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タイトル:公開特許公報(A)_電解液中に含まれるニカワの濃度分析方法
出願番号:2008036216
年次:2009
IPC分類:G01N 30/88,G01N 30/06,G01N 30/26


特許情報キャッシュ

庵下 高宏 JP 2009192491 公開特許公報(A) 20090827 2008036216 20080218 電解液中に含まれるニカワの濃度分析方法 日鉱金属株式会社 591007860 アクシス国際特許業務法人 110000523 庵下 高宏 G01N 30/88 20060101AFI20090731BHJP G01N 30/06 20060101ALI20090731BHJP G01N 30/26 20060101ALI20090731BHJP JPG01N30/88 JG01N30/06 ZG01N30/88 201GG01N30/26 A 6 OL 13 本発明は電解液中に少量存在しているニカワの濃度分析方法に関し、とりわけ銅電解液中に少量存在しているニカワの濃度分析方法に関する。 電解精錬による電気銅製造プロセスや電解銅箔製造プロセスなどに使用する電解液中には、微量のニカワ(「ゼラチン」ともいう。)を添加することが行われることが多い。ニカワは電気銅や電解銅箔の外観、機械的強度、表面結晶構造、粗さ等の物性を制御する役割を果たすためである。安定した品質の製品を作るためには、電解液中のニカワ濃度を管理することが重要である。特に、銅の電解精錬においては、パーマネントカソード法(PC法)と呼ばれる陰極板にステンレス板を使用してその表面に銅を電着させる方式が主流に成りつつあるが、PC法によって電気銅を製造する際にはニカワの厳密な濃度管理が要求されることから、ニカワの濃度管理はより重要となる。 しかしながら、電解液中におけるニカワの濃度はppm(又はmg/L)オーダーと低く、定量分析が困難であった。そこで、電解液中に微量含まれるニカワの濃度を分析するために、ニカワを他成分から分離した上で定量分析する技術が提案されている。 例えば特開2001−337081号公報(特許文献1)には、高速液体クロマトグラフィを使用した分析手法が記載されている。具体的には、高速液体クロマトグラフィのカラムとしてサイズ排除モードの充填剤が充填されたカラムを用い上記電解液中のニカワと上記電解質成分とを分離し、上記電解質成分が分離され且つニカワを含む液を、サイズ排除モードの充填剤が充填された別のカラムに導入し、ニカワをその分子量又は分子量分布に従って分離し、次いで分離されたニカワを含む液を検出器に導入するニカワ又はゼラチンの濃度又は分子量分布の測定方法が記載されている。 特許第3414287号公報(特許文献2)には、疎水性吸着樹脂を充填したカラムに、ニカワ等のタンパク質を含む試料液を通液して該樹脂にタンパク質を吸着させ、次いで該カラムに溶離液を流してタンパク質を溶出させ、該溶出液に分析試薬を添加してタンパク質を定量分析する方法が記載されている。疎水性樹脂の中でも、スチレン−ジビニルベンゼン系樹脂のような無極性樹脂又はアシル化エステル系樹脂のような中間極性樹脂がタンパク質の回収率が高いとされている。特開2001−337081号公報特許第3414287号公報 しかしながら、従来の方法は、電解液中に含まれる微量ニカワを再現性良く定量分析する上で未だ改善の余地がある。そこで、本発明は電解液中に含まれる微量ニカワを再現性良く定量分析することのできる方法、例えば定量下限1mg/L以下でニカワを分析することのできる方法を提供することを課題とする。 本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、両親媒性ポリマーが電解液中のニカワの吸着・脱離に優れた効果を示すことを見出した。そのため、両親媒性ポリマーを用いてニカワを電解液から分離した後に、カラムに吸着されたニカワを溶離液により溶出させることで、ニカワをほとんど損失することなく簡便にニカワを抽出することができるので、ニカワを定量分析する際の前処理に利用できる。 従って、本発明は一側面において、電解質成分を含む電解液中に含まれるニカワの定量分析方法であって、1)両親媒性ポリマーに電解液を接触させて電解液中に含まれるニカワを該ポリマーに吸着させる工程と、2)該ポリマーに溶離液を接触させて該ポリマーに吸着されたニカワを溶出させる工程と、3)溶離液中のニカワを検出器で検出する工程と、を含む分析方法である。 また、両親媒性ポリマーを用いた前処理を行った後、サイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ装置を用いて溶離液中のニカワを分析すると、更に妨害成分とニカワが分離されるため、定量分析の精度が一層高まることが分かった。 従って、本発明に係るニカワの定量分析方法の一実施形態では、前記した溶離液中のニカワを検出器で検出する工程を、溶離液中のニカワをサイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ分析装置に投入することにより行う。 本発明に係るニカワの定量分析方法の別の一実施形態では、両親媒性ポリマーは孔径が2nmを超えて50nm未満の多孔体である。 本発明に係るニカワの定量分析方法の更に別の一実施形態では、両親媒性ポリマーは重合可能な官能基を有する親水性モノマーの少なくとも1種と重合可能な官能基を有する疎水性モノマーの少なくとも1種との共重合体である。 本発明に係るニカワの定量分析方法の更に別の一実施形態では、溶離液は、水混和性有機溶媒と水の混合溶媒であって、水混和性有機溶媒と水の混合比が混合溶媒に対する有機溶媒の体積で表して30〜70%である。 工程1)で両親媒性ポリマーに接触させる電解液の量は、工程2)で該ポリマーに接触させる溶離液の体積よりも多い。 本発明によれば、電解液中に含まれる微量ニカワを再現性良く簡便に定量分析することができる。電解液 本発明が対象とする電解液としては、ニカワを含有する電解液であれば特に制限はない。例えば銅、ニッケル、鉛、金、及び/又はマンガンといった金属イオンと無機酸及び/又は有機酸とを含有する電解液が対象である。本発明が特に対象とする電解液は電気銅や電解銅箔の製造に使用する銅電解液である。銅電解液は一般にCuSO4・5H2OとH2SO4を主成分とし、典型的にはCu:40〜70g/L、H2SO4:150〜210g/Lを含有する。As,Sb,Bi,Ni,Te,Pb,アンモニアなども含有することがある。 また、本発明は電解液中に微量含まれるニカワの濃度を分析する際に特に好適に用いられる。電解液中に含まれるニカワの濃度は例えば0.01〜10ppm、典型的には0.1〜5ppm、より典型的には0.5〜2ppmである。 ニカワは典型的にはゼラチンを主成分とする分子量が500〜250000程度のものであり、例えば獣・魚類の骨・皮・腱・腸などから加水分解により製造することができる。前処理 本発明に係るニカワの定量分析方法では、両親媒性ポリマーを用いてニカワを電解液から分離する固相抽出を予め実施する。電解液を当該ポリマーに接触させると、電解液中のニカワは当該ポリマーに吸着され、電解液中に含まれる大部分の電解質成分は吸着されずに通過する。その後、溶離液を当該ポリマーに接触させて吸着されたニカワを脱離し、溶離液中に溶出する。この操作によってニカワの正確な定量分析を妨害する成分からニカワが分離されるので、微量のニカワを定量するのに役立つ。電解液よりも少ない量の溶離液を用いて溶出することで、ニカワの濃度を濃縮することも可能であり、微量のニカワを分析しやすくなる。 両親媒性ポリマーと電解液との接触効率を高めるために、粒径5〜500μm、典型的には15〜60μm程度のビーズ状やペレット状の両親媒性ポリマーをカラムに充填して固相抽出カラムを構成することができる。該カラムに電解液を通じることで上記分離操作を効率的に実施することができる。両親媒性ポリマーのビーズやペレットは多孔体にすると更に効果的である。