生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_線維筋痛症治療用医薬組成物
出願番号:2008002282
年次:2010
IPC分類:A61K 31/433,C07D 417/12,A61P 21/00,A61K 45/00,A61P 25/24,A61P 25/22,A61K 35/36,A61P 25/20,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

長田 賢一 JP WO2009025091 20090226 JP2008002282 20080822 線維筋痛症治療用医薬組成物 MPO株式会社 510128029 廣瀬 隆行 100116850 AXIS株式会社 510028143 長田 賢一 JP 2007216967 20070823 A61K 31/433 20060101AFI20101022BHJP C07D 417/12 20060101ALI20101022BHJP A61P 21/00 20060101ALI20101022BHJP A61K 45/00 20060101ALI20101022BHJP A61P 25/24 20060101ALI20101022BHJP A61P 25/22 20060101ALI20101022BHJP A61K 35/36 20060101ALI20101022BHJP A61P 25/20 20060101ALI20101022BHJP A61P 43/00 20060101ALI20101022BHJP JPA61K31/433C07D417/12A61P21/00A61K45/00A61P25/24A61P25/22A61K35/36A61P25/20A61P43/00 111 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20101118 2009528958 13 4C063 4C084 4C086 4C087 4C063AA01 4C063BB09 4C063CC67 4C063DD23 4C063EE01 4C084AA19 4C084MA02 4C084NA05 4C084NA14 4C084ZA032 4C084ZA052 4C084ZA082 4C084ZA122 4C084ZA941 4C084ZA942 4C084ZC022 4C084ZC542 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC85 4C086GA07 4C086GA10 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086NA14 4C086ZA03 4C086ZA05 4C086ZA08 4C086ZA12 4C086ZA94 4C086ZC02 4C086ZC54 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB48 4C087CA06 4C087MA02 4C087NA05 4C087NA14 4C087ZA03 4C087ZA05 4C087ZA08 4C087ZA12 4C087ZA94 4C087ZC02 4C087ZC54 本発明は、線維筋痛症を治療するための医薬組成物に関する。 線維筋痛症は、中高年の女性を中心に発症する全身的慢性疼痛疾患である。多くの場合、体幹部や肩関節などで疼痛が始まり、次第に全身の筋肉や関節などに疼痛の範囲が拡大する。このとき、疼痛の範囲の拡大に対応して疼痛の程度も激しくなることが多い。米国リウマチ学会で提唱された診断基準では、全身18箇所の特徴的な圧痛点を指圧して11箇所以上で疼痛を感じた場合に線維筋痛症と診断される。また、線維筋痛症は、筋骨格筋の痛みを主体とした多様な慢性疼痛に加えて、不眠や抑うつ状態などの様々な精神症状を伴うことが多い。したがって、この病気が進行すると、QOLの低下のみならず生活機能障害をも引き起こすことになる。 線維筋痛症は、血液検査などの各種検査では異常を見出すことができず、その原因がまだ解明されていない病気である。したがって、その治療方法もまだ確立されていない。線維筋痛症の治療薬としては、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(非特許文献1)、SSRIやSNRI、アミトリプチンなどの抗うつ薬(非特許文献2)、ドーパミン受容体作動薬であるプラミペキソール(非特許文献3)、抗てんかん薬であるプレガバリン(非特許文献4)などがある程度有効であると報告されている。しかしながら、これらの薬はすべての患者に効果を有するわけではなく、また副作用を生じさせることがあった。 塩酸チザニジンは、α−固縮およびγ−固縮抑制作用、多シナプス反射抑制作用、抗侵害作用などを有する中枢性筋弛緩剤として知られている化合物である。