タイトル: | 特許公報(B2)_逆浸透膜ろ過プラントの運転方法、および逆浸透膜ろ過プラント |
出願番号: | 2007555816 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | B01D 61/12,C02F 1/44,B01D 65/02,B01D 65/06,G01N 33/18 |
伊藤 世人 間谷 聖子 植村 忠廣 北出 有 JP 5600864 特許公報(B2) 20140829 2007555816 20070920 逆浸透膜ろ過プラントの運転方法、および逆浸透膜ろ過プラント 東レ株式会社 000003159 濱田 百合子 100090343 古館 久丹子 100129160 山崎 智子 100177460 伊藤 世人 間谷 聖子 植村 忠廣 北出 有 JP 2006259286 20060925 20141008 B01D 61/12 20060101AFI20140918BHJP C02F 1/44 20060101ALI20140918BHJP B01D 65/02 20060101ALI20140918BHJP B01D 65/06 20060101ALI20140918BHJP G01N 33/18 20060101ALI20140918BHJP JPB01D61/12C02F1/44 GB01D65/02 500B01D65/06G01N33/18 106B IPC B01D53/22,61/00−71/82, C02F1/44 特開2003−340245(JP,A) 特開平10−286445(JP,A) 特開2005−106516(JP,A) 特開2002−143849(JP,A) 特表平06−509640(JP,A) 特許第3252921(JP,B2) 特開2001−194364(JP,A) 9 JP2007068301 20070920 WO2008038575 20080403 24 20100910 神田 和輝 本発明は、逆浸透膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行い淡水を得たり、下廃水処理水や工業排水などを浄化して再利用水を得たりする際に、好適に用いることのできる逆浸透膜ろ過プラントの運転方法、および逆浸透膜ろ過プラントに関するものである。 逆浸透膜を用いた膜ろ過プロセスは、海水の淡水化をはじめ、多くの産業や水処理分野で応用され、競合する他の分離操作に比べて、分離性能やエネルギー効率などの点で、優位性が実証されてきている。他方で、逆浸透膜ろ過プロセスでは、被処理水側(逆浸透膜非透過水側)の膜面上で微生物がバイオフィルムのかたちで増殖し、逆浸透膜の操作圧力を上昇させたり、逆浸透膜の透水量や分離性能を低下させたりすること、すなわちバイオファウリングが運転上問題となっている。ここで、「バイオフィルム」とは、水が流れるときに管壁や逆浸透膜面上に形成される微生物により形成される構造体であり、主として多糖類やタンパク質などからなる細胞外ポリマー物質と細菌とからなるものであり、身近な例としては、台所の「ぬめり」などがある。 バイオファウリングの対策としては、被処理水にバイオフィルムの増殖を抑制する薬剤(以下、「殺菌剤」という)を添加する技術が、有効な手法として数多く提案されている。例えば、被処理水に2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはこれらの塩およびこれらの混合物を有効成分とする殺菌剤を添加してバイオフィルムの増殖を抑制する方法(特許文献1)や、被処理水に殺菌剤として、酸や銀イオンを添加する方法などが開示されている(特許文献2、3)。これらは、ある種の殺菌剤を連続あるいは間欠で逆浸透膜に接触させ、バイオフィルムの増殖を抑制する方法であり、それなりの効果を奏するものである。ところが、逆浸透膜ろ過プロセスで殺菌剤の添加条件の有効性を正確かつ簡便に、評価、検証可能な方法がなかった。 殺菌剤の添加条件の決定方法に関する提案の一つに、原水に殺菌剤を添加して分離膜(逆浸透膜)に供給する際に、原水に含まれる菌数と原水の同化可能有機炭素[以下、AOC(Assimilable Organic Carbon)という]の濃度および原水が有するバイオフィルム形成速度を評価し、それら複数の原水水質評価結果に応じて殺菌剤の添加条件を決定する方法が提案されている(特許文献4)。 しかし、実際の運転において、本方法を適用することは困難な場合が多く、また、適用できた場合でも逆浸透膜ろ過プロセスの運転安定化に至らない場合がしばしばあり、有用と呼べる手法ではなかった。例えば、AOC濃度の測定では、容器の準備やサンプルの前処理が煩雑であり、また、サンプルの保存が極めて困難であるため、事実上、逆浸透膜ろ過プラントの近くに実験室がない限り実施が困難であった。また、コンタミネーションの発生を原理的に100%防止できる手法ではなかった。さらに、測定ができた場合でも、AOC濃度は必ずしもバイオファウリングの程度と定量的に相関づけられる指標ではないことが明らかになった。例えば、AOC濃度が70μg/Lを超えるにも係わらず半年間、安定に運転可能な逆浸透膜ろ過プラントなどがあった。 また、特許文献4では、AOCのかわりに海水(原水)のバイオフィルム形成速度を測る方法が開示されているが、実施例としては唯一、海水中の取水管近傍にガラスを浸漬し、そこに形成されるバイオフィルムの形成速度を測定する例が記載されており、本文中にも取水管により取水される海水(原水)に対して分析を行うことが開示されている。しかるに、逆浸透膜ろ過プラントの原水取水部や前処理部の処理(塩素の添加や凝集砂ろ過など)により微生物学的水質は大きく変化し、また、バイオフィルム量は水質だけでなく水の流れの(強度や剥離の観点から)影響を受ける点などを考慮すると、取水海水(原水)への浸漬は、逆浸透膜ろ過部の水質評価の地点・条件としては不適当である。また、水質、水流の条件が仮に適切であったとしても、殺菌剤や洗浄剤の流水下でない地点のバイオフィルム形成速度測定のみの結果を元に逆浸透膜ろ過プラントの運転方法を制御する場合、殺菌や洗浄の効果を直接的に迅速に検証できないため、信頼性に欠けるという問題があった。 従って、殺菌剤の添加条件は、それまでに実績を有する条件を踏襲するか、経験則などにもとづいて予測するか、バイオファウリングと向き合いながら現場で時間をかけて決定され、一般的に適用できる高感度、合理的で信頼性が高く、簡便、迅速な殺菌剤の添加条件を決定するための方法はなかった。また、殺菌剤の適用効果は、専ら逆浸透膜モジュールの圧力損失、膜間差圧、透水量、透過水水質などのデータに基づいて判断されていたが、これでは、これらのデータで異常が検出されたときには、既に著量のバイオフィルムが形成され、殺菌や洗浄で逆浸透膜性能を回復するのが困難なことが多かった。 バイオファウリングの対策としては、殺菌剤を用いる方法以外には、逆浸透膜を洗浄剤を用いて洗浄する技術(薬品洗浄)も提案されている。洗浄剤としては、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン−4−酢酸(EDTA)などのキレート剤、界面活性剤などや、殺菌剤としても用いられている2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはこれらの塩などがあり、これらは単独あるいは組み合わせて使用される。バイオファウリングがメインであるが無機物も混合している場合は、アルカリと酸を繰り返し洗浄することも行われる。薬品洗浄は、逆浸透膜モジュールに洗浄剤を循環させたり、洗浄剤を含んだ溶液に浸漬させ実施され、逆浸透膜モジュールの全系列あるいは一部の系列について実施される。ここで、薬品洗浄を実施する場合も殺菌剤を添加する場合と同様に、効果的な洗浄剤の選定や使用濃度、1回あたりの洗浄時間、洗浄の頻度、などを膜間差圧、透水量などよりも高感度、合理的、簡便、迅速に判定できる方法や基準がなかった。 バイオファウリングの対策としては、その他、逆浸透膜ろ過部でのバイオフィルム発生が抑制されるように、凝集砂ろ過、限外ろ過膜や精密ろ過膜による膜ろ過、加圧浮上などの前処理設備の変更や、前処理設備の運転条件を変更する方法などもあるが、同様に、装置や運転条件の変更がバイオフィルム形成抑制に与える影響を高感度に合理的に速く簡単に判定できる技術がなかった。特開平8−229363号公報特開平12−354744号公報特開平10−463号公報特開2002−143849公報 本発明は、逆浸透膜ろ過プラントにおいて、逆浸透膜ろ過部の逆浸透膜モジュールのバイオファウリング防止を目的とした殺菌剤の添加や、薬品洗浄、前処理などの運転操作を信頼性高く、高感度、合理的、迅速かつ簡便に行うことが可能な逆浸透膜ろ過プラントの運転方法、および逆浸透膜ろ過プラントを提供することを目的とする。 上記目的を達成するための本発明の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法は、以下(1)の構成からなる。(1)原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを有した逆浸透膜ろ過部をこの順に有する逆浸透膜ろ過プラントの運転方法にあたり、 前記逆浸透膜モジュールの上流から逆浸透膜供給水を、および/または下流から逆浸透膜非透過水を、分取し、 逆浸透膜からなるバイオフィルム形成基材を、通水容器に、前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水をろ過しない態様で収容し、 前記通水容器に前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水を通水し、 前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水は、前記バイオフィルム形成基材としての逆浸透膜の分離機能層表面上に沿って、かつ前記逆浸透膜モジュール内の非透過水線速度と同等の線速度で、流水させ、 バイオフィルム形成基材上のバイオフィルム量を1日〜6ヶ月に1回の頻度で評価し、 その評価結果に基づいて、逆浸透膜ろ過プラントの運転方法を制御することを特徴とする逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。 