タイトル: | 特許公報(B2)_新規プラスミドベクター及びプラスミドを安定に保持する形質転換体 |
出願番号: | 2007542665 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/21,C12P 7/62,C12R 1/01 |
佐藤 俊輔 JP 5650368 特許公報(B2) 20141121 2007542665 20061026 新規プラスミドベクター及びプラスミドを安定に保持する形質転換体 株式会社カネカ 000000941 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 佐藤 俊輔 JP 2005312921 20051027 20150107 C12N 15/09 20060101AFI20141211BHJP C12N 1/21 20060101ALI20141211BHJP C12P 7/62 20060101ALI20141211BHJP C12R 1/01 20060101ALN20141211BHJP JPC12N15/00 AC12N1/21C12P7/62C12N1/21C12R1:01 C12N15/00 C12P7/62 C12N1/20-21 BIOSIS MEDLINE 国際公開第2004/74476(WO,A1) 米国特許第6143518(US,A) 米国特許第4760022(US,A) Mol.Gen.Genet.(1996)Vol.250,p.169−179 6 JP2006321415 20061026 WO2007049716 20070503 16 20091001 2013009183 20130520 鈴木 恵理子 三原 健治 高堀 栄二本発明は、新規ベクターに関する。また、本発明はプラスミドの安定化の分野にあり、より詳細には、水素細菌であり、PHB合成菌として知られるRalstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌にて安定に保持される組換えベクター、該ベクターによって形質転換された菌株、及び該菌株によるポリヒドロキシアルカノエートの商業生産に関する。組換えDNAの技術を微生物による目的物質の生産に実際に適用してみると、一般に組換えプラスミドが不安定であるという問題がある。実験室で通常用いられるクローニング及び発現ベクターは、通常マルチコピープラスミドであり、それらの後代への安定した伝達は、細胞ゲノム1つあたりに多数のプラスミドを導入することにより確保される(非特許文献1参照)。しかし、プラスミドを使用して外来遺伝子を導入すると、バクテリアの増殖サイクルの期間にプラスミドが欠失する事によって、導入した遺伝子の不安定性が生じてしまう。従って、工業的生産工程では、醗酵器内での培養が終了するまでバクテリア中のプラスミドを安定化させることが必須である。これまで、Ralstonia属、Wautersia属及びCupriavidus属細菌への遺伝子導入用プラスミドベクターとして、主にpJRD215系ベクターや、pBBR系ベクターが使用されてきた(非特許文献2及び非特許文献3参照)。しかし、これらのプラスミドベクターは、宿主細菌がポリヒドロキシアルカノエートなどを細胞内に蓄積させた際に非常に不安定になるという事が我々の研究で明らかとなった。例えば、pJRD215系のベクターについて、ポリヒドロキシアルカノエートを多量に蓄積させない条件での培養では、抗生物質による選択圧を掛けなくとも4回植え継いだ時に約80%の細胞がプラスミドを保持しているにも関わらず、ポリエステルを多量に蓄積させる条件での培養では、同じく4回植え継いだ時に30%しかプラスミドを保持していない。また、pBBR系のベクターも同様の特徴を示す。これらプラスミドベクターは広域宿主用に開発された広域宿主ベクターであるが(非特許文献4及び非特許文献5参照)、Ralstonia属、Wautersia属、Cupriavidus属細菌などを宿主として工業的に物質生産を行う際には、Ralstonia属、Wautersia属及びCupriavidus属細菌に適した遺伝子導入用プラスミドベクターを開発する事が必要である。これまでプラスミドを安定化させる為に様々な手法が考案されて来たが、今までRalstonia属において使用可能なプラスミドベクターは、クロラムフェニコール、カナマイシン、アンピシリンなどの薬剤耐性によってプラスミドを保持した形質転換体を選択するものしかなかった。抗生物質による選択圧をかけて培養を行うと、(1)抗生物質耐性菌株の使用は、環境に対して危険を呈する可能性がある、(2)培養中に必要な抗生物質の量は生産コストを有意に増加させる、(3)抗生物質は、ヒト及び動物の治療で用いられる物質の生産においては望ましくない、という問題があり、薬剤耐性によってプラスミドを保持した形質転換体は、工業生産には適用できない。プラスミドを安定に保持させるシステムとしては、抗生物質により選択圧をかける方法の他にparシステムが知られている(非特許文献6、7参照)。parシステムが働くと、複製したプラスミドが娘細胞に分配される為、抗生物質耐性による選択圧を掛けなくても安定にプラスミドを保持した菌株が得られる。これまでに大腸菌にて使用可能なRP4プラスミドのparシステムを組み込んだベクター(特許文献1参照)や、R1プラスミドのpar領域を使用したベクター(特許文献2参照)が開発されている。また、Cupriavidus metallidurans CH34株が保有するメガプラスミドpMOL28のpar領域には、プロモーターであるparP、プラスミドの安定化因子であるparA28、parB28及び認識配列parSが存在する事が知られており、これらの遺伝子は、プラスミドpSUP202中に既にクローン化されており、そのヌクレオチド配列はすでに公表されている(非特許文献8参照)。