タイトル: | 特許公報(B2)_RNAの検出法 |
出願番号: | 2007542815 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68,C12Q 1/70 |
外池 宏司 白崎 良成 西村 直行 玉造 滋 渡邊 くほみ 坂倉 康彦 中山 博之 JP 4735645 特許公報(B2) 20110513 2007542815 20061102 RNAの検出法 株式会社島津製作所 000001993 岡田 正広 100100561 外池 宏司 白崎 良成 西村 直行 玉造 滋 渡邊 くほみ 坂倉 康彦 中山 博之 JP 2005319332 20051102 JP 2005319333 20051102 JP 2005319334 20051102 JP 2006116310 20060420 20110727 C12N 15/09 20060101AFI20110707BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20110707BHJP C12Q 1/70 20060101ALI20110707BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 AC12Q1/70 C12N 15/00-15/90 C12Q 1/68 PubMed BIOSIS/WPI(DIALOG) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2001−029078(JP,A) 米国特許第06777210(US,B1) Mol. Biotechnol. (2004) vol.26, no.2, p.95-99 10 JP2006322010 20061102 WO2007052765 20070510 37 20080130 池上 文緒 本発明は、試料等の中に存在するRNA分解酵素を失活させる方法、当該試料の中に存在するRNA包含体(細胞、真菌、細菌、ウィルス等)から、或いは、当該試料から分離したRNA包含体から、RNAを簡易かつ安定的に抽出する方法、当該RNAを検出する方法、及びそれら方法に用いる試薬に関する。本発明は、RNA増幅法、特に、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(Reverse Transcription - Polymerase Chain Reaction :以下RT−PCRと略す)法によるRNA増幅法に関する。 分子生物学的な解析に用いるRNAを調製するためには、RNA分解酵素(RNase)の作用しない環境下でRNAを調製する必要がある。通常、被験物から細胞、真菌、細菌、ウィルス等(以下、RNA包含体と総称する。)を分離回収し、その後、そのRNA包含体内部からRNAを抽出し、抽出したRNAを精製する過程が必要となる。しかしながら、RNaseは偏在し、その上不活性化がきわめて困難な物質である。このため、生体等試料中のRNA包含体からRNAを精製する際には、RNA包含体内部からのRNAの抽出過程におけるRNase制御(活性の抑制)とRNase除去とを行わなければならず、きわめて厳格かつ煩雑な方法が必要であった。そこで、この過程を行う方法として、従来から、酵素、界面活性剤、カオトロピック剤等により生体試料を処理し、その後、フェノールあるいはフェノール・クロロホルム等を用いて、RNAを抽出及び精製する方法が使用されている。最近では、RNA抽出及び精製の過程において、イオン交換樹脂、ガラスフィルター、ガラスビーズ、磁気ビーズあるいはタンパク凝集作用を有する試薬等が使用される方法も報告されている。RNAの抽出及び精製法は、Chomczynski & Sacchi (1987) Analytical Biochemistry, 162: 156-159.(アシッド・グアニジウム・チオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出 (acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction) 法:AGPC法)や、Molecular Cloning: A Laboratory Manual Third Edition (2001) Joseph. Sambrook, David W. Russellなどに記載されている。 RT−PCR法は、逆転写酵素(Reverse Transcriptase)を用いてRNAを相補的なDNA(cDNA)に転換した後に、PCR法でcDNAを増幅する方法である。RT−PCR法は、微量のRNAでも定量的に解析できるため、今日最も検出感度の高い定量性に優れた解析法の1つとして用いられている。例えば、RNAを遺伝子として保有しているウイルスの検出、mRNAの定量的検出、mRNAの塩基配列決定による発現遺伝子の解析、さらにはcDNAのクローニングによる発現産物の解析及び生産等には欠かせない技術になっている。 RT−PCR法において、RT反応に引き続き行うPCR法は、DNA鎖中の特定領域を挟んだプライマー間のDNA合成反応を繰り返すことによって目的のDNA断片を数十万倍にも増幅できる方法である。PCR法はマリス氏らの発明である特開昭61−274697号公報に述べられている。 しかし前記の方法をはじめとしたRNA増幅法は全て酵素反応をベースとしているため、生体試料中に存在する色素、タンパク、糖類あるいは未知の夾雑物によって反応が強く阻害されることが広く知られている。 さらに、RNAは、全ての生体試料中に普遍的に存在するRNA分解酵素(RNase)により容易に分解される。 そこで、上述したように、前記のRNA増幅に先立って、被験物から細胞、真菌、細菌、ウイルス等(以下、RNA包含体と称する)を分離後、そのRNA包含体からRNAを抽出精製する過程が必要となる。例えば、米国特許第6825340号明細書や米国特許第6777210号明細書には、還元剤の存在下、加熱処理を行うことで、RNaseの失活、並びに、PBSで洗浄後の培養細胞からのRNA抽出とRT-PCRとが開示されている。 一方で、特開2001−29078号公報には、RNA包含体を含む試料からの、直接RT-PCRが開示されている。 RNA増幅を伴わないウイルス検出技術に関しては、特開2004−301684号公報に、アルカリ性緩衝剤を用いたノロウイルス検体用希釈液、及び当該希釈液を用いた、抗原抗体反応によるノロウイルス検出が開示されている。チョムチンスキ(Chomczynski)及びサチ(Sacchi)、「アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)」、1987年、第162巻、p.156−159ジョセフ・サンブルック(Joseph. Sambrook)及びデビッド・W・ラッセル(David W. Russell)、「分子クローニング:実験室マニュアル第3版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual Third Edition)」2001年特開昭61−274697号公報米国特許第6825340号明細書米国特許第6777210号明細書特開2001−29078号公報特開2004−301684号公報 RNAは、生体内はもちろんのこと、その生体が存在するあらゆる環境中に普遍的に存在しているRNaseによる分解の危険性に常にさらされている。従って、RNA包含体内部からのRNA抽出の際に、迅速なRNase不活性化の処理を行うべきことはもちろんのこと、精製過程においても、精製後においても、RNaseが混入しないような厳重な操作や管理が要求される。 しかし、従来の方法を用いて試料中のRNAの精製を行っても、夾雑物の除去が困難な場合や試料中のRNAの回収量が一定しない場合も多い。とりわけ試料中の目的とするRNAの含量が少ない場合には、引き続くRNA解析が困難な場合もある。また、これら精製法は、操作が煩雑で時間を要し、操作中のコンタミネーションの機会が高い。これらの理由により、従来の精製法は熟練を要する。従って、これらの問題点を解決するためには、より簡便で、かつ効果的な試料前処理法が望まれていた。 本発明の目的は、生体試料、排泄物試料、環境試料等の試料、もしくは、そこからRNA包含体の分離等を行って得た生体由来試料、排泄物由来試料、環境由来試料等の試料、の中に普遍的に存在するRNaseを失活させる方法を提供することにある。 本発明の目的は、生体試料、排泄物試料、環境試料等の試料、もしくは、そこからRNA包含体の分離等を行って得た生体由来試料、排泄物由来試料、環境由来試料等の試料、の中に存在するRNA包含体からRNAを効率よく抽出する方法を提供することにある。 本発明の目的は、該試料からRNAを効率よく抽出することにより、さらには、核酸合成反応に対する阻害物質の作用を抑制して、該試料中のRNAを効率よく増幅させることにより、簡便、迅速且つ安定的に、試料中に存在するRNAを検出する方法を提供することにある。 本発明の目的は、これらの方法に用いることができる処理試薬を提供することにある。 本発明者らは、鋭意検討の結果、生体試料中のRNaseの失活とRNA包含体内部からのRNAの抽出とを一工程で行い、引き続きRNA増幅を行うことによって、上記本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。<RNA分解酵素失活方法> 下記は、RNA分解酵素(RNase)の失活方法に関する。下記のRNA分解酵素失活方法は、RNA分解酵素が含まれる試料に対し、少なくとも還元剤を含むアルカリ性処理試薬を用いて、加熱条件下において、前記RNA分解酵素の失活を行う、RNA分解酵素の失活方法である。 RNA分解酵素が含まれる試料と、少なくとも還元剤を含むアルカリ性処理試薬(treating reagent)との混合物であって、pHが8.1以上の混合物を、加熱条件下において得る工程と、 前記混合物を前記加熱条件下で維持することによって、前記RNA分解酵素の失活を行う工程とを含む、RNA分解酵素の失活方法。 上記処理試薬のアルカリ性の程度は、試料と混合されて混合物となった際に混合物のpHが8.1以上(25℃の場合)となる程度である。 30℃以上の加熱条件下において前記処理試薬を用いる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記処理試薬は、Tris緩衝液、Good緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、及び炭酸塩緩衝液からなる群から選ばれるアルカリバッファを含む、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記処理試薬は、水酸化物、アンモニア、及びアミンからなる群から選ばれるアルカリ物質を含む、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記水酸化物が、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記アルカリ物質が、0.1mM〜飽和濃度で前記処理試薬に含まれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記アルカリ物質として水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムが、1mM〜100mMで前記処理試薬に含まれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記還元剤がチオール型還元剤である、前記のRNA分解酵素の失活方法。 