生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_藻類由来のAMPデアミナーゼ
出願番号:2008029481
年次:2009
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12N 9/78,C07K 16/00,A23L 1/305,C12Q 1/34,A01H 5/00,G01N 33/53


特許情報キャッシュ

白岩 善博 岩本 浩二 南 誓子 JP 2009183254 公開特許公報(A) 20090820 2008029481 20080208 藻類由来のAMPデアミナーゼ 国立大学法人 筑波大学 504171134 株式会社山本海苔店 591053708 長濱 範明 100107191 白岩 善博 岩本 浩二 南 誓子 C12N 15/09 20060101AFI20090724BHJP C12N 1/15 20060101ALI20090724BHJP C12N 1/19 20060101ALI20090724BHJP C12N 1/21 20060101ALI20090724BHJP C12N 5/10 20060101ALI20090724BHJP C12N 9/78 20060101ALI20090724BHJP C07K 16/00 20060101ALI20090724BHJP A23L 1/305 20060101ALI20090724BHJP C12Q 1/34 20060101ALI20090724BHJP A01H 5/00 20060101ALI20090724BHJP G01N 33/53 20060101ALI20090724BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AC12N5/00 CC12N9/78C07K16/00A23L1/305C12Q1/34A01H5/00 AG01N33/53 D 17 OL 21 2B030 4B018 4B024 4B050 4B063 4B065 4H045 2B030AA07 2B030AD09 2B030AD16 2B030CA11 2B030CA14 4B018LB05 4B018MD48 4B018ME02 4B018ME14 4B024AA05 4B024AA11 4B024BA11 4B024CA01 4B024CA09 4B024CA11 4B024CA20 4B024DA01 4B024DA02 4B024DA05 4B024DA11 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA01 4B050CC03 4B050DD13 4B050LL02 4B050LL10 4B063QA05 4B063QA18 4B063QQ09 4B063QR10 4B063QR32 4B063QR35 4B063QR55 4B063QR59 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS32 4B063QX01 4B065AA26X 4B065AA83Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA01 4B065CA31 4B065CA41 4B065CA46 4B065CA60 4H045AA10 4H045AA11 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA30 4H045DA89 4H045EA01 4H045FA74 本発明は、藻類由来のAMPデアミナーゼおよびその利用に関し、特に呈味性の優れた食品開発などへの本酵素の利用に関する。 海苔の味は、遊離糖類や有機酸の他、アミノ酸および核酸などの成分が関与し、特にグルタミン酸と5'-イノシン酸(イノシン酸)が大きく関わっていることが知られている(非特許文献1及び2)。さらに、多くの海苔が呈味的に飽和量のグルタミン酸量を常に含有していることから、イノシン酸量の高低が呈味性の良否を決定する最も重要な成分であることが明らかにされている(非特許文献3)。 イノシン酸は獣肉や魚肉のうま味成分として普通に見いだされる物質である一方、植物におけるイノシン酸の存在は極めてまれである。例えば、海産植物である海苔においても、定法である80%エタノール抽出法では、イノシン酸は検出されない。しかし、乾燥海苔や焼き海苔として、それらを温水処理した後、水抽出した場合には、イノシン酸が検出される(非特許文献3)。この場合、イノシン酸検出量は温度依存的であるが、水温が75℃以上では確認されないことから、イノシン酸は酵素的に温水抽出の過程で生成されていると考えられた(非特許文献3)。 このように海苔などの藻類においては、呈味性の重要な要素であるイノシン酸の生合成に関与する酵素の存在は示唆されてはいるものの、いまだ同定されていないのが現状である。 なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。Noda H、 Horiguchi Y、 Araki S、 1975、 Studies on the flavor substances of'Nori' the dried laver Porphyra spp. -II Free amino acids and 5'-nucleotides、 Bull Japanese Soc Sci Fish 41: 1299-1303.荒木繁、桜井武麿、泉野友香、高橋幸資、 1996、 乾海苔の5'イノシン酸とその酵素的生成、 Nippon Shokuhin Kagaku KogakuKaishi 43: 956-961.荒木繁、泉野友香、桜井武麿、高橋幸資、 1997、 温水抽出物による焼海苔の呈味性評価、 Nippon Shokuhin Kagaku KogakuKaishi 44: 430-437.Merkler、 DJ.、 Wali、 AS.、 Taylor、 J.、 and Schramm、 VL.、1989、 AMP deaminase from Yeast. Role in AMP degradation、 large scale purification、 and properties ofthe native and proteolyzed enzyme. J. Biol. Chem. 264: 21422-21430. 本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、藻類におけるイノシン酸の生合成に関与する酵素及びその遺伝子を同定し、単離することにある。さらなる、本発明の目的は、取得した酵素及びその遺伝子を利用して、植物の評価、育種を行い、ひいては呈味性などに優れた有用農作物などの開発を行うことにある。 上記したように、海苔においてイノシン酸は、エタノール抽出法を用いることでは検出されないが、乾燥海苔や焼き海苔から温水抽出することによって検出されるようになる。また、イノシン酸の生合成は、AMPデアミナーゼ(AMPD)によりAMP→IMP+NH3という反応で行われる。これら事実から、本発明者らは、海苔を咀嚼した場合、口中において、AMPDの働きによって新たにイノシン酸が生成され、これが海苔の呈味性に影響を与えていると推論するに至った。 この推論を前提とすると、AMPDの活性や酵素の存在量が海苔の呈味性の指標になる可能性があることから、本発明者らは、まず、海苔のAMPDの同定を試みた。そして、精製条件を種々検討し、創意工夫を行った結果、遂に、活性を保持したAMPDの精製標品を取得することに成功するに至った。さらに、本発明者らは、取得したAMPDの部分アミノ酸配列を決定し、その配列情報を基に作製したプライマーを利用したRACE法を実施するにより、AMPDをコードするDNAの取得にも成功した。さらに、本発明者らは、得られたDNAを基に、AMPDの組換え蛋白質を取得すると共に、その組換え蛋白質を利用してAMPDに対する抗体をも取得するに至った。 取得した海苔由来のAMPDの一次構造を分析したところ、これまで報告されていた植物、動物、菌類のAMPDとの相同性が低く、分子系統的な類縁性が高くないことが判明した(図3)。これまでAMPDに関しては、動物や菌類において遺伝子のクローニングが行われているほか、植物ではゲノムプロジェクトによりシロイズナズナとイネで遺伝子が同定されているにとどまり、海苔も含め藻類においては本酵素の取得はなされていなかった。その理由としては、AMPDの研究が、主に核酸代謝研究の一環として行われてきており(非特許文献4)、海苔においては、通常の状態では、イノシン酸が検出されなかったことから、AMPD遺伝子を取得しようという試みがほとんどなされていなかったことや、仮に試みられたとしても、公知のカウンターパート遺伝子との相同性の低さから(後述の表3参照のこと)、その取得が困難であったことが挙げられる。 本発明者らは、このような状況の下で、藻類において世界で初めてAMPDとその遺伝子の取得に成功すると共に、それらを利用して、植物の評価、育種を行い、ひいては呈味性などに優れた有用農作物などの開発を行うことが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、より具体的には、以下の<1>〜<17>を提供するものである。 <1> 藻類由来のAMPデアミナーゼをコードする下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域からなるDNA(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。 <2> AMPデアミナーゼが耐熱性である、<1>に記載のDNA。 <3> <1>または<2>に記載のDNAを含むベクター。 <4> <1>または<2>に記載のDNA、または<3>に記載のベクターが導入された形質転換細胞。 <5> <1>または<2>に記載のDNAによりコードされる蛋白質。 <6> <4>に記載の形質転換細胞を培養し、培養物または培養上清から<5>に記載の蛋白質を回収する工程を含む、<5>に記載の蛋白質の製造方法。 <7> <5>に記載の蛋白質に結合する抗体。 <8> <1>または<2>に記載のDNA、または<3>に記載のベクターが導入された植物細胞。 <9> <8>に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。 <10> <9>に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。 <11> <9>または<10>に記載の形質転換植物体の繁殖材料。 <12> <9>または<10>に記載の形質転換植物体または<11>に記載の繁殖材料を加工して製造された食品。 <13> <5>に記載の蛋白質が添加された食品。 <14> 藻類における<5>に記載の蛋白質の量を検出することを特徴とする、藻類を評価又は選別する方法。 <15> <5>に記載の蛋白質の量を、藻類の呈味性の指標とする、<14>に記載の方法。 <16> <7>に記載の抗体を有効成分とする、<5>に記載の蛋白質の検出試薬。 <17> 藻類の呈味性の評価に用いられる、<16>に記載の検出試薬。 本発明により海苔におけるAMPDとそれをコードする遺伝子が提供された。これにより、従来、官能試験で行われてきた海苔の呈味性の評価が、AMPDの定量化を利用することにより、簡便かつ客観的に行なうことが可能となった。また、このような「呈味性の数値化」を利用して、呈味性の高い海苔株の選別やスクリーニングを効率的に行なうことが可能となった。