多孔体中の細孔のサイズとしては、マイクロポーラス(孔径が2nm以下)、メソポーラス(孔径が2nmを超えて50nm未満)、マクロポーラス(孔径が50nm以上)があるが、ニカワを細孔に取り込むために、本発明ではメソポーラスとするのが好ましい。両親媒性ポリマーを多孔質のディスク状に加工して固相抽出することもできる。両親媒性ポリマーと電解液との接触方法は両親媒性ポリマーの形態に応じて適宜決定すればよいが、通液や噴霧などにより行えばよい。 前処理を実施する前に、カラムやディスクを予めコンディショニングすることで、ニカワの選択的な吸着をより効率的に行うことができる。コンディショニングは、例えばカラムやディスクに少量のメタノールを通液し、さらに水や酸、あるいは緩衝液などを通液して行う。 具体的には、カラムやディスク内に充填した両親媒性ポリマー表面をメタノールで平衡化し、電解液のような水溶液試料が両親媒性ポリマーと接触しやすくする。続けて極性やpHを整えるために水や酸、あるいは緩衝液を通液する。 電解液に接触させる両親媒性ポリマーの量は、該ポリマーの形態やニカワの吸着効率の観点から適宜決定すればよいが、例えば、電解液中のニカワ濃度が1〜20ppm程度であり、両親媒性ポリマーをメソポーラスの粒径5〜500μmのビーズ状に加工してカラムに充填して電解液を通液する場合、両親媒性ポリマーの量はこれに接触させるニカワに対して重量比で20〜1000倍とするのが一般的であり、100〜1000倍とするのが好ましい。同時に吸着される妨害成分も考慮すると、カラムに充填する両親媒性ポリマーの量は例示的には0.1〜1gとすることができる。 本発明で使用する両親媒性ポリマーはニカワの吸着・脱離効率が高く、前処理時にニカワをほとんど損失することなく電解質成分から分離できるという利点がある。本発明において使用可能な両親媒性ポリマーは、少なくとも1種の親水性基と少なくとも1種の疎水性基を有する。両親媒性ポリマーは重合可能な官能基(例えばビニル基)を有する親水性モノマーの少なくとも1種と重合可能な官能基を有する疎水性モノマーの少なくとも1種とを、例えばラジカル重合により共重合させることによって製造することができる。ポリマー中の親水性部分と疎水性部分のモル比は1:9〜3:7、典型的には15:85〜30:70程度とするのが水湿潤性及びニカワの吸着性能の点で有利である。 理論によって本発明が制限されることを意図しないが、両親媒性ポリマーによるニカワの吸着・脱離が効果的であるのは以下の理由によると考えられる。 ニカワの吸着・脱着は基本的にニカワの疎水性を利用して行うが、非常に疎水性の強い樹脂(例えばODS)では、たとえ孔径を最適化して吸着性を向上させたとしても、十分な回収率は得られない。これは、樹脂によるニカワの吸着作用が強すぎて、ニカワが容易に脱離しないことによると考えられる。そこで、ニカワを脱離するにはより強い脱離作用を有する溶離液を用いる必要があるが、ニカワは有機溶媒濃度が高すぎると変性するため、あまり強い溶離液を用いる事が出来ない。 一方、両親媒性ポリマーを用いることにより、疎水性基によるニカワの吸着作用に加え、親水性基による水溶性の電解液との親和性により、ニカワとポリマーとの相互作用が向上し、吸着率が向上したと考えられる。さらに溶出時には親水性基が存在することによって溶出を行いやすくなることから、高い回収率が得られると考えられる。 親水性モノマーが有する親水性基はピリジニル基及びピロリドニル基のような複素環式の親水性基やエーテル基から有利に選択することができる。このような基を有する親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びエチレンオキシドが挙げられる。 疎水性モノマーが有する疎水性基はフェニル基、フェニレン基、及びアルキル基から有利に選択することができる。このような基を有する疎水性モノマーとしては、ジビニルベンゼン及びスチレンが挙げられる。 本発明において好適に使用可能な両親媒性ポリマーの一例は、ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルビロリドン)コポリマーであり、12モル%以上(典型的には15〜30モル%)のN−ビニルピロリドンを含有するものが特に好適である。 溶離液としては、ニカワのようなタンパク質は有機溶媒濃度が高すぎると凝集沈殿を起こすことから、アルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等の極性の水混和性有機溶媒と水の混合溶媒が挙げられる。この中でも、特にアセトニトリルと水の混合溶媒がニカワの脱着効率の点で好ましい。水混和性有機溶媒と水の混合比(例えばアセトニトリルと水の混合比)は、混合溶媒に対する有機溶媒の体積で表して30〜70%、特に40〜60%とするのが有利である。 溶離液の使用量を、両親媒性ポリマーに接触させた電解液の量よりも少なくすることで、ニカワを濃縮することが可能となる。ニカワの濃縮率は電解液中に含まれるニカワの濃度に応じて、回収率と分析精度の観点から適宜決定すればよく、例えば、電解液中のニカワ濃度が1〜5ppm程度の場合は、電解液の量に対する溶離液の量を体積比で1/5〜1/20とするのが好ましい。 両親媒性ポリマーにニカワを吸着させた後、ニカワを脱離する前に、カラムやディスクに残留する金属イオンなどの電解質成分を除去するために水、又は希硫酸等の酸を、また、pHが低すぎる又は高すぎる場合は、カラム内の酸又はアルカリを除去し、pHを整えるために水や緩衝液を通液するのが好ましい。 その他、本発明において特に好適な両親媒性ポリマーの例が国際公開97/38774パンフレット(特表2000−514704号公報に対応)に記載されており、その全開示を本明細書に援用する。ただし、該開示によれば、タンパク質のような巨大分子は両親媒性ポリマーに保持されることがほとんどないとされており(特表2000−514704号公報の16頁16〜21行)、タンパク質の一種であるニカワが両親媒性ポリマーへの吸着・脱着に優れた効果を示すとは驚きであった。定量分析 以上の方法で前処理を行うことによって、電解液中に含まれているニカワ以外の電解質成分の多くからニカワが分離されることとなる。また、前処理によって溶媒交換が行われ、ニカワは溶離液中に移動することとなる。溶離液中には定量分析の際にニカワに干渉する電解質が含まれておらず、しかもニカワは濃縮されているので、電解液中に他の妨害成分がほとんど含まれない場合は、一般的なタンパク質の定量分析法、例えばビウレット法、ローリー法及びビシンコニン酸法などの非色定量法、アミドブラック10B法、メチルオレンジ法及びクーマシーブリリアントブルーG250法などの色素結合法などによってニカワを定量分析することは容易であると考えられる。 しかし、電気銅や電解銅箔の生産現場において、電解槽から実際にサンプリングされる電解液にはニカワと同じような性質を持つ妨害成分も含まれ、これらは前処理では除去できないため、前処理をしただけでは一般的なタンパク質の定量分析法を用いても精度の高い定量分析は困難であった。この妨害成分は現在定性中であるが、分子量1000程度で電解液中にかなり高い濃度で存在していることが判明した。 そこで、ニカワとこの妨害成分を分離・定量を行うためには、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いた高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置に導入することが有効である。分子量によりニカワと妨害成分を分離することで、ニカワを精度良く定量する事が可能となる。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置側からみれば、電解液中の電解質が事前に除去されているので、電解質による分離カラムの汚染を防止できるという利点もある。 図1は本発明に係る分析系の一例を示すフロー図であり、これを参照しながらニカワ濃度の測定原理を説明する。本実施形態では、溶離液溜め11、送液ポンプ12、インジェクタ13、分離カラム14、及び検出器15が配管で連結されている。