生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_筋重量を増加させるためのフォリスタチンの使用方法
出願番号:2008116224
年次:2008
IPC分類:C12N 15/09,A01K 67/02,A01K 67/027,C12N 5/10,A61K 38/00,A61P 3/04,A61P 21/04


特許情報キャッシュ

リー セ−ジン マクフェロン アレキサンドラ シー. JP 2008289478 公開特許公報(A) 20081204 2008116224 20080425 筋重量を増加させるためのフォリスタチンの使用方法 ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー 503392851 清水 初志 100102978 新見 浩一 100128048 リー セ−ジン マクフェロン アレキサンドラ シー. US 09/841,730 20010424 C12N 15/09 20060101AFI20081107BHJP A01K 67/02 20060101ALI20081107BHJP A01K 67/027 20060101ALI20081107BHJP C12N 5/10 20060101ALI20081107BHJP A61K 38/00 20060101ALI20081107BHJP A61P 3/04 20060101ALI20081107BHJP A61P 21/04 20060101ALI20081107BHJP JPC12N15/00 AA01K67/02A01K67/027C12N5/00 BA61K37/02A61P3/04A61P21/04 21 2002582882 20020424 OL 92 4B024 4B065 4C084 4B024AA01 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA02 4B024FA06 4B024GA12 4B024HA17 4B065AA91X 4B065AA91Y 4B065AB01 4B065BA04 4B065CA24 4B065CA60 4C084AA01 4C084BA44 4C084DA01 4C084NA14 4C084ZA702発明の分野 本発明は、一般的に増殖分化因子(GDF)受容体に関し、より詳しくはGDF-8(ミオスタチン)受容体、細胞においてミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす組成物、および細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するためにそのような組成物を用いる方法に関する。背景 アメリカにおいて、体重を減らそうと考えている人が消費する時間、労力、およびお金の量は驚異的である。これらの人の多くにとって、目標は単に外見を良くすることではなく、より重要なことは、過体重であることに関連した避けて通れない医学的問題を回避することである。 アメリカでは成人集団の半数以上が過体重であると見なされる。さらに、アメリカでは成人男性の20〜30%および成人女性の30〜40%が肥満であると見なされ、貧困および少数民族においてその発生率は最も高い。平均脂肪レベルを少なくとも20%超えていると定義される肥満は、ここ数十年のあいだに発生率が劇的に増加して、小児集団においても主要な問題となりつつある。子供全体の20%が現在過体重であると見なされ、過去5年のあいだにその数は倍増している。 肥満と、肥満に直接帰因する医学的問題は、世界全体から見ても罹患率および死亡率の主な原因である。肥満は、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、心臓発作、II型糖尿病、膀胱疾患、および特定の癌を含む様々な病態の発症の主要な危険因子であり、早期死亡に関与する。心疾患は、アメリカにおける死因の第一位であり、II型糖尿病は、アメリカにおいて1600万人に罹患し、疾患による主な死因の一つである。 II型糖尿病の80%超が肥満の人に起こる。II型糖尿病は全ての人種に罹患するが、アメリカインディアン、アフリカ系アメリカ人、およびヒスパニック系住民において特に発生率が高い。特に、年齢40歳を過ぎた成人にほぼ限って起こっていたII型糖尿病が、今では小児に起こり、報告された症例は過去5年のあいだにほぼ3倍になった。非インスリン依存型糖尿病とも呼ばれるII型糖尿病は、循環中のインスリンレベルが正常または上昇している場合であっても、グルコースに反応したインスリン分泌の減少およびインスリンの作用に対する体の耐性を特徴とする。II型糖尿病は、多様な異なる組織および臓器の機能に影響を及ぼし、血管疾患、腎不全、網膜症およびニューロパシーを引き起こしうる。 肥満に関連した医学的問題とは対照的に、特定の慢性疾患を有する患者に一般的に起こる重度の体重減少も医学的介入に対する課題となる。カヘキシアと呼ばれるこの体重減少の分子的基礎は十分に理解されていない。しかし、カヘキシアによってそのような疾患の管理が複雑となり、それが患者の予後不良に関連することは明らかである。カヘキシアの作用は、癌およびAIDS患者において起こる消耗性症候群において明らかである。 体重の調節に関与する生物学的プロセスを解明するために多くの努力が行われているが、結果は実際の値より誇張されて提供されている。例えば、レプチンの発見は、ヒトにおいて脂肪が蓄積する分子的基礎を理解するための突破口であると認められ、それによって肥満が治癒する見込みがあると見なされた。動物試験は、レプチンが食欲を調節する内部シグナルの伝達に関係することを示しており、レプチンが肥満を有する人を治療するために有用となりうることを示唆している。しかし、肥満を治療するためにレプチンを用いる進捗状況は遅く、これまでのところ、レプチンは当初の予想を満たしていない。 病的な肥満の治療は、現在のところ、腸の一部を除去して、それによって吸収される食物(およびカロリー)量を減少させる手術に限定されている。中等度の肥満の場合、唯一の「治療」は健康な食事を食べて、定期的に運動することであるが、この方法は成功してもせいぜいわずかであることが証明されている。このように、肥満およびカヘキシアのような障害を治療する方法を開発することができるように、筋肉の発達および脂肪の蓄積を含む体重の調節に関係した生物学的要因を特定する必要がある。本発明は、この必要性を満足してさらなる長所を提供する。発明の概要 本発明は、実質的に精製されたGDF受容体に関する。本発明のGDF受容体は、例えば、ミオスタチン受容体、GDF-11受容体、または他のGDF受容体となりうる。例えば、ミオスタチン受容体は、少なくとも特異的にミオスタチンと相互作用して、同様に、一つまたは数個のさらなる成熟GDFペプチドとも特異的に相互作用しうる。GDF受容体をコードするポリヌクレオチド、GDF受容体と特異的に相互作用する抗体等も同様に提供する。 本発明はまた、GDFによって影響を受けるシグナル伝達に影響を及ぼすことによってGDFの作用を調節する方法にも関する。例として、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を細胞に接触させることによって、細胞に及ぼすミオスタチンの影響を調節する方法を提供する。一つの態様において、作用物質は、細胞によって発現されたミオスタチン受容体とミオスタチンとの特異的相互作用を変化させ、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節する。ミオスタチン受容体はアクチビン受容体ともなりえて、またはミオスタチンシグナル伝達が活性化されるように、成熟ミオスタチンまたはその機能的ペプチド部分が接触することができる他の如何なる受容体ともなりうる。もう一つの態様において、作用物質は、ミオスタチン受容体に結合して、それによって受容体に対するミオスタチン結合を増強する、または受容体に関してミオスタチンと競合する。そのため、作用物質は、ミオスタチンシグナル伝達を増加させることができ、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害することができる。さらにもう一つの態様において、作用物質は、細胞内で、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を変化させるように作用する。 GDFシグナル伝達を調節するために有用な作用物質は、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリヌクレオチド、有機低分子、または他の如何なる作用物質ともなりえて、GDFシグナル伝達の作用剤またはGDFシグナル伝達の拮抗剤として作用することができる。一つの態様において、ペプチド作用物質は、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させる。そのようなペプチド作用物質は、例えば、ミオスタチンに結合するか、またはそうでなければミオスタチンを隔離して、それによってミオスタチンの受容体との特異的相互作用能に影響を及ぼすペプチドとなりうる。そのような作用物質の例は、変異体ミオスタチン受容体、例えば、ミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチン受容体の可溶性細胞外ドメイン;ミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチンプロドメイン;およびプロドメインと成熟ミオスタチンとへの蛋白質分解分解に対して抵抗性で、ミオスタチンと特異的に相互作用することができる変異体ミオスタチンポリペプチドであり、それらは細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するミオスタチンシグナル伝達拮抗剤として有用である。 もう一つの態様において、ペプチド作用物質は、細胞によって発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、それによってミオスタチンと受容体に関して競合することができる。そのようなペプチド物質の例は、抗ミオスタチン受容体抗体または抗ミオスタチン抗体の抗イディオタイプ抗体である。そのようなペプチド物質は、ミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、それによって受容体に関してミオスタチンと競合することができるか否かに関して選択することができるのみならず、ミオスタチンシグナル伝達を活性化しない作用を有することに関してもさらに選択することができる。このように、細胞によって発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、ミオスタチン依存的シグナル伝達を活性化するペプチド物質は、ミオスタチン作用剤として、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加させるために用いることができ、一方、細胞によって発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用するがミオスタチンシグナル伝達を活性化しないペプチド作用物質は、ミオスタチン拮抗剤として、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために用いることができる。 本発明の方法において有用な作用物質は、ポリヌクレオチドとなりうる。一般的に、しかし必ずしもそうではないが、ポリヌクレオチドは細胞に導入され、直接、または転写もしくは翻訳後、またはその双方で機能を発揮する。例えば、ポリヌクレオチド作用物質は、細胞において発現され、ミオスタチン活性を調節するペプチドをコードすることができる。そのような発現されたペプチドは、例えば、可溶性のミオスタチン受容体細胞外ドメインのような変異体ミオスタチン受容体;膜結合ドメインに機能的に会合したミオスタチン受容体細胞外ドメイン;またはプロテインキナーゼ活性を欠損する変異体ミオスタチン受容体となりうる。 ポリヌクレオチド作用物質から発現されたペプチドは、GDFシグナル伝達経路の細胞内ポリペプチド成分のレベルまたは活性に影響を及ぼすペプチドとなりうる。細胞内ポリペプチドは、例えば、本明細書に開示するように、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼしうるドミナントネガティブSmadのようなSmadポリペプチドとなり得る。このように、ポリヌクレオチド作用物質は、細胞において発現されると、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害するドミナントネガティブSmad2、Smad3、もしくはSmad4ポリペプチドをコードしうる;または発現されると、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少させるSmad6もしくはSmad7ポリペプチドをコードしうる。ポリヌクレオチド作用物質はまた、その発現によってミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害することができる細胞内c-skiポリペプチドをコードしうる。 本発明の方法において有用なポリヌクレオチド作用物質はまた、アンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質となりうる、またはそれらをコードしうる。例えば、ポリヌクレオチドは、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加しうるアンチセンスc-skiヌクレオチド配列;または特定のSmadアンチセンスヌクレオチド配列に応じて、ミオスタチンシグナル伝達を増加しうる、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害しうるアンチセンスSmadヌクレオチド配列のようなアンチセンスヌクレオチド配列となりうる(またはコードしうる)。 本発明はまた、少なくとも部分的に被験者における異常な量の筋または脂肪組織の発達または代謝活性を特徴とする病的な状態の重症度を改善する方法にも関する。そのような方法は、病態に関連した細胞におけるGDFシグナル伝達を調節すること、例えば、被験者における筋細胞または脂肪組織細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することを含む。例えば、カヘキシア、食欲不振、筋ジストロフィー、神経筋疾患のような消耗性障害、ならびに肥満およびII型糖尿病のような代謝障害を含む様々な病態が、本発明の方法を用いて改善を受ける。 本発明はさらに、GDF受容体によって媒介されるシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を生物に投与することによって、真核生物における筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法に関する。一つの態様において、筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法は、ミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を投与することによって行われる。もう一つの態様において、作用物質は、GDF-11シグナル伝達、またはミオスタチンおよびGDF-11シグナル伝達に影響を及ぼす。作用物質は、例えば、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させる作用物質、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を減少もしくは阻害する作用物質、または本明細書において開示する他の如何なる作用物質ともなりうる。真核生物は、脊椎動物、例えば、哺乳類、鳥類、もしくは魚類生物となりうる、または無脊椎動物、例えば、エビ、ホタテガイ、ヤリイカ、タコ、マキガイ、もしくはナメクジのような軟体動物となりうる。 本発明はまた、増殖分化因子(GDF)受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定する方法に関する。本発明のそのようなスクリーニングアッセイ法は、例えば、GDF受容体を試験作用物質に接触させる段階、および試験作用物質がGDF受容体と特異的に相互作用することを決定して、それによってGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定することによって行うことができる。GDF受容体は如何なるGDF受容体ともなりえて、特にミオスタチン受容体となり、作用物質はGDFシグナル伝達を増加させるGDF受容体作用剤、またはGDFシグナル伝達を減少もしくは阻害するGDF受容体拮抗剤となりうる。本発明のそのような方法は、試験作用物質のライブラリ、特に試験作用物質の組み合わせライブラリをスクリーニングするために有用である。 本発明はまた、GDF受容体またはGDF受容体の機能的ペプチド部分の仮想表示、例えばGDF8受容体またはGDF-11受容体の仮想表示を提供する。一つの態様において、仮想表示には、GDF受容体と特異的に相互作用する作用物質が含まれる。そのため、本発明はさらに、コンピューターシステムを用いて、増殖分化因子(GDF)受容体またはGDF受容体の機能的ペプチド部分と特異的に相互作用する作用物質を同定する方法を提供する。例えば、方法は、仮想のGDF受容体またはその機能的ペプチド部分との特異的相互作用能に関して仮想の試験作用物質を調べること;および仮想の試験物質と仮想のGDF受容体またはその機能的ペプチド部分との特異的相互作用を検出し、それによってGDF受容体またはその機能的ペプチド部分と特異的に相互作用する作用物質を同定することによって行うことができる。発明の詳細な説明 本発明は、プロミオスタチンポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分を提供する。これまで増殖分化因子-8(GDF-8)と呼ばれていたプロミオスタチンは、アミノ末端プロドメインとC末端成熟ミオスタチンペプチド(米国特許第5,827,733号を参照のこと)とを含む。ミオスタチン活性は、プロミオスタチンからの切断後の成熟ミオスタチンペプチドによって示される。このように、プロミオスタチンは、蛋白質分解によって切断されて活性ミオスタチンを生じる前駆体ポリペプチドである。本明細書に開示するように、ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチン活性、GDF-11活性またはその双方を阻害することができる。 本発明はまた、プロGDF-11ポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分を提供する。これまで一般的にGDF-11と呼ばれてきたプロGDF-11は、アミノ末端のプロドメインとC末端の成熟GDF-11ペプチドとを含む(参照として本明細書に組み入れられる、国際公開公報第98/35019号を参照のこと)。GDF-11活性は、プロGDF-11からの切断後の成熟GDF-11ペプチドによって示される。このように、プロGDF-11は、プロミオスタチンと同様に、蛋白質分解によって切断されて活性なGDF-11を生じる前駆体ポリペプチドである。本明細書において開示されるように、GDF-11プロドメインは、GDF-11活性、ミオスタチン活性、またはその双方を阻害することができる。 プロミオスタチンおよびプロGDF-11は、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーのメンバーであり、これは様々な細胞タイプにおいて増殖、分化、および他の機能を制御する多機能ポリペプチドからなる。胚発達の際の幅広い分化プロセスに影響を及ぼす構造関連蛋白質のグループを含むTGF-βスーパーファミリーには、例えば、正常な男性の性的発達にとって必要なミュラー管阻害物質(MIS)(Behringerら、Nature 345:167、1990)、背腹軸形成および成虫盤の形態形成にとって必要なショウジョウバエのデカペンタプレージック(DPP)遺伝子産物(Padgettら、Nature 325:81〜84、1987)、卵の植物極に移動するアフリカツメガエルのVg-1遺伝子産物(Weeksら、Cell 51:861〜867、1987)、アフリカツメガエルの胚において中胚葉と前方構造の形成を誘導することができる(Thomsenら、Cell 63:485、1990)アクチビン(Masonら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 135:957〜964、1986)、ならびにデノボ軟骨および骨形成を誘導することができる(Sampathら、J. Biol. Chem. 265:13198、1990)骨形態形成蛋白質(BMPs、オステオゲニン、OP-1)が含まれる。TGF-βファミリーメンバーは、脂肪形成、筋形成、軟骨形成、造血、および上皮細胞分化を含む多様な分化プロセスに影響を及ぼしうる(Massague、Cell 49:437、1987;Massague、Ann. Rev. Biochem. 67:753〜791、1998;そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。 TGF-βファミリーメンバーの多くは、他のペプチド増殖因子に対して調節作用(正または負)を有する。特に、TGF-βスーパーファミリーの特定のメンバーは、神経系の機能に関連する発現パターンまたは活性を有する。例えば、インヒビンとアクチビンは脳に発現され(Meunierら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:247、1988;Sawchenkoら、Nature 334:615、1988)、およびアクチビンは神経細胞生存分子として機能しうる(Schubertら、Nature 344:868、1990)。もう一つのファミリーメンバーである増殖分化因子-1(GDF-1)は、その発現パターンが神経系特異的であり(Lee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4250、1991)、Vgr-1(Lyonsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:4554、1989;Jonesら、Development 111:531、1991)、OP-1(Ozkaynakら、J. Biol. Chem. 267:25220、1992)、およびBMP-4(Jonesら、Development 111:531、1991)のような他のファミリーメンバーも同様に、神経系において発現されている。骨格筋は運動神経の生存を促進する因子または複数の因子を産生すること(Brown、Trends Neurosci. 7:10、1984)から、筋肉にミオスタチン(GDF-8)およびGDF-11の発現されることは、ミオスタチンとGDF-11とが神経にとって栄養因子となりうることを示唆している。そのため、ミオスタチン、GDF-11または双方の活性を調節する方法は、筋萎縮性側索硬化症もしくは筋ジストロフィーのような神経変性疾患を治療するため、または移植前に細胞もしくは組織を培養において維持するために有用となりうる。 TGF-βファミリーの蛋白質は大きい前駆体蛋白質として合成され、これがその後C末端からアミノ酸約110〜140個の塩基性残基の集団で蛋白質分解による切断を受け、それによってプロドメインペプチドとC末端成熟ペプチドとが形成される。このファミリーの蛋白質メンバーのC末端の成熟ペプチドは、構造的に近縁で、異なるファミリーメンバーは、その相同性の程度に基づいて異なるサブグループに分類することができる。特定のサブグループ内の相同性は、70%〜90%のアミノ酸配列同一性の範囲であり、サブグループ間の相同性は、有意に低く、一般的に20%〜50%の範囲である。それぞれの場合において、活性な種はC末端ペプチド断片のジスルフィド結合二量体であるように思われる。 プロミオスタチンおよびプロGDF-11ポリペプチドは、哺乳類、鳥類および魚類において同定されており、ミオスタチンは、脊椎動物および無脊椎動物を含む他の様々な種において活性である。胚の発達のあいだと成体動物において、ミオスタチンは、例えば筋発生系列の細胞によって特異的に発現されている(McPherronら、Nature 387:83〜90、1997、参照として本明細書に組み入れられる)。初期胚形成のあいだ、ミオスタチンは、発達しつつある体節の筋節コンパートメントの細胞によって発現される。胚後期段階および成体動物では、ミオスタチンは骨格筋組織に広く発現されているが、その発現レベルは筋肉によってかなり異なる。ミオスタチン発現はまた、脂肪組織においても検出されるが、筋肉におけるレベルより低い。同様に、GDF-11は、成人胸腺、脾臓、および子宮と共に骨格筋および脂肪組織において発現され、同様に、GDF-11は骨格筋および脂肪組織において発現されると共に成人胸腺、脾臓および子宮に発現され、また様々な発達段階の脳にも発現される。 様々な種からのプロミオスタチンポリペプチドは、実質的な配列同一性を共有し、ヒト、マウス、ラットおよびニワトリの成熟ミオスタチンC末端配列のアミノ酸配列は100%同一である(図1を参照のこと)。プロミオスタチンポリペプチドの例は、本明細書において(図1を参照のこと)ヒトプロミオスタチン(配列番号:2);マウスプロミオスタチン(配列番号:4);ラットプロミオスタチン(配列番号:6);ヒヒプロミオスタチン(配列番号:10);ウシプロミオスタチン(配列番号:12);ブタプロミオスタチン(配列番号:14);ヒツジプロミオスタチン(配列番号:16);ニワトリプロミオスタチン(配列番号:8);七面鳥プロミオスタチン(配列番号:18);およびゼブラフィッシュプロミオスタチン(配列番号:20)である。プロミオスタチンポリペプチドの例も同様に、本明細書においてサケ対立遺伝子1(配列番号:27、「サケ1」)およびサケ対立遺伝子2(配列番号:29、「サケ2」、図2を参照のこと)の一部を含むポリペプチドである。これらのプロミオスタチンポリペプチドをコードする核酸分子は、本明細書においてそれぞれ、配列番号:1、3、5、9、11、13、15、7、17、19、26および28として開示されている(同様に、参照として本明細書に組み入れられる、McPherronとLee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12457、1997も参照のこと)。プロGDF-11ポリペプチドの例は、本明細書において配列番号:24によってコードされるヒトプロGDF-11(配列番号:25)である。 プロミオスタチンポリペプチドにおいて、特にヒトと魚類のような離れている種において広く保存されていることを考慮すると、サケ1およびサケ2の配列の残りを含む如何なる種からのミオスタチンもコードするポリヌクレオチドを得ること、および如何なる種においてもプロミオスタチンまたはミオスタチン発現を同定することはごく普通のことであろう。特に、成熟ミオスタチン配列は、TGF-βスーパーファミリーの他のメンバーと有意な相同性を有し、ミオスタチンは、他のファミリーメンバーおよび他の種において高度に保存されている残基のほとんどを含む。さらに、ミオスタチンはTGF-βおよびインヒビンβと同様に、実質的に全てのファミリーメンバーにおいて存在する7個のシステイン残基の他に余分のシステイン残基対を含む。ミオスタチンは、Vgr-1(45%配列同一性)と最も相同性がある。TGF-βスーパーファミリーの他のメンバーと同様に、ミオスタチンは、より大きい前駆体プロミオスタチンポリペプチドとして合成され、これが蛋白質分解によって切断されて活性なミオスタチンペプチドとなる。 様々な生物のプロミオスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、周知の技法および開示された配列との同一性(または相同性)に基づくアルゴリズムを用いて同定することができる。相同性または同一性はしばしば、ジェネティクスコンピューターグループ(ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、1710、University Avenue, Madison, WI 53705)の配列解析ソフトウェアパッケージのような配列解析ソフトウェアを用いて測定する。そのようなソフトウェアは、様々な欠失、置換および他の改変に相同性の程度を割付することによって類似の配列をマッチさせる。本明細書において二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の意味において用いられる「相同性」および「同一性」という用語は、同じである二つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列、または何らかの数の配列比較アルゴリズムを用いて、もしくは手動でのアラインメントおよび肉眼的検査によって測定した場合に、比較ウィンドウもしくは指定領域に対して最大の対応が得られるように比較して並置した場合に、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定の割合で有する二つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列を意味する。 配列比較を行う場合、典型的に一つの配列を参照配列として用い、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピューターに入力して、必要であれば小配列の座標を指定する。配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを用いることができ、または別のパラメータを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。 「比較ウィンドウ」という用語は、本明細書において、その中で二つの配列を最適に並置した後に、配列が隣接位置の同じ数値の参照配列と比較される、例えばアミノ酸またはヌクレオチドの位置の連続する位置、例えば、約20〜600位、通常約50〜約200位置、より通常、約100〜約150位の数のいずれか1つの区域に対する言及も含まれるように広く用いられる。比較のために配列を並置させる方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、スミスとウォーターマン(SmithとWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482、1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanとWunsch、J. Mol. Biol. 48:443、1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、PersonとLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444、1988)の類似性検索法によって行うことができ、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(ウィスコンシンジェネティクスソフトウェアパッケージ、ジェネティクスコンピューターグループ、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA);または手動でのアラインメントおよび肉眼での検分によって行うことができる。相同性または同一性を決定する他のアルゴリズムには、例えば、BLASTプログラム(国立生物情報センターの基礎局所アラインメント検索ツール)の他に、ALIGN、AMAS(多重並置配列の解析)、AMPS(蛋白質多重配列アラインメント)、ASSET(並置セグメント統計学的評価ツール)、BANDS、BESTSCOR、BIOSCAN(生物配列比較解析ノード)、BLIMPS(ブロックス改善検索)、FASTA、インターバルとポインツ、BMB、CLUSTAL V、CLUSTAL W、CONSENSUS、LCONSENSUS、WCONSENSUS、スミス-ウォーターマンアルゴリズム、DARWIN、ラスベガスアルゴリズム、FNAT(強制ヌクレオチドアラインメントツール)、フレームアライン、フレームサーチ、DYNAMIC、FILTER、FSAP(フリステンスキー配列解析パッケージ)、GAP(グローバルアラインメントプログラム)、GENAL、GIBBS、ゲンクエスト、ISSC(感度のよい配列比較)、LALIGN(局所配列アラインメント)、LCP(局所コンテントプログラム)、MACAW(多重アラインメント構築と解析ワークベンチ)、MAP(多重アラインメントプログラム)、MBLKP、MBLKN、PIMA(パターン誘導多重配列アラインメント)、SAGA(遺伝子アルゴリズムによる配列アラインメント)、およびWHAT-IFが含まれる。そのようなアラインメントプログラムはまた、実質的に同一の配列を有するポリヌクレオチド配列を同定するためにゲノムデータベースをスクリーニングするために用いることができる。 多くのゲノムデータベースを、比較のために利用することができ、例えば、ヒトゲノムの実質的な部分は、ヒトゲノム配列決定プロジェクト(ローチ(J. Roach)、http://weber.u.Washington.edu/〜roach/human_genome_progress 2.html)の一部として利用できる。さらに、例えば、M. ゲニタリウム(M. genitalium)、M. ジャンナスキイ(M. jannaschii)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、大腸菌(E. coli)、酵母菌(S. cerevisiae)、およびD.メラノガスター(D. melanogaster)を含む、少なくとも21個のゲノムが完全に配列決定されている。マウス、線虫(C. elegans)、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis)種のようなモデル生物のゲノムの配列決定は有意に進歩している。いくつかの機能的情報を注釈したゲノム情報を含むいくつかのデータベースは、異なる機構によって維持されており、インターネットによって例えば、http://wwwtigr.org/tdb;http://www.genetics/wisc.edu;http://genome-www.stanford.edu/〜ball;http://hiv-web.lanl.gov;http://www/ncbi.nlm.nih.gov;http://ebi.ac.uk;http://Pasteur.fr/other/biology;およびhttp://www.genome.wi.mit.edu.にアクセスすることができる。 有用なアルゴリズムの一つの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはAltschulら(Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402、1977;J. Mol. Biol. 215:403〜410、1990、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)によって記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通して一般に利用できる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。このアルゴリズムは、これはデータベースにおける同じ長さのワードと並置した場合に、いくつかの陽性評価閾値スコアTとマッチするかまたは満足する、問い合わせ配列における長さWの短いワードを同定することによって高スコア配列対(HSPs)をまず同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値(Altschulら、上記、1977、1990)と呼ばれる。これらの初回隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPsを発見するための検索を開始するためのシードとなる。それぞれの配列に沿って、累積アラインメントスコアが増加することができる限り、ワードヒットを双方向に伸張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関してパラメータM(マッチする残基対に関する報酬スコア;常に>0)を用いて計算する。アミノ酸配列の場合、スコアリング行列を用いて累積スコアを計算する。それぞれの方向におけるワードヒットの伸張は、累積アラインメントスコアがその最高到達値から量X遠ざかる場合;累積スコアがゼロもしくはそれ未満に達する場合;一つもしくはそれ以上の陰性スコア残基アラインメントの蓄積のため;またはいずれかの配列の末端に達した場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータ、W、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を左右する。BLASTNプログラム(核酸配列に関して)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4および双方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10を用い、BLOSUM62スコアリング行列(HenikoffとHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915、1989を参照のこと)は、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および双方の鎖の比較を用いる。 BLASTアルゴリズムはまた、二つの配列間の類似性に関する統計解析も行う(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、KarlinとAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873、1993を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの測定は、最小和確率(P(N))であり、これは二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸を参照核酸と比較した場合の最小和確率が約0.2未満であれば、より好ましくは約0.01未満であれば、および最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は参照配列と類似であると見なされる。 一つの態様において、蛋白質および核酸配列相同性は、基礎局所アラインメント検索ツール(「BLAST」)を用いて評価する。特に、特異的BLASTプログラム5個を用いて以下のタスクを行う:(1)BLASTPおよびBLAST3は、蛋白質配列データベースに対してアミノ酸問い合わせ配列を比較する;(2)BLASTNは、ヌクレオチド配列データベースに対してヌクレオチド問い合わせ配列を比較する;(3)BLASTXは、蛋白質配列データベースに対する問い合わせヌクレオチド配列(双方の鎖)の6個のフレーム概念的翻訳産物を比較する;(4)TBLASTNは、全ての6個のリーディングフレーム(双方の鎖)において翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対して問い合わせ蛋白質配列を比較する;および(5)TBLASTXは、ヌクレオチド配列データベースの6個のフレーム翻訳に対するヌクレオチド問い合わせ配列の6個のフレーム翻訳を比較する。 BLASTプログラムは、これは本明細書において、問い合わせアミノ酸または核酸配列と、好ましくは蛋白質または核酸配列データベースから得られる試験配列との間の「高スコアリングセグメント対(High-scoring segment pairs)」と呼ばれる類似の部分を同定することによって相同な配列を同定する。高スコアリングセグメント対は好ましくは、その多くが当技術分野で既知であるスコアリング行列によって同定される(すなわち並置される)。好ましくは用いたスコアリング行列は、BLOSUM62行列(Gonnetら、Science 256:1443〜1445、1992;HenikoffとHenikoff、Proteins 17:49〜61、1993、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)である。次に好ましいPAMまたはPAM250行列も同様に用いてもよい(SchwartzとDayhoff編、「Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure」、(ワシントン、国立生物医学研究財団、1978))。BLASTプログラムは、例えば、www://ncbi.nlm.nih.govで米国国立図書館を通してアクセスできる。 上記のアルゴリズムで用いたパラメータは、調べる配列の長さおよび相同性の程度に応じて適合させてもよい。いくつかの態様において、パラメータは、ユーザーからの指示がなければアルゴリズムによって用いられるデフォルトパラメータであってもよい。 プロミオスタチンをコードするポリヌクレオチドは、例えば、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヒト、ニワトリ、七面鳥、ゼブラフィッシュ、サケ、魚、他の水棲生物および他の種を含む如何なる生物にも由来しうる。水棲生物の例には、マス、チャー、アユ、コイ、ヨーロッパフナ、キンギョ、ウグイ、シラス、ウナギ、アナゴ、イワシ、トビウオ、スズキ、タイ、パロットバス、フエダイ、サバ、マグロ、マグロ、ハガツオ、ブリ、岩間の魚、カレイ、ソール、ヒラメ、フグ、モンガラカワハギのような魚類;ヤリイカ、イカ、タコのような頭足類;ハマグリ(例えば、ハードシェル、マニラ、ホンビノスガイ、ホンビノスガイ、ソフトシェル)のような二枚貝類;コックル、イガイ、タマキビガイ;ホタテガイ(例えば、海、湾、カルー(calloo))、ホラガイ、マキガイ、ナマコ;アークシェル;カキ(例えば、C. バージニカ(C. virginica)、湾、ニュージーランド、太平洋);螺旋状のマキガイ、アワビ(例えば、緑、ピンク、赤)のような腹足類に属するもの;およびイセエビ(Spiny)、ロックロブスター(Rock)、およびアメリカロブスターを含むがこれらに限定されないロブスター;M.ローゼンベルギイ(M. rosenbergii)、P.スチルロールス(P. styllrolls)、P.インディクス(P. indicus)、P. ジェポニオウス(P. jeponious)、P. モノドン(P. monodon)、P. バネメル(P. vannemel)、M. エンシス(M. ensis)、S. メラント(S. melantho)、N. ノルベギオウス(N. norvegious)、冷水エビを含むがこれらに限定されないエビ;ワタリガニ、ルーククラブ、ストーンクラブ、カブトガニ、クイーンクラブ、スノウクラブ、ブラウンクラブ、イチョウガニ、北米産イチョウガニ、マングローブクラブ、ソフトシェルクラブのようなカニ;シャコ、クリール、ランゴスチノ(langostino);ブルー、マロン、レッドクロウ、レッドスワンプ、ソフトシェル、ホワイトを含むがこれらに限定されないイセエビ/ザリガニ(crayfish/crawfish)のような甲殻類;環形動物;アメリカワニおよびカメのようなは虫類を含むがこれらに限定されない脊索動物;カエルを含む両生類;ならびにウニを含むがこれらに限定されない棘皮動物に属するものが含まれる。 本発明は、プロミオスタチンポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分およびプロGDF-11ポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分を提供する。本明細書において用いられるように、「プロGDF」、例えばプロミオスタチンまたはプロGDF-11という用語は、アミノ末端プロドメインとカルボキシ末端の生物活性GDFペプチドとを含む完全長のポリペプチドを意味する。さらに、プロドメインには、プロドメインのアミノ末端の最初のアミノ酸約15〜30個を含むシグナルペプチド(リーダー配列)が含まれる。シグナルペプチドは、完全長のプロGDFポリペプチドから切断することができ、これをさらに、Arg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解切断部位で切断することができる。 本明細書においてアミノ酸残基という用語は、図1および2に示すような完全長のプロGDFポリペプチドに関して参照する(同様に、配列表を参照のこと)。同様に、この用語は、本明細書において「約」特定のアミノ酸残基で始まるまたは終わる特定のペプチドを意味すると認識すべきである。「約」という用語は、それが蛋白質分解切断認識部位で、またはそれに直ちに隣接して、または認識部位から一つもしくは数個のアミノ酸離れて、プロGDFポリペプチドを切断することができると認識されることから、この意味において用いられる。そのため、例えば、配列番号:4のアミノ酸残基約1〜263位の配列を有するミオスタチンプロドメインという用語には、シグナルペプチドを含み、アミノ酸残基257〜アミノ酸残基269位で終わる、好ましくはアミノ酸残基260〜アミノ酸残基266位で終わるカルボキシ末端を有するプロミオスタチンのアミノ末端ペプチド部分がが含まれる。 同様に、シグナルペプチドはプロGDFポリペプチドのアミノ酸残基約15〜30位の如何なる位置で、例えば、残りのプロドメインの機能に影響を及ぼすことなく、残基15、20、25、または30位で切断することも可能である。このように、一般的に本明細書では簡便のため、アミノ酸残基約20位で始まるシグナルペプチドが切断されているプロGDFポリペプチドのペプチド部分に言及する。しかし、シグナルペプチドの切断は、プロGDFポリペプチドの最初のアミノ末端アミノ酸約15〜30位内の如何なるアミノ酸位置ともなりうると認識されるであろう。そのため、例えば、配列番号:4のアミノ酸残基約20〜263位の配列を有するミオスタチンプロドメインという用語には、シグナルペプチドを含むプロミオスタチンの最初のアミノ酸約15〜30個を欠損し、アミノ酸残基257位〜アミノ酸残基269位で終わる、好ましくはアミノ酸残基260〜アミノ酸残基266位で終わるカルボキシ末端を有するプロミオスタチンのペプチド部分が含まれるであろう。 一般的に、本明細書においてアミノ酸約1位で始まるプロGDFポリペプチドまたはGDFプロドメインについて言及する。しかし、上記の開示を考慮すると、そのようなプロGDFポリペプチドまたはシグナルペプチドを欠損するGDFプロドメインも同様に、本発明に含まれると認識されるであろう。さらにこの点において、本発明のペプチドにおけるシグナルペプチドの有無は、例えばペプチド、例えばミオスタチンプロドメインが横切る細胞の区画、およびペプチドが細胞から分泌されるか否かを含むペプチドが最終的に局在する細胞の区画に影響を及ぼしうることを認識すべきである。このように、本発明は、プロGDFポリペプチドの実質的に精製されたシグナルペプチド部分をさらに提供する。本明細書に開示するように、そのようなシグナルペプチドは、作用物質、特にペプチド作用物質を、シグナルペプチドが由来する天然に存在するGDFと同じ細胞区画にターゲティングするために用いることができる。 「ペプチド」または「ペプチド部分」という用語は、本明細書において広い意味で、ペプチド結合によって結合された二つまたはそれ以上のアミノ酸を意味するために用いられる。「断片」または「蛋白質分解断片」という用語も同様に、本明細書において、ポリペプチド上の蛋白質分解反応によって産生されうる産物、すなわちポリペプチドにおけるペプチド結合の切断によって産生されペプチドを意味する。「蛋白質分解断片」という用語は、一般的に本明細書において蛋白質分解反応によって生じうるペプチドを意味するが、断片は必ずしも蛋白質分解反応によって生じる必要はなく、下記により詳細に説明するように、蛋白質分解断片と同等の合成ペプチドを生じるために、化学合成法または組換えDNA技術の方法を用いて産生することができる。プロミオスタチンとTGF-βスーパーファミリーの他のメンバーとの開示された相同性を考慮すると、本発明のペプチドは、部分的にそれがこのスーパーファミリーのこれまでに開示されたメンバーには存在しないという特徴を有すると認識されるであろう。プロミオスタチンまたはプロGDF-11ポリペプチドのペプチド部分がTGF-βスーパーファミリーのこれまでに開示されたメンバーに存在するか否かは、上記のコンピューターアルゴリズムを用いて容易に決定することができる。 一般的に、本発明のペプチドは、少なくともアミノ酸約6個、通常、アミノ酸約10個を含む、アミノ酸15個またはそれ以上を含みうる、特に20個またはそれ以上を含みうる。「ペプチド」という用語は、本明細書においてその分子を含むアミノ酸の特定の大きさまたは数を示唆するために用いられず、本発明のペプチドはアミノ酸残基数個またはそれ以上までを含みうると認識すべきである。例えば、完全長の成熟C末端ミオスタチンペプチドは、100個を超えるアミノ酸を含み、完全長のプロドメインペプチドは260個を超えるアミノ酸を含みうる。 本明細書において用いられるように、「実質的に精製された」または「実質的に純粋」もしくは「単離された」という用語は、例えば、ペプチドまたはポリヌクレオチドと呼ばれる分子が、それが天然に会合する蛋白質、核酸、脂質、糖質、または他の材料を比較的含まない形であることを意味する。一般的に、実質的に純粋なペプチド、ポリヌクレオチド、または他の分子は、試料の少なくとも20%を構成し、一般的に試料の少なくとも約50%を構成し、通常、飼料の少なくとも約80%を構成し、および特に試料の約90%または95%またはそれ以上を構成する。本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドが実質的に純粋であるか否かの決定は、周知の方法を用いて、例えば電気泳動を行って、比較的明確なバンドとして特定の分子を同定することによって、行うことができる。実質的に純粋なポリヌクレオチドは、例えば、ポリヌクレオチドをクローニングすることによって、または化学合成もしくは酵素的合成によって得ることができる。実質的に純粋なペプチドは、例えば、化学合成方法によって、または蛋白質精製方法の後に蛋白質分解を行い、望ましければクロマトグラフィーもしくは電気泳動方法によってさらに精製することによって得ることができる。 本発明のペプチドは、プロミオスタチンまたはプロGDF-11配列と比較して、ペプチドのアミノ酸配列がそれぞれ、プロミオスタチンまたはプロGDF-11ポリペプチド配列の中に含まれることを決定することによって同定することができる。しかし、本発明のペプチドはプロミオスタチンまたはプロGDF-11の対応するアミノ酸配列と同一である必要はないと認識すべきである。このように、本発明のペプチドは、プロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸配列に対応することができるが、例えば、対応するL-アミノ酸の代わりに一つまたはそれ以上のD-アミノ酸を含むことによって、または一つもしくはそれ以上のアミノ酸類似体、例えばその反応性側鎖で誘導体化されたもしくはそうでなければ改変されているアミノ酸を含むことによって、天然に存在する配列とは異なりうる。同様に、ペプチドにおける一つまたはそれ以上のペプチド結合を改変することができる。さらに、アミノ末端またはカルボキシ末端またはその双方で反応基を改変することができる。そのようなペプチドは、例えば、プロテアーゼ、酸化剤、または生物環境においてペプチドが遭遇する可能性がある他の反応性材料に対して改善された安定性を有するように改変することができ、したがって、本発明の方法を行うために特に有用となりうる。当然のこととして、ペプチドは、ペプチドが環境において活性である期間が減少するように、生物環境において減少した安定性を有するように改変することができる。 本発明のペプチドの配列はまた、ペプチドに一つまたは少数のアミノ酸の保存的アミノ酸置換を組み込まれることによって、プロミオスタチンまたはプロGDF-11ポリペプチドにおける対応する配列と比較して改変することができる。保存的アミノ酸置換には、一つのアミノ酸残基を、比較的同じ化学特徴を有するもう一つのアミノ酸残基に置換すること、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンのような一つの疎水性残基をもう一つの残基の代わりに置換すること、または一つの極性残基をもう一つの残基の代わりに置換すること、例えばアルギニンをリジンの代わりに用いること;またはアスパラギン酸の代わりにグルタミン酸を用いること、アスパラギンの代わりにグルタミンを用いること等が含まれる。改変することができるプロミオスタチンポリペプチドの位置の例は、図1を調べると明らかであり、これはプロミオスタチンまたはミオスタチン活性に実質的に影響を及ぼさない、ミオスタチンプロドメインおよび成熟ミオスタチンペプチドにおける様々なアミノ酸の差を示す。 本発明はまた、増殖分化因子(GDF)ポリペプチド(プロGDFポリペプチド)、またはその機能的ペプチド部分の実質的に精製された蛋白質分解断片を提供する。プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片の例は、本明細書においてプロミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解断片およびプロGDF-11ポリペプチドの蛋白質分解断片である。本明細書において開示されるように、プロGDFの蛋白質分解断片と同等であるプロGDFポリペプチドのペプチド部分は、化学的方法または組換えDNA法によって産生することができる。本開示を考慮すると、他のGDFポリペプチドの蛋白質分解断片は容易に作成して用いることができる。 一般的に、プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片に対応するペプチドの例は、GDF受容体と特異的に相互作用して、GDFシグナル伝達に影響を及ぼすことができるカルボキシ末端(C末端)成熟GDF断片、およびシグナルペプチドを含み得て、本明細書に開示するように、プロGDFポリペプチドまたは成熟GDFペプチドと特異的に相互作用して、GDFシグナル伝達を行う能力に影響を及ぼしうるアミノ末端プロドメイン断片である。例えば、プロミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解断片には、ミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、ミオスタチンシグナル伝達を誘導することができるC末端成熟ミオスタチンペプチド、およびミオスタチンと特異的に相互作用して、それによってミオスタチンのミオスタチンシグナル伝達誘導能を減少または阻害することができるアミノ末端プロドメイン断片が含まれる。 プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片、またはその機能的ペプチド断片は、部分的に、GDFシグナル伝達の刺激または阻害に関連した活性を有する、または影響を及ぼすことを特徴とする。例えば、プロミオスタチンポリペプチドまたはその機能的ペプチド部分は、ミオスタチン受容体結合活性、ミオスタチンシグナル伝達刺激または阻害活性、ミオスタチン結合活性、プロミオスタチン結合活性、またはその組み合わせを有しうる。このように、本明細書においてプロGDFポリペプチドに関連して用いられるように「機能的ペプチド部分」という用語は、その受容体と特異的に相互作用してGDFシグナル伝達を刺激または阻害することができる;成熟GDFまたはプロGDFと特異的に相互作用することができる;または細胞局在活性を示す、すなわちシグナルペプチドの活性を示すプロGDFポリペプチドのペプチド部分を意味する。完全長の成熟ミオスタチンペプチドの機能的ペプチド部分は、例えば成熟ペプチドの機能的ペプチド部分が、例えばシグナル伝達経路の活性化能を有することなくミオスタチン受容体との特異的相互作用能を有し得ることから、ミオスタチンシグナル伝達の刺激能を含む成熟ミオスタチンと同じ活性を有する必要はないと認識すべきである。ミオスタチン拮抗剤として有用となりうるプロGDFポリペプチドのそのような機能的ペプチド部分を同定する方法は、本明細書において開示するか、または当技術分野で既知である。このように、一つの態様において、プロミオスタチンポリペプチドの機能的ペプチド部分は、ミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、ミオスタチンシグナル伝達を刺激するための作用剤として、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害するための拮抗剤として作用しうる。 もう一つの態様において、プロミオスタチンポリペプチドの機能的ペプチド部分は、プロミオスタチンポリペプチドまたは成熟ミオスタチンペプチドと特異的に相互作用して、それによってミオスタチンシグナル伝達を阻害することができる。プロミオスタチンのそのような機能的ペプチド部分は、例えば、プロミオスタチンポリペプチドの成熟ミオスタチンへの切断を防止することによって、成熟ミオスタチンペプチドとの複合体を形成することによって、または他の何らかのメカニズムによって作用することができる。ペプチドミオスタチン複合体が形成される場合、複合体は、例えばミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することによって、またはミオスタチンシグナル伝達の誘導能を欠損する形で受容体に結合することによって、ミオスタチンシグナル伝達を遮断することができる。 プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片は、コンセンサスアミノ酸配列Arg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)を有する蛋白質分解切断部位でポリペプチドの切断によって産生することができる。そのような蛋白質分解認識部位の例は、配列番号:1(プロミオスタチン)におけるアミノ酸残基263〜266位、または配列番号:25のアミノ酸残基295〜298位(ヒトプロGDF-11;同様に図2の相対位置267〜270位も参照のこと)として示されるArg-Ser-Arg-Arg(配列番号:22)配列、および配列番号:20のアミノ酸残基263〜266位として示されるArg-Ile-Arg-Arg(配列番号:23)配列である。 シグナルペプチドの蛋白質分解切断部位の他に、プロミオスタチンポリペプチドは、例えば、さらに二つの可能性がある蛋白質分解プロセシング部位(Lys-ArgおよびArg-Arg)を含む。コンセンサスArg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解切断認識部位(例えば、配列番号:2のアミノ酸残基263〜266位を参照のこと)内に含まれる後者の蛋白質分解プロセシング部位またはその近傍でプロミオスタチンポリペプチドが切断されると、生物学的に活性なC末端成熟ヒトミオスタチン断片が産生される。例示された完全長の成熟ミオスタチンペプチドは、アミノ酸約103〜約109個を含み、推定分子量は約12,400ダルトン(Da)である。さらに、ミオスタチンは、推定分子量約23〜30キロダルトン(kDa)の二量体を形成することができる。二量体は、ミオスタチンホモダイマー、または例えばGDF-11、他のGDF、もしくはTGF-βファミリーメンバーとのヘテロダイマーとなりうる。 本発明の蛋白質分解断片の例は、GDFプロドメイン、例えば、プロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸残基約20〜262位が含まれるミオスタチンプロドメインもしくはその機能的ペプチド部分、またはプロGDF-11ポリペプチドのアミノ酸残基約20〜295位が含まれるGDF-11プロドメインもしくはその機能的ペプチド部分であり、それらはそれぞれ、それぞれのプロGDFポリペプチドのアミノ酸約1〜20位を含むシグナルペプチドをさらに含みうる。ミオスタチンプロドメインの例は、配列番号:4および配列番号:6に示すアミノ酸残基約20〜263位であると共に、配列番号:2、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:8、配列番号:18、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:20に示すアミノ酸残基約20〜262位であり、これらは対応するプロミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解切断によって産生することができ、化学合成することができ、または蛋白質分解断片をコードする組換えポリヌクレオチドから発現することができる。ミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分の例は、ミオスタチンまたはプロミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチンプロドメインのペプチド部分である。GDF-11プロドメインの例は、配列番号:25のアミノ酸残基約1〜20位を含むシグナルペプチドをさらに含みうる配列番号:25のアミノ酸残基約20〜295位であり、GDF-11プロドメインの機能的ペプチド部分の例は、成熟GDF-11またはプロGDF-11ポリペプチドと特異的に相互作用することができるGDF-11プロドメインのペプチド部分である。好ましくは、GDFプロドメインの機能的ペプチド部分は、例えば、GDFのその受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することによって、または不活性複合体として受容体に結合することによって、対応するGDFもしくは関連GDFのシグナル伝達刺激能を阻害する。一つの態様において、本発明は、プロGDFポリペプチドの機能的断片、特にGDFシグナルペプチド、好ましくはプロミオスタチンもしくはプロGDF-11のアミノ末端の最初のアミノ酸約15〜30個を含むミオスタチンシグナルペプチドまたはGDF-11シグナルペプチドに機能的に結合したGDFプロドメインの機能的断片を提供する。 本明細書において開示するように、ミオスタチンプロドメインまたはGDF-11プロドメインは、成熟ミオスタチン、GDF-11、またはその双方と相互作用して、それによって成熟GDFとその受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することができる(実施例7および8を参照のこと)。このように、ミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分は、例えば、本明細書に提供する方法を用いて、ミオスタチンプロドメインのペプチド部分を調べること、ミオスタチンまたはプロミオスタチンと特異的に相互作用することができ、ミオスタチンのミオスタチン受容体との特異的相互作用能またはミオスタチンシグナル伝達刺激能を減少もしくは阻害することができるプロドメインの機能的ペプチド部分を同定することによって、得ることができる。 ミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分、またはもう一つのGDFプロドメインの機能的ペプチド部分も同様に、特異的蛋白質-蛋白質相互作用を同定するために有用であることが知られている様々な如何なるアッセイ法も用いて同定することができる。そのようなアッセイ法には、例えばゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、FieldsとSongのツーハイブリッド系(Fields and Song、Nature 340:245〜246、1989;同様に米国特許第5,283,173号参照;Fearonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7958〜7962、1992;Chienら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578〜9582、1991;Young、Biol. Reprod. 58:302〜311(1989)、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)、逆ツーハイブリッドアッセイ法(レアンナとハニンク(Leanna and Hannink)、Nucl. Acids. Res. 24:3341〜3347、1996、参照として本明細書に組み入れられる)、抑制されたトランス活性化剤系(米国特許第5,885,779号、参照として本明細書に組み入れられる)、ファージディスプレイ系(ロウマン(Lowman)、Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:401〜424、1997、参照として本明細書に組み入れられる)、GST/HISプルダウンアッセイ法、変異体オペレータ(国際公開公報第98/01879号、参照として本明細書に組み入れられる)、蛋白質動員系(米国特許第5,776,689号、参照として本明細書に組み入れられる)等(例えば、マティス(Mathis)、Clin. Chem. 41:139〜147、1995;ラム(Lam)、Anticancer Drug Res. 12:145〜167、1997;フィジッキー(Phizicky)ら、Microbiol. Rev. 59:94〜123、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)の方法が含まれる。 GDFプロドメインの機能的ペプチド部分はまた、分子モデリングの方法を用いて同定することができる。例えば、成熟ミオスタチンペプチドのアミノ酸配列は、適当なモデリングソフトウェアを有するコンピューターシステムに入力することができ、ミオスタチンの三次元表示(「仮想ミオスタチン」)を得ることができる。プロミオスタチンアミノ酸配列も同様に、モデリングソフトウェアがプロミオスタチン配列の一部、例えば、プロドメインの一部を刺激して、仮想ミオスタチンと特異的に相互作用することができるプロドメインのそれらのペプチド部分を同定することができるように、コンピューターシステムに入力することができる。特異的相互作用の基準値は、そのような相互作用がミオスタチンの活性を阻害することが知られていることから、仮想ミオスタチンおよび完全長のプロミオスタチンプロドメインをモデリングすること、プロドメインによって「接触される」仮想ミオスタチンにおけるアミノ酸残基を同定することによって予め定義することができる。 ツーハイブリッドアッセイ法および分子モデリング法を含むそのような方法もまた用いて、本発明に含まれる他の特異的相互作用分子を同定することができると認識すべきである。このように、ツーハイブリッドアッセイ法のような方法を用いて、例えばアッセイ法の一つの結合成分としてAct RIIAまたはAct RIIB受容体と特異的に相互作用するミオスタチンペプチドまたはそのペプチド部分を用いて、ミオスタチン受容体のようなGDF受容体を同定することができ、ミオスタチンペプチドと特異的に相互作用するGDF受容体を同定することができる。同様に、分子モデリングの方法は、成熟ミオスタチンのような成熟GDFペプチドまたはGDF受容体と特異的に相互作用して、したがって、GDFまたはGDF受容体によって媒介されるシグナル伝達の作用剤または拮抗剤として有用となりうる作用物質を同定するために用いることができる。そのような作用物質は例えば、ミオスタチンプロドメインもしくはGDF-11プロドメインの機能的ペプチド部分、またはGDFプロドメインの作用を模倣する化学作用物質となりうる。 本明細書に開示の目的にとって有用なモデリング系は、結晶学解析もしくは核磁気共鳴解析によって得られた構造情報、または一次配列情報(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Dunbrackら、「学会論評:蛋白質構造の予測に関する技術の重要な評価に関する第二回会議(Meeting Review:the Second Meeting on the Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction(CASP2)」、アシロマー、カリフォルニア州、1996年12月13〜16日、Fold Des. 2(2):R27〜42(1997);フィッシャーとアイゼンバーグ(Fischer and Eisenberg)、Protein Sci. 5:947〜55、1996;(同様に米国特許第5,436,850号も参照のこと);ヘーベル(Havel)、Prog. Biophys. Mol. Biol. 56:43〜78、1991;リヒタルジ(Lichtarge)ら、J. Mol. Biol. 274:325〜37、1997;マツモト(Matsumoto)ら、J. Biol. Chem. 270:19524〜31、1995;サリ(Sali)ら、J. Biol. Chem. 268:9023〜34、1993;サリ(Sali)、Molec. Med. Today 1:270〜7、1995a;サリ(Sali)、Curr. Opin. Biotechnol. 6:437〜51、1995b;サリ(Sali)ら、Proteins 23:318〜26、1995c;サリ(Sali)、Nature Struct. Biol. 5:1029〜1032、1998;米国特許第5,933,819号;米国特許第5,265,030号を参照のこと)に基づくことができる。 プロミオスタチンポリペプチドまたはGDF受容体の結晶構造座標を用いて、蛋白質に結合して、その物理的または生理的特性を多様な方法で変化させる化合物を設計することができる。蛋白質の構造座標も同様に、GDFシグナル伝達の作用剤または拮抗剤として作用しうる調節または結合作用物質を開発するために、ポリペプチドに結合する作用物質に関して低分子データベースをコンピューターによってスクリーニングするために用いることができる。そのような作用物質は、標準的な等式(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Segel、「Enzyme Kinetics」、(ジョンウィリーアンドサンズ、1995)を参照のこと)を用いるコンピューター適合速度論データによって同定することができる。 阻害剤または結合作用物質を設計するために結晶構造データを用いる方法は、当技術分野で既知である。例えば、GDF受容体座標を、結合した阻害剤を有する受容体を含む類似の受容体の他の利用可能な座標に重なり合わせると、阻害剤が受容体と相互作用する様式の近似を得ることができる。合理的薬剤設計の実践において用いられるコンピュータープログラムも同様に用いて、例えば、成熟ミオスタチンと共結晶化したミオスタチンプロドメインとのあいだに認められるものと類似の相互作用特徴を再現する化合物を同定することができる。特異的相互作用の特性が詳しく判明すれば、結合活性に影響を及ぼすことなく、溶解度、薬物動態等を変化もしくは改善させるように化合物を改変することができる。 結晶構造情報を用いて作用物質を設計するために必要な活性を行うためのコンピュータープログラムは周知である。そのようなプログラムの例には、バイオバイトマスターファイル、ダーウェントWDIおよびACIDのような化学データベースを評価するための情報検索プログラムであるカタリストデータベース(商標);化合物のモデルを作製して、候補薬剤の構造によって活性の変化を説明するための仮説を作製するカタリスト/HYPO(商標);相補的極性および疎水性基を同定およびマッチさせることによって、蛋白質の活性部位に分子を適合させるルディ(商標);およびユーザーが管理するパラメータによって遺伝子アルゴリズムを用いて新しいリガンドを「成長させる」リープフロッグ(商標)が含まれる。 様々な一般的な目的装置をそのようなプログラムと共に用いることができ、または操作を行うためにより専門的な装置を構築することがより都合がよい場合もある。一般的に、態様は、それぞれが少なくとも一つのプロセッサ、少なくとも一つのデータ保存システム(揮発性および非揮発性記憶装置および/または記憶エレメント)、少なくとも一つの入力装置、および少なくとも一つの出力装置を含むプログラム可能なシステム上で実行する一つまたはそれ以上のコンピュータープログラムにおいて実行される。プログラムは本明細書に記載の機能を実行するためにプロセッサ上で行われる。 それぞれのそのようなプログラムは、コンピューターシステムとコミュニケーションを取るために、例えば、機械語、アセンブリ言語、高レベル手続き型言語、またはオブジェクト指向プログラミング言語を含む如何なる所望のコンピューター言語で実行することもできる。いずれにせよ、言語はコンパイラー言語または翻訳言語であってもよい。コンピュータープログラムは、典型的に本明細書に記載の手続きを行うためにコンピューターによって保存媒体または装置を読みとる場合に、コンピューターを形成して操作するために、一般的または専門目的のプログラム可能なコンピューターによって読みとり可能な保存媒体または装置、例えばROM、CD-ROM、磁気または光学媒体等に保存される。システムはまた、そのように形成された保存媒体が、本明細書に記載の機能を実行するために特異的な既定の方法でコンピューターを操作させる場合に、コンピューター読みとり可能な保存媒体として実行され、コンピュータープログラムによって形成されると見なしてもよい。 本発明の態様には、システム、例えば、インターネットに基づくシステム、特に、結晶学またはNMR解析によって得られた座標情報、または本明細書に開示されるアミノ酸もしくはヌクレオチド配列情報を保存および操作するコンピューターシステムが含まれる。本明細書において用いられるように、「コンピューターシステム」という用語は、本明細書において述べた座標または配列を解析するために用いられる、ハードウェア成分、ソフトウェア成分、およびデータ保存成分を意味する。コンピューターシステムは典型的に、配列データを処理、アクセスおよび操作するためのプロセッサが含まれる。プロセッサには、如何なる周知のタイプの中央処理装置、例えばインテル社のペンティウムIIまたはペンティウムIIIプロセッサ、またはサン、モトローラ、コンパック、アドバンスドマイクロデバイシズ、もしくはインターナショナルビジネスマシーンズ各社からの類似のプロセッサが含まれうる。 典型的に、コンピューターシステムは、プロセッサと、データを保存するための一つまたはそれ以上の内部データ保存成分、およびデータ保存成分上に保存されたデータを検索するための一つまたはそれ以上のデータ検索装置を含む用途の広いシステムである。当業者は、現在利用できるコンピューターシステムの如何なるものも適していることを容易に認識しうる。 一つの態様において、コンピューターシステムには、メインメモリ、好ましくはRAMとして実行されるメモリに接続したバスに接続したプロセッサ、およびハードドライブまたはその上に記録されたデータを有する他のコンピューター読みとり可能な媒体のような一つまたはそれ以上の内部データ保存装置が含まれる。いくつかの態様において、コンピューターシステムには、内部データ保存装置上に保存されたデータを読みとるための一つまたはそれ以上のデータ検索装置がさらに含まれる。 データ検索装置は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブ、または遠隔データ保存システム(例えば、インターネットを通して)に接続することができるモデムであってもよい。いくつかの態様において、内部データ保存装置は、制御論理および/またはその上に記録されたデータを含むフロッピーディスク、コンパクトディスク、磁気テープ等のような取り外し可能なコンピューター読みとり可能媒体である。コンピューターシステムは、データ検索装置に一度挿入されたデータ保存成分から制御論理および/またはデータを読み出すための適当なソフトウェアを含むことが都合がよく、またはそれらによってプログラムされてもよい。 コンピューターシステムには、一般的にディスプレイが含まれ、これはコンピューターユーザーに出力を表示するために用いられる。同様に、コンピューターシステムは、コンピューターシステムへの中心アクセスを提供するためのネットワークまたは広い地域ネットワークにおいて他のコンピューターシステムとリンクすることができる。 ミオスタチンまたはGDF受容体と特異的に相互作用する化学実体を同定することが望ましい場合、分子との特異的相互作用能に関して化学実体または断片をスクリーニングするためにいくつかの方法を用いることができる。このプロセスは、例えば、ミオスタチンとミオスタチンプロドメインとをコンピュータースクリーン上で肉眼的に調べることによって始めてもよい。次に、プロドメインの選択されたペプチド部分、または模倣体として作用しうる化学実体を、ミオスタチンの個々の結合部位において多様な方向に配置、または合体させることができる。合体は、クアンタとシビルのようなソフトウェアを用いて行うことができ、その後、エネルギーの最小限化およびCHARMMおよびAMBERのような標準的な分子力学による分子動力学を行うことができる。 特殊なコンピュータープログラムは、プロドメインの選択されたペプチド部分、または例えばGDF受容体作用剤もしくは拮抗剤として有用な化学実体を選択するために特に有用である。そのようなプログラムには、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、GRID(Goodford、J. Med. Chem. 28:849〜857、1985;オックスフォード大学から入手可能、オックスフォード、イギリス);MCSS(MirankerとKarplus、「Proteins:Structure, Function and Genetics」 11:29〜34、1991、モレキュラーシミュレーションズから入手可能、バーリントン、マサチューセッツ州);AUTODOCK(GoodsellとOlsen、「Proteins:Structure, Function and Genetics」 8:195〜202、1990、スクリプスリサーチインスチチュートから入手可能、ラホヤ、カリフォルニア州);DOCK(Kuntzら、J. Mol. Biol. 161:269〜288、1982、カリフォルニア大学から入手可能、サンフランシスコ、カリフォルニア州)が含まれる。 選択される適したペプチドまたは作用物質を、単一の化合物または結合物質に組み立てることができる。組立は、コンピュータースクリーン上に表示される三次元画像上で、断片の互いの関係を肉眼的に調べることによって行い、その後クアンタまたはシビルのようなソフトウェアを用いて手動でのモデル構築を行うことができる。個々の化学実体または断片をつなぎ合わせる当業者の助けとなる有用なプログラムには、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、CAVEAT(Bartlettら、Special Pub. Royal Chem Soc. 78:182〜196、1989、カリフォルニア大学から入手可能、バークレー、カリフォルニア州);MACCS-3Dのような3Dデータベースシステム(MDLインフォメーションシステムズ、サンレアンドロ、カリフォルニア州;論評に関しては、Martin、J. Med. Chem. 35:2145〜2154、1992を参照のこと);HOOK(モレキュラーシミュレーションズから入手可能、バーリントン、マサチューセッツ州)が含まれる。 そのような特異的に相互作用する作用物質を上記のように一つの断片または化学的実体を一度に段階的に構築または同定する方法の他に、作用物質は、空の活性部位、または選択的に、特異的に相互作用する既知の作用物質いくつかの部分、例えばミオスタチンと特異的に相互作用する完全長のミオスタチンプロドメインを用いて、全体としてまたは新たに設計することができる。そのような方法には、例えば、LUDI(Bohm、J. Comp. Aid. Molec. Design 6:61〜78、1992、バイオシンテクノロジーズ社から入手可能、サンジエゴ、カリフォルニア州);LEGEND(NishibataとItai、Tetrahedron. 47:8985、1991、モレキュラーシミュレーションズ社から入手可能、バーリントン、マサチューセッツ州);リープフロッグ(トリポスアソシエーツ社から入手可能、セントルイス、ミズーリ州)、およびCohenら(J. Med. Chem. 33:883〜894、1990)およびNaviaとMurcko、Curr. Opin. Struct. Biol. 2:202〜210、1992、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)に記載される方法が含まれる。 特定のコンピューターソフトウェアは、当技術分野において化合物の変形エネルギーおよび静電気的相互作用を評価するために利用できる。そのような用途のために設計されるプログラムの例には、ゴーシアン92、改訂版C(フリッシュ、ゴーシアンインク、ピッツバーグ、ペンシルバニア州、1992);AMBER、バージョン4.0(コルマン、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、1994);QUANTA/CHARMM(モレキュラーシミレーションズインク、バーリントン、マサチューセッツ州、1994);およびインサイトII/ディスカバー(バイオシステムテクノロジーズインク、サンジエゴ、カリフォルニア州)が含まれる。これらのプログラムは例えば、シリコングラフィックスワークステーション、IRIS 4D/35、またはIBM RISC/6000ワークステーションモデル550を用いて実行してもよい。その速度および容量が絶えず改変されているその他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは、当業者に既知であろう。 関係する分子、例えば、成熟ミオスタチンのような成熟GDFペプチドまたはGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定する分子モデリングプロセスは、本明細書に開示されるように実行することができる。第一の段階において、標的分子、例えばミオスタチンの仮想表示を行う。このように、一つの態様において、本発明は、標的分子がプロGDFポリペプチド、例えば、プロミオスタチン;プロGDFポリペプチドのペプチド部分;GDF受容体;およびGDF受容体の関連するドメイン、例えばGDF結合ドメインから選択される、標的分子の仮想表示を提供する。標的分子の仮想表示は、コンピューターシステムのメモリに表示または維持することができる。プロセスは開始状態で始まり、仮想標的分子を含み、次に、一つまたはそれ以上の仮想試験分子を含むデータベースがコンピューターシステムのメモリに保存される状態に移動する。先に考察したように、メモリは、RAMまたは内部保存装置を含む如何なるタイプのメモリとなりうる。 次に、プロセスは、第一の仮想試験分子の仮想標的分子との特異的相互作用能が決定される状態に移行して、試験分子の集団の一つとなりうる仮想試験分子を含むデータベースが仮想標的分子および仮想試験分子の相互作用の解析のために開かれて、解析が行われる。特異的相互作用の決定は、コンピューターシステムに維持されたソフトウェアによって、またはコンピューターシステムのメモリに保存されて、必要に応じてアクセスすることができる既定の特異的相互作用と比較することによって行われた計算に基づいて行うことができる。 次に、プロセスは、特異的相互作用が検出される場合、仮想試験分子が表示される、またはコンピューター上の第二のデータベースに保存される状態に移行する。適当であれば、仮想標的分子および第二の仮想試験分子、第三の仮想試験分子、望ましければそれ以降に関してプロセスを繰り返す。 仮想試験分子が仮想標的分子と特異的に相互作用する決定がなされれば、同定された仮想試験分子をデータベースから移動させて、ユーザーに表示することができる。この状態は、表示された名称または構造を有する分子が、入力される束縛内で標的分子と特異的に相互作用することをユーザーに通知する。同定された試験分子の名称がユーザーに表示されれば、プロセスは決定状態に移動し、そこで、より多くの仮想試験分子がデータベースに存在するか、または調べなければならないかを決定する。これ以上の分子がデータベースに存在しない場合、プロセスは最終状態で停止する。しかし、より多くの試験分子がデータベースに存在する場合、プロセスは、特異的結合活性に関して調べることができるように、ポインターがデータベースにおける次の試験分子に移動する。このようにして、新しい分子を、仮想標的分子との特異的相互作用能に関して調べる。 上記のような方法は、請求の本発明に含まれる様々な局面において用いることができる。このように、方法は、ミオスタチンと特異的に相互作用して、ミオスタチンのその受容体との相互作用能を減少もしくは阻害する、またはそうでなければミオスタチンがシグナル伝達を行う能力に影響を及ぼすことができるプロミオスタチンプロドメインのペプチド部分を同定するために用いることができる。同様に、この方法を用いて、GDFプロドメインの作用を模倣して、それによってミオスタチンまたはGDF-11シグナル伝達を減少または阻害する有機低分子を同定することができる。方法はまた、GDF受容体、例えばAct RIIA、Act RIIBまたは他のGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定するために用いることができ、そのような作用物質は細胞におけるGDFシグナル伝達を調節することができるGDF受容体作用剤または拮抗剤として有用である。さらに、方法は、特定のポリペプチドの保存された構造的特徴を同定することによって、これまで不明のプロGDFポリペプチドまたはGDF受容体を同定する手段を提供する。 TGF-βスーパーファミリーの他のメンバーと同様に、活性なGDFペプチドは、前駆体ポリペプチドとして発現され、これが成熟した生物学的に活性な型に切断される。したがって、なおもう一つの態様において、プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片は、成熟GDFペプチド、または先に考察したように、機能的ペプチド部分がGDF作用剤または拮抗剤の活性を有しうる成熟GDFペプチドの機能的ペプチド部分である。蛋白質分解断片は、プロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸残基約268〜374位(図1を参照のこと;同様に、図2も参照のこと)が含まれる成熟C末端ミオスタチンペプチド、またはプロGDF-11ポリペプチドのアミノ酸残基約299〜407位が含まれる成熟C末端GDF-11ペプチドとなりうる。完全長の成熟ミオスタチンペプチドの例は、配列番号:4および配列番号:6に記載するようにアミノ酸残基約268〜375位;配列番号:2、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:8、配列番号:18、配列番号:14、配列番号:16、および配列番号:20に記載されるアミノ酸残基約267〜374位;ならびに配列番号:27のアミノ酸残基約49〜157位および配列番号:29のアミノ酸残基約28〜136位である。完全長の成熟GDF-11ペプチドの例は、配列番号:25のアミノ酸残基約299〜407位である。成熟GDFペプチドの機能的ペプチド部分の例は、成熟GDFペプチドの活性に関して作用剤または拮抗剤活性を有する成熟ミオスタチンまたは成熟GDF-11のペプチド部分である。好ましくは、成熟GDFペプチド活性は、その受容体との特異的相互作用能である。 本明細書に開示するように、成熟ミオスタチンペプチド(本明細書において一般的に「ミオスタチン」と呼ぶ)は、細胞表面上に発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用することによって、ミオスタチンシグナル伝達活性を誘導することができる(実施例7を参照のこと)。このように、ミオスタチンの機能的ペプチド部分は、本明細書に記載される、またはそうでなければ当技術分野で既知の方法を用いて成熟ミオスタチンペプチドのペプチド部分を調べて、ミオスタチン受容体、例えば細胞上に発現されるアクチビンIIA型受容体(Act RIIA)またはAct RIIB受容体と特異的に相互作用するミオスタチンの機能的ペプチド部分を同定することによって得ることができる(Act RIIA、Cell 65:973-982、1991;Act RIIB Cell 68:97-108、1992、これらはその全体が本明細書に参照として組み入れられる)。 ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチンシグナル伝達活性を減少または阻害することができる。一つの態様において、ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチンと特異的に相互作用して、それによってミオスタチンペプチドのその受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することができる。本明細書に開示するように、前駆体プロミオスタチンも同様に、ミオスタチン受容体との特異的相互作用能を欠損し、したがって、プロミオスタチンが成熟ミオスタチンに切断されることを減少または阻害するプロミオスタチンの変異は、ミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害する手段を提供する。したがって、もう一つの態様において、本発明は、活性な成熟GDFペプチドへの変異体プロGDFの蛋白質分解切断を破壊する一つまたはそれ以上のアミノ酸変異を含む変異体プロGDFポリペプチドを提供する。 本発明の変異体プロGDFポリペプチドは、プロGDFポリペプチドに存在するコンセンサス蛋白質分解切断認識部位Arg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)のような蛋白質分解切断部位の切断に影響を及ぼす変異を有しうる。このように、変異は、変異体プロミオスタチンが、例えばミオスタチンプロドメインおよび成熟ミオスタチンペプチドに切断されることができないように、配列番号:21のアルギニン残基の変異となりうる。しかし、変異はまた、蛋白質分解切断部位以外の部位となりえて、切断部位での蛋白質分解を行うためにプロテアーゼのプロGDFポリペプチド結合能を変化させることができる。本発明の変異体プロGDFポリペプチド、例えば変異体プロミオスタチンまたは変異体プロGDF-11は、ミオスタチンまたはGDF-11に関してドミナントネガティブ活性を有しうる、したがって、細胞におけるミオスタチンまたはGDF-11シグナル伝達を減少または阻害するために有用となりうる。 本発明はまた、先に説明したように、プロミオスタチンポリペプチドもしくは変異体プロミオスタチンのペプチド部分、またはプロGDF-11ポリペプチドもしく変異体プロGDF-11のペプチド部分をコードする実質的に精製されたポリヌクレオチドを提供する。下記により詳細に説明するように、本発明はまた、細胞に及ぼすミオスタチンの影響を調節するための作用物質として有用なポリヌクレオチドを提供し、GDF受容体またはその機能的ペプチド部分をコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。そのようなポリヌクレオチドの例を以下の開示に提供する。