タイトル: | 公開特許公報(A)_癌の治療及び/又は予防剤 |
出願番号: | 2008048958 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 38/00,A61P 35/00,A61K 31/7088,C12N 15/09,C07K 14/47 |
佐藤 昌弘 岡野 文義 JP 2008247891 公開特許公報(A) 20081016 2008048958 20080229 癌の治療及び/又は予防剤 東レ株式会社 000003159 谷川 英次郎 100088546 佐藤 昌弘 岡野 文義 JP 2007052640 20070302 A61K 38/00 20060101AFI20080919BHJP A61P 35/00 20060101ALI20080919BHJP A61K 31/7088 20060101ALI20080919BHJP C12N 15/09 20060101ALN20080919BHJP C07K 14/47 20060101ALN20080919BHJP JPA61K37/02A61P35/00A61K31/7088C12N15/00 AC07K14/47 5 2 OL 19 4B024 4C084 4C086 4H045 4B024AA01 4B024BA31 4B024CA02 4B024DA02 4B024DA06 4B024DA12 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA03 4B024HA17 4C084AA02 4C084AA07 4C084BA01 4C084BA02 4C084BA08 4C084BA17 4C084NA14 4C084ZB26 4C084ZC61 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA16 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZB26 4C086ZC61 4H045AA11 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA86 4H045EA28 4H045EA31 4H045FA33 4H045FA74 本発明は、新規な癌の治療及び/又は予防剤に関する。 癌は全死亡原因の第一位を占める疾患であり、現在行われている治療は手術療法を主体に放射線療法と化学療法を組み合わせたものである。近年の新しい手術法の開発や新たな抗癌剤の発見にも関わらず、一部の癌を除いて、癌の治療成績はあまり向上していないのが現状である。近年、分子生物学や癌免疫学の進歩で癌に反応する細胞障害性T細胞により認識される癌抗原や癌抗原をコードする遺伝子が同定されてき、抗原特異性免疫療法への期待が高まっている(非特許文献1を参照)。免疫療法においては、副作用を軽減するため、その抗原として認識されるペプチド又はタンパクは、正常細胞にはほとんど存在せず、癌細胞に特異的に存在していることが必要とされる。1991年、ベルギーLudwig研究所のBoonらは自己癌細胞株と癌反応性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法によりCD8陽性T細胞が認識するヒトメラノーマ抗原MAGE1を単離した(非特許文献2を参照)。その後、癌患者の生体内で自己の癌に反応して産生される抗体が認識する腫瘍抗原を遺伝子の発現クローニングの手法を取り入れて同定する、SEREX(serological identifications of antigens by recombinant expression cloning)法が報告され(非特許文献3;特許文献1)、各種癌抗原が単離されてきた(非特許文献4−9を参照)。その一部をターゲットにして癌免疫療法の臨床試験も開始されている。 一方、ヒトと同様、イヌやネコにも乳腺腫瘍、扁平上皮癌など多数の腫瘍が知られており、イヌやネコの疾病統計でも上位にランクされている。しかしながらイヌやネコの癌に対する有効な治療薬、予防薬および診断薬は現在のところ存在しない。大部分のイヌやネコの腫瘍は、進行して腫瘤が大きくなってから飼い主が気付くケースがほとんで、来院して外科的手術により切除したり、人体薬(抗癌剤など)を投与しても、すでに手遅れで処置後まもなく死亡することが多い。このような現状の中で、イヌやネコに有効な癌の治療薬、予防薬および診断薬が入手可能になれば、イヌの癌に対する用途が開かれると期待される。米国特許第5698396号秋吉毅,「癌と化学療法」、1997年、第24巻、p551-519Bruggen P. et al., Science, 254:1643-1647(1991)Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:11810-11813(1995)Int.J.Cancer,72:965-971(1997)Cancer Res., 58:1034-1041(1998)Int.J.Cancer,29:652-658(1998)Int.J.Oncol.,14:703-708(1999)Cancer Res., 56:4766-4772(1996)Hum. Mol. Genet6:33-39, 1997 本発明の目的は、癌の治療又は予防に有用な癌の治療及び/又は予防剤を提供することである。 本願発明者らは、鋭意研究の結果、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するタンパク質をコードするcDNAを取得し、そのcDNAを基にして、該タンパク質のアミノ酸配列を同定した。そして、該アミノ酸配列を基に作製された組換えポリペプチドが生体内で抗体を誘導できること、該組換えポリペプチドを生体に投与することにより、既に生じている腫瘍を退縮させることができることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、以下の(a)ないし(c)のいずれかのポリペプチドであって、抗癌活性を有するポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、該ポリペプチドを生体内で発現可能な組換えベクターを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤を提供する:(a) 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド、(b) (a)のポリペプチドと80%以上の相同性を有し、7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド、(c) (a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含むポリペプチド。 本発明により、癌の治療及び/又は予防に有用な新規癌の治療及び/又は予防剤が提供された。下記実施例において具体的に示されるように、本発明で用いられるポリペプチドを担癌イヌに投与すると、既に生じている腫瘍を退縮させることができるので、本発明の癌の治療及び/又は予防剤は癌の治療や予防に有用である。 本発明の癌の治療及び/又は予防剤に有効成分として含まれるポリペプチドとしては、以下のものが挙げられる。