ここで、チオール型還元剤とは、チオール基を有する還元剤の総称である。 前記チオール型還元剤が、ジチオスレイトール及びメルカプトエタノールからなる群から選ばれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記還元剤が、0.1mM〜飽和濃度で前記処理試薬に含まれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記還元剤としてジチオスレイトールが、1mM〜100mMで前記処理試薬に含まれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記試料が、生体試料、生体由来試料、環境試料、及び環境由来試料からなる群から選ばれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記試料が、排泄物試料及び排泄物由来試料からなる群から選ばれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記RNA包含体は、細胞、真菌、細菌、及びRNAウイルスからなる群から選ばれる、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記RNAウイルスは、レトロウイルス、ノロウイルス(SRSV)、ロタウイルス、及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選ばれる、前記に記載のRNA分解酵素の失活方法。 前記RNAウイルスがレトロウイルスである場合、前記レトロウイルスはエイズウイルス(HIV)である、前記のRNA分解酵素の失活方法。 前記RNAがmRNAである、前記のRNA分解酵素の失活方法。 RNA分解酵素が含まれる試料を、少なくとも還元剤を含む溶液中に混在させる工程と、前記試料と前記還元剤との混合液を、25℃におけるpHが8.1以上となるように調整する工程と、 pH調整された前記混合液を加熱条件下に供することによって、前記RNA分解酵素の失活を行う工程とを含む、RNA分解酵素の失活方法。 すなわち、上記の方法におけるRNA分解酵素の失活は、試料を還元剤が存在するpH8.1以上のアルカリ性環境に供することによって行われる。<RNA抽出方法> 下記は、RNAの抽出方法に関する。下記の抽出方法は、RNA包含体及びRNA分解酵素が含まれる試料に対し、少なくとも還元剤を含むアルカリ性処理試薬を用いて、加熱条件下において、前記RNA分解酵素の失活と前記RNA包含体からのRNAの抽出とを行う、RNAの抽出方法である。 なお、本発明の方法において、RNA包含体内部からのRNAの抽出とは、RNA包含体の膜構造を破壊することによって膜構造中に包含されていたRNAを抽出し、膜外の環境へ露出させることとして定義する。そして、露出したRNAや、露出したRNAがさらされている外部環境に対して何らかの処理を行うことは、本発明における抽出の定義に含めない。 RNA包含体及びRNA分解酵素が含まれる試料と、少なくとも還元剤を含むアルカリ性処理試薬(treating reagent)との混合物であって、pHが8.1以上の混合物を、加熱条件下において得る工程と、 前記混合物を前記加熱条件下で維持することによって、前記RNA分解酵素の失活とRNA包含体からのRNA抽出とを行う工程とを含む、RNAの抽出方法。 上記処理試薬のアルカリ性の程度は、試料と混合されて混合物となった際に混合物のpHが8.1以上(25℃の場合)となる程度である。 前記加熱条件は30℃以上である、前記のRNA抽出方法。 前記処理試薬は、Tris緩衝液、Good緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、及び炭酸塩緩衝液からなる群から選ばれるアルカリバッファを含む、前記のRNA抽出方法。 前記処理試薬は、水酸化物、アンモニア、及びアミンからなる群から選ばれるアルカリ物質を含む、前記のRNAの抽出方法。 前記水酸化物が、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである、前記のRNAの抽出方法。 前記アルカリ物質が、0.1mM〜飽和濃度で前記処理試薬に含まれる、前記のRNAの抽出方法。 前記アルカリ物質として水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムが、1mM〜100mMで前記処理試薬に含まれる、前記のRNAの抽出方法。 前記還元剤がチオール型還元剤である、前記のRNAの抽出方法。 ここで、チオール型還元剤とは、チオール基を有する還元剤の総称である。 前記チオール型還元剤が、ジチオスレイトール及びメルカプトエタノールからなる群から選ばれる、前記のRNAの抽出方法。 前記還元剤が、0.1mM〜飽和濃度で前記処理試薬に含まれる、前記のRNAの抽出方法。 前記還元剤としてジチオスレイトールが、1mM〜100mMで前記処理試薬に含まれる、前記のいずれかに記載のRNAの抽出方法。 前記試料が、生体試料、生体由来試料、環境試料、及び環境由来試料からなる群から選ばれる、前記のRNAの抽出方法。 前記試料が、排泄物試料及び排泄物由来試料からなる群から選ばれる、前記のRNAの抽出方法。 前記RNA包含体は、細胞、真菌、細菌、及びRNAウイルスからなる群から選ばれる、前記のRNAの抽出方法。 前記RNAウイルスは、レトロウイルス、ノロウイルス(SRSV)、ロタウイルス、及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選ばれる、前記のRNAの抽出方法。 前記RNAウイルスがレトロウイルスである場合、前記レトロウイルスはエイズウイルス(HIV)である、前記のRNAの抽出方法。 前記RNAがmRNAである、前記のRNAの抽出方法。 RNA包含体及びRNA分解酵素が含まれる試料を、少なくとも還元剤を含む溶液中に混在させる工程と、前記試料と前記還元剤との混合液を、25℃におけるpHが8.1以上となるように調整する工程と、 pH調整された前記混合液を加熱条件下に供することによって、前記RNA分解酵素の失活と前記RNA包含体からのRNAの抽出とを行う工程とを含む、RNA抽出方法。 すなわち、前記のRNA分解酵素の失活及びRNA抽出は、試料を還元剤が存在するpH8.1以上のアルカリ性環境に供することによって行われる。<RNA検出方法> 下記(1)〜(10)は、RNA検出方法に関する。本発明のRNA検出方法は、RNA包含体及びRNA分解酵素(RNase)が含まれる試料に対し、少なくとも還元剤及びキレート剤を含むアルカリ性処理試薬を用いて、加熱条件下において、前記RNA分解酵素の失活と前記RNA包含体内部からのRNAの抽出とを行い、試料処理液を得て、前記試料処理液と増幅用反応液とを混合してRNA増幅反応を行う、RNA検出方法である。 ここで、RNA包含体内部からのRNAの抽出とは、RNA包含体の膜構造を破壊することによって膜構造中に包含されていたRNAを取り出し、膜外の環境へ露出させることとして定義する。そして、露出したRNAや露出したRNAがさらされている外部環境に対して何らかの処理を行うことは、本発明における抽出の定義に含めない。 (1)RNAウイルス及びRNA分解酵素が含まれる試料と、少なくとも還元剤及び2価の金属イオンをキレートするキレート剤を含むアルカリ性処理試薬(treating reagent)との混合物であって、pHが8.1以上であり前記還元剤が2.5mM〜1Mの濃度で含まれる混合物を、60℃〜100℃の加熱条件下において得る工程と、 前記混合物を前記加熱条件下で維持することによって、前記RNA分解酵素の失活とRNAウイルスからのRNA抽出とを行い、抽出されたRNAを含む試料処理液(treated sample liquid)を得る工程と、 前記試料処理液と増幅用反応液とを混合してRNA増幅反応を行い増幅産物を得る工程と、 前記増幅産物を検出する工程とを含む、RNA検出方法。 上記処理試薬のアルカリ性の程度は、試料と混合されて混合物となった際に混合物のpHが8.1以上(25℃の場合)となるものである。 (2)前記処理試薬は、Tris緩衝液、Good緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、及び炭酸塩緩衝液からなる群から選ばれるアルカリバッファを含む、(1)に記載のRNA検出方法。 (3)前記処理試薬は、水酸化物、アンモニア、及びアミンからなる群から選ばれるアルカリ物質を含む、(1)又は(2)に記載のRNA検出方法。 前記水酸化物が、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである、前記のRNA検出方法。 前記アルカリ物質が、0.1mM〜飽和濃度で前記処理試薬に含まれる、前記のRNA検出方法。 前記アルカリ物質として水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムが、1mM〜100mMで前記処理試薬に含まれる、前記のRNA検出方法。 (4)前記還元剤がチオール型還元剤である、(1)〜(3)のいずれかに記載のRNA検出方法。 ここで、チオール型還元剤は、チオール基を有する還元剤の総称である。 前記チオール型還元剤が、ジチオスレイトール及びメルカプトエタノールからなる群から選ばれる、前記のRNA検出方法。 (5)前記試料が、生体試料、生体由来試料、環境試料、及び環境由来試料からなる群から選ばれる、(1)〜(4)のいずれかに記載のRNA検出方法。 (6)前記試料が、排泄物試料及び排泄物由来試料からなる群から選ばれる、(1)〜(5)のいずれかに記載のRNA検出方法。 (7)前記RNAウイルスは、レトロウイルス、ノロウイルス(SRSV)、ロタウイルス、及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選ばれる、(1)〜(6)のいずれかに記載のRNA検出方法。 (8)前記RNAウイルスがレトロウイルスである場合、前記レトロウイルスはエイズウイルス(HIV)である、(7)に記載のRNA検出方法。 (9)前記RNAがmRNAである、(1)〜(8)のいずれかに記載のRNA検出方法。 前記試料処理液と前記増幅用反応液との混合液が、硫酸化多糖、ポリアミン、アルブミン、及び非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる添加物をさらに含む、前記のRNA検出方法。 前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルからなる群から選ばれる、前記のRNA検出方法。 前記処理試薬が、さらに硫酸化多糖を含む、前記のRNA検出方法。 (10)RNAウイルス及びRNA分解酵素が含まれる試料を、少なくとも還元剤及び2価の金属イオンをキレートするキレート剤を含む溶液中に混在させ、前記試料と前記溶液との混合物を、前記還元剤が2.5mM〜1Mの濃度で含まれるように得る工程と、 前記混合物を、25℃におけるpHが8.1以上となるように調整する工程と、 pH調整された前記混合物を60℃〜100℃の加熱条件下に供することによって、前記RNA分解酵素の失活と前記RNAウイルスからのRNAの抽出とを行い、抽出されたRNAを含む試料処理液を得る工程と、 前記試料処理液と増幅用反応液とを混合してRNA増幅反応を行い増幅産物を得る工程と、 前記増幅産物を検出する工程とを含む、RNA検出方法。 