まず、送液ポンプ12により溶離液溜め11から分離カラム14の方に溶離液10を一定流量で流しておき、検出器で検出されるベースライン(バックグラウンド)が安定したところで、前処理によって得られた試料(ニカワ含有溶離液17)をインジェクタ13より注入する。溶離液10とニカワ含有溶離液17の混合液は、恒温槽16によって一定温度に保たれた分離カラム14に入ると分離カラム14内に充填されているサイズ排除モードの充填剤の作用によってニカワ含有溶離液17中に残留する妨害成分とニカワ成分とが分離される。すなわち、充填剤の最大細孔径より大きい溶質(ここではニカワ成分)は充填剤の細孔に保持されないが、最大細孔径より小さい溶質(ここでは妨害成分)は充填剤の細孔に保持されるため、分離カラム14を通過するのに要する時間がニカワ成分は短くなり、妨害成分は長くなるのである。その結果、ニカワ成分はカラムから先に溶出して検出器15に入るため、ニカワのピークが妨害成分のピークよりも前に検出器15で検出されることになる。これによってニカワ濃度をより正確に求めることができるのである。 例えば、図2及び図3は共に、10mg/Lのニカワを添加した電解液を、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いた高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置で分析したときの吸光強度のチャートであるが、図2は前処理をしなかったもの、図3は前処理操作を行った(濃縮は行わず)ものである。図2では、ニカワのピークのすぐ右隣に電解質による妨害ピークが存在するが、図3ではそれが存在しないことがわかる。 移動相に使用する溶離液10としては、Li、Na、K、Br、Cs及びFrのようなアルカリ金属、又はBe、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaのようなアルカリ土類金属のリン酸塩の水溶液をpHを酸性から中性に調整したものが一般的である。これは、リン酸のpK1=2.1、pK2=7.2と酸性・中性域での緩衝液として適当であるからであり、サイズ排除カラムによるタンパク質の分析において一般的に用いられている。また、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、もしくはそれらにNaClやNaSO4などの塩を加えた溶離液などを使用することもできる。ただし、溶離液のpHは銅など電解液中の成分を分離しているため、pH2〜8と幅広く調整することが可能であり、タンパク質分析という観点とから、pH6〜7とするのが好ましい。上記のリン酸塩としては、例えばリン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸三カリウム(K3PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2)、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2)、リン酸水素マグネシウム(MgHPO4)が挙げられる。中でもアルカリ金属のリン酸塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。 他の緩衝液として酢酸、クエン酸などがあるがカルボン酸は吸光光度計での測定時、ニカワ測定の妨害となる恐れがあるため、リン酸系を使用するのが好ましい。 pHを調整するための酸としてはリン酸のような無機酸、又は酢酸、クエン酸のような有機酸などが挙げられる。強酸は緩衝能が弱いため使えない。本発明においては緩衝能や、吸光光度計測定時の妨害の有無の観点によりリン酸が好ましく用いられる。リン酸としてはオルトリン酸のほか、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸などの縮合リン酸が挙げられるが、オルトリン酸が特に好ましい。 従って、本発明の一実施形態においては、溶離液はリン酸二水素ナトリウムとリン酸の混合水溶液である。 分離カラム14としては、排除限界分子量が1500〜10000の分離カラムを使用することができる。排除限界分子量とはカラム内の充填剤に保持されない最も小さな分子量であり、これ以上大きな分子量をもつ成分は充填剤の細孔に入らずにそのままカラムから溶出する。一方、これよりも小さな分子量は充填剤の細孔に入り、カラムからの溶出が遅れる。 斯かる原理によって、高分子量のニカワは低分子量の妨害成分から分離される。本発明では排除限界分子量はデキストラン、若しくはポリエチレングリコール換算で測定したものを指すこととする。 一般に分子量と分子の大きさは必ずしも比例しないが、本発明者による検討結果によれば、上記排除限界分子量をもつ分離カラムを使用することで、高効率でニカワと妨害成分とを分離することができる。妨害成分は定性中であるが、分子量がおよそ1000程度であるため、排除限界分子量は好ましくは1500〜5000である。 分離カラム14に充填される充填剤は電解質成分とニカワの分離効率を高めるために電解質成分との親和性が高く、ニカワとの親和性が低いことが望ましいことから、親水性の充填剤を使用することが好ましい。 充填剤の材質としては一般的に分離カラムに使用される充填剤を特に制限なく使用可能であり、例えばシリカ、カルボキシル化ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシメタクリレート、ビニルポリマー等が挙げられ、中でも親水性ビニルポリマーが好適に使用できる。 カラムに充填する充填剤の量は試料にもよるが、例示的には4〜20cm3、例えば約14cm3とすることができる。また、充填剤の粒径も分離効率を考えて適宜選択すればよいが例示的には4〜20μm、例えば7μmとすることができる。検出器 微量(例えば0.01〜10mg/L)のニカワを検出することのできる検出器であれば特に制限はないが、例えば吸光度検出器、示差屈折検出器が挙げられる。高感度であるため、中でも吸光度検出器が好ましい。 ニカワは例えば吸光度検出器では測定波長210nmで検出することができる。検出されたニカワは電気信号に変換され、測定チャート上で電圧のピークとして現れる。ピーク面積をデータ処理装置により計算し、ニカワの濃度を算出することができる。 濃度の算出にあたっては絶対検量線法、標準添加法、又は内標準法などの公知の濃度定量法を用いることができる。電解液中のニカワは微量であるため一般的にはより正確な濃度測定のためには標準添加法や内標準法を用いられるが、本発明では電解液成分との分離に加え、最適濃度にニカワを濃縮する事が可能であり、検量線法を用いる事ができる。分析条件 本発明に係る分析方法を実施する上では、測定精度を高めるために更に以下の点を考慮すると良い。 電解液は採取した後速やかに前処理するのが好ましい。電解液中の硫酸銅は析出しやすいため、これらを防止するためである。 またニカワは分解しやすい物質であり、電解液中の高濃度の硫酸で分解が進む恐れもあることから前処理を速やかに行う必要がある。前処理後の液中では電解液ほど分解は進まないが、なるべく速やかにサイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ分析装置で測定を行うことが好ましい。 以上のように、本発明によれば電解液に含まれる微量のニカワの濃度を簡便にしかも精度良く測定できるようになったので、電解液中のニカワの濃度管理が容易になり、品質安定性の優れた電気銅や電解銅箔などの製品を製造することが可能となる。 以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例1(ニカワの吸着・脱離試験) 下記仕様の固相抽出カラムを用意した。該カラムにメタノール、水の順番に4mLずつ通液し、コンディショニングした。その後、該カラムにニカワを1000mg/L含有する擬似電解液(硫酸1.5M、銅40g/L)を通液速度4mL/minで1mL通液した。さらに洗浄操作として水を4mL通液し、その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で10mLに規正し、定量分析用の試料とした。