前述したように、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌、Wautersia属細菌、特にCupriavidus necatorはしばしばポリヒドロキシアルカノエート生産やタンパク質生産菌として使用されており(非特許文献9参照)、これらの細菌で特に使用可能であり、接合伝達性が無く、かつ抗生物質による選択圧をかけなくても安定に保持されるプラスミドベクターを開発することが求められている。しかしながら、前述したようなpar領域の利用によるプラスミドの安定化は、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌、Wautersia属細菌に関しては行われておらず、これまでそのシステム構築やシステムが実際にプラスミドの安定化に有効に働くかは分かっていない。米国特許第6143518号明細書米国特許第4760022号明細書Jones IM等、Mol Gen Genet. 180(3):579‐84.(1980)T.Fukui等,Biotechnology Letters.Vol.19,No.11,Nov 1997:1093−97STEVEN SLATER等、JOURNAL OF BACTERIOLOGY,Apr.1998:1979−1987Luan Tao等、Metabolic Engineering、Volume 7,Issue 1、January 2005:10−17Davison J等、Gene.1987;51(2−3):275−80.M.Gerlitz等、Journal of Bacteriology、Nov:6194−6203(1990)B.Youngren等、Journal of Bacteriology、July:3924−3928(2000)Safieh Taghavi等、Mol.Gen.Genet、250:169−179(1996)Gravin C.等、Protein Expression & Purification Dec;38(2):64−71(2004)本発明は、新規ベクターを開発する事を目的とする。好ましくは、Ralstonia属、Cupriavidus属又はWautersia属の細菌を宿主として使用可能であり、抗生物質による選択圧がなくても細菌中に安定に保持されるベクターを開発する事を目的とする。また、その形質転換体が、ポリヒドロキシアルカノエートを生産し、さらにはその生産性を安定化することを目的とする。目的とするRalstonia属細菌等の形質転換に用い得るベクターを作製する為には、宿主細菌にてベクターを複製するためのDNA配列(ori)が必須である事から、本発明では、まずRalstonia属細菌等にて機能するDNA複製開始領域(ori)を含有したベクターを開発する事で、Ralstonia属、Cupriavidus属、Wautersia属細菌を宿主として使用可能な新規ベクターを作製することができるのではないかと考えた。また、工業生産規模での物質生産に使用するためのベクターとしては、宿主細菌内部でベクターが複製されるだけではなく、1)簡便に扱えるためのDNA塩基対数、2)形質転換体を選択するための薬剤耐性遺伝子、3)接合伝達性がない、等の種々の特徴を備えていることが必須である。更に、ベクターを安定化させる手段として、抗生物質を添加しなくても良い、宿主細菌の染色体に変異を入れる必要がない等の理由から、前述したparシステムが非常に有効であると考えられる。しかし、上述したメガプラスミドpMOL28は、parシステムを保有しているため宿主細菌にて安定に保持されるが、280kと非常に塩基対数が多く、薬剤耐性遺伝子も保有していないため、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌及びWautersia属細菌用のベクターとしては使えないと考えられていた。本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、Cupriavidus metallidurans CH34株が有するメガプラスミドpMOL28の複製開始領域およびparシステムを、Cupriavidus metallidurans CH34株とは異なる宿主、例えばCupriavidus necator(旧名:Ralstonia eutropha、或いはWautersia eutropha)にて機能させたら、抗生物質耐性による選択圧を掛けなくてもプラスミドが安定に保持されることを見出し、新規のプラスミドベクターを開発する事ができた。即ち、第一の本発明は、配列番号18で示される配列を含み、かつRalstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌を宿主として機能する複製開始領域を導入してなる組換えベクターに関する。好ましくは、mob遺伝子群およびoriT配列を有さない、すなわち接合伝達性を有さない組換えベクターであり、より好ましくは、プラスミドを安定化する機構であるparシステムとして機能するDNA領域であるpar領域を導入してなる組換えベクターであり、更に好ましくは、par領域として配列番号19で示されるDNA断片を含有する組換えベクター、特に好ましくは、上記組換えベクターに3−ヒドロキシ酪酸(3HB)の供給系であるチオラーゼ、レダクターゼ、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)合成酵素であるPHBシンターゼ、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)合成酵素であるPHAシンターゼ、β酸化経路の酵素であるアシル−CoAトランスフェラーゼ、エノイル−CoAヒドラターゼ及びアシル−CoAデヒドロゲナーゼから成る遺伝子群より選択されるPHA合成に関わる遺伝子を少なくとも1つ導入してなる組換えベクターに関する。