すなわち、上記(1)〜(10)の方法におけるRNA分解酵素の失活及びRNA抽出工程は、試料を還元剤及びキレート剤が存在するpH8.1以上のアルカリ性環境に供することによって行われる。<処理試薬> 下記は、RNA分解酵素を含む試料に対する処理試薬に関する。 少なくとも、アルカリ物質及び/又はアルカリバッファと還元剤とを含む、RNA分解酵素を含む試料の処理試薬。 前記のRNA分解酵素の失活方法、RNAの抽出方法、又は、(1)〜(10)のいずれかに記載のRNA検出方法に用いるための、少なくとも、アルカリ物質及び/又はアルカリバッファと還元剤とを含む、RNA分解酵素を含む試料の処理試薬。 本発明によると、生体試料、環境試料等の試料、もしくは、そこからRNA包含体の分離等を行って得た生体由来試料等の試料、の中に普遍的に存在するRNaseを失活させる方法を提供することができる。 本発明によると、生体試料、環境試料等の試料、もしくは、そこからRNA包含体の分離等を行って得た生体由来試料等の試料、の中に存在するRNA包含体からRNAを効率よく抽出する方法を提供することができる。 本発明によると、該試料中のRNaseの失活とRNA包含体内部からのRNAの抽出とを一工程で行うことによって、簡便・安定的・効率的且つ迅速に、試料中に存在するRNAを増幅することが可能となる。そして、核酸合成に対する阻害物質の作用を抑制することにより、さらに簡便・安定的・効率的且つ迅速に、試料中に存在するRNAを増幅することが可能となる。このことにより、簡便・安定的・効率的且つ迅速に、試料中のRNAを検出する方法を提供することができる。 本発明によると、これらの方法に用いることができる処理試薬を提供することができる。図1は、本実施例1で、ヒト血清にRNA包含体を添加した検体について、蒸留水、又は、組成の異なる3種の処理試薬を用いて処理を行い、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図2は、本実施例2で、実施例1において蒸留水、又は、組成の異なる3種の処理試薬を用いて処理した後の検体を、冷蔵にて1日保存し、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図3は、本実施例3で得られた、加熱処理の温度及び時間と、RNA検出量との関係を示したグラフである。図4は、本実施例4で得られた、85℃での加熱処理の時間と、RNA検出量との関係を示したグラフである。図5は、本実施例5で得られた、加熱処理の温度及び時間と、RNA検出量との関係を示したグラフである。図6は、本実施例8で、ヒト血清にRNA包含体を添加した検体について、組成の異なる15種の処理試薬を用いて処理を行い、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図7は、本実施例9で、ヒト血清にRNA包含体を添加した検体について、実施例8における処理試薬の1つを用いた処理を、さまざまな加熱条件下で行い、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図8は、本実施例9で、ヒト血清にRNA包含体を添加した検体について、実施例8における処理試薬の1つにさらにEGTAを含ませた処理試薬を用いた処理を、さまざまな加熱条件下で行い、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図9は、実施例10において、擬似ノロウイルス陽性の糞便試料が混合された糞便試料液について、NaOHの濃度がそれぞれ異なる組成を有する8種の処理試薬を用いた処理を行い、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図10は、実施例11において、擬似ノロウイルス陽性の糞便試料が混合された糞便試料液について、DTTの濃度がそれぞれ異なる組成を有する7種の処理試薬を用いた処理を行い、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図11は、実施例12において、ウイルス濃度の異なる感染糞便試料についてRNA非精製で実施したRNA検出の結果を示す電気泳動図である。図12は、実施例12において、ウイルス濃度の異なるノロウイルス感染糞便試料についてRNAを精製し実施したRNA検出の結果を示す電気泳動図である。図13は、実施例13において、ノロウイルスに感染している18の異なる検体にそれぞれ由来するノロウイルス感染糞便試料を用いたRNA検出の結果を示す電気泳動図である。図14は、実施例13において、ノロウイルスに感染していない10の異なる検体にそれぞれ由来するノロウイルス非感染糞便試料を用いたRNA検出の結果を示す電気泳動図である。図15は、実施例14において、擬似ノロウイルス陽性の糞便試料が混合された糞便試料液に対し、処理試薬を用いた処理をさまざまな加熱条件下で行い、その後RNA増幅を行うことによりRNAを検出した結果を示す電気泳動図である。図16は、実施例14において、増幅されたRNAをリアルタイムPCRによって定量した結果を示すグラフである。図17は、実施例8における、モデル検体を15種類の各処理試薬と混合し、熱処理した後の様子を示す写真である。上の段が、DTT 0mM の処理試薬を用いた結果であり、左から[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]の処理試薬を用いた結果である。下の段は、DTT 20mMの処理試薬を用いた結果であり、左から[8]、[9]、[10]、[11]、[12]、[13]、[14]、[15]の処理試薬を用いた結果である。 本発明のRNase失活方法及びRNA抽出方法は、アルカリ環境及び還元剤の存在下で実現される。本発明のRNA検出方法は、試料中のRNase失活及びRNA包含体内部からのRNA抽出を行う工程と、RNA増幅反応を行う工程とを含む。 試料中のRNase失活及びRNA包含体内部からのRNA抽出を行う工程により得られる試料処理液は、RNA増幅用反応液と直接混合され、RNA増幅反応に供される。このため、RNAの特別な精製を行うことなく、試料から直にRNA増幅させることができる。1.試料 本発明は、処理対象となる試料として、RNaseが含まれ得るものであればどのようなものにも適用することができる。このような試料として、生体試料、生体由来試料、環境試料、環境由来試料、排泄物試料、排泄物由来試料などが挙げられる。 本発明は、処理対象となる試料として、RNaseに加えてRNA包含体が含まれているものである場合に、特に有用に適用することができる。このような試料として、生体試料、生体由来試料、環境試料、環境由来試料、排泄物試料、排泄物由来試料などが挙げられる。この場合、RNaseの失活とRNA包含体内部からのRNAの抽出とを一工程で行うことができる。 本発明において、RNA包含体とは、膜構造に囲まれ且つ内部にRNAを有する構造体である。具体的には、細胞、真菌、細菌、ウイルス等をいう。細胞には、血液や髄液等に由来する白血球、口腔粘膜細胞等が含まれる。また、細胞には、食品由来細胞、体内からの剥離細胞等も含まれる。本発明においてこのような細胞をRNA包含体とする場合、mRNA等のRNAについて抽出及び検出を行うことができる。ウイルスとしては、RNAウイルスが挙げられる。RNAウイルスとしては、レトロウイルス(エイズウイルス(HIV)等)、ノロウイルス(SRSV)、ロタウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)等が挙げられる。 生体試料としては、動植物組織や体液等が挙げられる。体液には、血液試料、髄液、唾液、乳等が含まれる。ここで、血液試料には、全血、血漿、血清等が含まれる。 一方、生体由来試料としては、上記生体試料に対して何らかの処理をしたものが含まれる。 環境試料としては、RNA包含体を含むものであれば、大気、土壌、水等を含むあらゆる試料が挙げられる。 一方、環境由来試料としては、上記環境試料に対して何らかの処理をしたものが含まれる。 排泄物には、尿、糞便、吐物等が含まれる。 排泄物試料には、生体から排泄された排泄物そのもの、或いは、排泄物そのものを、水、生理食塩水、pH緩衝液等に懸濁させたものが含まれる。前記生体としては、ヒト、家畜、昆虫、その他あらゆる動物が挙げられる。 一方、排泄物由来試料には、上記排泄物試料に対して何らかの処理をした試料が含まれる。 上記試料に対して行われても良い何らかの処理としては、RNA包含体の回収処理が挙げられる。RNA包含体の回収方法としては、上記試料からRNA包含体を分離できる方法であればどのような方法を用いることもできる。例えば、遠心・超遠心操作、濾過・限外濾過操作;当該操作に、ポリエチレングリコール等の共沈剤・抗体等の吸着胆体等を併用する方法;及び当該吸着担体を結合した磁気ビーズや膜等を用いて分離する方法等が用いられる。いずれの方法であっても、RNaseが残存する可能性のあるRNA包含体の回収処理の場合に、本発明は有効である。 また、本発明における試料中には、RNA増幅反応を阻害する物質が含まれることが許容される。RNA増幅反応を阻害する物質は、生体試料、生体由来試料、環境試料、環境由来試料、排泄物試料、排泄物由来試料などの試料中に通常含まれている。RNA増幅反応を阻害する物質としては、生体試料中に存在する色素、タンパク質、糖類、未知の夾雑物など、細胞内・外を問わず存在している物質を挙げることができる。2.処理試薬2−1.処理試薬−試料混合物のpH 試料中のRNase失活、さらには試料中のRNA包含体内部からのRNA抽出を行うためには、少なくとも還元剤を含むアルカリ環境に、試料を供すればよい。少なくとも還元剤と試料とが最終的に混合されたアルカリ性の混合液が調製されれば、混合する順序などは問わない。 さらに、本発明において、当該混合液は加熱条件(後述項目3.)下に供されるべきものであるため、当該混合液の調製操作と加熱操作とは、順序を問わない。すなわち前記の混合液は、加熱条件下に供されるときに、少なくとも還元剤を含むアルカリ性溶液中に試料が混在している状態であればよい。 例えば、試料及び処理試薬の一方又は両方を加熱しておき、その後両者を混合することができる。すなわち当該混合液は調製されると同時に加熱条件に供されてよい。 また例えば、試料と処理試薬との混合液を室温で調製し、得られた混合液を加熱条件下に供しても良い。この場合、処理試薬は、通常水溶液として用いられる。 さらに例えば、少なくとも還元剤を含む溶液と試料とを室温で混合し、得られた還元剤−試料混合液のpHを調整(後述)し、pH調整された還元剤−試料混合液を加熱条件下に供しても良い。この場合は、下記組成の処理試薬そのものが用いられることはないが、pH調整された還元剤−試料混合液は、上記の試料−処理試薬混合物に相当する。下記において、試料−処理試薬混合物と記載する場合は、この、pH調整された還元剤−試料混合液も含むものとする。 処理試薬と試料との混合物(処理試薬−試料混合物)のpHは、25℃において、pH8.1以上、例えばpH8.1〜11.1とすることができる。試料によっては、pH9.0〜11.1であることが好ましい場合がある。このような場合としては、試料として排泄物試料(特に糞便試料)やそれに由来する試料が用いられた場合が挙げられる。 