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タイトル:特許公報(B2)_アロエベラ抽出物、アロエベラ抽出物の製造方法、高血糖改善剤
出願番号:2007546430
年次:2008
IPC分類:A61K 36/896,A61K 36/00,A61K 31/575,A23L 1/30,A61P 3/10,A61P 3/04,A61P 5/50


特許情報キャッシュ

田中 美順 山田 宗夫 JP 4095115 特許公報(B2) 20080314 2007546430 20061120 アロエベラ抽出物、アロエベラ抽出物の製造方法、高血糖改善剤 森永乳業株式会社 000006127 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 田中 美順 山田 宗夫 JP 2005340245 20051125 20080604 A61K 36/896 20060101AFI20080515BHJP A61K 36/00 20060101ALI20080515BHJP A61K 31/575 20060101ALI20080515BHJP A23L 1/30 20060101ALI20080515BHJP A61P 3/10 20060101ALI20080515BHJP A61P 3/04 20060101ALI20080515BHJP A61P 5/50 20060101ALI20080515BHJP JPA61K35/78 VA61K35/78 XA61K31/575A23L1/30 BA61P3/10A61P3/04A61P5/50 A61K 36/896 A23L 1/30 A61K 31/575 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CAplus(STN) JMEDPlus(JDream2) JSTPlus(JDream2) 特開2002−068997(JP,A) 特開2003−286185(JP,A) 特開昭60−214741(JP,A) 特開2003−277527(JP,A) 国際公開第2005/94838(WO,A1) 国際公開第2006/35525(WO,A1) 9 JP2006323095 20061120 WO2007060911 20070531 22 20070803 鶴見 秀紀 本発明は、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物の含有量が1.0質量%以上であるアロエベラ抽出物、及び超臨界抽出法を用いた当該アロエベラ抽出物の製造方法、並びにシクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物の含有量が1.0質量%以上であるアロエベラ抽出物を有効成分とする高血糖改善剤に関する。 高血糖の悪化した状態ではさまざまな疾患が併発してくることが知られており、この状態を糖尿病という。日本における前糖尿病状態、いわゆる境界域の人は、1600万人を超えるとも言われており、現在の生活習慣を考えると今後も増加の一途をたどると考えられている。これら高血糖状態から糖尿病の発症を予防する為には、長期的な血糖値のコントロールが必要である。 高血糖状態とは、血糖値が正常領域以外にある状態であり、正常領域とは空腹時血糖値110mg/dl以下で、75g糖負荷後の1時間での血糖値160mg/dl以下、および2時間での血糖値120mg/dl以下と規定している状態である(非特許文献1)。 ヘモグロビンA1cは、グルコースとヘモグロビンの結合物であって、高血糖の程度に応じて増加し、一度生成されたヘモグロビンA1cは、赤血球寿命(120日)が尽きるまで消滅しないので、過去長期間の血糖コントロール状態の指標とされている(非特許文献1)。 現在糖尿病の治療薬としては、α−グルコシダーゼ阻害剤、インシュリン分泌促進剤としてスルホニルウレア薬や、インシュリン抵抗性改善薬としてチアゾリジン誘導体などが用いられている。しかしその薬効は満足するものでなく、また急激に血糖が下がることにより昏睡状態を引き起こすなど副作用の問題も多い。また、血糖値の上昇を抑制する効果を有する天然由来成分を用いた薬剤としては、バナバに由来する成分を含む血糖値上昇抑制剤(特許文献1)、麦類発酵物の濃縮エキスを有効成分とする血糖値上昇抑制剤(特許文献2)等が開示されている。 植物ステロールは、大きく分けて、4−デスメチルステロール、4−モノメチルステロール、4,4−ジメチルステロールの3群に分類され、4−デスメチルステロールの中には、一般的に広く知られているコレステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、シトステロール、スチグマステロール、フコステロール等が、4−モノメチルステロールには、ロフェノール、ホリオール等が、4,4−ジメチルステロールには、シクロアルタノール、ルペオール等が、それぞれ知られている。 これら植物ステロールの製造方法としては、菜種油および大豆油からメタノールを用いて植物ステロールを回収する方法、粗植物ステロールを有機溶媒に浸漬させた後、有機溶媒を分離してβ−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロールを分離する方法が開示されている(特許文献3)。 前記4,4−ジメチルステロールの製造方法としては、シクロアルテノール、及び24−メチレンシクロアルタノール(24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オールの慣用名である)の製造法(特許文献4)が開示されており、また、γ−オリザノールからのシクロアルテノールフェルレートの製造法及びこの加水分解物を出発物質とした化合物の合成法が開示されている(特許文献5)。しかしながら、4−モノメチルステロール、特に、ロフェノール骨格を持つ化合物についての製造方法は従来より知られていない。 なお、植物ステロールを超臨界抽出法を用いて単離する技術としては、カロテン濃縮物、ビタミンE濃縮物及びその他の微量成分濃縮物の一段階及び二段階超臨界流体抽出技術が開示されている。