とされる高い平滑性等を満たす高精度なマイクロサイズの機械加工を施すものではなかった。特開2004−296099号公報特開2007−315936号公報特開2007−283437号公報特開平9−57694号公報特2001−208042号公報Yi-Chung,Katsuo Kuribayashi,A Single-LayerPDMS-on-Silicon Hybrid Microactuator with Multi-Axis Out-of-plane MotionCapabilities-Patr 2:Fabrication and Characterization,Journal ofMicroelectromechanical Systems,Vol.14,No.3(2005),pp.558-566 このように、PDMS等の柔軟で自己粘着性を有する高分子基板における、マイクロ流路の形成に代表されるマイクロサイズの加工には、フォトリソグイラフィーによる微細加工が用いられているが、大量生産に適しているものの変種変量生産においては高コスト化するという問題があり、さらに、マイクロ流体素子においては、チップに様々な機能を付加することが要求され、形成されるマイクロ流路の3次元化が必要となってきているのが現状である。 本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、柔軟で自己粘着性を有する樹脂を用いたマイクロサイズの加工方法において、従来のフォトリソグラフィー技術に代わり、エンドユーザーから要求された様々なパターンに対応でき、且つ、複雑な3次元形状も高効率・高精度に加工することができる新らたなマイクロ加工方法を提供することを目的とするものである。 本発明者は、上記の問題を解決すべく検討した結果、柔軟で自己粘着性のある高分子材料に極低温冷却を適用してガラス転移温度以下に冷却し、ガラス状態として、一刃あたりの切り取り量をサブマイクロスケールにした延性モード切削を適用することで、機械的切削加工によりマイクロサイズの溝や穴を極めて精度よく形成でき、しかも得られた切削表面が非常に高い平滑性を有していることを見いだした。さらに検討を重ねたところ、常温で任意の形状に弾性変形させて、これを極低温冷却して切削加工を行うことにより、特殊形状を有する溝や穴を形成しうることも見いだした。 本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を提供するものである。(1)柔軟で自己粘着性を有する高分子材料基板を、該高分子材料のガラス転移温度以下の温度に冷却して硬化させた後、機械的切削加工により、マイクロサイズの溝及び/又は穴を形成することを特徴とするマイクロ加工方法。(2)前記基板を、液体窒素中で冷却することを特徴とする(1)のマイクロ加工方法。(3)前記凹路の形状が3次元形状を有することを特徴とする(1)1又は(2)のマイクロ加工方法。(4)前記基板を予め所定の形状に変形させた後に冷却することにより、特殊形状の溝及び/又は穴を形成することを特徴とする(1)又は(2)のマイクロ加工方法。(5)前記変形が湾曲である請求項4に記載のマイクロ加工方法。(6)前記変形が中心線に沿ったねじりであり、ねじった状態で中心線からずらして穴を形成することを特徴とする(4)のマイクロ加工方法。(7)前記柔軟で自己粘着性を有する高分子材料が、ポリジメチルシロキサンである(1)〜(6)のいずれか1項に記載のマイクロ加工方法。(8)前記マイクロ加工方法が、マイクロ流路の製造方法であることを特徴とする請求項(1)〜(7)のいずれか1項に記載のマイクロ加工方法。(9)機械的切削加工により、柔軟で自己粘着性を有する高分子材料基板にマイクロサイズの溝及び/又は穴を形成するための装置であって、少なくとも、液体窒素を貯溜するチャンバーと、該チャンバー内に設置された基板ホルダーと、前記基板ホルダー内に設けられた流路に液体窒素を流す手段と、該基板ホルダーの上面に設けられた前記基板を固定するクランプと、該基板の上方向に設置された3軸方向移動可能な小径エンドミルとを有することを特徴とするマイクロ加工装置。 