また、かかる本発明の、逆浸透膜ろ過プラントの運転方法(1)において、より具体的に好ましくは、以下の(2)〜(6)の構成が加わることを特徴とする運転方法である。(2)(1)でバイオフィルム形成基材として逆浸透膜ろ過プラントで使用されている逆浸透膜と同一素材の逆浸透膜断片を使用する。(3)(1)または(2)で内径D、高さHの円筒形通水容器内に、内径Dの円周以下×H以下の大きさに収まる逆浸透膜断片を裏を円筒形通水容器外周部に向け、円周方向の物理的復元力で円筒形通水容器内に固定されている逆浸透膜の一部を切り出して、バイオフィルム形成基材の表面上のバイオフィルム量を評価する。(4)(1)〜(3)のいずれかで、逆浸透膜ろ過部の殺菌、または、洗浄条件を制御するとともに同様の処理をバイオフィルム形成基材に対しても同時に実施する。(5)(1)〜(4)のいずれかでバイオフィルム量をATP(アデノシン三リン酸)で評価し、単位面上あたりのATP量が200pg/cm2以下となるようにプラントの運転方法を制御する。(6)(5)で、海水など、塩濃度が3%以上である原水中で形成されたバイオフィルム量をATP測定法により評価する方法において、a:バイオフィルム形成基材から回収したバイオフィルムを純水に懸濁する工程、b:工程aの懸濁液の発光量をルシフェラーゼ反応を利用して数値化する工程、c:工程aの懸濁液の塩濃度を測定する工程、d:ルシフェラーゼ反応を利用した定量系に与える塩濃度阻害の相関式、阻害のない条件下でのATP濃度と発光量の相関式、工程b、工程cの結果を用いて、工程aの懸濁液のATP量を算出する工程、e:回収したバイオフィルム形成面の面積、懸濁した純水の液容積、dで得られた工程aの懸濁液のATP量の結果を用いて、単位面上のATP量を算出する工程、を含んで評価を行うこと。 また、上記目的を達成するために、以下(7)〜(9)の構成を有するプラントを採用する。(7)原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを有した逆浸透膜ろ過部をこの順に有する逆浸透膜ろ過プラントにおいて、 逆浸透膜ろ過部内で先頭の逆浸透膜モジュールより上流から枝分かれする供給水が流れる配管、および/または、逆浸透膜ろ過部内の逆浸透膜モジュールより下流から枝分かれする逆浸透膜非透過水が流れる配管と、 前記配管の下流に接続された通水容器と、 通水容器の上流または下流に接続された流量調節バルブとが具備されており、 通水容器には逆浸透膜ろ過部で使用されている逆浸透膜と同一素材の逆浸透膜がバイオフィルム形成基材として、前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水をろ過しない態様で、収容されており、 通水容器に供給する逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水を、前記バイオフィルム形成基材としての逆浸透膜の分離機能層表面上に沿って、かつ前記逆浸透膜モジュール内の非透過水線速度と同等の線速度で、流水させる逆浸透膜ろ過プラント。(8)内径D、高さHの円筒形通水容器内に、内径Dの円周以下×H以下の大きさに収まる逆浸透膜断片が、逆浸透膜断片の分離機能層側が内側になるように収容され、逆浸透膜の円周方向の物理的復元力で円筒形通水容器内に固定されている(7)記載の逆浸透膜ろ過プラント。(9)海水淡水化用である(7)または(8)に記載の逆浸透膜ろ過プラント。 本発明の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法および逆浸透膜ろ過プラントを採用することにより、逆浸透膜ろ過プラントの逆浸透膜ろ過部の逆浸透膜面上のバイオフィルム量を定量的に監視することが可能となり、圧力損失上昇や透水量低下に至る前に、殺菌方法や逆浸透膜の薬品洗浄条件、前処理部の運転条件など、逆浸透膜ろ過プラントの運転方法を適正に修正することが可能となる。バイオファウリング防止の対策を効果的にとることができる結果、逆浸透膜ろ過プラント運転の安定性、経済性を大幅に向上することが可能となる。また、バイオフィルム量の評価についても、従来技術より、信頼性、簡便性、迅速性、感度を兼ね備えて評価することができる。 さらに、バイオフィルム量の評価結果を受け、例えば、殺菌剤を過剰添加したり、逆浸透膜の洗浄強度を強くしすぎるなど、殺菌や洗浄の条件が強すぎる場合に必要以上に薬液費を使用する事態を回避できる。また、殺菌や薬品洗浄が弱いため、洗浄により性能がほとんど回復しない程度まで逆浸透膜モジュールがファウリングする事態を回避できるため、膜モジュールの寿命が延び、膜の交換費も低減することができる。 また、耐性菌の出現などで殺菌や薬品洗浄の効果が低下した、あるいは効果が、無いのに殺菌剤や洗浄剤を使用しつづけている場合に対しても、効果が低下したことあるいはないことを認識することが可能となり、使用薬剤の変更などにより殺菌や逆浸透膜の薬品洗浄の条件の変更を合理的に実施することが可能となる。図1は本発明の海水淡水化逆浸透膜ろ過プラントのフロー図である。図2はバイオフィルム形成評価装置の模式図である。図3はバイオフィルム形成基材(テフロン(登録商標)リング)である。図4はリングフックのついたステンレス棒に重ねられたリング状バイオフィルム形成基材である。図5はバイオフィルム形成基材(逆浸透膜シート)である。符号の説明1:取水管2:取水ポンプ3:次亜塩素酸溶液貯槽4:凝集剤溶液貯槽5:pH調整溶液貯槽6:砂ろ過装置7:中間槽8:保安フィルター9:亜硫酸水素ナトリウム溶液貯槽10:殺菌剤溶液貯槽11:逆浸透膜モジュール12:逆浸透膜透過水水槽13:pH調整溶液貯槽14:カルシウム溶液貯槽15:洗浄剤溶液貯槽16a:バイオフィルム形成基材を収容した通水容器16b:バイオフィルム形成基材を収容した通水容器16c:バイオフィルム形成基材を収容した通水容器17a:逆浸透膜ろ過部内で先頭の逆浸透膜モジュールより上流から枝分かれする配管17b:殺菌剤および洗浄剤添加地点より下流で逆浸透膜ろ過部の先頭の逆浸透膜モジュールより上流から枝分かれする配管17c:逆浸透膜モジュールより下流から枝分かれする逆浸透膜非透過水が流れる配管18:透過水送水管19:流量調節バルブ21:次亜塩素酸溶液供給ポンプ22:凝集剤溶液供給ポンプ23:pH調整溶液供給ポンプ24:亜硫酸水素ナトリウム溶液供給ポンプ25:殺菌剤溶液供給ポンプ26:pH調整溶液供給ポンプ27:カルシウム溶液供給ポンプ28:洗浄剤溶液供給ポンプ29:高圧ポンプ30:送液ポンプ31:逆浸透膜非透過水無害化溶液貯槽32:逆浸透膜非透過水無害化処理槽33:逆浸透膜非透過水排水管34:逆浸透膜非透過水無害化溶液供給ポンプ50:ホース51:流量計52:ワンタッチ式ジョイント53:通水容器開閉部54:通水容器55a:テフロン(登録商標)リング55b:逆浸透膜56:流量調節バルブ57:リングフックのついたステンレス棒58:流れの方向100:原水取水部200:前処理部300:逆浸透膜ろ過部 以下、さらに詳しく本発明の膜ろ過プロセスの運転方法について説明する。 本発明の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法は、原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを有した逆浸透膜ろ過部をこの順に有する逆浸透膜ろ過プラントの運転方法にあたり、前処理を行った、逆浸透膜ろ過部内の逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水を逆浸透膜ろ過部の逆浸透膜モジュール内の非透過水線速度と同等の線速度で流水させた条件下に、バイオフィルム形成基材を配しておき、バイオフィルム形成基材上のバイオフィルム量を1日〜6ヶ月に1回の頻度で評価し、その評価結果に基づいて、プラントの運転方法を制御することを特徴とするものである。 本発明は、以下の考え方に基づくものである。(a)逆浸透膜モジュールの膜面上において、バイオファウリングが発生するときのバイオフィルム量に比べて軽微な量のバイオフィルムの形成は許容する。(b)逆浸透膜モジュールの非透過水側の膜面上と同等な水にさらされた面上に形成されたバイオフィルムの量を評価することにより、間接的に逆浸透膜モジュールの非透過水側の膜面上のバイオフィルム量を評価、監視する。(c)上記(b)のバイオフィルム量が許容レベルになるように、また、許容レベルの場合は、より経済的になるように、評価結果をプラントの運転方法にフィードバックする。 以下、図を例示し、本発明について詳しく説明するが、本発明の内容はこの図に限定されるものではない。図1に、本発明を採用している海水淡水化用の逆浸透膜プラントのフローを、図2〜図5にバイオフィルム形成評価装置、バイオフィルム形成基材の模式図を示す。 図1において逆浸透膜ろ過プラントは、水の流れる順に沿って上流側から、取水管1、取水ポンプ2、砂ろ過装置6、中間槽7、保安フィルター8、高圧ポンプ29、逆浸透膜モジュール11、逆浸透膜非透過水排出流路の順に接続、構成されている。 上記において、取水は直接、海の表層部分から行ってもよいし、いわゆる深層水をくみ出しても構わない。また、海底砂層などをフィルタ−として用いる浸透取水法により取水してもよい。くみ出した海水は、一旦沈殿池などで砂などの粒子を分離しておくことが好ましい。 