さらに、海苔の養殖において、得られた生産品の品質を、AMPDを指標に定量化することによって、病気、色落ちによる品質低下の評価を行うことも可能となり、それらに対する対策を迅速に講ずることも可能となった。さらに、本酵素やその遺伝子は、海苔自身や他の農産品などに添加あるいは導入することにより、呈味性の優れた新たな食品などの開発にも大きく貢献することができる。特に、海苔AMPDは、長期保存性や耐熱性に優れ、極めて安定な酵素であることから、様々な食品工学への応用に適しているといえる。 本発明は、藻類由来のAMPDをコードするDNAを提供する。本発明において「藻類」とは、酸素を発生する光合成をおこなう生物の中からコケ植物、シダ植物、および種子植物を除いたものを意味する(裳華房,バイオディバーシティ・シリーズ 3,藻類の多様性と系統,千原光雄 編)。本発明の藻類としては特に制限はないが、産業上への応用の観点から好ましい藻類としては、海苔、こんぶ、わかめ、ひじき、青海苔、あおさ、もずく、テングサ(寒天)、トサカノリ、ムカデノリ、海ブドウ、アカモクなどの食用とされているものや、クロレラやスピルリナなど健康食品に利用されているものを例示することができる。本発明においては、中でも海苔由来のDNAが最も好ましい。なお、本発明のDNAの一態様である、スサビノリ由来のAMPDをコードするcDNAの塩基配列を配列番号:1に、該DNAがコードする蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。スサビノリ由来のAMPDは、乾燥海苔や焼き海苔とした場合でも、失活せず、耐熱性を示す。このようにAMPDが耐熱性を示すことは、例えば、食品などへの加工や保存において有利である。従って、本発明のDNAは、好ましくは、耐熱性のAMPDをコードするものである。ここで「耐熱性」とは、180℃で10秒の熱処理、あるいは60℃で5分の処理をした場合でも、酵素活性が失活しないことを意味する(非特許文献2、Fisheries Science 66: 101-116, 2000.を参照のこと)。 本発明のDNAには、ゲノムDNA、cDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって公知の方法を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、藻類からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作製し、これを展開して、本発明のAMPDをコードするDNA(例えば、配列番号:1)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、本発明のAMPDをコードするDNA(例えば、配列番号:1)に特異的なプライマーを作製し、これを利用したPCRをおこなうことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、藻類から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAPなどのベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。 本発明は、配列番号:2に記載のスサビノリ由来のAMPDと機能的に同等なタンパク質をコードするDNAをも包含する。ここで「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、AMPデアミナーゼ活性を有することを指す。このようなDNAには、例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異体、誘導体、アレル、バリアントおよびホモログが含まれる。アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードするDNAを調製するための当業者によく知られた方法としては、例えば、部位特異的変異法が挙げられる。また、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは、自然界においても生じ得る。このように天然型のAMPDをコードするアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAであっても、機能的に同等なタンパク質をコードする限り、本発明のDNAに含まれる。また、たとえ、塩基配列が変異した場合でも、それがタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わない場合(縮重変異)もあり、このような縮重変異体も本発明のDNAに含まれる。このような変異体における、変異するアミノ酸数は、通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内)であると考えられる。変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが、その活性維持などの観点から望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。あるDNAがコードする蛋白質が、AMPデアミナーゼ活性を有するか否かは、例えば、実施例に記載のように、25℃下で、対象となる蛋白質を含む反応液(例えば、対象となる蛋白質、50 mM Tris-HCl、 100 mM CaCl2、 1 mM 2-MEを含む反応液)1 mLに、3 mM 5'-AMPを10μL添加し、265 nmにおける吸光度の経時変化を分光光度計(Shimazdu UV2200)で測定することで評価することができる。また、生成されるAMPD量をHPLCで定量することで活性を評価することも可能である(非特許文献2)。 配列番号:2に記載のAMPDと機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者にとっては、該AMPD遺伝子の塩基配列(配列番号:1)もしくはその一部をプローブとして、また該AMPD遺伝子(配列番号:1)に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、海苔や他の藻類から、それと高い相同性を有するDNAを単離することは通常行いうることである。このようにハイブリダイズ技術やPCR技術により単離しうる、配列番号:2に記載のAMPDと機能的に同等なタンパク質をコードするDNAもまた本発明のDNAに含まれる。 このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明においてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6M尿素、 0.4%SDS、0.5xSSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を指す。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件を用いることにより、より相同性の高いDNAの単離を期待することができる。これにより単離されたDNAは、アミノ酸レベルにおいて、スサビノリ由来のAMPDのアミノ酸配列(配列番号:2)と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を指す。アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268,1990.、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873,1993.)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(J Mol Biol 215: 403,1990.)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。 本発明のDNAは、例えば、組換えタンパク質の調製や、植物の評価、育種、あるいは呈味性などに優れた有用農作物などの開発に利用することが可能である。 組換えタンパク質を調製する場合には、通常、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して発現させたタンパク質を精製する。組換えタンパク質は、精製を容易にするなどの目的で、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法(米国New England BioLabs社発売のベクターpMALシリーズ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として調製する方法(Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクターpGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付加して調製する方法(Novagen社のpETシリーズ)などを利用することが可能である。宿主細胞としては、組換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、上記の大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法を用いることができる。宿主細胞内で発現させた組換えタンパク質は、該宿主細胞またはその培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することが可能である。組換えタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。また、後述する手法で、本発明のDNAが導入された形質転換植物体を作製し、該植物体から本発明のタンパク質を調製することも可能である。 得られた組換えタンパク質を用いれば、これに結合する抗体を調製することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、精製した本発明のタンパク質若しくはその一部のペプチドをウサギなどの免疫動物に免疫し、一定期間の後に血液を採取し、血餅を除去することにより調製することが可能である。また、モノクローナル抗体は、上記タンパク質若しくはペプチドで免疫した動物の抗体産生細胞と骨腫瘍細胞とを融合させ、目的とする抗体を産生する単一クローンの細胞(ハイブリドーマ)を単離し、該細胞から抗体を得ることにより調製することができる。これにより得られた抗体は、本発明のタンパク質の精製や検出などに利用することが可能である。本発明には、本発明のタンパク質に結合する抗体が含まれる。これらの抗体は、本発明のタンパク質を検出するための研究試薬として用いることができる他、後述するように、例えば、生物品種や食品の呈味性の評価、呈味性の優れた生物品種の育種において、呈味性の指標としてのAMPD蛋白質を検出する目的で用いることもできる。 本発明のDNAを利用して、藻類由来のAMPDを発現させた形質転換植物体を作製する場合には、例えば、本発明のDNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させる。これにより植物やその加工品たる食品における呈味性を改良することが可能である。ベクターとしては、植物細胞で転写可能なプロモーター配列と転写産物の安定化に必要なポリアデニレーション部位を含むターミネーター配列を含んでいれば特に制限されず、例えば、プラスミド「pBI121」、「pBI221」、「pBI101」(いずれもClontech社製)などが挙げられる。