生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_農業用病害防除剤
出願番号:2008050250
年次:2010
IPC分類:A01N 37/06,A01N 43/08,A01P 3/00,C07D 307/60


特許情報キャッシュ

角 一雄 小池 和好 伊藤 真治 JP WO2008084845 20080717 JP2008050250 20080111 農業用病害防除剤 出光興産株式会社 000183646 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 佐貫 伸一 100126505 辻田 朋子 100137338 角 一雄 小池 和好 伊藤 真治 JP 2007004892 20070112 A01N 37/06 20060101AFI20100409BHJP A01N 43/08 20060101ALI20100409BHJP A01P 3/00 20060101ALI20100409BHJP C07D 307/60 20060101ALI20100409BHJP JPA01N37/06A01N43/08 HA01P3/00C07D307/60 Z AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100506 2008553119 19 4C037 4H011 4C037KA01 4H011AA01 4H011AA02 4H011AA03 4H011AA04 4H011BA01 4H011BB06 4H011BB08 4H011BC18 4H011DA13 本発明は、消毒剤に関し、より詳細には農業用資材消毒用である病害防除剤に関する。より具体的には、切断刀消毒用である病害防除剤に関する。 農業分野で消毒剤として使用されている殺菌剤として日本曹達株式会社のケミクロンG(次亜塩素酸カルシウム)や大塚化学株式会社のイチバン(ベンチアゾール乳剤)がある(特許文献1、非特許文献1)。ケミクロンGは有効塩素が70%であり、殺菌性能は有毒ガスである塩素に由来する。従って、人体の健康に極めて悪いだけでなく、資材消毒後に塩素が消失するまで日光に1〜2日晒した後でないと消毒した資材が使用できないという欠点があった。また、イチバンは魚毒性があるため、養殖池等の周辺では使用できない。かつ人体に対しても有害性であるため、使用にあたり保護眼鏡、マスク、ゴム手袋、長靴等の皮膚が露出しない工夫が必要である。また、使用後には、1%の消石灰を投入し、日光に数日間晒し分解させる必要があった。このように従来の資材消毒剤には克服すべき課題があった。 上記ケミクロンGは、馬鈴薯の種芋切断用の切断刀の消毒剤として広く用いられている。馬鈴薯の種芋を植え付ける前に種芋を2〜4個に小さく切断するのに、切断刀農具が用いられている。この作業は、馬鈴薯の大産地である北海道で未だに手作業で切断刀(包丁等)を用いて行われている。一方、馬鈴薯の重大病害としてエルビニア属のバクテリア群が原因菌となる黒脚病、軟腐病等が知られている。これらの病害は、種芋切断時に切断刀(包丁やカッター等)を通じて罹病芋から健全芋に感染することが証明されている(非特許文献2)。 このような病害を防除する目的で、馬鈴薯種芋の切断刀農具の消毒剤として、昇汞500倍液が用いられてきたが、昇汞は有機水銀が有効成分であり、その強い毒性から使用禁止となり、その代替剤として上記ケミクロンG10倍液が使用されてきた。ケミクロンG10倍液は、通常使用濃度の50倍〜200倍と非常に濃い濃度であるが、切断刀等短時間で殺菌する必要のある用途の場合、このように非常に濃い濃度でないと完全な殺菌が不可能である。したがって、作業現場では有毒ガスである塩素が発生する劣悪な環境下で作業を実施する以外になく、代替剤が強く望まれていた。 他方、工業用殺菌剤として、マレイン酸又はその無水物を有効成分として含有することを特徴とする工業用殺菌剤が知られている(特許文献2)。しかしながら、農業用資材等にマレイン酸又はその無水物が使用された例は知られていない。特開平5−155604号特開昭64−50803号Summary of toxicity studies on pesticides, Benthiazole. 日本農薬学会誌 Vol.12 No.2 Page.343-345 (1987.05)ジャガイモ黒脚病の伝播様式、北海道立農試集報 28. p.62-69 (1973) 上記のとおり、従来の農業用消毒剤であるイチバンやケミクロンGは、人体に対する有害性や、環境への負荷と共に、消毒後の資材をすぐ使用できないという問題があった。