タイトル: | 特許公報(B2)_動物タンパク質を含まない細胞培養培地 |
出願番号: | 2007538292 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12N 5/10,C12N 1/00,C12N 1/16 |
グリルベルガー, レオポルド ライテール, マンフレッド ムント, ウォルフガング ドルナー, フリードリッヒ JP 4847962 特許公報(B2) 20111021 2007538292 20051012 動物タンパク質を含まない細胞培養培地 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド 591013229 BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム 501453189 BAXTER HEALTHCARE S.A. 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 グリルベルガー, レオポルド ライテール, マンフレッド ムント, ウォルフガング ドルナー, フリードリッヒ US 10/976,399 20041029 20111228 C12N 5/10 20060101AFI20111208BHJP C12N 1/00 20060101ALI20111208BHJP C12N 1/16 20060101ALI20111208BHJP JPC12N5/00 102C12N1/00 GC12N1/16 F C12N 5/00 - 5/28 C12N 1/00 C12N 1/16 PubMed BIOSIS(DIALOG) 国際公開第2004/005493(WO,A1) 特開2000−143619(JP,A) 特表2001−504344(JP,A) 国際公開第2004/073701(WO,A1) 特表2002−520014(JP,A) Journal of Biological Chemistry,1986年,Vol.261, No.20,p.9502-9508 14 EP2005010973 20051012 WO2006045438 20060504 2008517610 20080529 17 20080903 上條 肇 (発明の分野) 本発明は、ポリアミン並びに植物動物および/または酵母由来の加水分解産物を含み、動物のタンパク質を含まない、細胞培養培地に関する。本発明はまた、動物タンパク質を含まない細胞培養プロセスに関し、ここで、培養培地中に補完的な動物タンパク質を添加することなく、細胞は、培養、増殖および継代され得る。これらのプロセスは、組換え細胞またはウイルス感染細胞のような細胞の培養、および細胞培養プロセスによる生物学的産物の産生に有用である。 (発明の背景) 細胞、特に真核細胞、およびより具体的には哺乳類細胞の培養には、効率的な細胞増殖、および所望されるタンパク質またはウイルスの産生に必要な、増殖栄養物質を利用可能とする特別な培地の使用が絶えず必要とされている。ウイルスまたは組換えタンパク質のような生物学的産物の効率的な産生にとって、最大の産生物収量を得るために、タンパク質の発現自体が増加するだけでなく、最適な細胞密度が達成されることが重要である。 細胞培養培地の配合に、ウシ胎仔血清(FCS)、いくつかの動物由来のタンパク質および/またはウシ起源のタンパク質加水分解産物のような規定されていない成分を含む、多岐にわたる添加物を補っていた。 一般的に、アルブミン、トランスフェリンまたはインスリンのような、血清または血清由来の物質は、細胞培養物およびそこから得られる生物学的産物を汚染し得る、望ましくない物質を含んでいるかもしれない。さらに、ヒト血清由来の添加物は、血清により伝染され得る、肝炎およびHIVを含む全ての既知のウイルスについて、試験されなければならない。その上、ウシ血清およびここから得られた産物は、BSE汚染の危険性を有している。加えて、全ての血清由来の産物は、未知の構成要素により汚染されている可能性がある。細胞培養での、ヒトまたは他の動物供給源由来の血清もしくはタンパク質添加物の場合、多数の問題がある(例えば、異なるバッチの組成の品質が変化すること、およびマイコプラスマ、ウイルスまたはBSEによる汚染の危険性)。特に、これらの細胞をヒトへ投与する薬物またはワクチンの生産に使用するならば、問題が多数ある。 それゆえに、血清も他の動物タンパク質の化合物も必要としない、効率的な宿主のシステムおよび培養条件を提供するため、多くの試みがなされてきた。単純な、血清を含まない培地は典型的に、基本培地、ビタミン、アミノ酸、有機塩または無機塩、および必要に応じて、培地を栄養学的に複雑にするためのさらなる成分を含んでいる。 ダイズ加水分解産物は発酵プロセスに有用であることが知られており、そして多くの選好性生物、酵母および真菌の増殖を促進し得る。特許文献1には、ダイズ食のパパインによる消化物は、炭水化物および窒素の供給源であり、その成分の多くが組織培養に使用され得ると記載されている。非特許文献1には、規定されたダイズ加水分解産物ペプチド分画の、増殖および生産性を促進する効果が記載されている。 特許文献2には、脊椎動物細胞の増殖およびウイルスの産生プロセスに用いる、合成最少必須培地および酵母抽出物からなる、血清を含まない培地が開示されている。特許文献3には、動物細胞の増殖用で、イネのペプチド、酵母の抽出物およびそれらの酵素消化物、並びに/もしくは植物の脂質を含む基本細胞培養培地からなる、培地配合が開示されている。組換え細胞の培養用で、精製ダイズ加水分解産物を含む培地が、特許文献4に開示されている。特許文献5は、ダイズ加水分解産物および酵母抽出物を含むが、増殖因子のような動物タンパク質の組換え形態の存在も必要とする培地を開示している。 