ニカワの定量分析はビシンコニン酸法で実施した。すなわち、試料2mLにビシンコニン酸試薬を2mL添加し、60℃の水浴で1時間反応させた。反応液の吸光度(波長562nm)を測定し、予め作成した検量線からニカワ濃度を求め、ニカワの回収率を求めた。なお、この実施例で使用した疑似電解液は電解質以外の妨害成分がないため、ビシンコニン酸法でもニカワの定量分析が可能であった。<固相抽出カラム仕様> 品名:オアシスHLB樹脂(日本ウォーターズ社) 形態:メソポーラス共重合体のポリマービーズ(粒子径:30μm) 成分:ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン) ビーズ充填量:200mg カラム容量:6cc 結果を表1に示す。本発明に係る両親媒性ポリマーはニカワの吸着・脱離性能が高く、これを用いて固相抽出することにより、ニカワの回収が再現性良く高効率で行えることが分かる。 また、固相抽出カラムに使用する樹脂を変えて先と同様の試験を行い、回収率を測定した。また、カラムを通過したニカワの定量分析も併せて行い、ニカワの流出率も測定した。結果を表2に示す。両親媒性ポリマーは疎水性ポリマーに比較して顕著に高いニカワの吸着・脱離性能を有していることが理解できる。例2(検量線の作成) ニカワを10mg/L、30mg/L、50mg/L及び100mg/L含有する水溶液をそれぞれ調製し、後述するサイズ排除カラムを用いた高速液体クロマトグラフ(島津製作所製LC−vp)でピーク面積を求め、検量線を作成した。その結果、直線性の高い検量線が得られた。得られた検量線を図4に示す。例3(ニカワの定量分析)(1)前処理 粗銅の電解製錬で使用中の銅電解液(組成:Cu:55g/L、H2SO4:180g/L、ニカワ添加量4mg/L:給液側)をサンプリングし、速やかにこの銅電解液100mLを、例1と同じ固相抽出カラムに通液速度4mL/minで通液した。なお、前処理を実施する前に、固相抽出カラムにメタノール、水の順に4mLずつ通液し、コンディショニングしておいた。 銅電解液を固相抽出カラムに通液した後、残留する電解質成分をカラムから除去するために、固相抽出カラムを4mLの水で洗浄した。その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で5mLに定容し、これを定量分析用の試料とした。電解液と溶離液の体積比から、ニカワは20倍に濃縮されたことになる。(2)定量分析 図1に示す分析系を以下の機器を用いて構築した。<分析装置> 高速液体クロマトグラフ:島津製作所製(LC−vp)<固定相> カラム:東ソー(株)製(TSKgel G2500PWXL) 排除限界分子量:5000 充填剤:親水性ビニルポリマー(粒子径:7μm) カラムサイズ:7.8mm(内径)×30cm(長さ)<移動相> リン酸二水素ナトリウム水溶液0.3mol/LにpHが2.5になるまでリン酸を添加して調製した溶離液<検出器> 島津製作所製 吸光度検出器(SPD−10Avp) 測定波長210nm<データ処理装置> 島津製作所製 クロマトパック(CR7Aplus) カラムを恒温槽にて30℃に保持した。移動相としての溶離液を1.0mL/minの一定流量で送液しておき、ベースラインが安定したところで試料10μLをインジェクタにより移動相に注入した。データ処理装置を用いてニカワのピーク面積を求め、先に作成した検量線から、濃度を測定した。 上記の手順を固相抽出から繰り返して再度ニカワの濃度を測定した。2回の分析結果を表3に示す。0.1mg/Lのスケールで再現性の高い分析結果が得られたことが分かる。例4(鉛電解液中のニカワの定量分析)(1)前処理 鉛電解試験液(組成:Pb:40g/L、フェノールスルホン酸:60g/L、ニカワ添加量400mg/L)の新建浴液及び電解試験液をサンプリングし、速やかに鉛電解液1mLを、例1と同じ固相抽出カラムに通液速度4mL/minで通液した。なお、前処理を実施する前に、固相抽出カラムにメタノール、水の順に4mLずつ通液し、コンディショニングしておいた。ここで、新建浴液とは電解試験に用いるため作成した電解液を指し、電解試験液とは新建浴液を用いて実際に電解試験に用いた液のことを指す。 鉛電解液を固相抽出カラムに通液した後、残留する電解質成分をカラムから除去するために、固相抽出カラムを4mLの水で洗浄した。その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で10mLに定容し、これを定量分析用の試料とした。ニカワ濃度が高いため、10倍に希釈されたことになる。(2)定量分析 例3に従い、定量分析を行った。新建浴液と電解試験液とでニカワ濃度に差があることから、本発明によりニカワ濃度の定量管理が行えることが確認された。例5(電解銅箔液中のニカワの定量分析)(1)前処理 電解銅箔工程で使用中の銅電解液(組成:Cu:100g/L、H2SO4:100g/L、ニカワ添加量3mg/L:給液側)をサンプリングし、速やかにこの電解銅箔液100mLを、例1と同じ固相抽出カラムに通液速度4mL/minで通液した。なお、前処理を実施する前に、固相抽出カラムにメタノール、水の順に4mLずつ通液し、コンディショニングしておいた。 電解銅箔液を固相抽出カラムに通液した後、残留する電解質成分をカラムから除去するために、固相抽出カラムを4mLの水で洗浄した。その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で5mLに定容し、これを定量分析用の試料とした。電解銅箔液と溶離液の体積比から、ニカワは20倍に濃縮されたことになる。(2)定量分析例3に従い、定量分析を行った。妥当な分析結果が得られたことが分かる。前処理後のニカワの分析系の一例を示すフロー図である。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置で電解液を分析したときの吸光強度のチャートである(前処理なし)。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置で電解液を分析したときの吸光強度のチャートである(前処理あり)。例2における、ニカワの濃度とピーク面積の関係を示した検量線である。符号の説明10 溶離液11 溶離液溜め12 送液ポンプ13 インジェクタ14 分離カラム15 検出器16 恒温槽17 試料(ニカワ含有溶離液)18 廃液 電解液中に含まれるニカワの定量分析方法にあって、1)両親媒性ポリマーに電解液を接触させて電解液中に含まれるニカワを該ポリマーに吸着させる工程と、2)該ポリマーに溶離液を接触させて該ポリマーに吸着されたニカワを溶出させる工程と、3)溶離液中のニカワを検出器で検出する工程と、を含む分析方法。 工程3)を、溶離液中のニカワをサイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ分析装置に投入することにより行う請求項1記載の分析方法。 両親媒性ポリマーは孔径が2nmを超えて50nm未満の多孔体である請求項1又は2何れか一項記載の分析方法。 両親媒性ポリマーは重合可能な官能基を有する親水性モノマーの少なくとも1種と重合可能な官能基を有する疎水性モノマーの少なくとも1種との共重合体である請求項1〜3何れか一項記載の分析方法。 溶離液は、水混和性有機溶媒と水の混合溶媒であって、水混和性有機溶媒と水の混合比が混合溶媒に対する有機溶媒の体積で表して30〜70%である請求項1〜4何れか一項記載の分析方法。 工程1)で両親媒性ポリマーに接触させる電解液の量は、工程2)で該ポリマーに接触させる溶離液の体積よりも多い請求項1〜5何れか一項記載の分析方法。 【課題】電解液中に含まれる微量ニカワを再現性良く定量分析することのできる方法を提供する。【解決手段】電解質成分を含む電解液中に含まれるニカワの定量分析方法であって、両親媒性ポリマーに電解液を接触させて電解液中に含まれるニカワを該ポリマーに吸着させる工程と、該ポリマーに溶離液を接触させて吸着されたニカワを溶出させる工程と、溶離液中のニカワを検出器で検出する工程とを含む分析方法。【選択図】なし