また、消毒残液の処理も必要であった。 本発明は、上記観点からなされたものであり、病害防除効果に優れた、安全で簡便に使用することができ、かつ環境に対する影響の少ない農業用病害防除剤を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸が農業用病害防除剤として病害に対して防除効果を有することを見出し、これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。(1)マレイン酸及び/又は無水マレイン酸を有効成分として含有する消毒剤であって、前記マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の剤全体における含有量が1質量%以上であることを特徴とする消毒剤。(2)前記消毒剤が、農業用病害防除用である(1)記載の消毒剤。(3)前記消毒剤が、切断刀消毒用である(1)記載の消毒剤。(4)前記病害が、細菌、糸状菌、放線菌、ウイルスのいずれかにより起こるものである(1)〜(3)いずれかに記載の消毒剤。(5)切断刀を(3)記載の消毒剤で処理することを特徴とする、病害防除方法。(6)前記病害が、馬鈴薯の黒脚病、軟腐病、又は輪腐病であることを特徴とする、(5)記載の病害防除方法。(7)前記黒脚病又は軟腐病がエルビニア・クリサンセミ(Erwinia chrysanthemi), エルビニア・カロトボーラ サブ カロトボーラ(Erwinia cartovora var. cartovora)のいずれかにより起こるものであり、輪腐病がクラビバクター・ミシガネンシス(Clavibacter michiganensis)により起こるものである(6)記載の病害防除方法。(8)マレイン酸及び/又は無水マレイン酸で農業用資材を消毒することを特徴とする病害防除方法。(9)マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の消毒のための使用。 本発明の資材消毒用の農業用病害防除剤(以下、単に「本発明の資材消毒剤」ということがある)は、従来の病害防除剤に比較し、人体への有害性は低く、かつ消毒後に資材をすぐ使用可能であり、炭酸カルシウム等のアルカリを用いていれば、発熱することなく温和な条件で処理することが可能である。 また、北海道における馬鈴薯種芋の切断は、通常3〜4月の気温が極めて低温な時期(気温2〜8℃)に行う。膨大な量の種芋切断を実施するため、種芋切断後の包丁の消毒は、最長でも5秒程度以内で実施する必要がある。エルビニア菌感染芋を切断すると、切断刀にエルビニア菌が極めて高濃度(107〜1010cfu/mL)で付着するが、本発明の資材消毒剤は、このような高濃度病原菌を5秒程度以内という極めて短時間で消毒することが可能である。 本発明によれば、病害防除効果に優れた、安全で簡便に使用することができ、かつ環境に対する影響の少ない農業用病害防除剤を提供することができる。図1は、黒脚病原菌に対する有機酸の消毒性能を示す図である。図2は、輪腐病原菌に対する有機酸の消毒性能を示す図である。図3は、黒脚病における切断刀消毒試験の結果を示す図である。図4は、輪腐病における切断刀消毒試験の結果を示す図である。 以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書における「倍(液)」という用語は希釈度を示す単位である。例えば、「10倍液」は、物質1kg(固体)又は1L(液体)を溶媒9Lに溶解させた溶液である。このような表示は、農薬分野において技術常識として知られているものである。(本発明の病害防除剤) 本発明の病害防除剤は、穀類、野菜類等の農園芸用作物に病害を引き起こす病原菌に優れた殺菌作用を発揮する病害防除剤である。 本発明の病害防除剤は、有効成分としてマレイン酸及び/又は無水マレイン酸を含有する。本発明においては、マレイン酸及び無水マレイン酸をそれぞれ単独で使用してもよく、これらを適宜混合して使用してもよい。 本発明に用いるマレイン酸及び/又は無水マレイン酸は広く市販されており、このような市販品を特に制限されず使用することができる。 本発明の病害防除剤は、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸を含むこと以外は、通常の方法により製剤化することもできる。