特許文献6は、操作されたCHO細胞の培養用で、動物供給源から単離されたタンパク質、脂質および炭水化物を含まず、さらに、組換えインスリンまたはインスリン類似物、1%から0.025%w/vのパパイン消化ダイズペプトン、およびプトレシンを含む、生化学的に規定された培養培地を記載している。特許文献7は、加水分解されたダイズペプチド(1〜1000mg/L)、0.01〜1mg/Lのプトレシン、並びに、アルブミン、フェチュイン、様々なホルモンおよび他のタンパク質を含む多様な動物由来の成分を含む、血清を含まない真核細胞の培養物を記載している。これに関連して、DMEM/HamのF12のような標準培地中に、0.08mg/Lの濃度でプトレシンが含まれていることも知られていることにも注意すべきである。 しかしながら、技術水準の公知の培地はしばしば栄養学的に不十分であり、そして/もしくは、インスリン、インスリン様増殖因子または他の増殖因子のような、動物由来のタンパク質補給物または組換え型のタンパク質を補わなければならない。 それゆえ、現在、発現した組換えタンパク質または任意の他の発現産物の収量、および細胞の比増殖速度を増加させ、並びに、ヒトの薬またはワクチンとして使用されるような生物学的産物の生産のための、動物タンパク質を全く含まない、最適な細胞培養培地の提供が求められている。 ダイズペプトン抽出物(「ダイズ加水分解産物」とも称する)を基に、動物タンパク質を含まない培地が開発された。しかしながら、ダイズ加水分解産物の市販のロットの品質は著しく変化し、その結果、組換えタンパク質またはウイルス産物の産生において、用いたダイズ加水分解産物のロットの関数としての、大きな変化がある(3倍までの変化)(「ロット間の変化」)。この欠点は、細胞の増殖ならびに各細胞のタンパク質の発現に影響を与える。国際公開第96/26266号パンフレット国際公開第96/15231号パンフレット国際公開第98/15614号パンフレット国際公開第01/23527号パンフレット国際公開第00/03000号パンフレット欧州特許出願公開第0481791号明細書国際公開第98/08934号パンフレットFranekら著、Biotechnology Progress、2000年、第16巻、p.688−692 従って、動物タンパク質を全く含むことなく、かつ、上記の問題の少なくとも一つを克服する、動物タンパク質を含まない細胞培養培地が必要とされている。 (発明の要旨) 本発明の目的は、動物供給源由来のいずれの添加された補充タンパク質も、および/または組換え動物タンパク質も含まない、動物タンパク質非含有細胞培養培地を提供することである。このことは、効率的な細胞増殖、および特に細胞1個当りの発現量に関して、連続的な質のタンパク質の産生を許容する。本発明のさらなる目的は、動物タンパク質を含まない、細胞の培養方法および動物タンパク質を含まない組換えタンパク質の効率的な発現方法を提供することである。 本発明のもう一つの目的は、所望される組換え産物またはウイルス産物の産生収量に負の影響を与える阻害物質を克服するために、植物および/または酵母由来の加水分解産物を減らすことである。加水分解産物は驚くことに、産生におけるロット間の変化の原因であることがわかった。 本発明による、動物タンパク質を含まない細胞培養培地は、少なくとも一つのポリアミンおよび植物および/または酵母由来の加水分解産物を含む。ここで、ポリアミンは好ましくは、タンパク質加水分解産物以外の供給源に由来する。 驚くことに、動物タンパク質を含まない細胞培養培地への、少なくとも一つのポリアミンの添加、特にプトレシンの添加は、細胞増殖を促進するだけでなく、またとりわけ細胞1個当りのタンパク質の発現、特に、細胞1個当りの組換えタンパク質の発現を増加させる、有利な効果を提供する。 さらに、本発明による、動物タンパク質を含まない培地は、一貫した細胞増殖、および所望される産物、特に組換えタンパク質のような標的タンパク質の収量の増加を、動物タンパク質を含まない細胞培養培地中のタンパク質分解産物、特に植物の加水分解産物の品質またはロット間の変化とは無関係に、許容する。細胞培養培地への、ポリアミン並びに植物および/または酵母由来の加水分解産物の特別な補充は、相乗作用的に作用し、細胞増殖、細胞比生産性および最終的な細胞密度を増加させる。 従って、本発明による、動物タンパク質を含まない培地は、当該分野で公知の培地と比較し、組換えタンパク質の発現および細胞増殖速度にとって好都合である。さらに、本発明による、動物タンパク質を含まない培地は、所定の容量の細胞培養培地に添加されるタンパク質分解産物量を減少させる。 (発明の詳細な説明) 本発明の一局面は、少なくとも一つのポリアミン並びに植物および/または酵母由来の加水分解産物を、この加水分解産物の潜在的な阻害効果を避けるために十分に減少された濃度で含む、動物タンパク質を含まない細胞培養培地に関する。 用語「ポリアミン」は、炭素、窒素および水素からなり、かつ二つまたはそれより多くのアミノ基を含む、任意の群の有機化合物を指す。例えば、この用語は、カダベリン、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、アグマチンおよびオルニチンからなる群から選択された分子を包含する。 異なって記述されないならば、この文書を通して示された濃度の数値は、その成分の遊離塩基の形態を指す。 動物タンパク質を含まない細胞培養培地についての好ましい実施形態では、ポリアミンの濃度は、約0.5mg/Lから約30mg/Lまで、より好ましくは約0.5mg/Lから約20mg/Lまで、なお一層より好ましくは約0.5mg/Lから約10mg/Lまで、より好ましくは約2mg/Lから約8mg/Lまで、最も好ましくは約2mg/Lから約5mg/Lまでの範囲にわたる濃度で、培地中に存在する。 