第二の本発明は、上記した組換えベクターによって宿主細菌に遺伝子導入された形質転換体であり、好ましくは宿主細菌がCupriavidus necatorである形質転換体に関する。第三の本発明は、上記形質転換体を培養し、該培養物からのPHAの製造方法に関する。以下に本発明を詳細に説明する。第一の本発明の組換えベクターは、配列番号18で示される配列を含み、かつRalstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌を宿主として機能する複製開始領域を導入してなるものである。上記複製開始領域とは、組換えベクターを複製する複製起点として機能する配列である。配列番号18で示される配列は、Cupriavidus metallidurans CH34株が保有するメガプラスミドpMOL28中の、配列番号7で示される複製開始領域(ori領域)の一部である。本発明でベクターに導入する複製開始領域は、配列番号18の配列を含み、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌を宿主として機能するものであればどのようなものを用いてもよい。上記複製開始領域としては、配列番号7で示される配列を用いてもよい。本発明の組換えベクターは、mob遺伝子群およびoriT配列を有さない方が好ましい。当該ベクターがmob遺伝子群やoriT配列を有すると、他の微生物と接触した際、接合伝達が生じる可能性があり、組換え体の封じ込めといった安全面での課題を有してしまう為である。ここで、mob遺伝子群とはDNAを運ぶ機能をコードする遺伝子群の事であり、mob遺伝子群がコードするタンパク質はoriT配列にニックを入れる機能、さらに一本鎖となったDNAを安定に運ぶ機能を有する。oriT配列とは、ニックサイトとニックが入るための認識配列のことである。また、本発明の組換えベクターは、parシステムとして機能する、ベクターを安定化する領域(par領域)を導入してなるものが好ましい。前記par領域としては、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌にて機能するparシステムであればどの様な配列であってもかまわないが、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌が保有するプラスミド中のpar領域が好ましく、メガプラスミド中のpar領域がより好ましい。本発明においては、配列番号19で示される配列を含むDNA断片を用いることが特に好ましい。上記配列番号19で示される配列は、Cupriavidus metallidurans CH34株が保有するメガプラスミドpMOL28中の、配列番号8で示されるpar領域の一部であり、parA遺伝子、parB遺伝子及び認識配列parSを含んでいる。配列番号19で示される配列は、Cupriavidus metallidurans CH34株が保有するメガプラスミドpMOL28中のpar領域の一部であるので、この配列を含むDNA断片をparシステムとして機能させるには、配列番号19で示される配列の他に、プロモーターやターミネーターを含む必要がある。上記プロモーターとしては、上記メガプラスミドpMOL28中のparPを用いてもよいし、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌を宿主として機能すれば、他の生物由来のプロモーターを用いることもできる。メガプラスミドpMOL28中のプロモーターparPは、配列番号8の2388番目から2848番目の塩基配列にほぼ相当する。上記ターミネーターとしては、上記メガプラスミドpMOL28中のターミネーターを用いてもよいし、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌を宿主として機能すれば、他の生物由来のターミネーターを用いることもできる。メガプラスミドpMOL28中のターミネーターは、配列番号8の61番目から202番目の塩基配列中に含まれる。本発明の組換えベクターに導入するpar領域としては、配列番号8で示される配列を用いてもよい。また、本発明の組換えベクターは、PHA合成に関わる遺伝子を少なくとも1つ導入してなることが好ましい。そうすれば、該組換えベクターの形質転換体は、全遺伝子が有効に働けば、PHAをより効率的に合成することができる。そしてこのPHAを合成することができる形質転換体は、多コピー型のプラスミドとは異なって、安定的にプラスミドが複製するので、宿主にPHA合成に関わる遺伝子を安定に供給する事が可能であり、商業的に有意な量のPHAを蓄積することができる。前記PHA合成に関わる遺伝子としては、3HBの供給系であるチオラーゼ、レダクターゼ、PHB合成酵素であるPHBシンターゼ、PHA合成酵素であるPHAシンターゼ、β酸化の酵素であるアシル−CoAトランスフェラーゼ、エノイル−CoAヒドラターゼ、アシル−CoAデヒドロゲナーゼ等が挙げられ、それらの群より選択される少なくとも1つが導入されてなる組換えベクターが好ましい。チオラーゼとしては、β−ケトチオラーゼ等が挙げられ、レダクターゼとしては、アセトアセチルCoAレダクターゼ等が挙げられ、PHAシンターゼとしては、Aeromonas caviae由来のPHAシンターゼ変異体遺伝子であるN149S/D171G変異体等が挙げられ、アシル−CoAトランスフェラーゼとしては、3−ヒドロキシアシルACP−CoAトランスフェラーゼ等が挙げられる。なお、本発明の組換えベクターにPHA合成に関わる遺伝子を導入する場合、あらかじめベクターに制限酵素サイトを導入しておくと、当該遺伝子を導入しやすくなる。更に、本発明の組換えベクターは、選択マーカーを含有するものが好ましい。