タイトル: | 再公表特許(A1)_EPA濃縮油およびDHA濃縮油の製造方法 |
出願番号: | 2008063550 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12P 7/64,C11C 3/10,C11C 3/00,C11B 7/00,C11B 3/12 |
降旗 清代美 川原 裕之 山口 秀明 池本 英生 土居崎 信滋 JP WO2009017102 20090205 JP2008063550 20080729 EPA濃縮油およびDHA濃縮油の製造方法 日本水産株式会社 000004189 小野 新次郎 100140109 社本 一夫 100089705 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 寺地 拓己 100122644 鶴喰 寿孝 100157923 降旗 清代美 川原 裕之 山口 秀明 池本 英生 土居崎 信滋 JP 2007197253 20070730 C12P 7/64 20060101AFI20100924BHJP C11C 3/10 20060101ALI20100924BHJP C11C 3/00 20060101ALI20100924BHJP C11B 7/00 20060101ALI20100924BHJP C11B 3/12 20060101ALN20100924BHJP JPC12P7/64C11C3/10C11C3/00C11B7/00C11B3/12 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20101021 2009525399 28 4B064 4H059 4B064AD88 4B064AD90 4B064CA21 4B064CB03 4B064CC08 4B064CD01 4B064CD06 4B064CD21 4B064CE10 4B064DA01 4B064DA10 4H059AA02 4H059BA12 4H059BA30 4H059BA33 4H059BC06 4H059BC13 4H059BC48 4H059CA18 4H059CA36 4H059CA38 4H059EA17 本発明はリパーゼ反応を用いた、エイコサペンタエン酸(以下、EPAとも記す)およびドコサヘキサエン酸(以下、DHAとも記す)のそれぞれを高濃度に含有する濃縮油の製造法に関する。 n-3系高度不飽和脂肪酸(Polyunsaturated Fatty Acid、以下、PUFAとも記す)であるエイコサペンタエン酸(以下、EPAとも称す)やドコサヘキサエン酸(以下、DHAとも称す)は様々な生理作用を持ち、医薬品、健康食品、食品素材などとして利用されている。EPAエチルエステルは動脈硬化や高脂血症の治療薬として用いられ、またEPA、DHAを含む魚油を添加した飲料は特定保健用食品としても認可されている。さらに国内外においてサプリメントとしての需要も非常に高い。 PUFAは二重結合数が多いことから、酸化に対し非常に不安定である。したがって、PUFA含有油の製造工程において、常温常圧といった温和な条件で反応が進行する酵素反応を利用することは非常に望ましい。 主に微生物から得られる産業用のリパーゼ製品の中にはこうしたPUFAに作用しにくい性質があるものが知られている。こうした性質を有するリパーゼを用い炭素数の少ない脂肪酸を優先的に遊離させ、これを除去することでPUFAを濃縮した油脂を製造できる。例えばキャンディダ シリンドラセア(Candida cylindoracea)のリパーゼを用いてマグロ油を加水分解した後、遊離脂肪酸を除去することでDHAを濃縮した油脂の製造方法が開示されている(特許文献1)。 従来、有機溶媒中の酵素反応においては水が酵素活性発現に重要な働きをすることは知られている(非特許文献1)。アルコールを作用させて脂肪酸をグリセリドから切断する反応であるアルコリシス反応を用い、タラ肝油からPUFAを濃縮する際に、水の添加がリパーゼ反応を促進することが報告されている(非特許文献2)。一方、特定のリパーゼではほぼ無水の条件で油脂のアルコリシスが進行することが開示されている。しかしリパーゼの使用量が油に対し10%と非常に多く、生産性向上のためにはリパーゼを固定化する必要がある(特許文献2)。 特許文献3には、長鎖高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含む油脂を1,3位置特異性のあるリパーゼにより加水分解する場合にアルカリ塩を用いる方法が記載されている。