この好ましい実施形態では、動物タンパク質を含まない細胞培養培地における植物および/または酵母由来のタンパク質加水分解産物の濃度の合計は、約0.05%から約5%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約2%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約1%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約0.5%(w/v)まで、最も好ましくは約0.05%から約0.25%(w/v)までである。すなわち、培地が植物由来のタンパク質加水分解産物および酵母由来のタンパク質加水分解産物を含む場合、その濃度の合計は、培地に含まれるタンパク質加水分解産物の成分のそれぞれの濃度の数値を合計することにより算出される。 本発明による、用語「動物タンパク質を含まない細胞培養培地」は、植物ではない高等多細胞真核生物からのタンパク質および/またはタンパク質成分を含まない培地を示す。典型的な、回避されるタンパク質は、アルブミン、トランスフェリン、インスリンおよび他の増殖因子のような、血清および血清由来物質中に見つけられるタンパク質である。動物タンパク質を含まない細胞培養培地は、任意の、動物由来の精製産物および動物由来の組換え産物、ならびにタンパク質消化物およびその抽出物、もしくは脂質抽出物またはその精製成分をも含まない。動物タンパク質およびタンパク質成分は、本発明による動物タンパク質を含まない細胞培養培地中に含まれているかもしれない、ダイズのような植物および酵母のような下等真核生物から入手可能な、非動物タンパク質、小さいペプチドおよびオリゴペプチド(普通、10〜30個のアミノ酸という長さ)とは区別される。 本発明による、動物タンパク質を含まない培養培地は、当業者に一般的に公知の、DMEM、HamのF12、培地199、McCoyまたはRPMIのような、任意の基本培地に基づき得る。基本培地は、アミノ酸、ビタミン、有機塩および無機塩、並びに炭水化物源を含む多くの成分を含み得、ここで各成分は、当業者に一般的に公知の、細胞培養を支持する量存在する。この培地は、炭酸水素ナトリウムのような緩衝物質、抗酸化物質、機械的ストレスを相殺する安定剤、またはプロテアーゼ阻害剤のような補助物質を含み得る。必要に応じて、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール(例えば、Pluronic F68(登録商標),SERVA)の混合物のような、非イオン性界面活性剤が、消泡剤として添加され得る。 本発明による、動物タンパク質を含まない培養培地に用いられるポリアミンは、カダベリン、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、アグマチン、オルニチンおよびそれらの組合せからなる群から選択され得る。最も好ましくは、動物タンパク質を含まない培養培地はオルニチン、プトレシンおよびスペルミンを含む。 動物タンパク質を含まない培養培地についての、好ましい実施形態では、このポリアミンは、DNAおよびRNAの合成、細胞増殖、細胞分化、膜の安定化および/または抗酸化的なDNAの保護を制御する。プトレシン、スペルミジン、スペルミンおよびオルニチンは、これらの機能を表すポリアミンの例である。ポリアミンのもう一つの例はカダベリンである。 本発明による、動物タンパク質を含まない細胞培養培地についての、もう一つの好ましい実施形態では、ポリアミンはタンパク質加水分解産物以外の供給源に由来する。 動物タンパク質を含まない細胞培養培地についての、さらに好ましい実施形態では、ポリアミンは約0.5mg/Lから約30mg/Lまで、より好ましくは約0.5mg/Lから約20mg/Lまで、なお一層より好ましくは約0.5mg/Lから約10mg/Lまで、より好ましくは約2mg/Lから約8mg/Lまで、最も好ましくは約2mg/Lから約5mg/Lまでの範囲にわたる濃度で、培地中に存在する。そして、植物および/または酵母由来のタンパク質加水分解産物は培地中に、約0.05%から約5%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約2%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約1%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約0.5%(w/v)まで、最も好ましくは約0.05%から約0.25%(w/v)までの範囲にわたる濃度で存在する。 本発明による、動物タンパク質を含まない細胞培養培地に用いられる、植物由来のタンパク質加水分解産物は、好ましくは、穀物の加水分解産物および/またはダイズ加水分解産物からなる群から選択される。ダイズ加水分解産物は、高度に精製されたダイズ加水分解産物、精製ダイズ加水分解産物または粗ダイズ加水分解産物であり得る。 用語「加水分解産物」は、任意の、植物または酵母抽出物の酵素的消化物を含む。「加水分解産物」は例えば、パパインによりさらに酵素的に消化され得る。酵素的消化されてもよく、そして/または自己消化、熱分解および/もしくはプラスモリシスにより形成されてもよい。本発明によって用いられる加水分解産物(例えば、HyPep 1510(登録商標)、Hy−Soy(登録商標)、Hy−Yeast 412(登録商標)およびHi−Yeast 444(登録商標))は、Quest International、Norwich、NY、OrganoTechnie、S.A.France、Deutsche Hefewerke GmbH、Germany、またはDMV Intl.Delhi、NYのような供給源から市販もされている。酵母抽出物およびダイズ加水分解産物の供給源はまた、国際公開第98/15614号パンフレット、国際公開第00/03000号パンフレット、国際公開第01/23527号パンフレットおよび米国特許第5741705号に開示されている。 加水分解産物は好ましくは粗画分から精製される。その理由は、不純物が効率的な培養を妨害し得るからである。