このようなアルカリ環境に調整するためには、アルカリ性バッファ及び/又はアルカリ物質を処理試薬に含ませるとよい。 処理試薬に含まれてよいアルカリ性バッファとしては、特に限定されないが、Tris緩衝液、Good緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液が挙げられる。Good緩衝液を構成する緩衝剤としては、特に限定されないが、Tricine、MOPS、HEPES、CHESなどが挙げられる。 処理試薬に含まれてよいアルカリ物質としては、水酸化物、アンモニア、及びアミンから選択すると良い。例えば、水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。アミンとしては、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数種を組み合わせて用いることができる。 処理試薬中のアルカリ物質の濃度としては、アルカリ物質の種類や、試料の種類や濃度、試料との混合比などにより異なるが、0.1mM〜飽和濃度(室温における飽和濃度)、好ましくは1mM〜飽和濃度(室温における飽和濃度)とすることができる。2−2.還元剤 処理試薬に含まれる還元剤としては、チオール型還元剤を用いると良い。チオール型還元剤とは、チオール基を有する還元剤の総称である。 チオール型還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノールなどが挙げられる。メルカプトエタノールは、通常、2−メルカプトエタノールである。これら還元剤は、単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。 処理試薬中の還元剤の濃度としては、還元剤の種類や、試料の種類や濃度、試料との混合比などにより異なるが、0.1mM〜飽和濃度(室温における飽和濃度)、好ましくは1mM〜飽和濃度(室温における飽和濃度)とすることができる。 処理試薬と試料との混合物中の還元剤の濃度としては、例えば、0.1mM〜1M、好ましくは1mM〜100mMとすることができる。試料が血液試料である場合は、0.05mMから20mMとすることが更に好ましい場合がある。また、試料が排泄物試料又は排泄物由来試料である場合、還元剤の種類、試料の種類・濃度などによっては、2.5mM〜25mMとすることが更に好ましい場合がある。2−3.添加物 処理試薬は、キレート剤をさらに含んでよい。RNAの加水分解は2価の金属イオンが促進する事が知られている。従って、2価の金属イオンをキレートするキレート剤(EGTAやEDTAなど)を処理試薬に添加することが有効である。 また、処理試薬は、硫酸化多糖をさらに含んでいても良い。3.加熱条件 加熱処理における温度および時間の条件については、試料中のRNase存在量の違い、RNA包含体の種類の違いに起因する膜構造の壊れやすさの違い、アルカリ物質使用量の違いに起因するpHの違い等によって異なるため、特に限定されるものではない。処理時間は、例えば、1秒から60分程度、好ましくは30秒から30分、更に好ましくは30秒から15分程度とすることができる。 処理温度は、30℃以上であることが好ましい。 試料が排泄物試料又は排泄物由来試料である場合、処理温度は、例えば30から100℃程度、或いは45℃から100℃程度、好ましくは、加熱時間によって異なるが55℃から80℃程度、さらに好ましくは、加熱時間によって異なるが60℃から75℃程度とすることができる。 その他の試料の場合は、処理温度は、60℃以上、例えば60℃以上100℃以下程度、好ましくは70℃から90℃程度、更に好ましくは80℃から85℃程度とすることができる。80〜85℃で処理する場合は、処理時間は30秒〜5分とすることができる。4.RNA分解酵素失活及びRNA抽出 上記の処理試薬を用いて加熱処理することによって、試料に含まれるRNaseの失活と、RNA包含体内部からのRNAの抽出との両方の処理が実現する。RNAの抽出は、RNaseの失活と同時に、又はRNaseの失活に引き続いて起こる。本発明では、上記の処理試薬を用いた加熱処理のみの簡便な操作によって、上記両方の処理を行うことができるため、RNAを迅速かつ安定に抽出することが可能である。 なお、RNaseの失活においては、RNaseを変性させ、酵素活性部位が機能しなくなる状態にする。加熱条件下におかれたとしても、RNaseは通常熱に安定であるため簡単には失活しない。しかしながら、本発明の処理試薬を用いた加熱操作により、このようなRNaseの失活を可能にする。 そして、RNA包含体内部からのRNAの抽出とは、RNA包含体の膜構造が破壊され、膜構造中に包含されていたRNAが膜外の環境へ露出することをいう。RNA包含体膜外環境において存在していたRNaseは、同じ処理試薬によって失活する。このため、露出したRNAは、本来ならば分解を受ける危険性が極めて高いRNA包含体膜外環境にさらされるにもかかわらず、分解を受ける危険性は極めて低くなる。このため、本発明において、RNA包含体内部からのRNAの抽出を達成するためには、RNA包含体の膜外の環境へRNAが露出すればよく、露出したRNAをただちに精製しなくとも、RNAは安定に存在することができる。5.試料処理液 このようにして、RNaseが失活し、RNAが露出した試料処理液が得られる。なお、試料処理液は、さまざまな工程に供することができる。例えば、RNA解析を行うために行われる、RNA増幅法、ハイブリダイゼーション法などの工程に供することができる。本発明の方法で得られる試料処理液は、RNaseが失活している。このため、安定にRNAを含んでいるため、なんらの処理を行うことなく、上記の工程に供することができる。いうまでもなく、本発明の方法で得られる試料処理液が、さらに何らかの処理に供されることにより得たものであっても上記工程に供することができる。例えば、中和などの、pHを調整するための処理や、遠心分離やRNA単離などの、RNAの精製処理が挙げられる。6.増幅反応液 既に述べた方法で、RNaseが失活し、RNAが露出した試料処理液が得られる。得られた試料処理液は、増幅反応液の調製に用いることができる。 増幅反応液に用いる試料処理液は、上述のように、前記の加熱処理後いかなる処理も行わないものとして得ても良いし、加熱処理後、遠心操作を行うことにより得られた上清液として、或いは、フィルトレーションを行うことによって得られた濾液として得ても良い。 また、試料処理液は、RNA増幅用反応液と混合され、最終反応液となるが、上記試料処理液はアルカリ性のため、試料処理液と増幅用反応液との混合物のpHが、酵素の反応条件からはずれる場合には、上記の加熱処理後から増幅反応開始までの間の適当な段階で、混合物のpHが至適条件内になるよう調整する必要がある。至適pHやpHの調整法に関しては、当業者が適宜決定することができる。pHの至適条件としては、後述するように、反応系中にRNA増幅反応を阻害する物質が存在する場合は、当該阻害物質の作用を抑制するためにpHをアルカリ域に調整することも有効である。当該至適pHについては、特許3494509号公報や特許3452717号公報を参考にすることができる。6−1.増幅反応液の基本的組成 RNA増幅反応法としては、RT-PCR法が挙げられるが、RNA増幅を行う方法であれば、これに限定されることなく、どのような方法も用いることができる。増幅反応液の組成としては特に限定されることなく、当業者が適宜決定することができる。 RNA増幅反応としてRT-PCRを実行する場合、その形態としては、チューブ内に試料処理液とRT用反応液との混合物を用意し、前記チューブ内でRT反応を行い、RT反応産物の一部を他のチューブ内に用意したPCR反応液に添加してPCR反応を行うことにより実行する反応形態(Two tube-Two step);チューブ内に試料処理液とRT反応液との混合物を用意し、前記チューブ内でRT反応を行い、前記チューブ内のRT反応産物に対してPCR用反応液を添加してPCR反応を行うことにより実行する反応形態(One tube-Two step);及び、チューブ内にRT反応液とPCR反応液との両方を用意しておいて、試料処理液と混合することによって、RT反応とPCR反応とを連続して行うことにより実行する反応形態(One tube-One step)が挙げられる。 従って、RT-PCRを実行する場合、試料処理液と混合するRNA増幅用反応液は、上記実行形態により、RT反応液である場合や、RT反応液とPCR反応液との混合反応液である場合がある。 RT反応液には、公知のものを限定することなく用いることができる。通常は、pH緩衝液、塩類、プライマー、デオキシリボヌクレオチド類、及び逆転写酵素が含まれる。上記の塩類は、MgCl2やKClなどが用いられるが、適宜、他の塩類に変更しても良い。プライマーは、cDNA合成の際の合成開始点として働くオリゴヌクレオチドをいう。RT反応に使用する逆転写酵素は、RNAをcDNAに逆転写出来る酵素を意味する。逆転写酵素としては、Rous associated virus(RAV)やAvian myeloblastosis virus(AMV)等のトリのレトロウイルス由来の逆転写酵素;Moloney murine leukemia virus(MMLV)等のマウスのレトロウイルス由来の逆転写酵素;及びThermus thermophilus由来のTth DNAポリメラーゼ等が挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。 PCR反応液には、公知のものを限定することなく用いることができる。通常は、pH緩衝液、塩類、プライマー、デオキシリボヌクレオチド類、及び耐熱性DNAポリメラーゼが含まれる。上記の塩類は、MgCl2やKClなどが用いられるが、適宜、他の塩類に変更しても良い。プライマーは、核酸増幅の際の合成開始点として働くオリゴヌクレオチドをいう。PCRに使用する耐熱性DNAポリメラーゼは、プライマーを基点としてDNAを合成する耐熱性にすぐれたポリメラーゼを意味する。適切な耐熱性DNAポリメラーゼとしては、Thermus aquaticus由来のTaq DNAポリメラーゼ;Thermus thermophilus由来のTth DNAポリメラーゼ;Pyrococcus由来のKOD DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼ;及び、これら耐熱性DNAポリメラーゼの混合物等が挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。 なお、Tth DNAポリメラーゼはRT活性とPCR活性との両方を有しているため、RT-PCRをOne tube-One stepで行うときに、1種類の酵素で賄うことが出来る特徴を有している。6−2.増幅反応液中の添加物 RNA包含体及びRNaseを含む試料として生体試料や生体由来試料を用いた場合、上記のRNase失活・RNA包含体内部からのRNA抽出のための処理後に得られる試料処理液には、RNA増幅反応を阻害する物質が含まれていることがある。そして、このような試料処理液を増幅用反応液と混合させると、反応系中にRNA増幅反応を阻害する物質が存在することとなり、これが原因して増幅反応が十分に進行しない虞がある。 具体的に、RNA増幅反応を阻害する物質には、例えば、生体試料中の色素、ある種のタンパク質や糖など細胞の内外を問わず存在する物質が挙げられる。 