すなわち、必要に応じて各種任意成分と共に製剤化してもよい。剤型としては、液剤、粉剤、粒剤、乳剤、油剤、カプセル剤、水和剤、塗布剤及びフロアブル等が含まれる。製剤化においては、液体担体、固体担体、界面活性剤(乳化剤、分散剤、消泡剤等が含まれる)、及び補助剤等を用いることができる。 液体担体としては、水、植物油、液体動物油、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、及び生理食塩水、有機溶媒(アセトン、DMSO等)等が用いられうる。マレイン酸は易水溶性であり、無水マレイン酸は難水溶性であるので、それぞれに適した液性担体が用いられうる。固体担体としては、カチオンクレー、バイロフィライトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリン、粘土、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、及び珪藻土類を含む天然鉱物粉末、ケイ酸、アルミナ、及びケイ酸塩を含む合成鉱物粉末、ならびに結晶性セルロース、コーンスターチ、ゼラチン、及びアルギン酸を含む高分子性天然物等が用いられうる。これらの液体担体及び/又は固体担体は、一種類を単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。 界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−脂肪アルコールエーテル、アルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、及びアリールスルフォネート等が用いられうる。 補助剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、グリセリン、アラビアゴム、デンプン、及び乳糖などが用いられうる。 本発明の病害防除剤は、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸そのものであってよく、また、上記したとおりマレイン酸及び/又は無水マレイン酸を任意成分と共に製剤化してもよい。製剤化する場合、本発明の病害防除剤中のマレイン酸及び/又は無水マレイン酸の濃度は、任意の濃度とすることができるが、例えば、0.2〜100質量%とするのが好ましい。(本発明の病害防除剤の使用方法) 本発明の病害防除剤は、植物に対する病害防除作用を示し、農業用病害防除剤、具体的には、例えば資材消毒剤として使用することができる。本発明の病害防除剤を資材の消毒用として用いる場合、施用法は、剤型等の使用形態、対象の資材の種類、並びに対象病害の種類によって、任意の方法を適宜選択することができる。 資材消毒剤としての処理法としては、例えば、本発明の資材消毒剤に資材を浸漬する方法、本発明の資材消毒剤を資材に溶液散布する方法が挙げられる。 本発明の病害防除剤を資材消毒用に用いる場合、本発明の病害防除剤中のマレイン酸及び/又は無水マレイン酸の濃度は、500倍液以下(質量%であれば、0.2質量%以上)とするのが好ましく、250倍液以下(質量%であれば、0.4質量%以上)とするのがより好ましい。2〜250倍液(質量%であれば、0.4〜50質量%)とするのが更により好ましく、2〜100倍液(質量%であれば、10〜50質量%)とするのが特に好ましい。100倍液以下であれば、消毒直後の病原菌の完全殺菌は可能であるが、100倍液を超えても500倍液以下であれば、消毒直後に病原菌が残存した場合であっても、マレイン酸および/または無水マレイン酸の乾燥濃縮物によって、病原菌の完全殺菌に誘導することが可能である。なお、製品設計の関係上、2倍液以上に希釈していることが好ましい。 また、本発明の病害防除剤を病原菌の付着濃度が極めて高い資材消毒用に用いる場合或いは短時間で資材消毒を行う場合、本発明の病害防除剤中のマレイン酸及び/又は無水マレイン酸の濃度は、100倍液以下(質量%であれば、1質量%以上)とするのが好ましく、2〜100倍液(質量%であれば、1〜50質量%)とするのがより好ましい。2〜10倍液(質量%であれば、10〜50質量%)とするのが更により好ましい。100倍液以下であれば、消毒直後の病原菌の殺菌力は十分に維持でき、短期間での完全殺菌は可能である。さらにより短期間、例えば瞬間的な完全殺菌を考慮するならば、10倍液以下であることがよりいっそう好ましい。