生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する新規微生物及びゴム組成物の分解方法
出願番号:2008096521
年次:2009
IPC分類:C12N 1/20,C08J 11/10


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石野 裕一 JP 2009247241 公開特許公報(A) 20091029 2008096521 20080402 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する新規微生物及びゴム組成物の分解方法 株式会社ブリヂストン 000005278 杉村 憲司 100147485 来間 清志 100114292 澤田 達也 100134005 冨田 和幸 100119530 野田 裕子 100135172 石野 裕一 C12N 1/20 20060101AFI20091002BHJP C08J 11/10 20060101ALI20091002BHJP JPC12N1/20 AC08J11/10 8 OL 10 4B065 4F401 4B065AA38X 4B065AC20 4B065BB26 4B065CA55 4F401AA04 4F401AA05 4F401BA06 4F401CA77 4F401FA07Z 本発明は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する新規微生物及び該微生物を用いたゴム組成物の分解方法に関する。 ゴム製品は一般のプラスチック製品とともに再利用しにくい材料であり、特にセメント工場などを中心として燃料として再利用されている場合が多い。しかしながら、近年環境問題の高まりとともに、ゴム製品を燃料として燃やすのではなく、コンポストのように低温で分解する省エネルギー型の方法や分解した材料を再利用するマテリアルリサイクルの方法の開発が求められている。 ゴム製品を分解する方法として、微生物による分解処理が考えられる。微生物分解は低温での処理なので、エネルギー消費は最も少ない処理法といえる。また、ゴム製品を微生物分解した後、分解物を再利用することも考えられる。例えば、分解されたモノマーやオリゴマーを再利用することや、粉ゴムの表面を微生物分解し、再度未加硫ゴムに混練り加硫することにより、新たな製品に利用することも考えられる。 ゴムの微生物分解については、従来様々な微生物がスクリーニングされ、検討されている。そのような微生物分解については、特開平9−194624号公報(特許文献1)、特開平11−60793号公報(特許文献2)等で報告されており、これらの特許文献には、ノカルディア属に属する微生物によるゴムの分解方法が記載されている。特開平9−194624号公報特開平11−60793号公報 しかしながら、ゴムの微生物分解の実用化に当たっては、より高効率でゴムを分解することが可能な微生物が望まれている。 そこで、本発明の目的は、従来より高効率でゴムを分解することが可能な新規な微生物及び該微生物によるゴムの分解方法を提供することにある。 本発明者は、上記目的を達成すべく、日本各地の多くの土壌から天然ゴム分解菌の探索を行った結果、高効率でポリイソプレン系ゴムを分解できる微生物が驚くべきことに、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌であることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株(FERM AP-21535)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株(FERM AP-21536)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株(FERM AP-21537)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株(FERM AP-21538)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株(FERM AP-21539)であることを特徴とする。 また、本発明のゴム組成物の分解方法は、上記微生物により、ポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解することを特徴とする。 また、本発明のゴム組成物の好適例において、前記ゴム組成物中のポリイソプレン系ゴムの含有量が10質量%以上であることを特徴とする。 また、本発明のゴム組成物の他の好適例において、前記ポリイソプレン系ゴムがシスポリイソプレンゴムであることを特徴とする。 本発明によれば、従来より高効率でゴム製品を分解することができるという有利な効果を奏する。 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株、BS−GS2株、BS−GS5株、BS−GS6株、BS−GS7株である。上記5種の菌株は、本発明者が日本各地の多くの土壌から天然ゴム分解菌を鋭意スクリーニングした結果、得られたものである。これらの菌株は、それぞれ独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2008年3月12日に受領されている。詳細には、BS−GS1株は受領番号FERM AP-21535として、BS−GS2株は受領番号FERM AP-21536として、BS−GS5株は受領番号FERM AP-21537、BS−GS6株は受領番号FERM AP-21538として、BS−GS7株は受領番号FERM AP-21539として受領されている。 上記5種のノカルディア・タケデンシスに帰属する放線菌の菌株は、無機塩の液体培地中でゴムを資化しながら増殖する。無機塩としては、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。 ノカルディア属の放線菌は、天然ゴムなどのポリイソプレン系ゴムを分解することが知られているが、ノカルディア・タケデンシスに帰属する放線菌において、ポリイソプレン系ゴムを分解することができるものはこれまでに報告されていない。さらに、上記5種の本発明の菌株は、従来報告されているノカルディア属に属する放線菌よりもポリイソプレン系ゴムを分解する能力が高く、したがって、これら5種の菌株を用いることで、従来よりも高効率でポリイソプレン系ゴムを含有するゴム製品を分解することが可能である。 