そこで、このような阻害物質の作用を抑制するため、本発明では硫酸化多糖及びポリアミンから選ばれる添加物を用いることができる。 硫酸化多糖としては、ヘパリン、デキストランサルフェイト、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、フノラン、硫酸化アガロース、カラギーナン、ポルフィラン、フコイダン、硫酸化カードラン、及びそれらの塩から選択して用いることができる。これらの中でも、ヘパリン及びその塩、デキストランサルフェイト及びその塩が好ましい。硫酸化多糖は単独で又は数種を組み合わせて用いることができる。 硫酸化多糖は、RNA増幅反応の際に反応系中に含まれていればよい。従って、硫酸化多糖は、例えば、上記の加熱処理に用いられる処理試薬、加熱処理後の試料処理液、増幅用反応液、及び、試料処理液と増幅用反応液との混合物、のいずれかに加えることができる。 硫酸化多糖の使用量については、硫酸化多糖の分子量、増幅反応阻害物質の存在量などによって有効な濃度範囲が変動する。 例えば、硫酸化多糖の一例であるヘパリンは、血液の坑凝血剤として頻繁に用いられるが、それ自体がPCR阻害物質として知られているため、PCR反応液中に存在させるのに好ましくない物質とされている。しかしながら本発明でヘパリンなどの硫酸化多糖が用いられる場合、その使用量としては、硫酸化多糖自体がRT反応及びPCR反応の阻害物質となる量を除いて、上記のRT反応及びPCR反応の阻害物質の作用を抑制する量が特に限定されることなく許容される。硫酸化多糖に関する具体的な量としては、硫酸化多糖に関する上記事項は、特開2000−93176号公報に記載されている。 具体的にヘパリンの使用量としては、試料処理液とRNA増幅反応液とが混合された最終反応液中に、例えば、0.1μg/ml以上、好ましくは0.3μg/mL〜50μg/mL添加するのがよい。 ポリアミンは、第一級又は第二級アミノ基を二つ以上有する炭化水素の総称である。ある種のポリアミンは、生体内に存在しており、タンパク質や核酸合成の盛んな組織に多く含まれており、多様な生理的作用を有している。しかしながら、本発明におけるポリアミンにこのような作用が必ずしも要求されるわけではなく、第一級又は第二級アミノ基を二つ以上一分子内に有する炭化水素であれば特に限定されるものではない。ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、スペルミン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。 ポリアミンは、RNA増幅反応の際に反応系中に含まれていればよい。従って、ポリアミンは、例えば、加熱処理後の試料処理液、増幅用反応液、及び、試料処理液と増幅用反応液との混合物のいずれかに加えることができる。ポリアミンに関する上述の事項は、特開平6−277061号公報に詳述されており、ポリアミンの使用量についても当該公報を参考にすることができる。 本発明においては、アルブミン(Bovine Serum Albumin; BSA)、及び非イオン性界面活性剤から選ばれる添加物を、試料処理液とRNA増幅反応液とが混合された最終反応液中にさらに含ませることができる。これら添加物は、上記のポリアミンとともに用いても良い。 アルブミンは、動・植物の細胞・体液中に含まれる一群の可溶性タンパク質の総称である。代表的なものとして、卵白アルブミン、乳中のラクトアルブミン、血清アルブミン、コムギ・オオムギのロイコシン、トウゴマ(ヒマ)種子中のリシンなどを挙げることができる。これらのうち、特に血清アルブミンが好ましく、更にはウシ血清アルブミンが好ましい。但し、これらアルブミンには限定されない。アルブミンは、RNA増幅反応の際に反応系中に含まれていればよい。従って、アルブミンは、例えば、加熱処理及びpH調整後の試料処理液、増幅用反応液、及び、加熱処理及びpH調整後の試料処理液と増幅用反応液との混合物のいずれかに加えることができる。また、アルブミンは、最終反応液に均一に入っていない状態(たとえば加熱処理及びpH調整後の試料処理液にアルブミンを加えて、攪拌することなくRNA増幅反応液を混合させた場合など)でも同様の効果がある。 アルブミンに関する上述の事項は、特開2001−8685号公報に詳述されており、アルブミンの使用量についても、当該公報を参考にすることができる。 非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれる。ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートとしては、ポリオキシエチレンソルビタン(20)モノラウレート(Tween 20)が挙げられる。ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル(ノニデットP−40(NP40))、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton×100)が挙げられる。 非イオン性界面活性剤に関する上記事項は、特開平10−80279号公報に詳述されており、非イオン界面活性剤の使用量についても、当該公報を参考にすることができる。 RNA増幅法の手順としては、試料を上記記載の処理試薬を使用して加熱処理し、得られた試料処理液と反応液とを混合し、適宜pHを調整した後は、公知の方法に基づいて増幅反応を行うことができる。 RT反応においては選択したプライマーと逆転写酵素に適した反応温度で、30分〜1時間程度の反応を行う。PCRにおいては、DNAを熱変性により1本鎖のDNAにするディナチュレーション工程;増幅させたい領域を挟むプライマーをハイブリダイズさせるアニーリング工程;及びデオキシリボヌクレオチド類の共存下にDNAポリメラーゼを作用させ、プライマーの伸長反応を行うポリメライゼーション工程の3工程を繰り返すことで、プライマーに挟まれた領域を増幅する。7.効果 本発明のRNase失活方法及びRNA抽出方法によると、生体試料中のRNaseの失活とRNA包含体内部からのRNAの抽出とを行うことができるため、生体試料中のRNA包含体の精製を行うことなしに簡便・安定的にRNAの試料処理液を得ることができる。さらに、抽出されたRNAに対して、生体試料に含まれるタンパク等の夾雑物による吸着・包埋といった影響を抑制することができると考えられる。このため、本発明のRNA抽出方法は、その後のRNAの検出や解析などに有効である。すなわち、試料処理液に対しては、なんらの処理を行うことなく、或いは、希釈、pHの調整、添加物を加える等の最低限の処理を行うだけで、RNA検出や解析などの引き続く工程に供することができる。従って、本発明の方法を行うことにより、従来から行われてきたRNAの抽出、精製時などにおいて危惧されてきたRNaseによるRNAの分解による影響を心配することなく、そのような工程を簡便・迅速に行うことが可能となる。例えば、本発明は、RNA精製のための前段階として使用することができる。 本発明のRNA検出方法によると、生体試料中のRNaseの失活とRNA包含体内部からのRNAの抽出とを行うことによって、簡便・安定的・効率的に、試料中に存在するRNAを増幅することが可能となる。そして、試料処理液に核酸合成の阻害物質が含まれる場合でも、希釈、pHの調整、相応しい添加物を増幅反応液に含ませる等により、核酸合成に対する阻害物質の作用を緩和又は抑制し、簡便・安定的・効率的に、試料中に存在するRNAを増幅することが可能となる。 また、本発明を使用することにより、生体試料中に潜む外来生物(例えば、RNAウイルスとして、レトロウイルス(エイズウイルス(HIV)等)、ノロウイルス(SRSV)、ロタウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)等、及び、真菌、細菌等)や、変異細胞(例えば、癌細胞等)を、簡便・迅速に解析することが可能となる。さらに本発明を使用することにより、細胞中で転写されるmRNAなどの検出や塩基配列決定による発現遺伝子の解析、さらにはcDNAのクローニングによる発現産物の解析及び生産等を、簡便・迅速に行うことが可能となる。さらに、大気・土壌・水等の環境試料に対して本発明を用いると、環境試料中の微生物検査等へ展開も可能と考えられる。 また、本発明の処理試薬によって抽出されたRNAは、本処理試薬中での保存や中和処理後の保存等が可能である。 以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。<実施例1> 本実施例においては、ヒト血清(RNaseが含まれている)にRNA包含体を添加したモデル検体を試料として使用し、蒸留水(比較用)、NaOH水溶液(比較用)、DTT水溶液(比較用)、又は、本発明の処理試薬としてのNaOH-DTT水溶液を試料に加えて加熱処理し、その後にRNA抽出の確認を行った。 具体的には、RNA包含体としては、Ambion社Armored RNA Hepatitis C Virus (Genotype 2b) Catalog #: 42011を用いた。ヒト血清とArmored RNA Hepatitis C Virus液を等量(v/v)混合したモデル検体を試料として用意した。0.5mlチューブに検体4 μlを入れたものを4本用意し、それぞれのチューブ内に、(1)蒸留水(比較用)、(2)10mM NaOH水溶液(比較用)、(3)10mM DTT水溶液(比較用)、又は、(4)本発明の処理試薬としての10mM NaOH及び10mM DTTを含む水溶液16 μlを加えて、85℃1分間加熱を行った。 RNA抽出の確認として、加熱処理後のそれぞれの試料処理液を鋳型として、HCV RNAに特異的なプライマーを使用してRT-PCRを行った。 具体的には、加熱処理後直ちに、50μlの反応液当たり上記試料処理液を1 μl加えてRT-PCRを行った。RT反応のプライマーは、HCV RNAに相補的な塩基配列を持つオリゴヌクレオチドを使用し、続いて行うPCRでは、RT反応で合成されたcDNAに相補的な塩基配列を持つオリゴヌクレオチドを追加して行った。本実験のRT-PCRにおけるRNA由来の産物は244 bpである。使用したプライマー配列は次の通りである。(5’プライマー)5’-CTTCACGCAGAAAGCGTCTAGCCATGGCGT-3’(配列番号:1)(3’プライマー)5’-CTCGCAAGCACCCTATCAGGCAGTACCACA-3’(配列番号:2) RT反応液には、10mM Tris-HCl、35mM KCl、1.5mM MgCl2、各々200μMのdATP、dCTP、dGTP及びdTTP、2mM DTT、0.4μMの3’プライマー、50units/50μlのRibonuclease Inhibitor(Takara Bio, Shiga, Japan)、及び5units/50μlのAMV XL逆転写酵素(Takara Bio, Shiga, Japan)に、1mMのトリエチレンテトラミンと0.5μg/mlのヘパリンナトリウムとを添加したものを使用した。 RT反応は、55℃、30分間行った。反応後、95℃、5分間処理し、逆転写酵素を不活化した。 RT反応後、前記RT反応液に各々20pmolの5’プライマー、及び1.25 unitsのTaq DNA ポリメラーゼ(PlatinumTaq: Invitrogen, CA, USA)を添加してPCRを行った。 