本発明により、柔軟で自己粘着性を有する高分子材料基板に、形状精度の高いマイクロサイズの溝及び/又は穴、或いは更に複雑な3次元形状を有するマイクロサイズの溝及び/又は穴を短時間で形成することができるとともに、従来の転写法では形成できなかった底面と壁面とが垂直な溝を形成することが可能である。また、従来の手法では形成が不可能であった微細な曲がり穴又は特殊形状の微細溝を容易に短時間で形成することができる。 本発明の方法は、柔軟で自己粘着性を有する高分子材料基板を、ガラス転移温度以下の極低温に冷却した後、該基板に、機械的な切削加工により、マイクロ流路等のマイクロサイズの溝及び/穴を形成することを特徴とするマイクロ加工方法である。 本発明において、マイクロサイズの加工とは、幅1mm以下、深さ1mm以下の溝及び/又は穴を形成することを意味し、好ましくは、幅100μm以下、深さ100μm以下の溝が好ましい。また、その長さ、屈曲、分岐等の有無などの形状は限定されず、さらに、溝の形状も特に矩形に限定されない。 また、本発明における切削加工は、このようなマイクロサイズの溝及び/又は穴が機械的な加工により切削されるものであれば特に限定されず、また、機械的な切削加工であれば、加工の種類、装置の詳細、切削治具の形状、材質、及び表面状態などに関しても特に限定されない。 本発明において用いられる柔軟で自己粘着性を有する高分子材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の他、シリコーンゴム、シリコーンゲル等が挙げられる。 以下、本発明について、マイクロ流体素子の代表的な基板材料であるPDMSを用いて、さらに詳しく説明する。 PDMSは、Si−O結合を主鎖とする高分子材料であるが、Siの原子半径がCの原子半径よりも大きいために、このSi−O結合は分子運動が容易であり、常温ではゴム状態にある。 PDMS等の高分子材料はガラス転移点を有しており、該ガラス転移点以下の温度になると分子運動が抑制され、ゴム状態からガラス状態に遷移する。 本発明の方法においては、PDMS等の柔軟で自己粘着性を有する高分子材料を、そのガラス転移温度(PDMSのTg:−123℃)より十分に低い温度に維持した状態で、一刃あたりの切り取り量をサブマイクロスケールにした延性モード切削加工を行うことにより、精度が非常に高い加工を可能とするものである。 具体的には、−196℃以下の液体窒素中に保持すると、PDMSはゴム状態からガラス状態に変化し、精度の高い、微細な加工が可能となる硬さのPDMSを得ることができるものである。 図1は、液体窒素を用いて冷却した場合のPDMSの硬度の変化を、デュロメータ(durometer)で測定した結果を示すものであって、図から明らかなように、ガラス転移温度以下の極低温でのPDMSの硬さは、常温でのPDMSの硬さに比べて非常に高く、硬質樹脂として知られているPMMA(ポリメチルメタクリレート)の硬度に近いものが得られることが判明した。 本発明の方法によりマイクロ流路を形成する場合には、形成された流路表面の加工精度が特に重要であり、その表面粗さが、Raで0.1μm以下であることが必要である。表面粗さRaがこれ以上であると、マイクロ流路における光学検出が困難となり、バイオチップやマイクロ分析チップとしての性能が低下することとなる。 本発明において、加工面が平滑で、溝底面と壁面の垂直精度の高いマイクロ加工のためには、マイクロスクエアエンドミルなどの小径エンドミルを用いるのが好ましい。 本発明の方法において、ガラス転移温度以下の極低温冷却されたPDMSを、小径エンドミルを用いて切削する場合、一刃あたりの切り取り量をサブマイクロスケールとした延性モード切削を実現できる加工条件とすることが望ましい。具体的な加工条件として,工具径はφ1.0mm以下で、送り速度が遅いほど平滑な表面が得られるが、好ましくは、2000mm/min以下、より好ましくは200mm/min以下であり、10mm/minでは、Ra=50nmの平滑性が得られることが判明した。 