精製は、限外濾過、あるいは、例えばSephadex 25もしくはSephadex G10または相当する材料を用いたSephadexクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーにより行われ得る。この画分は、規定された分子量、好ましくは約1000ダルトンまで、より好ましくは約500ダルトンまで、最も好ましくは約350ダルトンまでの加水分解産物を含み得る。少なくとも約90%の加水分解産物は、好ましくは、約1000ダルトンまでの分子量を有する。加水分解産物の平均分子量は、好ましくは、約220ダルトンと約375ダルトンとの間にある。加水分解産物のpHの数値は約6.5から約7.5までの範囲内にあるべきである。窒素含量の合計は好ましくは約5%から約15%までの間にあり、灰含量は好ましくは約20%までである。遊離アミノ酸の含量は好ましくは約5%と約30%との間にある。エンドトキシンの含量は好ましくは約500U/g未満である。 本発明はまた、培養細胞におけるタンパク質の発現の収量を増加させることを目的として、植物および/または酵母由来のタンパク質加水分解産物を含み、動物タンパク質を含まない細胞培養培地への添加用に、少なくとも一つのポリアミンを使用する方法を提供する。本発明の好ましい実施形態によると、ポリアミンは培養培地中にて、濃度の合計が約0.5mg/Lから約30mg/Lまで、より好ましくは約0.5mg/Lから約20mg/Lまで、なお一層より好ましくは約0.5mg/Lから約10mg/Lまで、より好ましくは約2mg/Lから約8mg/Lまで、最も好ましくは約2mg/Lから約5mg/Lまでの範囲で存在する。好ましくは、ポリアミンは、カダベリン、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、アグマチン、オルニチンおよびそれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、植物および/または酵母由来のタンパク質加水分解産物は、培地中に、約0.05%から約5%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約2%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約1%(w/v)まで、より好ましくは約0.05%から約0.5%(w/v)まで、最も好ましくは約0.05%から約0.25%(w/v)までの範囲にわたる濃度で存在する。 本発明はさらに、細胞を培養するための方法に関し、この方法は、以下の工程:(a)本発明による、動物タンパク質を含まない細胞培養培地を提供する工程、および(b)この培地中にて細胞を増殖させて、細胞培養物を形成する工程を包含する。 好ましい実施形態では、動物タンパク質を含まない細胞培養培地は、少なくとも一つのポリアミン、並びに植物および/または酵母由来の加水分解産物を含む。好ましくは、このポリアミンはタンパク質加水分解産物以外の供給源に由来する。 本発明はどの細胞種にも限定されない。本発明の好ましい実施形態では、用いられる細胞は例えば、哺乳類細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、細菌細胞、酵母細胞である。細胞は例えば、幹細胞、または組換え型遺伝子の発現用ベクターで形質転換された組換え細胞、またはウイルス産物の産生用のウイルスでトランスフェクトされた細胞であり得る。細胞はまた、例えば、例えば、エプステイン−バーウイルス感染のようなウイルス感染により形質転換されて不死化状態になり得る、組換え形質転換を受けることなく、目的のタンパク質を産生する細胞(抗体を産生するB細胞)であり得る。細胞はまた、例えば初代細胞(例えば、鶏の胚細胞)または初代細胞株であり得る。インビトロでのウイルス産生に用いられる細胞が好ましい。好ましい実施形態では、細胞はBSC細胞、LLC−MK細胞、CV−1細胞、COS細胞、ベロ細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、RK細胞、TCMK−1細胞、LLCPK細胞、PK15細胞、LLC−RK細胞、MDOK細胞、BHK−21細胞、CHO細胞、NS−1細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、BHK細胞、293細胞、RK細胞、および鶏の胚細胞であり得る。 本発明により用いられる細胞は、全て当該分野では一般的に公知の、バッチ培養、流加培養、灌流培養およびケモスタット(chemostate)培養の群から選択した方法により、培養され得る。 本発明はさらに、異種もしくは自己のタンパク質、または組換えタンパク質のような標的タンパク質を発現させるための方法に関し、この方法は以下の工程:a)本発明による、動物タンパク質を含まない細胞培養培地中にて増殖させた細胞の培養物を提供する工程;およびb)この細胞に、標的タンパク質をコードする配列を含む核酸配列を導入する工程;c)その核酸配列を保有する細胞を選択する工程;およびd)細胞内における標的タンパク質の発現を選択的に誘導する工程を包含する。 好ましい実施形態では、動物のタンパク質を含まない細胞培養培地は、少なくとも一つのポリアミン、並びに植物および/または酵母由来の加水分解産物を含む。好ましくは、このポリアミンはタンパク質加水分解産物以外の供給源に由来する。 標的タンパク質をコードする配列を含む核酸配列は、ベクターであり得る。ベクターはウイルスまたはプラスミドであり得る。標的タンパク質をコードする配列は、特定遺伝子、またはその、生物学的機能を有する部分であり得る。好ましい実施形態では、標的タンパク質は少なくとも、第VIII因子のような血液凝固因子の生物学的活性部分であるか、または、少なくとも、エリスロポエチンのような赤血球の産生および新脈管形成に関わるタンパク質、もしくはモノクローナル抗体の生物学的活性部分である。 