取水ポンプ2の上流の地点では、取水管1やその下流工程の配管におけるバイオフィルム形成や貝や海草などの海棲生物の固着を防止する目的で次亜塩素酸溶液供給ポンプ21により殺菌剤として次亜塩素酸溶液が添加される。用いる殺菌剤としては、酸化性の殺菌剤、たとえば、遊離塩素を発生させ得る薬剤である次亜塩素酸ナトリウム溶液が一般に用いられているが、同等の目的が達成されるものであれば、次亜塩素酸溶液以外の殺菌剤を用いてもよい。 取水ポンプ2と砂ろ過装置6との間の地点では、砂ろ過による固液分離促進用に凝集剤溶液が添加される。また、凝集を効率的に行うためのpH条件の調整や、逆浸透膜モジュール11の非透過水側流路における硫酸カルシウムなどのスケール生成を抑制する目的で、硫酸などのpH調整溶液がpH調整溶液供給ポンプ23により海水に添加される。凝集剤としては、塩化第2鉄やポリ塩化アルミニウムなどを用いることができる。前処理としては、砂ろ過装置6以外に、浮上分離装置、限外ろ過膜や精密ろ過膜、ルース逆浸透膜などの膜による処理を行っても構わない。この前処理は、下流の各工程に負荷をかけないように、必要な程度まで取水原水を精製する目的を有し、取水原水の汚濁の程度により適宜選択すればよい。 前処理を終えた取水原水は中間槽7に貯えられるが、これは、水量調節機能や水質の緩衝機能を提供するもので、必要に応じて設ける。 中間槽7の下流には、異物混入による高圧ポンプ29や逆浸透膜モジュール11の破損を防ぐ為に、必要に応じて保安フィルター8が設けられる。 次いで、亜硫酸水素ナトリウム溶液供給ポンプ24により亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤が添加される。これは、原水取水部などの上流の工程で酸化性殺菌剤を添加した場合に行うもので、残留塩素などが逆浸透膜を劣化させることを防ぐためのものであり、同様の効果を有するものであれば、亜硫酸水素ナトリウム溶液以外の薬品を使用してもよい。 次いで、殺菌剤溶液供給ポンプ25により殺菌剤が添加される。殺菌剤を添加する装置については、殺菌剤の添加条件を制御するために、添加量や添加時間、添加頻度などがコントロールできるバルブやポンプを有する制御機構を備えていることが好ましい。殺菌剤等の薬剤の添加位置は任意に決定すればよいが、好ましくは、保安フィルター8の前、または後の地点である。 次いで、高圧ポンプ29により加圧された海水は、逆浸透膜モジュール11に供給される。 逆浸透膜モジュール11の上流には、薬品洗浄の為に、洗浄剤を添加する管路が設けられている。洗浄剤を添加する地点は、特に限定されるものではないが、洗浄剤の種類によっては、高圧ポンプ29などを腐食させるおそれがあるため、その下流が好ましい。 逆浸透膜モジュール11の供給水は、透過水と非透過水とに分離され、そのうち非透過水は逆浸透膜非透過水無害化処理槽32でpHを調整したり、殺菌剤を無害化する処理を経た後、逆浸透膜非透過水排水管33を通って海へ廃棄される。 一方、逆浸透膜透過水は、逆浸透膜透過水水槽12に蓄えられた後、例えば、下流側でpH調整溶液供給ポンプ26によりpH調整溶液が、また、カルシウム溶液供給ポンプ27からカルシウム溶液がそれぞれ添加され、飲料水基準に適合するような淡水として、透過水送水管18より取り出される。 なお、ここで、逆浸透膜とは、供給水中の一部の成分、たとえば、溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性の膜をいい、いわゆるナノフィルトレーション膜やルース逆浸透膜なども含まれる。素材としては、酢酸セルロース系ポリマーやポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ピニルポリマーなどの高分子材料を用いることが好ましい。また、その膜構造としては、少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称構造としたり、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された分離機能層を有する複合膜構造とすることもできる。膜厚としては、10μm〜1mmの範囲内であると好ましい。代表的な逆浸透膜としては、たとえば、酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系やポリ尿素系の分離機能層を有する複合膜などがあるが、中でも、本発明においては、ボリアミド系の複合膜を用いると効果が高く、特開昭62−121603号公報や特開平8−138658号公報、米国特許第4277344号明細書に記載されている芳香族系のボリアミド複合膜を好適なものとして挙げられる。 また、逆浸透膜モジュールとは、上記した逆浸透膜などを実際に使用するために筐体に組み込んだものであり、平膜形態の膜を用いる場合は、スパイラル型モジュールや、チューブラー型モジュール、プレート・アンド・フレーム型モジュールとするとよい。上記の内、スパイラル型モジュールは、たとえば、特開平9−141060号公報や特開平9−141067号公報に記載されるように、供給水流路材や透過水流路材などの部材を組み込んでおり、溶質濃度の高い海水を原水として用いたり、高圧で装置を運転する場合などに高い効果がある。 高圧ポンプの運転圧力は、供給水の種類や運転方法などにより適宜設定できるが、かん水や超純水など浸透圧の低い溶液を供給水とする場合には0.1〜3.0MPa程度の比較的低圧で、海水淡水化や廃水処理、有用物の回収などの場合には2.5〜15.0MPa程度の比較的高圧で使用するのが、電力等のエネルギーの無駄がなく、かつ良好な透過水の水質を得ることができ好ましい。また、適当な供給圧力、運転圧力を得るために、任意の経路にポンプを設置することができる。 また、逆浸透膜ろ過部の運転温度は、0℃よりも低いと供給水が凍結して使用できず、100℃よりも高い場合には供給水の蒸発が起こり使用できないため、0〜100℃の範囲内で適宜設定するが、装置や逆浸透膜の性能を良好に維持するためには、5〜50℃の範囲とするのが好ましい。詳細は、メーカー提供の技術資料の条件に従えばよい。 逆浸透膜ろ過部の回収率は、5〜98%の範囲内で適宜設定することができる。ただし、供給水や非透過水の性状、濃度、浸透圧に応じて前処理条件や運転圧力などを考慮する必要がある(特開平8−108048号公報)。たとえば、海水淡水化の場合には、通常10〜40%、高効率の装置の場合には40〜70%の回収率を設定する。また、かん水淡水化や超純水製造の場合には70%以上、さらには、90〜95%の回収率で運転することもできる。 また、逆浸透膜ろ過部における逆浸透膜モジュールは、1段とすることも、また、多段とすることもでき、さらに、供給水に対して直列でも並列に配しても構わない。直列に配列する場合は、モジュール間に昇圧ポンプを設置してもよい。 逆浸透膜の非透過水は圧力エネルギーを有しており、運転コストの低減化のためには、このエネルギーを回収することが好ましい。エネルギー回収の方法としては任意の部分の高圧ポンプに取り付けたエネルギー回収装置で回収することもできるが、高圧ポンプの前後や、モジュール間に取り付けた専用のタービンタイプのエネルギー回収ポンプで回収することが好ましい。また、造水装置の処理能力は一日当たり水量で0.5〜100万m3の範囲内とすることができる。 逆浸透膜ろ過部の配管は、できるだけ滞留部の少ない構造とすることが好ましい。さらに、スケールを生成を防止する目的から、供給水のpHは酸性にすることが好ましく、また、殺菌や洗浄剤として各種性質の薬剤を使用するケースも想定されるため、そのような薬剤が流れる配管やバルブその他の部材には、ステンレス鋼や2相ステンレス鋼などの耐薬品性を有する材料を用いることが好ましい。 本発明の造水方法は、精密ろ過膜を用いた液体と固形分の分離や濃縮、限外ろ過膜を用いた濁質成分の分離や濃縮を行うにあたっても適用できるものであるが、特に、逆浸透膜やナノろ過膜を用いて溶解成分の分離や濃縮を行うのに適している。中でも、海水やかん水の淡水化、工業用水の製造、果汁などの濃縮、水道原水の除濁、水道における高度処理などに効果が大である。 ここで本発明のポイントの一つであるバイオフィルムの量の評価方法について、詳しく説明する。 本発明における、原水取水部とは取水管、取水ポンプなどからなる原海水をプラントに取水するための工程を指す。前処理部とは、取水された海水に砂ろ過装置などの前処理装置により処理し、中間槽に一旦貯えるまでの工程を指す。逆浸透膜ろ過部とは、一つまたは複数の逆浸透膜モジュールと、前処理を経た海水を逆浸透膜モジュールに供給する前に施される一連の処理工程を指す。ここで、一連の処理とは、必要に応じて任意に実施される、保安フィルターによるろ過、亜硫酸水素ナトリウム溶液などの還元剤の添加、逆浸透膜モジュール部のファウリング防止のための殺菌剤の添加、スケール防止剤の添加などをさす。 本発明では、逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水を評価する。図1に逆浸透膜プラントのフローを示す。ここで、逆浸透膜供給水とは、前処理部200より下流で、逆浸透膜ろ過部300内にあり、逆浸透膜モジュール11が複数ある場合は、先頭の逆浸透膜モジュール11より上流の管路から分取され、逆浸透膜供給水と成分が同等、温度が同レベル(−3℃〜+5℃)の水である。逆浸透膜モジュール11が単一の場合は、その上流の管路から分取され、逆浸透膜供給水と成分が同等、温度が同レベル(−3℃〜+5℃)の水である。また、逆浸透膜非透過水とは、逆浸透膜モジュール11より下流の管路から分取され、少なくともひとつの逆浸透膜非透過水と成分が同等、温度が同レベル(−3℃〜+5℃)の水である。逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水の分取地点は、中間槽7より下流で保安フィルター8より上流の管路、保安フィルター8より下流で高圧ポンプ29より上流の管路、高圧ポンプ29より下流で逆浸透膜モジュール11までの管路、逆浸透膜モジュール11の逆浸透膜非透過水を通水する管路、のいずれに設けてもよい。