タイトル: | 特許公報(B2)_デシタビン医薬製剤 |
出願番号: | 2007545673 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/706,A61K 47/40,A61K 9/08,A61P 35/00,A61P 7/00,A61P 9/10,A61P 17/02,A61P 37/06,A61P 35/02,A61P 7/06,A61J 1/05,A61M 5/24 |
タン チュンリン ジョシ ハンガル ラジャシュリー JP 5227029 特許公報(B2) 20130322 2007545673 20051208 デシタビン医薬製剤 アステックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド 501170688 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 松田 七重 100123766 タン チュンリン ジョシ ハンガル ラジャシュリー US 11/009,540 20041210 20130703 A61K 31/706 20060101AFI20130613BHJP A61K 47/40 20060101ALI20130613BHJP A61K 9/08 20060101ALI20130613BHJP A61P 35/00 20060101ALI20130613BHJP A61P 7/00 20060101ALI20130613BHJP A61P 9/10 20060101ALI20130613BHJP A61P 17/02 20060101ALI20130613BHJP A61P 37/06 20060101ALI20130613BHJP A61P 35/02 20060101ALI20130613BHJP A61P 7/06 20060101ALI20130613BHJP A61J 1/05 20060101ALN20130613BHJP A61M 5/24 20060101ALN20130613BHJP JPA61K31/706A61K47/40A61K9/08A61P35/00A61P7/00A61P9/10A61P17/02A61P37/06A61P35/02A61P7/06A61J1/00 310A61M5/24 A61K 31/00−31/80 A61K 9/00− 9/72 A61K 47/00−47/48 A61P 7/00 A61P 7/06 A61P 9/10 A61P 17/02 A61P 35/00 A61P 35/02 A61P 37/06 A61J 1/05 A61M 5/24 CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第2003/103687(WO,A1) 米国特許第05134127(US,A) LOFTSSON,T. et al,Journal of pharmaceutical sciences,1996年,Vol.85, No.10,p.1017-25 YONEZAWA,Y. et al,Agricultural and Biological Chemistry,1981年,Vol.45, No.2,p.505-6 DATABASE CAPLUS ON STN,1983年,ACC. NO. 1983:600414 ABSTRACT CSERHATI,T. et al,Journal of pharmaceutical and biomedical analysis,1995年,Vol.13, No.4-5,p.533-41 ZORNOZA,A. et al,International Journal of Pharmaceutics,1998年,Vol.169, No.2,p.239-244 BECKET,G. et al,International journal of pharmaceutics,1999年,Vol.179, No.1,p.65-71 EMARA,S. et al,Talanta,2000年,Vol.51, No.2,p.359-64 TOMANKOVA,H. et al,Microchemical Journal,1980年,Vol.25, No.3,p.281-8 LIN,K.T. et al,Journal of pharmaceutical sciences,1981年,Vol.70, No.11,p.1228-32 STELLA,V.J. et al,薬剤学,2000年,Vol.60, Supplement,p.11-14 8 US2005044676 20051208 WO2006071491 20060706 2008523096 20080703 27 20081208 荒巻 真介 本発明は、概して、シチジン類似物又は誘導体の医薬製剤に関し、より詳細には、シクロデキストリン化合物を含む、デシタビン等のシチジン類似物及び誘導体の水性製剤に関し、また、癌や血液疾患等の様々な疾病及び症状を治療するための前記医薬製剤の調製方法及び使用方法に関する。 5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビンとも呼ばれる)及び5-アザシチジン(アザシチジンとも呼ばれる)等のいくつかアザシトシンヌクレオシドは、関連する天然ヌクレオシドの拮抗薬、2'-デオキシシチジンとシチジンとして開発されてきた。アザシトシンとシトシンとの構造上の唯一の相違は、アザシトシンのシトシン環の5位には窒素が存在するのに対し、シトシンではその位置には炭素が存在することである。 デシタビンは2つの異性体が識別できる。β−アノマーは活性体である。水溶液中、デシタビンは、(a)活性β−アノマーが不活性α−アノマーに変換し(Pompon等(1987)J. Chromat. 388:113-122)、(b)アザ−ピリミジン環の環開裂によりN-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2'-デオキシ-(リボフラノシル)-尿素が形成され(Mojaverian及びRepta(1984)J. Pharm. Pharmacol. 36:728-733)、(c)引き続き、グアニジン化合物が形成される(Kissinger及びStemm(1986)J. Chromat. 353:309-318)という方式で分解される。 デシタビンには多数の薬理的特性がある。分子レベルでは、DNAへの合体に関してS期依存性である。細胞レベルでは細胞分化を引き起こし血液毒性を及ぼす可能性がある。デシタビンは生体内での半減期が短いが組織分散に優れている(Van Groeningen CJ等(1986)Cancer Res. 46:4831-4836、ならびに、Chabot GG及びMomparler RL(1990)Proceedings of the Workshop on 5-aza-2'-deoxycytidine (Momparler RL and De Vos D. eds), PCH Publication, 105〜115ページ)。 デシタビンの機能の1つは、DNAメチル化を特異的かつ強力に阻害する作用である。シトシンの5-メチルシトシンへのメチル化はDNAレベルで起こる。細胞内では、細胞サイクルのS期の間に主に合成されるデオキシシチジンキナーゼによって、まずはデシタビンがその活性体であるリン酸化5-アザ-デオキシシチジンに変換される。デオキシシチジンキナーゼ活性部位とのデシタビンの親和性は、天然基質であるデオキシシチジンと同様である。Momparler等(1985)30:287-299。デオキシシチジンキナーゼにより三リン酸塩へ変換した後、デシタビンは、天然基質のdCTPと同様の速度で複製DNAに組み込まれる。Bouchard及びMomparler(1983)Mol. Pharmacol. 24:109-114。 DNA鎖にデシタビンが組み込まれると、疾病としての癌の特徴である異常な高メチル化の逆転により、低メチル化効果がある。分化した細胞の各クラスはそれぞれに特異なメチル化パターンがある。染色体複製後、このメチル化パターンを保存するために、親鎖の5-メチルシトシンは相補的な娘DNA鎖の直接的メチル化に貢献する。シトシンの5位の窒素が炭素に置換されると、通常のDNAメチル化プロセスは妨げられる。5-メチルシトシンをメチル化特定サイトにおいてデシタビンで置換すると、DNAメチル基転移酵素を不可逆的に不活性化させるが、これは、おそらく酵素とデシタビン間に共有結合が形成されることによると考えられる。Juttermann等(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11797-11801。メチル化に必要とされる酵素であるDNAメチル基転移酵素を特異的に阻害することにより、腫瘍抑制遺伝子の異常なメチル化を防ぐことができた。 デシタビンは、リン酸二水素カリウムのような緩衝塩と水酸化ナトリウムのようなpH調整剤と一緒にして無菌注入用凍結乾燥粉末状で提供することが一般的である。例えば、SuperGen社のデシタビンは20mLのガラス瓶に凍結乾燥粉末として充填され提供されるが、これは50mgのデシタビンと、一塩基のリン酸二水素カリウムと水酸化ナトリウムとが収容されている。10mLの無菌注射用蒸留水を加えると、1mLにつき5mgのデシタビン、6.8mgのKH2PO4、約1.1mgのNaOHが含まれる。得られた溶液のpHは6.5〜7.5である。作製した溶液は、さらに冷たい注入用液、例えば、0.9%塩化ナトリウム溶液、5%デキストロース溶液又は乳酸化リンガー液でさらに希釈して濃度1.0〜0.1mg/mLとすることができる。封止したガラス瓶は通常室温(2〜25℃、32〜77°F)で最初のパッケージのまま保存される。 デシタビンは、ボーラス静脈注射、持続静脈点滴又は静脈点滴のような注入により患者に投与することが最も一般的である。デシタビン同様、アザシチジンも水溶液に処方し、静脈から患者に注入する。アザシチジンについての臨床研究によると、注入を長時間又は連続的に行う方が短時間の場合よりも効果的であった。Santini等(2001)Ann. Int. Med. 134: 573-588。しかしながら、デシタビン又はアザシチジンの分解/不安定さ、また、薬剤の水溶液中での溶解性の低さにより静脈注入時間の長さには限界がある。本発明はこうした問題点に対して刷新的な解決策を提供するものである。 本発明はシチジン類似体又は誘導体(例えば、デシタビン及び5-アザシチジン)の製剤、キット、及び、様々な疾病又は症状を予防又は治療をするためのシチジン類似体又は誘導体の使用方法を提供する。本発明によると、シチジン類似体/誘導体をシクロデキストリン化合物とともに、好ましくは水性溶媒で溶媒和して処方する。デシタビン又は5-アザシチジンのリン酸緩衝剤に溶解させた現行の臨床用水性製剤に伴う問題点、例えば、化学的な不安定さ、保存及び輸送の不便さ、冷たい注入液であることによる患者の不快感といった問題点は、この刷新的なアプローチによって回避できる。 本発明の態様の1つとして、シチジン類似体又は誘導体とシクロデキストリン化合物とを、好ましくは固体状態で含む医薬組成物が提供される。組成物はさらに緩衝塩、酸、アルカリ及び/又は賦形剤を含んでもよい。水性溶液に溶解させると、シチジン類似体/誘導体はシクロデキストリン化合物と一緒に錯体を形成する。この医薬組成物は、対象となる動物に、経口、非経口、局所、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、頬側、鼻腔内、リポソーム経由、吸入、膣経由、眼内、局所的送達(例えばカテーテル又はステントによる)、皮下、脂肪組織内(intraadiposally)、関節内又は包膜内投与するのに適した様々な投与形態にすることができる。任意であるが、該医薬組成物は水性溶媒で溶媒和したのち、患者の静脈内、筋肉内又は皮下に投与することが好ましい。 本発明の別の態様として、シチジン類似体/誘導体を患者に投与するための水性医薬製剤が提供される。実施形態の1つである製剤は、シクロデキストリン化合物を含有する溶媒で溶媒和させたデシタビンを含む。 シチジン類似体/誘導体としては、好ましくは、デシタビン、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン(ゲムシタビン(gemcitabine)とも呼ぶ)又はシトシン 1-β-D-アラビノフラノシド(ara-Cとも呼ぶ)が挙げられる。 シチジン類似体/誘導体は塩の状態であってもよく、好ましくは医薬的に許容される塩の状態であるとよい。