植物細胞の形質転換に用いられるベクターとしては、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーターを有するベクターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることも可能である。また、植物体全体で活性化するプロモーターのみならず、必要に応じて、植物の特定の組織に特異的に活性化するプロモーターを用いることも可能である。ここでいう「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。植物の種類に応じて、植物体作出のために、遺伝子導入を行うのに適した植物細胞の形態を選択し、利用すればよい。 本発明のタンパク質を発現させるためのプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、SV40プロモーター、GDPプロモーター、イネのアクチンプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーターなどが挙げられる。また、誘導的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現することが知られているプロモーターなどが挙げられる。具体的には、例えば、糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入によって発現するイネキチナーゼ遺伝子のプロモーターやタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター、低温によって誘導されるイネの「lip19」遺伝子のプロモーター、高温によって誘導されるイネの「hsp80」遺伝子と「hsp72」遺伝子のプロモーター、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナの「rab16」遺伝子のプロモーター、紫外線の照射によって誘導されるパセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロモーター、嫌気的条件で誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。また、イネキチナーゼ遺伝子のプロモーターとタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターはサリチル酸などの特定の化合物によって、「rab16」は植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。 本発明のベクターが導入される植物細胞としては特に制限はなく、例えば、藻類である海苔、こんぶ、わかめ、ひじき、青海苔、あおさ、もずく、テングサ(寒天)、トサカノリ、ムカデノリ、海ブドウ、アカモク、クロレラやスピルリナなどの細胞の他、イネ、シロイヌナズナ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコなどの細胞も例示することができる。本発明にかかる植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。植物細胞へのベクターの導入は、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など当業者に公知の種々の方法を用いることができる。形質転換された植物細胞は、再分化させることにより植物体を再生させることが可能である。 海苔における形質転換植物の作製技術としては、例えば、海苔プロトプラストに目的遺伝子とプロモーター(例えば、CamV35SプロモーターやSV40プロモーターなど)を組み込んだプラスミドをエレクトロポレーション法により導入し、相同組換えにより形質転換させる手法が公知である(J Appl Phycol 15:1-7,2003.、Aquacult Res, 38:681-688,2007.)また、褐藻類においては、例えば、破砕したマコンブの糸状配偶体細胞片にパーティクルガン法により、目的遺伝子とプロモーター(例えば、SV40プロモーター)を組み込んだプラスミドを導入する方法が知られている(Plant Cell Rep. 21:1211-1216, 2003.)。菌類においては、例えば、アガリスクを用いる手法が確立されている(Mol. Gen. Genet. 250: 252-258,1996.)。プロモーターとしては、例えば、GDPプロモーターを用い、目的遺伝子とプロモーターを組み込んだプラスミドをエレクトロポレーション法により導入することができる。枯草菌においては、例えば、B. subtilisの形質転換技術が確立されており、pHY300PLK(タカラバイオ)などの市販ベクターを利用することも可能である。その他の形質転換植物の作製技術としては、イネであればFujimuraら(Plant Tissue Culture Lett. 2:74,1995.)の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Bio/Technology 7:581,1989.)の方法やGorden-Kammら(Plant Cell 2:603,1990.)の方法が挙げられ、ジャガイモであればVisserら(Theor.Appl.Genet 78:594,1989.)の方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe(Planta 99:12,1971.)の方法が挙げられ、シロイヌナズナであればAkamaら(Plant Cell Reports12:7-11, 1992.)の方法が挙げられ、ユーカリであれば土肥ら(特開平8-89113号公報)の方法が挙げられる。 一旦、ゲノム内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、本発明のDNAが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、並びに該植物体、その子孫、およびクローンの繁殖材料が含まれる。 このようにして作出された形質転換植物体やそれを加工した食品においては、本発明のAMPDの作用により、咀嚼した場合、口中において、新たにイノシン酸が生成され、これにより呈味性が改良されうる。また、本発明のAMPDの精製標品を食品に添加することによっても、その食品の呈味性を改良しうる。本発明は、このようにして調製された食品をも提供するものである。 また、本発明は、本発明のAMPDを標的とした藻類の評価・選別の方法をも提供する。本発明のAMPDは、イノシン酸の生成により、呈味性に影響を与えうることから、藻類において内在する本発明のAMPDの量や活性を検出することにより、藻類の品質評価や優良品種の選別を行うことが可能である。従って、本発明の藻類の評価・選別の方法は、藻類におけるAMPDの量や活性を検出することを特徴とする方法である。蛋白質量の検出は、公知の手法、例えば、ELISA法、ウェスタンブロッティング法、ビアコア法などの手法により実施することができ、一方、蛋白質の活性の検出は、上記したAMPのデアミナーゼ活性の検出法により実施することができる。この結果、本発明の蛋白質の量や活性が高いと評価された個体は、通常の個体と比較して、咀嚼した場合、より多くのイノシン酸の生成が期待でき、これにより呈味性が改善されうる。このような個体を選別し、育種することにより、品種改良を行うことも可能である。本発明の蛋白質の量や活性は、このように、藻類の呈味性の指標として利用することができるが、本発明は、これに制限されず、本発明の蛋白質の量や活性が影響を与える、その他の種々の現象・表現型の指標として利用することをも含むものである。 このような評価・選別において本発明の蛋白質を検出するためには、本発明の蛋白質に結合する抗体を利用すると簡便である。即ち、本発明の抗体は、藻類の呈味性などの指標として、本発明の蛋白質を検出するための試薬として利用することができる。検出試薬として、本発明の抗体を利用する場合には、必要に応じて、抗体には、検出可能な種々の標識がなされていてもよい。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。 なお、実施例に用いる試料のスサビノリ(Porphyra yezoensis)は、山本海苔研究所((株)山本海苔店)より提供を受けた。精製に用いた藻体は採集後、氷冷状態で輸送し、実験に使用するまで-80℃で保存した。クローニングに用いた試料は、採集後、直ちに液体窒素で凍結し、その後-80℃フリーザーに移し、使用するまで保存した。また、本実施例における基本的な実験手法は次の通りである。 RNA抽出における、全ての操作はRNaseフリーで行い、使用した器具および試薬もRNaseフリーの処理を行った。藻体3gを液体窒素下で破砕し、45mLのAptバッファー(100 mM Tris-HCl pH=8.0、 1.5 M NaCl、 20 mM EDTA、 20 mM DTT、 2% CTAB、 Apt et al 1995)を添加し110 rpm x 15 min振とうした後、等量のクロロフォルムを添加し、voltexミキサーで撹拌した。遠心後(5000g x 30 min、 4℃)、上層を回収し1/3溶の95%エタノールを加え、遠心(5000g x 30 min、 4℃)した。得られた試料に等量のクロロフォルムを加え、激しく撹拌後、遠心により2相に分離させ、上層を回収した。この操作を上層から紅色がなくなるまで4度繰り返した。得られた試料に0.5溶の9M LiClおよび0.01溶の2-MEを加え撹拌し、-20℃で一晩保管した後、遠心し(20000g x 30 min)沈殿を得た。その後試料はRNA抽出キット(RNAgents Total RNA Isolation System、Promega)およびmRNA精製キット(PolyATtract mRNA Isolation Systems、Promega)を用い、添付のマニュアルに従い純化・精製した。 大腸菌の培養は、基本的にはLB培地を用い37℃でオバーナイトで培養し、実験によってはアンピシリン(50μg/mL)添加下で培養した。また寒天培養する場合は1.5%アガーを含む培地で行った。ライゲーションはTakara Ligation Kit V2.1 (タカラバイオ)を用いて行った。大腸菌からのプラスミドの抽出・精製は、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン)もしくはミニプレップ法により定法に従い行った。アガロースゲル電気泳動は泳動槽にミューピッド-2(アドバンス)、ゲルに1.0 %アガロース、泳動バッファーにTAEを用い定法に従い行った。泳動後のゲルは0.1 mg/Lのエチジウムブロマイド水溶液で染色し、バンドをUVライトで可視化した。アガロースゲルからの核酸の抽出はSuprec-EZ (タカラバイオ)を用いた。コロニー選別はブルーホワイトセレクションもしくはコロニーダイレクトPCR法により定法に従って行った。 <実施例1> AMPDの精製 全ての操作は4℃もしくは氷冷して行った。遠心分離は、12000gX10 minで行った。100gの藻体に200 mLのバッファーA(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 1 mM 2-メルカプトエタノール、 20 mM CaCl2)を加え自動乳鉢で破砕した後、ナイロンガーゼで残渣を除き、遠心分離(12、000 gX10 min)を行い上精を粗抽出液とした。粗抽出液を、45%-80%飽和の硫酸アンモニウムによって塩析後、沈殿を150 mLの抽出バッファーで溶解した。