特開昭58−165796号特表平9−510091号特開平3−108489号J. S. Dordick,, ”Enzymatic catalysis in monophasic organic solvents”, Enzyme Microb. Technol., 1989, 11, April, 194-211L. Zui and O. P. Ward,, ”Lipase-catalyzed alcoholysis to concentrate the n-3 polyunsaturated fatty acid of cod liver oil”, Enzyme Microb. Technol., 1993, 15, July, 601-606 上述のようなリパーゼの性質を応用して魚油等のPUFAを濃縮した濃縮油は既に市場に出ているが、濃縮度には限界があり、高濃度の製品は得難いかまたは大量の酵素を必要とする。本発明は、原料油中に含まれるPUFAのうちのEPAおよびDHAをそれぞれ効率的に濃縮する方法を提供することを課題とする。 発明者らは産業用のリパーゼを用いた反応を様々な角度から研究した結果、酸化マグネシウム(以下、MgOとも記す)、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムなどを少量添加することによって、リパーゼの使用量が少なくても、リパーゼ反応の効率を飛躍的に向上させることを見いだした。さらに、当該反応は十分に基質特異的であり、EPAおよびDHAの各々を高度に濃縮する方法に適用可能であることを見いだした。 本発明は、反応添加剤としての酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種の化合物の存在下でEPAおよびDHAを構成脂肪酸として含有する油脂に炭素数18以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼを反応させて、炭素数18以下の脂肪酸をグリセリドから切り離したのちグリセリド画分を分離し、さらにそのグリセリド画分を酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種の化合物の存在下で炭素数20以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼを反応させて、EPA濃縮油(低級アルコールエステルとして)およびDHA濃縮油(グリセリド画分として)を同時に得ることを特徴とする製造方法を要旨とする。 すなわち、本発明は、EPAおよびDHAを構成脂肪酸として含有する油脂からEPA濃縮油およびDHA濃縮油を製造する方法であって、 a)反応添加物として酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種の化合物、およびアルコールまたは含水アルコールの存在下、該油脂を炭素数18以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼによるアルコリシス反応または加水分解反応を伴うアルコリシス反応に付し、得られた反応混合物から、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸が濃縮されたグリセリド画分を得る工程; b)反応添加物として酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種の化合物、およびアルコールまたは含水アルコールの存在下、前記グリセリド画分を炭素数20以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼによるアルコリシス反応または加水分解反応を伴うアルコリシス反応に付し、得られた反応混合物から、EPAが濃縮されたエステルの画分、およびDHAが濃縮されたグリセリド画分を分離する工程;を含む、前記方法である。 本発明は酸化マグネシウム等の安価な反応添加剤を少量添加することにより酵素の反応性を高め、かつ各段階において高度に基質特異的な反応を実現する。その結果として、EPA濃縮油およびDHA濃縮油を同時に高収率かつ安価に製造できる。発明を実施するための形態 本発明で原料として使用される油脂は、当該油脂に含まれるグリセリドを構成する脂肪酸としてEPAおよびDHAを含有する油であれば特に限定されず、魚油をはじめとする水産物油、微生物油、藻類油、植物油などが例示される。本発明の原料として用いる場合、それらの原油(搾油したそのもの)でもよいし、何らかの精製工程を経たものでもよい。本発明に使用する原料としてはEPAおよびDHAの含有量が高いほど良く、好ましい脂質として、イワシ油(例:EPA 17%、DHA 12%)、マグロ油(例:EPA 7%、DHA 25%)、カツオ油(例:EPA 5%、DHA 24%)、サケ油(例:EPA 9%、DHA 14%)などが挙げられる。 