好ましくは、核酸はさらに、当業者に一般的に公知の、プロモーター配列、エンハンサー、TATAボックス、転写開始部位、ポリリンカー、制限部位、ポリA配列、タンパク質のプロセシング配列、選択マーカーなどのような、標的タンパク質の制御された発現に適する、他の配列を含む。 最も好ましいのは、それぞれの産物の発現用の組換えベクターで形質転換された、以下の細胞株である:組換え型の第VIII凝固因子の産生用のCHO細胞、組換え型のエリスロポエチンの産生用のBHK細胞、エプステイン−バーウイルスで形質転換され、不死化された、ヒト抗体産生用のヒトB細胞である。 本発明はさらに、ウイルスまたはウイルスの一部を産生するための方法に関し、この方法は以下の工程:a)本発明による、動物タンパク質を含まない細胞培養培地中にて増殖させた細胞の培養物を提供する工程;およびb)この細胞にウイルスを感染させる工程;c)ウイルス感染細胞を選択する工程;およびd)細胞をインキュベートしてウイルスを増殖させる工程を包含する。 好ましい実施形態では、動物のタンパク質を含まない細胞培養培地は、少なくとも一つのポリアミン、並びに植物および/または酵母由来の加水分解産物を含む。より好ましくは、このポリアミンはタンパク質加水分解産物以外の供給源に由来する。 本発明による方法で用いられるウイルスは、任意の病原性ウイルス、哺乳類の(好ましくはヒトの)ウイルス(例えば、痘瘡ワクチン用のワクシニアウイルスまたは弱毒化したワクシニアウイルス)、コロナウイルス(好ましくは、例えば、SARSワクチン産生用のSARSウイルス)、オルトミクソウイルス(好ましくは、例えば、インフルエンザワクチン産生用のインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス、レトロウイルス、インフルエンザAウイルスまたはインフルエンザBウイルス、ロス川ウイルス、フラビウイルス(好ましくは、例えば、各ワクチン産生用の、西ナイルウイルスまたはFSMEウイルス(すなわち、ダニ媒介脳炎ウイルス))、ピコルナウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスまたはアデノウイルスなどであり得る。 このウイルスは、野生型ウイルス、弱毒化ウイルス、再集合体ウイルスもしくは組換えウイルスまたはそれらの組み合わせ、例えば弱毒化した組換え型などであり得る。さらに、細胞をウイルスに感染させるために、実際のビリオンが用いられる代わりに、感染性の核酸クローンが用いられ得る。スプリットビリオンも用いられ得る。 タンパク質を発現させるか、またはウイルスを産生する方法は、ウイルスまたはウイルス抗原を含む、免疫抗原性組成物を産生するために、用いられ得る。 ウイルスを産生する方法に用いる細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、細菌細胞および酵母細胞からなる群から選択され得る。好ましくは、細胞はバッチ培養、流加培養、灌流培養およびケモスタット培養からなる群から選択された方法により、培養される。 ウイルスまたはウイルスの一部を産生するための好ましい、細胞とウイルスとの組み合わせは、ベロ細胞/ワクシニアウイルス、ベロ細胞/A型肝炎ウイルス、ベロ細胞/インフルエンザウイルス、ベロ細胞/西ナイルウイルス、ベロ細胞/SARSウイルス、鶏の胚細胞/FSMEウイルスである。 本発明はさらに、標的タンパク質を発現する細胞を培養するための本発明による、動物タンパク質を含まない細胞培養培地を用いる方法に関する。 本発明はここで、以下の実施例に限定されることなく、以下の実施例においてさらに説明される。 (実施例1(BAV培地)) 動物タンパク質を含まない培地を、無機塩、アミノ酸、ビタミンおよび他の成分を補った基本DMEM/HAMのF12(1:1)培地(Life technologies、32500 Powder)を用いて調製した。また、L−グルタミン(600mg/L)、アスコルビン酸(20μM)、エタノールアミン(25μM)、Synperonic(登録商標)(SERVA)(0.25g/L)、亜セレン酸ナトリウム(50nM)を添加した。さらに、必須アミノ酸をこの細胞培養培地に補った。その上さらに、0.0〜1.0%の範囲における多様な濃度のダイズ加水分解産物(Quest Technologies、NYまたはDMV Intl.,NY)および多様な濃度(0〜10mg/L)のポリアミンを添加した(図1〜9)。 (実施例2) 組換え型の哺乳類細胞(例えば、第VIII因子を安定して発現しているCHO細胞、すなわちGD8/6細胞)の細胞培養液を、10lのバイオリアクター中で1つのケモスタット培養において懸濁状態で増殖させた。37℃、酸素飽和度20%およびpH7.0〜7.1という培養条件を定常的に保った。この培養液に、0.1〜1.0%の範囲におけるダイズ加水分解産物および/または0〜1mg/Lの範囲におけるプトレシン・2HClの添加物をさらに補った、実施例1で規定したBAV培地の定常的補給物を供給した(図1〜5を参照)。 懸濁培養でのGD8/6細胞を用いた小規模の実験を、pHおよびpO2を制御しない、37℃でのバッチ再流加方式で、作業容量200mlのTechne攪拌フラスコ中で実施した。その培養液に、ダイズ加水分解産物およびポリアミンを補わない、または0.1〜0.4%の範囲におけるダイズ加水分解産物および/もしくは0〜18mg/Lの範囲におけるプトレシン・2HCl、オルニチン・HCl、スペルミン・4HCl(・HClを含まない0〜10mg/Lのポリアミンに相当)を補った、実施例1で規定したBAV培地を供給した(図9を参照)。 (実施例3(図1〜5、7および9を参照)) 懸濁細胞または固定された細胞の細胞数を、Schaerfeら(Biotechnologie in LaborPraxis 10:1096−1103(1988))により記載の通り、CASY(登録商標)細胞計数器を用いて計数するか、または、クエン酸の抽出および核の蛍光染色を行い、その後NucleoCounter(登録商標)(Chemometec、DK)を用いて計数するかのいずれかにより、決定した。