ここで、分取地点の少なくとも一つは、殺菌剤や洗浄剤の添加地点の下流に設けることが好ましい。このようにすることで、殺菌や洗浄の効果を直接的に迅速に検証することが可能となり、その結果、逆浸透膜ろ過部300を、より安定、効率的に運転することが可能となる。 ここで、高圧ポンプ29より下流の高圧の管路から分取する場合、バイオフィルム形成基材を収容した通水容器16b、16cへの通水は、減圧後の通水下で形成されるバイオフィルム量の評価結果に基づいても、高圧下の逆浸透膜ろ過部の運転制御を良好に行えることを見出したため、測定に際する安全性、簡便性などを考慮、減圧後に通水することが好ましい。逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水は、配管17a、17b、17cより分岐し、パイプ、ホースなどを用いてバイオフィルム形成基材を収容した通水容器16に通水する。 図2〜図5にバイオフィルム形成評価装置、バイオフィルム形成素材の模式図を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。 ここでいうバイオフィルム形成評価装置とは、バイオフィルム形成基材55を収容した通水容器54と、通水容器54上流または下流側に流量調整バルブ56と流量計51があり、それぞれホース50やステンレス製の配管部材で接続したものである。通水容器54の両端には、ワンタッチ式ジョイント52が設けられ、バイオフィルム形成評価装置からの通水容器の着脱が容易な構造となっている。図1では、逆浸透膜ろ過部300内で先頭の逆浸透膜モジュール11より上流から枝分かれする配管17a、殺菌剤および洗浄剤添加地点より下流で逆浸透膜ろ過部300の先頭の逆浸透膜モジュール11より上流から枝分かれする配管17b、逆浸透膜モジュール11より下流から枝分かれする逆浸透膜非透過水が流れる配管17cとバイオフィルム形成基材を収容した通水容器16a、16b、16cとが、配管部材(図示していない)とホース50を用いて接続されている。 バイオフィルム形成基材55を収容した通水容器54の下流端に設けた、通水容器開閉部53と流量計51とは、配管部材で接続されている。ホースと配管部材の重なりあった部分は、外周をホースバンドで締め付けておくことが好ましい(図示していない)。 ここで、通水容器の形状は特に限定されるものでは無く、三角柱、四角柱(直方体)、多角形柱、円柱などを例示できるが、逆浸透膜面せん断条件や物質輸送条件に影響を与える水流条件の均一性や入手容易性の観点から、円管であるカラムを好適なものとして例示できる。通水容器の内部には、バイオフィルム量測定用の表面を提供する基材を収容する。通水容器の少なくとも一端はバイオフィルム形成基材を出し入れしやすい構造とする。ここで前述の通り、鋭意研究した結果、減圧後の通水下で形成されるバイオフィルム量の評価結果に基づいても、高圧下の逆浸透膜ろ過部の運転結果と相関があり、その運転制御を良好に行えることを見出したため、測定に際する安全性、簡便性などを考慮し、通水容器へは減圧後に通水することが好ましい。高圧ポンプより下流の逆浸透膜供給水や逆浸透膜非透過水は、減圧後に通水する方が、バイオフィルム形成基材上のバイオフィルム量を経時的に評価する際、通水容器へのバイオフィルム形成基材の出し入れを安全、簡便、迅速に実施でき、好ましい。ホース、配管部材、流量調節バルブ、通水容器などの耐圧性は、通水場の水圧に耐えられるものであればよく、プラントのレイアウトにもよるが、通常は、2kgf/cm2の耐圧性、密閉性を備えたものであれば足りる。各接続部は、必要に応じて、シールテープ、ビニールテープ、ホースバンド、エポキシ樹脂などで補強するとよい。 ここで、通水容器、配管部材、ホース、流量調節バルブの材質は、上述の強度要件を満たすものであり、また、殺菌や薬品洗浄などで使用される薬品に対して耐性を有し、有機物の溶出や吸着の少ないものであればいずれでもよい。通水容器の材質は、硬質で内部の状態を確認できる透明なガラスやポリカーボネートなどが好適なものとして挙げられる。また、配管部材の材質としては、テフロン(登録商標)、塩ビ、ステンレスを、ホースの材質としては、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂などが挙げられる。ホース、通水容器の長さは操作性が良ければいずれでもよいが、ホースは短い方が好ましく、通水容器の長さは発明者の経験では60cm程度が使いやすい。 通水容器の内径は特に限定されるものではないが、前記線速度の条件を実現しやすいように取水可能な流量に応じて決めるとよい。 通水容器、バイオフィルム形成基材および配管部材などの部材に遮光性の低い部材を使用する際は、藻類の増殖をさけるため、測定操作のとき以外、遮光することが望ましい。 通水容器への通水量流量は、バイオフィルム形成基材収容後の通水容器内の線速度が逆浸透膜モジュールの非透過水が流れる膜表面上の平均線速度と同等になるようにすることが、似たような生育環境、せん断環境となるため好ましい。例えばスパイラル式円柱形モジュールの場合、逆浸透膜非透過側の流路の円柱軸方向の断面積をS、ROモジュールへの供給水流量と非透過水流量の平均をFとしたとき、0.3×F/S以上、3×F/S未満、より好ましくは、0.7×F/S以上、1.3×F/S未満の速度のことを指す。通水量流量は、通水容器54の上流または下流に流量計51を接続し測定してもよいし、一定時間、水を回収し、容積または秤量により測定してもよい。 バイオフィルムの形成には、温度や栄養素の濃度以外に、水力学的条件がバイオフィルムへの菌や有機物、無機物の付着、バイオフィルムからのこれら成分の剥離、バイオフィルムの強度などに影響することが知られており、これを逸脱すると基材上に形成されるバイオフィルムの特性が、逆浸透膜モジュールの膜面上に形成されるバイオフィルムとかけ離れたものとなり、逆浸透膜モジュールの膜面上のバイオフィルム量を正確に評価、監視することができなくなる。逆浸透膜モジュールの線速度は、逆浸透膜モジュールの位置、運転条件などにより異なるが、一般的に5〜30cm/sの範囲である。 通水容器の配置方向は、特に限定されるものではないが、鉛直に配置し、液を鉛直方向上向きに流し、上端を通水容器開閉部として使用した方がバイオフィルム形成基材を出し入れしやすく好ましい。 バイオフィルム量の測定に際しては、図1を例にすると、バルブ等により通水容器54への通水を停止し、バイオフィルム形成基材55を収容した通水容器の下流端に設けた通水容器開閉部53を開けて、内部の基材の一部のみ注意深く取り出す。一部のみ取り出した後、残りの基材を入れた通水容器54の下流端に設けた通水容器開閉部53を閉じ、再び通水を開始し、取り出した基材表面のバイオフィルム量を測定する。例えば、バイオフィルム形成基材55として、図3に示すようなテフロン(登録商標)リングを30個程度通水容器54内に積み重ねて収容し、外周面及び内周面を評価水が通過可能な構造となっている。リングは、図4に示す片方にリングフックのついたステンレス棒57に挿入され、バイオフィルムの評価に際しては、棒をつまみ上げ、必要な量(通常2〜3個ずつ)ピンセットで取り出し、円柱内表面と外表面のバイオフィルム量を測定する。 また、バイオフィルム形成基材として逆浸透膜を用いるときは、図5の様に、短冊状の逆浸透膜断片の分離機能層表面(ろ過時の原水側)が内側になるようロールさせ、通水容器54の内壁に沿わせて、通水容器54内に押し込み収容する。ここで、内側とは、通水容器54内部の評価水が通水する部分をいう。逆浸透膜の分離機能層表面を評価水が通水するよう、内壁に沿わせて入れる。そして、評価に際しては、上端をピンセットでつまみ出し、一定量を切り出した後、残りを再収容し、通水を再開する。ポリカーボネート製の透明な通水容器54を用い、通水容器内に逆浸透膜を収容する場合は、通水容器の軸方向に目盛りをふると毎回の測定時に切り出す面積を揃えることができ、便利である。 逆浸透膜プロセスに供給される海水の様に、微量の有機物を含む水の通水下で形成されるバイオフィルム量の評価方法としては、供給飲料水の水質評価を目的に同様の評価装置を用いたバイオファウリング形成速度評価法(BFR法)が提案されている(非特許文献:ディック・ファン・デル・コーイら、ウォーターリサーチ、29巻、7号、1655〜1662ページ、1995年)。BFR法では、テフロン(登録商標)やガラスリングをガラスカラムに鉛直方向に互いに重ね、評価水を供給し、リング表面上に形成されるバイオフィルムを定期的に評価する。バイオフィルム量評価時には、リングを10mlの水の入った円管に浸漬後、ソニックし、分散したバイオフィルム量を、分散液のATP量を定量することにより測定する方法が提案されている。 ここで、当該分野では、バイオフィルム量測定用の基材の材質は、微生物の餌となる有機物の溶出や微生物の増殖を阻害する物質の放出の心配の少ないテフロン(登録商標)、ガラスが好適なものとされているが、比較検討の結果、むしろ逆浸透膜プラントの膜面モニタリング用途には、逆浸透膜ろ過部で使用されている逆浸透膜モジュールの膜と同じ膜を用いた場合、最も信頼性高く、高感度に評価可能であることが分かった。すなわち、逆浸透膜モジュールと同じ膜を用いた場合においては、初期バイオフィルム形成の時間をテフロン(登録商標)やガラスを用いた場合より短縮できるケースがあり、早期検出の点で好ましいことを見出した。また、同一供給水を通水したテストでは、バイオフィルムが形成されてからは、その増加速度は、逆浸透膜、テフロン(登録商標)、ガラス間では同等であり、逆浸透膜自身からの有機物溶出は、評価に悪影響を及ぼすことがないことを確認した。 