塩酸チザニジンは、頚肩腕症候群や腰痛症による筋緊張状態、脳血管障害や痙性脊椎麻痺などによる痙性麻痺などに効果があるといわれている。「線維筋痛症に対するワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(ノイロトロピン)の治療効果」、厚生労働科学研究研究費補助金特別研究事業:線維筋痛症の実態調査に基づいた疾患概念の確立に関する研究:平成15年後総括・分担研究報告書、2003年、p.13〜15Rao S.G. and ClauwD.J., "The management of fibromyalgia", Drugs Today (Barc), (2004), Vol.40, p.539-554.Holman A.J. and Myers R.R. "A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of pramipexole, a dopamine agonist, in patients with fibromyalgia receiving concomitant medications", (2005), Arthritis Rheum., Vol.52, p.2495-2505.Crofford L.J., RowbothamM.C., Mease P.J., "Pregabalinfor the treatment of fibromyalgia syndrome: results of a randomized, double-blind, placebo-controlled trial", (2005), Arthritis Rheum., Vol.52, p.1264-1273. 上述のように、従来の線維筋痛症の治療薬は、すべての患者に効果を有するわけではないことから、現在もさらなる治療薬が切望されている。例えば、米国における大規模な疫学調査によると、症状が4年以上継続している症例が75.5%であると報告されており、線維筋痛症の特効薬がなく、その治療が現在も困難であることがわかる(Bennett R.M., Jones J., Turk D.C., Russell I.J. and Matallana L., "An internet survey of 2,596 people with fibromyalgia", (2007), BMC Musculoskelet Disord., Vol.8, 27.)。 本発明の目的は、線維筋痛症の新規治療薬を提供することである。 本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、チザニジンが線維筋痛症の治療に効果を有することを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、以下の線維筋痛症を治療するための医薬組成物に関する。 [1]チザニジンを含む、線維筋痛症を治療するための医薬組成物。 [2]さらに抗うつ薬を含む、[1]に記載の医薬組成物。 [3]さらに抗不安薬を含む、[1]または[2]に記載の医薬組成物。 [4]さらにワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液を含む、[1]〜[3]に記載の医薬組成物。 [5]さらに睡眠薬を含む、[1]〜[4]に記載の医薬組成物。 本発明の医薬組成物は、線維筋痛症の疼痛を改善させるだけでなく、線維筋痛症の睡眠障害や疲労感、抑うつ状態も改善させることができる。すなわち、本発明の医薬組成物は、副作用を最小限にとどめつつ線維筋痛症を治療することができる。 本発明の線維筋痛症を治療するための医薬組成物は、式(1)のチザニジンを有効成分として含むことを特徴とし、その他任意の成分を含むことができる。また、本発明の医薬組成物に含まれるチザニジンは、塩であってもよい。この場合、本発明の医薬組成物に含まれるチザニジンは、有機酸塩または無機酸塩であることが好ましく、塩酸塩(塩酸チザニジン)であることが特に好ましい。 前述の通り、SNRIなどの抗うつ薬が線維筋痛症を改善させることが知られていたが、本発明者は、抗うつ薬の中には線維筋痛症を悪化させる例があることを見出し、線維筋痛症を悪化させる原因について鋭意検討したところ、下降性疼痛抑制系のアドレナリンα2受容体に原因があるとの仮説に至った。そこで、本発明者は、下降性疼痛抑制系のアドレナリンα2受容体をブロックすることで線維筋痛症を改善させることができると考え、そのような作用を有する薬を検討した結果、チザニジンが線維筋痛症に対する有効成分として作用しうることを見出したのである。 本発明の医薬組成物に含まれるチザニジンは、当業者に知られる方法を用いて製造したものでもよいが、市販の製剤を利用してもよい。