シチジン類似体の塩の例として、無機酸又は有機酸から調製される医薬的に許容される塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。このような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸が挙げられる。好適な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、複素環、カルボン酸及びスルホン酸に分類される有機酸から選択することができ、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸(algenic acid)、β-ヒドロキシ酪酸、マロン酸、ムチン酸(galactic acid)及びガラクツロン酸が挙げられる。塩酸、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸、メタンスルホン酸、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、カルボン酸、スルホン酸、アスコルビン酸、炭酸及びフマル酸からなる群から選択される酸が好ましい。とりわけ、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸からなる群からスルホン酸が選択される。 シクロデキストリン化合物は結晶でも非結晶でもよい。好ましくは、非結晶性α-、β-又はγ-シクロデキストリンのシクロデキストリン化合物がよく、さらには、β-シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体及びマルトトリオシル誘導体、カルボキシアミドメチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンならびにジエチルアミノ-β-シクロデキストリンからなる群から選択されるアルキル化又はヒドロキシアルキルシクロデキストリンがより好ましい。 シクロデキストリン化合物としてはスルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体がよく、モノ、テトラ又はヘプタ置換のβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩が好ましく、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル7ナトリウム塩(「CAPTISOL」登録商標)がさらに好ましい。 この実施形態によると、医薬製剤中のシチジン類似体/誘導体の量は、溶媒1mlに対して、0.1〜200mg、好ましくは1〜100mg、2〜50mg、5〜30mg、10〜25mgが好ましい。 シチジン類似体/誘導体:シクロデキストリン化合物の質量比は、1:1〜1:5000、好ましくは1:10〜1:300、1:1〜1:200、1:5〜1:50の範囲である。 任意であるが、医薬製剤は水を少なくとも60容量%、70容量%、80容量%、90容量%、95容量%又は99容量%含んでいるとよい。水性医薬製剤におけるシクロデキストリン化合物の濃度は、0.1〜80質量%、1〜60質量%、5〜50質量%、10〜40質量%、20〜40質量%が好ましい。 これも任意であるが、医薬製剤はさらにプロピレングリコール、グリセリン、及び/又はポリエチレングリコール(PEG)のPEG300、PEG400及びPEG1000等を含んでもよい。 また、本実施形態の医薬製剤はさらに酸性化剤を含んでいてもよく、製剤のpHが約4〜8になるような割合で酸性化剤を製剤に加えてもよい。酸性化剤を添加して製剤のpHを調整することにより、溶媒中でのシチジン類似体/誘導体が溶解しやすくなり、製剤の長期安定性が向上すると考えられる。 酸性化剤は有機酸であるとよい。有機酸の例として、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾア酸及び酢酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性化剤は無機酸であってもよく、例えば塩酸、硫酸、リン酸及び硝酸が挙げられる。 一例は、酸性化剤が、溶媒に対して0.01〜0.2mg/ml、好ましくは0.04〜0.1mg/ml又は0.03〜0.07mg/ml濃度のアスコルビン酸である。 医薬製剤のpH値は、pH4〜8、好ましくはpH5〜7、さらに好ましくはpH5.5〜6.8に調整するとよい。 医薬製剤はさらに賦形剤を含んでもよく、組成物の安定性を向上させ、製品を溶液状に保持し、本発明の製剤の投与に伴う副作用(例えば、潜在的潰瘍形成、脈管炎症又は溢血)を回避するのに十分な量の賦形剤を加えてもよい。賦形剤の例としては、マンニトール、ソルビトール、ラクトース及びデキストロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 医薬製剤は、2〜8℃で5、10、15、24時間、又は、2、4、7、14、21、28日以上貯蔵した際に、少なくとも80%、90%、95%以上安定状態にあることが好ましい。また、医薬製剤は、20〜25℃で5、10、15、24時間、又は、2、5、7、14、21、28日以上貯蔵した際に、少なくとも80%、90%、95%以上安定状態にあることが好ましい。 別の実施形態によると、医薬製剤は、シチジン類似体/誘導体及びシクロデキストリン化合物を、水を少なくとも60容量%、好ましくは少なくとも70、80、90、95又は99容量%含有する水性溶媒中に溶解させる工程を含む方法で調製される。前記水性溶媒にはさらに、リン酸カリウムのような緩衝塩を溶解させて含ませてもよい。 該実施形態によると、前記調製方法はさらに、シチジン類似体/誘導体と溶媒とを含む溶液に対して、溶液のpH値が4〜8、好ましくはpH5〜7、より好ましくはpH5.5〜6.8となるように酸性化剤を添加する工程を含んでもよい。 さらに、医薬製剤はシチジン類似体/誘導体のほかに治療薬を1種以上含有させてもよい。例えば、医薬製剤中に、抗新生物薬、アルキル化薬、レチノイド科に属する薬剤、ホルモン剤、植物由来の薬剤、生物学的薬剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤及び単クローン抗体からなる群から選択される治療薬が含まれていてもよい。 本発明の別の態様により、シチジン類似体/誘導体を、それを必要とするホストに投与するための無菌容器が提供される。実施形態の1つとして、無菌容器が本発明の医薬製剤を収容する。この容器とは、例えば、水薬瓶、注射器又はアンプルであってよい。容器のサイズは様々であってよい。例えば、容器に1〜50ml、1〜25ml、1〜20ml又は1〜10mlの医薬製剤を収容することができる。 本発明のさらに別の態様では、シチジン類似体/誘導体を、それを必要とするホストに投与するためのキットが提供される。このキットの実施形態の1つは、固体のシチジン類似体/誘導体、好ましくは粉末状、さらに好ましくは凍結乾燥粉末状態のシチジン類似体/誘導体と、シクロデキストリン化合物を含有する水性希釈剤とを備える。固体のシチジン類似体/誘導体と希釈剤とを混合することにより、本発明の医薬製剤が形成される。 例えば、キットは、シチジン類似体/誘導体及びシクロデキストリンを固形状態で、好ましくは粉末状、より好ましくは凍結乾燥粉末状で収容する第1の容器と、水性希釈剤を収容する第2の容器とを有することができ、希釈剤を固形化合物に添加することにより、シチジン類似体/誘導体を投与するための医薬製剤が形成される。 任意であるが、キットは、固体のシチジン類似体/誘導体を収容する第1の容器と、水性希釈剤中に溶解したシクロデキストリン化合物を収容する第2の容器を有していてもよく、希釈剤を固形化合物に添加することにより、シチジン類似体/誘導体を投与するための医薬製剤が形成される。 さらに任意であるが、キットは、固体状のシチジン類似体/誘導体を収容する第1の容器と、固体状のシクロデキストリン化合物を収容する第2の容器と、水性希釈剤を収容する第3の容器を有していてもよく、希釈剤を固形のシクロデキストリン化合物に添加することにより水溶液が形成され、これをさらに固体状シチジン類似体/誘導体に添加してシチジン類似体/誘導体を投与するための医薬製剤を製造する。 固体状のシチジン類似体/誘導体と希釈剤とを混合して、シチジン類似体/誘導体を希釈剤1mlに対して0.1〜200mg含む医薬製剤を形成することが好ましく、任意であるが、溶媒1mlにつきシチジン類似体/誘導体を1〜100mg、2〜50mg、5〜30mg、10〜25mg含む医薬製剤を形成してもよい。 キットには任意であるが説明書をさらにつけてもよい。説明書には、固体の化合物と希釈剤とをどのようにして混合して医薬製剤を作製するかを記載するとよい。また、説明書に出来上がった医薬製剤の患者への投与方法を記載しておくとよい。説明書には本発明による投与方法を記載してもよいということを述べておく。 希釈剤及びシチジン類似体/誘導体は別個の容器に収納してもよい。容器のサイズは異なっていてもよい。例えば、一方の容器は1〜50ml、1〜25ml、1〜20ml又は1〜10mlの希釈剤を収容するとよい。 本発明の別の態様では、シチジン類似体/誘導体を必要とするホスト、例えば、シチジン類似体/誘導体による治療の影響をうけやすい疾病を患っている患者へのシチジン類似体/誘導体の投与方法を提供する。本発明の医薬製剤は、経口、非経口、局所、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、経頬側、鼻腔内、リポソーム経由、吸入、膣経由、眼内、局所的送達(例えばカテーテル又はステントによる)、皮下、脂肪組織内、関節内又は包膜内に投与することができる。該医薬製剤は静脈内、筋肉内又は皮下に投与することが好ましい。 実施形態の1つとして、本方法は、本発明の医薬製剤中の治療有効量のシチジン類似体/誘導体を患者に投与することを含む。任意であるが、患者に投与する前の段階で、医薬製剤に少なくとも60容量%、70容量%、80容量%、90容量%、95容量%又は99容量%の水が含まれているとよい。 該方法は、シチジン類似体/誘導体以外の治療剤を前記医薬製剤と一緒に投与する工程をさらに有してもよい。治療剤としては、抗新生物薬、アルキル化薬、レチノイド科に属する薬剤、ホルモン剤、植物由来の薬剤、生物学的薬剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤及び単クローン抗体からなる群から選択すればよい。 別の実施形態では、該方法は、シクロデキストリン及び0.1〜200mg/mLのシチジン類似体/誘導体を含有する医薬製剤を水性溶媒に溶解させて溶媒和し、この医薬製剤を水性溶液で希釈し、得られた希釈後の医薬製剤を投与する工程を含むもので、投与する10時間、2時間、1時間、30分、10分、5分又はそれより前に希釈を行う。 さらに別の実施形態では、該方法は、シクロデキストリン及び0.1〜200mgのシチジン類似体/誘導体を含有する医薬製剤を水性溶媒に溶解させて溶媒和し、周囲温度でこの医薬製剤の一部を水溶液と混合し、得られた溶液を患者の体内に注入する工程を含む。医薬製剤の一部と水溶液とを周囲温度で混合する際に、Yコネクター(Y connector)を使ってもよい。これにより注入工程を3、4、5時間以上かけて任意に行うことができる。このような投与形式は患者の不快感を軽減すると考えられ、また、従来の方法ではデシタビンに注射用水を加え、さらに冷たい注入用液で希釈することが必要であったが、この従来方法で処方されたデシタビン(又は5-アザシチジン)の投与に要する注入時間よりも注入時関を短くしたり長くしたりすることができると考えられる。 キットについても、両方とも固体、好ましくは粉末状のシチジン類似体/誘導体及びシクロデキストリン化合物を希釈剤と混合して医薬製剤を形成し、該医薬製剤を患者に投与する方法が提供される。 別の実施形態の方法は、固体、好ましくは粉末状のシチジン類似体/誘導体を、シクロデキストリン化合物を含有する希釈剤と混合して医薬製剤を形成し、該医薬製剤を患者に投与する工程を有する。 有利なことに、患者に投与する直前(例えば、投与前1日以内、あるいは6、5、4、3、2又は1時間以内)に、シチジン類似体/誘導体と希釈剤とを混合して医薬製剤を作成することができる。これにより、シチジン類似体/誘導体の分解を抑えられる。本願明細書で記載したように、任意であるが、医薬製剤の一部と水溶液(例えば注入用液)とを混合し、さらに、これも記載済みであるがYコネクターを使って、得られた溶液を患者の体内に注入することにより、医薬製剤を投与することができる。 