油脂は、通常、脂肪酸のトリグリセリドを意味するが、本発明ではジグリセリド、モノグリセリドなどリパーゼが作用するその他のグリセリドも含む。本発明において、グリセリドとは、脂肪酸のトリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリドの総称である。 本発明においてEPAまたはDHAの濃縮とは、原料油脂の「EPAまたはDHAの量/脂肪酸全量」より、反応後の「EPAまたはDHAの量/脂肪酸全量」を大きくすることを意味し、原料油脂に比べて「EPAまたはDHAの量/脂肪酸全量」が大きくなった油がEPA濃縮油またはDHA濃縮油である。 本発明において、「アルコール」とは、単一または複数の種類のアルコールを含んでいてもよい。 本発明の方法で行われるリパーゼ反応は、グリセリドから脂肪酸エステルを生成させるアルコリシス反応である。当該リパーゼ反応は、アルコールと水との混合溶媒中で行い、遊離脂肪酸および脂肪酸エステルを生成させる反応であってもよい。本発明で用いられる溶媒の低級アルコールとしては、エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノールなどが例示される。エタノールが特に好ましい。 本発明の工程a)で使用されるリパーゼは、炭素数18以下の脂肪酸に基質特異性を有するものであれば特に限定されない。好ましいリパーゼとして、アルカリゲネス エスピー(Alcaligenes sp.)に属する微生物から得られるリパーゼ(リパーゼQLM、リパーゼQLC、リパーゼQLG、リパーゼPL、いずれも名糖産業(株)製など)が例示される。特に、リパーゼQLMが好ましい。名糖産業(株)から入手可能なリパーゼQLCは以下の特徴・性質を有する。性状:ベージュ粉末、活性:約60,000U/g、分子量:31kDa、等電点:4.9、最適pH:7〜9、最適温度:65〜70℃。また、リパーゼQLCは、リパーゼQLMを珪藻土に固定化したものであり、リパーゼQLGは、リパーゼQLMを造粒した珪藻土に固定化したものである。 リパーゼの使用量については特に限定されないが、粉末のリパーゼについては油脂に対して10 unit/g以上、反応速度を考えた実用性を考えると30 unit/g以上用いるのが好ましく、固定化リパーゼについては油脂に対し0.01%(w/w)以上が好ましい。 本発明の工程b)で使用されるリパーゼは、炭素数20以下の脂肪酸に基質特異性を有するものであれば特に限定されない。好ましいリパーゼとして、サーモマイセス ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)に属する微生物から得られるリパーゼ(リポザイムTL IM、ノボザイム社製)が例示される。ノボザイム社から入手可能なリポザイムTL IMは以下の特徴・性質を有する。分子量:30kDa、等電点:4.8、pH:6〜11、最適温度:60〜70℃、固定化担体:シリカゲル、粒度:300〜1000μm(主に、500〜900μm)、比重:0.54g/ml。リパーゼの使用量については特に限定されないが、粉末のリパーゼについてはグリセリド画分に対して10 unit/g以上、反応速度を考えた実用性を考えると30 unit/g以上用いるのが好ましく、固定化リパーゼについては油脂に対し0.01%(w/w)以上が好ましい。 反応添加剤としては酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムが利用できるが、酸化マグネシウムは効果も高く、食品用途にも用いることができるため特に好ましい。粉末、細粒状、顆粒状などのものが扱いやすく、産業用に市販されているものを用いることができる。反応添加剤の添加量は特に限定されないが、好ましくは工程a)における原料油脂に対して0.01%(w/w)〜30%(w/w)、より好ましくは0.05%(w/w)〜5%(w/w)の範囲で用いられる。また、好ましくは工程b)における原料のグリセリド画分に対して0.01%(w/w)〜30%(w/w)、より好ましくは0.05%(w/w)〜5%(w/w)の範囲で用いられる。 反応方法は所定量の原料油脂、反応添加剤、アルコール等を混合できれば特に限定されず、通常のリパーゼを用いた反応についての技術常識に従って行うことができる。酵素が高活性を示す反応温度(例えば、20℃〜60℃)で、1時間から24時間程度の反応時間で、十分に混合されるように攪拌するのが一般的である。カラム等に充填した固定化酵素を反応に使用しても良い。 リパーゼ反応がアルコリシス反応の場合、反応後は反応添加剤及び酵素等を、ろ過及び水性溶液による洗浄等で除去することができる。 