後述の、最もバイオフィルム量評価に適したATP測定方法によって、バイオフィルム形成基材として、テフロン(登録商標)と逆浸透膜を用いた場合とを比較した一例を示す。あるプラント試験において、同じ通水容器内に同時に収納したテフロン(登録商標)リングと逆浸透膜を用いて、バイオフィルム形成量の増加速度を測定した。テフロン(登録商標)リングはリングフックのついたステンレス棒を持ち上げ、リング1つをピンセットでつまみ出し、逆浸透膜は、端をピンセットで引き出し、約40〜45×80〜90mmを切り出した。表面付着物は、テフロン(登録商標)リングの場合は、リング1個の上下断面を除く外面と内面の合わせて約15cm2を滅菌綿棒1本でふき取り、逆浸透膜の場合は切り取り後の通水側膜表面の半面約15cm2を滅菌綿棒1本でふきとり、それぞれ最終3mlの蒸留水(大塚製薬、注射用、20ml/個)に懸濁させて回収した。リングと逆浸透膜についてそれぞれの回収液のバイオフィルム量を測定した。また、残りのリング1個と逆浸透膜半面に関しても、同様にそれぞれ綿棒でバイオフィルムを回収し、蒸留水に懸濁させて回収後、それぞれの回収液のバイオフィルム量を測定した。リングと逆浸透膜についてそれぞれ回収液のバイオフィルム量平均値を算出した。 回収液のバイオフィルム量は、測定初期には、どちらもバイオフィルム量が検出限界以下で推移していたが、逆浸透膜のバイオフィルム量は運転35日目から約3.5pg/cm2/dayの速度で増加した。一方、テフロン(登録商標)リングのバイオフィルム量は、逆浸透膜より遅く運転47日目から増加した。増加速度は、約3.5pg/cm2/dayで逆浸透膜が素材の場合と同様であった。水質が多少汚い別のプラントにおいて、同様に試験した結果では、素材によらず、バイオフィルム形成速度、量は同程度に推移し、運転7日目からは逆浸透膜のバイオフィルム量が50pg/cm2/dayで増加し、運転42日目には1500〜1750pg/cm2となった。なお、別検討で非特許文献の記載と同様に、ガラスとテフロン(登録商標)ではバイオフィルム形成の基材として結果に差がないことを確認した。これらの結果から、逆浸透膜プラントの膜面モニタリング用途には、テフロン(登録商標)やガラスより逆浸透膜の方が応答性が高く、より速く評価結果がわかり、測定期間を短縮することが可能であることを見出した。従って、より速くプラントの運転条件のフィードバック制御が可能となり、バイオフィルム量測定用の表面を提供する基材のなかで、逆浸透膜ろ過プロセスに用いられている逆浸透膜が好ましい。 上記は、水質の評価実験結果に基づくが、以下の理由からもバイオフィルム形成基材として逆浸透膜を使用することが好ましいと考えられる。逆浸透膜の表面は、表面電位などの物性が、逆浸透膜供給水の塩濃度、pH、前処理部での処理、逆浸透膜ろ過部内の逆浸透膜モジュール上流で添加される薬品の種類や濃度など種々溶液化学的環境に応じて変化するが、これら環境変化に対する応答が他の素材を使用した場合に比べて忠実である。例えば、ポリアミド性逆浸透膜を用いた膜ろ過プラントで酸性(pH3)の薬剤を使用した場合、ポリアミド性逆浸透膜だと官能基としてカルボン酸とアミンがあるが、カルボン酸はこのpHならほぼ全て電荷がなくなり、また、アミンはほぼ全てアンモニウムイオン、すなわち、プラス荷電となるため、全体ではプラス荷電になる。反対に、アルカリ性(pH10)の薬剤を使用した場合は、全体でマイナス荷電となる。ガラスやテフロン(登録商標)などを素材に使用した場合は、表面に解離可能な官能基がないため、pHが変化しても表面電位の変化はほとんどない。これは、バイオフィルム形成初期の細胞と膜の付着プロセスや、殺菌剤使用のバイオフィルムの付着・剥離性、洗浄回復性などに影響を及ぼす。バイオフィルム形成基材の素材として逆浸透膜ろ過プロセスに用いられている逆浸透膜を使用することで、上記のような表面の化学的性質以外に、ミクロな凹凸構造などの特徴も、逆浸透膜モジュールの膜表面の状態を再現しており、他の素材を用いた場合に比べて、逆浸透膜モジュールの状態を監視する素材として信頼性が高いという利点を有する。逆浸透膜は、品種により、組成、表面の特徴が異なり、pHに対する表面電位などの応答性も異なることから、単に逆浸透膜というだけでなく、プラントで使用されているものと同じ品種の膜を使うことが好ましい。例えば、低ファウリング性逆浸透膜を採用しているプラントでは、低ファウリング性逆浸透膜をバイオフィルム形成基材として使用することが好ましい。 逆浸透膜を用いた場合、測定の迅速化、応答性改善、信頼性向上の効果以外に、以下の利点を有する。素材が柔軟であるため、各種サイズ、形状の通水容器に収容することが可能である。特に、許容される通水容器への通水水量や現場で調達可否など通水容器への制約条件に対して容易に対応可能である。また、通水容器として、水流の均一性、汎用性の観点から好適なカラムを用いた場合は、更に、(1)丸めて収容できる。復元力があるため、機能面を内側にして、カラムに収容すると十分な強度で配置でき、固定具が不要である。固定が非常に簡便に行え、錆や劣化などによる外れが心配されるクリップや接着剤などを用いた場合に比べて安心である。(2)ピンセットなどで基材を引っ張り出して一部を切り出し、残りを元に戻して測定ができる。バイオフィルムの程度などに応じて評価する基材の面積を調節できる。(3)切り出して逆浸透膜のろ過性などを評価することができる、などの利点が加わる。 なお、カラムへ逆浸透膜を収容する場合、分離機能層表面(ろ過時の原水側)を評価水が通水するようロールさせ、通水容器の内壁に沿わせて、通水容器内に押し込み収容する。収容する面積は、内径D、高さHの円筒形通水容器の場合、多少重なっても良いが、大きさ内径Dの円周以下×H以下に収まるサイズとすることが、無駄な部分が少なくなるため、好ましい。 バイオフィルム量の測定頻度は、状況に応じて決定すればよく、毎日行ってもよいし、1週間に1回程度で行なってもよい。また、間隔は不規則的でも、規則的でもよい。逆浸透膜モジュール供給水や、非透過水は、前処理を経た水であるため、生物処理直後の下水処理水や汚染された河川水を通水した場合などのようにバイオフィルム形成速度が極端に高いことは考えがたい。従って、測定頻度は1日より短くしても、作業が増える労力の割に情報量が増えず、効果的ではない。ただし、例えば、殺菌や洗浄剤などの効果を作用前後で短時間に評価する場合などはこの限りではなく、1日より短い時間内に評価を行ってもよい。一方、測定頻度が少なすぎるとモニタリングの有効性が下がることから、6ヶ月に1回以上は実施する必要があり、より好ましくは1ヶ月に1回以上、さらに好ましくは1週間に1回以上である。 ここで、バイオフィルムには、生命活動を行っているバクテリアや不活化した細菌や多糖類やタンパク質などのそれらの代謝生成物、さらには死骸や核酸などの分子が含まれる。従って、バイオフィルムの定量化法としては、種々考えられ、タンパク質、糖、核酸、細菌の全菌数、ATPなどより定量化することが可能であるが、この中では、ATP測定法が、感度、簡便性、迅速性に優れ、ポータブルなキットや試薬等も市販されているため特に好ましい。 タンパク質、糖、核酸の定量には吸光光度計や蛍光分析装置などの機器が必要であり、強アルカリ性、強酸性や変異原性の試薬を使用するため、現場で簡便、迅速に実施できる方法とは言い難い。また、形成されたバイオフィルムを表面から液体中に懸濁し、その懸濁液を用いて、培養可能な微生物をコロニーとして計数する寒天培養法もあるが、培養可能な微生物のみを計数するため、バイオフィルムに含まれる全生物数を評価できないという問題がある。分子生物学的な遺伝子情報に基づく環境微生物系の解析の結果、バイオフィルムに含まれる微生物の中で、寒天培養法で分離培養可能な微生物の割合が低いことなどの理由のため、コロニー計数結果とバイオフィルム量との間の相関性は低い、あるいは相関性がないという報告がある。また、本方法でバイオフィルムを評価するには多くの機材や設備が必要である上に、培養に日数がかかり、迅速に評価することができないなどの問題がある。顕微鏡を用いて菌数を直接計数する方法も考えられるが、バイオフィルム中の菌を分散させるのが困難であり、また、計数も非常に骨が折れる作業である。 一方、ATP測定法は、全ての生物がもつ生命活動のエネルギー物質であるATP(アデノシン−5´−三リン酸)を菌体から抽出し、ホタルの発光酵素ルシフェラーゼを利用して発光させ、発光量(RLU:Relative Light Unit)を測定するものである。発光量はATP量に比例するため、発光量を測定することで微生物量が評価することができる。反応は、基質であるATP、ルシフェリン、酸素、ルシフェラーゼ、補酵素マグネシウムイオン存在下で進行し、光が生じる。測定時間が数分と短く、測定試薬もキットが市販されている。また、発光光度計装置も、検出感度が高く、1pg/cm2の濃度で検出可能でありながら持ち運び可能で機動性に優れたものが市販されている。ATPは生命活動に関連した物質であるため、ファウリングやフィルム形成が、バイオフィルム形成と因果関係があるか、すなわち微生物活動に基づくかどうか明確に評価できる。バイオフィルム形成が問題となる現場で、高感度、簡便、迅速に評価可能であり、特に、実験室などに戻る必要ない。また、寒天培養法など、培養に伴うバイアスも少なく信頼性高くバイオフィルム量を評価することができる。(日本特許第3252921号) 基材表面のバイオフィルム中のATPの回収・分散方法は、回収率が高く定量的な方法であれば特に限定されるものではなく、効率性の高いものを選べばよく、取り出したテフロン(登録商標)リングやガラスリングなどの硬質の基材を純水に浸漬し、超音波破砕によりバイオフィルム破片を純水中に分散させた後、当該液にATP抽出用試薬を添加する方法が開示されているが、超音波破砕では抽出効率が悪く、バイオフィルム形成面として最適な逆浸透膜を使用した場合に尚更効率が低下することがわかった。