これをバッファーAに対して透析し、20%ポリエチレングリコール/15%硫酸アンモニウム処理(Phycol Res 53: 164-168,2005.)で生じた上精を回収後、バッファーAに対して再び透析した。その後、バッファーB(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 1 mM 2-メルカプトエタノール、 20 mM CaCl2、 10% ソルビトール)で平衡化した Blue Sepharose CL6Bカラム(2cm x 5 cm、 GEヘルスケア)に供し、バッファーBで洗浄後、2 M NaClを含むバッファーBで溶出した.活性のあるフラクションを回収し、バッファーBに対して透析した後、MonoQ HR5/5 (GEヘルスケア)を用いた陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。カラムは前もってバッファーBで平衡化し、試料の添加後に同バッファーで洗浄し、250 mM NaClを含むバッファーBを用いてグラディエント溶出した。活性のあるフラクションを回収し、バッファーBで平衡化したSuperdex HRカラム(GEヘルスケア)に添加し、バッファーBで溶出した後、活性画分を回収し、精製標品を得た(表1)。 なお、酵素活性は、25℃下で50 mM Tris-HCl、100 mM CaCl2、 1 mM 2-MEを含む反応液1 mLに、3 mM 5'-AMPを10μL添加し、265 nmにおける吸光度の経時変化を分光光度計(Shimazdu UV2200)で測定することで行った。 <実施例2> AMPDをコードするcDNAの単離と構造解析 精製標品をSDS-PAGE(%T=10%)に供した後、分離されたタンパク質を亜鉛染色により可視化し、当該バンドを切り出し、SDS-PAGEの泳動バッファーを用いて抽出した(Jpn. J. Phycol. 52 (Supplement): 95-100,2004)。得られた試料を限外ろ過により濃縮後(ミリポア、Centricon YM-10)、試料70μgにリシルエンドペプチターゼ20 ngを加え、37℃で13 hインキュベートし、SDS-PAGE (%T=15%)により断片を分離した後、PVDF膜に転写した(J. Biol. Chem. 280: 18462-18468,2004.)。転写されたタンパク質断片はCBBにより可視化し、当該のバンドを切り出し、エドマン分解によりそのN末端アミノ酸配列を分析した(model 477A、 Applied Biosystem、Caloglossa continua (Ceramiales、Rhodophyta). Mar. Biotechnol. 3: 493-500,2001.)。その結果を図1に示す。 この内部アミノ酸配列をデーターベース(Porphyra yezoensis EST index、かずさDNA研究所)で検索し、得られた部分的核酸配列を利用して、RACE法によりcDNAの全長配列を取得した。RACE法は、具体的には、5'-RACEおよび3'-RACEの試料として精製したmRNAを、特異的プライマーとして5'-RACE用にプライマーR1、3'-RACE用にプライマーleftを使用して(表2、図2)、それぞれSMART RACE cDNA Amplification Kit (Clontech)およびRNA LA PCR Kit (AMV) Ver 1.1 (タカラバイオ)を用いて行った。 これにより増幅した遺伝子断片を、pGEM-T and pGEM-T Easy Vector Systems (プロメガ)を用いてpGEM-T Easyベクターに導入することで、クローニングを行った。シーケンシングは、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)および、DNA sequencer model 310もしくはmodel 3130 (Applied Biosystems)を用いて行った。 その結果、スサビノリのAMPD遺伝子は、522アミノ酸数アミノ酸からなる蛋白質をコードしていることが判明した。決定されたスサビノリのAMPDをコードするcDNAの塩基配列を配列番号:1に、該cDNAがコードする蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。スサビノリのAMPDと公知のAMPD(ヒト、酵母、シロイヌナズナ、イネ)とを比較したところ、その類似性は低かった(表3)。 このため、blastサーチでは、塩基配列では有意に類似する遺伝子は見つからなかった。タンパク質配列においても全体的に類似する遺伝子は見つからなかったが、配列の終盤部分においてのみ、Pseudoalteromonasのアデノシンデアミナーゼに、相似の配列がサーチされた(Expect = 3e-24、 Identities = 52/135 (38%)、 Positives = 79/135 (58%))。この部分は保存領域としてアデノシンデアミナーゼ(ADA(cd01320、 pfam、eularyota、 4e-29))の他、アデノシン/AMPデアミナーゼ(ADA_AMPD(cd00443、 pfam、 eukaryota、 2e-28))および、 AMPデアミナーゼ(AMPD(cd01319、 pfam、 eukaryota、2e-12))と類似性が示された。しかし、植物、動物、菌類で明らかになっているAMPD間での分子系統解析をMEGA4 (Molecular Biology and Evolution 24:1596-1599,2007.)を用いて行ったところ、本タンパク質はそれらとは類縁性が高くないことが分かった(図3)。さらには、AMPDのモチーフ配列である [SA]-[LIVM]-[NGS]-[STA]-D-D-Pの最後のアミノ酸(P)が、本タンパク質では「E」に変化していることから、新規の型のAMPDであると考えられた。 <実施例3> 組換え蛋白質と抗体の作製 AMPDの25番目のアミノ酸から最終アミノ酸までに相当する遺伝子を、3'-RACE用に逆転写したDNAを鋳型として5'-末端にBam HI切断領域を3'-末端にXba I切断領域を付加したプライマー(それぞれプライマーleft_Bamおよびプライマーright_Xba(表4)を用いて増幅し、pGEM-T Easyベクターを用いての増幅を経て、最終的にpCold IIベクター(タカラバイオ)に組み込んだ後、マニュアルに従い組換えタンパク質の発現を行った。 発現したタンパク質はNi-NTA Spin Kit(キアゲン)により精製した。精製した蛋白質は、ラピダス・ミニスラブ電気泳動槽(AE-6500型、アトー)を用い、定法に従い、SDS-PAGEを行い、泳動後のゲルを、CBBもしくは亜鉛染色により染色し、タンパク質のバンドを可視化した(Jpn. J. Phycol. 52 (Supplement): 95-100,2004.)。その結果、アミノ酸配列から推定された分子量の位置にバンドが検出された(図4)。 抗体作製は、抗原となるタンパク質をSDS-PAGE後、CBB染色を行い当該バンドを切り出すことで純化し、マウスの皮下に注入することで行った。初期免疫としては抗原をアジュバントコンプリートと混和したが、その後はアジュバントインコンプリートと混和し注入を行った。注入は一週間間隔で、合計8回行った。血液は採取後、室温で1hインキュベートした後、遠心(12000g x 15 min)し、上精を血清として回収した。 これにより得られた抗体と組換え蛋白質との反応性をウェスタンブロッティングにより確認した。具体的には、タンパク質をSDS-PAGE後、ミニトランスブロットセル(バイオラッド)を用いてPVDF膜に転写して行った。免疫染色は二次抗体にアルカリホスファターゼ結合ウサギ抗マウスIgG抗体を用い、AP発色キット(バイオラッド)で発色することで行った。その結果、得られた抗体は、組換え蛋白質に特異的に結合していた(図4)。 従来、海苔の呈味は官能試験で行われてきたが、AMPDの定量化を利用することにより、「呈味その数値化(定量化)」が可能になり、(1)呈味性の高い海苔株の選別やスクリーニングを容易に行うためのツールとして利用可能となる、(2)海苔の養殖において、得られた生産品の品質を定量化することによって、病気、色落ちによる品質低下の定量的評価などを可能とし、それらに対する対策を迅速に講ずることに利用可能であるなど、産業的価値は非常に高い。また、本酵素の遺伝子を海苔自身や他の農産品に導入し、呈味性の優れた食品を開発することにもつながる。さらには、海苔AMPDは長期の保存や焼海苔でも活性が保持されるなど極めて安定な酵素であることから、様々な食品工学への応用も可能であると考えられる。図1は、海苔AMPデアミナーゼのリシルエンドペプチダーゼによる制限的分解を示す電気泳動結果と、得られたペプチドのN末端アミノ酸配列を示す図面である。小文字で表されたアミノ酸は信頼度が低い。図2は、海苔AMPデアミナーゼクローニングおよび配列決定に用いられたプライマーを示す図である。図3は、動物(ヒト、AMPD1_Human P23109、 AMPD2 HUMAN Q01432、 AMPD3 HUMAN Q01432)、 植物(イネ、ORYSJ Q84NP7、シロイズナズナ、ARATH O80452)、菌類(イースト、YEAST P15274)およびノリのAMPDの分子系統樹を示す図である。図4は、抗AMPデアミナーゼマウス血清の反応性を示す電気泳動写真である。P. yezoensisAMPDの精製タンパク質(MonoQ後、purifiedAMPD)、 P. yezoensis の粗抽出液(crude)およびそれらを混合したもの(crude+puri)に対して、血清をそれぞれ1/500 (A)、 1/5000 (B)、 1/50000 (C)に希釈し、免疫染色を行った。図中の「CBB」は、CBB染色を、「PSM」は、プレステインドマーカーを、「LMW」は、分子量マーカーを示す。 藻類由来のAMPデアミナーゼをコードする下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域からなるDNA(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA AMPデアミナーゼが耐熱性である、請求項1に記載のDNA。 請求項1または2に記載のDNAを含むベクター。 請求項1または2に記載のDNA、または請求項3に記載のベクターが導入された形質転換細胞。 請求項1または2に記載のDNAによりコードされる蛋白質。 請求項4に記載の形質転換細胞を培養し、培養物または培養上清から請求項5に記載の蛋白質を回収する工程を含む、請求項5に記載の蛋白質の製造方法。 請求項5に記載の蛋白質に結合する抗体。 請求項1または2に記載のDNA、または請求項3に記載のベクターが導入された植物細胞。 請求項8に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。 請求項9に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。 請求項9または10に記載の形質転換植物体の繁殖材料。 請求項9または10に記載の形質転換植物体または請求項11に記載の繁殖材料を加工して製造された食品。 請求項5に記載の蛋白質が添加された食品。 藻類における請求項5に記載の蛋白質の量を検出することを特徴とする、藻類を評価又は選別する方法。 請求項5に記載の蛋白質の量を、藻類の呈味性の指標とする、請求項14に記載の方法。 請求項7に記載の抗体を有効成分とする、請求項5に記載の蛋白質の検出試薬。 藻類の呈味性の評価に用いられる、請求項16に記載の検出試薬。 【課題】藻類におけるイノシン酸の生合成に関与する酵素及びその遺伝子の同定・単離、並びに、それらを利用した植物の評価、育種、および呈味性などに優れた有用農作物、食品の開発。【解決手段】海苔のAMPDに着目し、その精製を試みた結果、活性を保持したAMPDの取得に成功した。さらに、AMPDをコードするDNA、AMPDの組換え蛋白質、AMPDに対する抗体の取得にも成功した。【選択図】なし配列表