工程a)および工程b)におけるグリセリド画分の分離方法は特に限定されないが、例えば、分子蒸留、短行程蒸留などの蒸留法や各種クロマトグラフィを用いた分離方法が利用できる。精製方法も通常油脂の精製に用いられる方法を用いればよく、各種クロマトグラフィ、水蒸気蒸留などが例示される。 本発明の1つの態様において、工程a)または工程b)のいずれか、または工程a)および工程b)の両方において、リパーゼ反応を、反応系中に少量の水を添加して行うことができる。水を添加する場合、水は使用する低級アルコールに対して1%(v/v)〜30%(v/v)、より好ましくは5%(v/v)〜20%(v/v)の量を添加する。油脂中に含まれる水分量についても考慮するのが望ましい。 低級アルコールの量は、例えば、反応系中の油脂またはグリセリド画分に含まれる脂肪酸に対して、0.2〜5当量、より好ましくは0.2〜1.5当量用いる。 工程a)を含水低級アルコールの存在下で行った場合に生じる脂肪酸低級アルコールエステルおよび遊離脂肪酸は、蒸留(例えば、薄膜蒸留、分子蒸留および短工程蒸留など)、アルカリを用いた脱酸工程などにより除去することが可能である。 以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。なお、原料油、およびグリセリド画分のEPAまたはDHAの含有量は、メチルエステル化後に、ガスクロマトグラフィーの面積比により決定した。なお、ガスクロマトグラフィー測定前に行ったメチルエステル化は、日本油化学会の定める基準油脂試験法にて行った(日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(I)1996年版、2.4.1 脂肪酸誘導体化法、2.4.1.2−1996 メチルエステル化法(三フッ化ホウ素−メタノール法))。 (1)工程a)のリパーゼ反応 精製イワシ油(EPA 17.4%, DHA 11.9%、日本水産(株)製)1.20 KgにリパーゼQLMを1.49 g(100 unit/g)、水を20.7 g、酸化マグネシウム(純正化学(株)特級試薬99%以上、粉末)を30g(油に対し2.5%)、エタノールを207 ml加え、40℃にて16時間撹拌した。反応後、固形分をろ別し、20%硫酸560 mlと食塩水200 mlそれぞれにて洗浄し、その後、油層中に残存する水分とエタノールを留去し、1.21 Kgの油を得た。得られた油から少量を採取し、分取TLCにてグリセリド画分を分離し、メチルエステル化後、ガスクロマトグラフィーにて脂肪酸組成の分析を行った。分析条件は以下に示す(特に言及がなければ、以後の分取TLCおよびガスクロマトグラフィーによる分析は同様の方法により行った)。 TLCでの分取条件、メチルエステル化条件; 反応液50μLにヘキサン1ml、飽和食塩水10mlを加え、ヘキサン抽出した。得られたヘキサン層150μLを分取用TLCに塗布し、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(70:30:1、体積比)で展開した。展開後、エチルエステル以外のグリセリド画分をかきとり、そのままメチラート法によりメチルエステル化した。すなわち1Nナトリウムメトキシド/メタノール溶液2mlを加え、80℃にて1分間加熱した。その後反応を停止させるため、1N塩酸を2ml加え、80℃にて1分間加熱した。次にヘキサン0.5ml、飽和食塩水を6ml加え、振とう後、静置し、ヘキサン層をガスクロマトグラフィーにて分析した。 ガスクロマトグラフィー条件; キャピラリーカラム:DB-WAX(J&W Scientific)、Fused Silica Capillary Column、0.25mmI.D.×30m ,0.25μm film thickness キャリヤーガス:ヘリウム 検出器:250℃, FID 注入口:250℃, スプリット比=100:1 カラム温度:180℃→3℃/min →230℃(15 min) 装置:Hewlett Packard 6890 また、脂質組成はTLC/FIDを用いて、5重量%のヘキサン溶液(1μl)をシリカゲルロッドにスポット後、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(90:10:1、体積比)で展開して分析を行った。原料イワシ油の脂質組成と脂肪酸組成、得られた油の脂質組成(面積%)とグリセリド画分の脂肪酸組成(面積%)を表1および表2に示す。EPAおよびDHAはこの反応によってグリセリド画分に濃縮され、それぞれ46.7%、20.6%となった。また、EPA、DHAの回収率はそれぞれ106.6%、68.7%と高回収率であった。