例えば、天然油脂中に含まれる植物ステロール(カンペステロール、スチグマステロール、β−シトステロール)の抽出法(特許文献6)や、超臨界抽出法を用いたこんにゃく芋に含まれる植物ステロールの製造方法及びこれを含有する血中コレステロール低下剤、前立腺肥大症改善剤及び飲食品(特許文献7)等が開示されている。 ユリ科アロエ属は、アロエベラ(Aloe barbadenisis Miller)やキダチアロエ(Aloe arborescen Miller var.natalensis Berger)等を含む多肉植物の一種であり、様々な効能を有することが経験的に知られている。これらアロエ属植物の効果のうち、血糖値改善効果に関する先行技術としては、米国での臨床試験(非特許文献2)、動物での血糖値降下作用(非特許文献3、又は非特許文献4)、アロエ属植物中の多糖類の血糖値降下作用(特許文献8)が開示されている。さらに、アロエベラ圧搾液及び該圧搾液を有効成分とする血糖値降下剤(特許文献9)が開示されている。 また、血糖値改善効果を示すアロエ中の有効成分を抽出する技術として、以下のような技術が開示されている。例えば、塩素による殺菌消毒及び90度の過熱と濾過からなるアロエベラゲル原液の製造法(特許文献10)、75℃以下で全工程を行うことを特徴とするアロエベラゲル圧搾液の製造法(特許文献11)、全生産工程の加熱を60℃、30分に抑制し、圧搾と濾過工程後、活性炭、珪素土及び除菌フィルターを用いて処理した、アロエベラ圧搾液(特許文献12)、アロエ植物の葉からアロエジュースを調製し、これをpH3〜3.5に調整し、水溶性低級脂肪族極性溶媒を添加して活性化物質を析出させて不均一溶液を形成させ、水溶性低級脂肪族極性溶媒及び可溶化物を除去して析出した活性化物質を単離することからなるアロエ製品の製造方法(特許文献13)等が開示されている。 さらに、アロエベラを超遠心分離して得た上清のエタノール溶解部分を回収し、その画分をブタノールで分配抽出し、免疫抑制改善効果を持つ抽出物を製造する技術(特許文献14)や、アロエ圧搾液又は溶媒抽出物の水溶液を酢酸エチル又はブタノールで分配抽出し、肥満の予防改善剤を製造する技術(特許文献15)が開示されている。特開2003−95941号公報特開2002−371003号公報特表2002−542161号公報特開昭57−018617号公報特開2003−277269号公報特開2005−87998号公報特開2003−113394号公報特開昭60−214741号公報特開2003−286185号公報特開2002−68997号公報特開2002−284661号公報特開2002−205955号公報特許2832551号公報特開平8−208495号公報特開2000−319190号公報日本臨床、通巻代808号、第2巻、第405〜409ページ、2002年フィトメデシン(Phytomedicine)、第3巻、第245〜248ページ、1996年フィトセラピー リサーチ(Phytotherapy Research)、第15巻、第157〜161ページ、2001年フィトセラピー リサーチ(Phytotherapy Research)、第7巻、第37〜42ページ、1993年 アロエ等の植物を利用して機能性食品を開発するにあたっては、植物に含まれる水分量を考慮して取り扱う必要がある。例えば、アロエベラゲル(アロエベラの葉肉部分)においては、約98%以上が水分であり、さらに固形部分の大部分が多糖類から構成されていることから、物理的な問題で利用できる食品形態には大きな制限があった。さらに機能性を保証するための摂取量を考える上で、アロエベラゲルの非有効成分の含有率を考慮しなければならないという問題が生じていた。 前記特許文献8〜10にも記載されているように、従来よりアロエベラゲル中のアントラキノン類(アントラキノン系化合物)を除去したアロエベラゲルを含む食品の製造技術は検討されてきているが、不要な成分を除去することに主眼が置かれ、それらの技術を考慮しただけでは、目的の有効成分を効率よく抽出し、かつ不要な成分を含まない製造方法を提供するという問題を解決するには至っていなかった。 また、前記特許文献6又は7においては、超臨界抽出法による植物ステロールの抽出法が開示されているものの、高血糖改善効果を有する植物ステロールを効率よく回収し、かつアントラキノン類を含まない抽出物を得る方法及びこのような抽出物については一切記載も示唆もされていなかった。 すなわち、食品に応用することを目的とした有機溶媒を使用しないアロエベラ抽出物の製造技術であって、アロエベラ中の植物ステロールとアントラキノン類を簡便でかつ効率よく分離する技術は従来より皆無であった。 本発明者らは前記課題に鑑み、アロエベラについて機能性食品の素材として、活性が十分発揮され、かつ食品に添加できるにふさわしい形態(組成物)を得ることを目的として鋭意検討を重ねた。そして、アロエベラの圧搾液(又はこの乾燥粉末)を原料として用い、超臨界抽出法によって精製を試みた結果、天然のアロエベラ中に含まれる植物ステロールの混合比をほぼ反映した組成のシクロラノスタン化合物とロフェノール化合物を含む抽出物であって、この抽出物がアントラキノン類を殆ど含まず、かつ顕著な高血糖改善効果を有するという特性を見出し、本発明を完成した。 本発明は、安全に摂取でき、生活習慣病予防食品用素材として使用することが可能であって、アントラキノン類の混入が極めて低い、食品に添加が可能な植物ステロール(シクロラノスタン化合物とロフェノール化合物を含む)を含有するアロエベラ抽出物、および当該アロエベラ抽出物の製造方法を提供することを目的としている。 本発明の他の目的は前記アロエベラ抽出物を有効成分とする高血糖改善剤を提供することである。 前記課題を解決する本願第一の発明は、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物を1.0質量%以上含み、以下の1)及び/又は2)の性質を有する超臨界抽出法によるアロエベラ抽出物である。1)シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物が以下の質量混合比であること、 シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:2.7〜5.1:4.92)アントラキノン系化合物の含有量が0.001質量%以下であること。 以下、前記アロエベラ抽出物を、「本発明のアロエベラ抽出物」ともいう。 