そのため、以下の開示は、本明細書に開示の本発明の様々な態様に関連していると認識すべきである。 「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において、ホスホジエステル結合によって互いに連結した二つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列を意味するために用いられる。そのため、「ポリヌクレオチド」という用語には、遺伝子またはその一部となりうるRNAおよびDNA、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸配列等が含まれ、一本鎖または二本鎖と共にDNA/RNAハイブリッドとなりうる。さらに、本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」という用語には、細胞から単離することができる天然に存在する核酸分子と共に、例えば、化学合成法またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような酵素的方法によって調製することができる合成分子が含まれる。様々な態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド類似体、ホスホジエステル結合以外の骨格結合(上記を参照)を含みうる。 一般的に、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、2'-デオキシリボースに結合したアデニン、シトシン、グアニン、もしくはチミンのような天然に存在するデオキシリボヌクレオチド、またはリボースに結合したアデニン、シトシン、グアニン、もしくはウラシルのようなリボヌクレオチドである。しかし、ポリヌクレオチドはまた、天然に存在しない合成ヌクレオチドまたは改変された天然に存在するヌクレオチドを含む、ヌクレオチド類似体を含みうる。そのようなヌクレオチド類似体は当技術分野で周知であり、そのようなヌクレオチド類似体を含むポリヌクレオチドと同様に市販されている(Linら、Nucl. Acids. Res. 22:5220〜5234(1994);Jellinekら、Biochemistry 34:11363〜11372(1995);Pagratisら、Nature Biotechnol. 15:68〜73(1997)、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。 ポリヌクレオチドのヌクレオチドを結合させる共有結合は、一般的にホスホジエステル結合である。しかし、共有結合はまた、チオジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ペプチド様結合または合成ポリヌクレオチドを産生するためにヌクレオチドを連結させるために有用であることが当業者に既知である他の如何なる結合も含む多数の他の如何なる結合ともなりうる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Tamら、Nucl. Acids. Res. 22:977〜986(1994);EckerとCrooke、BioTechnology 13:351360(1995)を参照のこと)。ヌクレオチドまたは類似体を結合させる天然に存在しないヌクレオチド類似体または結合を組み込むことは、改変されたポリヌクレオチドが分解を受けにくくなりうることから、ポリヌクレオチドが、例えば組織培養培地を含むヌクレオチド溶解活性を含みうる環境に曝露される場合、または生きている被験者に投与される場合には特に有用となりうる。 天然に存在するヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を含むポリヌクレオチドは、化学合成することができ、または適当なポリヌクレオチドを鋳型として用いて組換えDNA法を用いて産生することができる。比較すると、ヌクレオチド類似体またはホスホジエステル結合以外の共有結合を含むポリヌクレオチドは、一般的に化学合成されるが、T7ポリメラーゼのような酵素は特定のタイプのヌクレオチド類似体をポリヌクレオチドに組み込まれることができ、したがって、適当な鋳型から組換えによってそのようなポリヌクレオチドを産生するために用いることができる(Jellinekら、上記、1995)。 ポリヌクレオチドがペプチド、例えば、プロミオスタチンのペプチド部分、またはペプチド作用物質をコードする場合、コード配列は一般的に、ベクターに含まれ、望ましければ組織特異的プロモーターまたはエンハンサーを含む適当な調節エレメントに機能的に結合される。コードされたペプチドはさらに、例えば、His-6タグ等のようなペプチドタグに機能的に結合させることができ、これは標的細胞における作用物質の発現の同定を容易にすることができる。His-6のようなポリヒスチジンタグペプチドは、ニッケルイオン、コバルトイオン等のような二価陽イオンを用いて検出することができる。さらなるペプチドタグには、例えば、抗FLAG抗体を用いて検出することができるFLAGエピトープ(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、ホップ(Hopp)ら、BioTechnology 6:1204(1988);米国特許第5,011,912号を参照のこと);エピトープに対して特異的な抗体を用いて検出することができるc-mycエピトープ;ストレプトアビジンまたはアビジンを用いて検出することができるビオチン;およびグルタチオンを用いて検出することができるグルタチオン-S-トランスフェラーゼが含まれる。そのようなタグは、例えば、ミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解断片に対応する実質的に精製されたペプチドを得ることが望ましい場合には、それらが機能的に結合したペプチドまたはペプチド作用物質の単離を促進することができるというさらなる長所を提供することができる。 本明細書において用いられるように、「機能的に結合」または「機能的に会合」という用語は、二つまたはそれ以上の分子が、それらが単一の単位として作用して、一つもしくは双方の分子またはその組み合わせに帰因する機能を行うように、互いに関連して存在することを意味する。例えば、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、調節エレメントに機能的に結合することができ、この場合、調節エレメントは、それが細胞において通常会合するポリヌクレオチド配列に影響を及ぼす様式と類似のようにポリヌクレオチドにその調節作用を付与する。第一のポリヌクレオチドコード配列も同様に、機能的に結合したコード配列からキメラポリペプチドが発現されることができるように、第二(またはそれ以上)のコード配列に機能的に結合することができる。キメラポリペプチドは、融合ポリペプチドとなりえて、この場合、二つ(またはそれ以上)のコードされたポリペプチドは単一のポリペプチドに翻訳される、すなわちペプチド結合によって共有結合する;または翻訳されると、互いに機能的に会合して安定な複合体を形成しうる二つの別個のペプチドとして翻訳されうる。 キメラポリペプチドは、一般的にそのペプチド成分のそれぞれの特徴のいくつかまたは全てを示す。そのため、キメラポリペプチドは、本明細書において開示されるように、本発明の方法を実施するために特に有用となりうる。例えば、一つの態様において、本発明の方法は細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することができる。このように、キメラポリペプチドの一つのペプチド成分が細胞区画局在ドメインをコードして、第二のペプチド成分がドミナントネガティブSmadポリペプチドをコードする場合、機能的キメラポリペプチドは、細胞区画局在ドメインによって指定される細胞区画に移動して、Smadポリペプチドのドミナントネガティブ活性を示し、それによって、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することができる。 細胞区画ドメインは周知であり、これには例えば細胞質膜局在ドメイン、核局在シグナル、ミトコンドリア膜局在シグナル、小胞体局在シグナル等が含まれる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Hancockら、EMBO J. 10:4033〜4039、1991;Bussら、Mol. Cell. Biol. 8:3960〜3963、1988;米国特許第5,776,689号を参照のこと)。そのようなドメインは、作用物質を細胞における特定の区画にターゲティングする、または細胞から分泌させるために作用物質をターゲティングするために有用となりうる。例えば、Act RIIBのようなミオスタチン受容体のキナーゼドメインは、一般的に細胞質膜の内膜に会合する。このように、ドミナントネガティブミオスタチン受容体キナーゼドメイン、例えば、キナーゼ活性を欠損するドミナントネガティブAct RIIB受容体を含むキメラポリペプチドは、細胞質膜局在ドメインをさらに含み、それによって、ドミナントネガティブAct RIIBキナーゼドメインを内側の細胞質膜に局在させることができる。 本明細書に開示するように、プロGDFシグナルペプチドは、細胞局在活性を有する。本明細書において用いられるように、「細胞局在活性」という用語は、シグナルペプチドが、それに機能的に結合したペプチドを一つまたはそれ以上の特異的細胞内区画に転移させることを指示できること、または細胞から分子の分泌を指示できることを意味する。そのため、プロGDFシグナルペプチドは、実質的に同じシグナルペプチドを有する天然に発現されたGDFと同じ細胞内区画への、シグナルペプチドに機能的に結合したペプチドまたは他の作用物質の転移を指示するために特に有用となりうる。さらに、シグナルペプチド、例えばプロミオスタチンの最初のアミノ酸約15〜30個を含むプロミオスタチンシグナルペプチドは、シグナルペプチドを含む天然に存在するプロGDFと同じ経路を通して、細胞から機能的に結合した作用物質の分泌を指示することができる。このように、本発明の方法を実施するために特に有用な作用物質には、GDFシグナルペプチド、好ましくはプロミオスタチンまたはプロGDF-11シグナルペプチドに機能的に結合したGDFプロドメインまたはその機能的ペプチド部分が含まれる。 本発明の方法を行うために有用なポリヌクレオチド作用物質を含む本発明のポリヌクレオチドは、標的細胞と直接接触させることができる。例えば、細胞に入ってその機能を発揮するアンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質として有用なオリゴヌクレオチドを、標的細胞に直接接触させることができる。ポリヌクレオチド作用物質はまた、ポリペプチド、例えばミオスタチン受容体(またはミオスタチン)と特異的に相互作用して、それによってミオスタチンとその受容体と特異的相互作用能を変化させることができる。そのようなポリヌクレオチドは、そのようなポリヌクレオチドを作製および同定する方法と共に、本明細書に開示され、またはそうでなければ当技術分野で周知である(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、O□Connellら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5883〜5887、1996;TuerkとGold、Science 249:505〜510、1990;Goldら、Ann. Rev. Biochem. 64:763〜797、1995を参照のこと)。 プロミオスタチンのようなプロGDFポリペプチドのペプチド部分をコードしうる、変異体プロミオスタチンポリペプチドをコードしうる、GDF受容体もしくはその機能的ペプチド部分をコードすることができる、または本発明の方法を行うために有用なポリヌクレオチド作用物質となりうる本発明のポリヌクレオチドは、標的細胞へのポリヌクレオチドの導入を含むポリヌクレオチドの操作を促進することができるベクターに含まれうる。ベクターは、ポリヌクレオチドを維持するために有用であるクローニングベクターとなりえて、またはポリヌクレオチドの他にポリヌクレオチドを発現するために有用な、かつポリヌクレオチドがペプチドをコードする場合には、特定の細胞にコードされたペプチドを発現するために有用な調節エレメントを含む発現ベクターとなりうる。発現ベクターは、例えば、コードするポリヌクレオチドの持続的な転写を得るために必要な発現エレメントを含むことができ、または調節エレメントはベクターにクローニングされる前に、ポリヌクレオチドに機能的に結合することができる。 発現ベクター(またはポリヌクレオチド)は、一般的に、コードするポリヌクレオチドの構成的、または望ましければ誘導型、組織特異的もしくは発達段階特異的発現を提供しうるプロモーター配列、ポリ-A認識配列、およびリボソーム認識部位もしくは内部リボソーム流入部位、または組織特異的となりうるエンハンサーのようなその他の調節エレメントを含むまたはコードする。ベクターはまた、望ましければ原核または真核宿主系またはその双方における複製にとって必要なエレメントを含みうる。バクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキ森林熱ウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターのようなプラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれるそのようなベクターは、周知であり、販売元から購入することができる(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州;ストラタジーン社、ラホヤ、カリフォルニア州;ギブコ/BRL、ガイサースバーグ、メリーランド州)、または当業者によって構築することができる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Meth. Enzymol. 185巻、Goeddel編(アカデミック出版社、1990);Jolly、Canc. Gene Ther. 1:51〜64、1994;Flotte、J. Bioenerg. Biomemb. 25:37〜42、1993;Kirshenbaumら、J. Clin. Invest. 92:381〜387、1993を参照のこと)。 テトラサイクリン(tet)誘導型プロモーターは、本発明のポリヌクレオチド、例えばその中で蛋白質分解プロセシング部位が変位しているミオスタチンのドミナントネガティブ型をコードする、成熟ミオスタチンペプチドと複合体を形成することができるミオスタチンプロドメインをコードする、またはGDF受容体のドミナントネガティブ型をコードするポリヌクレオチドの発現を促進するために特に有用である。テトラサイクリン、またはテトラサイクリン類似体を、tet誘導型プロモーターに機能的に結合したポリヌクレオチドを含む被験者に投与すると、コードされたペプチドの発現が誘導され、それによってペプチドはその活性を行うことができ、それによってペプチド作用物質はミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害することができる。そのような方法は、例えば、成体生物において筋の肥大を誘導するために用いることができる。 ポリヌクレオチドはまた、コードされるペプチドの発現が個体における筋細胞、または培養、例えば臓器培養における細胞の混合集団における筋細胞に限定されるように、組織特異的調節エレメント、例えば筋細胞特異的調節エレメントに機能的に結合することができる。例えば、筋クレアチニンキナーゼプロモーター(Sternbergら、Mol. Cell Biol. 8:2896〜2909、1988、参照として本明細書に組み入れられる)およびミオシン軽鎖エンハンサー/プロモーター(Donoghueら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:5847〜5851、1991、参照として本明細書に組み入れられる)を含む筋細胞特異的調節エレメントは、当技術分野で周知である。 ウイルス発現ベクターは、細胞、特に被験者の細胞にポリヌクレオチドを導入するために特に有用となりうる。ウイルスベクターは、比較的高い効率で宿主細胞に感染できること、および特定の細胞タイプに感染できるという長所を提供する。例えば、ミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド部分をコードするポリヌクレオチドを、バキュロウイルスベクターにクローニングして、次にこれを用いて昆虫宿主細胞に感染させて、それによって大量のコードされるプロドメインを産生する手段を提供する。ウイルスベクターはまた、関係する生物の細胞、例えば哺乳類、鳥類、または魚類宿主細胞のような脊椎動物宿主細胞に感染するウイルスに由来しうる。ウイルスベクターは、本発明の方法を行うために有用なポリヌクレオチドを標的細胞に導入するために特に有用となりうる。ウイルスベクターは、特定の宿主系、特に哺乳類系において用いるために開発されており、これには例えば、レトロウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくベクターのような他のレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター等が含まれる(そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、MillerとRosman、BioTechniques 7:980〜990、1992;Andersonら、Nature 392:25〜30、補則、1998;VermaとSomia、Nature 389:239〜242、1997;Wilson、New Engl. J. Med. 334:1185〜1187(1996)を参照のこと)。 例えば、レトロウイルスを遺伝子移入のために用いる場合、複製コンピテントレトロウイルスは理論的に、レトロウイルスベクターを産生するために用いられるパッケージング細胞株におけるレトロウイルスベクターとウイルス遺伝子配列との組換えにより発達することができる。組換えによって複製コンピテントウイルスの産生が減少または消失しているパッケージング細胞株は、複製コンピテントレトロウイルスが産生される可能性を最小限にするために用いることができる。細胞を感染させるために用いられる全てのレトロウイルスベクター上清を、PCRおよび逆転写酵素アッセイ法のような標準的なアッセイ法によって複製コンピテントウイルスに関してスクリーニングする。レトロウイルスベクターによって、異種遺伝子を宿主細胞ゲノムに組み込むことが可能となり、これによって、細胞分裂後に遺伝子を娘細胞に伝えることができる。 ベクターに含まれうるポリヌクレオチドは、当技術分野で既知の多様な方法によって細胞に導入することができる(Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、コールドスプリングハーバー研究所出版、1989);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョンウィリーアンドサンズ、ボルチモア、メリーランド州(1987、1995年の補則、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。そのような方法には、例えば、トランスフェクション、リポフェクション、マイクロインジェクション、電気穿孔、およびウイルスベクターを用いる感染が含まれ;ならびに細胞へのポリヌクレオチドの導入を促進して、ポリヌクレオチドが細胞に導入される前に分解されないように保護することができるリポソーム、微小乳剤等を用いることが含まれうる。特定の方法の選択は、例えばポリヌクレオチドが導入される細胞と共に、細胞が培養において単離されているか、または組織もしくは臓器培養で存在するか、またはインサイチューで存在するかに依存するであろう。 ウイルスベクターによる感染によってポリヌクレオチドを細胞に導入することは、それがエクスビボまたはインビボで核酸分子を細胞に効率よく導入することができることから特に有用である(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,399,346号を参照のこと)。その上、ウイルスは非常に特殊化されており、一つまたは少数の特異的細胞タイプにおける感染および増殖能に基づくベクターとして選択することができる。このように、その天然の特異性を用いて、ベクターに含まれる核酸分子を様々な細胞タイプにターゲティングすることができる。そのため、HIVに基づくベクターを用いて、T細胞を感染させることができ、アデノウイルスに基づくベクターを用いて、例えば呼吸器上皮細胞を感染させることができ、ヘルペスウイルスに基づくベクターを用いて、神経細胞等を感染させることができる。アデノ随伴ウイルスのようなその他のベクターは、より広い宿主範囲を有し、したがって、様々な細胞タイプに感染させるために用いることができるが、ウイルスまたは非ウイルスベクターも同様に、特異的受容体またはリガンドによって改変して、受容体媒介事象を通して標的特異性を変化させることができる。 本発明はまた、プロミオスタチンポリペプチドまたは変異体プロミオスタチンポリペプチドのペプチド部分に特異的に結合する抗体も提供する。本発明の特に有用な抗体には、ミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド断片に特異的に結合する抗体、およびプロミオスタチンポリペプチドに結合して、プロミオスタチンの成熟ミオスタチンペプチドへの蛋白質分解切断を減少または阻害する抗体が含まれる。さらに、本発明の抗体は、下記に示すように、GDF受容体またはその機能的ペプチド部分に特異的に結合する抗体となりうる。本発明の抗体を調製および単離する方法は下記により詳しく記載し、その開示は参照として本明細書に組み入れられる。 ミオスタチンは、骨格筋全体の適切な調節にとって必須である。野生型のマウスと比較すると、ミオスタチンを欠損するミオスタチンノックアウトマウスは、過形成と肥大の複合により筋の量が2〜3倍増加している。本明細書に開示するように、ミオスタチンノックアウトマウスはまた、少なくとも部分的に全身の骨格筋組織の同化状態の増加により、脂肪の蓄積が劇的に減少している。逆に、ヌードマウスにミオスタチンを過剰発現させると、癌またはAIDSのような慢性疾患を有するヒト患者において認められるカヘキシア状態と類似の消耗性症候群を誘導した。本明細書にさらに開示するように、ミオスタチン活性は、Smadシグナル伝達経路の特徴を有するシグナル伝達を通して媒介されうる。したがって、本発明は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を細胞に接触させることによって、細胞に及ぼすミオスタチンの作用を調節する方法を提供する。 本明細書において用いられるように、細胞に及ぼすミオスタチンの作用に関連して用いられる「調節する」という用語は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達が増加または減少もしくは阻害されていることを意味する。「増加」および「減少もしくは阻害」という用語は、ミオスタチンの非存在下でのシグナル伝達経路の活性レベル、またはミオスタチンの存在下での正常細胞における活性レベルとなりうるミオスタチンシグナル伝達活性の基準値レベルと比較して用いられる。例えば、ミオスタチンシグナル伝達経路は、ミオスタチンと接触させた筋細胞において特定の活性を示し、筋細胞をミオスタチンプロドメインにさらに接触させると、ミオスタチンシグナル伝達活性は減少または阻害されうる。そのため、ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために有用な作用物質である。同様に、GDF-11プロドメインのようなもう一つのGDFファミリーメンバーのプロドメイン、またはアクチビンプロドメイン、MISプロドメイン等のような他のTGF-βファミリーメンバーのプロドメインは、ミオスタチンシグナル伝達を減少させるために有用となりうる。「減少または阻害」という用語は、それらが場合によって、ミオスタチンシグナル伝達のレベルを特定のアッセイ法によって検出されうるレベル以下に減少させうることが認識されているために、本明細書において共に用いられる。そのため、そのようなアッセイ法を用いて、ミオスタチンシグナル伝達の低レベルが阻害されたままであるか、またはシグナル伝達が完全に阻害されるか否かを決定することはできない。 本明細書において用いられるように、「ミオスタチンシグナル伝達」という用語は、細胞表面上に発現されたミオスタチン受容体とミオスタチンとの特異的相互作用により細胞に起こる一連の事象、一般的に一連の蛋白質-蛋白質相互作用を意味する。そのため、ミオスタチンシグナル伝達は、例えば、ミオスタチンと細胞上のその受容体との特異的相互作用を検出することによって、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達経路に関係する一つもしくはそれ以上のポリペプチドの燐酸化を検出することによって、ミオスタチンシグナル伝達によって特異的に誘導される一つもしくはそれ以上の遺伝子の発現を検出することによって、またはミオスタチンシグナル伝達に反応して起こる表現型の変化を検出することによって検出することができる(実施例を参照のこと)。本明細書において開示するように、本発明の方法において有用な作用物質は、ミオスタチンシグナル伝達を刺激するための作用剤として、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害するための拮抗剤として作用しうる。 本発明の方法の例は、本明細書において一般的にミオスタチンに関連して示される。しかし、本発明の方法は、細胞におけるGDFによるシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質に細胞を接触させることによって、他のGDFペプチド、例えば、GDF-11が細胞に及ぼす作用を調節することをより広く含みうると認識すべきである。本発明の完全な範囲を実践する方法は、本開示を読むことによって容易に理解され、本発明には例えばGDF受容体を同定する方法、GDFとその受容体との特異的相互作用によるシグナル伝達を調節する作用物質を同定する方法等が含まれる。 ミオスタチンシグナル伝達経路の例は、本明細書において、Smad経路であり、これは、ミオスタチンがアクチビンII型受容体の細胞外ドメインと特異的に相互作用すると開始され、細胞においてSmad蛋白質を含む細胞内ポリペプチドの相互作用を通して伝達される。一般的に、ミオスタチンシグナル伝達は、Smadポリペプチドのような特異的細胞内ポリペプチドの燐酸化または脱燐酸化に関連している。このように、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達は、ミオスタチンの非存在下でのポリペプチドの燐酸化レベルと比較して、ミオスタチンの存在下で一つまたはそれ以上のSmadポリペプチドの燐酸化レベルの増加を検出することによって検出することができる。本発明の方法は、ミオスタチンシグナル伝達を増加または減少させる手段を提供し、したがって、ミオスタチンシグナル伝達経路に関与するSmadポリペプチドの燐酸化レベルは、正常レベル以上に増加するか、またはミオスタチンの存在下で予想されるレベル未満に減少するであろう。 本発明の方法は、例えば、適した条件で標的細胞と、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質とを接触させることによって行うことができる。適した条件は、単離された細胞となりうるまたは組織もしくは臓器の成分となりうる細胞を、適当な培養培地に入れること、または細胞をインサイチューで生物に接触させることによって提供されうる。例えば、細胞を含む培地を、ミオスタチンの細胞上に発現されるミオスタチン受容体との特異的相互作用能に影響を及ぼす作用物質、または細胞におけるミオスタチンシグナル伝達経路に影響を及ぼす作用物質に接触させることができる。一般的に、細胞は被験者における組織または臓器の成分であり、いずれにせよ、細胞を接触させることは被験者に作用物質を投与することを含む。しかし、細胞はまた、培養において操作して、次に培養において維持して、被験者に投与する、またはヒト以外のトランスジェニック動物を作製するために用いることができる。 本発明の方法において有用な物質は、如何なるタイプの分子、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、ペプチド模倣体、ビニル様(vinylogous)ペプトイド、有機低分子等となりえて、ミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす様々な如何なる方法でも作用しうる。作用物質は、ミオスタチンまたはアクチビン受容体のようなミオスタチン受容体に結合して、それによってミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を変化させることによって細胞外で作用することができる、または細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を変化させるように細胞内で作用することができる。さらに、作用物質は、細胞に及ぼすミオスタチンの作用、例えばミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を模倣または増強して、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加させる作用剤となりうる;または細胞に及ぼすミオスタチンの作用を減少もしくは阻害して、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害する拮抗剤となりうる。 本明細書において用いられるように、「特異的相互作用」または「特異的に結合する」等の用語は、二つの分子が生理的条件で比較的安定である複合体を形成することを意味する。この用語は本明細書において、例えば、ミオスタチンとミオスタチン受容体との相互作用、ミオスタチンシグナル伝達経路の細胞内成分の相互作用、抗体とその抗原との相互作用、およびミオスタチンプロドメインとミオスタチンとの相互作用を含む様々な相互作用を意味するために用いられる。特異的相互作用は、解離定数が少なくとも約1×10-6 M、一般的に少なくとも約1×10-7 M、通常少なくとも約1×10-8 M、特に少なくとも約1×10-9 Mまたは1×10-10 Mまたはそれ以上である特徴を有しうる。特異的相互作用は一般的に、例えば、ヒトまたは他の脊椎動物もしくは無脊椎動物のような生きている個体に起こる状態と共に、哺乳類細胞または他の脊椎生物もしくは無脊椎生物からの細胞を維持するために用いられるような細胞培養において起こる条件を含む生理的条件で安定である。さらに、ミオスタチンプロドメインとミオスタチンとの細胞外相互作用のような特異的相互作用は、商業的に価値がある海洋生物の養殖のために用いられるような条件で一般的に安定である。二つの分子が特異的に相互作用するか否かを決定する方法は周知であり、これには例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴等が含まれる。 ミオスタチンとその受容体との特異的相互作用を変化させる作用物質は、例えば、その細胞受容体と特異的に相互作用できないようにミオスタチンに結合することによって、その受容体との結合に関してミオスタチンと競合することによって、またはそうでなければ、ミオスタチンシグナル伝達を誘導するためにミオスタチンがその受容体と特異的に相互作用する必要条件を迂回することによって作用しうる。ミオスタチン受容体の可溶性の細胞外ドメインのような切断型ミオスタチン受容体は、ミオスタチンに結合して、それによってミオスタチンを分離して、その細胞表面ミオスタチン受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することができる作用物質の例である。ミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド部分は、ミオスタチンに結合して、それによってミオスタチンの細胞表面ミオスタチン受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することができる作用物質のもう一つの例である。そのようなミオスタチン拮抗剤は、本発明の方法を実践するために、特に細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために有用である。 フォリスタチンは、ミオスタチンに結合して、それによってミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することができる作用物質のもう一つの例である。フォリスタチンは、ミオスタチン(GDF-8;米国特許第6,004,937号)およびGDF-11(Gamerら、Devel. Biol. 208:222〜232、1999)を含む様々なTGF-βファミリーメンバーに結合してその活性を阻害することができ、したがって開示される方法を行うために用いることができる。ミオスタチンの作用を調節するためにフォリスタチンを用いることはこれまでに記述されているが(米国特許第6,004,937号)、フォリスタチンが、ミオスタチンのAct RIIBのようなミオスタチン受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することは、本発明の開示以前に知られていなかった。 本発明の方法において有用な作用物質はまた、細胞ミオスタチン受容体と相互作用して、それによって受容体に関してミオスタチンと競合することができる。そのような作用物質は、例えば、ミオスタチン結合ドメインの全てまたは一部を含む細胞表面ミオスタチン受容体に特異的に結合して、それによってミオスタチンが受容体と特異的に相互作用できないようにする抗体となりうる。そのような抗ミオスタチン受容体抗体は、ミオスタチンシグナル伝達を活性化せずに受容体に特異的に結合できることに関して選択することができ、それによってミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するためのミオスタチン拮抗剤として有用となりうる;または受容体に特異的に結合してミオスタチンシグナル伝達を活性化できることに関して選択して、このようにミオスタチン作用剤として作用することができる。抗体は、ミオスタチン受容体もしくは受容体の細胞外ドメインを免疫原として用いて作製することができ、または抗ミオスタチン抗体に対して作製され、ミオスタチンを模倣する抗イディオタイプ抗体となりうる。抗GDF受容体抗体は、下記により詳細に考察する。 本発明の方法において有用な作用物質はまた、プロGDFポリペプチドの活性な成熟GDFペプチドへの蛋白質分解切断を減少または阻害して、それによってGDFシグナル伝達を減少または阻害する作用物質となりうる。そのような作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、特にArg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解認識部位を認識して切断するプロテアーゼの活性を阻害する作用物質となりうる。プロGDFがプロミオスタチンである場合、ミオスタチンにおけるArg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解認識部位に対するプロテアーゼの特異的結合を減少または阻害する抗ミオスタチン抗体を同様に用いて、プロミオスタチンの蛋白質分解を減少または阻害して、それによって産生された成熟ミオスタチンの量を減少させることができる。そのような抗体は、蛋白質分解切断部位に結合することができ、またはプロテアーゼの結合およびプロテアーゼによる切断が減少するもしくは阻害されるように、プロGDFポリペプチド上の他のいくつかの部位に結合することができる。 さらに、本発明の方法において有用な作用物質は、例えばミオスタチン結合に反応したミオスタチンシグナル伝達活性を欠損する、または構成的ミオスタチンシグナル伝達活性を有する変異体ミオスタチン受容体となりうる。例えば、変異体ミオスタチン受容体は、受容体がキナーゼ活性を欠損するように、そのキナーゼドメインに点突然変異、欠失等を有しうる。そのようなドミナントネガティブ変異体ミオスタチン受容体は、ミオスタチンに特異的に結合することができるという事実にもかかわらず、ミオスタチンシグナル伝達の伝幡能を欠損する。 本発明の方法において有用な作用物質はまた、ミオスタチンシグナル伝達経路に関係する細胞内ポリペプチドのレベルまたは活性を調節することができる。本明細書に開示するように、ミオスタチンによる筋増殖の調節は、アクチビンII型受容体によって活性化されるシグナル伝達経路の成分を含みうる(実施例7および9を参照のこと;同様に実施例14も参照のこと)。ミオスタチンは、培養COS細胞において発現されたアクチビンIIB型受容体(Act RIIB)と特異的に相互作用する(実施例7)。結合の親和性が低いことは、インビボでのAct RIIBに対するミオスタチンの結合が、I型受容体も同様に存在する場合にはII型受容体に対する親和性も有意に高いTGF-β(Attisanoら、Cell 75:671〜680、1993)またはシグナル伝達受容体にリガンドを提示するために他の分子を必要とする他の系(Massague、上記、1998;Wangら、Cell 67:795〜805、1991)と類似の他の要因を含む可能性があることを示している。 Act RIIBとミオスタチンの特異的相互作用は、ミオスタチンシグナル伝達がSmadシグナル伝達経路の成分を含みうることを示している。このように、Smadシグナル伝達経路は、細胞に及ぼすミオスタチンの効果を調節するための標的を提供し、Smad経路に影響を及ぼす作用物質は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するために有用となりうる。 GDFシグナル伝達の細胞内ポリペプチド成分のレベルまたは活性を調節するために有用な作用物質には、シグナル伝達活性を増加させることができる作用剤、およびシグナル伝達活性を減少または阻害することができる拮抗剤が含まれる。ミオスタチンに関して、例えば、ミオスタチンシグナル伝達活性を増加することができる作用物質の例は、Smadポリペプチドの脱燐酸化を減少または阻害して、それによってSmadのシグナル伝達活性を延長させることができるホスファターゼ阻害剤である。ミオスタチンシグナル伝達に及ぼすSmad6およびSmad7の阻害作用を打ち消すことができるドミナントネガティブSmad6またはSmad7ポリペプチドは、Smadシグナル伝達を増加させることによってミオスタチンシグナル伝達活性を増加することができる作用物質のさらなる例である。 ミオスタチンシグナル伝達活性を減少または阻害することができる拮抗剤作用物質の例は、C末端の燐酸化部位が変異しているドミナントネガティブSmad2、Smad3、またはSmad4のようなドミナントネガティブSmadポリペプチドである。Smad2およびSmad3の活性化を阻害するSmad6およびSmad7のような阻害性のSmadポリペプチド、およびSmadポリペプチドに結合してシグナル伝達を阻害するc-skiポリペプチドは、Smadシグナル伝達を減少させることによってミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために有用な拮抗剤のさらなる例である。 細胞内で作用する作用物質がペプチドである場合、これは細胞に直接接触させることができ、またはペプチド(またはポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入して、ペプチドを細胞において発現させることができる。本発明の方法において有用なペプチドのいくつかは比較的大きく、したがって、細胞膜を容易に通過しない可能性があると認識される。しかし、ペプチドを細胞に導入するために様々な方法が知られている。そのようなペプチドを細胞に導入する方法の選択は、部分的に、ポリペプチドを提供すべき標的細胞の特徴に依存するであろう。例えば、標的細胞、または標的細胞を含むいくつかの細胞タイプが、特定のリガンドに結合すると細胞内にインターナライズされる受容体を発現する場合、ペプチド作用物質は、リガンドと機能的に会合することができる。受容体に結合すると、ペプチドは、受容体媒介エンドサイトーシスによって細胞内に移動する。ペプチド作用物質はまた、リポソームに封入する、または脂質複合体に製剤化することができ、これはペプチドの細胞内への流入を促進することができ、上記のようにさらに受容体(またはリガンド)を発現するように改変することができる。ペプチド作用物質はまた、ペプチドの細胞内への転位を促進するヒト免疫不全ウイルスTAT蛋白質形質導入ドメインのような蛋白質形質導入ドメインを含むようにペプチドを操作することによっても、細胞に導入することができる(参照として本明細書に組み入れられる、Schwarzeら、Science 285:1569〜1572(1999)を参照のこと;同様に、Derossiら、J. Biol. Chem. 271:18188(1996)も参照のこと)。 標的細胞はまた、細胞において発現されることができるペプチド作用物質をコードするポリヌクレオチドに接触させることができる。発現されたペプチド作用物質は変異体GDF受容体またはそのペプチド部分となりうる。変異体GDF受容体の例には、リガンド(例えば、ミオスタチン)に特異的に結合する能力を有しうるが必ずしもその必要はないドミナントネガティブAct RIIAまたはAct RIIBのようなミオスタチン受容体のキナーゼ欠損型;ミオスタチンに結合してそれが細胞のミオスタチン受容体と特異的に相互作用できないように隔離するミオスタチン受容体の可溶性型のような切断型ミオスタチンまたは他のGDF受容体;C末端燐酸化部位が変異しているドミナントネガティブSmad3のようなSmadポリペプチドのドミナントネガティブ型(Liuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:10669〜10674、1997);Smad2およびSmad3の活性化を阻害するSmad7ポリペプチド(Heldinら、Nature 390:465〜471、1997);またはSmadポリペプチドに結合して、Smadによるシグナル伝達を阻害することができるc-skiポリペプチド(Sutraveら、Genes Devel. 4:1462〜1472、1990)が含まれる。 細胞におけるc-skiペプチド作用物質の発現は、ミオスタチンシグナル伝達を調節するために特に有用となりうる。c-skiを欠損するマウスは、骨格筋量の重度の減少を示す(Berkら、Genes Devel. 11:2029〜2039、1997)のに対し、筋にc-skiを過剰発現するトランスジェニックマウスは、劇的な筋の肥大を示す(Sutraveら、上記、1990)。c-skiは、TGF-βおよびアクチビンII型受容体のシグナル伝達を媒介するSmad2、Smad3およびSmad4を含む特定のSmad蛋白質と相互作用してその活性を阻害する(Luoら、Genes Devel. 13:2196〜1106、1999;Stroscheinら、Science 286:771〜774、1999;Sunら、Mol. Cell 4:499〜509、1999a;Sunら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:112442〜12447、1999b;Akiyoshiら、J. Biol. Chem. 274:35269、1999)。このように、ミオスタチン活性がAct RIIB結合を通して媒介されうる本発明の開示を通して、ミオスタチンの活性またはSmad経路を利用する如何なるGDFの活性も、標的細胞におけるc-ski発現を増加または減少させることによって調節することができると認識されるであろう。 本発明の方法において有用な作用物質は、上記のように細胞と接触する、または導入することができるポリヌクレオチドとなりうる。一般的に、しかし必ずしもその必要はないが、ポリヌクレオチドはそれが直接、または転写もしくは翻訳もしくはその双方の後にその機能を発揮する細胞に導入される。例えば、上記のように、ポリヌクレオチドは、細胞において発現され、ミオスタチン活性を調節するペプチド作用物質をコードすることができる。そのような発現されたペプチドは、例えば、活性なミオスタチンに切断することができない変異体プロミオスタチンポリペプチド;または変異体ミオスタチン受容体、例えば、切断型ミオスタチン受容体細胞外ドメイン;膜結合ドメインに機能的に会合するミオスタチン受容体細胞外ドメイン;または蛋白質キナーゼ活性を欠損する変異体ミオスタチン受容体となりうる。ポリペプチドを細胞に導入する方法は、下記に示され、またはそうでなければ当技術分野で既知である。 本発明の方法において有用なポリヌクレオチドはまた、アンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質となりうる、またはコードしうる。例えば、ポリヌクレオチドは、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加させる作用剤として作用しうるアンチセンスc-skiヌクレオチド配列のようなアンチセンスヌクレオチド配列;または特定のSmadアンチセンスヌクレオチド配列に応じて、ミオスタチンシグナル伝達を増加させる作用剤として作用するか、もしくはミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害する拮抗剤として作用しうるアンチセンスSmadヌクレオチド配列となりうる(またはコードしうる)。そのようなポリヌクレオチドは、標的細胞に直接接触させることができ、細胞に取り込まれるとそのアンチセンス、リボザイム、または三重らせん形成活性を発揮しうる;または細胞に導入されて、ポリヌクレオチドが発現されると、例えばアンチセンスRNA分子またはリボザイムを産生して、それがその活性を発揮するポリヌクレオチドによってコードされうる。 アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、または三重らせん形成物質は、DNA配列またはRNA配列、例えばメッセンジャーRNAとなりうる標的配列、コード配列、イントロン-エキソン接合部位を含むヌクレオチド配列、シャイン-ダルガルノ配列のような調節配列等となりうる標的配列と相補的である。相補性の程度は、ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンスポリヌクレオチドが細胞における標的配列と特異的に相互作用することができる程度である。アンチセンスまたは他のポリヌクレオチドの全長に応じて、その標的配列に関するポリヌクレオチドの特異性を失うことなく、標的配列に関して一つまたは数個のミスマッチが容認されうる。このように、例えば、20ヌクレオチドからなるアンチセンス分子では、容認されるのはあったとしても少数のミスマッチであるのに対し、例えば、細胞ポリペプチドをコードする標的mRNAの完全長に対して相補的なアンチセンス分子のハイブリダイゼーション効率には、数個のミスマッチが影響を及ぼさないであろう。認容されうるミスマッチの数は、例えば、ハイブリダイゼーション動態を決定するために周知の式を用いて推定することができ(Sambrookら、上記、1989を参照のこと)、または本明細書に開示の、もしくはそうでなければ当技術分野で既知の方法を用いて、特に、細胞にアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、または三重らせん形成物質が存在することによって、標的配列のレベルまたは細胞における標的配列によってコードされるポリペプチドの発現が減少することを決定することによって、経験的に決定することができる。 アンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質として有用なポリヌクレオチドは、翻訳を阻害、または核酸分子を切断して、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することができる。例えば、アンチセンス分子は、mRNAに結合して細胞において翻訳できない二本鎖分子を形成することができる。少なくとも約15〜25ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、それらが容易に合成され、標的配列と特異的にハイブリダイズすることができることから、それらが好ましいが、標的細胞に導入したポリヌクレオチドからより長いアンチセンス分子を発現することも可能である。アンチセンス分子として有用な特異的ヌクレオチド配列は、周知の方法、例えば遺伝子歩行法(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Seimiyaら、J. Biol. Chem. 272:4631〜4636(1997)を参照のこと)を用いて同定することができる。アンチセンス分子を標的細胞に直接接触させる場合、これは、鉄結合EDTAのような化学反応基と機能的に会合することができ、これは、ハイブリダイゼーション部位で標的RNAを切断する。これに対して、三重らせん形成物質は、転写を停止させることができる(Maherら、Antisense Res. Devel. 1:227(1991);Helene、Anticancer Drug Design 6:569(1991))。このように、三重らせん形成物質は、例えば、Smad遺伝子調節エレメントの配列を認識して、それによって細胞におけるSmadポリペプチドの発現を減少または阻害して、それによって標的細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するように設計することができる。 本発明はまた、ミオスタチンのようなGDFの細胞に及ぼす作用を変化させうる作用物質、特にGDFのその細胞受容体との特異的相互作用能を変化させうる作用物質を同定する方法を提供する。そのような作用物質はGDFのその受容体との特異的相互作用能を増加または減少させることによって作用することができ、したがってGDFシグナル伝達をそれぞれ増加または減少させるために有用である。本発明のスクリーニング方法の例は、ミオスタチン受容体、例えばAct RIIAまたはAct RIIBのようなアクチビンII型受容体を用いて本明細書に示される。 本発明のスクリーニング方法は、例えば、ミオスタチンまたはその機能的ペプチド部分、Act RIIAまたはAct RIIBのようなミオスタチン受容体と、調べる作用物質とを、適した条件で接触させることによって実施することができる。ミオスタチン、受容体および作用物質は、所望の如何なる順序で接触させることもできる。そのため、スクリーニング方法を用いて、そのような作用物質が作用剤または拮抗剤活性を有する、受容体に対するミオスタチンの結合を競合的または非競合的に阻害することができる物質、受容体に対するミオスタチンの結合を媒介または増強することができる作用物質、特異的に結合したミオスタチンの受容体からの解離を誘導することができる作用物質、およびそうでなければミオスタチンのシグナル伝達誘導能に影響を及ぼす作用物質を同定することができる。作用物質の作用がミオスタチンまたは他のGDF受容体に特異的であることを確認するために適当な対照反応を行う。 本発明のスクリーニング方法を行うための適した条件は、本明細書に開示の方法(実施例7および9を参照のこと)、またはそうでなければ当技術分野で既知の方法を含む、ミオスタチンをその受容体と特異的に相互作用させる如何なる条件ともなりうる。このように、スクリーニングアッセイ法を行うための適した条件は、例えば実質的に精製されたミオスタチン受容体を用いるインビトロ条件;通常ミオスタチン受容体を発現する細胞、例えば脂肪細胞もしくは筋細胞、またはその表面に機能的ミオスタチン受容体を発現するように遺伝子改変されている細胞を利用する細胞培養条件;または臓器において起こるインサイチュー条件となりうる。 本発明のスクリーニング方法はまた、上記の分子モデリング法を用いても行うことができる。分子モデリング法を利用することは、GDF受容体と特異的に相互作用する可能性が最も高い、可能性がある作用物質の組み合わせライブラリのような大きい集団においてそれらの作用物質を同定するための簡便で費用効果の高い手段を提供し、それによって生物アッセイ法を用いてスクリーニングする必要がある可能性がある作用物質の数が減少する。Act RIIBのようなGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質が同定されると、選択された作用物質は、本明細書に開示の方法を用いて、細胞に及ぼすミオスタチンのようなGDFの作用の調節能に関して調べることができる。 試験物質のミオスタチンの作用の調節能は、本明細書に開示の方法(実施例7および9を参照のこと)を用いて、またはそうでなければ当技術分野で既知の方法を用いて検出することができる。「試験作用物質」または「試験分子」という用語は、本明細書において本発明の方法における作用剤または拮抗剤活性に関して調べられる如何なる作用物質も意味するように広い意味で用いられる。方法は一般的に、本明細書に記載の作用剤または拮抗剤作用物質として作用しうる未知分子を同定するためのスクリーニングアッセイ法として用いられるが、方法はまた、実際に特定の活性を有することが知られている作用物質が、例えば、作用物質の活性を標準化するための活性を有することを確認するために用いることができる。 本発明の方法は、例えば、Act RIIB受容体を発現するように遺伝子改変されている細胞にミオスタチンを接触させること、およびミオスタチンシグナル伝達経路に関係するSmadポリペプチドの燐酸化を調べることによって、作用物質、例えばドミナントネガティブAct RIIBの作用を決定することによって行うことができる。望ましければ、細胞は、その発現がミオスタチンシグナル伝達経路に依存する、例えばSmad経路の活性化に依存するレポーターヌクレオチド配列を含むようにさらに遺伝子改変することができ、試験作用物質の作用は、作用物質、ミオスタチン、またはその双方の存在下および非存在下でレポーターヌクレオチド配列の発現を比較することによって決定することができる。レポーターヌクレオチド配列の発現は、例えばレポーターヌクレオチド配列のRNA転写物を検出することによって、またはレポーターヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを検出することによって検出することができる。ポリペプチドレポーターは、例えば、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシン-Bホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼポリペプチド等となることができ、例えば、レポーターポリペプチドによる放射活性、発光、化学発光、蛍光、酵素活性、または特異的結合を検出することによって検出することができる。 本発明のスクリーニング方法は、高処理能解析に適合させることができる長所を有し、したがって、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させうる作用物質を含む、細胞に及ぼすミオスタチンの作用を調節することができる作用物質を同定するために、試験作用物質の組み合わせライブラリをスクリーニングするために用いることができる。所望の活性に関して調べることができる分子の組み合わせライブラリを調製する方法は、当技術分野で周知であり、これには例えば、拘束されたペプチドとなりうるペプチドのファージディスプレイライブラリ(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,622,699号;米国特許第5,206,347号;ScottとSmith、Science 249:386〜390、1992;Marklandら、Gene 109:13〜19、1991を参照のこと);ペプチドライブラリ(米国特許第5,264,563号、参照として本明細書に組み入れられる);ペプチド模倣体ライブラリ(Blondelleら、Trends Anal. Chem. 14:83〜92、1995);核酸ライブラリ(O□Connellら、上記、1996;TuerkとGold、上記、1990;Goldら、上記、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる);オリゴ糖ライブラリ(Yorkら、Carb. Res. 285:99〜128、1996;Liangら、Science 274:1520〜1522、1996;Dingら、Adv. Expt. Med. Biol. 376:261〜269、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる);リポ蛋白質ライブラリ(de Kruifら、FEBS Lett. 399:232〜236、1996、参照として本明細書に組み入れられる);糖蛋白質または糖脂質ライブラリ(Karaogluら、J. Cell Biol. 130:567〜577、1995、参照として本明細書に組み入れられる);または例えば薬剤もしくは他の医薬品を含む化学ライブラリ(Gordonら、J. Med. Chem. 37:1385〜1401、1994;EckerとCrooke、Bio/Technology 13:351〜360、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)を作製する方法が含まれる。ポリヌクレオチドは、細胞ポリヌクレオチドを含む細胞標的に対して結合特異性を有する核酸分子は、天然に存在するため、およびそのような特異性を有する合成分子は容易に調製および合成することができるために(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,750,342号を参照のこと)、ミオスタチンとその受容体との特異的相互作用を調節することができる作用物質として特に有用となりうる。 本発明の開示を考慮すると、様々な動物モデル系が本発明の方法を実践するために有用な作用物質を同定するための研究ツールとして用いることができると認識される。例えば、トランスジェニックマウスまたは他の実験動物は、本明細書に開示の様々なミオスタチン阻害剤構築物を用いて調製することができ、ヒト以外のトランスジェニック生物は、生物における特定の作用物質の様々なレベルを発現することによって生じた作用を直接決定するために調べることができる。さらに、トランスジェニック生物、例えば、トランスジェニックマウスは、他のマウス、例えば、ob/ob、db/db、または野鼠色の致死的な黄色の変異体マウスと交配させて、肥満、II型糖尿病等のような障害を治療または予防するために有用なミオスタチン阻害剤の最適な発現レベルを決定することができる。そのため、本発明は、ヒト以外の生物、特にミオスタチンシグナルペプチドを含みうるミオスタチンプロドメインをコードするポリヌクレオチド、プロペプチド(実施例を参照のこと)、または変異体プロミオスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むトランスジェニック生物を提供する。さらに、本発明は、高レベルのフォリスタチンを発現する、またはドミナントネガティブAct IIB受容体を発現するヒト以外のトランスジェニック生物を提供する(実施例を参照のこと)。そのような生物は、ミオスタチンノックアウトマウスにおいて認められたものと類似の筋重量の劇的な増加を示す(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,994,618号を参照のこと)。本明細書において考察したように、そのような動物モデルは、治療目的および農業での応用のために筋増殖を強化する物質を同定するために重要である。ヒト以外のトランスジェニック動物を作製する方法は当技術分野で既知である(例えば、その全てが参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,140,552号;第5,998,698号;第6,218,596号を参照のこと)。 本発明のミオスタチンポリヌクレオチドは、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヒト、ニワトリ、ヒツジ、七面鳥、魚および他の水生生物、ならびに他の種を含む如何なる生物にも由来する。そのようなポリヌクレオチドは、本明細書に記載するトランスジェニック動物を作製するために用いることができる。トランスジェニック体を作製することができる(かつミオスタチンポリヌクレオチドがそれに由来しうる)水生動物の例には、サケ、マス、チャー、アユ、コイ、ヨーロッパフナ、キンギョ、ウグイ、シラス、ウナギ、アナゴ、コイワシ、ゼブラフィッシュ、トビウオ、ハタ科の魚、タイ科の魚、パロットバス、フエダイ、サバ、クロマグロ、マグロ、ハガツオ、黄色の尾をもつ魚、岩間の魚、フルーク、ソール、ヒラメ、フグ、モンガラカワハギのような魚類に属する動物;ヤリイカ、コウイカ、タコのような頭足類に属する動物;ハマグリ(例えば、ハードシェル、ホンビノスガイ、マニラ、ホンビノスガイ、サーフ、ソフトシェル)のような二枚貝類に属する動物;コックル、イガイ、タマキビガイ;ホタテ貝(例えば、海、湾、カルー(calloo)ホタテ貝);ホラガイ、マキガイ、ナマコ;アークシェル;カキ(例えば、C. virginica、湾、ニュージーランド、太平洋カキ);リュウテンサザエ科の貝、アワビ(例えば、緑、ピンク、赤アワビ)のような腹足類に属する動物;ならびにイセエビ(Spiny)、ロックロブスター(Rock)、およびアメリカンロブスターを含むがこれらに限定されないロブスター;クルマエビ(prawn);M. ローゼンベルギイ(M. rosenbergii)、P.スチルロールス(P. styllrolls)、P. インディクス(P. indicus)、P. ジェポニオウス(P. jeponious)、P. モノドン(P. monodon)、P. バネメル(P. vannemel)、P. エンシス(P. ensis)、S. メラント(S. melantho)、N. ノルベギオウス(N. norvegious)、冷水エビを含むがこれらに限定されないエビ(shrimp);ワタリガニ、ルーク、ストーン、キング、クイーン、スノウ、ブラウン、イチョウガニ(dungeness)、北米産イチョウガニ(Jonah)、マングローブ、ソフトシェルクラブを含むがこれらに限定されないカニ;シャコ、クリール、ランゴスチノ(langostino);ブルー、マロン、レッドクラウ、レッドスワンプ、ソフトシェル、ホワイトを含むがこれらに限定されないイセエビ/ザリガニ(crayfish/crawfish)のような甲殻類;環形動物;ワニおよびカメのようなは虫類、およびカエルを含む両生類を含むがこれらに限定されない脊索動物;ならびにウニを含むがこれらに限定されない棘皮動物が含まれる。 トランスジェニック動物を作製するために様々な方法が既知である。一つの方法において、前核段階での胚(「一細胞胚」)を雌性動物から採取して、胚に導入遺伝子をマイクロインジェクションする、この場合、導入遺伝子は得られた成熟動物の胚細胞と体細胞の染色体に組み込まれる。もう一つの方法において、胚性幹細胞を単離して、導入遺伝子を電気穿孔、プラスミドトランスフェクション、またはマイクロインジェクションによって幹細胞に組み込み、次に幹細胞を胚に再度導入して、そこで胚は定着して生殖系列に寄与する。哺乳類種にポリヌクレオチドをマイクロインジェクションする方法は、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,873,191号に記載されている。さらにもう一つの方法において、胚細胞を、導入遺伝子を含むレトロウイルスに感染させて、それによって胚の生殖細胞は導入遺伝子をその染色体に組み込まれる。 トランスジェニックにすべき動物が鳥類である場合、鳥類の受精卵は一般的に卵管において最初の24時間のあいだに細胞分裂を行い、したがって前核に近づくことができないために、受精卵の前核へのマイクロインジェクションは難しい。このように、トランスジェニック鳥種を作製するためにはレトロウイルス感染法が好ましい(参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,162,215号を参照のこと)。しかし、鳥類の種にマイクロインジェクションを行う場合、先に産んだ卵の産卵後約2.5時間で、屠殺した雌鶏から胚を得ることができ、導入遺伝子を胚盤の細胞質にマイクロインジェクションして、胚を成熟するまで宿主の殻の中で培養する(Loveら、Biotechnology 12、1994)。トランスジェニックにすべき動物がウシまたはブタである場合、卵が不透明であり、それによって従来の微分干渉位相差顕微鏡によって核を同定することが難しいためにマイクロインジェクションを行うことができない。この問題を克服するために、より見やすくするために卵を最初に遠心して前核を分離することができる。 本発明のヒト以外のトランスジェニック動物は、ウシ、ブタ、魚、ヒツジ、トリ、または他の動物となりうる。導入遺伝子を様々な発達段階の胚標的細胞に導入して、胚標的細胞の発達段階に応じて異なる方法を用いる。接合体は、マイクロインジェクションの最善の標的である。遺伝子移入のための標的として接合体を用いることは、初回分裂前に、注入したDNAを宿主遺伝子に組み込むことができるという点において大きい長所を有する(Brinsterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438〜4442、1985)。その結果、ヒト以外のトランスジェニック動物の全ての細胞が導入遺伝子を組み込まれ、このように、生殖細胞の50%が導入遺伝子を有するために、創始動物の子孫への導入遺伝子の効率よい伝幡に寄与する。 トランスジェニック動物は、そのそれぞれが生殖に用いられる細胞内で外因性遺伝子材料を含む、二つのキメラ動物を交配することによって作製することができる。得られた子孫の25%が、外因性遺伝子材料に関してホモ接合であるトランスジェニック動物であり、得られた動物の50%がヘテロ接合体、かつ残りの25%が外因性遺伝子材料を欠損し、野生型表現型を有するであろう。 マイクロインジェクション法において、導入遺伝子を消化して、如何なるベクターDNAも含まないように、例えばゲル電気泳動によって精製する。導入遺伝子は、機能的に会合したプロモーターを含むことができ、これは、転写に関係する細胞蛋白質と相互作用して、構成的発現、組織特異的発現、発達段階特異的発現等を提供する。そのようなプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、モロニー白血病ウイルス(MLV)、およびヘルペスウイルスに由来するプロモーターと共に、メタロチオネイン、骨格アクチン、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPCK)、ホスホグリセレート(PGK)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、およびチミジンキナーゼ(TK)をコードする遺伝子由来のプロモーターが含まれる。ラウス肉腫ウイルスLTRのようなウイルスの長末端反復(LTRs)も同様に用いることができる。トランスジェニックにすべき動物がトリである場合、好ましいプロモーターには、ニワトリβ-グロビン遺伝子、ニワトリライソザイム遺伝子、およびトリ白血病ウイルスのプロモーターが含まれる。胚性幹細胞のプラスミドトランスフェクションにおいて有用な構築物は、例えば、転写を刺激するためのエンハンサーエレメント、スプライスアクセプター、終了およびポリアデニル化シグナル、翻訳を行うためのリボソーム結合部位等を含むさらなる調節エレメントを用いるであろう。 レトロウイルス感染法において、発達段階のヒト以外の胚をインビトロで胚盤胞段階まで培養することができる。この期間に、割球をレトロウイルス感染の標的とすることができる(Jaenich、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:1260〜1264、1976)。透明帯を除去する酵素処理を行うと、割球の効率的な感染が得られる(Hoganら、「Manipulating Mouse Embryo」、コールドスプリングハーバー出版、1986)。導入遺伝子を導入するために用いられるウイルスベクター系は典型的に、導入遺伝子を有する複製欠損レトロウイルスである(Jahnerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6927〜6931、1985;van der Puttenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6148〜6152、1985)。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することによって容易にかつ効率よく得られる(van der Puttenら、上記、1985;Stewartら、EMBO J. 6:383〜388、1987)。または感染はより後期の段階で行うことができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞を割腔に注入することができる(Jahnerら、Nature 298:623〜628、1982)。組み込みはヒト以外のトランスジェニック動物において形成される細胞のサブセットに限って起こることから、創始動物はほとんどが導入遺伝子に関してモザイクとなりうる。さらに、創始動物は、ゲノムの異なる位置で導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入を含みえて、これは一般的に子孫において分離されるであろう。さらに、同様に、妊娠中期胚の子宮内レトロウイルス感染によって、効率は低いものの、導入遺伝子を生殖系列に導入することも可能である(Jahnerら、上記、1982)。 胚性幹細胞(ES)もまた、導入遺伝子を導入するための標的となりうる。ES細胞は、インビトロで培養して胚に融合させた着床前胚から得られる(Evansら、Nature 292:154〜156、1981;Bradleyら、Nature 309:255〜258、1984;Gosslerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:9065〜9069、1986;Robertsonら、Nature 322:445〜448、1986)。導入遺伝子はDNAトランスフェクションまたはレトロウイルス媒介形質導入によってES細胞に効率よく導入することができる。そのような形質転換したES細胞は、その後ヒト以外の動物からの胚盤胞と合わせることができる。その後ES細胞は胚に定着して、得られたキメラ動物の生殖系列に関与する(Jaenisch、Science 240:1468〜1474、1988)。 本明細書に開示するように、ミオスタチンは、少なくとも部分的にSmadシグナル伝達経路を通してその活性を発揮することができ、ミオスタチン発現は様々な病態に関連しうる。そのため、本発明は、肥満およびII型糖尿病のような代謝疾患を含むミオスタチンに関連した様々な病態を治療するための新規標的を提供する。したがって、本発明は、被験者における筋細胞または脂肪組織細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することによって、病態が少なくとも部分的に、筋または脂肪組織の異常な量の発達または代謝活性を特徴とする、被験者における病態の重症度を改善する方法を提供する。 ミオスタチンは、筋増殖の負の調節物質として機能する(McPherronら、上記、1997)。ミオスタチンノックアウトマウスは、野生型の同腹子より体重が約25%〜30%多く、調べたマウスの体重のこのような増加は、もっぱら骨格筋組織重量の劇的な増加が原因であった。ミオスタチンを欠損するマウスでは、骨格筋の重量は、野生型同腹子の対応する筋の約2〜3倍であった。ホモ接合ノックアウトマウスにおけるこの筋重量の増加は、過形成と肥大の複合が原因であった。 本明細書に開示するように、ヘテロ接合ミオスタチンノックアウトマウスも同様に、骨格筋重量の増加を示したが、ホモ接合変異体マウスにおいて認められた場合より程度は低く、ミオスタチンがインビボで用量依存的に作用することを示している(実施例1を参照のこと)。さらに、動物においてミオスタチンが過剰発現されると、筋の増殖に関して反対の作用を示した。例えば、ミオスタチン発現腫瘍を有するヌードマウスは、筋および脂肪重量の劇的な減少を特徴とする消耗性症候群を発症した(実施例8を参照)。ヌードマウスにおけるこの症候群は、癌またはAIDSのような慢性疾患を有する患者に起こるカヘキシア状態に類似した。 ミオスタチン免疫反応材料の血清レベルは、筋の消耗に関して患者の状態と相関している(Gonzales-Kadavidら、Proc. Natl. Acad. Med. USA 95:14938〜14943、1998、参照として本明細書に組み入れられる)。このように、全身体重の減少によって測定したカヘキシアの兆候を示すAIDS患者は、AIDSを有しない健常な男性、または体重が減少していないAIDS患者のいずれかと比較してミオスタチン免疫反応材料の血清レベルがわずかに増加していた。しかし、血清試料において検出されたミオスタチン免疫反応材料が真正の処理ミオスタチンに関して予想されるSDSゲル上での移動度を示さなかったことから、これらの結果の解釈は複雑である。 本明細書において開示するように、ミオスタチンは、筋重量に影響を及ぼすのみならず、生物の全体的な代謝に影響を及ぼす。例えば、ミオスタチンは脂肪組織において発現され、ミオスタチン欠損マウスは、動物が年をとるにつれて、脂肪蓄積の劇的な減少を示す(実施例IIおよびIIIを参照のこと)。ミオスタチン作用のメカニズムは本明細書において提唱されないが、ミオスタチンの作用は、脂肪組織に及ぼすミオスタチンの直接作用となりうる、または骨格筋組織に及ぼすミオスタチン活性の欠如によって引き起こされる間接的な作用となりうる。メカニズムによらず、ミオスタチン活性の減少に反応して起こる筋組織に及ぼす全体的な同化作用は、脂肪の蓄積が5倍抑制された肥満マウス系統(野鼠致死黄色(Ay)マウス)にミオスタチン変異を導入することによって証明されるように、生物の全体的な代謝を変化させて、脂肪の形でのエネルギーの保存に影響を及ぼす(実施例5を参照のこと)。異常なグルコース代謝も同様に、ミオスタチン変異を含む野鼠マウスにおいて部分的に抑制された。これらの結果は、ミオスタチンを阻害する方法が、肥満およびII型糖尿病のような代謝疾患を治療または予防するために用いることができることを証明している。 本発明の方法は、例えば、癌のような慢性疾患(Nortonら、Crit. Rev. Oncol. Hematol. 7:289〜327、1987)に関連したカヘキシアと共に、II型糖尿病、肥満、および他の代謝障害のような病態を含む様々な病態の重症度を改善するために有用である。本明細書において用いられるように、「病態」という用語は、少なくとも部分的に、筋または脂肪組織の異常な量の発達または代謝活性を特徴とする障害を意味する。そのような病態には、例えば、肥満;肥満に関連した状態、例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、および心筋梗塞;筋ジストロフィー、神経筋疾患、カヘキシア、および食欲不振;ならびに一般的に肥満に関連する、しかし必ずしもその必要はないII型糖尿病のような代謝障害が含まれ、これらは本発明の方法を用いる治療に対して特に感受性がある。 本明細書において用いられるように、筋または脂肪組織の発達または代謝活性の量に関連して用いられる「異常」という用語は、熟練した医師または他の当業者が正常または理想的であると認識する量の発達または代謝活性と比較して相対的な意味で用いられる。そのような正常または理想的な値は、医師にとって既知であり、対応する集団における健常者において一般的に認められる、または望ましい平均値に基づく。例えば、医師は、肥満が特定の身長および体型の人に関して「理想的な」体重範囲より約20%上である体重に関連していることを承知しているであろう。しかし、医師は、ボディビルダーが、それ以外は対応する集団における同じ身長および体型の人に関して予想される体重より単に20%またはそれ以上である体重を有するというだけで必ずしも肥満ではないことを認識するであろう。同様に、当業者は、筋活性が異常に減少したように思われる症状を示す患者が例えば、患者に様々な筋力テストを行って、対応する集団における平均的な健常者について予想される結果と比較することによって、異常な筋発達を有すると同定されうることを承知しているであろう。 本発明の方法は、少なくとも部分的に、病態の病因に関連した筋または脂肪組織細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することによって、筋または脂肪組織における異常な量の発達または代謝活性を特徴とする病態の重症度を改善することができる。本明細書において用いられるように、病態の重症度に関連して用いられる「改善する」という用語は、病態に関連した兆候または症状が弱められることを意味する。モニターすべき兆候または症状は、特定の病態の特徴であり、兆候および疾患をモニターする方法と同様に当業者に周知である。例えば、病態がII型糖尿病である場合、当業者は被験者におけるグルコースレベル、グルコース排泄速度等をモニターすることができる。病態が肥満またはカヘキシアである場合、医師は単に被験者の体重をモニターするだけでよい。 被験者に投与すべき作用物質は、標的細胞と作用物質との接触、適当であれば、細胞への流入を促進する条件で投与される。ポリヌクレオチド作用物質の細胞への流入は、例えば、細胞に感染しうるウイルスベクターにポリヌクレオチドを組み込むことによって促進されうる。細胞タイプ特異的ウイルスベクターが利用できない場合、標的細胞上に発現されたリガンドに特異的な受容体(またはリガンド)を発現するようにベクターを改変することができ、またはそのようなリガンド(または受容体)を含むように改変することができるリポソームに封入することができる。ペプチド作用物質は、ペプチドの細胞への転位を促進することができるヒト免疫不全ウイルスTAT蛋白質形質導入ドメインのような蛋白質形質導入ドメインを含むようにペプチドを操作することを含む、様々な方法によって細胞に導入することができる(Schwarzeら、上記1999;Derossiら、上記、1996を参照のこと)。 標的細胞における作用物質の存在は、例えば、作用物質に検出可能な標識を機能的に結合することによって、作用物質、特にペプチド作用物質に特異的な抗体を用いることによって、または作用物質による下流の作用、例えば細胞におけるSmadポリペプチドの燐酸化の減少を検出することによって、直接同定することができる。作用物質は、参照として本明細書に組み入れられる、当技術分野で周知の方法(Hermanson、「Bioconjugate Techniques」、アカデミック出版、1996)を用いて検出できるように標識することができる;同様に、HarlowとLane、上記、1988も参照のこと。例えば、ペプチドまたはポリヌクレオチド作用物質は、放射標識、アルカリホスファターゼのような酵素、ビオチン、蛍光色素等を含む様々な検出可能部分によって標識することができる。作用物質がキットに含まれる場合、作用物質を標識するための試薬も同様にキットに含めることができ、または試薬を個別に販売元から購入することができる。 本発明の方法において有用な作用物質は、病態の部位に投与することができ、または標的細胞にポリヌクレオチドまたはペプチドを提供する如何なる方法によって投与することもできる。本明細書において用いられるように、「標識細胞」という用語は、作用物質に接触させる筋細胞または脂肪細胞を意味する。生きている被験者に投与する場合、作用物質は一般的に、被験者への投与に適した薬学的組成物として調製される。このように、本発明は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するために有用な作用物質を薬学的に許容される担体において含む薬学的組成物を提供する。そのため、作用物質は、本明細書に定義される病態を有する被験者を治療するための薬剤として有用である。 薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、例えば、水もしくは生理食塩液のような水溶液、またはグリコール、グリセロール、オリーブ油のような油、または注射可能有機エステルのような他の溶媒または媒体が含まれる。薬学的に許容される担体は、例えば、結合体を安定化させる、または結合体の吸収を増加させるように作用する生理的に許容される化合物を含みうる。そのような生理的に許容される化合物には、例えばグルコース、蔗糖、またはデキストランのような糖質、アスコルビン酸またはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート化剤、低分子量蛋白質、または他の安定化剤もしくは賦形剤が含まれる。当業者は、生理的に許容される化合物を含む薬学的に許容される担体の選択が、例えば治療物質の物理化学的特徴、ならびに例えば、経口または静脈内のような非経口となりうる組成物の投与経路、および注入、挿管、またはその他の当技術分野で既知のそのような方法に依存することを承知しているであろう。薬学的組成物はまた、診断試薬、栄養物質、毒素、または例えば癌化学療法剤のような治療物質のような二次試薬を含みうる。 作用物質は、水中油型乳剤、微小乳剤、ミセル、混合ミセル、リポソーム、ミクロスフェアまたは他のポリマーマトリクスのような封入材料に組み込まれることができる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Gregoriadis、「Liposome Technology」、第1巻(CRC出版、ボカレートン、フロリダ州、1984);Fraleyら、Trends Biochem. Sci. 6:77(1981)を参照のこと)。例えば、燐脂質または他の脂質からなるリポソームは、作製および投与が比較的単純である非毒性の生理的に許容される代謝可能な担体である。「ステルス」リポソーム(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,882,679号;第5,395,619号;および第5,225,212号を参照のこと)は、本発明の方法を実践するために有用な薬学的組成物を調製するために特に有用なそのような封入材料の例であり、他の「マスクされた」リポソームも同様に用いることができ、そのようなリポソームは治療物質が循環中に残っている時間を延長させる。例えば、陽イオンリポソームも同様に特異的受容体またはリガンドによって改変することができる(Morishitaら、J. Clin. Invest. 91:2580〜2585(1993)、参照として本明細書に組み入れられる)。さらに、ポリヌクレオチド作用物質は例えば、アデノウイルス-ポリリジンDNA複合体を用いて細胞に導入することができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Michaelら、J. Biol. Chem. 268:6866〜6869(1993)を参照のこと)。 ミオスタチンシグナル伝達を変化させる作用物質を含む薬学的組成物の投与経路は、部分的にその分子の化学構造に依存するであろう。例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、経口投与すると消化管において分解され得るために特に有用ではない。しかし、ポリペプチドを化学的に修飾する、例えば内因性プロテアーゼによる分解をあまり受けないようにする、または消化管の中でより吸収可能にする方法は周知である(例えば、Blondelleら、上記、1995;EckerとCrook、上記、1995)。さらに、ペプチド作用物質は、D-アミノ酸を用いて調製することができ、またはペプチドドメインの構造を模倣する有機物質であるペプチド模倣体に基づく、またはビニル様(vinylogous)ペプトイドのようなペプトイドに基づく一つまたはそれ以上のドメインを含みうる。 本明細書において開示される薬学的組成物は、例えば、経口、もしくは静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内、のような非経口投与を含む様々な経路によって、または例えば、皮膚パッチもしくは経皮イオントフォレーシスを用いてそれぞれ皮膚を通しての受動吸収または吸収促進によって個体に投与することができる。さらに、薬学的組成物は、注入、挿管、経口、または局所投与によって投与することができ、後者は、例えば、軟膏を直接適用することによって受動的に、または例えば組成物の一つの成分が適当な噴射剤である点鼻スプレーまたは吸入剤を用いて能動的となりうる。薬学的組成物はまた、病態の部位に、例えば静脈内、または腫瘍に血液を供給する血管への動脈内に投与することができる。 本発明の方法の実践において投与される作用物質の全量は、ボーラスとして、または比較的短時間の注入のいずれかとして単回投与として被験者に投与することができ、または多数回投与を長期間にわたって行う分割治療プロトコールを用いて投与することができる。当業者は、被験者における病態を治療するための薬学的組成物の量は、被験者の年齢および全身健康状態と共に投与経路および投与すべき治療回数を含む多くの要因に依存することを知っているであろう。これらの要因を考慮して、当業者は特定の用量を必要に応じて調節するであろう。一般的に、薬学的組成物の調製および投与経路および投与回数は、フェーズIおよびフェーズII臨床試験を用いて最初に決定される。 薬学的組成物は、錠剤、または溶液もしくは懸濁液のような経口投与のために調製することができる;または腸内、または非経口適用に適した有機もしくは無機担体または賦形剤との混合物を含みうる、例えば錠剤、ペレット、カプセル剤、坐剤、溶液、乳液、懸濁液、または用途に適した他の剤形のための通常の非毒性の薬学的に許容される担体と混合することができる。担体は、上記の他に、グルコース、乳糖、マンノース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイドシリカ、ジャガイモデンプン、尿素、中等度の長さのトリグリセリド、デキストラン、および調製物を製造するために用いるのに適した他の担体を、固体、半固体、または液体型で含みうる。さらに補助剤、安定化剤、濃化剤、または着色剤および香料、例えばトリウロースのような安定化乾燥剤を用いることができる(例えば、米国特許第5,314,695号を参照のこと)。 本発明はまた、被験者における筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法を提供する。本明細書に開示するように、Act RIIAおよびAct RIIBのようなGDF受容体は、筋組織および脂肪組織形成に関係しているミオスタチンのようなGDFの作用を媒介することに関係している。このように、一つの態様において、筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法には、アクチビン受容体、例えばAct RIIAまたはAct RIIBのようなGDF受容体からのシグナル伝達に影響を及ぼすことが含まれる。そのような方法は、組織の細胞を、ドミナントネガティブ活性、構成的活性等を有する変異体GDF受容体に接触させること、または細胞にそれらを発現させることによって行うことができる。 もう一つの態様において、生物における筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法は、ミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を生物に投与することによって行われる。好ましくは、作用物質は、そのいずれかがミオスタチンシグナルペプチドを含みうるミオスタチンプロドメインまたは変異体プロミオスタチンポリペプチドである、またはそれらをコードする。本明細書において用いられるように、「増殖」という用語は、本発明の方法を行っていない対応する生物と比較して本発明の方法を行った生物における筋組織重量または脂肪組織重量について言及する場合に相対的な意味において用いられる。このように、本発明の方法が、ミオスタチンシグナル伝達が減少または阻害されるように行われる場合、ミオスタチンシグナル伝達がそのように影響を受けていない対応する生物の筋重量と比較して、生物における筋組織の増殖によって生物において筋重量が増加すると認識されるであろう。 本発明の方法は、生物の筋重量を増加させる、または脂肪含有量を減少させる、または双方にとって有用となりうる。例えば、そのような方法を食品源として有用である生物に行う場合、食品の蛋白質含有量は増加して、コレステロールレベルは減少し、食品の質が改善されうる。本発明の方法はまた、生物が環境においてあまり競合できないように、生物、例えば環境にとって有害が生物、における筋組織の増殖を減少させるためにも有用となりうる。このように、本発明の方法は、脊椎生物、例えば、哺乳類、鳥類、もしくは魚類を含む、ミオスタチンを発現する如何なる真核生物についても行うことができ、または無脊椎生物、例えば、軟体動物、棘皮動物、腹足類、もしくは頭状体となりうる。 作用物質は、本明細書に開示のように、ミオスタチンシグナル伝達を変化させる如何なる作用物質となりうる、かつ従来の如何なる方法で生物に投与することもできる。例えば、治療すべき生物が水槽で養殖される魚、エビ、ホタテガイ等である場合、作用物質は生物が維持される水に加えるか、または特に作用物質が水溶性ペプチドまたは有機低分子である場合には、その飼料に加えることができる。 本発明の方法において用いられる作用物質がペプチド作用物質、アンチセンス物質等をコードするポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチドを含むヒト以外の生物の生殖細胞を選択して、作用物質を発現するトランスジェニック生物を作製することができる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドによってコードされる作用物質が、ある時点で望ましい期間発現されうるように、誘導型調節エレメントの制御下に置かれる。したがって、本発明は、ヒト以外のトランスジェニック生物と共に、これらの生物によって産生される食品を提供する。そのような食品は、筋組織における増加のために栄養的価値が増加している。ヒト以外のトランスジェニック動物は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、七面鳥、および魚を含む脊椎生物、ならびにエビ、ロブスター、カニ、ヤリイカ、カキ、およびアワビのような無脊椎生物を含む本明細書に開示の如何なる種ともなりうる。 TGF-βファミリーメンバーの調節および細胞表面受容体との特異的相互作用は解明されつつある。このように、TGF-βファミリーメンバーのプロドメインとTGF-βファミリーの別のメンバーの成熟領域との同時発現は、細胞内二量体形成に関連して、生物活性ホモダイマーの分泌が起こる(Grayら、Science 247:1328、1990)。例えば、BMP-4成熟領域と共にBMP-2プロドメインを用いることによって、成熟BMP-4の発現は劇的に改善された(Hammondsら、Mol. Endocrinol. 5:149、1991)。