このような製剤の例には、ノバルティスファーマ株式会社の「テルネリン顆粒」および「テルネリン錠」、長生堂製薬株式会社の「アストネリン錠」、メディサ新薬株式会社の「エンチニン錠」、キョーリンリメディオ株式会社の「ギボンズ錠」、辰巳化学株式会社の「ザンピーク顆粒」、ニプロファーマ株式会社の「セブレチン錠」、日医工株式会社の「チザニン顆粒」および「チザニン錠」、大正薬品工業株式会社の「チザネリン錠」、東和薬品株式会社の「チロルビット錠」、鶴原製薬株式会社の「テトリネン錠」、日新製薬株式会社の「テルザニン錠」、共和薬品工業株式会社の「テルリラーク錠」、大洋薬品工業株式会社の「メキタック錠」、日本薬品工業株式会社の「モトナリン錠」などの塩酸チザニジン製剤が含まれる(それぞれ登録商標)。 本発明の医薬組成物の剤形は、特に限定されず、錠剤や顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤など、常用される任意の剤形とすることができる。例えば、錠剤の場合には、1日あたり約9〜12錠を経口投与することで1日当たりの投与量が満足できるようにチザニジンの1錠当たりの含量を設定し、セルロースや還元麦芽糖などの結合剤、ショ糖脂肪酸エステルなどの潤沢剤、その他香料などを加えて常法通り打錠すればよい。 本発明の医薬組成物の1日当たりの投与量は、線維筋痛症を改善させうる量であって副作用の少ない量のチザニジンを投与しうる量であれば特に限定されず、例えば、塩酸チザニジンをチザニジンとして1日当たり2〜9mg程度投与しうる量であればよい。本発明の医薬組成物全量に対するチザニジンの配合量(割合)は特に限定されず、剤形などに応じて適宜設定すればよい。 本発明の医薬組成物の用法は、線維筋痛症を改善させることができれば特に限定されない。例えば、上記1日当たりの投与量(例えば、塩酸チザニジンをチザニジンとして2〜9mg程度含む量)の本発明の医薬組成物を3回に分けて、食前、食間または食後に経口投与すればよい。このように本発明の医薬組成物を投与することで、線維筋痛症の疼痛を改善させるだけでなく、線維筋痛症の睡眠障害や疲労感、抑うつ状態も改善させることができる(実施例参照)。 また、本発明の医薬組成物は、線維筋痛症の治療薬として知られている抗うつ薬をさらに含んでいてもよい。このような抗うつ薬の例には、SSRI(パロキセチン、フルボキサミン、サートラリンなど)、SNRI(ミルナシプランなど)、アミトリプチン、スルピリドなどが含まれる。本発明の医薬組成物に含まれるこれらの抗うつ薬の量は、投与する患者の症状などに応じて適宜設定すればよい。これらの抗うつ薬は、塩酸チザニジンと同時に投与するようにしてもよいし、別個に投与するようにしてもよい。 また、本発明の医薬組成物は、線維筋痛症の治療薬として知られている抗不安薬をさらに含んでいてもよい。このような抗不安薬の例には、ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(アルプラゾラム、ロラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、フルジアゼパム、エチゾラム、フルトプラゼパムなど)、5−HT1Aアゴニスト(クエン酸タンドスピロン、塩酸ブスピロンなど)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(塩酸フルオキセチン、塩酸セルトラリン、塩酸パロキセチンなど)、抗てんかん薬(クロナゼパム、ガバペンチンなど)、CRF(corticotropinreleasing factor)受容体拮抗剤(TS−041、DPC−368など)などが含まれる。本発明の医薬組成物に含まれるこれらの抗不安薬の量は、投与する患者の症状などに応じて適宜設定すればよい。これらの抗不安薬は、塩酸チザニジンと同時に投与するようにしてもよいし、別個に投与するようにしてもよい。 また、本発明の医薬組成物は、線維筋痛症の治療薬として知られているワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液をさらに含んでいてもよい。このようなワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液の例には、ノイロトロピン(登録商標)などが含まれる。本発明の医薬組成物に含まれるこれらのワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液の量は、投与する患者の症状などに応じて適宜設定すればよい。これらのワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液は、塩酸チザニジンと同時に投与するようにしてもよいし、別個に投与するようにしてもよい。 また、本発明の医薬組成物は、線維筋痛症の治療の際に用いられている睡眠薬をさらに含んでいてもよい。