なお、本発明において、「ポリペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合することによって形成される分子をいい、構成するアミノ酸数が多いポリペプチド分子のみならず、アミノ酸数が少ない低分子量の分子(オリゴペプチド)や、全長タンパク質も包含され、本発明では配列番号2の全長から成るタンパク質も包含される。(a) 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成り、抗癌活性を有するポリペプチド。(b) (a)のポリペプチドと80%以上の相同性を有し、7個以上のアミノ酸から成る、抗癌活性を有するポリペプチド。(c) (a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含み、抗癌活性を有するポリペプチド。 なお、本発明において、「アミノ酸配列を有する」とは、アミノ酸残基がそのような順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」とは、配列番号2に示されるMet Lys Ile Ser・・(中略)・・His Phe Tyr Hisのアミノ酸配列を持つ、795アミノ酸残基のサイズのポリペプチドを意味する。また、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」を「配列番号2のポリペプチド」と略記することがある。「塩基配列を有する」という表現についても同様である。 ここで、「抗癌活性」とは、配列番号2のポリペプチドを発現する癌細胞の増殖を抑制し又は癌組織(腫瘍)を縮小若しくは消滅させる能力を意味する。下記実施例に具体的に記載される通り、配列番号2に示されるアミノ酸配列を基に作製されたポリペプチドは、担癌イヌに投与すると、腫瘍を退縮させることができる。ポリペプチドが抗癌活性を有するか否かは、下記実施例に具体的に記載するように、実際に担癌生体に投与して腫瘍が縮小等されるか否かを調べることよって確認することができる。 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列とは、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌イヌ由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチドとして単離された、新規なポリペプチドのアミノ酸配列である(参考例1参照)。 上記(a)のポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上、好ましくは連続する10個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、抗癌活性を有するものである。特に好ましくは、該ポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する。なお、この分野で公知の通り、約7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば抗原性を発揮できる。従って、配列番号2のアミノ酸配列中の連続する7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば、抗癌活性を有し得るので、本発明の癌の治療及び/又は予防剤の調製に用いることができる。ただし、生体中で抗原物質に対して生産される抗体がポリクローナル抗体であることに鑑みれば、アミノ酸残基の数が多い方が、抗原物質上の種々の部位を認識する、より多くの種類の抗体を誘導できるので、ひいては抗癌活性を高めることができると考えられる。従って、抗癌活性を高めるために、アミノ酸残基の数を好ましくは30以上、さらに好ましくは100以上、さらに好ましくは300以上、さらに好ましくは600以上、さらに好ましくは750以上としてもよい。 また、癌抗原ポリペプチドを投与することによる免疫誘導の原理として、ポリペプチドが体内でペプチダーゼによる分解を受けてより小さな断片となり、その断片が抗原提示細胞に取り込まれてその表面上に提示され、それを細胞障害性T細胞等が認識し、その抗原を提示している細胞を選択的に殺していくということが知られている。この場合、抗原提示細胞に取り込まれるポリペプチドのサイズは比較的小さく、アミノ酸数で7〜30程度であるので、配列番号2で示されるアミノ酸配列中の連続する7〜30程度、好ましくは10〜30程度のアミノ酸から成るポリペプチドが有効である。もっとも、ポリペプチドのサイズがアミノ酸数で30よりも大きな場合でも、生体内のペプチダーゼにより、ランダムな位置で切断を受けて種々のポリペプチド断片が生じ、これらのポリペプチド断片が抗原提示細胞に取り込まれるので、上記したように、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するもののように大きなサイズのポリペプチドを投与すれば、その生体内での分解によって、抗原提示細胞を介する免疫誘導に有効なポリペプチド断片が必然的に生じる。従って、抗原提示細胞を介する免疫誘導にとっても、サイズの大きなポリペプチドは好ましく、上記と同様、アミノ酸数を30以上、さらに好ましくは100以上、さらに好ましくは300以上、さらに好ましくは600以上、さらに好ましくは750以上としてもよい。 上記(b)のポリペプチドは、上記(a)のポリペプチドのうちの1個ないし数個のアミノ酸残基が置換し、欠失し及び/又は挿入されたポリペプチドであって、元の配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有し、かつ、抗癌活性を有するポリペプチドである。一般に、タンパク質抗原において、該タンパク質のアミノ酸配列のうち少数のアミノ酸残基が置換され、欠失され又は挿入された場合であっても、元のタンパク質とほぼ同じ抗原性を有している場合があることは当業者において広く知られている。従って、上記(b)のポリペプチドも抗癌活性を発揮し得るので、本発明の癌の治療及び/又は予防剤の調製に用いることができる。ここで、アミノ酸配列の「相同性」とは、両者のアミノ酸配列残基ができるだけ多く一致するように(必要ならばギャップを挿入する)両アミノ酸配列を整列させ、一致したアミノ酸残基数を、全アミノ酸残基数(両者の配列で全アミノ酸残基数が異なる場合には短い方の配列の全アミノ酸残基数)で除したものを百分率で表したものであり、BLASTのような周知のソフトを用いて容易に算出することができる。なお、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換であればポリペプチドの性質が変化しないことが多いことが知られている。従って、本発明で用いられる上記(a)のポリペプチド中のアミノ酸残基を置換する場合には、これらの各グループの間で置換することにより、抗癌活性を維持できる可能性が高くなる。また、上記(b)のポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列のうち、1個ないし数個のアミノ酸が置換し及び/若しくは欠失し、並びに/又は該アミノ酸配列に1個ないし数個のアミノ酸が挿入されたポリペプチドであることも好ましい。 