このような用途の場合、浸漬時間は、例えば10秒以下、経済的な観点から好ましくは5〜10秒であり、場合によっては5秒以下とすることもできる。なお、製品設計の関係上、2倍液以上に希釈していることが好ましい。 本発明の資材消毒剤での具体的な殺菌法として、例えば以下の方法を用いることができる。農業用資材(例えば、育苗箱(木箱、プラスチック箱)、育苗ポット、ポット支柱、果実類貯蔵箱、農具、切断刀、熊手、スコップ等)を消毒する場合、マレイン酸(及び/又は無水マレイン酸)を水道水で溶解し、100倍液の消毒液を作製する。育苗箱や育苗ポットであれば、同マレイン酸(及び/又は無水マレイン酸)消毒液に10分間浸漬する。ポット支柱であればジョウロ散布する。なお、ここで切断刀とは、鍬、鎌、鋤、ノコギリ、ナタ、包丁、ナイフ、刀等の野菜・果樹・穀物類を切断できるものであれば何でもよい。 馬鈴薯切断刀等の場合、本発明の病害防除剤中のマレイン酸及び/又は無水マレイン酸の濃度は、100倍液以下(質量%であれば、1質量%以上)とするのが好ましく、50倍液以下(質量%であれば、2質量%以上)とするのがより好ましく、10倍液以下(質量%であれば、10質量%以上)とすることが更により好ましい。2〜10倍液(質量%であれば、10〜50質量%)とするのが特に好ましい。馬鈴薯切断刀の場合、病原菌の付着濃度が極めて高く(107〜1010cfu/mL)、かつ短時間に低温下で消毒を行う必要があることから、100倍液以下であれば、消毒直後の病原菌の殺菌力は十分に維持でき、短期間での完全殺菌は可能である。また、残留した病原菌による再繁殖を完全に抑える観点で、10倍液以下とすることがよりいっそう好ましい。なお、製品設計の関係上、2倍液以上に希釈していることが好ましい。本発明の消毒剤を用いる場合、例えば以下の方法を用いることができる。バケツに7Lの水道水を入れ、マレイン酸1kgを投入し、8倍液を作製する。完全にマレイン酸を溶解させた後、切断刀(通常包丁)を3〜5本程度バケツに常時浸漬する。一つの種芋を切断後、別の浸漬した包丁を順次使いまわす(このようにすることで切断刀を殺菌する時間を長くすることができる)。一つの種芋を切断するのに1〜2秒とすれば、殺菌に必要な切断刀の本数は3〜5本となる。このようにすれば、最低でも1本5秒以上の殺菌時間を得ることが可能となる。 なお、上記の方法により種芋切断後、圃場に植える前の段階で、種芋に病原菌が付着した場合でも、高濃度のマレイン酸溶液で処理しているため、種芋の切り口上でも殺菌作用は継続し、完全な殺菌が期待できる。 本発明の病害防除剤は、広範な病害に適用することができるが、特に効果を示す病害としては、例えば、馬鈴薯の黒脚病及び軟腐病(病原菌学名:Erwinia chrysanthemi, Erwinia cartovora var. cartovora等)、輪腐病(病原菌名:Clavibacter michiganensis等)、水稲等の種子立ち枯れ細菌病(病原菌学名:Burkholderia plantarii等)、水稲等の種子籾枯れ細菌病(病原菌学名:Burkholderia glumae等)、馬鈴薯、トマト等の青枯れ病(病原菌学名:Ralstonia solanacearum等)、糸状菌による病害(病原菌学名:Pythium ultimum, Fusarium oxysporum, Rhizoctonia solani, Pyricularia oryzae, Botrytis cinerea等)等が挙げられる。 以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、これら実施例にのみ、限定を受けないことは言うまでもない。[実施例1]消毒液の調製(1)マレイン酸溶液 水道水9リットルにマレイン酸1kgを溶かし、10%の溶液を作製した。これをマレイン酸10倍液とした。同様な操作で、マレイン酸2倍、5倍、25倍、50倍、100倍、200倍、500倍液を作製した。(2)無水マレイン酸溶液 アセトン0.9リットルに無水マレイン酸100gを溶かし、10%の溶液を作製した。これを無水マレイン酸10倍液とした。同様な操作で、無水マレイン酸2倍、5倍、25倍、50倍、100倍、200倍、500倍液を作製した。[実施例2]基礎試験(試験用培地) ブイヨン培地:肉エキス3g、ペプトン10g:NaCl5g、水1L、PH7.0、寒天15g(菌の調製) 黒脚病に罹病した馬鈴薯(メークイン)よりErwinia carotovora var. cartovoraを分離し、試験に供した。