本発明では、組換えベクターにpar領域を導入するとベクターの安定性に優れるため、抗生物質等による選択圧は必要ないが、後述のように、本発明の組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換する際、組換え株の選択にこの選択マーカーを用いることができる。選択マーカーとしては特に限定されず、例えば、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質耐性遺伝子等が挙げられる。本発明の組換えベクターにおいて、上記選択マーカーとしては、配列番号14で示されるカナマイシン耐性遺伝子が好ましい。本発明の組換えベクターは、また、上述の遺伝子を導入して得られた組換えベクターを小型化してもよい。組換えベクターを小型化するには、複製開始領域、par領域、選択マーカー及びPHA合成酵素遺伝子の発現に不要な部分を欠失させることにより行える。例えば、本発明の組換えベクターは、mob遺伝子群およびoriT配列を有さない方が好ましいので、これらの遺伝子群や配列を欠失させて小型化することができる。本発明の組換えベクターは、小型化することにより、宿主に導入する際、形質転換率を向上させることができる。本発明の組換えベクターは、配列番号18で示される配列を含み、かつRalstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌を宿主として機能する複製開始領域、及び、配列番号14で示されるカナマイシン耐性遺伝子を含有することが更に好ましい。本発明の組換えベクターは、メガプラスミドに由来する複製開始領域を含有することで、Cupriavidus metallidurans以外の宿主においても機能することができる組換えベクターとなる。本発明の組換えベクター作製に用いるベクターとしては特に限定されず、各種のプラスミドやファージ等を用いることができるが、得られる組換えベクターを大腸菌とのシャトルベクターとすることが可能であることから、大腸菌由来のプラスミドを用いることが好ましい。本発明の組換えベクターの作製は、特に限定されず、Ralstonia属細菌、Cupriavidus属細菌又はWautersia属細菌にて機能する複製開始領域、並びに、必要に応じて抗生物質耐性能力付与遺伝子等の選択マーカー(カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン耐性付与遺伝子等)、組換えベクターを安定化するparシステムとして機能するpar領域を組み込む事で、どの様なプラスミドベクターからでも製作ができる。第二の本発明の形質転換体は、上記の組換えベクターによって形質転換されたものである。つまり、本発明の形質転換体は、上記で得られた組換えベクターを、当該ベクターに適合する宿主細菌中に導入することにより得られる。本発明における宿主としては、上記組換えベクターを用いて形質転換できれば特に制限はないが、Cupriavidus metallidurans以外の、天然から単離された微生物や、菌株の寄託機関(例えばIFO、ATCCなど)に寄託されている微生物等を使用できる。具体的にはラルストニア(Ralstonia)属、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ワウテルシア(Wautersia)属、アエロモナス(Aeromonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属等の細菌類を使用することができる。安全性及び生産性の観点から、好ましくはラルストニア(Ralstonia)属、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ワウテルシア(Wautersia)属であり、さらに好ましくはCupriavidus necatorである。このCupriavidus necatorは、分類学上、Ralstonia eutropha、Wautersia eutrophaと同一である〔Vaneechoutte M 等、Int J Syst Evol Microbiol、Mar、54(Pt2):317−327(2004)、Vadamme P 等、Int J Syst Evol Microbiol、NoV、54(Pt6):2285−2589(2004)〕。本発明の形質転換体は、上記組換えベクターにより、Cupriavidus metallidurans CH34株が保有するメガプラスミドpMOL28のori領域やpar領域の一部が導入される。通常、メガプラスミドを有する微生物に、当該メガプラスミドに由来する遺伝子を導入すると、相同的組換えが生じたり、同じ遺伝子を有するプラスミドが導入されるのを拒絶したりすることから、その微生物が有するメガプラスミド中の遺伝子を更に導入することは困難である。しかしながら、本発明では、上記組換えベクターを用いてCupriavidus metallidurans以外の宿主に形質転換を行うと、宿主が元来有するメガプラスミド中の複製開始領域と当該組換えベクターにより導入された複製開始領域等が競合することなく、両者が有する複製能や安定性の効果が相乗して、非常に高い複製能や安定性が発現すると考えられる。本発明の形質転換体の作製方法は特に限定されず、宿主細菌への組換えベクターの導入は、公知の方法により行うことができる。例えば、エレクトロポレーション法(Current Protocols in Morecular Biology、1巻、1.8.4頁、1994年)や、カルシウム法(Lederberg.E.M.et al.、J.Bacteriol.119.1072(1974))などを用いることができる。形質転換体の選択には、カナマイシン耐性の表現系等の選択マーカーを用いることができる。なお、本発明では、宿主としてCupriavidus metallidurans以外の微生物を用いるため、あらかじめ宿主のメガプラスミドを除去する操作は不要である。