調べるファミリーメンバーのほとんどに関して、ホモダイマー種は生物活性であるが、インヒビン(Lingら、Nature 321:779、1986)およびTGF-β(Cheifetzら、Cell 48:409、1987)のような他のファミリーメンバーの場合、ヘテロダイマーも同様に検出されており、それぞれのホモダイマーとは異なる生物学的特性を有するように思われる。 受容体-リガンド相互作用研究によって、細胞が外部刺激に対してどのように反応するかに関して膨大な量の情報が明らかになり、エリスロポエチン、コロニー刺激因子、およびPDGFのような治療的に重要な化合物が開発された。このように、TGF-βファミリーメンバーの作用を媒介する受容体を同定するために継続的な努力が行われている。本明細書に開示のように、ミオスタチンは、アクチビンII型受容体と特異的に相互作用する。この相互作用の同定は、農業およびヒト治療目的にとって、例えば肥満、II型糖尿病、およびカヘキシアのような様々な病態を治療するために有用な拮抗剤および作用剤を同定するための標的を提供する。この特異的相互作用の同定はまた、他のミオスタチン受容体のみならず、他の増殖分化因子の特異的受容体を同定する手段を提供する。したがって、本発明は、GDFまたは複数のGDFの組み合わせ、例えばミオスタチン、GDF-11もしくはその双方と特異的に相互作用するGDF受容体を提供する。 本発明のGDF受容体の例は、本明細書において、ミオスタチンおよびGDF-11と特異的に相互作用するミオスタチン受容体、特にアクチビンII型受容体である。しかし、ミオスタチンと特異的に相互作用するがGDF-11とは相互作用しないミオスタチン受容体も、GDF-11と特異的に相互作用するがミオスタチンとは相互作用しないGDF-11受容体等と同様に本発明に含まれる。考察を簡便にするために、本発明の受容体は、本明細書において一般的に「GDF受容体」と呼ばれ、その例は、少なくともミオスタチンと特異的に相互作用する受容体であるミオスタチン受容体である。そのため、ミオスタチン受容体とミオスタチンとの特異的に相互作用に関して言及するが、本開示は、GDF-11と少なくとも特異的に相互作用するGDF-11受容体を含む如何なるGDF受容体もより広い意味で含む。 GDF受容体ポリペプチドを発現する組換え型細胞株もまた、受容体に特異的に結合する抗体、受容体をコードする実質的に精製されたポリヌクレオチド、および実質的に精製されたGDF受容体ポリペプチドと同様に提供される。例えば、本明細書に開示するように、ミオスタチンと細胞のミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させうるミオスタチン受容体のようなGDF受容体の可溶性の細胞外ドメイン;細胞におけるGDFシグナル伝達を誘導、刺激、またはそうでなければ維持することができるGDF受容体の構成的に活性な細胞内キナーゼドメイン;またはミオスタチンもしくは他のGDFシグナル伝達の調節能を有するGDF受容体の他の切断部分を含む、GDF受容体のペプチド部分も同様に提供される。 本発明はまた、ヌクレオチドプローブまたは抗体プローブを用いて発現ライブラリとなりうるゲノムまたはcDNAライブラリをスクリーニングする方法;例えばミオスタチンまたはその機能的ペプチド部分のようなGDFを用いて、それらに反応性であり、したがって受容体を発現する細胞をスクリーニングする方法;例えば、GDFペプチドを一つのハイブリッド成分として、かつGDFに対する受容体を発現する細胞から調製したcDNAライブラリから発現されたペプチドを第二のハイブリッドの成分として用いる上記のようなツーハイブリッドアッセイ法等を含む、GDF受容体ポリペプチドを同定する方法も提供する。 上記のように、GDF受容体、例えば、Act RIIBのようなミオスタチン受容体と特異的に相互作用する作用物質は、そのような作用物質をスクリーニングするために受容体を用いて同定することができる。逆に、Act RIIB受容体のようにミオスタチン受容体との特異的相互作用能を有すると同定された作用物質を用いて、さらなるミオスタチン受容体または他のGDF受容体をスクリーニングすることができる。そのような方法は、作用物質のような成分(またはミオスタチンもしくは他のGDF)と、切断型膜結合受容体または可溶性受容体となりうるGDF受容体を発現する細胞とを、作用物質(またはGDF)と受容体とを特異的に相互作用させるために十分な条件でインキュベートすること、受容体に結合した作用物質(またはGDF)を測定すること、および受容体を単離することを含みうる。上記のような分子モデリング法もまた、GDF受容体またはその機能的ペプチド部分を同定するスクリーニング方法として有用となりうる。 動物の体細胞および生殖細胞に含まれる導入遺伝子によって表現型が付与される、GDF受容体の発現を特徴とする表現型を有するヒト以外のトランスジェニック動物も同様に提供される。導入遺伝子は、GDF受容体、例えばミオスタチン受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。そのようなトランスジェニック動物を作製する方法は、本明細書に開示され、またはそうでなければ当技術分野で既知である。 本発明は、GDF受容体の全てまたはペプチド部分をコードする実質的に精製されたポリヌクレオチドを提供する。GDF受容体の例は、本明細書においてアクチビンII型受容体であるが、アクチビンII型受容体をコードするポリヌクレオチドは既に記述されている(米国特許第5,885,794号)。このように、そのようなアクチビンII型受容体は本発明に含まれないと認識すべきである(Massague、上記、1998;Heldinら、上記、1997)。同様に、Act RIBを含むアクチビンI型受容体;TGF-β RIおよびTGF-β RIIを含むTGF-β受容体;ならびにBMP RIA、BMP RIB、およびBMP RIIを含むBMP受容体が記述され、当技術分野において周知であり(Massague、上記、1998;Heldinら、上記、1997)、したがって、本発明のGDF受容体に含まれない。 本発明のポリヌクレオチドは、ミオスタチン受容体活性、例えば、ミオスタチン結合活性を有するポリペプチドをコードしうる、または変異体ミオスタチン受容体、例えば、変異体がドミナントネガティブミオスタチン受容体として作用しうる、キナーゼドメインに変異を有する変異体ミオスタチン受容体をコードしうる(上記参照)。このように、本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在する、合成、または意図的に操作されたポリヌクレオチドとなりうる。例えば、mRNA配列の一部を、交互のRNAスプライシングパターン、またはRNA転写のために交互のプロモーターを用いることによって変化させることができる。もう一つの例として、ポリヌクレオチドに部位特異的変異誘発を行うことができる。ポリヌクレオチドはまたアンチセンスヌクレオチド配列となりうる。本発明のGDF受容体ポリヌクレオチドには、遺伝子コードの縮重である配列が含まれる。天然のアミノ酸は20個存在し、そのほとんどが1個を超えるコドンによって示される。したがって、ポリヌクレオチドによってコードされるGDF受容体ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に不変である限り、全ての縮重ヌクレオチド配列が本発明に含まれる。同様に、ミオスタチン受容体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も含まれる。 本発明のGDF受容体をコードするポリヌクレオチドのオリゴヌクレオチド部分も同様に、本発明に含まれる。そのようなオリゴヌクレオチドは、一般的に、オリゴヌクレオチドが受容体をコードするポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするために十分な長さである少なくとも約15塩基、および長さが少なくとも約18ヌクレオチドまたは21ヌクレオチドもしくはそれ以上となりうる。本明細書において用いられるように、「選択的ハイブリダイゼーション」または「選択的にハイブリダイズする」という用語は、中等度にストリンジェント、または関連するヌクレオチド配列を無関係なヌクレオチド配列と区別することができる高ストリンジェントな生理条件でのハイブリダイゼーションを意味する。 核酸ハイブリダイゼーション反応において、特定のレベルのストリンジェンシーを得るために用いられる条件は、ハイブリダイズする核酸の特性に応じて変化するであろう。例えば、長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列組成(例えば、相対的GC:AT含有量)、および核酸のタイプ、すなわちオリゴヌクレオチドまたは標的核酸配列がDNAまたはRNAであるか否かを、ハイブリダイゼーション条件を選択するために考慮することができる。さらなる検討は、核酸の一つが例えばフィルター上に固定されているか否かである。適当なストリンジェンシー条件を選択する方法は、経験的に決定するか、または様々な公式を用いて推定することができ、当技術分野で周知である(例えば、Sambrookら、上記、1989を参照のこと)。 進行的により高いストリンジェンシー条件の例は以下の通りである:ほぼ室温で2×SSC/0.1%SDS(ハイブリダイゼーション条件);ほぼ室温で0.2×SSC/0.1%SDS(低ストリンジェンシー条件);約42℃で0.2×SSC/0.1%(中等度のストリンジェンシー条件);および約68℃で0.1×SSC(高ストリンジェンシー条件)。洗浄は、これらの条件の一つのみ、例えば高ストリンジェンシー条件を用いて行うことができ、またはそれぞれの条件を例えば、記載の段階の一部または全てを上記に記載した順序で、それぞれ10〜15分間繰り返すことができる。 本発明のGDF受容体コードポリヌクレオチドは、いくつかの方法のいずれにによっても得ることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、当技術分野で周知であるように、ハイブリダイゼーションまたはコンピューターに基づく技術を用いて単離することができる。これらの方法には、以下が含まれるがこれらに限定されない:1)相同なヌクレオチド配列を検出するためにゲノムまたはcDNAライブラリとプローブとのハイブリダイゼーション;2)共有する構造特徴を有するクローニングしたDNA断片を検出するために発現ライブラリの抗体スクリーニング;3)関係するDNA配列とアニーリングすることができるプライマーを用いるゲノムDNAまたはcDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR);4)類似の配列に関する配列データベースのコンピューター検索(上記を参照);5)サブトラクトDNAライブラリの示差スクリーニング;および6)例えば、ハイブリッドの一つに成熟GDFペプチドを用いるツーハイブリッドアッセイ法。 アクチビン受容体がミオスタチンと特異的に相互作用するという本発明の開示を考慮すると、アクチビン受容体をコードする配列、例えば、ミオスタチンに結合する細胞外ドメインをコードする配列に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを設計することができ、これを用いて、ミオスタチンに反応する筋細胞または脂肪細胞のような細胞から調製したライブラリをスクリーニングすることができ、このようにミオスタチン受容体をコードするポリヌクレオチドの同定が容易になる。選択したクローンは例えば、発現ベクターにインサートをサブクローニングして、クローニングした配列を発現させた後、発現されたポリペプチドをミオスタチンを用いてスクリーニングすることによってさらにスクリーニングすることができる。 本発明のポリヌクレオチド、例えば、ミオスタチン受容体をコードするポリヌクレオチドは、哺乳類、鳥類、もしくは魚類種を含む脊椎動物種または無脊椎動物種に由来しうる。核酸ハイブリダイゼーションに依存するスクリーニング技法を用いれば、適当なプローブが利用できる限り、如何なる生物からの如何なる遺伝子配列の単離も可能である。調べる蛋白質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学合成することができる。これには、アミノ酸配列の短いオリゴペプチド枝が既知である必要がある。受容体をコードするポリヌクレオチド配列は、遺伝子コードの縮重を考慮に入れて、遺伝子コードから推定することができる。このように、配列が縮重している場合には、混合したさらなる反応を行うことができる。これには、変性二本鎖DNAの異種混合物が含まれる。そのようなスクリーニングに関して、ハイブリダイゼーションは、好ましくは一本鎖DNAまたは変性二本鎖DNAのいずれかについて行われる。ハイブリダイゼーションは、関係するポリペプチドに関連して存在するmRNA配列の量が極めて少ない起源に由来するcDNAの検出において特に有用である。このように、非特異的結合を回避することをねらいとしストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いることによって、オートラジオグラフィーによる可視化を用いて、混合物において標的DNAと、標的核酸の完全な相補体であるオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションによって特異的cDNAクローンを同定することができる(Wallaceら、Nucl. Acids Res. 9:879、1981、参照として本明細書に組み入れられる)。または、サブトラクティブライブラリを用いて、それによって非特異的cDNAクローンを除去することができる。 所望のポリペプチドの完全なアミノ酸配列がわかっていない場合、DNA合成の直接合成は可能ではなく、選択される方法はcDNA配列の合成である。関係するcDNA配列を単離する標準的な技法は、ライブラリが高レベル遺伝子発現を有するドナー細胞に豊富に存在するmRNAの逆転写に由来する、プラスミドまたはファージにおいて調製したcDNAライブラリの形成である。ポリメラーゼ連鎖反応技術と組み合わせて用いる場合、まれな発現産物でさえクローニングすることができる。ポリペプチドのアミノ酸配列の有意な部分がわかっている場合、標的cDNAに存在すると思われる配列を複製する標識一本鎖もしくは二本鎖DNAまたはRNAプローブ配列の産生を、一本鎖型に変性されているcDNAのクローニングしたコピー上で行われるハイブリダイゼーション技法に用いることができる(Jayら、Nucl. Acid Res. 11:2325、1983、参照として本明細書に組み入れられる)。 ラムダgt11ライブラリのようなcDNA発現ライブラリは、GDF受容体に特異的な抗体、例えば抗Act RIIB抗体を用いてGDF受容体ペプチドに関してスクリーニングすることができる。抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体となりえて、これを用いてGDF受容体cDNAの存在を示す発現産物を検出することができる。そのような発現ライブラリも同様に、ミオスタチン受容体のミオスタチン結合ドメインの少なくとも一部をコードするクローンを同定するために、GDFペプチド、例えばミオスタチン、またはその機能的ペプチド部分によってスクリーニングすることができる。 変異体GDF受容体および変異体GDF受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも同様に本発明に含まれる。GDF受容体をコードするポリヌクレオチドにおける変化は、点突然変異、ナンセンス(STOP)変異、ミスセンス変異、スプライス部位変異またはフレームシフトのような遺伝子内変異となりえて、ヘテロ接合またはホモ接合欠失となりうる、および天然に存在する変異となりうる、または例えば組換えDNA方法を用いて操作することができる。そのような変化は、ヌクレオチド配列解析、サザンブロット解析、多重PCRもしくは配列タグ部位(STS)解析のようなPCRに基づく解析、またはインサイチューハイブリダイゼーション解析を含むがこれらに限定されない当業者に既知の標準的な方法を用いて検出することができる。GDF受容体ポリペプチドは、標準的なSDS-PAGE、免疫沈降解析、ウェスタンブロット解析等によって解析することができる。変異体GDF受容体の例は、その同源のGDFに対する特異的結合能を有しうるが、キナーゼドメインを欠損する可溶性細胞外ドメイン;構成的キナーゼ活性を示すことができる細胞内GDF受容体キナーゼドメイン含む切断型GDF受容体;と共に受容体のキナーゼ活性または受容体のリガンド結合能を破壊する点突然変異を含むGDF受容体等である。そのようなGDF受容体変異体は、GDFシグナル伝達を調節するために有用であり、したがって、本発明の様々な方法を実践するために有用である。 GDF受容体をコードするポリヌクレオチドは、適した宿主細胞にポリヌクレオチドを導入することによって、インビトロで発現することができる。「宿主細胞」は、特定のベクターを増殖させることができる、および適当であれば、ベクターに含まれるポリヌクレオチドが発現されうる如何なる細胞となりうる。「宿主細胞」という用語には、当初の宿主細胞の如何なる子孫も含まれる。宿主細胞の全ての子孫は、例えば複製の際に起こる変異のために親細胞とは同一でなくてもよいと理解される。しかし、「宿主細胞」という用語が用いられる場合、そのような子孫は含まれる。本発明の導入されたポリヌクレオチドを一過的または安定に含む宿主細胞を得る方法は当技術分野で周知である。 本発明のGDF受容体ポリヌクレオチドは、クローニングベクターまたは組換え発現ベクターとなりうるベクターに挿入することができる。「組換え発現ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド、特に本発明に関連してGDF受容体の全てまたはペプチド部分をコードするポリヌクレオチドの挿入または組み込みによって操作されている当技術分野において既知のプラスミド、ウイルス、または他の媒体を意味する。そのような発現ベクターは、宿主の挿入された遺伝子配列の効率よい転写を促進するプロモーター配列を含む。発現ベクターは、一般的に、複製開始点、プロモーターと共に、形質転換細胞の表現型選択を可能にする特異的遺伝子を含む。本発明において用いるのに適したベクターには、細菌における発現のためのT7に基づく発現ベクター(Rosenbergら、Gene 56:125、1987)、哺乳類細胞における発現のためのpMSXND発現ベクター(LeeとNathans、J. Biol. Chem. 263:3521、1988)、および昆虫細胞における発現のためのバキュロウイルス由来ベクターが含まれるがこれらに限定されない。DNAセグメントは、ベクターにおいて、調節エレメント、例えばT7プロモーター、メタロチオネインIプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または望ましければ特に組織特異的プロモーターもしくは誘導型プロモーターのような他のプロモーターとなりうるプロモーターに機能的に結合して存在しうる。 GDF受容体をコードするポリヌクレオチド配列は、原核細胞または真核細胞のいずれかにおいて発現させることができる。宿主には、微生物、酵母、昆虫および哺乳類生物が含まれうる。真核生物配列またはウイルス配列を有するポリヌクレオチドを原核生物において発現させる方法は、宿主において発現および複製することができる生物学的に機能的なウイルスおよびプラスミドDNAベクターと同様に、当技術分野で周知である。本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを構築する方法は、例えば、ポリヌクレオチドが特定の細胞タイプまたは特定の条件で選択的に発現されるか否かを含む、転写または翻訳制御シグナルを選択する場合に検討される要因と同様に周知である(例えば、Sambrookら、上記、1989を参照のこと)。 GDF受容体コード配列を発現させるために、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターによって形質転換した細菌のような微生物;組換え酵母発現ベクターによって形質転換した酵母細胞;カリフラワーモザイクウイルスもしくはタバコモザイクウイルスのような発現ベクターを感染させた、またはTiプラスミドのような組換えプラスミド発現ベクターによって形質転換した植物細胞系;バキュロウイルスのような組換えウイルス発現ベクターを感染させた昆虫細胞;レトロウイルス、アデノウイルス、またはワクシニアウイルスベクターのような組換えウイルス発現ベクターを感染させた動物細胞系;および安定に発現されるように遺伝子操作された形質転換動物細胞系を含むがこれらに限定されない、多様な宿主細胞/発現ベクター系を利用することができる。発現されたGDF受容体が、例えばグリコシル化によって翻訳後改変される場合、所望の改変を行うことができる宿主細胞/発現ベクター系、例えば、哺乳類宿主細胞/発現ベクター系を選択すると特に有利となりうる。 用いる宿主細胞/ベクター系に応じて、構成的および誘導型プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネータ等を含む多くの適した転写および翻訳エレメントを発現ベクターにおいて用いることができる(Bitterら、Meth. Enzymol. 153:516〜544、1987)。例えば、細菌系においてクローニングする場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)等のような誘導型プロモーターを用いることができる。哺乳類細胞系においてクローニングする場合、哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター、例えばヒトもしくはマウスメタロチオネインプロモーター、または哺乳類ウイルスに由来するプロモーター、例えばレトロウイルスの長末端反復、アデノウイルス後期プロモーター、もしくはワクシニアウイルス7.5 Kプロモーターを用いることができる。組換えDNAまたは合成技術によって産生されたプロモーターも同様に、挿入されたGDF受容体コード配列の転写を提供するために用いることができる。 酵母細胞において、構成的または誘導型プロモーターを含む多くのベクターを用いることができる(Ausubelら、上記、1987、第13章を参照のこと;Grantら、Meth. Enzymol. 153:516〜544、1987;Glover、「DNA Cloning」、第II巻(IRL出版、1986)、第3章を参照のこと;Bitter、Meth. Enzymol. 152:673〜684、1987;同様に、「The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces」、(Strathernら編、コールドスプリングハーバー研究所出版 1982、第IおよびII巻も参照のこと)。ADHもしくはLEU2のような構成的酵母プロモーターまたはGALのような誘導型プロモーターを用いることができる(Rothstein、「DNA Cloning」、第II巻(上記、1986)、第3章)。または、酵母の染色体に外来DNA配列の組み込みを促進するベクターを用いることができる。 真核生物系、特に哺乳類発現系では、発現された哺乳類蛋白質の適切な翻訳後改変を行うことができる。最初の転写物の適切なプロセシング、グリコシル化、燐酸化、および都合よくは、遺伝子産物の細胞質膜挿入のための細胞機構を有する真核細胞を、GDF受容体ポリペプチドまたはその機能的ペプチド部分を発現させるための宿主細胞として用いることができる。 発現を指示するために組換えウイルスまたはウイルスエレメントを利用する哺乳類細胞系を操作することができる。例えば、アデノウイルス発現ベクターを用いる場合、GDF受容体コード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三連リーダー配列にライゲーションすることができる。または、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを用いることができる(Mackettら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415〜7419、1982;Mackettら、J. Virol. 49:857〜864、1984;Panicaliら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927〜4931、1982)。染色体外エレメントとして複製することができるウシ乳頭腫ウイルスベクターは特に有用である(Sarverら、Mol. Cell Biol. 1:486、1981)。このDNAがマウス細胞に流入した後まもなく、プラスミドは細胞あたり約100〜200コピーに複製する。挿入されたcDNAの転写は、宿主細胞染色体へのプラスミドの組み込みを必要とせず、それによって高レベル発現が得られる。これらのベクターは、プラスミドに、例えばneo遺伝子のような選択マーカーを含めることによって安定な発現のために用いることができる。または、レトロウイルスゲノムは、宿主細胞にGDF受容体遺伝子を導入してその発現を指示することができるベクターとして用いるために改変することができる(ConeとMulligan、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349〜6353、1984)。高レベル発現はまた、メタロチオネインIIAプロモーターおよび熱ショックプロモーターを含むがこれらに限定されない誘導型プロモーターを用いても行うことができる。 組換え蛋白質を高い収率で長期間産生させるためには、安定な発現が好ましい。ウイルスの複製開始点を含む発現ベクターを用いる以外に、宿主細胞をプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネータ、およびポリアデニル化部位のような適当な発現制御エレメント、ならびに選択マーカーによって制御されるGDF受容体cDNAによって形質転換することができる。組換えプラスミドにおける選択マーカーは、選択に対する抵抗性を付与することができ、それによって細胞はプラスミドをその染色体に安定に組み込まれ、増殖してコロニーを形成することができ、これをクローニングして細胞株に増殖させることができる。例えば、外来DNAの導入後、操作された細胞を栄養に富む培地において1〜2日間増殖させた後、選択培地に切り替える。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223、1977)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaとSzybalski、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026、1982)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817、1980)遺伝子を含むがこれらに限定されない多くの選択系を用いることができ、これらはそれぞれ、tk-、hgprt-、またはaprt-細胞において用いることができる。同様に、抗代謝剤抵抗性を、メソトレキセートに対する抵抗性を付与するdhfr(Wiglerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567、1980;O'Hareら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527、1981);ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与するgpt(MulliganとBerg、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072、1981);アミドグリコシドG-418に対する抵抗性を付与するneo(Colberre-Garapinら、J. Mol. Biol. 150:1、1981);およびハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するhygro(Santerreら、Gene 30:147、1984)遺伝子に関して選択するための基礎として用いることができる。細胞にトリプトファンの代わりにインドールを用いさせるtrpB;細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを用いさせるhisD(Hartman and Mulligan、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047、1988);およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMO(McConlogue、Curr. Comm. Mol. Biol. (コールドスプリングハーバー研究所出版、1987))に対する抵抗性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)を含むさらなる選択遺伝子も同様に記載されている。 宿主が真核細胞である場合、リン酸カルシウム共沈殿物のようなDNAトランスフェクション法、マイクロインジェクション、電気穿孔、リポソームに封入されたプラスミドの挿入、またはウイルスベクターのような従来の機械的技法を用いることができる。真核細胞も同様に、本発明のGDF受容体をコードするDNA配列と、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子のような選択的表現型をコードする第二の外来DNA分子とによって同時形質転換することができる。もう一つの方法は、真核細胞を一過的に感染または形質転換して、蛋白質を発現させるために、シミアンウイルス40(SV40)、またはウシ乳頭腫ウイルスのような真核細胞ウイルスベクターを用いることである(Gluzman、Eukaryotic Viral Vectors(コールドスプリングハーバー研究所出版、1982))。 本発明はまた、その細胞がGDF受容体ポリペプチドを発現して、GDF受容体をコードするDNAを含む、安定な組換え型細胞株を提供する。適した細胞タイプには、NIH 3T3細胞(マウス)、C2C12細胞、L6細胞、およびP19細胞が含まれるがこれらに限定されない。C2C12細胞およびL6筋芽細胞は、培養において自然に分化して、特定の増殖条件によって筋管を形成する(YaffeとSaxel、Nature 270:725〜727、1977;Yaffe、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 61:477〜483、1968)。P19は胎児癌細胞株である。そのような細胞は、例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)の細胞株カタログに記載されている。これらの細胞は、周知の方法によって安定に形質転換することができる(例えば、Ausubelら、上記、1995、第9.5.1〜9.5.6章を参照のこと)。 GDF受容体は、本明細書に記載する誘導型または構成的調節エレメントを用いて本発明の組換えポリヌクレオチドから発現させることができる。望ましい蛋白質コード配列および機能的に結合したプロモーターを、直線型分子となりうる、または共有結合によって閉環した環状分子となりうる非複製DNA(またはRNA)分子のいずれかとしてレシピエント細胞に導入することができる。所望の分子の発現は、導入された配列の一過的な発現によって起こりうる、またはポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞染色体に組み込まれることによって、より永続的な発現を可能にすることによって、細胞において安定に維持することができる。したがって、細胞は、安定または一過的に形質転換した(トランスフェクトした)細胞となりうる。 用いることができるベクターの例は、宿主細胞染色体に所望の遺伝子配列を組み込まれることができるベクターである。その染色体に導入されたDNAを安定に組み込まれている細胞は、また、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする一つまたはそれ以上のマーカーを導入することによって選択することができる。一般的な酵母の栄養要求マーカーであるleu2、またはura3のようなマーカーは、宿主において栄養要求性を補うことができ;殺虫剤抵抗性、例えば抗生物質または銅等のような重金属イオンに対する抵抗性を付与することができる。選択マーカー遺伝子は、発現すべきDNA遺伝子配列に直接連結することができ、または同時トランスフェクションによって同じ細胞に導入することができる。 導入された配列は、レシピエント宿主において自律的に複製することができるプラスミドまたはウイルスベクターに組み込まれることができる。多様なベクターをこの目的のために用いることができる。特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択するために重要な要因には、ベクターを含むレシピエント細胞を認識してベクターを含まない細胞から選択することができる容易さ、特定の宿主細胞において望ましいベクターのコピー数;ならびに異なる種の宿主間でベクターを「往復させる」ことができるために望ましいか否かが含まれる。 哺乳類宿主に関して、いくつかのベクター系が発現のために利用できる。一つのクラスのベクターは、動物ウイルス、例えばウシ乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、またはSV40ウイルスに由来する自律的に複製する染色体外プラスミドを提供するDNAエレメントを利用する。第二のクラスのベクターには、ワクシニアウイルス発現ベクターが含まれる。第三のクラスのベクターは、宿主染色体に所望の遺伝子配列を組み込まれることに依存する。導入されたDNAをその染色体に安定に組み込んだ細胞はまた、一つまたはそれ以上のマーカー遺伝子(上記のような)を導入することによっても選択することができ、これによって発現ベクターを含む宿主細胞を選択することができる。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結することができ、または同時トランスフェクションによって同じ細胞に導入することができる。コードされるmRNAまたはペプチドの最適な合成を提供するために、例えば、スプライスシグナル、転写プロモーターまたはエンハンサー、および転写または翻訳終了シグナルを含む、さらなるエレメントを含むことができる。適当な調節エレメントを組み込んだcDNA発現ベクターは、当技術分野で周知である(例えば、Okayama、Mol. Cell Biol. 3:280、1983を参照のこと)。 構築物を含むベクターまたはDNA配列を発現のために調製した後、DNA構築物を適当な宿主に導入することができる。ポリヌクレオチドを細胞に導入するために、例えば、プロトプラスト融合、燐酸カルシウム沈殿、および電気穿孔のようなトランスフェクションもしくは形質転換法、または他の従来の技法、例えばベクターがウイルスベクターである場合には感染を含む様々な方法を用いることができる。 本発明はまた、組換えGDF受容体を発現する細胞を有するトランスジェニック動物も提供する。そのようなトランスジェニック動物は、脂肪含有量が減少している、筋重量が増加している、またはその双方であるように選択することができ、したがって、筋および蛋白質含有量が高く、脂肪およびコレステロール含有量が低い食品源として有用となりうる。動物は、GDF、特にミオスタチンの産生が正常「レベル」に維持されているが、ミオスタチン受容体の産生量が減少しているか、または完全に破壊されて、その結果、ミオスタチンとの結合能が減少し、その結果、脂肪またはコレステロールレベルを増加させることなく、筋組織が正常レベル以上となる動物の細胞が得られるように、その生殖細胞および体細胞の染色体で改変されている。したがって、本発明にはまた、動物によって提供される食品が含まれる。そのような食品は、筋組織の増加のために栄養的価値が増加している。本発明のヒト以外のトランスジェニック動物には、ウシ、ブタ、ヒツジ、およびトリ動物が含まれると共に、他の脊椎動物が含まれ、さらにトランスジェニック無脊椎動物が含まれる。 本発明はまた、筋重量が増加した動物食品を作製する方法を提供する。そのような方法には、動物の前核胚の生殖細胞の遺伝子構築を改変すること、胚を仮親雌性動物の卵管に埋め込むこと、それによって胚を妊娠満期まで成熟させること、導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の存在に関して子孫を調べること、さらなる導入遺伝子陽性子孫を得るために導入遺伝子陽性子孫を交配すること、および食品を得るために子孫を処理することが含まれうる。生殖細胞の改変は、ミオスタチン受容体蛋白質の産生をコードする天然に存在する遺伝子の発現を減少または阻害するように遺伝子組成物を改変させることを含む。例えば、導入遺伝子は、ミオスタチン受容体をコードするポリヌクレオチドに対して特異的であるアンチセンス分子を含みうる、内因性のミオスタチン受容体遺伝子もしくは導入遺伝子において置換もしくは介在する非機能的配列を含みうる;またはミオスタチン受容体拮抗剤、例えば、ドミナントネガティブAct RIIBのようなドミナントネガティブミオスタチン受容体をコードしうる。 本明細書において用いられるように、「動物」という用語は、如何なるトリ、魚、またはヒトを除く哺乳類も意味し、これには、胚または胎児段階を含む如何なる発達段階も含まれる。ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ウサギ等のような家畜動物;マウスのような齧歯類;およびネコおよびイヌのようなペットも「動物」という用語の意味に含まれる。さらに、「生物」という用語は、本明細書において上記の動物が含まれると共に、例えばは虫類および両生類のような他の脊椎動物と共に上記のような無脊椎動物を含む他の真核生物を含むように用いられる。 本明細書において用いられるように、動物または生物に関連して用いられる「トランスジェニック」という用語は、動物または生物の細胞が、細胞によって安定に維持される外因性のポリヌクレオチド配列を含むように遺伝子操作されていることを意味する。操作は、例えばポリヌクレオチドのマイクロインジェクション、またはポリヌクレオチドを含む組換えウイルスによる感染となりうる。このように、「トランスジェニック」という用語は、本明細書において一つまたはそれ以上の細胞が、細胞の染色体に組み込まれうる、または酵母の人工染色体に操作される場合のように、染色体外で複製するポリヌクレオチドとして維持することができる、組換えポリヌクレオチドを有する細胞(生物)を意味するために用いられる。「トランスジェニック動物」という用語には、また、「生殖系列」トランスジェニック動物が含まれる。生殖系列トランスジェニック動物は、遺伝情報が生殖系列の細胞に取り込まれて組み込まれていて、したがって子孫に情報伝達能を付与するトランスジェニック動物である。そのような子孫が実際にその情報のいくつかまたは全てを有する場合、子孫も同様にトランスジェニック動物であると見なされる。本発明はさらにトランスジェニック生物を含む。 トランスジェニック生物は、そのゲノムが初期胚もしくは受精卵のインビトロ操作によって改変されている、または特異的遺伝子ノックアウトを誘導するための如何なるトランスジェニック技術によっても改変されている如何なる生物ともなりうる。「遺伝子ノックアウト」という用語は、機能の完全な喪失に至る細胞におけるまたはインビボでの遺伝子の標的化破壊を意味する。トランスジェニック動物における標的遺伝子は、例えば相同的組換えによって、または細胞における遺伝子の機能を破壊する他の如何なる方法によって、非機能的にすべき遺伝子にターゲティングした挿入によって非機能的にされうる。 本発明の実践において用いられる導入遺伝子は、改変されたGDF受容体コード配列を含むDNA配列となりうる。好ましくは、改変GDF受容体遺伝子は、胚性幹細胞における相同的ターゲティングによって破壊される遺伝子である。例えば、GDF受容体遺伝子の完全な成熟C末端領域を欠失させることができる(実施例13を参照のこと)。選択的に、破壊(または欠失)は、もう一つのポリヌクレオチド、例えば非機能的GDF受容体配列の挿入または置換を伴うことができる。「ノックアウト」表現型はまた、生物の細胞にアンチセンスGDF受容体ポリヌクレオチドを導入もしくは発現することによって、または細胞において抗体もしくはドミナントネガティブGDF受容体を発現することによって、付与することができる。適当であれば、GDF受容体活性を有する蛋白質をコードするが、遺伝子コードの縮重のために天然に存在するGDF遺伝子配列とはヌクレオチド配列が異なるポリヌクレオチドを、本明細書において、切断型、対立遺伝子変種および種間相同体として用いることができる。 本発明はまた、GDF受容体に特異的に結合する抗体、および受容体とGDFとの結合を遮断する抗体を提供する。そのような抗体は、例えば、筋組織に関連した細胞増殖障害のような病態を改善するために有用となりうる。 GDF受容体、特にミオスタチン受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体は、骨格筋の発達を増加させうる。請求の方法の好ましい態様において、GDF受容体モノクローナル抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを、筋消耗性疾患、神経筋障害、筋萎縮、加齢等のような病態を有する患者に投与する。GDF受容体抗体、特に抗ミオスタチン受容体抗体も同様に、筋ジストロフィー、脊髄損傷、外傷損傷、先天性閉塞性肺疾患(COPD)、AIDS、またはカヘキシアのような病態を有する患者に投与することができる。 好ましい態様において、抗ミオスタチン受容体抗体を静脈内、筋肉内、または皮下注射によって筋消耗性疾患または障害を有する患者に投与する;好ましくは、モノクローナル抗体は約0.1 μg/kg〜約100 mg/kgの用量範囲で;より好ましくは約1μg/kg〜75 mg/kg;最も好ましくは約10 mg/kg〜50 mg/kgの範囲内で投与する。抗体は、例えば、ボーラス注入またはゆっくりとした注入によって投与することができる。30分〜2時間かけての遅い注入が好ましい。抗ミオスタチン受容体抗体、または他の抗GDF受容体抗体は、患者に投与するために適した製剤に調製することができる。そのような製剤は当技術分野で既知である。 投与レジメは、ミオスタチン受容体蛋白質の作用を改変する様々な要因、例えば、望ましい組織形成量、組織損傷部位、損傷組織の状態、創傷の大きさ、損傷組織のタイプ、患者の年齢、性別、および食事、感染の重症度、投与時間、ならびに他の臨床要因を考慮して主治医によって決定されるであろう。用量は、溶解に用いられるマトリクスのタイプ、および組成物において用いられる抗ミオスタチン受容体抗体のような作用物質のタイプによって変化しうる。一般的に、静脈内、筋肉内、または皮下注射のような全身または注射による投与。投与は一般的に、最小に有効である用量で開始し、陽性作用が認められるまで予め選択した時間経過について用量を増加する。その後、用量の漸増は、現れうる如何なる副作用も考慮に入れて、作用が対応して増加するレベルまでの増加に制限する。筋重量を増加させるために役立ちうるIGFI(インスリン様増殖因子I)、ヒト、ウシ、またはニワトリの成長ホルモンのような他の既知の増殖因子を最終組成物に加えても、用量に影響を及ぼしうる。抗ミオスタチン受容体抗体を投与する態様において、抗体は一般的に、約0.1 μg/kg〜約100 mg/kg;より好ましくは約10 mg/kg〜50 mg/kgの用量範囲内で投与される。 本明細書において用いられるように、「抗体」という用語はその最も広い意味において、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体と共に、そのような抗体の抗原結合断片を含むように用いられる。本発明の方法において有用な抗体、またはその抗原結合断片は、例えば、GDF受容体、例えばミオスタチン受容体のエピトープに対する特異的結合活性を有するという特徴を有する。さらに、上記のように、本発明の抗体は、プロミオスタチンポリペプチドのペプチド部分、特にミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド部分に特異的に結合する抗体となりうる。GDF受容体抗体の調製および特徴を例として示す以下の方法は、ミオスタチンプロドメインに特異的に結合する抗体、プロミオスタチンポリペプチドに特異的に結合して、プロミオスタチンのミオスタチンへの蛋白質分解切断を減少または阻害する抗体等を含む、本発明のさらなる抗体の調製および特徴付けに適用可能であると認識されるであろう。 抗体に関連して用いる場合の「特異的に結合する」または「特異的結合活性」という用語は、抗体と特定のエピトープとの相互作用が解離定数少なくとも約1×10-6、一般的に少なくとも約1×10-7、通常、少なくとも約1×10-8、および特に少なくとも約1×10-9または1×10-10またはそれ未満を有することを意味する。そのため、GDF受容体のエピトープに対する特異的結合活性を保持している抗体のFab、F(ab')2、Fd、およびFv断片は抗体の定義に含まれる。本発明の目的に関して、例えば、ミオスタチン受容体のエピトープに特異的に反応する抗体は、抗体がTGF-βまたはBMP受容体と比較してミオスタチン受容体に対して少なくとも2倍大きい結合親和性、一般的に少なくとも5倍大きい結合親和性、および特に少なくとも10倍大きい結合親和性を有すれば、TGF-β受容体またはBMP受容体と実質的に反応しないと見なされる。 本明細書において用いられる「抗体」という用語には、天然に存在する抗体と共に、例えば一本鎖抗体、キメラ、双機能、およびヒト化抗体と共にその抗原結合断片を含む天然に存在しない抗体が含まれる。そのような天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えによって産生することができ、または例えば可変重鎖および可変軽鎖からなる組み合わせライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる(参照として本明細書に組み入れられる、Huseら、Science 246:1275〜1281(1989)を参照のこと)。例えばキメラ、ヒト化、CDR接合、一本鎖、および双機能抗体を作製するこれらおよび他の方法は、当業者に周知である(WinterとHarris、Immunol. Today 14:243〜246、1993;Wardら、Nature 341:544〜546、1989;HarlowとLane、「Antibodies:A Laboratory Manual」、(コールドスプリングハーバー研究所出版、1988);Hilyardら、「蛋白質の操作:実際のアプローチ(Protein Engineering:A Practical Approach)」、(IRS出版、1992);Borrabeck、「抗体の操作(Antibody Engineering)」、第2版、(オックスフォード大学出版、1995);そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。 GDF受容体に特異的に結合する抗体は、免疫原として受容体を用いて、例えば、TGF-β I型もしくはII型受容体、Act RIB、Act RIIA、もしくはAct RIIBのようなアクチビン受容体、またはBMP RII、BMP RIA、およびBMP RIBのようなBMP受容体と交叉反応する抗体を除去することによって作製することができる(Massague、上記1998を参照のこと)。本発明の抗体は、TGF-β、アクチビン、またはBMP受容体に存在しないミオスタチン受容体のペプチド部分を用いて作製することができる。同様に、ミオスタチンプロドメインに特異的に結合する抗体は、プロドメインまたはその機能的ペプチド部分を免疫原として用いて作製することができる。そのようなペプチドが非免疫原性である場合、ウシ血清アルブミン(BSA)もしくはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のような担体蛋白質にハプテンをカップリングさせることによって、またはペプチド部分を融合蛋白質として発現させることによって免疫原性にすることができる。様々な他の担体分子およびハプテンを担体分子にカップリングさせる方法は、当技術分野で周知である(例えば、HarlowとLane、上記、1988を参照のこと)。 望ましければ、本発明の方法において有用な抗体または他の作用物質を組み込まれるキットを調製することができる。そのようなキットは、作用物質の他に、作用物質を被験者に投与するために溶解されうる薬学的組成物を含みうる。キットはまた、抗体を検出するための試薬、GDF受容体に対する抗体の特異的結合を検出する試薬を含みうる。抗体を標識する、またはそうでなければ同定するために有用なそのような検出可能試薬は、本明細書に記述され、当技術分野で既知である。 例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類においてポリクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野で周知である(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Greenら、「ポリクローナル抗血清の作製(Production of Polyclonal Antisera)」、「免疫化学プロトコール(Immunochemical Protocols)」、Manson編、ヒュマナ出版、1992年、1〜5頁;Coliganら、「ウサギ、ラット、マウスおよびハムスターにおけるポリクローナル抗血清の作製(Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats, Mice and Hamsters)」、Curr. Protocols Immunol.(1992)、2.4.1章を参照のこと)。さらに、モノクローナル抗体は、当技術分野で周知で日常的な方法を用いて得ることができる(HarlowとLane、上記、1988)。例えば、ミオスタチン受容体またはそのエピトープ断片によって免疫したマウスからの脾細胞を、SP/02骨髄腫細胞のような適当な骨髄腫細胞株に融合させてハイブリドーマ細胞を産生する。クローニングしたハイブリドーマ細胞株は、適当な特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するクローンを同定するために標識抗原を用いてスクリーニングすることができ、所望の特異性および親和性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離して、これを連続的な抗体原として利用することができる。抗体は、ミオスタチン受容体と特異的に結合できないことに関してさらにスクリーニングすることができる。そのような抗体は、例えば、臨床で用いるための標準キットを調製するために有用である。例えば、一本鎖抗ミオスタチン受容体抗体を発現する組換えファージも同様に、標準キットを調製するために用いることができる抗体を提供する。 モノクローナル抗体を調製する方法は周知である(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、KohlerとMilstein、Nature 256:495、1975を参照のこと;同様に、Coliganら、上記、1992、2.5.1〜2.6.7章を参照のこと;HarlowとLane、上記、1988も参照のこと)。簡単に説明すると、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射すること、血清試料を採取して抗体産生の存在を確認すること、Bリンパ球を得るために脾臓を切除すること、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを産生すること、ハイブリドーマをクローニングすること、抗原に対して抗体を産生する陽性クローンを選択すること、およびハイブリドーマ培養から抗体を単離することによって得ることができる。 モノクローナル抗体は、例えば、プロテイン-Aセファロースによるアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィー(Coliganら、上記、1992、2.7.1〜2.7.12章および2.9.1〜2.9.3章を参照のこと;同様に、参照として本明細書に組み入れられる、Barnesら、「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」、Meth. Molec. Biol. 10:79〜104(ヒュマナ出版、1992)を参照のこと)を含む、十分に確立された多様な技術によってハイブリドーマ培養から単離および精製することができる。モノクローナル抗体をインビトロおよびインビボで増幅させる方法は、当業者に周知である。インビトロでの増幅は、選択的に、仔ウシ胎児血清のような哺乳類の血清、または微量元素および正常マウス腹腔滲出細胞、脾細胞、骨髄マクロファージのような増殖維持補助剤を補充したダルベッコ改変イーグル培地またはRPMI 1640培地のような適した培養培地において行うことができる。インビトロでの産生は、比較的純粋な抗体調製物を提供し、所望の抗体の大量を産生するために規模を拡大することができる。大規模ハイブリドーマ培養は、エアリフトリアクターにおいて均一な浮遊培養によって、連続攪拌リアクターにおいて、または固定もしくは捕獲細胞培養において行うことができる。インビボでの増幅は、抗体産生腫瘍の増殖を引き起こすために、親細胞と組織適合性の哺乳類、例えば同系マウスに細胞クローンを注入することによって行うことができる。選択的に、注射前に動物を炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)のような油によってプライミングする。1〜3週間後、所望のモノクローナル抗体を動物の体液から回収する。 本明細書に開示の抗体の治療応用も同様に、本発明の一部である。例えば、本発明の抗体はまた、ヒト以下の霊長類抗体に由来しうる。ヒヒにおいて治療的に有用な抗体を作製する一般的な技術は、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Goldenbergら、国際公開公報第91/11465号(1991);およびLosmanら(Int. J. Cancer 46:310、1990)に認められうる。 治療的に有用な抗GDF受容体抗体も同様に、「ヒト化」モノクローナル抗体に由来しうる。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域からのマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移して、その後マウス相対物のフレームワーク領域においてヒト残基を置換することによって産生される。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体成分を用いれば、マウス定常領域の免疫原性に関連した起こりうる問題が回避される。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングする一般技術は既知である(例えば、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、Orlandiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833、1989を参照のこと)。ヒト化モノクローナル抗体を産生する技術も同様に既知である(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Jonesら、Nature 321:522、1986;Riechmanら、Nature 332:323、1988;Verhoeyenら、Science 239:1534、1988;Carterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285、1992;Sandhu、Crit. Rev. Biotechnol. 12:437、1992;Singerら、J. Immunol. 150:2844、1993を参照のこと)。 本発明の抗体はまた、組み合わせ免疫グロブリンライブラリから単離されたヒト抗体断片に由来しうる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Barbasら、「METHODS:A Companion to Methods in Immunology」 2:119、1991;Winterら、Ann. Rev. Immunol. 12:433、1994を参照のこと)。ヒト免疫グロブリンファージライブラリを産生するために有用なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、ストラタジーンクローニングシステムズ社(ラホヤ、カリフォルニア州)から得ることができる。 本発明の抗体はまた、ヒトモノクローナル抗体に由来しうる。そのような抗体は、抗原チャレンジに反応して特異的ヒト抗体を産生するように「操作」されているトランスジェニックマウスから得られる。この技術において、ヒト重鎖および軽鎖座のエレメントを、内因性重鎖および軽鎖座の標的化破壊を含む胚性幹細胞株に由来するマウスの系統に導入する。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いてヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体Greenら(Nature Genet. 7:13、1994);Lonbergら(Nature 368:856、1994);およびTaylorら(Int. Immunol. 6:579、1994)に記載されている。 本発明の抗体断片は、抗体の蛋白質分解加水分解によって、または断片をコードするDNAを大腸菌において発現させることによって調製することができる。抗体断片は、従来の方法によって抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、F(ab')2と呼ばれる5S断片を提供するためにペプシンによる抗体の酵素的切断によって産生することができる。この断片は、チオール還元剤、および選択的に、ジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いてさらに切断することができ、3.5S Fab'一価断片を生じる。または、ペプシンを用いる酵素的切断は、二つの一価Fab'断片とFc断片を直接生じる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Goldenberg、米国特許第4,036,945号、および米国特許第4,331,647号ならびにその中に含まれる参考文献;Nisonhoffら、Arch. Biochem. Biophys. 89:230、1960;Porter、Biochem. J. 73:119、1959;Edelmanら、Meth. Enzymol. 1:422(アカデミック出版、1967)を参照のこと;同様にColiganら、上記、1992、第2.8.1〜2.8.10および第2.10.1〜2.10.4章も参照のこと)。 一価軽鎖/重鎖断片を形成するために、重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝的技術のような抗体を切断する他の方法も同様に、断片が無傷の抗体によって認識される抗原に特異的に結合する限り、用いることができる。例えば、FV断片は、VHとVL鎖との会合を含む。この会合は非共有結合となりうる(Inbarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:2659、1972)。または、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、またはグルタルアルデヒドのような化学物質によってクロスリンクすることができる(Sandhu、上記、1992)。好ましくは、FV断片は、ペプチドリンカーによって結合したVHおよびVL鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合蛋白質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって結合したVHおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入して、これをその後大腸菌のような宿主細胞に導入する。組換え型宿主細胞は、二つのVドメインを架橋するリンカーペプチドによって一つのポリペプチド鎖を合成する。sFvを作製する方法は、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Whitlowら(「Methods:A Comparison to Methods in Enzymology」 2:97、1991);Birdら(Science 242:423〜426、1988);Ladnerら(米国特許第4,946,778号);Packら(Bio/Technology 11:1271〜1277、1993)に記述されている;同様に、Sandhu、上記、1992も参照のこと。 抗体断片のもう一つの形は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、関係する抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Larrickら、「Methods:A Comparison to Methods in Enzymology」 2:106、1991を参照のこと)。 本発明はまた、GDF受容体ポリペプチドを同定する方法も提供する。そのような方法は、例えば、GDFポリペプチドを含む成分と、完全長の受容体または切断型受容体を発現する細胞を、GDFを受容体に結合させるために十分な条件でインキュベートすること、GDFポリペプチドと受容体との結合を測定すること、および受容体を単離することによって行うことができる。GDFは、既知のGDFs(例えば、GDF-1〜16)の如何なるものともなりうるが、好ましくはGDF-8(ミオスタチン)またはGDF-11である。受容体を単離する方法は、下記の実施例においてより詳細に説明する。したがって、本発明はまた、実質的に精製されたGDF受容体のみならず、天然に存在するGDF受容体より少ないアミノ酸残基を有するGDF受容体のペプチドおよびペプチド誘導体を提供する。そのようなペプチドおよびペプチド誘導体は、筋消耗性症候群の研究およびより有効な治療の開発において、研究および診断ツールとして有用である。 本発明はさらにGDF受容体変種を提供する。本明細書において用いられるように、「GDF受容体変種」という用語はGDF受容体の構造の少なくとも一部を刺激する分子を意味する。GDF受容体変種は、GDF結合を減少または阻害して、それによって本明細書に開示の病態を改善するために有用となりうる。GDF受容体変種の例には、GDF受容体の可溶性細胞外ドメインのような切断型GDF受容体、キナーゼ活性を欠損するドミナントネガティブAct RIIB受容体のようなドミナントネガティブGDF受容体、またはその他の切断型もしくは変異体GDF受容体が含まれるがこれらに限定されない。 本発明は、天然に存在するGDF受容体のペプチドおよびペプチド誘導体のみならず、変異体GDF受容体およびGDF、例えばミオスタチンに特異的に結合するGDF受容体の化学合成された誘導体を含むGDF受容体変種にも関する。例えば、GDF受容体のアミノ酸配列の変化が本発明において考慮される。GDF受容体は、蛋白質をコードするDNAを変化させることによって変化させることができる。好ましくは、同じまたは類似の特性を有するアミノ酸を用いて、保存的アミノ酸変化のみを行う。例となるアミノ酸置換には、アラニンからセリンへの変化;アルギニンからリジン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リジンからアルギニン、グルタミン、またはグルタミン酸;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;バリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が含まれる。 本発明にとって有用な変種は、そのそれぞれのGDFsに対して特異的結合能を保持しているGDF受容体の類似体、相同体、変異蛋白質および模倣体を含む。もう一つの態様において、変種がGDFと特異的に相互作用するか否かによらず、ドミナントネガティブ活性を有する変種GDF受容体も同様に考慮される。GDF受容体のペプチドは、これらの能力を有するGDF受容体のアミノ酸配列の一部を意味する。変種は、化学修飾によって、蛋白質分解酵素の消化によって、またはその組み合わせによってGDF受容体自身から直接産生することができる。さらに、アミノ酸残基から直接ポリペプチドを合成する方法と共に遺伝子操作技術を用いることができる。 ペプチドは、αアミノ基のt-BOCまたはFMOC保護のような一般的に用いられる方法によって合成することができる。いずれの方法も、それによってペプチドのC末端から開始してアミノ酸一個ずつがそれぞれの段階で付加される、段階的合成を含む(Coliganら、「Current Protocols in Immunology」、(ウィリーインターサイエンス社、1991)、第9章、参照として本明細書に組み入れられる)。本発明のペプチドはまた、0.1〜1.0 mMolアミン/gポリマーを含むコポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)を用いて、周知の固相ペプチド合成法(そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85:2149、1962;StewartとYoung、「Solid Phase Peptide Synthesis」、(Freeman、サンフランシスコ、1969)、27〜62頁を参照のこと)によって合成することができる。化学合成が終了すると、ペプチドを、液体HF-10%アニソールによる0℃で約1/4〜1時間の処置によって脱保護してポリマーから切断することができる。試薬を蒸発させた後、1%酢酸溶液によってペプチドをポリマーから抽出して、次にこれを凍結乾燥すると粗材料が得られる。これは通常、5%酢酸を溶媒として用いるセファデックスG-15上でのゲル濾過のような技術によって精製することができる。カラムの適当な画分を凍結乾燥すると、均一なペプチドまたはペプチド誘導体が得られ、これをアミノ酸解析、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、紫外線吸収分光法、モル旋光度、溶解度のような標準的な技術によって特徴を調べ、固相エドマン分解によって定量することができる。 GDF受容体の結合および機能を模倣する(「模倣体」)非ペプチド化合物は、Saragoviら(Science 253:792〜95、1991、参照として本明細書に組み入れられる)によって概要されるアプローチによって産生することができる。模倣体は、蛋白質二次構造のエレメントを模倣する分子である(Johnsonら、「Peptide Turn Mimetics」、Biotechnology and Pharmacy、(Pezzutoら編、ChapmanとHoll、ニューヨーク、1993、参照として本明細書に組み入れられる)。ペプチド模倣体を用いる背後の基礎となる原理は、蛋白質のペプチド骨格が、主に、分子相互作用を促進する方向にアミノ酸側鎖を向けるように存在するという点である。本発明の目的に関して、適当な模倣体は、GDF受容体の同等物であると見なされうる。 より長いペプチドは、ペプチドを互いに連結する「本来の化学」ライゲーション技術によって産生することができる(Dawsonら、Science 266:776、1994、参照として本明細書に組み入れられる)。変種は、ゲノムまたはcDNAクローニング法を用いる組換え技法によって作製することができる。部位特異的および領域特異的変異誘発技術を用いることができる(Ausubelら、上記、1989および1990〜1993補則、第1巻、第8章を参照のこと;「Protein Engineering」、(OxenderとFox編、A.リスインク、1987)。さらに、リンカースキャンおよびPCR媒介技術を変異誘発のために用いることができる(Erlich、「PCR Technology」、(ストックトン出版、1989);Ausubelら、上記、1989〜1993)。上記の技術のいずれかと共に用いられる蛋白質の配列決定、構造およびモデリングアプローチは、上記に引用される参考文献に開示される。 本発明はまた、GDFのその受容体に対する特異的結合を遮断するGDF受容体結合作用物質を提供する。そのような作用物質は例えば、上記の筋消耗性障害の研究における研究および診断ツールとして有用であり、本明細書に開示の方法、例えば、分子モデリング法を用いて同定することができる。さらに、GDF受容体結合作用物質を含む薬学的組成物は、有効な治療物質となりうる。本発明の意味において、「GDF受容体結合作用物質」という句は、GDF受容体、例えばGDF-1〜GDF-16の天然に存在するリガンド、GDF受容体の合成リガンド、または天然もしくは合成リガンドの適当な誘導体を指す。リガンドの決定および単離は、当技術分野で周知である(Lerner、Trends Neurosci. 17:142〜146、1994、参照として本明細書に組み入れられる)。 なおもう一つの態様において、本発明は、GDF受容体とGDFとの結合を妨害するGDF受容体結合作用物質に関する。そのような結合作用物質は、競合的阻害、非競合的阻害、または不競合的阻害によって妨害することができる。GDF受容体と一つまたはそれ以上のGDFとの正常な結合の妨害によって、有用な薬理作用を得ることができる。 本発明はまた、GDF受容体に結合する組成物を同定する方法を提供する。方法には、組成物を含む成分とGDF受容体とを、成分を特異的に相互作用させるために十分な条件でインキュベートする段階、およびGDF受容体に対する組成物の結合を測定する段階を含む。GDF受容体に結合する組成物には、上記のように、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド、化学化合物および生物作用物質が含まれる。インキュベートする段階には、試験組成物とGDF受容体との接触を可能にして、インビボで起こるような特異的相互作用に適した条件を提供する条件に反応物質を曝露する段階が含まれる。接触は、溶液または固相となりうる。試験リガンド/組成物は、選択的に、上記のように複数の組成物をスクリーニングするための組み合わせライブラリとなりうる。本発明の方法において同定された組成物はさらに、PCR、オリゴマー制限(Saikiら、Bio/Technology 3:1008〜1012、1985、参照として本明細書に組み入れられる)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ解析(Connerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:278、1983、参照として本明細書に組み入れられる)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ法(OLAs)(Landgrenら、Science 241:1077、1988、参照として本明細書に組み入れられる)等(参照として本明細書に組み入れられる、Landgrenら、Science 242:229〜237、1988を参照のこと)のような特異的DNA配列を検出するために通常適用される如何なる方法によって、溶液または固相支持体に結合させた後に、評価、検出、クローニング、配列決定等を行うことができる。 組成物が受容体蛋白質と機能的に複合体を形成することができるか否かを決定するために、外因性の遺伝子によってコードされる蛋白質の蛋白質レベルの変化をモニターすることによって、または本明細書に開示の他の方法によって、外因性遺伝子の誘導をモニターすることができる。外因性遺伝子の転写を誘導することができる組成物が同定されれば、この組成物は、最初の試料試験組成物をコードする核酸によってコードされる受容体蛋白質に特異的に結合することができると結論される。 外因性の遺伝子の発現は、機能的アッセイ法または例えば蛋白質産物のアッセイ法によってモニターすることができる。したがって、外因性遺伝子は、外因性遺伝子の発現が検出されうるためにアッセイ可能な/測定可能な発現産物を提供する遺伝子である。そのような外因性の遺伝子には、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光蛋白質遺伝子、グアニンキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、およびネオマイシンホスホトランスフェラーゼのような抗生物質耐性遺伝子(上記参照)のようなレポーター遺伝子が含まれるがこれらに限定されない。 外因性の遺伝子の発現は、組成物とGDF受容体との特異的相互背用を示し;このように、組成物の結合または遮断を同定して単離することができる。本発明の組成物は、例えば、抽出、沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過等を含む、一般的に用いられる既知の蛋白質精製技術を用いることによって、培養培地または細胞から抽出および精製することができる。組成物は、カラムマトリクスに結合した改変された受容体蛋白質細胞外ドメインを用いるアフィニティクロマトグラフィー、またはヘパリンクロマトグラフィーによって単離することができる。 同様に、上記のようにGDF受容体に結合する化学化合物を同定する組み合わせ化学法も本発明のスクリーニング方法に含まれる。このように、スクリーニング法はまた、望ましければ、物理的(例えば、立体的)ではなく、機能的に拮抗剤または作用剤として作用する変種、結合もしくは遮断剤等を同定するためにも有用である。 以下の実施例は本発明を説明するのであって、制限すると解釈されない。実施例1ミオスタチンは用量依存的に作用する 本実施例は、筋増殖の阻害におけるミオスタチンの活性がインビボでミオスタチン発現レベルに依存することを示す。 ミオスタチンは、骨格筋重量の負の調節物質である(McPherronら、上記、1997;McPherronとLee、上記、1997)。ミオスタチン遺伝子の欠失に関してホモ接合であるミオスタチンノックアウトマウスは、全身体重の25〜30%増加を示した。ホモ接合ノックアウトマウスを調べると、筋重量の増加は、全身の骨格筋重量の約100〜200%増加が原因であることが判明した。 ミオスタチン変異に関してヘテロ接合であるマウスも同様に全身体重が増加した。しかし、ヘテロ接合体の増加重量は、ホモ接合体の重量より小さく、調べた多数の中で一つの年齢と性別の群に有意差を認めたに過ぎなかった。ヘテロ接合マウスが野生型マウスとホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスとのあいだの中間の表現型を有するか否かを調べるために、筋重量の解析をヘテロ接合マウスにも行った。ヘテロ接合マウスから採取した個々の筋の重量は、野生型マウスより約25〜50%多かった。これらの結果は、ミオスタチン遺伝子の欠失に関してヘテロ接合であるマウスは、野生型とホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスの中間の表現型を有することを証明し、ミオスタチンがインビボで用量依存的な作用を生じることを証明している。 これらの結果は、ミオスタチン活性の操作が、筋消耗性疾患およびミオスタチン活性に関連した他の代謝障害を治療するために有用となりうることを示している。さらに、ミオスタチンの用量依存的作用は、ミオスタチン活性の完全な阻害を得なくとも治療効果が得られ、それによって、例えば、特定のレベルの活性が被験者において望ましくない作用を生じる場合には、ミオスタチン活性の調節が可能となることを示している。実施例2ミオスタチンの作用はノックアウトマウスの年齢と共に減少する 本実施例は、野生型マウスとホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスのあいだの体重の差の減少が、変異体マウスの筋重量の減少に関連していることを証明する。 ミオスタチンノックアウトマウスは5ヶ月齢で野生型マウスより体重が約25〜30%多かった(McPherronら、上記、1997)。しかし、総体重の差は、動物が年をとるにつれて、有意に小さくなるかまたは完全に消失した。この作用が、例えば筋の変性のために、または野生型マウスによる比較的大きい体重増加のために、ノックアウトマウスの体重が相対的に失われたことによるか否かを調べるために、筋重量の詳細な解析を年齢の関数として行った。 2ヶ月から17ヶ月のあいだに調べた全ての年齢において、胸筋の重量は野生型同腹子よりホモ接合変異体マウスにおいて有意に重かった。最も劇的な差は、5ヶ月で認められ、その時点で胸筋の重量は変異体マウスにおいて約200%大きかった。胸筋の重量は月齢が高くなるとわずかに減少したが、変異体マウスにおけるこの筋の重量は野生型マウスの2倍以上のままであった。上腕三頭筋、四頭筋、ひ腹筋および足底筋、ならびに前脛骨筋を含む、調べた他の筋の全てにおいて同じ基礎的な傾向を認めた。類似の傾向を雄性および雌性マウスの双方において認めた。これらの結果は、加齢と共に認められた変異体と野生型マウスのあいだの総体重の差の減少が、変異体マウスにおける筋重量のわずかな減少によることを証明している。実施例3ミオスタチンは用量依存的に脂肪の蓄積に影響を及ぼす 本実施例は、ミオスタチンノックアウトマウスが脂肪を蓄積させることができないこと、および脂肪蓄積の減少がインビボでのミオスタチン発現レベルに関連していることを証明する。 実施例2において示されたミオスタチン変異体における筋重量の減少は、野生型動物が最終的に変異体マウスと同じ体重になったという知見を十分には説明できないことから、野生型および変異体マウスにおける脂肪の蓄積量を調べた。雄性マウスの鼠径部、精巣上体、および後腹膜の脂肪体を調べた。2ヶ月齢では野生型および変異体マウスのあいだにこれらの脂肪体のいずれの重量にも差を認めなかった。5〜6ヶ月齢までに、野生型およびヘテロ接合ノックアウトマウスはいずれも広範囲の脂肪体重量を示し、平均すると、脂肪体重量は動物が9〜10ヶ月齢に達するまでに約3倍〜5倍増加した。これらの動物において認められた広範囲の脂肪体重量のために、動物によっては、他よりかなり大きい増加を示した(10倍まで)。 野生型およびヘテロ接合ノックアウトマウスとは対照的に、ミオスタチンホモ接合変異体マウスの脂肪体重量は、比較的狭い範囲に存在し、2ヶ月齢と9〜10ヶ月齢のマウスでは実質的に同じであった。このように、野生型マウスにおける加齢に伴って起こる脂肪蓄積の増加は、ホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスでは認められなかった。ホモ接合変異体マウスにおいて、年齢の関数として、脂肪蓄積にこのような差が認められたことは、筋重量のわずかな減少と共に、野生型マウスが最終的に変異体と同じ総体重となるという知見を十分に説明した。 ヘテロ接合ノックアウトマウスの脂肪体重量の平均値は、9〜10ヶ月齢で野生型マウスとホモ接合変異体マウスの中間であった。この差は、これらおよび野生型マウスにおける脂肪体重量が広範囲であったために統計学的に有意ではなかったが、これらの結果は、それにもかかわらず、ミオスタチンが筋増殖に及ぼすその作用と同様に、脂肪の蓄積に対して用量依存的な作用を有することを示している。実施例4代謝に及ぼすミオスタチンの影響 本実施例は、血清インスリンとグルコースレベルが代謝活性と共にミオスタチン発現レベルによって影響を受けることを証明する。 ミオスタチン変異体マウスにおける骨格筋肥大と脂肪蓄積の欠損が、全身代謝に及ぼす作用によるか否かを決定するために、変異体マウスの代謝プロフィールを調べた。血清トリグリセリドおよび血清コレステロールレベルは、野生型対照マウスと比較してミオスタチン変異体マウスでは有意に低かった(表1)。血清インスリンレベルはまた、ミオスタチン変異体マウスにおいて低いように思われた。しかし、食後および絶食時のグルコースレベルはいずれもホモ接合変異体マウスと野生型マウスにおいて区別できず(表1)、いずれの群のマウスも耐糖能試験において正常な反応を示した。結果は、ホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスが、その血清インスリンレベルが野生型動物より低い場合であっても、血清グルコースの正常レベルを維持することができることを証明している。+/+は野生型マウスを示す;-/-はホモ接合ノックアウトマウスを示す。 代謝速度の差が、変異体マウスにおける脂肪蓄積の欠如を説明することができるか否かを決定するために、野生型および変異体マウスの酸素消費速度を熱量計を用いて比較した。変異体マウスは、野生型対照マウスより低い基礎代謝速度および低い総代謝速度を示した。これらの結果は、ミオスタチン変異体マウスにおける脂肪蓄積の欠損が、代謝活性の速度がより速いためではないことを示している。実施例5ミオスタチンは遺伝的肥満マウスにおける脂肪蓄積に影響を及ぼす 本実施例は、ミオスタチン発現の欠如が、肥満の遺伝子モデルであるマウスにおいて脂肪の蓄積を抑制することを証明する。 ミオスタチン活性の喪失は、正常マウスのみならず肥満マウスにおいても脂肪の蓄積を抑制しうるか否かを決定するために、肥満の遺伝子モデルである(Yenら、FASEB J. 8:479〜488、1994)野鼠致死黄色(Ay)マウスにおけるミオスタチンの変異の影響を調べた。致死黄色変異とミオスタチン変異とに関して二重にヘテロ接合であるマウスを作製して、これらの二重ヘテロ接合マウスの交配によって得られた子孫を調べた。 Ay/a、ミオスタチン-/-二重変異体マウスの全身体重は、Ay/aミオスタチン+/+マウスと比較して劇的に減少した(約9g)。全身体重のこのような減少は、Ay/aミオスタチン、-/-二重変異体が、Ay/aミオスタチン+/+マウスより約2〜3倍多い骨格筋を有することを考慮すると、さらにより劇的であった。二重変異体は、Ay/aミオスタチン+/+マウスより筋肉が約10 g多く、したがって、組織の残りにおける総重量の減少は約19 gであった。 全身体重の減少は、全体的な脂肪含有量の減少が原因であった。表2に示すように、傍子宮および後腹膜脂肪体の重量は、Ay/aミオスタチン+/+マウスと比較すると、Ay/a、ミオスタチン-/-二重変異体では5倍〜6倍減少した。これらの結果は、ミオスタチン変異の存在が肥満における脂肪の蓄積を劇的に抑制することを示している。 ミオスタチン変異の存在はまた、グルコース代謝に劇的な影響を及ぼした。ミオスタチン変異を欠損する野鼠致死マウスは、大いに異常な耐糖能試験結果を示し、血清グルコースレベルはしばしば450〜600 mg/dlに達し、4時間のあいだに基準値レベルにごくゆっくりと回復する。雌性野鼠致死マウスは雄性マウスより影響を受けにくく、雌性マウスによっては、先に記述したようにこの試験においてほぼ通常に反応した(Yenら、上記、1994を参照のこと)。対照的に、Ay/aミオスタチン-/-マウスはわずかに異常な耐糖能試験を示したが、これらの動物のいずれもAy/aミオスタチン+/+マウスにおいて認められた肉眼的な異常を示さなかった。 これらの結果は、ミオスタチン変異が少なくとも部分的に野鼠致死マウスにおいて異常な糖代謝の発達を抑制することを示している。重要なことは、ミオスタチン変異に関してヘテロ接合であるマウスは、ミオスタチン+/+およびミオスタチン-/-マウスと比較して中間の反応を示し、このようにミオスタチンの用量依存的な作用を確認した。実施例6組換えミオスタチンの精製 本実施例は、組換えミオスタチンを調製および単離する方法を提供する。 ミオスタチンの生物活性を解明するために、大量のミオスタチン蛋白質をバイオアッセイ法のために精製した。高レベルのミオスタチン蛋白質を産生する安定なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株は、メソトレキセート選択スキームを用いてジヒドロ葉酸レダクターゼカセットと共にミオスタチン発現カセットを同時増幅することによって作製した(McPherronら、上記、1997)。ミオスタチンは、ヒドロキシアパタイト、レンチルレクチンセファロース、DEAEアガロース、ヘパリンセファロースでの連続分画によって、最も産生量の多い株の条件培地から精製した。銀染色解析によって、これらの四つのカラムクロマトグラフィー段階の後に得られた精製蛋白質(「ヘパリン溶出液」と呼ぶ)は、分子量およそ35キロダルトン(kDa)と12 kDaの二つの分子種からなることが判明した。 精製蛋白質調製物は、二つのミオスタチンプロドメインペプチドと成熟C末端ミオスタチンペプチドのジスルフィド結合二量体との複合体を表すための様々な基準によって決定した。第一に、プロミオスタチン配列の特異的部分に対して作製された抗体を用いるウェスタンブロット解析によって、プロドメインとして35 kDaのバンド、および成熟C末端ペプチドとして12 kDaのバンドが同定された。第二に、非還元条件で、成熟C末端ペプチドに対して作製した抗体と反応する種は、ジスルフィド結合二量体と一致する電気泳動移動度を示した。第三に、プロドメイン対成熟C末端ペプチドのモル比は約1:1であった。第四に、プロドメインと成熟C末端ペプチドは、四つのカラムクロマトグラフィー段階を通して同時に精製された。最後に、C末端領域は、コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを含まないが、成熟C末端ペプチドはレンチルレクチンカラムに結合し、このことは、成熟C末端ペプチドが、可能性があるN結合グリコシル化部位を含むプロドメインペプチドとのその相互作用によってカラムに結合したことを示している。 これらの結果は、遺伝子改変CHO細胞によって産生されたミオスタチンが、蛋白質分解によって処理された形で分泌され、得られたプロドメインと成熟C末端領域とが非共有結合によって会合して、TGF-βに関する記述と類似のように、二つのプロドメインペプチドとC末端蛋白質分解断片のジスルフィド結合二量体とを含む複合体を形成する。TGF-β複合体において、C末端二量体は、不活性な潜在型として存在し(Miyazonoら、J. Biol. Chem. 263:6407〜6415、1988)、活性種は、酸、カオトロピック剤、反応性酸素種、もしくはプラスミンによる処理によって、またはトロンボスピンジンおよびインテグリンαvβ6を含む他の蛋白質との相互作用によって、この潜在型複合体から放出されうる(Lawrenceら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 133:1026〜1034、1985;Lyonsら、J. Cell Biol. 106:1659〜1665、1988;Schultz-CherryとMurphy-Ullrich、J. Cell Biol. 122:923〜932、1993;Barcellos-HoffとDix、Mol. Endocrinol. 10:1077〜1083、1996;Mungerら、Cell 96:319〜328、1999)。さらに、精製プロドメインペプチド(潜在関連ペプチドまたはLAPとしても知られる)をTGF-β複合体に加えると、インビトロおよびインビボで精製C末端二量体の生物活性を阻害する(GentryとNash、Biochemistry 29:6851〜6857、1990;Bottingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5877〜5882、1996)。 プロドメインと成熟C末端ペプチドの複合体からなるヘパリン溶出液は、HPLC C4逆相カラムを用いて精製した。C末端二量体は、プロドメインより速くHPLCカラムより早期に溶出し、このように、プロドメインを含まないC末端二量体を単離することができる。ほとんどプロドメインを含む画分も同様に得られたが、これらの画分は少量のC末端二量体を含んだ。蛋白質のいくつかは、高分子量複合体として存在した。高分子量複合体の特性は不明であるが、還元剤の存在下または非存在下でのウェスタンブロット解析に基づくと、これらの複合体は、少なくとも一つのプロドメインペプチドと一つまたはそれ以上のジスルフィド結合によって結合した一つのC末端成熟ミオスタチンペプチドとを含みうる。実際に、プロペプチド(HPLC画分35〜37)に関して濃縮したHPLC画分に存在する成熟C末端ペプチドのほとんどがこれらの高分子量複合体に存在した。これらの高分子量複合体はおそらく、遺伝子改変されたCHO細胞によって分泌された不適切に折り畳まれた蛋白質を表す。実施例7ミオスタチンはアクチビン受容体と特異的に相互作用する 本実施例は、ミオスタチンが培養細胞上で発現されたアクチビンII型受容体に特異的に結合すること、およびこの特異的結合がミオスタチンプロドメインによって阻害されることを証明する。 いくつかのTGF-βファミリーメンバーの受容体が同定されており、ほとんどが膜を1回貫通するセリン/トレオニンキナーゼである(MassagueとWeis-Garcia、Cancer Surveys 27:41〜64、1996)。例えば、アクチビンII型受容体(Act RIIAおよび/またはAct RIIB)は、TGF-βスーパーファミリーのメンバーに結合することが知られている。Act RIIB受容体を欠損するマウスの表現型は、前/後軸パターン形成の欠損およびGDF-11ノックアウトマウスにおいて認められたものと類似の腎異常を示した(McPherronら、Nat. Genet. 22:260〜264、1999;オウとリ(Oh and Li)、Genes Devel. 11:1812〜1826、1997)。GDF-11とミオスタチン(GDF-8)のアミノ酸配列は、成熟C末端領域において90%同一であることから、ミオスタチンがアクチビンII型受容体と特異的に相互作用するか否かを調べた。 ミオスタチンは、放射性ヨウ素化によって標識し、Act RIIB発現構築物によってトランスフェクトしたCOS細胞を用いて結合試験を行った。ミオスタチンはトランスフェクトしたCOS細胞と特異的に相互作用した。ミオスタチン結合は、過剰量の非標識ミオスタチンによって用量依存的に競合され、空のベクターをトランスフェクトした対照COS細胞では有意に低かった。BMP RIIまたはTGF-β RII発現構築物をトランスフェクトした細胞では有意な結合は起こらなかった。Act RIIBトランスフェクト細胞に対するミオスタチンの結合は飽和的であり、結合親和性はスキャッチャード解析によって決定すると約5nMであった。 受容体結合アッセイ法をまた用いて、この系において、ミオスタチンプロドメインが、成熟C末端二量体のAct RIIBとの特異的相互作用能を阻害するか否かを調べた。精製プロドメインペプチドを加えると、Act RIIBトランスフェクトCOS細胞に対するC末端二量体の結合能は用量依存的に遮断された。これらの結果は、ミオスタチンプロドメインがミオスタチンの天然の阻害剤であることを示している。実施例8ミオスタチンレベルの増加は体重減少を誘導する 本実施例は、ミオスタチンレベルの上昇がインビボでの実質的な体重減少につながりうることを証明する。 一組の実験において、ミオスタチンを発現するCHO細胞をヌードマウスに注入した。ミオスタチン発現CHO細胞腫瘍を有するヌードマウスは、細胞の注入後約12〜16日のあいだに重度の衰弱を示した。