EPA、DHAの回収率(%)は、(反応後のグリセリド画分のEPA(又はDHA)の割合(%)×グリセリドの含量(%))/(反応前の油脂のEPA(又はDHA)の割合(%))により算出した。 (2)グリセリド画分の分離 実施例1で得られた油から、エチルエステルおよび脂肪酸を膜蒸留装置を用いて留去した。薄膜蒸留装置はUIC GmbH社製短行程蒸留装置KDL-5(蒸発面積0.048 m2)を用いて、130℃、1×10-3 mbar、0.60 L/hにて2パス処理した。留去後の残留油の脂肪酸組成(面積%)および脂質組成(面積%)を表3および表4に示す。脂質組成からエチルエステルおよび遊離脂肪酸が留去され、EPA、DHAが濃縮されたグリセリド画分が得られることを確認した。 (3)工程b)のリパーゼ反応および生成物の分画 上記工程(2)で得た油(グリセリド画分)1gに、水10μL、リポザイムTL IMを20 mg(油に対して2.0%)、酸化マグネシウムを25 mg(油に対して2.5%)、エタノールを173μL加え、40℃にて16時間撹拌した。その後、固形分をろ別し、食塩水にて洗浄後、得られた油の脂質組成の分析を行った。分取TLCにてエチルエステルとグリセリド画分をそれぞれ分取して脂肪酸組成の分析を行った。分取TLCの条件は実施例1、(1)工程a)と同条件で行い、今回の場合はエチルエステル、グリセリド画分それぞれについてかきとり分析を行った。反応後の脂肪酸組成(面積%)、脂質組成を表5および表6に示す。DHAはグリセリド画分に76.4%、EPAはエチルエステル画分に52.1%と濃縮され、DHA濃縮油とEPA濃縮油を同時に得ることができた。この反応におけるグリセリド画分のDHA回収率は71.6%、エチルエステル画分のEPA回収率は74.9%であった。DHAの回収率(%)は、(反応後のグリセリド画分のDHAの割合(%)×反応後のグリセリドの含量(%))/(反応前のグリセリド画分のDHAの割合(%))により、EPAの回収率は、(反応後のエチルエステルのEPAの割合(%)×反応後のエチルエステルの含量(%))/(反応前のEPAの割合(%))により算出した。 実施例1の工程(3)のリポザイムTL IMの使用量を 5 mg(油に対して0.5%)に替えて実施例1,工程(3)と同じ条件で反応を行った。結果を表7および表8に示す。リパーゼの使用量を少なくした場合においても、DHA濃縮油とEPA濃縮油を同時に得ることができた。この反応におけるグリセリド画分のDHA回収率は114.7%、エチルエステル画分のEPA回収率は58.9%であった。(回収率における100%を超える数値は、本回収率計算方法が簡易計算法であることによる。すなわち、回収率の算出に用いているFIDの測定値は、分子量が大きいほど相対的な感度が高くなるため、DHAのような分子量の高い脂肪酸では、高い値が得られることになる。以後の実施例においても同様。) 原料の脂質としてEPA濃度の高い低温分別精製イワシ油(EPA 29.0%、DHA 12.5%、日本水産(株)製)を使用し、DHA濃縮油とEPA濃縮油の調製を行った。工程a)の反応は、精製イワシ油1.2 Kg、リパーゼQLM 1.49 g、水 20.7 ml、酸化マグネシウム 60 g、エタノール 207 mlを使用し、40℃で16時間反応させ、処理操作は実施例1と同様に行った。その後、実施例1の同様の条件で2パス薄膜蒸留処理を行い、グリセリド画分を得た。工程b)の反応を、工程a)で得られた油1g、水10μL、リポザイムTL IM 20 mg、酸化マグネシウム 25 mg、エタノール 173μLを使用して行い、40℃で16時間反応させた。分取TLCにてエチルエステルとグリセリド画分をそれぞれ分取した(条件は実施例1と同じ)。原料精製イワシ油および工程a)、薄膜蒸留処理2パス後の残留油、および工程b)反応後の脂肪酸組成を表9に、工程a)および工程b)反応後の脂質組成を表10に示す。2段階の反応でEPA濃度が73.9%、DHA濃度が50.8%と同時に高濃度化することができた。工程a)反応におけるEPA回収率は95.8%、DHA回収率は53.7%で、工程b)反応におけるエチルエステル画分のEPA回収率は62.6%、グリセリド画分のDHA回収率は114.6%であった。 以下、本発明を実施するための条件検討を、参考例1〜13として示す。参考例1 精製イワシ油(EPA 28.2%, DHA 12.5%、日本水産(株)製)1gにリパーゼQLM(アルカリゲネス エスピー、名糖産業(株)製)を1.65 mg(100 unit/g)、水を17μl、MgO(純正化学(株)特級試薬99%以上)(油に対し0.25%(w/w)または2.5%(w/w))、エタノールを170μl(脂肪酸に対し0.75当量)加え、40℃で16時間撹拌した。反応後、固形分をろ別し、ろ液をヘキサンにより抽出した。