また、本発明によると、対象中の望ましくない細胞増殖に伴う疾病の治療方法を提供するものである。該治療方法は、シクロデキストリン化合物と処方したシチジン類似体/誘導体を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。疾病には、良性腫瘍、癌、血液疾患、アテローム性動脈硬化、手術、異常な創傷治癒、異常な血管形成を原因とする人体組織への損傷、組織に繊維症をもたらす疾病、反復運動障害、血管がほとんど新生されない組織の疾患、臓器移植に関連する増殖反応が挙げられる。特に疾病として挙げられるのは、骨髄異形成症候群、進行非小細胞肺癌又は鎌状赤血球貧血である。(発明の詳細な説明) 本発明は、例えばデシタビンやアザシチジンのようなシチジン類似体のより改良された医薬製剤を提供するものであり、骨髄異形成症候群(MDS)、進行非小細胞肺癌(NSCL)及び鎌状赤血球貧血等の様々な疾病や症状を治療するために用いることができる。この刷新的なアプローチをとることにより、この種の薬剤の製品化開発に悪影響を及ぼしてきた3つの主な障害を克服することができる。その障害とは、水性環境における加水分解性、医薬的に許容されるほとんどの溶媒において溶解度が低いこと、経口による生体利用効率が最低であるという3点である。 前記記載のごとく、現行の臨床用製剤では、デシタビンは通常生理食塩溶液のような水溶液中ではわずかしか溶解されず、いったん溶解すると急速な分解を起こす。デシタビンの水溶液中における不安定さと限界のある溶解性は、デシタビン医薬品の製造と臨床使用の両面において重大な不便さを創出している。水溶液においてデシタビンが不安定であるため、製造時にはデシタビン溶液の冷蔵が必要であり、静脈投与前には薬剤の希釈用として冷たい注入用液を使わなければならず、デシタビン水溶液は短期間しか保存できない。また、水溶液における溶解性に限界があることからも、大量の薬を投与しなければならないので、薬の皮下投与はむずかしい。 デシタビン及びアザシチジンの現行の臨床用製剤に伴う上記問題点に対して、本発明は革新的な解決策を提供するものである。本発明者らは、シクロデキストリン化合物によりデシタビン(又はアザシチジン)の水溶液中での溶解性が著しく上昇し、水溶液における安定性が劇的に向上することを発見した。本発明により、デシタビン医薬品の製造、保存及び輸送における重大な問題点の多くを最小限に、又はなくせるものと本発明者らは考えている。さらに重要なことは、シトチジン(cytotidine)類似体又は誘導体(例えば、デシタビン、アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、ゲムシタビン及びara-C等)の医薬品の臨床用途では、本発明により、冷たい注入液の必要がなくなることにより患者の不快感や不便さを軽減することができ、薬剤液の投与量について、特に皮下投与の場合、少なくすることができる。1.本発明の製剤におけるシクロデキストリン 本発明によると、シクロデキストリン化合物とは、α-、β-、又はγ-シクロデキストリンが挙げられる。シクロデキストリンはグルコースの環状オリゴマーである。これらの化合物は、シクロデキストリン分子の脂肪親和性を求める空洞に嵌ることができる分子を有する別の化合物と包接錯体を形成する。具体的にいうならば、α-シクロデキストリンは6個のグルコピラノースユニットを有し、β-シクロデキストリンは7個のグルコピラノースユニットを有し、γ-シクロデキストリンは8個のグルコピラノースユニットを有する。一般に、シクロデキストリン分子は、コアー開口部がα-、β-又はγ-シクロデキストリンそれぞれにおいて、4.7〜5.3Å、6.0〜6.5Å、7.5〜8.3Åである切頭円錐を形成していると考えられる。 シクロデキストリン化合物は結晶又は非晶質であってもよい。好ましくは、非晶質シクロデキストリン化合物がよい。一般に、非晶質シクロデキストリンは、非選択的な添加により、とりわけ、所望のシクロデキストリン種のアルキル化により調製される。複数の成分を含む混合物を得られるように反応を行い、シクロデキストリンが結晶化しないようにする。様々なアルキル化シクロデキストリン及びヒドロキシアルキルシクロデキストリン類を作成することができるが、当然のことながら、シクロデキストリンの出発物質や使用した添加剤によって異なる。本発明の組成物に適した非晶質シクロデキストリンのなかで、β-シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体及びマルトトリオシル誘導体、カルボキシアミドメチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びジエチルアミノ-β-シクロデキストリンが挙げられる。 実施形態の1つは、シクロデキストリン化合物がスルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体であり、好ましくはモノ置換、テトラ置換又はヘプタ置換のβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩であり、さらに好ましくは、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル7ナトリウム塩(「CAPTISOL(登録商標)」、サイデックス社製(カンザス州、レネックサ))である。 別の実施形態では、シクロデキストリン化合物は置換シドロキシ-β-シクロデキストリンで、好ましくはβ-シクロデキストリンのヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル、グルコシル、マルトシル及びマルトトリオシル誘導体である。 シクロデキストリン化合物は非修飾又は修飾されたα-、β-又はγ-シクロデキストリンであるとよい。しかしながら、本発明の組成物においては、非修飾又は修飾されたα-、β-又はγ-シクロデキストリンの方があまり好適ではない。なぜなら、非修飾のものは結晶化する傾向があり水溶液における溶解度が比較的低いからである。本発明の組成物にとってより好ましいのは、化学的に修飾又は置換させたα-、β-又はγ-シクロデキストリンである。シクロデキストリン環のグルコピラノース単位の2、3及び6個の水酸基を化学的置換させることで、シクロデキストリン化合物の溶解度を上昇させる。 本発明の組成物においてさらに好ましいシクロデキストリンは、非晶質シクロデキストリン化合物である。非晶質シクロデキストリンとは、α-、β-又はγ-シクロデキストリンから調製された、シクロデキストリンの非結晶性混合物を意味する。一般に、非晶質シクロデキストリンは、所望のシクロデキストリン種の非選択的アルキル化により調製される。この目的のための好適なアルキル化剤としては、プロピレンオキシド、グリシドール、インドアセトアミド、クロロアセテート及び2-ジエチルアミノエチルクロライドが挙げられるが、これらに限定されない。複数の成分を含む混合物が得られるように反応を行い、シクロデキストリンが結晶化しないようにする。様々なアルキル化シクロデキストリン類を作成することができるが、当然のことながら、シクロデキストリンの出発物質や使用したアルキル化剤によって異なってくる。本発明の組成物に適した非晶質シクロデキストリンのなかで、β-シクロデキストリンのヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル、グルコシル、マルトシル及びマルトトリオシル誘導体、カルボキシアミドメチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びジエチルアミノ-β-シクロデキストリンが挙げられる。 本発明の組成物において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、そのα-又はγ-類似体も好適ではあるが、より好ましい。特定のシチジン類似体又は誘導体と一緒に使用して本発明の組成物を形成する特定のアルキル化α-、β-又はγ-シクロデキストリンは、シチジン類似体又は誘導体の分子サイズ及びシクロデキストリン化合物の空洞部位の相対的な大きさに応じて選択される。前記記載の非置換シクロデキストリン類については、本発明の組成物に賦形剤も含まれる場合、より大きな空洞部位を有するアルキル化シクロデキストリンの使用が有利であろう。本発明の組成物における特定のシチジン類似体/誘導体あるいはシチジン類似体/誘導体及び賦形剤と一緒に使用する特定のα-、β-又はγ-シクロデキストリンは、当然のことながら、その特定のシチジン類似体/誘導体を溶液状態で保つうえでの効果をもとに最適化すればよい。 本発明の組成物は、2種以上のα-、β-又はγ-シクロデキストリンの混合物を含んでいてもよい。本発明の組成物はα-、β-又はγ-シクロデキストリンの1種のみで構成されていることが好ましい。2.医薬製剤の調製 本発明の組成物はいずれのルートでも投与することができるが、好ましくは、後述のようなルートに適合する医薬製剤の形態で投与でき、治療対象たる症状次第である。例えば、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、頬側、鼻腔内、リポソーム経由、吸入、膣経由、眼内、局所的送達(例えばカテーテル又はステントによる)、皮下、脂肪組織内、関節内又は包膜内へ製剤を投与することができる。 経口投与の場合、組成物を、例えば、カプセル剤、懸濁液又は液体状にすることができる。該医薬組成物は治療有効量の有効成分を含む投与単位にすることが好ましい。 あるいは、本発明の組成物は粉末状、又は、好ましくは凍結乾燥粉末状にして、投与時に医薬的に許容できる適当な担体を加えて再構成することができる。 医薬組成物は、注入により投与することもできる。非経口投与用製剤は、水性の等張性滅菌注入溶液又は懸濁液の状態にすることができる。前記記載のとおり、こうした溶液又は懸濁液は、シチジン類似体/誘導体を含み、さらに1種以上のシクロデキストリン化合物を含んでいてもよい無菌の粉末剤又は顆粒剤から調製することができる。粉末剤又は顆粒剤を水、水性緩衝液又は少なくとも60容量%の水を含有する溶媒に溶解させることができる。 好適な実施形態において、シチジン類似体/誘導体を水溶液中に溶媒和した状態で含む、医薬的に許容される組成物に処方することができる。このような医薬製剤においてはシチジン類似体/誘導体の溶解性及び/又は安定性が向上するので、該医薬製剤は使用するまでの長い期間保存しておくことができ、注入用の液量は少なくてすむと考えられる。 前記説明のごとく、デシタビンによる現行の臨床治療では、薬剤の分解を最小限にするために、デシタビンを凍結乾燥粉末にして(KH2PO4及びNaOHと一緒に)、これに注射用蒸留水を加え、投与前には冷たい注入用液で希釈して提供している。このような処方及び治療方法はいくつかの問題点をかかえている。第一に、デシタビンを冷蔵して冷たい溶液にしておくことが不可欠となり、そのため取扱いが厄介であり、より高い温度での保存に耐えることができる製剤と比べて経済的に望ましくない。第二に、水溶液中のデシタビンは急速に分解されるため、蒸留水を加え、さらに希釈したデシタビン溶液の冷蔵庫での保存が7時間未満であれば、患者への注入時間は最長で3時間にしておくことがよい。さらに、冷たい液体を注入するということは、患者にとっては非常に不快であり苦痛となるおそれがあり、こうした治療計画に対する患者の抵抗感を誘発する。 本医薬製剤は、溶液中でシチジン類似体/誘導体とシクロデキストリン化合物とが錯体を形成することにより、デシタビン及び5-アザシチジンによる現行の臨床治療に伴う上記問題点を回避することができる。シチジン類似体/誘導体は、水を溶媒中に少なくとも60容量%、少なくとも80容量%、好ましくは少なくとも90容量%含む水溶液に処方することができる。本発明の製剤は現行の臨床で使われている製剤よりも化学的により安定していると考えられる。 シチジン類似体又は誘導体とシクロデキストリン化合物との相対的な量は、各シチジン類似体/誘導体の相対的な量や、シチジン類似体/誘導体に対するシクロデキストリン化合物の効果によって変わる。一般に、シチジン類似体/誘導体:シクロデキストリン化合物の質量比は、1:1〜1:5000の範囲がよい。この範囲であれば、シチジン類似体/誘導体のシクロデキストリン化合物に対する質量比が、特定の非晶質シクロデキストリン濃度を有する溶液にならないような濃度から、1:2000という範囲にあるとき、シチジン類似体/誘導体の溶解性及び/又は安定性が著しく向上する。シチジン類似体/誘導体:シクロデキストリン化合物の質量比が1:1〜1:200の範囲、好ましくは1:5〜1:50であると、シチジン類似体/誘導体の溶解性及び/又は安定性の向上に最も効果があると考えられる。