上記5種の菌株の同定は、近年主流となっている16SrRNAの比較に基づいて行った。以下に方法を詳細に述べる。菌株をYM寒天培地(Becton Dickinson NJ,USA)に植菌し、30℃で5日間培養した。その後、この菌体からPrepMan Method(Applied Biosystems、CA,USA)により、ゲノムDNAの抽出を行った。抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより、16S Ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)のうち、5末端側約500bpの領域を増幅した。その後、増幅した塩基配列をシーケンスし、検体の16S rDNA部分塩基配列を得た。得られた16SrDNAの塩基配列から検体の相同性検索を、細菌基準株データベース及び国際塩基配列データベースから、検索に用いるアルゴリズムとしてBLASTを用いて行った。結果を下記の表1及び2に示す。 これらの結果から、上記5種の菌株は、ノカルディア・タケデンシスに帰属する菌株であると同定した。 また、本発明のゴム組成物の分解方法は、上記ノカルディア・タケデンシスに帰属する菌株を一種又は複数組み合わせて用いることを特徴とする。本発明を適用する対象となるポリイソプレン系ゴムとしては、主鎖がシスポリイソプレン及びトランスポリイソプレンであるゴムまたはエラストマーを挙げることができる。本発明においてシスポリイソプレンであるゴムが最も好ましいが、イソプレンと他のモノマーとの共重合体を主鎖とするゴムまたはエラストマーにも本発明を適応することが可能である。具体的なシスポリイソプレンとしては、それに限定されるものではないが、天然ゴムやNatsynなどの合成シスポリイソプレンが例示され、トランスポリイソプレンとしてはガッタパーチャなどの天然系ゴムが例示される。 ゴム組成物を構成するゴムエラストマー中のポリイソプレン系ゴムの含有量が10質量%以上であれば本発明の方法の適応が可能である。ゴムエラストマー中のポリイソプレンは50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは80質量%以上であるが、その範囲に限定されるものではない。 本発明で分解の対象となるゴムは、イソプレン系ゴムであれば、ゴム工業で通常使用されているシランカップリング剤、硫黄、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、プロセス油、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、過酸化物等の通常の配合剤が配合されたものでよい。ただし、ゴム配合剤の中に上記5種の菌株の増殖を阻害する配合剤が配合されている場合は、ゴムを溶剤抽出し、これを除去する必要がある。 ゴム組成物の分解反応の条件としては、通常のノカルディア属に属する放線菌の培養方法に準じた条件を採用することができる。例えば、培養培地として、本発明の微生物の基質であるゴム組成物のほか、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの無機塩類を含むものが挙げられる。 分解反応における温度は28〜32℃、好ましくは30℃である。また、pHは6〜8、好ましくは7である。 例えば、分解反応は以下のようにして行うことができる。まず、分解対象となるゴム組成物とともに本発明の微生物を前培養する。次に、分解対象のゴム組成物0.1〜10g/Lと前培養した微生物107〜109/100mlを反応容器に入れ、上述したような温度及びpHの条件で20日以上培養する。このような分解反応によって、分解対象のゴム組成物を高効率で分解することができる。 以下、実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。(実施例1) シリコーン栓付きのガラス容器に準備した下記表3の組成の培地に、アセトン抽出済みの天然ゴムラテックス手袋の短冊状に切ったゴム片5g/Lを入れ、90℃で、オートクレーブ中で滅菌処理した。これに同様の手袋ゴムを唯一の炭素源として前培養したノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株の菌液(108/100ml)を加え、40日間、30℃、50rpmで振盪培養し、121℃でオートクレーブ中で滅菌し、手袋ゴム片を取り出した。取り出した手袋ゴム片をアセトンで数回洗浄後、純水で洗浄し、充分に乾燥したことを確認後、重量測定を行った。(実施例2) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株を用いて行った。(実施例3) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株を用いて行った。(実施例4) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株を用いて行った。(実施例5) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株を用いて行った。(比較例) 実施例1〜5と同様の実験を土壌から分離した放線菌を用いて行った。 実施例1〜5及び比較例の結果を表4に示す。 表4のように、実施例1〜5では、本発明の微生物を用いた場合の重量減少が20〜30%であったが、比較例では、重量減少が0%であった。よって、本発明の微生物は天然ゴムに対して大きな分解性を持つことが確認された。 本発明の新規微生物は、タイヤなどのゴム製品の廃棄及び再利用においてゴム製品を分解する手段として有用である。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株(FERM AP-21535)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株(FERM AP-21536)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株(FERM AP-21537)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株(FERM AP-21538)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株(FERM AP-21539)。 