以下に示す方法により分取TLCでグリセリド画分を分離した。 得られたグリセリド画分をメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィ−にて脂肪酸組成の分析を行った。分取TLC、メチルエステル化およびガスクロマトグラフィー分析の条件は実施例1と同様であった。 リパーゼPS(バーカホリデリア セパシア、天野エンザイム(株)製)3.3mg(100unit/g)についても同様の条件で反応させた。 また、比較例として、それぞれのリパーゼについて、水及びMgO無添加、水のみ添加、MgOのみ0.25%(w/w)添加する以外は上記の条件でエタノリシス反応を行った。 グリセリド画分の脂質組成はTLC/FID(イアトロスキャンTH-10、三菱化学ヤトロン社製)を用いて、5重量%のヘキサン溶液(1μl)をシリカゲルロッドにスポット後、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(90:10:1、体積比)で展開して分析を行った。結果は、得られたチャートよりグリセリド、エステルのピーク面積比を得て、それに基づいてグリセリド回収率算出した。EPAおよびDHAの回収率は、(反応後のグリセリドのPUFAの割合(%)×グリセリドの含量(%))/(反応前のPUFAの割合(%))により算出する。EPAおよびDHAの面積%、EPAおよびDHAの脂肪酸回収率およびグリセリド回収率の結果を表11に、比較例の結果を表12に示す。 表11の結果を表12の比較例の結果と比べると、リパーゼ量が同じでも水、MgOを添加することによるEPAおよびDHAの濃縮に及ぼす効果が明らかである。また、MgO添加量増加に伴い、EPAおよびDHAが濃縮されたことがわかる。さらに、EPAおよびDHA回収率が非常に高く、当該反応の脂肪酸選択性が保持されている。参考例2 参考例1で用いたイワシ油よりもEPAおよびDHAの含有量が少ないイワシ油(EPA 15.7%, DHA 8.99%、日本水産(株)製)を原料として用い、参考例1と同じ条件、油脂1gにリパーゼQLM 1.65mg(100 uni/g)、水17μl、MgO 2.5%(w/w)、エタノール170μl、で40℃で16時間エタノリシス反応を行った。EPAおよびDHA面積%、回収率、グリセリド回収率の結果を表13に示す。参考例3 精製マグロ油(EPA 6.75%、DHA 24.3%、日本水産(株)製)2gにリポザイムTL IM(サーモマイセス ラヌギノサス、ノボザイム社製)2mg(油に対し0.1%(w/w))、水34μl、MgO(0.25%(w/w)または2.5%(w/w))、エタノール340μlを加え、40℃で16時間撹拌した。また、比較例として、水及びMgO無添加、水のみ添加、MgOのみ0.25%(w/w)添加する以外は上記の条件でエタノリシス反応を行った。反応後、固形分をろ別し、分取TLCでグリセリド画分を分離し、メチルエステル化後、脂肪酸組成の分析を行った。EPAおよびDHAの脂肪酸回収率、グリセリド回収率を表14に、比較例のEPAおよびDHAの面積%と脂肪酸回収率、グリセリド回収率を表15に示す。 リポザイムTL IMを使用した場合は、DHA濃度の濃縮度が高まる一方で、EPAのエタノリシスは進行していることがわかる。MgOの添加量の増加に伴い、DHA濃度の濃縮度は向上した。比較例では、同じ酵素量を使用しているにもかかわらず、DHAはほとんど濃縮されてなかった。参考例4 MgO以外の反応添加剤の効果を調べるため、参考例1と同様の反応条件で、反応添加剤9種類を原料油に対し1%(w/w)添加した。すなわち、精製イワシ油(EPA 28.2%, DHA 12.5%、日本水産(株)製)1gにリパーゼQLM(アルカリゲネス エスピー、名糖産業(株)製)を1.65mg(100 unit/g)、水を17μl、表16に示す反応添加物9種類を油に対し1%(w/w)、エタノールを170μl(脂肪酸に対し0.75当量)加え、40℃で16時間撹拌した。反応後、固形分をろ別し、分取TLCでグリセリド画分を分離し、メチルエステル化後、脂肪酸組成を測定した。表16にグリセリド画分のEPA面積%を示す。MgOの他に水酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムにEPA濃縮効果が見られた。参考例5 リパーゼQLMによるEPA濃縮油脂の製造 精製イワシ油(EPA 28.2%, DHA 12.5%、日本水産(株)製)1kgにリパーゼQLM(アルカリゲネス エスピー、名糖産業(株)製)0.83g、水17g、MgO 2.5g、エタノールを173ml加え、40℃で16時間撹拌した。遠心分離後、固形分を除き、エタノールを留去し、1.06kg得た。