次に、第三の本発明のPHAの製造方法について説明する。本発明におけるPHAは以下の一般式(1)で表される。(式中のRは炭素数1〜13のアルキル基、mは2以上の整数を表す。m個のRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)上記PHAとしては、一般式(2)(式中、n、pは1以上の整数を表す)で示される、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシへキサン酸のモノマーユニットで構成される共重合ポリエステルP(3HB−co−3HH)が好ましい。本発明のPHAの製造方法は、上記形質転換体を培養し、該培養物からPHAを抽出精製することからなる。その方法は特に限定するわけではないが、以下のようにして行う事ができる。ポリヒドロキシアルカノエートの生産においては、糖、油脂または脂肪酸を炭素源として与え、炭素源以外の栄養源である窒素源、無機塩類、そのほかの有機栄養源を含む培地を用いて、上記形質転換体を培養することができる。例えば、ラルストニア(Ralstonia)属、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ワウテルシア(Wautersia)属、アエロモナス(Aeromonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地として、微生物が資化し得る炭素源を与え、場合によっては、窒素源、無機塩類および有機栄養源のうちのいずれかを制限した培地、例えば窒素源を0.01から0.1%に制限した培地等を用いることができる。糖としては、例えばグルコース、フラクトース等の炭水化物が挙げられる。油脂としては、炭素数が10以上である飽和・不飽和脂肪酸を多く含む油脂、例えばヤシ油、パーム油、パーム核油等が挙げられる。脂肪酸としては、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等の飽和・不飽和脂肪酸、あるいはこれら脂肪酸のエステルや塩等の脂肪酸誘導体が挙げられる。窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。そのほかの有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸;ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。また、培養液中に、発現ベクターに存在する薬剤耐性遺伝子に対応する抗生物質(カナマイシン等)を添加しても良い。培養温度は、その菌が生育可能な温度であればよいが、20℃から40℃が好ましい。培養時間は、特に制限はないが、1から10日間程度で良い。その後、得られた該培養菌体からPHAを回収すればよい。本発明において、菌体からのPHAの回収は、例えば次のような方法により行うことができる。培養終了後、培養液から遠心分離器等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水およびメタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてPHAを抽出する。このPHAを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてPHAを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてPHAを回収する。得られたPHAの重量平均分子量(Mw)や3HH組成(mol%)の分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法や核磁気共鳴法等により行うことができる。あるいは、PHA生産確認の簡易法としては、Nileredを用いた染色法を利用できる。すなわち、組換え菌が生育する寒天培地にNileredを加え、組換え菌を1〜7日間培養し、組換え菌が赤変するか否かを観察することにより、ポリエステル生産の有無を確認できる。本発明の組換えベクターは、Ralstonia属、Cupriavidus属、Wautersia属の細菌を宿主として使用可能であり、なかでもmob遺伝子群およびoriT配列を有さないものは接合伝達性がなく、更にpar領域を導入したのものは、細菌中にて抗生物質による選択圧がなくても安定に保持される。また、その形質転換体が、PHAを安定的に生産することができる。以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお全体的な遺伝子操作は、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press、(1989))に記載されているように行うことができる。また、遺伝子操作に使用する酵素、クローニング宿主等は、市場の供給者から購入し、その説明に従い使用することができる。酵素としては、遺伝子操作に使用できるものであれば特に限定されない。また、以下の実施例では大腸菌由来のプラスミドを用いており、このプラスミドは配列番号14で示されるカナマイシン耐性遺伝子を含有している。(実施例1)プラスミドベクターpCUPの作製本実施例において複製開始領域及びpar領域を導入するプラスミドベクターとしては、Ralstonia属細菌にて使用可能なものであれば特に制限はない。本実施例にて作製したプラスミドベクターは、Cupriavidus metallidurans CH34株が保有するメガプラスミド(pMOL28)の複製開始領域(配列番号7)及び配列番号8に記載のpar領域を用いている。