請求項1〜5項のいずれか1項に記載の放線菌により、ポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解することを特徴とするゴム組成物の分解方法。 前記ゴム組成物中のポリイソプレン系ゴムの含有量が10質量%以上であることを特徴とする請求項6記載の方法。 前記ポリイソプレン系ゴムがシスポリイソプレンゴムである請求項6又は7記載の方法。 【課題】従来より高効率でゴムを分解することが可能な新規な微生物及び該微生物によるゴムの分解方法を提供することにある。【解決手段】ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株(FERM P-21535)、BS−GS2株(FERM P-21536)、BS−GS5株(FERM P-21537)、BS−GS6株(FERM P-21538)及びBS−GS7株(FERM P-21539)、並びにこれらの微生物を用いたゴム組成物の分解方法である。【選択図】なし20080530A16333全文3 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株(FERM P-21535)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株(FERM P-21536)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株(FERM P-21537)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株(FERM P-21538)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株(FERM P-21539)。 請求項1〜5項のいずれか1項に記載の放線菌により、ポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解することを特徴とするゴム組成物の分解方法。 前記ゴム組成物中のポリイソプレン系ゴムの含有量が10質量%以上であることを特徴とする請求項6記載の方法。 前記ポリイソプレン系ゴムがシスポリイソプレンゴムである請求項6又は7記載の方法。A1633000093 すなわち、本発明の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株(FERM P-21535)であることを特徴とする。A1633000103 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株(FERM P-21536)であることを特徴とする。A1633000113 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株(FERM P-21537)であることを特徴とする。A1633000123 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株(FERM P-21538)であることを特徴とする。A1633000133 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株(FERM P-21539)であることを特徴とする。A1633000183 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株、BS−GS2株、BS−GS5株、BS−GS6株、BS−GS7株である。上記5種の菌株は、本発明者が日本各地の多くの土壌から天然ゴム分解菌を鋭意スクリーニングした結果、得られたものである。これらの菌株は、それぞれ独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2008年3月12日に受託されている。詳細には、BS−GS1株は受託番号FERM P-21535として、BS−GS2株は受託番号FERM P-21536として、BS−GS5株は受託番号FERM P-21537、BS−GS6株は受託番号FERM P-21538として、BS−GS7株は受託番号FERM P-21539として受託されている。


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特許公報(B2)_ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する新規微生物及びゴム組成物の分解方法

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タイトル:特許公報(B2)_ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する新規微生物及びゴム組成物の分解方法
出願番号:2008096521
年次:2013
IPC分類:C12N 1/20,C08J 11/10,C08L 101/16


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石野 裕一 JP 5222610 特許公報(B2) 20130315 2008096521 20080402 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する新規微生物及びゴム組成物の分解方法 株式会社ブリヂストン 000005278 杉村 憲司 100147485 来間 清志 100114292 澤田 達也 100134005 冨田 和幸 100119530 野田 裕子 100135172 石野 裕一 20130626 C12N 1/20 20060101AFI20130606BHJP C08J 11/10 20060101ALI20130606BHJP C08L 101/16 20060101ALN20130606BHJP JPC12N1/20 AC08J11/10C08L101/16 C12N 1/20 C08J 11/10 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平2−76575(JP,A) 特開2006−180794(JP,A) 特開2006−180822(JP,A) 8 IPOD FERM P-21535 IPOD FERM P-21536 IPOD FERM P-21537 IPOD FERM P-21538 IPOD FERM P-21539 2009247241 20091029 7 20110329 上條 肇 本発明は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する新規微生物及び該微生物を用いたゴム組成物の分解方法に関する。 