PCRは、94℃ 2分間の後、94℃ 30秒間、60℃ 30秒間、72℃ 60秒間の条件で40サイクル、最後に72℃ 7分間のポリメライゼーションを行った。 PCR終了後、反応液5μlを用いて、2.5%アガロースを含む、0.5 μg/ml臭化エチジウム添加TAE(40mM Tris-acetate, 1mM EDTA)液中で電気泳動を行い検出した。増幅産物の電気泳動図を図1に示す。図1中、Mはサイズマーカー(HincIIで切断した250ng のφ X174-RF DNA)、1、2、3及び4はそれぞれ、蒸留水(比較用)、10mM NaOH水溶液(比較用)、10mM DTT水溶液(比較用)、及び10mM NaOH-10mM DTT水溶液(本発明の処理試薬)を用いた結果である。 図1が示すように、検体に本発明の処理試薬を添加した場合に (レーン4)、HCV RNAに特異的な244bpの増幅産物(図中矢印)が得られたことがわかった。<実施例2> 本実施例においては、実施例1で得た4種の試料処理液を、冷蔵にて1日間保存後に、実施例1と同様にRT-PCRを行い、抽出後のRNAの保存安定性を見たものである。RT反応、PCR反応、及び電気泳動条件は実施例1と同じである。増幅産物の電気泳動図を図2に示す。図2中、Mはサイズマーカー(HincIIで切断した250ng のφ X174-RF DNA)、1、2、3及び4はそれぞれ、蒸留水(比較用)、10mM NaOH水溶液(比較用)、10mM DTT水溶液(比較用)、及び10mM NaOH-10mM DTT水溶液(本発明の処理試薬)を用いた結果である。 図2が示すように、抽出処理後1日経過しても、本発明の処理試薬を用いた場合に (レーン4)、HCV RNAに特異的な244bpの増幅産物(図中矢印)が得られたことがわかった。これは、本発明の処理試薬による抽出後のRNAが安定的に存在することを示すものである。 以上の実施例1及び2の結果は、本発明の処理試薬により、血清中ウイルスのRNAが解析できることを示している。従って、本発明の処理試薬を使用することにより、生体試料等に含まれるRNA包含体から簡便な操作でRNAを抽出することが可能となることが確認された。<実施例3:加熱処理の温度及び時間による影響(1)> 1.5mLザルステッドチューブに、HCV陽性(約100IU/ml)の血漿検体100μLを分注し、さらにPEG水溶液(ロシュ・ダイアグノスティック株式会社「アンプリコア(R)HBVモニター用 検体処理用試薬」に同梱のHBV SOL A。以下、実施例4、5、6、7において同じ。)を50μL加えて撹拌した。これをベンチトップ微量遠心機にて 15000rpm、5分間遠心分離し、上清を除去した。残った沈さに、処理試薬として、12mM NaOH, 12mM DTT, 及び6μg/mLヘパリンナトリウムを含む水溶液100μLを加えて、ボルテックスにてよく撹拌し、下表に示す条件にてインキュベートした。加温後直ちに、チューブ内の試料処理液50μLを、別のチューブに用意したアンプリコア(R)HCV v2.0キットのマスターミックス50μLと混合し、GeneAmp9600(アプライドバイオシステムズ)にて、アンプリコア(R)HCV v2.0キットの添付文書に示される定性法の手順でHCVシグナル(OD)を測定した。その結果をデータ1及び図3に示す。データ1は、HCVシグナルである吸光度を表記したものである。なお、データ1においては、追試を行ったため合計2回分の測定結果を示している。図3は、データ1の各温度での平均値を、縦軸を吸光度、横軸を加熱時間として示したグラフである。 上記データ1が示すように、熱処理が本法によるHCVの検出に有効であることがわかった。この結果は、本発明の方法によって、RNaseが失活し、かつHCVウィルス内部よりHCV RNAが取り出され、RT-PCRの鋳型となったことを示している。 図3に示すように、15秒程度の加熱でRNAの検出が可能となり、加熱時間については加熱温度に応じて適宜選択することができることが解った。<実施例4:加熱処理の温度が85℃における加熱時間の影響> 1.5mLザルステッドチューブに、HCV陽性(約1,000IU/ml)の血漿検体100μLを分注し、さらにPEG水溶液を50μL加えて撹拌した。これをベンチトップ微量遠心機にて15000rpm、5分間遠心分離し、上清を除去した。残った沈さに、処理試薬として、12mM NaOH, 12mM DTT, 及び6μg/mLヘパリンナトリウムを含む水溶液100μLを加えて、ボルテックスにてよく撹拌し、下表に示す時間、85℃で加温した。加温後直ちに、チューブ内の試料処理液50μLを、別のチューブに用意したアンプリコア(R)HCV v2.0キットのマスターミックス50μLと混合し、GeneAmp9600(アプライドバイオシステムズ)にて、アンプリコア(R)HCV v2.0キットの添付文書に示される定量法の手順でHCVシグナル(トータルOD)を測定した。結果をデータ2及び図4に示す。 上記データ2が示すように、80秒〜160秒の処理時間によって最高レベルの検出感度が得られた。<比較例1> 本発明の検出方法の有効性を検証するため、上記実施例4と同一の検体から、アンプリコア(R)HCV v2.0キットの添付文書に示される定量法の手順でトータルODを測定した。比較例では、この操作をさらに5回の追試を行うことによって、合計6回の測定を行った。それぞれの測定結果は、HCVのシグナルであるトータルOD(吸光度)で示すと、0.75、0.76、1.14、0.77、1.30、及び1.06であり、これら6回の測定値の平均は0.96である。 比較例1において行ったアンプリコア(R)HCV v2.0キット添付文書の方法は、血漿100μLよりRNA抽出液1,000μLを得る。上記実施例4では、血漿100μLよりRNA抽出液を100μL得ている(すなわち、実施例4で得られたRNA抽出液のほうが10倍濃い)。従って、比較例1におけるトータルODが0.96であることから、実施例4におけるトータルODが仮に9.6であれば、従来法と同等の感度が得られたと言うことができる。 実際に、実施例4では、80〜160秒の熱処理時間により、9〜10の範囲のトータルODが得られている。このことから、実施例4に代表される本発明の方法は、比較例1に例示される従来法に劣らない感度が得られたと考えられる。<実施例5:加熱処理の温度及び時間による影響(2)> 1.5mLザルステッドチューブに、HCV陽性(約1,000IU/ml)の血漿検体100μLを分注し、さらにPEG水溶液を50μL加えて撹拌した。これをベンチトップ微量遠心機にて15000rpm、5分間遠心分離し、上清を除去した。残った沈さに、処理試薬として、12mM NaOH, 12mM DTT, 及び6μg/mLヘパリンナトリウムを含む水溶液100μLを加えて、ボルテックスにてよく撹拌し、下表に示す条件にてインキュベートした。加温後直ちに、チューブ内の試料処理液50μLを、別のチューブに用意したアンプリコア(R)HCV v2.0キットのマスターミックス50μLと混合し、GeneAmp9600(アプライドバイオシステムズ)にて、アンプリコア(R)HCV v2.0キットの添付文書に示される定量法の手順でHCVシグナル(トータルOD)を測定した。HCVの濃度(IU/ml)に対するトータルOD値(吸光度の積算値)を以下のデータ3及び図5に示す。図5はデータ3を、横軸を加熱時間、縦軸をトータルODとして示したグラフである。なお、近似線は実施例4の結果(図4)を元に記載した。 データ3により、60℃の加熱温度によってもシグナルが得られ、HCVのRNAを検出することが可能であることが解った。 図5からわかるように、60℃以下の温度であっても、長い時間、例えば5分以上の加熱を行うことで、HCVのRNAの検出が可能であることは容易に想到し得る。また、85℃より高い加熱温度であっても、短い時間、例えば30秒から3分の加熱を行うことで、HCVのRNAの検出が可能であることは容易に想到し得る。 実施例3〜5においては、加熱温度が80℃〜85℃であるときに、加熱時間の依存性が低い安定したシグナルが得られ、なおかつ高感度であることが示された。このため、実施例3〜5に示された条件のもとでは、80℃〜85℃は特に好ましい温度条件であることが言える。温度条件が80℃〜85℃の場合、加熱時間は、30秒〜10分、更に好ましくは30秒〜5分、更に好ましくは80秒〜160秒とすることができる。<実施例6> 実施例6では、HCV陽性既知の血漿検体3種(約100, 500, 5000 IU/ml)及びHCV陰性既知の血漿検体の合計4種の血漿検体に、PEG水溶液を添加して遠心操作を施した後、得られた沈殿物を試料として使用した。血漿からのPEG水溶液沈殿物中には、ウイルスのみでなく多くの血漿成分も沈殿しており、その中にはRNaseも存在している。それぞれの試料について、本発明の方法に従って、RNaseの失活及びRNA包含体内部からのRNAの抽出を行い、HCV RNAに特異的なプライマーを使用してRT-PCRを行った。具体的には、1.5mLザルステッドチューブに血漿100μLを分注し、さらにPEG水溶液を50μL加えて攪拌した。これをベンチトップ微量遠心機にて15000rpm、5分間遠心分離し、上清を除去した。残った沈さに、処理試薬として、12mM NaOH、12 mM DTT、及び6 μg/mlヘパリンナトリウムを含む水溶液100 μLを加えて、ボルテックスにてよく攪拌し、85℃で2分間インキュベートした。加温後直ちに、チューブ内の試料処理液50μL を、別のチューブに用意したアンプリコア(R)HCV v2.0キット(ロシュ・ダイアグノスティックス)のマスターミックス50μLと混合し、GeneAmp9600(アプライドバイオシステムズ)にて、アンプリコア(R)HCV v2.0キットの添付文書に従ってRT-PCRを行った。RT-PCR後もキットの添付文書に従い、所定の手順でHCVシグナルを定量した。HCVの濃度(IU/ml)に対するTOD値(吸光度の積算値)を以下のデータ4に示す。 上記データ4が示すように、陽性検体においてシグナルが得られ、HCVのRNAを検出することが可能であった。この結果は、本発明の方法によって、RNaseが失活し、かつHCVウイルス内部よりHCV RNAが取り出され、RT-PCRの鋳型となったことを示している。 また、HCV濃度に依存したHCV TOD値が得られていることより、定量的にHCV RNAが検出されていることも示している。<実施例7> 本実施例では、HIV陽性既知の血漿検体(約700コピー/ml)及びHIV陰性既知の血漿検体の2種の検体を用いた。それぞれの検体について、PEG水溶液による遠心操作を行い、得られた沈殿物を試料として使用した。それぞれの試料について、本発明の方法に従って、RNaseの失活及びRNA包含体内部からのRNAの抽出を行い、HIV RNAに特異的なプライマーを使用してRT-PCRを行った。 1.5mLザルステッドチューブに血漿50μLを分注し、さらにPEG水溶液を25μL加えて攪拌した。これをベンチトップ微量遠心機にて15000rpm、5分間遠心分離し、上清を除去した。残った沈さに、処理試薬として、12 mM NaOH、12 mM DTT、及び6 μg/mlヘパリンナトリウムを含む水溶液100 μLを加えて、ボルテックスにてよく攪拌し、85℃で2分間インキュベートした。その後直ちに、チューブ内の試料処理液50μlを、別のチューブに用意したアンプリコア(R)HIVモニター v1.5キット(ロシュ・ダイアグノスティックス)のマスターミックス50μLと混合し、GeneAmp9600(アプライドバイオシステムズ)にて、アンプリコア(R)HIVモニター v1.5キットの添付文書に従ってRT-PCRを行った。