比増殖速度(μ)を、細胞密度の増加(Xt)および/または一定の時間間隔(t)での懸濁細胞のケモスタット培養の定常状態の希釈速度(D)から算出した:μ=D+ln(Xt/X0)/t (実施例4) 第VIII因子(FVIII)(図1〜5および9を参照)の活性を、色素形成アッセイ(Chromogenic、Sweden)により測定した。エリスロポエチン(図8参照)の活性およびモノクローナル抗体の力価(図7参照)をELISA試験システムにより測定した。 容量生産性を、各々の生産システムでの、1日に反応容量1リットル当りで生産された活性単位または抗原力価の量(U/L/dまたはmg/L/d)から算出した。 細胞比生産性を、1日に細胞1個当りで生産された比タンパク質量(Uまたはμg)(図7および図9を参照)または細胞により消費されたD−グルコースの量当たりで生産された比タンパク質量(U)(図8を参照)として規定した。 (実施例5) GD8/6細胞に、0.4%(w/v)の異なるロットのダイズ加水分解産物を含むBAV培地を供給した。FVIIIの容量生産性は約600から1800U/L/dまで変化し、GD8/6細胞の比増殖速度は異なるロット間において、0.35から0.52μ[d−1]まで変化した(図1参照)。このことは、0.4%の濃度のダイズ加水分解産物のロットは、GD8/6細胞の一貫した増殖を許さず、それはおそらく、ダイズ加水分解産物に含まれる、比増殖速度(μ)に影響を与える阻害的な物質に起因することを示している。 (実施例6) GD8/6細胞に、異なる濃度(0.15〜1.0% w/vの範囲において)のダイズ加水分解産物(ロットM022257)を含むBAV培地を供給した。FVIIIの容量生産性は500から1,100U/L/dまで変化し、0.4%(w/v)というダイズ加水分解産物濃度では、1,100U/L/dという最適生産性に達した(図2参照)。 (実施例7) GD8/6細胞に、それぞれ、実施例5で記載したのと同じ5つの異なるダイズ加水分解産物のロットのダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))を含むBAV培地(図3Aおよび4A)、および、さらに1mg/Lのプトレシン・2HClを補った、同じダイズ加水分解産物のロットのダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))(図3Bおよび4B)を供給した。FVIIIの容量生産性は、異なるダイズ加水分解産物のロットのダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))を含むBAV−SP培地で増殖させた細胞では、1700U/L/dから500U/L/dまで変化した(図3A)。比増殖速度は、0.58から0.24μ[d−1]まで変化した。このことは、ダイズ加水分解産物の濃度の減少により、細胞の増殖速度がより改善されるわけでも、より一貫したものになるわけでもないことを示している(図4A)。 対照的に、1mg/Lのプトレシン・2HClを補った場合、同じダイズ加水分解産物のロット間における、FVIIIの容量生産性(図3B)および比増殖速度(図4B)のほんの些細な変化が、0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物を含むBAV培地で増殖した細胞で観察される。1mg/Lのプトレシン・2HClの添加は、0.4%(w/v)から0.25%(w/v)へのダイズ加水分解産物濃度の減少によるこのポリアミンの減少をほぼ埋め合わせる。このことから、ポリアミンの濃度そのものではなく、ダイズ加水分解産物の濃度の減少と組み合わせてポリアミンを添加することにより、増殖および生産性を減少させる阻害物質が減少されるという結論を導くことができる(実施例5を参照)。さらに、プトレシンの添加は、細胞特異的なFVIIIの生産性の増加に起因して、比例した量よりも多いFVIIIの容量生産性の増加をも誘導する(図5)。 従って、動物のタンパク質を含まない細胞培養培地へのプトレシンの添加は、培養細胞のタンパク質発現速度を促進するのみならず、同じ細胞増殖を得るために培養培地中に含まれる植物の加水分解産物の量をも減少させる。結果として、培養培地はロットごとの植物の加水分解産物の品質の変化による影響を受けにくくなり、従って、全体的な細胞培養条件の改善が達成される。 (実施例8) 図5は、図1、2および4に示された実施例の統計解析を含む。GD8/6細胞に、0.4%(w/v)のダイズ加水分解産物、または0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物、または0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物および1mg/Lのプトレシン・2HClを含むBAV培地を供給した。標準偏差を、5つの選択されたダイズ加水分解産物のロット(K119−1、K138−1、M022963、M024423、M022453)に基づいて算出する。0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物における、FVIIIの容量生産性および細胞比生産性、ならびに比増殖速度は、0.4%(w/v)のダイズ加水分解産物における値よりも低かった。このことは図2に描写した最適条件を確認する。しかしながら、FVIIIの容量生産性および細胞比生産性、ならびに比増殖速度は、0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物および1mg/Lのプトレシン・2HClを含む細胞培養培地中では増加する。