タイトル: | 公開特許公報(A)_高炉スラグの品質評価方法 |
出願番号: | 2008084845 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 33/24,C21B 3/04,G01N 33/38 |
金井 謙介 狩野 和弘 JP 2009236773 公開特許公報(A) 20091015 2008084845 20080327 高炉スラグの品質評価方法 住友大阪セメント株式会社 000183266 田村 爾 100116687 杉村 純子 100098383 金井 謙介 狩野 和弘 G01N 33/24 20060101AFI20090918BHJP C21B 3/04 20060101ALI20090918BHJP G01N 33/38 20060101ALN20090918BHJP JPG01N33/24 AC21B3/04G01N33/38 3 4 OL 8 本発明は、高炉スラグの品質評価方法に関し、特に高炉スラグをセメント混合材として用いた場合に、当該高炉スラグの水硬性が適正に評価できる品質管理評価方法に関する。 高炉スラグは銑鉄製造時に発生する副産物であり、溶鉱炉中に鉄鉱石粉末とコークス等の還元剤及び石灰石等のフラックスからなる焼結鉱を投入し、溶融した際に、銑鉄以外のものとして多量に発生する。 高炉スラグはその冷却速度によって徐冷スラグ、急冷(水砕)スラグに大別され、徐冷スラグは主に路盤材等の道路用骨材として、また水砕スラグはアルカリ刺激剤としての少量の消石灰やセッコウなどの硫酸塩などの存在によって顕著な水硬性を示す、いわゆる潜在水硬性なる性質からセメント製造用材料(高炉セメント用混合材)として利用されている。 特に、高炉セメント用に使用される水砕スラグは、全高炉スラグ中、約60%(980万トン、2005年実績)を占める。 高炉セメント中の水砕スラグの混合率はおよそ40%程度であり、従って高炉セメントの品質は、混入された水砕スラグに大きく左右されるため、水砕スラグの品質管理は重要である。 従来、高炉セメント製造用の水砕スラグの品質管理指標は、ガラス化率及び塩基度とするのが一般的であり、広く用いられている。 ガラス化率は高炉水砕スラグ中のガラス構造が占める割合であり、塩基度は高炉スラグの化学成分組成からその水硬性を評価する指標であり、これらの指標の測定方法は以下の通りである。 ガラス化率は、通常、高炉スラグのサンプルより、偏光顕微鏡を用いて結晶化部分とガラス化部分をポイントカウントし、全ポイント数におけるガラス化部分のポイント数の割合で算出している。 また、塩基度は、通常、蛍光X線分析による成分分析値(質量%)を基礎に下記式(2):〔(CaO+MgO+Al2O3)/SiO2〕・・・・(2)(但し、CaO、MgO、Al2O3、SiO2は、高炉スラグ中に含まれる各成分の含有質量割合(質量%)を示す。)の算出値として表わされている。 従来の水砕スラグは、ガラス化率や塩基度が、高炉スラグの産地や種類、ロットによってかなりの相違があり、ガラス化率が高いほど、または、塩基度が大きいほど水硬性が高い高炉スラグであるとされてきた。 従って、高炉スラグのガラス化率や塩基度を、高炉スラグの品質評価の指標として用いていた。 このような、高炉スラグの品質管理評価指標としてのガラス化率や塩基度についての研究報告としては、例えばセメント技術年報36(昭和57年)P85〜88の「高炉スラグの各種物性値と高炉セメントの強度との関係について」(非特許文献1)、セメント技術年報37(昭和58年)P77〜80の「高炉スラグのガラス化率、塩基度と高炉セメントの強さとの関係」(非特許文献2)及びセメント技術年報37(昭和58年)P81〜84の「高炉スラグの物性とその水和反応性について」(非特許文献3)がある。 しかしながら、近年では、水砕化温度の適正化(高温化)等が向上することにより、得られる高炉スラグのガラス化率は、高炉スラグの産地や種類、ロットの相違にかかわらず、98〜100%と非常に高く、またガラス化率の変動幅も少なくなっている。 更に、近年の高炉スラグの塩基度も、高炉セメントに混入する混合材として所望される水硬性を有するための塩基度>1.6の基準に対し、高炉スラグの産地や種類、ロットの相違にかかわらず、ほとんどの高炉スラグの塩基度は>1.8程度と高い値を有し、前記ガラス化率同様に変動幅も小さくなってきている。 