この消耗性症候群は、類似の選択プロセスを受けたがミオスタチンを発現しなかった多様な如何なる対照CHO株も注射したヌードマウスでは認められなかった。さらに、CHO細胞をトランスフェクトするために用いた構築物におけるミオスタチンコード配列は、メタロチオネインプロモーターの制御下であり、ミオスタチン発現腫瘍を有するマウスが硫酸亜鉛を含む水によって維持されている場合には、消耗性症候群は悪化した。ウェスタンブロット解析によって、ミオスタチン発現CHO細胞を有するヌードマウスの血清中にミオスタチン蛋白質が高レベルで存在することが明らかとなった。これらの結果は、消耗性症候群がヌードマウスにおいてミオスタチンレベルの上昇に反応して誘導されることを示しており、下記に示すように、この結果は、精製ミオスタチンを注射したマウスにおいて類似の作用を認めることによって確認された。 ミオスタチン発現CHO細胞を有するヌードマウスにおいて認められた劇的な体重減少は、主に脂肪と筋重量の不均衡な喪失が原因であった。白色脂肪体の重量(嚢内の白色脂肪、子宮内脂肪、および後腹膜脂肪)は、対照CHO細胞腫瘍を有するマウスと比較して90%以上減少した。筋重量も同様に大きく減少し、個々の筋は16日までにミオスタチン発現マウスでは対照マウスの場合の約半分の重量となった。筋重量のこのような喪失は、繊維の大きさおよび蛋白質含有量がこれに対応して減少することによって反映された。 ミオスタチン発現CHO細胞腫瘍を有するマウスはまた、低血糖となった。しかし、16日間の試験中に調べた各期間で全てのマウスが等量の試料を消費したために、体重減少と低血糖症は食物消費量の差によるものではなかった。これらの結果は、ミオスタチン過剰発現が、癌またはAIDSのような慢性疾患を有する患者において起こるカヘキシア消耗性症候群と類似の劇的な体重減少を誘導することを示している。 低用量のミオスタチンを用いてより慢性的な投与を行うと、脂肪重量の変化を認めた。例えば、ミオスタチン蛋白質1μgを1日2回7日間注射すると、異なる多くの白色脂肪体(嚢内白色、子宮内、および後腹膜脂肪体)の重量の約50%減少が起こったが、褐色脂肪(嚢内褐色)には有意な作用を認めなかった。これらの結果は、ミオスタチンが、インビボで体重減少と、極端な例では消耗性症候群を誘導しうることを確認する。実施例9アクチビン受容体に対するミオスタチン結合の特徴付け 本実施例は、アクチビン受容体に対するミオスタチンの結合と、インビボでミオスタチンによって生じた生物作用との関係の特徴を調べる方法を記述する。 Act RIIAまたはAct RIIBノックアウトマウスを用いて、Act RIIAまたはAct RIIBがインビボでミオスタチンの受容体であることを確認することができる。これらのマウスの詳細な筋の解析を行えば、アクチビン受容体のノックアウトが筋繊維の数またはサイズの変化に関連するか否かを決定することができる。Act RIIA/Act RIIB二重ホモ接合変異体は、胚形成のあいだに早期に死亡することから(Songら、Devel. Biol. 213:157〜169、1999)、様々なホモ接合体/ヘテロ接合体の組み合わせのみを調べることができる。しかし、双方の遺伝子が筋組織に限って「欠失」され、それによって二重ホモ接合ノックアウトマウスを生後に検査することができる、組織特異的または条件的ノックアウトマウスを作製することができる。 脂肪細胞の数またはこれらの脂肪細胞による脂質の蓄積がノックアウトマウスにおいて変化しているか否かを決定するために、脂肪組織に及ぼす作用をマウスの加齢に関して調べることができる。脂肪細胞の数および大きさは、コラゲナーゼ処置組織から細胞浮遊液を調製することによって決定される(Rodbell、J. Biol. Chem. 239:375〜380、1964;HirschとGallian、J. Lipid. Res. 9:110〜119、1968)。動物における総脂質含有量は、乾燥死体の重量と脂質抽出後の残留乾燥死体重量とを測定することによって決定される(Folchら、J. Biol. Chem. 226:497〜509、1957)。 食後および絶食時グルコースおよびインスリン、トリグリセリド、コレステロールおよびレプチンを含む多様な血清パラメータも同様、調べることができる。上記のように、血清トリグリセリドおよび血清インスリンは、ミオスタチン変異体動物において減少している。アクチビン受容体ノックアウトマウスが外からのグルコース負荷に対して反応できるか否かは、耐糖能試験を用いて調べることができる。先に開示したように、グルコース負荷に対する反応は、5ヶ月齢で野生型マウスとミオスタチン変異体マウスにおいて同一であった。この知見は、マウスが年をとるにつれてマウスにおけるこれらのパラメータを測定することによって拡大することができる。血清中のインスリンレベルはまた、耐糖能試験のあいだの様々な時間に測定することができる。 基礎代謝速度はまた、熱量計(コロンバスインストルメンツ社)を用いてモニターすることができる。先に開示したように、ミオスタチン変異体マウスは、3ヶ月齢でその野生型相対物より低い代謝速度を示す。この解析は、より年老いたマウスに拡大することができ、呼吸商も同様にこれらの動物において測定することができる。正常な熱発生を維持できるか否かは、4℃に置いた場合に体温を維持できるか否かと共に、基礎体温を測定することによって決定することができる。褐色脂肪重量と、褐色脂肪、白色脂肪、筋、およびその他の組織におけるUCP1、UCP2、およびUCP3の発現レベルも同様に調べることができる(Schrauwenら、1999)。 体重の増加と比較した食物摂取量をモニターすることができ、飼料効率を計算することができる。さらに、高脂肪食を与えた動物の体重増加をモニターすることができる。高脂肪食によって維持した野生型マウスは急速に脂肪を蓄積するが、本明細書に開示した結果は、アクチビン受容体変異体動物が比較的痩身のままであることを示している。 これらの研究の結果は、特に、その全体的な代謝速度に関するミオスタチンマウスの作用のより完全なプロフィールを提供して、それによってミオスタチンノックアウトマウスが脂肪の蓄積を抑制できることが、脂肪の形で保存するためにほとんどエネルギーが利用されないようにエネルギー利用がシフトする筋肉におけるミオスタチン変異の同化作用であるか否かに関する洞察を与える。例えば、脂肪蓄積の減少は、熱発生速度の増加が原因となりうる。これらの結果は、肥満およびII型糖尿病の異なる遺伝子モデルの意味においてミオスタチン活性の効果を比較するための基準値を提供するであろう。実施例10肥満およびII型糖尿病の遺伝子モデルにおけるミオスタチンの作用の特徴付け 本実施例は、肥満またはII型糖尿病の治療におけるミオスタチンの作用を決定する方法を記述する。 野生型マウスと比較してミオスタチン変異体マウスにおける総脂肪蓄積の劇的な減少は、ミオスタチン活性が肥満またはII型糖尿病を治療または予防するように操作することができる。ミオスタチン変異の作用は、例えば、「肥満」マウス(ob/ob)、「糖尿病」マウス(db/db)および野鼠致死黄色(Ay)変異体系統を含むこれらの代謝疾患に関するいくつかの十分に特徴付けのなされたマウスモデルの意味において調べることができる。これらの系統のそれぞれは、上記の実質的にあらゆるパラメータおよび試験に関して異常である(例えば、Yenら、上記、FriedmanとHalaas、Nature 395:763〜770、1998を参照のこと)。ミオスタチン変異がこれらの他の変異を有するマウスにおいてこれらの異常の発症を遅らせるまたは抑制することができるか否かは、二重変異体を構築して、二重変異体動物に、ob/ob、db/db、または野鼠致死黄色変異のみを有する適当な対照同腹子と共に様々な試験を行うことによって調べることができる。 先に開示したように、Ayマウスにおけるミオスタチン変異は、ミオスタチン変異体Ayマウスにおける脂肪蓄積の約5倍抑制、および耐糖能試験によって評価すると異常なグルコース代謝の発症の部分的抑制に関連した。これらの結果は、様々な年齢でのさらなる動物を含めるように拡大することができ、ob/obおよびdb/db変異体について類似の試験を行うことができる。これらの変異はいずれも劣性であるために、ミオスタチン変異とobまたはdb変異のいずれかに関して二重にホモ接合であるマウスを作製することができる。これらの遺伝子モデル系におけるミオスタチン機能の部分的喪失の影響を調べるために、obまたはdb変異に関してホモ接合であるマウス、およびミオスタチン変異に関してヘテロ接合であるマウスも同様に調べる。ミオスタチンおよびob変異に関して二重にヘテロ接合であるマウスは作製されており、これらの二重ヘテロ接合マウスの交配から得られた子孫を、特に脂肪蓄積とグルコース代謝に関して調べることができる。肥満変異体におけるこれらの異常のいずれかまたは双方の部分的抑制は、ミオスタチンが肥満およびII型糖尿病の治療の標的となることを示すことができる。実施例11ミオスタチン活性に影響を及ぼしうるドミナントネガティブポリペプチドを発現するトランスジェニックマウスの特徴付け 本実施例は、ミオスタチン発現またはミオスタチンシグナル伝達を阻害しうるドミナントネガティブポリペプチドを発現することによって生後にミオスタチンの作用の特徴を調べる方法を記述する。ミオスタチン阻害剤 生後にミオスタチン活性を調節することを用いて、筋繊維数(過形成)および筋繊維の大きさ(肥大)に及ぼすミオスタチンの作用を調べることができる。ミオスタチン遺伝子が動物の一生の間で一定期間欠失している条件付ミオスタチンノックアウトマウスをこれらの試験に用いることができる。creレコンビナーゼと組み合わせたtet調節物質は、そのようなマウスを作製するためのシステムを提供する。この系において、creの発現は、ドキシサイクリンの投与によって誘導される。 ミオスタチン活性が動物の一生の間の一定期間減少または阻害されうるように、誘導型プロモーターからミオスタチンの阻害剤を発現するトランスジェニックマウスも同様に作製することができる。テトラサイクリン調節物質は、ミオスタチン発現がドキシサイクリンによって誘導されているそのようなトランスジェニックマウスを作製するために有用である。 ハイブリッド逆tet-トランスアクチベータ(VP16の活性化ドメインと変異体逆tetリプレッサーとの融合蛋白質)とハイブリッドtet-トランスリプレッサー(哺乳類Kox1のKRABリプレッサードメインと本来のtetリプレッサーとの融合蛋白質)の同時発現を利用するtet系の改変は、トランスジェニックマウスを作製するために特に有用となりうる(Rossiら、Nat. Genet. 20:389〜393、1998;Forsterら、Nucl. Acids Res. 27:708〜710、1999)。この系において、ハイブリッド逆tet-トランスアクチベータは、tetオペレータ配列に結合して、テトラサイクリンの存在下に限って転写を活性化する;ハイブリッドtet-トランスリプレッサーは、tetオペレータ配列に結合してテトラサイクリンの非存在下に限って転写を抑制する。これらの二つの融合蛋白質を同時発現させることによって、標的プロモーターの基礎活性は、テトラサイクリンの非存在下ではtet-トランスリプレッサーによって沈黙化し、テトラサイクリンを投与すると、逆tet-トランスアクチベータによって活性化される。 二つのタイプのトランスジェニック系統を作製することができる。第一のタイプにおいて、導入遺伝子は、筋特異的プロモーター、例えば筋クレアチニンキナーゼプロモーター(Sternbergら、上記、1988)またはミオシン軽鎖エンハンサー/プロモーター(Donoghueら、上記、1991)の制御下でミオスタチン阻害剤ポリペプチドをコードする。個々のトランスジェニック系統を、骨格筋におけるtet調節物質の特異的発現に関してスクリーニングして、認められた如何なる作用も例えば組み込み部位特異的作用によるものではないことを確認するために、二つのプロモーターのそれぞれに関していくつかの独立した系統を選択して調べる。ミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーの制御下で二つのtet調節物質を含む構築物が構築されており、これを前核注入のために用いることができる。第二のタイプの系統において、導入遺伝子はさらにtetオペレータ配列を含む最小のCMVプロモーターの制御下でミオスタチン阻害剤ポリペプチドを含む。 ミオスタチン阻害剤は、本明細書に開示のように、ミオスタチン活性を阻害しうるミオスタチンのドミナントネガティブ型またはミオスタチンプロドメインとなりうる。TGF-βファミリーメンバーのドミナントネガティブ型が記述されており(例えば、Lopezら、Mol. Cell Biol. 12:1674〜1679、1992;WittbrodtとRosa、Genes Devel. 8:1448〜1462、1994)、これは例えば、変異体蛋白質分解切断部位を含み、それによって蛋白質が生物学的に活性な種に処理されないように防止する。内因性の野生型遺伝子を細胞において同時発現させると、変異体蛋白質は、野生型蛋白質と非機能的ヘテロダイマーを形成し、このように、ドミナントネガティブとして作用する。プロミオスタチン切断部位に変異を含む変異体ミオスタチンポリペプチドが構築されており、293細胞において様々な比で変異体を野生型ミオスタチンと共に同時発現させることによって、ドミナントネガティブ作用に関して調べることができる。構築物を一過的にトランスフェクトした293細胞からの条件培地をウェスタンブロット解析によって調べて、成熟C末端二量体の形成を変異体が遮断するか否かを調べることができる。 ミオスタチンプロドメインのみをコードする発現構築物を利用することができる。先に開示したように、プロドメインは成熟C末端二量体と堅固な複合体を形成して、培養において受容体を発現する細胞において、成熟C末端ミオスタチン二量体のAct RIIBとの結合能を遮断する。TGF-βと同様に、ミオスタチンプロドメインはまた、インビボで不活性な潜在的複合体において成熟C末端二量体を維持することができる。 これらのトランスジェニック動物を、tet調節物質を発現する動物と交配させて、tet調節物質と阻害剤標的構築物の双方を含む二重トランスジェニック系統を作製することができる。これらの二重トランスジェニック系統を、異なる成分が全て適切に発現されている系統に関してスクリーニングすることができる。飲料水にドキシサイクリンを投与する前後での、それぞれの系統における代表的なマウスの様々な筋および対照組織から得たRNAを用いるノザンブロット解析を用いて、そのようなトランスジェニック系統を同定ことができる。ドキシサイクリンの非存在下では如何なる組織にも導入遺伝子も発現せず、ドキシサイクリンの存在下で筋肉に限って導入遺伝子を発現するトランスジェニック系統を選択する。 選択したトランスジェニック動物にドキシサイクリンを投与して、筋重量に及ぼす作用を調べる。ドキシサイクリンは、胚形成のあいだに阻害剤の発現を誘導するために、妊娠した母親動物に投与することができる。トランスジェニック動物発達の際のミオスタチン活性を阻害する作用を、ミオスタチンノックアウトマウスにおいて認められた作用と比較することができる。tet調節物質の発現を駆動するためのプロモーターは、ミオスタチンが最初に発現される時期より発達の後期に誘導されうることから、トランスジェニックマウスにおける筋重量に及ぼす作用を、ミオスタチンノックアウトマスにおいて起こる作用と比較することができる。 ミオスタチン活性を生後に阻害する作用は、出生後の様々な時間に二重トランスジェニックマウスにドキシサイクリンを投与することによって調べることができる。ドキシサイクリン処置は、例えば、3週齢で開始することができ、筋重量の差がミオスタチンノックアウトマウス対野生型マウスにおいて最高に達する月例である5ヶ月齢で、動物を解析することができる。動物は、筋重量に及ぼす阻害剤の作用に関して調べる。同様に、繊維の数および繊維の大きさに及ぼす作用を決定するために、筋肉を組織学的に調べることができる。さらに、トランスジェニックマウスにおける様々な筋の繊維型の解析を行って、I型またはII型繊維に対する選択的作用が存在するか否かを調べることができる。 ドキシサイクリンは、ミオスタチン阻害剤の作用の特徴を調べるために、異なる用量で、かつ異なる時期に投与することができる。二重トランスジェニックマウスも同様に、ドキシサイクリンによって慢性的に維持することができ、その脂肪体重量および上記の他の関連する代謝パラメータに及ぼす作用を調べることができる。これらの研究の結果は、ミオスタチン活性を生後に調節すると、筋重量を増加させて、脂肪蓄積を減少させうることを確認し、このように、ミオスタチンのターゲティングが、臨床において多様な筋消耗および代謝疾患の治療にとって有用となりうることを示している。ミオスタチン ミオスタチン導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスも同様に調べて、ミオスタチンの発現時に生じた作用を、ミオスタチン発現CHO細胞を含むヌードマウスにおいて認められた作用と比較することができる。上記と同様に、ミオスタチンは、条件(tet)および組織特異的調節エレメントの制御下に置くことができ、ヌードマウスにおいて認められたものと類似の消耗性症候群が起こるか否かを決定するために、トランスジェニックマウスにおけるミオスタチンの発現を調べることができる。ミオスタチン導入遺伝子は、例えば、導入遺伝子が内因性のミオスタチン遺伝子と区別できるように、SV40に由来するプロセシングシグナルを含みうる。 ドキシサイクリンの投与後様々な時間にミオスタチントランスジェニックマウスから血清試料を単離して、血清中のミオスタチン導入遺伝子産物のレベルを決定することができる。動物が有意な体重減少を示すか否かを決定するために、動物の全身体重を経時的にモニターする。さらに、個々の筋および脂肪体を単離および重量を測定して、筋繊維の数、大きさ、およびタイプを選択した筋試料において決定する。 ミオスタチン導入遺伝子の発現レベルは、動物に投与したドキシサイクリンの用量を変化させることによって変化させることができる。導入遺伝子発現は、例えば、筋肉における導入遺伝子RNAレベルのノザンブロット解析または血清中のミオスタチン蛋白質レベルを用いてモニターすることができる。特定のレベルのミオスタチン導入遺伝子発現が同定されれば、ミオスタチンによって誘導される消耗の程度を相関させることが可能となる。トランスジェニック系統はまた、ミオスタチンノックアウトマウスと交配させて、ミオスタチンの唯一の起源が導入遺伝子からの発現であるマウスを作製することができる。発達の様々な時期でのミオスタチンの発現を調べて、繊維の数、繊維の大きさ、および繊維のタイプに及ぼすミオスタチンの作用を決定することができる。ミオスタチンの発現を正確かつ迅速に制御できるマウスが利用できれば、ミオスタチンシグナル伝達経路の特徴をさらに調べるための、かつミオスタチンシグナル伝達を調節するためにおそらく有用となりうる様々な作用物質の作用を調べるために強力なツールとなる。ミオスタチンシグナル伝達のエフェクター 骨格筋において特異的に発現されるTGF-βシグナル伝達経路の成分を含みうる、ミオスタチンシグナル伝達経路のいずれかのドミナントネガティブ型を含むトランスジェニックマウスを作製することができる。本明細書において開示するように、アクチビンII型受容体によって誘導される経路を通してシグナル伝達を媒介するSmad蛋白質は、ミオスタチンシグナル伝達に関係しうる。 Act RIIBは、ミオスタチンに非常に近縁であるGDF-11に結合することができ(McPherronら、上記、1997;Gamerら、上記、1999;Nakashimaら、Mech. Devel. 80:185〜189、1999)、およびSmad2、Smad3、およびSmad4に結合して阻害することができるc-skiの発現は、筋肉の増殖に劇的に影響を及ぼしうる(Sutraveら、上記、1990;Berkら、上記、1997;同様に、Luoら、上記、1999;Stroscheinら、上記、1999;Sunら、上記、1999aおよびb;Akiyoshiら、上記、1999)。本明細書に開示するように、ミオスタチンは、Act RIIBと特異的に相互作用して、したがって、インビボでアクチビンII型受容体に結合して、Smadシグナル伝達経路を活性化することによって、少なくとも部分的にその生物作用を発揮することができる。 筋増殖の調節におけるSmadシグナル伝達経路の役割は、Act RIIB/Smadシグナル伝達経路における特定の点で遮断される、または遮断されうるトランスジェニックマウス系統を用いて調べることができる。筋クレアチニンキナーゼプロモーター、またはミオシン軽鎖エンハンサー/プロモーターを用いて、Smadシグナル伝達経路の様々な阻害剤の発現を促進することができる。 この系において有用な阻害剤には、例えば、フォリスタチン;ドミナントネガティブAct RIIB受容体;Smad3のようなドミナントネガティブSmadポリペプチド;c-ski;またはSmad7のような阻害性Smadポリペプチドが含まれうる。フォリスタチンは、GDF-11を含む特定のTGF-βファミリーメンバーに結合してその活性を阻害することができる(Gamerら、上記、1999)。アクチビンII型受容体のドミナントネガティブ型は、切断型GDF受容体を発現させることによって、例えば細胞外ドメイン、特にAct RIIB細胞外ドメインの可溶性型を発現させることによって、またはキナーゼドメインを欠損するもしくは変異体受容体がキナーゼ活性を欠損するような変異を含む切断型Act RIIB受容体を発現させることによって、得ることができる。Smad7は、アクチビン、TGF-β、およびBMPによって誘導されるシグナル伝達経路を阻害することができる阻害性Smadとして機能する。例えば、Smad3のドミナントネガティブ型は、Smad3のC末端燐酸化部位を変異させて、それによってSmad3機能を遮断することによって構築することができる(Liuら、上記、1997)。c-ski過剰発現は、トランスジェニックマウスにおける筋の肥大に関連している(Sutraveら、上記、1990)。 トランスジェニックマウスを作製して、それぞれの創始動物系統において導入遺伝子が適切に筋特異的に発現されているか否かを調べることができる。選択したマウスを、全身体重、個々の筋重量、ならびに筋繊維の大きさ、数、およびタイプに関して調べる。筋重量に及ぼす明確な作用を示すそれらの系統を、脂肪蓄積および上記の他の関連する代謝パラメータに関してさらに調べることができる。アクチビン受容体/Smadシグナル伝達経路における特定の段階をターゲティングするためにこれらの異なる作用物質を用いることは、異なる作用物質のシグナル伝達が異なる段階で重なり合うために特に情報に富む。例えば、フォリスタチンは、アクチビンおよびGDF-11に結合してそれらの活性を阻害するが、TGF-βには結合せず、ドミナントネガティブSmad3は、アクチビンとTGF-β受容体の双方を通してのシグナル伝達を遮断することができる。Smad7は、BMP受容体を通してのシグナル伝達も阻害するために、さらにより多面発現性を有しうる。本研究によって、ミオスタチン活性を調節するための特異的標的を同定することができ、それによってミオスタチンシグナル伝達を調節する、したがってミオスタチン活性を調節する医薬品または他の作用物質を開発するための様々な戦略を提供することができる。 特に、本明細書に記載のトランスジェニック系統を用いて、肥満またはII型糖尿病の発症に及ぼすミオスタチン機能またはSmadシグナル伝達経路を生後に遮断する影響を調べることができる。例えば、阻害性導入遺伝子をob/ob、db/db、およびAy変異体マウスに交配させることができる。ドキシサイクリンの非存在下では、阻害性導入遺伝子は発現されず、したがって動物は親の変異体マウスのそれぞれと区別できない。ドキシサイクリンの非存在下では、阻害剤が発現されて、ミオスタチン活性を遮断することができる。これらの変異体動物において、代謝異常の発症に対するミオスタチン活性を阻害する影響を調べることができる。 阻害剤の発現は、作用を最大限にするために、初期週齢、例えば3週齢で誘導することができる。さらに、ミオスタチン活性は、代謝異常が非可逆的になるほど重症となる前に遮断することができる。動物をドキシサイクリンによって維持して、脂肪の蓄積およびグルコース代謝に関連する試験を含む上記の試験を用いて、様々な週齢で評価することができる。一つまたはそれ以上の試験結果がob/ob、db/db、およびAy変異体動物において異常となる如何なる週齢の遅延も同定することができる。肥満またはII型糖尿病の何らかの兆候を示すより週齢の高い動物を用いて類似の研究を行うことができ、脂肪重量およびグルコース代謝を含む様々なパラメータに及ぼすミオスタチン活性阻害の影響を調べることができる。これらの試験の結果は、肥満またはII型糖尿病を予防または治療するための努力において操作することができる特異的標的をさらに同定することができる。実施例12カヘキシアの誘導に及ぼすミオスタチン作用の特徴付け 本実施例は、カヘキシアの発症および進行におけるミオスタチンシグナル伝達の役割を調べる方法について記述する。 アクチビン受容体およびSmad経路は、正常な個体におけるミオスタチン活性の調節に関係するシグナル伝達経路の少なくとも一部を構成することができ、したがって、ミオスタチンの過剰レベルによって個体において起こりうる作用の媒介に関与しうる。本明細書において開示するように、例えば、カヘキシアは、少なくとも部分的に異常に高いレベルのミオスタチンによって媒介されうる。そのため、Smad経路を通してシグナル伝達を操作する方法は、筋消耗全般および特にカヘキシアを治療する薬剤を開発するための新しい戦略を提供しうる。 カヘキシアにおけるSmadシグナル伝達経路の役割は、例えば、インターロイキン-6(IL-6;Blackら、Endocrinol. 128:2657〜2659、1991、参照として本明細書に組み入れられる)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α;Oliffら、Cell 50:555〜563、1987、参照として本明細書に組み入れられる)、または特定の腫瘍細胞によって誘導されうるカヘキシアに対する上記の様々なトランスジェニック系統の感受性を調べることによって調べることができる。IL-6およびTNF-αの場合、阻害剤導入遺伝子をヌードマウスバックグラウンドにおいて交配させた後、IL-6またはTNF-αを産生するCHO細胞を動物にチャレンジすることができ、これらがこのように過剰発現されるとヌードマウスにおいて消耗が誘導される。IL-6またはTNF-αを過剰発現するCHO細胞は、ミオスタチン過剰産生細胞の作製に関して先に記述した方法を用いて調製することができる。例えば、TNF-α cDNAをpMSXND発現ベクターにクローニングした後(LeeとNathans、J. Biol. Chem. 263:3521〜3527、1988)、発現構築物の増幅されたコピーを有する細胞をメソトレキセートの増加濃度において段階的に選択することができる。 マウスにおいてカヘキシアを誘導しうるルイス肺癌細胞(Matthysら、Eur. J. Cancer 27:182〜187、1991、参照として本明細書に組み入れられる)または結腸 26腺癌細胞(Tanakaら、J. Cancer Res. 50:2290〜2295、1990、参照として本明細書に組み入れられる)のような腫瘍細胞も同様に、これらの試験に用いることができる。これらの細胞株は、マウスにおいて腫瘍として増殖させると重度の衰弱を引き起こす。このように、これらの腫瘍の影響を本明細書に記載の様々なトランスジェニックマウスにおいて調べることができる。様々な腫瘍細胞が特定の遺伝的背景において増殖することが認識されている。例えば、ルイス肺癌細胞は、通常C57BL/6マウスにおいて増殖するが、結腸 26癌細胞は、通常BALB/cマウスにおいて増殖する。このように、導入遺伝子をこれらまたは他の遺伝的バックグラウンドと戻し交配させると、腫瘍細胞の増殖が可能となる。 全身体重、個々の筋重量、筋繊維の大きさおよび数、飼料摂取量ならびにグルコースレベルを含む血清パラメータを含む様々なパラメータをモニターすることができる。さらに、ミオスタチン発現の増加がカヘキシアに関連していることを確認するために、血清ミオスタチンレベルおよび筋肉におけるミオスタチンRNAレベルを調べることができる。これらの試験の結果から、ミオスタチンの作用が、これらの実験モデルにおいてカヘキシア誘導作用物質の下流に存在することを確認することができる。結果はまた、Smadシグナル伝達経路がこれらのモデルにおけるカヘキシア発症にとって必須であることを確認し、Smadシグナル伝達を調節することによってカヘキシアの治療において治療利益が選られうることを証明することができる。実施例13増殖分化因子-8(GDF-8)およびGDF-11受容体の同定と特徴付け 本実施例は、GDF-8(ミオスタチン)とGDF-11の細胞表面受容体を同定して特徴を調べる方法を記述する。 精製GDF-8およびGDF-11蛋白質は主に、生物活性のアッセイ法のために用いられる。GDF-8およびGDF-11の作用に関して可能性がある標的細胞を同定するために、それらの受容体を発現する細胞を検索する。この目的のため、精製蛋白質をクロラミンT法を用いて放射標識するが、この方法は、受容体結合試験のためにTGF-β(Cheifetzら、上記、1987)、アクチビン(Suginoら、J. Biol. Chem. 263:15249〜15252、1988)、およびBMP(Paralkarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3397〜3401、1991)のようなこのスーパーファミリーの他のメンバーを標識するために首尾よく用いられている。GDF-8およびGDF-11の成熟プロセシング型はそれぞれ多数のチロシン残基を含む。これらの蛋白質の受容体を同定するために異なる二つのアプローチが行われる。 一つのアプローチは、受容体の数、親和性、および分布を決定するであろう。培養において増殖させた全細胞、胚もしくは成体組織からの凍結切片、または組織もしくは培養細胞から調節した総膜調製物のいずれかを標識蛋白質と共にインキュベートして、結合した蛋白質の量または分布を決定する。細胞株または膜を含む実験に関して、結合量は、数回洗浄後も培養皿上の細胞に結合した放射活性の量、または膜の場合には遠心後に膜に沈降している、もしくは膜と共にフィルター上に残っている放射活性の量を測定することによって決定されるであろう。細胞数がより限られている初代培養を含む実験では、結合部位は、写真乳剤をその上に重ねることによって直接可視化されるであろう。凍結切片を含む実験では、リガンド結合部位は、高解像度β-マックスハイパーフィルムにこれらの切片を露出することによって可視化されるであろう;より詳しい位置が必要である場合は、切片を写真乳剤に浸す。これらの全ての実験に関して、特異的結合は、競合物質として過剰量の非標的蛋白質を加えることによって決定されるであろう(例えば、LeeとNathans、上記、1988を参照のこと)。 第二のアプローチは、受容体の特徴を生化学的に調べることであろう。膜調製物または可能性がある培養標的細胞を標識リガンドと共にインキュベートして、受容体/リガンド複合体を、TGF-βスーパーファミリーのメンバーを含む多様なリガンドの受容体を同定するために一般的に用いられている(MassagueとLike、J. Biol. Chem. 260:2636〜2645、1985)スベリン酸ジスクシニミジルを用いて共有結合によってクロスリンクする。クロスリンクした複合体をSDSポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離して、過剰量の非標識蛋白質の非存在下で標識されるが、存在下では標識されないバンドを調べる。推定の受容体の分子量は、リガンドの分子量を差し引くことによって推定されるであろう。これらの実験が取り組む重要な疑問は、GDF-8およびGDF-11シグナルが、TGF-βスーパーファミリーの他の多くのメンバーと同様にI型およびII型受容体を通してシグナルを伝達するか否かである(MassagueとWeis-Garcia、上記、1996)。 これらの分子の受容体を検出する方法が得られれば、結合親和性および特異性を決定するためにより詳しい解析を行う。スキャッチャード解析を用いて、結合部位の数と解離定数を決定する。GDF-8とGDF-11との交叉競合解析を行うことによって、それらが同じ受容体に結合できるか否かおよびその相対的親和性を決定することが可能となるであろう。これらの試験は、同じまたは異なる受容体を通して分子がシグナルを伝達するか否かに関する示唆を与えるであろう。特異性を決定するために、他のTGF-βファミリーメンバーを用いる競合試験を行う。これらのリガンドのいくつかは市販されており、他のいくつかは、ジェネティクスインスチチュートインクから入手可能である。 これらの実験に関して、多様な胚および成体組織ならびに細胞株を調べる。骨格筋におけるGDF-8の特異的発現およびGDF-8ノックアウトマウスの表現型に基づいて、最初の研究は、膜調製物および凍結切片を用いた受容体研究のために胚および成体筋組織に集中して行った。さらに、妊娠の様々な日齢の胚から、または記述のように成体筋からの筋衛星細胞から筋芽細胞を単離して培養する(VivarelliとCossu、Devel. Biol. 117:319〜325、1986;Cossuら、Cell Diff. 9:357〜368、1980)。培養における様々な日数後にこれらの初代細胞に対する結合試験を行って、オートラジオグラフィーによって結合部位の位置を特定すると、結合部位が筋ミオスタチンのような様々な筋原性マーカー(Vivarelliら、J. Cell Biol. 107:2191〜2197、1988)と共に局在して、結合を、多数の徐核筋管の形成のような細胞の分化状態と相関させることができる。初代細胞を用いることの他に、受容体を調べるために細胞株を利用する。特に、まず、三つの細胞株C2C12、L6、およびP19を中心に実験を行う。C2C12およびL6筋芽細胞は、培養において自発的に分化して、特定の増殖条件に応じて筋管を形成する(YaffeとSaxel、上記、1997;Yaffe、上記、1968)。P19胎児癌細胞は、DMSOの存在下で骨格筋細胞を含む様々な細胞タイプに分化誘導することができる(RudnickiとMcBurney、「Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical approach」ロバートソン(E.J. Robertson)、IRL出版、ケンブリッジ、1987)。受容体結合試験は、これらの細胞株において様々な増殖条件および様々な分化段階で行われるであろう。初回試験は筋細胞を中心に行うが、GDF-8およびGDF-11受容体の有無に関して他の組織および細胞タイプを調べる。 組換えヒトGDF-8(rhGDF-8)ホモダイマーをこれらの結合試験において用いる。rhGDF-8は、CHO細胞を用いて発現させて、純度約90%まで精製した。rhGDF-8の予想分子量は25 kDa〜27 kDaであり、還元されると、12 kDa単量体に還元された。受容体リガンド結合アッセイ法においてI-125標識GDF-8を用いると、二つの筋芽細胞株、L6およびG-8がGDF-8に結合した。非標識GDF-8が標識リガンドの結合を有効に競合したことから、結合は特異的であった。解離定数(Kd)は370 pMであり、L6筋芽細胞は多数の細胞表面結合蛋白質(受容体5,000個/細胞)を有する。GDF-11(BMP-11)は、GDF-8に対して非常に相同的(>90%)である。受容体結合試験によって、GDF-8およびGDF-11がL6筋芽細胞上で同じ結合蛋白質に結合することが判明した。GDF-8が既知のTGF-β受容体に結合したか否かを決定することが重要である。TGF-βはGDF-8の結合と競合せず、このことは、GDF-8受容体がTGF-β受容体とは区別されることを示している。GDF-8受容体は、GDF-8に結合しない四つの筋芽細胞株C2C12、G7、MLB13MYC c14、およびBC3H1を含む全ての筋芽細胞株上で発現されなかった。 GDF-8およびGDF-11の受容体をコードする遺伝子または複数の遺伝子を得ることができる。最初の段階は、GDF-8およびGDF-11がその生物作用を発揮する作用機序を理解することに向けられるが、その受容体をコードする遺伝子をクローニングすることが重要である。上記の実験から、GDF-8およびGDF-11が同じ受容体または異なる受容体に結合するかはより明確であろう。同様に、これらの受容体の組織および細胞タイプ分布に関してかなりの情報が存在する。この情報を用いて、二つの異なるアプローチを用いて受容体遺伝子をクローニングする。 第一のアプローチは、発現クローニング戦略を用いることであろう。実際に、これは、最初のアクチビンおよびTGF-β受容体をクローニングするために、MathewsとVale(Cell 65:973〜982、1991)およびLinら(Cell 68:775〜785、1992)によって最初に用いられた戦略であった。高親和性結合部位を最も高い相対数で発現する組織または細胞タイプからポリA-選択RNAを得て、これを用いて、CMVプロモーターとSV40複製開始点とを含む哺乳類の発現ベクターpcDNA-1においてcDNAライブラリを調製する。ライブラリを播種して、それぞれのプレートからの細胞をブロスにプールして凍結する。DNAを調製するために、それぞれのプールから少量を増殖させる。それぞれの個々のプールをチャンバースライドガラスにおいてCOS細胞に一過的にトランスフェクトして、トランスフェクトした細胞をヨウ素化GDF-8またはGDF-11と共にインキュベートする。未結合の蛋白質を洗浄して除去した後、リガンド結合部位をオートラジオグラフィーによって可視化する。陽性プールが同定されれば、そのプールからの細胞を低密度で再度播種して、プロセスを繰り返す。次に、陽性プールを播種して、個々のコロニーをグリッドに採取して、記述のように再度解析する(Wongら、Science 228:810〜815、1985)。 最初に、コロニー1,500個の大きさのプールをスクリーニングする。この複雑度の混合物において陽性クローンを確実に同定できるように、TGF-βおよびクローニングしたII型受容体とを用いる対照実験を行う。TGF-βII型受容体のコード配列をpcDNA-1ベクターにクローニングして、この構築物によって形質転換した細菌を、われわれのライブラリからの細菌と、1:1500を含む様々な比で混合する。次に、この混合物から調製したDNAをCOS細胞にトランスフェクトして、ヨウ素化TGF-βと共にインキュベートして、オートラジオグラフィーによって可視化する。陽性シグナルが1:1500の比で認められれば、クローン1500個のプールをスクリーニングする。そうでなければ、技法が対照実験において陽性シグナルを同定するために十分に感度がよい比に対応する、より小さい大きさのプールを用いる。 同定されているTGF-βスーパーファミリーのメンバーのほとんどの受容体が膜貫通セリン/トレオニンキナーゼファミリーに属するという事実(MassagueとWeis-Garcia、上記、1996)を利用して、GDF-8およびGDF-11受容体をクローニングするために試行される第二の同様の戦略を用いる。これらの受容体の細胞質ドメインは配列が近縁であるために、縮重PCRプローブを用いてGDF-8およびGDF-11の結合部位を含む組織において発現されるこの受容体ファミリーのメンバーをクローニングする。実際に、これはこの受容体ファミリーのメンバーのほとんどを同定するために用いられているアプローチである。一般的戦略は、既知の受容体の保存領域に対応する縮重プライマーを設計して、これらのプライマーを、適当なRNA試料(骨格筋であることが多い)から調製したcDNA上でのPCRに用いること、PCR産物をサブクローニングすること、および最後に個々のサブクローンを配列決定することである。配列が同定されれば、それらを、さらなる解析から二個ずつのクローンを除去するためのハイブリダイゼーションプローブとして用いる。次に、同定された受容体を精製GDF-8およびGDF-11との結合能に関して調べる。このスクリーニングは、少量のPCR産物を生じるに過ぎないため、適当な組織から調製したcDNAライブラリからのそれぞれの受容体について完全長のcDNAクローンを得て、これをpcDNA-1ベクターに挿入して、COS細胞にトランスフェクトして、トランスフェクトした細胞をヨウ素化GDF-8またはGDF-11の結合能に関してアッセイする。理想的には、このスクリーニングにおいて同定されたあらゆる受容体をこれらのリガンドの結合能に関して調べる。しかし、同定された受容体の数は多く、完全長のcDNAの全てを単離してそれらを調べることはかなりの努力を必要としうる。同定される受容体のほぼ特定のいくつかは既知の受容体に反応するため、これらに関して、他の研究者からの完全長のcDNAクローンを得るか、または公表された配列に基づくPCRによってコード配列を増幅するほうが簡単であろう。新規配列に関しては、組織分布をノザンブロット解析によって決定して、その発現パターンが、先に決定したGDF-8および/またはGDF-11結合部位の分布に最も密接に類似する受容体に最も高い優先順位がつけられるであろう。 特に、これらの受容体は二つのクラス、I型およびII型に分類され、これらは配列に基づいて区別することができ、いずれも完全な活性にとって必要であることが知られている。特定のリガンドはII型受容体の非存在下ではI型受容体に結合することができないが、他のリガンドは双方の受容体型に結合することができる(MassagueとWeis-Garcia、上記、1996)。先に概要したクロスリンク実験は、I型およびII型受容体の双方がGDF-8およびGDF-11のシグナル伝達にも関係しているか否かに関して何らかの示唆を示すはずである。もしそうであれば、GDF-8およびGDF-11がどのようにしてそのシグナルを伝達するかを完全に理解するために、これらの受容体サブタイプの双方をクローニングすることが重要であろう。I型受容体がII型受容体の非存在下でGDF-8およびGDF-11と相互作用することができるか否かを予想することはできないために、(複数の)II型受容体をまずクローニングする。少なくとも一つのII型受容体がこれらのリガンドに関して同定された後に限って、GDF-8およびGDF-11のI型受容体を同定する試みを行う。一般的な戦略は、PCRスクリーニングにおいて同定されたI型受容体のそれぞれをII型受容体と共に同時トランスフェクトして、その後クロスリンクによってトランスフェクトした細胞をアッセイすることであろう。I型受容体がGDF-8またはGDF-11に関する受容体複合体の一部である場合、一つがI型受容体に対応し、もう一つがII型受容体に対応する二つのクロスリンクした受容体種が、トランスフェクトした細胞において検出されるはずである。 GDF-8およびGDF-11受容体の検索はさらに、TGF-βスーパーファミリーの少なくとも一つのメンバー、すなわちGDNFがGPI結合成分(GDNFR-α)と受容体チロシンキナーゼ(c-ret:Truppら、Nature 381:785〜789、1996;Durbecら、Nature 381:789〜793、1996;Treanorら、Nature 382:80〜83、1996;Jingら、Cell 85:1113〜1124、1996)とを含む完全に異なる型の受容体複合体を通してシグナル伝達を行うことができるという事実によってさらに複雑となる。GDNFは、TGF-βスーパーファミリーの最も遠縁のメンバーであるが、他のTGF-βファミリーメンバーも同様に、類似の受容体系を通してシグナルを伝達することができる可能性は十分にある。GDF-8およびGDF-11が類似の受容体複合体を通してシグナル伝達を行えば、発現スクリーニングアプローチは、この複合体の少なくともGPI結合成分(実際、GDNFR-αは発現スクリーニングアプローチを用いて同定された)を同定することができるはずである。GDNFの場合、GDNF欠損およびc-ret欠損マウスが類似の表現型であることは、GDNFの可能性がある受容体としてc-retを示唆した。実施例14GDF-11ノックアウトマウスの作製と特徴付け いくつかの局面におけるGDF-11ノックアウトマウスの表現型は、アクチビンIIB型受容体(Act RIIB)を含むTGF-βスーパーファミリーのいくつかのメンバーの受容体の欠失を有するマウスの表現型に類似する。GDF-11の生物機能を決定するために、GDF-11遺伝子を胚性幹細胞において相同的ターゲティングによって破壊した。 マウス129 SvJゲノムライブラリを、ストラタジーン社(ラホヤ、カリフォルニア州)によって提供された説明書に従ってラムダFIXIIにおいて調製した。GDF-11遺伝子の構造は、制限マッピングおよびライブラリから単離されたファージクローンの部分的配列決定によって推定した。ターゲティング構築物を調製するためのベクターは、Philip SorianoおよびKirk Thomas両氏から寄贈された。得られたマウスがGDF-11機能に関して無効であることを確認するために、完全な成熟C末端領域を欠失させて、neoカセットに置換した。R1 ES細胞にターゲティング構築物をトランスフェクトしてガンシクロビル(2 μM)およびG418(250 μg/ml)によって選択し、サザンブロット解析によって解析した。 GDF-11遺伝子の相同的ターゲティングは、ガンシクロビル/G418二重耐性ES細胞クローン155例中8例において認められた。いくつかのターゲティングクローンをC57BL/6J胚盤胞に注入した後、C57BL/6Jおよび129/SvJ雌性動物の双方と交配させた場合にヘテロ接合の子を生じる一つのESクローンからキメラを得た。C57BL/6J129/SvJハイブリッドF1ヘテロ接合体を交配すると、野生型49例(34%)、ヘテロ接合体94例(66%)を生じ、ホモ接合変異体の成体子孫を認めなかった。同様に、129/SvJバックグラウンドでは成体のホモ接合無効動物を認めなかった(野生型32例(36%)およびヘテロ接合変異体動物56例(64%))。 ホモ接合変異体が何週齢で死ぬかを決定するために、ヘテロ接合の雄性動物と交配させたヘテロ接合雌性動物から様々な妊娠齢で単離した胚の同腹子の遺伝子型を調べた。調べた全ての胚段階において、ホモ接合変異体の胚はほぼ予測頻度25%で存在した。ハイブリッド新生児マウスでは、異なる遺伝子型も同様に予想されるメンデルの法則1:2:1で示された(+/+ 34例(28%)、+/- 61例(50%)、および-/- 28例(23%))。ホモ接合変異体マウスは生存して生まれ、呼吸して哺乳することができた。しかし、ホモ接合変異体は全て出生後24時間以内に死亡した。正確な死因は不明であるが、致死はホモ接合変異体の腎臓が重度の形成不全であるかまたは全く存在しなかったという事実に関連する可能性がある。 ホモ接合変異体動物は、尾が極端に短いかまたはないことから容易に区別できた。これらのホモ接合変異体動物における尾の欠損の特徴をさらに調べるために、その骨格を調べて尾椎骨の破壊の程度を決定した。しかし、後期胚および新生児マウスの野生型と変異体骨格調製物とを比較したところ、動物の尾の領域のみならず、他の多くの領域においても差があることが判明した。差が認められたほぼあらゆる症例において、異常は、特定の体節がより前方の体節の典型である形態を示すように思われる脊椎体節のホメオティック変形を表すように思われた。これらの変形は、頚部領域から尾部領域に及ぶ軸骨格全体において明白であった。軸骨格において認められた欠損を除き、尾骨および脚骨のような骨格の残りは正常であるように思われた。 変異体新生児動物における脊椎骨の前方変形は胸部領域では最も容易に明らかであり、ここでは胸部(T)体節の数が劇的に増加した。調べた野生型マウスは全て、その関連する肋骨の対それぞれについて胸椎13個の典型的なパターンを示した。対照的にホモ接合変異体マウスは、胸椎の数の顕著な増加を示した。調べたホモ接合変異体は全て肋骨対が4〜5個余分に存在し、全体で17〜18個となったが、これらの動物の3分の1以上において、第18肋骨が発育不全であるように思われた。したがって、腰椎(L)体節L1〜L4またはL5に通常対応する体節は、変異体動物の胸部体節において変形しているように思われた。 その上、一つの胸椎がもう一つの胸椎の特徴である形態を有する胸部領域内の変形もまた明らかであった。例えば、野生型マウスにおいて、最初の肋骨7対は胸骨に結合し、残りの6対は結合していないかまたは遊離である。ホモ接合変異体では、結合および遊離の肋骨対の数の増加を認め、それぞれ10〜11および7〜8となった。したがって、胸部体節T8、T9、T10および場合によっては野生型動物において全て遊離の肋骨を有するT11でさえも、変異体動物では、より前方の胸部体節の典型である特徴、すなわち胸骨に結合した肋骨の存在を有するように変形した。この知見と一致して、野生型動物のT10において通常認められる移行性の棘状の突起および移行性の関節状の突起は、ホモ接合変異体ではそのかわりにT13に認められた。胸部領域内でのさらなる変化も同様に特定の変異体動物において認めた。例えば、野生型動物では、T1に由来する肋骨は通常、胸骨の上端に触れている。しかし、ハイブリッド23例中2例および129/SvJホモ接合変異体マウス3例中2例では、T2はT1の形態と類似の形態を有するように変形しているように思われた;すなわちこれらの動物において、T2に由来する肋骨は、胸骨の上端に触れるように伸張した。これらの症例において、T1に由来する肋骨は、第二の対の肋骨に融合するように思われた。最後に、ホモ接合変異体82%において、T2に通常存在する長い棘状の突起がT3の位置にシフトした。特定の他のホモ接合変異体では、脊椎胸骨肋骨対の非対称の融合を他の胸椎レベルで認めた。 前方変形は胸部領域に限ったことではなかった。われわれが認めた最も前方への変形は、第6頚椎レベル(C6)であった。野生型マウスにおいて、C6は、腹側に二つの前結節が存在することによって容易に同定できる。いくつかのホモ接合変異体マウスでは、これらの二つの前結節の一つはC6に存在したが、もう一方はその代わりにC7位に存在した。したがって、これらのマウスでは、C7はC6と類似の形態を有するように部分的に変形しているように思われた。他の一つのホモ接合変異体は、C7では前結節が2個あるが、完全なC7からC6への変化の場合にはC6上に1個であり、部分的なC6からC5の変化では存在しなかった。 軸骨格の変形も同様に、腰の領域にも伸張した。野生型動物は通常、腰椎6個のみを有するが、ホモ接合変異体は8〜9個を有した。変異体における腰椎少なくとも6個は、4〜5腰椎体節が胸部体節に変形していることを上記のデータが示唆しているために、仙椎と尾椎を通常生じる体節に由来するに違いない。したがって、ホモ接合変異体マウスは、野生型マウスに通常存在する仙骨前椎26個と比較すると、全体で仙骨前椎33〜34個を有した。最も一般的な仙骨前椎パターンは、野生型マウスのC7/T13/L6と比較して、C7/T18/L8およびC7/T18/L9であった。変異体動物にさらに仙骨前椎が存在することは、前肢と比較して後肢の位置が7〜8体節後方にずれているために、骨格の詳細な試験がなくとも明白であった。 仙椎および尾椎はホモ接合変異体マウスにおいて影響を受けたが、それぞれの形質転換の正確な特性は容易に同定可能ではなかった。野生型マウスにおいて、仙骨体節S1およびS2は典型的に、S3およびS4と比較して広い横突起を有する。変異体では、同定可能なS1またはS2脊椎は存在しないように思われた。その代わりに、変異体動物は、S3と類似の形態を有するように思われるいくつかの椎骨を有した。さらに、四つ全ての仙椎の横突起は通常、互いに融合しているが、新生児ではしばしば最初の三つの椎骨の融合のみを認める。しかし、ホモ接合変異体では、仙椎の横突起はたいてい融合していなかった。最尾部の領域では、全ての変異体動物は、軟骨の広範囲の融合を伴う重度の変形脊椎を有した。融合が重度であるために、尾部領域における椎骨の総数を計数することは難しかったが、いくつかの動物において15個までの横突起を計数した。野生型新生児動物においてもS4を尾椎と区別する形態学的基準が確立されていないために、これらが変異体における仙椎または尾椎を表すか否かは決定できなかった。それらが何であるかによらず、この領域における椎骨の総数は通常の約30という数から有意に減少していた。したがって、変異体は、野生型マウスより有意に多くの胸椎および腰椎を有したが、体節の総数は尾が切断されているために変異体では減少していた。 ヘテロ接合マウスはまた、軸骨格に異常を示したが、表現型はホモ接合マウスよりかなり軽度であった。ヘテロ接合マウスにおける最も明白な異常は、会合する肋骨椎を有するさらなる胸部体節の存在であった。この変形は、調べたあらゆるヘテロ接合動物に存在し、あらゆる場合において、さらなる肋骨対が胸骨に結合していた。したがって、会合する肋骨が通常胸骨に触れていないT8は、より前方の胸椎の特徴である形態に変形しているように思われ、L1は後部胸椎の特徴である形態に変形しているように思われた。前方変化を示す他の異常も同様に、ヘテロ接合マウスにおいて多様な程度に認められた。これらには、T2の特徴である長い棘状の突起のT3への一体節シフト、関節状および棘状突起のT10からT11へのシフト、前結節のC6からC7へのシフト、およびT2に会合する肋骨が胸骨の上端に触れるT2からT1への変形が含まれた。 GDF-11変異体マウスにおいて認められた軸パターン形成における異常の基礎を理解するために、様々な発達段階で単離した変異体の胚を調べ、野生型の胚と比較した。肉眼的な形態の観察によって、妊娠9.5日までに単離したホモ接合変異体胚は、対応する野生型胚と容易に区別できなかった。特に、所定の発達週齢で存在する体節数は、変異体と野生型の胚で同一であり、体節形成速度は変異体において変化していないことを示唆した。10.5日から11.5日までに p.c.変異体の胚は、後肢が7〜8体節後方にずれることによって野生型胚と容易に区別することができた。尾の発達の異常も同様に、この段階で容易に明らかであった。併せて考慮すると、これらのデータは、変異体の骨格において認められた異常が、例えば、体節形成速度の増強によって、さらなる体節が挿入されるよりむしろ体節そのものが真に変形していることを表すことを示唆した。 ホメオボックス含有遺伝子の発現が変化すれば、ショウジョウバエおよび脊椎動物において変形を引き起こすことが知られている。Hox遺伝子(脊椎動物ホメオボックス含有遺伝子)の発現パターンがGDF-11無効変異体において変化しているか否かを調べるために、代表的な三つのHox遺伝子、Hoxc-6、Hoxc-8、およびHoxc-11の発現パターンを12.5日のp.c.野生型、ヘテロ接合およびホモ接合変異体胚において全組織インサイチューハイブリダイゼーションによって決定した。野生型の胚におけるHoxc-6の発現パターンは、胸部体節T1〜T8に対応する前椎骨8〜15に及んだ。しかし、ホモ接合変異体において、Hoxc-6発現パターンは後方にシフトして、前椎骨9〜18(T2〜T11)に及んだ。類似のシフトをHoxc-8プローブについて認めた。野生型胚において、Hoxc-8は前椎骨13〜18(T6〜T11)において発現されたが、ホモ接合変異体胚では、Hoxc-8は、前椎骨14〜22(T7〜T15)において発現された。最後に、Hoxc-11発現も同様に、発現の前方境界が野生型の胚における前椎骨28から変異体胚における前椎骨36へとシフトしたという点において同様に後方にシフトした。(変異体胚では後肢の位置も同様に後方にシフトしたために、野生型および変異体におけるHoxc-11発現パターンは後肢と比較して類似であるように思われた)。これらのデータは変異体動物において認められた骨格の異常がホメオティック変形を表すさらなる証拠を提供する。 GDF-11マウスの表現型は、GDF-11が、軸パターン形成の全体的な調節物質として胚形成の初期に作用することを示唆した。GDF-11がその作用を発揮するメカニズムを調べ始めるために、初期マウス胚におけるGDF-11の発現パターンを、全組織インサイチューハイブリダイゼーションによって調べた。これらの段階において、GDF-11発現の主な部位は、内胚葉細胞が産生される既知の部位と正確に相関した。GDF-11の発現は、原条領域において8.25〜8.5日のp.c.(8〜10体節)で最初に検出されたが、これは移入細胞が発達しつつある胚の中胚葉を形成する部位である。発現は、8.75日のp.c.では原条において維持されたが、尾芽が新規中胚葉細胞源として原条を置換して、GDF-11の発現が尾芽にシフトする9.5日のp.c.では維持されなかった。したがって、これらの初期段階において、GDF-11は、新しい中胚葉細胞が発生して、おそらくその位置同一性を獲得する発達途中の胚の領域において合成されるように思われる。 いくつかの局面におけるGDF-11ノックアウトマウスの表現型は、TGF-βスーパーファミリーのいくつかのメンバーの受容体、アクチビンIIB型受容体(Act RIIB)の欠失を有するマウスの表現型に類似した。GDF-11ノックアウトマウスの場合と同様に、Act RIIBノックアウトマウスは余分の肋骨対を有し、腎欠陥スペクトルは、腎形成不全から腎臓が全く存在しないことまで及んだ。これらのマウスにおける表現型が類似していることは、Act RIIBがGDF-11の受容体となりうる可能性を生じる。しかし、GDF-11ノックアウトマウスの表現型がAct RIIBマウスの表現型より重度であることから、Act RIIBはGDF-11の唯一の受容体ではあり得ない。例えば、GDF-11ノックアウト動物は、4〜5個の余分の肋骨対を有し、軸骨格全体を通してホメオティック変形を示すのに対し、Act RIIBノックアウト動物は、余分の肋骨対を3個有するに過ぎず、他の軸レベルで変形を示さない。さらに、データは、GDF-11ノックアウトマウスにおける腎欠陥がAct RIIBノックアウトマウスより重度であることを示している。Act RIIBノックアウトマウスは、肺の異性のような左右軸形成の欠陥およびGDF-11ノックアウトマウスでは認められなかった一連の心欠陥を示す。Act RIIBは、アクチビンおよび特定のBMPsに結合することができるが、これらのリガンドに関して作製されたノックアウトマウスのいずれも左右軸形成の欠陥を示さなかった。 GDF-11が中胚葉細胞に直接作用して位置同一性を確立するのであれば、本明細書に示したデータは、GDF-11作用の短期またはモルフォゲンモデルと一致するであろう。すなわち、GDF-11は、これらの細胞がGDF-11発現部位で産生されることから、中胚葉前駆体に作用してHox遺伝子の発現パターンを確立することができる、または胚の後方末端で産生されたGDF-11が拡散してモルフォゲン勾配を形成することができる。GDF-11の作用のメカニズムがどのようなものであれ、全体的な前方/後方パターン形成がGDF-11ノックアウト動物において起こるという事実は、GDF-11が前/後特定化の唯一の調節物質ではないことを示唆している。それにもかかわらず、GDF-11が軸パターン形成の全体的な調節物質として重要な役割を有すること、およびこの分子に関するさらなる研究によって、前/後軸に沿って位置同一性が脊椎動物胚においてどのように確立されるかに関する重要な新しい洞察が得られることは明白である。 類似の表現型がGDF-8ノックアウト動物において予想される。例えば、GDF-8ノックアウト動物は、野生型と比較した場合に多数の肋骨、腎欠陥および解剖学的差を有することが予想される。実施例15ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチンまたはドミナントネガティブACT RIIBを発現するトランスジェニックマウスの作製ミオスタチンの精製 ミオスタチン発現構築物の増幅コピーを有するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株に、前駆体蛋白質のプロセシングを改善するために、フリンプロテアーゼPACEの発現構築物(Monique Davies氏の好意による提供)をトランスフェクトした。条件培地(セルトレンズ社の調製、ミドルタウン、メリーランド州)を、ヒドロキシアパタイト(200 mM燐酸ナトリウム、pH 7.2によって溶出)、レンチルレクチンセファロース(50 mMトリス、pH 7.4、500 mM NaCl、500 mMメチルマンノースによって溶出)、DEAEアガロース(50 mMトリス、pH 7.4、50 mM NaCl中でカラムの中を通過した材料を集める)、およびヘパリンセファロース(50 mMトリス、pH 7.4、200 mM NaClによって溶出)に連続的に通過させた。ヘパリンカラムからの溶出液を逆相C4 HPLCカラムに結合させて、0.1%トリフルオロ酢酸中でアセトニトリル勾配によって溶出した。成熟C-末端蛋白質に対する抗体は既に記述されている(参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,827,733号を参照のこと)。プロペプチドに対する抗体を作製するために、アミノ酸122〜261位に及ぶヒトミオスタチン蛋白質の一部をRSETベクター(インビトロジェン社、サンジエゴ、カリフォルニア州)を用いて細菌に発現させ、ニッケルキレートクロマトグラフィーによって精製して、ウサギに注射した。免疫は、スプリングバレー研究所(ウッドバイン、メリーランド州)が行った。受容体の結合 クロラミンT法(Frolik, C.A., Wakefield, L.M., Smith, D.M., and Sporn, M.B.(1984)、J. Biol. Chem. 259、10995〜11000)を用いて、精製ミオスタチンに放射性ヨウ素を標識した。6または12ウェルプレートにおいて増殖させたCOS-7細胞に、リポフェクタミン(ギブコ社、ロックビル、メリーランド州)を用いて、pCMV5またはpCMV5/受容体構築物1〜2μgをトランスフェクトした。クロスリンク実験は、記述のようにトランスフェクションの2日後に行った(Franzen, P.、ten Dijke, P.、Ichijo, H.、Yamashita, H.、Schultz, P.、Heldin、C.H.、およびMiyazono, K.(1993)、Cell 75:681〜692)。定量的受容体結合アッセイ法を行うために、細胞単層を、1 mg/ml BSAを含むPBSによって2回洗浄して、様々な濃度の非標識ミオスタチン、プロペプチド、またはフォリスタチンの存在下または非存在下で、4℃で標識ミオスタチンと共にインキュベートした。次に、細胞を同じ緩衝液によって3回洗浄して、0.5 N NaOH中で溶解し、γカウンターにおいて計数した、特異的結合は、Act RIIBをトランスフェクトした細胞と、ベクターをトランスフェクトした細胞との結合ミオスタチンの差として計算した。特異的結合を計算するこの方法は、プロペプチドを加えても同様に非特異的結合が濃度依存的に減少することから、プロペプチドの影響を評価するために特に重要であった。トランスジェニックマウス アミノ酸1〜174位に及ぶマウスAct RIIBの切断型、アミノ酸1〜267位に及ぶマウスミオスタチンプロペプチド、およびヒトフォリスタチン短縮型をコードするDNAを、ミオシン軽鎖プロモーターおよび1/3エンハンサー(McPherron, A.C.とLee, S.J.、(1993)、J. Biol. Chem. 268:3444〜3449)を含むMDAF2ベクターにクローニングした。ミオシン軽鎖調節配列とSV40プロセシング部位とを含む精製導入遺伝子をマイクロインジェクションのために用いた。マイクロインジェクションおよび胚の移入は全て、ジョンホプキンス大学メディカルスクールのトランスジェニックコア施設(John Hopkins of Medicine Trandgenic Core Facility)が行った。ハイブリッドSJL/C57BL/6バックグラウンドのトランスジェニック創始動物を野生型C57BL/6マウスと交配させて、研究は全てF1子孫を用いて行った。筋重量の分析に関して、個々の筋肉をほぼ全ての動物の両側から切除して、左右の筋重量の平均値を用いた。線維数と大きさの分析は記述通りに行った(McPherron, A.C.、Lawler, A.M.、およびLee, S.J.(1997)、Nature 387:83〜90)。RNA単離およびノザン分析は記述通りに行った(McPherron, A.C.、およびLee, S.J(1993)、J. Biol.Chem. 268:3444〜3449)。 ミオスタチン蛋白質を過剰産生させるために、ミオスタチン発現構築物の増幅コピーを有するCHO細胞株を作製した(McPherron, A.C.、Lawler, A.M.、およびLee, S.J(1997)、Nature 387:83〜90)。ミオスタチンは、ヒドロキシアパタイト、レンチルレクチンセファロース、DEAEアガロース、およびヘパリンセファロース上での連続分画によってこの細胞株の条件培地から精製した。精製蛋白質調製物の銀染色分析から、29 kdおよび12.5 kdの二つの蛋白質種が存在することが判明した。多様なデータによって、この精製蛋白質がジスルフィド結合C-末端二量体に結合した二つのプロペプチド分子の非共有結合複合体からなることが示唆された。第一に、ウェスタン分析によって、29 kd種と12.5 kd種はそれぞれ、プロペプチドおよびC-末端成熟領域に及ぶミオスタチンの細菌発現断片に対して作製された抗体と免疫反応性であった。第二に、還元剤の非存在下で、C-末端領域は、二量体と一致する電気泳動移動度を有した。第三に、二つの種は、モル比約1:1で存在した。また、第四に、C-末端二量体は、レクチンカラム上に保持され、蛋白質のこの部分が、可能性があるN-結合グリコシル化部位を含まなくともメチルマンノースによって溶出することができ;これらのデータを最も単純に解釈すると、C-末端領域が、グリコシル化シグナルを真に有するプロペプチドとの堅固な複合体に存在することによって間接的にレクチンに結合したことになる。 C-末端二量体は、他のTGF-βファミリーメンバーに関して生物活性分子であることが知られているため、ミオスタチンのC-末端二量体を、逆相HPLCによってそのプロペプチドから精製した。精製C-末端二量体(32〜34位)を含む画分は、均一であるように思われた。しかし、プロペプチド(35〜37)に関して最も濃縮された画分には、少量のC-末端二量体と、誤って折りたたまれた蛋白質を表す可能性が最も高い高分子量複合体とが混入していた。 TGF-βスーパーファミリーのほとんどのメンバーは、セリン/トレオニンキナーゼ受容体に結合した後Smad蛋白質の活性化を引き起こしてシグナルを伝達することが示されている(Heldin, C.H.、Miyazono, K.、およびten Dijke, P.(1997)Nature 390:465〜471;Massague, J.、Blain, S.W.、およびLo, R.S.(2000)、Cell 103:295〜309)。シグナル伝達経路の誘因となるこの初回事象は、II型受容体に対するリガンドの結合である。ミオスタチンが関連するリガンドの既知の如何なるタイプのII型受容体にも結合することができるか否かを決定するために、TGF-β、BMP、またはアクチビンII型受容体のいずれかの発現構築物をトランスフェクトしたCOS-7細胞において、放射性ヨウ素標識ミオスタチンC-末端二量体についてクロスリンク試験を行った。予想される大きさ(ミオスタチンに結合した完全長の受容体)のクロスリンク複合体が、Act RIIAまたはAct RIIBのいずれかを発現する細胞に関して検出された。クロスリンクおよび標準的な受容体結合アッセイ法の双方において、Act RIIBに対する結合はAct RIIAより高いレベルで認められ、したがって、受容体結合試験はAct RIIBに集中して行った。Act RIIBに対するミオスタチンの結合は特異的(結合は、過剰量の非標識ミオスタチンによって競合されうる)かつ飽和性であり、ミオスタチン蛋白質の全てが生物活性であると仮定して、本発明者らはスキャッチャード分析による解離定数が約10 nMであると推定した。TGF-βの場合、II型受容体に対する親和性は適当なI型受容体の存在下で有意に高いこと、および他の分子がリガンドの受容体への提示に関与していることがわかっている。 アクチビンII型受容体が、インビボでミオスタチンのシグナル伝達に関与する可能性があるか否かを決定するために、マウスにおいてAct RIIBのドミナントネガティブ型を発現する影響を調べた。この目的のため、本発明者らは、キナーゼドメインを欠損するAct RIIBの切断型が、骨格筋特異的ミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーの下流に配置されている構築物を作製した。この構築物の前核注入によって、導入遺伝子に関して陽性の創始動物が全体で7例同定された。7ヶ月齢でこれらの創始動物の分析を行ったところ、7例全てが骨格筋重量の有意な増加を示し、これらの創始動物の個々の筋重量は、類似の注射を行った対照の非トランスジェニック動物の筋重量と比較して125%まで増加した(表2)。 3系列の証拠から、これらの創始動物における筋重量の増加が、導入遺伝子の発現に起因することが示唆された。第一に、創始動物3例(他の創始動物4例は、分析のために十分な数の子孫を生じなかった)と野生型C57BL/6マウスとの交配から得られた子孫の分析は、筋重量の増加が導入遺伝子の存在と相関することを示した(表3)。第二に、筋重量は異なるトランスジェニック系統において変化したが、増加の程度は、如何なる所定の系統の動物においても調べた全ての筋について、および雄性および雌性双方についても非常に一貫していた(表3)。例えば、C5系統の雄性および雌性マウスの全ての筋重量は、対照動物より約30〜60%多かったが、C11マウスの筋重量は全て約110〜180%多かった。第三に、トランスジェニック動物から調製したRNA試料のノザン分析から、導入遺伝子の発現が骨格筋に限定されること、および導入遺伝子発現の相対レベルが、筋重量の相対的な増加程度と相関することが示された(表3)。例えば、筋重量の最大の増加を示したC11系統の動物は、導入遺伝子発現に関しても最高レベルを示した。 これらのデータは、Act RIIBのドミナントネガティブ型の発現が、ミオスタチンノックアウトマウスにおいて認められた場合と類似の筋重量の増加を引き起こしうることを示した。ミオスタチンノックアウトマウスにおいて、筋重量の増加は、線維数および線維の大きさの増加に起因することが示されている。ドミナントネガティブAct RIIBの発現が同様に過形成および過栄養の双方を引き起こすか否かを決定するために、C27系統の動物のひ腹筋と足底筋の切片を分析した。対照筋と比較すると、C27動物の筋肉は断面領域全体において明確な増加を示した。領域におけるこの増加は、部分的に線維数の増加に起因した。最も広い点において、ひ腹筋および足底筋は、C27系統(n=3)の動物では線維数が全体で10015+1143個であったのに対し、対照動物では線維7871+364個であった(n=3)。しかし、筋線維の過栄養も同様に、面積全体の増加に関与した。線維の直径の平均値は、C27系統の動物では51 μmであったのに対し、対照動物では43μmであった。したがって、筋重量の増加は、線維の数の約27%増加および線維の直径の約19%増加に起因するように思われた(線維がほぼ円柱形であると仮定すると、直径のこの増加によって、断面積が約40%増加する)。しかし、線維の数および大きさの増加を除くと、トランスジェニック動物からの筋肉は、肉眼的に見て正常であるように思われた。特に、広く多様な線維の大きさ(線維の大きさの標準偏差は対照動物とトランスジェニック動物のあいだで類似であった)もしくは広汎な線維症、または脂肪の浸潤のような変性に関する明白な兆候を認めなかった。 これらのアプローチを用いて、ミオスタチンの阻害に関して他に可能性がある戦略を探求した。第一に、本発明者らはミオスタチンプロペプチドの影響を調べた。TGF-βの場合、C-末端二量体はそのプロペプチドを含む他の蛋白質との不活性な潜在型の複合体として保持されていること、およびTGF-βのプロペプチドはインビトロおよびインビボの双方でTGF-β活性に阻害作用を有することが知られている(Miyazono, K.、Hellman, U.、Wernstedt, C.、およびHeldin, C.H.(1998)、J. Biol. Chem. 263:6407〜6415;Gentry, L.E. and Nash, B.W.(1990)、Biochem. 29:6851〜6857;Bottinger, E.P.、Factor, V.M.、Tsang, M.L.S.、Weatherbee, J.A.、Kopp, J.B.、Qian, S.W.、Wakefield, L.M.、Roberts, A.B.、Thorgeirsson, S.S.、およびSporn, M.B.(1996)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5877〜5882)。ミオスタチンC-末端二量体とプロペプチドとが同時精製されたという知見は、ミオスタチンが類似の潜在型複合体に通常存在する可能性を示し、ミオスタチンプロペプチドが阻害活性を有する可能性があることを示した。第二に、本発明者らは、いくつかのTGF-βファミリーメンバーに結合してその活性を阻害することができることが示されているフォリスタチンの作用を調べた。特に、フォリスタチンは、ミオスタチンに非常に近縁であるGDF-11の活性を遮断することができ、フォリスタチンノックアウトマウスは、出生時の筋重量が減少していることが示されており、これはミオスタチンの過剰活性と一致するであろう(Gamer, L.、Wolfman, N.、Celeste, A.、Hattersley, G.、Hewick, R.、およびRosen, V.(1999)Dev. Biol. 208:222〜232;Matzuk, M.M.、Lu, N.、Vogel, H.、Sellheyer, K.、Roop, D.R.、およびBradley, A.(1995)Nature 374:360〜363)。 インビトロでプロペプチドとフォリスタチンの作用を調べた。ミオスタチンプロペプチドとフォリスタチンはいずれも、Act RIIBに対するC-末端二量体の結合を阻害することができた。フォリスタチンのKiは、約470 pMであると推定され、プロペプチドのKiは少なくとも50倍高いと推定された。しかし、プロペプチドのKiの計算は、最終調製物中の全ての蛋白質が生物活性プロペプチドを表すと仮定しており、したがって、過大推定値である可能性がある。先に考察したように、プロペプチド調製物には、少量のC-末端二量体と、誤って折りたたまれた高分子量種の双方が混入していた。 これらの分子が同様に、インビボでミオスタチン活性を遮断することができるか否かを決定するために、ミオスタチン軽鎖プロモーター/エンハンサーを用いてミオスタチンプロペプチドまたはフォリスタチンのいずれかを発現させたトランスジェニックマウスを作製した。プロペプチド構築物の前核注入によって、筋重量の増加を示すトランスジェニックマウス3系統(これらのうち2系統、B32AおよびB32Bは最初の創始動物1例において独立して分離する導入遺伝子挿入部位を表した)が同定された。表3に示すように、それぞれの系統の動物の筋重量は、非トランスジェニック対照動物と比較して約20〜110%増加した。これらの系統のそれぞれの代表的な動物から調製したRNA試料のノザン分析から、導入遺伝子の発現レベルが筋重量の増加の程度と相関することが示された。特に、筋重量の約20〜40%増加を示したに過ぎないB32A系統の動物は、導入遺伝子発現レベルが最低であり、B32BおよびB53系統の動物は筋重量の約70〜110%の増加を示し、最高レベルの導入遺伝子発現を示した。おそらく重要なことは、B32AとB32B挿入部位の二重トランスジェニックである動物における筋重量は、二重トランスジェニック動物は導入遺伝子発現レベルがより高いように思われるという事実にもかかわらず、B32B挿入部位のみのトランスジェニック動物において認められた筋重量と類似であった(表3)。これらの知見は、B32B系統(およびB53系統)において認められた作用が、プロペプチドの過剰発現から得ることができる最大値であったことを示唆している。Act RIIBのドミナントネガティブ型を発現する動物の場合におけるように、プロペプチドを発現する動物は、筋線維の数および大きさの双方の増加を示した。B32AとB32B挿入部位とに関して二重トランスジェニックである動物2例からのひ腹筋および足底筋の分析を行ったところ、線維の数が約40%増加したこと(動物2例の線維は11940個および10420個であった)、および線維の直径が対照動物と比較して約21%(52μmまで)増加したことが示された。 骨格筋に及ぼす最も劇的な作用は、フォリスタチン構築物を用いて得られた。創始動物2例(F3およびF66)は、筋肉の増加を示した(表2)。これらの動物の1例(F3)において、筋重量は対照動物と比較して194〜327%増加し、これは過形成(ひ腹筋/足底筋の線維数は66%増加して13051個)、および過栄養(線維の直径は28%増加して55μm)の組み合わせに起因した。本発明者らは、ハイブリッドSJL/C57BL/6バックグラウンドのミオスタチンノックアウトマウスの筋重量を分析しなかったが、F3創始動物において認められた筋重量の増加は、他の遺伝的バックグラウンドのミオスタチンヌル動物において認められた増加より有意に大きかった。これらの結果は、フォリスタチンの作用の少なくとも一部は、ミオスタチンの他にもう一つのリガンドの阻害に起因する可能性があることを示唆している。明らかに、さらなるフォリスタチントランスジェニック系統の分析は、他のリガンドも同様に筋増殖の負の調節に関与する可能性があるか否かを決定するために必須であると考えられる。 蛋白質分解プロセシングの後、ミオスタチンC-末端二量体は、そのプロペプチド、およびおそらく同様に他の蛋白質との潜在的複合体において維持される可能性がある。ミオスタチンはまた、C-末端二量体に結合して、その受容体結合能を阻害するフォリスタチンによって負の調節を受ける。未知のメカニズムによるこれらの阻害蛋白質からのC-末端二量体の放出によって、ミオスタチンはアクチビンII型受容体に結合することができる。他のファミリーメンバーとの類推によって、本発明者らは、これらの受容体の活性化によってI型受容体およびSmad蛋白質の活性化が起こると推定する。 ミオスタチン調節およびシグナル伝達に関するこの全体的なモデルは、本明細書に示したデータのみならず、他の遺伝的データとも一致する。先に考察したように、フォリスタチンノックアウトマウスは、出生時の筋重量が減少していることが示されており、これは、ミオスタチン活性が阻害されない場合に予想されるとおりである。類似の筋表現型は、Smad2および3の活性を阻害することが示されているskiを欠損するマウスについて報告されており、skiを過剰発現するマウスでは、反対の表現型、すなわち骨格筋の過剰が認められている。本発明の知見に基づいて、一つの仮説は、これらの認められた表現型がそれぞれ、これらのマウスにおけるミオスタチンの過剰活性および過小活性を反映するという点である。 インビトロおよび遺伝子データは全て、本発明者らが本明細書において示した全体的なモデルと一致しているが、これらのデータはまた、他の受容体およびリガンドを含むもう一つのモデルとも一致すると思われる。例えば、それによってAct RIIBの切断型が本発明者らのトランスジェニックマウスにおいて筋増殖を増強するメカニズムはわかっていない。切断型受容体は、標的細胞においてシグナル伝達を遮断するように作用するのではなく、ミオスタチンの細胞外濃度を枯渇するための貯水槽として単に作用する可能性がある。同様に、切断型受容体は、ミオスタチン以外にも他のリガンドのシグナル伝達を阻害する可能性がある。この点において、II型アクチビン受容体のドミナントネガティブ型は、他の種において多様な異なるTGF-β関連リガンドのシグナル伝達を遮断できることが示されている。同様に、本発明者らは、フォリスタチンが筋増殖を促進するためにインビボでミオスタチン活性を遮断することを明確に示していない。この点において、フォリスタチン発現創始動物の1例において異常な程度の筋肉が認められたことは、他のフォリスタチン感受性リガンドが筋増殖の調節に関与する可能性があることを示唆している。 しかし、今日まで、ミオスタチンは、インビボで筋重量を調節するために負の役割を果たしていることが証明された唯一の分泌蛋白質である。このモデル全体の局面を証明して、他のシグナル伝達成分を同定するためにはさらなる実験が必要であるが、本発明者らのデータは、フォリスタチンおよびミオスタチンプロペプチドのようなミオスタチン拮抗剤、またはアクチビンII型受容体拮抗剤がヒトおよび農業での応用の双方にとって有効な筋増強剤である可能性があることを示唆している。動物は全て(対照を含む)、注入した胚から生まれたハイブリッドSJL/C57BL/6 F0マウスを表す。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。動物は全て(対照を含む)、野生型C57Bl/6マウスと交配させたトランスジェニック創始動物(SJL/C57BL/6)の4ヶ月齢子孫を表す。 本発明は、上記の実施例を参照して説明してきたが、改変および変更は本発明の精神および範囲に含まれると理解されると思われる。したがって、本発明は特許請求の範囲に限って制限される。マウスプロミオスタチン(配列番号:4);ラットプロミオスタチン(配列番号:6);ヒトプロミオスタチン(配列番号:2);ヒヒプロミオスタチン(配列番号:10);ウシプロミオスタチン(配列番号:12);ブタプロミオスタチン(配列番号:14);ヒツジプロミオスタチン(配列番号:16);ニワトリプロミオスタチン(配列番号:8);七面鳥プロミオスタチン(配列番号:18);およびゼブラフィッシュプロミオスタチン(配列番号:20)のアミノ酸配列を示す。アミノ酸は、ヒトプロミオスタチン(配列番号:2)に対して番号をつける。破線は、相同性を最大にするために導入したギャップを示す。配列における黄体が同一の残基に影をつけて示す。マウスプロミオスタチン(配列番号:4)とゼブラフィッシュのプロミオスタチン(配列番号:20)のアミノ酸配列、ならびにサケ対立遺伝子1プロミオスタチン(配列番号:27、「サケ1」)およびサケ対立遺伝子2プロミオスタチン(配列番号:29、「サケ2」)のアミノ酸配列の一部を示す。ヒトプロミオスタチンに対するアミノ酸の位置をそれぞれの列の左側に示す(図1と比較;サケ1の最初のアミノ酸はヒトプロミオスタチン218位に対応する;サケ2の最初のアミノ酸はヒトプロミオスタチン239位に対応する)。破線は相同性を最大にするために導入したギャップを示す。ギャップを含む相対的アミノ酸の位置は、それぞれの列の上に沿って示す。配列における同一の残基に影をつけて示す。図2−1の続きを示す図である。 核酸配列が、対応する非トランスジェニック動物と比較して切断型アクチビンII型受容体レベルの上昇と、動物における筋重量の増加とが起こるように発現される、そのゲノムが、機能的に結合して動物のゲノムに組み入れられる、切断型アクチビンII型受容体遺伝子と筋特異的プロモーターとを含む核酸配列を含む、ヒト以外のトランスジェニック動物。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項1記載のトランスジェニック動物。 アクチビンII型受容体がRIIAまたはRIIBである、請求項1記載のトランスジェニック動物。 切断型アクチビンRIIB受容体がキナーゼ活性を欠損する、請求項3記載のトランスジェニック動物。 切断型アクチビンRIIB受容体がアクチビンRIIBのアミノ酸残基1〜174位を含む、請求項1記載のトランスジェニック動物。 核酸配列が、対応する非トランスジェニック動物と比較して、動物におけるミオスタチンプロドメインレベルの上昇と筋重量の増加とが起こるように発現される、そのゲノムが、機能的に結合して動物のゲノムに組み入れられる、ミオスタチンプロドメインと筋特異的プロモーターとを含む核酸配列を含む、ヒト以外のトランスジェニック動物。 ミオスタチンプロドメインが、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、および20、またはミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分からなる群より選択されるプロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸残基約1〜262位を含む、請求項6記載のトランスジェニック動物。 ミオスタチンプロドメインが、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6記載のトランスジェニック動物: 配列番号:4に記載のアミノ酸残基約20〜263位; 配列番号:2に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:10に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:12に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:8に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:6に記載のアミノ酸残基約20〜263位; 配列番号:18に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:14に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:16に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:20に記載のアミノ酸残基約20〜262位;および その機能的ペプチド部分。 ミオスタチンプロドメインがミオスタチンシグナルペプチドをさらに含む、請求項6記載のトランスジェニック動物。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項6記載のトランスジェニック動物。 核酸配列が、対応する非トランスジェニック動物と比較して、動物におけるフォリスタチンレベルの上昇と筋重量の増加とが起こるように発現される、そのゲノムが、機能的に結合して動物のゲノムに組み入れられる、フォリスタチン遺伝子と筋特異的プロモーターとを含む核酸配列を含む、ヒト以外のトランスジェニック動物。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項11記載のトランスジェニック動物。 筋特異的制御配列に機能的に結合した切断型アクチビンRIIB受容体遺伝子をコードするDNAセグメントを含む発現カセット。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項13記載の発現カセット。 筋特異的制御配列に機能的に結合したミオスタチンプロドメイン遺伝子をコードするDNAセグメントを含む発現カセット。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項15記載の発現カセット。 筋特異的制御配列に機能的に結合したフォリスタチン遺伝子をコードするDNAセグメントを含む発現カセット。 筋特異的プロモーターが、ミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項17記載の発現カセット。 発現カセットが動物のゲノムに組み入れられ、カセットが、動物におけるフォリスタチンレベルが上昇して、その結果、対応する非トランスジェニック動物と比較してトランスジェニック動物における筋重量の増加が起こるように発現される、トランスジェニック動物の細胞において、請求項17記載の発現カセットを発現させることを含む、トランスジェニック動物においてフォリスタチンを組織特異的に発現させる方法。 細胞が、切断型アクチビンII型受容体、ミオスタチンプロドメイン、またはフォリスタチンをそれぞれ発現する、請求項1、6、または11のいずれか一項に記載の動物から単離した細胞または細胞株。 ミオスタチンをフォリスタチンに接触させて、それによって受容体との結合を阻害することを含む、アクチビンII型受容体に対するミオスタチン結合を阻害する方法。 結合の阻害がミオスタチンのC-末端を通して行われる、請求項21記載の方法。 アクチビン受容体がAct RIIAまたはAct RIIBである、請求項21記載の方法。 筋細胞におけるDNA構築物の発現によって動物の筋重量の増加が起こる、そのゲノムが、筋細胞における発現にとって有効な内因性フォリスタチン遺伝子に対して異種のプロモーターに機能的に結合したフォリスタチン蛋白質をコードするDNAセグメントを含むDNA構築物を含む、ヒト以外のトランスジェニック動物。 DNA構築物が動物の祖先に導入されている、請求項24記載のヒト以外の動物。 DNA構築物が胚の段階で動物または該動物の祖先に導入される、請求項24記載のヒト以外の動物。 フォリスタチン蛋白質が、野生型と比較してフォリスタチン蛋白質の切断型、変異型、または他の変種型である、請求項24記載のヒト以外の動物。 DNA構築物が、フォリスタチン蛋白質をコードするDNAセグメントを含むMDAF2発現プラスミドに存在する、請求項24記載のヒト以外の動物。 動物が哺乳類である、請求項24記載のヒト以外の動物。 哺乳類がマウスである、請求項29記載のヒト以外の動物。 哺乳類がブタである、請求項29記載のヒト以外の動物。 哺乳類がウシである、請求項29記載のヒト以外の動物。 動物がトリ種である、請求項24記載のヒト以外の動物。 トリ種がニワトリまたは七面鳥である、請求項33記載のヒト以外の動物。 動物が水生種である、請求項24記載のヒト以外の動物。 水生種が魚である、請求項35記載のヒト以外の動物。 魚が、サケ、マス、チャー、アユ、コイ、ヨーロッパフナ、キンギョ、ウグイ、シラス、ウナギ、アナゴ、コイワシ、ゼブラフィッシュ、トビウオ、ハタ科の魚、タイ科の魚、パロットバス、フエダイ、サバ、クロマグロ、マグロ、ハガツオ、黄色の尾をもつ魚、岩間の魚、フルーク、ソール、ヒラメ、フグ、またはモンガラカワハギである、請求項36記載のヒト以外の動物。 水生種が、ハマグリ、コックル、イガイ、タマキビガイ、ホタテ貝、ホラガイ、マキガイ、ナマコ、アークシェル、カキ、リュウテンサザエ科の貝、アワビ、ロブスター、クルマエビ、エビ、カニ、シャコ、クリール、ランゴスチノ、イセエビ/ザリガニ、環形動物、ワニ、カメ、カエル、またはウニである、請求項35記載のヒト以外の動物。 動物がヒツジである、請求項24記載のヒト以外の動物。 以下を含む、ヒト以外のキメラ動物を作製する方法: 動物の卵巣から卵子を得る段階; インビトロで卵子を成熟させる段階; インビトロで成熟した卵子を受精させて受精卵を形成する段階; 切断型アクチビンII型受容体、ミオスタチンプロペプチド、またはフォリスタチンをコードするDNA配列と、ポリペプチドをコードするDNA配列の発現を促進する制御配列とを機能的に結合させて含む核酸構築物を、インビトロで受精卵に導入する段階; 受精卵を着床前段階の胚までインビトロで成熟させる段階;および 雌性動物が胚を妊娠してキメラ動物を産む、レシピエント雌性動物に胚を移植する段階。 以下を含む、筋重量が増加した動物の食糧を作製する方法: a)動物の前核胚の生殖細胞に、フォリスタチン、ミオスタチンプロペプチド、または切断型アクチビンII型受容体をコードする導入遺伝子を導入する段階; b)偽妊娠雌性動物の卵管に胚を着床させて、それによって胚を妊娠満期まで成熟させる段階; c)導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の有無に関して子孫を試験する段階; d)さらなる導入遺伝子陽性子孫を同定するために、導入遺伝子陽性子孫を交配させる段階;および e)子孫を加工して食糧を得る段階。 以下を含む、筋重量が増加したトリ、ブタ、魚、またはウシの食品を作製する方法: a)フォリスタチン、ミオスタチンプロペプチド、または切断型アクチビンII型受容体をコードする導入遺伝子を、トリ、ブタ、魚、またはウシ動物の胚に導入する段階; b)子孫が孵化する条件で胚を培養する段階; c)導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の有無に関して子孫を試験する段階; d)導入遺伝子陽性子孫を交配する段階;および e)子孫を加工して食糧を得る段階。 【課題】筋重量を増加する方法の提供。【解決手段】GDF-8(ミオスタチン)受容体を含む実質的に精製された増殖分化因子(GDF)受容体と共にその機能的ペプチド部分、その機能的ペプチド部分の仮想表示、また、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす物質の細胞への接触による、細胞に及ぼすミオスタチンの影響の調節方法、さらに、被験者の筋細胞または脂肪組織細胞におけるミオスタチンシグナル伝達調節による、被験者における筋または脂肪組織の異常な量、発達、または代謝活性を少なくとも部分的に特徴とする病態の重症度の改善方法、また、ミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす物質の生物への投与による、真核生物における筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法。【選択図】なし配列表20080508A16333全文3 機能的に結合され且つ動物のゲノムに組み込まれた切断型アクチビンII型受容体遺伝子と筋特異的プロモーターとを含む核酸配列をゲノムに含む、ヒト以外のトランスジェニック動物であって、該核酸配列が、対応する非トランスジェニック動物と比較して切断型アクチビンII型受容体レベルの上昇と、動物における筋重量の増加とが起こるように発現される、トランスジェニック動物。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項1記載のトランスジェニック動物。 アクチビンII型受容体がRIIAまたはRIIBである、請求項1記載のトランスジェニック動物。 切断型アクチビンRIIB受容体がキナーゼ活性を欠損する、請求項3記載のトランスジェニック動物。 切断型アクチビンRIIB受容体がアクチビンRIIBのアミノ酸残基1〜174位を含む、請求項1記載のトランスジェニック動物。 機能的に結合され且つ動物のゲノムに組み込まれたミオスタチンプロドメインと筋特異的プロモーターとを含む核酸配列をゲノムに含む、ヒト以外のトランスジェニック動物であって、該核酸配列が、対応する非トランスジェニック動物と比較して、動物におけるミオスタチンプロドメインレベルの上昇と筋重量の増加とが起こるように発現される、トランスジェニック動物。 ミオスタチンプロドメインが、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、および20、またはミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分からなる群より選択されるプロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸残基約1〜262位を含む、請求項6記載のトランスジェニック動物。 ミオスタチンプロドメインが、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6記載のトランスジェニック動物: 配列番号:4に記載のアミノ酸残基約20〜263位; 配列番号:2に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:10に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:12に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:8に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:6に記載のアミノ酸残基約20〜263位; 配列番号:18に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:14に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:16に記載のアミノ酸残基約20〜262位; 配列番号:20に記載のアミノ酸残基約20〜262位;および その機能的ペプチド部分。 ミオスタチンプロドメインがミオスタチンシグナルペプチドをさらに含む、請求項6記載のトランスジェニック動物。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項6記載のトランスジェニック動物。 筋特異的制御配列に機能的に結合した切断型アクチビンRIIB受容体遺伝子をコードするDNAセグメントを含む発現カセット。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項11記載の発現カセット。 筋特異的制御配列に機能的に結合したミオスタチンプロドメイン遺伝子をコードするDNAセグメントを含む発現カセット。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項13記載の発現カセット。 細胞が、切断型アクチビンII型受容体、またはミオスタチンプロドメインをそれぞれ発現する、請求項1または6のいずれか一項に記載の動物から単離した細胞または細胞株。 ミオスタチンをフォリスタチンに接触させて、それによって受容体との結合を阻害することを含む、アクチビンII型受容体に対するミオスタチン結合を阻害する方法。 結合の阻害がミオスタチンのC-末端を通して行われる、請求項16記載の方法。 アクチビン受容体がAct RIIAまたはAct RIIBである、請求項16記載の方法。 以下を含む、ヒト以外のキメラ動物を作製する方法: ヒト以外の動物の卵巣から卵子を得る段階; インビトロで卵子を成熟させる段階; インビトロで成熟した卵子を受精させて受精卵を形成する段階; 切断型アクチビンII型受容体、またはミオスタチンプロペプチドをコードするDNA配列と、ポリペプチドをコードするDNA配列の発現を促進する制御配列とを機能的に結合させて含む核酸構築物を、インビトロで受精卵に導入する段階; 受精卵を着床前段階の胚までインビトロで成熟させる段階;および 雌性動物が胚を妊娠してキメラ動物を産む、ヒト以外のレシピエント雌性動物に胚を移植する段階。 以下を含む、筋重量が増加したヒト以外の動物の食糧を作製する方法: a)ヒト以外の動物の前核胚の生殖細胞に、ミオスタチンプロペプチド、または切断型アクチビンII型受容体をコードする導入遺伝子を導入する段階; b)偽妊娠雌性動物の卵管に胚を着床させて、それによって胚を妊娠満期まで成熟させる段階; c)導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の有無に関して子孫を試験する段階; d)さらなる導入遺伝子陽性子孫を同定するために、導入遺伝子陽性子孫を交配させる段階;および e)子孫を加工して食糧を得る段階。 以下を含む、筋重量が増加したトリ、ブタ、魚、またはウシの食品を作製する方法: a)ミオスタチンプロペプチド、または切断型アクチビンII型受容体をコードする導入遺伝子を、トリ、ブタ、魚、またはウシ動物の胚に導入する段階; b)子孫が孵化する条件で胚を培養する段階; c)導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の有無に関して子孫を試験する段階; d)導入遺伝子陽性子孫を交配する段階;および e)子孫を加工して食糧を得る段階。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る