RT-PCR後もキットの添付文書に従い、所定の手順でHIV-1シグナルを定量した。HIVのコピー数/mlに対するTOD値を以下のデータ5に示す。 上記データ5が示すように、陽性検体においてシグナルが得られ、HIVのRNAを検出することが可能であった。 下記実施例8及び9では、ヒト血清にRNA包含体を添加したものをモデル検体とした(血清にはRNaseが含まれている)。ここでRNA包含体には、Ambion Diagnostics社製Armored RNA Hepatitis C Virus (Genotype 2b)in TSM III Buffer Amplicor HCV Monitor Qualified Positive Control(Cat# 42011)を用いた。本実施例におけるモデル検体は、上記RNA包含体−TSM III バッファ液とヒト血清とを、1:1の体積比で混合して調製した。上記RNA包含体−TSM III バッファ液の濃度は「血漿に5(v/v)%添加した場合73,000IU/mL」と規定されており、血清と1:1(体積比)で混和すれば730IU/μLと考えられる。 また、RNAの検出について、先ず遺伝子増幅をアンプリコアHCV v2.0増幅試薬セット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて行った。RT-PCRの温度プログラムは、メーカの推奨法に準じたが、PCR反応のサイクル数を38とした。 遺伝子増幅後、アガロース電気泳動を用いて検出した。電気泳動写真中の「M」は、DNAサイズマーカを表す。ここで用いているDNAサイズマーカーは、φX174 HincII digestである。 <実施例8> 本実施例は、アルカリ物質と還元剤を含む処理試薬で、検体中のRNAが抽出できたことを示した例である。 200μL容プラスチックチューブにモデル検体2μL、表6に示す各処理試薬(15種)を8μLとって混和し、85℃3分熱処理した。これにTE Buffer(pH8.0)を90μL添加し、このうち5μLを、アンプリミックス(ロシュ・ダイアグノスティックス社:アンプリコア HCV v2.0 増幅試薬セットに含まれる HCVマスターミックスv2.0 と HCVマンガン試液 を7:1の比率で混ぜ合わせたもの)5μLと混和し、RT-PCRを行った。なお、各々の処理試薬(モデル検体添加前)のpH及びモデル検体−処理試薬混合物(モデル検体添加後)のpH(いずれも25℃にて測定)も表6に示す。 また、アガロース電気泳動写真を図6に示す。さらに、図17に、各条件の熱処理後の様子を示す写真を示す。図17において上の段が、DTT 0mM の処理試薬を用いた結果であり、左から[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]の処理試薬を用いた結果である。下の段は、DTT 20mMの処理試薬を用いた結果であり、左から[8]、[9]、[10]、[11]、[12]、[13]、[14]、[15]の処理試薬を用いた結果である。 図6が示すように、処理試薬が還元剤とアルカリとの両方を含む場合のみ、RNAが検出された。 [15]で検出されていないのは、RNAが加水分解されたためと考えられる。RNAの加水分解が起こったのは、抽出されたRNAが、加熱温度(85℃)とpH(10.1)との両方が高い条件下にさらされたためであると考えられる。RNAを効率よく抽出しなお且つ露出したRNAを加水分解しないような条件にするためには、以下の条件に調整すると良い。すなわち、NaOH濃度やBuffer剤の種類や濃度を調整することによってpHを下げる(好ましくは前述の[10]〜[14]の条件)こと;温度を下げる(例えば加熱を行わないことによってRNA検出が可能になることが本発明者らによって確認されている)こと;或いは、温度及びNaOH濃度を変えることなくEGTAなどの2価イオンをキレートするキレート剤をさらに添加すること(下記実施例9)、を行うと良い。 DTTが入った場合、処理試薬のpHが下がっているが、これは、アルカリ域でDTTが酸として働くためと考えられる。 図17において、[8]、[9]といった中性域の条件の場合、変性タンパク質と見られる白沈が顕著に観察されたが、使用した処理試薬のpHが高くなるにつれて透明度が増していることが解った。このことにより、中性域においてRNAが検出できなかった原因として、変性タンパク質等の夾雑成分がRNAに吸着・包埋した可能性が考えられる。一方、[15]の条件でRNAが検出できなかった原因としては、上述の通り、変性タンパク質の影響ではなく、RNAの加水分解によるものと推測される。<実施例9> 本実施例は、EGTAはRNAの熱アルカリ条件による加水分解を低減することを示した例である。RNAの加水分解を、2価金属イオンが促進する事が知られている。本発明の対象とする検体によっては、2価金属イオンを含むので、これをキレートするキレート剤(EGTA等)を処理試薬に添加するのは有効である。 処理試薬として、表6に示す処理試薬[12]と、これにEGTA 5mMを加えた処理試薬との2種を用意した。200μL容プラスチックチューブにモデル検体2μLをとり、ここに8μLの各処理試薬を添加して混和した。このとき、処理温度として、25℃(比較用)、37℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、及び100℃、処理時間として、1分、3分、10分、30分、及び60分の条件を検討した。処理後、これにTE Buffer(pH8.0)を90μL添加し、このうち5μLを、アンプリミックス5μLと混和し、RT-PCRを行った。 得られた電気泳動写真を図7(処理試薬中のEGTA濃度は0mM)及び図8(処理試薬中のEGTA濃度は5mM)に示す。 図7及び図8が示すように、処理試薬がEGTAを含まない場合、30分以上の熱処理ではほとんどシグナルが認められなくなった。しかし、処理試薬にEGTAを添加した場合、1時間の熱処理を経てもシグナルが検出された。EGTAの添加により、RNAの加水分解の速度が著しく小さくなるものと考えられる。 本実施例より、処理試薬に2価の金属イオンをキレートするキレート剤を添加した場合、加熱処理における温度は、65℃〜100℃、更に好ましくは、70℃〜100℃、更に好ましくは、70℃〜95℃に設定することができることがわかった。<実施例10> ノロウイルス陰性の健常者の糞便を生理食塩水に20%(w/v)の濃度で懸濁し、懸濁液を微量遠心機を用いて5分間遠心分離し、上清を得た。得られた上清198μLに、擬似ノロウイルスRNA包含体(Armored RNA(R) Norwalk Virus(GenogroupII)in TSMIII Buffer: Ambion Diagnostics)2μLを添加し、擬似ノロウイルス陽性の糞便試料液を調製した。この試料液10μLと、処理試薬10μLとを、チューブ内で混合し、最終液量を20μLとした後、85℃で5分間加熱処理した。このようにして、試料処理液を得た。 RT-PCRのRT反応においては、Ampdirect(R) Plus(P/N:241-08800-98:島津製作所)、0.4μM擬似ノロウイルスRNA用リバースプライマー(5’-ACTGACAATTTCATCATCACC-3’:配列番号3)、及び3.75U AMV逆転写酵素を混合したRT-PCR反応液25μLを、上記試料処理液20μLと混合し、42℃, 1時間の条件で反応を行った。95℃, 2分の条件で酵素失活処理を行った後、RT反応後のチューブに、0.2μM擬似ノロウイルスRNA用フォワードプライマー(5’-TGGAATTCCATCGCCCACTGG-3’:配列番号4)、及び、1.25U Nova Taq(TM) Hot Start DNA Polymerase(EMD Biosciences)を混和し、最終液量50μLとした。PCRは、95℃, 5分のプレヒーティングに続いて、92℃, 30秒、58℃, 30秒、及び72℃, 1分のサイクルを40サイクル行い、その後、72℃, 7分のポリメライゼーションを行う温度プログラムで行った。 なお、本実施例10においては、処理試薬として、下記表7に記載の組成を有する8種の処理試薬A−1〜A−8を調製し、8種各々について上記操作を行った。これら処理試薬のうち、A−2〜A−8は、本発明における処理試薬であり、A−1は、比較用に調製した処理試薬である。 PCR産物の検出は、反応終了後の反応液5μLを用い、2.5% アガロースゲルを含む0.5μg/mL臭化エチジウム添加TAE(40mM Tris-acetate、1mM EDTA)液中での電気泳動により行った。 実施例10によって得られた電気泳動図を図9に示す。図中、レーンMは分子量マーカ(φ×174 RF DNAのHincII消化物)、レーン1は処理試薬A−1を用いた結果、レーン2は処理試薬A−2を用いた結果、レーン3は処理試薬A−3を用いた結果、レーン4は処理試薬A−4を用いた結果、レーン5は処理試薬A−5を用いた結果、レーン6は処理試薬A−6を用いた結果、レーン7は処理試薬A−7を用いた結果、及び、レーン8は処理試薬A−8を用いた結果を示す。<実施例11> 処理試薬として、以下の組成を有する7種の処理試薬B−1〜B−7を調製してそれぞれ用いたことを除いては、実施例10と同様の操作を行った。これら処理試薬のうち、B−2〜B−7は、本発明における処理試薬であり、B−1は、比較用に調製した処理試薬である。B−1.30mM NaOH、 0mM DTT (比較用)B−2.30mM NaOH、 5mM DTTB−3.30mM NaOH、 10mM DTTB−4.30mM NaOH、 20mM DTTB−5.30mM NaOH、 30mM DTTB−6.30mM NaOH、 40mM DTTB−7.30mM NaOH、 50mM DTT 実施例11によって得られた電気泳動図を図10に示す。図中、レーンMは分子量マーカ(φ×174 RF DNAのHincII消化物)、レーン1は処理試薬B−1を用いた結果、レーン2は処理試薬B−2を用いた結果、レーン3は処理試薬B−3を用いた結果、レーン4は処理試薬B−4を用いた結果、レーン5は処理試薬B−5を用いた結果、レーン6は処理試薬B−6を用いた結果、及び、レーン7は処理試薬B−7を用いた結果を示す。 上記実施例10及び11では、処理試薬中に、NaOHは20mM〜60mM、DTTは5mM〜50mM含まれていることが好ましいことが分かる。<実施例12> <1> RNAを精製しない糞便試料を用いたRNA検出 ノロウイルス感染者の糞便を生理食塩水にて20%(w/v)の濃度で懸濁、微量遠心機にて5分間遠心分離し、上清を得た。 一方、ノロウイルス陰性の健常者の糞便を生理食塩水に20%(w/v)の濃度で懸濁し、懸濁液を微量遠心機を用いて5分間遠心分離し、上清を得た。 感染者糞便に由来する上清に対し、健常者糞便に由来する上清を用い10倍段階希釈を行い、6種の糞便試料液D−1〜D−6を調製した。具体的には、D−1の希釈率は1倍、D−2の希釈率は10倍、D−3の希釈率は102倍、D−4の希釈率は103倍、D−5の希釈率は104倍、D−6の希釈率は105倍である。 処理試薬としては、30mM NaOH、20mM DTT、10mM EGTAの組成を有する処理試薬を用いた。 段階希釈を行った上記糞便試料液10μLと、上記処理試薬10μLとを加えて攪拌後、85℃で5分間加熱した。 