そして、素材に強固に付着したバイオフィルムを微生物の生存率に影響を与えずに測定するのに確実に剥離させ回収する方法としては、取り出した基材に付着したバイオフィルムをふき取り用具を用いて回収した後、ふき取り用具を純水に浸漬し、付着したバイオフィルム破片を分散させる方法が最も好ましいことを見出した。生存率低下への影響の少ない穏和な超音波破砕処理条件では、各地プラント設置のバイオフィルム回収効率が低く、超音波破砕処理に供した表面からふき取り用具を用いてバイオフィルムが著量回収されるケースが多かった。 ふき取り用具としては、小スケールの分析が可能で、バイオフィルム回収加減を手の感触で感じることができ、バイオフィルムの回収に用いるのみでなく、その後のバイオフィルムの分散や液の混合に使用でき、ATPフリーの清潔なものが市販され入手容易である理由から、綿棒を特に好適な用具としてあげることができる。このようなふき取り法の場合、海水淡水化プラントなどの逆浸透膜ろ過プラントの現場で、機器が大がかりにならならず、特に、コンセントも不要である。また、ふき取る面の面積に対して、懸濁させる液の液量を少なめに調節することで、高感度測定に必要な濃縮操作も容易に実施可能という利点も有する。 ある逆浸透膜ろ過プラントで、通水容器から通水開始2週間後のテフロン(登録商標)リング(外径18mm、内径14mm、高さ15mm)3個をピンセットで回収し、超音波破砕方法と、綿棒拭き取りを行う本方法とを比較した。超音波破砕を用いた測定では、テフロン(登録商標)リング1個を10mlの純水に完全に浸漬させ、超音波で39kHz、2〜10分処理して、バイオフィルム懸濁液を調製した。一方、綿棒を用いて拭き取りを行う本方法では、テフロン(登録商標)リング1個の上下断面を除く外面と内面の合わせて約17cm2を滅菌綿棒1本でふき取り、純水10mlに懸濁させて回収した。それぞれのバイオフィルム回収・破砕方法で得られたバイオフィルム懸濁液100μlを用い、後述のATP測定により、リング内外表面あたりのATP付着量を測定した結果、超音波破砕では処理時間によらず発光量が100RLU以下で定量困難であったが、綿棒を用いた拭き取り法では、RLUが890程度であり、測定、定量が可能であった。また、残りのテフロン(登録商標)リングの約17cm2を滅菌綿棒1本でふき取り、純水1mlに懸濁させ同様に実施した結果、RLUが8,500となり、液量を減らすことで、高感度に測定できることがわかった。 懸濁液のATP測定は特に限定されないが、市販されている試薬キットを用いるのが、準備含めて簡便である。また、発光量の測定には、発光光度計が必要であるが、コンセント不要のコンパクトなバッテリー式の携帯型装置でありながら、据え置き型と同性能の高感度な検出器を備えた機器が市販されており、推奨される。例えば、測定に必要な試薬一式を含むキットとしては、「ルシフェール(登録商標)250プラス」(キッコーマン製)が、また、携帯型装置としては、「ルミテスター(登録商標)C−100」(キッコーマン製)がある。試薬キットには、ルシフェラーゼ(発光酵素)を含む発光試薬、リン酸緩衝液などを含む発光試薬溶解液、界面活性剤を含む細胞からATPを抽出する試薬などで構成される。 またサンプル、試薬の分注は、少量の液量を精度良く正確に定量できるものであればいずれの機器を用いてもよく、ピペットマン(登録商標)(ギルソン製、1000μl用、200μl用)などを例示できる。ここで、サンプルや試薬の取り扱いに使用する器具はサンプル以外のATP汚染を防ぐため、滅菌処理したものを使用する。ピペットマン(登録商標)は、使用するチップは、予めオートクレーブ(121℃、15分)で滅菌処理する。 ここで、バイオフィルムを分散させる純水は、蒸留水、精製直後の逆浸透膜精製水、精製直後のイオン交換水、市販の超純水などのATPを含有しないもの(10ng/l以下)を用いるのが、測定への不純物による誤差が少なく好ましい。市販の医療用ディスポーザブルな蒸留水も便利で好ましい。水道水をオートクレーブ滅菌して使用してもよい。 サンプルを入れるチューブなどの容器もATPに汚染されていない清澄なものであればいずれでもよいが、予め滅菌済のものを使用しても、非滅菌品をオートクレーブして使用してもよい。また、「ルミテスター(登録商標)C−100」には、発光定量用にATPフリーのセル「ルミチューブ(登録商標)」(キッコーマン製、3ml用)が市販されており、本セルを統一的に使用しても良い。一度使用したチップやチューブ、容器類は使い捨てが好ましいが、洗浄、滅菌後に再使用してもよい。 測定用のチューブに純水を分注し、逆浸透膜に付着したバイオフィルムを拭き取った綿棒を1〜2分ずつ浸漬、撹拌して懸濁液を得る。この操作は1回実施してもよいが、正確な値を得るために、拭き取ったバイオフィルムをできるだけ多く綿棒から分散・懸濁させるために、1回目の液に分散・懸濁させた綿棒を、別の液に浸漬、撹拌することを繰り返し、数回に分けて実施した方が、正確な値が得られ、値自体が安定化するため好ましい。綿棒でふき取る面積、液量にもよるが、綿棒で15cm2程度の面積をふき取り、1mlの水に分散させる場合、3回でほぼ値が一定化し、1回だけ行った場合は、3回実施した場合の約半分の値がとなる。 調製した懸濁液の発光量測定は、正確に測定できるものであれば、特に限定されず、キットを使用した場合は、その使用法に準拠して実施すればよい。例えば、「ルシフェール(登録商標)250プラス」、「ルミテスター(登録商標)−100」を使用した際は、懸濁液を測定用チューブに100μlずつ分注し、ATP抽出試薬を100μl入れ、20秒後に発光試薬100μl入れて、携帯型分析装置「ルミテスター(登録商標)C−100」(キッコーマン製)で発光量を測定すればよい。予め、既知ATP濃度の液での発光量(RLU)を評価し、ATP濃度と発光量の相関式を得ておく。あるいは、メーカー提供の相関式データを採用すればよい。バイオフィルム懸濁液の発光量が得られたら、相関式によりATP量に換算する。回収したバイオフィルム形成面の面積、懸濁した蒸留水の液容積、換算したATP量の結果を用いて、拭き取り面上の単位面積当たりのATP量(pg/cm2)を算出する。サンプルを希釈した場合は、希釈度を考慮する。 ここで、ATP測定を用いた評価法は、優れた方法であるが、測定に使用する酵素ルシフェラーゼは塩により強く阻害を受け、微量の塩化物イオンの存在下では検出感度が低下するという問題がある。発光量の相対比は、塩化物イオンを含まない場合に対して、食塩濃度1%で約30%、0.5%で約50%、0.1%で85%程度である。従って、海水の通水下に形成されたバイオフィルムを淡水に懸濁した液でも阻害の影響を受け、工程やプラント地点に係わらず正確な評価のために、塩阻害の影響を排除する必要がある。 バイオフィルム懸濁液をフィルターろ過して集菌後、塩を含まない純水に再懸濁して塩濃度を低減させる方法も考えられるが、フィルターろ過する方法の場合、フィルターろ過機材を準備しなければならず、また、フィルターろ過を行った後バイオフィルムをフィルターから再懸濁する工程が必要であるため、準備、測定操作ともに煩雑となり時間もかかる。また、バイオフィルムの性状によっては、ろ過した膜に微生物やATPが残留する可能性があり、回収効率が悪い場合がある等の問題がある。少量の場合にはロスの影響も大きい。別法として、サンプルに既知ATP溶液を添加し、阻害のある状態での発光量を得ることにより、得られたサンプルATP濃度を阻害の無いATP濃度に換算する内部標準法もある。しかしこの方法で、例えば、海水淡水化プラントの工程におけるように、多地点で塩濃度がそれぞれ異なるサンプルを測定する場合、サンプル毎に阻害のある状態で既知ATP溶液を添加したサンプル数が加わるため、少なくとも倍以上、測定サンプル総数が増えることになり、煩雑となり、測定時間がかかる。 鋭意検討した結果、予め塩濃度が発光量に与える影響に関する相関式を得ておき、バイオフィルム懸濁液の塩濃度を導電率計で測定し、前述の相関式を元に、塩阻害の影響を排除した真のATP濃度を迅速、簡便に補正できることを見出した。ここで、導電率測定方式には、センサー浸漬型や、液を滴下する平面センサー型があるが、少ない液量規模での測定でバイオフィルム懸濁液量が少ない場合には、微量サンプルを滴下して測定可能な平面センサー型を用いることが好ましい。液を滴下する平面センサー型の機器としては、電池内蔵式の堀場製作所製「Twin cond EH−173」などを例示することができる。予め、既知濃度の人工海水または食塩水を200〜250μl程度、平面センサー上にのせて、数秒後に検出される導電率(mS/cm)を元に、塩濃度と導電率との相関式を得る。バイオフィルム懸濁液の導電率も同様に測定し、導電率(mS/cm)を元に塩濃度を算出し、塩濃度が発光量に与える阻害の相関式により、塩阻害の影響を排除した、懸濁液の正確なATP濃度を評価することができる。 以上に述べた方法で最良のバイオフィルム評価形態である、(1)バイオフィルム形成素材からのバイオフィルムの剥離・回収を綿棒などによるふき取り方式で行い、(2)ふき取った綿棒は、高発光量の測定が可能な様に少量の淡水に浸漬・分散させ、(3)分散液のバイオフィルム量を携帯型装置の発光光度計を用いたATP測定により評価し、また、(4)海水淡水化プラントの各工程で形成されたバイオフィルムを評価する場合の様に、塩を含む原水の通水下でのバイオフィルム量を評価する場合には、液滴下方式の平面センサー型導電率測定装置を用いて塩濃度阻害の影響を補正する、という全ての要件を満たした方法を採用した場合は、少量のサンプル、少量の試薬・基材で、コンセントを必要とせずに、現場で、簡便・迅速に正確にバイオフィルム量を測定することが可能である。 バイオファウリングが発生した逆浸透膜モジュール3本の逆浸透膜表面上のバイオフィルム量を測定した結果、単位面積あたりのATP量は、1,000〜2,000pg/cm2程度であった。