しかし、これらのガラス化率が高い高炉スラグや、塩基度の高い高炉スラグであっても、高炉スラグの水和活性には、高炉スラグの産地や種類、ロットの相違により、大きく異なり、かなりの差異が生じているのが現状である。 従って、高炉スラグを高炉セメントの混合材として用いた場合の水和活性、即ち強度を評価する、高炉スラグの品質評価の指標として、かかるガラス化率及び塩基度は適正とはいえなくなってきている。 更に、高炉スラグのガラス化率や塩基度と、高炉セメントを使用したモルタル強度との明確な相関関係も確認できなくなってきている。 従って、高炉スラグ、特に水砕スラグの水硬性を適正に評価できる指標が所望されている。セメント技術年報36(昭和57年)P85〜88の「高炉スラグの各種物性値と高炉セメントの強度との関係について」セメント技術年報37(昭和58年)P77〜80の「高炉スラグのガラス化率、塩基度と高炉セメントの強さとの関係」セメント技術年報37(昭和58年)P81〜84の「高炉スラグの物性とその水和反応性について」 本発明の目的は、上記問題点を解決し、ガラス化率や塩基度に基づかない、高炉セメントに用いる高炉スラグの新規な品質評価方法を提供することである。 特に、高炉スラグの水和活性を適正に評価できる新規な評価指標を制定して、高炉スラグの水和活性品質を管理できる、高炉スラグの品質評価方法を提供することである。 本発明者は、高炉スラグ中に含まれる酸化カルシウム(CaO)、酸化ケイ素(SiO2)及び酸化アルミニウム(Al2O3)の各成分の含有質量割合を用いた新たな指標と圧縮強度とが良好な正の相関にあることを見出し、本発明に到達した。 即ち、本発明の高炉スラグの品質評価方法は、高炉スラグ中に含まれる酸化カルシウム、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの含有割合を次式;(CaO+SiO2)/Al2O3 ・・・(1)(但し、上記変数中、CaO、SiO2及びAl2O3は、高炉スラグ中の各成分の含有質量割合を示す。)で表される変数を指標とすることにより、高炉スラグの高炉セメント混合材としての品質評価を行うことを特徴とする、高炉スラグの品質評価方法である。 また好適には、前記高炉スラグの品質評価方法において、高炉スラグの高炉セメント混合材としての品質評価は、上記式(1)で表される変数と当該高炉スラグを混入した高炉セメントの強度との正の相関関係を利用することで、前記変数を指標とすることにより評価することを特徴とする、高炉スラグの品質評価方法である。 更に好適には、前記の高炉スラグの品質評価方法において、前記高炉スラグは、ガラス化率が98〜100%の高炉スラグである。 本発明の高炉スラグの品質評価方法を用いることで、高炉スラグを高炉セメントに用いたときの高炉スラグの種類や産地やロットにかかわらず、高炉スラグの水和活性の評価が適正にできる。 本発明においては、高炉スラグの水和活性を評価する新たな指標変数を用いることで、ガラス化率や塩基度によらない、高炉スラグの水和活性の適正な評価をすることが可能となる。 このことにより、ガラス化率が高くても、また塩基度が高くても、水和活性が低い、即ち得られる高炉セメントの圧縮強度が低くなるような高炉スラグの評価が可能となり、従来では評価することができなかった高炉スラグの適正な品質評価が可能となる。 従って、所望する強度を得るため、高炉セメント中に混合する高炉スラグの混合率等の判断の適性化を図ることが容易になる。 本発明を次の最良の形態の一例に基づき、以下に説明する。 本発明の高炉スラグの品質評価方法は、高炉スラグ中に含まれる酸化カルシウム、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの含有割合を次式(1);(CaO+SiO2)/Al2O3 ・・・(1)(但し、上記変数中、CaO、SiO2及びAl2O3は、高炉スラグ中の各成分の含有質量割合を示す。)で表される変数を指標とすることにより、高炉スラグの高炉セメント混合材としての品質評価を行う品質評価方法である。 上記式(1)の変数を指標とすることで、該変数に対する当該高炉スラグを混入した高炉セメントの圧縮強度との関係は、正の相関関係となる。 即ち、上記新指標である式(1)の変数は、強度因子と正の相関があるCaOとSiO2の含有質量割合の和を負相関のAl2O3で割った値であり、当該値は、強度因子と良好な正相関を有する。 