上記(c)のポリペプチドは、上記(a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含み、抗癌活性を有するポリペプチドである。すなわち、(a)又は(b)のポリペプチドの一端又は両端に他のアミノ酸又はポリペプチドが付加されたものであって、抗癌活性を有するポリペプチドである。このようなポリペプチドも、本発明の癌の治療及び/又は予防剤の調製に用いることができる。 上記した本発明で用いられるポリペプチドは、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t―ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法を用いて容易に調製することができる。例えば、配列番号2のポリペプチドをコードする遺伝子を発現している組織から抽出したRNAから、該遺伝子のcDNAをRT−PCRにより調製し、該cDNAの全長又は所望の一部を発現ベクターに組み込んで、宿主細胞中に導入し、目的とするポリペプチドを得ることができる。RNAの抽出、RT−PCR、ベクターへのcDNAの組み込み、ベクターの宿主細胞への導入は、例えば以下に記載するとおり、周知の方法により行なうことができる。また、用いるベクターや宿主細胞も周知であり、種々のものが市販されている。 本発明で用いられるポリペプチドをコードするDNAは、具体的には例えば以下のようにして調製することができる。配列番号1の塩基配列を有するDNAは、イヌ染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができるが、これに限定されない。また、本明細書中の配列表の配列番号1および配列番号2に記載した塩基配列およびアミノ酸配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてイヌなどのcDNAライブラリーをスクリーニングする事により、該DNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、該DNAを発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、ならびに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークロニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラバイオロジー等に記載された方法に準じて行うことができる。このようにして得られた配列番号1の塩基配列を有するDNAから、上記(a)のポリペプチドをコードするDNAを得ることができる。また、各アミノ酸をコードするコドンは公知であるから、特定のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列は容易に特定することができる。従って、上記した(b)のポリペプチドや(c)のポリペプチドをコードするDNAの塩基配列も容易に特定することができるので、そのようなDNAは、市販の核酸合成機を用いて常法により容易に合成することができる。 上記宿主細胞としては、本発明で用いられるポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS 1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられる。 宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、DNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。本発明で用いられるポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。 宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK-CMV、pBK-RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pMSG、pYES2等が例示できる。上記と同様に、本発明で用いられるポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5-His、pFLAG-CMV-2、pEGFP-N1、pEGFP-C1等を用いた場合には、Hisタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、該ポリペプチドを発現させることができる。 発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の周知の方法を用いることができる。 宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、等が挙げられる。 以上の方法によって得られるポリペプチドには、他の任意のタンパク質との融合タンパク質の形態にあるものも含まれる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)やHisタグとの融合タンパク質などが例示できる。このような融合タンパク質の形態のポリペプチドも、上記した(c)のポリペプチドに含まれ、本発明の癌の治療及び/又は予防剤の調製に用いることができる。さらに、形質転換細胞で発現されたポリペプチドは、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。このような翻訳後修飾されたポリペプチドも、抗癌活性を有する限り、本発明の範囲に含まれる。この様な翻訳修飾としては、N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテアーゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化などが例示できる。 本発明の癌の治療及び/又は予防剤の対象となる癌としては、配列番号2のポリペプチドをコードする遺伝子を発現している癌であり、脳腫瘍、頭、首、肺、子宮又は食道の扁平上皮癌、メラノーマ、肺、乳または子宮の腺癌、腎癌等を挙げることができるがこれらに限定されない。また、対象となる動物は、哺乳動物であり、特にイヌやネコが好ましい。 本発明の癌の治療及び/又は予防剤の投与経路は、経口投与でも非経口投与でもよいが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。抗癌作用を高めるため、下記実施例に記載するように、治療対象となる腫瘍の近傍の所属リンパ節や腫瘍近傍の皮下に投与することもできる。投与量は、癌の治療及び/又は予防に有効な量であればよく、腫瘍の大きさや症状等に応じて適宜選択されるが、通常、対象動物に対し1日当りの有効量として0.0001μg〜1000μg、好ましくは0.001μg〜1000μgであり、1回又は数回に分けて投与することができる。好ましくは、数回に分け、数日ないし数月おきに投与する。下記実施例に具体的に示されるとおり、本発明の癌の治療及び/又は予防剤は、既に形成されている腫瘍を退縮させることができる。従って、発生初期の少数の癌細胞にも抗癌作用を発揮し得るので、癌の発症前や癌の治療後に用いれば、癌の発症や再発を防止することができる。