なお、本願第一の発明は以下の3)及び/又は4)を好ましい態様としている。3)シクロラノスタン化合物が、9,19−シクロラノスタン−3−オール及び/又は24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オールであること、4)ロフェノール化合物が、4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オールから選択される1又は複数の化合物であること。 前記課題を解決する本願第二の発明は、本願第一の発明のアロエベラ抽出物を含有する飲食品である。 本発明の前記飲食品におけるアロエベラ抽出物の好ましい態様は、本願第一の発明と同様である。また、前記飲食品におけるアロエベラ抽出物の好ましい含有量は、0.01質量%以上である。 前記課題を解決する本願第三の発明は、アロエベラの葉皮を含まない葉肉部分を凍結乾燥又は熱風乾燥し、水分を除去して粉末アロエベラ葉肉を調製し、調製した粉末アロエベラ葉肉から、以下のa)〜e)の条件に基づいて超臨界抽出法によりアロエベラ抽出物を抽出するアロエベラ抽出物の製造方法である。a)抽出溶媒が炭酸ガスであること、b)抽出温度が50〜69℃であること、c)圧力が15〜60MPaであること、d)エントレーナーを使用しないこと、e)抽出時間が50〜70分であること。 前記課題を解決する本願第四の発明は、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物を1.0質量%以上含む超臨界抽出法によるアロエベラ抽出物を有効成分とする高血糖改善剤であって、アロエベラ抽出物は、以下の5)及び/又は6)の性質を有している。5)シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物が以下の質量混合比であること、 シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:2.7〜5.1:4.96)アントラキノン系化合物の含有量が0.001質量%以下であること。 なお、本願第四の発明は以下の7)及び/又は8)を好ましい態様としている。7)シクロラノスタン化合物が、9,19−シクロラノスタン−3−オール及び/又は24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オールであること、8)ロフェノール化合物が、4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オールから選択される1又は複数の化合物であること。 前記課題を解決する本願第五の発明は、高血糖改善剤の製造のための、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物を1.0質量%以上含むアロエベラ抽出物の使用であって、アロエベラ抽出物は、以下の9)及び/又は10)の性質を有している。9)シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物が以下の質量混合比であること、 シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:2.7〜5.1:4.910)アントラキノン系化合物の含有量が0.001質量%以下であること。 なお、本願第五の発明は以下の11)及び/又は12)を好ましい態様としている。11)シクロラノスタン化合物が、9,19−シクロラノスタン−3−オール及び/又は24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オールであること、12)ロフェノール化合物が、4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オールから選択される1又は複数の化合物であること。 前記課題を解決する本願第六の発明は、高血糖を改善するため、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物を1.0質量%以上含むアロエベラ抽出物を高血糖を改善しようとする対象に投与することを特徴とする方法であって、アロエベラ抽出物は、以下の13)及び/又は14)の性質を有している。13)シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物が以下の質量混合比であること、 シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:2.7〜5.1:4.914)アントラキノン系化合物の含有量が0.001質量%以下であること。 本発明のアロエベラ抽出物は、安全で、顕著な高血糖改善効果を有し、機能性食品、特に特定保健用食品の素材として利用可能である。また、アントラキノン類(アントラキノン系化合物)の含有量が低いため、食品として摂取が可能である。また、本発明のアロエベラ抽出物は、有機溶媒等の食品の添加物としてふさわしくない物質が全く含まれないことから、あらゆる食品に応用が可能である。 さらに、本発明によって提供される製造方法によって、アロエベラを利用した機能性食品の開発に適した素材を提供することが可能となり、アロエベラの食品への利用が促進される。 次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。 本発明のアロエベラ抽出物は、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物の含有量が1.0質量%以上、好ましくは1.2質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上である。 シクロラノスタン化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物(シクロラノスタン骨格を有する化合物)である。 一般式(1)において、R1は炭素原子数6〜8の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、2重結合を1つまたは2つ含むアルケニル基、もしくはこれらのアルキル基およびアルケニル基の水素原子の1つまたは2つがヒドロキシル基および/またはカルボニル基で置換された置換アルキル基または置換アルケニル基であり、R2、R3は各々独立に水素原子又はメチル基であり、R4は環を構成する炭素原子とともにC=Oを形成するか、又は、下記式のいずれかである。 