また、回転数が高いほど高い平滑性が得られるが、好ましくは、5000rpm以上、さらに好ましくは50000rpm以上であり、回転数20000rpmにおいて、Ra=50nmの平滑性が得られることが判明した。 以下、本発明のマイクロ加工法に用いられる装置について説明する。 図2は、本発明の装置の1例を模式的に示す図である。 液体窒素を収納したチャンバー内に基板ホルダーが設置されている。 チャンバーは、高い熱伝導性を有するアルミ製の内壁と、その外周に設けられた断熱壁とする構成を有している。該断熱壁は、熱を遮断して液体窒素がガス状になるのを防止するものである。 基板ホルダーは、チャンバー内壁と同様に、高い熱伝導性を有するアルミ製であって、その上面に載置された基板を所定の位置に固定するためのクランプを有するとともに、基板ホルダーの内部には、液体窒素を流すための流路が設けられている。 基板を液体窒素中で加工できるように、基板の上方向には、小径エンドミが、3軸方向に移動可能に設置されている。 本発明の方法によれば、前記基板の常温低弾性の特性と、極低温下で機械加工可能であることを利用して、該基板に特殊形状の溝・穴加工を施すことが可能である。 図3及び図4は、その例を模式的に示す図である。 図3に示す方法は、柔軟で自己粘着性を有する基板を、常温で任意の形状に湾曲させ、これを極低温冷却し、湾曲した状態で単純溝加工を施し((a)工程)、その後、これを常温に戻すことにより、特殊形状の溝を形成することができる((b)工程)。 また、図4に示す方法は、柔軟で自己粘着性を有する基板を、常温で中心線に沿ってねじり((a)工程)、これを極低温冷却し、ねじった状態で中心線からずらして穴加工を施し((b)工程)、その後、これを常温下で元の形状に戻すことにより、曲がった形状の穴を形成することができる((c)工程)。 このように、本発明の方法によれば、常温で柔軟な高分子材料を任意の形状に弾性変形させて、これを極低温冷却して通常の穴加工や溝加工を施し、その後これを常温で元の形状に戻すことで、従来のリソグラフィ−や金型による加工プロセスはもちろん、通常の機械加工でも不可能であった特殊形状の微細穴や微細溝、具体的には、曲がり穴などの特殊穴や、台形や楕円形の特殊形状溝を、容易に加工することが可能となる。 また、弾性変形量(ねじり量や曲げ量)を調整することで加工形状を任意にコントロールすることができる。 特に、ナノ流体チップにおいては、引張りを利用した加工による3次元形状のナノ流路を有するナノ流体チップの開発や、曲がり穴加工によるマイクロ流体チップの継ぎ手の製作などが実現可能になる。 さらに、この特殊形状の加工方法は、自己粘着性を有しない柔軟な高分子材料に対しても適用可能である。 以下、図2に示す装置を用いて、PDMS基板にマイクロ流路を形成した例を記載するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。 (実施例1) PDMSのモノマー(信越シリコーン社製 商品番号KE-1606)及び硬化剤(信越シリコーン社製,商品番号CAT-RG)を混合し、気泡を除去した後、混合物を型枠中に注入して、室温・減圧環境下で24時間放置し、硬化させた。 硬化したPDMSを型枠から剥がし、図2に示すワークホルダー上に載置し、2枚刃マイクロスクエアエンドミル(φ0.5mm、日進工具社製)を用いて微細加工を行った。工具の回転フレ精度は3μm以下とし、切削条件は、回転数5000rpm、加工速度10.0mm/minとした。 また、比較として、液体窒素を用いないこと以外は、実施例1と同様にして微細加工を行った。 図5は、電子顕微鏡(SEM)で観察された、切削溝の形状を撮影した写真である。 図中、左側の(a)は常温での切削結果を示し、右側の(b)は極低温での切削結果を示すものであり、それぞれ上段は上面の撮影写真であり、下段は側面の撮影写真である。 (a)に示すように、常温では全く加工できないのに対し、(b)に示すように、液体窒素中の極低温下では、微細な溝を形成することができた。形成された溝の幅は516μmであり、深さはおよそ200μmであった。