すなわち、本発明の癌の治療及び/又は予防剤は、癌の治療と予防の双方に有用である。 本発明の癌の治療及び/又は予防剤は、ポリペプチドのみ又は抗体若しくは抗原結合性断片のみから成っていてもよいし、各投与形態に適した、薬理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤等の添加剤を適宜混合させて製剤することもできる。製剤方法及び使用可能な添加剤は、医薬製剤の分野において周知であり、いずれの方法及び添加剤をも用いることができる。添加剤の具体例としては、生理緩衝液のような希釈剤;砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等のような賦形剤;シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド、トラガント等のような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク、シリカ等の滑沢剤等が挙げられるが、これらに限定されない。製剤形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの経口剤、吸入剤、注射剤、座剤、液剤などの非経口剤などを挙げることができる。これらの製剤は一般的に知られている製法によって作ることができる。 特に、上記ポリペプチドを有効成分とする本発明の癌の治療及び/又は予防剤は、該有効成分に加えてさらにアジュバントを含むことが好ましい。アジュバントは、抗原の貯蔵所(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、かつ特定組のリンパ球を刺激することにより、免疫学的応答を強化し得るので、本発明の癌の治療及び/又は予防剤の抗癌作用を高めることができる。多数の種類のアジュバントが、当業界で周知である。具体例としては、MPL(SmithKline Beecham)、サルモネラ属のSalmonella minnesota Re 595リポ多糖類の精製および酸加水分解後に得られる同類物;QS21(SmithKline Beecham)、Quillja saponaria抽出物から精製される純QA−21サポニン;PCT出願WO96/33739(SmithKline Beecham)に記載されたDQS21;QS−7、QS−17、QS−18およびQS−L1(ソ(So)、外10名、「モレキュルズ・アンド・セル(Molecules and cells)」、1997年、第7巻、p.178−186);フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;ビタミンE;モンタニド;ミョウバン;CpGオリゴヌクレオチド(例えば、クレイグ(Kreig)、外7名、「ネイチャー(Nature)」、第374巻、p.546−549)を参照);ポリIC;ポリICLC;ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールのような生分解性油から調製される種々の油中水エマルションが挙げられる。特に好ましい製剤例として、本発明の癌の治療及び/又は予防剤は、有効成分として含有されるポリペプチドと、DQS21/MPLの組合せとを含んだ形態で投与される。DQS21対MPLの比は、典型的には約1:10〜10:1,好ましくは約1:5〜5:1、さらに好ましくは約1:1である。典型的には、ヒト投与に関しては、DQS21およびMPLは、約1μg〜約100μgの範囲で処方物中に存在する。その他のアジュバントが当業界で既知であり、本発明に用いられ得る(例えば、ゴッディング(Goding)著,「モノクローナル・アンチボディーズ:プリンシプル・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」、第2版、1986年を参照)。ポリペプチドおよびアジュバントの混合物またはエマルションの調製方法は、予防接種の当業者には周知である。 対象動物(患者)の免疫応答を刺激するその他の因子も、本発明の癌の治療及び/又は予防剤と共に患者に投与され得る。例えばサイトカインは、リンパ球刺激特性の結果として、免疫学的応答の強化に有用である。このような目的のために有用な多数のサイトカインは当業者に既知であり、その例としては、ワクチンの防御作用を強化することが示されているインターフェロン、インターロイキン−12(IL−12)、GM−CSF、IL−18およびFlt3リガンドが挙げられる。このような因子は、本発明の癌の治療及び/又は予防剤に含まれていてもよいし、別個の組成物として本発明の癌の治療及び/又は予防剤と併用して患者に投与してもよい。 また、本発明で用いられるポリペプチドと、抗原提示細胞とをインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドを抗原提示細胞に提示させることができる。すなわち、上記した(a)ないし(c)のポリペプチドは、抗原提示細胞の処理剤として利用し得る。この場合、ポリペプチドは、特に限定されないが、好ましくは約30アミノ酸残基以下、より好ましくは10〜30アミノ酸残基のサイズで用いる。ここで、抗原提示細胞としては、MHCクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞を好ましく用いることができる。ヒトにおいては、種々のMHCクラスI分子が同定されており、周知である。ヒトにおけるMHC分子はHLAと呼ぶ。HLAクラスI分子としては、HLA-A、HLA-B、HLA-Cを挙げることができ、より具体的には、HLA-A1, HLA-A0201, HLA-A0204, HLA-A0205, HLA-A0206, HLA-A0207, HLA-A11, HLA-A24, HLA-A31, HLA-A6801, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B2705, HLA-B37, HLA-Cw0401, HLA-Cw0602などを挙げることができる。 MHCクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞は、周知の方法により末梢血から調製することができる。例えば、骨髄、臍帯血あるいは患者末梢血から、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とIL-3(あるいはIL-4)を用いて樹状細胞を誘導することにより得ることができる。上記樹状細胞又はB細胞を得るための試料としては、健康な生体から提供された骨髄や臍帯血、患者自身の骨髄や末梢血等を用いることができるが、患者自身の自家細胞を使う場合は、安全性が高く、重篤な副作用を回避することも期待できる。末梢血または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料のいずれでもよい。末梢血やその白血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が含まれているので、末梢血の全血を培養することによって上記樹状細胞又はB細胞を得ることもできるが、白血球成分だけを分離して培養する方が効率的で好ましい。さらに、白血球成分の中でも単核球を分離してもよい。