前記一般式(1)において、R1は、下記式で表される基のいずれかであることが好ましい。 また、ロフェノール化合物は、以下の一般式(2)で示される化合物(ロフェノール骨格を有する化合物)で表される化合物である。 一般式(2)中、R1は炭素原子数5〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、若しくは2重結合を1つ又は2つ含むアルケニル基である。尚、これらのアルキル基又はアルケニル基は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基及び/又はカルボニル基で置換された、置換アルキル基または置換アルケニル基であってもよい。R2、R3は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、又は置換アルキル基であり、R4は環を構成する炭素原子とともにC=Oを形成するかまたは、−OH、−OCOCH3のいずれかである。尚、前記炭素原子数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が好ましく、メチル基が特に好ましい。 前記一般式(2)において、R1は、下記式で表される基のいずれかであることが好ましい。 また、本発明のアロエベラ抽出物に含まれる植物ステロール中のシクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物の質量混合比は、シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:2.7〜5.1:4.9の範囲であることが好ましく、シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:3.7〜5.5:4.5の範囲であることがさらに好ましい。 さらに、シクロラノスタン化合物としては、9,19−シクロラノスタン−3−オール(下記式(3))、及び/又は24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オール(下記式(4))が好ましく、ロフェノール化合物としては、4−メチルコレスト−7−エン−3−オール(下記式(5))、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール(下記式(6))、4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オール(下記式(7))から選択される1又は複数の化合物であることがそれぞれ好ましい。 また、本発明のアロエベラ抽出物は、アロエニン、バルバロイン、アロエエモジン等のアントラキノン系化合物(本発明において、「アントラキノン類」と記載することがある。)を、実用上問題のない範囲で含んでいてもよいが、これらの化合物は緩下作用を持つため、その含有量は少ないことが好ましい。 中でも、本発明のアロエベラ抽出物中に、アロエニン、バルバロインは、0.001質量%以下であることが好ましく、0.0003質量%以下であることが更に好ましく、若しくは全く含有しないことが特に好ましい。また、アロエエモジンは0.001質量%以下であることが好ましく、0.0003質量%以下であることがさらに好ましく、0.00028質量%以下であることが最も好ましい。 本発明のアロエベラ抽出物は、ユリ科アロエ属に属する、アロエベラ(Aloe barbadenisis Miller)を出発物質として、下記の方法により製造することができる。尚、本発明の方法と同様にして、キダチアロエ(Aloe arborescen Miller var.natalensis Berger)等の多肉植物を出発物質として、キダチアロエ抽出物等を得ることにより、本発明のアロエベラ抽出物と同等の抽出物を製造することも可能である。 例えば、アロエベラの葉を横にスライスすると、厚いクチクラに覆われた表皮の外壁が現れる。表皮の下方には、緑色組織細胞と、柔組織として知られる細胞壁の薄い細胞とに分化した葉肉がある。柔組織細胞は透明な粘液のようなゼリーを溜めている。内部維管束鞘細胞を持つ維管束は緩下薬の性質を持つ黄色い液汁を含み、2つの大きな細胞の間に挟まれている。アロエベラは2種類の主要な液源、黄色ラテックス(浸出液)および透明ゲル(粘液)を有する。該植物の柔組織細胞からの透明ゲル(粘液)は特にアロエベラゲルと呼ばれている。このように、大きく分けて、アロエベラの葉には3つの異なる部分がある:すなわち、1)黄色液汁、主としてアントラキノン類(アントラキノン系化合物);2)内部ゲルマトリックスまたは「葉肉」;および3)外皮、先端、基部および棘からなる「皮(葉皮)」である。 本発明のアロエベラ抽出物は、超臨界抽出法によって製造することが好ましい。具体的には、アロエベラの葉皮を含まない葉肉(透明ゲル)部分を凍結乾燥又は熱風乾燥して粉末アロエベラ葉肉を調製し、調製した粉末アロエベラ葉肉から、以下の(a)〜(e)の条件に基づいて、超臨界抽出法によって製造する。(a)抽出溶媒が炭酸ガスであること、(b)抽出温度が50〜69℃であること、(c)圧力が15〜60Mpaであること、(d)エントレーナーを使用しないこと、(e)抽出時間が50〜70分であること。 なお、前記抽出溶媒としては、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物の抽出効率を改善する観点からは、超臨界プロパン、超臨界エチレン、超臨界1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどを使用することも可能であるが、飲食品としての安全性を向上させる観点からは、炭酸ガスを使用することがこのましい。また、抽出温度としては、28℃〜120℃の温度範囲で適宜選択することも可能であるが、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物の抽出効率を改善し、かつアントラキノン系化合物(例えば、アロエエモジン)の含有量を少なくするためには、50〜69℃の範囲が好ましく、50〜59℃の範囲がさらに好ましい。