例えば、シクロデキストリン化合物含有水溶液中において、1:10〜1:300(薬剤:シクロデキストリンの質量比)の比率として、かつ、最終濃度をデシタビンを40mg/ml含む注入用液で溶解させたデシタビンは、通常生理食塩溶液中のデシタビンと比べて非常に安定性を向上させることが期待される。 好ましくは、シチジン類似体/誘導体及びシクロデキストリン化合物を含む水溶液を非経口で、特に静脈から投与する場合は、シクロデキストリン化合物には発熱性物質の汚染が実質的にない。シクロデキストリン化合物、好ましくは非晶質ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、ヤンセン製薬をはじめとする多数の購入先から「Encapsin」という商品名で購入することができる。さらに、置換度又はグルコース残基の数が様々に異なる形態の非晶質シクロデキストリンも市販品を入手できる。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの製造方法は、Pitha等に付与された米国特許第4,727,064号に開示されており、これを引用により本願明細書の記載に含むものとする。 本発明の製剤を製造するには、あらかじめ秤量しておいたヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン化合物、これは実質的に発熱物質を含まないもので、これを発熱物質を除去した(depyrogenated)適当な無菌容器に入れる。容器や封止部品の発熱物質除去方法については、この分野の当業者には公知であり、米国薬局法23に詳細に記載されている(米国薬局方、米国、メリーランド州、ロックビル)。一般に、発熱物質除去は、発熱物質除去の対象物を250℃より高い温度に十分な時間暴露し、有機物を完全に灰化させることにより達成される。米国薬局方細菌エンドトキシン単位(Bacterial Endotoxin Units)で測定すると、製剤は、非晶質シクロデキストリン1グラムにつき細菌エンドトキシン単位が10未満となる。実質的に発熱物質を含まないとは、米国薬局方の方法を用いた際に、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの細菌エンドトキシン単位が1グラムあたり10未満であること意味する。好ましくは、米国薬局法23に規定の条件のもと、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、1ミリグラムにつき細菌内毒素単位が0.1〜5であることが好ましい。 十分な滅菌水または水性緩衝液を、実質的に発熱物質の存在しない非晶質シクロデキストリンに添加して、溶液中のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを所望の濃度にする。この溶液に、あらかじめ秤量しておいたシチジン類似体/誘導体を攪拌しながら添加し、必要であれば溶解するまでさらに放置する。 その後、溶液を0.2μmの滅菌フィルターで濾過して、滅菌保持容器に入れてもよい。その後、この溶液を発熱物質を除去した滅菌ガラス瓶に充填し、冷凍乾燥を行ってもよく、封止する。長期保存可能な製品にするためには、濾過、充填、任意の凍結乾燥、及び封止の前に、医薬的に許容される防腐剤を、シチジン類似体/誘導体及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン含有溶液に添加してもよい。あるいは、防腐剤は濾過の後に滅菌状態で添加してもよい。 本発明の製剤は、安定性の向上により周囲温度での保存及び輸送ができるので、医薬品取扱いコストを大幅に削減することができる。さらに、本発明の製剤は患者に投与するまで長期保存が便利に行える。くわえて、本発明の製剤は通常の注入用液(冷却なし)で希釈することなく、室温で患者に投与できるので、冷たい液体を注入するという不快感を患者に起こさせずにすむ。 シチジン類似体/誘導体は、シクロデキストリン化合物含有溶液に多様な濃度で溶解させることができる。例えば、溶液1mlに対して、シチジン類似体/誘導体0.1〜200mg、1〜100mg、1〜50mg、2〜50mg、2〜100mg、5〜100mg、10〜100mg、20〜100mgを製剤に任意で含有させることができる。シチジン類似体/誘導体の溶液濃度の具体例は、2、5、10、20、22、25、30、40及び50mg/mlが挙げられるがこれに限定されるものではない。 医薬製剤はさらに酸性化剤を含有させてもよく、製剤のpH値が約4〜8になるような割合で製剤に添加する。酸性化剤として有機酸が挙げられる。有機酸の例として、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾア酸及び酢酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性化剤は、塩酸、硫酸、リン酸及び硝酸等のような無機酸でもよい。 酸性化剤を製剤に加えて比較的中性のpH値(例えばpH4〜8以内)に保つことにより、シチジン類似体/誘導体を溶媒中で容易に溶解し、製剤の長期安定性を向上させるものと考えられる。アルカリ溶液では、デシタビンからN-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシル尿素への可逆的分解が急速に起こり、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシル尿素は不可逆的な分解により1-β-D-2’-デオキシリボフラノシル-3-グアニル尿素を形成する。加水分解の第1段階では、N-アミジニウム-N'-(2-デオキシ-β-D-エリスロペントフラノシル)ウレアホルメート(AUF)が形成される。加熱下における分解の第2段階ではグアニジンが形成される。酸性溶液の場合は、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシル尿素といくつかの不明な化合物とが形成される。強酸溶液(pH<2.2)では、5−アザシトシンが形成される。このように、比較的中性のpHを保つことが、シチジン類似体/誘導体含有製剤にとって有利であるといえる。 変形例として、酸性化剤がアスコルビン酸で、その濃度が溶媒に対して0.01〜0.2mg/ml、任意であるが、0.04〜0.1mg/ml又は0.03〜0.07mg/mlが挙げられる。 医薬製剤のpH値はpH4〜8に、好ましくはpH5〜7に、さらに好ましくはpH5.5〜6.8に調整するとよい。 医薬製剤は、温度2〜8℃で5、10、15、24時間又は2、4、7、14、21、28日以上保存した場合、少なくとも80%、90%、95%以上が安定していることが好ましい。また、医薬製剤は、温度20〜25℃で5、10、15、24時間又は2、5、7、14、21、28日以上保存した場合、少なくとも80%、90%、95%以上が安定していることが好ましい。 任意であるが、シチジン類似体/誘導体がシクロデキストリン化合物含有溶液に溶媒和する速度をはやめるための工程をとることができる。これを実行するための追加工程の例は、攪拌、加熱、溶媒和時間の延長、微粉化シチジン類似体/誘導体の使用、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 変形例の1つとして攪拌が適用される。攪拌の例としては、機械的攪拌、音波破砕、従来の混合、従来の攪拌及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、シルバーソン・マシン社(マサチューセッツ州、イーストロングメドー)製のシルバーソンホモジナイザーを使って製造元のプロトコルに基づき製剤の機械的攪拌を行うことができる。 別の変形例では熱を適用することができる。任意であるが、製剤を水浴で加熱してもよい。加熱した製剤の温度は70℃未満が好ましく、25〜40℃がさらに好ましい。一例として、製剤を37℃に加熱してもよい。 さらに別の変形例ではシチジン類似体/誘導体を微粉化したものを使用して溶媒和動態を向上させることもできる。任意であるが、微粉化は粉砕により行うことができる。一例として、マイクロンテクノロジー社(アイダホ州ボイジー)製のMalvern Mastersizer Mastersizerusing、エアージェットミルを用いたジェットミルにより製造元のプロトコルに基づき行うことができる。IncFluid Energy Aljet社(アイダホ州ボイジー、ペンシルバニア州テルホード)。 任意であるが、医薬製剤のpHは通常使用される方法で調整することができる。その1例として、アスコルビン酸のような酸又は水酸化ナトリウムのような塩基を添加してpH調整を行う。別の例としては、緩衝液、例えば、(エチレンジニトリロ)四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)溶液を添加してpHを調整し安定化させる。デシタビン及びアザシチジンがpHの影響を受けやすいことは既知であり、医薬製剤のpHをおよそpH7に調整することにより治療成分の安定性を向上させることができる。 医薬製剤は、シチジン類似体/誘導体不溶分の分離を行うとよい。分離はいずれかの適当な方法で行うことができる。例えば、好適な分離方法は、医薬製剤の濾過、沈降分離及び遠心分離法の1つ以上を行えばよい。シチジン類似体/誘導体の不溶粒子が原因となるような閉塞は、医薬製剤の投与に障害となり患者にとっては潜在的な危険となりうる。医薬製剤からシチジン類似体/誘導体の不溶分を分離することにより投与が容易になり、治療薬の安全性を向上させることができる。 任意であるが、医薬製剤を滅菌してもよい。滅菌は適切な技術のいずれかで行うことができる。例えば、好適な滅菌方法は、無菌化濾過、薬品照射、加熱濾過、及び化学的消毒剤の医薬製剤への添加の1つ以上を含むものとすることができる。 医薬製剤はさらに賦形剤を含んでもよく、組成物の安定性を高め、医薬品の溶液状態を保持し、本発明の製剤の投与に関る副作用(潜在的潰瘍形成、脈管炎症又は溢血)を防ぐのに十分な量の賦形剤を添加する。賦形剤の例としてはマンニトール、ソルビトール、ラクトース及びデキストロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 任意であるが、シチジン類似体/誘導体は経口投与用の形態に処方することができる。該製剤は、シチジン類似体又は誘導体とシクロデキストリン化合物とを含む、経口投与に適合した医薬組成物であることが好ましい。 前記医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、液体又は懸濁液の形態にすることができる。医薬組成物は、デシタビンや5-アザシチジンのようなシチジン類似体又は誘導体の治療上の有効量を含有する投与単位にすることが好ましい。 該組成物は、例えばアラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール又はトラガカントゴム等の結着剤、流動促進剤、滑剤、例えばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトール又は蔗糖等のフィラー、例えばステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ又はタルク等の滑剤、例えば馬鈴薯デンプン等の崩壊剤、香味添加又は着色剤、許容できる湿潤剤、防腐剤、着色剤、香味付与剤、ならびに添加剤をさらに含有させてもよい。添加剤の例としては、アカシア、アーモンド油、エチルアルコール、ヤシ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、硬化食用脂肪、レシチン、メチルセルロース、パラ-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、プロピレングリコール、ソルビトール、ソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 コーティング材料で腸溶タイプとすることもできる。薬剤を腸溶性にするためのコーティング材料はpHに敏感で、好ましくは、pH値が約5.2より高い閾値で、さらにはpH値が約5.5より高い閾値で、さらにpH値が約5.8より高い閾値で、さらにpH値が約6.0より高い閾値で、さらにpH値が約6.2より高い閾値で、さらにpH値が約6.5より高い閾値で、さらにpH値が約6.5より高い閾値で、より好ましくはpH値が約6.8より高い閾値で、又はpH値が約7.0より高い閾値で、またpH値が約7.2より高い閾値で、さらにはpH値が約7.5より高い閾値で望ましくは選択的に溶解する。