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特許公報(B2)_電解液中に含まれるニカワの濃度分析方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_電解液中に含まれるニカワの濃度分析方法
出願番号:2008036216
年次:2011
IPC分類:G01N 30/88,G01N 30/06,G01N 30/26


特許情報キャッシュ

庵下 高宏 JP 4723602 特許公報(B2) 20110415 2008036216 20080218 電解液中に含まれるニカワの濃度分析方法 JX日鉱日石金属株式会社 502362758 アクシス国際特許業務法人 110000523 庵下 高宏 20110713 G01N 30/88 20060101AFI20110627BHJP G01N 30/06 20060101ALI20110627BHJP G01N 30/26 20060101ALI20110627BHJP JPG01N30/88 JG01N30/06 ZG01N30/88 201GG01N30/26 A G01N 30/00−30/96 特開2002−296260(JP,A) 特表2000−514704(JP,A) 4 2009192491 20090827 14 20080912 赤坂 祐樹 本発明は電解液中に少量存在しているニカワの濃度分析方法に関し、とりわけ銅電解液中に少量存在しているニカワの濃度分析方法に関する。 電解精錬による電気銅製造プロセスや電解銅箔製造プロセスなどに使用する電解液中には、微量のニカワ(「ゼラチン」ともいう。)を添加することが行われることが多い。ニカワは電気銅や電解銅箔の外観、機械的強度、表面結晶構造、粗さ等の物性を制御する役割を果たすためである。安定した品質の製品を作るためには、電解液中のニカワ濃度を管理することが重要である。特に、銅の電解精錬においては、パーマネントカソード法(PC法)と呼ばれる陰極板にステンレス板を使用してその表面に銅を電着させる方式が主流に成りつつあるが、PC法によって電気銅を製造する際にはニカワの厳密な濃度管理が要求されることから、ニカワの濃度管理はより重要となる。 しかしながら、電解液中におけるニカワの濃度はppm(又はmg/L)オーダーと低く、定量分析が困難であった。そこで、電解液中に微量含まれるニカワの濃度を分析するために、ニカワを他成分から分離した上で定量分析する技術が提案されている。 例えば特開2001−337081号公報(特許文献1)には、高速液体クロマトグラフィを使用した分析手法が記載されている。具体的には、高速液体クロマトグラフィのカラムとしてサイズ排除モードの充填剤が充填されたカラムを用い上記電解液中のニカワと上記電解質成分とを分離し、上記電解質成分が分離され且つニカワを含む液を、サイズ排除モードの充填剤が充填された別のカラムに導入し、ニカワをその分子量又は分子量分布に従って分離し、次いで分離されたニカワを含む液を検出器に導入するニカワ又はゼラチンの濃度又は分子量分布の測定方法が記載されている。 特許第3414287号公報(特許文献2)には、疎水性吸着樹脂を充填したカラムに、ニカワ等のタンパク質を含む試料液を通液して該樹脂にタンパク質を吸着させ、次いで該カラムに溶離液を流してタンパク質を溶出させ、該溶出液に分析試薬を添加してタンパク質を定量分析する方法が記載されている。疎水性樹脂の中でも、スチレン−ジビニルベンゼン系樹脂のような無極性樹脂又はアシル化エステル系樹脂のような中間極性樹脂がタンパク質の回収率が高いとされている。特開2001−337081号公報特許第3414287号公報 しかしながら、従来の方法は、電解液中に含まれる微量ニカワを再現性良く定量分析する上で未だ改善の余地がある。そこで、本発明は電解液中に含まれる微量ニカワを再現性良く定量分析することのできる方法、例えば定量下限1mg/L以下でニカワを分析することのできる方法を提供することを課題とする。 本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、両親媒性ポリマーが電解液中のニカワの吸着・脱離に優れた効果を示すことを見出した。そのため、両親媒性ポリマーを用いてニカワを電解液から分離した後に、カラムに吸着されたニカワを溶離液により溶出させることで、ニカワをほとんど損失することなく簡便にニカワを抽出することができるので、ニカワを定量分析する際の前処理に利用できる。 従って、本発明は一側面において、電解質成分を含む電解液中に含まれるニカワの定量分析方法であって、1)両親媒性ポリマーに電解液を接触させて電解液中に含まれるニカワを該ポリマーに吸着させる工程と、2)該ポリマーに溶離液を接触させて該ポリマーに吸着されたニカワを溶出させる工程と、3)溶離液中のニカワを検出器で検出する工程と、を含む分析方法である。 また、両親媒性ポリマーを用いた前処理を行った後、サイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ装置を用いて溶離液中のニカワを分析すると、更に妨害成分とニカワが分離されるため、定量分析の精度が一層高まることが分かった。 従って、本発明に係るニカワの定量分析方法の一実施形態では、前記した溶離液中のニカワを検出器で検出する工程を、溶離液中のニカワをサイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ分析装置に投入することにより行う。 本発明に係るニカワの定量分析方法の別の一実施形態では、両親媒性ポリマーは孔径が2nmを超えて50nm未満の多孔体である。 本発明に係るニカワの定量分析方法の更に別の一実施形態では、両親媒性ポリマーは重合可能な官能基を有する親水性モノマーの少なくとも1種と重合可能な官能基を有する疎水性モノマーの少なくとも1種との共重合体である。 本発明に係るニカワの定量分析方法の更に別の一実施形態では、溶離液は、水混和性有機溶媒と水の混合溶媒であって、水混和性有機溶媒と水の混合比が混合溶媒に対する有機溶媒の体積で表して30〜70%である。 工程1)で両親媒性ポリマーに接触させる電解液の量は、工程2)で該ポリマーに接触させる溶離液の体積よりも多い。 本発明によれば、電解液中に含まれる微量ニカワを再現性良く簡便に定量分析することができる。電解液 本発明が対象とする電解液としては、ニカワを含有する電解液であれば特に制限はない。例えば銅、ニッケル、鉛、金、及び/又はマンガンといった金属イオンと無機酸及び/又は有機酸とを含有する電解液が対象である。本発明が特に対象とする電解液は電気銅や電解銅箔の製造に使用する銅電解液である。銅電解液は一般にCuSO4・5H2OとH2SO4を主成分とし、典型的にはCu:40〜70g/L、H2SO4:150〜210g/Lを含有する。As,Sb,Bi,Ni,Te,Pb,アンモニアなども含有することがある。 また、本発明は電解液中に微量含まれるニカワの濃度を分析する際に特に好適に用いられる。電解液中に含まれるニカワの濃度は例えば0.01〜10ppm、典型的には0.1〜5ppm、より典型的には0.5〜2ppmである。 ニカワは典型的にはゼラチンを主成分とする分子量が500〜250000程度のものであり、例えば獣・魚類の骨・皮・腱・腸などから加水分解により製造することができる。前処理 本発明に係るニカワの定量分析方法では、両親媒性ポリマーを用いてニカワを電解液から分離する固相抽出を予め実施する。電解液を当該ポリマーに接触させると、電解液中のニカワは当該ポリマーに吸着され、電解液中に含まれる大部分の電解質成分は吸着されずに通過する。その後、溶離液を当該ポリマーに接触させて吸着されたニカワを脱離し、溶離液中に溶出する。この操作によってニカワの正確な定量分析を妨害する成分からニカワが分離されるので、微量のニカワを定量するのに役立つ。電解液よりも少ない量の溶離液を用いて溶出することで、ニカワの濃度を濃縮することも可能であり、微量のニカワを分析しやすくなる。 