特許公報(B2)_筋重量を増加させるためのフォリスタチンの使用方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_筋重量を増加させるためのフォリスタチンの使用方法
出願番号:2008116224
年次:2009
IPC分類:A01K 67/027,C12N 15/09,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

リー セ−ジン マクフェロン アレキサンドラ シー. JP 4361955 特許公報(B2) 20090821 2008116224 20080425 筋重量を増加させるためのフォリスタチンの使用方法 ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー 503392851 清水 初志 100102978 新見 浩一 100128048 リー セ−ジン マクフェロン アレキサンドラ シー. US 09/841,730 20010424 20091111 A01K 67/027 20060101AFI20091022BHJP C12N 15/09 20060101ALI20091022BHJP C12N 5/10 20060101ALI20091022BHJP JPA01K67/027C12N15/00 AC12N5/00 B A01K 67/027 C12N 15/00 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) Proc.Natl.Acad.Sci.USA., vol.98, pp.9306-9311 (July 31, 2001) Biochim.Biophys.Acta, vol.1450, pp.1-11 (1999) 11 2002582882 20020424 2008289478 20081204 87 20080508 長井 啓子発明の分野 本発明は、一般的に増殖分化因子(GDF)受容体に関し、より詳しくはGDF-8(ミオスタチン)受容体、細胞においてミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす組成物、および細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するためにそのような組成物を用いる方法に関する。背景 アメリカにおいて、体重を減らそうと考えている人が消費する時間、労力、およびお金の量は驚異的である。これらの人の多くにとって、目標は単に外見を良くすることではなく、より重要なことは、過体重であることに関連した避けて通れない医学的問題を回避することである。 アメリカでは成人集団の半数以上が過体重であると見なされる。さらに、アメリカでは成人男性の20〜30%および成人女性の30〜40%が肥満であると見なされ、貧困および少数民族においてその発生率は最も高い。平均脂肪レベルを少なくとも20%超えていると定義される肥満は、ここ数十年のあいだに発生率が劇的に増加して、小児集団においても主要な問題となりつつある。子供全体の20%が現在過体重であると見なされ、過去5年のあいだにその数は倍増している。 肥満と、肥満に直接帰因する医学的問題は、世界全体から見ても罹患率および死亡率の主な原因である。肥満は、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、心臓発作、II型糖尿病、膀胱疾患、および特定の癌を含む様々な病態の発症の主要な危険因子であり、早期死亡に関与する。心疾患は、アメリカにおける死因の第一位であり、II型糖尿病は、アメリカにおいて1600万人に罹患し、疾患による主な死因の一つである。 II型糖尿病の80%超が肥満の人に起こる。II型糖尿病は全ての人種に罹患するが、アメリカインディアン、アフリカ系アメリカ人、およびヒスパニック系住民において特に発生率が高い。特に、年齢40歳を過ぎた成人にほぼ限って起こっていたII型糖尿病が、今では小児に起こり、報告された症例は過去5年のあいだにほぼ3倍になった。非インスリン依存型糖尿病とも呼ばれるII型糖尿病は、循環中のインスリンレベルが正常または上昇している場合であっても、グルコースに反応したインスリン分泌の減少およびインスリンの作用に対する体の耐性を特徴とする。II型糖尿病は、多様な異なる組織および臓器の機能に影響を及ぼし、血管疾患、腎不全、網膜症およびニューロパシーを引き起こしうる。 肥満に関連した医学的問題とは対照的に、特定の慢性疾患を有する患者に一般的に起こる重度の体重減少も医学的介入に対する課題となる。カヘキシアと呼ばれるこの体重減少の分子的基礎は十分に理解されていない。しかし、カヘキシアによってそのような疾患の管理が複雑となり、それが患者の予後不良に関連することは明らかである。カヘキシアの作用は、癌およびAIDS患者において起こる消耗性症候群において明らかである。 体重の調節に関与する生物学的プロセスを解明するために多くの努力が行われているが、結果は実際の値より誇張されて提供されている。例えば、レプチンの発見は、ヒトにおいて脂肪が蓄積する分子的基礎を理解するための突破口であると認められ、それによって肥満が治癒する見込みがあると見なされた。動物試験は、レプチンが食欲を調節する内部シグナルの伝達に関係することを示しており、レプチンが肥満を有する人を治療するために有用となりうることを示唆している。しかし、肥満を治療するためにレプチンを用いる進捗状況は遅く、これまでのところ、レプチンは当初の予想を満たしていない。 病的な肥満の治療は、現在のところ、腸の一部を除去して、それによって吸収される食物(およびカロリー)量を減少させる手術に限定されている。中等度の肥満の場合、唯一の「治療」は健康な食事を食べて、定期的に運動することであるが、この方法は成功してもせいぜいわずかであることが証明されている。このように、肥満およびカヘキシアのような障害を治療する方法を開発することができるように、筋肉の発達および脂肪の蓄積を含む体重の調節に関係した生物学的要因を特定する必要がある。本発明は、この必要性を満足してさらなる長所を提供する。発明の概要 本発明は、実質的に精製されたGDF受容体に関する。本発明のGDF受容体は、例えば、ミオスタチン受容体、GDF-11受容体、または他のGDF受容体となりうる。例えば、ミオスタチン受容体は、少なくとも特異的にミオスタチンと相互作用して、同様に、一つまたは数個のさらなる成熟GDFペプチドとも特異的に相互作用しうる。GDF受容体をコードするポリヌクレオチド、GDF受容体と特異的に相互作用する抗体等も同様に提供する。 本発明はまた、GDFによって影響を受けるシグナル伝達に影響を及ぼすことによってGDFの作用を調節する方法にも関する。例として、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を細胞に接触させることによって、細胞に及ぼすミオスタチンの影響を調節する方法を提供する。一つの態様において、作用物質は、細胞によって発現されたミオスタチン受容体とミオスタチンとの特異的相互作用を変化させ、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節する。ミオスタチン受容体はアクチビン受容体ともなりえて、またはミオスタチンシグナル伝達が活性化されるように、成熟ミオスタチンまたはその機能的ペプチド部分が接触することができる他の如何なる受容体ともなりうる。もう一つの態様において、作用物質は、ミオスタチン受容体に結合して、それによって受容体に対するミオスタチン結合を増強する、または受容体に関してミオスタチンと競合する。そのため、作用物質は、ミオスタチンシグナル伝達を増加させることができ、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害することができる。さらにもう一つの態様において、作用物質は、細胞内で、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を変化させるように作用する。 GDFシグナル伝達を調節するために有用な作用物質は、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリヌクレオチド、有機低分子、または他の如何なる作用物質ともなりえて、GDFシグナル伝達の作用剤またはGDFシグナル伝達の拮抗剤として作用することができる。一つの態様において、ペプチド作用物質は、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させる。そのようなペプチド作用物質は、例えば、ミオスタチンに結合するか、またはそうでなければミオスタチンを隔離して、それによってミオスタチンの受容体との特異的相互作用能に影響を及ぼすペプチドとなりうる。そのような作用物質の例は、変異体ミオスタチン受容体、例えば、ミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチン受容体の可溶性細胞外ドメイン;ミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチンプロドメイン;およびプロドメインと成熟ミオスタチンとへの蛋白質分解分解に対して抵抗性で、ミオスタチンと特異的に相互作用することができる変異体ミオスタチンポリペプチドであり、それらは細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するミオスタチンシグナル伝達拮抗剤として有用である。 もう一つの態様において、ペプチド作用物質は、細胞によって発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、それによってミオスタチンと受容体に関して競合することができる。そのようなペプチド物質の例は、抗ミオスタチン受容体抗体または抗ミオスタチン抗体の抗イディオタイプ抗体である。そのようなペプチド物質は、ミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、それによって受容体に関してミオスタチンと競合することができるか否かに関して選択することができるのみならず、ミオスタチンシグナル伝達を活性化しない作用を有することに関してもさらに選択することができる。このように、細胞によって発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、ミオスタチン依存的シグナル伝達を活性化するペプチド物質は、ミオスタチン作用剤として、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加させるために用いることができ、一方、細胞によって発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用するがミオスタチンシグナル伝達を活性化しないペプチド作用物質は、ミオスタチン拮抗剤として、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために用いることができる。 本発明の方法において有用な作用物質は、ポリヌクレオチドとなりうる。一般的に、しかし必ずしもそうではないが、ポリヌクレオチドは細胞に導入され、直接、または転写もしくは翻訳後、またはその双方で機能を発揮する。例えば、ポリヌクレオチド作用物質は、細胞において発現され、ミオスタチン活性を調節するペプチドをコードすることができる。そのような発現されたペプチドは、例えば、可溶性のミオスタチン受容体細胞外ドメインのような変異体ミオスタチン受容体;膜結合ドメインに機能的に会合したミオスタチン受容体細胞外ドメイン;またはプロテインキナーゼ活性を欠損する変異体ミオスタチン受容体となりうる。 ポリヌクレオチド作用物質から発現されたペプチドは、GDFシグナル伝達経路の細胞内ポリペプチド成分のレベルまたは活性に影響を及ぼすペプチドとなりうる。細胞内ポリペプチドは、例えば、本明細書に開示するように、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼしうるドミナントネガティブSmadのようなSmadポリペプチドとなり得る。このように、ポリヌクレオチド作用物質は、細胞において発現されると、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害するドミナントネガティブSmad2、Smad3、もしくはSmad4ポリペプチドをコードしうる;または発現されると、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少させるSmad6もしくはSmad7ポリペプチドをコードしうる。ポリヌクレオチド作用物質はまた、その発現によってミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害することができる細胞内c-skiポリペプチドをコードしうる。 本発明の方法において有用なポリヌクレオチド作用物質はまた、アンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質となりうる、またはそれらをコードしうる。例えば、ポリヌクレオチドは、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加しうるアンチセンスc-skiヌクレオチド配列;または特定のSmadアンチセンスヌクレオチド配列に応じて、ミオスタチンシグナル伝達を増加しうる、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害しうるアンチセンスSmadヌクレオチド配列のようなアンチセンスヌクレオチド配列となりうる(またはコードしうる)。 本発明はまた、少なくとも部分的に被験者における異常な量の筋または脂肪組織の発達または代謝活性を特徴とする病的な状態の重症度を改善する方法にも関する。そのような方法は、病態に関連した細胞におけるGDFシグナル伝達を調節すること、例えば、被験者における筋細胞または脂肪組織細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することを含む。例えば、カヘキシア、食欲不振、筋ジストロフィー、神経筋疾患のような消耗性障害、ならびに肥満およびII型糖尿病のような代謝障害を含む様々な病態が、本発明の方法を用いて改善を受ける。 本発明はさらに、GDF受容体によって媒介されるシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を生物に投与することによって、真核生物における筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法に関する。一つの態様において、筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法は、ミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を投与することによって行われる。もう一つの態様において、作用物質は、GDF-11シグナル伝達、またはミオスタチンおよびGDF-11シグナル伝達に影響を及ぼす。作用物質は、例えば、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させる作用物質、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を減少もしくは阻害する作用物質、または本明細書において開示する他の如何なる作用物質ともなりうる。真核生物は、脊椎動物、例えば、哺乳類、鳥類、もしくは魚類生物となりうる、または無脊椎動物、例えば、エビ、ホタテガイ、ヤリイカ、タコ、マキガイ、もしくはナメクジのような軟体動物となりうる。 本発明はまた、増殖分化因子(GDF)受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定する方法に関する。本発明のそのようなスクリーニングアッセイ法は、例えば、GDF受容体を試験作用物質に接触させる段階、および試験作用物質がGDF受容体と特異的に相互作用することを決定して、それによってGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定することによって行うことができる。GDF受容体は如何なるGDF受容体ともなりえて、特にミオスタチン受容体となり、作用物質はGDFシグナル伝達を増加させるGDF受容体作用剤、またはGDFシグナル伝達を減少もしくは阻害するGDF受容体拮抗剤となりうる。本発明のそのような方法は、試験作用物質のライブラリ、特に試験作用物質の組み合わせライブラリをスクリーニングするために有用である。 本発明はまた、GDF受容体またはGDF受容体の機能的ペプチド部分の仮想表示、例えばGDF8受容体またはGDF-11受容体の仮想表示を提供する。一つの態様において、仮想表示には、GDF受容体と特異的に相互作用する作用物質が含まれる。そのため、本発明はさらに、コンピューターシステムを用いて、増殖分化因子(GDF)受容体またはGDF受容体の機能的ペプチド部分と特異的に相互作用する作用物質を同定する方法を提供する。例えば、方法は、仮想のGDF受容体またはその機能的ペプチド部分との特異的相互作用能に関して仮想の試験作用物質を調べること;および仮想の試験物質と仮想のGDF受容体またはその機能的ペプチド部分との特異的相互作用を検出し、それによってGDF受容体またはその機能的ペプチド部分と特異的に相互作用する作用物質を同定することによって行うことができる。発明の詳細な説明 本発明は、プロミオスタチンポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分を提供する。これまで増殖分化因子-8(GDF-8)と呼ばれていたプロミオスタチンは、アミノ末端プロドメインとC末端成熟ミオスタチンペプチド(米国特許第5,827,733号を参照のこと)とを含む。ミオスタチン活性は、プロミオスタチンからの切断後の成熟ミオスタチンペプチドによって示される。このように、プロミオスタチンは、蛋白質分解によって切断されて活性ミオスタチンを生じる前駆体ポリペプチドである。本明細書に開示するように、ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチン活性、GDF-11活性またはその双方を阻害することができる。 本発明はまた、プロGDF-11ポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分を提供する。これまで一般的にGDF-11と呼ばれてきたプロGDF-11は、アミノ末端のプロドメインとC末端の成熟GDF-11ペプチドとを含む(参照として本明細書に組み入れられる、国際公開公報第98/35019号を参照のこと)。GDF-11活性は、プロGDF-11からの切断後の成熟GDF-11ペプチドによって示される。このように、プロGDF-11は、プロミオスタチンと同様に、蛋白質分解によって切断されて活性なGDF-11を生じる前駆体ポリペプチドである。本明細書において開示されるように、GDF-11プロドメインは、GDF-11活性、ミオスタチン活性、またはその双方を阻害することができる。 プロミオスタチンおよびプロGDF-11は、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーのメンバーであり、これは様々な細胞タイプにおいて増殖、分化、および他の機能を制御する多機能ポリペプチドからなる。胚発達の際の幅広い分化プロセスに影響を及ぼす構造関連蛋白質のグループを含むTGF-βスーパーファミリーには、例えば、正常な男性の性的発達にとって必要なミュラー管阻害物質(MIS)(Behringerら、Nature 345:167、1990)、背腹軸形成および成虫盤の形態形成にとって必要なショウジョウバエのデカペンタプレージック(DPP)遺伝子産物(Padgettら、Nature 325:81〜84、1987)、卵の植物極に移動するアフリカツメガエルのVg-1遺伝子産物(Weeksら、Cell 51:861〜867、1987)、アフリカツメガエルの胚において中胚葉と前方構造の形成を誘導することができる(Thomsenら、Cell 63:485、1990)アクチビン(Masonら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 135:957〜964、1986)、ならびにデノボ軟骨および骨形成を誘導することができる(Sampathら、J. Biol. Chem. 265:13198、1990)骨形態形成蛋白質(BMPs、オステオゲニン、OP-1)が含まれる。TGF-βファミリーメンバーは、脂肪形成、筋形成、軟骨形成、造血、および上皮細胞分化を含む多様な分化プロセスに影響を及ぼしうる(Massague、Cell 49:437、1987;Massague、Ann. Rev. Biochem. 67:753〜791、1998;そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。 TGF-βファミリーメンバーの多くは、他のペプチド増殖因子に対して調節作用(正または負)を有する。特に、TGF-βスーパーファミリーの特定のメンバーは、神経系の機能に関連する発現パターンまたは活性を有する。例えば、インヒビンとアクチビンは脳に発現され(Meunierら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:247、1988;Sawchenkoら、Nature 334:615、1988)、およびアクチビンは神経細胞生存分子として機能しうる(Schubertら、Nature 344:868、1990)。もう一つのファミリーメンバーである増殖分化因子-1(GDF-1)は、その発現パターンが神経系特異的であり(Lee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4250、1991)、Vgr-1(Lyonsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:4554、1989;Jonesら、Development 111:531、1991)、OP-1(Ozkaynakら、J. Biol. Chem. 267:25220、1992)、およびBMP-4(Jonesら、Development 111:531、1991)のような他のファミリーメンバーも同様に、神経系において発現されている。骨格筋は運動神経の生存を促進する因子または複数の因子を産生すること(Brown、Trends Neurosci. 7:10、1984)から、筋肉にミオスタチン(GDF-8)およびGDF-11の発現されることは、ミオスタチンとGDF-11とが神経にとって栄養因子となりうることを示唆している。そのため、ミオスタチン、GDF-11または双方の活性を調節する方法は、筋萎縮性側索硬化症もしくは筋ジストロフィーのような神経変性疾患を治療するため、または移植前に細胞もしくは組織を培養において維持するために有用となりうる。 TGF-βファミリーの蛋白質は大きい前駆体蛋白質として合成され、これがその後C末端からアミノ酸約110〜140個の塩基性残基の集団で蛋白質分解による切断を受け、それによってプロドメインペプチドとC末端成熟ペプチドとが形成される。このファミリーの蛋白質メンバーのC末端の成熟ペプチドは、構造的に近縁で、異なるファミリーメンバーは、その相同性の程度に基づいて異なるサブグループに分類することができる。特定のサブグループ内の相同性は、70%〜90%のアミノ酸配列同一性の範囲であり、サブグループ間の相同性は、有意に低く、一般的に20%〜50%の範囲である。それぞれの場合において、活性な種はC末端ペプチド断片のジスルフィド結合二量体であるように思われる。 プロミオスタチンおよびプロGDF-11ポリペプチドは、哺乳類、鳥類および魚類において同定されており、ミオスタチンは、脊椎動物および無脊椎動物を含む他の様々な種において活性である。胚の発達のあいだと成体動物において、ミオスタチンは、例えば筋発生系列の細胞によって特異的に発現されている(McPherronら、Nature 387:83〜90、1997、参照として本明細書に組み入れられる)。初期胚形成のあいだ、ミオスタチンは、発達しつつある体節の筋節コンパートメントの細胞によって発現される。胚後期段階および成体動物では、ミオスタチンは骨格筋組織に広く発現されているが、その発現レベルは筋肉によってかなり異なる。ミオスタチン発現はまた、脂肪組織においても検出されるが、筋肉におけるレベルより低い。同様に、GDF-11は、成人胸腺、脾臓、および子宮と共に骨格筋および脂肪組織において発現され、同様に、GDF-11は骨格筋および脂肪組織において発現されると共に成人胸腺、脾臓および子宮に発現され、また様々な発達段階の脳にも発現される。 様々な種からのプロミオスタチンポリペプチドは、実質的な配列同一性を共有し、ヒト、マウス、ラットおよびニワトリの成熟ミオスタチンC末端配列のアミノ酸配列は100%同一である(図1を参照のこと)。プロミオスタチンポリペプチドの例は、本明細書において(図1を参照のこと)ヒトプロミオスタチン(配列番号:2);マウスプロミオスタチン(配列番号:4);ラットプロミオスタチン(配列番号:6);ヒヒプロミオスタチン(配列番号:10);ウシプロミオスタチン(配列番号:12);ブタプロミオスタチン(配列番号:14);ヒツジプロミオスタチン(配列番号:16);ニワトリプロミオスタチン(配列番号:8);七面鳥プロミオスタチン(配列番号:18);およびゼブラフィッシュプロミオスタチン(配列番号:20)である。プロミオスタチンポリペプチドの例も同様に、本明細書においてサケ対立遺伝子1(配列番号:27、「サケ1」)およびサケ対立遺伝子2(配列番号:29、「サケ2」、図2を参照のこと)の一部を含むポリペプチドである。これらのプロミオスタチンポリペプチドをコードする核酸分子は、本明細書においてそれぞれ、配列番号:1、3、5、9、11、13、15、7、17、19、26および28として開示されている(同様に、参照として本明細書に組み入れられる、McPherronとLee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12457、1997も参照のこと)。プロGDF-11ポリペプチドの例は、本明細書において配列番号:24によってコードされるヒトプロGDF-11(配列番号:25)である。 プロミオスタチンポリペプチドにおいて、特にヒトと魚類のような離れている種において広く保存されていることを考慮すると、サケ1およびサケ2の配列の残りを含む如何なる種からのミオスタチンもコードするポリヌクレオチドを得ること、および如何なる種においてもプロミオスタチンまたはミオスタチン発現を同定することはごく普通のことであろう。特に、成熟ミオスタチン配列は、TGF-βスーパーファミリーの他のメンバーと有意な相同性を有し、ミオスタチンは、他のファミリーメンバーおよび他の種において高度に保存されている残基のほとんどを含む。さらに、ミオスタチンはTGF-βおよびインヒビンβと同様に、実質的に全てのファミリーメンバーにおいて存在する7個のシステイン残基の他に余分のシステイン残基対を含む。ミオスタチンは、Vgr-1(45%配列同一性)と最も相同性がある。TGF-βスーパーファミリーの他のメンバーと同様に、ミオスタチンは、より大きい前駆体プロミオスタチンポリペプチドとして合成され、これが蛋白質分解によって切断されて活性なミオスタチンペプチドとなる。 様々な生物のプロミオスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、周知の技法および開示された配列との同一性(または相同性)に基づくアルゴリズムを用いて同定することができる。相同性または同一性はしばしば、ジェネティクスコンピューターグループ(ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、1710、University Avenue, Madison, WI 53705)の配列解析ソフトウェアパッケージのような配列解析ソフトウェアを用いて測定する。そのようなソフトウェアは、様々な欠失、置換および他の改変に相同性の程度を割付することによって類似の配列をマッチさせる。本明細書において二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の意味において用いられる「相同性」および「同一性」という用語は、同じである二つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列、または何らかの数の配列比較アルゴリズムを用いて、もしくは手動でのアラインメントおよび肉眼的検査によって測定した場合に、比較ウィンドウもしくは指定領域に対して最大の対応が得られるように比較して並置した場合に、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定の割合で有する二つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列を意味する。 配列比較を行う場合、典型的に一つの配列を参照配列として用い、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピューターに入力して、必要であれば小配列の座標を指定する。配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを用いることができ、または別のパラメータを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。 「比較ウィンドウ」という用語は、本明細書において、その中で二つの配列を最適に並置した後に、配列が隣接位置の同じ数値の参照配列と比較される、例えばアミノ酸またはヌクレオチドの位置の連続する位置、例えば、約20〜600位、通常約50〜約200位置、より通常、約100〜約150位の数のいずれか1つの区域に対する言及も含まれるように広く用いられる。比較のために配列を並置させる方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、スミスとウォーターマン(SmithとWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482、1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanとWunsch、J. Mol. Biol. 48:443、1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、PersonとLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444、1988)の類似性検索法によって行うことができ、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(ウィスコンシンジェネティクスソフトウェアパッケージ、ジェネティクスコンピューターグループ、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA);または手動でのアラインメントおよび肉眼での検分によって行うことができる。相同性または同一性を決定する他のアルゴリズムには、例えば、BLASTプログラム(国立生物情報センターの基礎局所アラインメント検索ツール)の他に、ALIGN、AMAS(多重並置配列の解析)、AMPS(蛋白質多重配列アラインメント)、ASSET(並置セグメント統計学的評価ツール)、BANDS、BESTSCOR、BIOSCAN(生物配列比較解析ノード)、BLIMPS(ブロックス改善検索)、FASTA、インターバルとポインツ、BMB、CLUSTAL V、CLUSTAL W、CONSENSUS、LCONSENSUS、WCONSENSUS、スミス-ウォーターマンアルゴリズム、DARWIN、ラスベガスアルゴリズム、FNAT(強制ヌクレオチドアラインメントツール)、フレームアライン、フレームサーチ、DYNAMIC、FILTER、FSAP(フリステンスキー配列解析パッケージ)、GAP(グローバルアラインメントプログラム)、GENAL、GIBBS、ゲンクエスト、ISSC(感度のよい配列比較)、LALIGN(局所配列アラインメント)、LCP(局所コンテントプログラム)、MACAW(多重アラインメント構築と解析ワークベンチ)、MAP(多重アラインメントプログラム)、MBLKP、MBLKN、PIMA(パターン誘導多重配列アラインメント)、SAGA(遺伝子アルゴリズムによる配列アラインメント)、およびWHAT-IFが含まれる。そのようなアラインメントプログラムはまた、実質的に同一の配列を有するポリヌクレオチド配列を同定するためにゲノムデータベースをスクリーニングするために用いることができる。 多くのゲノムデータベースを、比較のために利用することができ、例えば、ヒトゲノムの実質的な部分は、ヒトゲノム配列決定プロジェクト(ローチ(J. Roach)、http://weber.u.Washington.edu/〜roach/human_genome_progress 2.html)の一部として利用できる。さらに、例えば、M. ゲニタリウム(M. genitalium)、M. ジャンナスキイ(M. jannaschii)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、大腸菌(E. coli)、酵母菌(S. cerevisiae)、およびD.メラノガスター(D. melanogaster)を含む、少なくとも21個のゲノムが完全に配列決定されている。マウス、線虫(C. elegans)、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis)種のようなモデル生物のゲノムの配列決定は有意に進歩している。いくつかの機能的情報を注釈したゲノム情報を含むいくつかのデータベースは、異なる機構によって維持されており、インターネットによって例えば、http://wwwtigr.org/tdb;http://www.genetics/wisc.edu;http://genome-www.stanford.edu/〜ball;http://hiv-web.lanl.gov;http://www/ncbi.nlm.nih.gov;http://ebi.ac.uk;http://Pasteur.fr/other/biology;およびhttp://www.genome.wi.mit.edu.にアクセスすることができる。 有用なアルゴリズムの一つの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはAltschulら(Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402、1977;J. Mol. Biol. 215:403〜410、1990、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)によって記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通して一般に利用できる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。このアルゴリズムは、これはデータベースにおける同じ長さのワードと並置した場合に、いくつかの陽性評価閾値スコアTとマッチするかまたは満足する、問い合わせ配列における長さWの短いワードを同定することによって高スコア配列対(HSPs)をまず同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値(Altschulら、上記、1977、1990)と呼ばれる。これらの初回隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPsを発見するための検索を開始するためのシードとなる。それぞれの配列に沿って、累積アラインメントスコアが増加することができる限り、ワードヒットを双方向に伸張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関してパラメータM(マッチする残基対に関する報酬スコア;常に>0)を用いて計算する。アミノ酸配列の場合、スコアリング行列を用いて累積スコアを計算する。それぞれの方向におけるワードヒットの伸張は、累積アラインメントスコアがその最高到達値から量X遠ざかる場合;累積スコアがゼロもしくはそれ未満に達する場合;一つもしくはそれ以上の陰性スコア残基アラインメントの蓄積のため;またはいずれかの配列の末端に達した場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータ、W、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を左右する。BLASTNプログラム(核酸配列に関して)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=4および双方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10を用い、BLOSUM62スコアリング行列(HenikoffとHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915、1989を参照のこと)は、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および双方の鎖の比較を用いる。 BLASTアルゴリズムはまた、二つの配列間の類似性に関する統計解析も行う(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、KarlinとAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873、1993を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの測定は、最小和確率(P(N))であり、これは二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸を参照核酸と比較した場合の最小和確率が約0.2未満であれば、より好ましくは約0.01未満であれば、および最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は参照配列と類似であると見なされる。 一つの態様において、蛋白質および核酸配列相同性は、基礎局所アラインメント検索ツール(「BLAST」)を用いて評価する。特に、特異的BLASTプログラム5個を用いて以下のタスクを行う:(1)BLASTPおよびBLAST3は、蛋白質配列データベースに対してアミノ酸問い合わせ配列を比較する;(2)BLASTNは、ヌクレオチド配列データベースに対してヌクレオチド問い合わせ配列を比較する;(3)BLASTXは、蛋白質配列データベースに対する問い合わせヌクレオチド配列(双方の鎖)の6個のフレーム概念的翻訳産物を比較する;(4)TBLASTNは、全ての6個のリーディングフレーム(双方の鎖)において翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対して問い合わせ蛋白質配列を比較する;および(5)TBLASTXは、ヌクレオチド配列データベースの6個のフレーム翻訳に対するヌクレオチド問い合わせ配列の6個のフレーム翻訳を比較する。 BLASTプログラムは、これは本明細書において、問い合わせアミノ酸または核酸配列と、好ましくは蛋白質または核酸配列データベースから得られる試験配列との間の「高スコアリングセグメント対(High-scoring segment pairs)」と呼ばれる類似の部分を同定することによって相同な配列を同定する。高スコアリングセグメント対は好ましくは、その多くが当技術分野で既知であるスコアリング行列によって同定される(すなわち並置される)。好ましくは用いたスコアリング行列は、BLOSUM62行列(Gonnetら、Science 256:1443〜1445、1992;HenikoffとHenikoff、Proteins 17:49〜61、1993、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)である。次に好ましいPAMまたはPAM250行列も同様に用いてもよい(SchwartzとDayhoff編、「Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure」、(ワシントン、国立生物医学研究財団、1978))。BLASTプログラムは、例えば、www://ncbi.nlm.nih.govで米国国立図書館を通してアクセスできる。 上記のアルゴリズムで用いたパラメータは、調べる配列の長さおよび相同性の程度に応じて適合させてもよい。いくつかの態様において、パラメータは、ユーザーからの指示がなければアルゴリズムによって用いられるデフォルトパラメータであってもよい。 プロミオスタチンをコードするポリヌクレオチドは、例えば、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヒト、ニワトリ、七面鳥、ゼブラフィッシュ、サケ、魚、他の水棲生物および他の種を含む如何なる生物にも由来しうる。水棲生物の例には、マス、チャー、アユ、コイ、ヨーロッパフナ、キンギョ、ウグイ、シラス、ウナギ、アナゴ、イワシ、トビウオ、スズキ、タイ、パロットバス、フエダイ、サバ、マグロ、マグロ、ハガツオ、ブリ、岩間の魚、カレイ、ソール、ヒラメ、フグ、モンガラカワハギのような魚類;ヤリイカ、イカ、タコのような頭足類;ハマグリ(例えば、ハードシェル、マニラ、ホンビノスガイ、ホンビノスガイ、ソフトシェル)のような二枚貝類;コックル、イガイ、タマキビガイ;ホタテガイ(例えば、海、湾、カルー(calloo))、ホラガイ、マキガイ、ナマコ;アークシェル;カキ(例えば、C. バージニカ(C. virginica)、湾、ニュージーランド、太平洋);螺旋状のマキガイ、アワビ(例えば、緑、ピンク、赤)のような腹足類に属するもの;およびイセエビ(Spiny)、ロックロブスター(Rock)、およびアメリカロブスターを含むがこれらに限定されないロブスター;M.ローゼンベルギイ(M. rosenbergii)、P.スチルロールス(P. styllrolls)、P.インディクス(P. indicus)、P. ジェポニオウス(P. jeponious)、P. モノドン(P. monodon)、P. バネメル(P. vannemel)、M. エンシス(M. ensis)、S. メラント(S. melantho)、N. ノルベギオウス(N. norvegious)、冷水エビを含むがこれらに限定されないエビ;ワタリガニ、ルーククラブ、ストーンクラブ、カブトガニ、クイーンクラブ、スノウクラブ、ブラウンクラブ、イチョウガニ、北米産イチョウガニ、マングローブクラブ、ソフトシェルクラブのようなカニ;シャコ、クリール、ランゴスチノ(langostino);ブルー、マロン、レッドクロウ、レッドスワンプ、ソフトシェル、ホワイトを含むがこれらに限定されないイセエビ/ザリガニ(crayfish/crawfish)のような甲殻類;環形動物;アメリカワニおよびカメのようなは虫類を含むがこれらに限定されない脊索動物;カエルを含む両生類;ならびにウニを含むがこれらに限定されない棘皮動物に属するものが含まれる。 本発明は、プロミオスタチンポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分およびプロGDF-11ポリペプチドの実質的に精製されたペプチド部分を提供する。本明細書において用いられるように、「プロGDF」、例えばプロミオスタチンまたはプロGDF-11という用語は、アミノ末端プロドメインとカルボキシ末端の生物活性GDFペプチドとを含む完全長のポリペプチドを意味する。さらに、プロドメインには、プロドメインのアミノ末端の最初のアミノ酸約15〜30個を含むシグナルペプチド(リーダー配列)が含まれる。シグナルペプチドは、完全長のプロGDFポリペプチドから切断することができ、これをさらに、Arg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解切断部位で切断することができる。 本明細書においてアミノ酸残基という用語は、図1および2に示すような完全長のプロGDFポリペプチドに関して参照する(同様に、配列表を参照のこと)。同様に、この用語は、本明細書において「約」特定のアミノ酸残基で始まるまたは終わる特定のペプチドを意味すると認識すべきである。「約」という用語は、それが蛋白質分解切断認識部位で、またはそれに直ちに隣接して、または認識部位から一つもしくは数個のアミノ酸離れて、プロGDFポリペプチドを切断することができると認識されることから、この意味において用いられる。そのため、例えば、配列番号:4のアミノ酸残基約1〜263位の配列を有するミオスタチンプロドメインという用語には、シグナルペプチドを含み、アミノ酸残基257〜アミノ酸残基269位で終わる、好ましくはアミノ酸残基260〜アミノ酸残基266位で終わるカルボキシ末端を有するプロミオスタチンのアミノ末端ペプチド部分がが含まれる。 同様に、シグナルペプチドはプロGDFポリペプチドのアミノ酸残基約15〜30位の如何なる位置で、例えば、残りのプロドメインの機能に影響を及ぼすことなく、残基15、20、25、または30位で切断することも可能である。このように、一般的に本明細書では簡便のため、アミノ酸残基約20位で始まるシグナルペプチドが切断されているプロGDFポリペプチドのペプチド部分に言及する。しかし、シグナルペプチドの切断は、プロGDFポリペプチドの最初のアミノ末端アミノ酸約15〜30位内の如何なるアミノ酸位置ともなりうると認識されるであろう。そのため、例えば、配列番号:4のアミノ酸残基約20〜263位の配列を有するミオスタチンプロドメインという用語には、シグナルペプチドを含むプロミオスタチンの最初のアミノ酸約15〜30個を欠損し、アミノ酸残基257位〜アミノ酸残基269位で終わる、好ましくはアミノ酸残基260〜アミノ酸残基266位で終わるカルボキシ末端を有するプロミオスタチンのペプチド部分が含まれるであろう。 一般的に、本明細書においてアミノ酸約1位で始まるプロGDFポリペプチドまたはGDFプロドメインについて言及する。しかし、上記の開示を考慮すると、そのようなプロGDFポリペプチドまたはシグナルペプチドを欠損するGDFプロドメインも同様に、本発明に含まれると認識されるであろう。さらにこの点において、本発明のペプチドにおけるシグナルペプチドの有無は、例えばペプチド、例えばミオスタチンプロドメインが横切る細胞の区画、およびペプチドが細胞から分泌されるか否かを含むペプチドが最終的に局在する細胞の区画に影響を及ぼしうることを認識すべきである。このように、本発明は、プロGDFポリペプチドの実質的に精製されたシグナルペプチド部分をさらに提供する。本明細書に開示するように、そのようなシグナルペプチドは、作用物質、特にペプチド作用物質を、シグナルペプチドが由来する天然に存在するGDFと同じ細胞区画にターゲティングするために用いることができる。 「ペプチド」または「ペプチド部分」という用語は、本明細書において広い意味で、ペプチド結合によって結合された二つまたはそれ以上のアミノ酸を意味するために用いられる。「断片」または「蛋白質分解断片」という用語も同様に、本明細書において、ポリペプチド上の蛋白質分解反応によって産生されうる産物、すなわちポリペプチドにおけるペプチド結合の切断によって産生されペプチドを意味する。「蛋白質分解断片」という用語は、一般的に本明細書において蛋白質分解反応によって生じうるペプチドを意味するが、断片は必ずしも蛋白質分解反応によって生じる必要はなく、下記により詳細に説明するように、蛋白質分解断片と同等の合成ペプチドを生じるために、化学合成法または組換えDNA技術の方法を用いて産生することができる。プロミオスタチンとTGF-βスーパーファミリーの他のメンバーとの開示された相同性を考慮すると、本発明のペプチドは、部分的にそれがこのスーパーファミリーのこれまでに開示されたメンバーには存在しないという特徴を有すると認識されるであろう。プロミオスタチンまたはプロGDF-11ポリペプチドのペプチド部分がTGF-βスーパーファミリーのこれまでに開示されたメンバーに存在するか否かは、上記のコンピューターアルゴリズムを用いて容易に決定することができる。 一般的に、本発明のペプチドは、少なくともアミノ酸約6個、通常、アミノ酸約10個を含む、アミノ酸15個またはそれ以上を含みうる、特に20個またはそれ以上を含みうる。「ペプチド」という用語は、本明細書においてその分子を含むアミノ酸の特定の大きさまたは数を示唆するために用いられず、本発明のペプチドはアミノ酸残基数個またはそれ以上までを含みうると認識すべきである。例えば、完全長の成熟C末端ミオスタチンペプチドは、100個を超えるアミノ酸を含み、完全長のプロドメインペプチドは260個を超えるアミノ酸を含みうる。 本明細書において用いられるように、「実質的に精製された」または「実質的に純粋」もしくは「単離された」という用語は、例えば、ペプチドまたはポリヌクレオチドと呼ばれる分子が、それが天然に会合する蛋白質、核酸、脂質、糖質、または他の材料を比較的含まない形であることを意味する。一般的に、実質的に純粋なペプチド、ポリヌクレオチド、または他の分子は、試料の少なくとも20%を構成し、一般的に試料の少なくとも約50%を構成し、通常、飼料の少なくとも約80%を構成し、および特に試料の約90%または95%またはそれ以上を構成する。本発明のペプチドまたはポリヌクレオチドが実質的に純粋であるか否かの決定は、周知の方法を用いて、例えば電気泳動を行って、比較的明確なバンドとして特定の分子を同定することによって、行うことができる。実質的に純粋なポリヌクレオチドは、例えば、ポリヌクレオチドをクローニングすることによって、または化学合成もしくは酵素的合成によって得ることができる。実質的に純粋なペプチドは、例えば、化学合成方法によって、または蛋白質精製方法の後に蛋白質分解を行い、望ましければクロマトグラフィーもしくは電気泳動方法によってさらに精製することによって得ることができる。 本発明のペプチドは、プロミオスタチンまたはプロGDF-11配列と比較して、ペプチドのアミノ酸配列がそれぞれ、プロミオスタチンまたはプロGDF-11ポリペプチド配列の中に含まれることを決定することによって同定することができる。しかし、本発明のペプチドはプロミオスタチンまたはプロGDF-11の対応するアミノ酸配列と同一である必要はないと認識すべきである。このように、本発明のペプチドは、プロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸配列に対応することができるが、例えば、対応するL-アミノ酸の代わりに一つまたはそれ以上のD-アミノ酸を含むことによって、または一つもしくはそれ以上のアミノ酸類似体、例えばその反応性側鎖で誘導体化されたもしくはそうでなければ改変されているアミノ酸を含むことによって、天然に存在する配列とは異なりうる。同様に、ペプチドにおける一つまたはそれ以上のペプチド結合を改変することができる。さらに、アミノ末端またはカルボキシ末端またはその双方で反応基を改変することができる。そのようなペプチドは、例えば、プロテアーゼ、酸化剤、または生物環境においてペプチドが遭遇する可能性がある他の反応性材料に対して改善された安定性を有するように改変することができ、したがって、本発明の方法を行うために特に有用となりうる。当然のこととして、ペプチドは、ペプチドが環境において活性である期間が減少するように、生物環境において減少した安定性を有するように改変することができる。 本発明のペプチドの配列はまた、ペプチドに一つまたは少数のアミノ酸の保存的アミノ酸置換を組み込まれることによって、プロミオスタチンまたはプロGDF-11ポリペプチドにおける対応する配列と比較して改変することができる。保存的アミノ酸置換には、一つのアミノ酸残基を、比較的同じ化学特徴を有するもう一つのアミノ酸残基に置換すること、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンのような一つの疎水性残基をもう一つの残基の代わりに置換すること、または一つの極性残基をもう一つの残基の代わりに置換すること、例えばアルギニンをリジンの代わりに用いること;またはアスパラギン酸の代わりにグルタミン酸を用いること、アスパラギンの代わりにグルタミンを用いること等が含まれる。改変することができるプロミオスタチンポリペプチドの位置の例は、図1を調べると明らかであり、これはプロミオスタチンまたはミオスタチン活性に実質的に影響を及ぼさない、ミオスタチンプロドメインおよび成熟ミオスタチンペプチドにおける様々なアミノ酸の差を示す。 本発明はまた、増殖分化因子(GDF)ポリペプチド(プロGDFポリペプチド)、またはその機能的ペプチド部分の実質的に精製された蛋白質分解断片を提供する。プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片の例は、本明細書においてプロミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解断片およびプロGDF-11ポリペプチドの蛋白質分解断片である。本明細書において開示されるように、プロGDFの蛋白質分解断片と同等であるプロGDFポリペプチドのペプチド部分は、化学的方法または組換えDNA法によって産生することができる。本開示を考慮すると、他のGDFポリペプチドの蛋白質分解断片は容易に作成して用いることができる。 一般的に、プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片に対応するペプチドの例は、GDF受容体と特異的に相互作用して、GDFシグナル伝達に影響を及ぼすことができるカルボキシ末端(C末端)成熟GDF断片、およびシグナルペプチドを含み得て、本明細書に開示するように、プロGDFポリペプチドまたは成熟GDFペプチドと特異的に相互作用して、GDFシグナル伝達を行う能力に影響を及ぼしうるアミノ末端プロドメイン断片である。例えば、プロミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解断片には、ミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、ミオスタチンシグナル伝達を誘導することができるC末端成熟ミオスタチンペプチド、およびミオスタチンと特異的に相互作用して、それによってミオスタチンのミオスタチンシグナル伝達誘導能を減少または阻害することができるアミノ末端プロドメイン断片が含まれる。 プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片、またはその機能的ペプチド断片は、部分的に、GDFシグナル伝達の刺激または阻害に関連した活性を有する、または影響を及ぼすことを特徴とする。例えば、プロミオスタチンポリペプチドまたはその機能的ペプチド部分は、ミオスタチン受容体結合活性、ミオスタチンシグナル伝達刺激または阻害活性、ミオスタチン結合活性、プロミオスタチン結合活性、またはその組み合わせを有しうる。このように、本明細書においてプロGDFポリペプチドに関連して用いられるように「機能的ペプチド部分」という用語は、その受容体と特異的に相互作用してGDFシグナル伝達を刺激または阻害することができる;成熟GDFまたはプロGDFと特異的に相互作用することができる;または細胞局在活性を示す、すなわちシグナルペプチドの活性を示すプロGDFポリペプチドのペプチド部分を意味する。完全長の成熟ミオスタチンペプチドの機能的ペプチド部分は、例えば成熟ペプチドの機能的ペプチド部分が、例えばシグナル伝達経路の活性化能を有することなくミオスタチン受容体との特異的相互作用能を有し得ることから、ミオスタチンシグナル伝達の刺激能を含む成熟ミオスタチンと同じ活性を有する必要はないと認識すべきである。ミオスタチン拮抗剤として有用となりうるプロGDFポリペプチドのそのような機能的ペプチド部分を同定する方法は、本明細書において開示するか、または当技術分野で既知である。このように、一つの態様において、プロミオスタチンポリペプチドの機能的ペプチド部分は、ミオスタチン受容体と特異的に相互作用して、ミオスタチンシグナル伝達を刺激するための作用剤として、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害するための拮抗剤として作用しうる。 もう一つの態様において、プロミオスタチンポリペプチドの機能的ペプチド部分は、プロミオスタチンポリペプチドまたは成熟ミオスタチンペプチドと特異的に相互作用して、それによってミオスタチンシグナル伝達を阻害することができる。プロミオスタチンのそのような機能的ペプチド部分は、例えば、プロミオスタチンポリペプチドの成熟ミオスタチンへの切断を防止することによって、成熟ミオスタチンペプチドとの複合体を形成することによって、または他の何らかのメカニズムによって作用することができる。ペプチドミオスタチン複合体が形成される場合、複合体は、例えばミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することによって、またはミオスタチンシグナル伝達の誘導能を欠損する形で受容体に結合することによって、ミオスタチンシグナル伝達を遮断することができる。 プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片は、コンセンサスアミノ酸配列Arg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)を有する蛋白質分解切断部位でポリペプチドの切断によって産生することができる。そのような蛋白質分解認識部位の例は、配列番号:1(プロミオスタチン)におけるアミノ酸残基263〜266位、または配列番号:25のアミノ酸残基295〜298位(ヒトプロGDF-11;同様に図2の相対位置267〜270位も参照のこと)として示されるArg-Ser-Arg-Arg(配列番号:22)配列、および配列番号:20のアミノ酸残基263〜266位として示されるArg-Ile-Arg-Arg(配列番号:23)配列である。 シグナルペプチドの蛋白質分解切断部位の他に、プロミオスタチンポリペプチドは、例えば、さらに二つの可能性がある蛋白質分解プロセシング部位(Lys-ArgおよびArg-Arg)を含む。コンセンサスArg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解切断認識部位(例えば、配列番号:2のアミノ酸残基263〜266位を参照のこと)内に含まれる後者の蛋白質分解プロセシング部位またはその近傍でプロミオスタチンポリペプチドが切断されると、生物学的に活性なC末端成熟ヒトミオスタチン断片が産生される。例示された完全長の成熟ミオスタチンペプチドは、アミノ酸約103〜約109個を含み、推定分子量は約12,400ダルトン(Da)である。さらに、ミオスタチンは、推定分子量約23〜30キロダルトン(kDa)の二量体を形成することができる。二量体は、ミオスタチンホモダイマー、または例えばGDF-11、他のGDF、もしくはTGF-βファミリーメンバーとのヘテロダイマーとなりうる。 本発明の蛋白質分解断片の例は、GDFプロドメイン、例えば、プロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸残基約20〜262位が含まれるミオスタチンプロドメインもしくはその機能的ペプチド部分、またはプロGDF-11ポリペプチドのアミノ酸残基約20〜295位が含まれるGDF-11プロドメインもしくはその機能的ペプチド部分であり、それらはそれぞれ、それぞれのプロGDFポリペプチドのアミノ酸約1〜20位を含むシグナルペプチドをさらに含みうる。ミオスタチンプロドメインの例は、配列番号:4および配列番号:6に示すアミノ酸残基約20〜263位であると共に、配列番号:2、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:8、配列番号:18、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:20に示すアミノ酸残基約20〜262位であり、これらは対応するプロミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解切断によって産生することができ、化学合成することができ、または蛋白質分解断片をコードする組換えポリヌクレオチドから発現することができる。ミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分の例は、ミオスタチンまたはプロミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチンプロドメインのペプチド部分である。GDF-11プロドメインの例は、配列番号:25のアミノ酸残基約1〜20位を含むシグナルペプチドをさらに含みうる配列番号:25のアミノ酸残基約20〜295位であり、GDF-11プロドメインの機能的ペプチド部分の例は、成熟GDF-11またはプロGDF-11ポリペプチドと特異的に相互作用することができるGDF-11プロドメインのペプチド部分である。好ましくは、GDFプロドメインの機能的ペプチド部分は、例えば、GDFのその受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することによって、または不活性複合体として受容体に結合することによって、対応するGDFもしくは関連GDFのシグナル伝達刺激能を阻害する。一つの態様において、本発明は、プロGDFポリペプチドの機能的断片、特にGDFシグナルペプチド、好ましくはプロミオスタチンもしくはプロGDF-11のアミノ末端の最初のアミノ酸約15〜30個を含むミオスタチンシグナルペプチドまたはGDF-11シグナルペプチドに機能的に結合したGDFプロドメインの機能的断片を提供する。 本明細書において開示するように、ミオスタチンプロドメインまたはGDF-11プロドメインは、成熟ミオスタチン、GDF-11、またはその双方と相互作用して、それによって成熟GDFとその受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することができる(実施例7および8を参照のこと)。このように、ミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分は、例えば、本明細書に提供する方法を用いて、ミオスタチンプロドメインのペプチド部分を調べること、ミオスタチンまたはプロミオスタチンと特異的に相互作用することができ、ミオスタチンのミオスタチン受容体との特異的相互作用能またはミオスタチンシグナル伝達刺激能を減少もしくは阻害することができるプロドメインの機能的ペプチド部分を同定することによって、得ることができる。 ミオスタチンと特異的に相互作用することができるミオスタチンプロドメインの機能的ペプチド部分、またはもう一つのGDFプロドメインの機能的ペプチド部分も同様に、特異的蛋白質-蛋白質相互作用を同定するために有用であることが知られている様々な如何なるアッセイ法も用いて同定することができる。そのようなアッセイ法には、例えばゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、FieldsとSongのツーハイブリッド系(Fields and Song、Nature 340:245〜246、1989;同様に米国特許第5,283,173号参照;Fearonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7958〜7962、1992;Chienら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578〜9582、1991;Young、Biol. Reprod. 58:302〜311(1989)、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)、逆ツーハイブリッドアッセイ法(レアンナとハニンク(Leanna and Hannink)、Nucl. Acids. Res. 24:3341〜3347、1996、参照として本明細書に組み入れられる)、抑制されたトランス活性化剤系(米国特許第5,885,779号、参照として本明細書に組み入れられる)、ファージディスプレイ系(ロウマン(Lowman)、Ann. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:401〜424、1997、参照として本明細書に組み入れられる)、GST/HISプルダウンアッセイ法、変異体オペレータ(国際公開公報第98/01879号、参照として本明細書に組み入れられる)、蛋白質動員系(米国特許第5,776,689号、参照として本明細書に組み入れられる)等(例えば、マティス(Mathis)、Clin. Chem. 41:139〜147、1995;ラム(Lam)、Anticancer Drug Res. 12:145〜167、1997;フィジッキー(Phizicky)ら、Microbiol. Rev. 59:94〜123、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)の方法が含まれる。 GDFプロドメインの機能的ペプチド部分はまた、分子モデリングの方法を用いて同定することができる。例えば、成熟ミオスタチンペプチドのアミノ酸配列は、適当なモデリングソフトウェアを有するコンピューターシステムに入力することができ、ミオスタチンの三次元表示(「仮想ミオスタチン」)を得ることができる。プロミオスタチンアミノ酸配列も同様に、モデリングソフトウェアがプロミオスタチン配列の一部、例えば、プロドメインの一部を刺激して、仮想ミオスタチンと特異的に相互作用することができるプロドメインのそれらのペプチド部分を同定することができるように、コンピューターシステムに入力することができる。特異的相互作用の基準値は、そのような相互作用がミオスタチンの活性を阻害することが知られていることから、仮想ミオスタチンおよび完全長のプロミオスタチンプロドメインをモデリングすること、プロドメインによって「接触される」仮想ミオスタチンにおけるアミノ酸残基を同定することによって予め定義することができる。 ツーハイブリッドアッセイ法および分子モデリング法を含むそのような方法もまた用いて、本発明に含まれる他の特異的相互作用分子を同定することができると認識すべきである。このように、ツーハイブリッドアッセイ法のような方法を用いて、例えばアッセイ法の一つの結合成分としてAct RIIAまたはAct RIIB受容体と特異的に相互作用するミオスタチンペプチドまたはそのペプチド部分を用いて、ミオスタチン受容体のようなGDF受容体を同定することができ、ミオスタチンペプチドと特異的に相互作用するGDF受容体を同定することができる。同様に、分子モデリングの方法は、成熟ミオスタチンのような成熟GDFペプチドまたはGDF受容体と特異的に相互作用して、したがって、GDFまたはGDF受容体によって媒介されるシグナル伝達の作用剤または拮抗剤として有用となりうる作用物質を同定するために用いることができる。そのような作用物質は例えば、ミオスタチンプロドメインもしくはGDF-11プロドメインの機能的ペプチド部分、またはGDFプロドメインの作用を模倣する化学作用物質となりうる。 本明細書に開示の目的にとって有用なモデリング系は、結晶学解析もしくは核磁気共鳴解析によって得られた構造情報、または一次配列情報(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Dunbrackら、「学会論評:蛋白質構造の予測に関する技術の重要な評価に関する第二回会議(Meeting Review:the Second Meeting on the Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction(CASP2)」、アシロマー、カリフォルニア州、1996年12月13〜16日、Fold Des. 2(2):R27〜42(1997);フィッシャーとアイゼンバーグ(Fischer and Eisenberg)、Protein Sci. 5:947〜55、1996;(同様に米国特許第5,436,850号も参照のこと);ヘーベル(Havel)、Prog. Biophys. Mol. Biol. 56:43〜78、1991;リヒタルジ(Lichtarge)ら、J. Mol. Biol. 274:325〜37、1997;マツモト(Matsumoto)ら、J. Biol. Chem. 270:19524〜31、1995;サリ(Sali)ら、J. Biol. Chem. 268:9023〜34、1993;サリ(Sali)、Molec. Med. Today 1:270〜7、1995a;サリ(Sali)、Curr. Opin. Biotechnol. 6:437〜51、1995b;サリ(Sali)ら、Proteins 23:318〜26、1995c;サリ(Sali)、Nature Struct. Biol. 5:1029〜1032、1998;米国特許第5,933,819号;米国特許第5,265,030号を参照のこと)に基づくことができる。 プロミオスタチンポリペプチドまたはGDF受容体の結晶構造座標を用いて、蛋白質に結合して、その物理的または生理的特性を多様な方法で変化させる化合物を設計することができる。蛋白質の構造座標も同様に、GDFシグナル伝達の作用剤または拮抗剤として作用しうる調節または結合作用物質を開発するために、ポリペプチドに結合する作用物質に関して低分子データベースをコンピューターによってスクリーニングするために用いることができる。そのような作用物質は、標準的な等式(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Segel、「Enzyme Kinetics」、(ジョンウィリーアンドサンズ、1995)を参照のこと)を用いるコンピューター適合速度論データによって同定することができる。 阻害剤または結合作用物質を設計するために結晶構造データを用いる方法は、当技術分野で既知である。例えば、GDF受容体座標を、結合した阻害剤を有する受容体を含む類似の受容体の他の利用可能な座標に重なり合わせると、阻害剤が受容体と相互作用する様式の近似を得ることができる。合理的薬剤設計の実践において用いられるコンピュータープログラムも同様に用いて、例えば、成熟ミオスタチンと共結晶化したミオスタチンプロドメインとのあいだに認められるものと類似の相互作用特徴を再現する化合物を同定することができる。特異的相互作用の特性が詳しく判明すれば、結合活性に影響を及ぼすことなく、溶解度、薬物動態等を変化もしくは改善させるように化合物を改変することができる。 結晶構造情報を用いて作用物質を設計するために必要な活性を行うためのコンピュータープログラムは周知である。そのようなプログラムの例には、バイオバイトマスターファイル、ダーウェントWDIおよびACIDのような化学データベースを評価するための情報検索プログラムであるカタリストデータベース(商標);化合物のモデルを作製して、候補薬剤の構造によって活性の変化を説明するための仮説を作製するカタリスト/HYPO(商標);相補的極性および疎水性基を同定およびマッチさせることによって、蛋白質の活性部位に分子を適合させるルディ(商標);およびユーザーが管理するパラメータによって遺伝子アルゴリズムを用いて新しいリガンドを「成長させる」リープフロッグ(商標)が含まれる。 様々な一般的な目的装置をそのようなプログラムと共に用いることができ、または操作を行うためにより専門的な装置を構築することがより都合がよい場合もある。一般的に、態様は、それぞれが少なくとも一つのプロセッサ、少なくとも一つのデータ保存システム(揮発性および非揮発性記憶装置および/または記憶エレメント)、少なくとも一つの入力装置、および少なくとも一つの出力装置を含むプログラム可能なシステム上で実行する一つまたはそれ以上のコンピュータープログラムにおいて実行される。プログラムは本明細書に記載の機能を実行するためにプロセッサ上で行われる。 それぞれのそのようなプログラムは、コンピューターシステムとコミュニケーションを取るために、例えば、機械語、アセンブリ言語、高レベル手続き型言語、またはオブジェクト指向プログラミング言語を含む如何なる所望のコンピューター言語で実行することもできる。いずれにせよ、言語はコンパイラー言語または翻訳言語であってもよい。コンピュータープログラムは、典型的に本明細書に記載の手続きを行うためにコンピューターによって保存媒体または装置を読みとる場合に、コンピューターを形成して操作するために、一般的または専門目的のプログラム可能なコンピューターによって読みとり可能な保存媒体または装置、例えばROM、CD-ROM、磁気または光学媒体等に保存される。システムはまた、そのように形成された保存媒体が、本明細書に記載の機能を実行するために特異的な既定の方法でコンピューターを操作させる場合に、コンピューター読みとり可能な保存媒体として実行され、コンピュータープログラムによって形成されると見なしてもよい。 本発明の態様には、システム、例えば、インターネットに基づくシステム、特に、結晶学またはNMR解析によって得られた座標情報、または本明細書に開示されるアミノ酸もしくはヌクレオチド配列情報を保存および操作するコンピューターシステムが含まれる。本明細書において用いられるように、「コンピューターシステム」という用語は、本明細書において述べた座標または配列を解析するために用いられる、ハードウェア成分、ソフトウェア成分、およびデータ保存成分を意味する。コンピューターシステムは典型的に、配列データを処理、アクセスおよび操作するためのプロセッサが含まれる。プロセッサには、如何なる周知のタイプの中央処理装置、例えばインテル社のペンティウムIIまたはペンティウムIIIプロセッサ、またはサン、モトローラ、コンパック、アドバンスドマイクロデバイシズ、もしくはインターナショナルビジネスマシーンズ各社からの類似のプロセッサが含まれうる。 典型的に、コンピューターシステムは、プロセッサと、データを保存するための一つまたはそれ以上の内部データ保存成分、およびデータ保存成分上に保存されたデータを検索するための一つまたはそれ以上のデータ検索装置を含む用途の広いシステムである。当業者は、現在利用できるコンピューターシステムの如何なるものも適していることを容易に認識しうる。 一つの態様において、コンピューターシステムには、メインメモリ、好ましくはRAMとして実行されるメモリに接続したバスに接続したプロセッサ、およびハードドライブまたはその上に記録されたデータを有する他のコンピューター読みとり可能な媒体のような一つまたはそれ以上の内部データ保存装置が含まれる。いくつかの態様において、コンピューターシステムには、内部データ保存装置上に保存されたデータを読みとるための一つまたはそれ以上のデータ検索装置がさらに含まれる。 データ検索装置は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブ、または遠隔データ保存システム(例えば、インターネットを通して)に接続することができるモデムであってもよい。いくつかの態様において、内部データ保存装置は、制御論理および/またはその上に記録されたデータを含むフロッピーディスク、コンパクトディスク、磁気テープ等のような取り外し可能なコンピューター読みとり可能媒体である。コンピューターシステムは、データ検索装置に一度挿入されたデータ保存成分から制御論理および/またはデータを読み出すための適当なソフトウェアを含むことが都合がよく、またはそれらによってプログラムされてもよい。 コンピューターシステムには、一般的にディスプレイが含まれ、これはコンピューターユーザーに出力を表示するために用いられる。同様に、コンピューターシステムは、コンピューターシステムへの中心アクセスを提供するためのネットワークまたは広い地域ネットワークにおいて他のコンピューターシステムとリンクすることができる。 ミオスタチンまたはGDF受容体と特異的に相互作用する化学実体を同定することが望ましい場合、分子との特異的相互作用能に関して化学実体または断片をスクリーニングするためにいくつかの方法を用いることができる。このプロセスは、例えば、ミオスタチンとミオスタチンプロドメインとをコンピュータースクリーン上で肉眼的に調べることによって始めてもよい。次に、プロドメインの選択されたペプチド部分、または模倣体として作用しうる化学実体を、ミオスタチンの個々の結合部位において多様な方向に配置、または合体させることができる。合体は、クアンタとシビルのようなソフトウェアを用いて行うことができ、その後、エネルギーの最小限化およびCHARMMおよびAMBERのような標準的な分子力学による分子動力学を行うことができる。 特殊なコンピュータープログラムは、プロドメインの選択されたペプチド部分、または例えばGDF受容体作用剤もしくは拮抗剤として有用な化学実体を選択するために特に有用である。そのようなプログラムには、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、GRID(Goodford、J. Med. Chem. 28:849〜857、1985;オックスフォード大学から入手可能、オックスフォード、イギリス);MCSS(MirankerとKarplus、「Proteins:Structure, Function and Genetics」 11:29〜34、1991、モレキュラーシミュレーションズから入手可能、バーリントン、マサチューセッツ州);AUTODOCK(GoodsellとOlsen、「Proteins:Structure, Function and Genetics」 8:195〜202、1990、スクリプスリサーチインスチチュートから入手可能、ラホヤ、カリフォルニア州);DOCK(Kuntzら、J. Mol. Biol. 161:269〜288、1982、カリフォルニア大学から入手可能、サンフランシスコ、カリフォルニア州)が含まれる。 選択される適したペプチドまたは作用物質を、単一の化合物または結合物質に組み立てることができる。組立は、コンピュータースクリーン上に表示される三次元画像上で、断片の互いの関係を肉眼的に調べることによって行い、その後クアンタまたはシビルのようなソフトウェアを用いて手動でのモデル構築を行うことができる。個々の化学実体または断片をつなぎ合わせる当業者の助けとなる有用なプログラムには、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、CAVEAT(Bartlettら、Special Pub. Royal Chem Soc. 78:182〜196、1989、カリフォルニア大学から入手可能、バークレー、カリフォルニア州);MACCS-3Dのような3Dデータベースシステム(MDLインフォメーションシステムズ、サンレアンドロ、カリフォルニア州;論評に関しては、Martin、J. Med. Chem. 35:2145〜2154、1992を参照のこと);HOOK(モレキュラーシミュレーションズから入手可能、バーリントン、マサチューセッツ州)が含まれる。 そのような特異的に相互作用する作用物質を上記のように一つの断片または化学的実体を一度に段階的に構築または同定する方法の他に、作用物質は、空の活性部位、または選択的に、特異的に相互作用する既知の作用物質いくつかの部分、例えばミオスタチンと特異的に相互作用する完全長のミオスタチンプロドメインを用いて、全体としてまたは新たに設計することができる。そのような方法には、例えば、LUDI(Bohm、J. Comp. Aid. Molec. Design 6:61〜78、1992、バイオシンテクノロジーズ社から入手可能、サンジエゴ、カリフォルニア州);LEGEND(NishibataとItai、Tetrahedron. 47:8985、1991、モレキュラーシミュレーションズ社から入手可能、バーリントン、マサチューセッツ州);リープフロッグ(トリポスアソシエーツ社から入手可能、セントルイス、ミズーリ州)、およびCohenら(J. Med. Chem. 33:883〜894、1990)およびNaviaとMurcko、Curr. Opin. Struct. Biol. 2:202〜210、1992、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)に記載される方法が含まれる。 特定のコンピューターソフトウェアは、当技術分野において化合物の変形エネルギーおよび静電気的相互作用を評価するために利用できる。そのような用途のために設計されるプログラムの例には、ゴーシアン92、改訂版C(フリッシュ、ゴーシアンインク、ピッツバーグ、ペンシルバニア州、1992);AMBER、バージョン4.0(コルマン、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、1994);QUANTA/CHARMM(モレキュラーシミレーションズインク、バーリントン、マサチューセッツ州、1994);およびインサイトII/ディスカバー(バイオシステムテクノロジーズインク、サンジエゴ、カリフォルニア州)が含まれる。これらのプログラムは例えば、シリコングラフィックスワークステーション、IRIS 4D/35、またはIBM RISC/6000ワークステーションモデル550を用いて実行してもよい。その速度および容量が絶えず改変されているその他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは、当業者に既知であろう。 関係する分子、例えば、成熟ミオスタチンのような成熟GDFペプチドまたはGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定する分子モデリングプロセスは、本明細書に開示されるように実行することができる。第一の段階において、標的分子、例えばミオスタチンの仮想表示を行う。このように、一つの態様において、本発明は、標的分子がプロGDFポリペプチド、例えば、プロミオスタチン;プロGDFポリペプチドのペプチド部分;GDF受容体;およびGDF受容体の関連するドメイン、例えばGDF結合ドメインから選択される、標的分子の仮想表示を提供する。標的分子の仮想表示は、コンピューターシステムのメモリに表示または維持することができる。プロセスは開始状態で始まり、仮想標的分子を含み、次に、一つまたはそれ以上の仮想試験分子を含むデータベースがコンピューターシステムのメモリに保存される状態に移動する。先に考察したように、メモリは、RAMまたは内部保存装置を含む如何なるタイプのメモリとなりうる。 次に、プロセスは、第一の仮想試験分子の仮想標的分子との特異的相互作用能が決定される状態に移行して、試験分子の集団の一つとなりうる仮想試験分子を含むデータベースが仮想標的分子および仮想試験分子の相互作用の解析のために開かれて、解析が行われる。特異的相互作用の決定は、コンピューターシステムに維持されたソフトウェアによって、またはコンピューターシステムのメモリに保存されて、必要に応じてアクセスすることができる既定の特異的相互作用と比較することによって行われた計算に基づいて行うことができる。 次に、プロセスは、特異的相互作用が検出される場合、仮想試験分子が表示される、またはコンピューター上の第二のデータベースに保存される状態に移行する。適当であれば、仮想標的分子および第二の仮想試験分子、第三の仮想試験分子、望ましければそれ以降に関してプロセスを繰り返す。 仮想試験分子が仮想標的分子と特異的に相互作用する決定がなされれば、同定された仮想試験分子をデータベースから移動させて、ユーザーに表示することができる。この状態は、表示された名称または構造を有する分子が、入力される束縛内で標的分子と特異的に相互作用することをユーザーに通知する。同定された試験分子の名称がユーザーに表示されれば、プロセスは決定状態に移動し、そこで、より多くの仮想試験分子がデータベースに存在するか、または調べなければならないかを決定する。