医薬組成物は、pHの閾値と同等又はそれより高いpH値で3時間以内、さらには2時間以内、さらには1時間以内、より好ましくは30分以内で、さらに好ましくは15分以内で水性媒体中で実質的に崩壊することが好ましい。医薬組成物は、組成物の少なくとも50%が崩壊した(例えば破壊状態になる)段階で実質的な崩壊とみなされる。 この製剤の薬剤は、胃の中での胃液による分解から守られ、小腸の上部、好ましくは空腸のpH値が若干酸性であるがほぼ中性で、これが腸溶性コートのpH閾値を超えているところで薬剤が選択的に放出されるものと考えられる。腸溶性コートが崩壊すると、胃腸管の特定の部位で薬剤が選択的に放出され、その場所で薬剤は望ましく吸収されるので、薬剤の経口によるバイオアベイラビリティーが向上することになる。さらに、胃での分解を回避することによって、薬剤による胃の粘膜への損傷や胃の炎症による吐き気といった副作用を防止することができる。 このようなコーティング材料の例として、フタル酸セルロース(例えば、pH5.6を超えると選択的に溶解するヒドロプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、「Eudragit(登録商標)」の一群のポリマー類で、メタクリル酸及びメタクリレートを基礎としてカルボキシル官能基を有するアニオン系ポリマー(例えば、pH閾値5.6の「Eudragit L30D」、pH閾値6.0の「Eudragit L」及びpH閾値6.8の「Eudragit S」)、pH閾値5.8の「Aquateric」、pH値が約5.0を超えると薬剤を放出するポリ酢酸フタル酸ビニル(polyvinylacetate phthalate)(PVAP)、雌の昆虫類(ラックカイガラムシ)が産生する粘着性のある滲出物から得られ、およそpH7.0で薬剤を放出する「Shellac(登録商標)」、ならびに、pH閾値6.0の酢酸フタル酸セルロース(CAP)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 好適な実施形態は、pH閾値6.0の「Eudragit L100」又はpH閾値5.5の「L-100-55」で腸溶性コートしたものである。 また、本発明によると、前記医薬組成物は、pH1.0〜3.0の酸性水性媒体中で少なくとも1時間は実質的に崩壊しないことが好ましく、pH1.2〜2.0の酸性水性媒体中で少なくとも1時間は実質的に崩壊しないことがより好ましく、さらには少なくとも2時間、最も好ましくは少なくとも3時間は崩壊しないことが好ましい。任意であるが、pH1.2〜1.5の酸性水性媒体中で少なくとも1時間は実質的に崩壊しない製剤が好ましく、より好ましくは少なくとも2時間、さらに好ましく少なくとも3時間は実質的に崩壊しない製剤が好ましい。組成物は、組成物の少なくとも50%が崩壊すると、言い換えると破壊を起こすと、実質的に崩壊したとみなされる。 さらに、医薬組成物は、pH5.2〜7.5の水性媒体中で1時間以内に実質的に崩壊することが好ましく、pH6.0〜7.2の水性媒体中で30分以内に実質的に崩壊することがより好ましく、さらには、pH6.5〜7.0の水性媒体中で15分以内に実質的に崩壊することが特に好ましい。腸溶コーティング材料の量は、組成物中、1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜6質量%である。 医薬組成物は錠剤又はカプセル剤の形態であってもよい。好ましい実施形態は、組成物が錠剤である。腸溶コーティングを除いた錠剤の硬度は、少なくとも4kpが好ましく、より好ましくは少なくとも8kp、特に好ましくは10kpである。錠剤の大きさは5〜20mmが好ましく、8〜15mmがより好ましく、10〜13mmが特に好ましい。 上記の投与形態の場合はいずれも薬剤の濃度が0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜5質量%が特に好ましい。 任意であるが、医薬組成物中には、水分に曝されることによる薬剤の分解を防ぐために薬剤をシールする、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなシールコート材料をさらに含んでもよい。したがって、薬剤のコア部を最初にシールコート材料でシールし、さらに腸溶コーティング材料で被覆する。これは、水分に曝されて分解しやすいデシタビン又は5-アザシチジン製剤にとって特に有用である。 さらに、医薬組成物は、リン酸カリウム又はリン酸ナトリウムのような緩衝塩をさらに含有してもよく、医薬組成物が胃腸管で溶解した際に、その局所的環境のpH値を5.2〜7.0に維持するのに十分な量を含有してもよい。このような緩衝塩の例としてはKH2PO4及びNa2HPO4が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 また、任意であるが、シチジン類似体/誘導体は局所投与の形態に処方してもよい。製剤が、シチジン類似体又は誘導体とシクロデキストリン化合物とを含む、局所投与に適合した医薬組成物であることが好ましい。 局所用途として、本発明の組成物は、皮膚又は鼻や喉の粘膜に塗布するのに適した形態に調製することもできる。また、クリーム、軟膏、液体スプレーもしくは吸入剤、トローチ剤又は喉の塗布剤の形態にすることができる。このような局所用製剤はジメチルスルホキシド(DMSO)のような化合物をさらに加えて、有効成分の表面での浸透を容易にすることができる。 また、シチジン類似体/誘導体は眼又は耳への塗布に適した投与形態に処方してもよい。シチジン類似体/誘導体又はシクロデキストリン化合物は、疎水性又は親水性基剤に処方して液体又は半流動体状にして軟膏、クリーム、ローション、塗り薬又は粉末にすることができる。 また、任意であるが、シチジン類似体/誘導体は吸入による投与に適した投与形態に処方することもできる。シチジン類似体/誘導体又はシクロデキストリンは液体スプレーにすることもできるし、あるいは、吸入剤、トローチ剤又は喉の塗布剤と混合することもできる。 あるいは、シチジン類似体/誘導体又はシクロデキストリン化合物を粉末にして、投与時に医薬的に許容される適切な担体を加えて再構成することができる。 シチジン類似体/誘導体又はシクロデキストリンが固体である場合、液体、好ましくは水溶液に溶解させると、シチジン類似体/誘導体は組成物中でシクロデキストリンと一緒に錯体を形成する。該組成物はさらに緩衝塩を含んでもよく、これによりシクロデキストリン錯体を安定化させることができる。3.容器又はキット 本発明に記載のシチジン類似体/誘導体及び/又はシクロデキストリン化合物は、様々なサイズと容量の注射器ボトル、ガラス瓶又はアンプルといった無菌容器に収容することができる。この無菌容器には、粉末もしくは結晶状のシチジン類似体/誘導体及び/又はシクロデキストリン化合物を収容していてもよく、あるいは、体積1〜50ml、1〜25ml、1〜20ml又は1〜10mlの液体製剤を収容してもよい。無菌容器の使用により医薬製剤の無菌状態を保持することができ、輸送や保存を容易にし、前もって滅菌工程を行わずに医薬製剤を投与することができる。 本発明は、シチジン類似体/誘導体を必要とするホストに対してシチジン類似体/誘導体を投与するためのキットも提供する。実施形態の1つとして、キットは、シチジン類似体/誘導体及びシクロデキストリン化合物を固体、好ましくは粉末として収容し、かつ、水、緩衝液、賦形剤又はそれらの組合せを含む水性希釈剤とを収容する。固体の化合物と希釈剤との混合の結果、好ましいことに本発明の医薬製剤が形成される。例えば、該キットは、シチジン類似体/誘導体とシクロデキストリン化合物と、さらに任意の緩衝塩(例えばリン酸カリウム)とを固体状で収容する第1の容器、及び、水を含む希釈剤を収容する容器で構成され、前記希釈剤を固体化合物に添加することにより、シチジン類似体/誘導体を投与することを目的とする医薬製剤が形成される。固体の化合物と希釈剤との混合により、希釈剤1mlに対してシチジン類似体/誘導体を0.1〜200mg、好ましくは0.1〜100mg、2〜50mg、5〜30mg、10〜25mg含む医薬製剤を形成してもよい。 実施形態の1つは、希釈剤が注射又は注入用液である。注射又は注入用液の例としてはBWFI(静菌性注射用蒸留水)、SWFI(注射用滅菌水)、D5W(デキストロース5%含有水)、D10W(デキストロース10%含有水)、D5LR(デキストロース含有乳酸リンゲル液)、D51/4S(デキストロース5%含有の1/4濃度生理食塩水(デキストロース5%及び塩化ナトリウム注射剤0.22%))、D51/2S(デキストロース5%含有の1/2濃度生理食塩水(デキストロース5%及び塩化ナトリウム注射剤0.45%))、D5NS(デキストロース5%含有通常生理食塩液(デキストロース5%及び塩化ナトリウム注射剤0.9%))、D5R(デキストロース5%含有リンゲル液)、D10NS(デキストロース10%含有通常生理食塩液(デキストロース10%及び塩化ナトリウム注射剤0.9%))、IS10W(転化糖10%含有生理食塩液(転化糖10%及び塩化ナトリウム注射剤0.9%))、LR(乳酸化リンゲル液)、Pr(タンパク質加水分解物注射液)、R(リンゲル液)、NS 塩化ナトリウム0.9%(通常生理食塩水)、SOD CL 5(5%塩化ナトリウム(5%塩化ナトリウム注射液)及びSod Lac(乳酸ナトリウム、1/6モル(M/6乳酸ナトリウム注射液)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 別の実施形態では、該キットは、シチジン類似体/誘導体を固体、好ましくは粉末として収容し、かつ、水、緩衝液、賦形剤又はそれらの組合せを含んでいてもよい水性溶媒にシクロデキストリン化合物を溶解して含む希釈液とを収容する。固体の化合物と希釈液が混合されることにより、本発明の医薬製剤が形成される。例えば、該キットは、シチジン類似体/誘導体を固体状で収容する第1の容器、及び、希釈液を収容する容器で構成され、前記希釈液が固体化合物に添加される結果、シチジン類似体/誘導体を投与することを目的とする医薬製剤が形成される。固体の化合物と希釈液との混合により、希釈液1mlに対してシチジン類似体/誘導体を0.1〜200mg、0.1〜100mg、2〜50mg、5〜30mg、10〜25mg含有する医薬製剤を形成してもよい。 キットには、患者に医薬製剤を注入するための1種以上の注射器及び/又は注射器針をさらに収容していてもよい。粘性のある液体製剤の場合は、流動性キャパシティー(fluidic capacity)の高い注射器針が好ましく、例えばDEPOTONE注射針(Imprint Pharmaceuticals社、英国)などが好ましい。 キットはさらに説明書を備えていてもよい。説明書にはどのようにして固体化合物と希釈剤とを混合して医薬製剤を作成するかを記載すればよい。また、できあがった医薬製剤の患者への投与方法も記載するとよい。説明書には本発明の投与方法を記載してもよいことも記しておく。 希釈剤とシチジン類似体/誘導体とは別個の容器に収容することができる。容器のサイズは異なっていてもよい。例えば、希釈剤の容器は1〜50ml、1〜25ml、1〜20ml又は1〜10mlの希釈剤を包含しているとよい。 容器又はキットに備えられた医薬製剤は直接投与に適した形態であってもよいし、あるいは、患者に投与するものと比べて希釈が必要な濃縮タイプのものであってもよい。例えば、本発明に記載の医薬製剤は注入によって直接投与するのに適した形態であるとよい。 本願明細書に記載の方法及びキットについては、本発明の化合物を含有する医薬製剤の安定性及び治療効果が十分に向上又は補完されるような自由度がある。4.投与方法 シクロデキストリン化合物とともに処方するシチジン類似体/誘導体は、いずれのルートによっても投与することができるが、好ましくは、後述のようなルートに適合する医薬組成物の形態で投与でき、治療中の症状次第である。例えば、経口、非経口、局所、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、頬側、鼻腔内、リポソーム経由、吸入、膣経由、眼内、局所的送達(例えばカテーテル又はステントによる)、皮下、脂肪組織内、関節内又は包膜内へ化合物又は製剤を投与することができる。また、本発明の化合物及び/又は組成物は、ゆっくりと放出する投与形態にして投与又は併用投与してもよい。 シクロデキストリン化合物とともに処方したシチジン類似体/誘導体は、従来からのいずれかの投与形態にして投与又は併用投与することができる。