また、骨髄や臍帯血を起源とする場合には、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これから単核球を分離して培養してもよい。用いられるサイトカインは、安全性と生理活性が確認された特性のものであれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生産手法については問わないが、好ましくは医療用に用いられる品質が確保された標品が必要最低量で用いられる。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞が誘導される濃度であれば特に限定されず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度である。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、ヒト等の哺乳動物の体温である37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5%CO2を通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要数の細胞が誘導される期間であれば特に限定されないが、通常3日〜2週間の間で行われる。細胞の分離や培養に供される機器は、適宜適当なものを用いることができるが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置については、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わらず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用いることができる。 本発明で用いられる上記ポリペプチドと抗原提示細胞をインビトロで接触させる方法自体は、周知の方法により行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を、上記ポリペプチドを含む培養液中で培養することにより行なうことができる。培地中のポリペプチド濃度は、特に限定されないが、通常、1μg/mlないし100μg/ml程度、好ましくは5μg/mlないし20μg/ml程度である。培養時の細胞密度は特に限定されないが、通常、103細胞/mlから107細胞/ml程度、好ましくは5x104細胞/mlから5x106細胞/ml程度である。培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。なお、抗原提示細胞が表面上に提示できるポリペプチドの長さは、通常、最大で30アミノ酸残基程度である。従って、特に限定されないが、抗原提示細胞とポリペプチドをインビトロで接触させる場合、該ポリペプチドをおよそ30アミノ酸残基以下の長さに調製してもよい。 上記したポリペプチドの共存下において抗原提示細胞を培養することにより、ポリペプチドが抗原提示細胞のMHC分子に取り込まれ、抗原提示細胞の表面に提示される。従って、上記ポリペプチドを用いて、該ポリペプチドとMHC分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞を調製することができる。このような抗原提示細胞は、生体内又はインビトロにおいて、T細胞に対して該ポリペプチドを提示し、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。 上記のようにして調製される、上記ポリペプチドとMHC分子の複合体とを含む抗原提示細胞を、T細胞とインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。これは、上記抗原提示細胞とT細胞とを液体培地中で共存培養することにより行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を液体培地に懸濁して、マイクロプレートのウェル等の容器に入れ、これにT細胞を添加して培養することにより行なうことができる。共存培養時の抗原提示細胞とT細胞の混合比率は、特に限定されないが、通常、細胞数の比率で1:1〜1:100程度、好ましくは1:5〜1:20程度である。また、液体培地中に懸濁する抗原提示細胞の密度は、特に限定されないが、通常、100〜1000万細胞/ml程度、好ましくは10000〜100万細胞/ml程度である。共存培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、通常、2日〜3週間、好ましくは4日〜2週間程度である。また、共存培養は、IL-2、IL-6、IL-7及びIL-12のようなインターロイキンの1種又は複数の存在下で行なうことが好ましい。この場合、IL-2及びIL-7の濃度は、通常、5U/mlから20U/ml程度、IL-6の濃度は通常、500U/mlから2000U/ml程度、IL-12の濃度は通常、5ng/mlから20ng/ml程度であるが、これらに限定されるものではない。上記の共存培養は、新鮮な抗原提示細胞を追加して1回ないし数回繰り返してもよい。例えば、共存培養後の培養上清を捨て、新鮮な抗原提示細胞の懸濁液を添加してさらに共存培養を行なうという操作を、1回ないし数回繰り返してもよい。各共存培養の条件は、上記と同様でよい。 上記の共存培養により、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞が誘導され、増殖される。従って、上記ポリペプチドを用いて、該ポリペプチドとMHC分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞を調製することができる。 下記実施例に記載される通り、配列番号2に示されるアミノ酸配列から調製されたポリペプチドは、生体内で抗体の生産を誘導し、癌組織を退縮させることができる。従って、上記のようにして調製した細胞障害性T細胞を生体内に投与することによっても、癌細胞を障害し、癌組織を退縮させることができる。また、また、上記ポリペプチドを提示する抗原提示細胞は、生体内においても該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができるので、該抗原提示細胞を生体内に投与することによっても、癌細胞を障害することができる。 上記した単離抗原提示細胞や単離T細胞を生体に投与する場合には、これらの細胞を異物として攻撃する生体内での免疫応答を回避するために、治療を受ける患者から採取した抗原提示細胞又はT細胞を、上記のように上記(a)ないし(c)のポリペプチドを用いて調製したものであることが好ましい。 抗原提示細胞又はT細胞を有効成分として含む癌の治療及び/又は予防剤の投与経路は、静脈内投与や動脈内投与のような非経口投与が好ましい。また、投与量は、症状や投与目的等に応じて適宜選択されるが、通常1個〜10兆個、好ましくは100万個〜10億個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。製剤は、例えば、細胞を生理緩衝食塩水に懸濁したもの等であってよく、他の抗癌剤やサイトカイン等と併用することもできる。また、製剤分野において周知の1又は2以上の添加剤を添加することもできる。 