熱収縮を考慮した理論加工幅は514μmであり,加工精度は±1%であることが判明した。 次に、送り速度を変えて、カッティングマークの発生との関係を調べたところ、低速になるほど、カッティングマークが表れなくなり、平滑な表面が得られ、特に、1.0mm/minでは、切削表面の表面粗さRaは80nmにまで達した。 また、回転数を高くする、或いは、溝の深さを小さくすると、切削表面の表面粗さが更に改善されることも判明した。 (実施例2) 実施例1と同様にして、複雑な3次元流路を形成した。加工に要した時間は、60分であった。図6は、形成された形状を上から撮影した写真であり、右側の写真は、左側の写真の一部を拡大した写真である。 従来のフォトリソグラフィーでは数日を必要とする複雑な3次元流路を、本発明による方法では、数十分〜数時間で行うことができることが明らかとなった。 (実施例3) 本実施例では、実施例1と同様にして硬化させたPDMSを常温で湾曲または伸張させ、この湾曲または伸張したPDMSをその形状が保たれるようにワークホルダー上に載置し、単純な溝を加工した。その後、これを常温に戻すことにより、特殊形状の溝または実際の工具径よりも微細な流路を形成することができた。 図7は、PDMS基板を湾曲して得られた溝の断面形状を撮影した電子顕微鏡写真であって、底面円弧の先細り溝が形成されていることがわかる。 (実施例4) 本実施例では、実施例3と同様にPDMSを中央線に沿って湾曲させ、中央線よりずらしてスクエアエンドミルにより溝加工することで三角溝を形成した。 図8は、得られた特殊形状の溝の断面形状を撮影した電子顕微鏡写真であって、非対称な三角溝が形成されていることがわかる。 (実施例5) 本実施例においては、市販の、大きさ100mm×100mm、厚さ1mmのシリコーンゴムシート(入間川ゴム株式会社製 IS−825 硬さ(A形):50、耐熱性:200℃)を用いた。 市販のシリコーンゴムシートの表面及び裏面にある剥離シートを取り除き、図2に示すワークホルダー上に載置し、2枚刃マイクロスクエアエンドミル(φ0.5mm、日進工具社製)を用いて、実施例1と同じ条件で、液体窒素を用いた微細加工(極低温)と、液体窒素を用いない微細加工(常温)を行った。 図9は、電子顕微鏡(SEM)で観察された、切削溝の形状を撮影した写真である。 図中、左側の(a)は常温での切削結果を示し、右側の(b)は極低温での切削結果を示すものであり、それぞれ上段は上面の撮影写真であり、下段は側面の撮影写真である。 (実施例6) 本実施例においては、市販の、大きさ100mm×100mm、厚さ1mmのシリコーンゲルシート(株式会社ミスミ製 GELS 針入度:55)を用いた。 市販のシリコーンゲルシートの表面には、べたつき防止パウダーが塗布されており、裏面は、感圧接着剤層を有しているために剥離紙が設けられているが、シリコーンゲルは、実施例1で用いた硬化したPDMSに比べて、非常に柔らかく、粘着性も高いので、剥離紙を取り除くことなく、図2に示すワークホルダー上に載置し、2枚刃マイクロスクエアエンドミル(φ0.5mm、日進工具社製)を用いて、実施例1と同じ条件で、液体窒素を用いた微細加工(極低温)と、液体窒素を用いない微細加工(常温)を行った。 図10は、電子顕微鏡(SEM)で観察された、切削溝の形状を撮影した写真である。 図中、左側の(a)は常温での切削結果を示し、右側の(b)は極低温での切削結果を示すものであり、それぞれ上段は上面の撮影写真であり、下段は側面の撮影写真である。 本発明によれば、従来の手法では形成が不可能であった特殊形状の微細穴又は微細溝を容易に短時間で形成することができるため、PDMSに代表される柔軟で自己粘着性を有する樹脂材料基板を用いた複雑な3次元形状を有するマイクロ流路の形成ばかりでなく、種々の微細加工の分野に応用することが可能となる。具体的には、曲がり穴等の特殊穴や、台形や楕円形等の特殊形状溝、工具径以下の微細溝を容易に加工することができ、また、ねじり・曲げ・引張りなどの弾性変形量を調整することで、加工形状をコントロールすることが可能となる。