両親媒性ポリマーと電解液との接触効率を高めるために、粒径5〜500μm、典型的には15〜60μm程度のビーズ状やペレット状の両親媒性ポリマーをカラムに充填して固相抽出カラムを構成することができる。該カラムに電解液を通じることで上記分離操作を効率的に実施することができる。両親媒性ポリマーのビーズやペレットは多孔体にすると更に効果的である。多孔体中の細孔のサイズとしては、マイクロポーラス(孔径が2nm以下)、メソポーラス(孔径が2nmを超えて50nm未満)、マクロポーラス(孔径が50nm以上)があるが、ニカワを細孔に取り込むために、本発明ではメソポーラスとするのが好ましい。両親媒性ポリマーを多孔質のディスク状に加工して固相抽出することもできる。両親媒性ポリマーと電解液との接触方法は両親媒性ポリマーの形態に応じて適宜決定すればよいが、通液や噴霧などにより行えばよい。 前処理を実施する前に、カラムやディスクを予めコンディショニングすることで、ニカワの選択的な吸着をより効率的に行うことができる。コンディショニングは、例えばカラムやディスクに少量のメタノールを通液し、さらに水や酸、あるいは緩衝液などを通液して行う。 具体的には、カラムやディスク内に充填した両親媒性ポリマー表面をメタノールで平衡化し、電解液のような水溶液試料が両親媒性ポリマーと接触しやすくする。続けて極性やpHを整えるために水や酸、あるいは緩衝液を通液する。 電解液に接触させる両親媒性ポリマーの量は、該ポリマーの形態やニカワの吸着効率の観点から適宜決定すればよいが、例えば、電解液中のニカワ濃度が1〜20ppm程度であり、両親媒性ポリマーをメソポーラスの粒径5〜500μmのビーズ状に加工してカラムに充填して電解液を通液する場合、両親媒性ポリマーの量はこれに接触させるニカワに対して重量比で20〜1000倍とするのが一般的であり、100〜1000倍とするのが好ましい。同時に吸着される妨害成分も考慮すると、カラムに充填する両親媒性ポリマーの量は例示的には0.1〜1gとすることができる。 本発明で使用する両親媒性ポリマーはニカワの吸着・脱離効率が高く、前処理時にニカワをほとんど損失することなく電解質成分から分離できるという利点がある。本発明において使用可能な両親媒性ポリマーは、少なくとも1種の親水性基と少なくとも1種の疎水性基を有する。両親媒性ポリマーは重合可能な官能基(例えばビニル基)を有する親水性モノマーの少なくとも1種と重合可能な官能基を有する疎水性モノマーの少なくとも1種とを、例えばラジカル重合により共重合させることによって製造することができる。ポリマー中の親水性部分と疎水性部分のモル比は1:9〜3:7、典型的には15:85〜30:70程度とするのが水湿潤性及びニカワの吸着性能の点で有利である。 理論によって本発明が制限されることを意図しないが、両親媒性ポリマーによるニカワの吸着・脱離が効果的であるのは以下の理由によると考えられる。 ニカワの吸着・脱着は基本的にニカワの疎水性を利用して行うが、非常に疎水性の強い樹脂(例えばODS)では、たとえ孔径を最適化して吸着性を向上させたとしても、十分な回収率は得られない。これは、樹脂によるニカワの吸着作用が強すぎて、ニカワが容易に脱離しないことによると考えられる。そこで、ニカワを脱離するにはより強い脱離作用を有する溶離液を用いる必要があるが、ニカワは有機溶媒濃度が高すぎると変性するため、あまり強い溶離液を用いる事が出来ない。 一方、両親媒性ポリマーを用いることにより、疎水性基によるニカワの吸着作用に加え、親水性基による水溶性の電解液との親和性により、ニカワとポリマーとの相互作用が向上し、吸着率が向上したと考えられる。さらに溶出時には親水性基が存在することによって溶出を行いやすくなることから、高い回収率が得られると考えられる。 親水性モノマーが有する親水性基はピリジニル基及びピロリドニル基のような複素環式の親水性基やエーテル基から有利に選択することができる。このような基を有する親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びエチレンオキシドが挙げられる。 疎水性モノマーが有する疎水性基はフェニル基、フェニレン基、及びアルキル基から有利に選択することができる。このような基を有する疎水性モノマーとしては、ジビニルベンゼン及びスチレンが挙げられる。 本発明において好適に使用可能な両親媒性ポリマーの一例は、ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルビロリドン)コポリマーであり、12モル%以上(典型的には15〜30モル%)のN−ビニルピロリドンを含有するものが特に好適である。 溶離液としては、ニカワのようなタンパク質は有機溶媒濃度が高すぎると凝集沈殿を起こすことから、アルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等の極性の水混和性有機溶媒と水の混合溶媒が挙げられる。この中でも、特にアセトニトリルと水の混合溶媒がニカワの脱着効率の点で好ましい。水混和性有機溶媒と水の混合比(例えばアセトニトリルと水の混合比)は、混合溶媒に対する有機溶媒の体積で表して30〜70%、特に40〜60%とするのが有利である。 溶離液の使用量を、両親媒性ポリマーに接触させた電解液の量よりも少なくすることで、ニカワを濃縮することが可能となる。ニカワの濃縮率は電解液中に含まれるニカワの濃度に応じて、回収率と分析精度の観点から適宜決定すればよく、例えば、電解液中のニカワ濃度が1〜5ppm程度の場合は、電解液の量に対する溶離液の量を体積比で1/5〜1/20とするのが好ましい。 両親媒性ポリマーにニカワを吸着させた後、ニカワを脱離する前に、カラムやディスクに残留する金属イオンなどの電解質成分を除去するために水、又は希硫酸等の酸を、また、pHが低すぎる又は高すぎる場合は、カラム内の酸又はアルカリを除去し、pHを整えるために水や緩衝液を通液するのが好ましい。 その他、本発明において特に好適な両親媒性ポリマーの例が国際公開97/38774パンフレット(特表2000−514704号公報に対応)に記載されており、その全開示を本明細書に援用する。ただし、該開示によれば、タンパク質のような巨大分子は両親媒性ポリマーに保持されることがほとんどないとされており(特表2000−514704号公報の16頁16〜21行)、タンパク質の一種であるニカワが両親媒性ポリマーへの吸着・脱着に優れた効果を示すとは驚きであった。定量分析 以上の方法で前処理を行うことによって、電解液中に含まれているニカワ以外の電解質成分の多くからニカワが分離されることとなる。また、前処理によって溶媒交換が行われ、ニカワは溶離液中に移動することとなる。溶離液中には定量分析の際にニカワに干渉する電解質が含まれておらず、しかもニカワは濃縮されているので、電解液中に他の妨害成分がほとんど含まれない場合は、一般的なタンパク質の定量分析法、例えばビウレット法、ローリー法及びビシンコニン酸法などの非色定量法、アミドブラック10B法、メチルオレンジ法及びクーマシーブリリアントブルーG250法などの色素結合法などによってニカワを定量分析することは容易であると考えられる。 しかし、電気銅や電解銅箔の生産現場において、電解槽から実際にサンプリングされる電解液にはニカワと同じような性質を持つ妨害成分も含まれ、これらは前処理では除去できないため、前処理をしただけでは一般的なタンパク質の定量分析法を用いても精度の高い定量分析は困難であった。この妨害成分は現在定性中であるが、分子量1000程度で電解液中にかなり高い濃度で存在していることが判明した。 そこで、ニカワとこの妨害成分を分離・定量を行うためには、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いた高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置に導入することが有効である。分子量によりニカワと妨害成分を分離することで、ニカワを精度良く定量する事が可能となる。