このような睡眠薬の例には、アモバルビタール、アルプラゾラム、エスタゾラム、塩酸フルラゼパム、塩酸リルマザホン、オキサゾラム、ガンマーオリザノール、クアゼパム、クエン酸タンドスピロン、クロキサゾラム、クロラゼプ酸ニカリウム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、トフィパム、トリアゾラム、ニトラゼパム、ブロチゾラム、ロフラゼプ酸エチル、ホップ、カノコソウ、チョウトウコウ、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素、ゾピクロン、酒石酸ゾルピデム、ブロチゾラム、ロルメタゼパム、フルニトラゼパム、塩酸リルマザホンなどが含まれる。本発明の医薬組成物に含まれるこれらの睡眠薬の量は、投与する患者の症状などに応じて適宜設定すればよい。これらの睡眠薬は、塩酸チザニジンと同時に投与するようにしてもよいし、別個に投与するようにしてもよい。 本発明の医薬組成物の製造方法は、所定の量のチザニジンを加えるステップを含む。また、本発明の医薬組成物の製造方法は、抗うつ薬、抗不安薬、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液または睡眠薬を加えるステップをさらに含んでいてもよい。 一方、塩酸チザニジンと同じ筋緊張治療薬として塩酸エペリゾンが知られている。本発明者は、塩酸チザニジンと同様に塩酸エペリゾンにも線維筋痛症を改善させる効果があるかどうかを調べた。その結果、驚くべきことに、塩酸エペリゾンは、適応病態が塩酸チザニジンに類似しているものの、塩酸エペリゾンには線維筋痛症を改善させる効果が認められなかった。したがって、中枢性筋緊張治療薬の中でも特に塩酸チザニジンが線維筋痛症に有効であると考えられる。 以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。 [実施例1] 実施例1では、様々な治療法を用いても全身の疼痛が改善しなかった線維筋痛症の患者(59歳、女性)に本発明の医薬組成物(塩酸チザニジン)を投与した例を示す。 塩酸チザニジンの投与10ヶ月前に左肩甲骨部に鈍痛が出現した。検査を行ったが、異常を見出せなかった。翌月、背部痛が悪化するとともに、さらに両側肩関節から頚部痛、両上肢痛、手指のしびれ感、全身倦怠感が出現した。整形外科でブロックを施行したが症状が変化しなかった。また、針治療、マッサージなどを行うも効果がなかった。 ノイロトロピン(登録商標:鎮痛薬)16U/日、エチゾラム(抗不安薬)0.5mg/日を投与したが効果がなかった。このときの疼痛のスコアは、最小感知電流値:5.5、痛み対応電流値:71.9、痛み度:1203.6であった。また、J−FIQ(Japanese version of FIBROMYALGIA IMPACT QUESTIONNAIRE)スコアは、67.17であった。 ここで疼痛のスコアについて説明する。本実施例では、Aβ線維およびAδ線維を伝わる疼痛の程度を知覚・痛覚定量分析装置(PainVision PS-2100:ニプロ株式会社)を用いて数値化した。最小感知電流値とは、被験者が知覚しうる最小の電流値であり、知覚閾値を数値化したものである。痛み対応電流値とは、疼痛の痛みと同程度の痛みを与える電流値であり、実際に感じている痛みの程度を数値化したものである。痛み度とは、「痛み度=(痛み対応電流値−電流知覚閾値)/電流知覚閾値×100」で算出される値であり、実際に感じている痛みの程度を痛みに慣れた部分を差し引いて数値化したものである。これらのスコアの中では、痛み度が実際に感じている疼痛の程度に最もよく相関している。 次いで、J−FIQスコアについて説明する。J−FIQは、米国で標準化されている線維筋痛症患者のQOL評価法であるFIQ(FIBROMYALGIA IMPACT QUESTIONNAIRE)を日本語に翻訳したものである(FIQについては「Burckhardt C.S., Clark S.R. and Bennett R.M. "The FibromyalgiaImpact Questionnaire: Development and validation", (1991), Journal of Rheumatology, Vol.18, p.728-734.」を参照)。J−FIQスコアは、日常生活のQOLや身体の疼痛の程度だけでなく、抑うつ状態なども含めた線維筋痛症の総合的症状の程度を示しており、最低点(症状が全くない状態)が0点で、最高点(症状が強く、寝たっきりの状態)が100点である。 ノイロトロピン16U/日、エチゾラム0.5mg/日を投与するとともに、塩酸チザニジン(ノバルティスファーマ株式会社:テルネリン錠)2mg/日(チザニジンとして)を1日3回の食事の後にさらに投与するようにした。 塩酸チザニジン投与開始から約1ヵ月後、疼痛が顕著に改善しただけでなく、ADL、抑うつ気分および全身倦怠感も改善した。疼痛のスコアは、最小感知電流値:6.5、痛み対応電流値:18.4、痛み度:181.9であった。また、J−FIQスコアは、32.46に低下した。 以上のように、本症例では、ノイロトロピンやエチゾラムの投与だけでは疼痛の改善が見られなかったが、塩酸チザニジンは通常の用量よりも少ないわずか2mg/日(チザニジンとして)の量で有効であった。