本発明の文脈における「併用投与する」の定義は、臨床結果を向上させるために調整した治療の最中に1種より多くの治療薬を投与することを意味する。このような併用投与には時間的な同じ広がりがあってもよく、即ち、重なる期間のなかで行ってもよい。 シチジン類似体/誘導体は、用量0.1〜1000mg/m2、さらには1〜200mg/m2、さらには1〜150mg/m2、さらには1〜100mg/m2、さらには1〜75mg/m2、さらには1〜50mg/m2、さらには1〜40mg/m2、さらには1〜30mg/m2、さらには1〜20mg/m2、あるいは5〜30mg/m2で患者等のホストに対して投与することができる。 例えば、シチジン類似体/誘導体及びシクロデキストリン化合物は、注入用無菌粉末として提供することができるが、リン酸二水素カリウムのような緩衝塩及び水酸化ナトリウムのようなpH調整剤を一緒に提供してもよい。この製剤の保存は好ましくは2〜25℃で、薬剤を少なくとも3年間安定した状態で保存できる。この粉末製剤は10mlの注射用滅菌水を加えて再構成することができる。できた溶液は、0.9%塩化ナトリウム注射用液、5%デクストロース含有注射用液及び乳酸化リンゲル液等のこの分野では公知の注入用液でさらに希釈することができ、好ましくはYコネクターを用いる。前記の再構成後に希釈した溶液は、最大の薬効を伝達するために10〜11時間以内に使用することが好ましい。 好適な実施形態は、シクロデキストリン化合物と処方したシチジン類似体/誘導体を、皮下注射、ボーラス静脈注射、持続静脈点滴及び1時間かけての静脈点滴のような注入によって患者に投与する。任意であるが、本発明の化合物/組成物は患者に対して、1サイクルの治療につき3〜5日間、1日あたり1〜24時間の静脈点滴により、1日あたり0.1〜1000mg/m2、さらには1〜200mg/m2、さらには1〜150mg/m2、さらには1〜100mg/m2、さらには2〜50mg/m2、さらには10〜30mg/m2、さらには5〜20mg/m2の用量で投与するとよい。 デシタビン又はアザシチジンの場合、50mg/m2未満の用量は、従来からの癌の化学療法に使用する量よりもはるかに少ないと考えられる。デシタビン又はアザシチジンの類似体/誘導体をこのように低用量で使用することによって、異常なメチル化により癌細胞中で不活化していた遺伝子の転写活動を活性化することができ、下流においてシグナルの変換が誘発される。これにより細胞の成長を阻止し、細胞分化と自滅へと導き、最終的に癌細胞を死滅させる。反面、こうした低用量の使用は、正常な細胞への全身性細胞障害への影響が小さく、治療を行う患者への副作用を少なくする。 シクロデキストリン化合物とともに処方したシチジン類似体/誘導体は、注入液、治療化合物、栄養液、抗菌液、緩衝剤及び安定剤を含む群から選択される1種以上の成分と、従来からの形態で併用投与することができる。 前記記載のとおり、シチジン類似体/誘導体は、この薬剤とシクロデキストリン化合物とを水性溶媒中で溶媒和することにより、シクロデキストリン化合物と共に液状に処方することができる。この液状医薬製剤には、直接的な投与が可能であること、即ち、さらなる希釈がいらないというもう1つの利点があり、それゆえに投与するまで安定した状態で保存することができる。さらに、この製剤は水又は注入/注射用液と容易に混合することができるので、投与前に簡単にすばやく希釈することができる。例えば、患者へ投与する180分、60分、40分、30分、20分、10分、5分、2分、1分前又はそれより前に、医薬製剤を注入/注射用液で希釈することができる。 患者は該医薬製剤を非経口で摂取することができる。好適な投与経路は静脈点滴又は静脈注射、あるいは、皮下注射である。任意であるが、当該発明の医薬製剤は前もって希釈せずにそのまま直接注入することができる。 実施形態として、シチジン類似体/誘導体及びシクロデキストリン化合物を含有する該医薬製剤は、コネクター、例えば3本のアーム部を有し、それぞれがチューブに接続しているY型コネクターで注入する。一例として、様々なサイズのBaxter(登録商標)Y-コネクターを使用することができる。コネクターの1本のアームに取り付けられているチューブに医薬製剤を収容した容器を連結する。0.9%塩化ナトリウム溶液、5%デキストロース、5%グルコース、又は乳酸化リンゲル液のような注入用液をY型コネクターの他のアームに接続したチューブから注入する。注入用液と医薬製剤とがY型コネクターの中で混合される。できあがった混合物は、Y型コネクターの3番目のアームに接続したチューブから患者の体内へ注入される。この投与方法は、従来の方法と比べて、シチジン類似体/誘導体が患者の体内へ入る直前に注入用液と混合されることから、水との接触によるシチジン類似体/誘導体の分解が起こるおそれのある時間を短くすることができるという利点がある。例えば、シチジン類似体/誘導体の混合は、患者の体内へ入る10分前、5分前、2分前又は1分前に行われる。 製剤の安定性が向上したことにより、患者はこの医薬製剤を1時間、2時間、3時間、4時間、5時間又はそれ以上注入することができる。注入時間を長くすることができるので、治療製剤投与の柔軟なスケジュールが可能になる。 前記とは別に、あるいは、前記に加えて、注入速度と注入量とを患者の必要性に応じて調整することができる。医薬製剤の注入の調整は既存のプロトコルに応じて行うことができる。 該医薬製剤は、注入液、治療化合物、栄養液、抗菌液、緩衝剤及び安定剤を含む群から選択される1種以上の成分と共に、従来からの形態で併用注入することができる。任意であるが、抗新生物薬、アルキル化薬、レチノイド科に属する薬剤、抗生剤、ホルモン剤、植物由来の薬剤、生物学的薬剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤及び単クローン抗体をはじめとする治療薬(これらに限定されるものではない)を本発明の製剤と併用注入させることができる。 本発明の文脈における「併用注入」という定義は、臨床上の結果を改善するために調整した治療の最中に1種より多くの治療剤を注入することを意味する。このような併用注入の場合、同時、重複、又は順次に行うことができる。1つの具体例として、Y型コネクターを使って医薬製剤と注入用液との併用注入を行うとよい。 ヒトの場合、バイオアッセイによる測定で、デシタビンの半減期は7分であり、最終半減期(terminal half-life)がおよそ10〜35分の分布相(distribution phase)を示した。分布容積は約4.6L/kgである。プラズマ半減期が短いのは、肝臓のシチジンデアミナーゼによる脱アミノ化でデシタビンが急速に不活性化するせいである。ヒトの場合のクリアランスは高く、およそ126mL/分/kgである。合計5名の患者の血漿曲線下面積の平均は408μg/h/Lで、ピーク血漿中濃度は2.01μMであった。患者のデシタビン濃度は、3時間の点滴で100mg/m2の用量で投与した際、およそ0.4μg/ml(2μM)であった。さらに点滴時間を延長(40時間まで)したところ、その間の血漿中濃度はおよそ0.1〜0.4μg/mLであった。点滴時間が40〜60時間で、点滴速度が1mg/kg/時の場合、血漿中濃度は0.43〜0.76μg/mLに達した。点滴速度1mg/kg/時における定常状態の血漿中濃度は、0.2〜0.5μg/mLと概算される。点滴をやめたあとの半減期は12〜20分である。用量100mg/m2で6時間点滴する間、定常状態の血漿中のデシタビン濃度は、0.31〜0.39μg/mLと概算された。600mg/m2の点滴の間の濃度範囲は、0.41〜16μg/mLであった。人体の髄液中にデシタビンが浸透し、36時間の静脈点滴の終了時には血漿中濃度の14〜21%に達する。変化していないデシタビンが尿に排泄される割合は低く、全用量の0.01%未満から0.9%の範囲で、排泄と用量又は血漿中の薬剤濃度との間にはなんら関係がない。クリアランスが高いことと、投与した用量のうちの尿による排泄が全体で1%未満であることから、デシタビンは代謝工程により急速かつ大半が消失されることが推測される。 現行の臨床用のデシタビン又はアザシチジン製剤と比べ、シクロデキストリンを含有する本発明の製剤は、安定性が向上することから保存時の貯蔵寿命を延長することができ、デシタビン又はアザシチジンの臨床用途に関連する問題点を回避することができる。例えば、シチジン類似体/誘導体はシクロデキストリン化合物と一緒に凍結乾燥粉末として供給することができるが、これは、酸(例えばアスコルビン酸)、アルカリ(水酸化ナトリウム)又は緩衝塩(リン酸二水素ナトリウム)も一緒にすることができる。この凍結乾燥粉末は、例えば、静脈、腹腔、筋肉内又は皮下注射用滅菌水を加えて再構成することができる。任意であるが、該粉末は、水と混和性のある溶媒、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール及びPEG等を含有する水性溶媒を加えて再構成することができる。できた溶液は患者に直接投与してもよいし、あるいは、0.9%塩化ナトリウム注射用液、5%デクストロース含有注射用液、5%グルコース含有注射用液及び乳酸化リンゲル液等の注入用液でさらに希釈してもよい。 本発明の製剤は周囲条件下で、又は、2〜25℃(32〜77°F)に調整した環境下で保存するとよい。さらに、現行の臨床用デシタビン製剤と比べて、本発明の製剤は、錯体形成と化学的安定性の向上により酵素による脱アミノ反応や加水分解に対して耐性を高くなり、血漿中半減期が長くなると考えられる。 それに加えて、現行の臨床用デシタビン製剤と比べて、本発明の製剤は、化学的安定性が向上するため血漿中半減期が長くなると考えられる。このように、シチジン類似体/誘導体は、デシタビン又はアザシチジンと比べて、少ない投与量及び/又は少ない頻度で患者に投与することができる。5.医薬製剤の適応症と併用療法 本願明細書記載の本発明の製剤には多くの治療用途と予防用途がある。好適な実施形態では、シクロデキストリン化合物と共に処方したシチジン類似体/誘導体が、デシタビン又はアザシチジンのようなシチジン類似体/誘導体による治療に影響を受ける多様な疾病の治療に用いられる。本発明の製剤を用いて治療することができる好適な適応症としては、望ましくない細胞増殖又は制御されていない細胞増殖に関るものが挙げられる。このような適応症には、良性腫瘍、原発性の腫瘍や腫瘍の転移などの様々な種類の癌、再狭窄(例えば、冠動脈、頚動脈、脳の病変)、血液疾患、内皮細胞の異常刺激(アテローム性動脈硬化)、手術、異常な創傷治癒、異常な血管形成を原因とする人体組織への損傷、組織に繊維症をもたらす疾病、反復運動障害、血管がほとんど新生されない組織の疾患、臓器移植に関連する増殖反応がある。 一般に、良性腫瘍の細胞はその分化特性を保ち、かつ、完全に制御されない状態で分裂するものではない。良性腫瘍は通常局所的であり非転移性である。本発明により治療ができる良性腫瘍の具体例としては、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経繊維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫、繊維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ及び化膿性肉芽腫が挙げられる。 悪性腫瘍の場合は、細胞が未分化状態となり、人体の成長調節信号への応答がなく、制御されずに増殖する。悪性腫瘍は湿潤性であり離れた部位へ広がる(転移する)可能性がある。悪性腫瘍は通常、原発性腫瘍及び続発性腫瘍の2つのカテゴリーに分類される。原発性腫瘍は、それが発見された組織から直接発生している。続発性腫瘍は転移であり、人体のどこか別の場所で発生するが、遠隔臓器にすでに転移しているものである。通常の転移経路は、隣接する組織中への直接的な成長、脈管系又はリンパ系を介しての広がり、組織平面及び体内空間(腹水、髄液等)に沿っての移動がある。 