本発明を実施し、逆浸透膜供給水を通水下で形成されるバイオフィルム量でも1,500pg/cm2程度を超えるとプラントで圧力損失の増加などがみられるようになった。 一方、3ヶ月以上のある一定期間運転しても圧力損失が安定に推移した逆浸透膜モジュール5サンプルの逆浸透膜表面上のバイオフィルム量を測定した結果、いずれもATP量が200pg/cm2以下であった。また、膜面モニターが200pg/cm2以下となるように運転されていたプラントの圧力損失は安定に推移した。これらのことから、本発明者らは、バイオフィルムをATP測定法で評価した場合、ATP量が200pg/cm2以下となるように管理すればよいという指針を得るに至った。なお、一時的に、例えば、1週間に2日弱、仮に200pg/cm2を超える場合があっても、定期的に、例えば1週間に5日以上、バイオフィルム形成基材55の単位面上あたりのATP量が200pg/cm2以下となるようにプラントの運転方法を制御すれば、同等の効果が得られると考えられ、本指針をこのような考え方に基づいて運用してもよい。 評価結果を逆浸透膜ろ過プラントの運転にフィードバックする方法について、以下に例示するが、これに限定されるものではない。すなわち、該フィードバック方法は、逆浸透膜ろ過部にバイオフィルム形成評価装置を設け、造水中に、逆浸透膜モジュール11膜面上の微生物量を定量的に監視することで、圧力損失上昇や透水量低下に至る前に、前処理部の運転条件を変更したり、逆浸透膜ろ過部における殺菌や、逆浸透膜モジュールの回収率を変更するなど、逆浸透膜ろ過プラントの運転方法を適正に修正することである。また、監視結果を受け、一部または全ての逆浸透膜モジュールのろ過運転を休止し、洗浄剤によって逆浸透膜モジュールの薬品洗浄を施すこともフィードバック方方法としてあげられる。 評価結果にもとづいて、逆浸透膜ろ過部の殺菌条件を制御する場合を例に、具体的に示す。逆浸透膜ろ過プラントでの造水時に、バイオフィルム形成評価装置で得られたバイオフィルム量の結果をグラフにプロットする。ここでバイオフィルム量が、管理基準であるATP200pg/cm2と比較して、200pg/cm2に迫る勢いで増加傾向にある、または、ATP200pg/cm2を既に超過している場合は、プラントで実施中の殺菌条件によるバイオフィルム形成抑制効果が弱いと考えられるため、実施中の殺菌条件の強度を変更する。殺菌条件の強度の変更方法としては、殺菌剤添加の頻度の増減、1回の殺菌時間の増減、殺菌剤注入時の濃度の増減、殺菌剤の種類の変更などがあげられ、これらのうちいくつかを組み合わせて行っても良く、いずれか一つだけ行ってもよい。バイオフィルム量が、管理基準であるATP200pg/cm2と比較して、かなり低いレベルにある、具体的には20pg/cm2以下である場合、殺菌条件が強すぎて殺菌剤が無駄になっていると考えられるため、殺菌条件の強度を下げたり、殺菌剤の添加を一時停止してもよい。 さらに、新たに殺菌剤及び殺菌方法を決定する場合に、単一の評価装置である場合は、殺菌剤及び殺菌方法の変更の前後で結果を比較して、効果を判定するとよい。また、評価装置を複数設け、独立に殺菌条件を同時並行で比較評価すると、運転指針がより迅速に得られ、特に、プラント運転立ち上げ時などに好適である。 バイオフィルム量の測定とその結果を受けた殺菌条件変更に関しては、マニュアルで行ってもよく、あるいはオートメーション化して実施してもよい。 評価結果にもとづいて、逆浸透膜ろ過部の洗浄条件を制御する場合も上述の殺菌条件を制御する場合と同様に実施すればよい。逆浸透膜プラントの運転方法の制御の方法としては、その他、取水部における取水管1の取水地点の変更や、次亜塩素酸溶液添加条件の変更、前処理部におけるろ過装置の変更や凝集分離条件の変更、などを挙げることができる。 以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。(実施例1) プラントP1にて、凝集砂ろ過処理した海水を原水とし、殺菌剤注入口、高圧ポンプ、直径4インチの架橋芳香族ポリアミド系逆浸透膜モジュールなどから構成される海水淡水化実験装置を2系列(以下、A系列、B系列とよぶ)設置した。 A系列には、殺菌剤注入口下流、高圧ポンプより上流の管路に設けられた分岐管から評価水を採水し、バイオフィルム形成評価装置(内径2.7cm、長さ60cmの円柱カラム×2本、各カラムはホースで直列に接続)にブレードホースで供給、7.2l/minの流量で通水した。バイオフィルム形成評価装置には逆浸透膜モジュールに使用している品種と同じ逆浸透膜を基材として収容し、サンプリング時には逆浸透膜を2週間に1回、4〜4.5cmずつ切り出して、逆浸透膜面上のバイオフィルム量をATP測定した。 殺菌剤注入口からは、殺菌剤Xを1週間に1回1時間、添加して殺菌を実施していた。B系列には、このようなバイオフィルム評価の手段を設けず、殺菌条件は同様に運転した。 ATP測定には携帯型分析装置「ルミテスター(登録商標)C−100」(キッコーマン製)及び専用試薬キット「ルシフェール(登録商標)250プラス」(キッコーマン製)を使用した。またサンプルや試薬の分注には、ピペットマン(登録商標)(ギルソン製、1000μl用、200μl用)とオートクレーブ(121℃、15分)処理したチップを用い、分注や測定には、測定用「ルミチューブ(登録商標)」(キッコーマン製、3ml用)を容器として用いた。チップやチューブは使い捨てで使用した。 切り出した逆浸透膜面上のバイオフィルム量のATP測定は次の手順で行った。逆浸透膜の表面付着物を滅菌綿棒でふき取り、蒸留水1ml(大塚製薬、注射用、20ml/個)に懸濁させて回収した。切り取った逆浸透膜表面の半面約15cm2を滅菌綿棒1本で拭き取った。綿棒でバイオフィルム拭き取り後、3段階に分けて懸濁させるため、測定用チューブ(「ルミチューブ(登録商標)」を使用)に蒸留水(大塚製薬製、注射用、20ml/個)1mlずつ分注したものを3本用意した。1本目の蒸留水が1ml分注されたチューブの水にバイオフィルムを拭き取った綿棒を1〜2分ずつ浸漬し、注意深く撹拌して懸濁液を得た後、その綿棒を、順次2本目、3本目のチューブの水に浸漬、撹拌し、3段階の懸濁液を準備した。 調製した各々の懸濁液について、懸濁液を100μlずつ別の新しい測定用の空の「ルミチューブ(登録商標)」に分注し、そこにATP抽出試薬を100μl追加添加し、20秒後に発光試薬100μlを添加後、ルミテスター(登録商標)で発光量を測定した。また、100μlの発光測定用の分取に使用した残りの懸濁液約900μlから液を200μl程度分取し、それぞれコンパクト導電率計「Twin cond EH−173」(堀場製作所製)を使用し、導電率を測定した。 測定終了後、3段階の懸濁液について、それぞれ導電率から塩濃度を算出し、塩濃度と発光量の阻害の相関式から当該塩濃度での発光量阻害率を算出し、阻害のない状態での発光量を求めた。ついで、ATP濃度と発光量の相関式をもとに、ATP濃度を算出した。3段階の懸濁液について得られたATP量を合算し、サンプル付着物内のATP総量を算出した。ATP総量を掻き取った面積で割り、バイオフィルム形成基材単位面場あたりのATP量を求めた。測定はn=2で行い、平均値を算出した。 実験を開始して約1ヶ月間、A系列、B系列とも圧力損失は増加せず、逆浸透膜ろ過運転は安定に推移していた。このとき、A系列で設けられたバイオフィルム評価部にけられた面上のATP濃度は、3回続けて約100pg/cm2で推移していたが、1.5ヶ月を超えたあたりで、250pg/cm2、340pg/cm2、480pg/cm2と急激に値が上昇し始めた。 そこで、A系列では殺菌条件を強化し、殺菌剤Xを1日に1回1時間になるよう添加する条件に切り替えた。B系列では、圧力損失が上昇していなかったことから、殺菌条件は変更しなかった。 A系列の殺菌条件を切り替えて、約1ヶ月後からB系列の圧力損失が増加しはじめ、最終的に圧力損失の変化が0.5MPaに到達した。この間、A系列の圧力損失は増加せず一定に推移した。また、バイオフィルム付着量は200pg/cm2以下であった。(実施例2) 凝集加圧浮上処理と砂ろ過処理した海水を原水とし、殺菌剤注入口、高圧ポンプ、直径4インチの架橋芳香族ポリアミド系逆浸透膜モジュールなどから構成される海水淡水化プラントP2で、本発明を実施した。殺菌剤注入口上流に設けられた分岐管から、バイオフィルム形成評価装置A(内径1.4cm、長さ60cmの円柱カラム1本)に2L/minで評価水を通水した。さらに、殺菌剤注入口下流、高圧ポンプより上流の管路に設けられた分岐管から、バイオフィルム形成評価装置B(内径1.4cm、長さ60cmの円柱カラム1本)に2L/minで、評価水を通水した。各々のバイオフィルム形成評価装置には逆浸透膜ろ過プラントの逆浸透膜モジュールに使用している品種と同じ逆浸透膜を基材として収容し、サンプリング時には逆浸透膜を1週間に1回、4〜4.5cmずつ切り出して、膜面上のバイオフィルム量をATP測定した。ATP測定は実施例1に記載と同様の方法で行った。殺菌剤注入口からは、殺菌剤Xを1日に1回1時間添加して殺菌を実施していた。 37日間運転した結果、殺菌剤注入口上流に設けたバイオフィルム形成評価装置Aのバイオフィルム付着量は2.5pg/cm2、24pg/cm2、67pg/cm2、136pg/cm2であった。一方、殺菌剤注入口下流に設けたバイオフィルム形成評価装置Bのバイオフィルム付着量は2pg/cm2、22pg/cm2、11pg/cm2、46pg/cm2であった。バイオフィルム形成評価装置Aの付着量に比べ、バイオフィルム形成評価装置Bの付着量が低く推移していることから、本プラントにおける殺菌剤X注入によるバイオフィルム付着抑制効果があることが確認できた。引き続き運転を実施し、運転休止までの計約2ヶ月間、膜モジュールの圧力損失は一定に推移し、プラントを安定に運転することができた。(実施例3) 砂ろ過処理した海水を原水とし、殺菌剤注入口、高圧ポンプ、直径4インチの架橋芳香族ポリアミド系逆浸透膜モジュールなどから構成される海水淡水化プラントP3で本発明を実施した。