また、圧力としては、5.5〜60MPaの範囲で適宜選択することも可能であるが、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物の抽出効率を改善し、かつアントラキノン系化合物の含有量を少なくするためには、15〜60MPaの範囲が好ましく、15〜24MPaの範囲がさらに好ましい。また、本発明においては、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物の抽出効率を改善する観点からは、エタノール等をエントレーナーを使用することも可能であるが、アントラキノン系化合物の含有量を少なくする観点からは、エントレーナーを使用しないことが好ましい。 本発明のアロエベラ抽出物は、ヘモグロビンA1cの値を低下させる作用を有し、その結果、長期間血糖値をコントロールすることができる。したがって、本発明のアロエベラ抽出物は、高血糖改善剤の有効成分として使用することができる。 本発明の高血糖改善剤のシクロラノスタン化合物、ロフェノール化合物、アントラキノン系化合物の含有量は、本発明のアロエベラ抽出物と同様である。 また、本発明のアロエベラ抽出物は、高血糖改善のための医薬又は飲食品(飲料又は食品)の有効成分として使用することができる。 本発明のアロエベラ抽出物を含む高血糖改善のための医薬(以下、「本発明の医薬」ともいう)は、本発明のアロエベラ抽出物等をそのまま、若しくはこれらを製剤学的に許容される製剤担体と組み合わせて製造することができ、経口的、又は非経口的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。尚、本発明の医薬において、アロエベラ抽出物中のシクロラノスタン化合物及び/又はロフェノール化合物は医薬に許容される塩にすることもできる。医薬に許容可能な塩として、金属塩(無機塩)と有機塩との両方が含まれ、それらのリストは「レミントン・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第17版、第1418ページ、1985年」に掲載されているものが例示される。具体的には塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩および臭化水素酸塩などの無機酸塩や、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩及びステアリン酸塩などの有機酸塩が非限定的に含まれる。また、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属の塩、リジン等のアミノ酸との塩とすることもできる。また、アロエベラ抽出物中のシクロラノスタン化合物及び/又はロフェノール化合物もしくはその医薬上許容される塩の水和物等の溶媒和物を含む医薬も本発明に含まれる。 本発明の医薬の製剤形態は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。製剤化にあたっては製剤担体として通常の高血糖改善用医薬に汎用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。また、本発明の効果を損わない限り、本発明のアロエベラ抽出物と、他の高血糖改善作用を有する医薬とを併用してもよい。 本発明の医薬中に含まれる本発明のアロエベラ抽出物等の量は、特に限定されず適宜選択すればよいが、例えば、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物の量として、製剤中に0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%とするのがよい。 本発明の医薬は、高血糖状態により引き起こされる疾患、例えば糖尿病及び前糖尿病(糖尿病として疑われる状態)の治療又は予防に有用である。特に、高血糖状態から糖尿病の発症を予防するために用いることもできる。さらに、本発明の医薬は、高血糖状態に起因する種々の疾病・合併症等の治療又は予防、並びにこれら疾病・合併症等のリスクを低減することが可能である。かかる高血糖状態に起因する種々の疾病・合併症としては、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽、糖尿病に起因する脳卒中、糖尿病に起因する心筋梗塞等を例示することができる。 ここで、高血糖状態とは、血糖値が正常領域以外にある状態であり、正常領域とは、一般的には空腹時血糖値110mg/dl以下で、75g糖負荷後の1時間での血糖値160mg/dl以下および2時間での血糖値120mg/dl以下と規定している状態である(日本臨床、通巻第806号、第1巻、第28〜35ページ、2002年)。また、本発明の医薬は、ヘモグロビンA1cの値が健常人値より高い状態、例えば、ヘモグロビンA1cの値が5.8%以上である患者に対する治療に好適に用いられる。 本発明の医薬の投与時期は特に限定されず、対象となる疾患の治療方法に従って、適宜投与時期を選択することが可能である。また、投与形態は製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、患者の症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。本発明の医薬の有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件等により適宜選択される。通常シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物の量が、好ましくは0.001〜50mg/kg/日、より好ましくは、0.01〜1mg/kg/日の範囲となる量を目安とするのが良い。また、本発明のアロエベラ抽出物の乾燥質量としては、好ましくは0.1〜1000mg/kg/日、より好ましくは、1〜100mg/kg/日の範囲となる量を目安とするのが良い。本発明の医薬は、1日1回又は複数回に分けて投与することができる。 本発明のアロエベラ抽出物等は、飲食品に含有させることもできる。飲食品としては、前記有効成分の効果を損なわない限り特に制限されない。