これ以上の分子がデータベースに存在しない場合、プロセスは最終状態で停止する。しかし、より多くの試験分子がデータベースに存在する場合、プロセスは、特異的結合活性に関して調べることができるように、ポインターがデータベースにおける次の試験分子に移動する。このようにして、新しい分子を、仮想標的分子との特異的相互作用能に関して調べる。 上記のような方法は、請求の本発明に含まれる様々な局面において用いることができる。このように、方法は、ミオスタチンと特異的に相互作用して、ミオスタチンのその受容体との相互作用能を減少もしくは阻害する、またはそうでなければミオスタチンがシグナル伝達を行う能力に影響を及ぼすことができるプロミオスタチンプロドメインのペプチド部分を同定するために用いることができる。同様に、この方法を用いて、GDFプロドメインの作用を模倣して、それによってミオスタチンまたはGDF-11シグナル伝達を減少または阻害する有機低分子を同定することができる。方法はまた、GDF受容体、例えばAct RIIA、Act RIIBまたは他のGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質を同定するために用いることができ、そのような作用物質は細胞におけるGDFシグナル伝達を調節することができるGDF受容体作用剤または拮抗剤として有用である。さらに、方法は、特定のポリペプチドの保存された構造的特徴を同定することによって、これまで不明のプロGDFポリペプチドまたはGDF受容体を同定する手段を提供する。 TGF-βスーパーファミリーの他のメンバーと同様に、活性なGDFペプチドは、前駆体ポリペプチドとして発現され、これが成熟した生物学的に活性な型に切断される。したがって、なおもう一つの態様において、プロGDFポリペプチドの蛋白質分解断片は、成熟GDFペプチド、または先に考察したように、機能的ペプチド部分がGDF作用剤または拮抗剤の活性を有しうる成熟GDFペプチドの機能的ペプチド部分である。蛋白質分解断片は、プロミオスタチンポリペプチドのアミノ酸残基約268〜374位(図1を参照のこと;同様に、図2も参照のこと)が含まれる成熟C末端ミオスタチンペプチド、またはプロGDF-11ポリペプチドのアミノ酸残基約299〜407位が含まれる成熟C末端GDF-11ペプチドとなりうる。完全長の成熟ミオスタチンペプチドの例は、配列番号:4および配列番号:6に記載するようにアミノ酸残基約268〜375位;配列番号:2、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:8、配列番号:18、配列番号:14、配列番号:16、および配列番号:20に記載されるアミノ酸残基約267〜374位;ならびに配列番号:27のアミノ酸残基約49〜157位および配列番号:29のアミノ酸残基約28〜136位である。完全長の成熟GDF-11ペプチドの例は、配列番号:25のアミノ酸残基約299〜407位である。成熟GDFペプチドの機能的ペプチド部分の例は、成熟GDFペプチドの活性に関して作用剤または拮抗剤活性を有する成熟ミオスタチンまたは成熟GDF-11のペプチド部分である。好ましくは、成熟GDFペプチド活性は、その受容体との特異的相互作用能である。 本明細書に開示するように、成熟ミオスタチンペプチド(本明細書において一般的に「ミオスタチン」と呼ぶ)は、細胞表面上に発現されるミオスタチン受容体と特異的に相互作用することによって、ミオスタチンシグナル伝達活性を誘導することができる(実施例7を参照のこと)。このように、ミオスタチンの機能的ペプチド部分は、本明細書に記載される、またはそうでなければ当技術分野で既知の方法を用いて成熟ミオスタチンペプチドのペプチド部分を調べて、ミオスタチン受容体、例えば細胞上に発現されるアクチビンIIA型受容体(Act RIIA)またはAct RIIB受容体と特異的に相互作用するミオスタチンの機能的ペプチド部分を同定することによって得ることができる(Act RIIA、Cell 65:973-982、1991;Act RIIB Cell 68:97-108、1992、これらはその全体が本明細書に参照として組み入れられる)。 ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチンシグナル伝達活性を減少または阻害することができる。一つの態様において、ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチンと特異的に相互作用して、それによってミオスタチンペプチドのその受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することができる。本明細書に開示するように、前駆体プロミオスタチンも同様に、ミオスタチン受容体との特異的相互作用能を欠損し、したがって、プロミオスタチンが成熟ミオスタチンに切断されることを減少または阻害するプロミオスタチンの変異は、ミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害する手段を提供する。したがって、もう一つの態様において、本発明は、活性な成熟GDFペプチドへの変異体プロGDFの蛋白質分解切断を破壊する一つまたはそれ以上のアミノ酸変異を含む変異体プロGDFポリペプチドを提供する。 本発明の変異体プロGDFポリペプチドは、プロGDFポリペプチドに存在するコンセンサス蛋白質分解切断認識部位Arg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)のような蛋白質分解切断部位の切断に影響を及ぼす変異を有しうる。このように、変異は、変異体プロミオスタチンが、例えばミオスタチンプロドメインおよび成熟ミオスタチンペプチドに切断されることができないように、配列番号:21のアルギニン残基の変異となりうる。しかし、変異はまた、蛋白質分解切断部位以外の部位となりえて、切断部位での蛋白質分解を行うためにプロテアーゼのプロGDFポリペプチド結合能を変化させることができる。本発明の変異体プロGDFポリペプチド、例えば変異体プロミオスタチンまたは変異体プロGDF-11は、ミオスタチンまたはGDF-11に関してドミナントネガティブ活性を有しうる、したがって、細胞におけるミオスタチンまたはGDF-11シグナル伝達を減少または阻害するために有用となりうる。 本発明はまた、先に説明したように、プロミオスタチンポリペプチドもしくは変異体プロミオスタチンのペプチド部分、またはプロGDF-11ポリペプチドもしく変異体プロGDF-11のペプチド部分をコードする実質的に精製されたポリヌクレオチドを提供する。下記により詳細に説明するように、本発明はまた、細胞に及ぼすミオスタチンの影響を調節するための作用物質として有用なポリヌクレオチドを提供し、GDF受容体またはその機能的ペプチド部分をコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。そのようなポリヌクレオチドの例を以下の開示に提供する。そのため、以下の開示は、本明細書に開示の本発明の様々な態様に関連していると認識すべきである。 「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において、ホスホジエステル結合によって互いに連結した二つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列を意味するために用いられる。そのため、「ポリヌクレオチド」という用語には、遺伝子またはその一部となりうるRNAおよびDNA、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸配列等が含まれ、一本鎖または二本鎖と共にDNA/RNAハイブリッドとなりうる。さらに、本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」という用語には、細胞から単離することができる天然に存在する核酸分子と共に、例えば、化学合成法またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような酵素的方法によって調製することができる合成分子が含まれる。様々な態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド類似体、ホスホジエステル結合以外の骨格結合(上記を参照)を含みうる。 一般的に、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、2'-デオキシリボースに結合したアデニン、シトシン、グアニン、もしくはチミンのような天然に存在するデオキシリボヌクレオチド、またはリボースに結合したアデニン、シトシン、グアニン、もしくはウラシルのようなリボヌクレオチドである。しかし、ポリヌクレオチドはまた、天然に存在しない合成ヌクレオチドまたは改変された天然に存在するヌクレオチドを含む、ヌクレオチド類似体を含みうる。そのようなヌクレオチド類似体は当技術分野で周知であり、そのようなヌクレオチド類似体を含むポリヌクレオチドと同様に市販されている(Linら、Nucl. Acids. Res. 22:5220〜5234(1994);Jellinekら、Biochemistry 34:11363〜11372(1995);Pagratisら、Nature Biotechnol. 15:68〜73(1997)、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。 ポリヌクレオチドのヌクレオチドを結合させる共有結合は、一般的にホスホジエステル結合である。しかし、共有結合はまた、チオジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ペプチド様結合または合成ポリヌクレオチドを産生するためにヌクレオチドを連結させるために有用であることが当業者に既知である他の如何なる結合も含む多数の他の如何なる結合ともなりうる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Tamら、Nucl. Acids. Res. 22:977〜986(1994);EckerとCrooke、BioTechnology 13:351360(1995)を参照のこと)。ヌクレオチドまたは類似体を結合させる天然に存在しないヌクレオチド類似体または結合を組み込むことは、改変されたポリヌクレオチドが分解を受けにくくなりうることから、ポリヌクレオチドが、例えば組織培養培地を含むヌクレオチド溶解活性を含みうる環境に曝露される場合、または生きている被験者に投与される場合には特に有用となりうる。 天然に存在するヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を含むポリヌクレオチドは、化学合成することができ、または適当なポリヌクレオチドを鋳型として用いて組換えDNA法を用いて産生することができる。比較すると、ヌクレオチド類似体またはホスホジエステル結合以外の共有結合を含むポリヌクレオチドは、一般的に化学合成されるが、T7ポリメラーゼのような酵素は特定のタイプのヌクレオチド類似体をポリヌクレオチドに組み込まれることができ、したがって、適当な鋳型から組換えによってそのようなポリヌクレオチドを産生するために用いることができる(Jellinekら、上記、1995)。 ポリヌクレオチドがペプチド、例えば、プロミオスタチンのペプチド部分、またはペプチド作用物質をコードする場合、コード配列は一般的に、ベクターに含まれ、望ましければ組織特異的プロモーターまたはエンハンサーを含む適当な調節エレメントに機能的に結合される。コードされたペプチドはさらに、例えば、His-6タグ等のようなペプチドタグに機能的に結合させることができ、これは標的細胞における作用物質の発現の同定を容易にすることができる。His-6のようなポリヒスチジンタグペプチドは、ニッケルイオン、コバルトイオン等のような二価陽イオンを用いて検出することができる。さらなるペプチドタグには、例えば、抗FLAG抗体を用いて検出することができるFLAGエピトープ(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、ホップ(Hopp)ら、BioTechnology 6:1204(1988);米国特許第5,011,912号を参照のこと);エピトープに対して特異的な抗体を用いて検出することができるc-mycエピトープ;ストレプトアビジンまたはアビジンを用いて検出することができるビオチン;およびグルタチオンを用いて検出することができるグルタチオン-S-トランスフェラーゼが含まれる。そのようなタグは、例えば、ミオスタチンポリペプチドの蛋白質分解断片に対応する実質的に精製されたペプチドを得ることが望ましい場合には、それらが機能的に結合したペプチドまたはペプチド作用物質の単離を促進することができるというさらなる長所を提供することができる。 本明細書において用いられるように、「機能的に結合」または「機能的に会合」という用語は、二つまたはそれ以上の分子が、それらが単一の単位として作用して、一つもしくは双方の分子またはその組み合わせに帰因する機能を行うように、互いに関連して存在することを意味する。例えば、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、調節エレメントに機能的に結合することができ、この場合、調節エレメントは、それが細胞において通常会合するポリヌクレオチド配列に影響を及ぼす様式と類似のようにポリヌクレオチドにその調節作用を付与する。第一のポリヌクレオチドコード配列も同様に、機能的に結合したコード配列からキメラポリペプチドが発現されることができるように、第二(またはそれ以上)のコード配列に機能的に結合することができる。キメラポリペプチドは、融合ポリペプチドとなりえて、この場合、二つ(またはそれ以上)のコードされたポリペプチドは単一のポリペプチドに翻訳される、すなわちペプチド結合によって共有結合する;または翻訳されると、互いに機能的に会合して安定な複合体を形成しうる二つの別個のペプチドとして翻訳されうる。 キメラポリペプチドは、一般的にそのペプチド成分のそれぞれの特徴のいくつかまたは全てを示す。そのため、キメラポリペプチドは、本明細書において開示されるように、本発明の方法を実施するために特に有用となりうる。例えば、一つの態様において、本発明の方法は細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することができる。このように、キメラポリペプチドの一つのペプチド成分が細胞区画局在ドメインをコードして、第二のペプチド成分がドミナントネガティブSmadポリペプチドをコードする場合、機能的キメラポリペプチドは、細胞区画局在ドメインによって指定される細胞区画に移動して、Smadポリペプチドのドミナントネガティブ活性を示し、それによって、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することができる。 細胞区画ドメインは周知であり、これには例えば細胞質膜局在ドメイン、核局在シグナル、ミトコンドリア膜局在シグナル、小胞体局在シグナル等が含まれる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Hancockら、EMBO J. 10:4033〜4039、1991;Bussら、Mol. Cell. Biol. 8:3960〜3963、1988;米国特許第5,776,689号を参照のこと)。そのようなドメインは、作用物質を細胞における特定の区画にターゲティングする、または細胞から分泌させるために作用物質をターゲティングするために有用となりうる。例えば、Act RIIBのようなミオスタチン受容体のキナーゼドメインは、一般的に細胞質膜の内膜に会合する。このように、ドミナントネガティブミオスタチン受容体キナーゼドメイン、例えば、キナーゼ活性を欠損するドミナントネガティブAct RIIB受容体を含むキメラポリペプチドは、細胞質膜局在ドメインをさらに含み、それによって、ドミナントネガティブAct RIIBキナーゼドメインを内側の細胞質膜に局在させることができる。 本明細書に開示するように、プロGDFシグナルペプチドは、細胞局在活性を有する。本明細書において用いられるように、「細胞局在活性」という用語は、シグナルペプチドが、それに機能的に結合したペプチドを一つまたはそれ以上の特異的細胞内区画に転移させることを指示できること、または細胞から分子の分泌を指示できることを意味する。そのため、プロGDFシグナルペプチドは、実質的に同じシグナルペプチドを有する天然に発現されたGDFと同じ細胞内区画への、シグナルペプチドに機能的に結合したペプチドまたは他の作用物質の転移を指示するために特に有用となりうる。さらに、シグナルペプチド、例えばプロミオスタチンの最初のアミノ酸約15〜30個を含むプロミオスタチンシグナルペプチドは、シグナルペプチドを含む天然に存在するプロGDFと同じ経路を通して、細胞から機能的に結合した作用物質の分泌を指示することができる。このように、本発明の方法を実施するために特に有用な作用物質には、GDFシグナルペプチド、好ましくはプロミオスタチンまたはプロGDF-11シグナルペプチドに機能的に結合したGDFプロドメインまたはその機能的ペプチド部分が含まれる。 本発明の方法を行うために有用なポリヌクレオチド作用物質を含む本発明のポリヌクレオチドは、標的細胞と直接接触させることができる。例えば、細胞に入ってその機能を発揮するアンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質として有用なオリゴヌクレオチドを、標的細胞に直接接触させることができる。ポリヌクレオチド作用物質はまた、ポリペプチド、例えばミオスタチン受容体(またはミオスタチン)と特異的に相互作用して、それによってミオスタチンとその受容体と特異的相互作用能を変化させることができる。そのようなポリヌクレオチドは、そのようなポリヌクレオチドを作製および同定する方法と共に、本明細書に開示され、またはそうでなければ当技術分野で周知である(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、O□Connellら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5883〜5887、1996;TuerkとGold、Science 249:505〜510、1990;Goldら、Ann. Rev. Biochem. 64:763〜797、1995を参照のこと)。 プロミオスタチンのようなプロGDFポリペプチドのペプチド部分をコードしうる、変異体プロミオスタチンポリペプチドをコードしうる、GDF受容体もしくはその機能的ペプチド部分をコードすることができる、または本発明の方法を行うために有用なポリヌクレオチド作用物質となりうる本発明のポリヌクレオチドは、標的細胞へのポリヌクレオチドの導入を含むポリヌクレオチドの操作を促進することができるベクターに含まれうる。ベクターは、ポリヌクレオチドを維持するために有用であるクローニングベクターとなりえて、またはポリヌクレオチドの他にポリヌクレオチドを発現するために有用な、かつポリヌクレオチドがペプチドをコードする場合には、特定の細胞にコードされたペプチドを発現するために有用な調節エレメントを含む発現ベクターとなりうる。発現ベクターは、例えば、コードするポリヌクレオチドの持続的な転写を得るために必要な発現エレメントを含むことができ、または調節エレメントはベクターにクローニングされる前に、ポリヌクレオチドに機能的に結合することができる。 発現ベクター(またはポリヌクレオチド)は、一般的に、コードするポリヌクレオチドの構成的、または望ましければ誘導型、組織特異的もしくは発達段階特異的発現を提供しうるプロモーター配列、ポリ-A認識配列、およびリボソーム認識部位もしくは内部リボソーム流入部位、または組織特異的となりうるエンハンサーのようなその他の調節エレメントを含むまたはコードする。ベクターはまた、望ましければ原核または真核宿主系またはその双方における複製にとって必要なエレメントを含みうる。バクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキ森林熱ウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターのようなプラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれるそのようなベクターは、周知であり、販売元から購入することができる(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州;ストラタジーン社、ラホヤ、カリフォルニア州;ギブコ/BRL、ガイサースバーグ、メリーランド州)、または当業者によって構築することができる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Meth. Enzymol. 185巻、Goeddel編(アカデミック出版社、1990);Jolly、Canc. Gene Ther. 1:51〜64、1994;Flotte、J. Bioenerg. Biomemb. 25:37〜42、1993;Kirshenbaumら、J. Clin. Invest. 92:381〜387、1993を参照のこと)。 テトラサイクリン(tet)誘導型プロモーターは、本発明のポリヌクレオチド、例えばその中で蛋白質分解プロセシング部位が変位しているミオスタチンのドミナントネガティブ型をコードする、成熟ミオスタチンペプチドと複合体を形成することができるミオスタチンプロドメインをコードする、またはGDF受容体のドミナントネガティブ型をコードするポリヌクレオチドの発現を促進するために特に有用である。テトラサイクリン、またはテトラサイクリン類似体を、tet誘導型プロモーターに機能的に結合したポリヌクレオチドを含む被験者に投与すると、コードされたペプチドの発現が誘導され、それによってペプチドはその活性を行うことができ、それによってペプチド作用物質はミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害することができる。そのような方法は、例えば、成体生物において筋の肥大を誘導するために用いることができる。 ポリヌクレオチドはまた、コードされるペプチドの発現が個体における筋細胞、または培養、例えば臓器培養における細胞の混合集団における筋細胞に限定されるように、組織特異的調節エレメント、例えば筋細胞特異的調節エレメントに機能的に結合することができる。例えば、筋クレアチニンキナーゼプロモーター(Sternbergら、Mol. Cell Biol. 8:2896〜2909、1988、参照として本明細書に組み入れられる)およびミオシン軽鎖エンハンサー/プロモーター(Donoghueら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:5847〜5851、1991、参照として本明細書に組み入れられる)を含む筋細胞特異的調節エレメントは、当技術分野で周知である。 ウイルス発現ベクターは、細胞、特に被験者の細胞にポリヌクレオチドを導入するために特に有用となりうる。ウイルスベクターは、比較的高い効率で宿主細胞に感染できること、および特定の細胞タイプに感染できるという長所を提供する。例えば、ミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド部分をコードするポリヌクレオチドを、バキュロウイルスベクターにクローニングして、次にこれを用いて昆虫宿主細胞に感染させて、それによって大量のコードされるプロドメインを産生する手段を提供する。ウイルスベクターはまた、関係する生物の細胞、例えば哺乳類、鳥類、または魚類宿主細胞のような脊椎動物宿主細胞に感染するウイルスに由来しうる。ウイルスベクターは、本発明の方法を行うために有用なポリヌクレオチドを標的細胞に導入するために特に有用となりうる。ウイルスベクターは、特定の宿主系、特に哺乳類系において用いるために開発されており、これには例えば、レトロウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくベクターのような他のレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター等が含まれる(そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、MillerとRosman、BioTechniques 7:980〜990、1992;Andersonら、Nature 392:25〜30、補則、1998;VermaとSomia、Nature 389:239〜242、1997;Wilson、New Engl. J. Med. 334:1185〜1187(1996)を参照のこと)。 例えば、レトロウイルスを遺伝子移入のために用いる場合、複製コンピテントレトロウイルスは理論的に、レトロウイルスベクターを産生するために用いられるパッケージング細胞株におけるレトロウイルスベクターとウイルス遺伝子配列との組換えにより発達することができる。組換えによって複製コンピテントウイルスの産生が減少または消失しているパッケージング細胞株は、複製コンピテントレトロウイルスが産生される可能性を最小限にするために用いることができる。細胞を感染させるために用いられる全てのレトロウイルスベクター上清を、PCRおよび逆転写酵素アッセイ法のような標準的なアッセイ法によって複製コンピテントウイルスに関してスクリーニングする。レトロウイルスベクターによって、異種遺伝子を宿主細胞ゲノムに組み込むことが可能となり、これによって、細胞分裂後に遺伝子を娘細胞に伝えることができる。 ベクターに含まれうるポリヌクレオチドは、当技術分野で既知の多様な方法によって細胞に導入することができる(Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、コールドスプリングハーバー研究所出版、1989);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョンウィリーアンドサンズ、ボルチモア、メリーランド州(1987、1995年の補則、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。そのような方法には、例えば、トランスフェクション、リポフェクション、マイクロインジェクション、電気穿孔、およびウイルスベクターを用いる感染が含まれ;ならびに細胞へのポリヌクレオチドの導入を促進して、ポリヌクレオチドが細胞に導入される前に分解されないように保護することができるリポソーム、微小乳剤等を用いることが含まれうる。特定の方法の選択は、例えばポリヌクレオチドが導入される細胞と共に、細胞が培養において単離されているか、または組織もしくは臓器培養で存在するか、またはインサイチューで存在するかに依存するであろう。 ウイルスベクターによる感染によってポリヌクレオチドを細胞に導入することは、それがエクスビボまたはインビボで核酸分子を細胞に効率よく導入することができることから特に有用である(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,399,346号を参照のこと)。その上、ウイルスは非常に特殊化されており、一つまたは少数の特異的細胞タイプにおける感染および増殖能に基づくベクターとして選択することができる。このように、その天然の特異性を用いて、ベクターに含まれる核酸分子を様々な細胞タイプにターゲティングすることができる。そのため、HIVに基づくベクターを用いて、T細胞を感染させることができ、アデノウイルスに基づくベクターを用いて、例えば呼吸器上皮細胞を感染させることができ、ヘルペスウイルスに基づくベクターを用いて、神経細胞等を感染させることができる。アデノ随伴ウイルスのようなその他のベクターは、より広い宿主範囲を有し、したがって、様々な細胞タイプに感染させるために用いることができるが、ウイルスまたは非ウイルスベクターも同様に、特異的受容体またはリガンドによって改変して、受容体媒介事象を通して標的特異性を変化させることができる。 本発明はまた、プロミオスタチンポリペプチドまたは変異体プロミオスタチンポリペプチドのペプチド部分に特異的に結合する抗体も提供する。本発明の特に有用な抗体には、ミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド断片に特異的に結合する抗体、およびプロミオスタチンポリペプチドに結合して、プロミオスタチンの成熟ミオスタチンペプチドへの蛋白質分解切断を減少または阻害する抗体が含まれる。さらに、本発明の抗体は、下記に示すように、GDF受容体またはその機能的ペプチド部分に特異的に結合する抗体となりうる。本発明の抗体を調製および単離する方法は下記により詳しく記載し、その開示は参照として本明細書に組み入れられる。 ミオスタチンは、骨格筋全体の適切な調節にとって必須である。野生型のマウスと比較すると、ミオスタチンを欠損するミオスタチンノックアウトマウスは、過形成と肥大の複合により筋の量が2〜3倍増加している。本明細書に開示するように、ミオスタチンノックアウトマウスはまた、少なくとも部分的に全身の骨格筋組織の同化状態の増加により、脂肪の蓄積が劇的に減少している。逆に、ヌードマウスにミオスタチンを過剰発現させると、癌またはAIDSのような慢性疾患を有するヒト患者において認められるカヘキシア状態と類似の消耗性症候群を誘導した。本明細書にさらに開示するように、ミオスタチン活性は、Smadシグナル伝達経路の特徴を有するシグナル伝達を通して媒介されうる。したがって、本発明は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を細胞に接触させることによって、細胞に及ぼすミオスタチンの作用を調節する方法を提供する。 本明細書において用いられるように、細胞に及ぼすミオスタチンの作用に関連して用いられる「調節する」という用語は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達が増加または減少もしくは阻害されていることを意味する。「増加」および「減少もしくは阻害」という用語は、ミオスタチンの非存在下でのシグナル伝達経路の活性レベル、またはミオスタチンの存在下での正常細胞における活性レベルとなりうるミオスタチンシグナル伝達活性の基準値レベルと比較して用いられる。例えば、ミオスタチンシグナル伝達経路は、ミオスタチンと接触させた筋細胞において特定の活性を示し、筋細胞をミオスタチンプロドメインにさらに接触させると、ミオスタチンシグナル伝達活性は減少または阻害されうる。そのため、ミオスタチンプロドメインは、ミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために有用な作用物質である。同様に、GDF-11プロドメインのようなもう一つのGDFファミリーメンバーのプロドメイン、またはアクチビンプロドメイン、MISプロドメイン等のような他のTGF-βファミリーメンバーのプロドメインは、ミオスタチンシグナル伝達を減少させるために有用となりうる。「減少または阻害」という用語は、それらが場合によって、ミオスタチンシグナル伝達のレベルを特定のアッセイ法によって検出されうるレベル以下に減少させうることが認識されているために、本明細書において共に用いられる。そのため、そのようなアッセイ法を用いて、ミオスタチンシグナル伝達の低レベルが阻害されたままであるか、またはシグナル伝達が完全に阻害されるか否かを決定することはできない。 本明細書において用いられるように、「ミオスタチンシグナル伝達」という用語は、細胞表面上に発現されたミオスタチン受容体とミオスタチンとの特異的相互作用により細胞に起こる一連の事象、一般的に一連の蛋白質-蛋白質相互作用を意味する。そのため、ミオスタチンシグナル伝達は、例えば、ミオスタチンと細胞上のその受容体との特異的相互作用を検出することによって、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達経路に関係する一つもしくはそれ以上のポリペプチドの燐酸化を検出することによって、ミオスタチンシグナル伝達によって特異的に誘導される一つもしくはそれ以上の遺伝子の発現を検出することによって、またはミオスタチンシグナル伝達に反応して起こる表現型の変化を検出することによって検出することができる(実施例を参照のこと)。本明細書において開示するように、本発明の方法において有用な作用物質は、ミオスタチンシグナル伝達を刺激するための作用剤として、またはミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害するための拮抗剤として作用しうる。 本発明の方法の例は、本明細書において一般的にミオスタチンに関連して示される。しかし、本発明の方法は、細胞におけるGDFによるシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質に細胞を接触させることによって、他のGDFペプチド、例えば、GDF-11が細胞に及ぼす作用を調節することをより広く含みうると認識すべきである。本発明の完全な範囲を実践する方法は、本開示を読むことによって容易に理解され、本発明には例えばGDF受容体を同定する方法、GDFとその受容体との特異的相互作用によるシグナル伝達を調節する作用物質を同定する方法等が含まれる。 ミオスタチンシグナル伝達経路の例は、本明細書において、Smad経路であり、これは、ミオスタチンがアクチビンII型受容体の細胞外ドメインと特異的に相互作用すると開始され、細胞においてSmad蛋白質を含む細胞内ポリペプチドの相互作用を通して伝達される。一般的に、ミオスタチンシグナル伝達は、Smadポリペプチドのような特異的細胞内ポリペプチドの燐酸化または脱燐酸化に関連している。このように、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達は、ミオスタチンの非存在下でのポリペプチドの燐酸化レベルと比較して、ミオスタチンの存在下で一つまたはそれ以上のSmadポリペプチドの燐酸化レベルの増加を検出することによって検出することができる。本発明の方法は、ミオスタチンシグナル伝達を増加または減少させる手段を提供し、したがって、ミオスタチンシグナル伝達経路に関与するSmadポリペプチドの燐酸化レベルは、正常レベル以上に増加するか、またはミオスタチンの存在下で予想されるレベル未満に減少するであろう。 本発明の方法は、例えば、適した条件で標的細胞と、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質とを接触させることによって行うことができる。適した条件は、単離された細胞となりうるまたは組織もしくは臓器の成分となりうる細胞を、適当な培養培地に入れること、または細胞をインサイチューで生物に接触させることによって提供されうる。例えば、細胞を含む培地を、ミオスタチンの細胞上に発現されるミオスタチン受容体との特異的相互作用能に影響を及ぼす作用物質、または細胞におけるミオスタチンシグナル伝達経路に影響を及ぼす作用物質に接触させることができる。一般的に、細胞は被験者における組織または臓器の成分であり、いずれにせよ、細胞を接触させることは被験者に作用物質を投与することを含む。しかし、細胞はまた、培養において操作して、次に培養において維持して、被験者に投与する、またはヒト以外のトランスジェニック動物を作製するために用いることができる。 本発明の方法において有用な物質は、如何なるタイプの分子、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、ペプチド模倣体、ビニル様(vinylogous)ペプトイド、有機低分子等となりえて、ミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす様々な如何なる方法でも作用しうる。作用物質は、ミオスタチンまたはアクチビン受容体のようなミオスタチン受容体に結合して、それによってミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を変化させることによって細胞外で作用することができる、または細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を変化させるように細胞内で作用することができる。さらに、作用物質は、細胞に及ぼすミオスタチンの作用、例えばミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を模倣または増強して、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加させる作用剤となりうる;または細胞に及ぼすミオスタチンの作用を減少もしくは阻害して、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少もしくは阻害する拮抗剤となりうる。 本明細書において用いられるように、「特異的相互作用」または「特異的に結合する」等の用語は、二つの分子が生理的条件で比較的安定である複合体を形成することを意味する。この用語は本明細書において、例えば、ミオスタチンとミオスタチン受容体との相互作用、ミオスタチンシグナル伝達経路の細胞内成分の相互作用、抗体とその抗原との相互作用、およびミオスタチンプロドメインとミオスタチンとの相互作用を含む様々な相互作用を意味するために用いられる。特異的相互作用は、解離定数が少なくとも約1×10-6 M、一般的に少なくとも約1×10-7 M、通常少なくとも約1×10-8 M、特に少なくとも約1×10-9 Mまたは1×10-10 Mまたはそれ以上である特徴を有しうる。特異的相互作用は一般的に、例えば、ヒトまたは他の脊椎動物もしくは無脊椎動物のような生きている個体に起こる状態と共に、哺乳類細胞または他の脊椎生物もしくは無脊椎生物からの細胞を維持するために用いられるような細胞培養において起こる条件を含む生理的条件で安定である。さらに、ミオスタチンプロドメインとミオスタチンとの細胞外相互作用のような特異的相互作用は、商業的に価値がある海洋生物の養殖のために用いられるような条件で一般的に安定である。二つの分子が特異的に相互作用するか否かを決定する方法は周知であり、これには例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴等が含まれる。 ミオスタチンとその受容体との特異的相互作用を変化させる作用物質は、例えば、その細胞受容体と特異的に相互作用できないようにミオスタチンに結合することによって、その受容体との結合に関してミオスタチンと競合することによって、またはそうでなければ、ミオスタチンシグナル伝達を誘導するためにミオスタチンがその受容体と特異的に相互作用する必要条件を迂回することによって作用しうる。ミオスタチン受容体の可溶性の細胞外ドメインのような切断型ミオスタチン受容体は、ミオスタチンに結合して、それによってミオスタチンを分離して、その細胞表面ミオスタチン受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することができる作用物質の例である。ミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド部分は、ミオスタチンに結合して、それによってミオスタチンの細胞表面ミオスタチン受容体との特異的相互作用能を減少もしくは阻害することができる作用物質のもう一つの例である。そのようなミオスタチン拮抗剤は、本発明の方法を実践するために、特に細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために有用である。 フォリスタチンは、ミオスタチンに結合して、それによってミオスタチンのその受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することができる作用物質のもう一つの例である。フォリスタチンは、ミオスタチン(GDF-8;米国特許第6,004,937号)およびGDF-11(Gamerら、Devel. Biol. 208:222〜232、1999)を含む様々なTGF-βファミリーメンバーに結合してその活性を阻害することができ、したがって開示される方法を行うために用いることができる。ミオスタチンの作用を調節するためにフォリスタチンを用いることはこれまでに記述されているが(米国特許第6,004,937号)、フォリスタチンが、ミオスタチンのAct RIIBのようなミオスタチン受容体との特異的相互作用能を減少または阻害することは、本発明の開示以前に知られていなかった。 本発明の方法において有用な作用物質はまた、細胞ミオスタチン受容体と相互作用して、それによって受容体に関してミオスタチンと競合することができる。そのような作用物質は、例えば、ミオスタチン結合ドメインの全てまたは一部を含む細胞表面ミオスタチン受容体に特異的に結合して、それによってミオスタチンが受容体と特異的に相互作用できないようにする抗体となりうる。そのような抗ミオスタチン受容体抗体は、ミオスタチンシグナル伝達を活性化せずに受容体に特異的に結合できることに関して選択することができ、それによってミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するためのミオスタチン拮抗剤として有用となりうる;または受容体に特異的に結合してミオスタチンシグナル伝達を活性化できることに関して選択して、このようにミオスタチン作用剤として作用することができる。抗体は、ミオスタチン受容体もしくは受容体の細胞外ドメインを免疫原として用いて作製することができ、または抗ミオスタチン抗体に対して作製され、ミオスタチンを模倣する抗イディオタイプ抗体となりうる。抗GDF受容体抗体は、下記により詳細に考察する。 本発明の方法において有用な作用物質はまた、プロGDFポリペプチドの活性な成熟GDFペプチドへの蛋白質分解切断を減少または阻害して、それによってGDFシグナル伝達を減少または阻害する作用物質となりうる。そのような作用物質は、プロテアーゼ阻害剤、特にArg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解認識部位を認識して切断するプロテアーゼの活性を阻害する作用物質となりうる。プロGDFがプロミオスタチンである場合、ミオスタチンにおけるArg-Xaa-Xaa-Arg(配列番号:21)蛋白質分解認識部位に対するプロテアーゼの特異的結合を減少または阻害する抗ミオスタチン抗体を同様に用いて、プロミオスタチンの蛋白質分解を減少または阻害して、それによって産生された成熟ミオスタチンの量を減少させることができる。そのような抗体は、蛋白質分解切断部位に結合することができ、またはプロテアーゼの結合およびプロテアーゼによる切断が減少するもしくは阻害されるように、プロGDFポリペプチド上の他のいくつかの部位に結合することができる。 さらに、本発明の方法において有用な作用物質は、例えばミオスタチン結合に反応したミオスタチンシグナル伝達活性を欠損する、または構成的ミオスタチンシグナル伝達活性を有する変異体ミオスタチン受容体となりうる。例えば、変異体ミオスタチン受容体は、受容体がキナーゼ活性を欠損するように、そのキナーゼドメインに点突然変異、欠失等を有しうる。そのようなドミナントネガティブ変異体ミオスタチン受容体は、ミオスタチンに特異的に結合することができるという事実にもかかわらず、ミオスタチンシグナル伝達の伝幡能を欠損する。 本発明の方法において有用な作用物質はまた、ミオスタチンシグナル伝達経路に関係する細胞内ポリペプチドのレベルまたは活性を調節することができる。本明細書に開示するように、ミオスタチンによる筋増殖の調節は、アクチビンII型受容体によって活性化されるシグナル伝達経路の成分を含みうる(実施例7および9を参照のこと;同様に実施例14も参照のこと)。ミオスタチンは、培養COS細胞において発現されたアクチビンIIB型受容体(Act RIIB)と特異的に相互作用する(実施例7)。結合の親和性が低いことは、インビボでのAct RIIBに対するミオスタチンの結合が、I型受容体も同様に存在する場合にはII型受容体に対する親和性も有意に高いTGF-β(Attisanoら、Cell 75:671〜680、1993)またはシグナル伝達受容体にリガンドを提示するために他の分子を必要とする他の系(Massague、上記、1998;Wangら、Cell 67:795〜805、1991)と類似の他の要因を含む可能性があることを示している。 Act RIIBとミオスタチンの特異的相互作用は、ミオスタチンシグナル伝達がSmadシグナル伝達経路の成分を含みうることを示している。このように、Smadシグナル伝達経路は、細胞に及ぼすミオスタチンの効果を調節するための標的を提供し、Smad経路に影響を及ぼす作用物質は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するために有用となりうる。 GDFシグナル伝達の細胞内ポリペプチド成分のレベルまたは活性を調節するために有用な作用物質には、シグナル伝達活性を増加させることができる作用剤、およびシグナル伝達活性を減少または阻害することができる拮抗剤が含まれる。ミオスタチンに関して、例えば、ミオスタチンシグナル伝達活性を増加することができる作用物質の例は、Smadポリペプチドの脱燐酸化を減少または阻害して、それによってSmadのシグナル伝達活性を延長させることができるホスファターゼ阻害剤である。ミオスタチンシグナル伝達に及ぼすSmad6およびSmad7の阻害作用を打ち消すことができるドミナントネガティブSmad6またはSmad7ポリペプチドは、Smadシグナル伝達を増加させることによってミオスタチンシグナル伝達活性を増加することができる作用物質のさらなる例である。 ミオスタチンシグナル伝達活性を減少または阻害することができる拮抗剤作用物質の例は、C末端の燐酸化部位が変異しているドミナントネガティブSmad2、Smad3、またはSmad4のようなドミナントネガティブSmadポリペプチドである。Smad2およびSmad3の活性化を阻害するSmad6およびSmad7のような阻害性のSmadポリペプチド、およびSmadポリペプチドに結合してシグナル伝達を阻害するc-skiポリペプチドは、Smadシグナル伝達を減少させることによってミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害するために有用な拮抗剤のさらなる例である。 細胞内で作用する作用物質がペプチドである場合、これは細胞に直接接触させることができ、またはペプチド(またはポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入して、ペプチドを細胞において発現させることができる。本発明の方法において有用なペプチドのいくつかは比較的大きく、したがって、細胞膜を容易に通過しない可能性があると認識される。しかし、ペプチドを細胞に導入するために様々な方法が知られている。そのようなペプチドを細胞に導入する方法の選択は、部分的に、ポリペプチドを提供すべき標的細胞の特徴に依存するであろう。例えば、標的細胞、または標的細胞を含むいくつかの細胞タイプが、特定のリガンドに結合すると細胞内にインターナライズされる受容体を発現する場合、ペプチド作用物質は、リガンドと機能的に会合することができる。受容体に結合すると、ペプチドは、受容体媒介エンドサイトーシスによって細胞内に移動する。ペプチド作用物質はまた、リポソームに封入する、または脂質複合体に製剤化することができ、これはペプチドの細胞内への流入を促進することができ、上記のようにさらに受容体(またはリガンド)を発現するように改変することができる。ペプチド作用物質はまた、ペプチドの細胞内への転位を促進するヒト免疫不全ウイルスTAT蛋白質形質導入ドメインのような蛋白質形質導入ドメインを含むようにペプチドを操作することによっても、細胞に導入することができる(参照として本明細書に組み入れられる、Schwarzeら、Science 285:1569〜1572(1999)を参照のこと;同様に、Derossiら、J. Biol. Chem. 271:18188(1996)も参照のこと)。 標的細胞はまた、細胞において発現されることができるペプチド作用物質をコードするポリヌクレオチドに接触させることができる。発現されたペプチド作用物質は変異体GDF受容体またはそのペプチド部分となりうる。変異体GDF受容体の例には、リガンド(例えば、ミオスタチン)に特異的に結合する能力を有しうるが必ずしもその必要はないドミナントネガティブAct RIIAまたはAct RIIBのようなミオスタチン受容体のキナーゼ欠損型;ミオスタチンに結合してそれが細胞のミオスタチン受容体と特異的に相互作用できないように隔離するミオスタチン受容体の可溶性型のような切断型ミオスタチンまたは他のGDF受容体;C末端燐酸化部位が変異しているドミナントネガティブSmad3のようなSmadポリペプチドのドミナントネガティブ型(Liuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:10669〜10674、1997);Smad2およびSmad3の活性化を阻害するSmad7ポリペプチド(Heldinら、Nature 390:465〜471、1997);またはSmadポリペプチドに結合して、Smadによるシグナル伝達を阻害することができるc-skiポリペプチド(Sutraveら、Genes Devel. 4:1462〜1472、1990)が含まれる。 細胞におけるc-skiペプチド作用物質の発現は、ミオスタチンシグナル伝達を調節するために特に有用となりうる。c-skiを欠損するマウスは、骨格筋量の重度の減少を示す(Berkら、Genes Devel. 11:2029〜2039、1997)のに対し、筋にc-skiを過剰発現するトランスジェニックマウスは、劇的な筋の肥大を示す(Sutraveら、上記、1990)。c-skiは、TGF-βおよびアクチビンII型受容体のシグナル伝達を媒介するSmad2、Smad3およびSmad4を含む特定のSmad蛋白質と相互作用してその活性を阻害する(Luoら、Genes Devel. 13:2196〜1106、1999;Stroscheinら、Science 286:771〜774、1999;Sunら、Mol. Cell 4:499〜509、1999a;Sunら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:112442〜12447、1999b;Akiyoshiら、J. Biol. Chem. 274:35269、1999)。このように、ミオスタチン活性がAct RIIB結合を通して媒介されうる本発明の開示を通して、ミオスタチンの活性またはSmad経路を利用する如何なるGDFの活性も、標的細胞におけるc-ski発現を増加または減少させることによって調節することができると認識されるであろう。 本発明の方法において有用な作用物質は、上記のように細胞と接触する、または導入することができるポリヌクレオチドとなりうる。一般的に、しかし必ずしもその必要はないが、ポリヌクレオチドはそれが直接、または転写もしくは翻訳もしくはその双方の後にその機能を発揮する細胞に導入される。例えば、上記のように、ポリヌクレオチドは、細胞において発現され、ミオスタチン活性を調節するペプチド作用物質をコードすることができる。そのような発現されたペプチドは、例えば、活性なミオスタチンに切断することができない変異体プロミオスタチンポリペプチド;または変異体ミオスタチン受容体、例えば、切断型ミオスタチン受容体細胞外ドメイン;膜結合ドメインに機能的に会合するミオスタチン受容体細胞外ドメイン;または蛋白質キナーゼ活性を欠損する変異体ミオスタチン受容体となりうる。ポリペプチドを細胞に導入する方法は、下記に示され、またはそうでなければ当技術分野で既知である。 本発明の方法において有用なポリヌクレオチドはまた、アンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質となりうる、またはコードしうる。例えば、ポリヌクレオチドは、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を増加させる作用剤として作用しうるアンチセンスc-skiヌクレオチド配列のようなアンチセンスヌクレオチド配列;または特定のSmadアンチセンスヌクレオチド配列に応じて、ミオスタチンシグナル伝達を増加させる作用剤として作用するか、もしくはミオスタチンシグナル伝達を減少または阻害する拮抗剤として作用しうるアンチセンスSmadヌクレオチド配列となりうる(またはコードしうる)。そのようなポリヌクレオチドは、標的細胞に直接接触させることができ、細胞に取り込まれるとそのアンチセンス、リボザイム、または三重らせん形成活性を発揮しうる;または細胞に導入されて、ポリヌクレオチドが発現されると、例えばアンチセンスRNA分子またはリボザイムを産生して、それがその活性を発揮するポリヌクレオチドによってコードされうる。 アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、または三重らせん形成物質は、DNA配列またはRNA配列、例えばメッセンジャーRNAとなりうる標的配列、コード配列、イントロン-エキソン接合部位を含むヌクレオチド配列、シャイン-ダルガルノ配列のような調節配列等となりうる標的配列と相補的である。相補性の程度は、ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンスポリヌクレオチドが細胞における標的配列と特異的に相互作用することができる程度である。アンチセンスまたは他のポリヌクレオチドの全長に応じて、その標的配列に関するポリヌクレオチドの特異性を失うことなく、標的配列に関して一つまたは数個のミスマッチが容認されうる。このように、例えば、20ヌクレオチドからなるアンチセンス分子では、容認されるのはあったとしても少数のミスマッチであるのに対し、例えば、細胞ポリペプチドをコードする標的mRNAの完全長に対して相補的なアンチセンス分子のハイブリダイゼーション効率には、数個のミスマッチが影響を及ぼさないであろう。認容されうるミスマッチの数は、例えば、ハイブリダイゼーション動態を決定するために周知の式を用いて推定することができ(Sambrookら、上記、1989を参照のこと)、または本明細書に開示の、もしくはそうでなければ当技術分野で既知の方法を用いて、特に、細胞にアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、または三重らせん形成物質が存在することによって、標的配列のレベルまたは細胞における標的配列によってコードされるポリペプチドの発現が減少することを決定することによって、経験的に決定することができる。 アンチセンス分子、リボザイム、または三重らせん形成物質として有用なポリヌクレオチドは、翻訳を阻害、または核酸分子を切断して、それによって細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することができる。例えば、アンチセンス分子は、mRNAに結合して細胞において翻訳できない二本鎖分子を形成することができる。少なくとも約15〜25ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、それらが容易に合成され、標的配列と特異的にハイブリダイズすることができることから、それらが好ましいが、標的細胞に導入したポリヌクレオチドからより長いアンチセンス分子を発現することも可能である。アンチセンス分子として有用な特異的ヌクレオチド配列は、周知の方法、例えば遺伝子歩行法(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Seimiyaら、J. Biol. Chem. 272:4631〜4636(1997)を参照のこと)を用いて同定することができる。アンチセンス分子を標的細胞に直接接触させる場合、これは、鉄結合EDTAのような化学反応基と機能的に会合することができ、これは、ハイブリダイゼーション部位で標的RNAを切断する。これに対して、三重らせん形成物質は、転写を停止させることができる(Maherら、Antisense Res. Devel. 1:227(1991);Helene、Anticancer Drug Design 6:569(1991))。このように、三重らせん形成物質は、例えば、Smad遺伝子調節エレメントの配列を認識して、それによって細胞におけるSmadポリペプチドの発現を減少または阻害して、それによって標的細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するように設計することができる。 本発明はまた、ミオスタチンのようなGDFの細胞に及ぼす作用を変化させうる作用物質、特にGDFのその細胞受容体との特異的相互作用能を変化させうる作用物質を同定する方法を提供する。そのような作用物質はGDFのその受容体との特異的相互作用能を増加または減少させることによって作用することができ、したがってGDFシグナル伝達をそれぞれ増加または減少させるために有用である。本発明のスクリーニング方法の例は、ミオスタチン受容体、例えばAct RIIAまたはAct RIIBのようなアクチビンII型受容体を用いて本明細書に示される。 本発明のスクリーニング方法は、例えば、ミオスタチンまたはその機能的ペプチド部分、Act RIIAまたはAct RIIBのようなミオスタチン受容体と、調べる作用物質とを、適した条件で接触させることによって実施することができる。ミオスタチン、受容体および作用物質は、所望の如何なる順序で接触させることもできる。そのため、スクリーニング方法を用いて、そのような作用物質が作用剤または拮抗剤活性を有する、受容体に対するミオスタチンの結合を競合的または非競合的に阻害することができる物質、受容体に対するミオスタチンの結合を媒介または増強することができる作用物質、特異的に結合したミオスタチンの受容体からの解離を誘導することができる作用物質、およびそうでなければミオスタチンのシグナル伝達誘導能に影響を及ぼす作用物質を同定することができる。作用物質の作用がミオスタチンまたは他のGDF受容体に特異的であることを確認するために適当な対照反応を行う。 本発明のスクリーニング方法を行うための適した条件は、本明細書に開示の方法(実施例7および9を参照のこと)、またはそうでなければ当技術分野で既知の方法を含む、ミオスタチンをその受容体と特異的に相互作用させる如何なる条件ともなりうる。このように、スクリーニングアッセイ法を行うための適した条件は、例えば実質的に精製されたミオスタチン受容体を用いるインビトロ条件;通常ミオスタチン受容体を発現する細胞、例えば脂肪細胞もしくは筋細胞、またはその表面に機能的ミオスタチン受容体を発現するように遺伝子改変されている細胞を利用する細胞培養条件;または臓器において起こるインサイチュー条件となりうる。 本発明のスクリーニング方法はまた、上記の分子モデリング法を用いても行うことができる。分子モデリング法を利用することは、GDF受容体と特異的に相互作用する可能性が最も高い、可能性がある作用物質の組み合わせライブラリのような大きい集団においてそれらの作用物質を同定するための簡便で費用効果の高い手段を提供し、それによって生物アッセイ法を用いてスクリーニングする必要がある可能性がある作用物質の数が減少する。Act RIIBのようなGDF受容体と特異的に相互作用する作用物質が同定されると、選択された作用物質は、本明細書に開示の方法を用いて、細胞に及ぼすミオスタチンのようなGDFの作用の調節能に関して調べることができる。 試験物質のミオスタチンの作用の調節能は、本明細書に開示の方法(実施例7および9を参照のこと)を用いて、またはそうでなければ当技術分野で既知の方法を用いて検出することができる。「試験作用物質」または「試験分子」という用語は、本明細書において本発明の方法における作用剤または拮抗剤活性に関して調べられる如何なる作用物質も意味するように広い意味で用いられる。方法は一般的に、本明細書に記載の作用剤または拮抗剤作用物質として作用しうる未知分子を同定するためのスクリーニングアッセイ法として用いられるが、方法はまた、実際に特定の活性を有することが知られている作用物質が、例えば、作用物質の活性を標準化するための活性を有することを確認するために用いることができる。 本発明の方法は、例えば、Act RIIB受容体を発現するように遺伝子改変されている細胞にミオスタチンを接触させること、およびミオスタチンシグナル伝達経路に関係するSmadポリペプチドの燐酸化を調べることによって、作用物質、例えばドミナントネガティブAct RIIBの作用を決定することによって行うことができる。望ましければ、細胞は、その発現がミオスタチンシグナル伝達経路に依存する、例えばSmad経路の活性化に依存するレポーターヌクレオチド配列を含むようにさらに遺伝子改変することができ、試験作用物質の作用は、作用物質、ミオスタチン、またはその双方の存在下および非存在下でレポーターヌクレオチド配列の発現を比較することによって決定することができる。レポーターヌクレオチド配列の発現は、例えばレポーターヌクレオチド配列のRNA転写物を検出することによって、またはレポーターヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを検出することによって検出することができる。ポリペプチドレポーターは、例えば、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシン-Bホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼポリペプチド等となることができ、例えば、レポーターポリペプチドによる放射活性、発光、化学発光、蛍光、酵素活性、または特異的結合を検出することによって検出することができる。 本発明のスクリーニング方法は、高処理能解析に適合させることができる長所を有し、したがって、ミオスタチンとミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させうる作用物質を含む、細胞に及ぼすミオスタチンの作用を調節することができる作用物質を同定するために、試験作用物質の組み合わせライブラリをスクリーニングするために用いることができる。所望の活性に関して調べることができる分子の組み合わせライブラリを調製する方法は、当技術分野で周知であり、これには例えば、拘束されたペプチドとなりうるペプチドのファージディスプレイライブラリ(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,622,699号;米国特許第5,206,347号;ScottとSmith、Science 249:386〜390、1992;Marklandら、Gene 109:13〜19、1991を参照のこと);ペプチドライブラリ(米国特許第5,264,563号、参照として本明細書に組み入れられる);ペプチド模倣体ライブラリ(Blondelleら、Trends Anal. Chem. 14:83〜92、1995);核酸ライブラリ(O□Connellら、上記、1996;TuerkとGold、上記、1990;Goldら、上記、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる);オリゴ糖ライブラリ(Yorkら、Carb. Res. 285:99〜128、1996;Liangら、Science 274:1520〜1522、1996;Dingら、Adv. Expt. Med. Biol. 376:261〜269、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる);リポ蛋白質ライブラリ(de Kruifら、FEBS Lett. 399:232〜236、1996、参照として本明細書に組み入れられる);糖蛋白質または糖脂質ライブラリ(Karaogluら、J. Cell Biol. 130:567〜577、1995、参照として本明細書に組み入れられる);または例えば薬剤もしくは他の医薬品を含む化学ライブラリ(Gordonら、J. Med. Chem. 37:1385〜1401、1994;EckerとCrooke、Bio/Technology 13:351〜360、1995、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)を作製する方法が含まれる。ポリヌクレオチドは、細胞ポリヌクレオチドを含む細胞標的に対して結合特異性を有する核酸分子は、天然に存在するため、およびそのような特異性を有する合成分子は容易に調製および合成することができるために(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,750,342号を参照のこと)、ミオスタチンとその受容体との特異的相互作用を調節することができる作用物質として特に有用となりうる。 本発明の開示を考慮すると、様々な動物モデル系が本発明の方法を実践するために有用な作用物質を同定するための研究ツールとして用いることができると認識される。例えば、トランスジェニックマウスまたは他の実験動物は、本明細書に開示の様々なミオスタチン阻害剤構築物を用いて調製することができ、ヒト以外のトランスジェニック生物は、生物における特定の作用物質の様々なレベルを発現することによって生じた作用を直接決定するために調べることができる。さらに、トランスジェニック生物、例えば、トランスジェニックマウスは、他のマウス、例えば、ob/ob、db/db、または野鼠色の致死的な黄色の変異体マウスと交配させて、肥満、II型糖尿病等のような障害を治療または予防するために有用なミオスタチン阻害剤の最適な発現レベルを決定することができる。そのため、本発明は、ヒト以外の生物、特にミオスタチンシグナルペプチドを含みうるミオスタチンプロドメインをコードするポリヌクレオチド、プロペプチド(実施例を参照のこと)、または変異体プロミオスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むトランスジェニック生物を提供する。さらに、本発明は、高レベルのフォリスタチンを発現する、またはドミナントネガティブAct IIB受容体を発現するヒト以外のトランスジェニック生物を提供する(実施例を参照のこと)。そのような生物は、ミオスタチンノックアウトマウスにおいて認められたものと類似の筋重量の劇的な増加を示す(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,994,618号を参照のこと)。本明細書において考察したように、そのような動物モデルは、治療目的および農業での応用のために筋増殖を強化する物質を同定するために重要である。ヒト以外のトランスジェニック動物を作製する方法は当技術分野で既知である(例えば、その全てが参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,140,552号;第5,998,698号;第6,218,596号を参照のこと)。 本発明のミオスタチンポリヌクレオチドは、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヒト、ニワトリ、ヒツジ、七面鳥、魚および他の水生生物、ならびに他の種を含む如何なる生物にも由来する。そのようなポリヌクレオチドは、本明細書に記載するトランスジェニック動物を作製するために用いることができる。トランスジェニック体を作製することができる(かつミオスタチンポリヌクレオチドがそれに由来しうる)水生動物の例には、サケ、マス、チャー、アユ、コイ、ヨーロッパフナ、キンギョ、ウグイ、シラス、ウナギ、アナゴ、コイワシ、ゼブラフィッシュ、トビウオ、ハタ科の魚、タイ科の魚、パロットバス、フエダイ、サバ、クロマグロ、マグロ、ハガツオ、黄色の尾をもつ魚、岩間の魚、フルーク、ソール、ヒラメ、フグ、モンガラカワハギのような魚類に属する動物;ヤリイカ、コウイカ、タコのような頭足類に属する動物;ハマグリ(例えば、ハードシェル、ホンビノスガイ、マニラ、ホンビノスガイ、サーフ、ソフトシェル)のような二枚貝類に属する動物;コックル、イガイ、タマキビガイ;ホタテ貝(例えば、海、湾、カルー(calloo)ホタテ貝);ホラガイ、マキガイ、ナマコ;アークシェル;カキ(例えば、C. virginica、湾、ニュージーランド、太平洋カキ);リュウテンサザエ科の貝、アワビ(例えば、緑、ピンク、赤アワビ)のような腹足類に属する動物;ならびにイセエビ(Spiny)、ロックロブスター(Rock)、およびアメリカンロブスターを含むがこれらに限定されないロブスター;クルマエビ(prawn);M. ローゼンベルギイ(M. rosenbergii)、P.スチルロールス(P. styllrolls)、P. インディクス(P. indicus)、P. ジェポニオウス(P. jeponious)、P. モノドン(P. monodon)、P. バネメル(P. vannemel)、P. エンシス(P. ensis)、S. メラント(S. melantho)、N. ノルベギオウス(N. norvegious)、冷水エビを含むがこれらに限定されないエビ(shrimp);ワタリガニ、ルーク、ストーン、キング、クイーン、スノウ、ブラウン、イチョウガニ(dungeness)、北米産イチョウガニ(Jonah)、マングローブ、ソフトシェルクラブを含むがこれらに限定されないカニ;シャコ、クリール、ランゴスチノ(langostino);ブルー、マロン、レッドクラウ、レッドスワンプ、ソフトシェル、ホワイトを含むがこれらに限定されないイセエビ/ザリガニ(crayfish/crawfish)のような甲殻類;環形動物;ワニおよびカメのようなは虫類、およびカエルを含む両生類を含むがこれらに限定されない脊索動物;ならびにウニを含むがこれらに限定されない棘皮動物が含まれる。 トランスジェニック動物を作製するために様々な方法が既知である。一つの方法において、前核段階での胚(「一細胞胚」)を雌性動物から採取して、胚に導入遺伝子をマイクロインジェクションする、この場合、導入遺伝子は得られた成熟動物の胚細胞と体細胞の染色体に組み込まれる。もう一つの方法において、胚性幹細胞を単離して、導入遺伝子を電気穿孔、プラスミドトランスフェクション、またはマイクロインジェクションによって幹細胞に組み込み、次に幹細胞を胚に再度導入して、そこで胚は定着して生殖系列に寄与する。哺乳類種にポリヌクレオチドをマイクロインジェクションする方法は、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,873,191号に記載されている。さらにもう一つの方法において、胚細胞を、導入遺伝子を含むレトロウイルスに感染させて、それによって胚の生殖細胞は導入遺伝子をその染色体に組み込まれる。 トランスジェニックにすべき動物が鳥類である場合、鳥類の受精卵は一般的に卵管において最初の24時間のあいだに細胞分裂を行い、したがって前核に近づくことができないために、受精卵の前核へのマイクロインジェクションは難しい。このように、トランスジェニック鳥種を作製するためにはレトロウイルス感染法が好ましい(参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,162,215号を参照のこと)。しかし、鳥類の種にマイクロインジェクションを行う場合、先に産んだ卵の産卵後約2.5時間で、屠殺した雌鶏から胚を得ることができ、導入遺伝子を胚盤の細胞質にマイクロインジェクションして、胚を成熟するまで宿主の殻の中で培養する(Loveら、Biotechnology 12、1994)。トランスジェニックにすべき動物がウシまたはブタである場合、卵が不透明であり、それによって従来の微分干渉位相差顕微鏡によって核を同定することが難しいためにマイクロインジェクションを行うことができない。この問題を克服するために、より見やすくするために卵を最初に遠心して前核を分離することができる。 本発明のヒト以外のトランスジェニック動物は、ウシ、ブタ、魚、ヒツジ、トリ、または他の動物となりうる。導入遺伝子を様々な発達段階の胚標的細胞に導入して、胚標的細胞の発達段階に応じて異なる方法を用いる。接合体は、マイクロインジェクションの最善の標的である。遺伝子移入のための標的として接合体を用いることは、初回分裂前に、注入したDNAを宿主遺伝子に組み込むことができるという点において大きい長所を有する(Brinsterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438〜4442、1985)。その結果、ヒト以外のトランスジェニック動物の全ての細胞が導入遺伝子を組み込まれ、このように、生殖細胞の50%が導入遺伝子を有するために、創始動物の子孫への導入遺伝子の効率よい伝幡に寄与する。 トランスジェニック動物は、そのそれぞれが生殖に用いられる細胞内で外因性遺伝子材料を含む、二つのキメラ動物を交配することによって作製することができる。得られた子孫の25%が、外因性遺伝子材料に関してホモ接合であるトランスジェニック動物であり、得られた動物の50%がヘテロ接合体、かつ残りの25%が外因性遺伝子材料を欠損し、野生型表現型を有するであろう。 マイクロインジェクション法において、導入遺伝子を消化して、如何なるベクターDNAも含まないように、例えばゲル電気泳動によって精製する。導入遺伝子は、機能的に会合したプロモーターを含むことができ、これは、転写に関係する細胞蛋白質と相互作用して、構成的発現、組織特異的発現、発達段階特異的発現等を提供する。そのようなプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、モロニー白血病ウイルス(MLV)、およびヘルペスウイルスに由来するプロモーターと共に、メタロチオネイン、骨格アクチン、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPCK)、ホスホグリセレート(PGK)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、およびチミジンキナーゼ(TK)をコードする遺伝子由来のプロモーターが含まれる。ラウス肉腫ウイルスLTRのようなウイルスの長末端反復(LTRs)も同様に用いることができる。トランスジェニックにすべき動物がトリである場合、好ましいプロモーターには、ニワトリβ-グロビン遺伝子、ニワトリライソザイム遺伝子、およびトリ白血病ウイルスのプロモーターが含まれる。胚性幹細胞のプラスミドトランスフェクションにおいて有用な構築物は、例えば、転写を刺激するためのエンハンサーエレメント、スプライスアクセプター、終了およびポリアデニル化シグナル、翻訳を行うためのリボソーム結合部位等を含むさらなる調節エレメントを用いるであろう。 レトロウイルス感染法において、発達段階のヒト以外の胚をインビトロで胚盤胞段階まで培養することができる。この期間に、割球をレトロウイルス感染の標的とすることができる(Jaenich、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:1260〜1264、1976)。透明帯を除去する酵素処理を行うと、割球の効率的な感染が得られる(Hoganら、「Manipulating Mouse Embryo」、コールドスプリングハーバー出版、1986)。導入遺伝子を導入するために用いられるウイルスベクター系は典型的に、導入遺伝子を有する複製欠損レトロウイルスである(Jahnerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6927〜6931、1985;van der Puttenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6148〜6152、1985)。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することによって容易にかつ効率よく得られる(van der Puttenら、上記、1985;Stewartら、EMBO J. 6:383〜388、1987)。または感染はより後期の段階で行うことができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞を割腔に注入することができる(Jahnerら、Nature 298:623〜628、1982)。組み込みはヒト以外のトランスジェニック動物において形成される細胞のサブセットに限って起こることから、創始動物はほとんどが導入遺伝子に関してモザイクとなりうる。さらに、創始動物は、ゲノムの異なる位置で導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入を含みえて、これは一般的に子孫において分離されるであろう。さらに、同様に、妊娠中期胚の子宮内レトロウイルス感染によって、効率は低いものの、導入遺伝子を生殖系列に導入することも可能である(Jahnerら、上記、1982)。 胚性幹細胞(ES)もまた、導入遺伝子を導入するための標的となりうる。ES細胞は、インビトロで培養して胚に融合させた着床前胚から得られる(Evansら、Nature 292:154〜156、1981;Bradleyら、Nature 309:255〜258、1984;Gosslerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:9065〜9069、1986;Robertsonら、Nature 322:445〜448、1986)。導入遺伝子はDNAトランスフェクションまたはレトロウイルス媒介形質導入によってES細胞に効率よく導入することができる。そのような形質転換したES細胞は、その後ヒト以外の動物からの胚盤胞と合わせることができる。その後ES細胞は胚に定着して、得られたキメラ動物の生殖系列に関与する(Jaenisch、Science 240:1468〜1474、1988)。 本明細書に開示するように、ミオスタチンは、少なくとも部分的にSmadシグナル伝達経路を通してその活性を発揮することができ、ミオスタチン発現は様々な病態に関連しうる。そのため、本発明は、肥満およびII型糖尿病のような代謝疾患を含むミオスタチンに関連した様々な病態を治療するための新規標的を提供する。したがって、本発明は、被験者における筋細胞または脂肪組織細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することによって、病態が少なくとも部分的に、筋または脂肪組織の異常な量の発達または代謝活性を特徴とする、被験者における病態の重症度を改善する方法を提供する。 ミオスタチンは、筋増殖の負の調節物質として機能する(McPherronら、上記、1997)。ミオスタチンノックアウトマウスは、野生型の同腹子より体重が約25%〜30%多く、調べたマウスの体重のこのような増加は、もっぱら骨格筋組織重量の劇的な増加が原因であった。ミオスタチンを欠損するマウスでは、骨格筋の重量は、野生型同腹子の対応する筋の約2〜3倍であった。ホモ接合ノックアウトマウスにおけるこの筋重量の増加は、過形成と肥大の複合が原因であった。 本明細書に開示するように、ヘテロ接合ミオスタチンノックアウトマウスも同様に、骨格筋重量の増加を示したが、ホモ接合変異体マウスにおいて認められた場合より程度は低く、ミオスタチンがインビボで用量依存的に作用することを示している(実施例1を参照のこと)。さらに、動物においてミオスタチンが過剰発現されると、筋の増殖に関して反対の作用を示した。例えば、ミオスタチン発現腫瘍を有するヌードマウスは、筋および脂肪重量の劇的な減少を特徴とする消耗性症候群を発症した(実施例8を参照)。ヌードマウスにおけるこの症候群は、癌またはAIDSのような慢性疾患を有する患者に起こるカヘキシア状態に類似した。 ミオスタチン免疫反応材料の血清レベルは、筋の消耗に関して患者の状態と相関している(Gonzales-Kadavidら、Proc. Natl. Acad. Med. USA 95:14938〜14943、1998、参照として本明細書に組み入れられる)。このように、全身体重の減少によって測定したカヘキシアの兆候を示すAIDS患者は、AIDSを有しない健常な男性、または体重が減少していないAIDS患者のいずれかと比較してミオスタチン免疫反応材料の血清レベルがわずかに増加していた。しかし、血清試料において検出されたミオスタチン免疫反応材料が真正の処理ミオスタチンに関して予想されるSDSゲル上での移動度を示さなかったことから、これらの結果の解釈は複雑である。 本明細書において開示するように、ミオスタチンは、筋重量に影響を及ぼすのみならず、生物の全体的な代謝に影響を及ぼす。例えば、ミオスタチンは脂肪組織において発現され、ミオスタチン欠損マウスは、動物が年をとるにつれて、脂肪蓄積の劇的な減少を示す(実施例IIおよびIIIを参照のこと)。ミオスタチン作用のメカニズムは本明細書において提唱されないが、ミオスタチンの作用は、脂肪組織に及ぼすミオスタチンの直接作用となりうる、または骨格筋組織に及ぼすミオスタチン活性の欠如によって引き起こされる間接的な作用となりうる。メカニズムによらず、ミオスタチン活性の減少に反応して起こる筋組織に及ぼす全体的な同化作用は、脂肪の蓄積が5倍抑制された肥満マウス系統(野鼠致死黄色(Ay)マウス)にミオスタチン変異を導入することによって証明されるように、生物の全体的な代謝を変化させて、脂肪の形でのエネルギーの保存に影響を及ぼす(実施例5を参照のこと)。異常なグルコース代謝も同様に、ミオスタチン変異を含む野鼠マウスにおいて部分的に抑制された。これらの結果は、ミオスタチンを阻害する方法が、肥満およびII型糖尿病のような代謝疾患を治療または予防するために用いることができることを証明している。 本発明の方法は、例えば、癌のような慢性疾患(Nortonら、Crit. Rev. Oncol. Hematol. 7:289〜327、1987)に関連したカヘキシアと共に、II型糖尿病、肥満、および他の代謝障害のような病態を含む様々な病態の重症度を改善するために有用である。本明細書において用いられるように、「病態」という用語は、少なくとも部分的に、筋または脂肪組織の異常な量の発達または代謝活性を特徴とする障害を意味する。そのような病態には、例えば、肥満;肥満に関連した状態、例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、および心筋梗塞;筋ジストロフィー、神経筋疾患、カヘキシア、および食欲不振;ならびに一般的に肥満に関連する、しかし必ずしもその必要はないII型糖尿病のような代謝障害が含まれ、これらは本発明の方法を用いる治療に対して特に感受性がある。 本明細書において用いられるように、筋または脂肪組織の発達または代謝活性の量に関連して用いられる「異常」という用語は、熟練した医師または他の当業者が正常または理想的であると認識する量の発達または代謝活性と比較して相対的な意味で用いられる。そのような正常または理想的な値は、医師にとって既知であり、対応する集団における健常者において一般的に認められる、または望ましい平均値に基づく。例えば、医師は、肥満が特定の身長および体型の人に関して「理想的な」体重範囲より約20%上である体重に関連していることを承知しているであろう。しかし、医師は、ボディビルダーが、それ以外は対応する集団における同じ身長および体型の人に関して予想される体重より単に20%またはそれ以上である体重を有するというだけで必ずしも肥満ではないことを認識するであろう。同様に、当業者は、筋活性が異常に減少したように思われる症状を示す患者が例えば、患者に様々な筋力テストを行って、対応する集団における平均的な健常者について予想される結果と比較することによって、異常な筋発達を有すると同定されうることを承知しているであろう。 本発明の方法は、少なくとも部分的に、病態の病因に関連した筋または脂肪組織細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節することによって、筋または脂肪組織における異常な量の発達または代謝活性を特徴とする病態の重症度を改善することができる。本明細書において用いられるように、病態の重症度に関連して用いられる「改善する」という用語は、病態に関連した兆候または症状が弱められることを意味する。モニターすべき兆候または症状は、特定の病態の特徴であり、兆候および疾患をモニターする方法と同様に当業者に周知である。例えば、病態がII型糖尿病である場合、当業者は被験者におけるグルコースレベル、グルコース排泄速度等をモニターすることができる。病態が肥満またはカヘキシアである場合、医師は単に被験者の体重をモニターするだけでよい。 被験者に投与すべき作用物質は、標的細胞と作用物質との接触、適当であれば、細胞への流入を促進する条件で投与される。ポリヌクレオチド作用物質の細胞への流入は、例えば、細胞に感染しうるウイルスベクターにポリヌクレオチドを組み込むことによって促進されうる。細胞タイプ特異的ウイルスベクターが利用できない場合、標的細胞上に発現されたリガンドに特異的な受容体(またはリガンド)を発現するようにベクターを改変することができ、またはそのようなリガンド(または受容体)を含むように改変することができるリポソームに封入することができる。ペプチド作用物質は、ペプチドの細胞への転位を促進することができるヒト免疫不全ウイルスTAT蛋白質形質導入ドメインのような蛋白質形質導入ドメインを含むようにペプチドを操作することを含む、様々な方法によって細胞に導入することができる(Schwarzeら、上記1999;Derossiら、上記、1996を参照のこと)。 標的細胞における作用物質の存在は、例えば、作用物質に検出可能な標識を機能的に結合することによって、作用物質、特にペプチド作用物質に特異的な抗体を用いることによって、または作用物質による下流の作用、例えば細胞におけるSmadポリペプチドの燐酸化の減少を検出することによって、直接同定することができる。作用物質は、参照として本明細書に組み入れられる、当技術分野で周知の方法(Hermanson、「Bioconjugate Techniques」、アカデミック出版、1996)を用いて検出できるように標識することができる;同様に、HarlowとLane、上記、1988も参照のこと。例えば、ペプチドまたはポリヌクレオチド作用物質は、放射標識、アルカリホスファターゼのような酵素、ビオチン、蛍光色素等を含む様々な検出可能部分によって標識することができる。作用物質がキットに含まれる場合、作用物質を標識するための試薬も同様にキットに含めることができ、または試薬を個別に販売元から購入することができる。 本発明の方法において有用な作用物質は、病態の部位に投与することができ、または標的細胞にポリヌクレオチドまたはペプチドを提供する如何なる方法によって投与することもできる。本明細書において用いられるように、「標識細胞」という用語は、作用物質に接触させる筋細胞または脂肪細胞を意味する。生きている被験者に投与する場合、作用物質は一般的に、被験者への投与に適した薬学的組成物として調製される。このように、本発明は、細胞におけるミオスタチンシグナル伝達を調節するために有用な作用物質を薬学的に許容される担体において含む薬学的組成物を提供する。そのため、作用物質は、本明細書に定義される病態を有する被験者を治療するための薬剤として有用である。 薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、例えば、水もしくは生理食塩液のような水溶液、またはグリコール、グリセロール、オリーブ油のような油、または注射可能有機エステルのような他の溶媒または媒体が含まれる。薬学的に許容される担体は、例えば、結合体を安定化させる、または結合体の吸収を増加させるように作用する生理的に許容される化合物を含みうる。そのような生理的に許容される化合物には、例えばグルコース、蔗糖、またはデキストランのような糖質、アスコルビン酸またはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート化剤、低分子量蛋白質、または他の安定化剤もしくは賦形剤が含まれる。当業者は、生理的に許容される化合物を含む薬学的に許容される担体の選択が、例えば治療物質の物理化学的特徴、ならびに例えば、経口または静脈内のような非経口となりうる組成物の投与経路、および注入、挿管、またはその他の当技術分野で既知のそのような方法に依存することを承知しているであろう。薬学的組成物はまた、診断試薬、栄養物質、毒素、または例えば癌化学療法剤のような治療物質のような二次試薬を含みうる。 作用物質は、水中油型乳剤、微小乳剤、ミセル、混合ミセル、リポソーム、ミクロスフェアまたは他のポリマーマトリクスのような封入材料に組み込まれることができる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Gregoriadis、「Liposome Technology」、第1巻(CRC出版、ボカレートン、フロリダ州、1984);Fraleyら、Trends Biochem. Sci. 6:77(1981)を参照のこと)。例えば、燐脂質または他の脂質からなるリポソームは、作製および投与が比較的単純である非毒性の生理的に許容される代謝可能な担体である。「ステルス」リポソーム(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,882,679号;第5,395,619号;および第5,225,212号を参照のこと)は、本発明の方法を実践するために有用な薬学的組成物を調製するために特に有用なそのような封入材料の例であり、他の「マスクされた」リポソームも同様に用いることができ、そのようなリポソームは治療物質が循環中に残っている時間を延長させる。例えば、陽イオンリポソームも同様に特異的受容体またはリガンドによって改変することができる(Morishitaら、J. Clin. Invest. 91:2580〜2585(1993)、参照として本明細書に組み入れられる)。さらに、ポリヌクレオチド作用物質は例えば、アデノウイルス-ポリリジンDNA複合体を用いて細胞に導入することができる(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Michaelら、J. Biol. Chem. 268:6866〜6869(1993)を参照のこと)。 ミオスタチンシグナル伝達を変化させる作用物質を含む薬学的組成物の投与経路は、部分的にその分子の化学構造に依存するであろう。例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、経口投与すると消化管において分解され得るために特に有用ではない。しかし、ポリペプチドを化学的に修飾する、例えば内因性プロテアーゼによる分解をあまり受けないようにする、または消化管の中でより吸収可能にする方法は周知である(例えば、Blondelleら、上記、1995;EckerとCrook、上記、1995)。さらに、ペプチド作用物質は、D-アミノ酸を用いて調製することができ、またはペプチドドメインの構造を模倣する有機物質であるペプチド模倣体に基づく、またはビニル様(vinylogous)ペプトイドのようなペプトイドに基づく一つまたはそれ以上のドメインを含みうる。 本明細書において開示される薬学的組成物は、例えば、経口、もしくは静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内、のような非経口投与を含む様々な経路によって、または例えば、皮膚パッチもしくは経皮イオントフォレーシスを用いてそれぞれ皮膚を通しての受動吸収または吸収促進によって個体に投与することができる。さらに、薬学的組成物は、注入、挿管、経口、または局所投与によって投与することができ、後者は、例えば、軟膏を直接適用することによって受動的に、または例えば組成物の一つの成分が適当な噴射剤である点鼻スプレーまたは吸入剤を用いて能動的となりうる。薬学的組成物はまた、病態の部位に、例えば静脈内、または腫瘍に血液を供給する血管への動脈内に投与することができる。 