希硫酸で洗浄後、湯洗浄し、薄膜蒸留装置により、エステル、脂肪酸を留去し、グリセリド画分としてのEPA濃縮油を583g得た。脂肪酸組成を測定したところ、EPA 48.3%、DHA 17.3%であった。参考例6 リポザイムTL IMによるDHA濃縮油脂の製造 精製マグロ油(EPA 6.75%、DHA 24.3%)1kgにリポザイムTL IM(サーモマイセス ラヌギノサス、ノボザイム社製)1g、水 17g、MgO 5g、エタノール173mlを加え、40℃16時間撹拌した。固形分をろ過後、エタノールを留去し、1.07kgを得た。リン酸で洗浄後、湯洗浄し、分子蒸留装置により、エステル、脂肪酸を留去し、グリセリド画分としてのDHA濃縮油416gを得た。脂肪酸組成を測定したところ、EPA 9.4%、DHA 52.8%であった。参考例7 MgOの添加量の検討 参考例1と同じ条件、すなわち、精製イワシ油(EPA 28.2%, DHA 12.5%、日本水産(株)製)1gにリパーゼQLMを1.65 mg(100 unit/g)、水を17μl、MgO(油に対し0〜10%(w/w))、エタノールを170μl(脂肪酸に対し0.75当量)加え、40℃16時間撹拌という条件でアルコリシスを行った。 結果を表17に示す。MgOの添加量は多いほど反応を促進させ、EPAを濃縮させた。参考例8 エタノール量の検討 精製イワシ油(EPA 28.2%, DHA 12.5%、日本水産(株)製)1gにリパーゼQLMを0.83 mg(50 unit/g)、水を17μl、MgO(油に対し0.25%(w/w))、エタノールを脂肪酸に対し0.5〜1.5当量加え、40℃16時間撹拌するという条件でアルコリシスを行った。 結果を表18に示す。エタノールの使用量は脂肪酸量に対して0.5〜1.5等量が好ましいことがわかった。参考例9 リパーゼ使用量の検討 精製イワシ油(EPA 28.2%、DHA12.5%、日本水産(株)製)1gにリパーゼQLMを10〜50 unit/g、水を17μl、MgO(油に対し0.25〜2.5%(w/w))、エタノールを脂肪酸に対し0.75当量加え、40℃で16時間撹拌するという条件でアルコリシスを行った。 結果を表19に示す。リパーゼの使用量は25 unit/g以上が好ましいことがわかった。また、同じリパーゼ量でもMgO量を増加させることにより反応性を高めることができることが確認された。参考例10 反応時間の検討 精製イワシ油(EPA 28.2%, DHA 12.5%、日本水産(株)製)1gにリパーゼQLMを1.65mg(100 unit/g)、水を17μl、MgO(油に対し0.25%(w/w))、エタノールを脂肪酸に対し1当量加え、40℃で0〜24時間撹拌するという条件でアルコリシスを行った。 結果を表20に示す。[比較例] MgO、水を使用しない場合のリパーゼの反応 精製イワシ油(EPA 28.2%, DHA 12.5%、日本水産(株)製)1gにリパーゼQLMを100〜1000 unit/g)、エタノールを脂肪酸に対し1当量加え、40℃で16時間撹拌するという条件でアルコリシスを行った。参考例11 ギンザケ抽出油への適用 ギンザケ抽出油(EPA 9.8%, DHA 14.0%)1gにリポザイムTL IM(サーモマイセス ラヌギノサス、ノボザイム社製)を2mg(0.2%)、水を10μl、MgO(純正化学(株)特級試薬99%以上)(油に対し0.5%(w/w)または2.5%(w/w))、エタノールを170μl(脂肪酸に対し0.75当量)加え、40℃で16時間撹拌した。反応後、固形分をろ別し、分取TLCでグリセリド画分を分離し、メチルエステル化後、ガスクロマトグラフィ−にて脂肪酸組成の分析を行った。分取TLC、メチルエステル化、ガスクロマトグラフィー分析の条件は実施例1と同様。 また、比較例として、水及びMgO無添加以外は上記の条件でエタノリシス反応を行った。 グリセリド画分のEPA、DHAの面積%、EPA、DHAの脂肪酸回収率およびグリセリド回収率の結果を表22に、比較例の結果を表23に示す。参考例12 スケトウダラ抽出油への適用 スケトウダラ抽出油(EPA 12.3%, DHA 7.9%)を原料として用い、油脂1gにリパーゼQLM 1.65mg(100 unit/g)、水17μl、MgO 2.5%(w/w)、およびエタノール170μlを加え、40℃で16時間エタノリシス反応を行った。またリポザイムTL IM 5mg(0.5%)についても同様に水、MgOを添加し、エタノリシス反応を行った。EPA、DHA面積%、回収率、グリセリド回収率の結果を表24に示す。リパーゼQLMではEPAが濃縮され、リポザイムTL IMではDHAが濃縮された。いずれもEPAとDHAを合わせた面積%は原料の倍以上に濃縮された。 