さらに、5つの異なるダイズ加水分解産物のロットから算出された標準偏差は有意に減少する(図5[QP[U/L/D]]=容量生産性;qp[mU/106細胞/日]=細胞比生産性を参照)。 (実施例9) 実施例7および8は、プトレシンが細胞増殖、より具体的にはタンパク質の発現を支える活性な化合物であることを示す。従って、2つの異なる供給者(QuestおよびDMV)からの、異なるダイズ加水分解産物のロットの、プトレシンの濃度を、HPLC法により定量的に解析し、統計学的に評価した。両供給者からのダイズ加水分解産物を用いて調製した細胞培養培地における濃度は、ダイズ加水分解産物を培地に0.4%(w/v)という濃度で添加した場合、おおよそプトレシン2.3mg/Lであった(図6参照)。 (実施例10) ARH77細胞(安定してhIgGを発現している、ヒトのリンパ芽球様細胞株)を、0.4%(w/v)のダイズ加水分解産物または、0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物および1.8mg/Lのプトレシン・2HClを含むBAV培地を供給した、80Lの攪拌タンクバイオリアクター内で、37℃にて、pH7.0〜7.2、pO2 20〜80%空気飽和度の条件下で、マクロ孔質のマイクロキャリアに固定化した後、灌流培養において増殖させた。相加平均および標準偏差を、各培地配合の定常状態を表すデータの点から、算出した。hIgGの容量生産性/細胞比生産性は、0.4%(w/v)のダイズ加水分解産物を補ったBAV培地においては、0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物および1.8mg/Lのプトレシン・2HClを補ったBAV培地における値よりも低かった。この実験は、本発明による培地の組成が、形質転換された細胞株からのモノクローナル抗体の発現をも促進し得ることを示している。さらに、この特定の培地の組成はまた、灌流培養に使用することができる(図7参照)。 (実施例11) 組換えBHK細胞を、ウシ胎仔血清5%(v/v)を含む培地中にて、コンフルエントになるまで増殖させた。この細胞を、タンパク質を含まない培地で洗い、0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物、または0.25%(w/v)のダイズ加水分解産物および1.8mg/Lのプトレシン・2HClを補ったBAV培地中にて、3日間インキュベートした(図8)。この実験では、細胞計数を行わなかったため、培養システムにおける等価な生物体量を証明することを目的とし、グルコース消費速度(g/L)を3日間測定した。EPOの活性(mU/ml)を3日間のグルコース消費速度(g/L)と相関させた。プトレシンの添加は、0.25%(w/v)のダイズペプトンのみを補ったBAV培地と比較して、EPO生産性を16%増加させる。この実験は、本発明による培地の組成が、異なる組換えタンパク質の発現を促進する能力を有することをも示している。 (実施例12) プトレシン、オルニチンおよびスペルミンの特定の影響をより広範囲の濃度(−・HClを含まない0〜10mg/Lのポリアミンに相当する、0〜18mg/L)にわたり証明するため、GD8/6細胞をTechne攪拌フラスコ内に、1〜1.5×106細胞/mlで、ポリアミンを含まない0.25%および0.4%のダイズ加水分解産物を含むBAV培地、および上記の濃度範囲のポリアミンを含む、0.25%という減少した濃度のダイズ加水分解産物を含むBAV培地中にてインキュベートするという実験を行った。3つ全てのポリアミンは調べた濃度範囲において、0.25%または濃度を増した0.4%のダイズ加水分解産物を含み、ポリアミンを補わない培地配合と比較して有意な細胞比生産性(mU/106細胞/日として表現)の増加をもたらした。この細胞比生産性の増加は明確に、増加した比増殖速度と相関していない。このことは、GD8/6細胞の組換え型FVIIIの発現速度に対する特定の影響を確認している(図9)。図1は、GD8/6細胞の(A)FVIII−CoAの容量生産性([U/L/D]=1日のリアクター容量1リットル当たりのFVIII−CoAの単位で表現)および(B)比増殖速度([d−1]=1日あたりで表現されたμ)を、ダイズ加水分解産物(0.4%(w/v))の異なるロット(K119−1、K138−1、M022963、M024423、M022453)を補った培養用培地の関数として、比較するグラフを示している。図2は、異なる濃度のダイズ加水分解産物を含む培地中にて増殖させたGD8/6細胞の、FVIII−CoAの容量生産性を比較する表を示している。図3は、GD8/6細胞のFVIII−CoAの容量生産性を、ダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))の5つの異なるロット(K119−1、K138−1、M022963、M024423、M022453)を補った培養培地の関数として、(A)プトレシンが存在しない場合および(B)1mg/Lのプトレシン・2HClが存在する場合において、比較するグラフを示している。図4は、GD8/6細胞の比増殖速度を、ダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))の5つの異なるロット(K119−1、K138−1、M022963、M024423、M022453)を補った培養培地の関数として、(A)プトレシンが存在しない場合および(B)1mg/Lのプトレシン・2HClが存在する場合において、比較するグラフを示している。図5は、GD8/6細胞の、FVIII−CoAの容量生産性(QP[U/L/D])および比増殖速度(μ[d−1])およびこれらの標準偏差を、1mg/Lのプトレシン・2HClを含む同じダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))を含む培地中にで増殖させた場合と、1mg/Lのプトレシン・2HClを含まない同じダイズ加水分解産物(0.4%(w/v)または0.25%(w/v))の、選択された5つの異なるロット(K119−1、K138−1、M022963、M024423、M022453)を含む培地中にて増殖させた場合とで比較する表を示している。