本発明の方法の実践において投与される作用物質の全量は、ボーラスとして、または比較的短時間の注入のいずれかとして単回投与として被験者に投与することができ、または多数回投与を長期間にわたって行う分割治療プロトコールを用いて投与することができる。当業者は、被験者における病態を治療するための薬学的組成物の量は、被験者の年齢および全身健康状態と共に投与経路および投与すべき治療回数を含む多くの要因に依存することを知っているであろう。これらの要因を考慮して、当業者は特定の用量を必要に応じて調節するであろう。一般的に、薬学的組成物の調製および投与経路および投与回数は、フェーズIおよびフェーズII臨床試験を用いて最初に決定される。 薬学的組成物は、錠剤、または溶液もしくは懸濁液のような経口投与のために調製することができる;または腸内、または非経口適用に適した有機もしくは無機担体または賦形剤との混合物を含みうる、例えば錠剤、ペレット、カプセル剤、坐剤、溶液、乳液、懸濁液、または用途に適した他の剤形のための通常の非毒性の薬学的に許容される担体と混合することができる。担体は、上記の他に、グルコース、乳糖、マンノース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイドシリカ、ジャガイモデンプン、尿素、中等度の長さのトリグリセリド、デキストラン、および調製物を製造するために用いるのに適した他の担体を、固体、半固体、または液体型で含みうる。さらに補助剤、安定化剤、濃化剤、または着色剤および香料、例えばトリウロースのような安定化乾燥剤を用いることができる(例えば、米国特許第5,314,695号を参照のこと)。 本発明はまた、被験者における筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法を提供する。本明細書に開示するように、Act RIIAおよびAct RIIBのようなGDF受容体は、筋組織および脂肪組織形成に関係しているミオスタチンのようなGDFの作用を媒介することに関係している。このように、一つの態様において、筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法には、アクチビン受容体、例えばAct RIIAまたはAct RIIBのようなGDF受容体からのシグナル伝達に影響を及ぼすことが含まれる。そのような方法は、組織の細胞を、ドミナントネガティブ活性、構成的活性等を有する変異体GDF受容体に接触させること、または細胞にそれらを発現させることによって行うことができる。 もう一つの態様において、生物における筋組織または脂肪組織の増殖を調節する方法は、ミオスタチンシグナル伝達に影響を及ぼす作用物質を生物に投与することによって行われる。好ましくは、作用物質は、そのいずれかがミオスタチンシグナルペプチドを含みうるミオスタチンプロドメインまたは変異体プロミオスタチンポリペプチドである、またはそれらをコードする。本明細書において用いられるように、「増殖」という用語は、本発明の方法を行っていない対応する生物と比較して本発明の方法を行った生物における筋組織重量または脂肪組織重量について言及する場合に相対的な意味において用いられる。このように、本発明の方法が、ミオスタチンシグナル伝達が減少または阻害されるように行われる場合、ミオスタチンシグナル伝達がそのように影響を受けていない対応する生物の筋重量と比較して、生物における筋組織の増殖によって生物において筋重量が増加すると認識されるであろう。 本発明の方法は、生物の筋重量を増加させる、または脂肪含有量を減少させる、または双方にとって有用となりうる。例えば、そのような方法を食品源として有用である生物に行う場合、食品の蛋白質含有量は増加して、コレステロールレベルは減少し、食品の質が改善されうる。本発明の方法はまた、生物が環境においてあまり競合できないように、生物、例えば環境にとって有害が生物、における筋組織の増殖を減少させるためにも有用となりうる。このように、本発明の方法は、脊椎生物、例えば、哺乳類、鳥類、もしくは魚類を含む、ミオスタチンを発現する如何なる真核生物についても行うことができ、または無脊椎生物、例えば、軟体動物、棘皮動物、腹足類、もしくは頭状体となりうる。 作用物質は、本明細書に開示のように、ミオスタチンシグナル伝達を変化させる如何なる作用物質となりうる、かつ従来の如何なる方法で生物に投与することもできる。例えば、治療すべき生物が水槽で養殖される魚、エビ、ホタテガイ等である場合、作用物質は生物が維持される水に加えるか、または特に作用物質が水溶性ペプチドまたは有機低分子である場合には、その飼料に加えることができる。 本発明の方法において用いられる作用物質がペプチド作用物質、アンチセンス物質等をコードするポリヌクレオチドである場合、ポリヌクレオチドを含むヒト以外の生物の生殖細胞を選択して、作用物質を発現するトランスジェニック生物を作製することができる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドによってコードされる作用物質が、ある時点で望ましい期間発現されうるように、誘導型調節エレメントの制御下に置かれる。したがって、本発明は、ヒト以外のトランスジェニック生物と共に、これらの生物によって産生される食品を提供する。そのような食品は、筋組織における増加のために栄養的価値が増加している。ヒト以外のトランスジェニック動物は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、七面鳥、および魚を含む脊椎生物、ならびにエビ、ロブスター、カニ、ヤリイカ、カキ、およびアワビのような無脊椎生物を含む本明細書に開示の如何なる種ともなりうる。 TGF-βファミリーメンバーの調節および細胞表面受容体との特異的相互作用は解明されつつある。このように、TGF-βファミリーメンバーのプロドメインとTGF-βファミリーの別のメンバーの成熟領域との同時発現は、細胞内二量体形成に関連して、生物活性ホモダイマーの分泌が起こる(Grayら、Science 247:1328、1990)。例えば、BMP-4成熟領域と共にBMP-2プロドメインを用いることによって、成熟BMP-4の発現は劇的に改善された(Hammondsら、Mol. Endocrinol. 5:149、1991)。調べるファミリーメンバーのほとんどに関して、ホモダイマー種は生物活性であるが、インヒビン(Lingら、Nature 321:779、1986)およびTGF-β(Cheifetzら、Cell 48:409、1987)のような他のファミリーメンバーの場合、ヘテロダイマーも同様に検出されており、それぞれのホモダイマーとは異なる生物学的特性を有するように思われる。 受容体-リガンド相互作用研究によって、細胞が外部刺激に対してどのように反応するかに関して膨大な量の情報が明らかになり、エリスロポエチン、コロニー刺激因子、およびPDGFのような治療的に重要な化合物が開発された。このように、TGF-βファミリーメンバーの作用を媒介する受容体を同定するために継続的な努力が行われている。本明細書に開示のように、ミオスタチンは、アクチビンII型受容体と特異的に相互作用する。この相互作用の同定は、農業およびヒト治療目的にとって、例えば肥満、II型糖尿病、およびカヘキシアのような様々な病態を治療するために有用な拮抗剤および作用剤を同定するための標的を提供する。この特異的相互作用の同定はまた、他のミオスタチン受容体のみならず、他の増殖分化因子の特異的受容体を同定する手段を提供する。したがって、本発明は、GDFまたは複数のGDFの組み合わせ、例えばミオスタチン、GDF-11もしくはその双方と特異的に相互作用するGDF受容体を提供する。 本発明のGDF受容体の例は、本明細書において、ミオスタチンおよびGDF-11と特異的に相互作用するミオスタチン受容体、特にアクチビンII型受容体である。しかし、ミオスタチンと特異的に相互作用するがGDF-11とは相互作用しないミオスタチン受容体も、GDF-11と特異的に相互作用するがミオスタチンとは相互作用しないGDF-11受容体等と同様に本発明に含まれる。考察を簡便にするために、本発明の受容体は、本明細書において一般的に「GDF受容体」と呼ばれ、その例は、少なくともミオスタチンと特異的に相互作用する受容体であるミオスタチン受容体である。そのため、ミオスタチン受容体とミオスタチンとの特異的に相互作用に関して言及するが、本開示は、GDF-11と少なくとも特異的に相互作用するGDF-11受容体を含む如何なるGDF受容体もより広い意味で含む。 GDF受容体ポリペプチドを発現する組換え型細胞株もまた、受容体に特異的に結合する抗体、受容体をコードする実質的に精製されたポリヌクレオチド、および実質的に精製されたGDF受容体ポリペプチドと同様に提供される。例えば、本明細書に開示するように、ミオスタチンと細胞のミオスタチン受容体との特異的相互作用を変化させうるミオスタチン受容体のようなGDF受容体の可溶性の細胞外ドメイン;細胞におけるGDFシグナル伝達を誘導、刺激、またはそうでなければ維持することができるGDF受容体の構成的に活性な細胞内キナーゼドメイン;またはミオスタチンもしくは他のGDFシグナル伝達の調節能を有するGDF受容体の他の切断部分を含む、GDF受容体のペプチド部分も同様に提供される。 本発明はまた、ヌクレオチドプローブまたは抗体プローブを用いて発現ライブラリとなりうるゲノムまたはcDNAライブラリをスクリーニングする方法;例えばミオスタチンまたはその機能的ペプチド部分のようなGDFを用いて、それらに反応性であり、したがって受容体を発現する細胞をスクリーニングする方法;例えば、GDFペプチドを一つのハイブリッド成分として、かつGDFに対する受容体を発現する細胞から調製したcDNAライブラリから発現されたペプチドを第二のハイブリッドの成分として用いる上記のようなツーハイブリッドアッセイ法等を含む、GDF受容体ポリペプチドを同定する方法も提供する。 上記のように、GDF受容体、例えば、Act RIIBのようなミオスタチン受容体と特異的に相互作用する作用物質は、そのような作用物質をスクリーニングするために受容体を用いて同定することができる。逆に、Act RIIB受容体のようにミオスタチン受容体との特異的相互作用能を有すると同定された作用物質を用いて、さらなるミオスタチン受容体または他のGDF受容体をスクリーニングすることができる。そのような方法は、作用物質のような成分(またはミオスタチンもしくは他のGDF)と、切断型膜結合受容体または可溶性受容体となりうるGDF受容体を発現する細胞とを、作用物質(またはGDF)と受容体とを特異的に相互作用させるために十分な条件でインキュベートすること、受容体に結合した作用物質(またはGDF)を測定すること、および受容体を単離することを含みうる。上記のような分子モデリング法もまた、GDF受容体またはその機能的ペプチド部分を同定するスクリーニング方法として有用となりうる。 動物の体細胞および生殖細胞に含まれる導入遺伝子によって表現型が付与される、GDF受容体の発現を特徴とする表現型を有するヒト以外のトランスジェニック動物も同様に提供される。導入遺伝子は、GDF受容体、例えばミオスタチン受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。そのようなトランスジェニック動物を作製する方法は、本明細書に開示され、またはそうでなければ当技術分野で既知である。 本発明は、GDF受容体の全てまたはペプチド部分をコードする実質的に精製されたポリヌクレオチドを提供する。GDF受容体の例は、本明細書においてアクチビンII型受容体であるが、アクチビンII型受容体をコードするポリヌクレオチドは既に記述されている(米国特許第5,885,794号)。このように、そのようなアクチビンII型受容体は本発明に含まれないと認識すべきである(Massague、上記、1998;Heldinら、上記、1997)。同様に、Act RIBを含むアクチビンI型受容体;TGF-β RIおよびTGF-β RIIを含むTGF-β受容体;ならびにBMP RIA、BMP RIB、およびBMP RIIを含むBMP受容体が記述され、当技術分野において周知であり(Massague、上記、1998;Heldinら、上記、1997)、したがって、本発明のGDF受容体に含まれない。 本発明のポリヌクレオチドは、ミオスタチン受容体活性、例えば、ミオスタチン結合活性を有するポリペプチドをコードしうる、または変異体ミオスタチン受容体、例えば、変異体がドミナントネガティブミオスタチン受容体として作用しうる、キナーゼドメインに変異を有する変異体ミオスタチン受容体をコードしうる(上記参照)。このように、本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在する、合成、または意図的に操作されたポリヌクレオチドとなりうる。例えば、mRNA配列の一部を、交互のRNAスプライシングパターン、またはRNA転写のために交互のプロモーターを用いることによって変化させることができる。もう一つの例として、ポリヌクレオチドに部位特異的変異誘発を行うことができる。ポリヌクレオチドはまたアンチセンスヌクレオチド配列となりうる。本発明のGDF受容体ポリヌクレオチドには、遺伝子コードの縮重である配列が含まれる。天然のアミノ酸は20個存在し、そのほとんどが1個を超えるコドンによって示される。したがって、ポリヌクレオチドによってコードされるGDF受容体ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に不変である限り、全ての縮重ヌクレオチド配列が本発明に含まれる。同様に、ミオスタチン受容体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も含まれる。 本発明のGDF受容体をコードするポリヌクレオチドのオリゴヌクレオチド部分も同様に、本発明に含まれる。そのようなオリゴヌクレオチドは、一般的に、オリゴヌクレオチドが受容体をコードするポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするために十分な長さである少なくとも約15塩基、および長さが少なくとも約18ヌクレオチドまたは21ヌクレオチドもしくはそれ以上となりうる。本明細書において用いられるように、「選択的ハイブリダイゼーション」または「選択的にハイブリダイズする」という用語は、中等度にストリンジェント、または関連するヌクレオチド配列を無関係なヌクレオチド配列と区別することができる高ストリンジェントな生理条件でのハイブリダイゼーションを意味する。 核酸ハイブリダイゼーション反応において、特定のレベルのストリンジェンシーを得るために用いられる条件は、ハイブリダイズする核酸の特性に応じて変化するであろう。例えば、長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列組成(例えば、相対的GC:AT含有量)、および核酸のタイプ、すなわちオリゴヌクレオチドまたは標的核酸配列がDNAまたはRNAであるか否かを、ハイブリダイゼーション条件を選択するために考慮することができる。さらなる検討は、核酸の一つが例えばフィルター上に固定されているか否かである。適当なストリンジェンシー条件を選択する方法は、経験的に決定するか、または様々な公式を用いて推定することができ、当技術分野で周知である(例えば、Sambrookら、上記、1989を参照のこと)。 進行的により高いストリンジェンシー条件の例は以下の通りである:ほぼ室温で2×SSC/0.1%SDS(ハイブリダイゼーション条件);ほぼ室温で0.2×SSC/0.1%SDS(低ストリンジェンシー条件);約42℃で0.2×SSC/0.1%(中等度のストリンジェンシー条件);および約68℃で0.1×SSC(高ストリンジェンシー条件)。洗浄は、これらの条件の一つのみ、例えば高ストリンジェンシー条件を用いて行うことができ、またはそれぞれの条件を例えば、記載の段階の一部または全てを上記に記載した順序で、それぞれ10〜15分間繰り返すことができる。 本発明のGDF受容体コードポリヌクレオチドは、いくつかの方法のいずれにによっても得ることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、当技術分野で周知であるように、ハイブリダイゼーションまたはコンピューターに基づく技術を用いて単離することができる。これらの方法には、以下が含まれるがこれらに限定されない:1)相同なヌクレオチド配列を検出するためにゲノムまたはcDNAライブラリとプローブとのハイブリダイゼーション;2)共有する構造特徴を有するクローニングしたDNA断片を検出するために発現ライブラリの抗体スクリーニング;3)関係するDNA配列とアニーリングすることができるプライマーを用いるゲノムDNAまたはcDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR);4)類似の配列に関する配列データベースのコンピューター検索(上記を参照);5)サブトラクトDNAライブラリの示差スクリーニング;および6)例えば、ハイブリッドの一つに成熟GDFペプチドを用いるツーハイブリッドアッセイ法。 アクチビン受容体がミオスタチンと特異的に相互作用するという本発明の開示を考慮すると、アクチビン受容体をコードする配列、例えば、ミオスタチンに結合する細胞外ドメインをコードする配列に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを設計することができ、これを用いて、ミオスタチンに反応する筋細胞または脂肪細胞のような細胞から調製したライブラリをスクリーニングすることができ、このようにミオスタチン受容体をコードするポリヌクレオチドの同定が容易になる。選択したクローンは例えば、発現ベクターにインサートをサブクローニングして、クローニングした配列を発現させた後、発現されたポリペプチドをミオスタチンを用いてスクリーニングすることによってさらにスクリーニングすることができる。 本発明のポリヌクレオチド、例えば、ミオスタチン受容体をコードするポリヌクレオチドは、哺乳類、鳥類、もしくは魚類種を含む脊椎動物種または無脊椎動物種に由来しうる。核酸ハイブリダイゼーションに依存するスクリーニング技法を用いれば、適当なプローブが利用できる限り、如何なる生物からの如何なる遺伝子配列の単離も可能である。調べる蛋白質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学合成することができる。これには、アミノ酸配列の短いオリゴペプチド枝が既知である必要がある。受容体をコードするポリヌクレオチド配列は、遺伝子コードの縮重を考慮に入れて、遺伝子コードから推定することができる。このように、配列が縮重している場合には、混合したさらなる反応を行うことができる。これには、変性二本鎖DNAの異種混合物が含まれる。そのようなスクリーニングに関して、ハイブリダイゼーションは、好ましくは一本鎖DNAまたは変性二本鎖DNAのいずれかについて行われる。ハイブリダイゼーションは、関係するポリペプチドに関連して存在するmRNA配列の量が極めて少ない起源に由来するcDNAの検出において特に有用である。このように、非特異的結合を回避することをねらいとしストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いることによって、オートラジオグラフィーによる可視化を用いて、混合物において標的DNAと、標的核酸の完全な相補体であるオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションによって特異的cDNAクローンを同定することができる(Wallaceら、Nucl. Acids Res. 9:879、1981、参照として本明細書に組み入れられる)。または、サブトラクティブライブラリを用いて、それによって非特異的cDNAクローンを除去することができる。 所望のポリペプチドの完全なアミノ酸配列がわかっていない場合、DNA合成の直接合成は可能ではなく、選択される方法はcDNA配列の合成である。関係するcDNA配列を単離する標準的な技法は、ライブラリが高レベル遺伝子発現を有するドナー細胞に豊富に存在するmRNAの逆転写に由来する、プラスミドまたはファージにおいて調製したcDNAライブラリの形成である。ポリメラーゼ連鎖反応技術と組み合わせて用いる場合、まれな発現産物でさえクローニングすることができる。ポリペプチドのアミノ酸配列の有意な部分がわかっている場合、標的cDNAに存在すると思われる配列を複製する標識一本鎖もしくは二本鎖DNAまたはRNAプローブ配列の産生を、一本鎖型に変性されているcDNAのクローニングしたコピー上で行われるハイブリダイゼーション技法に用いることができる(Jayら、Nucl. Acid Res. 11:2325、1983、参照として本明細書に組み入れられる)。 ラムダgt11ライブラリのようなcDNA発現ライブラリは、GDF受容体に特異的な抗体、例えば抗Act RIIB抗体を用いてGDF受容体ペプチドに関してスクリーニングすることができる。抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体となりえて、これを用いてGDF受容体cDNAの存在を示す発現産物を検出することができる。そのような発現ライブラリも同様に、ミオスタチン受容体のミオスタチン結合ドメインの少なくとも一部をコードするクローンを同定するために、GDFペプチド、例えばミオスタチン、またはその機能的ペプチド部分によってスクリーニングすることができる。 変異体GDF受容体および変異体GDF受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも同様に本発明に含まれる。GDF受容体をコードするポリヌクレオチドにおける変化は、点突然変異、ナンセンス(STOP)変異、ミスセンス変異、スプライス部位変異またはフレームシフトのような遺伝子内変異となりえて、ヘテロ接合またはホモ接合欠失となりうる、および天然に存在する変異となりうる、または例えば組換えDNA方法を用いて操作することができる。そのような変化は、ヌクレオチド配列解析、サザンブロット解析、多重PCRもしくは配列タグ部位(STS)解析のようなPCRに基づく解析、またはインサイチューハイブリダイゼーション解析を含むがこれらに限定されない当業者に既知の標準的な方法を用いて検出することができる。GDF受容体ポリペプチドは、標準的なSDS-PAGE、免疫沈降解析、ウェスタンブロット解析等によって解析することができる。変異体GDF受容体の例は、その同源のGDFに対する特異的結合能を有しうるが、キナーゼドメインを欠損する可溶性細胞外ドメイン;構成的キナーゼ活性を示すことができる細胞内GDF受容体キナーゼドメイン含む切断型GDF受容体;と共に受容体のキナーゼ活性または受容体のリガンド結合能を破壊する点突然変異を含むGDF受容体等である。そのようなGDF受容体変異体は、GDFシグナル伝達を調節するために有用であり、したがって、本発明の様々な方法を実践するために有用である。 GDF受容体をコードするポリヌクレオチドは、適した宿主細胞にポリヌクレオチドを導入することによって、インビトロで発現することができる。「宿主細胞」は、特定のベクターを増殖させることができる、および適当であれば、ベクターに含まれるポリヌクレオチドが発現されうる如何なる細胞となりうる。「宿主細胞」という用語には、当初の宿主細胞の如何なる子孫も含まれる。宿主細胞の全ての子孫は、例えば複製の際に起こる変異のために親細胞とは同一でなくてもよいと理解される。しかし、「宿主細胞」という用語が用いられる場合、そのような子孫は含まれる。本発明の導入されたポリヌクレオチドを一過的または安定に含む宿主細胞を得る方法は当技術分野で周知である。 本発明のGDF受容体ポリヌクレオチドは、クローニングベクターまたは組換え発現ベクターとなりうるベクターに挿入することができる。「組換え発現ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド、特に本発明に関連してGDF受容体の全てまたはペプチド部分をコードするポリヌクレオチドの挿入または組み込みによって操作されている当技術分野において既知のプラスミド、ウイルス、または他の媒体を意味する。そのような発現ベクターは、宿主の挿入された遺伝子配列の効率よい転写を促進するプロモーター配列を含む。発現ベクターは、一般的に、複製開始点、プロモーターと共に、形質転換細胞の表現型選択を可能にする特異的遺伝子を含む。本発明において用いるのに適したベクターには、細菌における発現のためのT7に基づく発現ベクター(Rosenbergら、Gene 56:125、1987)、哺乳類細胞における発現のためのpMSXND発現ベクター(LeeとNathans、J. Biol. Chem. 263:3521、1988)、および昆虫細胞における発現のためのバキュロウイルス由来ベクターが含まれるがこれらに限定されない。DNAセグメントは、ベクターにおいて、調節エレメント、例えばT7プロモーター、メタロチオネインIプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または望ましければ特に組織特異的プロモーターもしくは誘導型プロモーターのような他のプロモーターとなりうるプロモーターに機能的に結合して存在しうる。 GDF受容体をコードするポリヌクレオチド配列は、原核細胞または真核細胞のいずれかにおいて発現させることができる。宿主には、微生物、酵母、昆虫および哺乳類生物が含まれうる。真核生物配列またはウイルス配列を有するポリヌクレオチドを原核生物において発現させる方法は、宿主において発現および複製することができる生物学的に機能的なウイルスおよびプラスミドDNAベクターと同様に、当技術分野で周知である。本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを構築する方法は、例えば、ポリヌクレオチドが特定の細胞タイプまたは特定の条件で選択的に発現されるか否かを含む、転写または翻訳制御シグナルを選択する場合に検討される要因と同様に周知である(例えば、Sambrookら、上記、1989を参照のこと)。 GDF受容体コード配列を発現させるために、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターによって形質転換した細菌のような微生物;組換え酵母発現ベクターによって形質転換した酵母細胞;カリフラワーモザイクウイルスもしくはタバコモザイクウイルスのような発現ベクターを感染させた、またはTiプラスミドのような組換えプラスミド発現ベクターによって形質転換した植物細胞系;バキュロウイルスのような組換えウイルス発現ベクターを感染させた昆虫細胞;レトロウイルス、アデノウイルス、またはワクシニアウイルスベクターのような組換えウイルス発現ベクターを感染させた動物細胞系;および安定に発現されるように遺伝子操作された形質転換動物細胞系を含むがこれらに限定されない、多様な宿主細胞/発現ベクター系を利用することができる。発現されたGDF受容体が、例えばグリコシル化によって翻訳後改変される場合、所望の改変を行うことができる宿主細胞/発現ベクター系、例えば、哺乳類宿主細胞/発現ベクター系を選択すると特に有利となりうる。 用いる宿主細胞/ベクター系に応じて、構成的および誘導型プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネータ等を含む多くの適した転写および翻訳エレメントを発現ベクターにおいて用いることができる(Bitterら、Meth. Enzymol. 153:516〜544、1987)。例えば、細菌系においてクローニングする場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)等のような誘導型プロモーターを用いることができる。哺乳類細胞系においてクローニングする場合、哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター、例えばヒトもしくはマウスメタロチオネインプロモーター、または哺乳類ウイルスに由来するプロモーター、例えばレトロウイルスの長末端反復、アデノウイルス後期プロモーター、もしくはワクシニアウイルス7.5 Kプロモーターを用いることができる。組換えDNAまたは合成技術によって産生されたプロモーターも同様に、挿入されたGDF受容体コード配列の転写を提供するために用いることができる。 酵母細胞において、構成的または誘導型プロモーターを含む多くのベクターを用いることができる(Ausubelら、上記、1987、第13章を参照のこと;Grantら、Meth. Enzymol. 153:516〜544、1987;Glover、「DNA Cloning」、第II巻(IRL出版、1986)、第3章を参照のこと;Bitter、Meth. Enzymol. 152:673〜684、1987;同様に、「The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces」、(Strathernら編、コールドスプリングハーバー研究所出版 1982、第IおよびII巻も参照のこと)。ADHもしくはLEU2のような構成的酵母プロモーターまたはGALのような誘導型プロモーターを用いることができる(Rothstein、「DNA Cloning」、第II巻(上記、1986)、第3章)。または、酵母の染色体に外来DNA配列の組み込みを促進するベクターを用いることができる。 真核生物系、特に哺乳類発現系では、発現された哺乳類蛋白質の適切な翻訳後改変を行うことができる。最初の転写物の適切なプロセシング、グリコシル化、燐酸化、および都合よくは、遺伝子産物の細胞質膜挿入のための細胞機構を有する真核細胞を、GDF受容体ポリペプチドまたはその機能的ペプチド部分を発現させるための宿主細胞として用いることができる。 発現を指示するために組換えウイルスまたはウイルスエレメントを利用する哺乳類細胞系を操作することができる。例えば、アデノウイルス発現ベクターを用いる場合、GDF受容体コード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三連リーダー配列にライゲーションすることができる。または、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを用いることができる(Mackettら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415〜7419、1982;Mackettら、J. Virol. 49:857〜864、1984;Panicaliら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927〜4931、1982)。染色体外エレメントとして複製することができるウシ乳頭腫ウイルスベクターは特に有用である(Sarverら、Mol. Cell Biol. 1:486、1981)。このDNAがマウス細胞に流入した後まもなく、プラスミドは細胞あたり約100〜200コピーに複製する。挿入されたcDNAの転写は、宿主細胞染色体へのプラスミドの組み込みを必要とせず、それによって高レベル発現が得られる。これらのベクターは、プラスミドに、例えばneo遺伝子のような選択マーカーを含めることによって安定な発現のために用いることができる。または、レトロウイルスゲノムは、宿主細胞にGDF受容体遺伝子を導入してその発現を指示することができるベクターとして用いるために改変することができる(ConeとMulligan、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349〜6353、1984)。高レベル発現はまた、メタロチオネインIIAプロモーターおよび熱ショックプロモーターを含むがこれらに限定されない誘導型プロモーターを用いても行うことができる。 組換え蛋白質を高い収率で長期間産生させるためには、安定な発現が好ましい。ウイルスの複製開始点を含む発現ベクターを用いる以外に、宿主細胞をプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネータ、およびポリアデニル化部位のような適当な発現制御エレメント、ならびに選択マーカーによって制御されるGDF受容体cDNAによって形質転換することができる。組換えプラスミドにおける選択マーカーは、選択に対する抵抗性を付与することができ、それによって細胞はプラスミドをその染色体に安定に組み込まれ、増殖してコロニーを形成することができ、これをクローニングして細胞株に増殖させることができる。例えば、外来DNAの導入後、操作された細胞を栄養に富む培地において1〜2日間増殖させた後、選択培地に切り替える。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223、1977)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaとSzybalski、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026、1982)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817、1980)遺伝子を含むがこれらに限定されない多くの選択系を用いることができ、これらはそれぞれ、tk-、hgprt-、またはaprt-細胞において用いることができる。同様に、抗代謝剤抵抗性を、メソトレキセートに対する抵抗性を付与するdhfr(Wiglerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567、1980;O'Hareら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527、1981);ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与するgpt(MulliganとBerg、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072、1981);アミドグリコシドG-418に対する抵抗性を付与するneo(Colberre-Garapinら、J. Mol. Biol. 150:1、1981);およびハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するhygro(Santerreら、Gene 30:147、1984)遺伝子に関して選択するための基礎として用いることができる。細胞にトリプトファンの代わりにインドールを用いさせるtrpB;細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを用いさせるhisD(Hartman and Mulligan、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047、1988);およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMO(McConlogue、Curr. Comm. Mol. Biol. (コールドスプリングハーバー研究所出版、1987))に対する抵抗性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)を含むさらなる選択遺伝子も同様に記載されている。 宿主が真核細胞である場合、リン酸カルシウム共沈殿物のようなDNAトランスフェクション法、マイクロインジェクション、電気穿孔、リポソームに封入されたプラスミドの挿入、またはウイルスベクターのような従来の機械的技法を用いることができる。真核細胞も同様に、本発明のGDF受容体をコードするDNA配列と、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子のような選択的表現型をコードする第二の外来DNA分子とによって同時形質転換することができる。もう一つの方法は、真核細胞を一過的に感染または形質転換して、蛋白質を発現させるために、シミアンウイルス40(SV40)、またはウシ乳頭腫ウイルスのような真核細胞ウイルスベクターを用いることである(Gluzman、Eukaryotic Viral Vectors(コールドスプリングハーバー研究所出版、1982))。 本発明はまた、その細胞がGDF受容体ポリペプチドを発現して、GDF受容体をコードするDNAを含む、安定な組換え型細胞株を提供する。適した細胞タイプには、NIH 3T3細胞(マウス)、C2C12細胞、L6細胞、およびP19細胞が含まれるがこれらに限定されない。C2C12細胞およびL6筋芽細胞は、培養において自然に分化して、特定の増殖条件によって筋管を形成する(YaffeとSaxel、Nature 270:725〜727、1977;Yaffe、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 61:477〜483、1968)。P19は胎児癌細胞株である。そのような細胞は、例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)の細胞株カタログに記載されている。これらの細胞は、周知の方法によって安定に形質転換することができる(例えば、Ausubelら、上記、1995、第9.5.1〜9.5.6章を参照のこと)。 GDF受容体は、本明細書に記載する誘導型または構成的調節エレメントを用いて本発明の組換えポリヌクレオチドから発現させることができる。望ましい蛋白質コード配列および機能的に結合したプロモーターを、直線型分子となりうる、または共有結合によって閉環した環状分子となりうる非複製DNA(またはRNA)分子のいずれかとしてレシピエント細胞に導入することができる。所望の分子の発現は、導入された配列の一過的な発現によって起こりうる、またはポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞染色体に組み込まれることによって、より永続的な発現を可能にすることによって、細胞において安定に維持することができる。したがって、細胞は、安定または一過的に形質転換した(トランスフェクトした)細胞となりうる。 用いることができるベクターの例は、宿主細胞染色体に所望の遺伝子配列を組み込まれることができるベクターである。その染色体に導入されたDNAを安定に組み込まれている細胞は、また、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする一つまたはそれ以上のマーカーを導入することによって選択することができる。一般的な酵母の栄養要求マーカーであるleu2、またはura3のようなマーカーは、宿主において栄養要求性を補うことができ;殺虫剤抵抗性、例えば抗生物質または銅等のような重金属イオンに対する抵抗性を付与することができる。選択マーカー遺伝子は、発現すべきDNA遺伝子配列に直接連結することができ、または同時トランスフェクションによって同じ細胞に導入することができる。 導入された配列は、レシピエント宿主において自律的に複製することができるプラスミドまたはウイルスベクターに組み込まれることができる。多様なベクターをこの目的のために用いることができる。特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択するために重要な要因には、ベクターを含むレシピエント細胞を認識してベクターを含まない細胞から選択することができる容易さ、特定の宿主細胞において望ましいベクターのコピー数;ならびに異なる種の宿主間でベクターを「往復させる」ことができるために望ましいか否かが含まれる。 哺乳類宿主に関して、いくつかのベクター系が発現のために利用できる。一つのクラスのベクターは、動物ウイルス、例えばウシ乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、またはSV40ウイルスに由来する自律的に複製する染色体外プラスミドを提供するDNAエレメントを利用する。第二のクラスのベクターには、ワクシニアウイルス発現ベクターが含まれる。第三のクラスのベクターは、宿主染色体に所望の遺伝子配列を組み込まれることに依存する。導入されたDNAをその染色体に安定に組み込んだ細胞はまた、一つまたはそれ以上のマーカー遺伝子(上記のような)を導入することによっても選択することができ、これによって発現ベクターを含む宿主細胞を選択することができる。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結することができ、または同時トランスフェクションによって同じ細胞に導入することができる。コードされるmRNAまたはペプチドの最適な合成を提供するために、例えば、スプライスシグナル、転写プロモーターまたはエンハンサー、および転写または翻訳終了シグナルを含む、さらなるエレメントを含むことができる。適当な調節エレメントを組み込んだcDNA発現ベクターは、当技術分野で周知である(例えば、Okayama、Mol. Cell Biol. 3:280、1983を参照のこと)。 構築物を含むベクターまたはDNA配列を発現のために調製した後、DNA構築物を適当な宿主に導入することができる。ポリヌクレオチドを細胞に導入するために、例えば、プロトプラスト融合、燐酸カルシウム沈殿、および電気穿孔のようなトランスフェクションもしくは形質転換法、または他の従来の技法、例えばベクターがウイルスベクターである場合には感染を含む様々な方法を用いることができる。 本発明はまた、組換えGDF受容体を発現する細胞を有するトランスジェニック動物も提供する。そのようなトランスジェニック動物は、脂肪含有量が減少している、筋重量が増加している、またはその双方であるように選択することができ、したがって、筋および蛋白質含有量が高く、脂肪およびコレステロール含有量が低い食品源として有用となりうる。動物は、GDF、特にミオスタチンの産生が正常「レベル」に維持されているが、ミオスタチン受容体の産生量が減少しているか、または完全に破壊されて、その結果、ミオスタチンとの結合能が減少し、その結果、脂肪またはコレステロールレベルを増加させることなく、筋組織が正常レベル以上となる動物の細胞が得られるように、その生殖細胞および体細胞の染色体で改変されている。したがって、本発明にはまた、動物によって提供される食品が含まれる。そのような食品は、筋組織の増加のために栄養的価値が増加している。本発明のヒト以外のトランスジェニック動物には、ウシ、ブタ、ヒツジ、およびトリ動物が含まれると共に、他の脊椎動物が含まれ、さらにトランスジェニック無脊椎動物が含まれる。 本発明はまた、筋重量が増加した動物食品を作製する方法を提供する。そのような方法には、動物の前核胚の生殖細胞の遺伝子構築を改変すること、胚を仮親雌性動物の卵管に埋め込むこと、それによって胚を妊娠満期まで成熟させること、導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の存在に関して子孫を調べること、さらなる導入遺伝子陽性子孫を得るために導入遺伝子陽性子孫を交配すること、および食品を得るために子孫を処理することが含まれうる。生殖細胞の改変は、ミオスタチン受容体蛋白質の産生をコードする天然に存在する遺伝子の発現を減少または阻害するように遺伝子組成物を改変させることを含む。例えば、導入遺伝子は、ミオスタチン受容体をコードするポリヌクレオチドに対して特異的であるアンチセンス分子を含みうる、内因性のミオスタチン受容体遺伝子もしくは導入遺伝子において置換もしくは介在する非機能的配列を含みうる;またはミオスタチン受容体拮抗剤、例えば、ドミナントネガティブAct RIIBのようなドミナントネガティブミオスタチン受容体をコードしうる。 本明細書において用いられるように、「動物」という用語は、如何なるトリ、魚、またはヒトを除く哺乳類も意味し、これには、胚または胎児段階を含む如何なる発達段階も含まれる。ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ウサギ等のような家畜動物;マウスのような齧歯類;およびネコおよびイヌのようなペットも「動物」という用語の意味に含まれる。さらに、「生物」という用語は、本明細書において上記の動物が含まれると共に、例えばは虫類および両生類のような他の脊椎動物と共に上記のような無脊椎動物を含む他の真核生物を含むように用いられる。 本明細書において用いられるように、動物または生物に関連して用いられる「トランスジェニック」という用語は、動物または生物の細胞が、細胞によって安定に維持される外因性のポリヌクレオチド配列を含むように遺伝子操作されていることを意味する。操作は、例えばポリヌクレオチドのマイクロインジェクション、またはポリヌクレオチドを含む組換えウイルスによる感染となりうる。このように、「トランスジェニック」という用語は、本明細書において一つまたはそれ以上の細胞が、細胞の染色体に組み込まれうる、または酵母の人工染色体に操作される場合のように、染色体外で複製するポリヌクレオチドとして維持することができる、組換えポリヌクレオチドを有する細胞(生物)を意味するために用いられる。「トランスジェニック動物」という用語には、また、「生殖系列」トランスジェニック動物が含まれる。生殖系列トランスジェニック動物は、遺伝情報が生殖系列の細胞に取り込まれて組み込まれていて、したがって子孫に情報伝達能を付与するトランスジェニック動物である。そのような子孫が実際にその情報のいくつかまたは全てを有する場合、子孫も同様にトランスジェニック動物であると見なされる。本発明はさらにトランスジェニック生物を含む。 トランスジェニック生物は、そのゲノムが初期胚もしくは受精卵のインビトロ操作によって改変されている、または特異的遺伝子ノックアウトを誘導するための如何なるトランスジェニック技術によっても改変されている如何なる生物ともなりうる。「遺伝子ノックアウト」という用語は、機能の完全な喪失に至る細胞におけるまたはインビボでの遺伝子の標的化破壊を意味する。トランスジェニック動物における標的遺伝子は、例えば相同的組換えによって、または細胞における遺伝子の機能を破壊する他の如何なる方法によって、非機能的にすべき遺伝子にターゲティングした挿入によって非機能的にされうる。 本発明の実践において用いられる導入遺伝子は、改変されたGDF受容体コード配列を含むDNA配列となりうる。好ましくは、改変GDF受容体遺伝子は、胚性幹細胞における相同的ターゲティングによって破壊される遺伝子である。例えば、GDF受容体遺伝子の完全な成熟C末端領域を欠失させることができる(実施例13を参照のこと)。選択的に、破壊(または欠失)は、もう一つのポリヌクレオチド、例えば非機能的GDF受容体配列の挿入または置換を伴うことができる。「ノックアウト」表現型はまた、生物の細胞にアンチセンスGDF受容体ポリヌクレオチドを導入もしくは発現することによって、または細胞において抗体もしくはドミナントネガティブGDF受容体を発現することによって、付与することができる。適当であれば、GDF受容体活性を有する蛋白質をコードするが、遺伝子コードの縮重のために天然に存在するGDF遺伝子配列とはヌクレオチド配列が異なるポリヌクレオチドを、本明細書において、切断型、対立遺伝子変種および種間相同体として用いることができる。 本発明はまた、GDF受容体に特異的に結合する抗体、および受容体とGDFとの結合を遮断する抗体を提供する。そのような抗体は、例えば、筋組織に関連した細胞増殖障害のような病態を改善するために有用となりうる。 GDF受容体、特にミオスタチン受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体は、骨格筋の発達を増加させうる。請求の方法の好ましい態様において、GDF受容体モノクローナル抗体、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドを、筋消耗性疾患、神経筋障害、筋萎縮、加齢等のような病態を有する患者に投与する。GDF受容体抗体、特に抗ミオスタチン受容体抗体も同様に、筋ジストロフィー、脊髄損傷、外傷損傷、先天性閉塞性肺疾患(COPD)、AIDS、またはカヘキシアのような病態を有する患者に投与することができる。 好ましい態様において、抗ミオスタチン受容体抗体を静脈内、筋肉内、または皮下注射によって筋消耗性疾患または障害を有する患者に投与する;好ましくは、モノクローナル抗体は約0.1 μg/kg〜約100 mg/kgの用量範囲で;より好ましくは約1μg/kg〜75 mg/kg;最も好ましくは約10 mg/kg〜50 mg/kgの範囲内で投与する。抗体は、例えば、ボーラス注入またはゆっくりとした注入によって投与することができる。30分〜2時間かけての遅い注入が好ましい。抗ミオスタチン受容体抗体、または他の抗GDF受容体抗体は、患者に投与するために適した製剤に調製することができる。そのような製剤は当技術分野で既知である。 投与レジメは、ミオスタチン受容体蛋白質の作用を改変する様々な要因、例えば、望ましい組織形成量、組織損傷部位、損傷組織の状態、創傷の大きさ、損傷組織のタイプ、患者の年齢、性別、および食事、感染の重症度、投与時間、ならびに他の臨床要因を考慮して主治医によって決定されるであろう。用量は、溶解に用いられるマトリクスのタイプ、および組成物において用いられる抗ミオスタチン受容体抗体のような作用物質のタイプによって変化しうる。一般的に、静脈内、筋肉内、または皮下注射のような全身または注射による投与。投与は一般的に、最小に有効である用量で開始し、陽性作用が認められるまで予め選択した時間経過について用量を増加する。その後、用量の漸増は、現れうる如何なる副作用も考慮に入れて、作用が対応して増加するレベルまでの増加に制限する。筋重量を増加させるために役立ちうるIGFI(インスリン様増殖因子I)、ヒト、ウシ、またはニワトリの成長ホルモンのような他の既知の増殖因子を最終組成物に加えても、用量に影響を及ぼしうる。抗ミオスタチン受容体抗体を投与する態様において、抗体は一般的に、約0.1 μg/kg〜約100 mg/kg;より好ましくは約10 mg/kg〜50 mg/kgの用量範囲内で投与される。 本明細書において用いられるように、「抗体」という用語はその最も広い意味において、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体と共に、そのような抗体の抗原結合断片を含むように用いられる。本発明の方法において有用な抗体、またはその抗原結合断片は、例えば、GDF受容体、例えばミオスタチン受容体のエピトープに対する特異的結合活性を有するという特徴を有する。さらに、上記のように、本発明の抗体は、プロミオスタチンポリペプチドのペプチド部分、特にミオスタチンプロドメインまたはその機能的ペプチド部分に特異的に結合する抗体となりうる。GDF受容体抗体の調製および特徴を例として示す以下の方法は、ミオスタチンプロドメインに特異的に結合する抗体、プロミオスタチンポリペプチドに特異的に結合して、プロミオスタチンのミオスタチンへの蛋白質分解切断を減少または阻害する抗体等を含む、本発明のさらなる抗体の調製および特徴付けに適用可能であると認識されるであろう。 抗体に関連して用いる場合の「特異的に結合する」または「特異的結合活性」という用語は、抗体と特定のエピトープとの相互作用が解離定数少なくとも約1×10-6、一般的に少なくとも約1×10-7、通常、少なくとも約1×10-8、および特に少なくとも約1×10-9または1×10-10またはそれ未満を有することを意味する。そのため、GDF受容体のエピトープに対する特異的結合活性を保持している抗体のFab、F(ab')2、Fd、およびFv断片は抗体の定義に含まれる。本発明の目的に関して、例えば、ミオスタチン受容体のエピトープに特異的に反応する抗体は、抗体がTGF-βまたはBMP受容体と比較してミオスタチン受容体に対して少なくとも2倍大きい結合親和性、一般的に少なくとも5倍大きい結合親和性、および特に少なくとも10倍大きい結合親和性を有すれば、TGF-β受容体またはBMP受容体と実質的に反応しないと見なされる。 本明細書において用いられる「抗体」という用語には、天然に存在する抗体と共に、例えば一本鎖抗体、キメラ、双機能、およびヒト化抗体と共にその抗原結合断片を含む天然に存在しない抗体が含まれる。そのような天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えによって産生することができ、または例えば可変重鎖および可変軽鎖からなる組み合わせライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる(参照として本明細書に組み入れられる、Huseら、Science 246:1275〜1281(1989)を参照のこと)。例えばキメラ、ヒト化、CDR接合、一本鎖、および双機能抗体を作製するこれらおよび他の方法は、当業者に周知である(WinterとHarris、Immunol. Today 14:243〜246、1993;Wardら、Nature 341:544〜546、1989;HarlowとLane、「Antibodies:A Laboratory Manual」、(コールドスプリングハーバー研究所出版、1988);Hilyardら、「蛋白質の操作:実際のアプローチ(Protein Engineering:A Practical Approach)」、(IRS出版、1992);Borrabeck、「抗体の操作(Antibody Engineering)」、第2版、(オックスフォード大学出版、1995);そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。 GDF受容体に特異的に結合する抗体は、免疫原として受容体を用いて、例えば、TGF-β I型もしくはII型受容体、Act RIB、Act RIIA、もしくはAct RIIBのようなアクチビン受容体、またはBMP RII、BMP RIA、およびBMP RIBのようなBMP受容体と交叉反応する抗体を除去することによって作製することができる(Massague、上記1998を参照のこと)。本発明の抗体は、TGF-β、アクチビン、またはBMP受容体に存在しないミオスタチン受容体のペプチド部分を用いて作製することができる。同様に、ミオスタチンプロドメインに特異的に結合する抗体は、プロドメインまたはその機能的ペプチド部分を免疫原として用いて作製することができる。そのようなペプチドが非免疫原性である場合、ウシ血清アルブミン(BSA)もしくはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のような担体蛋白質にハプテンをカップリングさせることによって、またはペプチド部分を融合蛋白質として発現させることによって免疫原性にすることができる。様々な他の担体分子およびハプテンを担体分子にカップリングさせる方法は、当技術分野で周知である(例えば、HarlowとLane、上記、1988を参照のこと)。 望ましければ、本発明の方法において有用な抗体または他の作用物質を組み込まれるキットを調製することができる。そのようなキットは、作用物質の他に、作用物質を被験者に投与するために溶解されうる薬学的組成物を含みうる。キットはまた、抗体を検出するための試薬、GDF受容体に対する抗体の特異的結合を検出する試薬を含みうる。抗体を標識する、またはそうでなければ同定するために有用なそのような検出可能試薬は、本明細書に記述され、当技術分野で既知である。 例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類においてポリクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野で周知である(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Greenら、「ポリクローナル抗血清の作製(Production of Polyclonal Antisera)」、「免疫化学プロトコール(Immunochemical Protocols)」、Manson編、ヒュマナ出版、1992年、1〜5頁;Coliganら、「ウサギ、ラット、マウスおよびハムスターにおけるポリクローナル抗血清の作製(Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats, Mice and Hamsters)」、Curr. Protocols Immunol.(1992)、2.4.1章を参照のこと)。さらに、モノクローナル抗体は、当技術分野で周知で日常的な方法を用いて得ることができる(HarlowとLane、上記、1988)。例えば、ミオスタチン受容体またはそのエピトープ断片によって免疫したマウスからの脾細胞を、SP/02骨髄腫細胞のような適当な骨髄腫細胞株に融合させてハイブリドーマ細胞を産生する。クローニングしたハイブリドーマ細胞株は、適当な特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するクローンを同定するために標識抗原を用いてスクリーニングすることができ、所望の特異性および親和性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離して、これを連続的な抗体原として利用することができる。抗体は、ミオスタチン受容体と特異的に結合できないことに関してさらにスクリーニングすることができる。そのような抗体は、例えば、臨床で用いるための標準キットを調製するために有用である。例えば、一本鎖抗ミオスタチン受容体抗体を発現する組換えファージも同様に、標準キットを調製するために用いることができる抗体を提供する。 モノクローナル抗体を調製する方法は周知である(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、KohlerとMilstein、Nature 256:495、1975を参照のこと;同様に、Coliganら、上記、1992、2.5.1〜2.6.7章を参照のこと;HarlowとLane、上記、1988も参照のこと)。簡単に説明すると、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射すること、血清試料を採取して抗体産生の存在を確認すること、Bリンパ球を得るために脾臓を切除すること、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを産生すること、ハイブリドーマをクローニングすること、抗原に対して抗体を産生する陽性クローンを選択すること、およびハイブリドーマ培養から抗体を単離することによって得ることができる。 モノクローナル抗体は、例えば、プロテイン-Aセファロースによるアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィー(Coliganら、上記、1992、2.7.1〜2.7.12章および2.9.1〜2.9.3章を参照のこと;同様に、参照として本明細書に組み入れられる、Barnesら、「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」、Meth. Molec. Biol. 10:79〜104(ヒュマナ出版、1992)を参照のこと)を含む、十分に確立された多様な技術によってハイブリドーマ培養から単離および精製することができる。モノクローナル抗体をインビトロおよびインビボで増幅させる方法は、当業者に周知である。インビトロでの増幅は、選択的に、仔ウシ胎児血清のような哺乳類の血清、または微量元素および正常マウス腹腔滲出細胞、脾細胞、骨髄マクロファージのような増殖維持補助剤を補充したダルベッコ改変イーグル培地またはRPMI 1640培地のような適した培養培地において行うことができる。インビトロでの産生は、比較的純粋な抗体調製物を提供し、所望の抗体の大量を産生するために規模を拡大することができる。大規模ハイブリドーマ培養は、エアリフトリアクターにおいて均一な浮遊培養によって、連続攪拌リアクターにおいて、または固定もしくは捕獲細胞培養において行うことができる。インビボでの増幅は、抗体産生腫瘍の増殖を引き起こすために、親細胞と組織適合性の哺乳類、例えば同系マウスに細胞クローンを注入することによって行うことができる。選択的に、注射前に動物を炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)のような油によってプライミングする。1〜3週間後、所望のモノクローナル抗体を動物の体液から回収する。 本明細書に開示の抗体の治療応用も同様に、本発明の一部である。例えば、本発明の抗体はまた、ヒト以下の霊長類抗体に由来しうる。ヒヒにおいて治療的に有用な抗体を作製する一般的な技術は、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Goldenbergら、国際公開公報第91/11465号(1991);およびLosmanら(Int. J. Cancer 46:310、1990)に認められうる。 治療的に有用な抗GDF受容体抗体も同様に、「ヒト化」モノクローナル抗体に由来しうる。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域からのマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移して、その後マウス相対物のフレームワーク領域においてヒト残基を置換することによって産生される。ヒト化モノクローナル抗体に由来する抗体成分を用いれば、マウス定常領域の免疫原性に関連した起こりうる問題が回避される。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングする一般技術は既知である(例えば、その全文が参照として本明細書に組み入れられる、Orlandiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833、1989を参照のこと)。ヒト化モノクローナル抗体を産生する技術も同様に既知である(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Jonesら、Nature 321:522、1986;Riechmanら、Nature 332:323、1988;Verhoeyenら、Science 239:1534、1988;Carterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285、1992;Sandhu、Crit. Rev. Biotechnol. 12:437、1992;Singerら、J. Immunol. 150:2844、1993を参照のこと)。 本発明の抗体はまた、組み合わせ免疫グロブリンライブラリから単離されたヒト抗体断片に由来しうる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Barbasら、「METHODS:A Companion to Methods in Immunology」 2:119、1991;Winterら、Ann. Rev. Immunol. 12:433、1994を参照のこと)。ヒト免疫グロブリンファージライブラリを産生するために有用なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、ストラタジーンクローニングシステムズ社(ラホヤ、カリフォルニア州)から得ることができる。 本発明の抗体はまた、ヒトモノクローナル抗体に由来しうる。そのような抗体は、抗原チャレンジに反応して特異的ヒト抗体を産生するように「操作」されているトランスジェニックマウスから得られる。この技術において、ヒト重鎖および軽鎖座のエレメントを、内因性重鎖および軽鎖座の標的化破壊を含む胚性幹細胞株に由来するマウスの系統に導入する。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いてヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体Greenら(Nature Genet. 7:13、1994);Lonbergら(Nature 368:856、1994);およびTaylorら(Int. Immunol. 6:579、1994)に記載されている。 本発明の抗体断片は、抗体の蛋白質分解加水分解によって、または断片をコードするDNAを大腸菌において発現させることによって調製することができる。抗体断片は、従来の方法によって抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、F(ab')2と呼ばれる5S断片を提供するためにペプシンによる抗体の酵素的切断によって産生することができる。この断片は、チオール還元剤、および選択的に、ジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いてさらに切断することができ、3.5S Fab'一価断片を生じる。または、ペプシンを用いる酵素的切断は、二つの一価Fab'断片とFc断片を直接生じる(例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Goldenberg、米国特許第4,036,945号、および米国特許第4,331,647号ならびにその中に含まれる参考文献;Nisonhoffら、Arch. Biochem. Biophys. 89:230、1960;Porter、Biochem. J. 73:119、1959;Edelmanら、Meth. Enzymol. 1:422(アカデミック出版、1967)を参照のこと;同様にColiganら、上記、1992、第2.8.1〜2.8.10および第2.10.1〜2.10.4章も参照のこと)。 一価軽鎖/重鎖断片を形成するために、重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝的技術のような抗体を切断する他の方法も同様に、断片が無傷の抗体によって認識される抗原に特異的に結合する限り、用いることができる。例えば、FV断片は、VHとVL鎖との会合を含む。この会合は非共有結合となりうる(Inbarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:2659、1972)。または、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、またはグルタルアルデヒドのような化学物質によってクロスリンクすることができる(Sandhu、上記、1992)。好ましくは、FV断片は、ペプチドリンカーによって結合したVHおよびVL鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合蛋白質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって結合したVHおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入して、これをその後大腸菌のような宿主細胞に導入する。組換え型宿主細胞は、二つのVドメインを架橋するリンカーペプチドによって一つのポリペプチド鎖を合成する。sFvを作製する方法は、例えば、そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Whitlowら(「Methods:A Comparison to Methods in Enzymology」 2:97、1991);Birdら(Science 242:423〜426、1988);Ladnerら(米国特許第4,946,778号);Packら(Bio/Technology 11:1271〜1277、1993)に記述されている;同様に、Sandhu、上記、1992も参照のこと。 抗体断片のもう一つの形は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、関係する抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Larrickら、「Methods:A Comparison to Methods in Enzymology」 2:106、1991を参照のこと)。 本発明はまた、GDF受容体ポリペプチドを同定する方法も提供する。そのような方法は、例えば、GDFポリペプチドを含む成分と、完全長の受容体または切断型受容体を発現する細胞を、GDFを受容体に結合させるために十分な条件でインキュベートすること、GDFポリペプチドと受容体との結合を測定すること、および受容体を単離することによって行うことができる。GDFは、既知のGDFs(例えば、GDF-1〜16)の如何なるものともなりうるが、好ましくはGDF-8(ミオスタチン)またはGDF-11である。受容体を単離する方法は、下記の実施例においてより詳細に説明する。したがって、本発明はまた、実質的に精製されたGDF受容体のみならず、天然に存在するGDF受容体より少ないアミノ酸残基を有するGDF受容体のペプチドおよびペプチド誘導体を提供する。そのようなペプチドおよびペプチド誘導体は、筋消耗性症候群の研究およびより有効な治療の開発において、研究および診断ツールとして有用である。 本発明はさらにGDF受容体変種を提供する。本明細書において用いられるように、「GDF受容体変種」という用語はGDF受容体の構造の少なくとも一部を刺激する分子を意味する。GDF受容体変種は、GDF結合を減少または阻害して、それによって本明細書に開示の病態を改善するために有用となりうる。GDF受容体変種の例には、GDF受容体の可溶性細胞外ドメインのような切断型GDF受容体、キナーゼ活性を欠損するドミナントネガティブAct RIIB受容体のようなドミナントネガティブGDF受容体、またはその他の切断型もしくは変異体GDF受容体が含まれるがこれらに限定されない。 本発明は、天然に存在するGDF受容体のペプチドおよびペプチド誘導体のみならず、変異体GDF受容体およびGDF、例えばミオスタチンに特異的に結合するGDF受容体の化学合成された誘導体を含むGDF受容体変種にも関する。例えば、GDF受容体のアミノ酸配列の変化が本発明において考慮される。GDF受容体は、蛋白質をコードするDNAを変化させることによって変化させることができる。好ましくは、同じまたは類似の特性を有するアミノ酸を用いて、保存的アミノ酸変化のみを行う。例となるアミノ酸置換には、アラニンからセリンへの変化;アルギニンからリジン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リジンからアルギニン、グルタミン、またはグルタミン酸;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;バリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が含まれる。 本発明にとって有用な変種は、そのそれぞれのGDFsに対して特異的結合能を保持しているGDF受容体の類似体、相同体、変異蛋白質および模倣体を含む。もう一つの態様において、変種がGDFと特異的に相互作用するか否かによらず、ドミナントネガティブ活性を有する変種GDF受容体も同様に考慮される。GDF受容体のペプチドは、これらの能力を有するGDF受容体のアミノ酸配列の一部を意味する。変種は、化学修飾によって、蛋白質分解酵素の消化によって、またはその組み合わせによってGDF受容体自身から直接産生することができる。さらに、アミノ酸残基から直接ポリペプチドを合成する方法と共に遺伝子操作技術を用いることができる。 ペプチドは、αアミノ基のt-BOCまたはFMOC保護のような一般的に用いられる方法によって合成することができる。いずれの方法も、それによってペプチドのC末端から開始してアミノ酸一個ずつがそれぞれの段階で付加される、段階的合成を含む(Coliganら、「Current Protocols in Immunology」、(ウィリーインターサイエンス社、1991)、第9章、参照として本明細書に組み入れられる)。本発明のペプチドはまた、0.1〜1.0 mMolアミン/gポリマーを含むコポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)を用いて、周知の固相ペプチド合成法(そのそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる、Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85:2149、1962;StewartとYoung、「Solid Phase Peptide Synthesis」、(Freeman、サンフランシスコ、1969)、27〜62頁を参照のこと)によって合成することができる。化学合成が終了すると、ペプチドを、液体HF-10%アニソールによる0℃で約1/4〜1時間の処置によって脱保護してポリマーから切断することができる。試薬を蒸発させた後、1%酢酸溶液によってペプチドをポリマーから抽出して、次にこれを凍結乾燥すると粗材料が得られる。これは通常、5%酢酸を溶媒として用いるセファデックスG-15上でのゲル濾過のような技術によって精製することができる。カラムの適当な画分を凍結乾燥すると、均一なペプチドまたはペプチド誘導体が得られ、これをアミノ酸解析、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、紫外線吸収分光法、モル旋光度、溶解度のような標準的な技術によって特徴を調べ、固相エドマン分解によって定量することができる。 GDF受容体の結合および機能を模倣する(「模倣体」)非ペプチド化合物は、Saragoviら(Science 253:792〜95、1991、参照として本明細書に組み入れられる)によって概要されるアプローチによって産生することができる。模倣体は、蛋白質二次構造のエレメントを模倣する分子である(Johnsonら、「Peptide Turn Mimetics」、Biotechnology and Pharmacy、(Pezzutoら編、ChapmanとHoll、ニューヨーク、1993、参照として本明細書に組み入れられる)。ペプチド模倣体を用いる背後の基礎となる原理は、蛋白質のペプチド骨格が、主に、分子相互作用を促進する方向にアミノ酸側鎖を向けるように存在するという点である。本発明の目的に関して、適当な模倣体は、GDF受容体の同等物であると見なされうる。 より長いペプチドは、ペプチドを互いに連結する「本来の化学」ライゲーション技術によって産生することができる(Dawsonら、Science 266:776、1994、参照として本明細書に組み入れられる)。変種は、ゲノムまたはcDNAクローニング法を用いる組換え技法によって作製することができる。部位特異的および領域特異的変異誘発技術を用いることができる(Ausubelら、上記、1989および1990〜1993補則、第1巻、第8章を参照のこと;「Protein Engineering」、(OxenderとFox編、A.リスインク、1987)。さらに、リンカースキャンおよびPCR媒介技術を変異誘発のために用いることができる(Erlich、「PCR Technology」、(ストックトン出版、1989);Ausubelら、上記、1989〜1993)。上記の技術のいずれかと共に用いられる蛋白質の配列決定、構造およびモデリングアプローチは、上記に引用される参考文献に開示される。 本発明はまた、GDFのその受容体に対する特異的結合を遮断するGDF受容体結合作用物質を提供する。そのような作用物質は例えば、上記の筋消耗性障害の研究における研究および診断ツールとして有用であり、本明細書に開示の方法、例えば、分子モデリング法を用いて同定することができる。さらに、GDF受容体結合作用物質を含む薬学的組成物は、有効な治療物質となりうる。本発明の意味において、「GDF受容体結合作用物質」という句は、GDF受容体、例えばGDF-1〜GDF-16の天然に存在するリガンド、GDF受容体の合成リガンド、または天然もしくは合成リガンドの適当な誘導体を指す。リガンドの決定および単離は、当技術分野で周知である(Lerner、Trends Neurosci. 17:142〜146、1994、参照として本明細書に組み入れられる)。 なおもう一つの態様において、本発明は、GDF受容体とGDFとの結合を妨害するGDF受容体結合作用物質に関する。そのような結合作用物質は、競合的阻害、非競合的阻害、または不競合的阻害によって妨害することができる。GDF受容体と一つまたはそれ以上のGDFとの正常な結合の妨害によって、有用な薬理作用を得ることができる。 本発明はまた、GDF受容体に結合する組成物を同定する方法を提供する。方法には、組成物を含む成分とGDF受容体とを、成分を特異的に相互作用させるために十分な条件でインキュベートする段階、およびGDF受容体に対する組成物の結合を測定する段階を含む。GDF受容体に結合する組成物には、上記のように、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド、化学化合物および生物作用物質が含まれる。インキュベートする段階には、試験組成物とGDF受容体との接触を可能にして、インビボで起こるような特異的相互作用に適した条件を提供する条件に反応物質を曝露する段階が含まれる。接触は、溶液または固相となりうる。試験リガンド/組成物は、選択的に、上記のように複数の組成物をスクリーニングするための組み合わせライブラリとなりうる。本発明の方法において同定された組成物はさらに、PCR、オリゴマー制限(Saikiら、Bio/Technology 3:1008〜1012、1985、参照として本明細書に組み入れられる)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ解析(Connerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:278、1983、参照として本明細書に組み入れられる)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ法(OLAs)(Landgrenら、Science 241:1077、1988、参照として本明細書に組み入れられる)等(参照として本明細書に組み入れられる、Landgrenら、Science 242:229〜237、1988を参照のこと)のような特異的DNA配列を検出するために通常適用される如何なる方法によって、溶液または固相支持体に結合させた後に、評価、検出、クローニング、配列決定等を行うことができる。 組成物が受容体蛋白質と機能的に複合体を形成することができるか否かを決定するために、外因性の遺伝子によってコードされる蛋白質の蛋白質レベルの変化をモニターすることによって、または本明細書に開示の他の方法によって、外因性遺伝子の誘導をモニターすることができる。外因性遺伝子の転写を誘導することができる組成物が同定されれば、この組成物は、最初の試料試験組成物をコードする核酸によってコードされる受容体蛋白質に特異的に結合することができると結論される。 外因性の遺伝子の発現は、機能的アッセイ法または例えば蛋白質産物のアッセイ法によってモニターすることができる。したがって、外因性遺伝子は、外因性遺伝子の発現が検出されうるためにアッセイ可能な/測定可能な発現産物を提供する遺伝子である。そのような外因性の遺伝子には、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光蛋白質遺伝子、グアニンキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、およびネオマイシンホスホトランスフェラーゼのような抗生物質耐性遺伝子(上記参照)のようなレポーター遺伝子が含まれるがこれらに限定されない。 外因性の遺伝子の発現は、組成物とGDF受容体との特異的相互背用を示し;このように、組成物の結合または遮断を同定して単離することができる。本発明の組成物は、例えば、抽出、沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過等を含む、一般的に用いられる既知の蛋白質精製技術を用いることによって、培養培地または細胞から抽出および精製することができる。組成物は、カラムマトリクスに結合した改変された受容体蛋白質細胞外ドメインを用いるアフィニティクロマトグラフィー、またはヘパリンクロマトグラフィーによって単離することができる。 同様に、上記のようにGDF受容体に結合する化学化合物を同定する組み合わせ化学法も本発明のスクリーニング方法に含まれる。このように、スクリーニング法はまた、望ましければ、物理的(例えば、立体的)ではなく、機能的に拮抗剤または作用剤として作用する変種、結合もしくは遮断剤等を同定するためにも有用である。 以下の実施例は本発明を説明するのであって、制限すると解釈されない。実施例1ミオスタチンは用量依存的に作用する 本実施例は、筋増殖の阻害におけるミオスタチンの活性がインビボでミオスタチン発現レベルに依存することを示す。 ミオスタチンは、骨格筋重量の負の調節物質である(McPherronら、上記、1997;McPherronとLee、上記、1997)。ミオスタチン遺伝子の欠失に関してホモ接合であるミオスタチンノックアウトマウスは、全身体重の25〜30%増加を示した。ホモ接合ノックアウトマウスを調べると、筋重量の増加は、全身の骨格筋重量の約100〜200%増加が原因であることが判明した。 ミオスタチン変異に関してヘテロ接合であるマウスも同様に全身体重が増加した。しかし、ヘテロ接合体の増加重量は、ホモ接合体の重量より小さく、調べた多数の中で一つの年齢と性別の群に有意差を認めたに過ぎなかった。ヘテロ接合マウスが野生型マウスとホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスとのあいだの中間の表現型を有するか否かを調べるために、筋重量の解析をヘテロ接合マウスにも行った。ヘテロ接合マウスから採取した個々の筋の重量は、野生型マウスより約25〜50%多かった。これらの結果は、ミオスタチン遺伝子の欠失に関してヘテロ接合であるマウスは、野生型とホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスの中間の表現型を有することを証明し、ミオスタチンがインビボで用量依存的な作用を生じることを証明している。 これらの結果は、ミオスタチン活性の操作が、筋消耗性疾患およびミオスタチン活性に関連した他の代謝障害を治療するために有用となりうることを示している。さらに、ミオスタチンの用量依存的作用は、ミオスタチン活性の完全な阻害を得なくとも治療効果が得られ、それによって、例えば、特定のレベルの活性が被験者において望ましくない作用を生じる場合には、ミオスタチン活性の調節が可能となることを示している。実施例2ミオスタチンの作用はノックアウトマウスの年齢と共に減少する 本実施例は、野生型マウスとホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスのあいだの体重の差の減少が、変異体マウスの筋重量の減少に関連していることを証明する。 ミオスタチンノックアウトマウスは5ヶ月齢で野生型マウスより体重が約25〜30%多かった(McPherronら、上記、1997)。しかし、総体重の差は、動物が年をとるにつれて、有意に小さくなるかまたは完全に消失した。この作用が、例えば筋の変性のために、または野生型マウスによる比較的大きい体重増加のために、ノックアウトマウスの体重が相対的に失われたことによるか否かを調べるために、筋重量の詳細な解析を年齢の関数として行った。 2ヶ月から17ヶ月のあいだに調べた全ての年齢において、胸筋の重量は野生型同腹子よりホモ接合変異体マウスにおいて有意に重かった。最も劇的な差は、5ヶ月で認められ、その時点で胸筋の重量は変異体マウスにおいて約200%大きかった。胸筋の重量は月齢が高くなるとわずかに減少したが、変異体マウスにおけるこの筋の重量は野生型マウスの2倍以上のままであった。上腕三頭筋、四頭筋、ひ腹筋および足底筋、ならびに前脛骨筋を含む、調べた他の筋の全てにおいて同じ基礎的な傾向を認めた。類似の傾向を雄性および雌性マウスの双方において認めた。これらの結果は、加齢と共に認められた変異体と野生型マウスのあいだの総体重の差の減少が、変異体マウスにおける筋重量のわずかな減少によることを証明している。実施例3ミオスタチンは用量依存的に脂肪の蓄積に影響を及ぼす 本実施例は、ミオスタチンノックアウトマウスが脂肪を蓄積させることができないこと、および脂肪蓄積の減少がインビボでのミオスタチン発現レベルに関連していることを証明する。 実施例2において示されたミオスタチン変異体における筋重量の減少は、野生型動物が最終的に変異体マウスと同じ体重になったという知見を十分には説明できないことから、野生型および変異体マウスにおける脂肪の蓄積量を調べた。雄性マウスの鼠径部、精巣上体、および後腹膜の脂肪体を調べた。2ヶ月齢では野生型および変異体マウスのあいだにこれらの脂肪体のいずれの重量にも差を認めなかった。5〜6ヶ月齢までに、野生型およびヘテロ接合ノックアウトマウスはいずれも広範囲の脂肪体重量を示し、平均すると、脂肪体重量は動物が9〜10ヶ月齢に達するまでに約3倍〜5倍増加した。これらの動物において認められた広範囲の脂肪体重量のために、動物によっては、他よりかなり大きい増加を示した(10倍まで)。 野生型およびヘテロ接合ノックアウトマウスとは対照的に、ミオスタチンホモ接合変異体マウスの脂肪体重量は、比較的狭い範囲に存在し、2ヶ月齢と9〜10ヶ月齢のマウスでは実質的に同じであった。このように、野生型マウスにおける加齢に伴って起こる脂肪蓄積の増加は、ホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスでは認められなかった。ホモ接合変異体マウスにおいて、年齢の関数として、脂肪蓄積にこのような差が認められたことは、筋重量のわずかな減少と共に、野生型マウスが最終的に変異体と同じ総体重となるという知見を十分に説明した。 ヘテロ接合ノックアウトマウスの脂肪体重量の平均値は、9〜10ヶ月齢で野生型マウスとホモ接合変異体マウスの中間であった。この差は、これらおよび野生型マウスにおける脂肪体重量が広範囲であったために統計学的に有意ではなかったが、これらの結果は、それにもかかわらず、ミオスタチンが筋増殖に及ぼすその作用と同様に、脂肪の蓄積に対して用量依存的な作用を有することを示している。実施例4代謝に及ぼすミオスタチンの影響 本実施例は、血清インスリンとグルコースレベルが代謝活性と共にミオスタチン発現レベルによって影響を受けることを証明する。 ミオスタチン変異体マウスにおける骨格筋肥大と脂肪蓄積の欠損が、全身代謝に及ぼす作用によるか否かを決定するために、変異体マウスの代謝プロフィールを調べた。血清トリグリセリドおよび血清コレステロールレベルは、野生型対照マウスと比較してミオスタチン変異体マウスでは有意に低かった(表1)。血清インスリンレベルはまた、ミオスタチン変異体マウスにおいて低いように思われた。しかし、食後および絶食時のグルコースレベルはいずれもホモ接合変異体マウスと野生型マウスにおいて区別できず(表1)、いずれの群のマウスも耐糖能試験において正常な反応を示した。結果は、ホモ接合ミオスタチンノックアウトマウスが、その血清インスリンレベルが野生型動物より低い場合であっても、血清グルコースの正常レベルを維持することができることを証明している。+/+は野生型マウスを示す;-/-はホモ接合ノックアウトマウスを示す。 代謝速度の差が、変異体マウスにおける脂肪蓄積の欠如を説明することができるか否かを決定するために、野生型および変異体マウスの酸素消費速度を熱量計を用いて比較した。変異体マウスは、野生型対照マウスより低い基礎代謝速度および低い総代謝速度を示した。これらの結果は、ミオスタチン変異体マウスにおける脂肪蓄積の欠損が、代謝活性の速度がより速いためではないことを示している。実施例5ミオスタチンは遺伝的肥満マウスにおける脂肪蓄積に影響を及ぼす 本実施例は、ミオスタチン発現の欠如が、肥満の遺伝子モデルであるマウスにおいて脂肪の蓄積を抑制することを証明する。 ミオスタチン活性の喪失は、正常マウスのみならず肥満マウスにおいても脂肪の蓄積を抑制しうるか否かを決定するために、肥満の遺伝子モデルである(Yenら、FASEB J. 8:479〜488、1994)野鼠致死黄色(Ay)マウスにおけるミオスタチンの変異の影響を調べた。致死黄色変異とミオスタチン変異とに関して二重にヘテロ接合であるマウスを作製して、これらの二重ヘテロ接合マウスの交配によって得られた子孫を調べた。 Ay/a、ミオスタチン-/-二重変異体マウスの全身体重は、Ay/aミオスタチン+/+マウスと比較して劇的に減少した(約9g)。全身体重のこのような減少は、Ay/aミオスタチン、-/-二重変異体が、Ay/aミオスタチン+/+マウスより約2〜3倍多い骨格筋を有することを考慮すると、さらにより劇的であった。二重変異体は、Ay/aミオスタチン+/+マウスより筋肉が約10 g多く、したがって、組織の残りにおける総重量の減少は約19 gであった。 全身体重の減少は、全体的な脂肪含有量の減少が原因であった。表2に示すように、傍子宮および後腹膜脂肪体の重量は、Ay/aミオスタチン+/+マウスと比較すると、Ay/a、ミオスタチン-/-二重変異体では5倍〜6倍減少した。これらの結果は、ミオスタチン変異の存在が肥満における脂肪の蓄積を劇的に抑制することを示している。 ミオスタチン変異の存在はまた、グルコース代謝に劇的な影響を及ぼした。ミオスタチン変異を欠損する野鼠致死マウスは、大いに異常な耐糖能試験結果を示し、血清グルコースレベルはしばしば450〜600 mg/dlに達し、4時間のあいだに基準値レベルにごくゆっくりと回復する。雌性野鼠致死マウスは雄性マウスより影響を受けにくく、雌性マウスによっては、先に記述したようにこの試験においてほぼ通常に反応した(Yenら、上記、1994を参照のこと)。対照的に、Ay/aミオスタチン-/-マウスはわずかに異常な耐糖能試験を示したが、これらの動物のいずれもAy/aミオスタチン+/+マウスにおいて認められた肉眼的な異常を示さなかった。 これらの結果は、ミオスタチン変異が少なくとも部分的に野鼠致死マウスにおいて異常な糖代謝の発達を抑制することを示している。重要なことは、ミオスタチン変異に関してヘテロ接合であるマウスは、ミオスタチン+/+およびミオスタチン-/-マウスと比較して中間の反応を示し、このようにミオスタチンの用量依存的な作用を確認した。実施例6組換えミオスタチンの精製 本実施例は、組換えミオスタチンを調製および単離する方法を提供する。 ミオスタチンの生物活性を解明するために、大量のミオスタチン蛋白質をバイオアッセイ法のために精製した。高レベルのミオスタチン蛋白質を産生する安定なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株は、メソトレキセート選択スキームを用いてジヒドロ葉酸レダクターゼカセットと共にミオスタチン発現カセットを同時増幅することによって作製した(McPherronら、上記、1997)。ミオスタチンは、ヒドロキシアパタイト、レンチルレクチンセファロース、DEAEアガロース、ヘパリンセファロースでの連続分画によって、最も産生量の多い株の条件培地から精製した。銀染色解析によって、これらの四つのカラムクロマトグラフィー段階の後に得られた精製蛋白質(「ヘパリン溶出液」と呼ぶ)は、分子量およそ35キロダルトン(kDa)と12 kDaの二つの分子種からなることが判明した。 精製蛋白質調製物は、二つのミオスタチンプロドメインペプチドと成熟C末端ミオスタチンペプチドのジスルフィド結合二量体との複合体を表すための様々な基準によって決定した。第一に、プロミオスタチン配列の特異的部分に対して作製された抗体を用いるウェスタンブロット解析によって、プロドメインとして35 kDaのバンド、および成熟C末端ペプチドとして12 kDaのバンドが同定された。第二に、非還元条件で、成熟C末端ペプチドに対して作製した抗体と反応する種は、ジスルフィド結合二量体と一致する電気泳動移動度を示した。第三に、プロドメイン対成熟C末端ペプチドのモル比は約1:1であった。第四に、プロドメインと成熟C末端ペプチドは、四つのカラムクロマトグラフィー段階を通して同時に精製された。