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置側からみれば、電解液中の電解質が事前に除去されているので、電解質による分離カラムの汚染を防止できるという利点もある。 図1は本発明に係る分析系の一例を示すフロー図であり、これを参照しながらニカワ濃度の測定原理を説明する。本実施形態では、溶離液溜め11、送液ポンプ12、インジェクタ13、分離カラム14、及び検出器15が配管で連結されている。まず、送液ポンプ12により溶離液溜め11から分離カラム14の方に溶離液10を一定流量で流しておき、検出器で検出されるベースライン(バックグラウンド)が安定したところで、前処理によって得られた試料(ニカワ含有溶離液17)をインジェクタ13より注入する。溶離液10とニカワ含有溶離液17の混合液は、恒温槽16によって一定温度に保たれた分離カラム14に入ると分離カラム14内に充填されているサイズ排除モードの充填剤の作用によってニカワ含有溶離液17中に残留する妨害成分とニカワ成分とが分離される。すなわち、充填剤の最大細孔径より大きい溶質(ここではニカワ成分)は充填剤の細孔に保持されないが、最大細孔径より小さい溶質(ここでは妨害成分)は充填剤の細孔に保持されるため、分離カラム14を通過するのに要する時間がニカワ成分は短くなり、妨害成分は長くなるのである。その結果、ニカワ成分はカラムから先に溶出して検出器15に入るため、ニカワのピークが妨害成分のピークよりも前に検出器15で検出されることになる。これによってニカワ濃度をより正確に求めることができるのである。 例えば、図2及び図3は共に、10mg/Lのニカワを添加した電解液を、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いた高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置で分析したときの吸光強度のチャートであるが、図2は前処理をしなかったもの、図3は前処理操作を行った(濃縮は行わず)ものである。図2では、ニカワのピークのすぐ右隣に電解質による妨害ピークが存在するが、図3ではそれが存在しないことがわかる。 移動相に使用する溶離液10としては、Li、Na、K、Br、Cs及びFrのようなアルカリ金属、又はBe、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaのようなアルカリ土類金属のリン酸塩の水溶液をpHを酸性から中性に調整したものが一般的である。これは、リン酸のpK1=2.1、pK2=7.2と酸性・中性域での緩衝液として適当であるからであり、サイズ排除カラムによるタンパク質の分析において一般的に用いられている。また、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、もしくはそれらにNaClやNaSO4などの塩を加えた溶離液などを使用することもできる。ただし、溶離液のpHは銅など電解液中の成分を分離しているため、pH2〜8と幅広く調整することが可能であり、タンパク質分析という観点とから、pH6〜7とするのが好ましい。上記のリン酸塩としては、例えばリン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸三カリウム(K3PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2)、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2)、リン酸水素マグネシウム(MgHPO4)が挙げられる。中でもアルカリ金属のリン酸塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。 他の緩衝液として酢酸、クエン酸などがあるがカルボン酸は吸光光度計での測定時、ニカワ測定の妨害となる恐れがあるため、リン酸系を使用するのが好ましい。 pHを調整するための酸としてはリン酸のような無機酸、又は酢酸、クエン酸のような有機酸などが挙げられる。強酸は緩衝能が弱いため使えない。本発明においては緩衝能や、吸光光度計測定時の妨害の有無の観点によりリン酸が好ましく用いられる。リン酸としてはオルトリン酸のほか、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸などの縮合リン酸が挙げられるが、オルトリン酸が特に好ましい。 従って、本発明の一実施形態においては、溶離液はリン酸二水素ナトリウムとリン酸の混合水溶液である。 分離カラム14としては、排除限界分子量が1500〜10000の分離カラムを使用することができる。排除限界分子量とはカラム内の充填剤に保持されない最も小さな分子量であり、これ以上大きな分子量をもつ成分は充填剤の細孔に入らずにそのままカラムから溶出する。一方、これよりも小さな分子量は充填剤の細孔に入り、カラムからの溶出が遅れる。 斯かる原理によって、高分子量のニカワは低分子量の妨害成分から分離される。本発明では排除限界分子量はデキストラン、若しくはポリエチレングリコール換算で測定したものを指すこととする。 一般に分子量と分子の大きさは必ずしも比例しないが、本発明者による検討結果によれば、上記排除限界分子量をもつ分離カラムを使用することで、高効率でニカワと妨害成分とを分離することができる。妨害成分は定性中であるが、分子量がおよそ1000程度であるため、排除限界分子量は好ましくは1500〜5000である。 分離カラム14に充填される充填剤は電解質成分とニカワの分離効率を高めるために電解質成分との親和性が高く、ニカワとの親和性が低いことが望ましいことから、親水性の充填剤を使用することが好ましい。 充填剤の材質としては一般的に分離カラムに使用される充填剤を特に制限なく使用可能であり、例えばシリカ、カルボキシル化ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシメタクリレート、ビニルポリマー等が挙げられ、中でも親水性ビニルポリマーが好適に使用できる。 カラムに充填する充填剤の量は試料にもよるが、例示的には4〜20cm3、例えば約14cm3とすることができる。また、充填剤の粒径も分離効率を考えて適宜選択すればよいが例示的には4〜20μm、例えば7μmとすることができる。検出器 微量(例えば0.01〜10mg/L)のニカワを検出することのできる検出器であれば特に制限はないが、例えば吸光度検出器、示差屈折検出器が挙げられる。高感度であるため、中でも吸光度検出器が好ましい。 ニカワは例えば吸光度検出器では測定波長210nmで検出することができる。検出されたニカワは電気信号に変換され、測定チャート上で電圧のピークとして現れる。ピーク面積をデータ処理装置により計算し、ニカワの濃度を算出することができる。 濃度の算出にあたっては絶対検量線法、標準添加法、又は内標準法などの公知の濃度定量法を用いることができる。電解液中のニカワは微量であるため一般的にはより正確な濃度測定のためには標準添加法や内標準法を用いられるが、本発明では電解液成分との分離に加え、最適濃度にニカワを濃縮する事が可能であり、検量線法を用いる事ができる。分析条件 本発明に係る分析方法を実施する上では、測定精度を高めるために更に以下の点を考慮すると良い。 電解液は採取した後速やかに前処理するのが好ましい。電解液中の硫酸銅は析出しやすいため、これらを防止するためである。 またニカワは分解しやすい物質であり、電解液中の高濃度の硫酸で分解が進む恐れもあることから前処理を速やかに行う必要がある。前処理後の液中では電解液ほど分解は進まないが、なるべく速やかにサイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ分析装置で測定を行うことが好ましい。 以上のように、本発明によれば電解液に含まれる微量のニカワの濃度を簡便にしかも精度良く測定できるようになったので、電解液中のニカワの濃度管理が容易になり、品質安定性の優れた電気銅や電解銅箔などの製品を製造することが可能となる。 