具体的な作製手順としては、まず、Cupriavidus metallidurans CH34株からDNA Purification Kit(Promega社製)を使用し、メガプラスミドを含むDNAを調製、このDNAを鋳型に、配列番号1及び2に記載のプライマーを用いてPCR法によって約4kbpの配列番号7及び8の配列を含むDNA領域を増幅した。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)72℃で5分、(2)から(4)を30サイクル、(5)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはTaKaRa Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いた。増幅断片を大腸菌用のクローニングベクターPCR−Blunt2−TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。次に、配列番号3及び4に記載のプライマーを用いてPCR法によってPCR−Blunt2−TOPO(Invitrogen社製)ベクターの2061bp−2702bp領域の両端より外側に向かって増幅反応を行い、DNAリガーゼ(Ligation High(東洋紡社製))によって繋ぐ事により641bpを欠失させた図1によって示されるベクターpCUPを作製した。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)72℃で7分、(2)から(4)を30サイクル、(5)72℃で7分であり、ポリメラーゼとしてはTaKaRa Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いた。(実施例2)プラスミドベクターpCUP2の作製本発明のプラスミドベクターに遺伝子導入をしやすくするため、さらに実施例1で得られたpCUPに制限酵素MunIサイトを導入した。具体的な作製手順としては、まず配列番号5及び6に記載のプライマーを用いてPCR法によって実施例1にて作製したpCUPを鋳型にしてPCRを行い、増幅断片をDNAリガーゼ(Ligation High(東洋紡社製))によって繋ぐ事により、MunIサイトを導入し、図2に示されるpCUP2を作製した。PCR条件は(1)98℃で2分、(2)98℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)72℃で5分、(2)から(4)を30サイクル、である。ポリメラーゼとしてはTaKaRa Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いた。このようにして、配列番号18で示されるDNA領域及び配列番号19で示されるDNA領域を含有し、mob遺伝子群及びoriT配列など接合伝達に関与する遺伝子を含有しないプラスミドベクターを作製した。(実施例3)プラスミドベクターpCUP2を用いた形質転換体の作製エレクトロポレーション法による形質転換は、次のように実施した。エレクトロポレーションに使用する遺伝子導入装置としてはBiorad社製のジーンパルサーを用い、キュベットは同じくBiorad社製のgap0.2cmのものを用いた。キュベットに、Ralstonia eutropha H16株のコンピテント細胞400μlとプラスミドpCUP2調製液5μlを注入してパルス装置にセットし、静電容量25μF、電圧1.5kV、抵抗値800Ωの条件で電気パルスをかけた。パルス後、キュベット内の菌液をNutrient Broth培地(DIFCO社製)で30℃、3時間振とう培養し、選択プレート(Nutrient Agar培地(DIFCO社製)、カナマイシン100mg/L)で、30℃にて2日間培養して、形質転換体を取得した。(比較例1)プラスミドベクターpJRD215を用いた形質転換体の作製プラスミドとして、配列番号18の配列やpar領域を有さないpJRD215を用いた以外は、実施例3と同様にしてプラスミドベクターpJRD215を用いた形質転換体を取得した。(実施例4)プラスミドベクターpCUP2を用いた形質転換体の保持率実施例3で得られた形質転換体のプラスミドの保持率を試験した。試験は1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Trypton、0.2w/v% Yeast−extract、0.9w/v% Na2PO4/12H2O、0.15w/v% KH2PO4、pH6.8から成るカナマイシン添加(50mg/L)のMB+肉培地にて、実施例3で得たプラスミドベクターpCUP2を用いた形質転換体を24時間培養した培養液を、1.1w/v% Na2PO4・12H2O、0.19w/v% KH2PO4、1.29w/v% (NH4)2SO4、0.1w/v% MgSO4/7H2O、2.5w/v% パームWオレイン油、0.5v/v%微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl3・6H2O、1w/v% CaCl2・2H2O、0.02w/v% CoCl2・6H2O、0.016w/v% CuSO4・5H2O、0.012w/v% NiCl2・6H2Oを溶かしたもの)からなるカナマイシン無添加のMB+油培地に1%(v/v)にて植え換え、24時間振とう培養した。この培養を24時間毎に3回継代し、4回目の培養の24時間時にプラスミドの保持率を下記のように測定した。まず、培養液を滅菌水によって10の8乗分の1に希釈し、カナマイシン無添加のプレート(Nutrient Agar培地(DIFCO社製))に10から100μl蒔き、得られたコロニーをさらにカナマイシン添加(100mg/L)の選択プレート(Nutrient Agar培地(DIFCO社製))にランダムに100コロニーレプリカし、生育してきたコロニーの数を数えた。プラスミドを保持している細菌のみがプレート上にコロニーを形成する事ができる事から得られた薬剤耐性コロニーの数を安定性とした。