ゴム製品は一般のプラスチック製品とともに再利用しにくい材料であり、特にセメント工場などを中心として燃料として再利用されている場合が多い。しかしながら、近年環境問題の高まりとともに、ゴム製品を燃料として燃やすのではなく、コンポストのように低温で分解する省エネルギー型の方法や分解した材料を再利用するマテリアルリサイクルの方法の開発が求められている。 ゴム製品を分解する方法として、微生物による分解処理が考えられる。微生物分解は低温での処理なので、エネルギー消費は最も少ない処理法といえる。また、ゴム製品を微生物分解した後、分解物を再利用することも考えられる。例えば、分解されたモノマーやオリゴマーを再利用することや、粉ゴムの表面を微生物分解し、再度未加硫ゴムに混練り加硫することにより、新たな製品に利用することも考えられる。 ゴムの微生物分解については、従来様々な微生物がスクリーニングされ、検討されている。そのような微生物分解については、特開平9−194624号公報(特許文献1)、特開平11−60793号公報(特許文献2)等で報告されており、これらの特許文献には、ノカルディア属に属する微生物によるゴムの分解方法が記載されている。特開平9−194624号公報特開平11−60793号公報 しかしながら、ゴムの微生物分解の実用化に当たっては、より高効率でゴムを分解することが可能な微生物が望まれている。 そこで、本発明の目的は、従来より高効率でゴムを分解することが可能な新規な微生物及び該微生物によるゴムの分解方法を提供することにある。 本発明者は、上記目的を達成すべく、日本各地の多くの土壌から天然ゴム分解菌の探索を行った結果、高効率でポリイソプレン系ゴムを分解できる微生物が驚くべきことに、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌であることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株(FERM P-21535)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株(FERM P-21536)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株(FERM P-21537)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株(FERM P-21538)であることを特徴とする。 また、本発明の別の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株(FERM P-21539)であることを特徴とする。 また、本発明のゴム組成物の分解方法は、上記微生物により、ポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解することを特徴とする。 また、本発明のゴム組成物の好適例において、前記ゴム組成物中のポリイソプレン系ゴムの含有量が10質量%以上であることを特徴とする。 また、本発明のゴム組成物の他の好適例において、前記ポリイソプレン系ゴムがシスポリイソプレンゴムであることを特徴とする。 本発明によれば、従来より高効率でゴム製品を分解することができるという有利な効果を奏する。 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の新規微生物は、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株、BS−GS2株、BS−GS5株、BS−GS6株、BS−GS7株である。上記5種の菌株は、本発明者が日本各地の多くの土壌から天然ゴム分解菌を鋭意スクリーニングした結果、得られたものである。これらの菌株は、それぞれ独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2008年3月12日に受託されている。詳細には、BS−GS1株は受託番号FERM P-21535として、BS−GS2株は受託番号FERM P-21536として、BS−GS5株は受託番号FERM P-21537、BS−GS6株は受託番号FERM P-21538として、BS−GS7株は受託番号FERM P-21539として受託されている。 上記5種のノカルディア・タケデンシスに帰属する放線菌の菌株は、無機塩の液体培地中でゴムを資化しながら増殖する。無機塩としては、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。 ノカルディア属の放線菌は、天然ゴムなどのポリイソプレン系ゴムを分解することが知られているが、ノカルディア・タケデンシスに帰属する放線菌において、ポリイソプレン系ゴムを分解することができるものはこれまでに報告されていない。さらに、上記5種の本発明の菌株は、従来報告されているノカルディア属に属する放線菌よりもポリイソプレン系ゴムを分解する能力が高く、したがって、これら5種の菌株を用いることで、従来よりも高効率でポリイソプレン系ゴムを含有するゴム製品を分解することが可能である。 上記5種の菌株の同定は、近年主流となっている16SrRNAの比較に基づいて行った。以下に方法を詳細に述べる。菌株をYM寒天培地(Becton Dickinson NJ,USA)に植菌し、30℃で5日間培養した。その後、この菌体からPrepMan Method(Applied Biosystems、CA,USA)により、ゲノムDNAの抽出を行った。抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより、16S Ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)のうち、5末端側約500bpの領域を増幅した。