また、塩酸チザニジンは、疼痛だけでなく抑うつ気分および全身倦怠感も改善させ、患者のADLを改善させることができた。 [実施例2] 実施例2では、様々な治療法を用いても全身の疼痛が改善しなかった線維筋痛症の患者(42歳、男性)に本発明の医薬組成物(塩酸チザニジンおよび抗うつ薬)を投与した例を示す。 塩酸チザニジンの投与約3年前に、頭痛、頚部痛、背部痛、大腿部痛が出現した。MRIなどの検査を行ったが、異常は見出せなかった。硬膜外ブロックを施行したが、短期間しか効果が続かなかった。温熱療法、牽引療法、電気マッサージなどを行うも効果がなかった。疼痛のためADLが低下し、休職することになった。さらに、抑うつ気分、全身倦怠感も出現した。 ミルナシプラン(抗うつ薬)を150mg/日まで増量して投与したが、効果がなかった。このときの疼痛のスコアは、最小感知電流値:7.7、痛み対応電流値:17.7、痛み度:128.5であった。また、J−FIQスコアは、70.46であった。 ミルナシプラン150mg/日を投与するとともに、塩酸チザニジン(ノバルティスファーマ株式会社:テルネリン錠)3mg/日(チザニジンとして)を1日3回の食事の後にさらに投与するようにした。 塩酸チザニジン投与開始から約1ヵ月後、塩酸チザニジンの投与量を4mg/日に増量した。 塩酸チザニジン投与開始から約2ヵ月後、塩酸チザニジンの投与量を5mg/日に増量した。その後、腰痛が軽快し、大腿部および頚部の筋肉の緊張がとれてきた。さらに抑うつ気分、全身倦怠感も改善した。J−FIQスコアは、59.6に低下した。 塩酸チザニジン投与開始から約3ヵ月後、疼痛が改善しただけでなく、ADL、抑うつ気分および全身倦怠感もさらに改善した。疼痛のスコアは、最小感知電流値:7.0、痛み対応電流値:13.4、痛み度:90.5であった。 以上のように、本症例では、ミルナシプランの投与だけでは疼痛の改善が見られなかったが、塩酸チザニジンをミルナシプランと組み合わせて投与することで疼痛の改善が見られた。また、塩酸チザニジンは、抑うつ気分および全身倦怠感も改善させ、患者のADLを改善させることができた。 [実施例3] 実施例3では、他の薬剤の治療では全身の疼痛が改善しなかった線維筋痛症の患者(31歳、女性)に本発明の医薬組成物(塩酸チザニジンおよび抗うつ薬)を投与した例を示す。 塩酸チザニジンの投与1年前に、頚部痛、肩関節部痛、背部痛が出現し、次第に前胸部痛にまで拡大した。呼吸苦、咳、嚥下時の疼痛が始まった。3DCTや血液検査などの検査を行ったが、異常は見出せなかった。不眠のため、エチゾラム(抗不安薬)の投与を開始した。 ミルナシプラン(抗うつ薬)75mg/日を投与したが、頚部から背部痛が特にひどく、さらに下腹部痛も出現し、呼吸苦、抑うつ気分、全身倦怠感も併発し、休職となった。このときの疼痛のスコアは、最小感知電流値:6.3、痛み対応電流値:14.3、痛み度:126.6であった。 ミルナシプラン75mg/日を投与するとともに、塩酸チザニジン(ノバルティスファーマ株式会社:テルネリン錠)2mg/日(チザニジンとして)を1日3回の食事の後にさらに投与するようにした。 塩酸チザニジン投与開始から約1ヵ月後、頚部から肩関節部の痛み、背部痛が改善し、両側上腕痛も軽快した。呼吸苦、抑うつ気分、全身倦怠感も改善し、仕事に復帰できた。さらに、エチゾラムを投与しなくても睡眠できるようになった。疼痛のスコアは、最小感知電流値:7.2、痛み対応電流値:14.3、痛み度:99.0であった。 以上のように、本症例では、ミルナシプランの投与だけでは疼痛の改善が見られなかったが、塩酸チザニジンをミルナシプランと組み合わせて投与することで疼痛の改善が見られた。また、塩酸チザニジンは、呼吸苦、抑うつ気分および全身倦怠感も改善させ、患者のADLを改善させることができた。 本出願は、2007年8月23日出願の特願2007−216967に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。 本発明の医薬組成物は、線維筋痛症の疼痛を改善させるだけでなく、線維筋痛症の睡眠障害や疲労感、抑うつ状態も改善させることができるため、線維筋痛症の治療薬として有用である。 チザニジンを含む、線維筋痛症を治療するための医薬組成物。 さらに抗うつ薬を含む、請求項1に記載の医薬組成物。 さらに抗不安薬を含む、請求項1に記載の医薬組成物。 さらにワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液を含む、請求項1に記載の医薬組成物。 さらに睡眠薬を含む、請求項1に記載の医薬組成物。 本発明は、線維筋痛症の新規治療薬に関する。チザニジンを有効成分として含む医薬組成物を線維筋痛症の治療薬として用いる。本発明の医薬組成物は、線維筋痛症の疼痛を改善させるだけでなく、線維筋痛症の睡眠障害や疲労感、抑うつ状態も改善させることができるため、線維筋痛症の治療薬として有用である。


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