RT-PCRのRT反応においては、Ampdirect(R) Plus(P/N:241-08800-98:島津製作所)、0.4μMノロウイルスRNA用リバースプライマー(5’-TGTCACGATCTCATCATCACC-3’:配列番号5)、及び3.75U AMV逆転写酵素を混合したRT-PCR反応液25μLを、上記試料処理液20μLと混合し、42℃, 1時間の条件で反応を行った。95℃, 2分の条件で酵素失活処理を行った後、RT反応後のチューブに、0.2μMノロウイルスRNA用フォワードプライマー(5’-TGGAATTCCATCGCCCACTGG-3’:配列番号4)、及び、1.25U Nova Taq(TM) Hot Start DNA Polymerase(EMD Biosciences)を混和し、最終液量50μLとした。PCRは、95℃, 5分のプレヒーティングに続いて、92℃, 30秒、58℃, 30秒、及び72℃, 1分のサイクルを40サイクル行い、その後、72℃, 7分のポリメライゼーションを行う温度プログラムで行った。 PCR産物の検出は、反応終了後の反応液5μLを用い、2.5% アガロースゲルを含む0.5μg/mL臭化エチジウム添加TAE(40mM Tris-acetate、1mM EDTA)液中での電気泳動により行った。 <1>によって得られた電気泳動図を、図11に示す。図中、レーン1は糞便試料液D−1を用いた結果、レーン2は糞便試料液D−2を用いた結果、レーン3は糞便試料液D−3を用いた結果、レーン4は糞便試料液D−4を用いた結果、レーン5は糞便試料液D−5を用いた結果、レーン6は糞便試料液D−6を用いた結果を示す。レーン7は、ネガティブコントロール(Negative Control)、すなわちノロウイルス感染者糞便のかわりにノロウイルス非感染の健常者糞便を用いたことを除いて同様の操作を行った結果を示す。レーンMは分子量マーカ(φ×174 RF DNAのHincII消化物)である。 <2> 糞便試料から精製したRNAを用いたRNA検出 上記<1>で得られた各希釈感染者糞便に由来する上清に対し、QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN社)を適用することによってRNA精製を行い、これらを上記<1>の糞便試料液D−1〜D−6に対するコントロールとして、6種の精製RNA液E−1〜E−6とした。具体的には、E−1はD−1に対応した精製RNA液(1倍)、E−2はD−2に対応した精製RNA液(10倍)、E−3はD−3に対応した精製RNA液(102倍)、E−4はD−4に対応した精製RNA液(103倍)、E−5はD−5に対応した精製RNA液(104倍)、E−6はD−6に対応した精製RNA液(105倍)である。 糞便試料液D−1〜D−6の代わりに、それぞれ精製RNA液E−1〜E−6を用いた以外は、上記<1>と同様の操作を行った。 <2>によって得られた電気泳動図を、図12に示す。図中、レーン1は精製RNA液E−1を用いた結果、レーン2は精製RNA液E−2を用いた結果、レーン3は精製RNA液E−3を用いた結果、レーン4は精製RNA液E−4を用いた結果、レーン5は精製RNA液E−5を用いた結果、レーン6は精製RNA液E−6を用いた結果を示す。レーン7は、ネガティブコントロール(Negative Control)、すなわちノロウイルス感染者糞便のかわりにノロウイルス非感染の健常者糞便を用いたことを除いて同様の操作を行った結果を示す。レーンMは分子量マーカ(φ×174 RF DNAのHincII消化物)である。 図11及び図12に基づき、RNAを精製しない糞便試料を用いた場合と、糞便試料から精製したRNAを用いた場合とについて、RNA検出の感度・特異性を比較すると、検出限界は、両試料共に希釈率104倍であった。 糞便上清中にはウイルスだけでなく多くの細菌や生体由来物質も浮遊しており、そのなかにはRNA分解酵素も多量に存在している。上記の実施例が示す結果は、本発明の実施により、糞便中に多量に存在するRNA分解酵素の失活とRNAウイルスからのRNAの抽出、さらにはRT-PCR阻害物質の制御が有効に働いたことによるものと解釈できる。<実施例13> ノロウイルスに感染している18の異なる検体(検体番号1〜18)にそれぞれ由来する18種のノロウイルス陽性糞便について、実施例12の<1>と同様の操作を行った。得られた電気泳動図を、図13に示す。図13中、レーンの数字は、それぞれ検体番号に相当する。レーンMは分子量マーカ(φ×174 RF DNAのHincII消化物)である。 一方、ノロウイルスに感染していない10の異なる検体(検体番号19〜28)にそれぞれ由来する10種のノロウイルス陰性糞便について、実施例12の<1>と同様の操作を行った。得られた電気泳動図を、図14に示す。図14中、レーンの数字は、それぞれ検体番号に相当する。レーンMは分子量マーカ(φ×174 RF DNAのHincII消化物)である。 図13及び図14が示すように、ノロウイルス陽性糞便試料からは全て(18検体中18検体)において特異産物が検出された。一方、ノロウイルス陰性糞便試料からは全て(10検体中10検体)において擬似産物は検出されなかった。<実施例14> 処理試薬として、30mM NaOH、20mM DTT、10mM EGTAの組成を有する処理試薬を用い、20℃から100℃までの様々な温度及び1分から60分までの様々な時間の条件下で加熱処理を行った以外は、実施例10と同様の操作を行った。 実施例14によって得られた電気泳動図を図15に示す。図15では、5つのレーンは、加熱処理時間が、1 min(分)、5 min、15 min、30 min、及び60minであった場合に対応し、それぞれのレーンにつき、加熱処理温度が、25℃(比較用)、35℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、及び100℃であった場合の結果を示している。 増幅されたRNAをリアルタイムPCRによって定量した。具体的には、得られたRT-PCR反応液に10×SYBR(TM) Green I(Molecular Probes)を添加し、温度プログラムとして、95℃, 5分のプレヒーティングに続いて、92℃, 30秒、58℃, 30秒、及び72℃, 1分のサイクルを30サイクル行い、その後、72℃, 7分のポリメライゼーションを実行した。30サイクル目の蛍光強度を、図16に示す。図16においては、横軸に熱処理温度(℃)、縦軸に蛍光強度(相対蛍光強度:RFU)を示す。 本実施例においても、EGTAの添加により、RNAの加水分解の速度が著しく小さくなり、広範囲な加熱条件で、安定してRNAの検出が可能となったと考えられる。 上記実施例では、本発明の範囲における具体的な形態について示したが、本発明は、これらに限定されることなく他の色々な形態で実施することができる。そのため、上記実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、クレームの均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内である。 なお、配列表フリーテキスト(人工配列の記載(Description of Artificial Sequence))において、配列番号1〜5は、合成プライマーである。 本発明によると、生体試料、環境試料等の試料、もしくは、そこからRNA包含体の分離等を行って得た生体由来試料等の試料、の中に普遍的に存在するRNaseを失活させる方法を提供することができる。 本発明によると、生体試料、環境試料等の試料、もしくは、そこからRNA包含体の分離等を行って得た生体由来試料等の試料、の中に存在するRNA包含体からRNAを効率よく抽出する方法を提供することができる。 本発明によると、該試料中のRNaseの失活とRNA包含体内部からのRNAの抽出とを一工程で行うことによって、簡便・安定的・効率的且つ迅速に、試料中に存在するRNAを増幅することが可能となる。そして、核酸合成に対する阻害物質の作用を抑制することにより、さらに簡便・安定的・効率的且つ迅速に、試料中に存在するRNAを増幅することが可能となる。このことにより、簡便・安定的・効率的且つ迅速に、試料中のRNAを検出する方法を提供することができる。 本発明によると、これらの方法に用いることができる処理試薬を提供することができる。 RNAウイルス及びRNA分解酵素が含まれる試料と、少なくとも還元剤及び2価の金属イオンをキレートするキレート剤を含むアルカリ性処理試薬との混合物であって、pHが8.1以上であり前記還元剤が2.5mM〜1Mの濃度で含まれる混合物を、60℃〜100℃の加熱条件下において得る工程と、 前記混合物を前記加熱条件下で維持することによって、前記RNA分解酵素の失活とRNAウイルスからのRNA抽出とを行い、抽出されたRNAを含む試料処理液を得る工程と、 前記試料処理液と増幅用反応液とを混合してRNA増幅反応を行い増幅産物を得る工程と、 前記増幅産物を検出する工程とを含む、RNA検出方法。 前記処理試薬は、Tris緩衝液、Good緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、及び炭酸塩緩衝液からなる群から選ばれるアルカリバッファを含む、請求項1に記載のRNA検出方法。 前記処理試薬は、水酸化物、アンモニア、及びアミンからなる群から選ばれるアルカリ物質を含む、請求項1又は2に記載のRNA検出方法。 前記還元剤がチオール型還元剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のRNA検出方法。 前記試料が、生体試料、生体由来試料、環境試料、及び環境由来試料からなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のRNA検出方法。 前記試料が、排泄物試料及び排泄物由来試料からなる群から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNA検出方法。 前記RNAウイルスは、レトロウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、及びC型肝炎ウイルスからなる群から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のRNA検出方法。 前記RNAウイルスがレトロウイルスである場合、前記レトロウイルスはエイズウイルスである、請求項7に記載のRNA検出方法。 前記RNAがmRNAである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRNA検出方法。 RNAウイルス及びRNA分解酵素が含まれる試料を、少なくとも還元剤及び2価の金属イオンをキレートするキレート剤を含む溶液中に混在させ、前記試料と前記溶液との混合物を、前記還元剤が2.5mM〜1Mの濃度で含まれるように得る工程と、 前記混合物を、25℃におけるpHが8.1以上となるように調整する工程と、 pH調整された前記混合物を60℃〜100℃の加熱条件下に供することによって、前記RNA分解酵素の失活と前記RNAウイルスからのRNAの抽出とを行い、抽出されたRNAを含む試料処理液を得る工程と、 前記試料処理液と増幅用反応液とを混合してRNA増幅反応を行い増幅産物を得る工程と、 前記増幅産物を検出する工程とを含む、RNA検出方法。配列表