その後、増幅した塩基配列をシーケンスし、検体の16S rDNA部分塩基配列を得た。得られた16SrDNAの塩基配列から検体の相同性検索を、細菌基準株データベース及び国際塩基配列データベースから、検索に用いるアルゴリズムとしてBLASTを用いて行った。結果を下記の表1及び2に示す。 これらの結果から、上記5種の菌株は、ノカルディア・タケデンシスに帰属する菌株であると同定した。 また、本発明のゴム組成物の分解方法は、上記ノカルディア・タケデンシスに帰属する菌株を一種又は複数組み合わせて用いることを特徴とする。本発明を適用する対象となるポリイソプレン系ゴムとしては、主鎖がシスポリイソプレン及びトランスポリイソプレンであるゴムまたはエラストマーを挙げることができる。本発明においてシスポリイソプレンであるゴムが最も好ましいが、イソプレンと他のモノマーとの共重合体を主鎖とするゴムまたはエラストマーにも本発明を適応することが可能である。具体的なシスポリイソプレンとしては、それに限定されるものではないが、天然ゴムやNatsynなどの合成シスポリイソプレンが例示され、トランスポリイソプレンとしてはガッタパーチャなどの天然系ゴムが例示される。 ゴム組成物を構成するゴムエラストマー中のポリイソプレン系ゴムの含有量が10質量%以上であれば本発明の方法の適応が可能である。ゴムエラストマー中のポリイソプレンは50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは80質量%以上であるが、その範囲に限定されるものではない。 本発明で分解の対象となるゴムは、イソプレン系ゴムであれば、ゴム工業で通常使用されているシランカップリング剤、硫黄、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、老化防止剤、プロセス油、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、過酸化物等の通常の配合剤が配合されたものでよい。ただし、ゴム配合剤の中に上記5種の菌株の増殖を阻害する配合剤が配合されている場合は、ゴムを溶剤抽出し、これを除去する必要がある。 ゴム組成物の分解反応の条件としては、通常のノカルディア属に属する放線菌の培養方法に準じた条件を採用することができる。例えば、培養培地として、本発明の微生物の基質であるゴム組成物のほか、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの無機塩類を含むものが挙げられる。 分解反応における温度は28〜32℃、好ましくは30℃である。また、pHは6〜8、好ましくは7である。 例えば、分解反応は以下のようにして行うことができる。まず、分解対象となるゴム組成物とともに本発明の微生物を前培養する。次に、分解対象のゴム組成物0.1〜10g/Lと前培養した微生物107〜109/100mlを反応容器に入れ、上述したような温度及びpHの条件で20日以上培養する。このような分解反応によって、分解対象のゴム組成物を高効率で分解することができる。 以下、実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。(実施例1) シリコーン栓付きのガラス容器に準備した下記表3の組成の培地に、アセトン抽出済みの天然ゴムラテックス手袋の短冊状に切ったゴム片5g/Lを入れ、90℃で、オートクレーブ中で滅菌処理した。これに同様の手袋ゴムを唯一の炭素源として前培養したノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株の菌液(108/100ml)を加え、40日間、30℃、50rpmで振盪培養し、121℃でオートクレーブ中で滅菌し、手袋ゴム片を取り出した。取り出した手袋ゴム片をアセトンで数回洗浄後、純水で洗浄し、充分に乾燥したことを確認後、重量測定を行った。(実施例2) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株を用いて行った。(実施例3) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株を用いて行った。(実施例4) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株を用いて行った。(実施例5) 実施例1と同様の実験を、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株を用いて行った。(比較例) 実施例1〜5と同様の実験を土壌から分離した放線菌を用いて行った。 実施例1〜5及び比較例の結果を表4に示す。 表4のように、実施例1〜5では、本発明の微生物を用いた場合の重量減少が20〜30%であったが、比較例では、重量減少が0%であった。よって、本発明の微生物は天然ゴムに対して大きな分解性を持つことが確認された。 本発明の新規微生物は、タイヤなどのゴム製品の廃棄及び再利用においてゴム製品を分解する手段として有用である。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS1株(FERM P-21535)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS2株(FERM P-21536)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS5株(FERM P-21537)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS6株(FERM P-21538)。 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia Takedensis)に帰属する放線菌BS−GS7株(FERM P-21539)。 請求項1〜5項のいずれか1項に記載の放線菌により、ポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解することを特徴とするゴム組成物の分解方法。 前記ゴム組成物中のポリイソプレン系ゴムの含有量が10質量%以上であることを特徴とする請求項6記載の方法。 前記ポリイソプレン系ゴムがシスポリイソプレンゴムである請求項6又は7記載の方法。


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