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特許公報(B2)_藻類由来のAMPデアミナーゼ

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_藻類由来のAMPデアミナーゼ
出願番号:2008029481
年次:2013
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12N 9/78,C07K 16/40,A01H 5/00,A23L 1/305,C12Q 1/34,G01N 33/53


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白岩 善博 岩本 浩二 南 誓子 JP 5311537 特許公報(B2) 20130712 2008029481 20080208 藻類由来のAMPデアミナーゼ 国立大学法人 筑波大学 504171134 特許業務法人セントクレスト国際特許事務所 110001047 長濱 範明 100107191 白岩 善博 岩本 浩二 南 誓子 20131009 C12N 15/09 20060101AFI20130919BHJP C12N 1/15 20060101ALI20130919BHJP C12N 1/19 20060101ALI20130919BHJP C12N 1/21 20060101ALI20130919BHJP C12N 5/10 20060101ALI20130919BHJP C12N 9/78 20060101ALI20130919BHJP C07K 16/40 20060101ALI20130919BHJP A01H 5/00 20060101ALI20130919BHJP A23L 1/305 20060101ALI20130919BHJP C12Q 1/34 20060101ALI20130919BHJP G01N 33/53 20060101ALI20130919BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 102C12N5/00 103C12N9/78C07K16/40A01H5/00 AA23L1/305C12Q1/34G01N33/53 D C12N 15/55 − 15/59 C12N 9/78 − 9/86 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq PubMed WPI 特開2006−025688(JP,A) 日本食品科学工学会誌,1996年,Vol.43, No.8,p.956-961 Fisheries Science,2000年,Vol.66, No.1,p.110-116 DNA Res.,2000年,Vol.7,p.223-227 17 2009183254 20090820 20 20110131 上條 肇 本発明は、藻類由来のAMPデアミナーゼおよびその利用に関し、特に呈味性の優れた食品開発などへの本酵素の利用に関する。 海苔の味は、遊離糖類や有機酸の他、アミノ酸および核酸などの成分が関与し、特にグルタミン酸と5'-イノシン酸(イノシン酸)が大きく関わっていることが知られている(非特許文献1及び2)。さらに、多くの海苔が呈味的に飽和量のグルタミン酸量を常に含有していることから、イノシン酸量の高低が呈味性の良否を決定する最も重要な成分であることが明らかにされている(非特許文献3)。 イノシン酸は獣肉や魚肉のうま味成分として普通に見いだされる物質である一方、植物におけるイノシン酸の存在は極めてまれである。例えば、海産植物である海苔においても、定法である80%エタノール抽出法では、イノシン酸は検出されない。しかし、乾燥海苔や焼き海苔として、それらを温水処理した後、水抽出した場合には、イノシン酸が検出される(非特許文献3)。この場合、イノシン酸検出量は温度依存的であるが、水温が75℃以上では確認されないことから、イノシン酸は酵素的に温水抽出の過程で生成されていると考えられた(非特許文献3)。 このように海苔などの藻類においては、呈味性の重要な要素であるイノシン酸の生合成に関与する酵素の存在は示唆されてはいるものの、いまだ同定されていないのが現状である。 なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。Noda H、 Horiguchi Y、 Araki S、 1975、 Studies on the flavor substances of'Nori' the dried laver Porphyra spp. -II Free amino acids and 5'-nucleotides、 Bull Japanese Soc Sci Fish 41: 1299-1303.荒木繁、桜井武麿、泉野友香、高橋幸資、 1996、 乾海苔の5'イノシン酸とその酵素的生成、 Nippon Shokuhin Kagaku KogakuKaishi 43: 956-961.荒木繁、泉野友香、桜井武麿、高橋幸資、 1997、 温水抽出物による焼海苔の呈味性評価、 Nippon Shokuhin Kagaku KogakuKaishi 44: 430-437.Merkler、 DJ.、 Wali、 AS.、 Taylor、 J.、 and Schramm、 VL.、1989、 AMP deaminase from Yeast. Role in AMP degradation、 large scale purification、 and properties ofthe native and proteolyzed enzyme. J. Biol. Chem. 264: 21422-21430. 本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、藻類におけるイノシン酸の生合成に関与する酵素及びその遺伝子を同定し、単離することにある。さらなる、本発明の目的は、取得した酵素及びその遺伝子を利用して、植物の評価、育種を行い、ひいては呈味性などに優れた有用農作物などの開発を行うことにある。 上記したように、海苔においてイノシン酸は、エタノール抽出法を用いることでは検出されないが、乾燥海苔や焼き海苔から温水抽出することによって検出されるようになる。また、イノシン酸の生合成は、AMPデアミナーゼ(AMPD)によりAMP→IMP+NH3という反応で行われる。これら事実から、本発明者らは、海苔を咀嚼した場合、口中において、AMPDの働きによって新たにイノシン酸が生成され、これが海苔の呈味性に影響を与えていると推論するに至った。 この推論を前提とすると、AMPDの活性や酵素の存在量が海苔の呈味性の指標になる可能性があることから、本発明者らは、まず、海苔のAMPDの同定を試みた。そして、精製条件を種々検討し、創意工夫を行った結果、遂に、活性を保持したAMPDの精製標品を取得することに成功するに至った。さらに、本発明者らは、取得したAMPDの部分アミノ酸配列を決定し、その配列情報を基に作製したプライマーを利用したRACE法を実施するにより、AMPDをコードするDNAの取得にも成功した。さらに、本発明者らは、得られたDNAを基に、AMPDの組換え蛋白質を取得すると共に、その組換え蛋白質を利用してAMPDに対する抗体をも取得するに至った。 取得した海苔由来のAMPDの一次構造を分析したところ、これまで報告されていた植物、動物、菌類のAMPDとの相同性が低く、分子系統的な類縁性が高くないことが判明した(図3)。これまでAMPDに関しては、動物や菌類において遺伝子のクローニングが行われているほか、植物ではゲノムプロジェクトによりシロイズナズナとイネで遺伝子が同定されているにとどまり、海苔も含め藻類においては本酵素の取得はなされていなかった。その理由としては、AMPDの研究が、主に核酸代謝研究の一環として行われてきており(非特許文献4)、海苔においては、通常の状態では、イノシン酸が検出されなかったことから、AMPD遺伝子を取得しようという試みがほとんどなされていなかったことや、仮に試みられたとしても、公知のカウンターパート遺伝子との相同性の低さから(後述の表3参照のこと)、その取得が困難であったことが挙げられる。 本発明者らは、このような状況の下で、藻類において世界で初めてAMPDとその遺伝子の取得に成功すると共に、それらを利用して、植物の評価、育種を行い、ひいては呈味性などに優れた有用農作物などの開発を行うことが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、より具体的には、以下の<1>〜<17>を提供するものである。 <1> 藻類由来のAMPデアミナーゼをコードする下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域からなるDNA(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。 <2> AMPデアミナーゼが耐熱性である、<1>に記載のDNA。 <3> <1>または<2>に記載のDNAを含むベクター。 <4> <1>または<2>に記載のDNA、または<3>に記載のベクターが導入された形質転換細胞。 <5> <1>または<2>に記載のDNAによりコードされる蛋白質。 <6> <4>に記載の形質転換細胞を培養し、培養物または培養上清から<5>に記載の蛋白質を回収する工程を含む、<5>に記載の蛋白質の製造方法。 <7> <5>に記載の蛋白質に結合する抗体。 <8> <1>または<2>に記載のDNA、または<3>に記載のベクターが導入された植物細胞。 <9> <8>に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。 <10> <9>に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。 <11> <9>または<10>に記載の形質転換植物体の繁殖材料。 <12> <9>または<10>に記載の形質転換植物体または<11>に記載の繁殖材料を加工して製造された食品。 <13> <5>に記載の蛋白質が添加された食品。 <14> 藻類における<5>に記載の蛋白質の量を検出することを特徴とする、藻類を評価又は選別する方法。 <15> <5>に記載の蛋白質の量を、藻類の呈味性の指標とする、<14>に記載の方法。 <16> <7>に記載の抗体を有効成分とする、<5>に記載の蛋白質の検出試薬。 <17> 藻類の呈味性の評価に用いられる、<16>に記載の検出試薬。 本発明により海苔におけるAMPDとそれをコードする遺伝子が提供された。これにより、従来、官能試験で行われてきた海苔の呈味性の評価が、AMPDの定量化を利用することにより、簡便かつ客観的に行なうことが可能となった。また、このような「呈味性の数値化」を利用して、呈味性の高い海苔株の選別やスクリーニングを効率的に行なうことが可能となった。さらに、海苔の養殖において、得られた生産品の品質を、AMPDを指標に定量化することによって、病気、色落ちによる品質低下の評価を行うことも可能となり、それらに対する対策を迅速に講ずることも可能となった。