従って、前記変数を指標とすることにより高炉スラグの水和活性を適正に評価することが可能となる。 上記式(1)の変数に対し、当該高炉スラグを混入した高炉セメントの圧縮強度とが正の相関関係を有するのは、高炉スラグに含有される構成成分が以下に示す作用を有することによるものであると考えられる。(CaOの作用) スラグ中のCaOの増加は、SiO−AlO−ネットワークを短鎖にする作用があるため、水和時にセメント水和物を形成しやすくなることから反応性の向上が期待できる。(SiO2の作用) スラグ中のSiO2の増加は、セメント水和物の主構成物であるカルシウムシリケート水和物のCaO/SiO2比を低くする作用があり、長期強度の向上が期待できるはずであるが、SiO2の増加で塩基度は逆に減少することになる。(Al2O3の作用) スラグ中のAl2O3の増加は、初期水和反応で支配的なエントリンガイト等のカルシウムアルミネート水和物の生成に起因するため、初期強度発現性に寄与するものの、長期強度は低下する傾向がある。 従って、本発明の品質評価方法においては、任意の高炉スラグの品質評価に使用することができるが、ガラス化率に依存しないことから、特にガラス化率が98〜100%のもの等、評価対象間でガラス化率の差が小さい高炉スラグに好適に使用することができる。 ここで、本発明において「ガラス化率」は、「水滓のガラス含有量測定方法(偏光顕微鏡法)」によって測定した値であり、具体的には、高炉スラ具を粉砕し、62〜105μmの粒子を篩別し、400〜500個の粒子について、浸液にブロムナフタレンを用い、偏光顕微鏡でガラス粒子と結晶粒子とを区別して、全粒に対する計数比で求めた値である。 本発明の高炉スラグの品質評価方法では、上記式(1)の変数を指標とした該変数に対する当該高炉スラグを混入した高炉セメントの圧縮強度の正の相関関係を用いることで、該指標値が高ければ、高炉スラグの水和活性が高いものであり、また逆に該指標値が低ければ、高炉スラグの水和活性が低いものであるという品質評価をすることができる。 具体的な例について以下に説明する。 高炉スラグ8種(上記測定方法により得られたガラス化率は98〜100%)をJIS R 5205に準じて、各高炉スラグの化学分析を実施し、その結果を表1に示す。 なお、表1中には、得られた化学分析値を基に、(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2の値及び(CaO+SiO2)/Al2O3の値も示す。 なお、前記(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2の値は、従来の高炉スラグの品質評価方法であった塩基度の値である。 次いで、表1に示す高炉スラグ8種を、それぞれブレーン比表面積4400±100cm2/gに粉砕し、粉砕した各高炉スラグ(1〜8)を3、83kg、二水セッコウ(関東化学株式会社製)を172g、5サンプルの普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)を6kg均一に混合して、各高炉セメントを40種類製造した。 次いで、各高炉セメント40種類を用いて、JIS R 5205に準じてモルタルを調製し、該各モルタルの材齢7日後及び28日後のモルタル強度を測定した。 但し、モルタル強度は、JIS R 5201「セメント物理試験方法」に準じて実施した。 得られた各モルタルの材齢28日後の強度試験の結果を以下の表2に、また得られた材齢7日後から28日後の強度の変化値を以下の表3に示す。 上記表1中の(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2の値に対する上記表2中の材齢28日後の圧縮強度値との関係を図1に示す。 また、上記表1中の(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2の値に対する上記表3中の材齢7日後から28日後の圧縮強度値の変化値との関係を図2に示す。 一方、上記表1中の(CaO+SiO2)/Al2O3の値に対する上記表2中の材齢28日後の圧縮強度値との関係を図3に示す。 また、上記表1中の(CaO+SiO2)/Al2O3の値に対する上記表3中の材齢7日後から28日後の圧縮強度値の変化値との関係を図4に示す。 