輪腐病菌(ATCC27822:Clavibacter michiganense subsp. Nebraskense)は、保存機関(American Type Culture Collection (ATCC))より購入したものを使用した。ブイヨン培地に前記病原菌を塗布し、31℃、2日間培養後、プレートより菌をかきとり5×109cfu/mLの菌体液を調製した。本液に切断刀を3秒浸漬することで、切断刀に病原菌を付着せしめた。(試験液の調製) 実施例として上記実施例1で作製したマレイン酸2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、500倍液及び無水マレイン酸2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、500倍液、対照としてコントロール(水道水)、比較例としてケミクロンG(次亜塩素酸カルシウム70%粒剤)10倍液、バントシル(ポリヘキサメチレンビグアナイド)10倍液、酢酸10倍、50倍液、コハク酸10倍、50倍液、クエン酸10倍、50倍液、アスコルビン酸10倍、50倍液を用いた。(試験方法) 病原菌を付着せしめた切断刀を上記試験液に5秒間浸漬後、1リットルの滅菌水中で切断刀をよく洗い、その滅菌水中の病原菌の生菌数をブイヨン培地でカウントした。なお、培養は30℃、2日間で実施した。(結果) 結果を表1(図1,2)、及び図3,4に示す。 表1、図1,2のとおり、黒脚病、輪腐病ともにマレイン酸及び無水マレイン酸2〜10倍液では、完全に殺菌がされていることがわかる。また、マレイン酸25倍〜50倍液及び無水マレイン酸25倍〜50倍液も高い殺菌効果を有することがわかる。[実施例3]馬鈴薯を用いた試験 実施例2で培養したErwinia carotovora var. cartovoraを馬鈴薯原々種産「農林1号」に接種し、腐敗芋を作製した。室温5℃の条件下、腐敗芋を切断刀で切断後に、コントロール(水道水)、比較例(ケミクロンG10倍液、バントシル10倍液)、実施例(マレイン酸5倍、10倍、50倍液、無水マレイン酸5倍、10倍、50倍液)に5秒間浸漬後、農林1号各5個を切断した。切断後、2日間多湿に保った後圃場に植えつけた。播種は、5月初旬に実施し、施肥、管理は慣行に従った。効果判定は、約2ヶ月後の7月上旬に、黒脚病に特徴的な地上茎発病と地際茎導管褐度を5個平均で発病程度(茎の総面積における発病の見られた面積の割合)として評価した。表2に結果を示す。 マレイン酸及び無水マレイン酸5〜10倍液では、完全に殺菌がされていることがわかる。また、マレイン酸及び無水マレイン酸50倍液も高い殺菌効果を有することがわかる。[実施例4]資材消毒試験 細菌病病原菌として、馬鈴薯疫病菌(Erwinia chrysanthemi)、水稲種子立ち枯れ細菌病菌(Burkholderia plantarii)、水稲種子籾枯れ細菌病菌(Burkholderia glumae)、トマト青枯れ病菌(Ralstonia solanacearum)を用いた。 ブイヨン培地に前記病原菌を塗布し31℃、2日間培養後、プレートより菌をかきとり1×109cfu/mLの液を各500cc調製した。 糸状菌病原菌としてピシウム(Pythium ultimum)、フザリウム(Fusarium oxysporum)、リゾクトニア(Rhizoctonia solani)、イモチ(Pyricularia oryzae)、灰色カビ(Botrytis cinerea)をポテトデキストロース培地で25℃、プレート培養し、胞子化させた。各胞子をプレート上より掻き取り、1×106cfu/mLの液を各500cc調製した。 消毒用資材としては、育苗箱(木箱、プラスチック箱)、育苗ポット、みかん貯蔵箱、鍬、鎌、鋤、ノコギリ、ナタ、包丁、ナイフ、刀、熊手、スコップを用い、病原菌液を噴霧する前によく水洗いし、汚れを掻き落とした後、3時間日陰でよく乾燥させた。 前記記載の細菌病病原菌及び糸状菌病原菌液をスプレー噴霧器により、よく乾燥させた資材に満遍なく噴霧し、15分間放置した。 比較例の消毒剤として、ケミクロンG1000倍液、イチバン500倍液、酢酸10倍、50倍液、コハク酸10倍、50倍液、クエン酸10倍、50倍液、アスコルビン酸10倍、50倍液を各々500cc作製した。実施例の消毒剤として、マレイン酸は実施例1の方法に準じて、2倍、5倍、25倍、50倍、100倍、200倍、500倍液を各々500cc作製した。