さらに、本酵素やその遺伝子は、海苔自身や他の農産品などに添加あるいは導入することにより、呈味性の優れた新たな食品などの開発にも大きく貢献することができる。特に、海苔AMPDは、長期保存性や耐熱性に優れ、極めて安定な酵素であることから、様々な食品工学への応用に適しているといえる。 本発明は、藻類由来のAMPDをコードするDNAを提供する。本発明において「藻類」とは、酸素を発生する光合成をおこなう生物の中からコケ植物、シダ植物、および種子植物を除いたものを意味する(裳華房,バイオディバーシティ・シリーズ 3,藻類の多様性と系統,千原光雄 編)。本発明の藻類としては特に制限はないが、産業上への応用の観点から好ましい藻類としては、海苔、こんぶ、わかめ、ひじき、青海苔、あおさ、もずく、テングサ(寒天)、トサカノリ、ムカデノリ、海ブドウ、アカモクなどの食用とされているものや、クロレラやスピルリナなど健康食品に利用されているものを例示することができる。本発明においては、中でも海苔由来のDNAが最も好ましい。なお、本発明のDNAの一態様である、スサビノリ由来のAMPDをコードするcDNAの塩基配列を配列番号:1に、該DNAがコードする蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。スサビノリ由来のAMPDは、乾燥海苔や焼き海苔とした場合でも、失活せず、耐熱性を示す。このようにAMPDが耐熱性を示すことは、例えば、食品などへの加工や保存において有利である。従って、本発明のDNAは、好ましくは、耐熱性のAMPDをコードするものである。ここで「耐熱性」とは、180℃で10秒の熱処理、あるいは60℃で5分の処理をした場合でも、酵素活性が失活しないことを意味する(非特許文献2、Fisheries Science 66: 101-116, 2000.を参照のこと)。 本発明のDNAには、ゲノムDNA、cDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって公知の方法を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、藻類からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作製し、これを展開して、本発明のAMPDをコードするDNA(例えば、配列番号:1)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、本発明のAMPDをコードするDNA(例えば、配列番号:1)に特異的なプライマーを作製し、これを利用したPCRをおこなうことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、藻類から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAPなどのベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。 本発明は、配列番号:2に記載のスサビノリ由来のAMPDと機能的に同等なタンパク質をコードするDNAをも包含する。ここで「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、AMPデアミナーゼ活性を有することを指す。このようなDNAには、例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異体、誘導体、アレル、バリアントおよびホモログが含まれる。アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードするDNAを調製するための当業者によく知られた方法としては、例えば、部位特異的変異法が挙げられる。また、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは、自然界においても生じ得る。このように天然型のAMPDをコードするアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAであっても、機能的に同等なタンパク質をコードする限り、本発明のDNAに含まれる。また、たとえ、塩基配列が変異した場合でも、それがタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わない場合(縮重変異)もあり、このような縮重変異体も本発明のDNAに含まれる。このような変異体における、変異するアミノ酸数は、通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内)であると考えられる。変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが、その活性維持などの観点から望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。あるDNAがコードする蛋白質が、AMPデアミナーゼ活性を有するか否かは、例えば、実施例に記載のように、25℃下で、対象となる蛋白質を含む反応液(例えば、対象となる蛋白質、50 mM Tris-HCl、 100 mM CaCl2、 1 mM 2-MEを含む反応液)1 mLに、3 mM 5'-AMPを10μL添加し、265 nmにおける吸光度の経時変化を分光光度計(Shimazdu UV2200)で測定することで評価することができる。また、生成されるAMPD量をHPLCで定量することで活性を評価することも可能である(非特許文献2)。 配列番号:2に記載のAMPDと機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者にとっては、該AMPD遺伝子の塩基配列(配列番号:1)もしくはその一部をプローブとして、また該AMPD遺伝子(配列番号:1)に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、海苔や他の藻類から、それと高い相同性を有するDNAを単離することは通常行いうることである。このようにハイブリダイズ技術やPCR技術により単離しうる、配列番号:2に記載のAMPDと機能的に同等なタンパク質をコードするDNAもまた本発明のDNAに含まれる。 このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明においてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6M尿素、 0.4%SDS、0.5xSSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を指す。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件を用いることにより、より相同性の高いDNAの単離を期待することができる。これにより単離されたDNAは、アミノ酸レベルにおいて、スサビノリ由来のAMPDのアミノ酸配列(配列番号:2)と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を指す。アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268,1990.、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873,1993.)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(J Mol Biol 215: 403,1990.)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。 本発明のDNAは、例えば、組換えタンパク質の調製や、植物の評価、育種、あるいは呈味性などに優れた有用農作物などの開発に利用することが可能である。 組換えタンパク質を調製する場合には、通常、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して発現させたタンパク質を精製する。組換えタンパク質は、精製を容易にするなどの目的で、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法(米国New England BioLabs社発売のベクターpMALシリーズ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として調製する方法(Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクターpGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付加して調製する方法(Novagen社のpETシリーズ)などを利用することが可能である。宿主細胞としては、組換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、上記の大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法を用いることができる。宿主細胞内で発現させた組換えタンパク質は、該宿主細胞またはその培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することが可能である。組換えタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。また、後述する手法で、本発明のDNAが導入された形質転換植物体を作製し、該植物体から本発明のタンパク質を調製することも可能である。 得られた組換えタンパク質を用いれば、これに結合する抗体を調製することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、精製した本発明のタンパク質若しくはその一部のペプチドをウサギなどの免疫動物に免疫し、一定期間の後に血液を採取し、血餅を除去することにより調製することが可能である。また、モノクローナル抗体は、上記タンパク質若しくはペプチドで免疫した動物の抗体産生細胞と骨腫瘍細胞とを融合させ、目的とする抗体を産生する単一クローンの細胞(ハイブリドーマ)を単離し、該細胞から抗体を得ることにより調製することができる。これにより得られた抗体は、本発明のタンパク質の精製や検出などに利用することが可能である。本発明には、本発明のタンパク質に結合する抗体が含まれる。これらの抗体は、本発明のタンパク質を検出するための研究試薬として用いることができる他、後述するように、例えば、生物品種や食品の呈味性の評価、呈味性の優れた生物品種の育種において、呈味性の指標としてのAMPD蛋白質を検出する目的で用いることもできる。 本発明のDNAを利用して、藻類由来のAMPDを発現させた形質転換植物体を作製する場合には、例えば、本発明のDNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させる。これにより植物やその加工品たる食品における呈味性を改良することが可能である。ベクターとしては、植物細胞で転写可能なプロモーター配列と転写産物の安定化に必要なポリアデニレーション部位を含むターミネーター配列を含んでいれば特に制限されず、例えば、プラスミド「pBI121」、「pBI221」、「pBI101」(いずれもClontech社製)などが挙げられる。植物細胞の形質転換に用いられるベクターとしては、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーターを有するベクターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることも可能である。