また、本発明の飲食品におけるアロエベラ抽出物の含有量は、前記有効成分の効果が得られる限り特に制限されないが、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%が特に好ましい。また、本発明の飲食品は、前記有効成分を含有させること以外は、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。 本発明の飲食品における用途としては、高血糖改善の効果を利用するような種々の用途をとることが可能である。例えば、血糖値が気になり始めた方に適した飲食品、糖尿病等の生活習慣病の危険要因の低減・除去に役立つ飲食品等の用途を例示することができる。 尚、本発明の飲食品において、「高血糖改善」とは、高血糖に起因して導かれる種々の健康への害を改善又は予防する事を意味しており、他の作用効果としては、「高血糖予防」、「血糖値上昇抑制」、「血糖値上昇改善」、「血糖値上昇予防」等も、前記「高血糖改善」と同様の意味として、本発明において例示することができる。 また、本発明の飲食品は、高血糖状態により引き起こされる疾患、例えば糖尿病及び前糖尿病(糖尿病として疑われる状態)の治療又は予防に有用である。特に、高血糖状態から糖尿病の発症を予防するために用いることもできる。さらに、本発明の飲食品は、高血糖に起因する種々の疾病・合併症等の治療又は予防、並びにこれら疾病・合併症等のリスクを低減することが可能である。 かかる高血糖に起因する種々の疾病・合併症としては、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽、糖尿病に起因する脳卒中、糖尿病に起因する心筋梗塞等を例示することができる。 本発明の飲食品は、高血糖を改善するため、との用途が表示された飲食品、例えば「高血糖改善用と表示された、高血糖改善効果を有する化合物を含有する飲食品」、あるいは「高血糖改善用と表示された、植物抽出物を含有する飲食品」、等として販売することが好ましい。尚、本発明のアロエベラ抽出物は、高血糖改善作用を有することから、高血糖改善の表示には、血糖上昇を抑制する意味も有すると考えられる。したがって、本発明の飲食品には、「血糖上昇抑制用」と表示することができる。すなわち、前記高血糖改善用の表示とは、このような「血糖上昇抑制用」の表示であってもよい。 なお、以上のような表示を行うために使用する文言は、「高血糖改善用」、又は「血糖上昇抑制用」という文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、高血糖を改善、又は血糖値の上昇を抑制する効果を表す文言であれば、本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、高血糖改善又は血糖値上昇抑制の効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。例えば、「血糖値が気になり始めた方に適した」、「糖尿病等の生活習慣病の危険要因(リスク)の低減・除去に役立つ」等の表示を例示することができる。 前記「表示」とは、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為を意味し、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。具体的には、本発明の飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為、商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が例示できる。 一方、表示としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましく、特に包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等への表示が好ましい。 また、例えば、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができ、その他厚生労働省によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を例示することができ、詳細にいえば、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示が、典型的な例として列挙することが可能である。 次に試験例を示して本発明を詳細に説明する。[試験例1] 本試験は、異なる方法により抽出したアロエベラ抽出物の組成について検討するために行った。(1)試料の調製a)超臨界抽出法によるアロエベラ抽出物の調製 アロエベラ60kgについて、葉皮を剥き取って葉肉部分を回収し、回収した葉肉部分を凍結乾燥してアロエベラ葉肉粉末300gを調製した。次いで、調製したアロエベラ葉肉粉末20gを用いて超臨界抽出法により抽出を行った。超臨界抽出は、日本分光社製CO2 delivery pump(SCF-GET)、PU-2080 pump(PU-2080 plus)、Back Pressure Regulator(SCF-BPG)、及び東洋高圧社製ブランジを用い、抽出溶媒として炭酸ガスを使用して、表1に記載の超臨界抽出条件1〜8に基づいて抽出を行い、超臨界抽出条件1〜8で得られたアロエベラ抽出物を抽出物1〜8とした。b)有機溶媒抽出法によるアロエベラ抽出物の調製 アロエベラゲル100gにクロロホルムとメタノールの同量混合液を2L添加し、室温で攪拌しながら2時間抽出した。濾紙を用いて濾過を行い不溶性画分を除去して抽出液を得た後、溶媒(クロロホルム、メタノール)をエバポレーターで除去して、アロエベラ抽出物(抽出物9)を調製した。(2)試験方法 抽出物1〜9について、LC−MS(島津製作所社製)を使用し、内部標準物質としてブラシカステロール(和光純薬工業社製)を用いて、シクロラノスタン化合物である9,19−シクロラノスタン−3−オール、24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オール、及び、ロフェノール化合物である4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オール、並びにアントラキノン類(アントラキノン系化合物)であるアロエエモジンの含有量を測定した。