最後に、C末端領域は、コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを含まないが、成熟C末端ペプチドはレンチルレクチンカラムに結合し、このことは、成熟C末端ペプチドが、可能性があるN結合グリコシル化部位を含むプロドメインペプチドとのその相互作用によってカラムに結合したことを示している。 これらの結果は、遺伝子改変CHO細胞によって産生されたミオスタチンが、蛋白質分解によって処理された形で分泌され、得られたプロドメインと成熟C末端領域とが非共有結合によって会合して、TGF-βに関する記述と類似のように、二つのプロドメインペプチドとC末端蛋白質分解断片のジスルフィド結合二量体とを含む複合体を形成する。TGF-β複合体において、C末端二量体は、不活性な潜在型として存在し(Miyazonoら、J. Biol. Chem. 263:6407〜6415、1988)、活性種は、酸、カオトロピック剤、反応性酸素種、もしくはプラスミンによる処理によって、またはトロンボスピンジンおよびインテグリンαvβ6を含む他の蛋白質との相互作用によって、この潜在型複合体から放出されうる(Lawrenceら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 133:1026〜1034、1985;Lyonsら、J. Cell Biol. 106:1659〜1665、1988;Schultz-CherryとMurphy-Ullrich、J. Cell Biol. 122:923〜932、1993;Barcellos-HoffとDix、Mol. Endocrinol. 10:1077〜1083、1996;Mungerら、Cell 96:319〜328、1999)。さらに、精製プロドメインペプチド(潜在関連ペプチドまたはLAPとしても知られる)をTGF-β複合体に加えると、インビトロおよびインビボで精製C末端二量体の生物活性を阻害する(GentryとNash、Biochemistry 29:6851〜6857、1990;Bottingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5877〜5882、1996)。 プロドメインと成熟C末端ペプチドの複合体からなるヘパリン溶出液は、HPLC C4逆相カラムを用いて精製した。C末端二量体は、プロドメインより速くHPLCカラムより早期に溶出し、このように、プロドメインを含まないC末端二量体を単離することができる。ほとんどプロドメインを含む画分も同様に得られたが、これらの画分は少量のC末端二量体を含んだ。蛋白質のいくつかは、高分子量複合体として存在した。高分子量複合体の特性は不明であるが、還元剤の存在下または非存在下でのウェスタンブロット解析に基づくと、これらの複合体は、少なくとも一つのプロドメインペプチドと一つまたはそれ以上のジスルフィド結合によって結合した一つのC末端成熟ミオスタチンペプチドとを含みうる。実際に、プロペプチド(HPLC画分35〜37)に関して濃縮したHPLC画分に存在する成熟C末端ペプチドのほとんどがこれらの高分子量複合体に存在した。これらの高分子量複合体はおそらく、遺伝子改変されたCHO細胞によって分泌された不適切に折り畳まれた蛋白質を表す。実施例7ミオスタチンはアクチビン受容体と特異的に相互作用する 本実施例は、ミオスタチンが培養細胞上で発現されたアクチビンII型受容体に特異的に結合すること、およびこの特異的結合がミオスタチンプロドメインによって阻害されることを証明する。 いくつかのTGF-βファミリーメンバーの受容体が同定されており、ほとんどが膜を1回貫通するセリン/トレオニンキナーゼである(MassagueとWeis-Garcia、Cancer Surveys 27:41〜64、1996)。例えば、アクチビンII型受容体(Act RIIAおよび/またはAct RIIB)は、TGF-βスーパーファミリーのメンバーに結合することが知られている。Act RIIB受容体を欠損するマウスの表現型は、前/後軸パターン形成の欠損およびGDF-11ノックアウトマウスにおいて認められたものと類似の腎異常を示した(McPherronら、Nat. Genet. 22:260〜264、1999;オウとリ(Oh and Li)、Genes Devel. 11:1812〜1826、1997)。GDF-11とミオスタチン(GDF-8)のアミノ酸配列は、成熟C末端領域において90%同一であることから、ミオスタチンがアクチビンII型受容体と特異的に相互作用するか否かを調べた。 ミオスタチンは、放射性ヨウ素化によって標識し、Act RIIB発現構築物によってトランスフェクトしたCOS細胞を用いて結合試験を行った。ミオスタチンはトランスフェクトしたCOS細胞と特異的に相互作用した。ミオスタチン結合は、過剰量の非標識ミオスタチンによって用量依存的に競合され、空のベクターをトランスフェクトした対照COS細胞では有意に低かった。BMP RIIまたはTGF-β RII発現構築物をトランスフェクトした細胞では有意な結合は起こらなかった。Act RIIBトランスフェクト細胞に対するミオスタチンの結合は飽和的であり、結合親和性はスキャッチャード解析によって決定すると約5nMであった。 受容体結合アッセイ法をまた用いて、この系において、ミオスタチンプロドメインが、成熟C末端二量体のAct RIIBとの特異的相互作用能を阻害するか否かを調べた。精製プロドメインペプチドを加えると、Act RIIBトランスフェクトCOS細胞に対するC末端二量体の結合能は用量依存的に遮断された。これらの結果は、ミオスタチンプロドメインがミオスタチンの天然の阻害剤であることを示している。実施例8ミオスタチンレベルの増加は体重減少を誘導する 本実施例は、ミオスタチンレベルの上昇がインビボでの実質的な体重減少につながりうることを証明する。 一組の実験において、ミオスタチンを発現するCHO細胞をヌードマウスに注入した。ミオスタチン発現CHO細胞腫瘍を有するヌードマウスは、細胞の注入後約12〜16日のあいだに重度の衰弱を示した。この消耗性症候群は、類似の選択プロセスを受けたがミオスタチンを発現しなかった多様な如何なる対照CHO株も注射したヌードマウスでは認められなかった。さらに、CHO細胞をトランスフェクトするために用いた構築物におけるミオスタチンコード配列は、メタロチオネインプロモーターの制御下であり、ミオスタチン発現腫瘍を有するマウスが硫酸亜鉛を含む水によって維持されている場合には、消耗性症候群は悪化した。ウェスタンブロット解析によって、ミオスタチン発現CHO細胞を有するヌードマウスの血清中にミオスタチン蛋白質が高レベルで存在することが明らかとなった。これらの結果は、消耗性症候群がヌードマウスにおいてミオスタチンレベルの上昇に反応して誘導されることを示しており、下記に示すように、この結果は、精製ミオスタチンを注射したマウスにおいて類似の作用を認めることによって確認された。 ミオスタチン発現CHO細胞を有するヌードマウスにおいて認められた劇的な体重減少は、主に脂肪と筋重量の不均衡な喪失が原因であった。白色脂肪体の重量(嚢内の白色脂肪、子宮内脂肪、および後腹膜脂肪)は、対照CHO細胞腫瘍を有するマウスと比較して90%以上減少した。筋重量も同様に大きく減少し、個々の筋は16日までにミオスタチン発現マウスでは対照マウスの場合の約半分の重量となった。筋重量のこのような喪失は、繊維の大きさおよび蛋白質含有量がこれに対応して減少することによって反映された。 ミオスタチン発現CHO細胞腫瘍を有するマウスはまた、低血糖となった。しかし、16日間の試験中に調べた各期間で全てのマウスが等量の試料を消費したために、体重減少と低血糖症は食物消費量の差によるものではなかった。これらの結果は、ミオスタチン過剰発現が、癌またはAIDSのような慢性疾患を有する患者において起こるカヘキシア消耗性症候群と類似の劇的な体重減少を誘導することを示している。 低用量のミオスタチンを用いてより慢性的な投与を行うと、脂肪重量の変化を認めた。例えば、ミオスタチン蛋白質1μgを1日2回7日間注射すると、異なる多くの白色脂肪体(嚢内白色、子宮内、および後腹膜脂肪体)の重量の約50%減少が起こったが、褐色脂肪(嚢内褐色)には有意な作用を認めなかった。これらの結果は、ミオスタチンが、インビボで体重減少と、極端な例では消耗性症候群を誘導しうることを確認する。実施例9アクチビン受容体に対するミオスタチン結合の特徴付け 本実施例は、アクチビン受容体に対するミオスタチンの結合と、インビボでミオスタチンによって生じた生物作用との関係の特徴を調べる方法を記述する。 Act RIIAまたはAct RIIBノックアウトマウスを用いて、Act RIIAまたはAct RIIBがインビボでミオスタチンの受容体であることを確認することができる。これらのマウスの詳細な筋の解析を行えば、アクチビン受容体のノックアウトが筋繊維の数またはサイズの変化に関連するか否かを決定することができる。Act RIIA/Act RIIB二重ホモ接合変異体は、胚形成のあいだに早期に死亡することから(Songら、Devel. Biol. 213:157〜169、1999)、様々なホモ接合体/ヘテロ接合体の組み合わせのみを調べることができる。しかし、双方の遺伝子が筋組織に限って「欠失」され、それによって二重ホモ接合ノックアウトマウスを生後に検査することができる、組織特異的または条件的ノックアウトマウスを作製することができる。 脂肪細胞の数またはこれらの脂肪細胞による脂質の蓄積がノックアウトマウスにおいて変化しているか否かを決定するために、脂肪組織に及ぼす作用をマウスの加齢に関して調べることができる。脂肪細胞の数および大きさは、コラゲナーゼ処置組織から細胞浮遊液を調製することによって決定される(Rodbell、J. Biol. Chem. 239:375〜380、1964;HirschとGallian、J. Lipid. Res. 9:110〜119、1968)。動物における総脂質含有量は、乾燥死体の重量と脂質抽出後の残留乾燥死体重量とを測定することによって決定される(Folchら、J. Biol. Chem. 226:497〜509、1957)。 食後および絶食時グルコースおよびインスリン、トリグリセリド、コレステロールおよびレプチンを含む多様な血清パラメータも同様、調べることができる。上記のように、血清トリグリセリドおよび血清インスリンは、ミオスタチン変異体動物において減少している。アクチビン受容体ノックアウトマウスが外からのグルコース負荷に対して反応できるか否かは、耐糖能試験を用いて調べることができる。先に開示したように、グルコース負荷に対する反応は、5ヶ月齢で野生型マウスとミオスタチン変異体マウスにおいて同一であった。この知見は、マウスが年をとるにつれてマウスにおけるこれらのパラメータを測定することによって拡大することができる。血清中のインスリンレベルはまた、耐糖能試験のあいだの様々な時間に測定することができる。 基礎代謝速度はまた、熱量計(コロンバスインストルメンツ社)を用いてモニターすることができる。先に開示したように、ミオスタチン変異体マウスは、3ヶ月齢でその野生型相対物より低い代謝速度を示す。この解析は、より年老いたマウスに拡大することができ、呼吸商も同様にこれらの動物において測定することができる。正常な熱発生を維持できるか否かは、4℃に置いた場合に体温を維持できるか否かと共に、基礎体温を測定することによって決定することができる。褐色脂肪重量と、褐色脂肪、白色脂肪、筋、およびその他の組織におけるUCP1、UCP2、およびUCP3の発現レベルも同様に調べることができる(Schrauwenら、1999)。 体重の増加と比較した食物摂取量をモニターすることができ、飼料効率を計算することができる。さらに、高脂肪食を与えた動物の体重増加をモニターすることができる。高脂肪食によって維持した野生型マウスは急速に脂肪を蓄積するが、本明細書に開示した結果は、アクチビン受容体変異体動物が比較的痩身のままであることを示している。 これらの研究の結果は、特に、その全体的な代謝速度に関するミオスタチンマウスの作用のより完全なプロフィールを提供して、それによってミオスタチンノックアウトマウスが脂肪の蓄積を抑制できることが、脂肪の形で保存するためにほとんどエネルギーが利用されないようにエネルギー利用がシフトする筋肉におけるミオスタチン変異の同化作用であるか否かに関する洞察を与える。例えば、脂肪蓄積の減少は、熱発生速度の増加が原因となりうる。これらの結果は、肥満およびII型糖尿病の異なる遺伝子モデルの意味においてミオスタチン活性の効果を比較するための基準値を提供するであろう。実施例10肥満およびII型糖尿病の遺伝子モデルにおけるミオスタチンの作用の特徴付け 本実施例は、肥満またはII型糖尿病の治療におけるミオスタチンの作用を決定する方法を記述する。 野生型マウスと比較してミオスタチン変異体マウスにおける総脂肪蓄積の劇的な減少は、ミオスタチン活性が肥満またはII型糖尿病を治療または予防するように操作することができる。ミオスタチン変異の作用は、例えば、「肥満」マウス(ob/ob)、「糖尿病」マウス(db/db)および野鼠致死黄色(Ay)変異体系統を含むこれらの代謝疾患に関するいくつかの十分に特徴付けのなされたマウスモデルの意味において調べることができる。これらの系統のそれぞれは、上記の実質的にあらゆるパラメータおよび試験に関して異常である(例えば、Yenら、上記、FriedmanとHalaas、Nature 395:763〜770、1998を参照のこと)。ミオスタチン変異がこれらの他の変異を有するマウスにおいてこれらの異常の発症を遅らせるまたは抑制することができるか否かは、二重変異体を構築して、二重変異体動物に、ob/ob、db/db、または野鼠致死黄色変異のみを有する適当な対照同腹子と共に様々な試験を行うことによって調べることができる。 先に開示したように、Ayマウスにおけるミオスタチン変異は、ミオスタチン変異体Ayマウスにおける脂肪蓄積の約5倍抑制、および耐糖能試験によって評価すると異常なグルコース代謝の発症の部分的抑制に関連した。これらの結果は、様々な年齢でのさらなる動物を含めるように拡大することができ、ob/obおよびdb/db変異体について類似の試験を行うことができる。これらの変異はいずれも劣性であるために、ミオスタチン変異とobまたはdb変異のいずれかに関して二重にホモ接合であるマウスを作製することができる。これらの遺伝子モデル系におけるミオスタチン機能の部分的喪失の影響を調べるために、obまたはdb変異に関してホモ接合であるマウス、およびミオスタチン変異に関してヘテロ接合であるマウスも同様に調べる。ミオスタチンおよびob変異に関して二重にヘテロ接合であるマウスは作製されており、これらの二重ヘテロ接合マウスの交配から得られた子孫を、特に脂肪蓄積とグルコース代謝に関して調べることができる。肥満変異体におけるこれらの異常のいずれかまたは双方の部分的抑制は、ミオスタチンが肥満およびII型糖尿病の治療の標的となることを示すことができる。実施例11ミオスタチン活性に影響を及ぼしうるドミナントネガティブポリペプチドを発現するトランスジェニックマウスの特徴付け 本実施例は、ミオスタチン発現またはミオスタチンシグナル伝達を阻害しうるドミナントネガティブポリペプチドを発現することによって生後にミオスタチンの作用の特徴を調べる方法を記述する。ミオスタチン阻害剤 生後にミオスタチン活性を調節することを用いて、筋繊維数(過形成)および筋繊維の大きさ(肥大)に及ぼすミオスタチンの作用を調べることができる。ミオスタチン遺伝子が動物の一生の間で一定期間欠失している条件付ミオスタチンノックアウトマウスをこれらの試験に用いることができる。creレコンビナーゼと組み合わせたtet調節物質は、そのようなマウスを作製するためのシステムを提供する。この系において、creの発現は、ドキシサイクリンの投与によって誘導される。 ミオスタチン活性が動物の一生の間の一定期間減少または阻害されうるように、誘導型プロモーターからミオスタチンの阻害剤を発現するトランスジェニックマウスも同様に作製することができる。テトラサイクリン調節物質は、ミオスタチン発現がドキシサイクリンによって誘導されているそのようなトランスジェニックマウスを作製するために有用である。 ハイブリッド逆tet-トランスアクチベータ(VP16の活性化ドメインと変異体逆tetリプレッサーとの融合蛋白質)とハイブリッドtet-トランスリプレッサー(哺乳類Kox1のKRABリプレッサードメインと本来のtetリプレッサーとの融合蛋白質)の同時発現を利用するtet系の改変は、トランスジェニックマウスを作製するために特に有用となりうる(Rossiら、Nat. Genet. 20:389〜393、1998;Forsterら、Nucl. Acids Res. 27:708〜710、1999)。この系において、ハイブリッド逆tet-トランスアクチベータは、tetオペレータ配列に結合して、テトラサイクリンの存在下に限って転写を活性化する;ハイブリッドtet-トランスリプレッサーは、tetオペレータ配列に結合してテトラサイクリンの非存在下に限って転写を抑制する。これらの二つの融合蛋白質を同時発現させることによって、標的プロモーターの基礎活性は、テトラサイクリンの非存在下ではtet-トランスリプレッサーによって沈黙化し、テトラサイクリンを投与すると、逆tet-トランスアクチベータによって活性化される。 二つのタイプのトランスジェニック系統を作製することができる。第一のタイプにおいて、導入遺伝子は、筋特異的プロモーター、例えば筋クレアチニンキナーゼプロモーター(Sternbergら、上記、1988)またはミオシン軽鎖エンハンサー/プロモーター(Donoghueら、上記、1991)の制御下でミオスタチン阻害剤ポリペプチドをコードする。個々のトランスジェニック系統を、骨格筋におけるtet調節物質の特異的発現に関してスクリーニングして、認められた如何なる作用も例えば組み込み部位特異的作用によるものではないことを確認するために、二つのプロモーターのそれぞれに関していくつかの独立した系統を選択して調べる。ミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーの制御下で二つのtet調節物質を含む構築物が構築されており、これを前核注入のために用いることができる。第二のタイプの系統において、導入遺伝子はさらにtetオペレータ配列を含む最小のCMVプロモーターの制御下でミオスタチン阻害剤ポリペプチドを含む。 ミオスタチン阻害剤は、本明細書に開示のように、ミオスタチン活性を阻害しうるミオスタチンのドミナントネガティブ型またはミオスタチンプロドメインとなりうる。TGF-βファミリーメンバーのドミナントネガティブ型が記述されており(例えば、Lopezら、Mol. Cell Biol. 12:1674〜1679、1992;WittbrodtとRosa、Genes Devel. 8:1448〜1462、1994)、これは例えば、変異体蛋白質分解切断部位を含み、それによって蛋白質が生物学的に活性な種に処理されないように防止する。内因性の野生型遺伝子を細胞において同時発現させると、変異体蛋白質は、野生型蛋白質と非機能的ヘテロダイマーを形成し、このように、ドミナントネガティブとして作用する。プロミオスタチン切断部位に変異を含む変異体ミオスタチンポリペプチドが構築されており、293細胞において様々な比で変異体を野生型ミオスタチンと共に同時発現させることによって、ドミナントネガティブ作用に関して調べることができる。構築物を一過的にトランスフェクトした293細胞からの条件培地をウェスタンブロット解析によって調べて、成熟C末端二量体の形成を変異体が遮断するか否かを調べることができる。 ミオスタチンプロドメインのみをコードする発現構築物を利用することができる。先に開示したように、プロドメインは成熟C末端二量体と堅固な複合体を形成して、培養において受容体を発現する細胞において、成熟C末端ミオスタチン二量体のAct RIIBとの結合能を遮断する。TGF-βと同様に、ミオスタチンプロドメインはまた、インビボで不活性な潜在的複合体において成熟C末端二量体を維持することができる。 これらのトランスジェニック動物を、tet調節物質を発現する動物と交配させて、tet調節物質と阻害剤標的構築物の双方を含む二重トランスジェニック系統を作製することができる。これらの二重トランスジェニック系統を、異なる成分が全て適切に発現されている系統に関してスクリーニングすることができる。飲料水にドキシサイクリンを投与する前後での、それぞれの系統における代表的なマウスの様々な筋および対照組織から得たRNAを用いるノザンブロット解析を用いて、そのようなトランスジェニック系統を同定ことができる。ドキシサイクリンの非存在下では如何なる組織にも導入遺伝子も発現せず、ドキシサイクリンの存在下で筋肉に限って導入遺伝子を発現するトランスジェニック系統を選択する。 選択したトランスジェニック動物にドキシサイクリンを投与して、筋重量に及ぼす作用を調べる。ドキシサイクリンは、胚形成のあいだに阻害剤の発現を誘導するために、妊娠した母親動物に投与することができる。トランスジェニック動物発達の際のミオスタチン活性を阻害する作用を、ミオスタチンノックアウトマウスにおいて認められた作用と比較することができる。tet調節物質の発現を駆動するためのプロモーターは、ミオスタチンが最初に発現される時期より発達の後期に誘導されうることから、トランスジェニックマウスにおける筋重量に及ぼす作用を、ミオスタチンノックアウトマスにおいて起こる作用と比較することができる。 ミオスタチン活性を生後に阻害する作用は、出生後の様々な時間に二重トランスジェニックマウスにドキシサイクリンを投与することによって調べることができる。ドキシサイクリン処置は、例えば、3週齢で開始することができ、筋重量の差がミオスタチンノックアウトマウス対野生型マウスにおいて最高に達する月例である5ヶ月齢で、動物を解析することができる。動物は、筋重量に及ぼす阻害剤の作用に関して調べる。同様に、繊維の数および繊維の大きさに及ぼす作用を決定するために、筋肉を組織学的に調べることができる。さらに、トランスジェニックマウスにおける様々な筋の繊維型の解析を行って、I型またはII型繊維に対する選択的作用が存在するか否かを調べることができる。 ドキシサイクリンは、ミオスタチン阻害剤の作用の特徴を調べるために、異なる用量で、かつ異なる時期に投与することができる。二重トランスジェニックマウスも同様に、ドキシサイクリンによって慢性的に維持することができ、その脂肪体重量および上記の他の関連する代謝パラメータに及ぼす作用を調べることができる。これらの研究の結果は、ミオスタチン活性を生後に調節すると、筋重量を増加させて、脂肪蓄積を減少させうることを確認し、このように、ミオスタチンのターゲティングが、臨床において多様な筋消耗および代謝疾患の治療にとって有用となりうることを示している。ミオスタチン ミオスタチン導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスも同様に調べて、ミオスタチンの発現時に生じた作用を、ミオスタチン発現CHO細胞を含むヌードマウスにおいて認められた作用と比較することができる。上記と同様に、ミオスタチンは、条件(tet)および組織特異的調節エレメントの制御下に置くことができ、ヌードマウスにおいて認められたものと類似の消耗性症候群が起こるか否かを決定するために、トランスジェニックマウスにおけるミオスタチンの発現を調べることができる。ミオスタチン導入遺伝子は、例えば、導入遺伝子が内因性のミオスタチン遺伝子と区別できるように、SV40に由来するプロセシングシグナルを含みうる。 ドキシサイクリンの投与後様々な時間にミオスタチントランスジェニックマウスから血清試料を単離して、血清中のミオスタチン導入遺伝子産物のレベルを決定することができる。動物が有意な体重減少を示すか否かを決定するために、動物の全身体重を経時的にモニターする。さらに、個々の筋および脂肪体を単離および重量を測定して、筋繊維の数、大きさ、およびタイプを選択した筋試料において決定する。 ミオスタチン導入遺伝子の発現レベルは、動物に投与したドキシサイクリンの用量を変化させることによって変化させることができる。導入遺伝子発現は、例えば、筋肉における導入遺伝子RNAレベルのノザンブロット解析または血清中のミオスタチン蛋白質レベルを用いてモニターすることができる。特定のレベルのミオスタチン導入遺伝子発現が同定されれば、ミオスタチンによって誘導される消耗の程度を相関させることが可能となる。トランスジェニック系統はまた、ミオスタチンノックアウトマウスと交配させて、ミオスタチンの唯一の起源が導入遺伝子からの発現であるマウスを作製することができる。発達の様々な時期でのミオスタチンの発現を調べて、繊維の数、繊維の大きさ、および繊維のタイプに及ぼすミオスタチンの作用を決定することができる。ミオスタチンの発現を正確かつ迅速に制御できるマウスが利用できれば、ミオスタチンシグナル伝達経路の特徴をさらに調べるための、かつミオスタチンシグナル伝達を調節するためにおそらく有用となりうる様々な作用物質の作用を調べるために強力なツールとなる。ミオスタチンシグナル伝達のエフェクター 骨格筋において特異的に発現されるTGF-βシグナル伝達経路の成分を含みうる、ミオスタチンシグナル伝達経路のいずれかのドミナントネガティブ型を含むトランスジェニックマウスを作製することができる。本明細書において開示するように、アクチビンII型受容体によって誘導される経路を通してシグナル伝達を媒介するSmad蛋白質は、ミオスタチンシグナル伝達に関係しうる。 Act RIIBは、ミオスタチンに非常に近縁であるGDF-11に結合することができ(McPherronら、上記、1997;Gamerら、上記、1999;Nakashimaら、Mech. Devel. 80:185〜189、1999)、およびSmad2、Smad3、およびSmad4に結合して阻害することができるc-skiの発現は、筋肉の増殖に劇的に影響を及ぼしうる(Sutraveら、上記、1990;Berkら、上記、1997;同様に、Luoら、上記、1999;Stroscheinら、上記、1999;Sunら、上記、1999aおよびb;Akiyoshiら、上記、1999)。本明細書に開示するように、ミオスタチンは、Act RIIBと特異的に相互作用して、したがって、インビボでアクチビンII型受容体に結合して、Smadシグナル伝達経路を活性化することによって、少なくとも部分的にその生物作用を発揮することができる。 筋増殖の調節におけるSmadシグナル伝達経路の役割は、Act RIIB/Smadシグナル伝達経路における特定の点で遮断される、または遮断されうるトランスジェニックマウス系統を用いて調べることができる。筋クレアチニンキナーゼプロモーター、またはミオシン軽鎖エンハンサー/プロモーターを用いて、Smadシグナル伝達経路の様々な阻害剤の発現を促進することができる。 この系において有用な阻害剤には、例えば、フォリスタチン;ドミナントネガティブAct RIIB受容体;Smad3のようなドミナントネガティブSmadポリペプチド;c-ski;またはSmad7のような阻害性Smadポリペプチドが含まれうる。フォリスタチンは、GDF-11を含む特定のTGF-βファミリーメンバーに結合してその活性を阻害することができる(Gamerら、上記、1999)。アクチビンII型受容体のドミナントネガティブ型は、切断型GDF受容体を発現させることによって、例えば細胞外ドメイン、特にAct RIIB細胞外ドメインの可溶性型を発現させることによって、またはキナーゼドメインを欠損するもしくは変異体受容体がキナーゼ活性を欠損するような変異を含む切断型Act RIIB受容体を発現させることによって、得ることができる。Smad7は、アクチビン、TGF-β、およびBMPによって誘導されるシグナル伝達経路を阻害することができる阻害性Smadとして機能する。例えば、Smad3のドミナントネガティブ型は、Smad3のC末端燐酸化部位を変異させて、それによってSmad3機能を遮断することによって構築することができる(Liuら、上記、1997)。c-ski過剰発現は、トランスジェニックマウスにおける筋の肥大に関連している(Sutraveら、上記、1990)。 トランスジェニックマウスを作製して、それぞれの創始動物系統において導入遺伝子が適切に筋特異的に発現されているか否かを調べることができる。選択したマウスを、全身体重、個々の筋重量、ならびに筋繊維の大きさ、数、およびタイプに関して調べる。筋重量に及ぼす明確な作用を示すそれらの系統を、脂肪蓄積および上記の他の関連する代謝パラメータに関してさらに調べることができる。アクチビン受容体/Smadシグナル伝達経路における特定の段階をターゲティングするためにこれらの異なる作用物質を用いることは、異なる作用物質のシグナル伝達が異なる段階で重なり合うために特に情報に富む。例えば、フォリスタチンは、アクチビンおよびGDF-11に結合してそれらの活性を阻害するが、TGF-βには結合せず、ドミナントネガティブSmad3は、アクチビンとTGF-β受容体の双方を通してのシグナル伝達を遮断することができる。Smad7は、BMP受容体を通してのシグナル伝達も阻害するために、さらにより多面発現性を有しうる。本研究によって、ミオスタチン活性を調節するための特異的標的を同定することができ、それによってミオスタチンシグナル伝達を調節する、したがってミオスタチン活性を調節する医薬品または他の作用物質を開発するための様々な戦略を提供することができる。 特に、本明細書に記載のトランスジェニック系統を用いて、肥満またはII型糖尿病の発症に及ぼすミオスタチン機能またはSmadシグナル伝達経路を生後に遮断する影響を調べることができる。例えば、阻害性導入遺伝子をob/ob、db/db、およびAy変異体マウスに交配させることができる。ドキシサイクリンの非存在下では、阻害性導入遺伝子は発現されず、したがって動物は親の変異体マウスのそれぞれと区別できない。ドキシサイクリンの非存在下では、阻害剤が発現されて、ミオスタチン活性を遮断することができる。これらの変異体動物において、代謝異常の発症に対するミオスタチン活性を阻害する影響を調べることができる。 阻害剤の発現は、作用を最大限にするために、初期週齢、例えば3週齢で誘導することができる。さらに、ミオスタチン活性は、代謝異常が非可逆的になるほど重症となる前に遮断することができる。動物をドキシサイクリンによって維持して、脂肪の蓄積およびグルコース代謝に関連する試験を含む上記の試験を用いて、様々な週齢で評価することができる。一つまたはそれ以上の試験結果がob/ob、db/db、およびAy変異体動物において異常となる如何なる週齢の遅延も同定することができる。肥満またはII型糖尿病の何らかの兆候を示すより週齢の高い動物を用いて類似の研究を行うことができ、脂肪重量およびグルコース代謝を含む様々なパラメータに及ぼすミオスタチン活性阻害の影響を調べることができる。これらの試験の結果は、肥満またはII型糖尿病を予防または治療するための努力において操作することができる特異的標的をさらに同定することができる。実施例12カヘキシアの誘導に及ぼすミオスタチン作用の特徴付け 本実施例は、カヘキシアの発症および進行におけるミオスタチンシグナル伝達の役割を調べる方法について記述する。 アクチビン受容体およびSmad経路は、正常な個体におけるミオスタチン活性の調節に関係するシグナル伝達経路の少なくとも一部を構成することができ、したがって、ミオスタチンの過剰レベルによって個体において起こりうる作用の媒介に関与しうる。本明細書において開示するように、例えば、カヘキシアは、少なくとも部分的に異常に高いレベルのミオスタチンによって媒介されうる。そのため、Smad経路を通してシグナル伝達を操作する方法は、筋消耗全般および特にカヘキシアを治療する薬剤を開発するための新しい戦略を提供しうる。 カヘキシアにおけるSmadシグナル伝達経路の役割は、例えば、インターロイキン-6(IL-6;Blackら、Endocrinol. 128:2657〜2659、1991、参照として本明細書に組み入れられる)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α;Oliffら、Cell 50:555〜563、1987、参照として本明細書に組み入れられる)、または特定の腫瘍細胞によって誘導されうるカヘキシアに対する上記の様々なトランスジェニック系統の感受性を調べることによって調べることができる。IL-6およびTNF-αの場合、阻害剤導入遺伝子をヌードマウスバックグラウンドにおいて交配させた後、IL-6またはTNF-αを産生するCHO細胞を動物にチャレンジすることができ、これらがこのように過剰発現されるとヌードマウスにおいて消耗が誘導される。IL-6またはTNF-αを過剰発現するCHO細胞は、ミオスタチン過剰産生細胞の作製に関して先に記述した方法を用いて調製することができる。例えば、TNF-α cDNAをpMSXND発現ベクターにクローニングした後(LeeとNathans、J. Biol. Chem. 263:3521〜3527、1988)、発現構築物の増幅されたコピーを有する細胞をメソトレキセートの増加濃度において段階的に選択することができる。 マウスにおいてカヘキシアを誘導しうるルイス肺癌細胞(Matthysら、Eur. J. Cancer 27:182〜187、1991、参照として本明細書に組み入れられる)または結腸 26腺癌細胞(Tanakaら、J. Cancer Res. 50:2290〜2295、1990、参照として本明細書に組み入れられる)のような腫瘍細胞も同様に、これらの試験に用いることができる。これらの細胞株は、マウスにおいて腫瘍として増殖させると重度の衰弱を引き起こす。このように、これらの腫瘍の影響を本明細書に記載の様々なトランスジェニックマウスにおいて調べることができる。様々な腫瘍細胞が特定の遺伝的背景において増殖することが認識されている。例えば、ルイス肺癌細胞は、通常C57BL/6マウスにおいて増殖するが、結腸 26癌細胞は、通常BALB/cマウスにおいて増殖する。このように、導入遺伝子をこれらまたは他の遺伝的バックグラウンドと戻し交配させると、腫瘍細胞の増殖が可能となる。 全身体重、個々の筋重量、筋繊維の大きさおよび数、飼料摂取量ならびにグルコースレベルを含む血清パラメータを含む様々なパラメータをモニターすることができる。さらに、ミオスタチン発現の増加がカヘキシアに関連していることを確認するために、血清ミオスタチンレベルおよび筋肉におけるミオスタチンRNAレベルを調べることができる。これらの試験の結果から、ミオスタチンの作用が、これらの実験モデルにおいてカヘキシア誘導作用物質の下流に存在することを確認することができる。結果はまた、Smadシグナル伝達経路がこれらのモデルにおけるカヘキシア発症にとって必須であることを確認し、Smadシグナル伝達を調節することによってカヘキシアの治療において治療利益が選られうることを証明することができる。実施例13増殖分化因子-8(GDF-8)およびGDF-11受容体の同定と特徴付け 本実施例は、GDF-8(ミオスタチン)とGDF-11の細胞表面受容体を同定して特徴を調べる方法を記述する。 精製GDF-8およびGDF-11蛋白質は主に、生物活性のアッセイ法のために用いられる。GDF-8およびGDF-11の作用に関して可能性がある標的細胞を同定するために、それらの受容体を発現する細胞を検索する。この目的のため、精製蛋白質をクロラミンT法を用いて放射標識するが、この方法は、受容体結合試験のためにTGF-β(Cheifetzら、上記、1987)、アクチビン(Suginoら、J. Biol. Chem. 263:15249〜15252、1988)、およびBMP(Paralkarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3397〜3401、1991)のようなこのスーパーファミリーの他のメンバーを標識するために首尾よく用いられている。GDF-8およびGDF-11の成熟プロセシング型はそれぞれ多数のチロシン残基を含む。これらの蛋白質の受容体を同定するために異なる二つのアプローチが行われる。 一つのアプローチは、受容体の数、親和性、および分布を決定するであろう。培養において増殖させた全細胞、胚もしくは成体組織からの凍結切片、または組織もしくは培養細胞から調節した総膜調製物のいずれかを標識蛋白質と共にインキュベートして、結合した蛋白質の量または分布を決定する。細胞株または膜を含む実験に関して、結合量は、数回洗浄後も培養皿上の細胞に結合した放射活性の量、または膜の場合には遠心後に膜に沈降している、もしくは膜と共にフィルター上に残っている放射活性の量を測定することによって決定されるであろう。細胞数がより限られている初代培養を含む実験では、結合部位は、写真乳剤をその上に重ねることによって直接可視化されるであろう。凍結切片を含む実験では、リガンド結合部位は、高解像度β-マックスハイパーフィルムにこれらの切片を露出することによって可視化されるであろう;より詳しい位置が必要である場合は、切片を写真乳剤に浸す。これらの全ての実験に関して、特異的結合は、競合物質として過剰量の非標的蛋白質を加えることによって決定されるであろう(例えば、LeeとNathans、上記、1988を参照のこと)。 第二のアプローチは、受容体の特徴を生化学的に調べることであろう。膜調製物または可能性がある培養標的細胞を標識リガンドと共にインキュベートして、受容体/リガンド複合体を、TGF-βスーパーファミリーのメンバーを含む多様なリガンドの受容体を同定するために一般的に用いられている(MassagueとLike、J. Biol. Chem. 260:2636〜2645、1985)スベリン酸ジスクシニミジルを用いて共有結合によってクロスリンクする。クロスリンクした複合体をSDSポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離して、過剰量の非標識蛋白質の非存在下で標識されるが、存在下では標識されないバンドを調べる。推定の受容体の分子量は、リガンドの分子量を差し引くことによって推定されるであろう。これらの実験が取り組む重要な疑問は、GDF-8およびGDF-11シグナルが、TGF-βスーパーファミリーの他の多くのメンバーと同様にI型およびII型受容体を通してシグナルを伝達するか否かである(MassagueとWeis-Garcia、上記、1996)。 これらの分子の受容体を検出する方法が得られれば、結合親和性および特異性を決定するためにより詳しい解析を行う。スキャッチャード解析を用いて、結合部位の数と解離定数を決定する。GDF-8とGDF-11との交叉競合解析を行うことによって、それらが同じ受容体に結合できるか否かおよびその相対的親和性を決定することが可能となるであろう。これらの試験は、同じまたは異なる受容体を通して分子がシグナルを伝達するか否かに関する示唆を与えるであろう。特異性を決定するために、他のTGF-βファミリーメンバーを用いる競合試験を行う。これらのリガンドのいくつかは市販されており、他のいくつかは、ジェネティクスインスチチュートインクから入手可能である。 これらの実験に関して、多様な胚および成体組織ならびに細胞株を調べる。骨格筋におけるGDF-8の特異的発現およびGDF-8ノックアウトマウスの表現型に基づいて、最初の研究は、膜調製物および凍結切片を用いた受容体研究のために胚および成体筋組織に集中して行った。さらに、妊娠の様々な日齢の胚から、または記述のように成体筋からの筋衛星細胞から筋芽細胞を単離して培養する(VivarelliとCossu、Devel. Biol. 117:319〜325、1986;Cossuら、Cell Diff. 9:357〜368、1980)。培養における様々な日数後にこれらの初代細胞に対する結合試験を行って、オートラジオグラフィーによって結合部位の位置を特定すると、結合部位が筋ミオスタチンのような様々な筋原性マーカー(Vivarelliら、J. Cell Biol. 107:2191〜2197、1988)と共に局在して、結合を、多数の徐核筋管の形成のような細胞の分化状態と相関させることができる。初代細胞を用いることの他に、受容体を調べるために細胞株を利用する。特に、まず、三つの細胞株C2C12、L6、およびP19を中心に実験を行う。C2C12およびL6筋芽細胞は、培養において自発的に分化して、特定の増殖条件に応じて筋管を形成する(YaffeとSaxel、上記、1997;Yaffe、上記、1968)。P19胎児癌細胞は、DMSOの存在下で骨格筋細胞を含む様々な細胞タイプに分化誘導することができる(RudnickiとMcBurney、「Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical approach」ロバートソン(E.J. Robertson)、IRL出版、ケンブリッジ、1987)。受容体結合試験は、これらの細胞株において様々な増殖条件および様々な分化段階で行われるであろう。初回試験は筋細胞を中心に行うが、GDF-8およびGDF-11受容体の有無に関して他の組織および細胞タイプを調べる。 組換えヒトGDF-8(rhGDF-8)ホモダイマーをこれらの結合試験において用いる。rhGDF-8は、CHO細胞を用いて発現させて、純度約90%まで精製した。rhGDF-8の予想分子量は25 kDa〜27 kDaであり、還元されると、12 kDa単量体に還元された。受容体リガンド結合アッセイ法においてI-125標識GDF-8を用いると、二つの筋芽細胞株、L6およびG-8がGDF-8に結合した。非標識GDF-8が標識リガンドの結合を有効に競合したことから、結合は特異的であった。解離定数(Kd)は370 pMであり、L6筋芽細胞は多数の細胞表面結合蛋白質(受容体5,000個/細胞)を有する。GDF-11(BMP-11)は、GDF-8に対して非常に相同的(>90%)である。受容体結合試験によって、GDF-8およびGDF-11がL6筋芽細胞上で同じ結合蛋白質に結合することが判明した。GDF-8が既知のTGF-β受容体に結合したか否かを決定することが重要である。TGF-βはGDF-8の結合と競合せず、このことは、GDF-8受容体がTGF-β受容体とは区別されることを示している。GDF-8受容体は、GDF-8に結合しない四つの筋芽細胞株C2C12、G7、MLB13MYC c14、およびBC3H1を含む全ての筋芽細胞株上で発現されなかった。 GDF-8およびGDF-11の受容体をコードする遺伝子または複数の遺伝子を得ることができる。最初の段階は、GDF-8およびGDF-11がその生物作用を発揮する作用機序を理解することに向けられるが、その受容体をコードする遺伝子をクローニングすることが重要である。上記の実験から、GDF-8およびGDF-11が同じ受容体または異なる受容体に結合するかはより明確であろう。同様に、これらの受容体の組織および細胞タイプ分布に関してかなりの情報が存在する。この情報を用いて、二つの異なるアプローチを用いて受容体遺伝子をクローニングする。 第一のアプローチは、発現クローニング戦略を用いることであろう。実際に、これは、最初のアクチビンおよびTGF-β受容体をクローニングするために、MathewsとVale(Cell 65:973〜982、1991)およびLinら(Cell 68:775〜785、1992)によって最初に用いられた戦略であった。高親和性結合部位を最も高い相対数で発現する組織または細胞タイプからポリA-選択RNAを得て、これを用いて、CMVプロモーターとSV40複製開始点とを含む哺乳類の発現ベクターpcDNA-1においてcDNAライブラリを調製する。ライブラリを播種して、それぞれのプレートからの細胞をブロスにプールして凍結する。DNAを調製するために、それぞれのプールから少量を増殖させる。それぞれの個々のプールをチャンバースライドガラスにおいてCOS細胞に一過的にトランスフェクトして、トランスフェクトした細胞をヨウ素化GDF-8またはGDF-11と共にインキュベートする。未結合の蛋白質を洗浄して除去した後、リガンド結合部位をオートラジオグラフィーによって可視化する。陽性プールが同定されれば、そのプールからの細胞を低密度で再度播種して、プロセスを繰り返す。次に、陽性プールを播種して、個々のコロニーをグリッドに採取して、記述のように再度解析する(Wongら、Science 228:810〜815、1985)。 最初に、コロニー1,500個の大きさのプールをスクリーニングする。この複雑度の混合物において陽性クローンを確実に同定できるように、TGF-βおよびクローニングしたII型受容体とを用いる対照実験を行う。TGF-βII型受容体のコード配列をpcDNA-1ベクターにクローニングして、この構築物によって形質転換した細菌を、われわれのライブラリからの細菌と、1:1500を含む様々な比で混合する。次に、この混合物から調製したDNAをCOS細胞にトランスフェクトして、ヨウ素化TGF-βと共にインキュベートして、オートラジオグラフィーによって可視化する。陽性シグナルが1:1500の比で認められれば、クローン1500個のプールをスクリーニングする。そうでなければ、技法が対照実験において陽性シグナルを同定するために十分に感度がよい比に対応する、より小さい大きさのプールを用いる。 同定されているTGF-βスーパーファミリーのメンバーのほとんどの受容体が膜貫通セリン/トレオニンキナーゼファミリーに属するという事実(MassagueとWeis-Garcia、上記、1996)を利用して、GDF-8およびGDF-11受容体をクローニングするために試行される第二の同様の戦略を用いる。これらの受容体の細胞質ドメインは配列が近縁であるために、縮重PCRプローブを用いてGDF-8およびGDF-11の結合部位を含む組織において発現されるこの受容体ファミリーのメンバーをクローニングする。実際に、これはこの受容体ファミリーのメンバーのほとんどを同定するために用いられているアプローチである。一般的戦略は、既知の受容体の保存領域に対応する縮重プライマーを設計して、これらのプライマーを、適当なRNA試料(骨格筋であることが多い)から調製したcDNA上でのPCRに用いること、PCR産物をサブクローニングすること、および最後に個々のサブクローンを配列決定することである。配列が同定されれば、それらを、さらなる解析から二個ずつのクローンを除去するためのハイブリダイゼーションプローブとして用いる。次に、同定された受容体を精製GDF-8およびGDF-11との結合能に関して調べる。このスクリーニングは、少量のPCR産物を生じるに過ぎないため、適当な組織から調製したcDNAライブラリからのそれぞれの受容体について完全長のcDNAクローンを得て、これをpcDNA-1ベクターに挿入して、COS細胞にトランスフェクトして、トランスフェクトした細胞をヨウ素化GDF-8またはGDF-11の結合能に関してアッセイする。理想的には、このスクリーニングにおいて同定されたあらゆる受容体をこれらのリガンドの結合能に関して調べる。しかし、同定された受容体の数は多く、完全長のcDNAの全てを単離してそれらを調べることはかなりの努力を必要としうる。同定される受容体のほぼ特定のいくつかは既知の受容体に反応するため、これらに関して、他の研究者からの完全長のcDNAクローンを得るか、または公表された配列に基づくPCRによってコード配列を増幅するほうが簡単であろう。新規配列に関しては、組織分布をノザンブロット解析によって決定して、その発現パターンが、先に決定したGDF-8および/またはGDF-11結合部位の分布に最も密接に類似する受容体に最も高い優先順位がつけられるであろう。 特に、これらの受容体は二つのクラス、I型およびII型に分類され、これらは配列に基づいて区別することができ、いずれも完全な活性にとって必要であることが知られている。特定のリガンドはII型受容体の非存在下ではI型受容体に結合することができないが、他のリガンドは双方の受容体型に結合することができる(MassagueとWeis-Garcia、上記、1996)。先に概要したクロスリンク実験は、I型およびII型受容体の双方がGDF-8およびGDF-11のシグナル伝達にも関係しているか否かに関して何らかの示唆を示すはずである。もしそうであれば、GDF-8およびGDF-11がどのようにしてそのシグナルを伝達するかを完全に理解するために、これらの受容体サブタイプの双方をクローニングすることが重要であろう。I型受容体がII型受容体の非存在下でGDF-8およびGDF-11と相互作用することができるか否かを予想することはできないために、(複数の)II型受容体をまずクローニングする。少なくとも一つのII型受容体がこれらのリガンドに関して同定された後に限って、GDF-8およびGDF-11のI型受容体を同定する試みを行う。一般的な戦略は、PCRスクリーニングにおいて同定されたI型受容体のそれぞれをII型受容体と共に同時トランスフェクトして、その後クロスリンクによってトランスフェクトした細胞をアッセイすることであろう。I型受容体がGDF-8またはGDF-11に関する受容体複合体の一部である場合、一つがI型受容体に対応し、もう一つがII型受容体に対応する二つのクロスリンクした受容体種が、トランスフェクトした細胞において検出されるはずである。 GDF-8およびGDF-11受容体の検索はさらに、TGF-βスーパーファミリーの少なくとも一つのメンバー、すなわちGDNFがGPI結合成分(GDNFR-α)と受容体チロシンキナーゼ(c-ret:Truppら、Nature 381:785〜789、1996;Durbecら、Nature 381:789〜793、1996;Treanorら、Nature 382:80〜83、1996;Jingら、Cell 85:1113〜1124、1996)とを含む完全に異なる型の受容体複合体を通してシグナル伝達を行うことができるという事実によってさらに複雑となる。GDNFは、TGF-βスーパーファミリーの最も遠縁のメンバーであるが、他のTGF-βファミリーメンバーも同様に、類似の受容体系を通してシグナルを伝達することができる可能性は十分にある。GDF-8およびGDF-11が類似の受容体複合体を通してシグナル伝達を行えば、発現スクリーニングアプローチは、この複合体の少なくともGPI結合成分(実際、GDNFR-αは発現スクリーニングアプローチを用いて同定された)を同定することができるはずである。GDNFの場合、GDNF欠損およびc-ret欠損マウスが類似の表現型であることは、GDNFの可能性がある受容体としてc-retを示唆した。実施例14GDF-11ノックアウトマウスの作製と特徴付け いくつかの局面におけるGDF-11ノックアウトマウスの表現型は、アクチビンIIB型受容体(Act RIIB)を含むTGF-βスーパーファミリーのいくつかのメンバーの受容体の欠失を有するマウスの表現型に類似する。GDF-11の生物機能を決定するために、GDF-11遺伝子を胚性幹細胞において相同的ターゲティングによって破壊した。 マウス129 SvJゲノムライブラリを、ストラタジーン社(ラホヤ、カリフォルニア州)によって提供された説明書に従ってラムダFIXIIにおいて調製した。GDF-11遺伝子の構造は、制限マッピングおよびライブラリから単離されたファージクローンの部分的配列決定によって推定した。ターゲティング構築物を調製するためのベクターは、Philip SorianoおよびKirk Thomas両氏から寄贈された。得られたマウスがGDF-11機能に関して無効であることを確認するために、完全な成熟C末端領域を欠失させて、neoカセットに置換した。R1 ES細胞にターゲティング構築物をトランスフェクトしてガンシクロビル(2 μM)およびG418(250 μg/ml)によって選択し、サザンブロット解析によって解析した。 GDF-11遺伝子の相同的ターゲティングは、ガンシクロビル/G418二重耐性ES細胞クローン155例中8例において認められた。いくつかのターゲティングクローンをC57BL/6J胚盤胞に注入した後、C57BL/6Jおよび129/SvJ雌性動物の双方と交配させた場合にヘテロ接合の子を生じる一つのESクローンからキメラを得た。C57BL/6J129/SvJハイブリッドF1ヘテロ接合体を交配すると、野生型49例(34%)、ヘテロ接合体94例(66%)を生じ、ホモ接合変異体の成体子孫を認めなかった。同様に、129/SvJバックグラウンドでは成体のホモ接合無効動物を認めなかった(野生型32例(36%)およびヘテロ接合変異体動物56例(64%))。 ホモ接合変異体が何週齢で死ぬかを決定するために、ヘテロ接合の雄性動物と交配させたヘテロ接合雌性動物から様々な妊娠齢で単離した胚の同腹子の遺伝子型を調べた。調べた全ての胚段階において、ホモ接合変異体の胚はほぼ予測頻度25%で存在した。ハイブリッド新生児マウスでは、異なる遺伝子型も同様に予想されるメンデルの法則1:2:1で示された(+/+ 34例(28%)、+/- 61例(50%)、および-/- 28例(23%))。ホモ接合変異体マウスは生存して生まれ、呼吸して哺乳することができた。しかし、ホモ接合変異体は全て出生後24時間以内に死亡した。正確な死因は不明であるが、致死はホモ接合変異体の腎臓が重度の形成不全であるかまたは全く存在しなかったという事実に関連する可能性がある。 ホモ接合変異体動物は、尾が極端に短いかまたはないことから容易に区別できた。これらのホモ接合変異体動物における尾の欠損の特徴をさらに調べるために、その骨格を調べて尾椎骨の破壊の程度を決定した。しかし、後期胚および新生児マウスの野生型と変異体骨格調製物とを比較したところ、動物の尾の領域のみならず、他の多くの領域においても差があることが判明した。差が認められたほぼあらゆる症例において、異常は、特定の体節がより前方の体節の典型である形態を示すように思われる脊椎体節のホメオティック変形を表すように思われた。これらの変形は、頚部領域から尾部領域に及ぶ軸骨格全体において明白であった。軸骨格において認められた欠損を除き、尾骨および脚骨のような骨格の残りは正常であるように思われた。 変異体新生児動物における脊椎骨の前方変形は胸部領域では最も容易に明らかであり、ここでは胸部(T)体節の数が劇的に増加した。調べた野生型マウスは全て、その関連する肋骨の対それぞれについて胸椎13個の典型的なパターンを示した。対照的にホモ接合変異体マウスは、胸椎の数の顕著な増加を示した。調べたホモ接合変異体は全て肋骨対が4〜5個余分に存在し、全体で17〜18個となったが、これらの動物の3分の1以上において、第18肋骨が発育不全であるように思われた。したがって、腰椎(L)体節L1〜L4またはL5に通常対応する体節は、変異体動物の胸部体節において変形しているように思われた。 その上、一つの胸椎がもう一つの胸椎の特徴である形態を有する胸部領域内の変形もまた明らかであった。例えば、野生型マウスにおいて、最初の肋骨7対は胸骨に結合し、残りの6対は結合していないかまたは遊離である。ホモ接合変異体では、結合および遊離の肋骨対の数の増加を認め、それぞれ10〜11および7〜8となった。したがって、胸部体節T8、T9、T10および場合によっては野生型動物において全て遊離の肋骨を有するT11でさえも、変異体動物では、より前方の胸部体節の典型である特徴、すなわち胸骨に結合した肋骨の存在を有するように変形した。この知見と一致して、野生型動物のT10において通常認められる移行性の棘状の突起および移行性の関節状の突起は、ホモ接合変異体ではそのかわりにT13に認められた。胸部領域内でのさらなる変化も同様に特定の変異体動物において認めた。例えば、野生型動物では、T1に由来する肋骨は通常、胸骨の上端に触れている。しかし、ハイブリッド23例中2例および129/SvJホモ接合変異体マウス3例中2例では、T2はT1の形態と類似の形態を有するように変形しているように思われた;すなわちこれらの動物において、T2に由来する肋骨は、胸骨の上端に触れるように伸張した。これらの症例において、T1に由来する肋骨は、第二の対の肋骨に融合するように思われた。最後に、ホモ接合変異体82%において、T2に通常存在する長い棘状の突起がT3の位置にシフトした。特定の他のホモ接合変異体では、脊椎胸骨肋骨対の非対称の融合を他の胸椎レベルで認めた。 前方変形は胸部領域に限ったことではなかった。われわれが認めた最も前方への変形は、第6頚椎レベル(C6)であった。野生型マウスにおいて、C6は、腹側に二つの前結節が存在することによって容易に同定できる。いくつかのホモ接合変異体マウスでは、これらの二つの前結節の一つはC6に存在したが、もう一方はその代わりにC7位に存在した。したがって、これらのマウスでは、C7はC6と類似の形態を有するように部分的に変形しているように思われた。他の一つのホモ接合変異体は、C7では前結節が2個あるが、完全なC7からC6への変化の場合にはC6上に1個であり、部分的なC6からC5の変化では存在しなかった。 軸骨格の変形も同様に、腰の領域にも伸張した。野生型動物は通常、腰椎6個のみを有するが、ホモ接合変異体は8〜9個を有した。変異体における腰椎少なくとも6個は、4〜5腰椎体節が胸部体節に変形していることを上記のデータが示唆しているために、仙椎と尾椎を通常生じる体節に由来するに違いない。したがって、ホモ接合変異体マウスは、野生型マウスに通常存在する仙骨前椎26個と比較すると、全体で仙骨前椎33〜34個を有した。最も一般的な仙骨前椎パターンは、野生型マウスのC7/T13/L6と比較して、C7/T18/L8およびC7/T18/L9であった。変異体動物にさらに仙骨前椎が存在することは、前肢と比較して後肢の位置が7〜8体節後方にずれているために、骨格の詳細な試験がなくとも明白であった。 仙椎および尾椎はホモ接合変異体マウスにおいて影響を受けたが、それぞれの形質転換の正確な特性は容易に同定可能ではなかった。野生型マウスにおいて、仙骨体節S1およびS2は典型的に、S3およびS4と比較して広い横突起を有する。変異体では、同定可能なS1またはS2脊椎は存在しないように思われた。その代わりに、変異体動物は、S3と類似の形態を有するように思われるいくつかの椎骨を有した。さらに、四つ全ての仙椎の横突起は通常、互いに融合しているが、新生児ではしばしば最初の三つの椎骨の融合のみを認める。しかし、ホモ接合変異体では、仙椎の横突起はたいてい融合していなかった。最尾部の領域では、全ての変異体動物は、軟骨の広範囲の融合を伴う重度の変形脊椎を有した。融合が重度であるために、尾部領域における椎骨の総数を計数することは難しかったが、いくつかの動物において15個までの横突起を計数した。野生型新生児動物においてもS4を尾椎と区別する形態学的基準が確立されていないために、これらが変異体における仙椎または尾椎を表すか否かは決定できなかった。それらが何であるかによらず、この領域における椎骨の総数は通常の約30という数から有意に減少していた。したがって、変異体は、野生型マウスより有意に多くの胸椎および腰椎を有したが、体節の総数は尾が切断されているために変異体では減少していた。 ヘテロ接合マウスはまた、軸骨格に異常を示したが、表現型はホモ接合マウスよりかなり軽度であった。ヘテロ接合マウスにおける最も明白な異常は、会合する肋骨椎を有するさらなる胸部体節の存在であった。この変形は、調べたあらゆるヘテロ接合動物に存在し、あらゆる場合において、さらなる肋骨対が胸骨に結合していた。したがって、会合する肋骨が通常胸骨に触れていないT8は、より前方の胸椎の特徴である形態に変形しているように思われ、L1は後部胸椎の特徴である形態に変形しているように思われた。前方変化を示す他の異常も同様に、ヘテロ接合マウスにおいて多様な程度に認められた。これらには、T2の特徴である長い棘状の突起のT3への一体節シフト、関節状および棘状突起のT10からT11へのシフト、前結節のC6からC7へのシフト、およびT2に会合する肋骨が胸骨の上端に触れるT2からT1への変形が含まれた。 GDF-11変異体マウスにおいて認められた軸パターン形成における異常の基礎を理解するために、様々な発達段階で単離した変異体の胚を調べ、野生型の胚と比較した。肉眼的な形態の観察によって、妊娠9.5日までに単離したホモ接合変異体胚は、対応する野生型胚と容易に区別できなかった。特に、所定の発達週齢で存在する体節数は、変異体と野生型の胚で同一であり、体節形成速度は変異体において変化していないことを示唆した。10.5日から11.5日までに p.c.変異体の胚は、後肢が7〜8体節後方にずれることによって野生型胚と容易に区別することができた。尾の発達の異常も同様に、この段階で容易に明らかであった。併せて考慮すると、これらのデータは、変異体の骨格において認められた異常が、例えば、体節形成速度の増強によって、さらなる体節が挿入されるよりむしろ体節そのものが真に変形していることを表すことを示唆した。 ホメオボックス含有遺伝子の発現が変化すれば、ショウジョウバエおよび脊椎動物において変形を引き起こすことが知られている。Hox遺伝子(脊椎動物ホメオボックス含有遺伝子)の発現パターンがGDF-11無効変異体において変化しているか否かを調べるために、代表的な三つのHox遺伝子、Hoxc-6、Hoxc-8、およびHoxc-11の発現パターンを12.5日のp.c.野生型、ヘテロ接合およびホモ接合変異体胚において全組織インサイチューハイブリダイゼーションによって決定した。野生型の胚におけるHoxc-6の発現パターンは、胸部体節T1〜T8に対応する前椎骨8〜15に及んだ。しかし、ホモ接合変異体において、Hoxc-6発現パターンは後方にシフトして、前椎骨9〜18(T2〜T11)に及んだ。類似のシフトをHoxc-8プローブについて認めた。野生型胚において、Hoxc-8は前椎骨13〜18(T6〜T11)において発現されたが、ホモ接合変異体胚では、Hoxc-8は、前椎骨14〜22(T7〜T15)において発現された。最後に、Hoxc-11発現も同様に、発現の前方境界が野生型の胚における前椎骨28から変異体胚における前椎骨36へとシフトしたという点において同様に後方にシフトした。(変異体胚では後肢の位置も同様に後方にシフトしたために、野生型および変異体におけるHoxc-11発現パターンは後肢と比較して類似であるように思われた)。これらのデータは変異体動物において認められた骨格の異常がホメオティック変形を表すさらなる証拠を提供する。 GDF-11マウスの表現型は、GDF-11が、軸パターン形成の全体的な調節物質として胚形成の初期に作用することを示唆した。GDF-11がその作用を発揮するメカニズムを調べ始めるために、初期マウス胚におけるGDF-11の発現パターンを、全組織インサイチューハイブリダイゼーションによって調べた。これらの段階において、GDF-11発現の主な部位は、内胚葉細胞が産生される既知の部位と正確に相関した。GDF-11の発現は、原条領域において8.25〜8.5日のp.c.(8〜10体節)で最初に検出されたが、これは移入細胞が発達しつつある胚の中胚葉を形成する部位である。発現は、8.75日のp.c.では原条において維持されたが、尾芽が新規中胚葉細胞源として原条を置換して、GDF-11の発現が尾芽にシフトする9.5日のp.c.では維持されなかった。したがって、これらの初期段階において、GDF-11は、新しい中胚葉細胞が発生して、おそらくその位置同一性を獲得する発達途中の胚の領域において合成されるように思われる。 いくつかの局面におけるGDF-11ノックアウトマウスの表現型は、TGF-βスーパーファミリーのいくつかのメンバーの受容体、アクチビンIIB型受容体(Act RIIB)の欠失を有するマウスの表現型に類似した。GDF-11ノックアウトマウスの場合と同様に、Act RIIBノックアウトマウスは余分の肋骨対を有し、腎欠陥スペクトルは、腎形成不全から腎臓が全く存在しないことまで及んだ。これらのマウスにおける表現型が類似していることは、Act RIIBがGDF-11の受容体となりうる可能性を生じる。しかし、GDF-11ノックアウトマウスの表現型がAct RIIBマウスの表現型より重度であることから、Act RIIBはGDF-11の唯一の受容体ではあり得ない。例えば、GDF-11ノックアウト動物は、4〜5個の余分の肋骨対を有し、軸骨格全体を通してホメオティック変形を示すのに対し、Act RIIBノックアウト動物は、余分の肋骨対を3個有するに過ぎず、他の軸レベルで変形を示さない。さらに、データは、GDF-11ノックアウトマウスにおける腎欠陥がAct RIIBノックアウトマウスより重度であることを示している。Act RIIBノックアウトマウスは、肺の異性のような左右軸形成の欠陥およびGDF-11ノックアウトマウスでは認められなかった一連の心欠陥を示す。Act RIIBは、アクチビンおよび特定のBMPsに結合することができるが、これらのリガンドに関して作製されたノックアウトマウスのいずれも左右軸形成の欠陥を示さなかった。 GDF-11が中胚葉細胞に直接作用して位置同一性を確立するのであれば、本明細書に示したデータは、GDF-11作用の短期またはモルフォゲンモデルと一致するであろう。すなわち、GDF-11は、これらの細胞がGDF-11発現部位で産生されることから、中胚葉前駆体に作用してHox遺伝子の発現パターンを確立することができる、または胚の後方末端で産生されたGDF-11が拡散してモルフォゲン勾配を形成することができる。GDF-11の作用のメカニズムがどのようなものであれ、全体的な前方/後方パターン形成がGDF-11ノックアウト動物において起こるという事実は、GDF-11が前/後特定化の唯一の調節物質ではないことを示唆している。それにもかかわらず、GDF-11が軸パターン形成の全体的な調節物質として重要な役割を有すること、およびこの分子に関するさらなる研究によって、前/後軸に沿って位置同一性が脊椎動物胚においてどのように確立されるかに関する重要な新しい洞察が得られることは明白である。 類似の表現型がGDF-8ノックアウト動物において予想される。例えば、GDF-8ノックアウト動物は、野生型と比較した場合に多数の肋骨、腎欠陥および解剖学的差を有することが予想される。実施例15ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチンまたはドミナントネガティブACT RIIBを発現するトランスジェニックマウスの作製ミオスタチンの精製 ミオスタチン発現構築物の増幅コピーを有するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株に、前駆体蛋白質のプロセシングを改善するために、フリンプロテアーゼPACEの発現構築物(Monique Davies氏の好意による提供)をトランスフェクトした。条件培地(セルトレンズ社の調製、ミドルタウン、メリーランド州)を、ヒドロキシアパタイト(200 mM燐酸ナトリウム、pH 7.2によって溶出)、レンチルレクチンセファロース(50 mMトリス、pH 7.4、500 mM NaCl、500 mMメチルマンノースによって溶出)、DEAEアガロース(50 mMトリス、pH 7.4、50 mM NaCl中でカラムの中を通過した材料を集める)、およびヘパリンセファロース(50 mMトリス、pH 7.4、200 mM NaClによって溶出)に連続的に通過させた。ヘパリンカラムからの溶出液を逆相C4 HPLCカラムに結合させて、0.1%トリフルオロ酢酸中でアセトニトリル勾配によって溶出した。成熟C-末端蛋白質に対する抗体は既に記述されている(参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,827,733号を参照のこと)。プロペプチドに対する抗体を作製するために、アミノ酸122〜261位に及ぶヒトミオスタチン蛋白質の一部をRSETベクター(インビトロジェン社、サンジエゴ、カリフォルニア州)を用いて細菌に発現させ、ニッケルキレートクロマトグラフィーによって精製して、ウサギに注射した。免疫は、スプリングバレー研究所(ウッドバイン、メリーランド州)が行った。受容体の結合 クロラミンT法(Frolik, C.A., Wakefield, L.M., Smith, D.M., and Sporn, M.B.(1984)、J. Biol. Chem. 259、10995〜11000)を用いて、精製ミオスタチンに放射性ヨウ素を標識した。6または12ウェルプレートにおいて増殖させたCOS-7細胞に、リポフェクタミン(ギブコ社、ロックビル、メリーランド州)を用いて、pCMV5またはpCMV5/受容体構築物1〜2μgをトランスフェクトした。クロスリンク実験は、記述のようにトランスフェクションの2日後に行った(Franzen, P.、ten Dijke, P.、Ichijo, H.、Yamashita, H.、Schultz, P.、Heldin、C.H.、およびMiyazono, K.(1993)、Cell 75:681〜692)。定量的受容体結合アッセイ法を行うために、細胞単層を、1 mg/ml BSAを含むPBSによって2回洗浄して、様々な濃度の非標識ミオスタチン、プロペプチド、またはフォリスタチンの存在下または非存在下で、4℃で標識ミオスタチンと共にインキュベートした。次に、細胞を同じ緩衝液によって3回洗浄して、0.5 N NaOH中で溶解し、γカウンターにおいて計数した、特異的結合は、Act RIIBをトランスフェクトした細胞と、ベクターをトランスフェクトした細胞との結合ミオスタチンの差として計算した。特異的結合を計算するこの方法は、プロペプチドを加えても同様に非特異的結合が濃度依存的に減少することから、プロペプチドの影響を評価するために特に重要であった。トランスジェニックマウス アミノ酸1〜174位に及ぶマウスAct RIIBの切断型、アミノ酸1〜267位に及ぶマウスミオスタチンプロペプチド、およびヒトフォリスタチン短縮型をコードするDNAを、ミオシン軽鎖プロモーターおよび1/3エンハンサー(McPherron, A.C.とLee, S.J.、(1993)、J. Biol. Chem. 268:3444〜3449)を含むMDAF2ベクターにクローニングした。ミオシン軽鎖調節配列とSV40プロセシング部位とを含む精製導入遺伝子をマイクロインジェクションのために用いた。マイクロインジェクションおよび胚の移入は全て、ジョンホプキンス大学メディカルスクールのトランスジェニックコア施設(John Hopkins of Medicine Trandgenic Core Facility)が行った。ハイブリッドSJL/C57BL/6バックグラウンドのトランスジェニック創始動物を野生型C57BL/6マウスと交配させて、研究は全てF1子孫を用いて行った。筋重量の分析に関して、個々の筋肉をほぼ全ての動物の両側から切除して、左右の筋重量の平均値を用いた。線維数と大きさの分析は記述通りに行った(McPherron, A.C.、Lawler, A.M.、およびLee, S.J.(1997)、Nature 387:83〜90)。RNA単離およびノザン分析は記述通りに行った(McPherron, A.C.、およびLee, S.J(1993)、J. Biol.Chem. 268:3444〜3449)。 ミオスタチン蛋白質を過剰産生させるために、ミオスタチン発現構築物の増幅コピーを有するCHO細胞株を作製した(McPherron, A.C.、Lawler, A.M.、およびLee, S.J(1997)、Nature 387:83〜90)。ミオスタチンは、ヒドロキシアパタイト、レンチルレクチンセファロース、DEAEアガロース、およびヘパリンセファロース上での連続分画によってこの細胞株の条件培地から精製した。精製蛋白質調製物の銀染色分析から、29 kdおよび12.5 kdの二つの蛋白質種が存在することが判明した。多様なデータによって、この精製蛋白質がジスルフィド結合C-末端二量体に結合した二つのプロペプチド分子の非共有結合複合体からなることが示唆された。第一に、ウェスタン分析によって、29 kd種と12.5 kd種はそれぞれ、プロペプチドおよびC-末端成熟領域に及ぶミオスタチンの細菌発現断片に対して作製された抗体と免疫反応性であった。第二に、還元剤の非存在下で、C-末端領域は、二量体と一致する電気泳動移動度を有した。第三に、二つの種は、モル比約1:1で存在した。また、第四に、C-末端二量体は、レクチンカラム上に保持され、蛋白質のこの部分が、可能性があるN-結合グリコシル化部位を含まなくともメチルマンノースによって溶出することができ;これらのデータを最も単純に解釈すると、C-末端領域が、グリコシル化シグナルを真に有するプロペプチドとの堅固な複合体に存在することによって間接的にレクチンに結合したことになる。 C-末端二量体は、他のTGF-βファミリーメンバーに関して生物活性分子であることが知られているため、ミオスタチンのC-末端二量体を、逆相HPLCによってそのプロペプチドから精製した。精製C-末端二量体(32〜34位)を含む画分は、均一であるように思われた。しかし、プロペプチド(35〜37)に関して最も濃縮された画分には、少量のC-末端二量体と、誤って折りたたまれた蛋白質を表す可能性が最も高い高分子量複合体とが混入していた。 TGF-βスーパーファミリーのほとんどのメンバーは、セリン/トレオニンキナーゼ受容体に結合した後Smad蛋白質の活性化を引き起こしてシグナルを伝達することが示されている(Heldin, C.H.、Miyazono, K.、およびten Dijke, P.(1997)Nature 390:465〜471;Massague, J.、Blain, S.W.、およびLo, R.S.(2000)、Cell 103:295〜309)。シグナル伝達経路の誘因となるこの初回事象は、II型受容体に対するリガンドの結合である。ミオスタチンが関連するリガンドの既知の如何なるタイプのII型受容体にも結合することができるか否かを決定するために、TGF-β、BMP、またはアクチビンII型受容体のいずれかの発現構築物をトランスフェクトしたCOS-7細胞において、放射性ヨウ素標識ミオスタチンC-末端二量体についてクロスリンク試験を行った。予想される大きさ(ミオスタチンに結合した完全長の受容体)のクロスリンク複合体が、Act RIIAまたはAct RIIBのいずれかを発現する細胞に関して検出された。クロスリンクおよび標準的な受容体結合アッセイ法の双方において、Act RIIBに対する結合はAct RIIAより高いレベルで認められ、したがって、受容体結合試験はAct RIIBに集中して行った。Act RIIBに対するミオスタチンの結合は特異的(結合は、過剰量の非標識ミオスタチンによって競合されうる)かつ飽和性であり、ミオスタチン蛋白質の全てが生物活性であると仮定して、本発明者らはスキャッチャード分析による解離定数が約10 nMであると推定した。TGF-βの場合、II型受容体に対する親和性は適当なI型受容体の存在下で有意に高いこと、および他の分子がリガンドの受容体への提示に関与していることがわかっている。 アクチビンII型受容体が、インビボでミオスタチンのシグナル伝達に関与する可能性があるか否かを決定するために、マウスにおいてAct RIIBのドミナントネガティブ型を発現する影響を調べた。この目的のため、本発明者らは、キナーゼドメインを欠損するAct RIIBの切断型が、骨格筋特異的ミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーの下流に配置されている構築物を作製した。この構築物の前核注入によって、導入遺伝子に関して陽性の創始動物が全体で7例同定された。7ヶ月齢でこれらの創始動物の分析を行ったところ、7例全てが骨格筋重量の有意な増加を示し、これらの創始動物の個々の筋重量は、類似の注射を行った対照の非トランスジェニック動物の筋重量と比較して125%まで増加した(表2)。 3系列の証拠から、これらの創始動物における筋重量の増加が、導入遺伝子の発現に起因することが示唆された。第一に、創始動物3例(他の創始動物4例は、分析のために十分な数の子孫を生じなかった)と野生型C57BL/6マウスとの交配から得られた子孫の分析は、筋重量の増加が導入遺伝子の存在と相関することを示した(表3)。第二に、筋重量は異なるトランスジェニック系統において変化したが、増加の程度は、如何なる所定の系統の動物においても調べた全ての筋について、および雄性および雌性双方についても非常に一貫していた(表3)。例えば、C5系統の雄性および雌性マウスの全ての筋重量は、対照動物より約30〜60%多かったが、C11マウスの筋重量は全て約110〜180%多かった。第三に、トランスジェニック動物から調製したRNA試料のノザン分析から、導入遺伝子の発現が骨格筋に限定されること、および導入遺伝子発現の相対レベルが、筋重量の相対的な増加程度と相関することが示された(表3)。例えば、筋重量の最大の増加を示したC11系統の動物は、導入遺伝子発現に関しても最高レベルを示した。 これらのデータは、Act RIIBのドミナントネガティブ型の発現が、ミオスタチンノックアウトマウスにおいて認められた場合と類似の筋重量の増加を引き起こしうることを示した。ミオスタチンノックアウトマウスにおいて、筋重量の増加は、線維数および線維の大きさの増加に起因することが示されている。ドミナントネガティブAct RIIBの発現が同様に過形成および過栄養の双方を引き起こすか否かを決定するために、C27系統の動物のひ腹筋と足底筋の切片を分析した。対照筋と比較すると、C27動物の筋肉は断面領域全体において明確な増加を示した。領域におけるこの増加は、部分的に線維数の増加に起因した。最も広い点において、ひ腹筋および足底筋は、C27系統(n=3)の動物では線維数が全体で10015+1143個であったのに対し、対照動物では線維7871+364個であった(n=3)。しかし、筋線維の過栄養も同様に、面積全体の増加に関与した。線維の直径の平均値は、C27系統の動物では51 μmであったのに対し、対照動物では43μmであった。したがって、筋重量の増加は、線維の数の約27%増加および線維の直径の約19%増加に起因するように思われた(線維がほぼ円柱形であると仮定すると、直径のこの増加によって、断面積が約40%増加する)。しかし、線維の数および大きさの増加を除くと、トランスジェニック動物からの筋肉は、肉眼的に見て正常であるように思われた。特に、広く多様な線維の大きさ(線維の大きさの標準偏差は対照動物とトランスジェニック動物のあいだで類似であった)もしくは広汎な線維症、または脂肪の浸潤のような変性に関する明白な兆候を認めなかった。 これらのアプローチを用いて、ミオスタチンの阻害に関して他に可能性がある戦略を探求した。第一に、本発明者らはミオスタチンプロペプチドの影響を調べた。TGF-βの場合、C-末端二量体はそのプロペプチドを含む他の蛋白質との不活性な潜在型の複合体として保持されていること、およびTGF-βのプロペプチドはインビトロおよびインビボの双方でTGF-β活性に阻害作用を有することが知られている(Miyazono, K.、Hellman, U.、Wernstedt, C.、およびHeldin, C.H.(1998)、J. Biol. Chem. 263:6407〜6415;Gentry, L.E. and Nash, B.W.(1990)、Biochem. 29:6851〜6857;Bottinger, E.P.、Factor, V.M.、Tsang, M.L.S.、Weatherbee, J.A.、Kopp, J.B.、Qian, S.W.、Wakefield, L.M.、Roberts, A.B.、Thorgeirsson, S.S.、およびSporn, M.B.(1996)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5877〜5882)。ミオスタチンC-末端二量体とプロペプチドとが同時精製されたという知見は、ミオスタチンが類似の潜在型複合体に通常存在する可能性を示し、ミオスタチンプロペプチドが阻害活性を有する可能性があることを示した。第二に、本発明者らは、いくつかのTGF-βファミリーメンバーに結合してその活性を阻害することができることが示されているフォリスタチンの作用を調べた。特に、フォリスタチンは、ミオスタチンに非常に近縁であるGDF-11の活性を遮断することができ、フォリスタチンノックアウトマウスは、出生時の筋重量が減少していることが示されており、これはミオスタチンの過剰活性と一致するであろう(Gamer, L.、Wolfman, N.、Celeste, A.、Hattersley, G.、Hewick, R.、およびRosen, V.(1999)Dev. Biol. 208:222〜232;Matzuk, M.M.、Lu, N.、Vogel, H.、Sellheyer, K.、Roop, D.R.、およびBradley, A.(1995)Nature 374:360〜363)。 インビトロでプロペプチドとフォリスタチンの作用を調べた。ミオスタチンプロペプチドとフォリスタチンはいずれも、Act RIIBに対するC-末端二量体の結合を阻害することができた。フォリスタチンのKiは、約470 pMであると推定され、プロペプチドのKiは少なくとも50倍高いと推定された。しかし、プロペプチドのKiの計算は、最終調製物中の全ての蛋白質が生物活性プロペプチドを表すと仮定しており、したがって、過大推定値である可能性がある。先に考察したように、プロペプチド調製物には、少量のC-末端二量体と、誤って折りたたまれた高分子量種の双方が混入していた。 これらの分子が同様に、インビボでミオスタチン活性を遮断することができるか否かを決定するために、ミオスタチン軽鎖プロモーター/エンハンサーを用いてミオスタチンプロペプチドまたはフォリスタチンのいずれかを発現させたトランスジェニックマウスを作製した。プロペプチド構築物の前核注入によって、筋重量の増加を示すトランスジェニックマウス3系統(これらのうち2系統、B32AおよびB32Bは最初の創始動物1例において独立して分離する導入遺伝子挿入部位を表した)が同定された。表3に示すように、それぞれの系統の動物の筋重量は、非トランスジェニック対照動物と比較して約20〜110%増加した。これらの系統のそれぞれの代表的な動物から調製したRNA試料のノザン分析から、導入遺伝子の発現レベルが筋重量の増加の程度と相関することが示された。特に、筋重量の約20〜40%増加を示したに過ぎないB32A系統の動物は、導入遺伝子発現レベルが最低であり、B32BおよびB53系統の動物は筋重量の約70〜110%の増加を示し、最高レベルの導入遺伝子発現を示した。おそらく重要なことは、B32AとB32B挿入部位の二重トランスジェニックである動物における筋重量は、二重トランスジェニック動物は導入遺伝子発現レベルがより高いように思われるという事実にもかかわらず、B32B挿入部位のみのトランスジェニック動物において認められた筋重量と類似であった(表3)。これらの知見は、B32B系統(およびB53系統)において認められた作用が、プロペプチドの過剰発現から得ることができる最大値であったことを示唆している。Act RIIBのドミナントネガティブ型を発現する動物の場合におけるように、プロペプチドを発現する動物は、筋線維の数および大きさの双方の増加を示した。B32AとB32B挿入部位とに関して二重トランスジェニックである動物2例からのひ腹筋および足底筋の分析を行ったところ、線維の数が約40%増加したこと(動物2例の線維は11940個および10420個であった)、および線維の直径が対照動物と比較して約21%(52μmまで)増加したことが示された。 骨格筋に及ぼす最も劇的な作用は、フォリスタチン構築物を用いて得られた。創始動物2例(F3およびF66)は、筋肉の増加を示した(表2)。これらの動物の1例(F3)において、筋重量は対照動物と比較して194〜327%増加し、これは過形成(ひ腹筋/足底筋の線維数は66%増加して13051個)、および過栄養(線維の直径は28%増加して55μm)の組み合わせに起因した。本発明者らは、ハイブリッドSJL/C57BL/6バックグラウンドのミオスタチンノックアウトマウスの筋重量を分析しなかったが、F3創始動物において認められた筋重量の増加は、他の遺伝的バックグラウンドのミオスタチンヌル動物において認められた増加より有意に大きかった。これらの結果は、フォリスタチンの作用の少なくとも一部は、ミオスタチンの他にもう一つのリガンドの阻害に起因する可能性があることを示唆している。明らかに、さらなるフォリスタチントランスジェニック系統の分析は、他のリガンドも同様に筋増殖の負の調節に関与する可能性があるか否かを決定するために必須であると考えられる。 蛋白質分解プロセシングの後、ミオスタチンC-末端二量体は、そのプロペプチド、およびおそらく同様に他の蛋白質との潜在的複合体において維持される可能性がある。ミオスタチンはまた、C-末端二量体に結合して、その受容体結合能を阻害するフォリスタチンによって負の調節を受ける。未知のメカニズムによるこれらの阻害蛋白質からのC-末端二量体の放出によって、ミオスタチンはアクチビンII型受容体に結合することができる。他のファミリーメンバーとの類推によって、本発明者らは、これらの受容体の活性化によってI型受容体およびSmad蛋白質の活性化が起こると推定する。 ミオスタチン調節およびシグナル伝達に関するこの全体的なモデルは、本明細書に示したデータのみならず、他の遺伝的データとも一致する。先に考察したように、フォリスタチンノックアウトマウスは、出生時の筋重量が減少していることが示されており、これは、ミオスタチン活性が阻害されない場合に予想されるとおりである。類似の筋表現型は、Smad2および3の活性を阻害することが示されているskiを欠損するマウスについて報告されており、skiを過剰発現するマウスでは、反対の表現型、すなわち骨格筋の過剰が認められている。本発明の知見に基づいて、一つの仮説は、これらの認められた表現型がそれぞれ、これらのマウスにおけるミオスタチンの過剰活性および過小活性を反映するという点である。 インビトロおよび遺伝子データは全て、本発明者らが本明細書において示した全体的なモデルと一致しているが、これらのデータはまた、他の受容体およびリガンドを含むもう一つのモデルとも一致すると思われる。例えば、それによってAct RIIBの切断型が本発明者らのトランスジェニックマウスにおいて筋増殖を増強するメカニズムはわかっていない。切断型受容体は、標的細胞においてシグナル伝達を遮断するように作用するのではなく、ミオスタチンの細胞外濃度を枯渇するための貯水槽として単に作用する可能性がある。同様に、切断型受容体は、ミオスタチン以外にも他のリガンドのシグナル伝達を阻害する可能性がある。この点において、II型アクチビン受容体のドミナントネガティブ型は、他の種において多様な異なるTGF-β関連リガンドのシグナル伝達を遮断できることが示されている。同様に、本発明者らは、フォリスタチンが筋増殖を促進するためにインビボでミオスタチン活性を遮断することを明確に示していない。この点において、フォリスタチン発現創始動物の1例において異常な程度の筋肉が認められたことは、他のフォリスタチン感受性リガンドが筋増殖の調節に関与する可能性があることを示唆している。 しかし、今日まで、ミオスタチンは、インビボで筋重量を調節するために負の役割を果たしていることが証明された唯一の分泌蛋白質である。このモデル全体の局面を証明して、他のシグナル伝達成分を同定するためにはさらなる実験が必要であるが、本発明者らのデータは、フォリスタチンおよびミオスタチンプロペプチドのようなミオスタチン拮抗剤、またはアクチビンII型受容体拮抗剤がヒトおよび農業での応用の双方にとって有効な筋増強剤である可能性があることを示唆している。動物は全て(対照を含む)、注入した胚から生まれたハイブリッドSJL/C57BL/6 F0マウスを表す。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。動物は全て(対照を含む)、野生型C57Bl/6マウスと交配させたトランスジェニック創始動物(SJL/C57BL/6)の4ヶ月齢子孫を表す。 本発明は、上記の実施例を参照して説明してきたが、改変および変更は本発明の精神および範囲に含まれると理解されると思われる。したがって、本発明は特許請求の範囲に限って制限される。マウスプロミオスタチン(配列番号:4);ラットプロミオスタチン(配列番号:6);ヒトプロミオスタチン(配列番号:2);ヒヒプロミオスタチン(配列番号:10);ウシプロミオスタチン(配列番号:12);ブタプロミオスタチン(配列番号:14);ヒツジプロミオスタチン(配列番号:16);ニワトリプロミオスタチン(配列番号:8);七面鳥プロミオスタチン(配列番号:18);およびゼブラフィッシュプロミオスタチン(配列番号:20)のアミノ酸配列を示す。アミノ酸は、ヒトプロミオスタチン(配列番号:2)に対して番号をつける。破線は、相同性を最大にするために導入したギャップを示す。配列における黄体が同一の残基に影をつけて示す。マウスプロミオスタチン(配列番号:4)とゼブラフィッシュのプロミオスタチン(配列番号:20)のアミノ酸配列、ならびにサケ対立遺伝子1プロミオスタチン(配列番号:27、「サケ1」)およびサケ対立遺伝子2プロミオスタチン(配列番号:29、「サケ2」)のアミノ酸配列の一部を示す。ヒトプロミオスタチンに対するアミノ酸の位置をそれぞれの列の左側に示す(図1と比較;サケ1の最初のアミノ酸はヒトプロミオスタチン218位に対応する;サケ2の最初のアミノ酸はヒトプロミオスタチン239位に対応する)。破線は相同性を最大にするために導入したギャップを示す。ギャップを含む相対的アミノ酸の位置は、それぞれの列の上に沿って示す。配列における同一の残基に影をつけて示す。図2−1の続きを示す図である。 機能的に結合され且つ動物のゲノムに組み込まれた、ドミナントネガティブ切断型アクチビンII 型受容体をコードする切断型アクチビンII型受容体遺伝子と筋特異的プロモーターとを含む核酸配列をゲノムに含む、ヒト以外のトランスジェニック動物であって、該核酸配列が、対応する非トランスジェニック動物と比較してドミナントネガティブ切断型アクチビンII型受容体レベルの上昇と、動物における筋重量の増加とが起こるように発現される、トランスジェニック動物。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項1記載のトランスジェニック動物。 アクチビンII型受容体がRIIAまたはRIIBである、請求項1記載のトランスジェニック動物。 ドミナントネガティブ切断型アクチビンRIIB受容体がキナーゼ活性を欠損する、請求項3記載のトランスジェニック動物。 ドミナントネガティブ切断型アクチビンRIIB受容体がアクチビンRIIBのアミノ酸残基1〜174位を含む、請求項1記載のトランスジェニック動物。 筋特異的制御配列に機能的に結合したドミナントネガティブ切断型アクチビンRIIB受容体遺伝子をコードするDNAセグメントを含む発現カセット。 筋特異的プロモーターがミオシン軽鎖プロモーター/エンハンサーである、請求項6記載の発現カセット。 細胞が、ドミナントネガティブ切断型アクチビンII型受容体を発現する、請求項1記載の動物から単離した細胞または細胞株。 以下を含む、ヒト以外のキメラ動物を作製する方法: ヒト以外の動物の卵巣から卵子を得る段階; インビトロで卵子を成熟させる段階; インビトロで成熟した卵子を受精させて受精卵を形成する段階; ドミナントネガティブ切断型アクチビンII型受容体をコードするDNA配列と、ポリペプチドをコードするDNA配列の発現を促進する筋特異的制御配列とを機能的に結合させて含む核酸構築物を、インビトロで受精卵に導入する段階; 受精卵を着床前段階の胚までインビトロで成熟させる段階;および 雌性動物が胚を妊娠してキメラ動物を産む、ヒト以外のレシピエント雌性動物に胚を移植する段階。 以下を含む、筋重量が増加したヒト以外の動物の食糧を作製する方法: a)ヒト以外の動物の前核胚の生殖細胞に、ドミナントネガティブ切断型アクチビンII型受容体および筋特異的プロモーターをコードする導入遺伝子を導入する段階; b)ヒト以外の偽妊娠雌性動物の卵管に胚を着床させて、それによって胚を妊娠満期まで成熟させる段階; c)導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の有無に関して子孫を試験する段階; d)さらなる導入遺伝子陽性子孫を同定するために、導入遺伝子陽性子孫を交配させる段階;および e)子孫を加工して食糧を得る段階。 以下を含む、筋重量が増加したトリ、ブタ、魚、またはウシの食品を作製する方法: a)ドミナントネガティブ切断型アクチビンII型受容体および筋特異的プロモーターをコードする導入遺伝子を、トリ、ブタ、魚、またはウシ動物の胚に導入する段階; b)子孫が孵化する条件で胚を培養する段階; c)導入遺伝子陽性子孫を同定するために導入遺伝子の有無に関して子孫を試験する段階; d)導入遺伝子陽性子孫を交配する段階;および e)子孫を加工して食糧を得る段階。配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る