図6は、異なる供給者からのダイズ加水分解産物(細胞培養培地中、0.4%(w/v))内に見られる、プトレシンの濃度の平均を記載する表を示している。図7は、モノクローナル抗体を分泌するARH77細胞の、容量生産性([mg IgG1/Lリアクター容量/日]で表現されたQP)および細胞比生産性(qp[μg IgG1/106細胞/d])における、ダイズ加水分解産物(0.4%(w/v))および1.8mg/Lのプトレシン・2HClを加えたダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))の影響を比較する表を示している。図8は、組換えBHK細胞のエリスロポエチン(EPO)の細胞比生産性(EPOの産生量(Units)/グルコースの消費量(g))に対する、ダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))および1mg/Lのプトレシン(1.8mg/Lのプトレシン・2HCl)を加えたダイズ加水分解産物(0.25%(w/v))の影響を比較するグラフを示している。図9は、0.0%のダイズ加水分解産物を含み、アミンを含まないBAV培地、または上記の濃度範囲のポリアミンを補った、0.25%という減少したダイズ加水分解産物濃度を含むBAV培地中にて培養したGD8/6細胞の、比増殖性(μ絶対値、μ相対値)および細胞比生産性(Qp絶対値およびQp相対値)に対する、より広範囲の濃度(0〜18mg/L)にわたる、プトレシン、オルニチンおよびスペルミンの影響を比較する表を示している。BAV−SP 0.25%=0.25%のダイズ加水分解産物を含むBAV培地;BAV−SP 0.4%=0.4%のダイズ加水分解産物を含むBAV培地;BAV w/o soy no polyamines=ダイズ加水分解産物もポリアミンも含まないBAV培地。 少なくとも一つのポリアミン、および少なくとも一つのタンパク質加水分解産物を含む、動物タンパク質を含まない細胞培養培地であって、ここで、該ポリアミンは、0.5mg/Lから10mg/Lまでの範囲における濃度のプトレシンであり、該タンパク質加水分解産物は、0.05%(w/v)から0.5%(w/v)までの範囲における濃度のダイズ加水分解産物である、細胞培養培地。 請求項1に記載の、動物タンパク質を含まない細胞培養培地であって、ここで、前記ポリアミンはタンパク質加水分解産物以外の供給源に由来する、細胞培養培地。 請求項1に記載の、動物タンパク質を含まない細胞培養培地であって、ここで、前記タンパク質加水分解産物は該培養培地中にて、全てのタンパク質加水分解産物が0.05%(w/v)から5%(w/v)までの範囲における、合計の濃度で存在する、細胞培養培地。 細胞を培養するための方法であって、以下の工程:(a)請求項1に記載の、動物タンパク質を含まない細胞培養培地を提供する工程、および(b)該細胞を該培地中にて増殖させて細胞培養物を形成する工程を包含する、方法。 請求項4に記載の方法であって、ここで、前記細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、細菌細胞および酵母細胞からなる群から選択される、方法。 請求項5に記載の方法であって、ここで、前記細胞は、バッチ培養、流加培養、灌流培養およびケモスタット培養からなる群から選択した方法により培養される、方法。 標的タンパク質を発現させるための方法であって、以下の工程:a)請求項1に記載の、動物タンパク質を含まない細胞培養培地中にて増殖させた細胞の培養物を提供する工程;b)該標的タンパク質をコードする配列を含む核酸配列を、該細胞に導入する工程;c)該核酸配列を保有する該細胞を選択する工程;およびd)該細胞内における該標的タンパク質の発現を選択的に誘導する工程を包含する、方法。 請求項7に記載の方法であって、ここで、前記細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、細菌細胞および酵母細胞からなる群から選択される、方法。 請求項7に記載の方法であって、ここで、前記細胞/前記標的タンパク質の組合せは、CHO細胞/第VIII凝固因子、BHK細胞/エリスロポエチン、エプステイン−バーウイルスで形質転換されて不死化されたヒトB細胞/ヒト抗体からなる群から選択される、方法。 請求項7に記載の方法であって、ここで、前記細胞は、バッチ培養、流加培養、灌流培養およびケモスタット培養からなる群から選択した方法により培養される、方法。 ウイルスを産生するための方法であって、以下の工程:a)請求項1に記載の、動物タンパク質を含まない細胞培養培地中にて増殖させた細胞の培養物を提供する工程;b)該細胞に該ウイルスを感染させる工程;c)該ウイルス感染細胞を選択する工程;およびd)該細胞をインキュベートして該ウイルスを増殖させる工程を包含する、方法。 請求項11に記載の方法であって、ここで、前記細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、細菌細胞および酵母細胞からなる群から選択される、方法。 請求項11に記載の方法であって、ここで、前記細胞/前記ウイルスの組合せは、Vero細胞/弱毒化ワクシニア、Vero細胞/ワクシニア、Vero細胞/A型肝炎ウイルス、Vero細胞/インフルエンザウイルス、Vero細胞/西ナイルウイルス、Vero細胞/SARSウイルス、および鶏の胚細胞/FSMEウイルスからなる群から選択される、方法。 請求項11に記載の方法であって、ここで、前記細胞は、バッチ培養、流加培養、灌流培養およびケモスタット培養からなる群から選択した方法により培養される、方法。