以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例1(ニカワの吸着・脱離試験) 下記仕様の固相抽出カラムを用意した。該カラムにメタノール、水の順番に4mLずつ通液し、コンディショニングした。その後、該カラムにニカワを1000mg/L含有する擬似電解液(硫酸1.5M、銅40g/L)を通液速度4mL/minで1mL通液した。さらに洗浄操作として水を4mL通液し、その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で10mLに規正し、定量分析用の試料とした。ニカワの定量分析はビシンコニン酸法で実施した。すなわち、試料2mLにビシンコニン酸試薬を2mL添加し、60℃の水浴で1時間反応させた。反応液の吸光度(波長562nm)を測定し、予め作成した検量線からニカワ濃度を求め、ニカワの回収率を求めた。なお、この実施例で使用した疑似電解液は電解質以外の妨害成分がないため、ビシンコニン酸法でもニカワの定量分析が可能であった。<固相抽出カラム仕様> 品名:オアシスHLB樹脂(日本ウォーターズ社) 形態:メソポーラス共重合体のポリマービーズ(粒子径:30μm) 成分:ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン) ビーズ充填量:200mg カラム容量:6cc 結果を表1に示す。本発明に係る両親媒性ポリマーはニカワの吸着・脱離性能が高く、これを用いて固相抽出することにより、ニカワの回収が再現性良く高効率で行えることが分かる。 また、固相抽出カラムに使用する樹脂を変えて先と同様の試験を行い、回収率を測定した。また、カラムを通過したニカワの定量分析も併せて行い、ニカワの流出率も測定した。結果を表2に示す。両親媒性ポリマーは疎水性ポリマーに比較して顕著に高いニカワの吸着・脱離性能を有していることが理解できる。例2(検量線の作成) ニカワを10mg/L、30mg/L、50mg/L及び100mg/L含有する水溶液をそれぞれ調製し、後述するサイズ排除カラムを用いた高速液体クロマトグラフ(島津製作所製LC−vp)でピーク面積を求め、検量線を作成した。その結果、直線性の高い検量線が得られた。得られた検量線を図4に示す。例3(ニカワの定量分析)(1)前処理 粗銅の電解製錬で使用中の銅電解液(組成:Cu:55g/L、H2SO4:180g/L、ニカワ添加量4mg/L:給液側)をサンプリングし、速やかにこの銅電解液100mLを、例1と同じ固相抽出カラムに通液速度4mL/minで通液した。なお、前処理を実施する前に、固相抽出カラムにメタノール、水の順に4mLずつ通液し、コンディショニングしておいた。 銅電解液を固相抽出カラムに通液した後、残留する電解質成分をカラムから除去するために、固相抽出カラムを4mLの水で洗浄した。その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で5mLに定容し、これを定量分析用の試料とした。電解液と溶離液の体積比から、ニカワは20倍に濃縮されたことになる。(2)定量分析 図1に示す分析系を以下の機器を用いて構築した。<分析装置> 高速液体クロマトグラフ:島津製作所製(LC−vp)<固定相> カラム:東ソー(株)製(TSKgel G2500PWXL) 排除限界分子量:5000 充填剤:親水性ビニルポリマー(粒子径:7μm) カラムサイズ:7.8mm(内径)×30cm(長さ)<移動相> リン酸二水素ナトリウム水溶液0.3mol/LにpHが2.5になるまでリン酸を添加して調製した溶離液<検出器> 島津製作所製 吸光度検出器(SPD−10Avp) 測定波長210nm<データ処理装置> 島津製作所製 クロマトパック(CR7Aplus) カラムを恒温槽にて30℃に保持した。移動相としての溶離液を1.0mL/minの一定流量で送液しておき、ベースラインが安定したところで試料10μLをインジェクタにより移動相に注入した。データ処理装置を用いてニカワのピーク面積を求め、先に作成した検量線から、濃度を測定した。 上記の手順を固相抽出から繰り返して再度ニカワの濃度を測定した。2回の分析結果を表3に示す。0.1mg/Lのスケールで再現性の高い分析結果が得られたことが分かる。例4(鉛電解液中のニカワの定量分析)(1)前処理 鉛電解試験液(組成:Pb:40g/L、フェノールスルホン酸:60g/L、ニカワ添加量400mg/L)の新建浴液及び電解試験液をサンプリングし、速やかに鉛電解液1mLを、例1と同じ固相抽出カラムに通液速度4mL/minで通液した。なお、前処理を実施する前に、固相抽出カラムにメタノール、水の順に4mLずつ通液し、コンディショニングしておいた。ここで、新建浴液とは電解試験に用いるため作成した電解液を指し、電解試験液とは新建浴液を用いて実際に電解試験に用いた液のことを指す。 鉛電解液を固相抽出カラムに通液した後、残留する電解質成分をカラムから除去するために、固相抽出カラムを4mLの水で洗浄した。その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で10mLに定容し、これを定量分析用の試料とした。ニカワ濃度が高いため、10倍に希釈されたことになる。(2)定量分析 例3に従い、定量分析を行った。新建浴液と電解試験液とでニカワ濃度に差があることから、本発明によりニカワ濃度の定量管理が行えることが確認された。例5(電解銅箔液中のニカワの定量分析)(1)前処理 電解銅箔工程で使用中の銅電解液(組成:Cu:100g/L、H2SO4:100g/L、ニカワ添加量3mg/L:給液側)をサンプリングし、速やかにこの電解銅箔液100mLを、例1と同じ固相抽出カラムに通液速度4mL/minで通液した。なお、前処理を実施する前に、固相抽出カラムにメタノール、水の順に4mLずつ通液し、コンディショニングしておいた。 電解銅箔液を固相抽出カラムに通液した後、残留する電解質成分をカラムから除去するために、固相抽出カラムを4mLの水で洗浄した。その後、溶離液としての水/アセトニトリル(50/50体積比)の混合溶媒4mLを固相抽出カラムに通液し、ニカワを脱離した。溶出液を水で5mLに定容し、これを定量分析用の試料とした。電解銅箔液と溶離液の体積比から、ニカワは20倍に濃縮されたことになる。(2)定量分析例3に従い、定量分析を行った。妥当な分析結果が得られたことが分かる。前処理後のニカワの分析系の一例を示すフロー図である。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置で電解液を分析したときの吸光強度のチャートである(前処理なし)。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置で電解液を分析したときの吸光強度のチャートである(前処理あり)。例2における、ニカワの濃度とピーク面積の関係を示した検量線である。符号の説明10 溶離液11 溶離液溜め12 送液ポンプ13 インジェクタ14 分離カラム15 検出器16 恒温槽17 試料(ニカワ含有溶離液)18 廃液 電解液中に含まれるニカワの定量分析方法にあって、1)孔径が2nmを超えて50nm未満の多孔体である両親媒性ポリマーに電解液を接触させて電解液中に含まれるニカワを該ポリマーに吸着させる工程と、2)該ポリマーに溶離液を接触させて該ポリマーに吸着されたニカワを溶出させる工程と、3)溶離液中のニカワを検出器で検出する工程と、を含む分析方法。 工程3)を、溶離液中のニカワをサイズ排除クロマトグラフィを用いた高速液体クロマトグラフィ分析装置に投入することにより行う請求項1記載の分析方法。 両親媒性ポリマーは重合可能な官能基を有する親水性モノマーの少なくとも1種と重合可能な官能基を有する疎水性モノマーの少なくとも1種との共重合体である請求項1又は2に記載の分析方法。 溶離液は、水混和性有機溶媒と水の混合溶媒であって、水混和性有機溶媒と水の混合比が混合溶媒に対する有機溶媒の体積で表して30〜70%である請求項1〜3何れか一項記載の分析方法。


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