また、植物体全体で活性化するプロモーターのみならず、必要に応じて、植物の特定の組織に特異的に活性化するプロモーターを用いることも可能である。ここでいう「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。植物の種類に応じて、植物体作出のために、遺伝子導入を行うのに適した植物細胞の形態を選択し、利用すればよい。 本発明のタンパク質を発現させるためのプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、SV40プロモーター、GDPプロモーター、イネのアクチンプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーターなどが挙げられる。また、誘導的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現することが知られているプロモーターなどが挙げられる。具体的には、例えば、糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入によって発現するイネキチナーゼ遺伝子のプロモーターやタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター、低温によって誘導されるイネの「lip19」遺伝子のプロモーター、高温によって誘導されるイネの「hsp80」遺伝子と「hsp72」遺伝子のプロモーター、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナの「rab16」遺伝子のプロモーター、紫外線の照射によって誘導されるパセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロモーター、嫌気的条件で誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。また、イネキチナーゼ遺伝子のプロモーターとタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターはサリチル酸などの特定の化合物によって、「rab16」は植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。 本発明のベクターが導入される植物細胞としては特に制限はなく、例えば、藻類である海苔、こんぶ、わかめ、ひじき、青海苔、あおさ、もずく、テングサ(寒天)、トサカノリ、ムカデノリ、海ブドウ、アカモク、クロレラやスピルリナなどの細胞の他、イネ、シロイヌナズナ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコなどの細胞も例示することができる。本発明にかかる植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。植物細胞へのベクターの導入は、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など当業者に公知の種々の方法を用いることができる。形質転換された植物細胞は、再分化させることにより植物体を再生させることが可能である。 海苔における形質転換植物の作製技術としては、例えば、海苔プロトプラストに目的遺伝子とプロモーター(例えば、CamV35SプロモーターやSV40プロモーターなど)を組み込んだプラスミドをエレクトロポレーション法により導入し、相同組換えにより形質転換させる手法が公知である(J Appl Phycol 15:1-7,2003.、Aquacult Res, 38:681-688,2007.)また、褐藻類においては、例えば、破砕したマコンブの糸状配偶体細胞片にパーティクルガン法により、目的遺伝子とプロモーター(例えば、SV40プロモーター)を組み込んだプラスミドを導入する方法が知られている(Plant Cell Rep. 21:1211-1216, 2003.)。菌類においては、例えば、アガリスクを用いる手法が確立されている(Mol. Gen. Genet. 250: 252-258,1996.)。プロモーターとしては、例えば、GDPプロモーターを用い、目的遺伝子とプロモーターを組み込んだプラスミドをエレクトロポレーション法により導入することができる。枯草菌においては、例えば、B. subtilisの形質転換技術が確立されており、pHY300PLK(タカラバイオ)などの市販ベクターを利用することも可能である。その他の形質転換植物の作製技術としては、イネであればFujimuraら(Plant Tissue Culture Lett. 2:74,1995.)の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Bio/Technology 7:581,1989.)の方法やGorden-Kammら(Plant Cell 2:603,1990.)の方法が挙げられ、ジャガイモであればVisserら(Theor.Appl.Genet 78:594,1989.)の方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe(Planta 99:12,1971.)の方法が挙げられ、シロイヌナズナであればAkamaら(Plant Cell Reports12:7-11, 1992.)の方法が挙げられ、ユーカリであれば土肥ら(特開平8-89113号公報)の方法が挙げられる。 一旦、ゲノム内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、本発明のDNAが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、並びに該植物体、その子孫、およびクローンの繁殖材料が含まれる。 このようにして作出された形質転換植物体やそれを加工した食品においては、本発明のAMPDの作用により、咀嚼した場合、口中において、新たにイノシン酸が生成され、これにより呈味性が改良されうる。また、本発明のAMPDの精製標品を食品に添加することによっても、その食品の呈味性を改良しうる。本発明は、このようにして調製された食品をも提供するものである。 また、本発明は、本発明のAMPDを標的とした藻類の評価・選別の方法をも提供する。本発明のAMPDは、イノシン酸の生成により、呈味性に影響を与えうることから、藻類において内在する本発明のAMPDの量や活性を検出することにより、藻類の品質評価や優良品種の選別を行うことが可能である。従って、本発明の藻類の評価・選別の方法は、藻類におけるAMPDの量や活性を検出することを特徴とする方法である。蛋白質量の検出は、公知の手法、例えば、ELISA法、ウェスタンブロッティング法、ビアコア法などの手法により実施することができ、一方、蛋白質の活性の検出は、上記したAMPのデアミナーゼ活性の検出法により実施することができる。この結果、本発明の蛋白質の量や活性が高いと評価された個体は、通常の個体と比較して、咀嚼した場合、より多くのイノシン酸の生成が期待でき、これにより呈味性が改善されうる。このような個体を選別し、育種することにより、品種改良を行うことも可能である。本発明の蛋白質の量や活性は、このように、藻類の呈味性の指標として利用することができるが、本発明は、これに制限されず、本発明の蛋白質の量や活性が影響を与える、その他の種々の現象・表現型の指標として利用することをも含むものである。 このような評価・選別において本発明の蛋白質を検出するためには、本発明の蛋白質に結合する抗体を利用すると簡便である。即ち、本発明の抗体は、藻類の呈味性などの指標として、本発明の蛋白質を検出するための試薬として利用することができる。検出試薬として、本発明の抗体を利用する場合には、必要に応じて、抗体には、検出可能な種々の標識がなされていてもよい。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。 なお、実施例に用いる試料のスサビノリ(Porphyra yezoensis)は、山本海苔研究所((株)山本海苔店)より提供を受けた。精製に用いた藻体は採集後、氷冷状態で輸送し、実験に使用するまで-80℃で保存した。クローニングに用いた試料は、採集後、直ちに液体窒素で凍結し、その後-80℃フリーザーに移し、使用するまで保存した。また、本実施例における基本的な実験手法は次の通りである。 RNA抽出における、全ての操作はRNaseフリーで行い、使用した器具および試薬もRNaseフリーの処理を行った。藻体3gを液体窒素下で破砕し、45mLのAptバッファー(100 mM Tris-HCl pH=8.0、 1.5 M NaCl、 20 mM EDTA、 20 mM DTT、 2% CTAB、 Apt et al 1995)を添加し110 rpm x 15 min振とうした後、等量のクロロフォルムを添加し、voltexミキサーで撹拌した。遠心後(5000g x 30 min、 4℃)、上層を回収し1/3溶の95%エタノールを加え、遠心(5000g x 30 min、 4℃)した。得られた試料に等量のクロロフォルムを加え、激しく撹拌後、遠心により2相に分離させ、上層を回収した。この操作を上層から紅色がなくなるまで4度繰り返した。得られた試料に0.5溶の9M LiClおよび0.01溶の2-MEを加え撹拌し、-20℃で一晩保管した後、遠心し(20000g x 30 min)沈殿を得た。その後試料はRNA抽出キット(RNAgents Total RNA Isolation System、Promega)およびmRNA精製キット(PolyATtract mRNA Isolation Systems、Promega)を用い、添付のマニュアルに従い純化・精製した。 大腸菌の培養は、基本的にはLB培地を用い37℃でオバーナイトで培養し、実験によってはアンピシリン(50μg/mL)添加下で培養した。また寒天培養する場合は1.5%アガーを含む培地で行った。ライゲーションはTakara Ligation Kit V2.1 (タカラバイオ)を用いて行った。大腸菌からのプラスミドの抽出・精製は、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン)もしくはミニプレップ法により定法に従い行った。アガロースゲル電気泳動は泳動槽にミューピッド-2(アドバンス)、ゲルに1.0 %アガロース、泳動バッファーにTAEを用い定法に従い行った。泳動後のゲルは0.1 mg/Lのエチジウムブロマイド水溶液で染色し、バンドをUVライトで可視化した。アガロースゲルからの核酸の抽出はSuprec-EZ (タカラバイオ)を用いた。コロニー選別はブルーホワイトセレクションもしくはコロニーダイレクトPCR法により定法に従って行った。 <実施例1> AMPDの精製 全ての操作は4℃もしくは氷冷して行った。遠心分離は、12000gX10 minで行った。100gの藻体に200 mLのバッファーA(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 1 mM 2-メルカプトエタノール、 20 mM CaCl2)を加え自動乳鉢で破砕した後、ナイロンガーゼで残渣を除き、遠心分離(12、000 gX10 min)を行い上精を粗抽出液とした。粗抽出液を、45%-80%飽和の硫酸アンモニウムによって塩析後、沈殿を150 mLの抽出バッファーで溶解した。これをバッファーAに対して透析し、20%ポリエチレングリコール/15%硫酸アンモニウム処理(Phycol Res 53: 164-168,2005.)で生じた上精を回収後、バッファーAに対して再び透析した。