また、上記(a)ないし(c)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象動物の体内で発現させることによっても、該生体内で抗体生産や細胞障害性T細胞を誘導することができるので、これにより癌の治療及び/又は予防をすることもできる。すなわち、本発明で用いられる上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、遺伝子ワクチンとしても有用である。この場合、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、対象動物細胞内(好ましくは哺乳動物細胞内)で発現可能なベクターに組み込んで用いられる。そのようなベクターとしては、プラスミドベクターでもウイルスベクターでもよく、遺伝子ワクチンの分野で公知のいかなるベクターを用いてもよい。なお、上記ポリペプチドをコードするDNA等のポリヌクレオチドは、上述した通り、常法により容易に調製することができる。 上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、所望のベクターに組み込むことにより、遺伝子ワクチンを得ることができる。ベクターへの組み込みは当業者に周知の方法を用いて行なうことができる。 遺伝子ワクチンの投与方法は、遺伝子ワクチン分野で公知のいずれの方法であってもよく、特に限定されないが、例えば、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。投与量は、抗原の種類や症状等に応じて適宜選択されるが、通常、対象動物の体重1kg当り、遺伝子ワクチンの重量で0.1μg〜100mg程度、好ましくは1μg〜10mg程度である。 ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス等のRNA ウイルスまたはDNA ウイルスに本発明のDNA を組み込んで対象動物に感染させる方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。 その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。 本発明で用いられる上記ポリペプチドをコードする遺伝子を実際に医薬として作用させるには、遺伝子を直接体内に導入するin vivo方法、および対象動物からある種の細胞を採取し体外で遺伝子を該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo方法がある(日経サイエンス,1994年4月,p20−45、月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23−48、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号、およびこれらの引用文献等)。in vivo方法がより好ましい。 in vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することが出来る。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には、有効成分である本発明で用いられる上記ペプチドをコードするDNAを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、該DNAを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。 なお、本発明において、「配列番号1に示される塩基配列」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列の他、これと相補的な配列も包含する。従って、「配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、その相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、及びこれらから成る二本鎖ポリヌクレオチドが包含される。本発明に用いられるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製する場合には、適宜いずれかの塩基配列を選択することとなるが、当業者であれば容易にその選択をすることができる。 以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。参考例1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得(1)cDNAライブラリの作製 健常な犬の精巣組織から酸−グアニジウム−フェノール−クロロフォルム法(Acid guanidium-Phenol-Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex-dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。 この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリを合成した。cDNAファージライブラリの作製にはcDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリを作製した。作製したcDNAファージライブラリのサイズは1.3×106pfu/mlであった。(2)血清によるcDNAライブラリのスクリーニング 上記作製したイヌ精巣由来cDNAファージライブラリを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2340クローンとなるように宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌班(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio-Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris-HCl,150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを250倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。 上記患犬血清としては、扁平上皮癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Expressファージを宿主大腸菌(XL1-BLue MRF')に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS-column(GE Healthecare Bio-Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBS−T(0.05% Tween20/TBS)にて250倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。 かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBST(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて3000倍希釈を行った抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO4、50mM Tris-HCl、0.01%ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する35360個のファージクローンをスクリーニングして、7個の陽性クローンを単離した。(3)単離抗原遺伝子の相同性検索 上記方法により単離した7個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、それぞれのクローンについて、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1-Blue MRF’)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液100μlさらにExAssist helper phage (STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を4ml添加し37℃で2〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、5000rpm、20分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液100μlと、精製したファージ溶液100μlを混合した後37℃で15分間反応させ、100μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、PureLink Quick plasmid Miniprep Kit(invitrogen社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。 精製した各プラスミドは、配列番号3に記載のT3プライマーと配列番号4に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により取得した塩基配列およびアミノ酸配列を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、7個の陽性クローンは5個の遺伝子であることが確認された。その内の1つは新規遺伝子であり、795アミノ酸をコードする遺伝子であることが判明した。この遺伝子のcDNA塩基配列を配列番号1に記載した。(4)各組織での発現解析 上記方法により得られた遺伝子に対しイヌ正常組織および各種癌細胞株における発現をRT−PCR(Reverse Transcription-PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50−100mgおよび各細胞株5−10×106個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号5および6に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP, 0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cyclerを用いて、94℃―30秒、55℃―30秒、72℃―1分のサイクルを30回繰り返した。なお、上記の遺伝子特異的プライマーは、配列番号1中の1833番塩基〜2350番塩基の領域を増幅するものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号7および8に記載)も同時に用いた。その結果、図1に示すように、健常なイヌ組織では精巣特異的に強く発現しており、癌細胞株では乳癌細胞株で強い発現が確認された。取得した遺伝子の相同因子の発現を併せて確認したところ、各種癌細胞株で強い発現が検出された。 なお、図1中、縦軸の参照番号1は、本発明において取得した新規遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。実施例1:組換えタンパク質の調製及び抗腫瘍効果の確認(1)組換えタンパク質の作製 参考例1で取得した遺伝子を基にした組換えタンパク質を以下の方法にて作製した。PCRは、参考例1で得られたファージミド溶液より調製し、配列解析に供したベクターを1μl、それぞれ2種類のプライマー(配列番号9および配列番号10に記載)を各1μM, 0.2mM各dNTP, 1mM MgSO4, 1UのKODポリメラーゼとなるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cyclerを用いて、94℃―30秒、55℃―30秒、68℃―3分のサイクルを15回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号1に示す塩基配列のコード領域の全長を含む領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、PureLink Quick Gel Extraction Kit(invitrogen Carlsbad,CA 92008 USA)を用いて約2.4KbpのDNA断片を精製・調製した。 調製したDNA断片をpET100/D-TOPO(invitrogen Carlsbad,CA 92008 USA )とでTOPO反応を行い、大腸菌用発現ベクターを作製した。宿主として大腸菌BL21(Star)(invitrogen Carlsbad,CA 92008 USA )を使用した。トランスフォームしたBL21のシングルコロニーをアンピシリン(終濃度100μg/ml)含有LB培地でOD600が約0.5になるまで37℃で培養後、終濃度1mMになるようにIPTGを添加してさらに20℃で20時間培養した。培養後、大腸菌を5,000xgで4℃、30分間遠心し、沈殿物を0.1% CHAPSとプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社製)の存在下で超音波にて破砕した。その後、16,000xgで4℃、30分間、遠心し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。 組換えタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の2×泳動バッファー(0.125M Tris-HCl pH6.8,10% 2ME,4% SDS,10%スクロース, 0.01% BPB)を添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜を10%ブロックエース(雪印社製)を含むPBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、抗His-Tagに対する抗体(Anti-His Antibody Selector Kit QIAGEN社製)を室温で2-3時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、SuperSignal WestFemto(ピアス社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、組換えタンパク質の発現を確認した。