結果を表1に示す。(比較例2)プラスミドベクターpJRD215を用いた形質転換体の保持率形質転換体として実施例3で得たプラスミドベクターpCUP2を用いた形質転換体の代わりに、比較例1で得た形質転換体を用いた以外は、実施例4と同様にしてプラスミドの保持率を試験した。結果を表1に示す。(実施例5)PHA合成遺伝子導入プラスミドベクターの作製実施例2で得たプラスミドベクター(pCUP2)に、EcoRI処理によって調製した配列番号13で示すAeromonas caviae由来のPHAシンターゼ変異体遺伝子であるN149S/D171G変異体をpCUP2の制限酵素MunI部位に組み込んだ発現プラスミドベクター(pCUP2EEACP149NS/171DG)を作製した(図3)。Aeromonas caviae由来のPHAシンターゼ変異体遺伝子であるN149S/D171G変異体は、次のように作製した。まず、pBluescriptIIKS(−)(東洋紡社製)をPstI処理し、DNA Blunting Kit(タカラバイオ製)を用いて平滑末端化しライゲーションすることによりPstIサイトを欠失したプラスミドpBlue−Newを作製した。このプラスミドのEcoRIサイトにpJRD215−EE32d13(特開平5−93049号公報)より同酵素で切り出したd13断片をクローニングした(pBlue−d13)。次に、クローンE2−50由来のプラスミド(Kichise等、Appl.Environ.Microbiol、68:2411−2419(2002))を鋳型とし、配列番号9及び10に記載のプライマーのセット、及び、配列番号11及び12に記載のプライマーのセットを用いてそれぞれPCR法により増幅、2断片を得た。その条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)72℃で2分、(2)から(4)を25サイクル、(5)72℃で5分である。増幅された2断片を等モル混合し再びPCR反応を行い2断片を結合させた。その条件は(1)96℃で5分、(2)95℃で2分、(3)72℃で1分、(2)から(3)を12サイクルであり、ポリメラーゼとしてはPyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ製)を用いた。目的サイズのDNA断片をアガロース電気泳動ゲルより切り出しPstIとXhoIで処理し、同酵素で処理したpBlue−d13に断片を入れ替える形でクローニングした(pBlue−N149S/D171G)。塩基配列決定を、PERIKIN ELMER APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー310 Genetic Analyzerを用いて行い、PHA合成酵素の149番目のアミノ酸であるアスパラギンがセリンに、171番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がグリシンに置換された変異遺伝子であることを確認した。以上のように調製したpBlue−N149S/D171Gを制限酵素EcoRIで処理し、制限酵素MunIで処理したpCUP2とをDNA Ligase(Ligation High、東洋紡社製)によって繋ぐ事で、PHA合成酵素を含有したプラスミドベクターpCUP2EEACP149NS/171DGを作製した。(実施例6)エノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子導入プラスミドベクターの作製実施例2で得たプラスミドベクター(pCUP2)に、EcoRI処理によって調製した配列番号17で示すAeromonas caviae由来のエノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子をpCUP2の制限酵素MunI部位に組み込んだ発現プラスミドベクター(pCUP2EEphaJ)を作製した(図4)。このベクターは次のようにして作製した。まず、本発明で使用するエノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子を含有しているpJRD215−EE32(特開平5−93049号公報)を鋳型に配列番号15及び16に記載のプライマーセットを用いてPCR法によって増幅、配列番号17に記載のエノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子を含む増幅断片を得た。その条件は(1)94℃で2分、(2)98℃で10秒、(3)60℃で10秒、(4)68℃で1分、(2)から(4)を30サイクル、(5)68℃で3分である。ポリメラーゼとしてはLA Taq DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を使用した。次にこの増幅断片をBglII及びAflIIによって処理し、同じくBglII及びAflIIで処理した後、アルカリホスファターゼ処理を行いDNAを脱リン酸化処理したpJRD215−EE32d13とライゲーション処理を行い、pJRD215−EE32d13のBglIIとAflIIの間のDNA断片と入れ替える形でクローニングを行った(pJRD215−EEphaJ)。ライゲーションにはLigation High(東洋紡社製)を用いた。この様にして作製したpJRD215−EEphaJからEcoRIにてエノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子を含むDNA断片を調整し、MunI処理したpCUP2とライゲーションを行う事で、pCUP2EEphaJ(図4)を作製した。ライゲーションにはLigation High(東洋紡社製)を使用した。