(3)試験結果 本試験の結果は、表2に示すとおりである。表2において、各記号はそれぞれ下記の化合物を示している。S:アロエベラ抽出物総抽出量(mg)、A:シクロラノスタン化合物(2種混合)、A−1:9,19−シクロラノスタン−3−オール、A−2:24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オール、B:ロフェノール化合物(3種混合)、B−1:4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、B−2:4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、B−3:4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オール、E:アロエエモジン アロエベラ抽出物総抽出量は、有機溶媒抽出法によって調製した場合は、超臨界抽出法によって調製した場合に比して大きかった。一方、アロエベラ抽出物に対するシクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物の混合物の含有率は、総じて超臨界抽出法によって調製したアロエベラ抽出物が有機溶媒抽出法によって調製したアロエベラ抽出物に比して10倍以上高いことが判明した。 また、食品への添加には好ましくないとされるアントラキノン類の含有量を調べた結果、各抽出物とも、アロエニンやバルバロインは検出されなかったが、アロエエモジンはわずかながら検出され、抽出法や抽出条件によってアロエベラ抽出物に残存する量は異なることが明らかとなった。なかでも、特に超臨界抽出法における抽出条件1(抽出温度50℃、抽出圧力15MPa、抽出時間60分の条件で、エントレーナーを使用しないで実施)によれば、最もアロエエモジンを効率よく除去できることが判明した。[試験例2] 本試験は、本発明のアロエベラ抽出物の高血糖改善効果を検討するために行った。(1)試料の調製 前記試験例1の超臨界抽出法の超臨界抽出条件1と同様の条件で調製したアロエベラ抽出物を、該抽出物の濃度が77μg/ml(シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物の濃度に換算して1μg/ml)になるようにDMSO水溶液にて調整して試験試料とした。なお、この時の最終DMSO濃度は0.2%となるように生理食塩水にて調整した。また、アロエベラの葉皮を剥き取った後、葉肉部分を回収し、回収した葉肉部分をジューサーミキサーで破砕し、繊維状の沈殿物を除去したアロエベラ圧搾液を対照試料とした。なお、0.2%DMSO水溶液を陰性試料とした。(2)試験方法 II型糖尿病モデルマウスとして、6週齢、雄性db/dbマウス(日本クレア社より購入)を使用し、当該マウスを1群7匹に群分けした。各群に、試験試料、対照試料、及び陰性試料を、1日1回ゾンデを用いて1mlずつ、34日間連日経口投与した。投与開始から35日目にヘモグロビンA1cをDCA2000(バイエル三共社製)にて測定した。(3)試験結果 本試験の結果は表3に示すとおりである。その結果、試験試料を投与したマウスでは、陰性試料投与群に比して、ヘモグロビンA1c値が30%以上低下し、高血糖を改善する活性を有することが明らかとなった。ここで、試験試料と同量の固形分を含有するアロエベラ圧搾液では、ヘモグロビンA1c値の低下が全く観察されないことから、血糖値降下効果(高血糖改善効果)を指標とした場合、本発明のアロエベラ抽出物(超臨界抽出物)は、その有効量から算出して、アロエベラ圧搾液に比して13,000倍の効果を有することが明らかとなった。なお、試験試料を投与したマウスには病理学的な副作用は全く観察されなかった。 次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 (アロエベラ抽出物の製造) アロエベラ60kgについて、葉皮を剥き取って葉肉(透明ゲル)部分を回収し、回収した葉肉部分を凍結乾燥してアロエベラ葉肉粉末300gを調製した。 調製したアロエベラ葉肉粉末20gを用いて超臨界抽出法により抽出を行った。超臨界抽出は、日本分光社製CO2 delivery pump(SCF-GET)、PU-2080 pump(PU-2080 plus)、Back Pressure Regulator(SCF-BPG)、及び東洋高圧社製ブランジを用い、抽出溶媒として炭酸ガス、抽出温度50℃、抽出圧力15MPa、抽出時間60分の条件で、エントレーナーを使用しないで実施した。その結果、アロエベラ抽出物を33mg製造した。 製造したアロエベラ抽出物についてLC−MSを使用して組成分析を行ったところ、シクロラノスタン化合物である9,19−シクロラノスタン−3−オール及び24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オール、また、ロフェノール化合物である4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、及び4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オールがそれぞれ含まれていることが判明し、アロエベラ抽出物に含まれる9,19−シクロラノスタン−3−オール、24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オール、4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、及び4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オールの割合は、それぞれ0.437質量%、0.326質量%、0.182質量%、0.158質量%、0.161質量%であることが判明した。 なお、試験例2と同様の方法により、前記アロエベラ抽出物の高血糖改善効果を測定した結果、ヘモグロビンA1c値を下げる効果が確認された。 次の組成からなる錠剤の高血糖改善効果を有する医薬を、以下の方法により製造した。 