その後、バッファーB(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 1 mM 2-メルカプトエタノール、 20 mM CaCl2、 10% ソルビトール)で平衡化した Blue Sepharose CL6Bカラム(2cm x 5 cm、 GEヘルスケア)に供し、バッファーBで洗浄後、2 M NaClを含むバッファーBで溶出した.活性のあるフラクションを回収し、バッファーBに対して透析した後、MonoQ HR5/5 (GEヘルスケア)を用いた陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。カラムは前もってバッファーBで平衡化し、試料の添加後に同バッファーで洗浄し、250 mM NaClを含むバッファーBを用いてグラディエント溶出した。活性のあるフラクションを回収し、バッファーBで平衡化したSuperdex HRカラム(GEヘルスケア)に添加し、バッファーBで溶出した後、活性画分を回収し、精製標品を得た(表1)。 なお、酵素活性は、25℃下で50 mM Tris-HCl、100 mM CaCl2、 1 mM 2-MEを含む反応液1 mLに、3 mM 5'-AMPを10μL添加し、265 nmにおける吸光度の経時変化を分光光度計(Shimazdu UV2200)で測定することで行った。 <実施例2> AMPDをコードするcDNAの単離と構造解析 精製標品をSDS-PAGE(%T=10%)に供した後、分離されたタンパク質を亜鉛染色により可視化し、当該バンドを切り出し、SDS-PAGEの泳動バッファーを用いて抽出した(Jpn. J. Phycol. 52 (Supplement): 95-100,2004)。得られた試料を限外ろ過により濃縮後(ミリポア、Centricon YM-10)、試料70μgにリシルエンドペプチターゼ20 ngを加え、37℃で13 hインキュベートし、SDS-PAGE (%T=15%)により断片を分離した後、PVDF膜に転写した(J. Biol. Chem. 280: 18462-18468,2004.)。転写されたタンパク質断片はCBBにより可視化し、当該のバンドを切り出し、エドマン分解によりそのN末端アミノ酸配列を分析した(model 477A、 Applied Biosystem、Caloglossa continua (Ceramiales、Rhodophyta). Mar. Biotechnol. 3: 493-500,2001.)。その結果を図1に示す。 この内部アミノ酸配列をデーターベース(Porphyra yezoensis EST index、かずさDNA研究所)で検索し、得られた部分的核酸配列を利用して、RACE法によりcDNAの全長配列を取得した。RACE法は、具体的には、5'-RACEおよび3'-RACEの試料として精製したmRNAを、特異的プライマーとして5'-RACE用にプライマーR1、3'-RACE用にプライマーleftを使用して(表2、図2)、それぞれSMART RACE cDNA Amplification Kit (Clontech)およびRNA LA PCR Kit (AMV) Ver 1.1 (タカラバイオ)を用いて行った。 これにより増幅した遺伝子断片を、pGEM-T and pGEM-T Easy Vector Systems (プロメガ)を用いてpGEM-T Easyベクターに導入することで、クローニングを行った。シーケンシングは、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)および、DNA sequencer model 310もしくはmodel 3130 (Applied Biosystems)を用いて行った。 その結果、スサビノリのAMPD遺伝子は、522アミノ酸数アミノ酸からなる蛋白質をコードしていることが判明した。決定されたスサビノリのAMPDをコードするcDNAの塩基配列を配列番号:1に、該cDNAがコードする蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。スサビノリのAMPDと公知のAMPD(ヒト、酵母、シロイヌナズナ、イネ)とを比較したところ、その類似性は低かった(表3)。 このため、blastサーチでは、塩基配列では有意に類似する遺伝子は見つからなかった。タンパク質配列においても全体的に類似する遺伝子は見つからなかったが、配列の終盤部分においてのみ、Pseudoalteromonasのアデノシンデアミナーゼに、相似の配列がサーチされた(Expect = 3e-24、 Identities = 52/135 (38%)、 Positives = 79/135 (58%))。この部分は保存領域としてアデノシンデアミナーゼ(ADA(cd01320、 pfam、eularyota、 4e-29))の他、アデノシン/AMPデアミナーゼ(ADA_AMPD(cd00443、 pfam、 eukaryota、 2e-28))および、 AMPデアミナーゼ(AMPD(cd01319、 pfam、 eukaryota、2e-12))と類似性が示された。しかし、植物、動物、菌類で明らかになっているAMPD間での分子系統解析をMEGA4 (Molecular Biology and Evolution 24:1596-1599,2007.)を用いて行ったところ、本タンパク質はそれらとは類縁性が高くないことが分かった(図3)。さらには、AMPDのモチーフ配列である [SA]-[LIVM]-[NGS]-[STA]-D-D-Pの最後のアミノ酸(P)が、本タンパク質では「E」に変化していることから、新規の型のAMPDであると考えられた。 <実施例3> 組換え蛋白質と抗体の作製 AMPDの25番目のアミノ酸から最終アミノ酸までに相当する遺伝子を、3'-RACE用に逆転写したDNAを鋳型として5'-末端にBam HI切断領域を3'-末端にXba I切断領域を付加したプライマー(それぞれプライマーleft_Bamおよびプライマーright_Xba(表4)を用いて増幅し、pGEM-T Easyベクターを用いての増幅を経て、最終的にpCold IIベクター(タカラバイオ)に組み込んだ後、マニュアルに従い組換えタンパク質の発現を行った。 発現したタンパク質はNi-NTA Spin Kit(キアゲン)により精製した。精製した蛋白質は、ラピダス・ミニスラブ電気泳動槽(AE-6500型、アトー)を用い、定法に従い、SDS-PAGEを行い、泳動後のゲルを、CBBもしくは亜鉛染色により染色し、タンパク質のバンドを可視化した(Jpn. J. Phycol. 52 (Supplement): 95-100,2004.)。その結果、アミノ酸配列から推定された分子量の位置にバンドが検出された(図4)。 抗体作製は、抗原となるタンパク質をSDS-PAGE後、CBB染色を行い当該バンドを切り出すことで純化し、マウスの皮下に注入することで行った。初期免疫としては抗原をアジュバントコンプリートと混和したが、その後はアジュバントインコンプリートと混和し注入を行った。注入は一週間間隔で、合計8回行った。血液は採取後、室温で1hインキュベートした後、遠心(12000g x 15 min)し、上精を血清として回収した。 これにより得られた抗体と組換え蛋白質との反応性をウェスタンブロッティングにより確認した。具体的には、タンパク質をSDS-PAGE後、ミニトランスブロットセル(バイオラッド)を用いてPVDF膜に転写して行った。免疫染色は二次抗体にアルカリホスファターゼ結合ウサギ抗マウスIgG抗体を用い、AP発色キット(バイオラッド)で発色することで行った。その結果、得られた抗体は、組換え蛋白質に特異的に結合していた(図4)。 従来、海苔の呈味は官能試験で行われてきたが、AMPDの定量化を利用することにより、「呈味その数値化(定量化)」が可能になり、(1)呈味性の高い海苔株の選別やスクリーニングを容易に行うためのツールとして利用可能となる、(2)海苔の養殖において、得られた生産品の品質を定量化することによって、病気、色落ちによる品質低下の定量的評価などを可能とし、それらに対する対策を迅速に講ずることに利用可能であるなど、産業的価値は非常に高い。また、本酵素の遺伝子を海苔自身や他の農産品に導入し、呈味性の優れた食品を開発することにもつながる。さらには、海苔AMPDは長期の保存や焼海苔でも活性が保持されるなど極めて安定な酵素であることから、様々な食品工学への応用も可能であると考えられる。図1は、海苔AMPデアミナーゼのリシルエンドペプチダーゼによる制限的分解を示す電気泳動結果と、得られたペプチドのN末端アミノ酸配列を示す図面である。小文字で表されたアミノ酸は信頼度が低い。図2は、海苔AMPデアミナーゼクローニングおよび配列決定に用いられたプライマーを示す図である。図3は、動物(ヒト、AMPD1_Human P23109、 AMPD2 HUMAN Q01432、 AMPD3 HUMAN Q01432)、 植物(イネ、ORYSJ Q84NP7、シロイズナズナ、ARATH O80452)、菌類(イースト、YEAST P15274)およびノリのAMPDの分子系統樹を示す図である。図4は、抗AMPデアミナーゼマウス血清の反応性を示す電気泳動写真である。P. yezoensisAMPDの精製タンパク質(MonoQ後、purifiedAMPD)、 P. yezoensis の粗抽出液(crude)およびそれらを混合したもの(crude+puri)に対して、血清をそれぞれ1/500 (A)、 1/5000 (B)、 1/50000 (C)に希釈し、免疫染色を行った。図中の「CBB」は、CBB染色を、「PSM」は、プレステインドマーカーを、「LMW」は、分子量マーカーを示す。 藻類由来のAMPデアミナーゼをコードする下記(a)から(c)のいずれかに記載のDNA。(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(b)配列番号:1に記載の塩基配列の1〜1569位からなるDNA(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA AMPデアミナーゼが耐熱性である、請求項1に記載のDNA。 請求項1または2に記載のDNAを含むベクター。 請求項1または2に記載のDNA、または請求項3に記載のベクターが導入された形質転換細胞。 請求項1または2に記載のDNAによりコードされる蛋白質。 請求項4に記載の形質転換細胞を培養し、培養物または培養上清から請求項5に記載の蛋白質を回収する工程を含む、請求項5に記載の蛋白質の製造方法。 請求項5に記載の蛋白質に結合する抗体。 請求項1または2に記載のDNA、または請求項3に記載のベクターが導入された植物細胞。 請求項8に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。 請求項9に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。 請求項9または10に記載の形質転換植物体の繁殖材料。 請求項9または10に記載の形質転換植物体または請求項11に記載の繁殖材料を加工して製造された食品。 請求項5に記載の蛋白質が添加された食品。 藻類における請求項5に記載の蛋白質の量を検出することを特徴とする、藻類を評価又は選別する方法。 請求項5に記載の蛋白質の量を、藻類の呈味性の指標とする、請求項14に記載の方法。 請求項7に記載の抗体を有効成分とする、請求項5に記載の蛋白質の検出試薬。 藻類の呈味性の評価に用いられる、請求項16に記載の検出試薬。配列表


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