無水マレイン酸も実施例1の方法に準じ、2倍、5倍、25倍、50倍、100倍、200倍、500倍液を作製した。 病原菌を噴霧後15分経過した前記資材に、前記消毒剤を噴霧器により満遍なく噴霧した。各資材に消毒剤を噴霧し5分経過後、各資材の任意の場所5点につき滅菌水で湿らせた綿棒で表面をふき取り、ふき取った綿棒を滅菌水10ml中でよく洗い、この液を10倍毎に108倍まで段階希釈した。細菌病病原菌及び糸状菌病原菌の10〜108倍までの各段階の希釈液0.1mlをそれぞれ培地にまき、糸状菌は25℃、3日間、細菌は30℃、2日間で培養後、病原菌の生菌数をカウントした。なお、細菌はブイヨン培地で、糸状菌はポテトデキストロース培地でカウントした。各資材の5点の生存菌数平均値を求め、この平均値から全ての資材における生存菌数平均値を求めた。この値により各消毒剤の効果を示す。この値を各病原菌について求めた。結果を表3に示す。 表3の結果から明らかなように、マレイン酸及び無水マレイン酸の希釈倍率2〜100倍で5分間の消毒で完全殺菌可能なことが明らかである。 本発明の消毒剤は、農業分野において、育苗箱(木箱、プラスチック箱)、育苗ポット、ポット支柱、果実類貯蔵箱、農具等の資材消毒用の殺菌剤として有用である。特に、農具の消毒において、馬鈴薯の種芋を切断する際に切断刀を通じて感染する黒脚病や軟腐病(エルビニア属病原菌)および輪腐病を、切断刀の消毒により防除する場合に有用である。 通常の農業用資材、例えば育苗箱(木箱、プラスチック箱)、育苗ポット、ポット支柱、果実類貯蔵箱、農具等の資材消毒用であれば、通常、マレイン酸を単独、或いは界面活性剤と共に水道水で50〜500倍液に調整した消毒液でも十分殺菌可能である。また、使用に際して保護眼鏡やマスクは不用、かつ資材は消毒後直ちに使用可能であり、消毒残液も環境中で速やかに分解するため特別の処理をせずに環境に廃棄可能である。 病原菌の付着濃度が極めて高い(例えば、109cfu/mL以上)資材を消毒する必要が有る場合には、通常、マレイン酸或いは無水マレイン酸を単独、或いは界面活性剤と共に、水道水或いは、アセトン、DMSO等の有機溶剤で2〜10倍液に調整した消毒液を使用する。例えば、前記消毒剤を用いれば、馬鈴薯切断刀に付着した109cfu/mL以上のエルビニア菌を2〜8℃という低温下、5秒以内という極めて短時間で完全殺菌可能である。マレイン酸は水に易溶であり、手作業で実施する馬鈴薯の切断や種芋植え付け装置に組み込んで使用することができる。また、無水マレイン酸は水に難溶であるが、アセトン、DMSO等に溶かせば、マレイン酸と同様に消毒剤として使用可能である。 マレイン酸及び/又は無水マレイン酸を有効成分として含有する消毒剤であって、前記マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の剤全体における含有量が1質量%以上であることを特徴とする消毒剤。 前記消毒剤が、農業用病害防除用である請求項1記載の消毒剤。 前記消毒剤が、切断刀消毒用である請求項1記載の消毒剤。 前記病害が、細菌、糸状菌、放線菌、ウイルスのいずれかにより起こるものである請求項1〜3いずれかに記載の消毒剤。 切断刀を請求項3記載の消毒剤で処理することを特徴とする、病害防除方法。 前記病害が、馬鈴薯の黒脚病、軟腐病、又は輪腐病であることを特徴とする、請求項5記載の病害防除方法。 前記黒脚病又は軟腐病がエルビニア・クリサンセミ(Erwinia chrysanthemi), エルビニア・カロトボーラ サブ カロトボーラ(Erwinia cartovora var. cartovora)のいずれかにより起こるものであり、輪腐病がクラビバクター・ミシガネンシス(Clavibacter michiganensis)により起こるものである請求項6記載の病害防除方法。 マレイン酸及び/又は無水マレイン酸で農業用資材を消毒することを特徴とする病害防除方法。 マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の消毒のための使用。 本発明は、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸を有効成分として含有することを特徴とする消毒剤を提供する。


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