実施例1で製造したアロエベラ抽出物(乾燥物) 40.0(%) 乳糖(森永乳業社製) 18.5 トウモロコシ澱粉(日清製粉社製) 30.7 ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製) 1.4 カルボキシメチルセルロ−スカルシウム(五徳薬品社製) 9.4 アロエベラ抽出物(乾燥物)、乳糖、トウモロコシ澱粉及びカルボキシメチルセルロースカルシウムの混合物に、滅菌精製水を適宜添加しながら均一に混練し、50℃で3時間乾燥させ、得られた乾燥物にステアリン酸マグネシウムを添加して混合し、常法により打錠し、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物の量として、製剤中に約0.5質量%含有する錠剤を得た。 ホエー蛋白酵素分解物(森永乳業社製)10.8kg、デキストリン(昭和産業社製)36kg、及び少量の水溶性ビタミンとミネラルを水200kgに溶解し、水相をタンク内に調製した。これとは別に、大豆サラダ油(太陽油脂社製)3kg、パーム油(太陽油脂社製)8.5kg、サフラワー油(太陽油脂社製)2.5kg、レシチン(味の素社製)0.2kg、脂肪酸モノグリセリド(花王社製)0.2kg、及び少量の脂溶性ビタミンを混合溶解し、油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、更にホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後に、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約59kgを調製した。この中間製品粉末50kgに、蔗糖(ホクレン社製)6.8kg、アミノ酸混合粉末(味の素社製)167g、及び実施例1で製造したアロエベラ抽出物(乾燥物)600gを添加し、均一に混合して、アロエベラ抽出物(乾燥物)を約0.01質量%含有する高血糖改善効果を有する経腸栄養食粉末約57kgを製造した。 実施例1で製造したアロエベラ抽出物を0.05質量%となるように、リョートーポリグリエステル(三菱化学フーズ株式会社製)水溶液(濃度:1000ppm)に溶解した溶液120kgを調製し、これに無水クエン酸(和光純薬工業社製)160g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)6g、人工甘味料としてサネット(登録商標:ニュートリノヴァ社製)1gを混合して溶解した。さらに水79.821kgを添加し、最後に香料(長谷川香料株式会社製)12gを添加して調合液を調製した。当該調合液をメッシュサイズ20のフィルターにて濾過した後、96±1℃で、30秒間殺菌し、125mlカート缶容器に充填して、アロエベラ抽出物を0.03質量%含有する高血糖改善効果を有するアロエベラゲル飲料約950本を製造した。 本発明のアロエベラ抽出物は、安全で、顕著な高血糖改善効果を有し、機能性食品、特に特定保健用食品の素材として利用可能であって、アントラキノン類(アントラキノン系化合物)の化合物の含有量が低く食品として摂取が可能であり、あらゆる食品に応用が可能である。さらに、本発明によって提供される製造方法によって、アロエベラを利用した機能性食品の開発に適した素材を提供することが可能となり、アロエベラの食品への利用が促進される。 シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物を1.0質量%以上含む超臨界抽出法によるアロエベラ抽出物であって、以下の1)及び/又は2)の性質を有する抽出物、 1)シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物が以下の質量混合比であること、 シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:2.7〜5.1:4.9 2)アントラキノン系化合物の含有量が0.001質量%以下であること。 シクロラノスタン化合物が、9,19−シクロラノスタン−3−オール及び/又は24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オールである請求項1に記載のアロエベラ抽出物。 ロフェノール化合物が、4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オールから選択される1又は複数の化合物である請求項1又は2に記載のアロエベラ抽出物。 請求項1〜3のいずれか一項に記載のアロエベラ抽出物を含有する飲食品。 アロエベラ抽出物の含有量が0.01質量%以上である請求項4に記載の飲食品。 アロエベラの葉皮を含まない葉肉部分を凍結乾燥又は熱風乾燥し、水分を除去して粉末アロエベラ葉肉を調製し、調製した粉末アロエベラ葉肉から、以下のa)〜e)の条件に基づいて超臨界抽出法によりアロエベラ抽出物を抽出するアロエベラ抽出物の製造方法、 a)抽出溶媒が炭酸ガスであること、 b)抽出温度が50〜69℃であること、 c)圧力が15〜60MPaであること、 d)エントレーナーを使用しないこと、 e)抽出時間が50〜70分であること。 シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物からなる混合物を1.0質量%以上含む超臨界抽出法によるアロエベラ抽出物を有効成分とする高血糖改善剤であって、アロエベラ抽出物が、以下の1)及び/又は2)の性質を有する高血糖改善剤、 1)シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物が以下の質量混合比であること、 シクロラノスタン化合物:ロフェノール化合物=6.3:2.7〜5.1:4.9 2)アントラキノン系化合物の含有量が0.001質量%以下であること。 シクロラノスタン化合物が、9,19−シクロラノスタン−3−オール及び/又は24−メチレン−9,19−シクロラノスタン−3−オールである請求項7に記載の高血糖改善剤。 ロフェノール化合物が、4−メチルコレスト−7−エン−3−オール、4−メチルエルゴスト−7−エン−3−オール、4−メチルスチグマスト−7−エン−3−オールから選択される1又は複数の化合物である請求項7又は8に記載の高血糖改善剤。


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