高圧ポンプより上流で、殺菌剤注入口前後の管路に設けられた分岐管から、バイオフィルム形成評価装置A(殺菌剤注入地点上流より取水)とB(殺菌剤注入地点下流より取水)にそれぞれ5.5L/minで評価水を通水した。各バイオフィルム形成評価装置の通水容器としては、内径2.7cm、長さ60cmの円柱カラムを用いた。本プラントでは1週間に1回、30分間、殺菌剤Xが添加されていたが、膜モジュールの圧力損失は1ヶ月で0.2MPaを越え、逆浸透膜モジュールの頻繁な洗浄が必要となっていた。 テフロン(登録商標)リングを基材として収容し、2週間に1回、2個ずつ取り出し、テフロン(登録商標)リング表面のバイオフィルム量をATP測定した。ATP測定は実施例1に記載と同様の方法で行った。 50日間評価した結果、バイオフィルム形成評価装置Aのバイオフィルム付着量は390pg/cm2、912pg/cm2、1273pg/cm2、2719pg/cm2であった。一方、殺菌剤の流入したバイオフィルム形成評価装置Bのバイオフィルム付着量は111pg/cm2、784pg/cm2、1490pg/cm2、3228pg/cm2であった。 殺菌剤Xの強度が弱いと考え、頻度を1週間に2回に増やしたところ、殺菌剤X無添加に比べ、添加系ではバイオフィルム形成速度が約2割上昇した。 これらの結果から、本プラントにおいて、殺菌剤X注入によるバイオフィルム付着抑制効果はない、あるいは、むしろプラントの運転を不安定化させると考えられた。 本結果を受け、プラントの逆浸透膜ろ過部の各逆浸透膜モジュールを1週間に1日、洗浄剤Bで一晩浸漬洗浄する運転に切り替えたところ、薬品洗浄と同様な操作を行ったバイオフィルム形成評価装置Bのバイオフィルム量は200pg/cm2以下に保たれ、逆浸透膜モジュールの圧力損失も減少した後、安定に推移するようになった。(実施例4) プラントP4にて、精密ろ過膜処理した海水を原水とし、殺菌剤注入口、高圧ポンプ、直径8インチの架橋芳香族ポリアミド系逆浸透膜モジュールなどから構成される海水淡水化プラントで本発明を適用した。本プラントでは殺菌剤は添加されていなかった。 殺菌剤注入口下流、高圧ポンプより上流の管路に設けられた分岐管からバイオフィルム形成評価装置Aに、逆浸透膜非透過水流路に設けられた分岐管からバイオフィルム形成評価装置Bに、それぞれ2L/minで評価水を通水した。バイオフィルム形成評価装置A、Bの通水容器ともに、内径1.4cm、長さ60cmのポリカーボネート製円柱カラム1本を用いた。 バイオフィルム形成基材としては、プラントで使用されている品種と同じ逆浸透膜を収容し、サンプリング時には1ヶ月に1回の頻度で逆浸透膜を8〜9cm切り出し、表面のバイオフィルム量を実施例1記載の方法と同様にATP測定法により測定した。 120日間運転した結果、バイオフィルム形成評価装置Aのバイオフィルム付着量は、0.6pg/cm2、0.7pg/cm2、14.2pg/cm2、71pg/cm2であった。このとき、バイオフィルム形成評価装置Aのバイオフィルムを3段階に分散させた懸濁液の塩濃度は0.05〜0.1%であり、塩濃度による阻害率を換算して付着量を算出した。 一方、逆浸透膜非透過水流路に設けられた分岐管から水を採水したバイオフィルム形成評価装置Bに関しては、バイオフィルム付着量は0.6pg/cm2、5.7pg/cm2、78pg/cm2、85pg/cm2であった。このとき、バイオフィルム形成評価装置Bのバイオフィルムを3段階に分散させた懸濁液の塩濃度は0.2〜0.5%であった。この間、逆浸透膜モジュールの圧力損失は増加せずに安定に推移し、プラントは安定運転可能であった。 上記バイオフィルム形成評価装置AおよびBの結果から、特に、殺菌剤の添加など運転条件の変更を行うことなく、プラントは安定運転可能と考え、運転制御を行わなかった。実際にプラントは更に1ヶ月安定に運転できた。 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱すること無く様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。 本出願は、2006年9月25日出願の日本特許出願(特願2006−259286)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。 本発明は、逆浸透膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行い淡水を得たり、下廃水処理水や工業排水などを浄化して再利用水を得たりする際に、好適に用いることのできる逆浸透膜ろ過プラントの運転方法、および逆浸透膜ろ過プラントを提供する。 原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを有した逆浸透膜ろ過部をこの順に有する逆浸透膜ろ過プラントの運転方法にあたり、 前記逆浸透膜モジュールの上流から逆浸透膜供給水を、および/または下流から逆浸透膜非透過水を、分取し、 逆浸透膜からなるバイオフィルム形成基材を、通水容器に、前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水をろ過しない態様で収容し、 前記通水容器に前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水を通水し、 前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水は、前記バイオフィルム形成基材としての逆浸透膜の分離機能層表面上に沿って、かつ前記逆浸透膜モジュール内の非透過水線速度と同等の線速度で、流水させ、 バイオフィルム形成基材上のバイオフィルム量を1日〜6ヶ月に1回の頻度で評価し、 その評価結果に基づいて、逆浸透膜ろ過プラントの運転方法を制御することを特徴とする逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。 バイオフィルム形成基材としての逆浸透膜断片が逆浸透膜ろ過プラントで使用されている逆浸透膜と同一素材である請求項1記載の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。 内径D、高さHの円筒形通水容器内に、内径Dの円周以下×H以下の大きさに収まる逆浸透膜断片を、逆浸透膜断片の分離機能層側が内側になるように、円筒形通水容器内に曲げ入れ、円周方向の物理的復元力で円筒形通水容器内に固定されている逆浸透膜の一部を切り出して、バイオフィルム形成基材の表面上のバイオフィルム量を評価する請求項1または2に記載の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。 逆浸透膜ろ過プラントの運転方法の制御が、逆浸透膜ろ過部の殺菌条件、または、洗浄条件の制御であって、同様の制御条件でバイオフィルム形成基材を処理する請求項1〜3のいずれかに記載の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。 バイオフィルム量をATP(アデノシン三リン酸)で評価し、 単位面上あたりのATP量が200pg/cm2以下となるようにプラントの運転方法を制御する請求項1〜4のいずれかに記載の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。 塩濃度が3%以上である原水中で形成されたバイオフィルム量をATP測定法により評価する方法において、a:バイオフィルム形成基材から回収したバイオフィルムを純水に懸濁する工程、b:工程aの懸濁液の発光量をルシフェラーゼ反応を利用して数値化する工程、c:工程aの懸濁液の塩濃度を測定する工程、d:ルシフェラーゼ反応を利用した定量系に与える塩濃度阻害の相関式、阻害のない条件下でのATP濃度と発光量の相関式、工程b、工程cの結果を用いて、工程aの懸濁液のATP量を算出する工程、e:回収したバイオフィルム形成面の面積、懸濁した純水の液容積、dで得られた工程aの懸濁液のATP量の結果を用いて、単位面上のATP量を算出する工程、が含まれている請求項5記載の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。 原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを有した逆浸透膜ろ過部をこの順に有する逆浸透膜ろ過プラントにおいて、 逆浸透膜ろ過部内で先頭の逆浸透膜モジュールより上流から枝分かれする供給水が流れる配管、および/または、逆浸透膜ろ過部内の逆浸透膜モジュールより下流から枝分かれする逆浸透膜非透過水が流れる配管と、 前記配管の下流に接続された通水容器と、 通水容器の上流または下流に接続された流量調節バルブとが具備されており、 通水容器には逆浸透膜ろ過部で使用されている逆浸透膜と同一素材の逆浸透膜がバイオフィルム形成基材として、前記逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水をろ過しない態様で、収容されており、 通水容器に供給する逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水を、前記バイオフィルム形成基材としての逆浸透膜の分離機能層表面上に沿って、かつ前記逆浸透膜モジュール内の非透過水線速度と同等の線速度で、流水させる逆浸透膜ろ過プラント。 内径D、高さHの円筒形通水容器内に、内径Dの円周以下×H以下の大きさに収まる逆浸透膜断片が、逆浸透膜断片の分離機能層側が内側になるように収容され、逆浸透膜の円周方向の物理的復元力で円筒形通水容器内に固定されている請求項7記載の逆浸透膜ろ過プラント。 海水淡水化用である請求項7又は8に記載の逆浸透膜ろ過プラント。