原発性又は続発性のいずれにせよ、本発明を用いることにより治療できる癌又は悪性腫瘍の具体的なものとして、乳癌、皮膚癌、骨肉腫、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、脳腫瘍、喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓の癌、基底細胞癌、潰瘍性及び乳頭状の有棘細胞癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫、原発性脳腫瘍、急性及び慢性のリンパ球性及び顆粒球性腫瘍、毛様細胞性腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫(mucosal neuronms)、腸管神経節神経腫(ganglloneuromas)、過形成角膜神経腫瘍、マルファン体型腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルムス腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋腫(leiomyomater tumor)、子宮頚部形成異常、上皮内癌、神経芽腫、網膜芽腫、柔組織肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及びその他の肉腫、カルシウム過剰血症、腎細胞腫瘍、真性赤血球増加症、腺癌、多形性膠芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌ならびに他の癌腫及び肉腫が挙げられる。 血液疾患としては、血液細胞の異形成変化を引き起こすおそれのある血液細胞の異常増殖や様々な白血病等の血液悪性腫瘍が含まれる。血液疾患の例としては、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び鎌状赤血球貧血が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 実施形態によっては、本発明の製剤を使用して、遺伝性血液疾患及び/又は鎌状赤血球貧血のようなヘモグロビンに欠陥のある疾患をはじめとする血液疾患を治療する。また、別の実施形態では、本発明の製剤を使用して、白血病、前白血病及び骨髄異形成症候群(MDS)等の骨髄に関連する他の癌、ならびに、例えば非小細胞肺癌(NSCL)等の肺癌をはじめとする癌の治療をすることができる。NSCLは、類表皮癌又は扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌を挙げることができる。MDSは、不応性貧血、環状鉄芽球性不応性貧血、過剰芽細胞を伴う不応性貧血、変性する過剰芽細胞を伴う不応性貧血、慢性の骨髄性単球性白血病が挙げられる。 本発明は、対象動物を治療するための方法、医薬組成物及びキットを提供する。本願明細書で使用する「対象動物」という用語は、ヒト及び他の哺乳類である。本願明細書で使用する「治療する」という用語は、治療効果及び/又は予防効果を得ることを包含する。治療効果とは、治療中の根底にある疾患の一掃又は回復を意味する。例えば、鎌状細胞貧血をわずらう患者の場合、治療効果とは根底をなす鎌状細胞貧血の一掃と回復を意味する。また、実際のところは患者がその根底にある障害に依然として苦しんでいるとしても、患者の中になんらかの改善が見出せるように、その根底にある疾患に関連した生理的徴候の1つ又はそれより多くの徴候が一掃又は改善することも、治療効果の1つである。例えば、鎌状細胞貧血が一掃される場合だけでなく、鎌状細胞貧血に伴う他の障害又は苦痛、たとえば、手足症候群、疲労、危期中(痛みが発現する期間)に経験する痛みの重篤度又は継続時間について、患者のなかに何らかの改善が見られる場合も、本発明の製剤による治療効果が得られるということである。同様に、MDS又はNSCL等といった癌に伴う、貧血、あざ、持続感染、肺腫瘍の大きさ等の徴候を改善するうえでも、本発明の製剤は治療効果をもたらすことができる。 予防効果に関しては、癌又は血液疾患の発現の危険性がある患者、又は、このような症状についての生理的徴候を1つ以上報告している患者に対して、症状であるという診断がでていないとしても本発明の製剤を投与することができる。 必要であれば、あるいは、所望であれば、本発明の製剤は他の治療剤といっしょに投与することができる。本発明の化合物及び組成物と併用投与することができる治療剤は、ある程度、治療中の症状に依って選択される。 シチジン類似体/誘導体以外の治療剤の例としては、アルキル化薬、抗生剤、代謝拮抗剤(antimetabolic agent)、ホルモン剤、植物由来の薬剤及び生物学的薬剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 アルキル化剤の例としては、ビスクロロエチルアミン類(窒素マスタード、例えば、クロラムブチル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン類(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート類(alkyl alkone sulfonates)(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素類(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典型アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン、プロカルバジン)、白金化合物(カルボプラスチン、シスプラチン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 抗生剤の例としては、アントラサイクリン系(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシン(plicatomycin)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 代謝拮抗剤の例としては、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(5-FUdR)、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン(6-TG)、メルカプトプリン(6-MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2-CDA)、アスパラギナーゼ、メシル酸イマチニブ(もしくはGLEEVAC(登録商標))及びゲムシタビンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 ホルモン剤の例としては、 合成エストロゲン(例えばジエチルスチベストロール)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、ラロキシフェン)、抗アンドロゲン(ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼ阻害薬(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール、テトラゾール)、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール、ミフェプリストンが挙げられる。 植物由来薬剤の例としてはカンプトセシン類(20(S)-カンプトセシン、9-ニトロ-20(S)-カンプトセシン、9-アミノ-20(S)-カンプトセシン、イロテカン(irotecan)、CPT-11)、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン)、ポドフィロトキシン類(例えば、エトポシド(VP-16)、テニポシド(VM-26))ならびにタキサン類(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 生物学的薬剤の例としては、サイトカイン、腫瘍抗原に対抗する単クローン抗体、腫瘍抑制遺伝子及び癌ワクチン等の免疫調節タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。CPTと一緒に使用できるインターロイキンの例としては、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン12(IL-12)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。CPTと一緒に使用できるインターフェロンの例としては、インターフェロンa、インターフェロンb(フィブロブラストインターフェロン)及びインターフェロンg(フィブロブラストインターフェロン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。サイトカインの例としては、エロトロポエチン((エポイエチンa(epoietina))、顆粒球-CSF(フィルグラスチム(filgrastin))、顆粒球、マクロファージ-CSF(サルグラモスチム)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。サイトカイン以外の他の免疫調整剤にはカルメットーゲラン菌、レバミソール、オクトレオチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない CPTと一緒に使用することができる、腫瘍抗原に対抗する単クローン抗体の例としては、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン)、CAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)、ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、PANOREX(登録商標)(エドレコロマブ)、BEXXAR(登録商標)(トシツモマブ)、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)及びAVASTIN(登録商標)(ビバシズマブ)が挙げられるが、これに限定されるものではない。 腫瘍抑制遺伝子の例としては、DPC-4、NF-1、NF-2、RB、p53、WT1、BRCA1及びBRCA2が挙げられるが、これに限定されるものではない。 癌ワクチンの例としては、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異抗原(PSA)、α-フェトプロテイン(AFP)、がん胎児性抗原(CEA)(結腸癌及び他の腺癌、例えば、乳癌、肺癌、胃癌、膵臓癌等から産出)、メラノーマ関連抗原(MART-1、gp100、MAGE 1,3 チロシナーゼ)、パピロマ・ウィルスE6及びE7フラグメント、自己腫瘍細胞(antologous tumor cells)及び同種間腫瘍細胞の細胞全体又は一部/溶解物が挙げられるが、これに限定されるものではない。 アジュバントを使用して癌関連抗原(TAA)に対する免疫反応を増大させてもよい。アジュバントの例としては、カルメット−ゲラン菌(BCG)、内毒素リポ多糖、キーホールリンペットヘモシアニン(GKLH)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)ならびに化学療法作用薬Cytoxanで、これは低用量で腫瘍に誘発されるサプレッションを抑えると考えられているが、これらに限られるものではない。 また、本発明は、望ましくない又は制御されていない腫瘍起因性血管形成の治療方法も提供する。実施形態の1つは、制御のない腫瘍起因性血管形成を患う患者に対して、本発明の医薬製剤中の治療有効量のシチジン類似体及び誘導体を投与することを含む方法である。該方法はさらに血管形成阻害薬を1種以上患者に投与してもよい。 