なお、当該組換えタンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列の全長を含むものであった。 上記方法により得られた可溶性画分を5mlのHis-Trapカラム(Amersham Biosciences社製)に通液した後、未吸着画分をPBSにて洗浄後、直ちに10mMイミダゾールを含む50mM Tris-HCl pH8.0の緩衝液にてカラム容量の10倍洗浄を行った後、100mMイミダゾールを含む50mM Tris-HCl pH8.0の緩衝液にて溶出を行い精製画分とした。 上記方法によって得られた精製標品のうち1.5mlを、限外ろ過NANOSEP 10K OMEGA(PALL社製)を用いて、生理用リン酸緩衝液(日水製薬社製)置換した後、HTタフリンアクロディスク0.22μm(PALL社製)にて無菌ろ過を行い、これを、以下の実験に用いた。(2)組換えタンパク質の犬生体内での免疫誘導能の評価 上記(1)で得られた精製標品1mlと等量の不完全フロイントアジュバント(和光純薬社製)を混合し、これを健常犬の皮下に投与した。比較対照となる犬においては生理用リン酸緩衝液(PBS)1mlと等量の不完全フロイントアジュバント(和光純薬社製)を混合調製したものを投与した。一週間経過した時点で前肢より採血した後、血清を分離し、組換えタンパク質を固相化したイムノプレートを用いて、投与した組換えタンパク質に対する該血清中の抗体価の測定を行い、免疫誘導能を評価した。 抗体価の測定は、具体的には以下のとおりの方法で行なった。すなわち、上記(1)の方法で精製した組換えタンパク質をNunc社製96穴イムノプレートに固相化後、余剰官能基をブロックするため0.5% BSA-50mM NaHCO3 pH8.3の緩衝液にて室温1時間反応させた後、各種血清を0.5% BSA-50mM NaHCO3 pH8.3の緩衝液にて250倍に希釈を行い反応させた。その後、PBS-T(0.05% Tween 20を含むPBS)にて洗浄した後、HRP結合ヤギ抗イヌIgG抗体と基質であるO-フェニレンジアミンを加えて吸光度計を用いて吸光度を測定した。 その結果、図2に示すように、比較対照となるPBSを投与したコントロールの犬に対して、組換えタンパク質を投与した犬では、有意に高い組換えタンパクに対する抗体価が検出され、該組換えタンパク質が高い抗原性を持つことが示された。なお、図2中、参照番号3,5,7は、それぞれ組換えタンパク質を投与後0日、4日、7日後に採取した血清を用いた結果であり、参照番号4,6,8は、それぞれPBSを投与後0日、4日、7日後に採取した血清を用いた結果である。(3)組換えタンパク質の担癌患犬に対する抗腫瘍効果 表皮に腫瘤を持つ担癌患犬2頭(肛門周囲腺腫1頭、乳腺腫瘍1頭)に対して、上記組換えタンパクの抗腫瘍効果の評価を行った。投与を行う前に、まず上記(2)に記載した方法により、各患犬の血清中の組換えタンパク質に対する抗体価を測定したところ、健常犬と比較して高い抗体価が検出された(図3)。このことからこれら担癌患犬の生体中の腫瘍組織には、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が癌抗原として発現していることが示唆された。 上記(1)の通り精製した組換えタンパク質2mlと等量の不完全フロイントアジュバント(和光純薬社製)を混合して癌治療剤とし、これを一週間毎に腫瘍近傍の所属リンパ節に計3回投与を行った。その結果、癌治療剤投与時点で、それぞれ大きさが約75mm3及び120mm3であった腫瘤が、癌治療剤投与からそれぞれ15日後及び24日後には、完全に退縮した。 また、肛門周囲に発生した腺癌および肥満細胞腫の各患犬に対して、上記の通り精製した組換えタンパク質10μg(0.5ml)に等量のMONTANIDE ISA51(SEPPIC社製)を混合して癌治療剤とし、これを一週間毎に腫瘍近傍の皮下に計4回投与した。その結果、癌治療剤投与時点で、それぞれ癌の大きさが約58mm3及び112mm3であった腫瘤が、癌治療剤投与からそれぞれ40日後及び59日後には、完全に退縮した。参考例1で同定した新規遺伝子の、イヌ正常組織および腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1は新規遺伝子の発現、参照番号2はGAPDH遺伝子の発現を示す。組換えタンパク質を投与した健常犬から採取した血清中の、組換えタンパク質に対する抗体価を示す図である。参照番号3、5及び7は、それぞれ組換えタンパク質を投与後0日、4日及び7日に採取した血清についての結果を示し、参照番号4、6及び8は、それぞれPBSを投与後0日、4日及び7日に採取した血清についての結果を示す。実施例で調製した組換えタンパク質に対する、担癌犬由来血清中の抗体の反応性を示す図である。参照番号9ないし11は健常犬由来の血清の結果、参照番号12及び13は担癌患犬(12;肛門周囲腺腫、13;乳腺腫瘍)由来の血清の結果を示す。 以下の(a)ないし(c)のいずれかのポリペプチドであって、抗癌活性を有するポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、該ポリペプチドを生体内で発現可能な組換えベクターを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤。(a) 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド。(b) (a)のポリペプチドと80%以上の相同性を有し、7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド。(c) (a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含むポリペプチド。 前記ポリペプチドが、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド、又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドである、請求項1記載の癌の治療及び/又は予防剤。 前記ポリペプチドが、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチドである請求項2記載の癌の治療及び/又は予防剤。 前記ポリペプチドが、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項3記載の癌の治療及び/又は予防剤。 イヌ又はネコ用である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の癌の治療及び/又は予防剤。 【課題】癌の治療又は予防に有用な癌の治療及び/又は予防剤を提供すること。【解決手段】イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するタンパク質をコードするcDNAを取得し、そのcDNAを基にして、特定の新規なアミノ酸配列を有するポリペプチドを作製した。該ポリペプチドは、生体に投与すると既に生じている腫瘍を退縮させることができるため、癌の治療及び/又は予防に有用である。【選択図】図2配列表