(実施例7)PHA合成遺伝子導入プラスミドベクターを用いた形質転換体の作製プラスミドpCUP2調製液の代わりに、実施例5で得たPHA合成遺伝子導入プラスミドベクター調製液(pCUP2EEACP149NS/171DG)を用いた以外は、実施例3と同様にして、PHA合成遺伝子導入プラスミドベクターを用いた形質転換体を作製した。形質転換にはPHA合成不能株であるRalstonia eutropha PHB−4株(Tsuge T等、Macromol Biosci、Oct 20;4(10):963−70.(2004))を用いた。(実施例8)エノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子導入プラスミドベクターを用いた形質転換体の作製プラスミドpCUP2調製液の代わりに、実施例6で得たエノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子導入プラスミドベクター(pCUP2EEphaJ)調製液を用いた以外は実施例3と同様にして、エノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子導入プラスミドベクターを用いた形質転換体を作製した。形質転換にはPHA合成不能株であるRalstonia eutropha PHB−4株を用いた。(実施例9)プラスミドベクターpCUP2EEACP149NS/171DGを用いた形質転換体の保持率形質転換体として、実施例3で得たプラスミドベクターpCUP2を用いた形質転換体の代わりに、実施例7で得た形質転換体を用いた以外は、実施例4と同様にしてプラスミドの保持率を試験した。結果を表2に示す。(実施例10)プラスミドベクターpCUP2EEphaJを用いた形質転換体の保持率形質転換体として、実施例3で得たプラスミドベクターpCUP2を用いた形質転換体の代わりに、実施例8で得た形質転換体を用いた以外は、実施例4と同様にしてプラスミドの保持率を試験した。結果を表2に示す。(比較例3)Ralstonia Eutropha PHB−4株を宿主としたプラスミドベクターpJRD215を用いた形質転換体の作製プラスミドとして配列番号18の配列やpar領域を有さないpJRD215を用い、宿主としてRalstonia Eutropha PHB−4株を用いた以外は、実施例3と同様にしてプラスミドベクターpJRD215を用いた形質転換体を取得した。(比較例4)Ralstonia Eutropha PHB−4株を宿主としたプラスミドベクターpJRD215を用いた形質転換体の保持率形質転換体として、実施例3で得たプラスミドベクターpCUP2を用いた形質転換体の代わりに、比較例3で得た形質転換体を用いた以外は、実施例4と同様にしてプラスミドの保持率を試験した。結果を表2に示す。(実施例11)実施例7で得た形質転換体におけるポリエステル生産実施例7で得られた形質転換体を、Nilered含有培地(リン酸水素2ナトリウム・12水塩 9g、リン酸2水素カリウム 1.5g、塩化アンモニウム 0.05g、硫酸マグネシウム・7水塩 0.02g、フルクトース 0.5g、塩化コバルト・6水塩 0.25ppm、塩化鉄(III)・6水塩 16ppm、塩化カルシウム・2水塩 10.3ppm、塩化ニッケル・6水塩 0.12ppm、硫酸銅・5水塩 0.16ppm、Nilered 0.5mg、寒天15g/L)に播種し、30℃で2日培養した。その結果、コロニーが赤変したことから菌体内にポリエステルが蓄積していることを確認できた。本発明のプラスミドベクターは、Ralstonia属、Cupriavidus属、Wautersia属の細菌を宿主として使用可能であり、なかでもmob遺伝子群およびoriT配列を有さないものは接合伝達性がなく、更にpar領域を導入したのものは、細菌中にて抗生物質による選択圧がなくても安定に保持される。また、その形質転換体が、PHAを安定的に生産することができる。pCUPの遺伝子及び制限酵素地図。pCUP2の遺伝子及び制限酵素地図。pCUP2EEACP149NS/171DGの遺伝子及び制限酵素地図。pCUP2EEphaJの遺伝子及び制限酵素地図。複製開始領域として配列番号18で示される配列を含み、mob遺伝子群およびoriT配列を有さず、ベクターを安定化するpar領域として、配列番号19で示される配列を含むDNA断片を含む組換えベクターによって、前記par領域の本来の宿主とは異なるCupriavidus necatorである宿主細菌に遺伝子導入された形質転換体。宿主細菌が、前記組換えベクターとは異なるベクターをさらに有する、請求項1に記載の形質転換体。宿主細菌が、Ralstonia eutropha PHB−4株、又はRalstonia eutropha H16株である、請求項1または2に記載の形質転換体。組換えベクターが、チオラーゼ、レダクターゼ、ポリヒドロキシ酪酸シンターゼ、ポリヒドロキシアルカノエートシンターゼ、アシル−CoAトランスフェラーゼ、エノイル−CoAヒドラターゼ及びアシル−CoAデヒドロゲナーゼから成る遺伝子群より選択されるポリヒドロキシアルカノエート合成に関わる遺伝子を少なくとも1つ導入してなる請求項1〜3のいずれかに記載の形質転換体。請求項1〜4のいずれかに記載の形質転換体を培養し、該培養物からポリヒドロキシアルカノエートを抽出精製することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。ポリヒドロキシアルカノエートが3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシへキサン酸のモノマーユニットで構成される共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項5記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。配列表