特に、ナノ流体チップにおいては、引張りを利用した加工により、3次元形状のナノ流路を有するナノ流体チップの開発や曲がり穴加工により、マイクロ流体チップの継ぎ手の製作などが実現可能になる。また、シリコーンゲルの場合は、PDMSに比べて非常に柔軟で自己粘着性も高いために、これまでは一般的な機械加工では加工できなかったが、本発明によれば、機械加工による加工が可能となり、バイオ分野や医療分野での利用可能性がますます広がると期待される。さらに、本発明の方法は、自己粘着性のない弾性材料にも適用可能である。常温及び極低温下でのPDMSの硬度を測定した結果を示す図本発明の装置の一例の概要を示す模式図特殊形状溝加工プロセスの一例を示す模式図曲がり穴加工プロセスの一例を示す模式図常温及び極低温下でのPDMSの加工結果示す電子顕微鏡写真実施例2において形成された、複雑な3次元流路の写真実施例3において形成された溝の形状を示す電子顕微鏡写真実施例4において形成された溝の形状を示す電子顕微鏡写真常温及び極低温下でのシリコーンゴムシートの加工結果示す電子顕微鏡写真常温及び極低温下でのシリコーンゲルシートの加工結果示す電子顕微鏡写真従来のリソグラフィによるマイクロ流路の形成方法を示す模式図 柔軟で自己粘着性を有する高分子材料基板を、該高分子材料のガラス転移温度以下の温度に冷却して硬化させた後、機械的切削加工により、マイクロサイズの溝及び/又は穴を形成することを特徴とするマイクロ加工方法。 前記基板を、液体窒素中で冷却することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ加工方法。 前記凹路の形状が3次元形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ加工方法。 前記基板を予め所定の形状に変形させた後に冷却することにより、特殊形状の溝及び/又は穴を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ加工方法。 前記変形が湾曲である請求項4に記載のマイクロ加工方法。 前記変形が中心線に沿ったねじりであり、ねじった状態で中心線からずらして穴を形成することを特徴とする請求項4に記載のマイクロ加工方法。 前記柔軟で自己粘着性を有する高分子材料が、ポリジメチルシロキサンである請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロ加工方法。 前記マイクロ加工方法が、マイクロ流路の製造方法であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロ加工方法。 機械的切削加工により、柔軟で自己粘着性を有する高分子材料基板にマイクロサイズの溝及び/又は穴を形成するための装置であって、少なくとも、液体窒素を貯溜するチャンバーと、該チャンバー内に設置された基板ホルダーと、前記基板ホルダー内に設けられた流路に液体窒素を流す手段と、該基板ホルダーの上面に設けられた前記基板を固定するクランプと、該基板の上方向に設置された3軸方向移動可能な小径エンドミルとを有することを特徴とするマイクロ加工装置。 【課題】 柔軟で自己粘着性を有する樹脂を用いたマイクロサイズの加工方法において、従来のフォトリソグラフィー技術に代わり、エンドユーザーから要求された様々なパターンに対応でき、且つ、複雑な3次元形状も高効率・高精度に加工することができる新らたなマイクロ加工方法を提供する。【解決手段】 柔軟で自己粘着性のある高分子材料に極低温冷却を適用してガラス転移温度以下に冷却し、ガラス状態として、一刃あたりの切り取り量をサブマイクロスケールにした延性モード切削を適用することにより、機械的切削加工によりマイクロサイズの溝や穴を極めて精度よく形成でき、特に、得られた切削表面が非常に高い平滑性を有したマイクロ流路を形成できる。さらに、常温で任意の形状に弾性変形させて、これを極低温冷却して切削加工を行うことにより、特殊形状を有する溝や穴を形成することができる。【選択図】 図2


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