血管形成阻害薬の例としては、レチノイド酸及びその誘導体、2-メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)プロテイン、ENDOSTATIN(商標)プロテイン、スラミン、スクアラミン、メタロプロテイナーゼ-1組織阻害剤、メタロプロテイナーゼ-2組織阻害剤、1型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、2型プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、軟骨由来の阻害剤、パクリタクセル、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの甲殻より調製)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sp-pg)、スタウロスポリン、マトリックス代謝の調整剤で例えばプロリン類似体(l-アゼチジン-2-カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d,l-3,4-デヒドロプロリン、チアプロリン)、α,α-ジピリジル β-アミノプロピオニトリルフマレート、4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3h)-オキサゾロン;メトトレキサート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2血清マクログロブリン、chimp-3、キモスタチン、β-シクロデキストリンテトラデカスルフェート、エポネマイシン;フマギリン、チオリンゴ酸金ナトリウム、d-ペニシラミン(CDPT)、β-1-アンチコラゲナーゼ-血清、α2-抗プラスミン、ビサントレン、ロベンザリット2ナトリウム、n-(2-カルボキシフェニル-4-クロロアントロニリン酸(chloroanthronilic acid)2ナトリウムもしくは「CCA」、タリドミド;アンゴスタチックステロイド(angostatic steroid)、カルグボキシナミノルミダゾール(cargboxynaminolmidazole);BB94のようなメタロプロテイナーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この他の血管形成阻害薬としては、脈管形成の成長因子、bFGF、aFGF、FGF-5、VEGFイソ型、VEGF-C、HGF/SF及びAng-1/Ang-2に対するモノクローナル抗体等の抗体が挙げられる。実施例 下記の実施例は本発明の詳細を説明することを意図したものであり、これらの実施例はいかなる方法によっても本発明を限定するものではない。下記実施例に記載のとおり、水溶液中で賦形剤としてシクロデキストリンを使用することによって、デシタビン及び5-アザシチジンのようなシチジン類似体又は誘導体の溶解性及び/又は安定性を著しく向上させることができる。1.シクロデキストリン溶液におけるデシタビンの溶解性 4部のシクロデキストリン(ヒドロキシプロピル α-シクロデキストリン(HPACD)、ヒドロキシプロピル β-シクロデキストリン(HPBCD)、β-シクロデキストリン(BCD)、ヒドロキシプロピル γ-シクロデキストリン(HPGCD)又はCAPTISOL)を6部のリン酸カリウム緩衝液(50mM KH2PO4、pH7.0)に溶解させて、pH6.7〜7.2のシクロデキストリン水溶液を調製し、シクロデキストリンを40質量%含有する溶液とした。固体のデシタビン(カリフォルニア州、ダブリンのスーパージェン社製)を前記シクロデキストリン水溶液に加え、室温(20〜25℃)で混合した。表1は、リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)の場合と比較した、各シクロデキストリン溶液におけるデシタビンの溶解度を示す。 表1に示すように、HPBCDのようなβ-シクロデキストリン及びCaptisolの方が、α-又はγ-シクロデキストリン(HPACD及びHPGCD)よりも水溶液中におけるデシタビンの溶解性を向上させるうえで、より効果的である。溶解性が向上すれば、臨床上の1回の投与量に必要とされる容量が少なくてすみ、デシタビン薬剤の皮下投与がより実用的になる。2.シクロデキストリン溶液におけるデシタビンの安定性 前記のようにして作製したシクロデキストリン溶液及びリン酸塩緩衝液におけるデシタビンの化学的安定性をもとめた。いずれの溶液も、温度2〜8℃での実験開始時における初期デシタビン濃度は17〜18mg/mLであり、温度25℃での実験開始時における初期デシタビン濃度は9〜10mg/mLであった。デシタビンの有効性はHPLC法で測定し、220nmにおけるピーク面積の合計をパーセンテージで表した。 図1及び図2はそれぞれ、2〜8℃での実験と25℃での実験において、水溶液中でシクロデキストリンを賦形剤として使うことにより、溶液中のデシタビンの安定性を大幅に改善できることを示している。水溶液におけるデシタビンに対するシクロデキストリンの安定化効果は、α-又はγ-シクロデキストリン(HPACD及びHPGCD)と比較して、HPBCDのようなβ-シクロデキストリン及びCaptisolの使用時により顕著である。また、この安定化効果は、図3に示すように濃度に依存している。 作用の理論又は機構に拘束されるものではないが、シクロデキストリン含有水溶液中におけるデシタビンの溶解性の上昇と安定性の向上は、どちらも、デシタビンとシクロデキストリン分子間で錯体が形成されたことに起因すると本発明者らは考え、また、α-又はγ-シクロデキストリンよりも、β-シクロデキストリンの方がより結びつきの強い可逆性錯体をデシタビンとともに作成するものと考える。 シクロデキストリン含有水溶液中のデシタビンについて、紫外線分光学的研究を行い、デシタビンとβ-シクロデキストリンとの錯体形成を明らかにした。デシタビンを含まないことを以外は同じ溶液を用いてブランクをとった後、室温でデシタビン濃度を0.01〜0.02mg/mLにしてそれぞれスペクトル測定した。243nm〜246nmのピークにおけるデシタビンの吸光率が同じ(7000M-1cm-1)であることを前提にして、すべてのスペクトルをデシタビン69μMにノーマライズ(標準化)する。図4は、β-シクロデキストリンが存在する場合(図4)のデシタビンUVスペクトルの変化を示すもので、デシタビンとβ-シクロデキストリン間での錯体形成がはっきりと示唆されている。 また、シクロデキストリン溶液中のデシタビンのUVスペクトルの変化の範囲は、濃度依存型であることがわかる(図5)。室温でデシタビン濃度を0.01mg/mLにしてそれぞれスペクトルを測定し、その後、デシタビンを含有しない同様な溶液を使ってスペクトルをブランクにした。243nm〜246nmのピークにおけるデシタビンの吸光率が同じ(7000M-1cm-1)であることを前提に、すべてのスペクトルをデシタビン47μMにノーマライズ(標準化)する。図5に示すそれぞれのスペクトルから導き出される262nmにおける吸光度と、それに対応するHPBCD濃度をもとに、デシタビン/HPBCD錯体の化学量論が1:1であると仮定して、デシタビン-HPBCD錯体の錯生成定数Kfを下記方程式(1)から算出することができる。 1/ΔA = 1/(ΔAo*Kf*[HPBCD]) + 1/ΔAo (1) 前記式中、ΔAoは、遊離デシタビンと錯化したデシタビンとの262nmにおける吸光度の差であり、ΔAは、特定の[HPBCD](HPBCD濃度)でのデシタビン-HPBCDとデシタビン-KPiとの262nmにおける吸光度の差である。図6は、1/ΔAと1/[HPBCD]をプロットしたものである。このプロットにおいて、ΔAは、それぞれの特定のHPBCD濃度([HPBCD])でのデシタビン-HPBCDとデシタビン-KPiとの262nmにおける吸光度の差である。この直線は方程式(1)を用いた最小2乗法に適合する。合わせた曲線から、デシタビン-HPBCD錯形成のKfが23M-1と算出される。 HPBCDやCAPTISOLのようなβ-シクロデキストリンに比べると、α-又はγ-シクロデキストリンのデシタビン溶解性及び安定性の両方に対する効果はそれほど劇的ではない。おそらく、α-又はγ-シクロデキストリンとデシタビン分子との間では、より安定性のない錯体が形成されるからであろう。デシタビンとシクロデキストリンとの相互作用は、非共有結合型で可逆的であると考えられる。デシタビンについて、通常の薬剤投与の臨床条件下では、計算したデシタビン-HPBCDのKf値(23M-1)を鑑みると、デシタビンがいったん患者に注入されると、デシタビンの大半はHPBCDとの錯体から解離し、新しい薬剤の形は形成されないことが予想できる。 上記の結果から、シクロデキストリンを水溶液中で賦形剤として使用することにより、溶液中のデシタビン溶解度を2倍を超えて上昇させることができ、かつ、溶液中でのデシタビン安定性を大幅に向上させることができる。デシタビン系薬剤用の賦形剤としてのシクロデキストリンは、医薬品製造中に適用することができる。あるいは、凍結乾燥させたデシタビン粉末を投与直前に溶解させる注入用溶液中で使用することもできる。シクロデキストリンを賦形剤として含むデシタビン製剤は、あらゆる薬物送達方法によって、キット、カセット及び容器で送達することができる。シクロデキストリン含有水溶液におけるデシタビンの溶解性と安定性の大幅な改善により、現行のデシタビン医薬製品の製造と臨床用途の両面における数多くの重大な問題点を最小限に、あるいは、ゼロにすることになるであろう。3.シクロデキストリン溶液における5−アザシチジンの溶解性 4部のシクロデキストリン(ヒドロキシプロピル α-シクロデキストリン(HPACD)、ヒドロキシプロピル β-シクロデキストリン(HPBCD)、ヒドロキシプロピル γ-シクロデキストリン(HPGCD)又はCAPTISOL)を6部のリン酸カリウム緩衝液(50mM KH2PO4、pH7.0)に溶解させて、pH6.7〜7.2のシクロデキストリン水溶液を調製し、シクロデキストリンを40質量%含有する溶液とした。固体の5−アザシチジン(シグマ−アルドリッチ社製)を前記シクロデキストリン水溶液に加え、室温(20〜25℃)で混合した。表2は、リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)の場合と比較した、各シクロデキストリン溶液における5−アザシチジンの溶解度を示す。 表2に示すように、水溶液中でシクロデキストリンを賦形剤として使用することにより、溶液中の5−アザシチジンの溶解度を向上させることができる。α-又はγ-シクロデキストリン(HPACD及びHPGCD)よりも、HPBCDのようなβ-シクロデキストリン及びCaptisolの方が、水溶液中における5−アザシチジンの溶解性を向上させる際により効果的である。溶解性が向上すれば、臨床において1回の投与量に必要とされる容量が少なくてすむ。 特許請求の精神と範囲から逸脱することなく、多くの変更や変形例が本発明では可能であることは、この分野の当業者には言うまでもないことであり、そのような変更や変形は本発明の範囲において検討される。 出版物、特許及び特許出願ならびにウェブサイトのすべてが、その全体をもって引用により本願明細書の記載にふくまれるもので、これらの出版物、特許又は特許出願の1つ1つを具体的かつ個別に示して、それぞれの全体をもって引用により含むのと同じようにして援用される。シクロデキストリンと処方したデシタビンの2〜8℃における安定性についての研究結果を示す。シクロデキストリンと処方したデシタビンの25℃における安定性についての研究結果を示す。HPBCD濃度を変えた溶液におけるデシタビンの25℃での安定性についての研究結果を示す。25℃におけるデシタビンのシクロデキストリン溶液の紫外線スペクトルを示す。25℃における、HPBCD濃度を変えた溶液中のデシタビンの紫外線スペクトルを示す。1/[HPBCD]に対して262nmの1/ΔAをプロットしたものを示す。 水性溶媒に溶媒和されているデシタビン及びシクロデキストリン化合物を含み、前記水性溶媒が少なくとも60容量%の水を含有し、前記シクロデキストリン化合物が、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル7ナトリウム塩である、医薬組成物。 前記医薬組成物が、良性腫瘍、癌、血液疾患、アテローム性動脈硬化、組織に繊維症をもたらす疾病、反復運動障害、臓器移植に関連する増殖反応からなる群から選択される疾病を治療するためのものである、請求項1記載の医薬組成物。 前記医薬組成物が、骨髄異形成症候群、白血病、悪性腫瘍及び鎌状赤血球貧血からなる群から選択される疾病を治療するためのものである、請求項1記載の医薬組成物。 前記デシタビン:前記シクロデキストリン化合物の質量比が1:1〜1:5000の範囲である、請求項1記載の医薬組成物。 デシタビンとβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテル7ナトリウム塩とを、少なくとも60容量%の水を含有する水性溶媒中に溶解させることを含む方法によって調製されるデシタビン医薬製剤。 デシタビンを必要とするホストにデシタビンを投与するための、請求項1記載の医薬組成物を収容してなる無菌容器。 デシタビンを必要とするホストにデシタビンを投与するためのキットであって、固体状のデシタビンと、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル7ナトリウム塩及び少なくとも60容量%の水を含有する水性希釈剤とを収容するキット。 デシタビンを必要とするホストにデシタビンを投与するためのキットであって、 デシタビンとβ-シクロデキストリンスルホブチルエーテル7ナトリウム塩とを収容する第1の容器と、 少なくとも60%の水を含有する水性希釈剤を収容する第2の容器とを有するキット。