また比較例として、MgOおよび水無添加以外は上記の条件でエタノリシス反応を行った結果を表25に示す。参考例13 マンボウ肝油への適用 マンボウ肝油(アラキドン酸(AA) 5.1%、EPA 4.2%, ドコサペンタエン酸(DPA)7.7%、DHA 10.5%)を原料として用い、油脂1gにリパーゼQLM 1.65mg(100 unit/g)、水17μl、MgO 2.5%(w/w)、およびエタノール170μlを加え、40℃で16時間エタノリシス反応を行った。またリポザイムTL IM 5mg(0.5%)についても同様に水、MgOを添加し、エタノリシス反応を行った。AA、EPA、DPA、DHA面積%、回収率、グリセリド回収率の結果を表26に示す。リパーゼQLMではAA、EPA、DPAおよびDHAが濃縮されたのに対し、リポザイムTL IMはDHAのみが濃縮された。 また比較例として、MgOおよび水無添加以外は上記の条件でエタノリシス反応を行った結果を表27に示す。 エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸を構成脂肪酸として含有する油脂からエイコサペンタエン酸濃縮油およびドコサヘキサエン酸濃縮油を製造する方法であって、 a)反応添加物として酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種の化合物、およびアルコールまたは含水アルコールの存在下、該油脂を炭素数18以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼによるアルコリシス反応または加水分解反応を伴うアルコリシス反応に付し、得られた反応混合物から、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸が濃縮されたグリセリド画分を得る工程; b)反応添加物として酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種の化合物、およびアルコールまたは含水アルコールの存在下、前記グリセリド画分を炭素数20以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼによるアルコリシス反応または加水分解反応を伴うアルコリシス反応に付し、得られた反応混合物から、エイコサペンタエン酸が濃縮されたエステルの画分、およびドコサヘキサエン酸が濃縮されたグリセリド画分を分離する工程;を含む、前記方法。 工程a)で使用するリパーゼが、アルカリゲネス エスピー(Alcaligenes sp.)に属する微生物から得られるリパーゼである、請求項1に記載の方法。 工程b)で使用するリパーゼが、サーモマイセス ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)に属する微生物から得られるリパーゼである、請求項1または2に記載の方法。 工程a)で使用するリパーゼが、リパーゼQLM(商品名)である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 工程b)で使用するリパーゼが、リポザイムTL IM(商品名)である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。 工程a)および/または工程b)の反応添加物が酸化マグネシウムである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。 工程a)および/または工程b)の反応添加物の添加量が油脂に対して0.01〜30%(w/w)である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。 アルコールが低級アルコールである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。 含水アルコールが水を1〜30%(w/w)含むものである請求項1〜8のいずれかに記載の方法。 工程a)で使用する油脂が魚油である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。 本発明により、酸化マグネシウム等の反応添加剤の存在下でEPAおよびDHAを含有する油脂を炭素数18以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼによりアルコリシス反応させたのちグリセリド画分を分離し、さらにそのグリセリド画分を酸化マグネシウム等の反応添加剤の存在下で、炭素数20以下の脂肪酸に基質特異性を有するリパーゼによりアルコリシス反応させて、EPA濃縮油およびDHA濃縮油を同時に得る方法が提供される。