図1及び図2より、塩基度である(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2値と材齢28日後の圧縮強度及び7−28日後の圧縮強度の変化値(増加値)との関係は、塩基度が高いものでも、得られる前記圧縮強度は低く、また圧縮強度の前記増加値も塩基度が高くても減少しているものがあることがわかる。 従って、塩基度である(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2値と圧縮強度値及び圧縮強度の増加値は正の相関を有さないことが明らかとなった。 即ち、強度因子に正に作用するCaO成分とSiO2成分が相殺され、負相関を示すAl2O3が分子に存在するためであると考えられる。 したがって、スラグの水和活性の指標は塩基度で示すことはできない。 一方、図3及び図4より、本発明の高炉スラグの水硬性の評価指標である、(CaO+SiO2)/Al2O3の値と材齢28日後の圧縮強度及び7−28日後の圧縮強度の変化値(増加値)との関係は、(CaO+SiO2)/Al2O3の値が高いものであると、得られる前記圧縮強度は高く、また圧縮強度の前記増加値も塩基度が高くなることがわかる。 従って、(CaO+SiO2)/Al2O3の値と圧縮強度値及び圧縮強度の増加値は良好な正の相関を有することが明らかとなった。 このように、高炉スラグ中に含まれる(CaO+SiO2)/Al2O3の値と圧縮強度値及び圧縮強度の増加値は良好な正の相関を有することより、かかる指標を用いることで、高炉セメント製造用の高炉スラグの水和活性を精度よく推定できるようになり、高炉セメント中への高炉スラグの粉末の混合率や粉末度の適正化を図ることに貢献することができるようになる。 本発明の高炉スラグの品質評価方法は、高炉スラグの水和活性を精度よく推定することができることから、セメント混合材としての高炉スラグの品質評価に有効に適用することができる。塩基度である(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2値と材齢28日後の圧縮強度との関係を示す図である。塩基度である(CaO+Al2O3+MgO)/SiO2値と材齢7−28日後の圧縮強度の変化値(増加値)との関係を示す図である。(CaO+SiO2)/Al2O3の値と材齢28日後の圧縮強度との関係を示す図である。(CaO+SiO2)/Al2O3の値と材齢7−28日後の圧縮強度の変化値(増加値)との関係を示す図である。 高炉スラグ中に含まれる酸化カルシウム、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの含有割合を次式;(CaO+SiO2)/Al2O3 ・・・(1)(但し、上記変数中、CaO、SiO2及びAl2O3は、高炉スラグ中の各成分の含有質量割合を示す。)で表される変数を指標とすることにより、高炉スラグの高炉セメント混合材としての品質評価を行うことを特徴とする、高炉スラグの品質評価方法。 請求項1記載の高炉スラグの品質評価方法において、高炉スラグの高炉セメント混合材としての品質評価は、上記式(1)で表される変数と、当該高炉スラグを混入した高炉セメントの強度との正の相関関係を利用することで、前記変数を指標とすることにより評価することを特徴とする、高炉スラグの品質評価方法。 請求項1又は2記載の高炉スラグの品質評価方法において、前記高炉スラグは、ガラス化率が98〜100%の高炉スラグであることを特徴とする、高炉スラグの品質評価方法。 【課題】ガラス化率や塩基度に基づかず、高炉スラグの水和活性を適正に評価できる新規な評価指標を制定して、高炉スラグの水和活性品質を適正に管理することができる、新規な高炉スラグの品質評価方法を提供する。【解決手段】 高炉スラグの品質評価方法は、高炉スラグ中に含まれる酸化カルシウム、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの含有割合を次式;(CaO+SiO2)/Al2O3 (但し、上記変数中、CaO、SiO2及びAl2O3は、高炉スラグ中の各成分の含有質量割合を示す。)で表される変数を指標とすることにより、高炉スラグの高炉セメント混合材としての品質評価を行うものである。【選択図】 図4